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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093822
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 17/28 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
B60K17/28 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210406
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松田 真一郎
【テーマコード(参考)】
3D043
【Fターム(参考)】
3D043AA09
3D043AB12
3D043BA06
3D043BC02
(57)【要約】
【課題】 ケース内部に存在するオイルが外部に漏出したり、ケース外部に存在する異物(例えば、泥水等)が内部に侵入することを抑制できる、動力伝達装置を提供する
【解決手段】 動力伝達装置100は、リアミッションケース12及びPTO軸32を備えている。ケース12はトラクタ後方に備えられ、PTO軸32が挿通可能な第1挿通孔12a3、第2挿通孔12d1を有する。ケース12は、PTO軸32の一端側32aを内部に収容し、且つ、PTO軸32の他端側32bを外部後方に露出させる。PTO軸32は、径長さDa2を有する第1部位32a2と、径長さDa3を有し第1部位32a2と同軸的に位置する第2部位32a3と、を備える。径長さDa2,Da3は異なっている。第1挿通孔12a3は、第1部位32a2の周りを囲い、第2挿通孔12d1は、第2部位32a3の周りを囲うとともに、第1挿通孔12a3と同軸的に位置する。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車両が備える原動機の動力を、前記走行車両に連結された作業装置に向けて伝達するPTO軸であって、軸方向における一端側にて前記原動機からの動力が入力されたとき、軸まわりに回転することで、軸方向における他端側にて前記作業装置への動力が出力されるように構成されたPTO軸と、
前記走行車両に備えられ、前記PTO軸が挿通可能な挿通孔を有するケースであって、前記挿通孔に前記PTO軸が挿通された状態において、前記PTO軸が回転可能に前記挿通孔にて周りを囲われつつ、前記PTO軸の前記一端側を内部に収容し、且つ、前記PTO軸の前記他端側を外部に露出させるように構成されたケースと、
を備えた動力伝達装置において、
前記PTO軸は、
所定の径長さを有する第1部位と、
前記第1部位の径長さとは異なる径長さを有し、前記第1部位と同軸的に位置する第2部位と、
を備えるように構成され、
前記ケースの前記挿通孔は、
前記PTO軸が挿通された状態において、前記第1部位の周りを囲う第1挿通孔と、
前記PTO軸が挿通された状態において、前記第2部位の周りを囲い、前記第1挿通孔と同軸的に位置する第2挿通孔と、
を備えるように構成された
動力伝達装置。
【請求項2】
請求項1に記載の動力伝達装置において、
前記PTO軸の前記第2部位は、
前記第1部位の径長さよりも小さい径長さを有し、前記第1部位と隣り合い、且つ、前記第1部位よりも軸方向における前記他端側に位置するように構成され、
前記ケースの前記第2挿通孔は、
前記第1挿通孔の開口面積よりも小さい開口面積を有するように構成された
動力伝達装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の動力伝達装置において、
前記PTO軸の前記第1部位、及び、前記ケースの前記第1挿通孔にて形成される間隙をシールする第1シール部材と、
前記PTO軸の前記第2部位、及び、前記ケースの前記第2挿通孔にて形成される間隙をシールする第2シール部材と、
を更に備えた
動力伝達装置。
【請求項4】
請求項3に記載の動力伝達装置において、
前記PTO軸の前記第1部位の周りを囲い、前記第1部位及び前記第1挿通孔の間に介装される第1スリーブ部材と、
前記PTO軸の前記第2部位の周りを囲い、前記第2部位及び前記第2挿通孔の間に介装される第2スリーブ部材と、
を更に備え、
前記第1シール部材は、
前記第1スリーブ部材の周りを囲うように構成され、
前記第2シール部材は、
前記第2スリーブ部材の周りを囲うように構成された
動力伝達装置。
【請求項5】
請求項4に記載の動力伝達装置において、
前記ケースは、
前記ケースの外側にて着脱可能なカバー部材を備え、
前記ケースの前記第2挿通孔は、
前記カバー部材に設けられ、前記カバー部材が装着された状態において、前記PTO軸が挿通されて前記第2部位の周りを囲い、前記第1挿通孔と同軸的に位置するように構成され、
前記第2シール部材、及び、前記第2スリーブ部材は、
前記カバー部材が脱離された状態において、前記ケースの外部にて位置するように構成された
動力伝達装置。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の動力伝達装置において、
前記PTO軸の前記第2部位は、
前記第1部位の径長さよりも小さい径長さを有し、前記第1部位と隣り合い、且つ、前記第1部位よりも軸方向における前記他端側に位置するように構成され、
前記ケースの前記第2挿通孔は、
前記第1挿通孔の開口面積よりも小さい開口面積を有するように構成され、
前記第2シール部材は、
前記第1シール部材の開口面積よりも小さい開口面積を有するように構成され、
前記第2スリーブ部材は、
前記第1スリーブ部材の開口面積よりも小さい開口面積を有するように構成された
動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原動機の動力を伝達するための動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原動機の動力を伝達するための動力伝達装置として、例えば、特許文献1に示す装置が知られている。この装置は、ミッションケース、PTO(Power Take Off)軸等を備えている。PTO軸は、ミッションケースに収容されたPTO系ミッションを介して、原動機からの動力が伝達される。動力伝達されたPTO軸は、ミッションケース外部の作業装置に向けて、動力を伝達するようになっている。即ち、原動機の動力は、動力伝達装置のPTO軸を介することで、作業装置に伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-97742号公報(図1等)
【発明の概要】
【0004】
この種の動力伝達装置が備えるケースにおいては、一般に、PTO軸の回転を許容するため、PTO軸周りに間隙が存在する。この間隙は、ケースの内部と外部とを連通する通路になり得る。このため、当該通路を介して、ケース内部に存在するオイルが外部に漏出したり、ケース外部に存在する異物(例えば、泥水等)が内部に侵入する事象がある。このような事象を極力抑制することが望まれる。他方、上述した特許文献1では、上述した課題は示唆されておらず、特に、PTO軸についての改善の余地が大きい。
【0005】
そこで、本発明は、上記に鑑み、ケース内部に存在するオイルが外部に漏出したり、ケース外部に存在する異物が内部に侵入することを抑制できる、動力伝達装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この技術的課題を解決するための本発明の技術的手段は、以下に示す点を特徴とする。本発明の動力伝達装置は、走行車両が備える原動機の動力を、前記走行車両に連結された作業装置に向けて伝達するPTO軸であって、軸方向における一端側にて前記原動機からの動力が入力されたとき、軸まわりに回転することで、軸方向における他端側にて前記作業装置への動力が出力されるように構成されたPTO軸と、前記走行車両に備えられ、前記PTO軸が挿通可能な挿通孔を有するケースであって、前記挿通孔に前記PTO軸が挿通された状態において、前記PTO軸が回転可能に前記挿通孔にて周りを囲われつつ、前記PTO軸の前記一端側を内部に収容し、且つ、前記PTO軸の前記他端側を外部に露出させるように構成されたケースと、を備え、前記PTO軸は、所定の径長さを有する第1部位と、前記第1部位の径長さとは異なる径長さを有し、前記第1部位と同軸的に位置する第2部位と、を備えるように構成され、前記ケースの前記挿通孔は、前記PTO軸が挿通された状態において、前記第1部位の周りを囲う第1挿通孔と、前記PTO軸が挿通された状態において、前記第2部位の周りを囲い、前記第1挿通孔と同軸的に位置する第2挿通孔と、を備えるように構成される。
【0007】
本発明の動力伝達装置において、前記PTO軸の前記第2部位は、前記第1部位の径長さよりも小さい径長さを有し、前記第1部位と隣り合い、且つ、前記第1部位よりも軸方向における前記他端側に位置するように構成され、前記ケースの前記第2挿通孔は、前記第1挿通孔の開口面積よりも小さい開口面積を有するように構成される。
【0008】
本発明の動力伝達装置は、前記PTO軸の前記第1部位、及び、前記ケースの前記第1挿通孔にて形成される間隙をシールする第1シール部材と、前記PTO軸の前記第2部位、及び、前記ケースの前記第2挿通孔にて形成される間隙をシールする第2シール部材と、を更に備える。
【0009】
本発明の動力伝達装置は、前記PTO軸の前記第1部位の周りを囲い、前記第1部位及び前記第1挿通孔の間に介装される第1スリーブ部材と、前記PTO軸の前記第2部位の周りを囲い、前記第2部位及び前記第2挿通孔の間に介装される第2スリーブ部材と、を更に備え、前記第1シール部材は、前記第1スリーブ部材の周りを囲うように構成され、前記第2シール部材は、前記第2スリーブ部材の周りを囲うように構成される。
動力伝達装置。
【0010】
本発明の動力伝達装置において、前記ケースは、前記ケースの外側にて着脱可能なカバー部材を備え、前記ケースの前記第2挿通孔は、前記カバー部材に設けられ、前記カバー部材が装着された状態において、前記PTO軸が挿通されて前記第2部位の周りを囲い、前記第1挿通孔と同軸的に位置するように構成され、前記第2シール部材、及び、前記第2スリーブ部材は、前記カバー部材が脱離された状態において、前記ケースの外部にて位置するように構成される。
【0011】
本発明の動力伝達装置において、前記PTO軸の前記第2部位は、前記第1部位の径長さよりも小さい径長さを有し、前記第1部位と隣り合い、且つ、前記第1部位よりも軸方向における前記他端側に位置するように構成され、前記ケースの前記第2挿通孔は、前記第1挿通孔の開口面積よりも小さい開口面積を有するように構成され、前記第2シール部材は、前記第1シール部材の開口面積よりも小さい開口面積を有するように構成され、前記第2スリーブ部材は、前記第1スリーブ部材の開口面積よりも小さい開口面積を有するように構成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ケース内部に存在するオイルが外部に漏出したり、ケース外部に存在する異物が内部に侵入することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る動力伝達装置が適用されるトラクタの全体概略図である。
図2図1に示すトラクタの後方斜視図である。
図3図1に示す動力伝達装置の断面図である。
図4図1に示す動力伝達装置が備えるPTO軸近傍の拡大断面図である。
図5図1に示す動力伝達装置が備えるPTO軸、ケース、第1シール部材、及び、第1スリーブ部材を示す斜視図である。
図6図1に示す動力伝達装置が備えるPTO軸、ケース、カバー部材、第2シール部材、及び、第2スリーブ部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る動力伝達装置100が適用されるトラクタ1の全体概略図である。図2は、動力伝達装置100の後端部を含むトラクタ1の後方斜視図である。各図中に適宜示される矢印の左・右、上・下、前・後は、それぞれ左方向・右方向、上方向・下方向、前方向・後方向に対応している。なお、本実施形態では、走行車両としてトラクタ1を用いているが、動力伝達装置100を適用可能なものであれば、トラクタに限定されない。
【0015】
<トラクタの全体概略>
図1及び図2に示すように、トラクタ1は、前輪2、後輪3、原動機4、油圧昇降装置5、及び、動力伝達装置100を、備えている。前輪2及び後輪3は、それぞれの車軸の左右端部に接続され、左右一対となるよう設けられている。即ち、本実施形態のトラクタ1は、2軸4車輪型である。原動機4は、例えば、ディーゼルエンジン等の駆動源であり、トラクタ1の機体前部に設けられている。原動機4の後部には、動力伝達装置100が設けられており、原動機4にて発生する動力を、動力伝達装置100に入力可能となっている。入力された動力は、動力伝達装置100での変速を経て、後輪3(又は、前輪2及び後輪3)の車軸や、作業装置を作動するためのPTO軸32へ伝達される。なお、動力伝達装置100の構成については、後に詳述する。
【0016】
図2に示すように、油圧昇降装置5は、トラクタ1において動力伝達装置100の後部上側に、設けられている。油圧昇降装置5は、左右に1本ずつリフトアーム5aを備えており、各リフトアーム5aの端部は、それぞれ後方へ突出している。油圧昇降装置5では、例えば、運転者のレバー操作によるスプール変位で油圧が制御され、リフトアーム5aの後端部が、上下揺動するようになっている。リフトアーム5aの後端部、及び、3点リンク(図示せず)を介して、図示しない作業装置が、油圧昇降装置5に連結可能となっている。即ち、当該作業装置は、トラクタ1の後端に連結されるようになっている。
【0017】
トラクタ1の後端においては、PTO軸32が、動力伝達装置100のリアミッションケース12から露出しつつ後方へ突出している。作業装置がトラクタ1に連結されている状態において、後方に突出するPTO軸32の他端側32bが作業装置に接続され、PTO軸32は、作業装置に向けて原動機4の動力を伝達可能となっている。作業装置は、例えば、ロータリ耕耘機等であるが、走行車両に連結されて、PTO軸32から動力伝達されて駆動するものであれば、種類や態様は限定されない。
【0018】
図1に示すように、左右後輪3それぞれの上面近傍を覆う各フェンダー3aの間であって、左右方向の略中央部において、運転席1aが設けられている。運転席1aの前部には、操舵ハンドル1bが配置されている。また、運転席1aの周辺には、各種操作レバー、各種ペダル、各種スイッチ等も配置されている。これらは、運転者が運転席1aに着座した状態において、運転者により操作可能となっている。このように構成されることで、前輪2の操舵、原動機4の回転数制御、動力伝達装置100における変速や前後進の切替、リフトアーム5aの昇降、PTOのON/OFFなどが、運転者により実行されるようになっている。
【0019】
<動力伝達装置の構成>
図3に示すように、動力伝達装置100は、ケース10、及び、ケース10に内蔵される各ミッションを、備えている。ケース10は、トラクタ1に備えられ、前側のフロントミッションケース11、及び、その後部に連設されるリアミッションケース12にて構成されている。各ミッションは、各種の軸、ギア等をそれぞれ有しており、走行系ミッション20、及び、PTO系ミッション30にて構成されている。走行系ミッション20はフロントミッションケース11に、PTO系ミッション30はリアミッションケース12に、それぞれ内蔵されている。また、各ミッションケース11,12の内部には、潤滑のためのオイルが封入されている。
【0020】
走行系ミッション20は、フライホイール21、第1入力シャフト22a、第2入力シャフト22b、プロペラシャフト22d、クラッチ23、主変速機構24、及び、副変速機構25を備えている。PTO系ミッション30は、PTOギヤシャフト31、PTO軸32、及び、PTO軸32に装着される各種部材(シール部材、スリーブ部材等)を備えている。なお、PTO軸32については、後欄を設けて詳述する。
【0021】
フロントミッションケース11において、その前端部11aは閉塞されており、前端部11a内壁に対向するように、フライホイール21が配置されている。フライホイール21は、原動機4の作動に応じて軸A0まわりに回転し、原動機4のトルク変動を抑制可能となっている。軸A0は、フライホイール21の中心を通る前後方向と平行な軸である。フライホイール21の後側には、前端部11aと平行に配置された中間壁11bが設けられている。これにより、フライホイール21は、中間壁11bにて区画された前側の空間に、径方向が上下方向と平行になるように、収容される。本実施形態においては、フライホイール21は、走行系ミッション20及びPTO系ミッション30の動力伝達における上流端となっている。
【0022】
第1入力シャフト22aの前端は、フライホイール21の中心と接続されている。第1入力シャフト22aは、軸A0と同軸的に配置されており、フライホイール21の中心から後方に向け、中間壁11bを貫通するように延伸している。第1入力シャフト22aの後端は、中間壁11bよりも後側の軸受部11c近傍に位置する。これにより、第1入力シャフト22aは、フライホイール21と一体的に、軸A0まわりに回転可能となっている。
【0023】
クラッチ23は、フライホイール21の後側に固設されており、フライホイール21と同じ空間に収容されている。クラッチ23は、フライホイール21から主変速機構24への動力伝達の維持/切離しを、可能に構成されている。
【0024】
主変速機構24は、多段のギヤ、シフタ、主・従動軸等を有しており、中間壁11b及び軸受部11cの間の空間に収容されている。主変速機構24は、クラッチ23を介して伝達される動力が段階的に変速され得る構成であれば、何れの態様であってもよい。例えば、主変速機構24への入力は、クラッチ23から中間壁11b近傍まで延びるよう構成される中空シャフトを介して実行されてもよい。当該中空シャフトは、軸A0と同軸的に配置され、第1入力シャフト22aが篏入されて、第1入力シャフト22aに対し相対回転可能になっている。この場合、当該中空シャフトは、その前端部にてクラッチ23からの入力を受け付けて、第1入力シャフト22aに対し相対回転しつつ、主変速機構24のギヤへ動力伝達していく。そして、主変速機構24において、複数のギヤの組合せが適宜変更されることで、変速が達成されるようにしてもよい。
【0025】
第2入力シャフト22bの前端は、カップリング22abを介して、第1入力シャフト22aの後端と接続されている。第2入力シャフト22bは、軸A0と同軸的に配置されており、カップリング22abから後方に向け、軸受部11dを貫通するように延伸している。軸受部11dは、軸受部11cよりも後側であって、後輪3のデフ装置3bよりも前側に位置している。第2入力シャフト22aの後端は、軸受部11dよりも後側のデフ装置3bにおける後端近傍に位置する。これにより、第2入力シャフト22bは、第1入力シャフト22aと一体的に、軸A0まわりに回転可能となっている。
【0026】
副変速機構25は、多段のギヤ、シフタ、主・従動軸等を有しており、軸受部11c及び軸受部11dの間の空間に収容されている。副変速機構25は、主変速機構24を介して伝達される動力が段階的に変速され得る構成であれば、何れの態様であってもよい。例えば、副変速機構25への入力は、軸受部11c近傍から軸受部11d近傍まで延びるよう構成される中空シャフトを介して実行されてもよい。当該中空シャフトは、軸A0と同軸的に配置され、第2入力シャフト22bが篏入されて、第2入力シャフト22bに対し相対回転可能になっている。この場合、当該中空シャフトは、その前端部にて主変速機構24からの入力を受け付けて、第2入力シャフト22bに対し相対回転しつつ、副変速機構25のギヤへ動力伝達していく。そして、副変速機構25において、複数のギヤの組合せが適宜変更されることで、変速が達成されるようにしてもよい。
【0027】
副変速機構25にて変速された動力は、例えば、第2入力シャフト22bと異軸かつ平行な従動シャフト22cを介して、後輪3のデフ装置3bへ伝達されてもよい。伝達された動力は、デフ装置3bを介して、最終的には後輪3を回転させるようになっている。更に、4輪駆動の要求に応じて、副変速機構25にて変速された動力は、例えば、プロペラシャフト22dに伝達されてもよい。伝達された動力は、最終的には前輪2を回転させるようになっている。
【0028】
リアミッションケース12において、その後端部12aは略平板状に構成されており、後方からのボルト締結により閉塞されている。PTOギヤシャフト31の後端は、後端部12aの内壁にて軸受けされている。PTOギヤシャフト31は、軸A0と同軸的に配置されており、後端部12aから前方に向け、軸受部12bを貫通するように延伸している。軸受部12bは、後端部12aよりも前側であって、後輪3のデフ装置3bよりも後側に位置している。PTOギヤシャフト31の前端は、カップリング31abを介して、第2入力シャフト22bの後端と接続されている。これにより、PTOギヤシャフト31は、第2入力シャフト22bと一体的に、軸A0まわりに回転可能となっている。
【0029】
<PTO軸の詳細>
図3に示すように、PTO軸32は、軸A1と同軸的に配置されており、軸A1方向において一端側32a及び他端側32bが規定される。軸A1は、軸A0よりも下側に位置し、軸A0と平行である。即ち、軸A1の方向は、前後方向と平行であり、PTO軸32の前側が一端側32aに対応し、PTO軸32の後側が他端側32bに対応している。
【0030】
PTO軸32の一端側32aは、リアミッションケース12の内部に収容されている。一端側32aは、軸受部12a1,12cのそれぞれで軸支されるよう、前側に延伸している。軸受部12a1は、リアミッションケース12の後端部12aの内壁において、後方に凹む凹部として形成されている(図4図5を参照)。軸受部12cは、後端部12aよりも前側であって、後輪3のデフ装置3bよりも後側に位置している。多段のギヤ(本例では2段)、シフタ等は、一端側32aにおける軸受部12a1,12cの間に介装されている。当該ギヤが、PTOギヤシャフト31と噛合うことで、PTOギヤシャフト31からPTO軸32の一端側32に、動力が入力されるようになっている。
【0031】
PTO軸32の他端側32bは、後端部12aの挿通孔を介して、リアミッションケース12の外部に露出している(図2を参照)。当該挿通孔にPTO軸32が挿通された状態において、PTO軸32は軸A1まわりに回転可能となっている。
【0032】
以上のように構成されることで、原動機4が作動する場合、その動力は、フライホイール21を介して第1入力シャフト22aに入力される。即ち、原動機4の作動に応じて、第1入力シャフト22aは、軸A0まわりに回転する。第1入力シャフト22aの回転に伴い、第2入力シャフト22bも、一体的に軸A0まわりに回転する。第2入力シャフト22bの回転に伴い、PTOギヤシャフト31も、一体的に軸A0まわりに回転する。そして、PTOギヤシャフト31から、PTO軸32の一端側32aに動力が入力される。このように、軸A1方向における一端側32aにて、原動機4からの動力が入力されたとき、PTO軸32は軸A1まわりに回転する。これにより、軸A1方向における他端側32bにて、作業装置への動力が出力されるようになっている。
【0033】
図4に示すように、上述のようにPTO軸32が配置されるに際し、シール部材、スリーブ部材等が、設けられる。図4は、図3の破線部にて囲まれた部位の拡大断面図である。PTO軸32の近傍において、動力伝達装置100のPTO系ミッション30は、更に、ベアリング33、第1スリーブ部材34、第1シール部材35、第2スリーブ部材36、及び、第2シール部材37を、備えている。これらは、PTO軸32の所定部位の周りを囲うように、PTO軸32に挿通されるようになっている。また、PTO軸32、及び、リアミッションケース12の後端部12aは、これらの部材を適切に保持するための構造を有している。なお、図4では図示していないが、PTO軸32の前端部は、軸受部12cに保持されるベアリングに、嵌入されるようになっている(図3を参照)。
【0034】
PTO軸32は、一端側32aにおいて、軸受部位32a1、第1部位32a2、及び、第2部位32a3を、備えている。軸受部位32a1は、軸A1方向におけるPTO軸32の中間部近傍に位置している。第1部位32a2は、軸受部位32a1と隣り合い、且つ、軸受部位32a1よりも軸A1方向における後側に位置する。第2部位32a2は、第1部位32a2と隣り合い、且つ、第1部位32a2よりも軸A1方向における後側に位置する。軸受部位32a1、第1部位32a2、及び、第2部位32a3は、それぞれ円柱状であり、軸A1と同軸的に配置されている。
【0035】
図4の破線にて示すように、軸受部位32a1、第1部位32a2、及び、第2部位32a3は、それぞれ異なる径長さ■a1,■a2,■a3を有している。径長さ■a1,■a2,■a3の大小関係は、■a1>■a2>■a3である。即ち、PTO軸32は、軸受部位32a1から後方に向かって、第1部位32a2、及び、第2部位32a3に対応する部位にて、段階的な縮径構造となっている。換言すれば、PTO軸32の側面において、軸受部位32a1及び第1部位32a2の間に、径長さ■a1,■a2の差に応じた段差が形成されている。また、第1部位32a2及び第2部位32a3の間に、径長さ■a2,■a3の差に応じた段差が形成されている。
【0036】
リアミッションケース12は、後端部12aにおいて、軸受部12a1、第1シール部材収容部12a2、第1挿通孔12a3、カバー部材収容部12a4、及び、カバー部材12dを、備えている。カバー部材12dは、第2挿通孔12d1、突出部12d2、及び、第2シール部材収容部12d3を、備えている。
【0037】
図4及び図5に示すように、軸受部12a1は、後端部12aにおける軸A1方向の(板厚方向)前端に、位置している。第1シール部材収容部12a2は、軸受部12a1と隣り合い、且つ、軸受部12a1よりも軸A1方向における後側に位置する。第1挿通孔12a3は、第1シール部材収容部12a2と隣り合い、且つ、第1シール部材収容部12a2よりも軸A1方向における後側に位置する。軸受部12a1、及び、第1シール部材収容部12a2は、後方へ凹む円形開口の凹部であり、後端部12aの前側内壁に設けられている。第1挿通孔12a3は、後端部12aに設けられた円形貫通孔であり、PTO軸32が挿通可能となっている。
【0038】
図4及び図6に示すように、カバー部材収容部12a4は、後端部12aにおける軸A1方向の(板厚方向)後端に、位置している。カバー部材収容部12a4は、第1挿通孔12a3と隣り合い、且つ、第1挿通孔12a3よりも軸A1方向における後側に位置する。カバー部材収容部12a4は、前方へ凹む円形開口の凹部であり、後端部12aの後側外壁に設けられている。カバー部材収容部12a4は、カバー部材12d1の突出部12d2が篏入可能となっている。軸受部12a1、第1シール部材収容部12a2、第1挿通孔12a3、及び、カバー部材収容部12a4は、それぞれ軸A1と同軸的に配置されている。
【0039】
カバー部材12dは、略矩形の板状を呈しており、リアミッションケース12の後端部12aにおける後方外側にて、着脱可能に構成されている。カバー部材12dを後端部12aに装着する場合、カバー部材12dの四隅をボルトにて締結してもよい。カバー部材12dの中央部には、第2挿通孔12d1が設けられている。第2挿通孔12d1は、カバー部材12dに設けられた円形貫通孔であり、PTO軸32が挿通可能となっている。突出部12d2は、カバー部材12dの前側面に設けられている。突出部12d2は、円筒形状に形成されており、側壁が第2挿通孔12d1の外側を囲みつつ、前方へ突出するように立設されている。突出部12d2の前端にはOリングが装着されており、突出部12d2は、カバー部材収容部12a4に嵌入可能となっている。
【0040】
突出部12d2の側壁内部(径方向内側)には、第2シール部材収容部12d3が、設けられている。第2シール部材収容部12d3は、第2挿通孔12d1と隣り合い、且つ、第2挿通孔12d1よりも軸A1方向における前側に位置する。第2シール部材収容部12d3は、後方へ凹む円形開口の凹部である。カバー部材12dを後端部12aに装着する際には、第2スリーブ部材36、第2シール部材37、及び、第2挿通孔12d1に、PTO軸32を挿通させつつ、カバー部材収容部12a4に突出部12d2を嵌入させる(図6を参照)。カバー部材12dを装着した状態において、第2シール部材収容部12d3は、第1挿通孔12a3と隣り合い、且つ、第1挿通孔12a3よりも軸A1方向における後側に位置する。この状態において、軸受部12a1、第1シール部材収容部12a2、第1挿通孔12a3、第2シール部材収容部12d3、及び、第2挿通孔12d1は、それぞれ軸A1と同軸的に配置されている。
【0041】
図4の破線にて示すように、軸受部12a1、第1シール部材収容部12a2、及び、第1挿通孔12a3は、それぞれ異なる径長さ■b1,■b2,■c1を有している。径長さ■b1,■b2,■c1の大小関係は、■b1>■b2>■c1である。即ち、リアミッションケース12の後端部12aは、軸受部12a1から後方に向かって、第1シール部材収容部12a2、及び、第1挿通孔12a3に対応する部位にて、段階的な縮径構造となっている。また、第2シール部材収容部12d3、及び、第2挿通孔12d1は、それぞれ異なる径長さ■b3,■c2を有している。径長さ■b3,■c2の大小関係は、■b3>■c2である。即ち、リアミッションケース12のカバー部材12dは、第2シール部材収容部12d3から後方に向かって、第2挿通孔12d1に対応する部位にて、段階的な縮径構造となっている。また、径長さ■b1,■b2,■b3の大小関係は、■b1>■b2>■b3である。径長さ■c1,■c2の大小関係は、■c1>■c2である。即ち、第2挿通孔12d1の開口面積は、第1挿通孔12a3の開口面積よりも小さい。
【0042】
図4及び図5に示すように、ベアリング33は、円筒形状を呈しており、軸受部12a1に篏合されて収容される。収容された状態のベアリング33は、PTO軸32が挿通されて、軸受部位32a1の周りを囲うようになっている。即ち、軸受部12a1の外側が、ベアリング33の内側に対向する。図5の破線にて示すように、ベアリング33は、内径Dd1及び外径De1を有している。内径Dd1は、軸受部位32a1の径長さDa1よりも若干大きく、外径De1は、軸受部12a1の径長さDb1よりも若干小さい。
【0043】
図4及び図5に示すように、第1スリーブ部材34は、円筒形状を呈しており、PTO軸32が挿通されて、第1部位32a2の周りを囲うようになっている。第1スリーブ部材34は、第1部位32a2及び第1挿通孔12a3の間に介装される。より具体的には、第1挿通孔12a3は、PTO軸32が挿通された状態の第1スリーブ部材34の周りを、囲うようになっている。即ち、第1スリーブ部材34の外側が、第1挿通孔12a3の内側に対向し、第1スリーブ部材34の内側が、第1部位32a2の外側に対向する。図5の破線にて示すように、第1スリーブ部材34は、内径Dd2及び外径De2を有している。内径Dd2は、第1部位32a2の径長さDa2よりも若干大きく、外径De2は、第1挿通孔12a3の径長さDc1よりも若干小さい。
【0044】
なお、第1スリーブ部材34は、第1部位32a2の周りを囲うようになっており、第1部位32a2及び第1挿通孔12a3の間に介装されるものであれば、構造・材質等は任意であるが、PTO軸32の回転摺動に対し、実用的な強度を有する構造・材質等を用いることが好適である。
【0045】
図4及び図5に示すように、第1シール部材35は、円筒形状を呈しており、第1シール部材収容部12a2に篏合されて収容される。収容された状態の第1シール部材35は、PTO軸32が挿通された状態の第1スリーブ部材34の周りを、囲うようになっている。即ち、第1スリーブ部材34の外側が、第1シール部材35の内側に対向する。図5の破線にて示すように、第1シール部材35は、内径Dd3及び外径De3を有している。内径Dd3は、第1スリーブ部材34の外径De2よりも若干大きく、外径De3は、第1シール部材収容部12a2の径長さDb2よりも若干小さい。
【0046】
なお、第1シール部材35は、第1スリーブ部材34ごと第1部位32a2の周りを囲うようになっており、第1部位32a2及び第1挿通孔12a3にて形成される間隙をシールするものであれば、構造・材質等は任意であるが、間隙に侵入しようとするオイル、水等に対し、実用的なシール性能を有する構造・材質等を用いることが好適である。
【0047】
図4及び図6に示すように、第2スリーブ部材36は、円筒形状を呈しており、PTO軸32が挿通されて、第2部位32a3の周りを囲うようになっている。カバー部材12dが、リアミッションケース12の後端部12aに装着された状態において、第2スリーブ部材36は、第2部位32a3及び第2挿通孔12d1の間に介装される。より具体的には、第2挿通孔12d1は、PTO軸32が挿通された状態の第2スリーブ部材36の周りを、囲うようになっている。即ち、第2スリーブ部材36の外側が、第2挿通孔12d1の内側に対向し、第2スリーブ部材36の内側が、第2部位32a3の外側に対向する。図6の破線にて示すように、第2スリーブ部材36は、内径Dd4及び外径De4を有している。内径Dd4は、第2部位32a3の径長さDa3よりも若干大きく、外径De4は、第2挿通孔12d1の径長さDc2よりも若干小さい。
【0048】
なお、第2スリーブ部材36は、第2部位32a3の周りを囲うようになっており、第2部位32a3及び第2挿通孔12d1の間に介装されるものであれば、構造・材質等は任意であるが、PTO軸32の回転摺動に対し、実用的な強度を有する構造・材質等を用いることが好適である。
【0049】
図4及び図6に示すように、第2シール部材37は、円筒形状を呈しており、第2シール部材収容部12d3に篏合されて収容される。カバー部材12dが、リアミッションケース12の後端部12aに装着された状態において、収容された状態の第2シール部材37は、PTO軸32が挿通された状態の第2スリーブ部材36の周りを、囲うようになっている。即ち、第2スリーブ部材36の外側が、第2シール部材37の内側に対向する。図6の破線にて示すように、第2シール部材37は、内径Dd5及び外径De5を有している。内径Dd5は、第2スリーブ部材36の外径De4よりも若干大きく、外径De5は、第2シール部材収容部12d3の径長さDb3よりも若干小さい。
【0050】
なお、第2シール部材37は、第2スリーブ部材36ごと第2部位32a3の周りを囲うようになっており、第2部位32a3及び第2挿通孔12d1にて形成される間隙をシールするものであれば、構造・材質等は任意であるが、間隙に侵入しようとするオイル、水等に対し、実用的なシール性能を有する構造・材質等を用いることが好適である。
【0051】
また、後端部12aに装着された状態のカバー部材12dを脱離させる場合には、四隅のボルトを外し、第2挿通孔12d1からPTO軸32を抜去しつつ、カバー部材12dを後端部12aから後方に離間させる。カバー部材12dが脱離された状態において、第2シール部材37、及び、第2スリーブ部材36は、リアミッションケース12の外部にて位置するようになっている。このため、第2シール部材37、及び、第2スリーブ部材36は、カバー部材12dを脱離させることで、リアミッションケース12の外側にて着脱可能となっている。
【0052】
ベアリング33の内径Dd1、第1スリーブ部材34の内径Dd2、第2スリーブ部材36の内径Dd4の大小関係は、Dd1>Dd2>Dd4である。即ち、第2スリーブ部材36の開口面積は、第1スリーブ部材34の開口面積よりも小さい。第1シール部材35の内径Dd3、第2シール部材37の内径Dd5の大小関係は、Dd3>Dd5である。即ち、第2シール部材37の開口面積は、第1シール部材35の開口面積よりも小さい。
【0053】
ベアリング33の外径De1、第1シール部材35の外径De3、第2シール部材37の外径De5の大小関係は、De1>De3>De5である。第1スリーブ部材34の外径De2、第2スリーブ部材36の外径De4の大小関係は、De2>De4である。第1スリーブ部材34の軸方向長さは、第1シール部材35の軸方向長さよりも大きく、第2スリーブ部材36の軸方向長さは、第2シール部材37の軸方向長さよりも大きい。
【0054】
図4に示すように、上述のように構成されたベアリング33、第1スリーブ部材34、第1シール部材35、第2スリーブ部材36、及び、第2シール部材37は、それぞれ軸A1と同軸的に配置されている。特に、第1シール部材35は、第1スリーブ部材34が介装された状態における、第1部位32a2及び第1挿通孔12a3の間隙をシールするようになっている。第2シール部材37は、第2スリーブ部材36が介装された状態における、第2部位32a3及び第2挿通孔12d1の間隙をシールするようになっている。
【0055】
<実施形態の効果>
以上説明したように、本発明の実施形態に係る動力伝達装置100は、PTO軸32、及び、リアミッションケース12(ケース10)を備えている。PTO軸32は、トラクタ1が備える原動機4の動力を、トラクタ1に連結された作業装置に向けて伝達する。軸PTO軸32は、軸A1方向における一端側32aにて原動機4からの動力が入力されたとき、軸A1まわりに回転することで、軸A1方向における他端側32bにて作業装置への動力が出力されるように、構成されている。リアミッションケース12はトラクタ1の後方に備えられ、PTO軸32が挿通可能な第1挿通孔12a3、第2挿通孔12d1を有する。各挿通孔12a3,12d1にPTO軸32が挿通された状態において、PTO軸32が回転可能に各挿通孔12a3,12d1にて周りを囲われつつ、リアミッションケース12は、PTO軸32の一端側32aを内部に収容し、且つ、PTO軸32の他端側32bを外部後方に露出させるように、構成されている。
【0056】
PTO軸32は、径長さDa2を有する第1部位32a2と、径長さDa3を有し第1部位32a2と同軸的に位置する第2部位32a3と、を備えるように構成されている。径長さDa2と径長さDa3とは、異なっている。第1挿通孔12a3は、PTO軸32が挿通された状態において第1部位32a2の周りを囲うように構成され、第2挿通孔12d1は、第2部位32a3の周りを囲い、第1挿通孔12a3と同軸的に位置するように構成されている。
【0057】
一般に、リアミッションケース12においては、PTO軸32の回転を許容するため、PTO軸32周りに間隙が存在する。この間隙は、リアミッションケース12の内部と外部とを連通する通路になり得る。このため、当該通路を介して、ケース内部に存在するオイルが外部に漏出したり、ケース外部に存在する異物(例えば、泥水等)が内部に侵入する事象がある。このような事象を極力抑制することが望まれる。
【0058】
上記構成によれば、第1部位32a2及び第2部位32a3は、互いに異径構造である。第1挿通孔12a3及び第2挿通孔12d1の間において、異径構造を位置させることができるので、リアミッションケース12の内部と外部とを連通する通路を、複雑化できる。従って、例えば、PTO軸が軸方向において何れも同径となるよう構成される場合等に比して、上記連通する通路をより複雑化できるため、当該通路を介して、ケース内部に存在するオイルが外部に漏出したり、ケース外部に存在する異物が内部に侵入することを抑制できる。
【0059】
また、本実施形態においては、PTO軸32の第2部位32a3は、第1部位32a2の径長さDa2よりも小さい径長さDa3を有し、第1部位32a2と隣り合い、且つ、第1部位32a2よりも軸A1方向における他端側32bに位置するように構成されている。リアミッションケース12の第2挿通孔12d1は、第1挿通孔12a3の開口面積よりも小さい開口面積を有するように構成されている。これによれば、第1部位32a2及び第2部位32a3にて段差が形成される。当該段差を利用して、上記連通する通路を容易に複雑化できる。また、第1部位32a2から第2部位32a3に向かう縮径構造に合わせて、各挿通孔12a3,12d1の開口面積も段階的に減少する。このため、第1部位32a2及び第2部位32a3周りの各間隙を、それぞれ適切な大きさとすることができる。
【0060】
また、本実施形態においては、第1シール部材35、及び、第2シール部材37が、備えられている。第1シール部材35は、PTO軸32の第1部位32a2、及び、リアミッションケース12の第1挿通孔12a3にて形成される間隙をシールする。第2シール部材37は、PTO軸32の第2部位32a3、及び、リアミッションケース12の第2挿通孔12d1にて形成される間隙をシールする。これによれば、上記連通する通路において、有効的なシール箇所を2重にシールできる。従って、当該通路を介して、内部に存在するオイルが外部に漏出したり、外部に存在する異物が内部に侵入する事象を、より確実に抑制できる。
【0061】
また、本実施形態においては、第1スリーブ部材34、及び、第2スリーブ部材36が、備えられている。第1スリーブ部材34は、PTO軸32の第1部位32a2の周りを囲い、第1部位32a2及び第1挿通孔12a3の間に介装される。第2スリーブ部材36は、PTO軸32の第2部位32a3の周りを囲い、第2部位32a3及び第2挿通孔12d1の間に介装される。第1シール部材35は、第1スリーブ部材34の周りを囲うように構成され、第2シール部材37は、第2スリーブ部材36の周りを囲うように構成されている。これによれば、第1部位32a2及び第1シール部材35が直接接触することが抑制され、第2部位32a3及び第2シール部材37が直接接触することが抑制される。従って、PTO軸32が回転する際に、摺動摩擦によるPTO軸32の外側の摩耗や、各シール部材35,37の内側の摩耗を抑制できる。これに加え、上記連通する通路には、第1スリーブ部材34及び第2スリーブ部材36が、介在することになる。従って、第1スリーブ部材34及び第2スリーブ部材36を利用して、上記連通する通路を更に複雑化できる。より具体的には、例えば、第1部位32a2及び第2部位32a3にて形成される段差の近傍に、第1スリーブ部材34、第1シール部材35、第2スリーブ部材36、及び、第2シール部材37を配置させることができ、上記連通する通路の構造をラビリンス化できる。
【0062】
また、本実施形態においては、リアミッションケース12は、後端部12aの外側にて着脱可能なカバー部材12dを備えている。リアミッションケース12の第2挿通孔12d1は、カバー部材12d1に設けられ、カバー部材12dが装着された状態において、PTO軸32が挿通されて第2部位32a3の周りを囲い、第1挿通孔12a3と同軸的に位置するように構成されている。第2シール部材37、及び、第2スリーブ部材36は、カバー部材12dが脱離された状態において、リアミッションケース12の外部にて位置するように構成されている。これによれば、カバー部材12dの脱離に応じて、第2シール部材37、及び、第2スリーブ部材36を、リアミッションケース12の外側から着脱することができる。従って、第2シール部材37、及び、第2スリーブ部材36を、適切なタイミングで容易に交換できる。
【0063】
また、本実施形態においては、第2シール部材37は、第1シール部材35の開口面積よりも小さい開口面積を有するように構成されている。第2スリーブ部材36は、第1スリーブ部材34の開口面積よりも小さい開口面積を有するように構成されている。これによれば、第1部位32a2及び第2部位32a3において、径長さDa2>Da3の関係となり、段差が形成される場合であっても、当該段差に応じて各シール部材35,37、各スリーブ部材34,36を適切にフィットさせることができる。
【0064】
<変形例>
上記実施形態においては、PTO軸32は、異径の段付き円柱構造であり、具体的には、第1部位32a2(径長さDa2)と、第2部位32a3(径長さDa3)とが互いに隣り合い、径長さの大小関係が、Da2>Da3となっている。これに代えて、例えば、PTO軸32における径長さの大小関係が、Da2<Da3となっていてもよい。この場合、第1挿通孔12a3(径長さDc1)、第2挿通孔12d1(径長さDc2)、第1スリーブ部材34(内径Dd2、外径De2)、第1シール部材35(内径Dd3、外径De3)、第2スリーブ部材36(内径Dd4、外径De4)、第2シール部材37(内径Dd5、外径De5)において、径長さ及び内外径の大小関係が、Dc1<Dc2,Dd2<Dd4,De2<De4,Dd3<Dd5,De3<De5となっていてもよい。また、第1部位32a2、及び、第2部位32a3が、互いに隣り合う構造に代えて、例えば、第1部位32a2、及び、第2部位32a3が、軸A1方向において互いに離間するようになっていてもよい。この場合、第1部位32a2、及び、第2部位32a3の間に、これらを接続する部位が介在していればよく、当該部位の態様は任意である。
【0065】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0066】
1 :トラクタ
4 :原動機
10 :ケース
11 :フロントミッションケース
12 :リアミッションケース
12a :後端部
12a2 :第1シール部材収容部
12a3 :第1挿通孔
12a4 :カバー部材収容部
12d :カバー部材
12d1 :第2挿通孔
12d2 :突出部
12d3 :第1シール部材収容部
20 :走行系ミッション
21 :フライホイール
22a :第1入力シャフト
22b :第2入力シャフト
30 :PTO系ミッション
31 :PTOギヤシャフト
32 :PTO軸
32a :一端側
32a2 :第1部位
32a3 :第2部位
32b :他端側
34 :第1スリーブ部材
35 :第1シール部材
36 :第2スリーブ部材
37 :第2シール部材
100 :動力伝達装置
A1 :軸
Da2 :径長さ
Da3 :径長さ
Dc1 :径長さ
Dc2 :径長さ
Dd2 :内径
Dd3 :内径
Dd4 :内径
Dd5 :内径
De2 :外径
De3 :外径
De4 :外径
De5 :外径
図1
図2
図3
図4
図5
図6