(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093823
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
B60K 17/08 20060101AFI20240702BHJP
B60K 17/28 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B60K17/08 C
B60K17/28 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210407
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松田 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤井 敬太
【テーマコード(参考)】
3D039
3D043
【Fターム(参考)】
3D039AA04
3D039AB12
3D039AC37
3D039AC40
3D039AC64
3D039AD53
3D043AA06
3D043AB12
3D043BA06
3D043BC02
3D043BC05
3D043BC11
(57)【要約】
【課題】 各シャフト、及び、当該各シャフトに付随するギヤ・軸受け等を、ケース内部においてコンパクトに収容できる、動力伝達装置を提供する
【解決手段】 動力伝達装置100の主変速機構31は、主変速駆動シャフト31a、主変速従動シャフト31b、第1主変速ギヤ31c、第2主変速ギヤ31eを備える。副変速機構32は、副変速駆動シャフト32a、副変速従動シャフト32b、第1副変速ギヤ32c、第2副変速ギヤ32dを備える。入力シャフト23,24、主変速従動シャフト31b、第2主変速ギヤ31e、副変速駆動シャフト32a、第1副変速ギヤ32cは、第1軸A1と同軸配置される。主変速駆動シャフト31a、第1主変速ギヤ31cは、第2軸A2と同軸配置される。副変速従動シャフト32b、第2副変速ギヤ32dは、第3軸A3と同軸配置される。第2軸A2、第3軸A3は、第1軸A1の下側に位置する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸と同軸的に配置され、前記第1軸における第1方向側から、走行車両が備える原動機からの動力を入力可能に構成されて、前記原動機からの動力が入力されたとき、前記第1軸まわりに回転する入力シャフトと、
前記入力シャフトにおいて前記第1方向とは反対の第2方向側に配置され、前記入力シャフトと一体回転可能に構成されて、前記入力シャフトが回転したとき、前記第1軸まわりに回転する第1入力ギヤと、
前記第1軸から前記第1方向及び前記第2方向のそれぞれに直交する第3方向側に位置する第2軸であって、前記第1軸と平行な第2軸と同軸的に配置され、前記第1入力ギヤと噛合うように構成されて、前記第1入力ギヤが回転したときに、前記第2軸まわりに回転する第2入力ギヤと、
前記第2入力ギヤからの動力を入力可能に、且つ、前記入力された動力を変速可能に構成され、変速後の動力を出力する主変速機構と、
前記主変速機構から出力された動力を入力可能に、且つ、前記入力された動力を変速可能に構成され、変速後の動力を出力する副変速機構と、
前記走行車両に配置され、前記入力シャフト、前記第1入力ギヤ、前記第2入力ギヤ、前記主変速機構、及び、前記副変速機構を内部に収容するケースと、
を備えた動力伝達装置において、
前記主変速機構は、
前記第2軸と同軸的に配置され、前記第2軸における前記第1方向側から、前記第2入力ギヤからの動力を入力可能に構成されて、前記第2入力ギヤの動力が入力されたとき、前記第2軸まわりに回転する主変速駆動シャフトと、
前記第2軸と同軸的に配置され、前記主変速駆動シャフトと一体回転可能に構成されて、前記主変速駆動シャフトが回転したとき、前記第2軸まわりに回転する第1主変速ギヤと、
前記第1軸と同軸的に配置され、前記第1主変速ギヤと噛合うように構成されて、前記第1主変速ギヤが回転したときに、前記第1軸まわりに回転する第2主変速ギヤと、
前記第1軸と同軸的に配置され、前記第2主変速ギヤと一体回転可能に構成されて、前記第2主変速ギヤが回転したとき、前記第1軸まわりに回転するとともに、前記第2主変速ギヤよりも前記第2方向側に動力を出力する主変速従動シャフトと、
を備えるように構成され、
前記副変速機構は、
前記第1軸と同軸的に配置され、前記第1軸における前記第1方向側から、前記主変速従動シャフトからの動力を入力可能に構成されて、前記主変速従動シャフトの動力が入力されたとき、前記第1軸まわりに回転する副変速駆動シャフトと、
前記第1軸と同軸的に配置され、前記副変速駆動シャフトと一体回転可能に構成されて、前記副変速駆動シャフトが回転したとき、前記第1軸まわりに回転する第1副変速ギヤと、
前記第1軸から前記第3方向側に位置する第3軸であって、前記第1軸及び前記第2軸と平行な第3軸と同軸的に配置され、前記第1副変速ギヤと噛合うように構成されて、前記第1副変速ギヤが回転したときに、前記第3軸まわりに回転する第2副変速ギヤと、
前記第3軸と同軸的に配置され、前記第2副変速ギヤと一体回転可能に構成されて、前記第2副変速ギヤが回転したとき、前記第3軸まわりに回転するとともに、前記第2副変速ギヤよりも前記第2方向側に動力を出力する副変速従動シャフトと、
を備えるように構成された
動力伝達装置。
【請求項2】
請求項1に記載の動力伝達装置において、
前記第2入力ギヤは、
前記主変速駆動シャフトにおける前記第1方向側の端部に、動力を入力するように構成された
動力伝達装置。
【請求項3】
請求項2に記載の動力伝達装置において、
前記ケースは、
内部空間を、前記第1方向側の空間、及び、前記第2方向側の空間として区画する隔壁部であって、前記第1軸と同軸的に配置された第1挿通孔と、前記第2軸と同軸的に配置された第2挿通孔と、を有する隔壁部を備え、
前記主変速従動シャフトは、
前記第1方向側の端部が前記隔壁部の前記第1挿通孔に篏合され、前記隔壁部に対して相対回転可能となるように配置され、
前記主変速駆動シャフトは、
前記隔壁部の前記第2挿通孔に篏合され、前記第1方向側の端部が前記隔壁部に区画される前記第1方向側の空間に位置するとともに、前記隔壁部に対して相対回転可能となるように配置され、
前記第2入力ギヤは、
前記隔壁部に区画される前記第1方向側の空間に配置され、
前記第1主変速ギヤ、及び、前記第2主変速ギヤは、
前記隔壁部に区画される前記第2方向側の空間に配置された
動力伝達装置。
【請求項4】
請求項3に記載の動力伝達装置において、
前記第1主変速ギヤは、
少なくとも4個のギヤで構成され、前記構成の各ギヤは、それぞれ異なる歯数を有するとともに前記第2軸と同軸的に配置され、前記各ギヤのうちから選択される1つのみが、前記主変速駆動シャフトと一体的に回転するように構成され、
前記第2主変速ギヤは、
前記第1主変速ギヤの個数と同数個のギヤで構成され、前記構成の各ギヤは、前記第1軸と同軸的に配置され、前記第1主変速ギヤの各ギヤとそれぞれ噛合うように構成された
動力伝達装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の動力伝達装置において、
前記ケースは、
前記第3軸の前記第1方向側にて前記副変速従動シャフトを回転可能に軸支する第1軸受部と、
前記第3軸の前記第2方向側にて前記副変速従動シャフトを回転可能に軸支する第2軸受部と、
を更に備え、
前記第2副変速ギヤは、
前記第1軸受部、及び、前記第2軸受部の間に配置された
動力伝達装置。
【請求項6】
請求項5に記載の動力伝達装置において、
前記第2副変速ギヤは、
少なくとも4個のギヤで構成され、前記構成の各ギヤは、それぞれ異なる歯数を有するとともに前記第3軸と同軸的に配置され、前記各ギヤのうちから選択される1つのみが、前記副変速従動シャフトと一体的に回転するように構成され、
前記第1副変速ギヤは、
前記第2主変速ギヤの個数と同数個のギヤで構成され、前記構成の各ギヤは、前記第1軸と同軸的に配置され、前記第2副変速ギヤの各ギヤとそれぞれ噛合うように構成された
動力伝達装置。
【請求項7】
請求項6に記載の動力伝達装置において、
前記走行車両は、
前記第1方向側に前輪を備えるとともに、前記第2方向側に後輪を備え、
前記副変速従動シャフトは、
前記第2副変速ギヤを構成する各ギヤよりも、前記第2方向側にて動力を出力し、前記出力された動力が、前記後輪の回転力に変換されるよう伝達されるのに加え、前記第2副変速ギヤを構成する各ギヤのうち、隣り合う2つのギヤの間から動力を出力し、前記出力された動力が、前記前輪の回転力に変換されるよう伝達されるように構成された
動力伝達装置。
【請求項8】
請求項1に記載の動力伝達装置において、
前記第1軸と同軸的に配置され、前記第1軸における第1方向側から、前記原動機からの動力を入力可能に構成されて、前記原動機からの動力が入力されたとき、前記第1軸まわりに回転する第1PTO入力シャフトと、
2個のギヤで構成され、前記構成の各ギヤは、それぞれ前記第1軸と同軸的に配置され、前記第1PTO入力シャフトと一体回転可能に構成されて、前記第1PTO入力シャフトが回転したとき、前記第1軸まわりに回転する第1PTOギヤと、
2個のギヤで構成され、前記構成の各ギヤは、それぞれ前記第1軸及び前記第3軸と平行な第4軸と同軸的に配置され、前記2個のギヤのうちの一方と前記第1PTOギヤのうちの一方とが噛合うように構成されて、前記第1PTOギヤが回転したときに、前記第4軸まわりに回転する第2PTOギヤと、
前記第4軸と同軸的に配置され、前記第2PTOギヤと一体回転可能に構成されて、前記第2PTOギヤが回転したとき、前記第4軸まわりに回転する第2PTO入力シャフトと、
前記第3軸と同軸的に配置され、前記第3軸における前記第1方向側が前記ケースの内部に収容されつつ、前記第3軸における前記第2方向側が前記ケースの外部に突出し、前記第3軸まわりに回転することで、前記走行車両に連結される作業装置に向けて動力を出力するよう構成されたPTO出力シャフトと、
2個のギヤで構成され、前記構成の各ギヤは、それぞれ前記第1PTOギヤのうちの他方、及び、前記第2PTOギヤのうちの他方と噛合うとともに前記第3軸と同軸的に配置され、前記各ギヤのうちから選択される1つのみが、前記PTO出力シャフトと一体的に回転するように構成された第3PTOギヤと、
を更に備えた
動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原動機の動力を伝達するための動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原動機の動力を伝達するための動力伝達装置として、例えば、特許文献1に示す装置が知られている。この装置は、ミッションケース、走行系ミッション、PTO(Power Take Off)系ミッション等を備えている。ミッションケースに収容された走行系ミッションは、主変速機構、及び、副変速機構を備えている。原動機からの動力は、主変速機構に入力されて変速される。主変速機構にて変速された動力は、副変速機構に入力されて、更に変速される。このように、原動機からの動力は、主変速機構、及び、副変速機構を経て変速されて、走行車両の車輪に向けて伝達されるようになっている。これにより、走行車両を適切に走行させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-97742号公報(
図1等)
【発明の概要】
【0004】
上記特許文献1の装置では、原動機からの動力は、シャフト(以下、「入力シャフト」と、称呼することもある)を介して、主変速機構に入力されるようになっている。当該入力シャフトは、ミッションケースの前後方向に延びるように、配置されている。主変速機構、及び、副変速機構がそれぞれ備える各シャフトは、上記入力シャフトと平行に配置されている。主変速機構、及び、副変速機構においては、各シャフトに付随してギヤ・軸受け等が、構成要素として備えられている。主変速機構、及び、副変速機構の構成要素は、上記入力シャフトに対して、それぞれ異なる方向に位置している。即ち、各シャフト、及び、当該各シャフトに付随するギヤ・軸受け等が、入力シャフトの軸を中心に、種々方向に分散して配置されている。上記特許文献1の装置においては、走行系ミッションをケース内部にてコンパクトに収容する観点で、改善の余地が大きい。
【0005】
そこで、本発明は、上記に鑑み、各シャフト、及び、当該各シャフトに付随するギヤ・軸受け等を、ケース内部においてコンパクトに収容できる、動力伝達装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この技術的課題を解決するための本発明の技術的手段は、以下に示す点を特徴とする。本発明の動力伝達装置は、第1軸と同軸的に配置され、前記第1軸における第1方向側から、走行車両が備える原動機からの動力を入力可能に構成されて、前記原動機からの動力が入力されたとき、前記第1軸まわりに回転する入力シャフトと、前記入力シャフトにおいて前記第1方向とは反対の第2方向側に配置され、前記入力シャフトと一体回転可能に構成されて、前記入力シャフトが回転したとき、前記第1軸まわりに回転する第1入力ギヤと、前記第1軸から前記第1方向及び前記第2方向のそれぞれに直交する第3方向側に位置する第2軸であって、前記第1軸と平行な第2軸と同軸的に配置され、前記第1入力ギヤと噛合うように構成されて、前記第1入力ギヤが回転したときに、前記第2軸まわりに回転する第2入力ギヤと、前記第2入力ギヤからの動力を入力可能に、且つ、前記入力された動力を変速可能に構成され、変速後の動力を出力する主変速機構と、前記主変速機構から出力された動力を入力可能に、且つ、前記入力された動力を変速可能に構成され、変速後の動力を出力する副変速機構と、前記走行車両に配置され、前記入力シャフト、前記第1入力ギヤ、前記第2入力ギヤ、前記主変速機構、及び、前記副変速機構を内部に収容するケースと、を備え、前記主変速機構は、前記第2軸と同軸的に配置され、前記第2軸における前記第1方向側から、前記第2入力ギヤからの動力を入力可能に構成されて、前記第2入力ギヤの動力が入力されたとき、前記第2軸まわりに回転する主変速駆動シャフトと、前記第2軸と同軸的に配置され、前記主変速駆動シャフトと一体回転可能に構成されて、前記主変速駆動シャフトが回転したとき、前記第2軸まわりに回転する第1主変速ギヤと、前記第1軸と同軸的に配置され、前記第1主変速ギヤと噛合うように構成されて、前記第1主変速ギヤが回転したときに、前記第1軸まわりに回転する第2主変速ギヤと、前記第1軸と同軸的に配置され、前記第2主変速ギヤと一体回転可能に構成されて、前記第2主変速ギヤが回転したとき、前記第1軸まわりに回転するとともに、前記第2主変速ギヤよりも前記第2方向側に動力を出力する主変速従動シャフトと、を備えるように構成され、前記副変速機構は、前記第1軸と同軸的に配置され、前記第1軸における前記第1方向側から、前記主変速従動シャフトからの動力を入力可能に構成されて、前記主変速従動シャフトの動力が入力されたとき、前記第1軸まわりに回転する副変速駆動シャフトと、前記第1軸と同軸的に配置され、前記副変速駆動シャフトと一体回転可能に構成されて、前記副変速駆動シャフトが回転したとき、前記第1軸まわりに回転する第1副変速ギヤと、前記第1軸から前記第3方向側に位置する第3軸であって、前記第1軸及び前記第2軸と平行な第3軸と同軸的に配置され、前記第1副変速ギヤと噛合うように構成されて、前記第1副変速ギヤが回転したときに、前記第3軸まわりに回転する第2副変速ギヤと、前記第3軸と同軸的に配置され、前記第2副変速ギヤと一体回転可能に構成されて、前記第2副変速ギヤが回転したとき、前記第3軸まわりに回転するとともに、前記第2副変速ギヤよりも前記第2方向側に動力を出力する副変速従動シャフトと、を備えるように構成される。
【0007】
本発明の動力伝達装置において、前記第2入力ギヤは、前記主変速駆動シャフトにおける前記第1方向側の端部に、動力を入力するように構成される。
【0008】
本発明の動力伝達装置において、前記ケースは、内部空間を、前記第1方向側の空間、及び、前記第2方向側の空間として区画する隔壁部であって、前記第1軸と同軸的に配置された第1挿通孔と、前記第2軸と同軸的に配置された第2挿通孔と、を有する隔壁部を備え、前記主変速従動シャフトは、前記第1方向側の端部が前記隔壁部の前記第1挿通孔に篏合され、前記隔壁部に対して相対回転可能となるように配置され、前記主変速駆動シャフトは、前記隔壁部の前記第2挿通孔に篏合され、前記第1方向側の端部が前記隔壁部に区画される前記第1方向側の空間に位置するとともに、前記隔壁部に対して相対回転可能となるように配置され、前記第2入力ギヤは、前記隔壁部に区画される前記第1方向側の空間に配置され、前記第1主変速ギヤ、及び、前記第2主変速ギヤは、前記隔壁部に区画される前記第2方向側の空間に配置される。
【0009】
本発明の動力伝達装置において、前記第1主変速ギヤは、少なくとも4個のギヤで構成され、前記構成の各ギヤは、それぞれ異なる歯数を有するとともに前記第2軸と同軸的に配置され、前記各ギヤのうちから選択される1つのみが、前記主変速駆動シャフトと一体的に回転するように構成され、前記第2主変速ギヤは、前記第1主変速ギヤの個数と同数個のギヤで構成され、前記構成の各ギヤは、前記第1軸と同軸的に配置され、前記第1主変速ギヤの各ギヤとそれぞれ噛合うように構成される。
【0010】
本発明の動力伝達装置において、前記ケースは、前記第3軸の前記第1方向側にて前記副変速従動シャフトを回転可能に軸支する第1軸受部と、前記第3軸の前記第2方向側にて前記副変速従動シャフトを回転可能に軸支する第2軸受部と、を更に備え、前記第2副変速ギヤは、前記第1軸受部、及び、前記第2軸受部の間に配置される。
【0011】
本発明の動力伝達装置において、前記第2副変速ギヤは、少なくとも4個のギヤで構成され、前記構成の各ギヤは、それぞれ異なる歯数を有するとともに前記第3軸と同軸的に配置され、前記各ギヤのうちから選択される1つのみが、前記副変速従動シャフトと一体的に回転するように構成され、前記第1副変速ギヤは、前記第2主変速ギヤの個数と同数個のギヤで構成され、前記構成の各ギヤは、前記第1軸と同軸的に配置され、前記第2副変速ギヤの各ギヤとそれぞれ噛合うように構成される。
【0012】
本発明の動力伝達装置において、前記走行車両は、前記第1方向側に前輪を備えるとともに、前記第2方向側に後輪を備え、前記副変速従動シャフトは、前記第2副変速ギヤを構成する各ギヤよりも、前記第2方向側にて動力を出力し、前記出力された動力が、前記後輪の回転力に変換されるよう伝達されるのに加え、前記第2副変速ギヤを構成する各ギヤのうち、隣り合う2つのギヤの間から動力を出力し、前記出力された動力が、前記前輪の回転力に変換されるよう伝達されるように構成される。
【0013】
本発明の動力伝達装置において、前記第1軸と同軸的に配置され、前記第1軸における第1方向側から、前記原動機からの動力を入力可能に構成されて、前記原動機からの動力が入力されたとき、前記第1軸まわりに回転する第1PTO入力シャフトと、2個のギヤで構成され、前記構成の各ギヤは、それぞれ前記第1軸と同軸的に配置され、前記第1PTO入力シャフトと一体回転可能に構成されて、前記第1PTO入力シャフトが回転したとき、前記第1軸まわりに回転する第1PTOギヤと、2個のギヤで構成され、前記構成の各ギヤは、それぞれ前記第1軸及び前記第3軸と平行な第4軸と同軸的に配置され、前記2個のギヤのうちの一方と前記第1PTOギヤのうちの一方とが噛合うように構成されて、前記第1PTOギヤが回転したときに、前記第4軸まわりに回転する第2PTOギヤと、前記第4軸と同軸的に配置され、前記第2PTOギヤと一体回転可能に構成されて、前記第2PTOギヤが回転したとき、前記第4軸まわりに回転する第2PTO入力シャフトと、前記第3軸と同軸的に配置され、前記第3軸における前記第1方向側が前記ケースの内部に収容されつつ、前記第3軸における前記第2方向側が前記ケースの外部に突出し、前記第3軸まわりに回転することで、前記走行車両に連結される作業装置に向けて動力を出力するよう構成されたPTO出力シャフトと、2個のギヤで構成され、前記構成の各ギヤは、それぞれ前記第1PTOギヤのうちの他方、及び、前記第2PTOギヤのうちの他方と噛合うとともに前記第3軸と同軸的に配置され、前記各ギヤのうちから選択される1つのみが、前記PTO出力シャフトと一体的に回転するように構成された第3PTOギヤと、が更に備えられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、各シャフト、及び、当該各シャフトに付随するギヤ・軸受け等を、第1軸上、及び、第1軸に対し同方向側に集中させて、ケース内部においてコンパクトに収容できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る動力伝達装置が適用されるトラクタの全体概略図である。
【
図4】
図1に示す動力伝達装置が備える動力入力機構近傍の拡大断面図である。
【
図5】
図1に示す動力伝達装置が備える主変速機構近傍の拡大断面図である。
【
図6】
図1に示す動力伝達装置が備える副変速機構近傍の拡大断面図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る動力伝達装置が備えるPTO系ミッションの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る動力伝達装置100が適用されるトラクタ1の全体概略図である。
図2は、動力伝達装置100の後端部を含むトラクタ1の後方斜視図である。各図中に適宜示される矢印の左・右、上・下、前・後は、それぞれ左方向・右方向、上方向・下方向、前方向・後方向に対応している。なお、本実施形態では、走行車両としてトラクタ1を用いているが、動力伝達装置100を適用可能なものであれば、トラクタに限定されない。
【0018】
<トラクタの全体概略>
図1及び
図2に示すように、トラクタ1は、前輪2、後輪3、原動機4、油圧昇降装置5、及び、動力伝達装置100を、備えている。前輪2及び後輪3は、それぞれの車軸の左右端部に接続され、左右一対となるよう設けられている。即ち、本実施形態のトラクタ1は、2軸4車輪型である。原動機4は、例えば、ディーゼルエンジン等の駆動源であり、トラクタ1の機体前部に設けられている。原動機4の後部には、動力伝達装置100が設けられており、原動機4にて発生する動力を、動力伝達装置100に入力可能となっている。入力された動力は、動力伝達装置100での変速を経て、後輪3(又は、前輪2及び後輪3)の車軸や、作業装置を作動するためのPTO出力シャフト42へ伝達される。なお、動力伝達装置100の構成については、後に詳述する。
【0019】
図2に示すように、油圧昇降装置5は、トラクタ1において動力伝達装置100の後部上側に、設けられている。油圧昇降装置5は、左右に1本ずつリフトアーム5aを備えており、各リフトアーム5aの端部は、それぞれ後方へ突出している。油圧昇降装置5では、例えば、運転者のレバー操作によるスプール変位で油圧が制御され、リフトアーム5aの後端部が、上下揺動するようになっている。リフトアーム5aの後端部、及び、3点リンク(図示せず)を介して、図示しない作業装置が、油圧昇降装置5に連結可能となっている。即ち、当該作業装置は、トラクタ1の後端に連結されるようになっている。
【0020】
トラクタ1の後端においては、PTO出力シャフト42が、動力伝達装置100のリアミッションケース12から露出しつつ後方へ突出している。作業装置がトラクタ1に連結されている状態において、後方に突出するPTO出力シャフト42の後端側が作業装置に接続され、PTO出力シャフト42は、作業装置に向けて原動機4の動力を伝達可能となっている。作業装置は、例えば、ロータリ耕耘機等であるが、走行車両に連結されて、PTO出力シャフト42から動力伝達されて駆動するものであれば、種類や態様は限定されない。
【0021】
図1に示すように、左右後輪3それぞれの上面近傍を覆う各フェンダー3aの間であって、左右方向の略中央部において、運転席1aが設けられている。運転席1aの前部には、操舵ハンドル1bが配置されている。また、運転席1aの周辺には、各種操作レバー、各種ペダル、各種スイッチ等も配置されている。これらは、運転者が運転席1aに着座した状態において、運転者により操作可能となっている。このように構成されることで、前輪2の操舵、原動機4の回転数制御、動力伝達装置100における変速や前後進の切替、リフトアーム5aの昇降、PTOのON/OFFなどが、運転者により実行されるようになっている。
【0022】
<動力伝達装置の構成>
図3に示すように、動力伝達装置100は、ケース10、及び、ケース10に内蔵される動力入力機構20、各ミッション等を備えている。ケース10は、前後方向に延びるようトラクタ1に備えられ、前側のフロントミッションケース11、及び、その後部に連設されるリアミッションケース12にて構成されている。また、ケース10の内壁には、内部空間を区画する隔壁や、各シャフトを軸支するための軸受けが、立設されている。
【0023】
動力伝達装置100においては、第1方向、第2方向、及び、第3方向が、規定される。本実施形態においては、第1方向は、前方向である。第2方向は、第1方向と反対側の方向であり、本実施形態においては、後方向である。第3方向は、第1方向及び第2方向のそれぞれに直交する方向であり、本実施形態においては、下方向である。
【0024】
動力伝達装置100においては、第1軸A1、第2軸A2、及び、第3軸A3が、規定される。第1軸A1は、前後方向に平行な軸である。第2軸A2は、第1軸A1と平行な軸であり、第1軸A1よりも下側(第3方向側)に位置している。第3軸A3は、第1軸A1及び第2軸A2と平行な軸であり、第1軸A1よりも下側(第3方向側)に位置している。第3軸A3は、第2軸A2よりも、若干上側に位置している。
【0025】
<<動力入力機構>>
図3に示すように、フロントミッションケース11の前側は、前端部11aにて閉塞されており、前端部11aよりも後側の区画壁11bにて、区画されている。区画壁11bは、前後方向の板厚を有し、上下左右方向に延びる平板形状を呈している。動力入力機構20は、フライホイール21、クラッチ22、第1入力シャフト23、第2入力シャフト24、第1入力ギヤ25、及び、第2入力ギヤ26を備えている。フライホイール21、及び、クラッチ22は、区画壁11bにて区画される前側の空間に、収容されている。第1入力ギヤ25、及び、第2入力ギヤ26は、区画壁11bの後側に、位置している。第1入力シャフト23、及び、第2入力シャフト24は、区画壁11bの貫通孔を貫通するよう、第1軸A1と同軸的に前側から後側へ延伸している。
【0026】
フライホイール21は、前端部11a内壁に対向するように、第1軸A1と同軸的に配置されている。フライホイール21は、原動機4の作動に応じて第1軸A1まわりに回転し、原動機4のトルク変動を抑制可能となっている。本実施形態においては、フライホイール21は、後述する各ミッションの動力伝達における上流端となっている。クラッチ22は、フライホイール21の後側に固設されており、フライホイール21と同じ空間に収容されている。クラッチ22は、フライホイール21からの動力を、第2入力シャフト24の前側から入力可能となっている。
【0027】
図3、及び、
図4に示すように、第1入力シャフト23の前端部は、フライホイール21の中心に接続されており、フライホイール21と一体回転可能となっている。第2入力シャフト24は、中空構造を呈しており、その内部に第1入力シャフト23が嵌入されている。径方向内側の第1入力シャフト23と、径方向外側の第2入力シャフト24とは、相対回転可能となっている。第1入力シャフト23、及び、第2入力シャフト24は、原動機4からの動力が、フライホイール21、及び、クラッチ22を介して入力されたとき、第1軸A1まわりに回転するようになっている。
【0028】
区画壁11bの後側には、隔壁部11cが設けられている。隔壁部11cは、区隔壁11bと平行に配置されており、前後方向の板厚を有し、上下左右方向に延びる平板形状を呈している。隔壁部11cは、フロントミッションケース11の内部を、前側の空間、及び、後側の空間として区画する。本実施形態では、隔壁部11cに区画される前側の空間には、動力入力機構20が配置されている。
【0029】
隔壁部11cは、第1軸A1と同軸的に配置された第1挿通孔11c1と、第2軸A2と同軸的に配置された第2挿通孔11c2と、を備えている。区画壁11bを貫通する第1入力シャフト23は、第1挿通孔11c1に挿通されて、隔壁部11cの後側の空間に延出している。第2入力シャフト24は、第1入力シャフト23のまわりを囲いつつ区画壁11bを貫通し、隔壁部11cまで延びている。第2入力シャフト24の後端は、第1挿通孔11c1の前側にて、ベアリングを介して軸支されている。
【0030】
第2入力シャフト24の後側であって、区隔壁11bの後側かつ隔壁部11cの前側における空間には、第1入力ギヤ25が配置されている。第1入力ギヤ25は、第1軸A1と同軸的に配置されている。第1入力ギヤ25は、第2入力シャフト24と一体回転可能に構成されて、第2入力シャフト24が回転したとき、第1軸A1まわりに回転するようになっている。
【0031】
区隔壁11bの後側かつ隔壁部11cの前側における空間には、第2入力ギヤ26が配置されている。第2入力ギヤ26は、第2軸A2と同軸的に配置されている。第2入力ギヤ26は、本実施形態においては、スプラインギヤであり、円筒形のボスギヤ26a、及び、スプラインシャフト26bを有している。ボスギヤ26aは、その外歯が第1入力ギヤ25と噛合うように、第2軸A2と同軸的に配置されている。スプラインシャフト26bは、ボスギヤ26aに嵌入されており、ボスギヤ26aの内歯とスプラインシャフト26bのギヤ部が、互いに噛合うようになっている。
【0032】
スプラインシャフト26bの前端部は、区隔壁11bの後側における凹部において、ベアリングを介して軸支されている。スプラインシャフト26bの後端部は、第2挿通孔11c2の前側にて、ベアリングを介して軸支されている。また、主変速駆動シャフト31aは、第2挿通孔11c2に篏合され、第2挿通孔11c2の後側のベアリングを介して、隔壁部11cと相対回転可能に軸支されている。主変速駆動シャフト31aの前端部は、隔壁部11cの前側の空間に位置している。スプラインシャフト26bの後端部は、主変速駆動シャフト31aの前端部と篏合しており、スプラインシャフト26b及び主変速駆動シャフト31aは、一体回転可能となっている。
【0033】
第2入力シャフト24が回転すると、第1入力ギヤ25は第1軸A1まわりに一体的に回転し、
ボスギヤ26a、スプラインシャフト26b、主変速駆動シャフト31aも、第2軸A2まわりに一体的に回転する。このように、第2入力ギヤ26は、主変速駆動シャフト31aにおける前側端部に、動力を入力するように構成されている。即ち、第2入力シャフト24の動力は、第1入力ギヤ25、及び、第2入力ギヤ26のそれぞれの歯数に応じて変速されて、主変速駆動シャフト31aに入力されるようになっている。
【0034】
<<主変速機構>>
図3に示すように、隔壁部11cに区画される後側の空間には、各ミッションが配置されている。各ミッションは、各種の軸、ギア等をそれぞれ有しており、走行系ミッション30、及び、PTO系ミッション40にて構成されている。走行系ミッション30はフロントミッションケース11に内蔵されており、PTO系ミッション40は、走行系ミッション30の後側に配置され、リアミッションケース12に内蔵されている。走行系ミッション30は、主変速機構31、副変速機構32、プロペラシャフト33、及び、ギヤシャフト34,35を備えている。
【0035】
図3、及び、
図5に示すように、主変速機構31は、主変速駆動シャフト31a、主変速従動シャフト31b、第1主変速ギヤ31c、主変速シフタ31d、及び、第2主変速ギヤ31eを備えている。主変速駆動シャフト31aは、第2軸A2と同軸的に配置され、前端部から第2入力ギヤ26からの動力を入力可能に構成されている。主変速駆動シャフト31aは、第2入力ギヤ26からの動力が入力されたとき、第2軸A2まわりに回転するようになっている。
【0036】
主変速駆動シャフト31aは、第2挿通孔11c2に篏合され、その前端部は、隔壁部11cに区画される前側の空間に位置するとともに、隔壁部11cに対して相対回転可能となるように配置されている(
図4を参照)。主変速駆動シャフト31aの前端近傍は、第2挿通孔11c2の後側にて、ベアリングを介して軸支されている。主変速駆動シャフト31aの後端は、軸受部11dにてベアリングを介して軸支されている。軸受部11dは、隔壁部11cよりも後側であって、副変速機構32よりも前側に配置されている。
【0037】
主変速従動シャフト31bは、第1軸A1と同軸的に配置され、第2主変速ギヤ31eと一体回転可能に構成される。主変速従動シャフト31bは、第2主変速ギヤ31eが回転したとき、第1軸A1まわりに回転するとともに、第2主変速ギヤ31eよりも後側に動力を出力するようになっている。
【0038】
主変速従動シャフト31bは、中空構造を呈しており、その内部に第1入力シャフト23が嵌入されている。径方向内側の第1入力シャフト23と、径方向外側の主変速従動シャフト31bとは、相対回転可能となっている。主変速従動シャフト31bの前端は、隔壁部11cの第1挿通孔11c1に篏合され、隔壁部11cに対して相対回転可能となるように配置されている(
図4を参照)。主変速従動シャフト31bの前端は、第1挿通孔11c1の後側にて、ベアリングを介して軸支されている。主変速従動シャフト31bの後端近傍は、軸受部11eにてベアリングを介して軸支されている。軸受部11eは、隔壁部11cよりも後側であって、副変速機構32よりも前側に配置されている。
【0039】
図5に示すように、第1主変速ギヤ31cは、4個のギヤ31c1,31c2,31c3,31c4で構成されている。各ギヤ31c1~31c4は、それぞれ円筒形状を呈しており、内部に主変速駆動シャフト31aが篏合され、外側面に外歯を有するようになっている。当該外歯における歯数は、各ギヤ31c1~31c4において、それぞれ異なっている。本実施形態では、ギヤ31c1の歯数>ギヤ31c2の歯数>ギヤ31c3の歯数>ギヤ31c4の歯数の関係となっている。4個のギヤ31c1,31c2,31c3,31c4は、隔壁部11c及び軸受部11dの間において、この順序にて前から後に向かって並列しており、第2軸A2と同軸的にそれぞれ配置されている。
【0040】
各ギヤ31c1~31c4は、主変速駆動シャフト31aと相対回転可能となっており、後述する主変速シフタ31dの作動によって、各ギヤ31c1~31c4のうちから選択される1つのみが、主変速駆動シャフト31aと一体的に回転するように構成されている。なお、本実施形態では、第1主変速ギヤ31cの個数が4個であるが、それ以上の個数で構成されるようにしてもよい。
【0041】
主変速シフタ31dは、2個のシフタ31d1,31d2で構成されている。各シフタ31d1,31d2は、それぞれ円筒形状を呈しており、内部に主変速駆動シャフト31aが篏合されている。シフタ31d1は、ギヤ31c1,31c2の間に配置され、シフタ31d2は、ギヤ31c3,31c4の間に配置され、第2軸A2と同軸的にそれぞれ配置されている。各シフタ31d1,31d2は、運転者のレバー操作に応じて、中立位置から前後何れかの方向へ変位可能となっている。各シフタ31d1,31d2が、中立位置から前後に変位したときには、各シフタ31d1,31d2と隣り合う各ギヤ31c1~31c4は、変位したシフタ31d1,31d2に係合されて、主変速駆動シャフト31aに固定されるようになっている。
【0042】
本実施形態では、主変速機構31は4段階の変速機能を有している。ニュートラル状態においては、各シフタ31d1,31d2はそれぞれ中立位置に位置しており、主変速駆動シャフト31aは、各ギヤ31c1~31c4に対し相対回転する。即ち、主変速駆動シャフト31a、及び、各ギヤ31c1~31c4の間においては、動力が伝達されない。この状態から、運転者の操作により主変速機構31の第1速が選択された場合、シフタ31d1の位置は、中立位置となるよう維持されつつ、シフタ31d2は、中立位置から後方へ変位する。後方へ変位したシフタ31d2は、ギヤ31c4を主変速駆動シャフト31aに固定する。これにより、各ギヤ31c1~31c4のうち、ギヤ31c4のみが主変速駆動シャフト31aと一体的に回転し、その他のギヤ31c1,31c2,31c3は、主変速駆動シャフト31aと相対回転する。
【0043】
変速段が第1速である状態から、運転者の操作により第2速が選択された場合、シフタ31d1の位置は、中立位置となるよう維持されつつ、シフタ31d2は、後方から中立位置を経て前方へ変位する。前方へ変位したシフタ31d2は、ギヤ31c4に代えてギヤ31c3を主変速駆動シャフト31aに固定する。これにより、各ギヤ31c1~31c4のうち、ギヤ31c3のみが主変速駆動シャフト31aと一体的に回転し、その他のギヤ31c1,31c2,31c4は、主変速駆動シャフト31aと相対回転する。
【0044】
変速段が第2速である状態から、運転者の操作により第3速が選択された場合、シフタ31d1は、中立位置から後方へ変位しつつ、シフタ31d2は、前方から中立位置へ変位する。後方へ変位したシフタ31d1は、ギヤ31c2を主変速駆動シャフト31aに固定する。これにより、各ギヤ31c1~31c4のうち、ギヤ31c2のみが主変速駆動シャフト31aと一体的に回転し、その他のギヤ31c1,31c3,31c4は、主変速駆動シャフト31aと相対回転する。
【0045】
変速段が第3速である状態から、運転者の操作により第4速が選択された場合、シフタ31d1は、後方から中立位置を経て前方へ変位しつつ、シフタ31d2の位置は、中立位置となるよう維持される。前方へ変位したシフタ31d1は、ギヤ31c2に代えてギヤ31c1を主変速駆動シャフト31aに固定する。これにより、各ギヤ31c1~31c4のうち、ギヤ31c1のみが主変速駆動シャフト31aと一体的に回転し、その他のギヤ31c2,31c3,31c4は、主変速駆動シャフト31aと相対回転する。
【0046】
第2主変速ギヤ31eは、4個のギヤ31e1,31e2,31e3,31e4で構成されている。各ギヤ31e1~31e4は、それぞれ円筒形状を呈しており、内壁面が主変速従動シャフト31bの外側面と接続され、各ギヤ31e1~31e4の外側面に外歯を有するようになっている。当該外歯における歯数は、各ギヤ31e1~31e4において、それぞれ異なっている。本実施形態では、ギヤ31e4の歯数>ギヤ31e3の歯数>ギヤ31e2の歯数>ギヤ31e1の歯数の関係となっている。4個のギヤ31e1,31e2,31e3,31e4は、隔壁部11c及び軸受部11eの間において、この順序にて前から後に向かって並列しており、第1軸A1と同軸的にそれぞれ配置されている。
【0047】
各ギヤ31e1~31e4は、主変速従動シャフト31bと一体的に回転可能となっており、各ギヤ31c1~31c4と噛合うようになっている。ギヤ31e1,31c1、ギヤ31e2,31c2、ギヤ31e3,31c3、ギヤ31e4,31c4、がそれぞれ常時噛合うようになっている。なお、本実施形態では、第2主変速ギヤ31eの個数が4個であるが、第1主変速ギヤ31cの個数と同数個であれば、それ以上の個数で構成されるようにしてもよい。
【0048】
変速段が第1速である場合には、ギヤ31c4のみが主変速駆動シャフト31aと一体的に回転し、当該ギヤ31c4と噛合うギヤ31e4は、主変速従動シャフト31bと一体的に回転する。ギヤ31e1,31e2,31e3も、主変速従動シャフト31bと一体的に回転し、当該ギヤ31e1,31e2,31e3とそれぞれ噛合うギヤ31c1,31c2,31c3は、主変速駆動シャフト31aと相対回転する。
【0049】
変速段が第2速である場合には、ギヤ31c3のみが主変速駆動シャフト31aと一体的に回転し、当該ギヤ31c3と噛合うギヤ31e3は、主変速従動シャフト31bと一体的に回転する。ギヤ31e1,31e2,31e4も、主変速従動シャフト31bと一体的に回転し、当該ギヤ31e1,31e2,31e4とそれぞれ噛合うギヤ31c1,31c2,31c4は、主変速駆動シャフト31aと相対回転する。
【0050】
変速段が第3速である場合には、ギヤ31c2のみが主変速駆動シャフト31aと一体的に回転し、当該ギヤ31c2と噛合うギヤ31e2は、主変速従動シャフト31bと一体的に回転する。ギヤ31e1,31e3,31e4も、主変速従動シャフト31bと一体的に回転し、当該ギヤ31e1,31e3,31e4とそれぞれ噛合うギヤ31c1,31c3,31c4は、主変速駆動シャフト31aと相対回転する。
【0051】
変速段が第4速である場合には、ギヤ31c1のみが主変速駆動シャフト31aと一体的に回転し、当該ギヤ31c1と噛合うギヤ31e1は、主変速従動シャフト31bと一体的に回転する。ギヤ31e2,31e3,31e4も、主変速従動シャフト31bと一体的に回転し、当該ギヤ31e2,31e3,31e4とそれぞれ噛合うギヤ31c2,31c3,31c4は、主変速駆動シャフト31aと相対回転する。
【0052】
このように、主変速駆動シャフト31aの動力は、第1速、第2速、第3速、及び、第4速に対応する組合せのギヤ31c4,31e4、ギヤ31c3,31e3、ギヤ31c2,31e2、及び、ギヤ31c1,31e1のそれぞれの歯数に応じて変速される。変速後の動力は、主変速従動シャフト31bの第2主変速ギヤ31eよりも後側に出力される。当該出力される動力は、副変速機構32の副変速駆動シャフト32aの前端部に、入力されるようになっている。
【0053】
<<副変速機構>>
図3、及び、
図6に示すように、副変速機構32は、副変速駆動シャフト32a、副変速従動シャフト32b、第1副変速ギヤ32c、第2副変速ギヤ32d、及び、副変速シフタ32eを備えている。副変速駆動シャフト32aは、第1軸A1と同軸的に配置され、第1副変速ギヤ32cと一体回転可能に構成される。副変速駆動シャフト32aは、第1軸A1における前側から、主変速従動シャフト31bからの動力を入力可能に構成されている。副変速駆動シャフト32aは、主変速従動シャフト31bの動力が入力されたとき、第1軸A1まわりに回転するようになっている。
【0054】
副変速駆動シャフト32aは、中空構造を呈しており、その内部に第1入力シャフト23が嵌入されている。径方向内側の第1入力シャフト23と、径方向外側の副変速駆動シャフト32aとは、相対回転可能となっている。副変速駆動シャフト32aの前端近傍は、軸受部11fにてベアリングを介して軸支されている。軸受部11fは、軸受部11eよりも後側に配置されている。副変速駆動シャフト32aの前端、及び、主変速従動シャフト31bの後端は、軸受部11e及び軸受部11fの間に位置しており、カップリングを介して互いに接続されている。これにより、副変速駆動シャフト32a、及び、第1副変速ギヤ32cは、主変速従動シャフト31bと一体的に回転可能となっている。副変速駆動シャフト32aの後端近傍は、軸受部11gにてベアリングを介して軸支されている。軸受部11gは、後輪3のデフ装置3bよりも前側に配置されている。
【0055】
副変速従動シャフト32bは、第3軸A3と同軸的に配置され、第2副変速ギヤ32dと一体回転可能に構成されている。第2副変速ギヤ32dが回転したとき、第3軸A3まわりに回転するとともに、第2副変速ギヤ32dよりも後側におけるデフ装置3bに、動力を出力するようになっている。
【0056】
図6に示すように、第1副変速ギヤ32cは、4個のギヤ32c1,32c2,32c3,32c4で構成されている。各ギヤ32c1~32c4は、それぞれ円筒形状を呈しており、内壁面が副変速駆動シャフト32aの外側面と接続され、各ギヤ32c1~32c4の外側面に外歯を有するようになっている。当該外歯における歯数は、各ギヤ32c1~32c4において、それぞれ異なっている。本実施形態では、ギヤ32c1の歯数>ギヤ32c4の歯数>ギヤ31c3の歯数>ギヤ31c2の歯数の関係となっている。4個のギヤ32c1,32c2,32c3,32c4は、軸受部11g及び軸受部11fの間において、この順序にて前から後に向かって並列しており、第1軸A1と同軸的にそれぞれ配置されている。各ギヤ32c1~32c4は、副変速駆動シャフト32aと一体的に回転可能となっている。なお、本実施形態では、第1副変速ギヤ32cの個数が4個であるが、それ以上の個数で構成されるようにしてもよい。
【0057】
また、走行系ミッション30には、ギヤシャフト34が備えられており、ギヤシャフト34は、第1軸A1,第2軸A2,第3軸A3とそれぞれ平行かつ異軸な軸に、同軸的に配置されている。ギヤシャフト34と一体的に回転可能なギヤ34aは、第1副変速ギヤ32cのうちのギヤ32c3のみと、噛合うようになっている。このため、ギヤ32c3が回転したとき、ギヤ34aは、ギヤシャフト34と一体的に回転するようになっている。
【0058】
また、ケース10は、第1軸受部11h、及び、第2軸受部11iを備えている。第1軸受部11hは、第3軸A3の前側にて、副変速従動シャフト32bを回転可能に軸支する。第2軸受部11iは、第3軸A3の後側にて、副変速従動シャフト32bを回転可能に軸支する。より具体的には、副変速従動シャフト32bの前端は、ベアリングを介して第1軸受部11hに軸支され、副変速従動シャフト32bの後端は、ベアリングを介して第2軸受部11iに軸支されている。第1軸受部11hは、軸受部11dよりも後側に配置されている。第2軸受部11iは、後輪3のデフ装置3bよりも前側に配置されている。
【0059】
第2副変速ギヤ32dは、4個のギヤ32d1,32d2,32d3,32d4で構成されている。各ギヤ32d1~32d4は、それぞれ円筒形状を呈しており、内部に副変速従動シャフト32bが篏合され、外側面に外歯を有するようになっている。当該外歯における歯数は、各ギヤ32d1~31d4において、それぞれ異なっている。本実施形態では、ギヤ32d2の歯数>ギヤ32d4の歯数>ギヤ32d3の歯数>ギヤ32d1の歯数の関係となっている。4個のギヤ32d1,32d2,32d3,32d4は、第1軸受部11h及び第2軸受部11iの間において、この順序にて前から後に向かって並列しており、第3軸A3と同軸的にそれぞれ配置されている。
【0060】
各ギヤ32d1~32d4は、副変速従動シャフト32bと相対回転可能となっており、各ギヤ32c1~32c4と噛合うようになっている。ギヤ32d1,32c1、ギヤ32d2,32c2、ギヤ32d3,32c3、ギヤ32d4,32c4、がそれぞれ常時噛合うようになっている。なお、ギヤ32d3,32c3のみは、ギヤシャフト34のギヤ34aを介して、間接的に■合うようになっている。各ギヤ32d1~32d4は、後述する副変速シフタ32eの作動によって、各ギヤ32d1~32d4のうちから選択される1つのみが、副変速従動シャフト32bと一体的に回転するように構成されている。なお、本実施形態では、第2副変速ギヤ32dの個数が4個であるが、第1副変速ギヤ32cの個数と同数個であれば、それ以上の個数で構成されるようにしてもよい。
【0061】
副変速シフタ32eは、2個のシフタ32e1,32e2で構成されている。各シフタ32e1,32e2は、それぞれ円筒形状を呈しており、内部に副変速従動シャフト32bが篏合されている。シフタ32e1は、ギヤ32d1,32d2の間に配置され、シフタ32e2は、ギヤ32d3,32d4の間に配置され、第3軸A3と同軸的にそれぞれ配置されている。各シフタ32e1,32e2は、運転者のレバー操作に応じて、中立位置から前後何れかの方向へ変位可能となっている。各シフタ32e1,32e2が、中立位置から前後に変位したときには、各シフタ32e1,32e2と隣り合う各ギヤ31d1~31d4は、変位したシフタ32e1,32e2に係合されて、副変速従動シャフト32bに固定されるようになっている。
【0062】
本実施形態では、副変速機構32は4段階の変速機能を有している。ニュートラル状態においては、各シフタ32e1,32e2はそれぞれ中立位置に位置しており、副変速従動シャフト32bは、各ギヤ32d1~32d4に対し相対回転する。即ち、副変速従動シャフト32b、及び、各ギヤ32d1~32d4の間においては、動力が伝達されない。この状態から、運転者の操作により副変速機構32の低速が選択された場合、シフタ32e2の位置は、中立位置となるよう維持されつつ、シフタ32e1は、中立位置から後方へ変位する。後方へ変位したシフタ32e1は、ギヤ31c2を副変速従動シャフト32bに固定する。これにより、各ギヤ32d1~32d4のうち、ギヤ32d2のみが副変速従動シャフト32bと一体的に回転し、その他のギヤ32d1,32d3,32d4は、副変速従動シャフト32bと相対回転する。
【0063】
変速段が低速である状態から、運転者の操作により中速が選択された場合、シフタ32e2は、中立位置から後方へ変位しつつ、シフタ32e1は、後方から中立位置へ変位する。後方へ変位したシフタ32e2は、ギヤ32d4を副変速従動シャフト32bに固定する。これにより、各ギヤ32d1~32d4のうち、ギヤ32d4のみが副変速従動シャフト32bと一体的に回転し、その他のギヤ32d1,32d2,32d3は、副変速従動シャフト32bと相対回転する。
【0064】
変速段が中速である状態から、運転者の操作により高速が選択された場合、シフタ32e2は、後方から中立位置へ変位しつつ、シフタ32e1は、中立位置から前方へ変位する。前方へ変位したシフタ32e1は、ギヤ32d1を副変速従動シャフト32bに固定する。これにより、各ギヤ32d1~32d4のうち、ギヤ32d1のみが副変速従動シャフト32bと一体的に回転し、その他のギヤ32d2,32d3,32d4は、副変速従動シャフト32bと相対回転する。
【0065】
変速段が低~高速のうち何れかである状態から、運転者の操作によりリバースが選択された場合、後方又は中立位置にあったシフタ32e2は、前方へ変位しつつ、前後方又は中立位置にあったシフタ32e1は、中立位置へ変位するか、中立位置に維持される。前方へ変位したシフタ32e2は、ギヤ32d3を副変速従動シャフト32bに固定する。これにより、各ギヤ32d1~32d4のうち、ギヤ32d3のみが副変速従動シャフト32bと一体的に回転し、その他のギヤ32d1,32d2,32d4は、副変速従動シャフト32bと相対回転する。
【0066】
変速段が低速である場合には、ギヤ32d2のみが副変速従動シャフト32bと一体的に回転し、当該ギヤ32d2と噛合うギヤ32c2は、副変速駆動シャフト32aと一体的に回転する。ギヤ32c1,32c3,32c4も、副変速駆動シャフト32aと一体的に回転し、当該ギヤ32c1,32c3,32c4とそれぞれ噛合うギヤ32d1,32d3,32d4は、副変速従動シャフト32bと相対回転する。なお、ギヤ32d3のみ、ギヤシャフト34のギヤ34aを介して間接的にギヤ32c3と噛合うため、ギヤ32d1,32d4の回転方向と逆方向に相対回転する。
【0067】
変速段が中速である場合には、ギヤ32d4のみが副変速従動シャフト32bと一体的に回転し、当該ギヤ32d4と噛合うギヤ32c4は、副変速駆動シャフト32aと一体的に回転する。ギヤ32c1,32c2,32c3も、副変速駆動シャフト32aと一体的に回転し、当該ギヤ32c1,32c2,32c3とそれぞれ噛合うギヤ32d1,32d2,32d3は、副変速従動シャフト32bと相対回転する。この場合も、ギヤ32d3のみ、ギヤ32d1,32d2の回転方向と逆方向に相対回転する。
【0068】
変速段が高速である場合には、ギヤ32d1のみが副変速従動シャフト32bと一体的に回転し、当該ギヤ32d1と噛合うギヤ32c1は、副変速駆動シャフト32aと一体的に回転する。ギヤ32c2,32c3,32c4も、副変速駆動シャフト32aと一体的に回転し、当該ギヤ32c2,32c3,32c4とそれぞれ噛合うギヤ32d2,32d3,32d4は、副変速従動シャフト32bと相対回転する。この場合も、ギヤ32d3のみ、ギヤ32d2,32d4の回転方向と逆方向に相対回転する。
【0069】
変速段がリバースである場合には、ギヤ32d3のみが副変速従動シャフト32bと一体的に回転し、当該ギヤ32d3とギヤ34aを介して噛合うギヤ32c3は、副変速駆動シャフト32aと一体的に回転する。ギヤ32c1,32c2,32c4も、副変速駆動シャフト32aと一体的に回転し、当該ギヤ32c1,32c2,32c4とそれぞれ噛合うギヤ32d1,32d2,32d4は、副変速従動シャフト32bと相対回転する。この場合、副変速従動シャフト32bは、変速段が低~高速である場合における回転方向とは逆方向に回転する。
【0070】
このように、副変速駆動シャフト32aの動力は、低速、中速、高速、及び、リバースに対応する組合せのギヤ32c2,32d2、ギヤ32c4,32d4、ギヤ32c1,32d1、及び、ギヤ32c3,32d3(及び、34a)のそれぞれの歯数に応じて変速される。変速後の動力は、副変速従動シャフト32bの第2副変速ギヤ32dよりも後側に出力される。当該出力される動力は、後輪3のデフ装置3bに入力されて、後輪3の回転力に変換されるよう伝達される。変速段が低~高速である場合、副変速従動シャフト32bは一方向に回転し、後輪3が前進方向に回転駆動する。一方、変速段がリバースである場合、副変速従動シャフト32bは逆方向に回転し、後輪3が後進方向に回転駆動する。
【0071】
また、走行系ミッション30には、プロペラシャフト33が備えられており、プロペラシャフト33は、第1軸A1,第2軸A2,第3軸A3とそれぞれ平行かつ異軸な軸に、同軸的に配置されている。プロペラシャフト33の後端側には、一体的に回転可能なギヤ33aが設けられている。ギヤ33aの前側には、シフタ33bが設けられている。シフタ33bは、運転者の操作に応じて、ギヤ33aをプロペラシャフト33に固定し、又は、プロペラシャフト33から切り離すようになっている。プロペラシャフト33の前端側は、前輪2に向けて動力を出力するようになっている。
【0072】
また、走行系ミッション30には、ギヤシャフト35が備えられており、ギヤシャフト35は、第1軸A1,第2軸A2,第3軸A3とそれぞれ平行かつ異軸な軸に、同軸的に配置されている。ギヤシャフト35と一体的に回転可能なギヤ35aは、プロペラシャフト33のギヤ33aと、噛合うようになっている。
【0073】
副変速従動シャフト32bにおいては、隣り合うギヤ32d2,32d3の間において、ギヤ32fが設けられている。ギヤ32fは、第3軸A3と同軸的に配置されており、副変速従動シャフト32bと一体的に回転可能となっている。ギヤ32fは、ギヤシャフト35のギヤ35aと噛合うようになっている。即ち、副変速従動シャフト32bが回転すると、ギヤ32fが一体的に回転し、ギヤ35aを介して、プロペラシャフト33のギヤ33aが回転する。
【0074】
シフタ33bにより、ギヤ33aがプロペラシャフト33に固定されている場合、副変速機構32の変速段が低~高速である場合において、副変速従動シャフト32bは一方向に回転し、プロペラシャフト33も、ギヤ33aと一体的に一方向に回転する。これにより、前輪2が前進方向に回転駆動する。また、副変速機構32の変速段がリバースである場合においては、副変速従動シャフト32bは逆方向に回転し、プロペラシャフト33も、ギヤ33aと一体的に逆方向に回転する。これにより、前輪2が後進方向に回転駆動する。即ち、4輪駆動にて、変速の切替、及び、前後進の切替を実行できる。
【0075】
このように、副変速従動シャフト32bにおいては、第2副変速ギヤ32dを構成する各ギヤよりも後側にて動力を出力し、出力された動力が、後輪3の回転力に変換されるよう伝達される。これに加え、第2副変速ギヤ32dを構成する各ギヤのうち、隣り合う2つのギヤ32d2,32d3の間から動力を出力し、出力された動力が、前輪2の回転力に変換されるよう伝達される。
【0076】
他方、シフタ33bにより、ギヤ33aがプロペラシャフト33から切り離されている場合、副変速機構32の変速段が何れである場合においても、副変速従動シャフト32bの回転に伴って、ギヤ33aは、プロペラシャフト33に対し相対回転する。これにより、前輪2には動力が伝達されず、後輪3のみに動力が伝達される。即ち、2輪駆動にて、変速の切替、及び、前後進の切替を実行できる。
【0077】
以上ように、動力伝達装置100においては、原動機4の動力は、動力入力機構20、及び、走行系ミッション30の主変速機構31及び副変速機構32のそれぞれにおける変速を経て、後輪3のみ、又は、前輪2及び後輪3に伝達される。
【0078】
<<PTO系ミッション>>
図3に示すように、PTO系ミッション40は、リアミッションケース12に収容されており、第1PTO入力シャフト41、第1PTOギヤ41a,41b、PTO出力シャフト42、PTO出力ギヤ42a,42b、及び、PTOシフタ42cを備えている。
【0079】
リアミッションケース12において、その後端部12aは略平板状に構成されており、後方からのボルト締結により閉塞されている。第1PTO入力シャフト41の後端は、後端部12aの内壁にてベアリングを介して軸受けされている。第1PTO入力シャフト41は、第1軸A1と同軸的に配置されており、後端部12aから前方に向け、軸受部12bを貫通するように延伸している。軸受部12bは、後端部12aよりも前側であって、後輪3のデフ装置3bよりも後側に位置している。第1PTO入力シャフト41の前端は、カップリングを介して第1入力シャフト23の後端と接続されている。これにより、第1PTO入力シャフト41は、第1入力シャフト23と一体的に、第1軸A1まわりに回転可能となっている。即ち、第1PTO入力シャフト41は、第1軸A1における前側から、第1入力シャフト23を介して、原動機4からの動力を入力可能に構成されている。原動機4からの動力が入力されたとき、第1軸まわりに回転するようになっている。
【0080】
第1PTOギヤ41a,41bは、2個のギヤで構成され、各ギヤ41a,41bは、それぞれ第1軸A1と同軸的に配置されている。第1PTOギヤ41a,41bは、第1PTO入力シャフト41と一体回転可能に構成されている。第1PTOギヤ41a,41bは、第1PTO入力シャフト41が回転したとき、第1軸A1まわりに回転するようになっている。
【0081】
第1PTOギヤ41a,41bは、それぞれ円筒形状を呈しており、内壁面が第1PTO入力シャフト41の外側面と接続され、各ギヤ41a,41bの外側面に外歯を有するようになっている。当該外歯における歯数は、各ギヤ41a,41bにおいて、それぞれ異なっている。本実施形態では、ギヤ41aの歯数>ギヤ41bの歯数の関係となっている。2個のギヤ41a,41bは、後端部12a及び軸受部12bの間において、この順序にて後から前に向かって並列している。
【0082】
PTO出力シャフト42は、第3軸A3と同軸的に配置されており、PTO出力シャフト42の第3軸A3における前側は、リアミッションケース12の内部に収容されている。PTO出力シャフト42の前端は、軸受部12cにてベアリングを介して軸支されている。軸受部12cは、後端部12aよりも前側であって、後輪3のデフ装置3bよりも後側に位置している。PTO出力シャフト42の第3軸A3における後側は、後端部12aの挿通孔12a1を介して、リアミッションケース12の外部後方に突出している。当該挿通孔12a1にPTO出力シャフト42が挿通された状態において、PTO出力シャフト42は第3軸A3まわりに回転可能となっている。PTO出力シャフト42は、第3軸A3まわりに回転することで、トラクタ1に連結される作業装置に向けて、動力を出力するようになっている。
【0083】
PTO出力ギヤ42a,42bは、2個のギヤで構成され、各ギヤ42a,42bは、それぞれ第1PTOギヤ41a,41bと噛合うように、第3軸A3と同軸的に配置されている。PTO出力ギヤ42a,42bは、後述するPTOシフタ42cの作動により、各ギヤ42a,42bのうちから選択される1つのみが、PTO出力シャフト42と一体的に回転するように構成されている。
【0084】
PTO出力ギヤ42a,42bは、それぞれ円筒形状を呈しており、内部にPTO出力シャフト42が篏合され、外側面に外歯を有するようになっている。当該外歯における歯数は、各ギヤ42a,42bにおいて、それぞれ異なっている。本実施形態では、ギヤ42bの歯数>ギヤ42aの歯数の関係となっている。2個のギヤ42a,42bは、後端部12a及び軸受部12cの間において、この順序にて後から前に向かって並列している。
【0085】
PTOシフタ42cは、円筒形状を呈しており、内部にPTO出力シャフト42が篏合されている。PTOシフタ42cは、PTO出力ギヤ42a,42bの間に配置され、第3軸A3と同軸的に配置されている。PTOシフタ42cは、運転者のレバー操作に応じて、中立位置から前後何れかの方向へ変位可能となっている。PTOシフタ42cが、中立位置から前後に変位したときには、PTOシフタ42cと隣り合うPTO出力ギヤ42a,42bは、変位したPTOシフタ42cに係合されて、PTO出力シャフト42に固定されるようになっている。
【0086】
本実施形態では、PTO系ミッション40は2段階の変速機能を有している。ニュートラル状態においては、PTOシフタ42cは中立位置に位置しており、PTO出力シャフト42は、PTO出力ギヤ42a,42bに対し相対回転する。即ち、PTO出力シャフト42、及び、PTO出力ギヤ42a,42bの間においては、動力が伝達されない。この状態から、運転者の操作によりPTO系ミッション40の低速が選択された場合、PTOシフタ42cは、中立位置から前方へ変位する。前方へ変位したPTOシフタ42cは、PTO出力ギヤ42bをPTO出力シャフト42に固定する。これにより、PTO出力ギヤ42a,42bのうち、ギヤ42bのみがPTO出力シャフト42と一体的に回転し、その他のギヤ42aは、PTO出力シャフト42と相対回転する。
【0087】
変速段が低速である状態から、運転者の操作により高速が選択された場合、PTOシフタ42cは、前方から中立位置を経て後方へ変位する。後方へ変位したPTOシフタ42cは、PTO出力ギヤ42aをPTO出力シャフト42に固定する。これにより、PTO出力ギヤ42a,42bのうち、ギヤ42aのみがPTO出力シャフト42と一体的に回転し、その他のギヤ42bは、PTO出力シャフト42と相対回転する。
【0088】
変速段が低速である場合には、PTO出力ギヤ42bのみがPTO出力シャフト42と一体的に回転し、当該ギヤ42bと噛合う第1PTOギヤ41bは、第1PTO入力シャフト41と一体的に回転する。第1PTOギヤ41aも、第1PTO入力シャフト41と一体的に回転し、当該ギヤ41aと噛合うPTO出力ギヤ42aは、PTO出力シャフト42と相対回転する。
【0089】
変速段が高速である場合には、PTO出力ギヤ42aのみがPTO出力シャフト42と一体的に回転し、当該ギヤ42aと噛合う第1PTOギヤ41aは、第1PTO入力シャフト41と一体的に回転する。第1PTOギヤ41bも、第1PTO入力シャフト41と一体的に回転し、当該ギヤ41bと噛合うPTO出力ギヤ42bは、PTO出力シャフト42と相対回転する。
【0090】
このように、第1PTO入力シャフト41の動力は、低速、及び、高速に対応する組合せのギヤ41b,42b、及び、ギヤ41a,42aのそれぞれの歯数に応じて変速される。変速後の動力は、PTO出力シャフト42のPTO出力ギヤ42a,42bよりも後側に出力される。当該出力される動力は、トラクタ1に連結された作業装置に入力されて、作業装置の駆動力に変換されるよう伝達される。変速段が低速、及び、高速の何れであっても、PTO出力シャフト42は一方向に回転する。
【0091】
以上ように、動力伝達装置100においては、原動機4の動力は、PTO系ミッション40における変速を経て、PTO出力シャフト42を介して作業装置に伝達される。
【0092】
<実施形態の効果>
以上説明したように、本発明の第1実施形態に係る動力伝達装置100は、第1入力シャフト23、第2入力シャフト24、第1入力ギヤ25、第2入力ギヤ26、主変速機構31、副変速機構32、及び、ケース10を備えている。主変速機構31は、主変速駆動シャフト31a、主変速従動シャフト31b、第1主変速ギヤ31c、及び、第2主変速ギヤ31eを備えている。主変速駆動シャフト31aは、第2軸A2と同軸的に配置され、第2軸A2における前側(第1方向側)から、第2入力ギヤ26からの動力を入力可能に構成されている。主変速駆動シャフト31aは、第2入力ギヤ26の動力が入力されたとき、第2軸A2まわりに回転する。第1主変速ギヤ31cは、第2軸A2と同軸的に配置され、主変速駆動シャフト31aと一体回転可能に構成されている。第1主変速ギヤ31cは、主変速駆動シャフト31aが回転したとき、第2軸A2まわりに回転する。第2主変速ギヤ31eは、第1軸A1と同軸的に配置され、第1主変速ギヤ31cと噛合うように構成されている。第2主変速ギヤ31eは、第1主変速ギヤ31cが回転したときに、第1軸A1まわりに回転する。主変速従動シャフト31bは、第1軸A1と同軸的に配置され、第2主変速ギヤ31eと一体回転可能に構成されている。主変速従動シャフト31bは、第2主変速ギヤ31eが回転したとき、第1軸A1まわりに回転するとともに、第2主変速ギヤ31eよりも後側(第2方向側)に動力を出力する。
【0093】
副変速機構32は、副変速駆動シャフト32a、副変速従動シャフト32b、第1副変速ギヤ32c、及び、第2副変速ギヤ32dを備えている。副変速駆動シャフト32aは、第1軸A1と同軸的に配置され、第1軸A1における前側(第1方向側)から、主変速従動シャフト31bからの動力を入力可能に構成されている。副変速駆動シャフト32aは、主変速従動シャフト31bの動力が入力されたとき、第1軸A1まわりに回転する。第1副変速ギヤ32cは、第1軸A1と同軸的に配置され、副変速駆動シャフト32aと一体回転可能に構成されている。第1副変速ギヤ32cは、副変速駆動シャフト32aが回転したとき、第1軸A1まわりに回転する。第2副変速ギヤ32dは、第3軸A3と同軸的に配置され、第1副変速ギヤ32cと噛合うように構成されている。第2副変速ギヤ32dは、第1副変速ギヤ32cが回転したときに、第3軸A3まわりに回転する。副変速従動シャフト32bは、第3軸A3と同軸的に配置され、第2副変速ギヤ32dと一体回転可能に構成されている。副変速従動シャフト32bは、第2副変速ギヤ32dが回転したとき、第3軸A3まわりに回転するとともに、第2副変速ギヤ32dよりも後側(第2方向側)に動力を出力する。
【0094】
上記構成によれば、主変速従動シャフト31b、及び、副変速駆動シャフト32aが、第1軸A1と同軸的に配置される。主変速駆動シャフト31aは、第1軸A1よりも下側(第3方向側)の第2軸A2と同軸的に配置される。副変速従動シャフト32bは、第1軸A1よりも下側(第3方向側)の第3軸A3と同軸的に配置される。即ち、主変速駆動シャフト31a、及び、副変速従動シャフト32bは、第1軸A1に対して同方向側に位置する。このため、各シャフト、及び、当該各シャフトに付随するギヤ・軸受け等を、第1軸A1上、及び、第1軸A1に対し同方向側に配置できる。
【0095】
例えば、従来技術では、主変速機構、及び、副変速機構の構成要素が、第1軸A1に対して、それぞれ異なる方向に位置し、各シャフト、及び、当該各シャフトに付随するギヤ・軸受け等が、第1軸A1を中心に、種々方向に分散して配置されている場合がある。これに対し、本発明の第1実施形態によれば、各シャフト、及び、当該各シャフトに付随するギヤ・軸受け等を、第1軸A1上、及び、第1軸A1に対し同方向側に集中させて、ケース10内部においてコンパクトに収容できる。
【0096】
また、本発明の第1実施形態においては、第2入力ギヤ26は、主変速駆動シャフト31aにおける前側の端部に、動力を入力するように構成されている。具体的には、スプラインシャフト26bが、主変速駆動シャフト31aの前端部に篏合されるようになっている。
【0097】
上記構成によれば、主変速駆動シャフト31aにおいて、第2軸A2方向に亘って第1主変速ギヤ31cが設けられていたとしても、第2入力ギヤ26を簡易に付加できる。従って、主変速機構31の構成を大幅に変更することなく、主変速機構31に入力する動力の変速を、容易に調整することができる。例えば、動力伝達装置100と連設される原動機4について、種々の出力を有するバリエーションが展開される場合であっても、上述のように構成された第2入力ギヤ26により、主変速機構31の構成を大幅に変更することなく、原動機4の出力に適した変速度合いを実現できる。また、主変速機構31、及び、副変速機構32に加えて、第1入力ギヤ25、及び、第2入力ギヤ26により、全体として更に減速させることができる。
【0098】
また、本発明の第1実施形態においては、ケース10は、内部空間を、前側の空間及び後側の空間として区画する隔壁部11cを備えている。隔壁部11cは、第1軸A1と同軸的に配置された第1挿通孔11c1と、第2軸A2と同軸的に配置された第2挿通孔11c2と、を有する。主変速従動シャフト31bは、その前端部が第1挿通孔11c1に篏合され、隔壁部11cに対して相対回転可能となるように配置されている。主変速駆動シャフト31aは、第2挿通孔11c2に篏合され、前端部が隔壁部11cに区画される前側の空間に位置するとともに、隔壁部11cに対して相対回転可能となるように配置されている。第2入力ギヤ26は、隔壁部11cに区画される前側の空間に配置され、第1主変速ギヤ31c、及び、第2主変速ギヤ31eは、隔壁部11cに区画される後側の空間に配置されている。
【0099】
上記構成によれば、第1主変速ギヤ31c、及び、第2主変速ギヤ31eを、隔壁部11cの後側の空間に収容した状態で、隔壁部11cの前側から、主変速駆動シャフト31aの前端に第2入力ギヤ26を付加することができる。従って、主変速機構31の収容空間において、入力ギヤ用のスペースを確保する必要がなくなる。また、第1挿通孔11c1、及び、第2挿通孔11c2により、主変速従動シャフト31b、及び、主変速駆動シャフト31aがそれぞれ軸支されるため、主変速機構31の収容空間において、新たに軸受けを設ける必要がなくなる。即ち、隔壁部11cは、区画壁と軸受けとを、兼ねることができる。以上より、主変速機構31を、コンパクトに収容できる。
【0100】
また、本発明の第1実施形態においては、第1主変速ギヤ31cは、4個のギヤ31c1,31c2,31c3,31c4で構成され、各ギヤ31c1,31c2,31c3,31c4は、それぞれ異なる歯数を有するとともに第2軸A2と同軸的に配置されている。第1主変速ギヤ31cは、各ギヤ31c1~31c4のうちから選択される1つのみが、主変速駆動シャフト31aと一体的に回転するように構成されている。第2主変速ギヤ31eは、第1主変速ギヤ31cの個数と同数個のギヤで構成され、各ギヤ31e1,31e2,31e3,31e4は、第1軸A1と同軸的に配置されている。第2主変速ギヤ31eは、第1主変速ギヤ31cの各ギヤ31c1~31c4とそれぞれ噛合うように構成されている。
【0101】
上記構成によれば、主変速機構31がコンパクトに収容されつつ、主変速機構31での変速段数を多くすることができる。従って、トラクタ1の走行において、細やかな変速切替を実現できる。
【0102】
また、本発明の第1実施形態においては、ケース10(フロントミッションケース11)は、第1軸受部11h、及び、第2軸受部11iを備えている。第1軸受部11hは、第3軸A3の前側にて副変速従動シャフト32bを回転可能に軸支する。第2軸受部11iは、第3軸A3の後側にて副変速従動シャフト32bを回転可能に軸支する。第2副変速ギヤ32dは、第1軸受部11h、及び、第2軸受部11iの間に配置されている。
【0103】
上記構成によれば、第2副変速ギヤ32dを、副変速従動シャフト32b両端の各軸受の間に配置できるため、所謂両持ち構造とすることができる。例えば、第1軸受部11hよりも前側、又は、第2軸受部11iよりも後側にギヤを配置する場合、所謂片持ち構造となる。当該片持ち構造である場合に比して、上述した両持ち構造とすることで、第2副変速ギヤ32dにおける信頼性を向上できる。更に、第2副変速ギヤ32dが副変速従動シャフト32bに対して傾く所謂ギヤ倒れを抑制でき、騒音を低減することができる。
【0104】
また、本発明の第1実施形態においては、第2副変速ギヤ32dは、4個のギヤ32d1,32d2,32d3,32d4で構成され、各ギヤ32d1,32d2,32d3,32d4は、それぞれ異なる歯数を有するとともに、第3軸A3と同軸的に配置されている。第2副変速ギヤ32dは、各ギヤ32d1~32d4のうちから選択される1つのみが、副変速従動シャフト32bと一体的に回転するように構成されている。第1副変速ギヤ32cは、第2主変速ギヤ32dの個数と同数個のギヤで構成され、各ギヤ32c1,32c2,32c3,32c4は、第1軸A1と同軸的に配置されている。第1副変速ギヤ32cは、第2副変速ギヤ32dの各ギヤ32d1~32d4とそれぞれ噛合うように構成されている。
【0105】
上記構成によれば、副変速機構32がコンパクトに収容されつつ、副変速機構32での変速段数を多くすることができる。副変速機構32においては、例えば、前進用の変速段数を3、後進用の変速段数を1とすることもできる。この場合、上述のように、主変速機構31の変速段数を4とすることで、動力伝達装置100全体として、前進用の変速段数が12、後進用の変速段数が4となる。従って、トラクタ1の走行において、前進及び後進の何れにおいても、更に細やかな変速切替を実現できる。
【0106】
また、本発明の第1実施形態においては、トラクタ1が前側に前輪2を備え、後側に後輪3を備えている。副変速従動シャフト32bは、第2副変速ギヤ32dの各ギヤ32d1~32d4よりも後側にて動力を出力し、当該出力された動力が後輪3の回転力に変換されるよう伝達されるように構成されている。これに加え、副変速従動シャフト32bは、第2副変速ギヤ32dの各ギヤ32d1~32d4のうち、隣り合う2つのギヤ32d2,32d3の間から動力を出力し、当該出力された動力が前輪2の回転力に変換されるよう伝達されるように構成されている。
【0107】
上記構成によれば、複数の第2副変速ギヤ32dの間に、前輪2を駆動するためのギヤ32fを介装させることができる。このため、第2副変速ギヤ32dの間のスペースを活用し、前輪2を駆動させるための機構を付与することができる。従って、上記ギヤ32fを配置するためのスペースを別途確保する必要がないため、副変速機構32をコンパクトに収容しつつ、前輪駆動が可能となる。また、隣り合う2つのギヤ32d2,32d3の間にギヤ32fが介装され、ギヤ32d2,32d3が互いに干渉することを抑制でき、別途カラー等を介装する必要がなくなる。
【0108】
<変形例>
上記第1実施形態においては、第2副変速ギヤ32dの隣り合う2つのギヤ32d2,32d3の間に、前輪2を駆動するためのギヤ32fが介装されている。これに代えて、例えば、隣り合う2つのギヤ32d1,32d2、又は、ギヤ32d3,32d4の間に、ギヤ32fが介装されてもよい。これによっても、上述した効果と同じ効果を奏する。
【0109】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係る動力伝達装置100は、以下の点で、上記第1実施形態と異なる。第1実施形態のPTO系ミッション40においては、PTO出力シャフト42が一方向に回転するようになっている。これに代えて、第2実施形態では、PTO出力シャフト42が一方向、及び、逆方向に回転可能となっており、回転方向が切替されるようになっている。第2実施形態は、この点のみ、上述した第1実施形態と異なっており、その他の部分は第1実施形態と同じである。以下、第2実施形態の第1実施形態と異なる点のみ説明する。
【0110】
図7は、本発明の第2実施形態に係る動力伝達装置100が備えるPTO系ミッション40の拡大断面図である。
図7において、第1実施形態における部位と同一・等価なものに対しては、第1実施形態にて付した符号と同じ符号を付すことで、説明を省略する。
【0111】
第2実施形態のPTO系ミッション40は、上述した第1実施形態と同様、リアミッションケース12に収容されており、第1PTO入力シャフト41、第1PTOギヤ41a,41b、PTO出力シャフト42、PTO出力ギヤ42a,42b、及び、PTOシフタ42cを備えている。更に、第2実施形態のPTO系ミッション40は、第2PTO入力シャフト43、及び、第2PTOギヤ43a,43bを備えている。なお、第2実施形態においては、PTO出力ギヤ42a,42bは、第3PTOギヤに相当している。
【0112】
第2PTO入力シャフト43は、第4軸A4と同軸的に配置され、第2PTOギヤ43a,43bと一体回転可能に構成されている。第2PTO入力シャフト43は、第2PTOギヤ43a,43bが回転したとき、第4軸A4まわりに回転するようになっている。第4軸A4は、第1軸A1、及び、第3軸A3とそれぞれ平行かつ異軸な軸である。第2PTO入力シャフト43の後端は、後端部12aにてベアリングを介して軸支されている。第2PTO入力シャフト43の前端は、軸受部12dにてベアリングを介して軸支されている。軸受部12dは、後端部12aよりも前側であって、後輪3のデフ装置3bよりも後側に位置している。
【0113】
第2PTOギヤ43a,43bは、2個のギヤで構成され、各ギヤ43a,43bは、それぞれ第4軸A4と同軸的に配置されている。第2PTOギヤ43a,43bは、第2PTO入力シャフト43と一体回転可能に構成されている。
【0114】
第2PTOギヤ43a,43bは、それぞれ円筒形状を呈しており、内壁面が第2PTO入力シャフト43の外側面と接続され、各ギヤ43a,43bの外側面に外歯を有するようになっている。当該外歯における歯数は、各ギヤ43a,43bにおいて、それぞれ異なっている。本実施形態では、ギヤ43bの歯数>ギヤ43aの歯数の関係となっている。2個のギヤ43a,43bは、後端部12a及び軸受部12dの間において、この順序にて後から前に向かって並列している。
【0115】
第2PTOギヤ43a,43bのうち、一方のギヤ43bは、第1PTOギヤ41a,41bのうちの一方のギヤ41aと、噛合うようになっている。これにより、第2PTOギヤ43a,43bは、第1PTOギヤ41a,41bが回転したとき、第4軸A4まわりに回転するようになっている。
【0116】
PTO出力ギヤ42a,42bのうち、一方のギヤ42bは、第1PTOギヤ41a,41bのうちの他方のギヤ41bと、噛合うようになっている。PTO出力ギヤ42a,42bのうち、他方のギヤ42aは、第2PTOギヤ43a,43bのうちの他方のギヤ43aと、噛合うようになっている。PTO出力ギヤ42a,42bのうちから、PTOシフタ42cの作動により選択される1つのみが、PTO出力シャフト42と一体的に回転するように構成されている。
【0117】
本実施形態では、PTO系ミッション40は、PTO出力シャフト42の回転方向を切替える機能を有している。ニュートラル状態においては、PTOシフタ42cは中立位置に位置しており、PTO出力シャフト42は、PTO出力ギヤ42a,42bに対し相対回転する。即ち、PTO出力シャフト42、及び、PTO出力ギヤ42a,42bの間においては、動力が伝達されない。この状態から、運転者の操作により、PTO出力シャフト42の一方向への回転が選択された場合、PTOシフタ42cは、中立位置から前方へ変位する。前方へ変位したPTOシフタ42cは、PTO出力ギヤ42bをPTO出力シャフト42に固定する。これにより、PTO出力ギヤ42a,42bのうち、ギヤ42bのみがPTO出力シャフト42と一体的に回転し、その他のギヤ42aは、PTO出力シャフト42と相対回転する。
【0118】
PTO出力シャフト42の回転方向が一方向である状態から、運転者の操作により逆方向への回転が選択された場合、PTOシフタ42cは、前方から中立位置を経て後方へ変位する。後方へ変位したPTOシフタ42cは、PTO出力ギヤ42aをPTO出力シャフト42に固定する。これにより、PTO出力ギヤ42a,42bのうち、ギヤ42aのみがPTO出力シャフト42と一体的に回転し、その他のギヤ42bは、PTO出力シャフト42と相対回転する。
【0119】
PTO出力シャフト42の回転方向が一方向である場合には、PTO出力ギヤ42bのみがPTO出力シャフト42と一体的に回転し、当該ギヤ42bと噛合う第1PTOギヤ41bは、第1PTO入力シャフト41と一体的に回転する。第1PTOギヤ41aも、第1PTO入力シャフト41と一体的に回転し、当該ギヤ41aと噛合う第2PTOギヤ43bは、第2PTO入力シャフト43と一体的に回転する。第2PTOギヤ43aも、第2PTO入力シャフト43と一体的に回転し、当該ギヤ43aと噛合うPTO出力ギヤ42aは、PTO出力シャフト42と逆方向に相対回転する。
【0120】
PTO出力シャフト42の回転方向が逆方向である場合には、PTO出力ギヤ42aのみがPTO出力シャフト42と一体的に回転し、当該ギヤ42aと噛合う第2PTOギヤ43aは、第2PTO入力シャフト43と一体的に回転する。第2PTOギヤ43bも、第2PTO入力シャフト43と一体的に回転し、当該ギヤ43bと噛合う第1PTOギヤ41aは、第1PTO入力シャフト41と一体的に回転する。第1PTOギヤ41bも、第1PTO入力シャフト41と一体的に回転し、当該ギヤ41bと噛合うPTO出力ギヤ42bは、PTO出力シャフト42と逆方向に相対回転する。
【0121】
このように、第1PTO入力シャフト41の動力は、ギヤ41b,42bのそれぞれの歯数に応じて変速される。変速後の動力により、PTO出力シャフト42は一方向に回転する。また、PTO出力シャフト42の回転方向が、一方向から逆方向へ切り替えられる場合、第1PTO入力シャフト41の動力は、ギヤ41a,43b,43a,42aのそれぞれの歯数に応じて変速される。変速後の動力により、PTO出力シャフト42は逆方向に回転する。
【0122】
以上ように、動力伝達装置100のPTO系ミッション40において、PTO出力シャフト42が一方向、及び、逆方向に回転可能となっており、回転方向が切替されるようになっている。上記構成によれば、PTO出力シャフト42の回転方向の切替により、作業装置における回転機構の回転方向も、自在に切替ることができる。従って、作業装置により多様な作業態様を実現することができる。
【0123】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0124】
1 :トラクタ
2 :前輪
3 :後輪
4 :原動機
10 :ケース
11 :フロントミッションケース
11c :隔壁部
11c1 :第1挿通孔
11c2 :第2挿通孔
11h :第1軸受部
11i :第2軸受部
12 :リアミッションケース
20 :動力入力機構
21 :フライホイール
22 :クラッチ
23 :第1入力シャフト
24 :第2入力シャフト
25 :第1入力ギヤ
26 :第2入力ギヤ
26a :ボスギヤ
26b :スプラインシャフト
30 :走行系ミッション
31 :主変速機構
31a :主変速駆動シャフト
31b :主変速従動シャフト
31c :第1主変速ギヤ
31c1 :第1主変速ギヤ
31c2 :第1主変速ギヤ
31c3 :第1主変速ギヤ
31c4 :第1主変速ギヤ
31d :主変速シフタ
31d1 :主変速シフタ
31d2 :主変速シフタ
31e :第2主変速ギヤ
31e1 :第2主変速ギヤ
31e2 :第2主変速ギヤ
31e3 :第2主変速ギヤ
31e4 :第2主変速ギヤ
32 :副変速機構
32a :副変速駆動シャフト
32b :副変速従動シャフト
32c :第1副変速ギヤ
32c1 :第1副変速ギヤ
32c2 :第1副変速ギヤ
32c3 :第1副変速ギヤ
32c4 :第1副変速ギヤ
32d :第2副変速ギヤ
32d1 :第2副変速ギヤ
32d2 :第2副変速ギヤ
32d3 :第2副変速ギヤ
32d4 :第2副変速ギヤ
32e :副変速シフタ
32e1 :副変速シフタ
32e2 :副変速シフタ
32f :ギヤ
33 :プロペラシャフト
40 :PTO系ミッション
41 :第1PTO入力シャフト
41a :第1PTOギヤ
41b :第1PTOギヤ
42 :PTO出力シャフト
42a :PTO出力ギヤ
42b :PTO出力ギヤ
42c :PTOシフタ
43 :第2PTO入力シャフト
43a :第2PTOギヤ
43b :第2PTOギヤ
100 :動力伝達装置
A1 :第1軸
A2 :第2軸
A3 :第3軸
A4 :第4軸