(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093824
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】防振装置
(51)【国際特許分類】
F16F 1/387 20060101AFI20240702BHJP
F16F 15/08 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
F16F1/387 C
F16F15/08 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210408
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】井川 達貴
【テーマコード(参考)】
3J048
3J059
【Fターム(参考)】
3J048AA01
3J048BA19
3J048CB22
3J048EA01
3J048EA08
3J059AA08
3J059BA42
3J059DA22
3J059GA09
3J059GA28
(57)【要約】
【課題】サージング現象の低減効果を向上できる防振装置を提供すること。
【解決手段】弾性脚13a~13dの共振周波数よりも第1突起18の共振周波数が低く、弾性脚13a~13dの共振周波数よりも第2突起19の共振周波数が高い。これにより、弾性脚13a~13dのみによるサージピークの低周波側を第1突起18で低減できると共に、そのサージピークの高周波側を第2突起19で低減できる。この防振装置10によれば、第1突起18及び第2突起19によってサージング現象(サージピーク)の低減効果を向上できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びた第1部材と、
前記第1部材を取り囲む筒状の第2部材と、
前記第1部材の外周面と前記第2部材の内周面とを連結する弾性体製の防振基体と、
前記防振基体の前記軸方向の端面から突出する弾性体によってそれぞれ構成され、共振周波数が互いに異なる複数種類の突起と、を備え、
各々の共振周波数において、前記防振基体の振動と前記突起の振動とが逆位相であり、
前記突起の種類には、前記防振基体の共振周波数よりも共振周波数が低い第1突起と、前記防振基体の共振周波数よりも共振周波数が高い第2突起とがあることを特徴とする防振装置。
【請求項2】
前記防振基体は、前記第1部材と前記第2部材とをそれぞれ軸直角方向に繋いで周方向に互いに離れた複数本の弾性脚によって形成され、
1本の前記弾性脚には、1種類の前記突起が設けられることを特徴とする請求項1記載の防振装置。
【請求項3】
前記突起は、前記軸方向から見て所定方向に延びた形状であることを特徴とする請求項1記載の防振装置。
【請求項4】
前記第1突起の共振周波数は、前記防振装置の全ての前記突起を前記第2突起とした場合の絶対ばね定数の周波数特性における低周波側のピークの周波数の±15Hz以内に設定されていることを特徴とする請求項1記載の防振装置。
【請求項5】
前記第1突起の共振周波数と前記防振基体の共振周波数との差、及び、前記第2突起の共振周波数と前記防振基体の共振周波数との差は、それぞれ50~120Hzであることを特徴とする請求項1記載の防振装置。
【請求項6】
前記第1突起の共振周波数と前記第2突起の共振周波数との差は、200Hz以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防振装置に関し、特にサージング現象の低減効果を向上できる防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車のエンジンやモータ等の振動源を車体に弾性支持するための防振装置として、車体側および振動源側の一方に取り付けられる内筒の外周面と、車体側および振動源側の他方に取り付けられる外筒の内周面とを弾性体製の防振基体で連結したものが知られている。この防振装置には、防振基体の共振周波数で防振基体の動ばね定数(絶対ばね定数)が増大し、共振周波数で防振基体が激しく振動するサージング現象が生じることがある。
【0003】
特許文献1に開示された防振装置では、サージング現象を低減させるために、防振基体の軸方向の端面から突起を突出させている。防振基体の共振周波数の近傍に突起の共振周波数を設定することで、動ばね定数の周波数特定のグラフにおけるサージピーク(動ばね定数のピーク)を1山から2山に分割しつつ、そのピーク値を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、突起によって分割した2山のサージピークのうち一方のピーク値を十分に抑制できても他方のピーク値を十分に抑制できず、突起によるサージング現象の低減効果が十分に得られていない。
【0006】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、サージング現象の低減効果を向上できる防振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために本発明の防振装置は、軸方向に延びた第1部材と、前記第1部材を取り囲む筒状の第2部材と、前記第1部材の外周面と前記第2部材の内周面とを連結する弾性体製の防振基体と、前記防振基体の前記軸方向の端面から突出する弾性体によってそれぞれ構成され、共振周波数が互いに異なる複数種類の突起と、を備え、各々の共振周波数において、前記防振基体の振動と前記突起の振動とが逆位相であり、前記突起の種類には、前記防振基体の共振周波数よりも共振周波数が低い第1突起と、前記防振基体の共振周波数よりも共振周波数が高い第2突起とがある。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の防振装置によれば、各々の共振周波数において、防振基体の振動と、防振基体の軸方向の端面から突出する突起の振動とが逆位相である。そのため、防振基体のみによる1山のサージピークを、突起の共振周波数の近傍で低減できる。更に、突起の種類には、防振基体の共振周波数よりも共振周波数が低い第1突起と、防振基体の共振周波数よりも共振周波数が高い第2突起とがある。これにより、防振基体のみによるサージピークの低周波側を第1突起で低減できると共に、そのサージピークの高周波側を第2突起で低減できる。このように、第1突起および第2突起によってサージング現象(サージピーク)の低減効果を向上できる。
【0009】
請求項2記載の防振装置によれば、請求項1記載の防振装置が奏する効果に加え、次の効果を奏する。防振基体は、第1部材と第2部材とをそれぞれ軸直角方向に繋いで周方向に互いに離れた複数本の弾性脚によって形成される。この1本の弾性脚に複数種類の突起が設けられる場合、弾性脚の振動が複雑化して弾性脚の耐久性が低下する可能性がある。これに対し、1本の弾性脚に1種類の突起を設けることで、弾性脚の振動を単純化でき、弾性脚の耐久性を向上できる。
【0010】
請求項3記載の防振装置によれば、請求項1記載の防振装置が奏する効果に加え、次の効果を奏する。突起は、軸方向から見て(軸方向視において)所定方向に延びた形状である。この場合の調整可能なパラメータ(所定方向の長さ、所定方向と略垂直な方向の幅、軸方向の高さ)は、例えば突起が円柱状である場合に調整可能なパラメータ(直径、軸方向の高さ)と比べて多い。よって、パラメータの調整に応じて突起の共振周波数を設定し易くできる。
【0011】
請求項4記載の防振装置によれば、請求項1記載の防振装置が奏する効果に加え、次の効果を奏する。防振装置の全ての突起を第2突起とした場合の絶対ばね定数の周波数特性における低周波側のピーク(サージピーク)の周波数の±15Hz以内に、第1突起の共振周波数が設定されている。これにより、第2突起で主に高周波側のサージピークを低減しつつ、第2突起だけでは低減しきれなかった低周波側のサージピークを第1突起で効果的に低減できる。
【0012】
請求項5記載の防振装置によれば、請求項1記載の防振装置が奏する効果に加え、次の効果を奏する。第1突起の共振周波数と防振基体の共振周波数との差、及び、第2突起の共振周波数と防振基体の共振周波数との差は、それぞれ50~120Hzである。これにより、防振基体のみによるサージピークの低周波側および高周波側の両方を効果的に低減できる。
【0013】
請求項6記載の防振装置によれば、請求項1から5のいずれかに記載の防振装置が奏する効果に加え、次の効果を奏する。第1突起の共振周波数と第2突起の共振周波数との差は、200Hz以下である。これらの共振周波数を近づけることで、サージピークを全体的に低減し易くできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態における防振装置の正面図である。
【
図2】
図1のII-II線における防振装置の断面図である。
【
図3】実施例および比較例における絶対ばね定数の周波数特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。
図1は、第1実施形態における防振装置10の正面図である。
図2は、
図1のII-II線における防振装置10の断面図である。
【0016】
図1の矢印U、矢印D、矢印L、矢印R、矢印F、矢印Bは、それぞれ防振装置10の上方向、下方向、左方向、右方向、前方向、後方向を示している。上下方向と、左右方向と、前後方向とは互いに垂直な関係にある。また、
図1,2には、振動(荷重)が入力されていない無荷重状態の防振装置10が示されている。
【0017】
防振装置10は、自動車などのエンジンを車体に弾性支持するためのエンジンマウントである。防振装置10は、車体側に取り付けられる軸状の第1部材11と、振動源であるエンジン側に取り付けられる筒状の第2部材12と、第1部材11と第2部材12とを連結する4本の弾性脚(防振基体)13a,13b,13c,13dと、を主に備える。
【0018】
第1部材11及び第2部材12は、共通の軸心Cを有して同軸上に配置され、軸心C方向(以下単に「軸方向」と称す)に延びて形成される。この軸方向は、防振装置10の前後方向である。また、軸心Cと直交する方向(以下「軸直角方向」と称す)には、防振装置10の上下方向および左右方向が含まれる。本実施形態では、これらの防振装置10の前後方向、上下方向および左右方向が、防振装置10が搭載された車両の前後方向、上下方向および左右方向とそれぞれ一致する。
【0019】
防振装置10の上下方向が防振装置10の主振動方向である。主振動方向とは、振動源であるエンジンからの主な振動に応じて、第1部材11と第2部材12とが主に相対移動する方向である。また、防振装置10は、左右対称に形成されている。
【0020】
第1部材11は、金属や合成樹脂などにより構成された部材である。第1部材11は、軸心Cを囲む筒状に形成され、軸方向の一端が閉塞部11eで塞がれて他端が開口している。この閉塞部11eには、2つの貫通孔11fが上下方向に離れて設けられている。貫通孔11fに挿入した2本のボルトによって第1部材11が車体側に取り付けられる。2本のボルトを用いた取り付けによって、車体に対する軸心Cまわりの第1部材11の回転を防止できる。
【0021】
第1部材11の内周面および外周面は、軸心Cを含む断面において軸心Cと略平行に形成されている。また、軸方向視において、第1部材11の内周面は、上下方向に延びる2本の平行線を円弧で繋いだ角丸長方形状(長円状)に形成されている。
【0022】
軸方向視において、第1部材11の外周面のうち上下方向の両側はそれぞれ、第1部材11の内周面の円弧と同様に、軸直角方向の外側へ凸の円弧状に形成されている。また、軸方向視において、第1部材11の外周面のうち左右方向の両側はそれぞれ、上下方向の中央に向かうにつれて左右方向の外側へ傾斜する傾斜面11a~11dによって山形状に形成されている。傾斜面11aは左上に、傾斜面11bは右上に、傾斜面11cは左下に、傾斜面11dは右下にそれぞれ設けられている。
【0023】
第2部材12は、第1部材11を取り囲む円筒状の部材であり、金属や合成樹脂などで構成されている。第2部材12の内周面および外周面は、軸心Cを含む断面において軸心Cと略平行に形成されている。軸方向視において、第2部材12の外周面および内周面は、軸心Cを中心とした円形状に形成される。
【0024】
複数の弾性脚13a~13dは、ゴム(弾性体)によって構成される部材であり、第1部材11と第2部材12とをそれぞれ軸直角方向に連結する。弾性脚13aは傾斜面11aから略垂直に左上へ延びる。同様に、弾性脚13bは傾斜面11bから略垂直に右上へ、弾性脚13cは傾斜面11cから略垂直に左下へ、弾性脚13dは傾斜面11dから略垂直に右下へそれぞれ延びる。複数の弾性脚13a~13dは、傾斜面11a~11dと第2部材12の内周面とにそれぞれ加硫接着され、第1部材11及び第2部材12の周方向に互いに離れて配置される。
【0025】
第1部材11の外周面には、複数の弾性脚13a~13dにおける軸直角方向の内側の端部同士を連結する弾性膜14が加硫接着されている。また、第2部材12の内周面には、複数の弾性脚13a~13dにおける軸直角方向の外側の端部同士を連結する弾性膜15が加硫接着されている。複数の弾性脚13a~13dと弾性膜14,15とはゴムによって一体成形されている。
【0026】
弾性膜14は、第1部材11の上端の近傍から軸直角方向の外側へ突出するストッパ14aと、第1部材11の下端の近傍から軸直角方向の外側へ突出するストッパ14bと、を備える。弾性膜15は、第2部材12の上端の近傍から軸直角方向の内側へ突出するストッパ15aと、第2部材12の下端の近傍から軸直角方向の内側へ突出するストッパ15bと、を備える。
【0027】
ストッパ14aとストッパ15aとが互いに向かい合い、ストッパ14bとストッパ15bとが互いに向かい合う。これにより、主振動方向(上下方向)の振動入力時に、これらのストッパ14a,14b,15a,15b同士が接触し、第1部材11側と第2部材12側との衝突を緩衝できる。なお、上側のストッパ14a,15aよりも下側のストッパ14b,15bの方が、周方向の長さや軸直角方向の厚さが大きい。これは、主振動方向の入力時に重力によって大きな荷重が加わり易い下側のストッパ14b,15bによる緩衝性能を確保するためである。
【0028】
防振装置10に軸直角方向の振動が入力された場合には、サージング現象が生じることがある。サージング現象とは、弾性脚13a~13dの共振周波数において、弾性脚13a~13dの絶対ばね定数(動ばね定数)が増大して、弾性脚13a~13dが激しく振動する現象である。
【0029】
本実施形態では、このサージング現象を低減(共振周波数での絶対ばね定数を低減)させるために、弾性脚13a~13dから第1突起18及び第2突起19を突出させている。なお、サージング現象の低減のためには、各々の共振周波数において、弾性脚13a~13dの振動と、第1突起18及び第2突起19の振動とを逆位相にする必要がある。
【0030】
第1突起18は、複数の弾性脚13a,13bの軸方向の両端面からそれぞれ1つずつ軸方向に突出している。第2突起19は、複数の弾性脚13c,13dの軸方向の両端面からそれぞれ1つずつ軸方向に突出している。
【0031】
第1突起18及び第2突起19は、いずれも板状に形成され、軸方向視において第2部材12の接線方向(略周方向)へ延びるように配置されている。第1部材11と第2部材12とを連結する弾性脚13a~13dはいずれも、軸直角方向の寸法よりも接線方向の寸法が大きいため、その接線方向に第1突起18及び第2突起19を延ばすことで、第1突起18及び第2突起19を大きくし易くできる。
【0032】
第1突起18において、接線方向の寸法を長さL1、接線方向と略垂直な軸直角方向の寸法を幅W1、軸方向の寸法を高さH1とする。同様に、第2突起19において、接線方向の寸法を長さL2、接線方向と略垂直な軸直角方向の寸法を幅W2、軸方向の寸法を高さH2とする。これらの長さL1,L2、幅W1,W2、高さH1,H2を調整することで、第1突起18及び第2突起19の体積および質量がそれぞれ決まる。更に、その質量に応じて第1突起18及び第2突起19の共振周波数がそれぞれ設定される。第1突起18の質量が第2突起19の質量よりも小さく設定されることで、第1突起18の共振周波数が第2突起19の共振周波数よりも低くなっている。
【0033】
次に
図1及び
図2に加え、
図3を参照しながら第1突起18及び第2突起19による効果を説明する。
図3は、防振装置10を用いた実施例E12と、防振装置10(実施例E12)から一部を変更した比較例E0,E1,E2とにおける絶対ばね定数の周波数特性の解析結果を示すグラフである。
【0034】
この解析結果は、実施例E12及び比較例E0,E1,E2それぞれに対し、主振動方向に9.8m/s
2の振動を付与した場合のものである。
図3のグラフの横軸は周波数[Hz]である。
図3のグラフの縦軸は、主振動方向の絶対ばね定数[N/mm]である。縦軸は、等間隔の目盛のみが示され数値が省略されている。
【0035】
比較例E0は、防振装置10から第1突起18及び第2突起19を取り除いたものであり、弾性脚13a~13dの共振周波数が約1500Hzとなるように各寸法を設定したものである。よって
図3に破線で示すように、比較例E0におけるサージピーク(絶対ばね定数のピーク)は、約1500Hzに1山だけ現れる。
【0036】
実施例E12は、比較例E0に対し第1突起18及び第2突起19を設けたものである。更に実施例E12は、第1突起18の共振周波数が約1400Hzとなり、第2突起19の共振周波数が約1570Hzとなるように、長さL1,L2、幅W1,W2、高さH1,H2を設定したものである。
図3には、この実施例E12における絶対ばね定数の周波数特性が実線で示されている。
【0037】
比較例E1は、実施例E12に対し第2突起19を全て第1突起18に置き換えたものである。比較例E2は、実施例E12に対し第1突起18を全て第2突起19に置き換えたものである。
図3には、比較例E1における絶対ばね定数の周波数特性が一点鎖線で示され、比較例E2における絶対ばね定数の周波数特性が二点鎖線で示されている。
【0038】
図3によれば、弾性脚13a~13dの共振周波数よりも共振周波数が低い第1突起18のみを有する比較例E1では、第1突起18及び第2突起19がいずれも無い比較例E0の1山のサージピークを2山に分割し、その2山のピーク値を低減している。同様に、弾性脚13a~13dの共振周波数よりも共振周波数が高い第2突起19のみを有する比較例E2では、比較例E0の1山のサージピークを2山に分割し、その2山のピーク値を低減している。
【0039】
しかし、比較例E1と比較例E2とを比較すると、分割された2山のサージピークのうち、比較例E1では高周波側のピーク値を十分に抑制できておらず、比較例E2では低周波側のピーク値を十分に抑制できていない。
【0040】
これに対し、第1突起18及び第2突起19の両方を有する実施例E12(防振装置10)では、弾性脚13a~13dのみによるサージピークの低周波側を第1突起18で低減できると共に、そのサージピークの高周波側を第2突起19で低減できる。2種類の第1突起18及び第2突起19によって実施例E12のサージピークが3山に分割されるが、いずれのピーク値も比較例E0,E1,E2に対し十分に低減されている。以上の通り、実施例E12では、第1突起18及び第2突起19によってサージング現象(サージピーク)の低減効果を向上できる。
【0041】
第2突起19によって2山に分割された比較例E2のサージピークは、低周波側が約1400Hzの位置にある。この周波数は、第1突起18の共振周波数と略同一である。なお、周波数が略同一とは、周波数の差が±15Hz以内であることと定義する。これらの周波数が略同一であることによって、実施例E12では、第2突起19で主に高周波側のサージピークを低減しつつ、第2突起19だけでは低減しきれなかった低周波側のサージピークを第1突起18で効果的に低減できる。その結果、防振装置10のサージピークを全体的に低減し易くできる。
【0042】
第1突起18の共振周波数と弾性脚13a~13dの共振周波数との差は、50~120Hzであることが好ましい。実施例E12及び比較例E1では、これらの差が約100Hzである。そのため、弾性脚13a~13dのみによるサージピークの低周波側を第1突起18によって効果的に低減できる。
【0043】
第2突起19の共振周波数と弾性脚13a~13dの共振周波数との差も、50~120Hzであることが好ましい。実施例E12及び比較例E2では、これらの差が約70Hzである。そのため、弾性脚13a~13dのみによるサージピークの高周波側を第2突起19によって効果的に低減できる。
【0044】
また、第1突起18の共振周波数と第2突起19の共振周波数との差は、200Hz以下であることが好ましい。実施例E12では、これらの差が170Hz以下である。このように、第1突起18及び第2突起19の共振周波数を互いに近づけることで、防振装置10のサージピークを全体的に低減し易くできる。
【0045】
以上、実施形態および実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態および上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、軸方向視における第1部材11の外周面や内周面を楕円形状や多角形状、真円形状などとしても良い。また、第1部材11の軸心と第2部材12の軸心とを互いに軸直角方向へ離してオフセットさせても良い。第1部材11を棒状や柱状に形成しても良い。
【0046】
上記実施形態では、防振装置10の前後方向、上下方向および左右方向が車両の前後方向、上下方向および左右方向とそれぞれ一致する場合を説明したが、これに限らない。例えば、防振装置10の前後方向を車両の左右方向と一致させ、防振装置10の上下方向または左右方向を車両の前後方向と一致させても良い。また、これらの防振装置10の各方向と車両の各方向とを斜めにずらしても良い。
【0047】
上記実施形態では、防振装置10の適用対象として、エンジンマウントを例示したが、その適用対象は任意である。他の適用対象としては、例えばモータマウント、メンバーマウント、デフマウントが例示される。また、車体などの振動受側に第1部材11を取り付け、エンジン等の振動源側に第2部材12を取り付ける場合に限らず、振動受側に第2部材12を取り付けて振動源側に第1部材11を取り付けても良い。
【0048】
上記実施形態では、第1部材11と第2部材12とを連結する防振基体が、4本の弾性脚13a~13dによって形成される場合を説明したが、これに限られない。例えば、筒状の防振基体で第1部材11と第2部材12との間を全周に亘って連結しても良い。また、弾性脚13a~13dを3本以下や5本以上にしても良い。
【0049】
上記実施形態では、弾性脚13a~13d、第1突起18及び第2突起19がゴム製である場合を説明したが、これに限られない。例えば、ゴム以外の弾性体である熱可塑性エラストマで弾性脚13a~13d、第1突起18及び第2突起19を構成しても良い。また、第1突起18及び第2突起19の先端や内部に金属などの錘を設けることで、第1突起18及び第2突起19の共振周波数を調整しても良い。
【0050】
上記実施形態では、弾性脚13a,13bの軸方向の両端面からそれぞれ第1突起18が1つずつ突出し、弾性脚13c,13dの軸方向の両端面からそれぞれ第2突起19が1つずつ突出する場合を説明したが、これに限られない。例えば、弾性脚13a~13dの軸方向の片面からのみ第1突起18や第2突起19を突出させても良い。また、弾性脚13a~13dの軸方向の片面から第1突起18や第2突起19を2つ以上突出させても良い。弾性脚13c,13dから第1突起18を突出させても良く、弾性脚13a,13bから第2突起19を突出させても良い。
【0051】
第1突起18及び第2突起19とは異なる種類(異なる共振周波数)の突起を弾性脚13a~13dから突出させても良い。また、1本の弾性脚13a~13dに、第1突起18及び第2突起19の両方など異なる種類の突起を複数設けても良い。例えば、弾性脚13aの軸方向の一端面から第1突起18を突出させ、弾性脚13aの軸方向の他端面から第2突起19を突出させても良い。但し、このような場合には、弾性脚13a~13dの振動が複雑化して弾性脚13a~13dの耐久性が低下する可能性がある。
【0052】
これに対し第1実施形態では、1本の弾性脚13a~13dのそれぞれに、第1突起18又は第2突起19の一方のみが、即ち1種類の突起のみが設けられている。これにより、弾性脚13a~13dの振動を単純化でき、弾性脚13a~13dの耐久性を向上できる。
【0053】
上記実施形態では、第1突起18及び第2突起19が板状である場合について説明したが、これに限られない。例えば、第1突起18や第2突起19を円柱状や楕円柱状、長円柱状、多角柱状、円錐台状、角錐台状などとしても良い。なお、第1突起18や第2突起19を円柱状とした場合、それらの共振周波数を調整するためのパラメータは、直径と高さとの2つである。
【0054】
これに対し、第1突起18や第2突起19を、板状や楕円柱状など軸方向視において所定方向に延びた形状とすることが好ましい。この場合の調整可能なパラメータは、その所定方向の長さ(例えば長さL1,L2)、所定方向と略垂直な方向の幅(例えば幅W1,W2)、軸方向の高さ(例えば高さH1,H2)の3つであり、円柱状の場合よりも多い。よって、パラメータの調整に応じて第1突起18や第2突起19の共振周波数を設定し易くできる。
【0055】
上記実施形態では、第1突起18及び第2突起19が軸方向に突出する場合を説明したが、これに限らない。例えば、第1突起18及び第2突起19を、軸方向に対し傾いた方向へ突出させても良い。この場合、防振装置10に軸方向の振動が入力されたとき、第1突起18及び第2突起19が振動し易くなって、第1突起18及び第2突起19によるサージピークの低減効果が発揮されることがある。
【0056】
上記実施例E12では、比較例E2のサージピークの低周波側の周波数が第1突起18の共振周波数と略同一である場合について説明したが、これに限らない。例えば、第1突起18によって2山に分割された比較例E1のサージピークの高周波側の周波数が、第2突起19の共振周波数と略同一になるように、防振装置10を構成しても良い。これにより、第1突起18で主に低周波側のサージピークを低減しつつ、第1突起18だけでは低減しきれなかった高周波側のサージピークを第2突起19で効果的に低減できる。その結果、防振装置10のサージピークを全体的に低減し易くできる。
【符号の説明】
【0057】
10 防振装置
11 第1部材
12 第2部材
13a~13d 弾性脚(防振基体)
18 第1突起(突起)
19 第2突起(突起)