(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093827
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】椅子及びガスシリンダ用回転抵抗付与装置
(51)【国際特許分類】
A47C 3/18 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
A47C3/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210413
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】西上 真凪
(72)【発明者】
【氏名】高橋 謙介
(72)【発明者】
【氏名】高塩 紗織
(72)【発明者】
【氏名】藤本 有希
【テーマコード(参考)】
3B091
【Fターム(参考)】
3B091EA03
3B091EB05
(57)【要約】
【課題】小児が回転椅子に乗って遊んで振り落とされるような事故を防止する。
【解決手段】内筒9と外筒10とが相対回転するガスシリンダ7を使用している場合、内筒9をクランプする上クランプユニット20と、外筒10をクランプする下クランプユニット21とを使用する。両クランプユニット20,21はロッド33によって相対回転不能に保持されている。例えば、下クランプユニット21は外筒10に対して回転不能に固定しておく一方、上クランプユニット20は、内筒9に対して抵抗を持って回転する状態に保持することにより、通常使用者による座2の回転は許容しつつ、小児が座を回転させることは防止できる。これにより、幼児の事故を防止できる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座が、少なくとも非着座状態において回転しないか又は回転しにくくなるように回転抵抗付与装置によって予め規制されている、
回転椅子。
【請求項2】
前記座は弾性体に抗して所定寸法だけ下降可能であり、前記座が前記弾性体によって上昇した状態では、前記回転抵抗付与装置によって前記座が回転不能状態又は回転に抵抗が付与された状態に規制されて、前記座が前記弾性体に抗して下降した状態では規制が解除される、
請求項1に記載した回転椅子。
【請求項3】
前記座の回転に抵抗を付与する前記回転抵抗付与装置を備えている、
請求項1に記載した回転椅子。
【請求項4】
前記座を支持する部材は、相対回転自在な内筒と外筒とを有する脚支柱であって、
前記回転抵抗付与装置は、前記脚支柱に外付けされている、
請求項3に記載した回転椅子。
【請求項5】
前記回転抵抗付与装置は、前記内筒の外周面を抱持する第1クランプユニットと、前記外筒の外周面を抱持する第2クランプユニットとを有して、前記両クランプユニットは、上下方向に相対動可能で相対回転不能に保持されており、
かつ、前記第1クランプユニットと第2クランプユニットとのうちいずれか一方は前記内筒又は外筒に固定されて、他方は前記内筒又は外筒との間で摩擦抵抗を持って相対回転するように設定されている、
請求項4に記載した回転椅子。
【請求項6】
脚装置が、内筒と外筒とが相対回転不能に保持されたガスシリンダと、前記ガスシリンダが回転可能でかつ所定寸法だけ上下動し得るように保持する脚ベースと、前記ガスシリンダを上向き方向に付勢するばね手段とを備えており、
前記ガスシリンダは、前記回転抵抗付与装置により、上昇した状態では回転不能に保持されて、前記座に設定値以上の荷重が掛かって下降した状態では回転可能に保持される、
請求項2に記載した回転椅子。
【請求項7】
相対回転可能な内筒と外筒とを有するガスシリンダに使用する回転抵抗付与装置であって、
前記内筒の外周面と前記外筒の外周面とを包持する環状のリング部材を備え、
前記リング部材の内周面は、前記内筒の外周面と前記外筒の外周面に密着させる軟質部に形成され、
前記軟質部が前記内筒の外周面と前記外筒の外周面とに密着することにより前記内筒と前記外筒との相対回転に抵抗が付与される、
ガスシリンダの回転抵抗付与装置。
【請求項8】
前記リング部材は、環状方向で2つに分割された第1リング部材と第2リング部材とを有し、
前記第1リング部材と前記第2リング部材とは、一端部同士がヒンジで連結されて、前記ヒンジから離れた他端部同士は間隔を調節できるように連結部材で連結されている、
請求項7に記載したガスシリンダの回転抵抗付与装置。
【請求項9】
前記リング部材は、前記ガスシリンダの内筒を抱持する内筒対応リング部材と、前記ガスシリンダの外筒を抱持する外筒対応リング部材とに分割されており、
前記内筒対応リング部材と前記外筒対応リング部材とは、前記ガスシリンダの長手方向に設定範囲内で摺動可能かつ相対回転不能に構成されている、
請求項7又は8に記載したガスシリンダの回転抵抗付与装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、チャイルドセーフ機能を備えた椅子及びこれに好適なガスシリンダ用回転抵抗付与装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
椅子はオフィスや店舗などで広く使用されているが、家庭で使用することも多い。特に、近年の在宅勤務の広がりに伴って家庭での使用が広がっている。家庭で使用する場合の問題として、小児(幼児)がいる場合の安全性の問題がある。すなわち、小児が椅子に触れたり玩具代わりにして遊んだりすることがあり、従って、小児の安全性の問題がある。この点、例えば特許文献1には、回動式の部材を備えた椅子において、小児が触れた場合の指挟みを防止する機能を備えた椅子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、上記のように、小児が椅子を玩具代わりにして遊ぶことがある。問題は、親等の保護者の目が届かない状態において椅子で遊ばれることであり、特に、回転椅子は座が旋回して小児にとって格好の遊び道具として映ることから、床に立って座を強く回転させたり、座によじ登って旋回させて遊んだりすることがあるが、床に立って座を強く回転させた場合は、座のコーナー部や背もたれが顔・頭に当たって怪我をするおそれがあり、座によじ登って回転させると、回転の勢いがつき過ぎて振り落とされるおそれがある。また、小児が座によじ登った場合、座は回転自在で小児の安定性が悪くなるため、座から落ちて怪我をするおそれもある。
【0005】
本願発明はこのような現状を背景になされたものであり、回転椅子に関して、通常の使用の利便性はできるだけ損なうことなく、小児がアクセスしても安全が確保される技術を開示せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明は様々な構成を含んでおり、その例を各請求項で特定している。このうち請求項1の発明は回転椅子の上位概念を成すもので、
「座が、少なくとも非着座状態において回転しないか又は回転しにくくなるように回転抵抗付与装置によって予め規制されている」
という構成になっている。
【0007】
請求項2の発明は請求項1の展開例であり、
「前記座は弾性体に抗して所定寸法だけ下降可能であり、前記座が前記弾性体によって上昇した状態では、前記回転抵抗付与装置によって前記座が回転不能状態又は回転に抵抗が付与された状態に規制されて、前記座が前記弾性体に抗して下降した状態では規制が解除される」
という構成になっている。
【0008】
請求項3の発明は請求項1の展開例であり、
「前記座の回転に抵抗を付与する前記回転抵抗付与装置を備えている」
という構成になっている。
【0009】
請求項4の発明は請求項3の展開例であり、
「前記座を支持する部材は、相対回転自在な内筒と外筒とを有する脚支柱であって、
前記回転抵抗付与装置は、前記脚支柱に外付けされている」
という構成になっている。
【0010】
請求項5の発明は請求項4の展開例であり、
「前記回転抵抗付与装置は、前記内筒の外周面を抱持する第1クランプユニットと、前記外筒の外周面を抱持する第2クランプユニットとを有して、前記両クランプユニットは、上下方向に相対動可能で相対回転不能に保持されており、
かつ、前記第1クランプユニットと第2クランプユニットとのうちいずれか一方は前記内筒又は外筒に固定されて、他方は前記内筒又は外筒との間で摩擦抵抗を持って相対回転するように設定されている」
という構成になっている。
【0011】
請求項6の発明は請求項2の展開例であり、
「脚装置が、内筒と外筒とが相対回転不能に保持されたガスシリンダと、前記ガスシリンダが回転可能でかつ所定寸法だけ上下動し得るように保持する脚ベースと、前記ガスシリンダを上向き方向に付勢するばね手段とを備えており、
前記ガスシリンダは、前記回転抵抗付与装置により、上昇した状態では回転不能に保持されて、前記座に設定値以上の荷重が掛かって下降した状態では回転可能に保持される」
という構成になっている。
【0012】
請求項7の発明は、ガスシリンダ用回転抵抗付与装置を対象にしている。すなわち、
「相対回転可能な内筒と外筒とを有するガスシリンダに使用する回転抵抗付与装置であって、
前記内筒の外周面と前記外筒の外周面とを包持する環状のリング部材を備え、
前記リング部材の内周面は、前記内筒の外周面と前記外筒の外周面に密着させる軟質部に形成され、
前記軟質部が前記内筒の外周面と前記外筒の外周面とに密着することにより前記内筒と前記外筒との相対回転に抵抗が付与される」
という構成になっている。
【0013】
請求項8の発明は請求項7を具体化したもので、
「前記リング部材は、環状方向で2つに分割された第1リング部材と第2リング部材とを有し、
前記第1リング部材と前記第2リング部材とは、一端部同士がヒンジで連結されて、前記ヒンジから離れた他端部同士は間隔を調節できるように連結部材で連結されている」
という構成になっている。
【0014】
請求項9の発明は請求項7又は8を具体化したもので、
「前記リング部材は、前記ガスシリンダの内筒を抱持する内筒対応リング部材と、前記ガスシリンダの外筒を抱持する外筒対応リング部材とに分割されており、
前記内筒対応リング部材と前記外筒対応リング部材とは、前記ガスシリンダの長手方向に設定範囲内で摺動可能かつ相対回転不能に構成されている」
という構成になっている。
【発明の効果】
【0015】
本願請求項1の発明では、非着座状態において、小児が座に乗ったり床に立って座を回転させようとしたりしても回転しないか回転しにくい状態にしておくことにより、小児が座を回転させて遊ぼうとしても、座が高速で回転することはなくて、小児の事故を防止できる。すなわち、非着座状の座を、小児の体重や体力では回転させることができない状態に保持しておけるため、座の回転に起因した小児の事故を防止できる。
【0016】
他方、着座状態で床に足が届く人が使用するに際しては、座に対して大きな回転トルクを付与できるし、通常の使用者は座に対して大きな荷重を掛けることができる。従って、通常使用者は、回転トルクや体重を利用して座を回転させることが可能である。従って、小児がいる環境において、小児の安全を確保しつつ回転椅子を普通に使用できる。
【0017】
なお、本願発明では、小児がいる環境での安全性を確実化するために、通常使用者が使用しても座が回転しない状態に保持することも可能である。従って、子供が椅子で遊ばない程度に成長するまでは座の回転を完全に停止させておいて、子供がある程度まで成長したら規制を解除して回転自在な状態に戻す、ということも可能である。
【0018】
更に、本願請求項1の発明は、後付け方式の回転抵抗付与装置によって座の回転を規制する態様と、出荷段階で座の回転に予め抵抗を付与しておく態様との両方を含んでいる。後者の態様では、椅子の使用者は購入してから特段の操作は不要であるため、ユーザーフレンドリーである。
【0019】
回転抵抗付与装置は様々の構造・メカニズムを採用できるが、請求項2の構成を採用すると、通常の使用者が着座すると回転抵抗が解除されて座を回転させ得るため、通常の使用の自由性を損なうことなく、小児の事故を防止できる。
【0020】
請求項3の発明は摩擦等の回転抵抗を利用して座の回転を規制するものであるため、既存の椅子への適用が容易である。床に足が届く通常使用者は座に対して大きな回転トルクを付与できるため、着座状態での座の回転は支障なく行える。従って、椅子の使い勝手が悪化することはない。
【0021】
他方、例えば、小児が床に立って座を回転させようとした場合、手で押した状態でのみ回転して手を離すと回転が止まるといった程度に抵抗が付与されていると安全上の問題はないが、上記のとおり、請求項3では、通常使用者は座に大きな回転トルクを付与できるため、座を小児の力では回転できないか又は回転させにくい状態に保持して小児の安全を確保しつつ、通常使用者は椅子を違和感なく使用できる。
【0022】
回転椅子は一般にガスシリンダより成る脚支柱を備えており、ガスシリンダは相対回転自在な内筒と外筒とを備えていることが多いが、請求項4の構成を採用すると、脚支柱をガスシリンダで構成した一般的な椅子に広く適用できる。従って、汎用性に優れている。
【0023】
請求項5の構成では、回転式ガスシリンダによって脚支柱を構成している椅子に適用して、クランプユニットを内筒と外筒とに加工なしで後付けできる。従って、既存の椅子への適用が容易で融通性が高い。
【0024】
ガスシリンダは内筒と外筒とが相対回転しないタイプもあるが、請求項6の発明では、非回転式のガスシリンダを有効利用できる。この場合、回転抵抗付与装置は外部に露出しないため、見栄えがよい。また、回転抵抗付与装置に小児が触れることはないため、安全性を更に向上できる利点もある。
【0025】
既述のように、ガスシリンダは内筒と外筒とが相対回転するタイプが多くて、例えばテーブルなどの多くの什器類・装置類に使用されているが、請求項7の回転抵抗付与装置を使用すると、この種のガスシリンダに後付けして回転を規制できる。従って、ガスシリンダを備えた什器類・装置類の価値を向上できる。
【0026】
請求項8のようにクランプユニットを2つ割り方式に構成すると、既存のガスシリンダに容易に後付けできるため、使用価値を向上できる。また、連結部材による連結状態を変更して回転抵抗の強さを調整できるため、現実対応性に優れている。請求項9の構成では、座等の昇降部材の昇降機能を阻害することなくその回転を規制できる。従って、現実性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】第1実施形態に係る椅子に関して座を下降させた状態の外観を示す図で、(A)は前上方から見た斜視図、(B)は前下方から見た斜視図、(C)は部分正面図である。
【
図2】第1実施形態に係る椅子に関して座を上昇させた状態の外観を示す図で、(A)は横下方から見た斜視図、(B)は前下方から見た斜視図である。
【
図3】第1実施形態に係るロック装置を示す図で、(A)(B)は方向を変えて見た分離斜視図である。
【
図4】第1実施形態に係るロック装置を示す図で、(A)は2つのロックユニットが上下に離反した状態での斜視図、(B)は2つのロックユニットが重なり合った状態での斜視図である。
【
図5】第2実施形態のロック解除状態(着座状態)での断面図である。
【
図6】第2実施形態のロック状態(離席状態)での断面図である。
【
図7】(A)は第3実施形態の要部縦断面図、(B)は第4実施形態の要部縦断面図、(C)は(B)のC-C視断面図である。
【
図8】第5実施形態のロック状態(離席状態)での縦断面図である。
【
図9】(A)は第6実施形態の縦断面図、(B)は第7実施形態の縦断面図である。
【
図10】(A)は第8実施形態の正面図、(B)は第9実施形態の一部破断部分正面図、(C)は(B)のC-C視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下では、方向を特定するため前後左右の文言を使用するが、この方向は、普通に着座した状態での使用者の向きを基準にしている。正面視は着座者と対向した方向視である。
【0029】
(1).第1実施形態の基本構造
まず、
図1~4に示す第1実施形態を説明する。椅子は、基本要素として、脚装置1と座2と背もたれ3とを備えている。脚装置1は、上向きに開口した筒部4から5本の脚羽根5を放射状に突出させた基体6を有しており、基体6の筒部4に脚支柱としてのガスシリンダ7が嵌着している。各脚羽根5の先端にはキャスタ8を設けている。なお、基体6は一般に樹脂の成形品が使用されている。
【0030】
図2に示すように、ガスシリンダ7は、相対回転自在な内筒9と外筒10とを有しており、本実施形態では、内筒9を上方に露出させてその状態にベース11を嵌着し、ベース11に座2が前後スライド可能に取り付けられている。
【0031】
また、ベース11には、座2の左右両側に位置した上向きに立ち上がったサイド支柱12が固定されており、サイド支柱12の上端に、円柱状のサイドブラケット13を介して平面視U形の背フレーム14が後継動可能に連結されて、背フレーム14に背もたれ3が後傾動可能に連結されている。背もたれ3は、弾性に抗して後傾するように背フレーム14に取り付けられて、背フレーム14も弾性に抗して下向き回動するようにサイドブラケット13に連結されている。
【0032】
また、座2は、着座者が背もたれ3に背中を当てて下半身を伸ばすと、弾性に抗して前進する。右のサイドブラケット13の前端にはロータリー式の昇降摘み15が装着されており、昇降摘み15をばねに抗して一方方向に回転させると、ガスシリンダ7のプッシュバルブ16(
図3,4参照)が押されて昇降ロックが解除され、ガスシリンダ7は伸縮自在な状態になる。
【0033】
なお、座2は、
図1(B)や
図2(A)に現れている座板(インナーシェル)17とその上に配置したクッション(図示せず)とを備えており、クッションは表皮材(張地)で上から覆われている。ベース11の内部には中間部材が前後動自在に配置されており、中間部材に座板17が取り付けられている。
【0034】
(2).回転抵抗付与装置
本実施形態では、回転抵抗付与装置として、ガスシリンダ7の内筒9に取り付けた上クランプユニット20と、外筒10に設けた下クランプユニット21とを備えている。両クランプユニット20,21は大きさを除いて同じ構造であり、上下長手のピン22で連結された第1リング部材23a,24aと第2リング部材23b,24bと、一対のリング部材23a,23b,24a,24bで抱持された一対ずつの軟質材製ライナー部材25,26と、一方のリング部材23a,24aの自由端に上下長手のピン27によって水平回動自在に連結された雄ねじ28とを有している。
【0035】
上クランプユニット20は内筒対応ユニットであり、従って、上クランプユニット20のリング部材23a,23bは請求項に記載した内筒対応リング部材に該当して、下クランプユニット21のリング部材24a,24bは請求項に記載した外筒対応リング部材に該当する。
【0036】
そして、第2リング部材23b,24bの自由端部に、雄ねじ28が外側から入り込む係合溝29を外周方向に開口するように形成し、係合溝29に設けた堀り込み部30に雄ねじ28を配置して、これに筒状のナット31をねじ込んでいる。ナット31の外周にはローレットを形成しており、人が摘んで回転操作できる。従って、ナット31を回転操作すると、連結されている一対のリング部材23a,236,24a,24bの先端間の間隔が広狭変化して、ライナー部材25,26に対するリング部材23a,236,24a,24bの抱持力が変化し、その結果、ライナー部材25,26と内筒9,外筒10との間の摩擦抵抗が変化する(調節される。)。
【0037】
ライナー部材25,26には、リング部材23a,23b,24a,24bの自由端の端面に重なる端板32を形成しており、端板32に雄ねじ28が入り込む係合溝32aを切り開き形成している。従って、ライナー部材25,26は、リング部材23a,23b,24a,24bと内筒9又は外筒10との間に挟まれて、所定の姿勢で落下不能に保持されている。
【0038】
リング部材23a,23b,24a,24bはポリプロピレン等の汎用樹脂で製造されており、ライナー部材25,26はエラストマ系のような摩擦係数が大きい樹脂で製造されている。
【0039】
下クランプユニット21のうちナット31が取り付いていない第1リング部材24aに、周方向に離反した2本のロッド33が上下摺動自在に貫通しており、両ロッド33の上端は、上クランプユニット20の第1リング部材23aに固定されている。また、両ロッド33の下端は下板34で繋がっている。ロッド33は請求項に記載した連結部材の一例であり、このロッド33の存在により、上下のクランプユニット20,21は相対回転不能で上下相対動自在に保持されている。
図2(B)に示すように、第2リング部材24bの下面には、ロッド33の下板34が入り込む凹所35を形成している。第1リング部材24aとロッド33との間には、ガスシリンダ7の昇降を阻害しない程度の摩擦抵抗が付与されている。
【0040】
(3).第1実施形態の纏め
上下のクランプユニット20,21のうち、例えば、上クランプユニット20は、通常の使用者が着座して床に足を着けた状態で座2に対して回転トルクを付与しても内筒9とライナー部材25とが相対回転不能しないようにナット31が強く締め込まれている一方、下クランプユニット21は、座2に対する回転トルクによってライナー部材26と外筒10との間に滑りが生じるようにナット31の締め込みを弱くしている(逆の関係でもよい。)。
【0041】
そして、上クランプユニット20は座2と一体に回転するが、上下のクランプユニット20,21はロッド33によって相対回転不能に保持されているため、着座した人が座2に回転トルクを付与すると、下クランプユニット21と外筒10とが相対回転して、着座者は座2を回転させることができる。従って、人がデスクワークを行うにおいて、姿勢の変更や離席・着席は支障なく行える。
【0042】
他方、着座者しても床に足が届かない小児がいる場合、椅子の使用者である保護者が目を離したすきに小児が座に手をかけて回そうとしたり、座によじ登って当該座を回転させようとしたりすることが有り得るが、小児が座2に対して付与できる回転トルクは小さいため、座2は回転しないか、回転しても手を離すと回転が停止することになり、従って、座2が高速回転することによる小児の事故を防止できる。
【0043】
つまり、下クランプユニット21のライナー部材26と外筒10との間の摩擦抵抗が、通常の使用者が付与する回転トルクによっては容易に滑りが生じて、小児によって付与される回転トルクによっては滑り全く又は殆ど生じない大きさになるように、ナット31の締め込みを調節しておくこととにより、小児の安全は確保しつつ通常の使用者は座2を容易に回転させうる状態を実現できる。
【0044】
本実施形態では、ロッド33は下クランプユニット21の第1リング部材24aに対して摺動自在に挿通されているため、座2の昇降に支障はない。
【0045】
図1(C)に一点鎖線で示すように、内筒9の上端と外筒10の上端とのうちいずれか一方又は両方に、クランプユニット20,21を落下不能に保持するストッパーリング23c,24cを固定することが可能である。ストッパーリング23c,24cも2つ割方式になっており、内筒9及び外筒10に対して相対回転不能に保持されている。
【0046】
この場合は、クランプユニット20,21のずり下がりはないため、ロッド33と下クランプユニット21の第1リング部材24aとは、抵抗無しで相対動可能である。そして、上クランプユニット20と内筒9とを相対回転させるにしても、下クランプユニット21と外筒10とを相対回転させるにしても、それらクランプユニット20,21は落下することなくガスシリンダ7と相対回転する。従って、座2の昇降を抵抗無しで行える。
【0047】
なお、図ではストッパーリング23c,24cはクランプユニット20,21を下方から支持しているが、ストッパーリング23c,24cをクランプユニット20,21の内部に配置することも可能である。第1実施形態のバリエーションとして、雄ねじ28にばねを嵌め込んで、ばねの弾性力を利用して内筒9又は外筒10を抱持することも可能である。この場合は、摩擦抵抗の大きさを均一化できる。
【0048】
本実施形態は、内筒9に固定される上クランプユニット20と外筒10に固定される下クランプユニット21とに分離した構成であるが、回転抵抗付与装置として、上クランプユニット20と下クランプユニット21を上下離反不能に一体化し、内筒9と外筒10とに摩擦抵抗をかける仕様(一体型クランプユニット)としてもよい。
【0049】
具体的には、上下クランプユニット20,21における両第1リング部材23a,24aをボルト等で上下離反不能に連結するか、又は、1つの部材として製造して、これに第2リング部材23b,24bを回動可能に連結したらよい。
【0050】
この場合は、内筒9と外筒10の上下方向の相対動が規制されてしまうため、座の高さ調整は不能となるが、個人専用の椅子の場合は高さ調整する頻度も少ないため、実際上の支障は少なく、高さ調整を要する場合にはクランプユニットの抵抗を弱めるか、一時的に取り外すことで高さ調整すればよい。
【0051】
また、第1実施形態では、上下のクランプユニット20,21はロッド33によって相対回転不能で上下相対動自在に保持されているが、相対回転不能で上下相対動自在に保持する手段はこの限りではなく、例えば、下クランプユニット21の外形を多角形などの非円形として、上クランプユニット20は、下クランプユニット21に上から外嵌する筒状でかつ下クランプユニットと相対回転不能な平断面形状に構成することも可能である。この場合、座の高さ調整のストロークの範囲で、上下のクランプユニット20,21が高さ方向で嵌まり合うようにしておくと良い。
【0052】
以上の回転抵抗付与装置は、市場で流通する多くの回転椅子に後付けで着脱可能であり、小児が座を旋回させることで危険性がある幼児期にだけ使用して、幼児期を過ぎれば取り外して通常の事務用回転椅子として違和感なく利用することができる。
【0053】
(4).第2実施形態
次に、
図5以下に示す他の実施形態を説明する。
図5,6に示す第2実施形態では、ガスシリンダ7は第1実施形態と同様に内筒9と外筒10とが相対回転するタイプが使用されており、基体6を構成する筒部4に外筒10が昇降不能に嵌着している。基体6の筒部4には、下向きに延びるカバー筒37が固定されている。
【0054】
内筒9はこれと一体に回転する中心ロッド38を有しており、その下端部には小径部38aが形成されて、小径部38aの上半部にベアリング39が取り付けられて、ベアリング39は、受け部材40で支持されている。
【0055】
受け部材40の上端には外向きのフランジ41が形成されている一方、外筒10の下端面に受け板42が溶接等によって固定されており、フランジ41と受け板42との間にはメインばね(コイルばね)43が介在している。従って、内筒9及び中心ロッド38は、メインばね43によって上向きに付勢されている。
【0056】
中心ロッド38における小径部38aの下端、環状溝44が形成されている。他方、受け部材40の下部は2つ割りされて2つの部材40a,40bで構成されており、2つの部材40a,40bに設けた凸条を環状溝44に係合させている。従って、受け部材40は、中心ロッド38及び内筒9と一体に昇降する。
【0057】
内筒9の上部は、外筒10の上部に固定されたブッシュ46によって昇降自在及び回転自在に保持されている。そして、ブッシュ46の下面部に、2つ割方式の上ロック体47と、下ロック体48とが配置されており、上ロック体47には環状溝47aが形成されて、外筒10に外側からねじ込んだビス47bを環状溝47aに挿入することにより、上ロック体47を回転自在で落下不能にしている。更に、環状溝47aに配置したビス47bを内筒9に外周に形成したキー溝9aに挿入している。従って、内筒9と上ロック体47とは一緒に回転しつつ、上ロック体47は高さが一定で内筒9は自在に上下動する。内筒9と上ロック体47とはスプライン嵌合させてもよい。
【0058】
他方、下ロック体48の外周にはキー溝48aが形成されて、外筒10に外からねじ込み固定したビス48bがキー溝48aに挿通されている。従って、下ロック体48は、内筒9に対しては相対回転可能で外筒10に対しては所定寸法だけ昇降可能で相対回転不能に保持されている。上下のロック体47,48の対向面には、ギア状の係合歯47d,48cが形成されている。
【0059】
更に、下ロック体48の下方に、外筒10の内面にビス49aで固定されたストッパーリング49が配置されており、ストッパーリング49と下ロック体48との間に補助ばね50を配置している。更に、下ロック体48と受け部材40の上フランジ41とは、ワイヤー等のジョイント材51で繋がっている。
【0060】
本実施形態では、受け部材40を支持するメインばね43のばね力は、椅子の通常の使用者が着座すると圧縮して、小児が座2によじ登って乗っても圧縮しない強さに設定している。
図5は、中心ロッド38及び内筒9がメインばね43に抗して下降した状態(通常使用者の着座状態)を示しており、この状態では、下ロック体48はジョイント材51で下方に引かれて、上下ロック体47,48の係合歯47d,48cは離反している。従って、内筒9と外筒10とは相対回転して、座2は自在に回転する。
【0061】
他方、通常使用者が離席すると、
図6に示すように、受け部材40が上昇する。すると、下ロック体48は補助ばね50によって上昇して、上下のロック体47,48の係合歯47d,48cが噛み合って、上下のロック体47,48は相対回転不能になる。
【0062】
しかして、下ロック体48は外筒10に対して相対回転不能に保持されて、上ロック体47は内筒9に対して相対回転不能に保持されているため、内筒9と外筒10とは相対回転不能に保持される。すなわち、座2は回転不能に保持される。従って、保護者が目を離したすきに小児が座2に登って遊ぼうとしても座2及び内筒9は下降せずに、座2は回転不能に保持されている。従って、小児の安全性を確保できる。
【0063】
本実施形態では、カバー筒37の一側部に、受け部材40の昇降を検知するセンサ45を装着している。センサ45は無線送信機能を有しており、座2及び内筒9が僅かでも下降するとこれを検知して、使用状態を把握できる。そして、その事実を使用者のスマートフォンやパソコンに送信できる。
【0064】
例えば、保護者が離席して椅子から離れた状態で小児が座2によじ登って飛び跳ねることがあり、すると、座2は回転不能に保持されつつ上下に振動する現象が生じ得るが、センサ45によってその状態を検知して、保護者のスマートフォンにその事実を送信したり、椅子に設けたブザーを鳴動させたりすることができる。
【0065】
(5).第3,4実施形態
図7では、第3実施形態及び第4実施形態を示している。これらの実施形態では、ガスシリンダ7は内筒9と外筒10とが相対回転するタイプが使用されており、内筒9の上端部に、上向き露出に露出したテーパ部9bを有するヘッド9cが相対回転不能に嵌着している。ヘッド9cに制御ロッド9dが貫通している。
【0066】
また、内筒9の上部は、ブッシュ46を介して外筒10で昇降及び回転自在に保持されている。ブッシュ46は外筒10に対して相対回転不能に嵌着しており、キャップ46aで上から覆われている。
【0067】
そして、
図7(A)に示す第3実施形態では、ブッシュ46に、内外に貫通したタップ穴46bを設けて、タップ穴46bに外側から六角穴付きのロックボルト52をねじ込んでおり、ロックボルト52を介して、摩擦体53を内筒9の外周面に当接させている。従って、内筒9と外筒10との間の回転に対して、常に一定の摩擦抵抗が付与されている。なお、ロックボルト52は六角レンチ(図示せず)で回転操作される。摩擦体53とロックボルト52との間にばね等の弾性体を介在させることも可能である。
【0068】
図7(B)(C)に示す第4実施形態では、内筒9の上端部を掴持する一対のリング部材54,55を使用している。一方のリング部材54は、下方に垂下した側壁54aを有しており、他方のリング部材55は、外筒10を抱持して下向きに延びる二股状のアーム55aを備えており、側壁54aに設けた軸受け片54bと、アーム55aに設けた軸受け片55bとが、外筒10に突設したブラケット片56に水平状のピン57で連結されている。
【0069】
そして、側壁54aの下端にスリワリ付きのねじ58をねじ込んで、これをアーム55aの下端部に当てることにより、2つのリング部材54,55で内筒9の上端部を掴持して内筒9に対して回転抵抗を付与できるようになっている。2つのリング部材54,55は、軟質樹脂等の摩擦部材55cを介して内筒9に当接している。
【0070】
ブラケット片56は外筒10に溶接しているが、外筒10に巻き付けてビスで固定したバンドに設けることも可能であり、この場合は、外筒10に加工を施す必要はないため、既存の椅子への適用も容易である。また、ばねによって2つのリング部材54,55を掴持方向に付勢して、回動式又は回転式等のレバーによって2つのリング部材54,55を開き動させることも可能である。
【0071】
(6).第5実施形態
図8では第5実施形態を示している。この実施形態では、ガスシリンダ7は内筒9と外筒10とが相対回転しないタイプが使用されており、外筒10の下端部に下窄まりのテーパ部10aを形成して、テーパ部10aを、脚装置1の基体6に設けた筒部4に配置している。
【0072】
基体6における筒部4の上部には、外筒10のストレート状部分を摺動自在及び回転自在に保持する上ガイド60がビス61によって固定されている。また、基体6における筒部4の下端には内向きフランジ62を設けており、内向きフランジ62に嵌着した下ガイド63により、外筒10の下端に設けた下ストレート部10bを摺動自在及び回転自在に保持している。上下のガイド60,63は、PAGFやADCのような摩擦係数が小さい樹脂で作られている。
【0073】
基体6における筒部4の内部には、内周面を上窄まり(下広がり)に形成したアウターくさびリング64が配置されている。アウターくさびリング64は、筒部4の内面に設けた段部65と上ガイド60とによって上下動不能保持されている。また、筒部4に対して回転不能に保持されている。アウターくさびリング64の内側には、外筒10のテーパ部10aに嵌着したインナーくさびリング66が配置されおり、インナーくさびリング66は、下ガイド63(或いは内向きフランジ62)で支持されたばね67によって上向きに付勢されている。
【0074】
この実施形態では、通常の使用者が着座していない状態では、インナーくさびリング66がばね67によって上向きに付勢されており、その状態では、アウターくさびリング64とインナーくさびリング66と外筒10とは摩擦によって相対回転不能に保持されている。従って、座2も回転不能に保持されている。
【0075】
他方、ガスシリンダ7がばね67に抗して下降すると、インナーくさびリング66がアウターくさびリング64に対して回転自在になることにより、ガスシリンダ7及び座2は回転自在になる。ばね67は、小児が座2に載った程度では圧縮しない強さに設定されている。従って、保護者の目が届かない状態で小児が座2によじ登っても座2は回転せずに、小児の安全を確保できる。
【0076】
この実施形態は、既存の脚装置に対して、ガスシリンダ7はそのまま使用しつつ基体6だけを交換して置き換えることができる。従って、融通性が高い。
【0077】
(7).第6~9実施形態
図9では、第6,7実施形態を示している。このうち
図9(A)に示す第6実施形態では、ガスシリンダ7は非回転方式を使用しており、内筒9の上端のテーパ部がベース11に設けたブッシュ68に下方から嵌着している。符号69は座板、符号70はクッション材である。
【0078】
座2は座受け部材71に取り付けられており、座受け部材71はベース11で回転自在に保持されている。このため、座受け部材71には、ブッシュ68に対して回転自在に嵌まる筒状ボス部72を設けている。また、座受け部材71は、図示しないスライダーを介してベース11の外周部でも回転自在に支持されている。
【0079】
そして、この実施形態では、ベース11の一側部にロックボルト73をねじ込んでおり、ロックボルト73の先端が、平面半円状の摩擦部材74を介して座受け部材71の筒状ボス部72に当節されている。従って、この実施形態ではロックボルト73と摩擦部材74によって回転抵抗付与装置が構成されており、摩擦部材74によって座2の回転に抵抗が付与されている。
【0080】
図9のうち(B)に示す第7実施形態では、脚装置1は4本の棒足1aを備えており、ベース11に突設したセンターボス体75に座受け部材71が回転自在に装着されている。この点は第6実施形態と同じである。そして、この実施形態でも、摩擦部材74がロックボルト73で押されて座受け部材71の筒状ボス部72に当接することで、座2の回転に抵抗が付与されている。但し、この実施形態では、ベース11のうち筒状ボス部72に近い部位にナット76を溶接して、これにロックボルト73をねじ込んでいる。
【0081】
図10(A)に示す第8実施形態では、外筒10の上端部に2つ割方式の下リング部材78を固定している一方、内筒9の外周には、2つ割り方式の上リング部材79をねじ80等によって固定している。ねじ80は、上リング部材79の外周から突出しないように設定されている。
【0082】
また、下リング部材78には、上リング部材79の上に位置した内向きフランジ部78aを設けており、上リング部材79は、弾性体(摩擦リング)81を介して内向きフランジ部78aで下向きに付勢されている。従って、この実施形態では、上リング部材79の下面と下リング部材79の上面との間の摩擦か、又は、上リング部材79の上面と弾性体81との間の摩擦、若しくは、内向きフランジ部78aと弾性体81との間の摩擦により、内筒9の回転に対する抵抗が付与される。
【0083】
この実施形態では、上リング部材79は内筒9に昇降不能に固定されている。従って、座2の高さを変える場合は、ねじ80を緩めて上リング部材79による内筒9の掴持を解除することになる。
【0084】
図10(B)(C)に示す第9実施形態では、内筒9と外筒10とが相対回転するガスシリンダ7が使用されており、内筒9の上端がベース11に嵌着している。そして、回転抵抗付与装置として、内筒9を囲う筒体82と、外筒10の上端部にビス止め等で固定されたリング体85とを備えている。筒体82及びリング体85は、2つ割り方式としてフランジ接合されていてもよい。
【0085】
筒体82の上端にはフランジ82aが形成されており、フランジ82aがベース11の下面にビス83で固定されている。また、筒体82は外筒10を囲う大きさであり、内周面に外側スプライン歯84が周方向に多数形成している。筒体82は例えば合成樹脂製であり、基本的には剛体構造である。
【0086】
他方、リング体85は弾性変形する軟質樹脂で製造されており、外周面に内側スフライン歯86を周方向に多数形成しており、外側スプライン歯84は内側スプライン歯86とが若干のクリアランスをもって噛み合っている。従って、座2は抵抗無して昇降させることができる。他方、床に足を付けた通常使用者が座に回転トルクを付与すると、内側スプライン歯86が弾性変形することにより、外側スプライン歯84が内側スプライン歯86を乗り越えていく。すなわち、内側スプライン歯86の弾性変形を利用して、座2の回転が許容されている。
【0087】
実施形態ではリング体85に内側スプライン歯86を一体に形成したが、内側スプライン歯86が形成されたリング体85と外筒10との間に弾性体を介在させることも可能である。また、外側スプライン歯84を内側スプライン歯86から逃がすことによって外筒82の回転を許容することも可能である。筒体82の上端部は内筒9の状態部に固定してもよい。
【0088】
この実施形態では、座の回転トルクはリング体85に対して偶力として作用するため、こじれを無くして回転抵抗付与装置の耐久性を向上できる利点がある。筒体82及びリング体85を2つ割方式に構成すると、取り付けが容易になる。
【0089】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は他にも様々に具体化できる。例えば、回転抵抗付与装置としては、互いに噛み合うクラッチ部材を利用することも可能である。また、本願発明の回転抵抗付与装置は、回転式のガスシリンダに広く適用して、什器の旋回式部材の回転制御に適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本願発明は椅子に具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0091】
1 脚装置
2 座
3 背もたれ
4 筒部
5 脚羽根
6 基体
7 脚支柱を構成するガスシリンダ
9 ガスシリンダの内筒
10 ガスシリンダの外筒
11 ベース
20 上クランプユニット(内筒対応クランプユニット)
21 下クランプユニット(外筒対応クランプユニット)
23a 上クランプユニットの第1リング部材(内筒対応リング部材)
23b 上クランプユニットの第2リング部材(内筒対応リング部材)
24a 下クランプユニットの第1リング部材(外筒対応リング部材)
24b 上クランプユニットの第2リング部材(外筒対応リング部材)
25,26 ライナー部材(摩擦体)
28 雄ねじ
31 ナット
33 連結部材の一例としてのロッド
40 受け部材
52 ロックボルト
54,55 リング部材
60,63 ガイド
64,66 くさびリング