(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093852
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】水洗大便器
(51)【国際特許分類】
E03D 1/28 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
E03D1/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210447
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】竹谷 知祥
(72)【発明者】
【氏名】谷沢 勝美
(72)【発明者】
【氏名】松崎 貴
(72)【発明者】
【氏名】小関 剛
(72)【発明者】
【氏名】頭島 周
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039AC04
2D039AD04
2D039AD06
2D039BA16
2D039BB01
2D039BB02
2D039FD01
(57)【要約】
【課題】便器の排水性能を確保しつつ、オーバーフロー流路から貯水タンクへの臭気又は異物等の混入を確実に防ぐことができると共に、便器全体の大型化を抑制して、便器のローシルエット化も実現することができる水洗大便器を提供する。
【解決手段】本発明の水洗大便器1は、貯水タンク4と、便器本体2と、貯水タンクと便器本体とを接続し、貯水タンク内の洗浄水が規定以上の水位を上回った際に便器本体に洗浄水をオーバーフローさせるオーバーフロー流路36と、を有し、排水トラップ部16は、屈曲管路16aと、下降管路16bと、を備え、頂部16eよりも上流側の屈曲管路内には封水WL0が形成されており、オーバーフロー流路は、貯水タンクの上部に接続される上流側接続部34aと、頂部よりも上流側の封水が形成される屈曲管路に接続される下流側接続部36dと、を備えている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、
洗浄水を貯水する貯水タンクと、
汚物を受けるボウル部と、このボウル部内に洗浄水を吐水する吐水口と、上記ボウル部の下方に入口部が接続されて上記ボウル部内の汚物を排出する排水流路の一部を形成する排水トラップ部と、を備えた便器本体と、
上記貯水タンクから上記便器本体まで延びる洗浄水供給流路と、
上記貯水タンクと上記便器本体とを接続し、上記貯水タンク内の洗浄水が規定以上の水位を上回った際に上記便器本体に洗浄水をオーバーフローさせるオーバーフロー流路と、を有し、
上記排水トラップ部は、上記入口部の後方且つ下方の最下端部まで下降した後にその後方且つ上方の頂部まで上昇する排水流路を形成する屈曲管路と、この屈曲管路の頂部から後方且つ下方に下降する排水流路を形成する下降管路と、を備え、上記頂部よりも上流側の上記屈曲管路内には封水が形成されており、
上記オーバーフロー流路は、上記貯水タンクの上部に接続される上流側接続部と、上記頂部よりも上流側の上記封水が形成される上記屈曲管路に接続される下流側接続部と、を備えていることを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
上記屈曲管路は、上記最下端部から上記頂部に向かって上昇する上昇部を備えており、上記オーバーフロー流路の下流側接続部は、上記上昇部に接続されている請求項1記載の水洗大便器。
【請求項3】
上記オーバーフロー流路の下流側接続部は、上記上昇部の天面に接続されている請求項2記載の水洗大便器。
【請求項4】
上記オーバーフロー流路の下流側接続部は、上記屈曲管路の平面視において、上記ボウル部の出口部と重ならない位置に設けられている請求項1記載の水洗大便器。
【請求項5】
上記オーバーフロー流路は、さらに、少なくとも1つのシール部を備えており、このシール部のうちの上記上昇部に近接する側に設けられたシール部は、上記封水よりも上方に設けられている請求項3記載の水洗大便器。
【請求項6】
上記オーバーフロー流路は、さらに、上記貯水タンクから上記オーバーフロー流路への洗浄水のオーバーフロー時には上記オーバーフロー流路を開放する一方、上記貯水タンクの通常使用時である非オーバーフロー時に上記オーバーフロー流路を閉止する閉止弁又は逆止弁を備えており、上記閉止弁が閉止した状態では、便器洗浄時に上記オーバーフロー流路内の空気が上記排水トラップ部の上記屈曲管路内に巻き込まれて上記屈曲管路内の洗浄水の流速が低下することを防ぐように構成され、上記逆止弁が閉止した状態では、便器洗浄時に上記排水トラップ部の上記屈曲管路内の洗浄水が上記オーバーフロー流路内に入り込むことが規制されるように構成されている請求項1乃至5の何れか1項に記載の水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗大便器に係り、特に、洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器として、例えば、特許文献1-3に記載されているように、洗浄水を貯水する貯水タンクと、この貯水タンクから便器本体まで延びる洗浄水供給流路と、貯水タンク内の洗浄水が規定以上の水位を上回った際に洗浄水をオーバーフローさせるオーバーフロー流路とを備えたものが知られている。
まず、上述した特許文献1に記載されている従来の水洗大便器においては、貯水タンク主タンク(下タンク)と、この下タンクの上方(貯水タンクの上部)に設けられた受水部と、この受水部に接続されているオーバーフロー流路(オーバーフロー管)と、このオーバーフロー管に設けられて一定量だけ貯留可能な貯留部(トラップ)とを備えている。また、貯水タンクの受水部からオーバーフロー流路にオーバーフローした洗浄水が貯留部で満水となって封水を形成し、この貯留部の封水によってオーバーフロー流路内の流路が遮断されるようになっている。これにより、オーバーフロー管の下流側から入り込んだ臭気や異物(虫等)が貯水タンク内に侵入できないようになっている。
つぎに、上述した特許文献2に記載されている従来の水洗大便器においては、洗浄水を貯水する貯水タンクの上部から延びるオーバーフロー流路(オーバーフローバイパス流路)が、排水トラップ管路内の封水が形成される部分よりも下流側の排水流路に接続されている。このオーバーフロー流路は、臭気の逆流や害虫の侵入を抑制する臭気逆流抑制部を備えており、この臭気逆流抑制部により、排水トラップ管路の封水よりも下流側の排水流路の臭気がオーバーフロー流路を介して貯水タンク側に侵入することが抑制されるようになっている。
また、上述した特許文献3に記載されている従来の水洗大便器においては、便器本体がその鋳込み成形時に未硬化状態の泥しょうを下方に排出するための排泥通路を備えている。この排泥通路は、便器本体の吐水孔の上流側に設けられた通水部と便鉢部内の汚物を排出するためのトラップ部の封水とを接続しており、トラップ部の封水がその下流側からの臭気の逆流を防止することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-48504号公報
【特許文献2】特開2020-117927号公報
【特許文献3】特開2018-138757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に記載されている従来の水洗大便器においては、貯水タンクの受水部に接続されたオーバーフロー流路の貯留部が、便器洗浄に関わらず常時貯留されている下タンクよりも上方に設けられているため、貯水タンクの受水部の洗浄水がオーバーフロー流路にオーバーフローしない限り、オーバーフロー流路の貯留部が枯渇(水枯れ)するおそれがある。よって、貯留部がオーバーフロー流路における下流側からの臭気や異物の侵入を遮断する封水機能を果たせなくなるおそれがあるという問題ある。
また、近年、意匠性や介護性を向上させるために、水洗大便器全体の上端高さ位置を比較的に低く設定した、いわゆる、「便器のローシルエット化」のニーズが高まっている。しかしながら、上述した特許文献1に記載されている従来の水洗大便器においては、オーバーフロー流路の貯留部が貯水タンクの上部に設けられた受水部に接続されることにより、水洗大便器の上方かつ貯水タンクの外部に設けられているため、水洗大便器全体の上端高さが比較的高い位置に設定され、便器のローシルエット化が難しく、便器全体も大型化するという問題がある。
また、上述した特許文献1に記載されている従来の水洗大便器においては、貯留部自体の設置スペースも確保しなければならないため、その分、オーバーフロー流路も複雑になるため、製造上においても歩留まりも低くなりという問題もある。
つぎに、上述した特許文献2に記載されている従来の水洗大便器においては、オーバーフロー流路が、排水トラップ管路内の封水が形成される部分よりも下流側の排水流路に接続されているため、その接続箇所によっては、オーバーフロー流路の存在が排水流路の排水性能の性能低下を招く要素となるおそれがあるという問題がある。
同様に、上述した特許文献3に記載されている従来の水洗大便器においても、便器本体における排泥通路とトラップ部の封水との接続箇所によっては、排泥通路の存在が排水流路の排水性能の性能低下を招く要素となるおそれがあるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題を解決するためになされたものであり、便器の排水性能を確保しつつ、オーバーフロー流路から貯水タンクへの臭気又は異物等の混入を確実に防ぐことができると共に、便器全体の大型化を抑制して、便器のローシルエット化も実現することができる水洗大便器を提供すること目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、洗浄水を貯水する貯水タンクと、汚物を受けるボウル部と、このボウル部内に洗浄水を吐水する吐水口と、上記ボウル部の下方に入口部が接続されて上記ボウル部内の汚物を排出する排水流路の一部を形成する排水トラップ部と、を備えた便器本体と、上記貯水タンクから上記便器本体まで延びる洗浄水供給流路と、上記貯水タンクと上記便器本体とを接続し、上記貯水タンク内の洗浄水が規定以上の水位を上回った際に上記便器本体に洗浄水をオーバーフローさせるオーバーフロー流路と、を有し、上記排水トラップ部は、上記入口部の後方且つ下方の最下端部まで下降した後にその後方且つ上方の頂部まで上昇する排水流路を形成する屈曲管路と、この屈曲管路の頂部から後方且つ下方に下降する排水流路を形成する下降管路と、を備え、上記頂部よりも上流側の上記屈曲管路内には封水が形成されており、上記オーバーフロー流路は、上記貯水タンクの上部に接続される上流側接続部と、上記頂部よりも上流側の上記封水が形成される上記屈曲管路に接続される下流側接続部と、を備えていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、オーバーフロー流路の上流側接続部が貯水タンクの上部に接続されると共に、オーバーフロー流路の下流側接続部が便器本体の排水トラップ部の頂部よりも上流側の封水が形成される屈曲管路に接続されているため、屈曲管路の頂部よりも下流側の排水流路内の臭気又は異物等がオーバーフロー流路内に混入することを排水トラップ部の屈曲管路の頂部よりも上流側の封水によって抑制することができる。
したがって、オーバーフロー流路内に臭気又は異物等が混入することを抑制するために洗浄水が貯水された貯水部等を設ける必要がなく、排水トラップ部の屈曲管路の頂部よりも上流側の封水により上述した貯水部と同様な臭気又は異物等の混入を抑制する機能を果たすことができるため、便器全体の大型化を抑制して、便器のローシルエット化も実現することができる。
【0007】
本発明において、好ましくは、上記屈曲管路は、上記最下端部から上記頂部に向かって上昇する上昇部を備えており、上記オーバーフロー流路の下流側接続部は、上記上昇部に接続されている。
このように構成された本発明においては、オーバーフロー流路の下流側接続部を排水トラップ部の屈曲管路における最下端部から頂部に向かって上昇する上昇部に接続することにより、貯水タンクの上部に接続されるオーバーフロー流路の上流側接続部と下流側接続部との流路距離を比較的短く設定することができる。
したがって、オーバーフロー流路全体が占有するスペースを抑制することができるため、オーバーフロー流路の周辺部品の取り合いを確保することができる。
よって、便器全体が大型化することなく、便器のローシルエット化も実現することができる。
また、排水トラップ部の屈曲管路における最下端部から頂部に向かって上昇する上昇部を流れる排水は排水流路の中でも流速が遅いため、排水トラップ部の屈曲管路の上昇部内の汚物がオーバーフロー流路内に逆流することを抑制することができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、上記オーバーフロー流路の下流側接続部は、上記上昇部の天面に接続されている。
このように構成された本発明においては、オーバーフロー流路の下流側接続部が、排水トラップ部の屈曲管路における上昇部の中でも淀みが生じやすい天面に接続されているため、排水トラップ部の屈曲管路の上昇部内の汚物がオーバーフロー流路内に逆流することを抑制することができる。
また、万一、排水トラップ部の屈曲管路の上昇部内の汚物がオーバーフロー流路内に逆流して入り込んだ後、再び上昇部内に排出されたとしても、使用者から目視できないため、見栄えも良い。
さらに、オーバーフロー流路の下流側接続部と排水トラップ部の屈曲管路の上昇部の天面との接続箇所が使用者から見えないため、見栄えが良い。
【0009】
本発明において、好ましくは、上記オーバーフロー流路の下流側接続部は、上記屈曲管路の平面視において、上記ボウル部の出口部と重ならない位置に設けられている。
このように構成された本発明においては、オーバーフロー流路の下流側接続部が、排水トラップ部の屈曲管路の平面視において、便器本体のボウル部の出口部と重ならない位置に設けられているため、使用者から便器本体のボウル部の出口部が見えていたとしても、オーバーフロー流路の下流側接続部が使用者から見えないため、見栄えが良い。
【0010】
本発明において、好ましくは、上記オーバーフロー流路は、さらに、少なくとも1つのシール部を備えており、このシール部のうちの上記上昇部に近接する側に設けられたシール部は、上記封水よりも上方に設けられている。
このように構成された本発明においては、オーバーフロー流路の少なくとも1つのシール部のうち、排水トラップ部の屈曲管路の上昇部に近接する側に設けられたシール部が、排水トラップ部の屈曲管路内の封水よりも上方に設けられているため、通常時のシール部が封水に浸かることがない。
したがって、水洗大便器を長期間使用したとしても、オーバーフロー流路のシール部の劣化速度を著しく遅くすることができるため、オーバーフロー性能を低下させることなく、通常の水洗大便器の使用が可能である。
【0011】
本発明において、好ましくは、上記オーバーフロー流路は、さらに、上記貯水タンクから上記オーバーフロー流路への洗浄水のオーバーフロー時には上記オーバーフロー流路を開放する一方、上記貯水タンクの通常使用時である非オーバーフロー時に上記オーバーフロー流路を閉止する閉止弁又は逆止弁を備えており、上記閉止弁が閉止した状態では、便器洗浄時に上記オーバーフロー流路内の空気が上記排水トラップ部の上記屈曲管路内に巻き込まれて上記屈曲管路内の洗浄水の流速が低下することを防ぐように構成され、上記逆止弁が閉止した状態では、便器洗浄時に上記排水トラップ部の上記屈曲管路内の洗浄水が上記オーバーフロー流路内に入り込むことが規制されるように構成されている。
このように構成された本発明においては、貯水タンクからオーバーフロー流路への洗浄水のオーバーフロー時には、オーバーフロー流路の閉止弁又は逆止弁がオーバーフロー流路を開放するため、オーバーフロー性能を確保することができる。
一方、貯水タンクの通常使用時である非オーバーフロー時には、オーバーフロー流路の閉止弁又は逆止弁がオーバーフロー流路を閉止する。
これにより、オーバーフロー流路の逆止弁が閉止した状態においては、便器洗浄時にオーバーフロー流路内の空気が排水トラップ部の屈曲管路内に巻き込まれて屈曲管路内の洗浄水の流速が低下することを防ぐことができるため、便器洗浄性能が低下することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の水洗大便器によれば、便器の排水性能を確保しつつ、オーバーフロー流路から貯水タンクへの臭気又は異物等の混入を確実に防ぐことができると共に、便器全体の大型化を抑制して、便器のローシルエット化も実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態による水洗大便器の全体構成図である。
【
図2】本発明の第1実施形態による水洗大便器の平面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態による水洗大便器の背面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態による水洗大便器の便器本体における排水トラップ部及びオーバーフロー流路の部分を拡大した部分拡大側面断面図である。
【
図5A】本発明の第1実施形態による水洗大便器の便器洗浄時におけるオーバーフロー流路の逆止弁の動作を概略的に示す説明図である。
【
図5B】本発明の第1実施形態による水洗大便器のオーバーフロー時におけるオーバーフロー流路の逆止弁の動作を概略的に示す説明図である。
【
図6A】本発明の第2実施形態による水洗大便器の便器洗浄時におけるオーバーフロー流路の閉止弁の動作を概略的に示す説明図である。
【
図6B】本発明の第2実施形態による水洗大便器のオーバーフロー時におけるオーバーフロー流路の閉止弁の動作を概略的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の第1実施形態による水洗大便器について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による水洗大便器の全体構成図である。
まず、
図1に示すように、本発明の第1実施形態による水洗大便器1は、その便器本体2の後部がトイレ室Tの壁W(又はキャビネットCの前壁W)に固定された、いわゆる、「壁掛け式の水洗大便器」である。
また、
図1に示すように、本実施形態の壁掛け式の水洗大便器1は、陶器製の便器本体2と、この便器本体2に供給する洗浄水を貯留する貯水タンク4を備えたタンク装置6と、このタンク装置6の下流側に設けられ且つ貯水タンク4から供給される洗浄水を加圧して便器本体2に供給するポンプ装置8とを備えている。
【0015】
つぎに、
図2及び
図3は、本発明の第1実施形態による水洗大便器の平面図及び背面図をそれぞれ示す。
図1~
図3に示すように、タンク装置6の貯水タンク4は、便器本体2の下方に組み込まれる主タンク4aと、便器本体2の後方かつ上方に組み込まれた補助タンク4bと、上下方向に延びて主タンク4aと補助タンク4bとを連結する連結管4cとを備えている。これらの主タンク4a及び補助タンク4bは、連結管4cにより互いに上下方向に連通している。
さらに、ポンプ装置8は、便器本体2の内部に組み込まれており、貯水タンク4の主タンク4aと連通している。
【0016】
つぎに、
図1~
図3に示すように、便器本体2は、具体的には、汚物を受ける汚物受け面10と、この汚物受け面10の上縁に形成されるリム部12とを含むボウル部14を備えている。
また、便器本体2は、ボウル部14内の汚物を排出する排水流路を形成する排水トラップ部16と、ボウル部14及び排水トラップ部16を外側から取り囲むように形成されるスカート部18と、を備えている。
ここで、スカート部18については、便器本体2と一体に形成された陶器製のスカート部に限られず、便器本体2とは別体に設けられて且つ便器本体2に対して外側から覆うように取り外し可能に取り付けられたパネル部材等も含む。
【0017】
つぎに、
図1~
図3に示すように、排水トラップ部16は、より具体的には、上流側から下流側に向かって、屈曲管路16a及び下降管路16bをそれぞれ備えている。
まず、排水トラップ部16の屈曲管路16aは、その入口部16cがボウル部14の下方に接続されており、この入口部16cから後方かつ下方の最下端部16dまで延びた後、その後方かつ上方の頂部16eまで上昇する排水流路を形成している。
つぎに、排水トラップ部16の下降管路16bは、屈曲管路16aの頂部16eから後方且つ下方に下降した後に、その後方の排水ソケット20(
図1参照)に接続される排水流路を形成している。
ここで、
図1に示すように、排水トラップ部16の屈曲管路16aにおける頂部16eよりも上流側(前方側)の領域内には、封水(封水面WL0)が形成されている。
【0018】
また、
図1に示すように、排水トラップ部16の下降管路16bは、さらに具体的には、排水トラップ部16の屈曲管路16aの頂部16eから後方且つ下方に向かって傾斜する底面を含む排水流路を形成する傾斜部16fと、この傾斜部16fの下流端から後方の排水ソケット20に向かって水平に延びる排水流路を形成する水平部16gとを備えている。
ここで、
図1に示すように、便器本体2の後方の壁Wの裏側(又はキャビネットC内)には、排水管22が設置されている。この排水管22は、床面Fよりも下方から上方に延びた後、便器本体2側(前方側)に差し向けられており、その前端(上流端)に位置する入口部22aが排水ソケット20を介して排水トラップ部16の後端(下流端)の出口部16hに接続されている。
【0019】
つぎに、
図1~
図3に示すように、タンク装置6は、貯水タンク4の補助タンク4bの上流側に接続された給水管24を備えている。この給水管24の最上流側は、水道等の外部の給水源26(
図1参照)に接続されている。
また、
図1に示すように、給水管24において、給水源26側(上流側)から下流側に向かって、止水栓28、バルブユニット30がそれぞれ設けられている。このバルブユニット30については、その具体的な説明を省略するが、定流量弁(図示せず)、この定流量弁(図示せず)の下流側に設けられた開閉弁であるダイヤフラム弁(図示せず)、この開閉弁(ダイヤフラム弁)を開閉させる電磁弁(図示せず)等をそれぞれ備えている。
さらに、
図2及び
図3に示すように、給水管24の下流端には、給水ノズル24aが設けられている。この給水ノズル24aは、貯水タンク4の補助タンク4bの内部に向かって下方に差し向けられており、給水管24の洗浄水を貯水タンク4内に給水する給水部となっている。
例えば、バルブユニット30の電磁弁(図示せず)の作動によりダイヤフラム弁(図示せず)が開弁されると、給水源26から水道等の給水圧で給水管24内に供給された洗浄水が、止水栓28からバルブユニット30の定流量弁(図示せず)を通過することにより流量が一定に調整された後、ダイヤフラム弁(図示せず)を通過するようになっている。そして、バルブユニット30を通過した洗浄水は、給水ノズル24aから貯水タンク4の補助タンク4b内に給水された後、連結管4cを経て主タンク4a内に給水されるようになっている。
【0020】
ちなみに、主タンク4a内に給水された洗浄水は、ポンプ装置8が作動することにより、便器本体2側へ供給されるようになっている。
より具体的には、
図1及び
図2に示すように、便器本体2は、その左右のリム部12にそれぞれ設けられた2つのリム吐水口2a,2b(第1リム吐水口2a、第2リム吐水口2b)を備えており、各リム吐水口2a,2bからボウル部14内に吐水(リム吐水)が行われるようになっている。
また、ポンプ装置8の下流側には吐水管32が接続されており、この吐水管32の下流端は、便器本体2の主導水路2cの入口2dに接続されている。
さらに、便器本体2の主導水路2cは、その下流側が左右に分岐した2つのリム導水路2e,2f(第1リム導水路2e、第2リム導水路2f)を備えており、各リム導水路2e,2fの下流側は、第1リム吐水口2a及び第2リム吐水口2bのそれぞれに接続されている。
なお、本実施形態の水洗大便器1においては、タンク装置6の貯水タンク4からポンプ装置8及び吐水管32を経て便器本体2の主導水路2cの入口2dまで延びる流路を洗浄水供給流路とする。
【0021】
ここで、
図1~
図3に示すように、補助タンク4bの側壁4dの一部において、便器本体2のリム部12の上面12aよりも低い位置にオーバーフロー口4eが設けられている。このオーバーフロー口4eには、可撓性のホース部材等からなるオーバーフロー管34が接続されている。
このオーバーフロー管34は、タンク装置6の動作不良や停電による停止等の異常時において、貯水タンク4の補助タンク4b内の洗浄水が規定以上の水位(オーバーフロー水位WL1)を上回った際に、補助タンク4b内の洗浄水について、主タンク4aを経由させることなく、補助タンク4bのオーバーフロー口4eから便器本体2の排水トラップ部16の下降管路16b内に直接的に通水(オーバーフロー)させるためのオーバーフロー流路36を形成している。
また、このオーバーフロー流路36の詳細については後述するが、オーバーフロー管34内に形成される上流側オーバーフロー流路36aと、オーバーフロー管34の下流側の便器本体2内に形成される下流側オーバーフロー流路36bとを備えている。
【0022】
つぎに、本実施形態の水洗大便器1は、ポンプ装置8の作動を制御するコントローラ(図示せず)を備えており、このコントローラ(図示せず)は、便器本体2の一部に配置されている。
また、タンク装置6は、主タンク4aの内の水位を検知するフロートスイッチ(図示せず)を備えている。
ここで、バルブユニット30の電磁弁(図示せず)の開閉動作は、フロートスイッチ(図示せず)が検知した主タンク4a内の水位に基づいてコントローラ(図示せず)により制御されるようになっている。
また、ポンプ装置8の作動についても、フロートスイッチ(図示せず)が検知した主タンク4a内の水位に基づいてコントローラ(図示せず)により制御されるようになっている。
例えば、フロートスイッチ(図示せず)が検知した主タンク4a内の水位が所定以下である場合には、バルブユニット30の電磁弁(図示せず)が開弁すると共にバルブユニット30のダイヤフラム弁(図示せず)が開弁することにより、給水管24が開放され、給水ノズル24aから貯水タンク4の補助タンク4bへの給水が行われ、この補助タンク4b内の洗浄水が連結管4cを経て主タンク4aに貯水されるようになっている。
同時に、ポンプ装置8が作動し、主タンク4a内の洗浄水が、ポンプ装置8から吐水管32を経て便器本体2の主導水路2cに圧送された後、各リム導水路2e,2fから各リム吐水口2a,2bに供給されるようになっている。
これらの結果、各リム吐水口2aから吐水されたリム吐水により便器洗浄が行われる、いわゆる、「リム吐水100%による便器洗浄」による便器洗浄が実行されるようになっている。
そして、主タンク4a内の水位が所定水位まで到達すると、バルブユニット30の電磁弁(図示せず)が閉弁すると共にダイヤフラム弁(図示せず)が閉弁することにより、給水管24が閉鎖され、ポンプ装置8が停止されるようになっている。
【0023】
つぎに、
図1~
図5Bを参照して、本実施形態の水洗大便器1のオーバーフロー流路36(上流側オーバーフロー流路36a、下流側オーバーフロー流路36b)の詳細について説明する。
図4は、本発明の第1実施形態による水洗大便器の便器本体における排水トラップ部及びオーバーフロー流路の部分を拡大した部分拡大側面断面図である。
まず、
図1~
図4に示すように、上流側オーバーフロー流路36aについては、オーバーフロー管34によって形成される流路である。このオーバーフロー管34は、便器本体2のリム部12の上面12aよりも低い位置に設けられた貯水タンク4の補助タンク4bの側壁4dのオーバーフロー口4eに接続される上流側接続部34aと、便器本体2側に接続される下流側接続部34bとを備えている。
【0024】
つぎに、
図4に示すように、排水トラップ部16の屈曲管路16aは、その最下端部16dから頂部16eに向かって上昇する上昇部16iを備えている。
また、下流側オーバーフロー流路36bについては、陶器製の便器本体2におけるボウル部14の後壁14aとその後方に形成される排水トラップ部16の屈曲管路16aの上昇部16iの前壁16jとの間に形成されている。
さらに、
図3及び
図4に示すように、排水トラップ部16の屈曲管路16aの上昇部16iは、その前壁16jの上端から後方に延びる最上壁16kを備えている。また、便器本体2は、この最上壁16kの前端から上方に延びる縦壁2gと、この縦壁2gを前後方向に貫く取付穴2hを備えている。
これにより、オーバーフロー管34の下流側接続部34bは、この便器本体2の縦壁2gを前後方向に貫く取付穴2hに挿入された状態で接続され、その外周が保持部材38によって保持され、取付穴2hに対して水密に固定されている。
すなわち、上流側オーバーフロー流路36aについては、オーバーフロー管34の上流側接続部34aから下流側接続部34bまでの管路となっている。
【0025】
一方、下流側オーバーフロー流路36bについては、その上流端36cがオーバーフロー管34の下流側接続部34bよりも下流側の便器本体2の取付穴2hの前方側に接続されており、この取付穴2hの前方側から下方に延びて便器本体2のボウル部14の後壁14aと排水トラップ部16の屈曲管路16aにおける上昇部16iの前壁16jとの間に形成される陶器製の流路となっている。
また、
図2及び
図4に示すように、排水トラップ部16の屈曲管路16aにおける上昇部16iの前壁16jにおいて、頂部16e及び封水面WL0よりも下方の天面16lには前後方向に貫く貫通穴36dが形成されており、この貫通穴36dは、下流側オーバーフロー流路36bの下流端及び下流側接続部となっている。
これらにより、
図4に示すように、オーバーフロー流路36全体で言えば、貯水タンク4の上部(補助タンク4bのオーバーフロー口4e)に接続されるオーバーフロー管34の上流側接続部34aがオーバーフロー流路36の上流側接続部である。一方、排水トラップ部16における頂部16eよりも上流側の封水(封水面WL0)が形成される屈曲管路16aの上昇部16iの前壁16jの天面16lに形成される貫通穴36dがオーバーフロー流路36の下流側接続部36dとなっている。
なお、本実施形態においては、
図4に示すように、屈曲管路16aの上昇部16iの前壁16jにおける貫通穴36dについて、封水面WL0よりも下方でかつ前壁16jの下端よりも上方に設けた形態について説明するが、封水面WL0よりも下方であれば、前壁16jの下端付近の水平部分に設けてもよい。
【0026】
つぎに、
図2及び
図4に示すように、オーバーフロー流路36の下流側接続部36dは、排水トラップ部16の屈曲管路16aの側面断面視及び平面視において、排水トラップ部16の入口部16c及びボウル部14の出口部14bに対して上方方向に重ならない位置に設けられている。
また、
図4に示すように、オーバーフロー流路36においては、その上流側オーバーフロー流路36aを形成するオーバーフロー管34の上流側接続部34a及び下流側接続部34bのそれぞれが接続される箇所に対して、Oリング等のシール部材40がそれぞれ水密に設けられている。
これらのシール部材40のうち、排水トラップ部16の屈曲管路16aの上昇部16iに近接する側に設けられたオーバーフロー管34の下流側接続部34bに設けられたシール部材40については、封水面WL0よりも上方に設けられている。
さらに、上流側オーバーフロー流路36a内には、詳細は後述する逆止弁42が設けられている。
【0027】
つぎに、
図5A及び
図5Bを参照して、本実施形態の水洗大便器1の逆止弁42の構造とその動作について説明する。
図5A及び
図5Bは、本発明の第1実施形態による水洗大便器の便器洗浄時及びオーバーフロー時のそれぞれにおけるオーバーフロー流路の逆止弁の動作を概略的に示す説明図である。
図5A及び
図5Bに示すように、上流側オーバーフロー流路36aの逆止弁42は、補助タンク4bのオーバーフロー口4eとオーバーフロー管34の上流側接続部34aとの接続部である上流側オーバーフロー流路36aの上流端36eに設けられている。
この逆止弁42は、より具体的には、オーバーフロー口4eに対して開閉可能に設けられた弁体42aと、この弁体42aに固定されて補助タンク4b内の水位に応じて上下動するフロート部42bとを備えている。
また、逆止弁42の弁体42aは、その上端が上流側オーバーフロー流路36a内に対してヒンジ結合されたヒンジ部となっており、補助タンク4b内の水位に応じたフロート部42bの浮力の作用により、弁体42aが補助タンク4bのオーバーフロー口4eを閉止した状態(
図5A参照)から開放した状態(
図5B参照)まで回動することができるようになっている。
ここで、弁体42aは、オーバーフロー口4eを閉止した状態(
図5A参照)では直立した姿勢となっており、弁体42aが開放した状態(
図5B参照)では、その上端のヒンジ部を中心に補助タンク4bのオーバーフロー口4eに対して外側(下流側)に向かって回動するようになっている。
【0028】
すなわち、
図5Aに示すように、リム吐水W1により便器本体2のボウル部14内の便器洗浄が行われる貯水タンク4の通常使用時においては、逆止弁42の弁体42aがオーバーフロー口4eを閉止している。
これにより、排水トラップ部16の屈曲管路16a内の洗浄水(排水W2)の一部W2aが貫通穴36dからオーバーフロー流路36の内に入り込むことが規制されるようになっている。
一方、
図5Bに示すように、タンク装置6の動作不良や停電による停止等の異常時において、主タンク4a内の水位が満水水位よりも上昇し、補助タンク4b内の水位が所定の高さ水位、すなわち、貯水タンク4の補助タンク4b内のオーバーフロー水位WL1まで上昇すると、逆止弁42の弁体42aがフロート部42bの浮力により開弁し、補助タンク4bのオーバーフロー口4eを開放するようになっている。
これにより、オーバーフロー口4eからオーバーフロー流路36内に流出した洗浄水(オーバーフロー洗浄水W3)について、逆流させることなく、オーバーフロー流路36の貫通穴36dから便器本体2の排水トラップ部16の屈曲管路16a内に流出(オーバーフロー)させることができるようになっている。
【0029】
つぎに、
図1~
図5Bを参照して、上述した本発明の第1実施形態による水洗大便器1の作用について説明する。
まず、本発明の第1実施形態による水洗大便器1によれば、上流側オーバーフロー流路36aを形成するオーバーフロー管34の上流側接続部34aが貯水タンク4の上部(補助タンク4b)に接続されると共に、オーバーフロー流路36の下流側接続部36dが便器本体2の排水トラップ部16の頂部16eよりも上流側の封水(封水面WL0)が形成される屈曲管路16aに接続されている。
これにより、排水トラップ部16の屈曲管路16aの頂部16eよりも下流側の排水流路内の臭気又は異物等がオーバーフロー流路36内に混入することを排水トラップ部16の屈曲管路16aの頂部16eよりも上流側の封水(封水面WL0)によって抑制することができる。
したがって、オーバーフロー流路36内に臭気又は異物等が混入することを抑制するために洗浄水が貯水された貯水部等を設ける必要がなく、排水トラップ部16の屈曲管路16aの頂部16eよりも上流側の封水(封水面WL0)により上述した貯水部と同様な臭気又は異物等の混入を抑制する機能を果たすことができるため、水洗大便器1全体の大型化を抑制して、水洗大便器1のローシルエット化も実現することができる。
【0030】
また、本実施形態による水洗大便器1によれば、オーバーフロー流路36の下流側接続部36dを排水トラップ部16の屈曲管路16aにおける最下端部16dから頂部16eに向かって上昇する上昇部16iに接続することにより、貯水タンク4の上部(補助タンク4b)に接続されるオーバーフロー流路36の上流側接続部34aと下流側接続部36dとの流路距離を比較的短く設定することができる。
したがって、オーバーフロー流路36全体が占有するスペースを抑制することができるため、オーバーフロー流路36の周辺部品の取り合いを確保することができる。
よって、水洗大便器1全体が大型化することなく、水洗大便器1のローシルエット化も実現することができる。
また、排水トラップ部16の屈曲管路16aにおける最下端部16dから頂部16eに向かって上昇する上昇部16iを流れる排水は排水流路の中でも流速が遅いため、排水トラップ部16の屈曲管路16aの上昇部16i内の汚物がオーバーフロー流路36内に逆流することを抑制することができる。
【0031】
さらに、本実施形態による水洗大便器1によれば、オーバーフロー流路36の下流側接続部36dが、排水トラップ部16の屈曲管路16aにおける上昇部16iの中でも淀みが生じやすい天面16lに接続されているため、排水トラップ部16の屈曲管路16aの上昇部16i内の汚物がオーバーフロー流路36内に逆流することを抑制することができる。
また、万一、排水トラップ部16の屈曲管路16aの上昇部16i内の汚物がオーバーフロー流路36内に逆流して入り込んだ後、再び上昇部16i内に排出されたとしても、使用者から目視できないため、見栄えも良い。
さらに、オーバーフロー流路36の下流側接続部36dと排水トラップ部16の屈曲管路16aの上昇部16iの天面16lとの接続箇所が使用者から見えないため、見栄えが良い。
【0032】
また、本実施形態による水洗大便器1によれば、
図2及び
図4に示すように、オーバーフロー流路36の下流側接続部(貫通穴36d)が、排水トラップ部16の屈曲管路16aの平面視(
図2参照)において、便器本体2のボウル部14の出口部14bと重ならない位置に設けられているため、使用者から便器本体2のボウル部14の出口部14bが見えていたとしても、オーバーフロー流路36の下流側接続部(貫通穴36d)が使用者からボウル部14の後壁14aによって見えないため、見栄えが良い。
【0033】
さらに、本実施形態による水洗大便器1によれば、
図4に示すように、オーバーフロー流路36の少なくとも1つのシール部材40のうち、排水トラップ部16の屈曲管路16aの上昇部16iに近接する側に設けられたオーバーフロー管34の下流側接続部34bに設けられたシール部材40が、排水トラップ部16の屈曲管路16a内の封水(封水面WL0)よりも上方に設けられているため、通常時のシール部材40が封水に浸かることがない。
したがって、水洗大便器1を長期間使用したとしても、オーバーフロー流路36のシール部材40の劣化速度を著しく遅くすることができるため、オーバーフロー性能を低下させることなく、通常の水洗大便器1の使用が可能である。
【0034】
また、本実施形態による水洗大便器1によれば、貯水タンク4の補助タンク4bからオーバーフロー流路36への洗浄水のオーバーフロー時には、オーバーフロー流路36の逆止弁42がオーバーフロー流路36を開放するため、オーバーフロー性能を確保することができる(
図5B参照)。
一方、貯水タンク4の通常使用時である非オーバーフロー時には、オーバーフロー流路36の逆止弁42がオーバーフロー流路36を閉止する(
図5A参照)。
これにより、オーバーフロー流路36の逆止弁42が閉止した状態においては、便器洗浄時に排水トラップ部16の屈曲管路16a内の洗浄水(排水W2)の一部W2aがオーバーフロー流路36内に入り込むことが規制されるため、便器洗浄性能が低下することを抑制することができる。
【0035】
つぎに、
図6A及び
図6Bを参照して、本発明の第2実施形態による水洗大便器について説明する。
図6A及び
図6Bは、本発明の第2実施形態による水洗大便器の便器洗浄時及びオーバーフロー時のそれぞれにおけるオーバーフロー流路の閉止弁の動作を概略的に示す説明図である。
ここで、
図6A及び
図6Bに示す本発明の第2実施形態による水洗大便器100において、上述した本発明の第1実施形態による水洗大便器1の同一部分については同一の符号を付し、これらの説明については省略する。
図6A及び
図6Bに示すように、本実施形態による水洗大便器100では、タンク装置6の貯水タンク4の通常使用時である非オーバーフロー時にはオーバーフロー流路36を閉止する一方、オーバーフロー時にはオーバーフロー流路36を開放する閉止弁142を備えており、この閉止弁142の構造が、上述した本発明の第1実施形態による水洗大便器1の逆止弁42の構造とは異なっている。
【0036】
すなわち、本実施形態の水洗大便器100の閉止弁142は、オーバーフロー口4eに対して開閉可能に設けられた弁体142aと、この弁体142aに固定されて補助タンク4b内の水位に応じて上下動する、概ね半球状のフロート部142bとを備えている。
また、閉止弁142の弁体142aは、その上端が上流側オーバーフロー流路36a内に対してヒンジ結合されたヒンジ部となっており、補助タンク4b内の水位に応じたフロート部142bの浮力の作用により、弁体142a(実質的には、概ね半球状のフロート部142b)が補助タンク4bのオーバーフロー口4eを閉止した状態(
図6A参照)から開放した状態(
図6B参照)まで回動することができるようになっている。
さらに、弁体142a及びフロート部142bがオーバーフロー口4eを閉止した状態(
図6A参照)から開放した状態(
図6B参照)まで回動する際には、弁体142aの上端のヒンジ部を中心に補助タンク4bのオーバーフロー口4eに対して内側(上流側)に向かって回動するようになっている。
ここで、特に、
図6Aに示すように、リム吐水W1により便器本体2のボウル部14内の便器洗浄時においては、閉止弁142が閉止した状態となることにより、貯水タンク4の補助タンク4b側からオーバーフロー流路36への空気の引き込みが抑制されるようになっている。
これにより、オーバーフロー流路36内の空気Aが排水トラップ部16の屈曲管路16a内に巻き込まれて屈曲管路16a内の洗浄水(排水W2)の流速が低下することを防ぐことができるようになっている。
一方、
図6Bに示すように、タンク装置6の動作不良や停電による停止等の異常時において、主タンク4a内の水位が満水水位よりも上昇し、補助タンク4b内の水位が所定の高さ水位、すなわち、貯水タンク4の補助タンク4b内のオーバーフロー水位WL1まで上昇すると、閉止弁142の弁体142a及びフロート部142bが浮力により開弁し、補助タンク4bのオーバーフロー口4eを開放するようになっている。
【0037】
上述した本発明の第2実施形態による水洗大便器100によれば、貯水タンク4の補助タンク4bからオーバーフロー流路36への洗浄水(オーバーフロー洗浄水W3)のオーバーフロー時には、オーバーフロー流路36の閉止弁142がオーバーフロー流路36を開放するため、オーバーフロー性能を確保することができる(
図6B)。
一方、貯水タンク4の通常使用時である非オーバーフロー時には、オーバーフロー流路36の閉止弁142がオーバーフロー流路36を閉止する。
これにより、オーバーフロー流路36の閉止弁142が閉止した状態においては、オーバーフロー流路36内の空気Aが排水トラップ部16の屈曲管路16a内に巻き込まれて屈曲管路16a内の洗浄水(排水W2)の流速が低下することを防ぐことができるため、便器洗浄性能が低下することを抑制することができる。
【0038】
なお、上述した本発明の第1及び第2実施形態による水洗大便器1,100においては、便器本体2の後部がトイレ室Tの壁W(又はキャビネットCの前壁W)に固定されると共に、床面Fよりも上方に配置された、いわゆる、「壁掛け式の水洗大便器」の形態について説明したが、このような形態に限られず、便器本体2が床面F上に配置された、いわゆる、「床置き式の水洗大便器」の形態についても適用可能である。
また、上述した本発明の第1及び第2実施形態による水洗大便器1,100においては、便器本体2の各リム吐水口2a,2bのみからのリム吐水のみによる、いわゆる、「リム吐水100%による便器洗浄」を実行する形態について説明したが、便器本体2のリム吐水口からのリム吐水と、ボウル部14の下方かつ前方に設けられたゼット吐水口から後方の排水トラップ部16の入口部16cに向けて洗浄水を噴射する吐水(ゼット吐水)とを併用した、いわゆる、「リム・ゼット洗浄による便器洗浄」を実行する形態についても適用可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 本発明の第1実施形態による水洗大便器
2 便器本体
2a 第1リム吐水口
2b 第2リム吐水口
2c 主導水路
2d 主導水路の入口
2e 第1リム導水路
2f 第2リム導水路
2g 縦壁
2h 取付穴
4 貯水タンク
4a 主タンク
4b 補助タンク
4c 連結管
4d 補助タンクの側壁
4e オーバーフロー口
6 タンク装置
8 ポンプ装置
10 汚物受け面
12 リム部
12a リム部の上面
14 ボウル部
14a ボウル部の後壁
14b ボウル部の出口部
16 排水トラップ部(排水流路)
16a 排水トラップ部の屈曲管路
16b 排水トラップ部の下降管路
16c 排水トラップ部の屈曲管路の入口部
16d 排水トラップ部の屈曲管路の最下端部
16e 排水トラップ部の屈曲管路の頂部
16f 排水トラップ部の下降管路の傾斜部
16g 排水トラップ部の下降管路の水平部
16h 排水トラップ部の出口部
16i 排水トラップ部の屈曲管路の上昇部
16j 排水トラップ部の屈曲管路の上昇部の前壁
16k 排水トラップ部の屈曲管路の上昇部の最上壁
16l 排水トラップ部の屈曲管路の上昇部の天面
18 スカート部
20 排水ソケット
22 排水管
22a 排水管の入口部
24 給水管
24a 給水ノズル
26 給水源
28 止水栓
30 バルブユニット
32 吐水管
34 オーバーフロー管
34a オーバーフロー管の上流側接続部(オーバーフロー流路の上流側接続部)
34b オーバーフロー管の下流側接続部
36 オーバーフロー流路
36a 上流側オーバーフロー流路
36b 下流側オーバーフロー流路
36c 下流側オーバーフロー流路の上流端
36d 下流側オーバーフロー流路の下流端、貫通穴(オーバーフロー流路の下流側接続部)
36e 上流側オーバーフロー流路の上流端
38 保持部材
40 シール部材(シール部)
42 逆止弁
42a 弁体
42b フロート部
100 本発明の第2実施形態による水洗大便器
142 閉止弁
A オーバーフロー流路内の空気
C キャビネット
F 床面
T トイレ室
W トイレ室の壁又はキャビネットの前壁
W1 リム吐水
W2 排水
W2a 排水の一部
W3 オーバーフロー洗浄水
WL0 封水面
WL1 貯水タンクのオーバーフロー水位