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  • 特開-粘着積層体 図1
  • 特開-粘着積層体 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093859
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】粘着積層体
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20240702BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20240702BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J175/04
B32B27/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210473
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000106151
【氏名又は名称】株式会社サンエー化研
(74)【代理人】
【識別番号】100119091
【弁理士】
【氏名又は名称】豊山 おぎ
(74)【代理人】
【識別番号】100113860
【弁理士】
【氏名又は名称】松橋 泰典
(72)【発明者】
【氏名】安田 隆史
(72)【発明者】
【氏名】伊澤 正猛
(72)【発明者】
【氏名】吉田 裕貴
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AK01
4F100AK01B
4F100AK51
4F100AK51A
4F100AK52
4F100AK52B
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA07
4F100CA02
4F100CA02A
4F100CB05
4F100CB05A
4F100GB41
4F100JK02
4F100JK04
4F100JK07
4F100JK08
4F100JL06
4F100JL13
4F100JL13A
4F100JN01
4J004AA14
4J004AB01
4J004CA06
4J004CB03
4J004DB02
4J004FA04
4J004FA08
4J040EF001
4J040GA20
4J040HD42
4J040JB09
4J040KA14
4J040KA16
4J040LA06
4J040LA10
4J040MA05
4J040MA10
4J040NA17
4J040NA19
(57)【要約】      (修正有)
【課題】耐屈曲性等を有し被粘着体の表面を汚染しない粘着積層体の提供。
【解決手段】プラスチックフィルムを流れ方向に100mm、幅方向に25mmの短冊状に裁断し、流れ方向の両端から15mmの位置を貼合して把持部を形成し、流れ方向の中央部70mmを湾曲させた湾曲部4を形成した試験片2aを作製し、把持部をループステフネステスター(登録商標)で把持して湾曲部を突出させ、湾曲部の突出先端4tと把持部とを結んだ直線方向に対して偏平面6fを90°にして設置されたSUS板の圧子6を湾曲部の突出先端に接触させ、圧子を圧縮速度100mm/分で直線方向に2mm近接させ、湾曲部を圧縮させたときに圧子にかかる圧縮荷重値が10~500mN/25mmの範囲であるフィルム上に、貯蔵弾性率(23℃)が0.2~1.0MPa、損失正接(23℃)が0.02~0.10、及び破断伸度が50~150%の範囲のウレタン系粘着層を積層する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルムを流れ方向に100mm、幅方向に25mmとなるよう短冊状に裁断し、前記流れ方向の両端から15mmの位置を両面テープで貼合し把持部を形成するとともに、前記流れ方向の中央部70mmを湾曲させた湾曲部を形成した試験片を作製し、
前記把持部をループステフネステスター(東洋精機製作所製)(登録商標)のチャックで把持して前記湾曲部を前記チャックから突出させ、
前記試験片の湾曲部の突出先端と前記把持部とを結んだ直線方向に対して、偏平面が90°になるよう設置されたSUS板の圧子を、前記湾曲部の突出先端に接触させ、
さらに前記圧子を圧縮速度100mm/分で前記直線方向に2mm相対的に近接させ、
前記湾曲部を圧縮させたときに圧子にかかる圧縮荷重値が、10~500mN/25mmの範囲であるプラスチックフィルム上に、23℃における貯蔵弾性率が0.2~1.0MPa、23℃における損失正接(tanδ)が0.02~0.10、及び破断伸度が50~150%の範囲であるウレタン系粘着層を積層した粘着積層体。
【請求項2】
前記ウレタン系粘着層の厚さが、5~200μmの範囲である請求項1に記載の粘着積層体。
【請求項3】
前記プラスチックフィルムの厚さが、35~150μmの範囲である請求項1又は2に記載の粘着積層体。
【請求項4】
前記プラスチックフィルムの全線透過率が90%以上、ヘイズ値が10%未満である請求項1又は2に記載の粘着積層体。
【請求項5】
23℃におけるアクリル板への粘着力が、引張速度300mm/分、180°剥離時に0.01~0.50N/25mmである請求項1又は2に記載の粘着積層体。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の粘着積層体を備えた表面保護フィルム。
【請求項7】
請求項6に記載の表面保護フィルムを備えた電子部材又は光学部材。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の粘着積層体を備えた電子部材又は光学部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スマートフォンやタブレット端末等のモバイル機器の製造に好適に用いられる表面保護フィルム等に有用な粘着積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンやタブレット端末等のモバイル機器は、機器の大きさを維持したままディスプレイの大面積化が求められており、折り畳み可能なディスプレイを有するモバイル端末が上市されている。このような折り畳み可能なディスプレイの製造工程では、透明導電層やバリア層等の機能層に加えて、これらの層間に充填する粘着シート及び各機能層を保護するための表面保護フィルムにも折り畳み適性が求められている。
【0003】
例えば、なじみ性、繰り返し屈曲性および繰り返し屈曲後の湿熱耐久性を有する粘着シートとして、ウレタンポリオール(A)およびイソシアネート硬化剤(B)を含む粘着剤であって、前記イソシアネート硬化剤(B)は、炭素数8~24の炭化水素基を有し、配合量が、前記ウレタンポリオール(A)100質量部に対して、前記イソシアネート硬化剤(B)0.01質量部以上2質量部以下である、粘着剤を基材上で硬化させた粘着層を有する粘着シートが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
表面段差の大きい被着体に貼り合わせる場合であっても、濡れ性に優れ、さらに、段差追従性に優れるために十分に高い密着率が達成できる表面保護フィルムとして、粘着剤層を含む表面保護フィルムであって、該粘着剤層はポリウレタン系樹脂を含むウレタン系粘着剤を主成分として含み、中心線平均粗さRaが0.2μm~2μmである被着体表面に対して該粘着剤層側を自重のみで貼り合わせた際の密着率が80%以上である表面保護フィルムが知られている(特許文献2参照)。
【0005】
凹凸追随性に優れた柔軟な粘着層を形成可能で、剥離が容易な軽粘着力を有し、かつ粘着力の剥離速度依存性が低く、しかも均一な塗布面を設けることが可能なポリウレタン粘着剤組成物を積層してなる粘着シートまたは表面保護フィルムとして、一分子当たりの平均官能基数が2.2~3.4のポリエーテルポリオール(a)と、ポリイソシアネート化合物(b)と触媒(c)とを含有するOH末端ウレタンプレポリマー(A)と、多官能イソシアネート化合物(B)とを、成分(A)のOH基と成分(B)のNCO基をNCO/OHの当量比として0.5~1.6の範囲で含むことを特徴とするポリウレタン粘着剤組成物をシート状又はフィルム状の基材の少なくとも片面に積層してなる粘着シート又は表面保護フィルムが知られている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-045442号公報
【特許文献2】特開2016-108442号公報
【特許文献3】特開2006-182795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
折り畳み可能なディスプレイの製造工程では、高い馴染み性及び耐繰り返し屈曲性を有し、被粘着体の表面を汚染しない表面保護フィルムが求められているが、そのような表面保護フィルムを形成しうる粘着積層体は知られていない。
本発明は、高い馴染み性及び耐繰り返し屈曲性を有し、被粘着体の表面を汚染しない粘着積層体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、粘着層及び基材フィルムの物性値を一定範囲内に設定することで、本課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下に示す事項で特定されるとおりである。
本発明の粘着積層体は、プラスチックフィルムを流れ方向に100mm、幅方向に25mmとなるよう短冊状に裁断し、前記流れ方向の両端から15mmの位置を両面テープで貼合し把持部を形成するとともに、前記流れ方向の中央部70mmを湾曲させた湾曲部を有する試験片を作製し、前記把持部をループステフネステスター(東洋精機製作所製)(登録商標)のチャックで把持して前記湾曲部を前記チャックから突出させ、前記試験片の湾曲部の突出先端と前記把持部とを結んだ直線方向に対して、偏平面が90°になるよう設置されたSUS板の圧子を、前記湾曲部の突出先端に接触させ、さらに前記圧子を圧縮速度100mm/分で前記直線方向に2mm相対的に近接させ、前記湾曲部を圧縮させたとき圧縮荷重値が、10~500mN/25mmの範囲であるプラスチックフィルム上に、23℃における貯蔵弾性率が0.2~1.0MPa、23℃における損失正接(tanδ)が0.02~0.10、及び破断伸度が50~150%の範囲にあるウレタン系粘着層を積層したものである。
本発明のウレタン系粘着層の厚さは、5~200μmの範囲であるのが好ましい。
本発明のプラスチックフィルムの厚さは、35~150μmの範囲であるのが好ましい。
本発明のプラスチックフィルムの全線透過率は、90%以上、ヘイズ値が10%未満であるのが好ましい。
本発明の粘着積層体の23℃におけるアクリル板への粘着力は、引張速度300mm/分、180°剥離時に0.01~0.50N/25mmであるのが好ましい。
本発明の粘着積層体は、表面保護フィルムであるのが好ましい。
本発明の電子部材又は光学部材は、前記のいずれか一に記載の粘着積層体を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の粘着積層体は、スマートフォンやタブレット端末等のモバイル機器等の製造において、デバイスの表面保護フィルムとして用いた場合に、高い馴染み性及び耐繰り返し屈曲性を有し、被粘着体の表面を汚染しない性質を有することから、それらの製造をより優位に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(a)本発明の一実施形態に係る粘着積層体を模式的に示した側面図である。(b)本発明の一実施形態に係る粘着積層体のプラスチックフィルムを示した平面図である。(c)本発明の一実施形態に係る粘着積層体のプラスチックフィルムの試験片を示した側面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るプラスチックフィルムの試験片の圧縮荷重値を測定する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の粘着積層体は、滴形のループにした試験片の状態で所定の圧縮荷重値を有するプラスチックフィルムに、特定の貯蔵弾性率における損失正接(tanδ)及び特定の破断伸度を有するウレタン系粘着層を積層して形成されている。
具体的には、図1(a)に示す本発明の粘着積層体1は、図1(b)に示すように、プラスチックフィルム2を流れ方向に100mm、幅方向に25mmとなるよう短冊状に裁断し、図1(c)に示すように、前記流れ方向(MD方向)の両端から15mmの位置を両面テープで貼合して把持部3を形成し、流れ方向(MD方向)の中央部70mmを湾曲させた湾曲部4を有する試験片2aを作製し、図2に示すように、把持部3をループステフネステスター(東洋精機製作所製)(登録商標)のチャック5で把持して湾曲部4をチャック5から突出させ、試験片2aの湾曲部4の突出先端4tと把持部3とを結んだ直線L方向に対して、試験片2aに対向する側の偏平面6fが90°になるよう設置されたSUS板の圧子6を、湾曲部4の突出先端4tに接触させ、さらに圧子6を圧縮速度100mm/分で前記直線方向に2mmチャック5に向けて相対的に近接させ、湾曲部4を圧縮させたときに圧子6にかかる圧縮荷重値が、10~500mN/25mmの範囲であるプラスチックフィルム2上に、23℃における貯蔵弾性率が0.2~1.0MPa、23℃における損失正接(tanδ)が0.02~0.10、及び破断伸度が50~150%の範囲であるウレタン系粘着層7を積層したものである(図1(a)参照)。
【0013】
図1(a)-(c)のいずれかに示すように、粘着積層体1に用いられるプラスチックフィルム2は、前記圧縮荷重値の範囲を満たすものであれば、その材質は特に制限されない。プラスチックフィルム2の材質として、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、ナイロン、ポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム等が挙げられる。
【0014】
更に、粘着積層体1に用いられるプラスチックフィルム2には、複数の前記材質のものが共押出しされたり、予めラミネートされたりした複合多層フィルムも含まれる。
プラスチックフィルム2は延伸、未延伸のどちらでもよいが、機械的強度や寸法安定性を有するものが好ましいことから、ポリエステル、ポリイミド、又はポリオレフィンを主材料とした単層あるいは複合フィルムで、二軸方向に延伸されたものが特に好ましく用いられる。
【0015】
プラスチックフィルム2の厚さは、前記圧縮荷重値の範囲を満たす範囲であれば、特に制限されず、35~150μmの範囲が好ましい。
また、プラスチックフィルム2の全線透過率、ヘイズ値は、本発明の粘着積層体1に用途に応じて適宜選択することができるが、光学部材又は電子部材の製造において表面保護フィルムとして使用されることを想定した場合には、全線透過率が90%以上、ヘイズ値が10%未満であるのが好ましい。
【0016】
粘着積層体1に使用されるウレタン系粘着層7は、プラスチックフィルム2の両面の全体にほぼ均一に積層されている。ウレタン系粘着層7は、23℃雰囲気下における貯蔵弾性率が0.2~1.0MPaであり、23℃雰囲気下における損失正接(tanδ)が0.02~0.10であり、かつウレタン系粘着層の破断伸度が50~150%の範囲であればよい。ウレタン系粘着層7が前記貯蔵弾性率、損失正接(tanδ)及び破断伸度を備えている限り、ウレタン系粘着層7を構成する成分は特に限定されない。
【0017】
例えば、ウレタン系粘着層7を形成できるウレタン系粘着層用組成物として、ポリオール成分とポリイソシアネート成分からなるポリウレタン系樹脂が挙げられ、ポリウレタン系樹脂は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0018】
ポリオール成分としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ひまし油系ポリオールなどがあげられる。これらのポリオール成分は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0019】
上記ポリイソシアネート成分としては、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、ジイソシアネートの多量体などが用いられる。これらのポリイソシアネート成分は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0020】
また、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるポリウレタンポリオール(A)及び架橋剤(B)を含み、架橋剤(B)が、下記(B1)~(B5)から選択される1つを含むウレタン系粘着剤が挙げられる。
(B1)1分子中にイソシアネート基を3個有するビウレット
(B2)1分子中にイソシアネート基を2個有するアロファネート
(B3)1分子中にイソシアネート基を2個有するウレトジオン
(B4)1分子中にイソシアネート基を2個有するウレタンプレポリマー
(B5)1分子中にイソシアネート基を2個有するビウレット
【0021】
中でも上記ポリウレタンポリオール(A)が、下記成分(a1)と、下記成分(a2)~(a5)からなる群から選択される少なくとも一つとを反応させて得られるプレポリマーであるウレタン系粘着剤が好ましい。
(a1)1分子中に水酸基を3個以上有するポリオール
(a2)1分子中にイソシアネート基を2個有するアロファネート
(a3)1分子中にイソシアネート基を2個有するウレトジオン
(a4)1分子中にイソシアネート基を2個有するウレタンプレポリマー
(a5)1分子中にイソシアネート基を2個有するビウレット
【0022】
上記ウレタン系粘着層用組成物には、さらに硬化剤、硬化触媒を含ませるのが好ましい。
硬化剤としては、具体的には、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0023】
芳香族ポリイソシアネートとして、さらに具体的には、1,3-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、2,4,6-トリイソシアネートトルエン、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”-トリフェニルメタントリイソシアネート等が挙げられる。
【0024】
脂肪族ポリイソシアネートとして、さらに具体的にはトリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0025】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとして、さらに具体的には、ω,ω’-ジイソシアネート-1,3-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0026】
脂環族ポリイソシアネートとして、さらに具体的には、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0027】
また一部上記ポリイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソシアヌレート環を有する3量体等も使用することができる。ポリフェニルメタンポリイソシアネート(PAPI)、ナフチレンジイソシアネート、及びこれらのポリイソシアネート変性物等を使用することができる。なおポリイソシアネート変性物としては、カルボジイミド基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、水と反応したビュレット基、イソシアヌレート基のいずれかの基、またはこれらの基の2種以上を有する変性物を使用することができる。中でもポリオールとジイソシアネートの反応させたポリイソシアネートが好ましく、より具体的には、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体等が挙げられる。
【0028】
硬化触媒として、具体的には、三級アミン系化合物、有機金属系化合物等が挙げられる。
3級アミン系化合物として、具体的には、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、N-メチルモルホリン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)等が挙げられ、これらは単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0029】
有機金属系化合物として、具体的には、錫系化合物、非錫系化合物が挙げられる。
錫系化合物として、より具体的には、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジブロマイド、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫スルファイド、トリブチル錫スルファイド、トリブチル錫オキサイド、トリブチル錫アセテート、トリエチル錫エトキサイド、トリブチル錫エトキサイド、ジオクチル錫オキサイド、トリブチル錫クロライド、トリブチル錫トリクロロアセテート、2-エチルヘキサン酸錫等が挙げられる。
【0030】
非錫系化合物としては、例えばジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネート、ブトキシチタニウムトリクロライド等のチタン系、オレイン酸鉛、2-エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、ナフテン酸鉛等の鉛系、2-エチルヘキサン酸鉄、鉄アセチルアセトネート等の鉄系、安息香酸コバルト、2-エチルヘキサン酸コバルト等のコバルト系、ナフテン酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸亜鉛等の亜鉛系、ナフテン酸ジルコニウムなどが挙げられる。
【0031】
上記触媒の中で、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)、2-エチルヘキサン酸錫等が反応性や衛生性の点で好ましい。
【0032】
上記3級アミン系化合物、有機金属系化合物等の硬化触媒は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0033】
本発明の粘着積層体1に使用されるウレタン系粘着層用組成物の製造方法は、特に限定されないが、具体的には、ウレタン系粘着剤、硬化剤、硬化触媒、必要に応じて添加剤を、溶液混合、溶融混合等により混合する方法等を挙げることができる。
【0034】
溶融混合は、例えば、機械加圧式混練機、ロール成形機、単軸押出し機、2軸押出し機等の押出し成形機等のプラスチックまたはゴムの加工に使用される混練成形機により溶融混合する方法が挙げられる。
【0035】
溶液混合は、例えば、撹拌機付き溶解設備を用いて室温混合する方法、加熱混合する方法等が挙げられ、溶解が速いことから加熱混合する方法が好ましく用いられる。加熱混合する際の温度は30~150℃が好ましく、50~110℃がさらに好ましい。
【0036】
本発明の粘着積層体1に使用されるウレタン系粘着層7の貯蔵弾性率G’、損失性接tanδは、周波数10Hzの粘弾性測定により求められる。tanδは、貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”の比G”/G’である。貯蔵弾性率G’は、材料が変形する際に弾性エネルギーとして貯蔵される部分に相当し、硬さの程度を表す指標である。ウレタン系粘着層7の貯蔵弾性率が大きいほど、接着保持力が高く、歪による剥がれが抑制される傾向がある。損失弾性率G”は、材料が変形する際に内部摩擦等により散逸される損失エネルギー部分に相当し、粘性の程度を表す。tanδが大きいほど粘性の傾向が強く、変形挙動が液体的となり、反発弾性エネルギーが小さくなる傾向がある。
【0037】
本発明の粘着積層体1に使用されるウレタン系粘着層7は、23℃における貯蔵弾性率を0.2~1.0MPaのとし、かつ、23℃における損失正接(tanδ)を0.02~0.10の範囲とすることにより、高い馴染み性と剥離強度を両立することができる。また、本発明のウレタン系粘着層7は、破断伸度を50~150%の範囲に設定することで、伸縮繰返し後の外観(耐屈曲性)において、良好な粘着積層体1を得ることができる。
【0038】
本発明の粘着積層体1に使用されるウレタン系粘着層7には、特性を逸脱しない範囲で各種添加剤を含有していてもよい。各種添加剤としては、具体的には、染料、有機顔料、無機顔料、無機補強剤、アクリル加工助剤等の加工助剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、ワックス、結晶核剤、離型剤、加水分解防止剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、防徽剤、防錆剤、イオントラップ剤、難燃剤、難燃助剤、無機充填材、有機充填材等を挙げることができる。
【0039】
本発明の粘着積層体1の製造方法としては、特に限定されないが、具体的には、
(1)ウレタン系粘着層用組成物の溶液や熱溶融液を基材層上に塗布する方法、
(2)ウレタン系粘着層用組成物の溶液や熱溶融液をセパレーター状に塗布、形成した粘着層をプラスチックフィルム2上に移着する方法、
(3)ウレタン系粘着層用組成物の溶液や熱溶融液をプラスチックフィルム2上に押出して形成塗布する方法、
(4)プラスチックフィルム2とウレタン系粘着層用組成物の溶液や熱溶融液を二層または多層にて押出しする方法、
(5)プラスチックフィルム2上にウレタン系粘着層用組成物の溶液や熱溶融液を単層ラミネートする方法またはラミネート層とともにウレタン系粘着層用組成物の溶液や熱溶融液を二層ラミネートする方法、
(6)ウレタン系粘着層用組成物の溶液や熱溶融液とプラスチックフィルム2形成材料とを二層または多層ラミネートする方法、
等が挙げられる。
【0040】
塗布の方法として、具体的には、ロールコーター法、コンマコーター法、ダイコーター法、リバースコーター法、シルクスクリーン法、グラビアコーター法等が挙げられる。
【0041】
本発明の粘着積層体1は、被着体への汚染が非常に少なく、馴染み性、伸縮繰返し性(耐屈曲性)に優れるので、例えば、光学部材や電子部材の表面保護に好ましく用いられる。
【0042】
本発明の粘着積層体1により表面保護され得る光学部材としては、例えば、LCD、LCD等を用いたタッチパネル、LCDに使用されるカラーフィルター、偏光板、光学フィルター、波長変換デバイス、調光デバイス、偏光板、位相差板等が挙げられる。
【0043】
本発明の粘着積層体1により表面保護され得る電子部材としては、例えば、液晶ディスプレイ部材、有機ELディスプレイ部材、無機ELディスプレイ部材、電子ペーパー部材、太陽電池、熱電変換部材等のフレキシブル基板などが挙げられる。
【0044】
本発明の粘着積層体1を用いれば、表面保護フィルムとして手作業でも装置等を用いても、何度も貼り合わせ及び剥離を行うことが可能である。
【実施例0045】
以下、実施例を用いて本発明の詳細を説明するが、本発明の範囲は下記実施例に限定されない。
[実施例1]
【0046】
表1~3中に示すウレタン系粘着剤1(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製、US-902-50、固形分50%)100質量部、硬化剤(東ソー社製、コロネールHL)5質量部、触媒としてジオクチル錫ジラウレート0.05質量部を混合してウレタン系粘着層用組成物を得た。
【0047】
得られたウレタン系粘着層用組成物を乾燥後の粘着層厚さが50μmとなるようにPETフィルム上に塗布し、エアバスを用いて100℃で3分乾燥させて粘着積層体1を得、さらにウレタン系粘着層7上に剥離性PETフィルムを貼合した。その後40℃で1週間保管し粘着シートを得た。
【0048】
[実施例2~8]及び[比較例1~5]
表1~3に示す割合で、各粘着剤、硬化剤、触媒を混合して、ウレタン系粘着層用組成物、及び比較ウレタン系粘着層用組成物を得た。
各ウレタン系粘着層用組成物を用いて、実施例1と同様の方法で粘着積層体、粘着シート、比較粘着積層体及び比較粘着シートを得た。
なお、表1~3中に示すウレタン系粘着剤2は、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製、バインゾールU-250、固形分60%、表1~3中に示すウレタン系粘着剤3は、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製、US-1353H、固形分70%を示す。
【0049】
用いられた基材フィルムの評価、得られた各粘着層及び各粘着シートの評価を以下の方法で行った。その結果を表1~3にまとめて示す。
【0050】
<23℃における基材フィルムの湾曲圧縮試験>
基材フィルムとして、プラスチックフィルム2を流れ方向に100mm、幅方向に25mmとなるよう短冊状に裁断し、両端から15mmの位置同士を両面テープで貼合して把持部3を形成するとともに、流れ方向の中央部70mmを湾曲させた湾曲部4を有する滴形にした試験片を作製した。試験片の把持部3を、ループステフネステスター(東洋精機製作所製)(登録商標)のチャック5で把持して吊り下げた。その上で、前記試験片の湾曲部4の突出先端(すなわち把持部3から最も離間した円弧形状の先端)とチャック5に挟まれた把持部3とを結んだ直線方向Lに対して、SUS板の偏平面6fが90°に向くようにSUS板の圧子6を、湾曲部4の突出先端4tに接触させた。さらに圧子6を圧縮速度100mm/分で直線方向Lに2mm近接させ、湾曲部4を圧縮させたときに圧子6にかかる圧縮荷重値を「23℃における湾曲圧縮試験の値」とした。
【0051】
<全光線透過率>
分光ヘーズメーター(日本電色製工業社製、SH7000)を用いてJIS K 7361に準じて測定した。全光線透過率は、91%以上で「◎」(特に優れている)、90%以上で「〇」(良好)、89%以上で「△」(実用上問題ないレベル)89%未満で「×」(不良)とした。
【0052】
<粘着層の23℃における貯蔵弾性率(G’)及び損失正接(tanδ)>
JIS K 7244に基づいて測定を行った。実施例及び比較例の各ウレタン系粘着層用組成物を乾燥後のウレタン系粘着層7の厚さが50μmとなるように剥離性PETフィルムに塗布し、エアバスを用いて100℃で3分乾燥させ、粘着層積層フィルムを作成した。剥離性PETフィルムを剥離し、得られた粘着層のみを複数積層することで粘着層全体の厚さが500μmになるよう重ね合わせ、40℃で1週間保管し、ウレタン系粘着層7のみからなるウレタン系粘着層用組成物単層シートを得た。
【0053】
得られたウレタン系粘着層用組成物単層シートを直径8mmの円になるように裁断し試験片とし、空気雰囲気下で動的粘弾性を粘弾性測定装置(TA Instruments社製、DiscoveryHR-20)を用いて測定し、23℃貯蔵弾性率G’及び損失正接(tanδ)を得た。測定は下記条件にて行った。
昇温:10℃/min、
周波数:10Hz
【0054】
<粘着層の破断伸度>
JIS K 7161に基づいて測定を行った。実施例及び比較例の各ウレタン系粘着層用組成物を乾燥後のウレタン系粘着層7の厚さが50μmとなるように剥離性PETフィルムに塗布し、エアバスを用いて100℃で3分乾燥させ、粘着層積層フィルムを作製した。剥離性PETフィルムを剥離し、得られた粘着層をのみを複数積層することで粘着層全体の厚さが300μmになるよう重ね合わせ、40℃で1週間保管し、ウレタン系粘着層7のみからなるウレタン系粘着層用組成物単層シートを得た。
【0055】
得られたウレタン系粘着層用組成物単層シートを、10mm巾×50mm長さになるように短冊状に裁断して試験片とし、測定長さが20mmとなるよう引張試験機に装着し、引張速度200mm/分で試験片を引張り、破断(切断)した長さLを測定し、L/20×100で得られた百分率を破断伸度とした。
【0056】
<粘着層の復元性>
前記粘着層の破断伸度の評価に用いた試験片の作製方法と同様にして試験片を準備した。測定長さが50mmとなるよう引張試験機に装着し引張速度200mm/分で50%伸長し、1分間停止した後、引張試験機を元の位置に戻し、元の測定長さ50mmに対しての試験片伸び率(%)を測定値とした。
【0057】
<23℃における粘着力>
JIS Z 0237に基づいて測定を行った。得られた実施例1-8の粘着シート及び比較例1-5の粘着シートを25mm巾×200mm長さになるように短冊上に裁断し、2kgローラーを用いてアクリル板(60mm巾×210mm長)に貼合し、23℃で一昼夜静置した後、引張試験機を用いて、引張速度300mm/分及び剥離角度180°にて剥離試験を行い、得られた測定値を粘着力とした。
【0058】
<馴染み性(濡れ性)及び耐汚染性>
得られた実施例1-8の各粘着シート及び比較例1-5の各粘着シートを150mm×210mmに切断した試験片を作製し、剥離フィルムを剥がした。一方、被着体として、ガラス板を準備した。試験片及びガラス板を除電し、試験片の粘着剤層側を下方に向けて湾曲させ、試験片の中央線をガラス板の上に密着させた。そして、試験片全体が自重でガラス板に密着するまでの時間(濡れ速度)を測定し、5秒未満のものを馴染み性が良好(〇)であるとし、5秒以上のものを馴染み性が不良(×)とした。
【0059】
上記試験片を貼合したガラス板を、23℃、50%RHの環境下で3日及び30日の期間に渡って保管した後に、粘着シートを剥がし、ガラス板の表面の汚染状態を目視にて観察した。耐汚染性の判断基準は、前記ガラス板の表面に対して汚染なしの場合を「○」、汚染ありの場合を「×」と評価した。
【0060】
<屈曲繰り返し後の外観(耐屈曲性)>
得られた実施例1-8の各粘着シート及び比較例1-5の粘着シートを用いて、幅方向(折りたたみ部の方向)50mm×流れ方向(屈曲方向)100mmの大きさの試験片を用意した。無負荷U字伸縮試験機(ユアサシステム機器社製、DLDMLH-FS)を用いて、屈曲半径3mmを設定し、1回/秒の速度で、5万回屈曲させた。その際、試験片は流れ方向の両端部10mmの位置を固定して、屈曲する部位を50mm×80mmとした。屈曲処理終了後、試験片の屈曲内側を下にして平面に置き、目視検査を行った。
<評価基準>
○:サンプルにクラック及び変形を確認できない。
×:サンプルにクラックまたは折跡があり、水平に置いた際、浮き上がり最大高さが5mm以上。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【符号の説明】
【0064】
1 粘着積層体
2 プラスチックフィルム
2a 試験片
3 把持部
4 湾曲部
4t 突出先端
5 チャック
6 圧子
6f 偏平面
7 ウレタン系粘着層
L 直線方向
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の粘着積層体は、高い馴染み性及び繰り返し屈曲性を有し、被粘着体の表面を汚染しない性質を有することから、スマートフォンやタブレット端末等のモバイル機器等の製造におけるデバイスの表面保護フィルムとして好適に用いることができる。


図1
図2