(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093868
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】表示制御装置及び表示制御方法
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20240702BHJP
B60R 1/22 20220101ALI20240702BHJP
H04N 23/63 20230101ALI20240702BHJP
G09G 5/00 20060101ALI20240702BHJP
G09G 5/37 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
H04N7/18 J
B60R1/22
H04N23/63
G09G5/00 550C
G09G5/37 320
G09G5/37 300
G09G5/00 530H
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210493
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001487
【氏名又は名称】フォルシアクラリオン・エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】坂田 直人
(72)【発明者】
【氏名】古賀 昌史
【テーマコード(参考)】
5C054
5C122
5C182
【Fターム(参考)】
5C054AA01
5C054CH01
5C054FC15
5C054FD03
5C054FE11
5C054HA30
5C122DA14
5C122EA47
5C122FK16
5C122FK23
5C122FK24
5C122HB01
5C182AA03
5C182AB25
5C182BA14
5C182BA56
5C182CB11
5C182CB44
5C182CC21
5C182CC24
5C182DA44
(57)【要約】
【課題】乗員が表示部に表示された画像を視認する際に乗員の違和感を抑制することが可能な表示制御装置を提供する。
【解決手段】表示制御装置30は、画像取得部51、視点位置取得部52、画像処理部53及び表示処理部40を備える。画像処理部53は、乗員の目の位置に基づいて、入力画像内に水平表示領域を設定する水平表示領域設定部、乗員の目の位置に基づいて、入力画像内に垂直表示領域を設定する垂直表示領域設定部、乗員の目の位置に基づいて、乗員が表示部40を通して下方を見る度合いである地面投影範囲適用率を算出する地面投影範囲適用率算出部と、地面投影範囲適用率に基づいて、出力画像の座標に入力画像の座標を対応付ける座標変換部として機能する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像として、車両の周辺を撮影した画像を取得する画像取得部と、
乗員の目の位置に関する情報を取得する視点位置取得部と、
前記乗員の目の位置に基づいて、前記入力画像内に実空間上の地面に対して平行な水平基準面における水平表示領域を設定する水平表示領域設定部と、
前記乗員の目の位置に基づいて、前記入力画像内に前記地面に対して垂直な方向に広がる垂直基準面における垂直表示領域を設定する垂直表示領域設定部と、
前記乗員の目の位置に基づいて、前記乗員が表示部を通して下方を見る度合いである地面投影範囲適用率を算出する地面投影範囲適用率算出部と、
前記地面投影範囲適用率に基づいて、前記表示部に表示する出力画像の座標に前記入力画像の座標を対応付けて前記出力画像を前記表示部に表示する表示処理部と、
を備える表示制御装置。
【請求項2】
前記水平表示領域は、前記乗員の目の位置から前記表示部を通して前記車両の近傍の地面を見たときの領域であり、前記垂直表示領域は、前記乗員の目の位置から前記表示部を通して前記車両の近傍よりも遠方を見たときの領域である
請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項3】
前記地面投影範囲適用率に基づいて、前記入力画像内に前記水平表示領域の座標と前記垂直表示領域の座標を含む統合表示領域を設定する統合表示領域設定部を備え、
前記表示処理部は、前記入力画像における統合表示領域の座標を前記出力画像に座標変換して前記表示部に表示する
請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項4】
前記入力画像上における前記水平表示領域を構成する複数の点と、前記水平表示領域上の前記複数の点に対応し前記入力画像上における前記垂直表示領域を構成する複数の点をそれぞれ結んだ線分を内分する内分点を、前記地面投影範囲適用率に基づいて算出する内分点算出部を備え、
前記統合表示領域設定部は、前記入力画像上における前記内分点で囲まれた領域を統合表示領域に設定する
請求項3に記載の表示制御装置。
【請求項5】
前記入力画像内の前記水平表示領域の座標と前記出力画像の座標を対応付ける水平変換行列と、前記入力画像内の前記垂直表示領域の座標と前記出力画像の座標を対応付ける垂直変換行列を求める行列算出部を備え、
前記表示処理部は、前記水平変換行列と前記垂直変換行列と前記地面投影範囲適用率に基づいて、前記入力画像の座標と前記出力画像の座標を対応付けて、前記表示部に表示するよう制御する
請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項6】
前記表示処理部は、前記水平変換行列と前記垂直変換行列に基づいて、前記出力画像の座標に対応する前記入力画像の前記水平表示領域内の座標と前記垂直表示領域内の座標をそれぞれ算出し、前記入力画像における前記水平表示領域内の座標と前記垂直表示領域内の座標を前記地面投影範囲適用率に基づいて内分した内分座標を前記出力画像の座標に対応付ける
請求項5に記載の表示制御装置。
【請求項7】
車両に搭載された表示制御装置の制御部によって実行される表示制御方法であって、
入力画像として、前記車両の周辺を撮影した画像を取得する画像取得工程と、
乗員の目の位置に関する情報を取得する視点位置取得工程と、
前記乗員の目の位置に基づいて、前記入力画像内に実空間上の地面に対して平行な方向の水平基準面における水平表示領域を設定する水平表示領域設定工程と、
前記乗員の目の位置に基づいて、前記入力画像内に前記地面に対して垂直な方向に広がる垂直基準面における垂直表示領域を設定する垂直表示領域設定工程と、
前記乗員の目の位置に基づいて、前記乗員が表示部を通して下方を見る度合いである地面投影範囲適用率を算出する地面投影範囲適用率算出工程と、
前記地面投影範囲適用率に基づいて、前記表示部に表示する出力画像の座標に前記入力画像の座標を対応付けて前記出力画像を前記表示部に表示する表示処理工程と、
を含む表示制御方法。
【請求項8】
前記水平表示領域は、前記乗員の目の位置から前記表示部を通して前記車両の近傍の地面を見たときの領域であり、前記垂直表示領域は、前記乗員の目の位置から前記表示部を通して前記車両の近傍よりも遠方を見たときの領域である
請求項7に記載の表示制御方法。
【請求項9】
前記地面投影範囲適用率に基づいて、前記入力画像内に前記水平表示領域の座標と前記垂直表示領域の座標を含む統合表示領域を設定する統合表示領域設定工程を有し、
前記表示処理工程は、前記入力画像における統合表示領域の座標を前記出力画像に座標変換して前記表示部に表示する
請求項7に記載の表示制御方法。
【請求項10】
前記入力画像上における前記水平表示領域を構成する複数の点と、前記水平表示領域上の前記複数の点に対応し前記入力画像上における前記垂直表示領域を構成する複数の点をそれぞれ結んだ線分を内分する内分点を、前記地面投影範囲適用率に基づいて算出する内分点算出工程を有し、
前記統合表示領域設定工程は、前記入力画像上における前記内分点で囲まれた領域を統合表示領域に設定する
請求項9に記載の表示制御方法。
【請求項11】
前記入力画像内の前記水平表示領域の座標と前記出力画像の座標を対応付ける水平変換行列と、前記入力画像内の前記垂直表示領域の座標と前記出力画像の座標を対応付ける垂直変換行列を求める行列算出工程を有し、
前記表示処理工程は、前記水平変換行列と前記垂直変換行列と前記地面投影範囲適用率に基づいて、前記入力画像の座標と前記出力画像の座標を対応付けて、前記表示部に表示するよう制御する
請求項7に記載の表示制御方法。
【請求項12】
前記表示処理工程は、前記水平変換行列と前記垂直変換行列に基づいて、前記出力画像の座標に対応する前記入力画像の前記水平表示領域内の座標と前記垂直表示領域内の座標をそれぞれ算出し、前記入力画像における前記水平表示領域内の座標と前記垂直表示領域内の座標を前記地面投影範囲適用率に基づいて内分した内分座標を前記出力画像の座標に対応付ける
請求項11に記載の表示制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示制御装置及び表示制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示の車両周囲映像提供装置は、取得された視点位置の情報と液晶ディスプレイの設置状態の情報とに基づいて、運転者の視点位置から液晶ディスプレイの設置領域が透過して車外が見えた場合と同じ映像が液晶ディスプレイに表示されるように、撮影装置により撮影された映像を座標変換する。このため、あたかも液晶ディスプレイが透過して車外が見えるかのように、液晶ディスプレイに映像表示が行われる。
【0003】
しかしながら、視点位置に応じて座標変換の基準面を地面又は垂直面に切り替えているため、この切り替えの際にディスプレイに表示される画像も切り替わる。このとき、運転者は画像が切り替わったことが認識できるため、違和感を覚えることがあった。また、予め記憶された複数の視点位置から選択された視点位置、又は運転者が複数のスイッチのいずれかを操作することにより取得された視点位置に基づいて液晶ディスプレイに映像を表示しているため、選択された視点位置以外の位置に運転者が目を移動させた場合、ウィンドウを通して見る風景と液晶ディスプレイの画像とが不連続となることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本開示は、乗員が表示部に表示された画像を視認する際に乗員の違和感を抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本開示の表示制御装置は、入力画像として、車両の周辺を撮影した画像を取得する画像取得部と、乗員の目の位置に関する情報を取得する視点位置取得部と、前記乗員の目の位置に基づいて、前記入力画像内に実空間上の地面に対して平行な水平基準面における水平表示領域を設定する水平表示領域設定部と、前記乗員の目の位置に基づいて、前記入力画像内に前記地面に対して垂直な方向に広がる垂直基準面における垂直表示領域を設定する垂直表示領域設定部と、前記乗員の目の位置に基づいて、前記乗員が表示部を通して下方を見る度合いである地面投影範囲適用率を算出する地面投影範囲適用率算出部と、前記地面投影範囲適用率に基づいて、前記表示部に表示する出力画像の座標に前記入力画像の座標を対応付けて前記出力画像を前記表示部に表示する表示処理部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、乗員が表示部に表示された画像を視認する際に乗員の違和感を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る表示制御装置を備える表示制御システムの概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】表示部に表示される出力画像の一例及び表示部の周辺の風景を示す図である。
【
図3】画像処理部で実行される水平表示領域設定処理と垂直表示領域設定処理を説明するための図である。
【
図4】画像処理部で実行される水平表示領域設定処理と垂直表示領域設定処理を説明するための図である。
【
図5】画像処理部で実行される地面投影範囲適用率算出処理を説明するための図である。
【
図6】画像処理部で実行される地面投影範囲適用率算出処理を説明するための図である。
【
図7】画像処理部で実行される内分点算出処理と統合表示領域設定処理を説明するための図である。
【
図8】地面適用率α=0.5のときの入力画像上の水平表示領域、垂直表示領域及び統合表示領域の関係を説明するための図である。
【
図9】第1実施形態に係る表示制御装置の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図10】第2実施形態に係る表示制御装置の画像処理部で実行される画像処理を説明するための図である。
【
図11】第2実施形態に係る表示制御装置の画像処理部で実行される画像処理を説明するための図である。
【
図12】地面投影範囲適用率算出処理の他の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
この開示の第1実施形態に係る表示制御装置は、図面に基づき以下のように説明される。
図1は、第1実施形態に係る表示制御装置30を備える表示制御システム100の概略構成を示す機能ブロック図である。
図1に示す表示制御装置30は、本開示に係る表示制御装置の一実施形態であり、本開示は本実施形態に限定されない。表示制御装置30は、自動車等の移動体に搭載されている。以下、本実施形態の表示制御装置30が搭載される移動体は、自車両V(
図6参照)と称されて説明される。
【0010】
表示制御システム100は、撮像装置10と、乗員監視部20と、車内カメラ21と、表示制御装置30と、表示部40とを備える。表示制御システム100は、
図2に示されるように、あたかも表示部40が透過して車外の風景が見えるかのように、撮像装置10で撮影した画像を変換して表示部40に表示する。表示部40は、液晶ディスプレイ等からなり、本実施形態では横長の長方形であるが、長方形に限定されない。
【0011】
撮像装置10は、自車両Vの外部に設置され、自車両Vの周囲を撮影する。撮像装置10は、撮影した画像を所定のプロトコルにしたがって撮影画像データとして表示制御装置30に出力する。撮像装置10は、本実施形態では自車両Vの前方に設置された前方カメラを含んでいる。なお、撮像装置10が前方カメラに限定されず、自車両Vの後方に設置された後方カメラ、自車両Vの左右前方、左右後方に設置された側方カメラ等を含むこともできる。
【0012】
乗員監視部20は、自車両Vに搭載されている。乗員監視部20は、車内カメラ21で撮影した画像に基づき、乗員1であるドライバの状態を監視する。乗員監視部20は、公知のものを用いることができる。車内カメラ21は、ドライバを含む自車両Vの車内を撮影するカメラであり、例えば表示部40の近傍に車内に向けて設けられる。また、乗員監視部20は、車内カメラ21で撮影した画像に基づき、公知の手法で乗員1の目の位置を検知し、取得した目の位置に関する情報(以下、「目の位置情報」という。)を、表示制御装置30に出力する。目の位置情報は、例えば、左右の目の中点の三次元座標、乗員1の利き目の三次元座標等とすることができる。
【0013】
表示制御装置30は、画像の作成及び表示に関する処理を実行する情報処理装置であり、
図1に示すように、処理部(制御部)50と、記憶部60と、を備える。表示制御装置30は、例えば、CPU、GPU、RAM及びROM等の記憶装置を有するECUにより構成される。処理部50は、ECUが有するCPU等により主に構成され、ROMに格納された所定のプログラムをRAMに展開して実行することにより、表示制御装置30全体、さらには表示制御システム100全体の動作を制御する。記憶部60は、ECUが有する記憶装置により主に構成されるが、外部に設けられたサーバやデータベースを備えることもできる。
【0014】
なお、表示制御装置30は、一つのECUにより構成することもできるし、複数のECUにより構成し、後述の処理部50の各機能を分散させたり、記憶するデータを分散させたりすることもできる。また、表示制御装置30は、その機能の一部又は全部を、FPGA、ASICなどのハードウェアを用いて実現されることもできる。さらには、一つのECUが、表示制御装置30の機能だけでなく、撮像装置10を制御するカメラECUの機能、乗員監視部20の機能を備える構成とすることもできる。
【0015】
処理部50は、撮像装置10から入力される撮影画像データ(入力画像70、
図3等参照)と乗員監視部20から入力される目の位置情報に基づき、出力画像42の座標に入力画像70(
図2等参照)の座標を対応付けて、出力画像42を表示部40に表示させる。処理部50は、
図1に示すように、画像取得部51、視点位置取得部52、画像処理部53及び表示処理部54として機能するが、これらの機能に限定されない。
【0016】
画像取得部51は、撮像装置10から自車両Vの周辺を撮影した入力画像70を取得し、画像処理部53に出力する(画像取得処理)。視点位置取得部52は、乗員監視部20から目の位置情報(
図4に示す目の位置Tの三次元座標)を取得し、画像処理部53に出力する(視点位置取得処理)。この目の位置Tは、入力画像70を表示部40に投影して表示するための投影中心といえる。
【0017】
本実施形態の画像取得部51及び視点位置取得部52は、処理部50に備えられ、表示制御装置30が備える公知の入力インターフェースを通じて各情報を取得している。しかし、この構成に限定されず、画像取得部51及び視点位置取得部52は、入力インターフェースそのものであってもよく、撮像装置10又は乗員監視部20から取得した情報を単に画像処理部53に出力し、画像処理部53によって各情報に必要な処理が実行されるものでもよい。
【0018】
画像処理部53は、画像取得部51から入力される入力画像70及び視点位置取得部52から入力される目の位置Tに基づき、入力画像70を、乗員1の目の位置Tから自車両Vの周辺を見た画像(出力画像42)に変換する画像処理を実行する。画像処理部53は、より詳細には、歪補正処理を実行する歪補正処理部、水平表示領域設定処理を実行する水平表示領域設定部、垂直表示領域設定処理を実行する垂直表示領域設定部、地面投影範囲適用率算出処理を実行する地面投影範囲適用率算出部、内分点算出処理を実行する内分点算出部、統合表示領域設定処理を実行する統合表示領域設定部及び座標変換処理を実行する座標変換部として機能する。
【0019】
本実施形態において統合とは、同一の画像内の2つの領域の入力に基づき、その画像内の1つの領域を出力する処理である。この処理における領域とは、4頂点の座標、または4頂点で構成された四角形、または4頂点で構成された四角形内部の画像を指す。領域内の各頂点は各領域間で対応付けられる。出力される領域内の各頂点は、入力される2つの領域内の対応する頂点を内分比に基づき内分した点である。内分比は領域内の各頂点で共通である。
【0020】
画像処理部53は、歪補正処理として、画像取得部51から入力される入力画像70に対して、公知の手法を用いて撮像装置10が有するレンズの歪み(例えば、レンズの歪曲収差、色収差等)を補正する。なお、歪補正処理は、画像取得部51が実行し、歪補正後の入力画像70を画像処理部53に出力する構成とすることもできる。
【0021】
画像処理部53は、水平表示領域設定処理として、乗員1の目の位置Tに基づき、入力画像70内に実空間上の地面に対して平行な方向の水平基準面71における水平表示領域GAを設定する。また、画像処理部53は、垂直表示領域設定処理として、乗員1の目の位置Tに基づき、入力画像70内に実空間上の地面に対して垂直な方向に広がる垂直基準面81における垂直表示領域WAを設定する。これらの処理の詳細は、
図3、
図4を参照して以下のように説明される。
【0022】
入力画像70、水平基準面71及び垂直基準面81の座標系は、
図3を参照しての以下のように説明される。
図3の紙面左図は、歪補正後の入力画像70を基準とする画像座標系と自車両Vを基準とする車両座標系上で表現される水平基準面71である。
図3の紙面右図は、歪補正後の入力画像70を基準とする画像座標系と自車両Vを基準とする車両座標系上で表現される垂直基準面81である。画像座標系は、歪補正後の入力画像70の左上隅を原点O(0,0)とする二次元の座標系である。Xa及びYaは互いに直交する軸であり、各軸の単位はピクセル(px)である。
【0023】
車両座標系は、自車両Vの所定の位置を原点O(0,0,0)とする三次元の座標系である。Xbは車幅方向(水平方向)に延びる軸であり、YbはXbと直交し自車両Vの上下方向(垂直方向)に延びる軸であり、ZbはXb及びYbと直交し自車両Vの前後方向に延びる軸である。Xb、Yb、Zbの各軸の単位はmmである。
【0024】
図3中に符号72で示される領域は、入力画像70が、水平基準面71上にマッピングされた画像(以下、「水平モデル画像72」という。)を示す。また、
図3中に符号73で示される領域は、入力画像70がマッピングされない領域、つまり撮像装置10で撮影されない領域(以下、「非マッピング領域73」という。)である。
図3中に符号82で示される領域は、入力画像70が、垂直基準面81上にマッピングされた画像(以下「垂直モデル画像82」という。)を示す。
図3中の水平モデル画像72及び垂直モデル画像82は説明を容易にするために仮想的に表現したものであり、本実施形態においてこのような画像は作成されない。また、水平モデル画像72及び垂直モデル画像82は、作図の都合で長方形の境界を設定しているが、実際には境界はなく、際限なく広がっている。
【0025】
画像処理部53は、
図4の左上図に示されるように、目の位置Tを基準として、投影面を表示部40としたときに、この表示部40の表示領域41に投影される水平基準面71上の領域(以下、「水平投影領域74」という。)を算出する。
図4に示される点d1、d2、d3、d4で囲まれた領域は、表示部40の表示領域41である。すなわち、点d1~d4は長方形の表示領域41の四隅の頂点である。この頂点d1~d4の位置情報(三次元座標)は、予め記憶部60の位置情報記憶部61に記憶されている。水平基準面71上の点b5、b6、b7、b8で囲まれた領域が、表示領域41に投影される水平投影領域74である。画像処理部53は、目の位置Tの座標、及び位置情報記憶部61から取得した頂点d1~d4の座標に基づき、点b5~b8の座標を算出する。
【0026】
より具体的には、画像処理部53は、
図4の左上図に示されるように、目の位置Tの座標T(Tx,Ty,Tz)と、表示領域41の四隅の頂点d1~d4の実空間上の三次元座標を用いて、目の位置Tと、頂点d1~d4とを各々結ぶ直線を設定する。次いで、画像処理部53は、これらの直線と、水平基準面71との交点b5~b8を検出し、この交点b5~b8で構成される領域を、表示領域41に対応する水平投影領域74と認定し、各交点b5~b8の座標を算出する。
【0027】
次いで画像処理部53は、水平投影領域74の各交点b5~b8の座標を下記式(1)の右辺に代入して、歪補正後の入力画像70の画像座標系の座標に変換する。
図4の紙面下図に示される点g1、g2、g3、g4は、交点b5、b6、b7、b8が座標変換された歪補正後の入力画像70上の点である。この点g1~g4で囲まれた領域は、歪補正後の入力画像70内に設定された、水平投影領域74に対応する水平表示領域GAである。下記式(1)中、x
b及びz
bは水平基準面71の車両座標系におけるx座標及びz座標であり、x
g及びy
gは歪補正後の入力画像70の画像座標系のx座標及びy座標である。ここで、画像座標系の座標(x
g,y
g)を表す同次座標はgとされ、車両座標系の座標(x
b,z
b)を表す同次座標はbとされる。同次座標gとbとの関係は、下記式(1)で表される。なお、値λ
gは、同次座標gにおける倍率を示す。この値λ
gがいずれの値をとっても(ただし値0を除く)、同次座標gは画像座標系上で同一の座標を表す。射影変換行列M
Gは、後述のように予め算出されて記憶部60の変換情報記憶部62に記憶されている。
【0028】
【0029】
同様に、画像処理部53は、
図4の右上図に示されるように、目の位置Tを基準として、投影面を表示部40としたときに、この表示部40の表示領域41に投影される垂直基準面81上の領域(以下、「垂直投影領域84」という。)を算出する。画像処理部53は、目の位置Tの座標T(Tx,Ty,Tz)と、表示領域41の四隅の頂点d1~d4の実空間上の三次元座標を用いて、目の位置Tと、頂点d1~d4とを各々結ぶ直線を設定する。次いで、画像処理部53は、これらの直線と、垂直基準面81との交点c5~c8を検出し、この交点c5~c8で構成される領域を、表示領域41に対応する垂直投影領域84と認定し、各交点c5~c8の座標を算出する。
【0030】
次いで画像処理部53は、垂直投影領域84の各交点c5~c8の座標を下記式(2)の右辺に代入して、歪補正後の入力画像70の画像座標系の座標に変換する。
図4の紙面下図に示される点w1、w2、w3、w4は、交点c5、c6、c7、c8が座標変換された歪補正後の入力画像70上の点である。この点w1~w4で囲まれた領域は、歪補正後の入力画像70内に設定された、垂直投影領域84に対応する垂直表示領域WAである。下記式(2)中、x
c及びy
cは垂直基準面81の車両座標系におけるx座標及びy座標であり、x
w及びy
wは歪補正後の入力画像70の画像座標系のx座標及びy座標である。ここで、画像座標系の座標(x
w,y
w)を表す同次座標はwとされ、車両座標系の座標(x
c,y
c)を表す同次座標はcとされる。同次座標wとcとの関係は、下記式(2)で表される。なお、値λ
wは、同次座標wにおける倍率を示す。この値λ
wがいずれの値をとっても(ただし値0を除く)、同次座標wは画像座標系上で同一の座標を表す。射影変換行列M
Wも、後述のように予め算出されて変換情報記憶部62に記憶されている。
【0031】
【0032】
射影変換行列M
G及びM
Wは、
図3を参照して、以下のような手順でシステムが搭載された車両の出荷時や整備時に作業者により算出される。まず、作業者は、入力画像70上で捉えられる点であって、車両座標系に設定した地面(水平基準面71)上の4つの点b1、b2、b3、b4を定義し、各点b1~b4の座標を実測により特定する。次に、作業者は、歪補正後の入力画像70上における、地面上の点b1、b2、b3、b4に対応する点をそれぞれag1、ag2、ag3、ag4と定義し、各点ag1~ag4の画素の座標を実測により特定する。作業者は、特定した点ag1~ag4、点b1~bの各座標を表示制御装置30に入力する。これにより、画像処理部53は、各点b1~b4と各点ag1~ag4との対応関係から、水平基準面71の車両座標系の座標から歪補正後の入力画像70上の座標へ変換する射影変換行列M
Gを算出する。画像処理部53は、算出した射影変換行列M
Gを、変換情報記憶部62に記憶する。なお、射影変換行列M
Gは、作業者によって算出され、変換情報記憶部62に記憶されてもよい。後述の射影変換行列M
Wも同様である。
【0033】
射影変換行列MGをより高精度に算出する為、点b1~b4は、乗員1が表示部40を通じて頻繁に見る領域上にあり、かつ点b1~b4で構成される四角形の面積は、より大きいことが望ましい。また、射影変換行列MGの算出手順は、上記手順に限定されず、例えば、画像処理部53等は、5点以上の対応点に基づき、その対応の誤差が最も少なくなるような射影変換行列MGを算出することもできる。
【0034】
次に、作業者は、入力画像70上で捉えられる点であって、車両座標系に設定した壁面(垂直基準面81)上の4つの点c1、c2、c3、c4を定義し、各点c1~c4の座標を実測により特定する。次に、作業者は、歪補正後の入力画像70上における、壁面上の点c1、c2、c3、c4に対応する点をそれぞれaw1、aw2、aw3、aw4と定義し、各点aw1~aw4の座標を実測により特定する。作業者は、各点c1~c4と各点aw1~aw4との対応関係から、車両座標系の垂直基準面81上の座標から歪補正後の入力画像70上の座標へ変換する射影変換行列MWを算出する。算出された射影変換行列MWは、変換情報記憶部62に記憶される。
【0035】
射影変換行列MWをより高精度に算出する為、点c1~c4は、乗員1が表示部40を通じて頻繁に見る領域上にあり、かつ点c1~c4で構成される四角形の面積は、より大きいことが望ましい。また、射影変換行列MWの算出手順も、上記手順に限定されず、画像処理部53等は、5点以上の対応点に基づき、その対応の誤差が最も少なくなるような射影変換行列MWを算出することもできる。
【0036】
地面投影範囲適用率算出処理は、
図5、
図6を参照して以下のように説明される。
図5は、画像処理部53で実行される地面投影範囲適用率算出処理を説明するための図であって、目の位置Tと、表示部40と、水平面HP及び垂直面VPの交差線Lの位置関係が示されている。画像処理部53は、実空間上の座標系を用いて、水平基準面71が設定される水平面HPと、垂直基準面81が設定される垂直面VPとの交差線Lを検出する。この水平面HP及び垂直面VPは、乗員1の目の位置Tに関係なく、無限に広がる面である。
【0037】
画像処理部53は、交差線L上に設定した任意の点Q1、Q2と、目の位置Tを各々結び、
図5に仮想線で示す2本の直線を公知の手法で算出する。画像処理部53は、算出した各直線と、無限に拡張した表示領域41との交点q1、q2の座標を計算し、交点q1、q2どうしを結んで表示領域41上の交差線lを公知の手法で算出する。この交差線lは、表示領域41上で交差線Lに対応する線、さらに言い換えれば、交差線Lが表示領域41に投影された投影交差線である。なお、交差線L及び交差線lは、実空間及び表示領域41に実際に線が表示されるものではなく、理解を容易とするために、水平面HPと垂直面VPとが交差する部分と、この部分に対応する表示領域41上の部分を仮想的に線として図示されたものである。
【0038】
交差線lは、表示領域41に投影される水平表示領域GAと垂直表示領域WAとのバランス(配分比)を決定するための線である。交差線lよりも上部の領域は、水平面HPが投影される領域であり、「地面投影範囲41g」と称されて説明される。一方、交差線lよりも下部の領域は、垂直面VPが投影される領域であり、「壁面投影範囲41w」と称されて説明される。
【0039】
また、交差線lは、乗員1の目の位置Tに応じて移動する(
図5の紙面下図、
図6のl、l1、l2参照)。乗員1が表示部40を通して自車両Vの近傍にある地面を見るほど、つまり乗員1が下方を見るほど目の位置Tが上又は前方に位置するため、交差線lは表示領域41の上方に移動する。これにより、表示領域41には、水平表示領域GA由来の画像が垂直表示領域WA由来の画像よりも優先されて表示される。これに対して、乗員1が表示部40を通して自車両Vの近傍よりも遠方、つまり乗員1が前方(進行方向)等を見るほど目の位置Tが下又は後方に位置するため、交差線lは表示領域41の下方に移動する。これにより、表示領域41には、垂直表示領域WA由来の画像が水平表示領域GA由来の画像よりも優先されて表示される。このとき、例えば交差線lが水平表示領域GAと垂直表示領域WAを分割した画像は表示されない。後述のように交差線lは例えば地面投影範囲適用率αを決定するために用いられる。
図7に示されるように、地面投影範囲適用率αの値の大きさに応じて水平表示領域GA由来の画像と垂直表示領域WA由来の画像が統合される。統合後の画像において、水平表示領域GAにより似た画像(入力画像70における水平表示領域GA由来の座標がより多く含まれた画像)が表示されるのか、垂直表示領域WAにより似た画像(入力画像70における垂直表示領域WA由来の座標がより多く含まれた画像)が表示されるのかを決める値がαである。
【0040】
次いで、画像処理部53は、地面投影範囲適用率α(以下、単に「地面適用率α」ということがある。)を算出する。この地面適用率αは、乗員1が表示部40を通して自車両Vの近傍にある地面を見る度合い、つまり乗員1が下方を見る度合いであり、表示領域41で地面投影範囲41gが占める率でもある。本実施形態では、この地面適用率αは、乗員1が下方を見ることで、表示部40に表示される地面の面積(地面投影範囲41gの面積)に基づき算出されるが、この手法に限定されない。
【0041】
地面適用率αが大きいほど、乗員1が地面を見る度合いが大きいため、地面、すなわち水平表示領域GA由来の画像が垂直表示領域WA由来の画像よりも優先されて表示領域41に表示される。一方、地面適用率αが小さいほど、乗員1が遠方を見る度合いが大きいため、壁面、すなわち垂直表示領域WA由来の画像が水平表示領域GA由来の画像よりも優先されて表示領域41に表示される。本実施形態では、αは0≦α≦1の範囲で変化する。地面適用率をαとしたとき、乗員1が表示部40を通して自車両Vの近傍にある地面よりも遠方を見る度合い、つまり壁面投影範囲適用率は1-αで表される。つまり、地面投影範囲41gと壁面投影範囲41wの関係(面積比)は、「地面投影範囲41g:壁面投影範囲41w=α:1-α」で表される。なお、本実施形態及び後述する第2実施形態では、αは0≦α≦1の範囲で変化可能としているが、これに限定されず、αは、0≦α≦1の範囲以外の所定の範囲で変化するものであってもよい。この場合、後段の処理でαを0≦α’≦1の範囲をとるα’へ変換し、このα’を地面適用率とみなす。
【0042】
図5、
図6に示されるように、α=1のとき、つまり交差線がl1の位置にあるときは、壁面投影範囲41wの面積は0とみなされ、100%水平表示領域GA由来の画像が表示領域41に表示される。一方、α=0のとき、つまり交差線がl2の位置にあるときは、地面投影範囲41gの面積は0とみなされ、表示領域41には、100%垂直表示領域WA由来の画像が表示される。そして、0<α<1の範囲では、α:1-αの配分比で、表示部40には、水平表示領域GA由来の画像と垂直表示領域WA由来の画像とが統合された画像が表示される。
【0043】
ところで、交差線lは、交差線Lに対する表示部40の配置角度によって傾斜が変化する。表示部40が交差線Lと平行に配置されていれば、
図5の紙面下図に示されるように、交差線lは表示領域41の上辺に平行な線となる。これに対して、表示部40が水平面HPに対して傾いて配置されていれば、交差線lは表示領域41の上辺に対して傾斜した線となる。この交差線lの傾きによっても、地面投影範囲41gと壁面投影範囲41wのバランスは変化する。このため、本実施形態の画像処理部53は、目の位置Tと交差線L上の2つの点Q1、Q2を結ぶ線と表示領域41が交差する2つ点q1、q2を算出して交差線lを算出し、地面投影範囲41gと壁面投影範囲41wの面積比に基づき、地面適用率αを算出している。
【0044】
なお、表示領域41の上下辺と、交差線Lとが平行であれば、より簡易な手法で地面投影範囲41gと壁面投影範囲41wの面積比を算出できる。
図6に示されるように、画像処理部53は、x方向から視た側面視において水平面HPと垂直面VPとの交点Rを算出し、この交点と目の位置Tとを結んだ線と表示領域41との交点rを算出する。画像処理部53は、この交点rによって分割される線分(表示領域41の側辺)の割合に基づき、α:1-αをより簡易に算出できる。
【0045】
次に、画像処理部53は、地面適用率αを使用して、内分点算出処理を実行する。具体的には、画像処理部53は、
図7の紙面上図に示されるように、歪補正後の入力画像70上の水平表示領域GA及び垂直表示領域WAをそれぞれ構成する4つの点g(g1~g4)、w(w1~w4)に対し、α:(1-α)の比で表される内分点p(p1~p4)の4つの座標を算出する。画像処理部53は、統合表示領域設定処理として、この4つの内分点p1~p4で囲まれた領域を、統合表示領域PAとして設定する。この統合表示領域PAは、乗員1が地面を見る度合いに対応した配分比で、水平表示領域GAの画像と垂直表示領域WAの画像とが統合された領域である。また、
図8は、地面適用率α=0.5のときの歪補正後の入力画像70上の水平表示領域GA、垂直表示領域WA及び統合表示領域PAを説明するための図である。
図8の紙面左図は、統合表示領域PA設定前の状態を、
図8の紙面右図は、統合表示領域PA設定後の状態を、仮想的に表した図であり、入力画像70上に実際に各領域の枠が設定されるものではない。
【0046】
画像処理部53は、座標変換処理として、まず出力画像42の四隅の頂点の座標を、統合表示領域PAの各点p1~p4の各座標への変換する射影変換行列Hを算出する。射影変換行列Hの算出処理は、
図7の紙面左下図を参照して、以下のように説明される。
図7の紙面下図は、表示部40の表示領域41を基準とする表示座標系と、歪補正後の入力画像70上に統合表示領域PAが示された図である。表示座標系は、表示領域41の左上隅を原点O(0,0)とする二次元の座標系である。Xe及びYeは互いに直交する軸であり、各軸の単位はピクセル(px)である。
【0047】
画像処理部53は、出力画像42上における四隅の頂点e1、e2、e3、e4の表示座標系の座標と、歪補正後の入力画像70上における内分点p1、p2、p3、p4との対応関係に基づき、出力画像42上の座標から歪補正後の入力画像70上の座標へ変換する射影変換行列Hを、公知の算出手順により算出する。画像処理部53は、算出した射影変換行列Hを変換情報記憶部62に記憶する。
【0048】
また、画像処理部53は、算出した射影変換行列Hを用いて、表示領域41に表示される出力画像42の全画素の座標を横に並べた行列をDとしたとき、この行列Dから、行列Dに含まれる各座標に対応する歪補正前の入力画像70上の座標を横に並べた行列D’への変換を、下記式(4)を用いて算出する。下記式(4)中、fは歪補正後の入力画像70上の画素の座標から、歪補正前の入力画像70上の画素の座標へ変換する公知の関数である。
【0049】
D’ = f(HD) (4)
【0050】
また、画像処理部53は、D’を用いて、表示領域41に表示される出力画像42上の全画素に対し、各画素の画素値に、各画素に対応する入力画像70上の画素の画素値を代入し、画像変形処理を行う。以上の処理により、画像処理部53は、入力画像70上の統合表示領域PAの画像に対応する出力画像42の画像データを生成する。画像処理部53は、生成した画像データを表示処理部54に出力する。
【0051】
表示処理部54は、表示部40が透過して車外が見えた場合と同じ出力画像42が表示部40に表示されるように、画像処理部53から入力される画像データに対応する出力画像42を表示部40の表示領域41に表示させる。
【0052】
記憶部60は、表示制御装置30を動作させるための制御プログラム、処理部50における各種動作の際に用いられる各種データやパラメータを、一時的又は非一時的に格納する。また、前述したように、位置情報記憶部61は、表示領域41の四隅の頂点d1~d4の座標を、一時的又は非一時的に格納する。変換情報記憶部62は、画像処理で算出又は用いられる射影変換行列MG、MW、H等を、一時的又は非一時的に格納する。
【0053】
上述のような構成の第1実施形態に係る表示制御システム100の動作の一例は、
図9のフローチャートを参照しながら、以下のように説明される。
図9は、表示制御装置30の動作の一例を示しているが、表示制御装置30の動作は、この
図9の動作に限定されない。
【0054】
まず、ステップS1で、画像取得部51は、撮像装置10から入力画像70を取得し、画像処理部53に出力する。また、ステップS2で、視点位置取得部52は、乗員監視部20から乗員1の目の位置情報を取得し、画像処理部53に出力する。
【0055】
次のステップS3で、画像処理部53は、入力画像70に対してレンズの歪みを補正する歪補正処理を実行する。このステップS3を行わずに、ステップS9において上記式(4)に基づく歪み補正処理を含む変換を行って、入力画像70を出力画像42に変換してもよい。次のステップS4で、画像処理部53は、目の位置Tの三次元座標と、表示領域41の四隅の頂点d1~d4の三次元座標に基づき、水平基準面71との交点b5~b8を検出し、水平基準面71上に水平投影領域74を設定する。また、画像処理部53は、交点b5~b8の座標を前述の式(1)の右辺に代入して、歪補正後の入力画像70の画像座標系の座標に変換し、入力画像70内に水平表示領域GAを設定する。
【0056】
次のステップS5で、画像処理部53は、目の位置Tの三次元座標と、表示領域41の四隅の頂点d1~d4の三次元座標に基づき、垂直基準面81との交点c5~c8を検出し、垂直基準面81上に垂直投影領域84を設定する。また、画像処理部53は、交点c5~c8の座標を前述の式(2)の右辺に代入して、歪補正後の入力画像70の画像座標系の座標に変換し、入力画像70内に垂直表示領域WAを設定する。
【0057】
次のステップS6で、画像処理部53は、水平面HPと垂直面VPとの交差線L上に設定した任意の点Q1、Q2と、目の位置Tを各々結んだ2本の線と、表示部40の表示領域41との交点q1、q2の座標を計算する。画像処理部53は、交点q1、q2どうしを結んで算出した交差線lに基づき、地面投影範囲適用率αを算出し、表示領域41上の地面投影範囲41gと壁面投影範囲41wとの面積比をα:1-αとして算出する。
【0058】
次のステップS7で、画像処理部53は、歪補正後の入力画像70上の水平表示領域GA及び垂直表示領域WAを構成する4つの点g(g1~g4)、w(w1~w4)に対し、α:(1-α)の比で表される内分点p(p1~p4)の4つの座標を算出する。次のステップS8で、画像処理部53は、算出した4つの内分点p1~p4で囲まれた領域を、統合表示領域PAとして設定する。
【0059】
次のステップS9で、画像処理部53は、出力画像42の四隅の頂点e1~e4の表示座標系の座標を、ステップS7で算出した統合表示領域PAの各点p1~p4の各座標への変換する射影変換行列Hを算出し、変換情報記憶部62に記憶する。次のステップS10で、画像処理部53は、ステップS9で算出した射影変換行列Hと上記式(4)を使用して、出力画像42の全画素の座標を、対応する入力画像70上の画素の座標に変換することで、出力画像42の画像データを生成し、表示処理部54に出力する。
【0060】
次のステップS11で、表示処理部54は、ステップS10で画像処理部53から入力される画像データに対応する出力画像42を表示部40の表示領域41に表示させる。以上により、表示領域41は、乗員1が地面を見る度合いに対応して、水平表示領域GA由来の画像と垂直表示領域WA由来の画像とが統合された出力画像42が表示される。
【0061】
(第2実施形態)
この開示の第2実施形態に係る表示制御装置30及び表示制御システム100は、画像処理部53の機能の一部が異なること以外は、
図1に示される第1実施形態に係る表示制御装置30及び表示制御システム100と同じ基本構成及び機能を備えている。このため、第2実施形態において、第1実施形態と同じ構成及び機能の詳細な説明は省略される。
【0062】
第2実施形態の表示制御装置30では、第1実施形態と同様に、画像取得部51は撮像装置10から入力画像70を取得し、画像処理部53に出力し、視点位置取得部52は、乗員監視部20から目の位置情報を取得し、画像処理部53に出力する。
【0063】
ここで、第1実施形態の画像処理部53は、歪補正処理部、水平表示領域設定処理部、垂直表示領域設定部、地面投影範囲適用率算出部、内分点算出部、統合表示領域設定部及び座標変換部として機能する。画像処理部53は、射影変換行列MG及びMWを予め算出し、これらを用いた上記式(1)、(2)と地面適用率αを用いて、歪補正後の入力画像70内に水平表示領域GAの座標と垂直表示領域WAの座標を含む統合表示領域PAを設定する。次いで画像処理部53は、射影変換行列Hを算出し、出力画像42の座標を入力画像70における統合表示領域PA内の座標に座標変換している。
【0064】
これに対して、第2実施形態の画像処理部53は、歪補正処理部、水平表示領域設定処理部、垂直表示領域設定部、地面投影範囲適用率算出部、内分点算出部及び座標変換部として機能するとともに、統合表示領域設定部に代えて、行列算出処理を実行する行列算出部として機能する。画像処理部53は、行列算出部として、出力画像42上の表示座標系上の点から、歪補正後の入力画像70上の画像座標系上の点へ変換する射影変換行列Hを、それぞれ水平基準面71に及び垂直基準面81に対して計算する。水平基準面71及び垂直基準面81に対する射影変換行列は、それぞれ水平変換行列G及び垂直変換行列Wと称されて説明される。
【0065】
水平変換行列G及び垂直変換行列Wは、以下のような手順で算出される。まず、第1実施形態と同様の手順で、実測により特定された、車両座標系に設定した水平基準面71上の4つの点b1、b2、b3、b4の座標と、歪補正後の入力画像70の画像座標系における点ag1、ag2、ag3、ag4の座標(以上、
図3参照)の対応関係に基づき、車両座標系の水平基準面71上の座標から画像座標系の歪補正後の入力画像70上の座標へ変換する射影変換行列M
Gが算出される。
【0066】
次に、画像処理部53は、第1実施形態と同様の手順で、目の位置Tの三次元座標と、表示領域41の四隅の頂点d1~d4の三次元座標に基づき、水平基準面71との交点b5~b8を検出する。
【0067】
次に、表示座標系の出力画像42上の座標から車両座標系の水平基準面71上の座標へ変換する射影変換行列N
Gが算出されるが、その算出手順は、
図10、
図4を参照して以下のように説明される。画像処理部53は、
図10の紙面上図に示される出力画像42上の四隅の頂点e1、e2、e3、e4の座標と、表示部40への表示対象となる水平投影領域74を構成する車両座標系上の点b5、b6、b7、b8の座標との対応関係から、射影変換行列N
Gを、公知の算出手順により算出する。このとき、点b5~b8のy座標は常に0となるため、画像処理部53は、この次元を無視する。
【0068】
また、第1実施形態と同様の手順で、画像処理部53は、実測により特定された、車両座標系に設定した垂直基準面81上の4つの点c1、c2、c3、c4の座標と、歪補正後の入力画像70の画像座標系における点aw1、aw2、aw3、aw4の座標(以上、
図3参照)の対応関係に基づき、車両座標系の垂直基準面81上の座標から歪補正後の入力画像70上の座標へ変換する射影変換行列M
Wを算出する。
【0069】
次に、画像処理部53は、第1実施形態と同様の手順で、目の位置Tの三次元座標と、表示領域41の四隅の頂点d1~d4の三次元座標に基づき、垂直基準面81との交点c5~c8を検出する。
【0070】
次に、画像処理部53は、
図10紙面下図に示される出力画像42上の四隅の頂点e1、e2、e3、e4の座標と、表示部40への表示対象となる垂直投影領域84を構成する車両座標系上の点c5、c6、c7、c8の座標との対応関係から、出力画像42上の座標から車両座標系の垂直基準面81上の座標へ変換する射影変換行列N
Wを、公知の算出手順により算出する。このとき、垂直基準面81がXcYc平面に平行であれば、点c5~c8のz座標は常に一定となるため、画像処理部53は、この次元を無視する。一方、垂直基準面81がXcYc平面に平行でない場合、画像処理部53は、垂直基準面81がXcYc平面に平行となるように車両座標系を回転させた上で射影変換行列N
Wを算出する。
【0071】
画像処理部53は、算出した射影変換行列M
G、N
Gに基づき、水平変換行列G(G=M
GN
G)を算出し、変換情報記憶部62に記憶する。画像処理部53は、算出した射影変換行列M
W、N
Wに基づき、垂直変換行列W(W=M
WN
W)を算出し、変換情報記憶部62に記憶する。
図11の紙面上図は、第2実施形態での画像処理の理解を容易とするため、出力画像42の表示座標系上の領域と、入力画像70の画像座標系における水平表示領域GA及び垂直表示領域WAとの関係を、図で表したものである。
【0072】
次に、画像処理部53は、第1実施形態と同様の手順で、目の位置T及び水平面HPと垂直面VPとの交差線Lに基づいて地面適用率αを算出する。画像処理部53は、水平変換行列Gを適用して得られる水平表示領域GA内の画素の座標と垂直変換行列Wを適用して得られる垂直表示領域WA内の画素の座標の内分座標を算出するための比であるα:1-αを算出する。次に、画像処理部53は、α、1-α、水平変換行列G及び垂直変換行列Wを用いて、表示領域41に表示される出力画像42の全画素の座標を横に並べた行列をDとしたとき、この行列Dから、出力画像42の各画素に対応する入力画像70上の画素の座標を横に並べた行列D’への変換を、下記式(5)を用いて算出する。下記式(5)中、fは歪補正後の入力画像70上の画素の座標から、歪補正前の入力画像70上の画素の座標へ変換する公知の関数である。
【0073】
D’ = f(αGD + (1-α)WD) (5)
【0074】
図11の紙面下図は、出力画像42の行列Dにおける画素を、上記式(5)を用いて歪補正後の入力画像70上の画素に変換する手順を、理解を容易とするため図に表したものである。画像処理部53は、表示領域41に表示される出力画像42上の全画素に対応する、入力画像70上の画素を、上記式(5)に代入して座標変換し、出力画像42の画像データを生成する。画像処理部53は、生成した画像データを表示処理部54に出力する。表示処理部54は、画像処理部53から入力される画像データに対応する出力画像42を表示部40の表示領域41に表示させる。
【0075】
以上説明したように、上記各実施形態の表示制御装置30は、乗員1の目の位置Tに基づき、乗員1が地面を見る度合いに応じて、入力画像70と出力画像42とを対応付けて変換し、表示部40に表示する出力画像42に変換する。したがって、表示制御装置30は、乗員1が表示部40に表示された出力画像42を視認する際に乗員1の違和感を抑制できる。また、乗員1が目の位置Tを移動させて、表示部40を通して地面を見る度合いを変更したときも、この度合いに応じて両画像が統合された出力画像42が表示部40に表示される。この結果、表示制御装置30は、歪が適切に軽減され、乗員1に違和感を与えることなく自然に変化する出力画像42を表示し続けることができる。また、このような出力画像42は、αが0又は1のときには
図2に示すように、フロントウィンドウ2を通して見える風景とのつながりも適切となり、乗員1の違和感がより適切に低減される。
【0076】
また、第1実施形態の表示制御装置30は、地面投影範囲適用率αに基づいて、入力画像70内に水平表示領域GAの座標と垂直表示領域WAの座標を含む統合表示領域PAを設定する統合表示領域設定部(画像処理部53)とを備える。表示処理部54は、入力画像70における統合表示領域PAの座標を出力画像42に座標変換して表示部40に表示する。
【0077】
また、第1実施形態の表示制御装置30は、入力画像70上における水平表示領域GAを構成する4つの点g1~g4と、水平表示領域GA上の4つの点g1~g4に対応し入力画像70上における垂直表示領域WAを構成する4つの点w1~w4をそれぞれ結んだ線分を内分する内分点p1~p4を、地面投影範囲適用率αに基づいて算出する内分点算出部(画像処理部53)を備える。統合表示領域設定部(画像処理部53)は、入力画像70上における内分点p1~p4で囲まれた領域を統合表示領域PAに設定する。以上の構成を備えることで、処理部50における演算速度が速くなり、第1実施形態の表示制御装置30は、画像変換をより高速かつより効率的に行える。
【0078】
また、第2実施形態の表示制御装置30は、入力画像70内の水平表示領域GAの座標と出力画像42の座標を対応付ける水平変換行列Gと、入力画像70内の垂直表示領域WAの座標と出力画像42の座標を対応付ける垂直変換行列Wを求める行列算出部(画像処理部53)を備える。そして、表示処理部54は、水平変換行列Gと垂直変換行列Wと地面投影範囲適用率αに基づいて、入力画像70の座標と出力画像42の座標を対応付けて、表示部40に表示するよう制御する。
【0079】
このとき、表示処理部54は、水平変換行列Gと垂直変換行列Wに基づいて、出力画像42の座標に対応する入力画像70の水平表示領域GA内の座標と垂直表示領域WA内の座標をそれぞれ算出し、入力画像70における水平表示領域GA内の座標と垂直表示領域WA内の座標を地面投影範囲適用率αに基づいて内分した内分座標を出力画像42の座標に対応付ける。
【0080】
以上の構成を備えることで、第2実施形態の表示制御装置30は、長方形の表示部40に限らず、台形、ひし形、不等片辺四角形、三角形、五角形以上の多角形等、長方形以外の表示部40であっても、入力画像70上の画素の座標を、出力画像42の画素の座標に高精度に変換できる。このため、表示制御装置30は、何れの形状の表示部40でも、乗員1の違和感をより低減可能な出力画像42を表示できる。
【0081】
以上、図面を参照して、本開示の実施形態を詳述してきたが、具体的な構成は、上記各実施形態に限らず、本開示の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本開示に含まれる。
【0082】
例えば、上記各実施形態の画像処理部53は、射影変換行列M
Wを算出する際に、交点aw1、aw2、aw3、aw4の座標を実測により特定しているが、この手順に限定されない。例えば、
図12に示されるように、画像処理部53は、撮像装置10による撮像画像の位置情報(例えば、前方カメラの光学中心の三次元座標)を投影中心Fとし、垂直基準面81の点c1、c2、c3、c4を水平基準面71に投影した際の座標に、射影変換行列M
Gを適用して特定することもできる。
【0083】
より具体的には、
図12に示されるように、画像処理部53は、投影中心Fと車両座標系における垂直基準面81上の点c1、c4とをそれぞれ結んだ線を水平基準面71に接するまで延長し、延長したこれらの線と水平基準面71とが交差した点c1’、c4’を検出し、これらの座標を算出する。同様に、画像処理部53は、点c2、c3に対応する水平基準面71上の点c2’、c3’の座標を算出するが、点c2、c3は水平基準面71に接する点であるため、点c2’、c3’の座標は、点c2、c3の座標をそのまま使用できる。以上のようにして算出した点c1’~c4’の座標に対して、射影変換行列M
Gを用いた前述の式(1)を適用することで、c1’~c4’は、垂直基準面81のc1~c4に対応する歪補正後の入力画像70上の座標に変換される。もちろん、垂直基準面81上の点c2、c3は地面に接していなくてもよく、その場合はc1,c4と同様にしてc2’、c3’が計算される。
【0084】
また、上記各実施形態の表示制御装置30は、撮像装置10の前方カメラが撮影した入力画像70を、乗員1の地面を見る度合いに応じて画像変換して表示部40に表示させているが、この構成に限定されない。例えば、この構成に代えて、又はこの構成に加えて、表示制御装置30は、後方カメラが撮影した入力画像を、乗員1の地面を見る度合いに応じて画像変換して表示部40に表示させる構成とすることもできる。さらに表示制御装置30は、側方カメラで撮影した入力画像を、自車両Vの斜め前方の路面の角度や障害物の角度に対応させて出力画像42に変換して、いわゆるAピラー等に設けた表示部に表示させる構成とすることもできる。このAピラー等に設けた表示部は、長方形ではない場合が多いため、特に第2実施形態の表示制御装置30は、好適に用いられる。したがって、表示制御装置30は、後方を撮影した入力画像や、側方を撮影した入力画像を、乗員1の地面を見る度合いに応じて表示部40に表示させることができ、乗員1は、出力画像42を視認することで、後方や側方の路面や障害物を、違和感なく、より適切に把握できる。
【符号の説明】
【0085】
1 :乗員 30 :表示制御装置
40 :表示部 41 :表示領域
42 :出力画像 51 :画像取得部
52 :視点位置取得部 53 :画像処理部
54 :表示処理部 70 :入力画像
71 :水平基準面 81 :垂直基準面
G :水平変換行列 GA :水平表示領域
PA :統合表示領域 V :自車両
W :垂直変換行列 WA :垂直表示領域
p :内分点 α :地面投影範囲適用率