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特開2024-93870サーマルプリントヘッド、およびサーマルプリントヘッドの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093870
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】サーマルプリントヘッド、およびサーマルプリントヘッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/335 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
B41J2/335 101C
B41J2/335 101H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210496
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中久保 一也
(72)【発明者】
【氏名】有瀧 康之
【テーマコード(参考)】
2C065
【Fターム(参考)】
2C065GA01
2C065GB01
2C065JC09
2C065JC11
2C065JC13
2C065JH05
2C065JH14
(57)【要約】
【課題】品質、製造コスト等を改善することができるサーマルプリントヘッド、およびサーマルプリントヘッドの製造方法を提供する。
【解決手段】サーマルプリントヘッド1Aは、第1主面11を有する第1基板1と、第1主面11上に配置されているグレーズ層2と、グレーズ層2上に配置されている配線層3と、配線層3と電気的に接続されている抵抗体4と、を備える。グレーズ層2は、少なくとも抵抗体4を設ける部分に、多孔質ガラス層2aと、多孔質ガラス層2a上に配置されているバリアガラス層2bとを含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面を有するセラミック基板と、
前記主面上に配置されているグレーズ層と、
前記グレーズ層上に配置されている配線層と、
前記配線層と電気的に接続されている抵抗体と、を備え、
前記グレーズ層は、少なくとも前記抵抗体を設ける部分に、多孔質ガラス層と、前記多孔質ガラス層上に配置されているバリアガラス層とを含む、サーマルプリントヘッド。
【請求項2】
前記グレーズ層は、
前記多孔質ガラス層および前記バリアガラス層が配置された部分以外の前記主面にガラス層が配置され、
前記ガラス層上および前記バリアガラス層上に、前記配線層が配置される、請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項3】
前記バリアガラス層の焼成温度は、前記多孔質ガラス層の焼成温度以上で、前記ガラス層の焼成温度より低い、請求項2に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項4】
前記グレーズ層は、前記主面の全面に前記多孔質ガラス層と前記バリアガラス層とが配置されている、請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項5】
前記グレーズ層は、前記抵抗体を設ける部分の前記バリアガラス層上に配置される凸形状のガラス層をさらに含む、請求項4に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項6】
前記グレーズ層は、前記主面の全面に配置されるガラス層をさらに含み、
前記ガラス層上に、凸形状の前記多孔質ガラス層および前記バリアガラス層が配置される、請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項7】
前記グレーズ層は、前記多孔質ガラス層上に前記バリアガラス層が配置された層構造が複数積み重ねられている部分を含む、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項8】
前記多孔質ガラス層は、焼結法で形成された層である、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項9】
サーマルプリントヘッドの製造方法であって、
セラミック基板の主面上に、抵抗体を設ける部分以外にガラス層を印刷し、焼成する工程と、
前記ガラス層が形成されていない前記主面上に、多孔質ガラス層を印刷し、焼成する工程と、
前記多孔質ガラス層上に、バリアガラス層を印刷し、焼成する工程と、
前記ガラス層上および前記バリアガラス層上に、配線層を形成する工程と、
前記配線層と電気的に接続される前記抵抗体を形成する工程と、を含み、
前記バリアガラス層の焼成温度は、前記多孔質ガラス層の焼成温度以上で、前記ガラス層の焼成温度より低い、サーマルプリントヘッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サーマルプリントヘッド、およびサーマルプリントヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板上に形成された抵抗体に通電して発熱させることで、感熱記録紙などの印刷媒体に印字することができるサーマルプリントヘッドが提供されている。サーマルプリントヘッドでは、発熱体である抵抗体の温度を上げるため、抵抗体下にグレーズ層と呼ばれるガラス層が配置されている。特許文献1には、従来のサーマルプリントヘッドの一例が開示されている。特許文献1に開示されたサーマルプリントヘッドでは、アルミナ基板上にグレーズ層として多孔質ガラス層が配置してある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1-272465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
抵抗体の温度を効率よく上げるためには、グレーズ層の熱伝導率が低く、熱容量が小さいことが求められる。特許文献1のようにグレーズ層に多孔質ガラス層を用いることで、投入するエネルギーを変えることなく抵抗体の温度を高くでき、印字時のエネルギー効率を改善してサーマルプリントヘッドの特性を向上させることができる。
【0005】
しかし、グレーズ層をガラス層から多孔質ガラス層に単純に置き換えるだけで、グレーズ層にガラス層を用いたサーマルプリントヘッドと同じ品質でサーマルプリントヘッドを製造することができない。そのため、サーマルプリントヘッドのグレーズ層に多孔質ガラス層を用いる場合、グレーズ層にガラス層を用いる場合に比べて品質、製造コスト等を改善する必要があった。
【0006】
本開示は、上記問題点を解決するためになされたものであり、品質、製造コスト等を改善することができるサーマルプリントヘッド、およびサーマルプリントヘッドの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るサーマルプリントヘッドは、主面を有するセラミック基板と、主面上に配置されているグレーズ層と、グレーズ層上に配置されている配線層と、配線層と電気的に接続されている抵抗体と、を備える。グレーズ層は、少なくとも抵抗体を設ける部分に、多孔質ガラス層と、多孔質ガラス層上に配置されているバリアガラス層とを含む。
【0008】
本開示に係るサーマルプリントヘッドの製造方法は、セラミック基板の主面上に、抵抗体を設ける部分以外にガラス層を印刷し、焼成する工程と、ガラス層が形成されていない主面上に、多孔質ガラス層を印刷し、焼成する工程と、多孔質ガラス層上に、バリアガラス層を印刷し、焼成する工程と、ガラス層上およびバリアガラス層上に、配線層を形成する工程と、配線層と電気的に接続されている抵抗体を形成する工程と、を含む。バリアガラス層の焼成温度は、多孔質ガラス層の焼成温度以上で、ガラス層の焼成温度より低い。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係るサーマルプリントヘッドによれば、少なくとも抵抗体を設ける部分に、多孔質ガラス層と、多孔質ガラス層上に配置されているバリアガラス層とを含むので、品質、製造コスト等を改善しつつ、印字時のエネルギー効率を改善してサーマルプリントヘッドの特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係るサーマルプリントヘッドを示す平面図である。
図2】実施の形態1に係るサーマルプリントヘッドを示す要部平面図である。
図3】実施の形態1に係るサーマルプリントヘッドを示す断面図である。
図4】実施の形態1に係るサーマルプリントヘッドを示す要部断面図である。
図5】実施の形態1に係るサーマルプリントヘッドの製造方法の一例を示す要部断面図である。
図6】変形例1に係るサーマルプリントヘッドを示す要部断面図である。
図7】変形例2に係るサーマルプリントヘッドを示す要部断面図である。
図8】変形例3に係るサーマルプリントヘッドを示す要部断面図である。
図9】実施の形態2に係るサーマルプリントヘッドを示す要部断面図である。
図10】実施の形態3に係るサーマルプリントヘッドを示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0012】
[実施の形態1]
(サーマルプリントヘッドの構造)
図1図4では、本開示の実施の形態1に係るサーマルプリントヘッドを示している。実施の形態1のサーマルプリントヘッドA1は、第1基板1、グレーズ層2、配線層3および抵抗体4を備えている。なお、サーマルプリントヘッドA1は、さらに、第2基板5、ドライバIC7および放熱部材8を備えてもよい。サーマルプリントヘッドA1は、プラテンローラ91との間に挟まれて搬送される印刷媒体(図示略)に印刷を施すプリンタに組み込まれるものである。このような印刷媒体としては、たとえばバーコードシート、レシートを作成するための感熱紙が挙げられる。
【0013】
図1は、サーマルプリントヘッドA1を示す平面図である。図2は、サーマルプリントヘッドA1を示す要部平面図である。図3は、サーマルプリントヘッドA1を示す断面図である。図4は、サーマルプリントヘッドA1を示す要部断面図である。図1および図2においては、理解の便宜上、後述の保護樹脂78を省略している。図2においては、理解の便宜上、後述のワイヤ61を省略している。図1図2においては、副走査方向yの図中右側が上流側であり、図中左側が下流側である。図3においては、副走査方向yの図中上側が上流側であり、図中下側が下流側である。
【0014】
第1基板1は、グレーズ層2、配線層3および抵抗体4を支持するものであり、本開示の基板に相当する。第1基板1は、主走査方向xを長手方向とし、副走査方向yを幅方向とする細長矩形状である。以降の説明においては、第1基板1の厚さ方向を厚さ方向zとして説明する。第1基板1の大きさは特に限定されない。
【0015】
実施の形態1においては、第1基板1は、セラミック基板、アルミナ基板などからなる。しかし、第1基板1は、単結晶半導体、たとえばSiによって形成されている基板でもよい。図3および図4に示すように、第1基板1は、第1主面11および第1裏面12を有する。第1主面11および第1裏面12は、厚さ方向zにおいて互いに反対側を向いている。グレーズ層2、配線層3および抵抗体4は、第1主面11の側に設けられる。第1主面11は、本開示の主面に相当する。
【0016】
第1基板1は、グレーズ層2を有する。グレーズ層2は、図4に示すように、少なくとも抵抗体4を設ける部分に、多孔質ガラス層2aと、多孔質ガラス層2a上に配置されているバリアガラス層2bとを含む。さらに、グレーズ層2は、多孔質ガラス層2aおよびバリアガラス層2bが配置された部分以外の第1主面11にガラス層2cが配置されている。多孔質ガラス層2aおよびバリアガラス層2bの厚みと、ガラス層2cの厚みとが略同じで、ガラス層2c上およびバリアガラス層2b上に、配線層3が配置される。抵抗体4は、配線層3(個別電極31および共通電極32)と電気的に接続されている。なお、ガラス層2cの表面がバリアガラス層2bと滑らかに繋がっているのであれば、ガラス層2cの厚みは、多孔質ガラス層2aおよびバリアガラス層2bの厚みより薄くてもよい。
【0017】
グレーズ層2は、抵抗体4を設ける部分に多孔質ガラス層2aを配置することで、ガラス層2cに比べて熱伝導率を低く、熱容量を小さくすることができる。そのため、サーマルプリントヘッドA1は、抵抗体4を設ける部分にガラス層2cを用いたサーマルプリントヘッドで投入するエネルギーと同じエネルギーを投入しても抵抗体4の温度をより高くでき、印字時のエネルギー効率を改善して、サーマルプリントヘッドの特性を向上させることができる。
【0018】
また、多孔質ガラス層2a上に配線層3、抵抗体4を直接形成すると、配線層3、抵抗体4を印刷で形成する際に溶剤が多孔質ガラス層2aの空孔部分に浸み込み、設計通りの配線層3、抵抗体4を形成することができないことがあった。そのため、多孔質ガラス層2a上に配線層3、抵抗体4を直接形成すると、所望の品質を得ることができない。そこで、サーマルプリントヘッドA1では、多孔質ガラス層2a上に多孔質ガラス層2aより緻密なバリアガラス層2bを配置することで、配線層3、抵抗体4を印刷で形成する際に溶剤が多孔質ガラス層2aの空孔部分に浸み込むのを防止して、設計通りの配線層3、抵抗体4を形成することができる。
【0019】
さらに、グレーズ層2は、第1主面11の全面に多孔質ガラス層2aおよびバリアガラス層2bを形成した場合、製造条件によっては第1基板1が反ってしまい、不良品となり製造コストが増加する。そこで、サーマルプリントヘッドA1では、抵抗体4を設ける部分以外の第1主面11にガラス層2cを配置することで、第1基板1の反りを抑制し、不良品を低減することができる。
【0020】
抵抗体4は、第1基板1に支持されており、実施の形態1においては、グレーズ層2を介して第1基板1に支持されている。抵抗体4は、主走査方向xに沿って配置された複数の発熱体であり、主走査方向xにおいて互いに離間している。複数の発熱体は、各々に選択的に通電されることにより、印刷媒体を局所的に加熱するものである。発熱体の形状は特に限定されず、実施の形態1においては、厚さ方向z視において副走査方向yを長手方向とする長矩形状の凸形状である。抵抗体4は、たとえば酸化ルテニウムとガラスの焼結体、TaNなどからなる。
【0021】
配線層3は、抵抗体4に通電するための通電経路を構成するためのものである。配線層3は、第1基板1に支持されており、実施の形態1においては、図4に示すように、抵抗体4と電気的に接続されている。配線層3は、抵抗体4よりも低抵抗な金属材料からなり、たとえばAl,Cuなどからなる。また、配線層3は、Cuからなる層と、当該層と抵抗体4との間に介在するTiからなる層とを有する構成であってもよい。
【0022】
図1図2に示すように、実施の形態1においては、配線層3は、複数の個別電極31および共通電極32を有する。抵抗体4は、複数の個別電極31と共通電極32との間に配置され、複数の発熱体を構成している。なお、実施の形態1に係るサーマルプリントヘッドA1では、一例として抵抗体が薄膜構造である場合の構成を説明したが、本開示に係るサーマルプリントヘッドは、抵抗体が薄膜構造である場合に限定されず、抵抗体が厚膜構造である場合も含まれる。
【0023】
複数の個別電極31は、各々が概ね副走査方向y方向に延びる帯状であり、抵抗体4に対して副走査方向y上流側に配置されている。実施の形態1においては、個別電極31の副走査方向y下流側端が、抵抗体4に重なる位置に配置されている。図2に示すように、個別電極31は、個別パッド311を有する。個別パッド311は、ドライバIC7と導通させるためのワイヤ61が接続される部分である。
【0024】
共通電極32は、連結部323と複数の帯状部324とを有する。複数の帯状部324は、抵抗体4に対して副走査方向y下流側に配置されている。複数の帯状部324の副走査方向y上流側端は、複数の個別電極31の副走査方向y下流側端と、抵抗体4を挟んで対向し、抵抗体4に重なる位置に配置されている。連結部323は、複数の帯状部324の副走査方向y下流側に位置し、複数の帯状部324が繋がっている。連結部323は、主走査方向xに延びており、帯状部324の主走査方向x方向寸法よりも副走査方向y寸法が大きい、比較的幅広の部分である。図1に示すように、連結部323は、複数の発熱体の副走査方向y下流側から、主走査方向x両側を迂回して、副走査方向y上流側へと延びている。
【0025】
実施の形態1においては、複数の帯状部324の副走査方向y下流側部分と連結部323とが、第1基板1の第1主面11に形成されている。
【0026】
第2基板5は、図1および図3に示すように、第1基板1に対して副走査方向y上流側に配置されている。第2基板5は、たとえばPCB基板であり、ドライバIC7、後述のコネクタ59が搭載される。第2基板5の形状等は特に限定されず、実施の形態1においては、主走査方向xを長手方向とする長矩形状である。第2基板5は、第2主面51および第2裏面52を有する。第2主面51は、第1基板1の第1主面11と同じ側を向く面であり、第2裏面52は、第1基板1の第1裏面12と同じ側を向く面である。実施の形態1においては、第2主面51は、第1主面11よりも厚さ方向z図中下方に位置している。
【0027】
ドライバIC7は、第2基板5の第2主面51に搭載されており、抵抗体4により構成される複数の発熱体に個別に通電させるためのものである。実施の形態1においては、ドライバIC7は、複数のワイヤ61によって複数の個別電極31に接続されている。ドライバIC7の通電制御は、第2基板5を介してサーマルプリントヘッドA1外から入力される指令信号に従う。ドライバIC7は、複数のワイヤ62によって第2基板5の配線層(図示略)に接続されている。実施の形態1においては、複数の発熱体の個数に応じて、複数のドライバIC7が設けられている。
【0028】
ドライバIC7、複数のワイヤ61および複数のワイヤ62は、保護樹脂78に覆われている。保護樹脂78は、たとえば絶縁性樹脂からなりたとえば黒色である。保護樹脂78は、第1基板1と第2基板5とに跨るように形成されている。
【0029】
コネクタ59は、サーマルプリントヘッドA1をプリンタ(図示略)に接続するために用いられる。コネクタ59は、第2基板5に取付けられており、第2基板5の配線層(図示略)に接続されている。
【0030】
放熱部材8は、第1基板1および第2基板5を支持しており、複数の発熱体によって生じた熱の一部を、第1基板1を介して外部へと放熱するためのものである。放熱部材8は、たとえばアルミ等の金属からなるブロック状の部材である。実施の形態1においては、放熱部材8は、第1支持面81および第2支持面82を有する。第1支持面81および第2支持面82は、各々が厚さ方向z上側を向いており、副走査方向yに並んで配置されている。第1支持面81には、第1基板1の第1裏面12が接合されている。第2支持面82には、第2基板5の第2裏面52が接合されている。
【0031】
(サーマルプリントヘッドA1の製造方法)
第1基板1、グレーズ層2、配線層3および抵抗体4を備えるサーマルプリントヘッドA1の製造方法について説明する。図5は、サーマルプリントヘッドA1の製造方法の一例を示す要部断面図である。まず、図5(a)に示す工程では、セラミック基板である第1基板1を準備する。図5(b)に示す工程では、第1基板1の第1主面11上に、少なくとも抵抗体4を設ける部分以外にガラス層2cを印刷し、焼成する。ガラス層2cを焼成する温度(焼成温度)は約1200℃である。
【0032】
次に、図5(c)に示す工程では、ガラス層2cが形成されていない第1基板1の第1主面11上に、多孔質ガラス層2aを印刷し、焼成する。具体的に、多孔質ガラス層2aは、焼結法を用い、粒径を調整したガラス粉含むペーストを印刷し、焼結させて形成する。多孔質ガラス層2aを焼成する温度(焼成温度)は約850℃である。図5(d)に示す工程では、多孔質ガラス層2a上に、バリアガラス層2bを印刷し、焼成する。バリアガラス層2bを焼成する温度(焼成温度)は約800~900℃である。つまり、バリアガラス層2bの焼成温度は、多孔質ガラス層2aの焼成温度以上で、ガラス層2cの焼成温度より低い。さらに、バリアガラス層2bの焼成温度は、多孔質ガラス層2aの焼成温度と同程度あることが好ましい。バリアガラス層2bの焼成温度がガラス層2cの焼成温度と同程度に高温である場合、バリアガラス層2bを焼成するタイミングで、既に形成した多孔質ガラス層2aを軟化させてしまい、多孔質ガラスではなく緻密なガラスとなってしまう虞がある。つまり、多孔質ガラス層2aの形成後に、焼成する温度は、多孔質ガラス層2aの軟化温度以下に抑えることが好ましい。
【0033】
次に、図5(e)に示す工程では、ガラス層2c上およびバリアガラス層2b上に、配線層3を形成する。なお、配線層3は、たとえば、複数の個別電極31および共通電極32を含む形状をガラス層2c上およびバリアガラス層2b上に印刷し、焼成して形成される。図5(f)に示す工程では、配線層3と電気的に接続される抵抗体4を形成する。抵抗体4は、たとえば、複数の個別電極31および共通電極32上に重ねて印刷し、焼成して形成される。なお、サーマルプリントヘッドA1では、抵抗体4を含む第1主面11の全体を覆うように保護層を形成してもよい。保護層は、たとえばガラス、SiO2、SiN、SiC、AlN等の絶縁性の材料が好ましい。
【0034】
(変形例1)
グレーズ層2は、図4で示したように、多孔質ガラス層2aおよびバリアガラス層2bの厚みと、ガラス層2cの厚みとを同じ厚みにする必要がある。しかし、グレーズ層2の厚みがたとえば約100μm必要な場合に、ガラス層2cの厚みを約100μmにして形成することができても、製造方法によって多孔質ガラス層2aおよびバリアガラス層2bの厚みを約100μmにして形成することができない。このような場合に、多孔質ガラス層2aおよびバリアガラス層2bの層構造を積み重ねて所望の厚みを確保してもよい。
【0035】
図6は、変形例1に係るサーマルプリントヘッドA11を示す要部断面図である。図6に示すサーマルプリントヘッドA11において、実施の形態1で説明した構成と同じ構成については同じ符号を付して詳細な説明を繰り返さない。サーマルプリントヘッドA11は、第1基板1上に、グレーズ層21を有する。グレーズ層21は、少なくとも抵抗体4を設ける部分に、多孔質ガラス層2a1と、多孔質ガラス層2a1上に配置されているバリアガラス層2b1と、バリアガラス層2b1上に配置されている多孔質ガラス層2a2と、多孔質ガラス層2a2上に配置されているバリアガラス層2b2と、を含む。つまり、グレーズ層21は、多孔質ガラス層2a1,2a2上にバリアガラス層2b1,2b2が配置された層構造が2つ積み重ねられている部分を含む。もちろん、グレーズ層21は、多孔質ガラス層上にバリアガラス層が配置された層構造が3つ以上積み重ねられている部分を含んでもよい。
【0036】
これにより、製造方法によっては多孔質ガラス層2aおよびバリアガラス層2bの厚みが、設計上必要なグレーズ層2の厚みを得られない場合であっても、多孔質ガラス層2a1,2a2上にバリアガラス層2b1,2b2が配置された層構造を複数積み重ねことで、設計上必要なグレーズ層2の厚みを得ることができる。なお、多孔質ガラス層2a1,2a2のみを複数積み重ねことも考えられるが、多孔質ガラス層2a1,2a2を積み重ねて形成する際に、下の多孔質ガラス層2a1の空孔部分に上の多孔質ガラス層2a2が浸み込むため、厚み精度の高い層を得ることができない。そのため、下の多孔質ガラス層2a1と上の多孔質ガラス層2a2との間にバリアガラス層2b1を設けることが好ましい。
【0037】
(変形例2)
グレーズ層2は、図4で示したように、抵抗体4を設ける部分に、多孔質ガラス層2aおよびバリアガラス層2bを含む。しかし、多孔質ガラス層2aおよびバリアガラス層2bを設ける部分を、抵抗体4を設ける部分に限定しなくてもよい。図7は、変形例2に係るサーマルプリントヘッドA12を示す要部断面図である。図7に示すサーマルプリントヘッドA12において、実施の形態1で説明した構成と同じ構成については同じ符号を付して詳細な説明を繰り返さない。
【0038】
サーマルプリントヘッドA12は、第1基板1上に、グレーズ層22を有する。グレーズ層22は、第1主面11の全面に多孔質ガラス層2aとバリアガラス層2bとが配置されている。なお、多孔質ガラス層2aを第1主面11の全面に形成した場合、前述のように第1基板1が反ってしまう虞がある。そこで、多孔質ガラス層2aを第1主面11の全面に形成する場合、第1基板1が反らないような製造条件を選択する、第1基板1が反らないようにスリットを多孔質ガラス層2aに形成するなどの対策を行うことが好ましい。
【0039】
(変形例3)
グレーズ層21は、図6で示したように、多孔質ガラス層2a1,2a2上にバリアガラス層2b1,2b2が配置された層構造が2つ積み重ねられている部分を含む。しかし、多孔質ガラス層2a1,2a2上にバリアガラス層2b1,2b2が配置された層構造が2つ積み重ねられている部分を、抵抗体4を設ける部分に限定しなくてもよい。図8は、変形例3に係るサーマルプリントヘッドA13を示す要部断面図である。図8に示すサーマルプリントヘッドA13において、実施の形態1で説明した構成と同じ構成については同じ符号を付して詳細な説明を繰り返さない。
【0040】
サーマルプリントヘッドA13は、第1基板1上に、グレーズ層23を有する。グレーズ層23は、第1主面11の全面に多孔質ガラス層2a1と、多孔質ガラス層2a1上に配置されているバリアガラス層2b1と、バリアガラス層2b1上に配置されている多孔質ガラス層2a2と、多孔質ガラス層2a2上に配置されているバリアガラス層2b2と、を含む。なお、多孔質ガラス層2a1,2a2を第1主面11の全面に形成した場合、前述のように第1基板1が反ってしまう虞がある。そこで、多孔質ガラス層2a1,2a2を第1主面11の全面に形成する場合、第1基板1が反らないような製造条件を選択する、第1基板1が反らないようにスリットを多孔質ガラス層2a1,2a2に形成するなどの対策を行うことが好ましい。なお、グレーズ層23は、多孔質ガラス層上にバリアガラス層が配置された層構造が3つ以上積み重ねてもよい。
【0041】
[実施の形態2]
実施の形態1では、図4で示したように、抵抗体4を設ける部分以外の第1主面11にガラス層2cが配置され、多孔質ガラス層2aおよびバリアガラス層2bがガラス層2cに埋め込まれているサーマルプリントヘッドA1を説明した。実施の形態2では、第1主面の全面に配置されたガラス層上に、多孔質ガラス層が配置されるサーマルプリントヘッドについて説明する。図9は、実施の形態2に係るサーマルプリントヘッドA2を示す要部断面図である。図9に示すサーマルプリントヘッドA2において、実施の形態1で説明した構成と同じ構成については同じ符号を付して詳細な説明を繰り返さない。
【0042】
サーマルプリントヘッドA2は、第1基板1上に、グレーズ層2Aを有する。グレーズ層2Aは、第1主面11の全面に配置されたガラス層2cと、抵抗体4を設ける部分のガラス層2c上に配置された多孔質ガラス層2dとバリアガラス層2eとを含む。ガラス層2c上に、凸形状の多孔質ガラス層2dおよびバリアガラス層2eが配置される。多孔質ガラス層2dは、抵抗体4を設ける部分のガラス層2c上に多孔質ガラスの材料を印刷して、焼成することで凸形状に形成してある。さらに、凸形状に形成された多孔質ガラス層2d上にバリアガラス層2eが配置される。バリアガラス層2e上に、配線層3が配置される。抵抗体4は、配線層3(個別電極31および共通電極32)と電気的に接続されている。
【0043】
サーマルプリントヘッドA2は、第1主面11の全面にガラス層2cを配置することで、第1基板1の反りを抑制することができる、さらに、サーマルプリントヘッドA2は、抵抗体4の温度をより高くできるように、ガラス層2cに比べて熱伝導率を低く、熱容量を小さい多孔質ガラス層2dが抵抗体4を設ける部分に配置している。これにより、サーマルプリントヘッドA2は、印字時のエネルギー効率を改善して、サーマルプリントヘッドの特性を向上させることができる。なお、グレーズ層2Aは、ガラス層2c上に配置される多孔質ガラス層2dおよびバリアガラス層2eの層構造を複数積み重ねてもよい。
【0044】
[実施の形態3]
変形例2では、図7で示したように、第1主面11の全面に多孔質ガラス層2aおよびバリアガラス層2bが配置されるサーマルプリントヘッドA12を説明した。実施の形態3では、バリアガラス層上に、凸形状のガラス層が配置されるサーマルプリントヘッドについて説明する。図10は、実施の形態3に係るサーマルプリントヘッドA3を示す要部断面図である。図10に示すサーマルプリントヘッドA3において、実施の形態1で説明した構成と同じ構成については同じ符号を付して詳細な説明を繰り返さない。
【0045】
サーマルプリントヘッドA3は、第1基板1上に、グレーズ層2Bを有する。グレーズ層2Bは、第1主面11の全面に配置された多孔質ガラス層2aおよびバリアガラス層2bと、抵抗体4を設ける部分のバリアガラス層2b上に配置される凸形状のガラス層2fとを含む。ガラス層2fは、抵抗体4を設ける部分のバリアガラス層2b上にガラスの材料を印刷して、焼成することで凸形状に形成してある。さらに、凸形状に形成されたガラス層2f上に、配線層3が配置される。抵抗体4は、配線層3(個別電極31および共通電極32)と電気的に接続されている。
【0046】
サーマルプリントヘッドA3は、ガラス層2fが抵抗体4を設ける部分に配置されることで、抵抗体4の厚み方向(Z方向)の高さを調整することができる。また、サーマルプリントヘッドA3は、ガラス層に比べて熱伝導率を低く、熱容量を小さい多孔質ガラス層2aが第1主面11の全面に配置されているので、印字時のエネルギー効率を改善して、サーマルプリントヘッドの特性を向上させることができる。なお、グレーズ層2Bは、第1主面11の全面に配置される多孔質ガラス層2aおよびバリアガラス層2bの層構造を複数積み重ねてもよい。
【0047】
また、凸形状のガラス層2fは、多孔質ガラス層2aの形成後に設けられる。そのため、ガラス層2fの焼成温度は、ガラス層2cを焼成する温度(焼成温度)は約1200℃より低いことが好ましく、多孔質ガラス層2aの軟化温度以下に抑えることが好ましい。さらに、凸形状のガラス層2fは、図4に示すバリアガラス層2b上に配置してもよい。
【0048】
[その他の変形例]
(1) 図4に示すグレーズ層2では、抵抗体4を設ける部分に、多孔質ガラス層2aおよびバリアガラス層2bが配置してある。しかし、本開示に係るサーマルプリントヘッドは、配線層3(個別電極31および共通電極32)の一部を含む抵抗体4を設ける部分に多孔質ガラス層2aおよびバリアガラス層2bを設けてもよい。
【0049】
(2) 多孔質ガラス層2aの形成は、粒径を調整したガラス粉を焼結する焼結法を用いると説明したが、他の方法(たとえば、分相法、ゾル・ゲル法、CVD法、結晶化ガラス法)を用いてもよい。
【0050】
(態様)
(1)本開示に係るサーマルプリントヘッドは、主面を有するセラミック基板と、
前記主面上に配置されているグレーズ層と、
前記グレーズ層上に配置されている配線層と、
前記配線層と電気的に接続されている抵抗体と、を備え、
前記グレーズ層は、少なくとも前記抵抗体を設ける部分に、多孔質ガラス層と、前記多孔質ガラス層上に配置されているバリアガラス層とを含む。
【0051】
これにより、本開示に係るサーマルプリントヘッドは、少なくとも抵抗体を設ける部分に、多孔質ガラス層と、多孔質ガラス層上に配置されているバリアガラス層とを含むので、品質、製造コスト等を改善しつつ、印字時のエネルギー効率を改善してサーマルプリントヘッドの特性を向上させることができる。
【0052】
(2)(1)に記載のサーマルプリントヘッドにおいて、
前記グレーズ層は、
前記多孔質ガラス層および前記バリアガラス層が配置された部分以外の前記主面にガラス層が配置され、
前記ガラス層上および前記バリアガラス層上に、前記配線層が配置される。
【0053】
(3)(2)に記載のサーマルプリントヘッドにおいて、
前記バリアガラス層の焼成温度は、前記多孔質ガラス層の焼成温度以上で、前記ガラス層の焼成温度より低い。
【0054】
(4)(1)に記載のサーマルプリントヘッドにおいて、
前記グレーズ層は、前記主面の全面に前記多孔質ガラス層と前記バリアガラス層とが配置されている。
【0055】
(5)(1)~(4)のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッドにおいて、
前記グレーズ層は、前記抵抗体を設ける部分の前記バリアガラス層上に配置される凸形状のガラス層をさらに含む。
【0056】
(6)(1)に記載のサーマルプリントヘッドにおいて、
前記グレーズ層は、前記主面の全面に配置されるガラス層をさらに含み、
前記ガラス層上に、凸形状の前記多孔質ガラス層および前記バリアガラス層が配置される、請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【0057】
(7)(1)~(6)のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッドにおいて、
前記グレーズ層は、前記多孔質ガラス層上に前記バリアガラス層が配置された層構造が複数積み重ねられている部分を含む。
【0058】
(8)(1)~(7)のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッドにおいて、
前記多孔質ガラス層は、焼結法で形成された層である。
【0059】
(9)本開示に係るサーマルプリントヘッドの製造方法は、
セラミック基板の主面上に、前記抵抗体を設ける部分以外にガラス層を印刷し、焼成する工程と、
前記ガラス層が形成されていない前記主面上に、多孔質ガラス層を印刷し、焼成する工程と、
前記多孔質ガラス層上に、バリアガラス層を印刷し、焼成する工程と、
前記ガラス層上および前記バリアガラス層上に、配線層を形成する工程と、
前記配線層と電気的に接続される前記抵抗体を形成する工程と、を含み、
前記バリアガラス層の焼成温度は、前記多孔質ガラス層の焼成温度以上で、前記ガラス層の焼成温度より低い。
【0060】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0061】
1 第1基板、2,2A,2B,21~23 グレーズ層、2a,2a1,2a2,2d 多孔質ガラス層、2b,2b1,2b2,2e バリアガラス層、2c,2f ガラス層、3 配線層、4 抵抗体、5 第2基板、8 放熱部材、11 第1主面、12 第1裏面、31 個別電極、32 共通電極、51 第2主面、52 第2裏面、59 コネクタ、61,62 ワイヤ、78 保護樹脂、81 第1支持面、82 第2支持面、91 プラテンローラ、311 個別パッド、323 連結部、324 帯状部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10