(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093876
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】高圧タンク及びライナの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 49/20 20060101AFI20240702BHJP
B29C 49/42 20060101ALI20240702BHJP
B29C 49/04 20060101ALI20240702BHJP
B29C 70/32 20060101ALI20240702BHJP
F17C 1/16 20060101ALI20240702BHJP
F17C 1/02 20060101ALI20240702BHJP
F16J 12/00 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B29C49/20
B29C49/42
B29C49/04
B29C70/32
F17C1/16
F17C1/02
F16J12/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210505
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】辰島 宏亮
【テーマコード(参考)】
3E172
3J046
4F205
4F208
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
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3E172CA22
3J046AA14
3J046AA20
3J046BA03
3J046BA08
3J046BD09
3J046CA01
3J046CA03
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3J046DA05
3J046EA01
4F205AD05
4F205AD12
4F205AD16
4F205AD23
4F205AG03
4F205AH55
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4F208AG03
4F208AG07
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4F208LN07
4F208LW02
4F208LW41
4F208LW43
4F208LW50
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高圧タンクの不要な重量増加を防ぐことができる、高圧タンク用ライナの製造方法及び高圧タンクを提供する。
【解決手段】高圧タンク用ライナの製造方法は、エア供給孔94を有した管状のシャフト86の外周部に環状の第1アタッチメント22及び第2アタッチメント24が取り付けられたシャフト組立体102を準備するシャフト準備工程を有する。パリソンの内側にシャフト組立体102を配置するパリソン供給工程と、金型装置62を型閉めしてエア供給孔94からパリソン内にエアを供給してパリソンを膨張させライナ成形体104を得るブロー成形工程と、第1アタッチメント22及び第2アタッチメント24からシャフト86を取り外して、シャフト86をライナ成形体104の外部に取り出す離脱工程とを有する。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のシリンダ部と、前記シリンダ部の軸方向の一端部に配置される第1ドーム部と、前記シリンダ部の前記軸方向の他端部に配置される第2ドーム部とを有するライナを製造するライナの製造方法であって、
エア供給孔を有し直線状に延在する管状のシャフトの外周部に環状の第1アタッチメント及び環状の第2アタッチメントが取り付けられたシャフト組立体を準備するシャフト準備工程であって、前記第1アタッチメントには環状の第1ボスが取り付け可能であり、前記第2アタッチメントには環状の第2ボスが取り付け可能であり、前記第1アタッチメントと前記第2アタッチメントが前記シャフトの軸方向に離間して配置され、前記シャフトが前記第1アタッチメントと前記第2アタッチメントから取り外し可能である、シャフト準備工程と、
前記ライナを成形するための金型装置に向けて樹脂材料からなる筒状のパリソンを供給し、前記パリソンの内側に前記シャフト組立体を配置するパリソン供給工程と、
前記金型装置を型閉めし、前記シャフトの前記エア供給孔から前記パリソン内にエアを供給して前記パリソンを膨張させ、第1孔部を有した前記第1アタッチメントが前記第1ドーム部に一体成形されると共に前記第1孔部と同心状に配置される第2孔部を有した前記第2アタッチメントが前記第2ドーム部に一体成形されたライナ成形体を得るブロー成形工程と、
前記ブロー成形工程の後、前記第1アタッチメント及び前記第2アタッチメントから前記シャフトを取り外して、前記シャフトを前記ライナ成形体の外部に取り出す離脱工程と、
を有するライナの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の製造方法において、
前記ブロー成形工程と前記離脱工程との間に、前記ライナの外周面に強化用繊維を巻回するフィラメントワインディング工程を有し、
前記フィラメントワインディング工程では、前記シャフトにより前記ライナ成形体を支持し、前記シャフトを介して前記ライナ成形体を回転させる、ライナの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の製造方法において、
前記シャフトの外周面は、前記シャフトの前記軸方向において互いに異なる位置に設けられた第1雄ねじ部及び第2雄ねじ部を有し、
前記第1アタッチメントの内周面は、前記第1雄ねじ部に螺合可能な第1雌ねじ部を有し、
前記第2アタッチメントの内周面は、前記第2雄ねじ部に螺合可能な第2雌ねじ部を有し、
前記シャフト組立体では、前記第1雄ねじ部と前記第1雌ねじ部とが螺合し、前記第2雄ねじ部と前記第2雌ねじ部とが螺合しており、
前記離脱工程において、前記ライナ成形体に対して前記シャフトを相対回転させることにより、前記第1雄ねじ部と前記第1雌ねじ部との螺合を解除すると共に前記第2雄ねじ部と前記第2雌ねじ部との螺合を解除する、ライナの製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の製造方法において、
前記第2アタッチメントの内径が、前記第1アタッチメントの内径より大きく、
前記離脱工程では、前記第1アタッチメントから前記第2アタッチメントに向かう方向に前記ライナ成形体に対して前記シャフトを相対移動させる、ライナの製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2記載の製造方法において、
前記シャフトは、
前記シャフトの軸方向に延在するシャフト本体と、
前記シャフト本体に設けられ、前記第1アタッチメントを着脱可能に保持する第1保持機構と、
前記第1保持機構から前記シャフトの前記軸方向に離間した位置で前記シャフト本体に設けられ、前記第2アタッチメントを着脱可能に保持する第2保持機構と、を有し、
前記第1保持機構は、前記シャフト本体の径方向に変位可能であり前記シャフト本体の外周面から突出して前記第1アタッチメントを係止する第1係止部材と、前記第1係止部材を前記シャフト本体の径方向外方に付勢する第1弾発部材とを有し、
前記第2保持機構は、前記シャフト本体の前記径方向に変位可能であり前記シャフト本体の前記外周面から突出して前記第2アタッチメントを係止する第2係止部材と、前記第2係止部材を前記シャフト本体の径方向外方に付勢する第2弾発部材とを有し、
前記シャフト準備工程では、前記第1係止部材及び前記第2係止部材が前記シャフト本体の前記外周面から突出して、前記シャフトの前記軸方向において、前記シャフトに対して前記第1及び第2アタッチメントが係合し、
前記離脱工程では、前記ライナ成形体に対する前記シャフトの前記軸方向への相対移動に伴い、前記第1弾発部材の付勢力に抗して前記第1アタッチメントが前記第1係止部材を前記シャフト本体の径方向内方に変位させると共に、前記第2弾発部材の付勢力に抗して前記第2アタッチメントが前記第2係止部材を前記シャフト本体の径方向内方に変位させることにより、前記シャフトの前記軸方向において、前記シャフトに対する前記第1及び第2アタッチメントの係合が解除される、ライナの製造方法。
【請求項6】
円筒状のシリンダ部と、前記シリンダ部の軸方向の一端部に配置される湾曲状の第1ドーム部と、前記シリンダ部の軸方向の他端部に配置される湾曲状の第2ドーム部と、を有する樹脂材料からなるライナと、
前記シリンダ部の軸線上で前記第1ドーム部と一体成形され、前記シリンダ部の軸方向に貫通した第1孔部を有した円環状の第1アタッチメントと、
前記シリンダ部の軸線上で前記第2ドーム部と一体成形され、前記シリンダ部の軸方向に貫通し且つ前記第1孔部と同心状に配置される第2孔部を有した円環状の第2アタッチメントと、
前記第1アタッチメントに同心状に固定された環状の第1ボスと、
前記第2アタッチメントに同心状に固定された環状の第2ボスと、
を備える、高圧タンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライナを含む高圧タンク及びライナの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の圧力容器のライナは樹脂材料で形成され、胴部と、胴部の両端に形成される一対のドーム部とを備える。圧力容器は、ブロー成形機によって押出成形される。圧力容器を製造するとき、金型の内部にブロー成形機から筒状のパリソンを押し出した後、パリソンの内部に配置された管状のロッドの孔部よりエアを供給する。管状ロッドの両端部には、口金部が配置されている。ロッドの孔部から導出されるエアの圧力によって、パリソンを外方向に押し出して金型の内面に押し付ける。一対のドーム部の頂部がロッドと同軸状に形成され、且つ、各ドーム部にロッドの両端部と共に口金部が保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の圧力容器では、ライナをブロー成形する際に使用されるロッド及び口金部と共に一対のドーム部に保持されるため、圧力容器に対してロッドが組み付けられたままとなり、それに伴って、ロッドの分だけ圧力容器の重量が増加するという問題がある。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、円筒状のシリンダ部と、前記シリンダ部の軸方向の一端部に配置される第1ドーム部と、前記シリンダ部の前記軸方向の他端部に配置される第2ドーム部とを有するライナを製造するライナの製造方法であって、エア供給孔を有し直線状に延在する管状のシャフトの外周部に環状の第1アタッチメント及び環状の第2アタッチメントが取り付けられたシャフト組立体を準備するシャフト準備工程であって、前記第1アタッチメントには環状の第1ボスが取り付け可能であり、前記第2アタッチメントには環状の第2ボスが取り付け可能であり、前記第1アタッチメントと前記第2アタッチメントが前記シャフトの軸方向に離間して配置され、前記シャフトが前記第1アタッチメントと前記第2アタッチメントから取り外し可能である、シャフト準備工程と、前記ライナを成形するための金型装置に向けて樹脂材料からなる筒状のパリソンを供給し、前記パリソンの内側に前記シャフト組立体を配置するパリソン供給工程と、前記金型装置を型閉めし、前記シャフトの前記エア供給孔から前記パリソン内にエアを供給して前記パリソンを膨張させ、第1孔部を有した前記第1アタッチメントが前記第1ドーム部に一体成形されると共に前記第1孔部と同心状に配置される第2孔部を有した前記第2アタッチメントが前記第2ドーム部に一体成形されたライナ成形体を得るブロー成形工程と、前記ブロー成形工程の後、前記第1アタッチメント及び前記第2アタッチメントから前記シャフトを取り外して、前記シャフトを前記ライナ成形体の外部に取り出す離脱工程と、を有する。
【0007】
このライナの製造方法によれば、シリンダ部と、第1及び第2ドーム部とを有したライナを成形するブロー成形工程において、第1アタッチメントの第1孔部と第2アタッチメントの第2孔部とが同心状となるように、第1及び第2アタッチメントをライナの第1及び第2ドーム部に一体成形することで、第1アタッチメントに第1ボスを組み付け、第2アタッチメントに第2ボスを組み付けたとき、第1ボスと第2ボスとの同軸度を確保することができる。ライナ成形体が成形された後に、シャフト組立体の第1及び第2アタッチメントからシャフトを軸方向に取り外すことができるため、ライナ成形体にシャフトが組み込まれたままの構成と比較し、シャフトの使用に伴う高圧タンクの不要な重量増加を防ぐことができる。
【0008】
前記ブロー成形工程と前記離脱工程との間に、前記ライナの外周面に強化用繊維を巻回するフィラメントワインディング工程を有し、前記フィラメントワインディング工程では、前記シャフトにより前記ライナ成形体を支持し、前記シャフトを介して前記ライナ成形体を回転させてもよい。
【0009】
この製造方法により、フィラメントワインディング工程において、ライナを固定して回転させるための治具としてシャフトを利用できる。このため、回転用の治具を別に準備して取り付ける必要がなく、フィラメントワインディング工程を効率的に行うことができる。
【0010】
前記シャフトの外周面は、前記シャフトの前記軸方向において互いに異なる位置に設けられた第1雄ねじ部及び第2雄ねじ部を有し、前記第1アタッチメントの内周面は、前記第1雄ねじ部に螺合可能な第1雌ねじ部を有し、前記第2アタッチメントの内周面は、前記第2雄ねじ部に螺合可能な第2雌ねじ部を有し、前記シャフト組立体では、前記第1雄ねじ部と前記第1雌ねじ部とが螺合し、前記第2雄ねじ部と前記第2雌ねじ部とが螺合しており、前記離脱工程において、前記ライナ成形体に対して前記シャフトを相対回転させることにより、前記第1雄ねじ部と前記第1雌ねじ部との螺合を解除すると共に前記第2雄ねじ部と前記第2雌ねじ部との螺合を解除してもよい。
【0011】
この製造方法により、離脱工程において、ライナ成形体に対してシャフトを相対回転させることにより、第1雄ねじ部と第1雌ねじ部との螺合を解除すると共に第2雄ねじ部と第2雌ねじ部との螺合を解除するため、ライナ成形体からシャフトを容易に取り外すことができる。
【0012】
前記第2アタッチメントの内径が、前記第1アタッチメントの内径より大きく、前記離脱工程では、前記第1アタッチメントから前記第2アタッチメントに向かう方向に前記ライナ成形体に対して前記シャフトを相対移動させてもよい。
【0013】
この製造方法により、離脱工程においてシャフトの第2雄ねじ部が第2アタッチメントの第2雌ねじ部から離脱した後は、ライナ成形体に対してシャフトを相対回転させることなく、シャフトの第2雄ねじが第1アタッチメントの第1雌ねじ部を通過することができる。このため、ライナ成形体からのシャフトの取り出しを容易に行うことができる。
【0014】
前記シャフトは、前記シャフトの軸方向に延在するシャフト本体と、前記シャフト本体に設けられ、前記第1アタッチメントを着脱可能に保持する第1保持機構と、前記第1保持機構から前記シャフトの前記軸方向に離間した位置で前記シャフト本体に設けられ、前記第2アタッチメントを着脱可能に保持する第2保持機構と、を有し、前記第1保持機構は、前記シャフト本体の径方向に変位可能であり前記シャフト本体の外周面から突出して前記第1アタッチメントを係止する第1係止部材と、前記第1係止部材を前記シャフト本体の径方向外方に付勢する第1弾発部材とを有し、前記第2保持機構は、前記シャフト本体の前記径方向に変位可能であり前記シャフト本体の前記外周面から突出して前記第2アタッチメントを係止する第2係止部材と、前記第2係止部材を前記シャフト本体の径方向外方に付勢する第2弾発部材とを有し、前記シャフト準備工程では、前記第1係止部材及び前記第2係止部材が前記シャフト本体の前記外周面から突出して、前記シャフトの前記軸方向において、前記シャフトに対して前記第1及び第2アタッチメントが係合し、前記離脱工程では、前記ライナ成形体に対する前記シャフトの前記軸方向への相対移動に伴い、前記第1弾発部材の付勢力に抗して前記第1アタッチメントが前記第1係止部材を前記シャフト本体の径方向内方に変位させると共に、前記第2弾発部材の付勢力に抗して前記第2アタッチメントが前記第2係止部材を前記シャフト本体の径方向内方に変位させることにより、前記シャフトの前記軸方向において、前記シャフトに対する前記第1及び第2アタッチメントの係合が解除されてもよい。
【0015】
この製造方法により、シャフト準備工程では、径方向外方に付勢されてシャフト本体の外周面から突出した第1及び第2係止部材によって、第1及び第2アタッチメントに対するシャフトの軸方向への相対移動が阻止されているため、第1及び第2アタッチメントをシャフトに対して安定して固定できる。離脱工程では、第1及び第2係止部材が弾発力に抗して外周面より径方向内方に収容されることで、第1及び第2アタッチメントに対するシャフトの軸方向への相対移動が可能となり、第1及び第2アタッチメントに対してシャフトを取り外しできる。
【0016】
本発明の第2の態様は、円筒状のシリンダ部と、前記シリンダ部の軸方向の一端部に配置される湾曲状の第1ドーム部と、前記シリンダ部の軸方向の他端部に配置される湾曲状の第2ドーム部と、を有する樹脂材料からなるライナと、前記シリンダ部の軸線上で前記第1ドーム部と一体成形され、前記シリンダ部の軸方向に貫通した第1孔部を有した円環状の第1アタッチメントと、前記シリンダ部の軸線上で前記第2ドーム部と一体成形され、前記シリンダ部の軸方向に貫通し且つ前記第1孔部と同心状に配置される第2孔部を有した円環状の第2アタッチメントと、前記第1アタッチメントに同心状に固定された環状の第1ボスと、前記第2アタッチメントに同心状に固定された環状の第2ボスと、を備える。
【0017】
この高圧タンクによれば、第1及び第2アタッチメントをライナの第1及び第2ドーム部に一体成形することで、第1アタッチメントに第1ボスを組み付け、第2アタッチメントに第2ボスを組み付けたとき、第1ボスと第2ボスとの同軸度を確保することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、シリンダ部と、第1及び第2ドーム部とを有したライナを成形するブロー成形工程において、第1アタッチメントの第1孔部と第2アタッチメントの第2孔部とが同心状となるように、第1及び第2アタッチメントをライナの第1及び第2ドーム部に一体成形することで、第1アタッチメントに第1ボスを組み付け、第2アタッチメントに第2ボスを組み付けたとき、第1ボスと第2ボスとの同軸度を確保することができる。ライナ成形体が成形された後に、シャフト組立体の第1及び第2アタッチメントからシャフトを軸方向に取り外すことができるため、ライナ成形体にシャフトが組み込まれたままの構成と比較し、シャフトの使用に伴う高圧タンクの不要な重量増加を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るライナを含む高圧タンクの全体断面図である。
【
図2】
図2は、
図1の高圧タンクにおける第1アタッチメント近傍の拡大断面図である。
【
図3】
図3は、
図1の高圧タンクにおける第2アタッチメント近傍の拡大断面図である。
【
図4】
図4は、第1及び第2アタッチメントの外観正面図である。
【
図5】
図5Aは、変形例に係る第1及び第2アタッチメントの近傍を示す拡大断面図である。
図5Bは、
図5AのVB-VB線に沿った断面図である。
【
図6】
図6は、シャフト組立体を金型にセットした状態を示す金型装置の全体構成図である。
【
図7】
図7は、シャフト、第1及び第2アタッチメントから構成されるシャフト組立体の全体断面図である。
【
図8】
図8は、シャフト組立体を構成するシャフト準備工程及び金型装置の金型内にパリソンを供給するパリソン供給工程を示す説明図である。
【
図9】
図9は、
図8の金型装置の金型を型閉めする工程を示す説明図である。
【
図10】
図10は、
図9の金型装置におけるライナ成形体のブロー成形工程を示す説明図である。
【
図11】
図11は、金型を型開きしてライナ成形体を取り出す工程を示す説明図である。
【
図12】
図12は、ライナ成形体の外周面に強化用繊維を巻き付けるフィラメントワインディング工程を示す説明図である。
【
図13】
図13は、ライナ成形体からシャフトを取り出す離脱工程を示す説明図である。
【
図14】
図14Aは、ライナ成形体における第1及び第2アタッチメント近傍の拡大構成図である。
図14Bは、
図14Aのライナ成形体の第1及び第2アタッチメントからシャフトを取り外すときの動作説明図である。
【
図15】
図15Aは、第1変形例を示す第1及び第2アタッチメント近傍の拡大構成図である。
図15Bは、
図15Aにおいて第1及び第2アタッチメントからシャフトを取り外すときの動作説明図である。
【
図16】
図16Aは、第2変形例に係る第1及び第2保持機構近傍の拡大構成図である。
図16Bは、
図16Aの第1及び第2保持機構において第1及び第2アタッチメントからシャフトを取り外すときの動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本実施形態に係る高圧タンク10は、水素ガスを貯留する目的で用いられる。なお、高圧タンク10に貯留するガスは、例えば、窒素ガス等の水素ガス以外のガスであってもよい。高圧タンク10は、燃料電池車に搭載される。高圧タンク10は、燃料電池システムに供給する水素ガスを貯留する。
【0021】
図1に示されるように、本実施形態に係る高圧タンク10は、ライナ12と、ライナ12の外周面に設けられる補強層14と、ライナ12の軸端部に設けられる第1及び第2ボス16a、16bとを備える。
【0022】
ライナ12は、樹脂材料から形成された中空体である。ライナ12は、高圧タンク10の内層である。ライナ12は、後述する金型装置62によって射出ブロー成形される。ライナ12は、円筒状のシリンダ部18と、シリンダ部18の軸方向における端部に配置される一組のドーム部20(以下、第1及び第2ドーム部20a、20bという)と、一対の第1及び第2アタッチメント22、24とを備える。
【0023】
シリンダ部18は、円筒状であり軸方向に沿って一定直径で形成される。シリンダ部18の内部は、水素ガスの充填されるガス充填室26を有する。
【0024】
図2に示すように、第1ドーム部20aは、シリンダ部18の軸方向一端に配置される。第1ドーム部20aは、シリンダ部18から離間する方向に向けて徐々に径方向内方へと湾曲する湾曲状である。ライナ12の軸方向と直交方向から見たとき、第1ドーム部20aの断面形状は略半円形状である。第1ドーム部20aの断面形状は、例えば楕円形状であってもよい。第1ドーム部20aの中央には、第1ドーム部20aに対して軸方向に窪んだ第1窪み部28を有する。第1窪み部28は、第1ドーム部20aの軸線上に配置される。
【0025】
図3に示すように、第2ドーム部20bは、シリンダ部18の軸方向他端に配置される。第2ドーム部20bは、シリンダ部18から離間する方向に向けて徐々に径方向内方へと湾曲する湾曲状である。ライナ12の軸方向と直交方向から見たとき、第2ドーム部20bの断面形状は半円形状である。ライナ12の軸方向において、第1ドーム部20aと第2ドーム部20bとが互いに離れる方向に向けて径方向内方へ縮径するように湾曲する。第2ドーム部20bの中央には、第2ドーム部20bに対して軸方向に窪んだ第2窪み部30を有する。第2窪み部30は、第2ドーム部20bの軸線上に配置される。
【0026】
図4に示すように、第1及び第2アタッチメント22、24は、金属材料から円環状に形成される。
図2に示すように、第1アタッチメント22は、第1ドーム部20aの軸中心に配置される。第1アタッチメント22は、ライナ12の軸線上に配置される。第1アタッチメント22の軸線と、ライナ12の軸線とが同軸である。
【0027】
第1アタッチメント22は、シリンダ部18の軸線上に配置される。第1アタッチメント22は、第1ドーム部20aと同心状に一体成形される。第1アタッチメント22の一部は、第1ドーム部20aの第1窪み部28に配置される。第1アタッチメント22は、円筒状の第1筒部32と、第1筒部32の端部から径方向外方に延出する第1鍔部34とを備える。第1筒部32の直径は、軸方向において一定である。第1筒部32の内部は、第1孔部36を有する。第1孔部36は、第1筒部32の軸中心に形成され第1アタッチメント22の軸方向に沿って貫通する。第1筒部32は、第1ドーム部20aに対してインサート成形される。第1筒部32は、第1ドーム部20aの軸線上に配置される。
【0028】
第1筒部32は、第1雌ねじ部38を備える。第1雌ねじ部38は、第1アタッチメント22の第1孔部36の内周面に設けられる。第1雌ねじ部38は、第1孔部36の軸方向に沿って形成される。
【0029】
第1筒部32の外周面は、第1溝部40と、第1締結部42とを有する。第1溝部40は、第1筒部32の外周面の周方向に沿って環状に形成される。第1溝部40は、第1筒部32の外周面に対して窪む。第1溝部40は、第1筒部32の軸方向に離間して複数設けられる。第1ドーム部20aに対して第1筒部32がインサート成形されるとき、第1ドーム部20aの一部が第1溝部40の内部に挿入される。これにより、第1ドーム部20aに第1筒部32が固定され、第1ドーム部20aに対する第1アタッチメント22の軸方向への移動が阻止される。
【0030】
第1締結部42は、第1溝部40に対して第1筒部32の先端側に配置される。第1締結部42は、外周面に形成された雄ねじを有する。第1鍔部34は円環状に形成される。第1鍔部34は、第1筒部32に対してシリンダ部18の軸方向中央側に配置される。第1鍔部34は、ガス充填室26に向かい合って配置される。
【0031】
図3に示すように、第2アタッチメント24は、シリンダ部18の軸線上に配置される。第2アタッチメント24は、第2ドーム部20bと同心状に一体成形される。第2アタッチメント24と第1アタッチメント22とが同軸に配置される。第2アタッチメント24の一部が、第2ドーム部20bの第2窪み部30に配置される。第2アタッチメント24は、円筒状の第2筒部44と、第2筒部44の端部から径方向外方に延出する第2鍔部46とを備える。第2筒部44の直径は、軸方向において一定である。第2筒部44の内部には、第2孔部47を有する。第2孔部47は、第2筒部44の軸中心に形成され第2アタッチメント24の軸方向に沿って貫通する。第2ドーム部20bに対して第2アタッチメント24の第2筒部44がインサート成形される。第2筒部44は、第2ドーム部20bの軸線上に配置される。第2孔部47と第1孔部36とが同心状に配置される。
【0032】
第2筒部44は、第2雌ねじ部48を備える。第2雌ねじ部48は、第2アタッチメント24の第2孔部47の内周面に設けられる。第2雌ねじ部48は、第2孔部47の軸方向に沿って形成される。第1アタッチメント22の第1雌ねじ部38と第2雌ねじ部48とは同一のねじピッチである。
【0033】
第2筒部44の外周面は、第2溝部50と、第2締結部52とを有する。第2溝部50は、第2筒部44の外周面の周方向に沿って環状に形成される。第2溝部50は、第2筒部44の外周面に対して窪む。第2溝部50は、第2筒部44の軸方向に離間して複数設けられる。第2ドーム部20bに対して第2筒部44がインサート成形されるとき、第2ドーム部20bの一部が第2溝部50の内部に挿入される。これにより、第2ドーム部20bに第2筒部44が固定され、第2ドーム部20bに対する第2アタッチメント24の軸方向への移動が阻止される。
【0034】
第2締結部52は、第2溝部50に対して第2筒部44の先端側に配置される。第2締結部52は、外周面に形成された雄ねじを有する。第2鍔部46は円環状に形成される。第2鍔部46は、第2筒部44に対してシリンダ部18の軸方向中央側に配置される。第2鍔部46は、ガス充填室26に向かい合って配置される。
【0035】
第1及び第2アタッチメント22、24の第1及び第2溝部40、50は、第1及び第2筒部32、44の周方向に沿って環状に形成される場合に限定されない。
図5Aに示す変形例に係るライナ12aは、第1及び第2アタッチメント22a、24aを備える。第1アタッチメント22aの第1筒部32は、第1溝部40aを有する。第1溝部40aは、第1筒部32の外周面に形成される。第1溝部40aは、第1筒部32の軸方向に沿って延在する。
図5Bに示すように、第1溝部40aは、第1筒部32の外周面に沿って互いに離間して複数設けられる。
図5Aに示すように、第2アタッチメント24aの第2筒部44は、第2溝部50aを有する。第2溝部50aは、第2筒部44の外周面に形成される。第2溝部50aは、第2筒部44の軸方向に沿って延在する。
図5Bに示すように、第2溝部50aは、第2筒部44の外周面に沿って互いに離間して複数設けられる。
【0036】
図5Aに示すように、第1ドーム部20aに対して第1筒部32がインサート成形されるとき、第1ドーム部20aの一部が第1溝部40aの内部に挿入される。これにより、第1ドーム部20aに対して第1筒部32が固定され、第1溝部40aによって第1ドーム部20aに対する第1アタッチメント22aの回転方向への移動が阻止される。第2ドーム部20bに対して第2筒部44がインサート成形されるとき、第2ドーム部20bの一部が第2溝部50aの内部に挿入される。これにより、第2ドーム部20bに対して第2筒部44が固定され、第2溝部50aによって第2ドーム部20bに対する第2アタッチメント24aの回転方向への移動が阻止される。
【0037】
図1に示すように、補強層14は、ライナ12の外周面に配置される。補強層14は、シリンダ部18の外周面、第1及び第2ドーム部20a、20bの外周面を覆う。補強層14は、強化用繊維14aに樹脂基材が含浸された繊維強化樹脂(FRP)で形成される。高圧タンク10の製造工程において、樹脂の含浸された強化用繊維14aが図示しないフィラメントワインディング装置によってライナ12の外周面に複数回巻回される。補強層14は、強化用繊維14aがライナ12に巻回された後、加熱して樹脂を硬化させた積層体である。
【0038】
図2及び
図3に示すように、第1及び第2ボス16a、16bは、金属材料から環状に形成された口金である。第1及び第2ボス16a、16bは、第1及び第2ドーム部20a、20bにそれぞれ配置される。第1及び第2ボス16a、16bの各々は、ボス本体54と、フランジ部56とを備える。ボス本体54は、ガス流路58を有した円筒状である。ガス流路58は、ボス本体54の中心を軸方向に貫通する。ボス本体54の先端には、図示しない配管が接続可能である。ボス本体54の基端の内周面には、被締結部60を有する。被締結部60は、内周面に形成された雌ねじを有する。
【0039】
フランジ部56は、ボス本体54の基端に配置される。フランジ部56は、ボス本体54の外周面から径方向外方へ向けて拡がる。第1ボス16aのフランジ部56は、第1窪み部28に収容され固定される(
図2参照)。第2ボス16bのフランジ部56は、第2窪み部30に収容され固定される(
図3参照)。
【0040】
図2に示すように、第1窪み部28に第1ボス16aが固定されたとき、第1ボス16aの基端に対して第1アタッチメント22の第1筒部32の先端が挿入され、被締結部60に第1締結部42が締結される。これにより、第1ボス16aと第1アタッチメント22とが軸方向に連結される。第1ボス16aと第1アタッチメント22とが同心状に固定される。第1孔部36を介して第1ボス16aのガス流路58とライナ12のガス充填室26とが連通する。
【0041】
図3に示すように、第2窪み部30に第2ボス16bが固定されたとき、第2ボス16bの基端に対して第2アタッチメント24の第2筒部44の先端が挿入され、被締結部60に第2締結部52が締結される。これにより、第2ボス16bと第2アタッチメント24とが軸方向に連結される。第2ボス16bと第2アタッチメント24とが同心状に固定される。第2孔部47を介して第2ボス16bのガス流路58とライナ12のガス充填室26とが連通する。
【0042】
次に、ライナ12をブロー成形するための金型装置62について説明する。
【0043】
図6に示す金型装置62は、熱可塑性樹脂からなるパリソンP(
図8参照)を射出ブロー成形することで、変形したパリソンPからライナ12を得るブロー成形装置である。
【0044】
金型装置62は、ライナ12を成形可能な金型64を有する。金型64は、金属材料から形成され分割可能な第1及び第2成形型66、68を有する。金型64の内部には、成形品であるライナ12の外側形状に対応した成形部70を有する。成形部70は、第1成形型66と第2成形型68に跨がるように形成される。第1及び第2成形型66、68は、成形部70を2分割する半割体である。成形部70は、シリンダ成形部72と、該シリンダ成形部72の端部に配置される第1及び第2ドーム成形部74、76とを有する。
【0045】
シリンダ成形部72は、第1及び第2成形型66、68の型割方向と直交する。第1及び第2成形型66、68の型割方向と直交方向から見て、シリンダ成形部72の断面形状は円形状である。第1ドーム成形部74は、シリンダ成形部72の軸方向における一端部に配置される。第1ドーム成形部74は、シリンダ成形部72から離間する方向に向けて凸状となる半球形状である。第2ドーム成形部76は、シリンダ成形部72の軸方向における他端部に配置される。第2ドーム成形部76は、シリンダ成形部72から離間する方向に向けて凸状となる半球形状である。
【0046】
金型64は、第1及び第2接続部78、80を有する。第1接続部78は、第1ドーム成形部74の上方に配置される。
図9に示す金型64の型閉め時において、第1接続部78は第1成形型66と第2成形型68との間にパリソンPの一端部を挟持する部位である。第2接続部80は、第2ドーム成形部76の下方に配置される。金型64の型閉め時において、第2接続部80は、第1成形型66と第2成形型68との間にパリソンPの他端部を挟持する部位である。
【0047】
第1接続部78は、ライナ12の成形時において第1アタッチメント22を保持可能な第1保持孔82を有する。第1保持孔82は、金型64の軸方向に沿って延在し第1ドーム成形部74と連通する。第1保持孔82は、第1成形型66と第2成形型68とに跨がって形成される。第2接続部80は、ライナ12の成形時において第2アタッチメント24を保持可能な第2保持孔84を有する。第2保持孔84は、金型64の軸方向に沿って延在し第1成形型66と第2成形型68とに跨がって形成される。第2保持孔84は、第2ドーム成形部76から金型64の外側まで軸方向に貫通する。
【0048】
次に、ライナ12(高圧タンク10)の製造方法を説明する。なお、
図8~
図13に示すライナ12及びライナ12を含む高圧タンク10は、構造を模式化したものである。
【0049】
先ず、
図6に示すシャフト準備工程において、シャフト組立体102を準備する。シャフト組立体102は、エア供給孔94を有したシャフト86と、シャフト86の外周部に取り付けられた第1及び第2アタッチメント22、24とを有する。
【0050】
シャフト86は、直線状に形成された管体であり金型64の中央に配置される。シャフト86は、金型64の軸方向に沿って配置される。シャフト86は、第1成形型66と第2成形型68との型割線上に配置される。シャフト86の直径は、軸方向において一定である。
【0051】
図7に示すように、シャフト86は、シャフト本体86aと、第1支持部88と、第2支持部90と、エア流路92と、エア供給孔94とを有する。第1支持部88と第2支持部90とは、シャフト86の軸方向に互いに離間して配置される。第1支持部88は、シャフト本体86aの軸方向における一端部に設けられる。第1支持部88は、第1アタッチメント22を着脱可能に支持する。
【0052】
第1支持部88の外周面は、第1雄ねじ部96を有する。第1雄ねじ部96は、第1支持部88の軸方向において所定範囲に形成される。第1雄ねじ部96は、第1アタッチメント22の第1雌ねじ部38に螺合可能である。なお、第1支持部88と第1アタッチメント22とが互いに嵌合されて支持されてもよいし、第1支持部88及び第1アタッチメント22の少なくともいずれか一方から突出した突起等によって、第1支持部88と第1アタッチメント22とが互いに軸方向に係合されてもよい。
【0053】
第2支持部90は、第1支持部88に対してシャフト本体86aの軸方向における他端部側に設けられる。第2支持部90は、第2アタッチメント24を着脱可能に支持する。なお、第2支持部90と第2アタッチメント24とが互いに嵌合されて支持されてもよいし、第2支持部90及び第2アタッチメント24の少なくともいずれか一方から突出した突起等によって、第2支持部90と第2アタッチメント24とが互いに軸方向に係合されてもよい。
【0054】
第2支持部90の外周面は、第2雄ねじ部98を有する。第2雄ねじ部98は、第2支持部90の軸方向において所定範囲に形成される。第2雄ねじ部98は、第2アタッチメント24の第2雌ねじ部48に螺合可能である。第1雄ねじ部96と第2雄ねじ部98とが、シャフト86の軸方向において互いに離間して異なる位置に配置される。第1雄ねじ部96と第2雄ねじ部98とは同一のねじピッチである。
【0055】
図6に示すように、エア流路92は、シャフト86の内部に形成される。エア流路92は、シャフト86の軸方向における他端部に開口する。シャフト86の軸方向における他端部にはエア供給配管100が接続され、エア供給配管100を通じてエア流路92にエアが供給される。エア流路92は、シャフト86の軸方向における一端部では軸方向に開放されていない。
【0056】
エア供給孔94は、シャフト本体86aの外周面に開口する。エア供給孔94は、複数設けられシャフト86の軸方向及び周方向において互いに略均等に離れて配置される。各エア供給孔94は、シャフト86の径方向に貫通してエア流路92と連通する。エア流路92にエアが供給されたとき、複数のエア供給孔94を通じてエアがシャフト本体86aの外周面から径方向外方に向けて導出される。
【0057】
図7に示すように、第1アタッチメント22の第1孔部36にシャフト86の第1支持部88が挿入される。第1支持部88の第1雄ねじ部96に対して第1アタッチメント22の第1雌ねじ部38が螺合される。第2アタッチメント24の第2孔部47にシャフト86の第2支持部90が挿入される。第2支持部90の第2雄ねじ部98に対して第2アタッチメント24の第2雌ねじ部48が螺合される。シャフト86の他端部側は、金型64の第2保持孔84を通じて金型64の外部に露出する(
図6参照)。
【0058】
シャフト準備工程では、第1アタッチメント22の第1孔部36にシャフト86の第1支持部88を挿入する。シャフト86と第1アタッチメント22とを相対回転させることで、第1雄ねじ部96と第1雌ねじ部38とが螺合される。第1支持部88に第1アタッチメント22が保持される。第2アタッチメント24の第2孔部47にシャフト86の第2支持部90を挿入する。シャフト86と第2アタッチメント24とを相対回転させることで、第2雄ねじ部98と第2雌ねじ部48とが螺合される。第2支持部90に第2アタッチメント24が保持される。これにより、シャフト準備工程において、シャフト86の第1支持部88に第1アタッチメント22が保持され、シャフト86の第2支持部90に第2アタッチメント24が保持されたシャフト組立体102が形成される。シャフト86の軸方向において、第1アタッチメント22と第2アタッチメント24とが互いに離間して配置される。シャフト86の軸方向において、第1アタッチメント22の第1筒部32と第2アタッチメント24の第2筒部44とが、互いに離間する方向に配置される。シャフト86の他端部にはエア供給配管100が接続される。
【0059】
次に、
図8に示すパリソン供給工程では、金型装置62の第1及び第2成形型66、68を互いに離間させた型開き状態とし、図示しない押出機から樹脂材料からなる筒状のパリソンPを押し出して金型64の成形部70に供給する。なお、押出機によって予め形成されたパリソンPを金型64に供給してもよい。パリソンPは、第1成形型66と第2成形型68との間に配置され、第1成形型66と第2成形型68の型割方向と直交するように配置される。シャフト組立体102の外周にパリソンPが軸方向に沿って供給される。これにより、パリソンPの内部にシャフト組立体102が収容される。パリソンPとシャフト組立体102とが同軸に配置される。シャフト86の外周面とパリソンPとが径方向に離間して配置される。なお、予め配置されたパリソンPの内部にシャフト組立体102を挿入してもよい。第1アタッチメント22が、第1及び第2成形型66、68の第1接続部78(第1保持孔82)に向かい合う。第2アタッチメント24が、第1及び第2成形型66、68の第2接続部80(第2保持孔84)に向かい合う。
【0060】
次に、パリソンPからライナ12をブロー成形するブロー成形工程を行う。
【0061】
先ず、
図9に示すように第1成形型66と第2成形型68とを互いに接近させる方向に移動させて金型64の型閉めを行う。型閉め方向は、シャフト86の軸方向と直交する方向である。金型64の型閉めに伴って、第1接続部78によってパリソンP、第1アタッチメント22及び第1支持部88が挟持される。このとき、パリソンPの一部、第1アタッチメント22及び第1支持部88は、金型64の第1保持孔82によって保持される。パリソンPの一部は、第1接続部78によって径方向内方に押し潰されて縮径する。金型64の型閉めに伴って、第2接続部80によってパリソンP、第2アタッチメント24及び第2支持部90が挟持される。このとき、パリソンPの一部、第2アタッチメント24及び第2支持部90は、金型64の第2保持孔84によって保持される。パリソンPの一部は、第2接続部80によって径方向内方に押し潰されて縮径する。シャフト86の他端部は、第2保持孔84を介して金型64の外部に配置される。金型64の内部において、パリソンPの外周面は成形部70に向かい合う。なお、パリソンPの軸方向における一端部が、第1及び第2成形型66、68の一端部の外側に突出する。パリソンPの軸方向における他端部が、第1及び第2成形型66、68の他端部の外側に突出する。
【0062】
図10に示すように、エア供給源(図示せず)からエア供給配管100を通じてシャフト86のエア流路92にエアを供給する。複数のエア供給孔94を通じてエア流路92のエアがシャフト86の外側に導出される。シャフト86の軸方向及び周方向において、エア供給孔94から導出されるエアの導出量は略均等である。シャフト86からパリソンPの内部にエアが導出されると、エアの圧力によってパリソンPが成形部70に向けて外側に押されて膨張(変形)する。エアによってパリソンPが膨張することで、パリソンPの外面が成形部70に対して押し付けられる。シリンダ成形部72、第1及び第2ドーム成形部74、76に沿うようにパリソンPが変形することで、成形部70に密着したパリソンPが円筒状となる。このとき、成形部70に沿って変形したパリソンPの厚さは略一定となる。
【0063】
シリンダ成形部72においてパリソンPからライナ12のシリンダ部18が成形され、第1及び第2ドーム成形部74、76の各々においてパリソンPから第1及び第2ドーム部20a、20bが成形される。第1ドーム成形部74の頂部において、第1アタッチメント22の第1筒部32とパリソンPとが一体成形(インサート成形)される。第1アタッチメント22が第1ドーム部20aに同心状に成形される。このとき、パリソンPの一部が、第1筒部32の第1溝部40に入り込む。第2アタッチメント24の第2筒部44とパリソンPとが一体成形(インサート成形)される。第2アタッチメント24が第2ドーム部20bに同心状に成形される。このとき、このとき、パリソンPの一部が、第2筒部44の第2溝部50に入り込む。
【0064】
パリソンPが冷却されて固化した後、シャフト86に対するエアの供給を停止する。これにより、シリンダ部18と、シリンダ部18の両端部に形成される第1及び第2ドーム部20a、20bとを有し、第1及び第2ドーム部20a、20bに第1及び第2アタッチメント22、24が一体成形されたライナ成形体104が得られる。シャフト86の他端部からエア供給配管100を取り外す。
【0065】
次に、
図11に示すように、第1及び第2成形型66、68を型開きしてライナ成形体104を取り出す。第1成形型66と第2成形型68とを互いに離れる方向に移動させ、型開きした金型64の成形部70からライナ成形体104を取り出す。金型64の型開き方向は、シャフト86の軸方向と直交する方向である。ライナ成形体104の軸方向における一端部及び他端部には、パリソンPの余剰部Paが形成される。余剰部Paは、パリソンPにおいて金型64の外部で余剰となり不要な部位である。余剰部Paは、図示しない切除装置によって切除される。
【0066】
次に、
図12に示すように、第1及び第2アタッチメント22、24に対して第1及び第2ボス16a、16bを取り付けるボス取付工程と、ライナ成形体104の外周面に補強層14を形成するフィラメントワインディング工程とを実施する。ボス取付工程では、第1アタッチメント22の第1筒部32に対し、フランジ部56側から第1ボス16aを接近させる。フランジ部56が第1窪み部28に挿入され、ボス本体54の被締結部60と第1筒部32の第1締結部42とが螺合される(
図2参照)。これにより、第1アタッチメント22と第1ボス16aとが同軸に連結される。第1ボス16aのガス流路58と第1孔部36とが連通する。
【0067】
ボス取付工程では、第2アタッチメント24の第2筒部44に対し、フランジ部56側から第2ボス16bを接近させる。フランジ部56が第2窪み部30に挿入され、ボス本体54の被締結部60と第2筒部44の第2締結部52とが螺合される(
図3参照)。これにより、第2アタッチメント24と第2ボス16bとが同軸に連結され、第1ボス16aと第2ボス16bとが同心状に配置される。第2ボス16bのガス流路58と第2孔部47とが連通する。
【0068】
ボス取付工程の後、フィラメントワインディング工程が行われる。シャフト86の軸方向における一端部及び他端部を、図示しないフィラメントワインディング装置の回転駆動部106で支持する。回転駆動部106を駆動させることで、シャフト86を中心としてライナ成形体104が回転する。ライナ成形体104の外周面に対して強化用繊維14aを複数回巻回した後、加熱して樹脂を硬化させることで補強層14が形成される。すなわち、フィラメントワインディング工程において、ライナ成形体104を固定して回転させるための治具としてシャフト86を利用可能である。ライナ成形体104の外周面に補強層14が形成されることで、ライナ成形体104を含む高圧タンク10が構成される。
【0069】
次に、
図13に示すように、ライナ成形体104からシャフト86を取り外す離脱工程を行う。なお、離脱工程は、フィラメントワインディング工程の前に行われてもよい。この場合、シャフト86の代わりに、別の治具を用いてシャフト86の取り外されたライナ12を回転させる。
【0070】
シャフト86の離脱工程では、
図14Aに示すライナ成形体104を保持した状態で、ライナ成形体104に対してシャフト86を相対回転させる。シャフト86の回転方向は、第1及び第2アタッチメント22、24にシャフト86を組み付ける際(シャフト組立体102を形成する場合)の回転方向とは反対となる。シャフト86の回転に伴って、第1支持部88の第1雄ねじ部96と第1アタッチメント22の第1雌ねじ部38との螺合が解除され(
図14B参照)、第2支持部90の第2雄ねじ部98と第2アタッチメント24の第2雌ねじ部48との螺合が解除される。すなわち、第1及び第2アタッチメント22、24に対するシャフト86の保持状態が解除され、第1及び第2アタッチメント22、24に対してシャフト86を取り外し可能な状態となる。
図13に示すように、第1アタッチメント22から第2アタッチメント24の方向に向けてシャフト86を軸方向に移動させることで、第1孔部36と第2孔部47とが同心状に配置されている。第1及び第2孔部36、47を通じてシャフト86がライナ成形体104の外部へと取り出される。これにより、ライナ成形体104からシャフト86の取り外されたライナ12(高圧タンク10)が得られる。
【0071】
なお、
図15Aの第1変形例に示すように、第2アタッチメント24bの第2孔部47aの内径を、第1アタッチメント22bの第1孔部36aの内径より大きくし、シャフト86の第2支持部90の直径を、シャフト86の第1支持部88の直径より大きくしてもよい。これにより、
図15Bに示されるように、離脱工程では、第1及び第2アタッチメント22b、24bからシャフト86を取り外す。離脱工程において、ライナ成形体104に対してシャフト86を相対回転させることで、第1雄ねじ部96と第1雌ねじ部38aとの螺合を解除すると共に、第2雄ねじ部98と第2雌ねじ部48aとの螺合を解除する。第1アタッチメント22bから第2アタッチメント24bに向かう方向にライナ成形体104に対してシャフト86を相対移動させる。
【0072】
第1アタッチメント22、22b及び第2アタッチメント24、24bに対してシャフト86を着脱可能に保持する構成は、第1アタッチメント22、22bの第1雌ねじ部38、38aとシャフト86の第1雄ねじ部96、第2アタッチメント24、24bの第2雌ねじ部48、48aとシャフト86の第2雄ねじ部98によって構成される場合に限定されない。
図16Aに示す第2変形例に係る第1及び第2保持機構110、112は、シャフト114に設けられる。第1保持機構110は、シャフト114のシャフト本体114aに設けられ、シャフト本体114aに対して第1アタッチメント22を着脱可能に保持する。第2保持機構112は、シャフト114のシャフト本体114aに設けられ、シャフト本体114aに対して第2アタッチメント24を着脱可能に保持する。
【0073】
第1保持機構110は、シャフト本体114aの第1支持部88に配置される。第1保持機構110は、一対の第1係止部材116a、116bと、一対の第1弾発部材118a、118bとを有する。シャフト本体114aの第1収容孔120は、シャフト114の軸線と直交する径方向に開口する。第1アタッチメント22に対してシャフト114の第1支持部88が保持されたとき、一対の第1係止部材116a、116b及び第1収容孔120が、第1アタッチメント22の軸方向両側に配置される。一対の第1係止部材116a、116b及び第1収容孔120が、軸方向に離間して対で配置される。すなわち、シャフト114の軸方向において、第1アタッチメント22の軸方向両側に一対の第1係止部材116a、116bが配置される。
【0074】
一対の第1係止部材116a、116bは、第1収容孔120に収容されシャフト本体114aの径方向に変位可能である。第1係止部材116a、116bは、第1収容孔120における径方向外方に配置される。シャフト本体114aの外周面から第1係止部材116a、116bが径方向外方に突出することで、第1アタッチメント22をシャフト本体114a(シャフト114)の軸方向に係止可能である。第1係止部材116a、116bは、シャフト本体114aに対して径方向外方に脱抜しないように係止される。
【0075】
第1弾発部材118a、118bは、第1係止部材116a、116bに対して径方向内方に配置される。第1弾発部材118a、118bは、第1係止部材116a、116bをシャフト本体114aの径方向外方に付勢する弾発力を有する。第1弾発部材118a、118bの弾発力によって、一対の第1係止部材116a、116bが第1支持部88の外周面から径方向外方に突出する。これにより、第1係止部材116a、116bによって、シャフト114に対して第1アタッチメント22が軸方向に係止される。シャフト114の第1支持部88と第1アタッチメント22の軸方向への相対移動が阻止される。
【0076】
図16Bに示すように、第1保持機構110を有したシャフト114が第1アタッチメント22に対して軸方向に相対移動すると、第1アタッチメント22と第1係止部材116aとが接触し、第1弾発部材118aの弾発力に抗して第1係止部材116aが径方向内方に向けて移動する。このとき、第1係止部材116aは、第1支持部88(シャフト本体114a)の外周面から径方向外方に突出することがない位置まで移動可能である。第1係止部材116aが第1収容孔120に収容されると、シャフト114の軸方向において、シャフト114に対する第1アタッチメント22の係合が解除される。第1アタッチメント22に対してシャフト114が軸方向に相対移動可能となる。
【0077】
図16Aに示すように、第2保持機構112は、シャフト114の軸方向において第1保持機構110から離間した第2支持部90に配置される。第2保持機構112は、一対の第2係止部材122a、122bと、一対の第2弾発部材124a、124bとを有する。シャフト本体114aの第2収容孔126は、シャフト114の軸線と直交する径方向に開口する。第2アタッチメント24に対してシャフト114の第2支持部90が保持されたとき、一対の第2係止部材122a、122b及び第2収容孔126が、第2アタッチメント24の軸方向両側に配置される。一対の第2係止部材122a、122b及び第2収容孔126は、軸方向に離間して対で配置される。すなわち、シャフト114の軸方向において、第2アタッチメント24の軸方向両側に一対の第2係止部材122a、122bが配置される。
【0078】
一対の第2係止部材122a、122bは、第2収容孔126に収容されシャフト本体114aの径方向に変位可能である。第2係止部材122a、122bは、第2収容孔126における径方向外方に配置される。シャフト本体114aの外周面から第2係止部材122a、122bが径方向外方に突出することで、第2アタッチメント24をシャフト本体114a(シャフト114)の軸方向に係止可能である。第2係止部材122a、122bは、シャフト本体114aに対して径方向外方に脱抜しないように係止される。
【0079】
第2弾発部材124a、124bは、第2係止部材122a、122bに対して径方向内方に配置される。第2弾発部材124a、124bは、第2係止部材122a、122bをシャフト本体114aの径方向外方に付勢する弾発力を有する。第2弾発部材124a、124bの弾発力によって、一対の第2係止部材122a、122bが第2支持部90の外周面から径方向外方に突出する。これにより、第2係止部材122a、122bによって、シャフト114に対して第2アタッチメント24が軸方向に係止される。シャフト114の第2支持部90と第2アタッチメント24の軸方向への相対移動が阻止される。
【0080】
図16Bに示すように、第2保持機構112を有したシャフト114が第2アタッチメント24に対して軸方向に相対移動すると、第2アタッチメント24と第2係止部材122aとが接触し、第2弾発部材124aの弾発力に抗して第2係止部材122aが径方向内方に向けて移動する。このとき、第2係止部材122aは、第2支持部90(シャフト本体114a)の外周面から径方向外方に突出することがない位置まで移動可能である。第2係止部材122aが第2収容孔126に収容されると、シャフト114の軸方向において、シャフト114に対する第2アタッチメント24の係合が解除される。第2アタッチメント24に対してシャフト114が軸方向に相対移動可能となる。
【0081】
本発明の実施形態は、以下の効果を奏する。
【0082】
本発明の実施形態では、
図10に示すように、ライナ12を成形するブロー成形工程において、第1及び第2アタッチメント22、24をライナ12の第1及び第2ドーム部20a、20bに一体成形する。このため、
図12に示すように、第1アタッチメント22に第1ボス16aを取り付け、第2アタッチメント24に第2ボス16bを取り付けたとき、第1ボス16aと第2ボス16bとの同軸度を確保することができる。
図13に示すように、ライナ成形体104が成形された後に、シャフト組立体102の第1及び第2アタッチメント22、24からシャフト86を軸方向に取り外すことができるため、ライナ成形体にシャフトが組み込まれたままの構成と比較し、シャフト86の使用に伴う高圧タンク10の不要な重量増加を防ぐことができる。
【0083】
図12に示すように、フィラメントワインディング工程において、ライナ12を固定して回転させるための治具としてライナ成形体104のシャフト86を利用することが可能である。このため、フィラメントワインディング工程において、回転用の治具を別に準備して取り付ける必要がなく、フィラメントワインディング工程を効率的に行うことができる。
【0084】
図7に示すように、シャフト組立体102において、シャフト86の第1雄ねじ部96と第1アタッチメント22の第1雌ねじ部38とが螺合し、シャフト86の第2雄ねじ部98と第2アタッチメント24の第2雌ねじ部48とが螺合している。このため、
図14Bに示すように、ライナ成形体104からのシャフト86の離脱工程において、ライナ成形体104に対してシャフト86を相対回転させることにより、第1雄ねじ部96と第1雌ねじ部38との螺合を解除すると共に第2雄ねじ部98と第2雌ねじ部48との螺合を解除することができる。これにより、シャフト86の離脱工程において、ライナ成形体104からシャフト86を容易に取り外すことができる。
【0085】
図15Aに示す構成では、第2アタッチメント24bの第2孔部47aの内径は、第1アタッチメント22bの第1孔部36aの内径より大きい。このため、
図15Bに示すように、ライナ成形体104からのシャフト86の離脱工程において、シャフト86の第1雄ねじ部96が第1アタッチメント22の第1雌ねじ部38aから離脱した後は、ライナ成形体104に対してシャフト86を相対回転させることなく、シャフト86の第1雄ねじ部96が第2アタッチメント24の第2雌ねじ部48aを通過することができる。これにより、ライナ成形体104からのシャフト86の取り出しを容易に行うことができる。
【0086】
図16Aに示す構成では、シャフト114が第1係止部材116a、116b及び第2係止部材122a、122bを有する。このため、第1及び第2アタッチメント22、24に対してシャフト114を組み付けるシャフト準備工程において、径方向外方に付勢されてシャフト本体114aの外周面から突出した第1係止部材116a、116b及び第2係止部材122a、122bによって、第1及び第2アタッチメント22、24に対するシャフト114の軸方向への相対移動が阻止される。そのため、第1及び第2アタッチメント22、24をシャフト114に対して安定して固定できる。シャフト114の離脱工程では、第1係止部材116a、116b及び第2係止部材122a、122bが第1弾発部材118a、118b及び第2弾発部材124a、124bの弾発力に抗してシャフト本体114aの外周面より径方向内方に移動して第1及び第2収容孔120、126に収容される。これにより、第1係止部材116a、116b及び第2係止部材122a、122bによるシャフト114の軸方向への移動阻止状態が解除され、第1及び第2アタッチメント22、24に対するシャフト114の軸方向への相対移動が可能となり、第1及び第2アタッチメント22、24に対してシャフト114を取り外しできる。
【0087】
上記の実施形態をまとめると、以下のようになる。
【0088】
上記の実施形態は、円筒状のシリンダ部(18)と、前記シリンダ部の軸方向の一端部に配置される第1ドーム部(20a)と、前記シリンダ部の前記軸方向の他端部に配置される第2ドーム部(20b)とを有するライナ(12)を製造するライナの製造方法であって、
エア供給孔(94)を有し直線状に延在する管状のシャフト(86、114)の外周部に環状の第1アタッチメント(22)及び環状の第2アタッチメント(24)が取り付けられたシャフト組立体(102)を準備するシャフト準備工程であって、前記第1アタッチメントには環状の第1ボス(16a)が取り付け可能であり、前記第2アタッチメントには環状の第2ボス(16b)が取り付け可能であり、前記第1アタッチメントと前記第2アタッチメントが前記シャフトの軸方向に離間して配置され、前記シャフトが前記第1アタッチメントと前記第2アタッチメントから取り外し可能である、シャフト準備工程と、
前記ライナを成形するための金型装置(62)に向けて樹脂材料からなる筒状のパリソン(P)を供給し、前記パリソンの内側に前記シャフト組立体を配置するパリソン供給工程と、
前記金型装置を型閉めし、前記シャフトの前記エア供給孔から前記パリソン内にエアを供給して前記パリソンを膨張させ、第1孔部を有した前記第1アタッチメントが前記第1ドーム部に一体成形されると共に前記第1孔部と同心状に配置される第2孔部を有した前記第2アタッチメントが前記第2ドーム部に一体成形されたライナ成形体(104)を得るブロー成形工程と、
前記ブロー成形工程の後、前記第1アタッチメント及び前記第2アタッチメントから前記シャフトを取り外して、前記シャフトを前記ライナ成形体の外部に取り出す離脱工程と、
を有する。
【0089】
前記ブロー成形工程と前記離脱工程との間に、前記ライナの外周面に強化用繊維(14a)を巻回するフィラメントワインディング工程を有し、
前記フィラメントワインディング工程では、前記シャフトにより前記ライナ成形体を支持し、前記シャフトを介して前記ライナ成形体を回転させる。
【0090】
前記シャフトの外周面は、前記シャフトの前記軸方向において互いに異なる位置に設けられた第1雄ねじ部(96)及び第2雄ねじ部(98)を有し、
前記第1アタッチメントの内周面は、前記第1雄ねじ部に螺合可能な第1雌ねじ部(38、38a)を有し、
前記第2アタッチメントの内周面は、前記第2雄ねじ部に螺合可能な第2雌ねじ部(48、48a)を有し、
前記シャフト組立体では、前記第1雄ねじ部と前記第1雌ねじ部とが螺合し、前記第2雄ねじ部と前記第2雌ねじ部とが螺合しており、
前記離脱工程において、前記ライナ成形体に対して前記シャフトを相対回転させることにより、前記第1雄ねじ部と前記第1雌ねじ部との螺合を解除すると共に前記第2雄ねじ部と前記第2雌ねじ部との螺合を解除する。
【0091】
前記第2アタッチメントの内径が、前記第1アタッチメントの内径より大きく、
前記離脱工程では、前記第1アタッチメントから前記第2アタッチメントに向かう方向に前記ライナ成形体に対して前記シャフトを相対移動させる。
【0092】
前記シャフトは、
前記シャフトの軸方向に延在するシャフト本体(114a)と、
前記シャフト本体に設けられ、前記第1アタッチメントを着脱可能に保持する第1保持機構(110)と、
前記第1保持機構から前記シャフトの前記軸方向に離間した位置で前記シャフト本体に設けられ、前記第2アタッチメントを着脱可能に保持する第2保持機構(112)と、を有し、
前記第1保持機構は、前記シャフト本体の径方向に変位可能であり前記シャフト本体の外周面から突出して前記第1アタッチメントを係止する第1係止部材(116a、116b)と、前記第1係止部材を前記シャフト本体の径方向外方に付勢する第1弾発部材(118a、118b)とを有し、
前記第2保持機構は、前記シャフト本体の前記径方向に変位可能であり前記シャフト本体の前記外周面から突出して前記第2アタッチメントを係止する第2係止部材(122a、122b)と、前記第2係止部材を前記シャフト本体の径方向外方に付勢する第2弾発部材(124a、124b)とを有し、
前記シャフト準備工程では、前記第1係止部材及び前記第2係止部材が前記シャフト本体の前記外周面から突出して、前記シャフトの前記軸方向において、前記シャフトに対して前記第1及び第2アタッチメントが係合し、
前記離脱工程では、前記ライナ成形体に対する前記シャフトの前記軸方向への相対移動に伴い、前記第1弾発部材の付勢力に抗して前記第1アタッチメントが前記第1係止部材を前記シャフト本体の径方向内方に変位させると共に、前記第2弾発部材の付勢力に抗して前記第2アタッチメントが前記第2係止部材を前記シャフト本体の径方向内方に変位させることにより、前記シャフトの前記軸方向において、前記シャフトに対する前記第1及び第2アタッチメントの係合が解除される。
【0093】
円筒状のシリンダ部と、前記シリンダ部の軸方向の一端部に配置される湾曲状の第1ドーム部と、前記シリンダ部の軸方向の他端部に配置される湾曲状の第2ドーム部と、を有する樹脂材料からなるライナと、
前記シリンダ部の軸線上で前記第1ドーム部と一体成形され、前記シリンダ部の軸方向に貫通した第1孔部(36)を有した円環状の第1アタッチメントと、
前記シリンダ部の軸線上で前記第2ドーム部と一体成形され、前記シリンダ部の軸方向に貫通し且つ前記第1孔部と同心状に配置される第2孔部(47)を有した円環状の第2アタッチメントと、
前記第1アタッチメントに同心状に固定された環状の第1ボスと、
前記第2アタッチメントに同心状に固定された環状の第2ボスと、
を備える。
【0094】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0095】
10…高圧タンク
12、12a…ライナ
14…補強層
16a…第1ボス
16b…第2ボス
18…シリンダ部
20a…第1ドーム部
20b…第2ドーム部
22、22a、22b…第1アタッチメント
24、24a、24b…第2アタッチメント
62…金型装置
86、114…シャフト
94…エア供給孔
102…シャフト組立体
P…パリソン