(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093886
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】ボイラシステム
(51)【国際特許分類】
F23C 1/08 20060101AFI20240702BHJP
F22B 35/00 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
F23C1/08
F22B35/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210518
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196623
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 計介
(72)【発明者】
【氏名】棟田 祐司
(72)【発明者】
【氏名】松木 繁昌
(72)【発明者】
【氏名】武田 大
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 和洋
【テーマコード(参考)】
3K091
3L021
【Fターム(参考)】
3K091AA20
3K091BB02
3K091BB25
3K091CC02
3K091CC06
3K091CC23
3K091DD02
3L021AA05
3L021BA08
3L021CA08
3L021DA04
3L021DA28
3L021FA12
3L021FA13
(57)【要約】
【課題】BOGを含む気体燃料中のBOG濃度が変化しても安定した燃焼処理が可能なボイラシステムを実現することにある。
【解決手段】ボイラシステム1は、BOG燃料の燃焼を優先するBOG燃焼制御モードM2または窒素を含む窒素混合BOG燃料を所定の空気比で燃焼させる空気比制御モードM3を設定可能なモード設定部19と、ボイラ10の燃焼を制御する制御部20と、を有する。制御部20は、モード設定部19によってBOG燃焼制御モードM2が設定された場合、所定燃焼量になるように気体燃料流量調整部3を調整する。制御部20は、モード設定部19によって空気比制御モードM3が設定された場合、ボイラ10にBOG燃料と重油とが供給されるように気体燃料流量調整部3と液体燃料流量調整部7とを調整すると共にボイラ20の排ガスの酸素濃度Coが所定の酸素濃度Cotになるように、空気流量調整部12を調整する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガス貯蔵タンクと、前記液化ガス貯蔵タンク内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給部と、前記液化ガス貯蔵タンクから排出されるボイルオフガス及び不活性ガスが流れるフリーフローラインとを備えた船舶に搭載されるボイラシステムであって、
前記ボイラシステムは、
ボイルオフガスを含む気体燃料と液体燃料とを燃焼できるボイラと、
前記ボイラに供給されるボイルオフガスを含む気体燃料の圧力を検知する気体燃料圧力検知部と、
前記ボイラに供給されるボイルオフガスを含む気体燃料の流量を調整する気体燃料流量調整部と、
前記ボイラに供給される液体燃料の流量を調整する液体燃料流量調整部と、
前記ボイラに供給される燃焼用空気の流量を調整する空気流量調整部と、
前記ボイラの排ガスにおける酸素濃度を検知する酸素濃度検知部と、
前記ボイラにおいて、ボイルオフガスを含む気体燃料の燃焼を優先するボイルオフガス燃焼制御モード及び不活性ガスを含むボイルオフガスを含む気体燃料を所定の空気比で燃焼させる空気比制御モードのうちいずれか一方の制御モードを設定可能なモード設定部と、
前記ボイラの燃焼を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記モード設定部によって前記ボイルオフガス燃焼制御モードが設定された場合、所定燃焼量になるように前記気体燃料流量調整部を調整し、
前記モード設定部によって前記空気比制御モードが設定された場合、前記ボイラにボイルオフガスを含む気体燃料と液体燃料とが供給されるように前記気体燃料流量調整部と前記液体燃料流量調整部とを調整すると共に前記ボイラの排ガスの酸素濃度が所定の酸素濃度になるように、前記空気流量調整部を調整する、
ボイラシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のボイラシステムであって、
前記制御部は、
ボイルオフガスに含まれる不活性ガスの混合程度を算出する不活性ガス混合判定部を、さらに有し、
前記空気比制御モードにおいて、
不活性ガス混合判定部によりボイルオフガスを含む気体燃料に含まれる不活性ガスの混合程度が所定値未満であると判定した場合、前記ボイラにボイルオフガスを含む気体燃料のみが供給されるように前記気体燃料流量調整部と前記液体燃料流量調整部とを調整し、
不活性ガス混合判定部によりボイルオフガスを含む気体燃料に含まれる不活性ガスの混合程度が所定値以上であると判定した場合、前記ボイラにボイルオフガスを含む気体燃料と液体燃料とが供給されるように前記気体燃料流量調整部と前記液体燃料流量調整部とを調整する、
ボイラシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のボイラシステムであって、
前記制御部は、
前記酸素濃度検知部の検出結果に基づいて排ガスの酸素濃度が所定値になるように前記空気流量調整部を調整し、
前記空気流量調整部の調整量に基づいて、前記不活性ガス混合判定部によってボイルオフガスに含まれる不活性ガスの混合程度を判定する、
ボイラシステム。
【請求項4】
請求項2に記載のボイラシステムであって、
前記制御部は、
前記ボイルオフガス燃焼制御モードにおいて、前記不活性ガス混合判定部によってボイルオフガスを含む気体燃料の不活性ガスの混合程度を判定し、
ボイルオフガスを含む気体燃料の不活性ガスの混合程度が所定値以上であると判定した場合、前記空気比制御モードに切り替えるとともに前記ボイラにボイルオフガスを含む気体燃料と液体燃料とが供給されるように前記気体燃料流量調整部と前記液体燃料流量調整部とを調整する、
ボイラシステム。
【請求項5】
請求項2に記載のボイラシステムであって、
前記モード設定部は、
前記空気比制御モードが設定された場合、不活性ガス増加燃焼制御モード及びボイルオフガス増加燃焼制御モードのうちいずれか一つの制御モードを設定可能に構成され、
前記制御部は、
前記モード設定部によって不活性ガス増加燃焼制御モードが設定された場合、前記ボイラにボイルオフガスを含む気体燃料のみが供給されるように前記気体燃料流量調整部と前記液体燃料流量調整部とを調整した状態でメイン燃焼を開始し、
前記モード設定部によってボイルオフガス増加燃焼制御モードが設定された場合、前記ボイラにボイルオフガスを含む気体燃料と液体燃料とが供給されるように前記気体燃料流量調整部と前記液体燃料流量調整部とを調整した状態でメイン燃焼を開始する、
ボイラシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のボイラシステムであって、
前記制御部は、
前記モード設定部によって前記ボイルオフガス燃焼制御モードが設定された場合、前記酸素濃度検知部によって検知される前記ボイラの排ガスの酸素濃度が所定の酸素濃度になるように、前記空気流量調整部を調整する、
ボイラシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のボイラシステムであって、
前記ボイラにおいて発生する蒸気の圧力を検知する蒸気圧力検知部を有し、
前記モード設定部は、
前記ボイラにおける蒸気の生成を優先する蒸気圧力優先制御モードを更に設定可能に構成され、
前記制御部は、
前記モード設定部によって前記蒸気圧力優先制御モードが設定された場合、前記蒸気圧力検知部によって検知される蒸気圧力が所定の蒸気圧力になるように、前記気体燃料流量調整部及び前記液体燃料流量調整部のうち少なくとも一方を調整する、
ボイラシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フリーフローラインを流れるボイルオフガスを燃焼処理可能なボイラシステムに関連する。
【背景技術】
【0002】
天然ガスは、船舶によって輸送する場合、大気圧下において約-160℃に冷却することで液化した状態(液化ガス)で輸送されている。このような液化ガスを輸送する船舶は、内部を極低温状態に保持可能な断熱、防熱機能を有する液化ガス貯蔵タンク内に液化ガスを貯蔵して輸送する。しかし、前記液化ガス貯蔵タンク内の液化ガスは、前記液化ガス貯蔵タンク内に侵入した熱によってボイルオフガス(以下、単に「BOG」と記載する。部材名、用語、名称等に含まれている「ボイルオフガス」ついても「BOG」と記載するものとする。)が発生する。BOGの発生によりタンク圧が上昇した前記液化ガス貯蔵タンクは、許容タンク圧に到達する前にBOGを処理する必要がある。特許文献1では、液化ガス貯蔵タンク内で発生したBOGは、圧縮機へ導かれて圧縮され推進用の主ガスエンジン及び船内発電用の副ガスエンジンの燃料として利用されている。また、BOGは、GCUへ供給して燃焼することが可能である。
【0003】
一方、圧縮機を必要とする特許文献1の構成では、設備費用およびランニング費用が増大する。よって、液化ガス貯蔵タンクにおいて発生するBOGをガス焼却装置にフリーフローラインによって供給するためのフリーフローガス供給手段と、タンクから汲み上げた液化ガスを過冷却する液化ガス過冷却装置と、過冷却された液化ガスを前記タンク内に戻す液化ガス噴霧手段とを備えるタンク圧力制御システムが特許文献2に開示されている。特許文献2では、余剰のBOGは、ガス圧縮機を用いずに、液化ガス貯蔵タンク内の圧力で燃料ガスをガス燃焼装置に送るフリーフローガス供給ラインを通して燃焼装置に供給される。しかしながら、特許文献2には、ガス燃焼装置における余剰のBOGの燃焼制御技術に関連する記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018―48607号公報
【特許文献2】特開2019―163804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年のSDGs等への社会的要請の高まりにより、地球温暖化係数が高いメタンなどのBOGを、大気に排出することなく余剰のBOGの発生量に応じて効率的に燃焼処理するボイラシステムが求められている。よって、ボイラシステムは、液化ガス貯蔵タンク内に残留しているBOGを不活性ガスに置換した際、または不活性ガスが充填された液化ガス貯蔵タンクにLNGが充填された際に液化ガス貯蔵タンクから排出される不活性ガスが混合されたBOGも適切に燃焼処理しなくてはならない。
【0006】
本発明の目的は、BOGを含む気体燃料中のBOG濃度が変化しても安定した燃焼処理が可能なボイラシステムを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係るボイラシステムは、液化ガス貯蔵タンクと、前記液化ガス貯蔵タンク内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給部と、前記液化ガス貯蔵タンクから排出されるBOG及び不活性ガスが流れるフリーフローラインとを備えた船舶に搭載されるボイラシステムである。前記ボイラシステムは、BOGを含む気体燃料と液体燃料とを燃焼できるボイラと、前記ボイラに供給されるBOGを含む気体燃料の圧力を検知する気体燃料圧力検知部と、前記ボイラに供給されるBOGを含む気体燃料の流量を調整する気体燃料流量調整部と、前記ボイラに供給される液体燃料の流量を調整する液体燃料流量調整部と、前記ボイラに供給される燃焼用空気の流量を調整する空気流量調整部と、前記ボイラの排ガスにおける酸素濃度を検知する酸素濃度検知部と、前記ボイラにおいて、BOGを含む気体燃料の燃焼処理を優先するBOG燃焼制御モード及び不活性ガスを含むBOGを含む気体燃料を所定の空気比で燃焼させる空気比制御モードのうちいずれか一方の制御モードを設定可能なモード設定部と、前記ボイラの燃焼を制御する制御部と、を有する。
【0008】
前記制御部は、前記モード設定部によって前記BOG燃焼制御モードが設定された場合、所定燃焼量になるように前記気体燃料流量調整部を調整する。前記制御部は、前記モード設定部によって前記空気比制御モードが設定された場合、前記ボイラにBOGを含む気体燃料と液体燃料とが供給されるように前記気体燃料流量調整部と前記液体燃料流量調整部とを調整すると共に前記ボイラの排ガスの酸素濃度が所定の酸素濃度になるように、前記空気流量調整部を調整する。
【0009】
上述のボイラシステムは、BOG圧力を低下させることが必要な(BOG燃焼処理の優先度が高い)場合、BOG燃焼制御モードにおいて、BOG燃料のみを燃焼し余剰のBOGの燃焼量を増加することができる。また、前記ボイラシステムは、液化ガス貯蔵タンク内の不活性ガスパージによりBOGを含む気体燃料に不活性ガスが混入した場合、または不活性ガスが充填された液化ガス貯蔵タンクに対するLNGの充填によって不活性ガス中にBOG混入した場合に、空気比制御モードにおいて液体燃料が燃焼することによりBOGと不活性ガスの混合割合が変化しても燃焼を継続することができる。さらに、ボイラの排ガスの酸素濃度に基づいて、BOGを含む気体燃料の燃焼処理に必要な燃焼用空気の供給量を制御する。これにより、BOGを含む気体燃料中のBOG濃度が変化してもボイラ効率の低下を抑制し、安定した燃焼処理が可能なボイラシステムを実現することができる。
【0010】
なお、余剰のBOGとは、主機や発電機等のボイラ以外の機器において燃料として利用されないBOG及び再液化によって液化ガス貯蔵タンクに回収されないBOGを含む。また、船内の蒸気需要等に対してボイラを運転する場合など、ボイラで回収された熱量を有効利用する場合に燃料として利用されるBOGは、余剰のBOGに含むものとする。
【0011】
他の観点によれば、本発明のボイラシステムは、以下の構成を含むことが好ましい。前記ボイラシステムの制御部は、BOGを含む気体燃料に不活性ガスの混合程度を判定する不活性ガス混合判定部をさらに有する。前記空気比制御モードにおいて、前記制御部は、不活性ガス混合判定部によりBOGを含む気体燃料に含まれる不活性ガスの混合程度が所定値未満であると判定した場合、前記ボイラにBOGを含む気体燃料のみが供給されるように前記気体燃料流量調整部と前記液体燃料流量調整部とを調整する。不活性ガス混合判定部によりBOGを含む気体燃料に含まれる不活性ガスの混合程度が所定値以上であると判定した場合、前記ボイラにBOGを含む気体燃料と液体燃料とが供給されるように前記気体燃料流量調整部と前記液体燃料流量調整部とを調整する、
【0012】
上述の構成では、空気比制御モードが設定された場合であっても、前記ボイラシステムの制御部は、BOGを含む気体燃料に含まれる不活性ガスの混合程度である不活性ガスの混合率が所定の混合率を下回っている場合、前記ボイラにBOGを含む気体燃料のみを供給する。これにより、BOG濃度が高い場合にBOG燃焼を優先し、余剰のBOGの燃焼量を増加することができる。
【0013】
他の観点によれば、本発明のボイラシステムは、以下の構成を含むことが好ましい。前記制御部は、前記酸素濃度検知部の検出結果に基づいて排ガスの酸素濃度(空気比)が所定値になるように前記空気流量調整部を調整する。前記制御部は、前記空気流量調整部の調整量に基づいて、前記不活性ガス混合判定部によってBOGに含まれる不活性ガスの混合程度を判定する。
【0014】
上述の構成では、前記酸素濃度検知部の検出結果に基づいて排ガスの酸素濃度が所定値になるように前記空気流量調整部を調整されている場合、前記ボイラシステムの制御部は、前記不活性ガス混合判定部によって、前記ボイラに供給する燃焼用空気の供給量に基づいてBOGを含む気体燃料中のBOGに対する不活性ガスの混合程度を算出する。これにより、BOGを含む気体燃料中のBOG濃度が変化しても安定した燃焼処理が可能なボイラシステムを実現することができる。
【0015】
他の観点によれば、本発明のボイラシステムは、以下の構成を含むことが好ましい。前記制御部は、前記BOG燃焼制御モードにおいて、前記不活性ガス混合判定部によってBOGに含まれる不活性ガスの混合程度を判定する。前記制御部は、BOGに含まれる不活性ガスの混合程度が所定値以上であると判定した場合、前記空気比制御モードに切り替えるとともに前記ボイラにボイルオフガスを含む気体燃料と液体燃料とが供給されるように前記気体燃料流量調整部と前記液体燃料流量調整部とを調整する。
【0016】
上述の構成では、前記ボイラシステムは、BOGを含む気体燃料中の不活性ガスの混合程度が所定値以上の場合、BOGを含む気体燃料を安定して燃焼処理するためにBOGを含む気体燃料中の不活性ガスの混合割合に応じて液体燃料を供給する。これにより、BOGを含む気体燃料中のBOG濃度が変化しても安定した燃焼処理が可能なボイラシステムを実現することができる。
【0017】
他の観点によれば、本発明のボイラシステムは、以下の構成を含むことが好ましい。前記ボイラシステムにおいて、前記モード設定部は、前記空気比制御モードが設定された場合、不活性ガス増加燃焼制御モード及びBOG増加燃焼制御モードのうちいずれか一つの制御モードを設定可能に構成される。前記制御部は、前記モード設定部によって不活性ガス増加燃焼制御モードが設定された場合、前記ボイラにBOGを含む気体燃料のみが供給されるように前記気体燃料流量調整部と前記液体燃料流量調整部とを調整した状態でメイン燃焼を開始する。前記制御部は、前記モード設定部によってBOG増加燃焼制御モードが設定された場合、前記ボイラにボイルオフガスを含む気体燃料と液体燃料とが供給されるように前記気体燃料流量調整部と前記液体燃料流量調整部とを調整した状態でメイン燃焼を開始する。
【0018】
上述の構成では、前記ボイラシステムでは、空気比制御モードにおいて、前記ボイラにおいて安定して燃焼可能なBOGを含む気体燃料が供給される場合、BOGの燃焼処理量を増大させるために不活性ガス増加燃焼制御モードが設定される。また、前記ボイラシステムでは、空気比制御モードにおいて、前記ボイラに不活性ガスが混入しているBOGを含む気体燃料が供給される場合、より安定したBOGの燃焼処理のためにBOG増加燃焼制御モードが設定される。これにより、BOGを含む気体燃料中のBOG濃度が変化しても安定した燃焼処理が可能なボイラシステムを実現することができる。
【0019】
他の観点によれば、本発明のボイラシステムは、以下の構成を含むことが好ましい。前記制御部は、前記モード設定部によって前記BOG燃焼制御モードが設定された場合、前記酸素濃度検知部によって検知される前記ボイラの排ガスの酸素濃度が所定の酸素濃度になるように、前記空気流量調整部を調整する。
【0020】
上述の構成では、前記ボイラシステムは、前記BOG燃焼制御モードにおいて、前記ボイラにBOGを供給する場合、BOGの組成に応じて前記ボイラに供給する空気流量を調整する。よって、前記ボイラシステムは、BOGの組成に応じた適切な酸素量を前記ボイラに供給することができる。これにより、BOGを含む気体燃料中のBOG濃度が変化しても安定した燃焼処理が可能なボイラシステムを実現することができる。
【0021】
他の観点によれば、本発明のボイラシステムは、以下の構成を含むことが好ましい。前記ボイラにおいて発生する蒸気の圧力を検知する蒸気圧力検知部を有する。前記モード設定部は、前記ボイラにおける蒸気の生成を優先する蒸気圧力優先制御モードを更に設定可能に構成される。前記制御部は、前記モード設定部によって前記蒸気圧力優先制御モードが設定された場合、前記蒸気圧力検知部によって検知される蒸気圧力が所定の蒸気圧力になるように、前記気体燃料流量調整部及び前記液体燃料流量調整部のうち少なくとも一方を調整する。
【0022】
上述の構成では、前記ボイラシステムは、蒸気供給が必要な場合、前記蒸気圧力優先制御モードにおいて蒸気圧力を所定の蒸気圧力に維持しつつ、BOGを含む気体燃料を燃焼することができる。一方、前記ボイラシステムは、蒸気供給よりもBOGを含む気体燃料の燃焼処理を優先させる場合、前記BOG燃焼制御モードまたは前記空気比制御モードにおいてBOGを含む気体燃料の燃焼量を増加することができる。これにより、BOGを含む気体燃料中のBOG濃度が変化しても安定した燃焼処理が可能なボイラシステムを実現することができる。
【発明の効果】
【0023】
BOGを含む気体燃料中のBOG濃度が変化しても安定した燃焼処理が可能なボイラシステムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態1に係るボイラシステムを含むBOG処理システムの概略構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態1に係るボイラシステムにおける制御モードおよび燃焼モードの一部を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態1に係るボイラシステムの変形例におけるBOG燃焼制御モードを示すブロック図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態2に係るボイラシステムを含むBOG処理システムの概略構成図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態2に係るボイラシステムにおける空気比制御モードを示すブロック図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態3に係るボイラシステムにおける空気比制御モードを示すブロック図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態4に係るボイラシステムにおける制御モードおよび燃焼モードを示すブロック図である。
【0025】
以下で、本発明に係るボイラシステムの各実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図において、同一部分には同一の符号を付して、その同一部分の説明は繰り返さない。なお、各図中の構成部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各構成部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0026】
以下の説明において、上流とは、液化ガス貯蔵タンクT1からBOGを含む気体燃料を燃焼等する機器に向かってBOGを含む気体燃料が流通する配管において液化ガス貯蔵タンクT1側を意味し、液体燃料貯蔵タンクT2から液体燃料を燃焼する機器に向かって液体燃料が流通する配管において液体燃料貯蔵タンクT2側を意味する。下流とは、BOGを含む気体燃料または液体燃料が流通する配管においてBOGを含む気体燃料または液体燃料を燃焼等する機器側を意味する。
【0027】
また、以下の説明において、BOG燃料とはフリーフローラインを流れる余剰のBOGであって、主機や発電機等のボイラ以外の機器において燃料として利用されないBOG及び再液化によって前記液化ガス貯蔵タンクに回収されないBOGを含む。また、前記液化ガスタンク等の不活性ガスパージが行われる場合、前記フリーフローラインを流れるBOG燃料は、不活性ガスを含む。つまり、BOG燃料は、不活性ガスを含むBOG及び不活性ガスを含まないBOGのいずれか一方であるBOGを含む気体燃料である。
【0028】
また、以下の説明において、“固定”、“接続”及び“取り付ける”等(以下、固定等)の表現は、部材同士が直接、固定等されている場合だけでなく、他の部材を介して固定等されている場合も含む。すなわち、以下の説明において、固定等の表現には、部材同士の直接的及び間接的な固定等の意味が含まれる。
【0029】
(実施形態1)
(ボイラシステム)
図1及び
図2を用いて、本発明の実施形態1に係るボイラシステムについて説明する。
図1は、本発明の実施形態1に係るボイラシステム1を含むBOG処理システム100の概略構成図である。なお、以下の実施形態において、ボイラシステム1は、液体燃料として重油を燃焼させているが、これに限定するものではない。ボイラシステム1は、例えば、灯油、ナフサ等を液体燃料として使用してもよい。
【0030】
図1に示すように、BOG処理システム100は、液化ガス貯蔵タンクT1で発生したBOG燃料が流れるフリーフローライン2Aと、フリーフローライン2Aにおける上流側に接続された圧縮機Cと、圧縮機Cにより昇圧されたBOG燃料を燃料とする発電機Geと、フリーフローライン2Aの下流側に接続されるボイラシステム1とを有する。BOG処理システム100は、BOG燃料を再液化させて液化ガス貯蔵タンクT1に回収する再液化ガス回収システム(図示せず)をフリーフローライン2Aにおける上流側に備えても良い。また、BOG処理システム100は、圧縮機Cにより昇圧されたBOG燃料を後述するボイラシステム1のBOG供給ライン2Bに供給する構成でもよい。
【0031】
さらに、BOG処理システム100は、液化ガス貯蔵タンクT1内のBOG燃料を排出するために液化ガス貯蔵タンクT1内に不活性ガスとして窒素を供給する窒素パージ機能を有する。BOG処理システム100は、窒素貯蔵タンクT3と、窒素供給ラインLと、窒素供給部Vと、ボイラシステム1Aとを有する。
【0032】
BOG処理システム100のフリーフローライン2Aは、液化ガス貯蔵タンクT1の液化ガスが熱によって蒸発したBOG燃料を液化ガス貯蔵タンクT1の外部に排出する配管である。フリーフローライン2Aは、液化ガス貯蔵タンクT1内で発生したBOG燃料が流入可能に構成されている。
【0033】
窒素貯蔵タンクT3は、窒素供給ラインLによって液化ガス貯蔵タンクT1に接続されている。窒素供給ラインLには、窒素貯蔵タンクT3から窒素を液化ガス貯蔵タンクT1内に供給する開状態と液化ガス貯蔵タンクT1内に窒素を供給しない閉状態とに切り替える窒素供給部Vが位置している。
【0034】
ボイラシステム1は、フリーフローライン2Aを流れるBOG燃料を燃焼処理可能なボイラシステムである。本実施形態において、BOG処理システム100は、液化ガスを輸送する船舶に搭載されている。ボイラシステム1は、前記船舶において液化ガスを貯蔵している液化ガス貯蔵タンクT1内で発生したBOG燃料のうち発電機Geでの使用量と、図示しない再液化ガス回収システムによる回収量を除いたBOG燃料を燃焼処理可能である。
【0035】
ボイラシステム1は、BOG供給ライン2Bと、気体燃料流量調整部3と、液体燃料流量調整部7と、ボイラ10と、空気流量調整部12と、BOG圧力検知部13と、蒸気圧力検知部14と、酸素濃度検知部16と、モード設定部19と、制御部20と、を有す。
【0036】
ボイラシステム1のBOG供給ライン2Bは、フリーフローライン2A内を流れるBOG燃料をボイラ10に供給する配管である。BOG供給ライン2Bの上流側は、フリーフローライン2Aに接続されている。BOG供給ライン2Bの下流側は、気体燃料流量調整部3を介してボイラ10に接続されている。BOG供給ライン2Bには、液化ガス貯蔵タンクT1内で発生したBOG燃料の圧力によってフリーフローライン2A内のBOG燃料が流れ込む。BOG供給ライン2B内のBOG燃料の圧力であるBOG圧力Pbは、フリーフローライン2AからBOG供給ライン2B内に流れ込むBOG燃料の流量と気体燃料流量調整部3が下流側に流すBOG燃料の流量との関係によって増減する。BOG供給ライン2Bは、BOG供給ライン2BのBOG圧力Pbに有意な変化を起こすボイラ10以外の機器と接続されないことが望ましい。
【0037】
また、
図1のBOG処理システム100では、BOG供給ライン2Bの圧力は、液化ガス貯蔵タンクT1で発生するBOG燃料の発生量と発電機Ge等において燃料として使用されるBOG燃料の流量との関係を反映して変動する。例えば、液化ガス貯蔵タンクT1のBOG燃料の発生量が変わらない場合でも、BOG供給ライン2BのBOG圧力Pbは、発電機Geにおいて使用されるBOG燃料の増加により低下し、発電機Geにおいて使用されるBOG燃料の減少により上昇する。このように、BOG供給ライン2B内のBOG圧力Pbは、フリーフローライン2Aを流れるBOG燃料の流量を反映して変動する。つまり、BOG供給ライン2Bの圧力は、BOG供給ライン2Bを介してボイラ10に供給されるBOG燃料の流量と、フリーフローライン2Aから発電機Geに供給されるBOG燃料の流量との関係によって変動する。
【0038】
気体燃料流量調整部3は、気体燃料であるBOG燃料の流量を調整するバルブユニットである。気体燃料流量調整部3は、BOG供給ライン2Bに接続されている。気体燃料流量調整部3は、減圧弁4Aと、気体燃料遮断弁4Bと、気体燃料流量調整弁5とを有する。
【0039】
減圧弁4Aは、BOG圧力Pbを減圧する。減圧弁4Aは、直動式ダイアフラムタイプの減圧弁、エア駆動の直動式減圧弁もしくはパイロット式減圧弁または電動弁等によって構成されている。減圧弁4Aは、減圧弁4Aよりも下流側のBOG圧力が一定の圧力以下になるようにBOG圧力Pbを調整する。
【0040】
気体燃料遮断弁4Bは、BOG燃料の流れを遮断する。気体燃料遮断弁4Bは、エア駆動弁または電動弁等によって構成されている。気体燃料遮断弁4Bは、BOG燃料の流通を遮断可能である。
【0041】
気体燃料流量調整弁5は、BOG燃料の流量を調整する。気体燃料流量調整弁5は、弁開度を任意の開度に変更可能なエア駆動弁または電動弁等である。気体燃料流量調整弁5は、気体燃料遮断弁4Bの下流側に配置される。
【0042】
液体燃料供給ライン6は、液体燃料である重油をボイラ10に供給する配管である。液体燃料供給ライン6は、重油を貯蔵している液体燃料貯蔵タンクT2に接続され、液体燃料貯蔵タンクT2の重油が流入可能に構成されている。液体燃料供給ライン6は、発電機Ge、主機Egに接続され、発電機Ge、主機Egが重油を利用可能に構成されても良い。
【0043】
液体燃料流量調整部7は、重油の流量を調整するバルブユニットである。液体燃料流量調整部7は、ボイラ10の上流側であって液体燃料供給ライン6の下流側に接続されている。液体燃料流量調整部7は、液体燃料遮断弁8と、液体燃料流量調整弁9とを有する。
【0044】
液体燃料遮断弁8は、重油の流れを遮断する。液体燃料遮断弁8は、エア駆動弁または電動弁等によって構成されている。液体燃料遮断弁8は、液体燃料供給ライン6に接続されている。
【0045】
液体燃料流量調整弁9は、重油の流量を調整する。液体燃料流量調整弁9は、弁の開度を任意の開度に変更可能なエア駆動弁または電動弁等である。液体燃料流量調整弁9は、液体燃料遮断弁8の下流側に接続されている。
【0046】
ボイラ10は、燃料の燃焼による熱によって水を温めて温水または蒸気を発生させる。ボイラ10は、BOG燃料と重油との両方の燃料を燃焼可能なデュアルフューエルバーナを有するボイラである。ボイラ10は、BOG燃料、BOG燃料と重油との混合燃料、及び重油の燃焼を可能に構成されている。ボイラ10は、水を被加熱媒体として燃焼で発生した熱を回収し、温水または蒸気を発生させ、熱媒体ライン10aを通じて温水または蒸気を前記船舶の船内に供給する。ボイラ10は、排気ライン15を通じて排ガスを船外に排気する。
【0047】
なお、ボイラ10は、前記船舶の主機関への動力の供給に使用されない補助ボイラである。よって、ボイラ10の燃焼量の変動が前記主機関の運転に直接影響することが無い。ボイラ10は、例えば、蒸気圧力が約0.3MPaから1.0MPa程度のボイラである。好ましくは、ボイラ10は、蒸気圧力が約0.5MPaから0.7MPa程度のボイラである。ボイラ10で発生させた蒸気は、熱媒体ライン10aを通して前記船舶の蒸気使用機器(液体燃料・積み荷の加熱、洗浄用等の温水供給、バイナリ発電システムの熱源、蒸気タービン発電機の蒸気供給)等に供給され、その後復水器等によって復水される。ボイラ10は、フリーフローライン2Aを流れるBOG燃料の流量に応じた燃焼処理量でBOG燃料を直接燃焼処理することができる。
【0048】
また、熱媒体ライン10aは、余剰蒸気処理部10bを有している。余剰蒸気処理部10bは、ボイラ10内の余剰蒸気を図示しない復水器に排出する。ボイラ10内の余剰蒸気は、ボイラ10の制御モードに応じた開弁圧力の余剰蒸気処理部10bによって復水器に排出される。
【0049】
また、熱媒体ライン10aは、余剰蒸気処理部10bを有している。余剰蒸気処理部10bは、ボイラ10内の余剰蒸気を図示しない復水器に排出する。余剰蒸気処理部10bは、ボイラ10の燃焼停止圧力Pwsよりも高い開弁圧力の余剰蒸気処理部(図示せず)と燃焼停止圧力Pwsよりも低い開弁圧力の余剰蒸気処理部(図示せず)とから構成される。また、余剰蒸気処理部10bは、それぞれ所定の圧力を超えると蒸気を排出する余剰蒸気処理弁とモータバルブ等の流路を開閉する弁とを含んでいる。
【0050】
例えば、ボイラ10の燃焼停止圧力Pwsが0.7MPaである場合、低い開弁圧力の余剰蒸気処理部に含まれる余剰蒸気処理弁の開弁圧力を0.65MPaに設定し、高い開弁圧力の余剰蒸気処理部に含まれる余剰蒸気処理弁の開弁圧力を0.75MPaに設定する。ボイラ10で発生させた蒸気の蒸気圧力Pwを任意に設定された所定の蒸気圧力Pwtに維持する蒸気圧力優先制御モードM1において、制御部20は、余剰蒸気処理部10bにおける高い開弁圧力の余剰蒸気処理部に蒸気を流通させることで、蒸気圧力Pwが燃焼停止圧力Pwsよりも高い0.75MPaに到達するまで蒸気を復水器に排出させない。よって、ボイラ10は、発生させた蒸気の蒸気圧力Pwが0.75MPaよりも低い燃焼停止圧力Pwsに到達すると燃焼を停止する。また、ボイラ10でBOG燃料を燃焼処理させるBOG燃焼制御モードM2において、制御部20は、余剰蒸気処理部10bにおける低い開弁圧力の余剰蒸気処理部に蒸気を流通させることで、蒸気圧力Pwが燃焼停止圧力Pwsよりも低い0.65MPaに到達すると蒸気を復水器に排出させる。よって、ボイラ10は、発生させた蒸気の蒸気圧力Pwが0.65MPaよりも高い燃焼停止圧力Pwsに到達しないので燃焼を継続する。
【0051】
空気流量調整部12は、ボイラ10に供給される燃焼用空気の流量を調整する空気ダンパ等である。空気流量調整部12は、ボイラ10に燃焼用空気を供給する空気供給ライン11に位置している。空気流量調整部12である空気ダンパは、モータ等のアクチュエータにより開閉板を任意の開度に調整可能である。また、燃焼用空気の流量調整は、燃焼用空気送風機のモータ回転数をインバータ(図示せず)によって調整してもよく、また、前記空気ダンパのダンパ開度調整と前記燃焼用空気送風機のモータ回転数調整とを組み合わせてもよい。
【0052】
BOG圧力検知部13は、BOG燃料の圧力であるBOG圧力Pbを検知するセンサである。BOG圧力検知部13は、気体燃料流量調整部3の上流側に位置している。BOG圧力検知部13は、BOG供給ライン2B内のBOG圧力Pbを検知可能である。BOG圧力検知部13は、BOG供給ライン2BにおけるBOG圧力Pbの変動を定量的に検知することができれば、BOG供給ライン2Bの上流側近傍のフリーフローライン2Aに位置してもよい。
【0053】
蒸気圧力検知部14は、ボイラ10で発生させた蒸気の圧力である蒸気圧力Pwを検知するセンサである。蒸気圧力検知部14は、例えば、ボイラ10が有する図示しない缶体に接続されている。蒸気圧力検知部14は、ボイラ10の缶体内の蒸気圧力Pwを検知する。
【0054】
酸素濃度検知部16は、ボイラ10の排気に含まれる酸素濃度Coを検出するセンサである。酸素濃度検知部16は、ボイラ10の排気を排出する排気ライン15に位置している。
【0055】
モード設定部19は、ボイラシステム1の制御モードを切り替える。モード設定部19は、ボイラシステム1が有する複数の制御モードからオペレータが任意の制御モードを設定可能である。
【0056】
更に、モード設定部19は、ボイラシステム1の燃焼モードを切り替える。モード設定部19は、各制御モードに設定されている少なくとも一つの燃焼モード燃焼モードからオペレータが所定の燃焼モードを設定可能に構成されている。モード設定部19は、液体燃料燃焼モードMa、気体燃料燃焼モードMb及び混焼モードMcのうちいずれか一つの燃焼モードを設定可能に構成されている。また、モード設定部19は、制御モードが設定されると共に所定の燃焼モードが設定され、一定の条件が満たされると別の燃焼モードに切り替わる自動制御とすることもできる。
【0057】
制御部20は、気体燃料流量調整部3、液体燃料流量調整部7、ボイラ10及び空気流量調整部12等を制御する制御装置である。制御部20は、記憶部21を有する。また、制御部20は、BOG圧力検知部13、蒸気圧力検知部14及び酸素濃度検知部16等が検知するデータを取得可能である。
【0058】
記憶部21は、気体燃料流量調整部3、液体燃料流量調整部7、ボイラ10及び空気流量調整部12の動作等を制御したり、BOG圧力検知部13、蒸気圧力検知部14及び酸素濃度検知部16等の検知データを取得したりするために種々のプログラムおよびデータが格納されている。記憶部21は、モード設定部19において設定可能な各制御モードおよび燃焼モードに関連する情報を記憶可能である。記憶部21は、BOG燃焼制御モードM2に関連する情報を記憶するBOG燃焼制御モード記憶部212及び空気比制御モードM3に関連する情報を記憶する空気比制御モード記憶部213を有する。また、記憶部21は、気体燃料燃焼モードMbに関連する情報を記憶する気体燃料燃焼モード記憶部21b及び混焼モードMcに関連する情報を記憶する混焼モード記憶部21cを有する。
【0059】
記憶部21は、各制御モード記憶部及び各燃焼モード記憶部において、所定の蒸気圧力Pwt及び所定のBOG圧力Pbt等の各種設定値を記憶している。記憶部21は、気体燃料燃焼モードMb及び混焼モードMcにおける所定の酸素濃度Cotを、気体燃料燃焼モード記憶部21b及び混焼モード記憶部21cにおいて記憶している。なお、各燃焼モードにおける所定の酸素濃度Cotは、ボイラ10の燃焼ステージに応じた所定の酸素濃度Cot(例えば、高燃焼時と低燃焼時とにおいてそれぞれ異なる所定の酸素濃度Cot)が設定されてもよい。
【0060】
制御部20は、気体燃料遮断弁4B、気体燃料流量調整弁5、液体燃料遮断弁8、液体燃料流量調整弁9、余剰蒸気処理部10bを構成する弁、空気流量調整部12に電気的に接続されている。制御部20は、気体燃料遮断弁4B、気体燃料流量調整弁5、液体燃料遮断弁8、液体燃料流量調整弁9及び余剰蒸気処理部10b、または弁がエア駆動弁である場合は該弁にエアを供給するそれぞれの電磁弁等に制御信号を送信可能である。制御部20は、空気流量調整部12に対して例えば前記空気ダンパのダンパ開度を変更する制御信号を送信可能である。
【0061】
制御部20は、ボイラ10に電気的に接続されている。制御部20は、ボイラ10の稼働状態を検知し、ボイラ10を制御するための各種測定データ及び制御信号を送受信可能である。また、制御部20は、余剰蒸気処理部10bがそれぞれ所定の圧力を超えると蒸気を排出する余剰蒸気処理弁とモータバルブでの流路を開閉する弁とを含んでいる場合、モータバルブを制御する信号を送信可能である。
【0062】
制御部20は、BOG圧力検知部13、蒸気圧力検知部14及び酸素濃度検知部16に電気的に接続されている。制御部20は、BOG圧力検知部13が検知したBOG圧力Pb、蒸気圧力検知部14が検知した蒸気圧力Pw及び酸素濃度検知部16が検知したボイラ10の排ガスに含まれる酸素濃度Coを取得可能である。
【0063】
制御部20は、酸素濃度検知部16が検知したボイラ10の排ガスの酸素濃度Co、空気流量調整部12の調整量、気体燃料流量調整部3の調整量及び液体燃料流量調整部7の調整量が単位時間毎に入力される。制御部20は、酸素濃度検知部16が検知したボイラ10の排ガスに含まれる酸素濃度Coに基づいて、酸素濃度Coが所定の酸素濃度Cotになるように、空気流量調整部12に対して前記空気ダンパのダンパ開度を変更する制御信号を送信可能である。
【0064】
制御部20は、モード設定部19に電気的に接続されている。制御部20は、モード設定部19が出力した制御モードに関連する制御信号を取得可能である。制御部20は、BOG燃焼制御モードM2に関連する制御信号または空気比制御モードM3に関連する制御信号を取得すると、BOG燃焼制御モード記憶部212または空気比制御モード記憶部213が記憶している制御モードに関連する情報に基づいて、気体燃料流量調整部3、液体燃料流量調整部7、ボイラ10及び空気流量調整部12に対して所定の制御信号を送信する。
【0065】
制御部20は、窒素供給部Vに電気的に接続されている。制御部22は、窒素供給部Vに開閉弁の開閉状態に関連する信号を受信可能である。
【0066】
次に、ボイラシステム1におけるBOG燃焼制御モードM2及び空気比制御モードM3について説明する。
図2は、ボイラシステム1における制御モードを示すブロック図である。なお、BOG供給ライン2Bへの余剰のBOG燃料の流入は、BOG燃料の発生量の変動を伴って継続しているものとする。
【0067】
図1または
図2に示すように、本実施形態において、モード設定部19は、BOG燃焼制御モードM2または空気比制御モードM3を設定し、制御部20に対して各制御モードに関連する制御信号を出力可能である。また、モード設定部19は、気体燃料燃焼モードMbに関連する制御信号または混焼モードMcに関連する制御信号を切り替え、制御部20に対して各燃焼モードに関連する制御信号を出力可能である。
【0068】
BOG燃焼制御モードM2は、ボイラ10におけるBOG燃料の燃焼処理を優先する制御モードである。ボイラシステム1は、BOG燃焼制御モードM2において、BOG圧力Pbが所定のBOG圧力Pbt以上の場合、BOG燃料をボイラ10に供給し、BOG燃料のみをボイラ10で燃焼処理させる気体燃料燃焼モードMbでBOG燃料を燃焼処理する。ボイラ10は、発生させた蒸気を船内に供給する。このように構成されるボイラシステム1は、BOG圧力Pbを低下させることが必要な場合、BOG燃焼制御モードM2において、BOG燃料のみの燃焼を行い燃焼能力の上限まで燃焼量を大きくすることができる。
【0069】
制御部20は、オペレータがモード設定部19によってBOG燃焼制御モードM2を設定した場合、BOG燃焼制御モード記憶部212が記憶しているBOG燃焼制御モードM2に関連する情報に基づいて、ボイラ10においてBOG燃料を燃焼処理するように制御する。制御部20は、BOG圧力Pbを取得し、BOG圧力Pbが所定のBOG圧力Pbt以上の場合、気体燃料燃焼モード記憶部21bが記憶している気体燃料燃焼モードMbに関連する情報に基づいて、気体燃料遮断弁4Bを開放し且つボイラ10におけるBOG燃料の燃焼量が所定燃焼量になるように、気体燃料流量調整弁5を調整する。また、制御部20は、重油がボイラ10に供給されないように液体燃料遮断弁8を閉止する。制御部20は、BOG圧力Pbが所定のBOG圧力Pbt未満の場合、気体燃料流量調整部3によって、ボイラ10に対するBOG燃料の供給を停止する(
図1参照)。
【0070】
制御部20は、蒸気圧力Pwを取得する。制御部20は、BOG燃焼制御モードM2において、所定の蒸気圧力Pwtよりも高く燃焼停止圧力Pwsより低い余剰蒸気排出圧力に達した場合、余剰蒸気処理部10bを構成する燃焼停止圧力Pwsよりも低い開弁圧力の余剰蒸気処理部の余剰蒸気処理弁を開き、蒸気圧力Pwを燃焼停止圧力Pws未満に維持し、BOG燃料の燃焼処理を継続する(
図1参照)。
【0071】
また、制御部20は、気体燃料流量調整部3によるBOG燃料の供給量が適切に調整できないBOG供給異常の場合、BOG燃料がボイラ10に供給されないように気体燃料遮断弁4Bを閉止する(
図1参照)。
【0072】
空気比制御モードM3は、液化ガス貯蔵タンクT1に窒素パージが実施された際、または窒素が充填された液化ガス貯蔵タンクT1にLNG充填が実施された際、液化ガス貯蔵タンクT1から排出される窒素混合BOG燃料の窒素混合率が大きく変動する場合に(例えば、窒素混合率10%から90%或いは実質的に0%から100%の間で変動)、窒素混合BOG燃料を燃焼処理する制御モードである(
図1参照)。ボイラシステム1は、空気比制御モードM3において、重油の燃焼により窒素混合BOG燃料の燃焼を支燃すると共に、排ガスの酸素濃度Coを所定濃度に制御することでBOG燃料に窒素が混合し過剰供給になった燃焼用空気を燃焼の適正範囲に調整する。
【0073】
ボイラシステム1は、空気比制御モードM3において、重油の供給量を所定値に維持しつつ、重油と窒素混合BOG燃料(例えば、重油を最大燃焼量の20%に固定、窒素混合BOG燃料を最大で最大燃焼量の80%)をボイラ10に供給し、両方の燃料を混焼させる混焼モードMcで窒素混合BOG燃料を燃焼処理可能である。混焼モードMcは、重油の燃焼により窒素混合BOG燃料の燃焼が支燃されるため窒素混合割合が高い場合でも燃焼を維持できる。さらに、混焼モードMcは、燃焼空気比が適正範囲に維持されるので燃焼を安定化できると共に、ボイラ効率の低下を抑制できる。
【0074】
制御部20は、オペレータがモード設定部19によって空気比制御モードM3を設定した場合、空気比制御モード記憶部213が記憶している空気比制御モードM3に関連する情報に基づいて、ボイラ10において窒素混合BOG燃料と重油とを燃焼処理するように制御する。制御部20は、混焼モード記憶部21cが記憶している混焼モードMcに関連する情報に基づいて、ボイラ10に窒素混合BOG燃料が供給されるように気体燃料遮断弁4Bを開放し且つ気体燃料流量調整弁5を調整する(
図1参照)。更に、制御部20は、重油がボイラ10に供給されるように液体燃料遮断弁8を開放し且つ液体燃料流量調整部7を調整する。つまり、制御部20は、ボイラ10にBOG燃料と重油とが供給されるように気体燃料流量調整部3と液体燃料流量調整部7とを調整する(
図1参照)。
【0075】
制御部20は、酸素濃度検知部16が検知したボイラ10の排ガスの酸素濃度Coを含む排ガスの酸素濃度情報を取得する。制御部20は、排ガスの酸素濃度Coが所定の酸素濃度Cotになるように空気流量調整部12を制御する。制御部20は、酸素濃度検知部16が検知した排ガスの酸素濃度Coが所定の酸素濃度Cot以上の場合、空気流量調整部12に対してボイラ10に供給される燃焼用空気の流量を減少させる制御信号を送信する。一方、制御部20は、排ガスの酸素濃度Coが所定の酸素濃度Cot未満の場合、空気流量調整部12に対してボイラ10に供給される燃焼用空気の流量を増加させる制御信号を送信する。また、制御部20は、排ガスの酸素濃度Coが所定の酸素濃度Cotである場合、空気流量調整部12に対して燃焼用空気の流量を維持する制御信号を送信する。
【0076】
ボイラシステム1は、空気比制御モードM3において、重油の燃焼により窒素混合BOG燃料の燃焼を支燃すると共に、排ガスの酸素濃度Coを所定濃度に制御することでBOG燃料に窒素が混合し過剰供給になった燃焼用空気を燃焼の適正範囲に調整できる。つまり、空気比制御モードM3は、BOG燃料に窒素が混合した大きな組成変化(大きなカロリー変化)が有る場合のBOG燃料の燃焼処理に特に効果を発揮する制御モードである。
【0077】
このように、ボイラシステム1は、BOG燃焼制御モードM2及び空気比制御モードM3を切り替えることで、船内の蒸気使用量、窒素パージによる窒素混合BOG燃料の窒素混合率が変動しても、適切な制御モードによって窒素混合BOG燃料の燃焼処理及び船内の要求に応じた蒸気供給が可能である。
【0078】
次に
図1と
図3とを用いて、本発明の実施形態1に係るボイラシステム1の変形例について説明する。
図3は、ボイラシステム1の変形例におけるBOG燃焼制御モードを示すブロック図である。
【0079】
図1に示すように、制御部20は、モード設定部19によってBOG燃焼制御モードM2が設定された場合、酸素濃度検知部16によって検知されるボイラ10の排ガスの酸素濃度Coが所定の酸素濃度Cotになるように、空気流量調整部12を調整するように制御してもよい。
【0080】
図1または
図3に示すように、制御部20は、所定の組成(例えば、メタン、エタン、などの混合割合)を有するBOG燃料がボイラ10に供給された際の排ガスの酸素濃度Coが所定の酸素濃度Cotになるように、BOG燃料の供給量に対する空気流量調整部12の調整量に関連する情報を気体燃料燃焼モード記憶部21bにおいて記憶している(
図1参照)。
【0081】
制御部20は、ボイラ10の排ガスの酸素濃度Coが所定の酸素濃度Cotよりも高い場合、所定の組成を有するBOG燃料よりも少ない燃焼用空気量で燃焼する組成のBOG燃料、またはBOG燃料中のBOG濃度が低いと判定して燃焼用空気の流量が減少するように空気流量調整部12を調整する。制御部20は、排ガスの酸素濃度Coが所定の酸素濃度Cotよりも低い場合、所定の組成を有するBOG燃料よりも多い燃焼用空気量で燃焼する組成のBOG燃料、またはBOG燃料中のBOG濃度が高いと判定して燃焼用空気の流量が増加するように空気流量調整部12を調整する。
【0082】
このように構成されるボイラシステム1は、BOG燃焼制御モードM2において、ボイラ10に供給するBOG燃料の組成またはBOG濃度に応じてボイラ10に供給する空気流量を調整可能である。これにより、BOGを含む気体燃料中のBOG濃度及びBOG燃料の組成が変化しても安定した燃焼処理が可能なボイラシステムを実現することができる。
【0083】
(実施形態2)
次に、
図4及び
図5を用いて、本発明の実施形態2に係るボイラシステム1Aについて説明する。以下の説明において、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる部分についてのみ説明する。
図4は、本発明の実施形態2に係るボイラシステム1Aを含むBOG処理システム100の概略構成図である。
図5は、ボイラシステム1Aにおける空気比制御モードM3を示すブロック図である。
【0084】
ボイラシステム1Aは、空気比制御モードM3において、窒素混合BOG燃料の窒素混合率Cnに基づいて、気体燃料燃焼モードMbまたは混焼モードMcを設定するように構成されている。
【0085】
図4に示すように、ボイラシステム1Aは、制御部22を有する。制御部22は、不活性ガス混合判定部である窒素混合判定部23を有する。窒素混合判定部23は、空気流量調整部12の調整により所定の空気比で燃焼する制御が行われている場合、燃料供給量と燃焼用空気量と窒素混合率Cnとの関係に基づいて、ボイラ10に供給されている窒素混合BOG燃料における窒素混合率Cnを算出する。窒素混合判定部23は、窒素の混合程度として、ボイラ10に供給されている窒素混合BOG燃料の窒素混合率Cnが所定の窒素混合率Cnt以上であるか否か判定する。
【0086】
記憶部21には、窒素混合判定部23が、例えば空気流量調整部12の調整量、気体燃料流量調整部3の調整量及び液体燃料流量調整部7の調整量に基づいてボイラ10に供給されている窒素混合BOG燃料の窒素混合率Cnを算出するために種々のプログラムおよびデータが格納されている。
【0087】
制御部22は、酸素濃度検知部16の検出結果に基づいて排ガスの酸素濃度Coが所定の酸素濃度Cot(
図5参照)になるように空気流量調整部12を調整可能である。制御部22は、所定の空気比で燃焼する場合の空気流量調整部12の調整量、気体燃料流量調整部3の調整量及び液体燃料流量調整部7の調整量に基づいて、窒素混合判定部23によって窒素混合BOG燃料の窒素混合率Cnを算出する。窒素混合判定部23は、窒素濃度を検出する窒素混合検出部24(窒素センサ或いはガス熱量計、ガス密度計など(
図4参照))の検出結果に基づいてBOG燃料の窒素混合率Cnを算出してもよい。
【0088】
図4または
図5に示すように、制御部22は、空気比制御モードM3において、窒素混合判定部23によって算出した窒素混合BOG燃料における窒素の混合程度に基づいて燃焼モードを切り替え可能である。つまり、制御部22は、窒素混合BOG燃料の窒素混合率Cnが所定の窒素混合率Cntより小さい場合、窒素混合BOG燃料を気体燃料燃焼モードMbで燃焼させる。また、制御部22は、窒素混合BOG燃料の窒素混合率Cnが所定の窒素混合率Cnt以上の場合、窒素混合BOG燃料を混焼モードMcで燃焼させる。
【0089】
オペレータまたは制御部22がモード設定部19によって空気比制御モードM3を設定した場合、制御部22は、空気比制御モード記憶部213が記憶している空気比制御モードM3に関連する情報に基づいて、混焼モードMcによる制御を開始する。制御部22は、例えば窒素が充填された液化ガス貯蔵タンクT1にLNG充填が実施されたことで、窒素混合率Cnが所定の窒素混合率Cnt未満になった場合、燃焼モードを気体燃料燃焼モードMbに切り替える。また、制御部22は、気体燃料燃焼モードMbにおいて、例えば液化ガス貯蔵タンクT1に窒素パージが実施されたことで、窒素混合率Cnが所定の窒素混合率Cnt以上になった場合、燃焼モードを混焼モードMcに切り替える。
【0090】
このように構成されるボイラシステム1Aは、窒素混合率Cnに基づいて窒素混合BOG燃料のみで安定した燃焼が可能である場合、窒素混合BOG燃料のみを燃焼する。また、ボイラシステム1Aは、窒素混合率Cnに基づいて窒素混合BOG燃料のみで安定した燃焼処理が難しい場合、窒素混合BOG燃料に加えて重油を燃焼する。よって、ボイラシステム1Aは、重油の消費量を抑制するとともに窒素混合BOG燃料の燃焼処理量を増やし、窒素混合BOG燃料の燃焼処理時間を短縮できる。これにより、窒素混合BOG燃料のBOG濃度が変化しても効率的な燃焼処理が可能なボイラシステム1Aを実現することができる。
【0091】
ここでは、空気比制御モードM3において、制御部22が混焼モードMcと気体燃料燃焼モードMbに切り替える場合を示したが、混焼モードMcと気体燃料燃焼モードMbとの切換えはオペレータにより行われてもよい。例えば、モード設定部19に両モードを切換える切換え部を設けてもよい。
【0092】
次に
図2及び
図4を用いて、本発明の実施形態2に係るボイラシステム1Aの変形例について説明する。ボイラシステム1Aは、BOG燃料の窒素混合率Cnに基づいて、BOG燃焼制御モードM2から空気比制御モードM3に切り替えるように構成されてもよい。
【0093】
制御部22は、窒素混合判定部23によって、ボイラ10に供給されている窒素混合BOG燃料の窒素混合率Cnが所定の窒素混合率Cnt以上であるか否か単位時間毎に判定する。
【0094】
制御部22は、BOG燃焼制御モードM2において、BOGを含む気体燃料の窒素の窒素混合率Cnが所定の窒素混合率Cnt以上であると判定した場合、制御モードを空気比制御モードM3に切り替えるとともに燃焼モードを混焼モードMcに切り替える。制御部22は、ボイラ10に窒素混合BOG燃料と重油とが供給されるように気体燃料流量調整部3と液体燃料流量調整部7とを調整する。ボイラシステム1Aは、窒素混合BOG燃料中の窒素混合率Cnが所定値以上の場合に重油による支燃を行う。これにより、窒素混合BOG燃料中のBOG濃度が低下しても安定した燃焼処理を行うことができる。
【0095】
制御部22は、空気比制御モードM3において、窒素混合判定部23によって、算出した窒素混合BOG燃料の窒素混合率Cnが所定の窒素混合率Cnt未満であると判定した場合、空気比制御モードM3において、燃焼モードを気体燃料燃焼モードMbに切り替えてもよい。制御部22は、ボイラ10に窒素混合BOG燃料が供給されるように気体燃料流量調整部3と液体燃料流量調整部7とを調整する。ボイラシステム1Aは、窒素混合BOG燃料中の窒素混合率Cnが所定値未満の場合に窒素混合BOG燃料のみの燃焼を行う。これにより、重油の消費量を抑制するとともに窒素混合BOG燃料の燃焼処理量を増やし、窒素混合BOG燃料の燃焼処理時間を短縮できる。
【0096】
(実施形態3)
次に、
図6を用いて、本発明の実施形態3に係るボイラシステム1Bについて説明する。以下の説明において、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる部分についてのみ説明する。
図6は、本発明の実施形態3に係るボイラシステム1Bにおける空気比制御モードM3を示すブロック図である。
【0097】
図6に示すように、ボイラシステム1Bは、オペレータにより、モード設定部19において空気比制御モードM3が設定された場合、不活性ガス増加燃焼制御モードである窒素増加燃焼制御モードM4及びBOG増加燃焼制御モードM5のいずれか一つの制御モードを設定可能に有する。窒素増加燃焼制御モードM4は、窒素混合BOG燃料のみによってボイラ10のメイン燃焼を開始する。一方、BOG増加燃焼制御モードM5は、窒素混合BOG燃料と重油との両方によってボイラ10のメイン燃焼を開始する。
【0098】
窒素増加燃焼制御モードM4では、窒素混合BOG燃料のみをボイラ10に供給してメイン燃焼を開始する。BOG増加燃焼制御モードM5では、窒素混合BOG燃料と重油との両方をボイラ10に供給してメイン燃焼を開始する。その後は、窒素混合BOG燃料の窒素混合率Cnに基づいて、気体燃料燃焼モードMbまたは混焼モードMcが設定される。
【0099】
窒素増加燃焼制御モードM4は、例えば、液化ガス貯蔵タンクT1への窒素パージにより窒素混合率Cnの増加が想定される状態において、窒素混合BOG燃料における窒素混合率Cnが所定の窒素混合率Cnt未満の場合、ボイラ10における窒素混合BOG燃料の燃焼処理量をより増大させる制御モードである。一方、BOG増加燃焼制御モードM5は、例えば、窒素パージによって窒素に置換された液化ガス貯蔵タンクT1へのLNGの供給によって窒素混合率Cnの減少が想定される状態において、窒素混合BOG燃料における窒素混合率Cnが所定の窒素混合率Cnt以上の場合、ボイラ10のメイン燃焼の開始をより安定させる制御モードである。
【0100】
このように構成されるボイラシステム1Bは、空気比制御モードM3において、オペレータが設定した窒素増加燃焼制御モードM4またはBOG増加燃焼制御モードM5による制御を実行することで、ボイラ10のメイン燃焼を開始する際に想定される窒素混合BOG燃料における窒素混合率Cnの変化に応じた燃料処理を行うことができる。これにより、窒素混合BOG燃料中のBOG濃度が変化しても安定した燃焼処理が可能なボイラシステム1Bを実現することができる。
【0101】
(実施形態4)
次に、
図7を用いて、本発明の実施形態4に係るボイラシステム1Cについて説明する。以下の説明において、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる部分についてのみ説明する。
図7は、本発明の実施形態4に係るボイラシステム1Cの変形例における制御モードを示すブロック図である。
【0102】
図7に示すように、ボイラシステム1Cは、BOG燃焼制御モードM2及び空気比制御モードM3に加えて、蒸気圧力優先制御モードM1を設定可能に構成される。
【0103】
ボイラシステム1Cの制御モードを切り替えるモード設定部25は、蒸気圧力優先制御モードM1、BOG燃焼制御モードM2及び空気比制御モードM3のうちいずれか一つを設定可能である。モード設定部25は、蒸気圧力優先制御モードM1、BOG燃焼制御モードM2及び空気比制御モードM3に関連する制御信号を制御部26に対して出力可能である。
【0104】
モード設定部25は、液体燃料燃焼モードMa、気体燃料燃焼モードMbまたは混焼モードMcのうちいずれか一つの燃焼モードを設定可能に構成されている。
【0105】
モード設定部25は、液体燃料燃焼モードMaと混焼モードMcとを相互に切り替え可能に構成されている。モード設定部25は、液体燃料燃焼モードMaに関連する制御信号、気体燃料燃焼モードMbに関連する制御信号または混焼モードMcに関連する制御信号を制御部26に対して出力可能に構成される。
【0106】
記憶部21は、蒸気圧力優先制御モードM1に関連する情報を記憶する蒸気圧力優先制御モード記憶部211及び液体燃料燃焼モードMaに関連する情報を記憶する液体燃料燃焼モード記憶部21aをさらに有する(
図4参照)。
【0107】
制御部26は、蒸気圧力優先制御モード記憶部211が記憶している制御モードに関連する情報に基づいて、気体燃料流量調整部3、液体燃料流量調整部7、ボイラ10及び空気流量調整部12に対して所定の制御信号を送信する。また、制御部26は、各記憶部に記憶されている各燃焼モードに関連する情報に基づいて気体燃料流量調整部3、液体燃料流量調整部7、ボイラ10及び空気流量調整部12に対して所定の制御信号を送信する。
【0108】
次に、ボイラシステム1Cにおける、蒸気圧力優先制御モードM1について説明する。
【0109】
蒸気圧力優先制御モードM1は、ボイラ10における蒸気の発生を優先する制御モードである。ボイラシステム1Cは、蒸気圧力優先制御モードM1において、船内からの要求に応じてボイラ10が発生した蒸気を船内に供給しつつ、ボイラ10の蒸気圧力Pwを所定の蒸気圧力Pwtに維持するように蒸気を発生させるようにBOG燃料を燃焼処理する。つまり、蒸気圧力優先制御モードM1は、船内からの要求に応じた蒸気を安定して船内に供給することを優先する制御モードである。
【0110】
ボイラシステム1Cは、BOG燃焼制御モードM2および空気比制御モードM3に加えて、液体燃料燃焼モードMa、気体燃料燃焼モードMbまたは混焼モードMcにおいて蒸気供給を優先させる蒸気圧力優先制御モードM1を含めて構成されている。
【0111】
このように構成されるボイラシステム1Cは、蒸気供給が必要な場合、蒸気圧力優先制御モードM1において蒸気圧力Pwを所定の蒸気圧力Pwtに維持しつつ、BOG燃料を燃焼することができる。一方、ボイラシステム1Cは、蒸気供給よりもBOG燃料の燃焼処理を優先させる場合、BOG燃焼制御モードM2または空気比制御モードM3においてBOG燃料の燃焼量を増加することができる。これにより、蒸気供給を優先させる場合にも対応したボイラシステムを実現することができる。
【0112】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0113】
上述の各実施形態において、BOG供給ライン2Bは、BOG圧力検知部13が余剰のBOG圧力Pbを速やかに検出できる構成であれば、圧力調整弁等を有していてもよく、BOG燃料または窒素混合BOG燃料の圧力値への影響が小さい分岐等を有してもよい。
【0114】
上述の各実施形態において、BOG圧力検知部13は、圧力値への換算可能な物理量を検出するものであればよい。例えばBOGの流量は、所定の条件を設定することでBOG圧力に換算することができる。
【0115】
上述の各実施形態において、ボイラシステム1、1A、1B、1Cは、BOG燃焼制御モードM2において、ボイラにおけるBOG燃料の燃焼量が所定燃焼量になるように、気体燃料流量調整弁5を調整する。この際、ボイラ10において燃焼されるBOG燃料の前記所定燃焼量は、オペレータが任意に設定した燃焼量でもよい。
【0116】
上述の各実施形態において、気体燃料流量調整部3は、気体燃料流量調整弁5が気体燃料遮断弁4Bの上流側に位置していてもよい。
【0117】
上述の各実施形態において、液体燃料流量調整部7は、液体燃料流量調整弁9が液体燃料遮断弁8の上流側に位置していてもよい。
【0118】
上述の各実施形態において、ボイラ10は、BOG及び重油以外の燃料を燃焼可能なボイラでもよい。例えば、主機Eg用の液化ガスの気化装置H(
図1参照)を備えた船舶において、ボイラ10は気化装置Hでガス化した燃料を燃焼しても良い。
【0119】
上述の各実施形態において、BOG圧力検知部13は、気体燃料流量調整部3の上流側に位置していればよい。
【0120】
上述の各実施形態において、気体燃料流量調整弁5及び液体燃料流量調整弁9は、電磁弁、エア駆動弁等の任意の動力によって駆動するアクチュエータを有する弁であればよい。
【0121】
上述の各実施形態において、ボイラシステム1、1A、1B、1Cは、窒素等の不活性ガスの濃度または不活性ガスの流量を検知する不活性ガス検知部の値に基づいて空気流量調整部12を調整してもよい。
【0122】
上述の各実施形態において、ボイラシステム1、1A、1B、1Cは、蒸気圧力優先制御モードM1において、燃焼モードを蒸気圧力Pw、BOG圧力Pbまたは供給される燃料の量等に基づいて自動的に切り替える構成でもよい。
【0123】
上述の各実施形態において、ボイラ10に供給されるBOG燃料の流量は、オペレータが任意に流量を設定できる構成でもよい。
【0124】
上述の各実施形態において、ボイラシステム1、1A、1B、1Cは、BOG圧力に基づいてBOG燃料の供給量を調整する構成でもよい。
【0125】
上述の各実施形態において、ボイラシステム1、1A、1B、1Cは、混焼モードMcにおいて、ボイラにBOG燃料におけるBOG濃度に基づいて重油の供給量を算出してもよい。
【0126】
上述の各実施形態において、ボイラシステム1、1A、1B、1Cは、空気比制御モードM3において、重油燃料(液体燃料)を所定燃焼量(例えばボイラの最大燃焼量の20%)に固定し、窒素混合BOG燃料を変動(例えばボイラの最大燃焼量の20%から80%)させてもよい。また、ボイラシステム1、1A、1B、1Cは、空気比制御モードM3において、重油(液体燃料)の燃焼量と窒素混合BOG燃料の燃焼量とを所定割合(例えば重油の燃焼量を全体の20%とし、窒素混合BOG燃料の燃焼量を全体の80%)に固定してもよい。
【0127】
上述の各実施形態において、不活性ガス混合判定部は、不活性ガスが含まれるBOG燃料における不活性ガスの混合程度を算出する構成であればよい。不活性ガス混合判定部は、例えばガス濃度計によって検知した不活性ガス濃度から不活性ガスの混合程度を算出する構成でもよい。また、不活性ガス混合判定部は、例えば不活性ガスを含むBOG燃料のガス密度から不活性ガスの混合程度を推定する構成でもよい。
【符号の説明】
【0128】
1、1A、1B、1C ボイラシステム
2A フリーフローライン
2B BOG供給ライン
3 気体燃料流量調整部
4A 減圧弁
4B 気体燃料遮断弁
5 気体燃料流量調整弁
6 液体燃料供給ライン
7 液体燃料流量調整部
8 液体燃料遮断弁
9 液体燃料流量調整弁
10 ボイラ
10a 熱媒体ライン
10b 余剰蒸気処理部
11 空気供給ライン
12 空気流量調整部
13 BOG圧力検知部
14 蒸気圧力検知部
15 排気ライン
16 酸素濃度検知部
19、25 モード設定部
20、22、26 制御部
21 記憶部
211 蒸気圧力優先制御モード記憶部
212 BOG燃焼制御モード記憶部
213 空気比制御モード記憶部
21a 液体燃料燃焼モード記憶部
21b 気体燃料燃焼モード記憶部
21c 混焼モード記憶部
23 窒素混合判定部
24 窒素混合検出部
100 BOG処理システム
T1 液化ガス貯蔵タンク
T2 液体燃料貯蔵タンク
T3 窒素貯蔵タンク
M1 蒸気圧力優先制御モード
M2 BOG燃焼制御モード
M3 空気比制御モード
M4 窒素増加燃焼制御モード
M5 BOG増加燃焼制御モード
Ma 液体燃料燃焼モード
Mb 気体燃料燃焼モード
Mc 混焼モード
Pb BOG圧力
Pbt 所定のBOG圧力
Pw 蒸気圧力
Pwt 所定の蒸気圧力
Pws 燃焼停止圧力
Co 酸素濃度
Cot 所定の酸素濃度
Cn 窒素混合率
Cnt 所定の窒素混合率