(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093888
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】合成スラブ
(51)【国際特許分類】
E04B 5/38 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
E04B5/38 Z
E04B5/38 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210523
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】藤田 有章
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 聡
(72)【発明者】
【氏名】桂 大輔
(72)【発明者】
【氏名】田原 健一
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 樹
(72)【発明者】
【氏名】松戸 正士
(72)【発明者】
【氏名】石井 勝
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 直美
(57)【要約】
【課題】鉄筋コンクリートスラブと木質面材との間のせん断力の伝達性能を向上させて、耐力及び剛性の向上を図ること。
【解決手段】合成スラブ101は、板厚方向に対向する上面31及び下面32を有する木質面材30と、木質面材30の上面31の上に積層された鉄筋コンクリートスラブ50と、を備え、木質面材30の第1面31には、鉄筋コンクリートスラブ50の主筋61が延在する方向と交差する第1方向に延び、第1方向と交差する第2方向に所定の間隔を置いて複数の第1スリット71が形成され、第1スリット71の内部に鉄筋コンクリートスラブ50のコンクリート51が充填されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板厚方向に対向する第1面及び第2面を有する木質面材と、
前記木質面材の前記第1面の上に積層された鉄筋コンクリートスラブと、を備え、
前記木質面材の前記第1面には、前記鉄筋コンクリートスラブの主筋が延在する方向と交差する第1方向に延び、前記第1方向と交差する第2方向に所定の間隔を置いて複数の第1スリットが形成され、
前記第1スリットの内部に前記鉄筋コンクリートスラブのコンクリートが充填されていることを特徴とする、合成スラブ。
【請求項2】
前記木質面材の前記第1面には、前記第2方向に延びる複数の第2スリットが形成され、
前記第2スリットの内部に前記鉄筋コンクリートスラブのコンクリートが充填されていることを特徴とする請求項1に記載の合成スラブ。
【請求項3】
前記第1スリット及び前記第2スリットの開口幅は、30mm以上、40mm以下
であることを特徴とする、請求項2に記載の合成スラブ。
【請求項4】
前記第1スリットは、底面と、幅方向に対向する一対の側壁と、を有し、
前記一対の側壁は、前記底面に対して傾斜し、
前記第1スリットの開口幅は、前記底面の幅よりも広いことを特徴とする、請求項1に記載の合成スラブ。
【請求項5】
前記第1スリットは、底面と、幅方向に対向する一対の側壁と、を有し、
前記一対の側壁は、前記底面に対して傾斜し、
前記第1スリットの開口幅は、前記底面の幅よりも狭いことを特徴とする、請求項1に記載の合成スラブ。
【請求項6】
前記第1スリットは、底面と、幅方向に対向する一対の側壁と、を有し、
前記一対の側壁は、
前記木質面材の板厚方向において、前記第1面に近い方に配置された第1側壁と、
前記第1側壁よりも前記底面に近い方に配置された第2側壁と、
前記第1側壁と前記第2側壁との間に配置され、前記板厚方向と交差する第3側壁と、を含み、
前記幅方向において、前記第1側壁同士の距離は、前記第2側壁同士の距離よりも近いことを特徴とする、請求項1に記載の合成スラブ。
【請求項7】
前記第1スリットの内部には、前記第1方向に延びる鉄筋が配筋されていることを特徴とする、請求項1に記載の合成スラブ。
【請求項8】
前記第1スリットは、前記第1方向において前記木質面材の全長にわたって連続していることを特徴とする、請求項1に記載の合成スラブ。
【請求項9】
前記第1方向は、前記主筋が延在する方向と直交する方向であり、
前記第2方向は、前記主筋が延在する方向であることを特徴とする、請求項2に記載の合成スラブ。
【請求項10】
前記第1方向は、前記主筋が延在する方向に対して45度で交差する方向であり、
前記第2方向は、前記第1方向に対して直交する方向であることを特徴とする、請求項2に記載の合成スラブ。
【請求項11】
前記底面は、
前記幅方向の中央に配置された第1底面と、
前記幅方向において、前記第1底面よりも外側に配置された一対の第2底面と、を有し、
前記一対の第2底面は、前記第1底面に対して傾斜していることを特徴とする、請求項5に記載の合成スラブ。
【請求項12】
前記底面は、
前記幅方向に並ぶ一対の第2底面を有し、
前記一対の第2底面は、水平面に対して傾斜していることを特徴とする、請求項5に記載の合成スラブ。
【請求項13】
前記底面は、
前記幅方向において、前記一対の側壁に近い方に配置された一対の第2底面と、
前記幅方向において、前記一対の第2底面よりも内側に配置された一対の第3底面と、
前記幅方向において、前記一対の第3底面よりも内側に配置された一対の第4底面と、を有し、
前記一対の第2底面、前記一対の第3底面、及び前記一対の第4底面は、水平面に対して傾斜し、
前記一対の第2底面のうち、前記幅方向における一方の第2底面は、前記一対の第4底面のうち、前記幅方向における他方の第4底面と同じ角度で傾斜する、請求項5に記載の合成スラブ。
【請求項14】
前記第1方向と交差する断面において、前記第1方向から前記第1スリットを見た場合に、前記第1スリットは、鉛直方向と交差する方向に延びる第1部分及び第2部分を有し、
前記第1部分の底面と、前記第2部分の底面とは、前記幅方向において離れていることを特徴とする、請求項1に記載の合成スラブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成スラブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鉄筋コンクリートと木材とを組み合わせた合成スラブが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の合成スラブは、上面に凹部が形成された木質版と、木質版の上面に設けられた鉄筋コンクリート版と、を備える。この合成スラブの木質版は、複数の板材の端面同士が突き合わされ、凹部は、端面同士が突き合わされた部位を跨ぐように形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術に係る合成スラブでは、複数の板材の端面同士が突き合わされた部分にのみに凹部が形成され、当該凹部は、主筋が延在する方向に沿って形成され、せん断力の伝達が十分ではなかった。
【0005】
本発明は、鉄筋コンクリートスラブと木質面材との間のせん断力の伝達性能を向上させて、耐力及び剛性の向上を図ることが可能な合成スラブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成すべく、本発明による合成スラブの一態様は、
板厚方向に対向する第1面及び第2面を有する木質面材と、
前記木質面材の前記第1面の上に積層された鉄筋コンクリートスラブと、を備え、
前記木質面材の前記第1面には、前記鉄筋コンクリートスラブの主筋が延在する方向と交差する第1方向に延び、前記第1方向と交差する第2方向に所定の間隔を置いて複数の第1スリットが形成され、
前記第1スリットの内部に前記鉄筋コンクリートスラブのコンクリートが充填されていることを特徴とする。
【0007】
本態様によれば、木質面材の第1面に、鉄筋コンクリートスラブの主筋が延在する方向と交差する第1方向に沿う複数の第1スリットが形成され、この第1スリットの内部にコンクリートが充填されていることにより、鉄筋コンクリートスラブと木質面材との間のせん断力の伝達性能を向上させることができる。また、主筋と交差する第1スリットの内部に充填されたコンクリートを介して、せん断力を伝達することができる。さらに、合成スラブにおける耐力及び剛性の向上を図ることができる。
【0008】
また、本発明の他の態様において、
前記木質面材の前記第1面には、前記第2方向に延びる複数の第2スリットが形成され、
前記第2スリットの内部に前記鉄筋コンクリートスラブのコンクリートが充填されていることを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、第1スリットと交差する方向に延びる複数の第2スリットが形成され、この第2スリットの内部にコンクリートが充填されていることにより、格子状にスリットが形成されることになるため、格子状のスリットに充填されたコンクリートによって合成スラブの耐力及び剛性が一層大きくなる。また、本態様の合成スラブによれば、第2スリットの内部に充填されたコンクリートを介して、第1スリットの内部に充填されたコンクリートとは異なる方向のせん断力を伝達することができる。
【0010】
また、本発明の他の態様において、
前記第1スリット及び前記第2スリットの開口幅は、15mm以上、100mm以下であることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、第1スリット及び第2スリットの開口幅が、30mm以上、40mm以下であることにより、木質面材の上にコンクリートを打設した際に、コンクリートの骨材が第1スリット及び第2スリットの内部に入り易くなり、コンクリートの充填性が向上する。さらに、本態様の合成スラブによれば、第1スリット及び第2スリットの内部に充填されたコンクリートの耐力及び剛性により、せん断力の伝達性能が向上するとともに、合成スラブの耐力及び剛性の向上を図ることができる。
【0012】
また、本発明の他の態様において、
前記第1スリットは、底面と、幅方向に対向する一対の側壁と、を有し、
前記一対の側壁は、前記底面に対して傾斜し、
前記第1スリットの開口幅は、前記底面の幅よりも広いことを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、木質面材の板厚方向において、第1面に近い方の開口幅は、底面に近い方の開口幅よりも広いことにより、第1スリットの加工がしやすい。また、第1面に近い方の開口幅が広いことにより、第1スリットの内部にコンクリートを充填しやすい。
【0014】
また、本発明の他の態様において、
前記第1スリットは、底面と、幅方向に対向する一対の側壁と、を有し、
前記一対の側壁は、前記底面に対して傾斜し、
前記第1スリットの開口幅は、前記底面の幅よりも狭いことを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、木質面材の板厚方向において、底面から第1面に近づくほど、一対の側壁同士が接近するように、側壁が傾斜することにより、側壁が斜め下方を向くように形成される。この構成の合成スラブによれば、コンクリートと木質面材が剥離することを防ぐことができる。
【0016】
また、本発明の他の態様において、
前記第1スリットは、底面と、幅方向に対向する一対の側壁と、を有し、
前記一対の側壁は、
前記木質面材の板厚方向において、前記第1面に近い方に配置された第1側壁と、
前記第1側壁よりも前記底面に近い方に配置された第2側壁と、
前記第1側壁と前記第2側壁との間に配置され、前記板厚方向と交差する第3側壁と、を含み、
前記幅方向において、前記第1側壁同士の距離は、前記第2側壁同士の距離よりも近いことを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、第1スリットの内部に充填されたコンクリートは、底面に近い部分において、第1面に近い部分よりも、幅方向に張り出すように形成される。この構成の合成スラブによれば、コンクリートと木質面材との密着度の向上を図り、せん断力の伝達性能の向上を図ることができる。
【0018】
また、本発明の他の態様において、
前記第1スリットの内部には、前記第1方向に延びる鉄筋が配筋されていることを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、第1スリットの内部に鉄筋が配筋されていることにより、第1スリットの内部に鉄筋コンクリート構造を形成できることから、コンクリートのみの場合と比べてせん断耐力やせん断力の伝達性能を向上させることができる。
【0020】
また、本発明の他の態様において、
前記第1スリットは、前記第1方向において前記木質面材の全長にわたって連続していることを特徴とする。
【0021】
この構成の合成スラブによれば、第1方向において、木質面材の全長にわたって第1スリットを形成することにより、第1スリットの長さを長くすることができ、第1スリットの長さが短い場合と比較して、せん断力の伝達性能の向上を図ることができる。また、第1スリットの長さが短い場合と比較して、複数の第1スリットの配置間隔を大きくすることができる。
【0022】
また、本発明の他の態様において、
前記第1方向は、前記主筋が延在する方向と直交する方向であり、
前記第2方向は、前記主筋が延在する方向であることを特徴とする。
【0023】
この構成の合成スラブによれば、第1スリットは、主筋が延在する方向と直交する方向に沿って配置され、第2スリットは、主筋が延在する方向に沿って配置される。この構成の合成スラブによれば、第1スリットに充填されたコンクリートによって、主筋が延在する方向に沿うせん断力を伝達することができ、第2スリットに充填されたコンクリートによって、主筋と交差する方向に沿うせん断力を伝達することができる。
【0024】
また、本発明の他の態様において、
前記第1方向は、前記主筋が延在する方向に対して45度で傾斜する方向であり、
前記第2方向は、前記第1方向に対して直交する方向であることを特徴とする。
【0025】
この構成の合成スラブによれば、主筋に対して45度で交差するように第1スリット及び第2スリットが配置されることにより、主筋に沿う方向のせん断応力を第1スリットの内部に充填されたコンクリート及び第2スリットの内部に充填されたコンクリートによって、均等に受けることができる。
【0026】
また、本発明の他の態様において、
前記底面は、
前記幅方向の中央に配置された第1底面と、
前記幅方向において、前記第1底面よりも外側に配置された一対の第2底面と、を有し、
前記一対の第2底面は、前記第1底面に対して傾斜していることを特徴とする。
【0027】
この構成の合成スラブによれば、第1底面及び当該第1底面に対して傾斜する一対の第2底面を有する第1スリットの内部に充填されたコンクリートによって、異なる方向の力を受けることができる。
【0028】
また、本発明の他の態様において、
前記底面は、
前記幅方向に並ぶ一対の第2底面を有し、
前記一対の第2底面は、水平面に対して傾斜していることを特徴とする。
【0029】
この構成の合成スラブによれば、水平面に対して傾斜する一対の第2底面を有する第1スリットの内部に充填されたコンクリートによって、異なる方向の力を受けることができる。
【0030】
また、本発明の他の態様において、
前記底面は、
前記幅方向において、前記一対の側壁に近い方に配置された一対の第2底面と、
前記幅方向において、前記一対の第2底面よりも内側に配置された一対の第3底面と、
前記幅方向において、前記一対の第3底面よりも内側に配置された一対の第4底面と、を有し、
前記一対の第2底面、前記一対の第3底面、及び前記一対の第4底面は、水平面に対して傾斜し、
前記一対の第2底面のうち、前記幅方向における一方の第2底面は、前記一対の第4底面のうち、前記幅方向における他方の第4底面と同じ角度で傾斜する。
【0031】
この構成の合成スラブによれば、水平面に対して傾斜する一対の第2底面、一対の第3底面、及び一対の第4底面を有する第1スリットの内部に充填されたコンクリートによって、異なる方向の力を受けることができる。
【0032】
また、本発明の他の態様では、
前記第1方向と交差する断面において、前記第1方向から前記第1スリットを見た場合に、前記第1スリットは、鉛直方向と交差する方向に延びる第1部分及び第2部分を有し、
前記第1部分の底面と、前記第2部分の底面とは、前記幅方向において離れていることを特徴とする。
【0033】
この構成の合成スラブによれば、鉛直方向と交差する方向に延びる第1部分及び第2部分によって、異なる方向の力を受けることができる。第1底面及び第2底面が、第1スリットの幅方向において離れるように形成されることにより、第1底面と第2底面との間に、木質面材の一部が配置されることになる。この第1底面と第2底面との間に配置された木質面材の一部と、第1スリットの第1部分及び第2部分とに充填されたコンクリートとが係合することにより、コンクリートと木質面材との間のせん断力を伝達することができる。本態様の合成スラブによれば、第1スリットの第1部分及び第2部分の内部に充填されたコンクリートの耐力及び剛性により、せん断力の伝達性能が向上するとともに、合成スラブの耐力及び剛性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0034】
以上の説明から理解できるように、本発明によれば、鉄筋コンクリートスラブと木質面材との間のせん断力の伝達性能を向上させ、耐力及び剛性の向上を図ることが可能な合成スラブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】第1実施形態に係る合成スラブの一例を示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る合成スラブの一例を示す断面図である。
【
図3】第1実施形態に係る合成スラブの一例を示す平面図である。
【
図4】木質面材の上面に形成されたスリットを拡大して示す断面図である。
【
図5】第2実施形態に係る合成スラブのスリットを拡大して示す断面図である。
【
図6】第3実施形態に係る合成スラブのスリットを拡大して示す断面図である。
【
図7】第4実施形態に係る合成スラブのスリットを拡大して示す断面図である。
【
図8】第5実施形態に係る合成スラブのスリットを拡大して示す断面図である。
【
図9】第6実施形態に係る合成スラブの一例を示す平面図である。
【
図10】第7実施形態に係る合成スラブのスリットを拡大して示す断面図である。
【
図11】第8実施形態に係る合成スラブのスリットを拡大して示す断面図である。
【
図12】第9実施形態に係る合成スラブのスリットを拡大して示す断面図である。
【
図13】第10実施形態に係る合成スラブのスリットを拡大して示す断面図である。
【
図14】第1変形例に係る合成スラブの一例を示す断面図である。
【
図15】第2変形例に係る合成スラブの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、実施形態に係る合成スラブについて、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0037】
[第1実施形態に係る合成スラブ]
図1乃至
図4を参照して、実施形態に係る合成スラブの一例について説明する。ここで、
図1は、第1実施形態に係る合成スラブの一例を示す斜視図である。
図2は、第1実施形態に係る合成スラブの一例を示す断面図である。
図3は、第1実施形態に係る合成スラブの一例を示す平面図である。
図4は、木質面材の上面に形成されたスリットを拡大して示す断面図である。また、各図において、互いに直交するX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向を示す矢印を適宜図示する場合がある。X軸方向及びY軸方向は、水平方向に沿う。X軸方向は、木質面材の長手方向に沿う。Y軸方向は、木質面材の幅方向に沿う。Z軸方向は、鉛直方向に沿う。Z軸方向は、木質面材の板厚方向に沿う。
【0038】
合成スラブ101を有する建物の躯体は、柱及び梁10を備える。柱は、例えば鉄骨造(S造)の柱でもよい。柱は、鉄骨造の柱に限定されず、鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の柱でもよい。柱は、木造の柱でもよい。
【0039】
梁10は、例えば鉄骨造の梁(鉄骨梁)である。梁10は、Y軸方向に延設されている。梁10の両端は、一対の柱に接続されている。
【0040】
図1及び
図2に示されるように、梁10は、例えばH形鋼からなり、ウェブ11と上フランジ12と下フランジ13とを有する。なお、梁10は、鉄骨造の梁に限定されず、SRC造やRC造の梁でもよい。梁10は、木造の梁でもよく、複数の梁を有するあわせ木質梁でもよい。
【0041】
CLTパネル30は、RCスラブ50の下方に配置されている。CLTパネル30は、複数の層が積層されて形成され、これらの層に含まれるひき板は、隣接する層のひき板と繊維方向が互いに直交するように配置されている。複数の層は、互いに接着されている。CLTパネル30は、木質面材の一例である。木質面材は、CLTパネル30に限定されず、LVL(Laminated Veneer Lumber、単板積層材)などその他の木質面材でもよい。
【0042】
CLTパネル30は、板厚方向に対向する上面(第1面)31及び下面(第2面)32を有する。RCスラブ50は、CLTパネル30の上面31の上に形成されている。RCスラブ50は、CLTパネル30の上面31に接合されている。
【0043】
RCスラブ50は、CLTパネル30の上面31の上に打設されたコンクリート51と、コンクリート51に埋め込まれた鉄筋61,62と、を有する。コンクリート51は、例えば普通コンクリートである。また、RCスラブ50は、梁10の上フランジ12の上の部分を含む。
【0044】
鉄筋61は、Y軸方向に間隔を置いて配置され、X軸方向に延設されている。鉄筋62は、X軸方向に間隔を置いて配置され、Y軸方向に延設されている。鉄筋61,62は、例えば異形鉄筋であり、互いに交差する方向に配置されている。鉄筋61は主筋であり、鉄筋82は配力筋である。なお、鉄筋81,82は、異形鉄筋に限定されず、その他の鉄筋でもよい。また、RCスラブ50の鉄筋は、主筋及び配力筋以外の鉄筋を含んでもよい。
【0045】
CLTパネル30は、複数の梁10によって支持されている。CLTパネル30の端部30aは、上フランジ12の上面12aの上に載置されている。
【0046】
図2に示されるように、梁10には、上フランジ12から上方に突出する複数のスタッド8が設けられている。複数のスタッド8は、梁10の長手方向において、所定の間隔を置いて配置されている。スタッド8は、例えば上フランジ12に対して溶接されている。
【0047】
CLTパネル30の端面30bには、複数のスタッド9が設けられている。端面30bは、CLTパネル30のX軸方向における端面である。端面30bは、YZ面に沿う面である。複数のスタッド9は、端面30bからX軸方向に、上フランジ12の上に突出する。複数のスタッド9は、梁10の長手方向において、所定の間隔を置いて配置されている。スタッド9の基端部は、端面30bに埋め込まれている。
【0048】
上フランジ12上には、コンクリート51が打設されて、X軸方向において梁10の両側に配置された合成スラブ101と梁10とが一体化されている。複数のスタッド8,9は、コンクリート51に埋め込まれている。
【0049】
次に、
図1~
図4を参照して、CLTパネル30に形成されたスリット71,72について説明する。CLTパネル30の上面31には、複数のスリット71,72が形成されている。スリット71,72は、CLTパネル30の上面31に形成された溝である。スリット71,72は、上面31からCLTパネル30の内部に向かって凹む。
【0050】
複数のスリット71は、平面視において、Y軸方向に延在し、X軸方向に所定の間隔を置いて形成されている。複数のスリット71は、第1スリットの一例である。複数のスリット71は、主筋61が延在する方向と交差する方向に延在する。
【0051】
複数のスリット72は、平面視において、X軸方向に延在し、Y軸方向に所定の間隔を置いて形成されている。複数のスリット72は、第2スリットの一例である。複数のスリット72は、主筋61が延在する方向に沿って延在する。複数のスリット71,72は、互いに直交するように配置されている。
【0052】
複数のスリット71は、Y軸方向において、CLTパネル30の全長にわたって形成されている。複数のスリット72は、X軸方向において、CLTパネル30の全長にわたって形成されている。
【0053】
図4に示されるように、複数のスリット71は、底面73と、側壁74,75とを有する。スリット71は、底面73、及び一対の側壁74,75によって囲まれた領域を含む。底面73は、板厚方向と交差する面である。側壁74,75は、スリット71の幅方向において互いに対向する。スリット71の幅方向は、X軸方向に沿う。側壁74,75は、YZ面に沿う面である。
【0054】
複数のスリット72は、複数のスリット71と同様に、底面と、側壁とを有する。底面は、板厚方向と交差する面である。側壁は、スリット72の幅方向において互いに対向する。スリット72の幅方向は、Y軸方向に沿う。側壁は、XZ面に沿う面である。長手方向と交差するスリット72の断面形状は、スリット71の断面形状と同じでもよく、異なっていてもよい。
【0055】
スリット71の開口幅W1は、15mm以上100mm以下でもよい。スリット71の開口幅W1は、20mm以上80mm以下でもよい。開口幅W1は、スリット71の幅方向における開口の長さである。スリット71の開口幅W1は、X軸方向に沿う長さである。
【0056】
同様に、スリット72の開口幅は、15mm以上100mm以下でもよい。スリット72の開口幅は、20mm以上、80mm以下でもよい。スリット72の開口幅は、スリット72の幅方向における開口の長さである。スリット72の開口幅は、Y軸方向に沿う長さである。スリット72の開口幅は、スリット71の開口幅と同じでもよく、異なっていてもよい。スリット71,72の開口幅W1は、15mm未満でもよく、100mmを超える値でもよい。
【0057】
スリット71の深さD1は、例えばCLTパネル30の板厚T1の5%以上、25以下でもよい。スリット71の深さD1は、Z軸方向において、上面31から底面73までの深さである。板厚T1は、上面31から下面32までの厚さである。開口幅W1は、例えば、板厚T1の5%以上、30%以下でもよい。RCスラブ50の厚さT2は、上面50aから下面50bまでの厚さである。深さD1および開口幅W1は、その他の値でもよい。同様に、スリット72の深さは、スリット71の深さD1と同じでもよく、異なっていてもよい。
【0058】
また、RCスラブ50の厚さT2は、CLTパネル30の板厚T1と同じでもよい。RCスラブ50の厚さT2は、CLTパネル30の板厚T1の50%以上、400%以下でもよい。
【0059】
図2に示されるように、X軸方向において、隣り合うスリット71同士の間隔は、X軸方向に隣り合う鉄筋62同士の間隔よりも広い。同様に、Y軸方向において、隣り合うスリット72同士の間隔は、Y軸方向に隣り合う鉄筋61同士の間隔よりも広い。
【0060】
CLTパネル30において、複数のスリット71,72が形成されている領域は、平面視において略全域である。複数のスリット71,72は、端部の領域の除き、略全ての領域に形成されている。複数のスリット71,72は、平面視において、例えばCLTパネル30の中央部のみに形成されていてもよい。
【0061】
複数のスリット71の内部には、RCスラブ50のコンクリートが充填されている。RCスラブ50は、複数のスリット71の内部へ突出する複数の凸部52を含む。凸部52は、RCスラブ50の下面50bよりも下方に突出する。RCスラブ50の下面50bは、CLTパネル30の上面31に当接する面である。複数の凸部52と複数のスリット71の側壁74,75が係合することにより、RCスラブ50とCLTパネル30との間において、せん断力が伝達される。
【0062】
同様に、複数のスリット72の内部には、RCスラブ50のコンクリートが充填されている。RCスラブ50は、複数のスリット72の内部へ突出する複数の凸部を含む。凸部は、RCスラブ50の下面50bよりも下方に突出する。複数の凸部と複数のスリット72の側壁が係合することにより、RCスラブ50とCLTパネル30との間において、せん断力が伝達される。
【0063】
(作用効果)
このような第1実施形態に係る合成スラブ101によれば、CLTパネル30の上面31に、RCスラブ50の主筋である鉄筋61が延在する方向と交差するY軸方向に沿う複数のスリット71が形成され、このスリット71の内部にコンクリート51が充填されていることにより、RCスラブ50とCLTパネル30との間のせん断力の伝達性能を向上させることができる。また、主筋と交差するスリット71の内部に充填されたコンクリートの凸部52を介して、せん断力を伝達することができる。さらに、本態様によれば、合成スラブ101におけるせん断耐力の向上を図ることができる。
【0064】
合成スラブ101において、CLTパネル30の上面31には、X軸方向に延びる複数のスリット72が形成され、スリット72の内部にRCスラブ50のコンクリート51が充填されている。この構成の合成スラブ101によれば、スリット71と交差する方向に延びる複数のスリット72が形成され、このスリット72の内部にコンクリート51が充填されていることにより、格子状にスリット71,72が形成されることになるため、格子状のスリット71,72に充填されたコンクリートによって合成スラブ101の耐力及び剛性が一層大きくなる。また、この合成スラブ101によれば、スリット72の内部に充填されたコンクリート51を介して、スリット71の内部に充填されたコンクリートとは異なる方向のせん断力を伝達することができる。
【0065】
また、スリット71,72の開口幅W1は、30mm以上、40mm以下でもよい。この構成の合成スラブ101によれば、CLTパネル30の上にコンクリート51を打設した際に、コンクリート51の骨材がスリット71,72の内部に入り易くなり、コンクリートの充填性が向上する。さらに、本態様の合成スラブ101によれば、スリット71,72の内部に充填されたコンクリート51の耐力及び剛性により、せん断力の伝達性能が向上するとともに、合成スラブ101における耐力及び剛性の向上を図ることができる。
【0066】
合成スラブ101によれば、スリット71は、主筋である鉄筋61が延在する方向と直交する方向に沿って配置され、スリット72は、主筋である鉄筋61が延在する方向に沿って配置されている。このような合成スラブ101によれば、スリット71に充填されたコンクリートによって、主筋が延在する方向に沿うせん断力を伝達することができ、スリット72に充填されたコンクリートによって、主筋と交差する方向に沿うせん断力を伝達することができる。
【0067】
また、合成スラブ101によれば、Y軸方向において、CLTパネル30の全長にわたってスリット71を形成することにより、スリット71の長さを長くすることができ、スリット71の長さが短い場合と比較して、せん断力の伝達性能の向上を図ることができる。また、スリット71の長さが短い場合と比較して、複数のスリット71の配置間隔を大きくすることができ、スリット71の設置数量の削減を図ることができる。
【0068】
また、合成スラブ101によれば、X軸方向において、CLTパネル30の全長にわたってスリット72を形成することにより、スリット72の長さを長くすることができ、スリット72の長さが短い場合と比較して、せん断力の伝達性能の向上を図ることができる。また、スリット72の長さが短い場合と比較して、複数のスリット72の配置間隔を大きくすることができ、スリット72の設置数量の削減を図ることができる。
【0069】
合成スラブ101では、CLTパネル30の上面31に複数のスリット71,72を加工することにより、RCスラブ50とCLTパネル30との間のせん断力を伝達可能な構造を形成することができる。そのため、CLTパネル30の上面31にせん断力を伝達するための部材を取り付けなくてもよい。
【0070】
合成スラブ101では、CLTパネル30を備えることにより、CLTパネル30を備えていない場合と比較して、RCスラブ50の厚さT2を薄くすることができ、合成スラブ101全体として軽量化を図ることができる。
【0071】
また、合成スラブ101によれば、施工現場において、CLTパネル30の上にコンクリート51を打設することができることにより、RCスラブ50を施工する際に、支保工を設置する必要がない。そのため、施工現場における作業を軽減することができ、工期の短縮、及び建設コストの削減を図ることができる。なお、合成スラブ101は、現場打ちのコンクリート51を有するものでもよく、予め工場等で打設されたプレキャストコンクリート(PCa板)を有するものでもよい。
【0072】
[第2実施形態に係る合成スラブ]
次に、
図5を参照して第2実施形態に係る合成スラブ101Bについて説明する。
図5は、第2実施形態に係る合成スラブのスリットを拡大して示す断面図である。
図5に示す第2実施形態に係る合成スラブ101Bが、第1実施形態に係る合成スラブ101と違う点は、スリット71Bの形状が異なる点である。なお、第2実施形態の説明において、第1実施形態と同様の説明は省略する。また、第1スリットであるスリット71Bについて説明するが、第2スリットは、スリット71Bと同じ形状でもよく、ここでの説明は省略する。
【0073】
スリット71Bは、底面73と、側壁74B,75Bとを有する。側壁74B,75Bは、スリット71Bの幅方向において互いに対向する。側壁74B,75Bは、底面73に対して傾斜する。スリット71Bの開口幅W2は、底面73の幅W3よりも広い。側壁74B,75Bは、斜め上方を向く面を有する。X軸方向において、側壁74B,75Bの上端部同士の距離は、側壁74B,75Bの下端部同士の距離よりも遠い。上方に向かうほど、側壁74B,75B間の距離は遠くなる。
【0074】
スリット71Bの内部には、RCスラブ50のコンクリート51が充填されている。RCスラブ50は、複数のスリット71Bの内部へ突出する複数の凸部52Bを含む。凸部52Bは、RCスラブ50の下面50bよりも下方に突出する。複数の凸部52Bと複数のスリット71Bの側壁74B,75Bが係合することにより、RCスラブ50とCLTパネル30との間において、せん断力が伝達される。
【0075】
このような第2実施形態に係る合成スラブ101Bにおいても第1実施形態に係る合成スラブ101と同様の作用効果を奏する。合成スラブ101Bでは、CLTパネル30の板厚方向において、上面31に近い方の開口幅W2は、底面73に近い方の開口幅よりも広いことにより、スリット71Bの加工がしやすい。また、上面31に近い方の開口幅W2が広いことにより、スリット71Bの内部にコンクリート51を充填しやすい。このように、スリット71Bは、底面73に対して傾斜する側壁74B,75Bを有するものでもよい。また、スリット71Bは、一対の側壁74B,75Bのうち一方が、YZ面に沿う面であり、他方が底面73に対して傾斜する面でもよい。底面73に対する側壁74B,75Bの傾斜角度は、同じでもよく、異なっていてもよい。また、側壁74B,75Bは、同じ方向に傾斜していてもよい。
【0076】
[第3実施形態に係る合成スラブ]
次に、
図6を参照して第3実施形態に係る合成スラブ101Cについて説明する。
図6は、第3実施形態に係る合成スラブのスリットを拡大して示す断面図である。
図6に示す第3実施形態に係る合成スラブ101Cが、第1実施形態に係る合成スラブ101と違う点は、スリット71Cの形状が異なる点である。なお、第3実施形態の説明において、上記の実施形態と同様の説明は省略する。また、第1スリットであるスリット71Cについて説明するが、第2スリットは、スリット71Cと同じ形状でもよく、ここでの説明は省略する。
【0077】
スリット71Cは、底面73Cと、側壁74C,75Cとを有する。側壁74C,75Cは、スリット71Cの幅方向において互いに対向する。側壁74C,75Cは、底面73に対して傾斜する。スリット71Cの開口幅W4は、底面73Cの幅W5よりも狭い。側壁74C,75Cは、斜め上方を向く面を有する。X軸方向において、側壁74C,75Cの上端部同士の距離は、側壁74C,75Cの下端部同士の距離よりも近い。上方に向かうほど、側壁74C,75C間の距離は近くなる。
【0078】
スリット71Cの内部には、RCスラブ50のコンクリート51が充填されている。RCスラブ50は、複数のスリット71Cの内部へ突出する複数の凸部52Cを含む。凸部52Cは、RCスラブ50の下面50bよりも下方に突出する。複数の凸部52Cと複数のスリット71Cの側壁74C,75Cが係合することにより、RCスラブ50とCLTパネル30との間において、せん断力が伝達される。
【0079】
このような第3実施形態に係る合成スラブ101Cにおいても第1実施形態に係る合成スラブ101と同様の作用効果を奏する。合成スラブ101Cでは、CLTパネル30の板厚方向において、底面73Cから上面31に近づくほど、一対の側壁74C,75C同士が接近するように、側壁74C,75Cが傾斜することにより、側壁74C,75Cが斜め下方を向くように形成される。この構成の合成スラブ101Cによれば、せん断力の伝達性能の向上を図ることができる。また、側壁74C,75Cの面積を増大させることができることにより、せん断力の伝達性能の向上を図ることができる。
【0080】
また、合成スラブ101Cでは、一対の側壁74C,75Cの上端が接近するように傾斜しているので、RCスラブ50とCLTパネル30との剥離を抑制できる。例えば、合成スラブ101Cに対して、RCスラブ50とCLTパネル30とが剥離する方向に応力が作用するおそれがあるが、合成スラブ101Cでは、一対の側壁74C,75Cを有することにより、RCスラブ50とCLTパネル30との剥離を抑制できる。
【0081】
また、スリット71Cは、一対の側壁74C,75Cのうち一方が、YZ面に沿う面であり、他方が底面73Cに対して傾斜する面でもよい。底面73に対する側壁74B,75Bの傾斜角度は、同じでもよく、異なっていてもよい。また、側壁74C,75Cは、同じ方向に傾斜していてもよい。
【0082】
[第4実施形態に係る合成スラブ]
次に、
図7を参照して第4実施形態に係る合成スラブ101Dについて説明する。
図7は、第4実施形態に係る合成スラブのスリットを拡大して示す断面図である。
図7に示す第4実施形態に係る合成スラブ101Dが、第1実施形態に係る合成スラブ101と違う点は、スリット71Dの形状が異なる点である。なお、第4実施形態の説明において、上記の実施形態と同様の説明は省略する。また、第1スリットであるスリット71Dについて説明するが、第2スリットは、スリット71Dと同じ形状でもよく、ここでの説明は省略する。
【0083】
スリット71Dは、底面73Dと、側壁74D,74E,74F,75D,75E,75Fとを有する。側壁74D,75Dは、第1側壁の一例である。側壁74E,75Eは、第2側壁の一例である。側壁74F,75Fは、第3側壁の一例である。側壁74D,75Dは、スリット71Dの幅方向において互いに対向する。側壁74E,75Eは、スリット71Dの幅方向において互いに対向する。側壁74D,75Dは、側壁74E,75Eよりも上方に配置され、上面31に近い位置に配置されている。側壁74E,75Eは、側壁74D,75Dよりも下方に配置され、底面73Dに近い位置に配置されている。
【0084】
側壁74Fは、側壁74Dと側壁74Eとの間に配置されている。側壁75Fは、側壁75Dと側壁75Eとの間に配置されている。側壁74Fは、スリット71Dの幅方向において、側壁74Dよりも外側に張り出している。側壁75Fは、スリット71Dの幅方向において、側壁75Dよりも外側に張り出している。側壁74F,75Fは、CLTパネル30の板厚方向において、底面73Dと対向する。側壁74F,75Fは、板厚方向と交差する面を含む。
【0085】
スリット71Dの幅方向において、側壁74Dと側壁75Dとの間の距離は、側壁74Eと側壁75Eとの間の距離よりも近い。スリット71Dの開口幅W6は、底面73Dの幅W7よりも狭い。開口幅W6は、上面31における開口幅であり、側壁74Dと側壁75Dとの距離である。
【0086】
スリット71Dの内部には、RCスラブ50のコンクリート51が充填されている。RCスラブ50は、複数のスリット71Dの内部へ突出する複数の凸部52Dを含む。凸部52Dは、RCスラブ50の下面50bよりも下方に突出する。また、凸部52Dは、底面73Dに近い位置において、上面31に近い部分よりも、X軸方向に張り出す部分を有する。複数の凸部52Dと複数のスリット71の側壁74D,74E,74F,75D,75E,75Fとが係合することにより、RCスラブ50とCLTパネル30との間において、せん断力が伝達される。
【0087】
このような第4実施形態に係る合成スラブ101Dにおいても第1実施形態に係る合成スラブ101と同様の作用効果を奏する。合成スラブ101Dでは、スリット71Dの内部に充填されたコンクリートは、底面73Dに近い部分において、上面31に近い部分よりも、幅方向に張り出すように形成される。この構成の合成スラブ101Dによれば、コンクリートとCLTパネル30との密着度の向上を図り、せん断力の伝達性能の向上を図ることができる。
【0088】
また、合成スラブ101Dでは、一対の側壁74F,75Fが下向きの面を形成し、スリット71Dの内部に充填されたコンクリートが幅方向に張り出す部分を有することにより、RCスラブ50とCLTパネル30との剥離が防止される。合成スラブ101Dに対して、RCスラブ50とCLTパネル30とが剥離する方向に応力が作用するおそれがあるが、合成スラブ101Dでは、一対の側壁74F,75Fとスリット71Dの内部に充填されたコンクリートの張り出し部分とが係合することにより、RCスラブ50とCLTパネル30との剥離を防止できる。
【0089】
なお、側壁74F,75Fは、XY面に平行な面を有するものに限定されず、XY面に対して傾斜する面を含んでもよい。また、スリット71Dの幅方向において、側壁74Dと側壁75Dとの間の距離は、側壁74Eと側壁75Eとの間の距離よりも遠くてもよい。
【0090】
[第5実施形態に係る合成スラブ]
次に、
図8を参照して第5実施形態に係る合成スラブ101Eについて説明する。
図8は、第5実施形態に係る合成スラブのスリットを拡大して示す断面図である。
図8に示す第5実施形態に係る合成スラブ101Eが、第1実施形態に係る合成スラブ101と違う点は、スリット71Eの内部に鉄筋63が配筋されている点である。なお、第5実施形態の説明において、上記の実施形態と同様の説明は省略する。スリット71Eは、第1スリットの一例である。スリット71Eの配置は、第1実施形態のスリット71の配置と同じでもよく、異なっていてもよい。
【0091】
鉄筋63は、スリット71Eの長手方向に沿って延在する。鉄筋63は、スリット71Eの長手方向に交差する断面において、スリット71Eの中心に配置されている。鉄筋63は、スリット71Eの長手方向において、スリット71Eの全長にわたって延在していてもよく、部分的に配置されていてもよい。鉄筋63は、湾曲されて、CLTパネル30の上面31よりも上方に配置されている部分を含んでもよい。スリット71Eの内部には、複数の鉄筋63が配筋されていてもよい。合成スラブ101Eでは、同様に、第2スリットであるスリット72の内部にも鉄筋が配置されている。
【0092】
スリット71Eの内部には、RCスラブ50のコンクリート51が充填されている。RCスラブ50は、複数のスリット71Eの内部へ突出する複数の凸部52Eを含む。凸部52Eは、RCスラブ50の下面50bよりも下方に突出する。複数の凸部52Eと複数のスリット71Eの側壁74,75とが係合することにより、RCスラブ50とCLTパネル30との間において、せん断力が伝達される。
【0093】
このような第5実施形態に係る合成スラブ101Eにおいても第1実施形態に係る合成スラブ101と同様の作用効果を奏する。合成スラブ101Eでは、スリット71Eの内部に、スリット71Eの長手方向に延びる鉄筋63が配筋されていることにより、スリット71の内部に鉄筋コンクリート構造を形成できることから、コンクリートのみの場合と比べてせん断耐力やせん断力の伝達性能を向上させることができる。
【0094】
合成スラブ101Eでは、スリット72の内部に、スリット72の長手方向に延びる鉄筋が配筋されている。合成スラブ101Eでは、スリット72の内部に、スリット72の長手方向に延びる鉄筋63が配筋されていることにより、スリット72の内部に鉄筋コンクリート構造を形成できることから、コンクリートのみの場合と比べてせん断耐力やせん断力の伝達性能を向上させることができる。なお、鉄筋63は、スリット71E,72のうちの何れか一方のみに配筋されていてもよい。
【0095】
[第6実施形態に係る合成スラブ]
次に、
図9を参照して第6実施形態に係る合成スラブ101Fについて説明する。
図9は、第6実施形態に係る合成スラブの一例を示す平面図である。
図9に示す合成スラブ101Fが、第1実施形態に係る合成スラブ101と違う点は、スリット71F,72Fの配置が異なる点である。スリット71Fは、第1スリットの一例であり、スリット72Fは、第2スリットの一例である。なお、第6実施形態の説明において、上記の実施形態と同様の説明は省略する。
【0096】
合成スラブ101FのCLTパネル30には、スリット71F,72Fが形成されている。スリット71Fは、平面視において、主筋である鉄筋61に対して45度の角度θ1で交差している。角度θ1は、鉄筋61とスリット71Fとが交差する角度のうち、小さい方である。スリット72Fは、平面視において、主筋である鉄筋61に対して-45度の角度θ2で交差している。ここでいう「-45度」の「-」(マイナス)とは、鉄筋61に対して45度の角度で交差するスリット71Fとは、反対側の角度であることを示す。
【0097】
スリット71Fの内部には、RCスラブ50のコンクリート51が充填されている。RCスラブ50は、複数のスリット71Fの内部へ突出する複数の凸部を含む。凸部は、RCスラブ50の下面50bよりも下方に突出する。複数の凸部と複数のスリット71Fの側壁74,75とが係合することにより、RCスラブ50とCLTパネル30との間において、せん断力が伝達される。
【0098】
このような第6実施形態に係る合成スラブ101Fにおいても第1実施形態に係る合成スラブ101と同様の作用効果を奏する。この構成の合成スラブ101Fによれば、主筋に対して45度で交差するようにスリット71F,72Fが配置されることにより、主筋に沿う方向のせん断応力をスリット71Fの内部に充填されたコンクリート及びスリット72Fの内部に充填されたコンクリートによって、均等に受けることができる。
【0099】
[第7実施形態に係る合成スラブ]
次に、
図10を参照して第7実施形態に係る合成スラブ101Gについて説明する。
図10は、第7実施形態に係る合成スラブのスリットを拡大して示す断面図である。
図10に示す合成スラブ101Gが、第1実施形態に係る合成スラブ101と違う点は、スリット71Gの形状が異なる点である。なお、第7実施形態の説明において、上記の実施形態と同様の説明は省略する。また、第1スリットであるスリット71Gについて説明するが、第2スリットは、スリット71Gと同じ形状でもよく、ここでの説明は省略する。
【0100】
スリット71Gは、底面73G1,73G2,73G3と、側壁74G,75Gとを有する。底面73G1は、スリット71Gの幅方向において、底面73G2と底面73G3との間に配置されている。底面73G1は、スリット71Gの幅方向における中央に配置されている。底面73G2,73G3は、Y軸方向から見た場合、底面73G1に対して傾斜している。底面73G1は、第1底面の一例である。底面73G2,73G3は、一対の第2底面の一例である。
【0101】
スリット71Gの底面は、複数の角部を有する。底面73G2,73G3は、底面73G1に対して傾斜していることから、底面73G1と底面73G2との境界、及び、底面73G1と底面73G2との境界に角部が形成される。
【0102】
側壁74G,75Gは、スリット71Gの幅方向において互いに対向する。側壁74G,75Gは、底面73G1に対して傾斜する。底面73G2は、スリット71Gの幅方向において、側壁74Gに近い位置に配置されている。底面73G3は、スリット71Gの幅方向において、側壁75Gに近い位置に配置されている。Y軸方向から見た場合に、底面73G2と側壁74Gとの角度は直角である。Y軸方向から見た場合に、底面73G3と側壁75Gとの角度は直角である。なお、底面73G2と側壁74Gとの角度は直角に限定されず、その他の角度でもよい。同様に、底面73G3と側壁75Gとの角度は直角に限定されず、その他の角度でもよい。
【0103】
スリット71Gの開口幅W11は、底面73G1,73G2,73G3の幅W12よりも狭い。幅W12は、スリット71Gの幅方向において、側壁74Gの下端部と側壁75Gの下端部との距離でもよい。側壁74G,75Gは、斜め下方を向く面を有する。X軸方向において、側壁74G,75Gの上端部同士の距離は、側壁74G,75Gの下端部同士の距離よりも近い。上方に向かうほど、側壁74G,75G間の距離は近くなる。
【0104】
スリット71Gの内部には、RCスラブ50のコンクリート51が充填されている。RCスラブ50は、複数のスリット71Gの内部へ突出する複数の凸部52Gを含む。凸部52Gは、RCスラブ50の下面50bよりも下方に突出する。複数の凸部52Gと複数のスリット71Gの側壁74G,75Gが係合することにより、RCスラブ50とCLTパネル30との間において、せん断力が伝達される。
【0105】
次に、スリット71Gの加工方法について説明する。スリット71Gは、例えばエンドミルを用いて、CLTパネル30を切削加工することにより、形成される。当業者は、適切なエンドミルを選択して、スリット71Gを加工することができる。
【0106】
図10では、2点鎖線を用いて、エンドミルの外形を示している。例えば、底面73G1を加工する場合には、エンドミルの軸線がZ軸方向に沿うように、エンドミルを配置して、エンドミルをY軸方向に移動させて、底面73G1を加工することができる。
【0107】
また、エンドミルの軸線をZ軸方向に対して傾斜させて配置し、エンドミルをY軸方向に移動させることで、底面73G2及び側壁74Gを加工することができる。同様に、エンドミルの軸線をZ軸方向に対して傾斜させて配置し、エンドミルをY軸方向に移動させることで、底面73G3及び側壁75Gを加工することができる。なお、Y軸方向に見た場合に、側壁74G,75GのZ軸方向に対する傾斜角度は、例えば15度でもよく、その他の角度でもよい。側壁74G,75GのZ軸方向に対する角度は、エンドミルの回転軸が延在する方向に沿う。なお、Z軸方向に沿う場合を0度とする。また、例えば、スリット71Gを加工する場合には、エンドミルをY軸方向に3回移動させることにより、スリット71Gを加工することができる。
【0108】
このような第7実施形態に係る合成スラブ101Gにおいても第1実施形態に係る合成スラブ101と同様の作用効果を奏する。合成スラブ101Gでは、底面は、スリット71Gの幅方向の中央に配置された底面73G1と、幅方向において、底面73G1よりも外側に配置された一対の底面73G2,73G3と、を有し、一対の底面73G2,73G3は、底面73G1に対して傾斜している。
【0109】
この構成の合成スラブ101Gによれば、水平面に沿う底面73G1及び当該底面73G1に対して傾斜する一対の底面73G2,73G3を有するスリット71Gの内部に充填されたコンクリート51の凸部52Gによって、異なる方向の力を受けることができる。
【0110】
[第8実施形態に係る合成スラブ]
次に、
図11を参照して第8実施形態に係る合成スラブ101Hについて説明する。
図11は、第8実施形態に係る合成スラブのスリットを拡大して示す断面図である。
図11に示す合成スラブ101Hが、第7実施形態に係る合成スラブ101Gと違う点は、スリット71Hの形状が異なる点である。なお、第8実施形態の説明において、上記の実施形態と同様の説明は省略する。また、第1スリットであるスリット71Hについて説明するが、第2スリットは、スリット71Hと同じ形状でもよく、ここでの説明は省略する。
【0111】
スリット71Hは、底面73H2,73H3と、側壁74G,75Gとを有する。底面73H2,73H3は、スリット71Hの幅方向において隣り合う。底面73H2,73H3は、Y軸方向から見た場合、水平面(XY面)に対して傾斜している。底面73H2,73H3は、一対の第2底面の一例である。
【0112】
スリット71Hの底面は、スリット71Hの幅方向における中央の位置に形成された角部を有する。底面73H2,73H3は、互いに傾斜していることから、底面73H2と底面73H3との境界に角部が形成される。
【0113】
側壁74H,75Hは、スリット71Hの幅方向において互いに対向する。側壁74H,75Hは、水平面に対して傾斜する。底面73H2は、スリット71Hの幅方向において、側壁74Hに近い位置に配置されている。底面73H3は、スリット71Hの幅方向において、側壁75Hに近い位置に配置されている。Y軸方向から見た場合に、底面73H2と側壁74Hとの角度は直角である。Y軸方向から見た場合に、底面73H3と側壁75Hとの角度は直角である。なお、底面73H2と側壁74Hとの角度は直角に限定されず、その他の角度でもよい。同様に、底面73H3と側壁75Hとの角度は直角に限定されず、その他の角度でもよい。
【0114】
スリット71Hの開口幅W13は、底面73H2,73H3の幅W14よりも狭い。幅W14は、スリット71Hの幅方向において、側壁74Hの下端部と側壁75Hの下端部との距離でもよい。側壁74H,75Hは、斜め下方を向く面を有する。X軸方向において、側壁74H,75Hの上端部同士の距離は、側壁74H,75Hの下端部同士の距離よりも近い。上方に向かうほど、側壁74H,75H間の距離は近くなる。
【0115】
スリット71Hの内部には、RCスラブ50のコンクリート51が充填されている。RCスラブ50は、複数のスリット71Hの内部へ突出する複数の凸部52Hを含む。凸部52Hは、RCスラブ50の下面50bよりも下方に突出する。複数の凸部52Hと複数のスリット71Hの側壁74H,75Hが係合することにより、RCスラブ50とCLTパネル30との間において、せん断力が伝達される。
【0116】
スリット71Hは、例えばエンドミルを用いて、CLTパネル30を切削加工することにより、形成される。当業者は、適切なエンドミルを選択して、スリット71Hを加工することができる。
【0117】
図11では、2点鎖線を用いて、エンドミルの外形を示している。例えば、底面73H2を加工する場合には、エンドミルの軸線をZ軸方向に対して傾斜させて配置し、エンドミルをY軸方向に移動させることで、底面73H2及び側壁74Hを加工することができる。同様に、底面73H3を加工する場合には、エンドミルの軸線をZ軸方向に対して傾斜させて配置し、エンドミルをY軸方向に移動させることで、底面73H3及び側壁75Hを加工することができる。なお、Y軸方向に見た場合に、側壁74H,75HのZ軸方向に対する傾斜角度は、例えば15度でもよく、その他の角度でもよい。なお、Z軸方向に沿う場合を0度とする。例えば、スリット71Hを加工する場合には、エンドミルをY軸方向に2回移動させることにより、スリット71Hを加工することができる。
【0118】
このような第8実施形態に係る合成スラブ101Hにおいても上記の実施形態に係る合成スラブ101と同様の作用効果を奏する。合成スラブ101Hでは、スリット71Hの底面は、スリット71Hの幅方向に並ぶ一対の底面73H2,73H3を有し、一対の底面73H2,73H3は、水平面に対して傾斜している。
【0119】
この構成の合成スラブ101Hによれば、水平面に対して傾斜する一対の底面73H2,73H3を有する第1スリット71Hの内部に充填されたコンクリート51の凸部52Hによって、異なる方向の力を受けることができる。
【0120】
[第9実施形態に係る合成スラブ]
次に、
図12を参照して第9実施形態に係る合成スラブ101Kについて説明する。
図12は、第9実施形態に係る合成スラブのスリットを拡大して示す断面図である。
図12に示す合成スラブ101Kが、第8実施形態に係る合成スラブ101Hと違う点は、スリット71Kの形状が異なる点である。なお、第9実施形態の説明において、上記の実施形態と同様の説明は省略する。また、第1スリットであるスリット71Kについて説明するが、第2スリットは、スリット71Kと同じ形状でもよく、ここでの説明は省略する。
【0121】
スリット71Kは、底面73K1,73K2,73K3,73K4,73K5,73K6と、側壁74K,75Kとを有する。底面73K1,73K2,73K3,73K4,73K5,73K6は、スリット71Hの幅方向において、この順に並ぶ。底面73K1,73K2,73K3,73K4,73K5,73K6は、Y軸方向から見た場合、水平面(XY面)に対して傾斜している。
【0122】
底面73K1,73K2は、スリット71Kの幅方向において隣り合い、水平面に対して互いに異なる角度で傾斜する。底面73K2,73K3は、スリット71Kの幅方向において隣り合い、水平面に対して互いに異なる角度で傾斜する。Y軸方向から見た場合に、底面73K2,73K3は、直角を成すように形成されている。
【0123】
底面73K3,73K4は、スリット71Kの幅方向において隣り合い、水平面に対して互いに異なる角度で傾斜する。底面73K3,73K4は、スリット71Kの幅方向の中央位置において、上方を向く凸部を形成する。
【0124】
底面73K4,73K5は、スリット71Kの幅方向において隣り合い、水平面に対して互いに異なる角度で傾斜する。Y軸方向から見た場合に、底面73K4,73K5は、直角を成すように形成されている。底面73K5,73K6は、スリット71Hの幅方向において隣り合い、水平面に対して互いに異なる角度で傾斜する。
【0125】
底辺73K1,73K6は、一対の第2底面の一例である。底辺73K2,73K5は、一対の第3底面の一例である。底辺73K3,73K4は、一対の第4底面の一例である。
【0126】
側壁74K,75Kは、スリット71Kの幅方向において互いに対向する。側壁74K,75Kは、水平面に対して傾斜する。底面73K1は、スリット71Kの幅方向において、側壁74Kに近い位置に配置されている。底面73K2は、スリット71Kの幅方向において、底面73K1よりも内側に配置されている。内側とは、スリット71Kの幅方向において、中心位置に近い方を内側とする。底面73K3は、スリット71Kの幅方向において、底面73K2よりも内側に配置されている。
【0127】
底面73K6は、スリット71Kの幅方向において、側壁75Kに近い位置に配置されている。底面73K5は、スリット71Kの幅方向において、底面73K6よりも内側に配置されている。底面73K4は、スリット71Kの幅方向において、底面73K5よりも内側に配置されている。
【0128】
Y軸方向から見た場合に、底面73K1と側壁74Kとの角度は直角である。Y軸方向から見た場合に、底面73K6と側壁75Kとの角度は直角である。なお、底面73K1と側壁74Kとの角度は直角に限定されず、その他の角度でもよい。同様に、底面73K6と側壁75Kとの角度は直角に限定されず、その他の角度でもよい。
【0129】
スリット71Kの開口幅W15は、底面73K1,73K2,73K3,73K4,73K5,73K6の合計の幅W16よりも狭い。幅W16は、スリット71Kの幅方向において、側壁74Kの下端部と側壁75Kの下端部との距離でもよい。側壁74K,75Kは、斜め下方を向く面を有する。X軸方向において、側壁74K,75Kの上端部同士の距離は、側壁74K,75Kの下端部同士の距離よりも近い。上方に向かうほど、側壁74K,75K間の距離は近くなる。
【0130】
スリット71Kの内部には、RCスラブ50のコンクリート51が充填されている。RCスラブ50は、複数のスリット71Kの内部へ突出する複数の凸部52Kを含む。凸部52Kは、RCスラブ50の下面50bよりも下方に突出する。複数の凸部52Kと複数のスリット71Kの側壁74K,75Kが係合することにより、RCスラブ50とCLTパネル30との間において、せん断力が伝達される。
【0131】
スリット71Kは、例えばエンドミルを用いて、CLTパネル30を切削加工することにより、形成される。当業者は、適切なエンドミルを選択して、スリット71Kを加工することができる。
【0132】
図12では、2点鎖線を用いて、エンドミルの外形を示している。例えば、底面73K1,73K4を加工する場合には、エンドミルの軸線をZ軸方向に対して傾斜させて配置し、エンドミルをY軸方向に移動させることで、底面73K1,73K4及び側壁74Kを加工することができる。同様に、底面73K3,73K6を加工する場合には、エンドミルの軸線をZ軸方向に対して傾斜させて配置し、エンドミルをY軸方向に移動させることで、底面73K3,73K6及び側壁75Kを加工することができる。なお、Y軸方向に見た場合に、側壁74K,75KのZ軸方向に対する傾斜角度は、例えば15度でもよく、その他の角度でもよい。なお、Z軸方向に沿う場合を0度とする。
【0133】
例えば、スリット71Kを加工する場合には、エンドミルをY軸方向に2回移動させることにより、スリット71Kを加工することができる。エンドミルをY軸方向に2回移動させる場合において、Y軸方向に見た場合に、エンドミルが通過する位置は互いに重なっていてもよい。この場合において、エンドミルの軸線方向は、互いに異なる。2回にわたるエンドミルの進行において、エンドミルの軸線方向は、Z軸に対して対称に配置されていてもよく、非対称に配置されていてもよい。
【0134】
このような第9実施形態に係る合成スラブ101Kにおいても上記の実施形態に係る合成スラブ101と同様の作用効果を奏する。
【0135】
合成スラブ101Kでは、スリット71Kの底面は、スリット71Kの幅方向において、一対の側壁74K,75Kに近い方に配置された一対の底面73K1,73K6と、幅方向において、一対の底面73K1,73K6よりも内側に配置された一対の底面73K2,73K5と、幅方向において、一対の底面73K2,73K5よりも内側に配置された一対の底面73K3,73K4と、を有し、一対の底面73K1,73K6、一対の底面72K2,73K5、及び一対の底面73K3,73K4は、水平面に対して傾斜し、一対の底面73K1,73K6のうち、幅方向における一方の底面73K1は、一対の底面73K3,73K4のうち、幅方向における他方の底面73K4と同じ角度で傾斜する。なお、この場合の一方及び他方は、スリット71Kの幅方向において、中心位置を基準に、一方及び他方に別れる。例えば、側壁74Kに近い方が一方の場合には、側壁75Kに近い方が他方となる。側壁75Kに近い方を一方とした場合には、側壁74Kに近い方を他方とする。
【0136】
また、一対の底面73K1,73K6のうち、幅方向における他方の底面73K6は、一対の底面73K3,73K4のうち、幅方向における一方の底面73K3と同じ角度で傾斜する。
【0137】
この構成の合成スラブ101Kによれば、水平面に対して傾斜する一対の底面73K1,K6、一対の底面73K2,73K5、及び一対の底面73K3,K4を有する第1スリット71Kの内部に充填されたコンクリート51の凸部52Kによって、異なる方向の力を受けることができる。
【0138】
スリット71Kの底面には、複数の角部が形成されることにより、底面の形状を複雑化することにより、凸部52KとCLTパネル30との係合を強固にすることができる。
【0139】
[第10実施形態に係る合成スラブ]
次に、
図13を参照して第10実施形態に係る合成スラブ101Lについて説明する。
図13は、第10実施形態に係る合成スラブのスリットを拡大して示す断面図である。
図13に示す合成スラブ101Lが、第9実施形態に係る合成スラブ101Kと違う点は、スリット71Lの形状が異なる点である。なお、第10実施形態の説明において、上記の実施形態と同様の説明は省略する。また、第1スリットであるスリット71Lについて説明するが、第2スリットは、スリット71Lと同じ形状でもよく、ここでの説明は省略する。
【0140】
スリット71Lは、Y軸方向と交差する断面であるXZ面において、Y軸方向からスリット71Lを見た場合に、スリット71Lは、鉛直方向であるZ軸方向と交差する方向に延びる第1部分71L1及び第2部分71L2を有する。
【0141】
スリット71Lは、底面73L1,73L2,73L3,73L4と、側壁74L,75Lとを有する。底面73L1,73L2,73L3,73L4は、スリット71Lの幅方向において、この順に並ぶ。底面73L1,73L2,73L3,73L4は、Y軸方向から見た場合、水平面(XY面)に対して傾斜している。
【0142】
第1部分71L1は、側壁74L、及び底面73L1,73L2を含む。Y軸方向から見て、底面73L1と側壁74Lとが成す角度は、直角である。Y軸方向から見て、底面73L1と底面73L2とが成す角度は、直角である。
【0143】
第2部分71L2は、側壁75L、及び底面73L3,73L4を含む。Y軸方向から見て、底面73L4と側壁75Lとが成す角度は、直角である。Y軸方向から見て、底面73L4と底面73L3とが成す角度は、直角である。
【0144】
底面73L2,73L3は、スリット71Lの幅方向において隣り合い、水平面に対して互いに異なる角度で傾斜する。底面73L2,73L3は、スリット71Lの幅方向の中央位置において、上方を向く凸部を形成する。
【0145】
第1部分71L1の底面73L1と、第2部分71L2の底面73L4とは、スリット71Lの幅方向において離れている。第1部分71L1の底面73L2と、第2部分71L2の底面73L3とは、スリット71Lの幅方向において離れている。
【0146】
スリット71Lの開口幅W17は、底面73L1,73L2,73L3,73L4の合計の幅W18よりも狭い。幅W18は、スリット71Lの幅方向において、側壁74Lの下端部と側壁75Lの下端部との距離でもよい。側壁74L,75Lは、斜め下方を向く面を有する。X軸方向において、側壁74L,75Lの上端部同士の距離は、側壁74L,75Lの下端部同士の距離よりも近い。上方に向かうほど、側壁74L,75L間の距離は近くなる。
【0147】
また、第1部分71L1において、側壁74Lと底面73L2とは平行に形成されている。同様に、第2部分71L2において、側壁75Lと底面73L3とは平行に形成されている。
【0148】
スリット71Lの第1部分71L1及び第2部分71L2内部には、RCスラブ50のコンクリート51が充填されている。RCスラブ50は、複数のスリット71Kの内部へ突出する複数の凸部52Lを含む。凸部52Lは、第1部分71L1の内部へ突出する凸部52L1と、第2部分71L2の内部へ突出する凸部52L2とを含む。
【0149】
凸部52L1,52L2は、RCスラブ50の下面50bよりも下方に突出する。凸部52L1及び凸部52L2は、下方に向かうほど、互いに離れるように形成されている。凸部52L1及び凸部52L2は、逆V字形を成すように形成されている。
【0150】
複数の凸部52L1と、複数のスリット71Lの側壁74L及び底面73L1,73L2が係合することにより、RCスラブ50とCLTパネル30との間において、せん断力が伝達される。同様に、複数の凸部52L2と、複数のスリット71Lの側壁75L及び底面73L3,73L4が係合することにより、RCスラブ50とCLTパネル30との間において、せん断力が伝達される。
【0151】
次に、スリット71Lの各寸法の一例について説明する。例えば、開口幅W17は、長さLz1と等しくてもよい。長さLz1は、第1部分71L1と第2部分71L2との境界の位置と、第1部分71L1及び第2部分71L2の下端部との間の長さであり、Z軸方向に沿う長さである。第1部分71L1と第2部分72L2との境界位置は、底面73L2と底面73L3との境界位置である。第1部分71L1の下端部は、底面73L2の下端部の位置である。第2部分72L2の下端部は、底面73L3の下端部の位置である。底面73L2の下端部と底面72L3の下端部の位置は、Z軸方向において同じ位置である。
【0152】
Y軸方向から見た場合に、CLTパネル30の上面31と、側壁74Lとの角度θ1は、例えば、45度以上90度以下である。Y軸方向から見た場合に、CLTパネル30の上面31と、側壁75Lとの角度は、角度θ1と同じでもよい。XZ面に沿う断面において、底面73L1の長さは、エンドミルの直径φ1に対応する。同様に、XZ面に沿う断面において、底面73L4の長さは、エンドミルの直径φ1に対応する。
【0153】
スリット71Lは、例えばエンドミルを用いて、CLTパネル30を切削加工することにより、形成される。当業者は、適切なエンドミルを選択して、スリット71Lを加工することができる。
【0154】
また、スリット71Lは、第1部分71L1のみを有するものでもよく、第2部分71L2のみを有するものでもよい。また、スリット71Lは、第1部分71L1の底面73L1と、第2部分71L2の底面73L4との間において、XY面に沿う底面を有するものでもよい。
【0155】
このような第10実施形態に係る合成スラブ101Lにおいても上記の実施形態に係る合成スラブ101と同様の作用効果を奏する。
【0156】
合成スラブ101Lでは、Y軸方向と交差する断面(XZ面)において、Y軸方向にスリット71Lを見た場合に、スリット71Lは、鉛直方向であるZ軸方向と交差する方向に延びる第1部分71L1及び第2部分71L2を有し、第1部分71L1の底面73L1と、第2部分71の底面73L2とは、幅方向であるX軸方向において離れている。なお、Z軸方向と交差する方向は、例えば、スリット71Lの切削加工の際のエンドミルの軸線方向に沿う。
【0157】
この構成の合成スラブ101Lによれば、鉛直方向と交差する方向に延びる第1部分71L1及び第2部分71L2によって、異なる方向の力を受けることができる。底面73L1,73L2及び底面73L3,73L4が、スリット71Lの幅方向において離れるように形成されることにより、底面73L2と底面73L3との間に、CLTパネル30の一部が配置されることになる。この底面73L2と底面73L3との間に配置されたCLTパネル30の一部と、スリット71Lの第1部分71L1及び第2部分71L3とに充填されたコンクリート51の凸部52L1,52L2とが係合することにより、コンクリート51とCLTパネル30との間のせん断力を伝達することができる。本態様の合成スラブ101Lによれば、スリット71の第1部分71L1及び第2部分71L2の内部に充填されたコンクリート51の耐力及び剛性により、せん断力の伝達性能が向上するとともに、合成スラブ101Lの耐力及び剛性の向上を図ることができる。
【0158】
[第1変形例に係る合成スラブ]
次に、
図14を参照して第1変形例に係る合成スラブ101について説明する。
図14は、第1変形例に係る合成スラブの一例を示す断面図である。
図14に示す合成スラブ合成スラブ101が、第1実施形態に係る合成スラブ101と違う点は、スリット71の内部に、ねじ35が設けられている点である。ねじ35は、例えば、ラグスクリューボルトである。ねじ35は、スリット71の底面から上方に突出し、コンクリート51に埋め込まれている。このように、ねじ35を設けることにより、RCスラブ50とCLTパネル30との間のせん断力の伝達性能を向上させて、耐力及び剛性の向上を図ることができる。なお、ねじ35は、ラグスクリューボルトに限定されず、コーチスクリューボルトでもよく、その他の棒状の部材でもよい。
【0159】
[第2変形例に係る合成スラブ]
次に、
図15を参照して第2変形例に係る合成スラブ101について説明する。
図15は、第2変形例に係る合成スラブの一例を示す断面図である。
図15に示す合成スラブ合成スラブ101が、第1実施形態に係る合成スラブ101と違う点は、CLTパネル30の上面31に、ねじ35が設けられている点である。ねじ35は、CLTパネル30の上面31から上方に突出し、コンクリート51に埋め込まれている。このように、ねじ35を設けることにより、RCスラブ50とCLTパネル30との間のせん断力の伝達性能を向上させて、耐力及び剛性の向上を図ることができる。また、スリット71の内部にねじ35を設けると共に、CLTパネル30の上面31にねじ35を設けてもよい。
【0160】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【0161】
なお、上記の実施形態において、スリット71,72は、CLTパネル30の長手方向又は幅方向の全長にわたって形成している場合について例示しているが、スリット71,72は、全長にわたって連続していなくてもよい。スリット71,72は、CLTパネル30の長手方向又は幅方向において間欠的に形成されていてもよい。
【0162】
また、上記の実施形態において、スリット71,72は、平面視において直交している場合について例示しているが、スリット71,72は、平面視において、直交しているものに限定されない。スリット71,72は、その他の角度で交差するものでもよい。
【0163】
また、スリット71,72の底面73は、CLTパネル30の板厚方向と直交する面でもよく、板厚方向と交差する面を含んでもよい。また、底面73及び側壁74,75は平面でもよく、湾曲する面を含んでもよい。
【0164】
また、スリット71,72は、木質面材に含まれる木質板の繊維方向に対して、直交するように配置されていてもよく、平行に配置されていてもよく、斜めに交差するように配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0165】
101,101B,101C,101D,101E,101F,101G,101H,101K,101L:合成スラブ
10: 梁
11: ウェブ
12: 上フランジ
12a:上面
13: 下フランジ
30: CLTパネル(木質面材)
31: 上面(第1面)
32: 下面(第2面)
50: RCスラブ(鉄筋コンクリートスラブ)
51: コンクリート
61: 鉄筋(主筋)
62: 鉄筋
63: 鉄筋
71,71B,71C,71D,71E,71F,71G,71H,71K,71L: スリット(第1スリット)
71L1:第1部分(スリットの第1部分)
71L2:第2部分(スリットの第2部分)
72,72F: スリット(第2スリット)
73,73C,73D:底面
73G1:底面(第1底面)
73G2,73G3,73H2,73H3:底面(一対の第2底面)
73K1,73K6:底面(一対の第2底面)
73K2,73K5:底面(一対の第3底面)
73K3,73K4:底面(一対の第4底面)
74,74B,74C,75,75B,75C,74G,75G,74H,75H,74K,75K,74L,75L:側壁
74D,75D:側壁(第1側壁)
74E,75E:側壁(第2側壁)
74F,75F:側壁(第3側壁)
W1,W2,W4,W6:開口幅
W3,W5,W7:幅(底面の幅)
X: X軸方向(第2方向)
Y: Y軸方向(第1方向)
Z: Z軸方向(木質面材の板厚方向)