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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093889
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】作業機の自動運転制御システム
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20240702BHJP
   A01B 69/04 20060101ALI20240702BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20240702BHJP
【FI】
A01B69/00 303A
A01B69/04
G05D1/02 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210524
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】渡部 克彦
(72)【発明者】
【氏名】伊吹 健
(72)【発明者】
【氏名】池田 亮
(72)【発明者】
【氏名】衣川 亮祐
【テーマコード(参考)】
2B043
5H301
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB19
2B043BA09
2B043BB01
2B043DC03
2B043EA37
2B043EB04
2B043EB08
2B043EB16
2B043EB23
2B043ED30
5H301AA03
5H301BB01
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG07
5H301GG08
5H301GG09
5H301GG10
5H301LL01
5H301LL03
5H301LL06
5H301LL08
5H301LL11
5H301LL14
(57)【要約】
【課題】 障害物を検知可能なセンサを備えた作業機の走行車体を自動運転させる自動運転制御システムにおいて、早期かつ確実に、障害物の影響が走行に及ばないよう自動運転させる
【解決手段】 この自動運転制御システムは、センサ67、自動運転により走行しているトラクタ1を制動する制御装置60、及び、自動運転制御部63を備えている。センサ67は、トラクタ1の進行を阻害する障害物O、及び、トラクタ1の離間距離が所定距離D以下である場合に障害物Oを検知可能となっている。自動運転制御部63は、観測衛星103を利用して観測される観測エリア150の範囲内における障害物Oの観測情報に基づいて、センサ67が障害物Oを検知していない状態においても、障害物Oを検知する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転が可能な走行車体に設けられ、障害物を検知可能なセンサと、
前記センサの前記障害物の検出に関する検出情報に基づいて、前記走行車体の自動運転を制御可能な制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、観測衛星が観測した障害物の観測情報に基づいて、前記走行車体の自動運転を制御する作業機の自動運転制御システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記検出情報が前記障害物の検出を示していない場合において、前記観測情報が前記走行車体の周囲に前記障害物が存在することを示しているときには、前記障害物の観測に対応した前記自動運転を制御する請求項1に記載の作業機の自動運転制御システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記検出情報が前記障害物の検出を示し、且つ、前記観測情報が前記走行車体の周囲に前記障害物が存在することを観測したときには、前記検出情報に基づいて、前記自動運転を制御する請求項1又は2に記載の作業機の自動運転制御システム。
【請求項4】
前記制御装置は、少なくとも、前記検出情報が前記障害物の検出を示している場合及び前記観測情報が前記走行車体の周囲に障害物が存在することを示している場合のいずれかに、注意を促すための警告を実行する請求項1又は2に記載の作業機の自動運転制御システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記検出情報が前記障害物の検出を示していない場合において、前記観測情報が前記走行車体の周囲に前記障害物が存在することを観測したときには、注意を促すための警告を実行する請求項1又は2に記載の作業機の自動運転制御システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記観測情報に基づいて、前記観測衛星が観測した前記障害物が、前記走行車体の走行経路に存在するか否かを判断し、且つ、前記走行経路に障害物が存在すると判断した場合は、前記走行車体が前記走行経路を走行したときに前記障害物を回避できるか否かを判断する請求項1又は2に記載の作業機の自動運転制御システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記障害物の大きさに基づいて前記すれ違いができるか否かを判断する請求項5に記載の作業機の自動運転制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、農業機械、建設機械等を含む作業機の自動運転制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場において作業車両の自動運転の制御を行う自動運転制御部と、土壌の凹凸を計測する計測装置と、を備えた特許文献1の自動運転支援装置が知られている。この自動運転支援装置では、トラクタにて作業を行った場合、計測装置としてのレーザセンサ等でトラクタの前方をスキャンし、センシングデータが解析されて土壌の凹凸が求められるようになっている。求められた土壌の凹凸が所定範囲外である場合、自動運転制御部にて、作業車両の進行方向を、既に走行したエリアに向ける設定を行うようになっている。このように、自動運転制御により走行する作業車両において、レーザセンサ等でその前方をスキャンする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-49380号公報(請求項6、段落0031等)
【発明の概要】
【0004】
この種の技術は、障害物の検知に用いられることも考えられる。例えば、自動運転制御により走行する作業機において、障害物を検知可能なセンサが作業機に設けられることで、センサの検知結果に基づく制動制御等の実行が可能となる。この種のセンサは、一般に、障害物を非接触方式のものが多く、障害物及びセンサの離間距離が所定距離以下の場合に、当該障害物を検知可能に構成される。
【0005】
しかしながら、上記離間距離が所定距離以下の場合であっても、センサによる検知が困難となる事象が生じる場合がある。このため、確実に障害物を検知できる技術が望まれている。また、上記離間距離が所定距離より大きい場合、障害物が存在するものの、センサによる検知がなされない。このような場合であっても、できるだけ早期に障害物を検知することが好適である。これらの点で、上記特許文献1の技術においては、改善の余地があるといえる。
【0006】
そこで、本発明は、上記に鑑み、障害物を検知可能なセンサを備えた作業機の走行車体を自動運転させる自動運転制御システムにおいて、早期かつ確実に、障害物の影響が走行に及ばないよう自動運転させることができるものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この技術的課題を解決するための本発明の技術的手段は、以下に示す点を特徴とする。本発明の作業機の自動運転制御システムは、自動運転が可能な走行車体に設けられ、障害物を検知可能なセンサと、前記センサの前記障害物の検出に関する検出情報に基づいて、前記走行車体の自動運転を制御可能な制御装置と、を備える。前記制御装置は、観測衛星が観測した障害物の観測情報に基づいて、前記走行車体の自動運転を制御する。
【0008】
本発明の作業機の自動運転制御システムにおいて、前記制御装置は、前記検出情報が前記障害物の検出を示していない場合において、前記観測情報が前記走行車体の周囲に前記障害物が存在することを示しているときには、前記障害物の観測に対応した前記自動運転を制御する。
【0009】
本発明の作業機の自動運転制御システムにおいて、前記制御装置は、前記検出情報が前記障害物の検出を示し、且つ、前記観測情報が前記走行車体の周囲に前記障害物が存在することを観測したときには、前記検出情報に基づいて、前記自動運転を制御する。
【0010】
本発明の作業機の自動運転制御システムにおいて、前記制御装置は、少なくとも、前記検出情報が前記障害物の検出を示している場合及び前記観測情報が前記走行車体の周囲に障害物が存在することを示している場合のいずれかに、注意を促すための警告を実行する。
【0011】
本発明の作業機の自動運転制御システムにおいて、前記制御装置は、前記検出情報が前記障害物の検出を示していない場合において、前記観測情報が前記走行車体の周囲に前記障害物が存在することを観測したときには、注意を促すための警告を実行する。
【0012】
本発明の作業機の自動運転制御システムにおいて、前記制御装置は、前記観測情報に基づいて、前記観測衛星が観測した前記障害物が、前記走行車体の走行経路に存在するか否かを判断し、且つ、前記走行経路に障害物が存在すると判断した場合は、前記走行車体が前記走行経路を走行したときに前記障害物を回避できるか否かを判断する。
【0013】
本発明の作業機の自動運転制御システムにおいて、前記制御装置は、前記障害物の大きさに基づいて前記すれ違いができるか否かを判断する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、早期かつ確実に障害物を検知でき、早期かつ確実に、障害物の影響が走行に及ばないよう自動運転させることがる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態に係る作業機の制御装置を含む、検知システムを示す全体図である。
図2図1に示す作業機(トラクタ)の機能ブロック図である。
図3図1に示す作業機(トラクタ)が備える昇降装置の斜視図である。
図4図1に示す作業機が備える表示装置にて表示されるマップ登録画面の一例を示す図である。
図5図1に示す作業機における、圃場の輪郭(圃場マップ)の求め方を説明するための図である。
図6図1に示す作業機における、作業エリア及び旋回エリアの設定について説明するための図である。
図7図1に示す作業機が備える表示装置にて表示されるルート設定画面の一例を示す図である。
図8図1に示す作業機における、作業エリアでの単位作業区画の作成、及び、走行予定ルートの作成について説明するための図である。
図9図1に示す作業機の自動運転を説明するための図である。
図10図1に示す作業機が圃場にて走行予定ルートを走行する場合における、センサによる障害物の検知を説明するための図である。
図11図1に示す外部装置の表示部に表示される設定画面の一例を示す図である。
図12図1に示す作業機の制御装置により変換される、圃場を含む観測エリアの画像である。
図13図1に示す作業機が公道にて走行予定ルートを走行する場合における、センサによる障害物の検知を説明するための図である。
図14図1に示す外部装置の表示部に表示される設定画面の一例を示す図である。
図15図1に示す作業機における制御装置により変換される、公道を含む観測エリアの画像である。
図16図1に示す作業機の制御装置による障害物の検知、及び、検知に基づく各種制動の流れを示すフローチャートである。
図17】本発明の第2実施形態に係る作業機の制御装置により変換される、圃場における移動体の位置の経時変化を示す観測エリアの画像である。
図18】本発明の第2実施形態に係る作業機の制御装置により変換される、公道における移動体の位置の経時変化を示す観測エリアの画像である。
図19】本発明の第2実施形態に係る作業機の制御装置による障害物の検知、及び、検知に基づく各種制動の流れを示すフローチャートである。
図20図1に示す作業機の側面全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
<検知システム>
図1は、本発明の実施形態に係る制御装置60を備えた作業機101に適用される、検知システムSの全体概略図である。当該検知システムSは、作業機101の進行を阻害する障害物を検知するためのシステムであり、端末装置100、測位衛星102、観測衛星103、基地局104、及び、外部装置70のそれぞれの動作によって障害物を検出する。検知システムSでは、端末装置100、作業機101、基地局104、及び、外部装置70は、情報通信ネットワークNを介して情報通信が可能となっている。
【0017】
測位衛星102は、D-GPS、GPS、GLONASS、北斗、ガリレオ、みちびき等の衛星測位システムに対応する衛星である。測位衛星102は、地表に向けた電波発振を介して、衛星信号を作業機101に送出する。この衛星信号に基づいて、地表における作業機101を測位可能となっている。
【0018】
観測衛星103は、情報収集衛星、気象観測衛星、商業衛星等の地表を観測するための人工衛星である。観測衛星103は、電波、赤外、可視光等の種々の波長領域にて、地表を観測可能となっている。観測衛星103では、例えば、合成開口レーダ、光学センサ等により、所定のエリアにおける地表の観測データ(観測情報)が取得される。当該取得された観測データは、観測衛星103から基地局104を介して、端末装置100へ送出される。他方、端末装置100による観測に関する指示信号も、基地局104を介して観測衛星103へ送出されるようになっている。観測衛星103は、端末装置100からの指示に応じて、予め設定されたエリアにおける地表の観測データを取得する。
【0019】
端末装置100、及び、外部装置70は、サーバ等の設置型のコンピュータ、スマートフォン、タブレット、ノートパソコン等の携帯型のコンピュータ等である。本実施形態では、端末装置100はサーバであり、外部装置70はタブレットであるとして、説明を進める。端末装置100は、外部装置70の画面を介して、観測衛星103での観測エリア、観測データの取得周期を設定可能となっている。端末装置100は、観測衛星103から送出された観測データを画像に変換し、作業機101に送出する。
【0020】
即ち、検知システムSでは、観測衛星103による観測データ(観測情報)が、端末装置100に一旦集約されて、作業機101に送出されるようになっている。作業機101では、送出された情報に基づいて、上記障害物の検知が可能となっており、検出結果に基づいて作業機101が制御される。
【0021】
図1に示すように、端末装置100は、観測衛星103の観測エリア、観測データの取得周期を設定し、観測衛星103に向けて指示を送出するようになっている。また、端末装置100では、逐次送出されてきた観測データを記憶するとともに、情報通信ネットワークNを介して、観測データが端末装置100から作業機101へ送出されるようになっている。
【0022】
端末装置100は、観測エリア設定部110と、記憶装置112と、観測指示部113と、を備えている。観測エリア設定部110、及び、観測指示部113は、端末装置100に設けられた電気電子回路、端末装置100に格納されたプログラム等でそれぞれ構成されている。記憶装置112は、不揮発性のメモリ等で構成されている。
【0023】
観測エリア設定部110は、観測衛星103による地表の観測エリア150、及び、観測データを取得する周期tを設定する。具体的には、図11に示すように、タブレットである外部装置70が端末装置100に接続され、外部装置70において所定の操作が行われると、外部装置70の表示部70Aに、設定画面M4が表示される。
【0024】
設定画面M4は、地図を表示する地図表示部125と、観測タイミング入力部126とを含んでいる。地図表示部125は、道路、農道、圃場等の作業場、建物などを含む地図を表示する部分である。地図は、例えば、地図のデータを提供する地図提供会社から取得した地図であってもよいし、外部装置70等によって作成した地図であってもよいし限定されない。なお、地図は、地表に対し上面視となる2次元地図であり、外部装置70の表示部70Aにおける操作等にて、走査的に範囲を選択したり、選択範囲を拡大・縮小することが、可能となっている。本実施形態では、地図の範囲としては、作業機101の位置を予め知得しておき、その作業機101を含むように、作業機101の位置周辺の範囲を選択する。より具体的には、地図の範囲としては、作業機101及び作業機101による作業の対象となる圃場F等を含む範囲が、選択されてもよい。従って、地図表示部125には、作業機101が表示されていないが、表示される地図に対応する実際の地表においては、作業機101が存在することになる。観測タイミング入力部126は、観測データの取得周期tを入力できるようになっている。
【0025】
観測エリア設定部110は、地図表示部125に表示される地図の四隅に対応する緯度・経度LA1・LO1,LA2・LO2,LA3・LO3,LA4・LO4を決定する。決定された緯度LA1~LA4、経度LO1~LO4にて規定される矩形の領域が、観測エリア150として設定される。また、観測エリア設定部110は、地図表示部125から決定された緯度LA1~LA4、経度LO1~LO4、及び、観測タイミング入力部126に入力された周期tを、記憶装置112に記憶する。なお、本実施形態では、1つの圃場Fに対応するエリアが、観測エリア150として設定されるものとする。
【0026】
観測指示部113は、記憶装置112に記憶されている緯度LA1~LA4、経度LO1~LO4、及び、周期tを読み出し、これらの情報を指示信号として、情報通信ネットワークNを介して基地局104へ送出する。当該指示信号は、基地局104から観測衛星103に送出されて、観測衛星103は、緯度・経度LA1・LO1,LA2・LO2,LA3・LO3,LA4・LO4の4点にて規定される矩形区画の地表を、設定された周期t毎に撮像し取得するようになっている。
【0027】
撮像された地表の観測データは、取得される毎に、即ち、周期t毎に、観測衛星103から基地局104を介して端末装置100に逐次送出されていく。そして、観測データは、記憶装置112に逐次記憶されるとともに、端末装置100から作業機101へ周期t毎に送出されていく。作業機101に送出された観測データは、障害物Oの検知に用いられ、検知結果に基づいて作業機101の制動制御、及び、警告表示制御がなされるようになっている。
【0028】
<作業機>
図20は、作業機101の全体の側面図を示している。作業機101は、走行車体1と、作業装置2とを備えている。本実施形態の場合、走行車体1はトラクタであるため、以下、走行車体1をトラクタ1として説明する。但し、走行車体1は、トラクタに限定されず、コンバインや田植機等の農業車両であっても、建設車両等であってもよい。
【0029】
図20に示すように、トラクタ1は、走行装置7を有する走行車体3と、原動機4と、変速装置5と、を備えている。走行装置7は、前輪7F及び後輪7Rを有する装置である。前輪7Fは、タイヤ型であってもクローラ型であってもよい。また、後輪7Rも、タイヤ型であってもクローラ型であってもよい。原動機4は、ディーゼルエンジン、電動モータ等である。原動機4は、走行車体3の前部に配置されており、変速装置5は、変速によって走行装置7の推進力を切換可能であると共に、走行装置7の前進、後進の切換が可能である。走行車体3にはキャビン9が設けられ、当該キャビン9内には運転席10が設けられている。
【0030】
また、走行車体3の後部には、3点リンク機構等で構成された昇降装置8が設けられている。昇降装置8には、作業装置2が着脱可能である。作業装置2を昇降装置8に連結することによって、走行車体3によって作業装置2を牽引することができる。作業装置2は、作業装置2は、耕耘する耕耘装置、肥料を散布する肥料散布装置、苗を植え付ける移植装置、灌水を行う灌水装置、農薬を散布する農薬散布装置、種を散布する播種散布装置、牧草等の刈取を行う刈取装置、牧草等の拡散を行う拡散装置、牧草等の集草を行う集草装置、牧草等の成形を行う成形装置等である。
【0031】
図3に示すように、昇降装置8は、リフトアーム8a、ロアリンク8b、トップリンク8c、リフトロッド8d、リフトシリンダ8eを有している。リフトアーム8aの前端部は、変速装置5を収容するケース(ミッションケース)の後上部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。リフトアーム8aは、リフトシリンダ8eの駆動によって揺動(昇降)する。リフトシリンダ8eは、油圧シリンダから構成されている。リフトシリンダ8eは、制御弁36を介して油圧ポンプと接続されている(図2を参照)。制御弁36は、電磁弁等であって、リフトシリンダ8eを伸縮させる。
【0032】
ロアリンク8bの前端部は、変速装置5の後下部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。トップリンク8cの前端部は、ロアリンク8bよりも上方において、変速装置5の後部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。リフトロッド8dは、リフトアーム8aとロアリンク8bとを連結している。ロアリンク8bの後部及びトップリンク8cの後部には、作業装置2が連結される。リフトシリンダ8eが駆動(伸縮)すると、リフトアーム8aが昇降するとともに、リフトロッド8dを介してリフトアーム8aと連結されたロアリンク8bが昇降する。これにより、作業装置2がロアリンク8bの前部を支点として、上方又は下方に揺動(昇降)する。
【0033】
図2に示すように、トラクタ1は、操舵装置29を備えている。操舵装置29は、ハンドル(ステアリングホイール)30と、ハンドル30の回転に伴って回転する回転軸(操舵軸)31と、ハンドル30の操舵を補助する補助機構(パワーステアリング機構)32と、を有している。補助機構32は、油圧ポンプ33と、油圧ポンプ33から吐出した作動油が供給される制御弁34と、制御弁34により作動するステアリングシリンダ35とを含んでいる。制御弁34は、制御装置60の制御信号に基づいて作動する電磁弁である。制御弁34は、例えば、スプール等の移動によって切り換え可能な3位置切換弁である。また、制御弁34は、操舵軸31の操舵によっても切換可能である。ステアリングシリンダ35は、前輪7Fの向きを変えるアーム(ナックルアーム)に接続されている。
【0034】
したがって、ハンドル30を操作すれば、当該ハンドル30に応じて制御弁34の切換位置及び開度が切り換わり、当該制御弁34の切換位置及び開度に応じてステアリングシリンダ35が左又は右に伸縮することによって、前輪7Fの操舵方向を変更することができる。なお、上述した操舵装置29は一例であり、上述した構成に限定されない。
【0035】
図2に示すように、変速装置5は、主軸(推進軸)5aと、主変速部5bと、副変速部5cと、シャトル部5dと、PTO動力伝達部5eと、前変速部5fと、を備えている。推進軸5aは、変速装置5のハウジングケース(ミッションケース)に回転自在に支持され、当該推進軸5aには、原動機4のクランク軸からの動力が伝達される。主変速部5bは、複数のギア及び当該ギアの接続を変更するシフタを有している。主変速部5bは、複数のギアの接続(噛合)をシフタで適宜変更することによって、推進軸5aから入力された回転を変更して出力する(変速する)。
【0036】
副変速部5cは、主変速部5bと同様に、複数のギア及び当該ギアの接続を変更するシフタを有している。副変速部5cは、複数のギアの接続(噛合)をシフタで適宜変更することによって、主変速部5bから入力された回転を変更して出力する(変速する)。シャトル部5dは、シャトル軸12と、前後進切換部13とを有している。シャトル軸12には、副変速部5cから出力された動力がギア等を介して伝達される。前後進切換部13は、例えば、油圧クラッチ等で構成され、油圧クラッチの入切によってシャトル軸12の回転方向、即ち、トラクタの前進及び後進を切り換える。シャトル軸12は、後輪デフ装置20Rに接続されている。後輪デフ装置20Rは、後輪7Rが取り付けられた後車軸21Rを回転自在に支持している。
【0037】
PTO動力伝達部5eは、PTO推進軸14と、PTOクラッチ15とを有している。PTO推進軸14は、回転自在に支持され、推進軸5aからの動力が伝達可能である。PTO推進軸14は、ギア等を介してPTO軸16に接続されている。PTOクラッチ15は、例えば、油圧クラッチ等で構成され、油圧クラッチの入切によって、推進軸5aの動力をPTO推進軸14に伝達する状態と、推進軸5aの動力をPTO推進軸14に伝達しない状態とに切り換わる。
【0038】
前変速部5fは、第1クラッチ17と、第2クラッチ18とを有している。第1クラッチ17及び第2クラッチ18は、推進軸5aからの動力が伝達可能であって、例えば、シャトル12の動力が、ギア及び伝動軸を介して伝達される。第1クラッチ17及び第2クラッチ18からの動力は、前伝動軸22を介して前車軸21Fに伝達可能である。具体的には、前伝動軸22は、前輪デフ装置20Fに接続され、前輪デフ装置20Fは、前輪7Fが取り付けられた前車軸21Fを回転自在に支持している。
【0039】
第1クラッチ17及び第2クラッチ18は、油圧クラッチ等で構成されている。第1クラッチ17には油路が接続され、当該油路には油圧ポンプから吐出した作動油が供給される第1作動弁25に接続されている。第1クラッチ17は、第1作動弁25の開度によって接続状態と切断状態とに切り換わる。第2クラッチ18には油路が接続され、当該油路には第2作動弁26に接続されている。第2クラッチ18は、第2作動弁26の開度によって接続状態と切断状態とに切り換わる。第1作動弁25及び第2作動弁26は、例えば、制御装置60の制御信号に基づいて作動する電磁弁付き二位置切換弁であって、電磁弁のソレノイドを励磁又は消磁することにより、接続状態又は切断状態に切り換わる。
【0040】
第1クラッチ17が切断状態で且つ第2クラッチ18が接続状態である場合、第2クラッチ18を通じてシャトル軸12の動力が前輪7Fに伝達される。これにより、前輪7F及び後輪7Rが動力によって駆動する四輪駆動(4WD)で且つ前輪7Fと後輪7Rとの回転速度が略同じとなる(4WD等速状態)。一方、第1クラッチ17が接続状態で且つ第2クラッチ18が切断状態である場合、四輪駆動になり且つ前輪7Fの回転速度が後輪7Rの回転速度に比べて速くなる(4WD増速状態)。また、第1クラッチ17及び第2クラッチ18が切断状態である場合、シャトル軸12の動力が前輪7Fに伝達されないため、後輪7Rが動力によって駆動する二輪駆動(2WD)となる。
【0041】
図2に示すように、変速装置5のミッションケースにおいて、後車軸21Rの軸支箇所にサイドブレーキ11が設けられている。サイドブレーキ11は、右左の後輪7Rを独立に制動可能となっている。このサイドブレーキ11は、操作シリンダ13及び連係ロッド14を介して、ブレーキペダル12と接続され、ブレーキペダル12の操作によって作動可能となっている。ブレーキペダル12には、バネ12a、及び、ストッパー12bが設けられている。ブレーキペダル12は、バネ12aにより解除位置側に付勢されており、ストッパー12bは、ブレーキペダル12を解除位置で止めるようになっている。操作シリンダ13には、バネ13aが内装されている。操作シリンダ13は、バネ13aにより伸張側に付勢されており、作動油が供給されることで収縮作動するようになっている。操作シリンダ13の作動油は、制御弁21によって給排操作される。制御弁21は、制御装置60の制御信号に基づいて作動する。
【0042】
図1、及び、図2に示すように、トラクタ1は、測位装置40を備えている。測位装置40は、D-GPS、GPS、GLONASS、北斗、ガリレオ、みちびき等の衛星測位システム(測位衛星102)により、自己の位置(緯度、経度を含む測位情報)を検出可能である。即ち、測位装置40は、測位衛星102から送信された衛星信号(測位衛星102の位置、送信時刻、補正情報等)を受信し、衛星信号に基づいて、トラクタ1の位置(例えば、緯度、経度)、即ち、車体位置を検出する。測位装置40は、受信装置41と、慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)42とを有している。
【0043】
受信装置41は、アンテナ等を有していて測位衛星から送信された衛星信号を受信する装置であり、慣性計測装置42とは別に走行車体3に取付けられている。この実施形態では、受信装置41は、走行車体3、即ち、キャビン9に取付けられている。なお、受信装置41の取付箇所は、実施形態に限定されない。慣性計測装置42は、加速度を検出する加速度センサ、角速度を検出するジャイロセンサ等を有している。走行車体3、例えば、運転席10の下方に設けられ、慣性計測装置42によって、走行車体3のロール角、ピッチ角、ヨー角等を検出することができる。
【0044】
図1、及び、図2に示すように、トラクタ1は、通信装置45Aを備えている。通信装置45Aは、CAN等の車両用通信ネットワークN1を介して、測位装置41、制御装置60、及び、表示装置50と接続されている。トラクタ1における各種信号、データは、車両用通信ネットワークN1を介して通信装置45Aへ送出可能となっている。また、通信装置45Aは、外部の情報通信ネットワークNを介して、端末装置100、及び、外部装置70とも接続されており、これら装置との情報通信が可能となっている。通信装置45Aは、例えば、通信規格であるIEEE802.11シリーズのWi-Fi(Wireless Fidelity、登録商標)、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)、LPWA(Lo w Power, Wide Area)、LPWAN(Low-Power Wide-Area Network)等により無線通信を行うことができる。また、通信装置45Aは、例えば、LTE(Long term evolution)、第4、第5世代通信システム等の、携帯電話通信網又はデータ通信網などにより無線通信を行うことができる。
【0045】
図1、及び、図2に示すように、トラクタ1は、表示装置50を備えている。表示装置50は、制御部51と、表示部52と、記憶部53とを備えている。制御部51は、CPU、電気電子回路等から構成されていて、表示装置50に関する様々な制御を行う。表示部52は、液晶パネル、タッチパネル、その他のパネル等で構成されていて、様々な情報を表示する。記憶部53は、不揮発性のメモリ等から構成されている。記憶部53には、例えば、トラクタ1の作業等を支援するアプリケーションプログラムが記憶されていて、当該アプリケーションプログラムを起動すると、表示装置50は、作業を支援する作業支援装置として作動する。なお、表示装置50が作業支援装置として作動した場合も、作業支援装置としての処理は、ハードウェアである制御部51が実行する。
【0046】
図2に示すように、表示装置50は、マップ登録部51Aを含んでいる。マップ登録部51Aは、所定の圃場の輪郭、例えば、所定の圃場の輪郭に対応した位置を登録する。図4に示すように、表示装置50に対して所定の操作を行うと、マップ登録部51Aによって、表示部52にはマップ登録画面M1が表示される。マップ登録画面M1には、圃場を含むマップMP1、トラクタ1の車体位置VP1、圃場名及び圃場管理番号等の圃場識別情報が表示される。マップMP1には、圃場を示す画像データの他に緯度、経度等の位置情報が対応付けられている。トラクタ1が圃場内に入り、圃場内を周回すると、マップ登録画面M1には、トラクタ1が周回したときに測位装置40が検出した現在の車体位置VP1が表示される。トラクタ1による圃場内の周回が終了し、マップ登録画面M1に表示された登録ボタン55が選択されると、図5(a)に示すように、マップ登録部51Aは、トラクタ1が周回したときの複数の車体位置によって得られた走行軌跡K1を圃場の輪郭(外形)H1とし、当該輪郭H1で表される圃場マップMP2を圃場識別情報と共に登録する。
【0047】
なお、図5(b)に示すように、マップ登録部51Aは、車体位置VP1で示される走行軌跡から変曲点を演算して変曲点を結ぶ輪郭K2を圃場の輪郭H1(圃場マップMP2)として登録してもよいし、図5(c)に示すように、トラクタ1が周回する際に運転者等がトラクタ1に設けられたスイッチ等によって圃場の端部を指定し指定された端部を結んだ輪郭K3を輪郭H1(圃場マップMP2)として登録してもよい。上述した圃場の登録方法は、一例であり、限定されない。圃場の輪郭、即ち、圃場マップMP2は、位置(緯度、経度)で示されたデータであっても、座標(X軸、Y軸)系で示されたデータであっても、その他の表現で示されたデータであってもよい。
【0048】
記憶部53は、マップ登録部51Aによって登録した輪郭(外形)を示す圃場マップMP2を記憶する。即ち、記憶部53は、圃場マップMP2、圃場の輪郭を示すデータ(所定の圃場を表すためのデータ)を記憶する。図2に示すように、表示装置50は、エリア設定部51Dを備えている。エリア設定部51Dは、作業エリアA2と、旋回エリアA1とを設定する。なお、圃場マップMP2において、作業エリアA2が既に設定されていれば、エリア設定部51Dは、旋回エリアA1のみを設定するものであってもよい。この実施形態では、作業エリアA2と旋回エリアA1との両方を設定する例について説明する。
【0049】
図6(a)に示すように、作業者(運転者)が表示装置50に対して所定の操作を行うと、エリア設定部51Dによって、表示部52に作業設定画面M2を表示する。作業設定画面M2は、圃場入力部80と、圃場表示部81とを有している。圃場入力部80は、圃場名、圃場の管理番号等の圃場識別情報を入力可能である。圃場表示部81は、圃場入力部80に入力された圃場識別情報に対応する所定の圃場を示す圃場マップMP2を表示する。即ち、エリア設定部51Dは、圃場入力部80に入力された圃場識別情報に対応する圃場マップMP2を、記憶部53に要求し、当該記憶部53から送信された圃場マップMP2を圃場表示部81に表示させる。
【0050】
作業設定画面M2において、旋回幅入力部82に旋回幅W1を入力した後、旋回設定ボタン83を選択すると、エリア設定部51Dは、圃場表示部81に表示された圃場マップMP2に、旋回エリアA1を除く作業エリアA2を表示する。例えば、エリア設定部51Dは、圃場マップMP2の輪郭H1を内側に、旋回幅W1だけオフセットすることで形成される輪郭H2で囲まれるエリアを、作業エリアA2に設定する。なお、作業設定画面M2において、圃場表示部81に表示された圃場マップMP2上に、ポインタ等を用いて作業エリアA2の輪郭の位置を指定することによって、圃場マップMP2に作業エリアA2を設定してもよい。
【0051】
記憶部53は、作業エリアA2と旋回エリアA1とが設定された圃場マップMP2のデータ(作業エリアA2の位置を示すデータ及び旋回エリアA1を示すデータ)を記憶する。
【0052】
図2に示すように、表示装置50は、ルート作成部51Bを備えている。ルート作成部51Bは、記憶部53に登録された圃場マップMP2を参照して、当該圃場マップMP2上に走行車体3の走行ルート(走行予定ルート)L1を作成する。
【0053】
図7に示すように、作業者(運転者)が表示装置50に対して所定の操作を行うと、ルート作成部51Bによって、表示部52にルート設定画面M3を表示する。ルート設定画面M3では、圃場において、少なくとも作業エリアA2に走行予定ルートL1を設定することが可能である。ルート設定画面M3は、走行予定ルートL1を表示するルート表示部85と、幅入力部86とを備えている。作業装置2の作業幅W2は、作業装置2が圃場等の対地に対して作業を行う幅(作業実行幅)であって、資材を圃場に散布する作業装置2の場合は、資材を供給する散布幅である。例えば、作業装置2が施肥装置である場合は、施肥幅が作業幅W2、薬剤散布装置である場合には薬剤散布幅が作業幅W2、苗移植装置である場合は1回の作業で苗を圃場に植え付けることができる植付幅が作業幅、播種装置である場合は播種幅が作業幅W2である。なお、対地作業とは、圃場及び圃場に作付けした作物に対して行う農作業のことであり、例えば、苗の植え付け、灌水、薬剤の散布、肥料の散布(施肥)、種の散布(播種)、鎮圧、覆土、畝形成、耕耘、溝形等である。
【0054】
ルート作成部51Bは、作業幅W2を取得すると、図8(a)に示すように、作業エリアA2を作業幅W2で縦方向又は横方向に区切ることによって、作業装置2で作業を行う複数の単位作業区画A3を作業エリアA2内に作成する。即ち、ルート作成部51Bは、作業幅W2と同一の幅の単位作業区画A3を作業エリアA2内に複数作成する。なお、図8(b)に示すように、ルート作成部51Bは、作業幅W2からオーバラップ幅W3を除した幅W4の単位作業区画A3を作業エリアA2内に複数作成してもよい。オーバラップ幅W3は、ルート設定画面M3で入力することが可能である。即ち、ルート作成部51Bは、作業装置2を連結した走行車体3を走行させた場合に、当該作業装置2によって圃場に対して作業が行われる最小単位の領域を、単位作業区画A3として設定する。
【0055】
図8(c)に示すように、ルート作成部51Bは、圃場マップMP2の単位作業区画A3毎に、走行車体3が直進する直進部(直進ルート)L1aの作成を行う。即ち、ルート作成部51Bは、例えば、単位作業区画A3の幅方向中央部に、当該単位作業区画A3の長手方向の両端部を結ぶ直線状の直進ルートL1aを作成する。ルート作成部51Bは、旋回エリアA1を通過するルート、即ち、隣接する直進ルートL1aを旋回エリアA1内で結ぶことができるルートを作成する。即ち、ルート作成部51Bは、走行車体3が旋回する旋回部(旋回ルート)L1bが旋回エリアA1内に位置するように、旋回ルートL1bを作成する。即ち、ルート作成部51Bは、作業エリアA2の外側に設定された旋回エリアA1に、自動運転のための走行予定ルートL1の一部を作成する。
【0056】
なお、ルート作成部51Bは、走行予定ルートL1とトラクタ1(走行車体3)の車速(移動速度)とを対応付けることが可能である。例えば、ルート設定画面M3に車速を入力する車速入力部を設け、当該車速入力部に車速が入力されたとする。ルート作成部51Bは、直進ルートL1aと車速入力部に入力された車速とを対応付ける。ルート作成部51Bによって作成された走行予定ルートL1(直進ルートL1a及び旋回ルートL1b)は記憶部53に記憶される。
【0057】
<自動運転制御>
作業機101は、走行車体3の自動運転を制御する自動運転制御システムを備えている。自動運転制御システムは、制御装置60と、センサ67とを含んでいる。制御装置60及びセンサ67は、トラクタ1に設けられている。なお、制御装置60の全部又は一部の機能は、端末装置100又は外部装置70に設けられてもよい。トラクタ1は、制御装置60を備えている。制御装置60は、トラクタ1における走行系の制御、作業系の制御等を行う装置であり、電気・電子回路、CPU等に格納されたプログラム等から構成されている。
【0058】
図2に示すように、制御装置60には、運転切換スイッチ65、及び、センサ67が接続されている。運転切換スイッチ65は、ON/OFFに切り換え可能なスイッチであって、ONである場合に制御装置60を自動運転モードに設定することができ、OFFである場合に制御装置60を手動運転モードに設定することができる。
【0059】
センサ67は、トラクタ1の周囲の状況を検出する非接触方式のセンサである。センサ67は、走行車体3の前方であって、前輪7Fよりも前側に設けられている(図20を参照)。本実施形態では、センサ67は、レーザセンサ(ライダー(LiDAR: Light Detection And Ranging))であり、1秒間に何百万回ものパルス状の赤外線等を前方へ照射し、センサ67に跳ね返って戻ってくるまでの時間を測定するものである。これにより、センサ67は、トラクタ1の進行を阻害する障害物、及び、トラクタ1の離間距離が所定距離以下である場合に、当該障害物を検知可能となっている。なお、センサ67としては、レーザセンサに限られず、例えば、CCDカメラ、CMOSカメラ、赤外線カメラ等の他の形式の光学センサが用いられてもよいし、光学センサに加え、走行車体3の前方及び側方にソナーを設けてもよい。
【0060】
図2に示すように、制御装置60は、自動運転制御部63を備えている。自動運転制御部63は、電気・電子回路、CPU等に格納されたプログラム等から構成されている。
【0061】
自動運転制御部63は、走行車体3の自動運転を制御する。自動運転制御部63は、自動運転モードになっている場合に自動運転を開始する。図9に示すように、トラクタ1が自動運転を行っている状況下において、車体位置と走行予定ルートL1との偏差が閾値未満である場合、自動運転制御部63は、操舵軸(回転軸)31の回転角を維持する。車体位置と走行予定ルートL1との偏差が閾値以上であって、トラクタ1が走行予定ルートL1に対して左側に位置している場合は、自動運転制御部63は、トラクタ1の操舵方向が右方向となるように操舵軸31を回転する。車体位置と走行予定ルートL1との偏差が閾値以上であって、トラクタ1が走行予定ルートL1に対して右側に位置している場合は、自動運転制御部63は、トラクタ1の操舵方向が左方向となるように操舵軸31を回転する。
【0062】
なお、上述した実施形態では、車体位置と走行予定ルートL1との偏差に基づいて操舵装置29の操舵角を変更していたが、走行予定ルートL1の方位とトラクタ1(走行車体3)の進行方向(走行方向)の方位(車体方位)とが異なる場合、即ち、走行予定ルートL1に対する車体方位の角度が閾値以上である場合、自動運転制御部63は、角度が零となる(車体方位F1が走行予定ルートL1の方位に一致する)ように操舵角を設定してもよい。また、自動運転制御部63は、偏差(位置偏差)に基づいて求めた操舵角と、方位(方位偏差)に基づいて求めた操舵角とに基づいて、自動操舵における最終の操舵角を設定してもよい。上述した実施形態における自動操舵における操舵角の設定は一例であり、限定されない。
【0063】
なお、自動運転制御部63は、走行予定ルートL1と車速とが対応付けられている場合、現在のトラクタ1の車速が走行予定ルートL1に対応した車速に一致するように変速装置5の変速段、原動機4の回転数等を自動的に変更する。
【0064】
また、自動運転制御部63は、直進ルートL1aにおいて作業装置2による対地作業を行い、旋回ルートL1bでは、作業装置2による対地作業を一旦停止して旋回して、直進ルートL1aに入った時点で対地作業を再開する。以上のように、制御装置60によって、トラクタ1(走行車体3)を自動運転させることができる。
【0065】
<障害物検知と自動運転との関係>
制御装置60(自動運転制御部63)は、センサ67の障害物の検出に関する検出情報に基づいて、走行車体3の自動運転を制御する。制御装置60(自動運転制御部63)は、センサ67の検出情報が障害物の検知を示し且つ、走行車体3と障害物との離間距離が所定以下の場合、自動運転の影響を及ぼす障害物が存在すると判断する。制御装置60(自動運転制御部63)は、自動運転の影響を及ぼす障害物が存在すると判断した場合、自動運転の制御として、走行車体3の停止(制動制御)、或いは、障害物を回避(回避制御)の自動運転等を行う。制御装置60(自動運転制御部63)は、センサ67の検出情報が障害物の検知を示していない場合(障害物を検知していない場合)、走行車体3の自動運転を継続する。
【0066】
図10に示すように、例えば、圃場Fにおいて、トラクタ1が、設定された走行予定ルート(走行経路)L1上を走行するよう自動運転制御されるものとする。図10(a)に示すように、走行予定ルートL1のいずれの直進ルートL1a及び旋回ルートL1bにおいても、障害物がない場合(検出情報が走行車体3の進行方向に障害物を検知していないことを示している)には、センサ67による検知がなされずにトラクタ1が走行予定ルートL1を走行していく。
【0067】
図10(b)に示すように、例えば、直進ルートL1aをトラクタ1が走行しており、当該直進ルートL1aとは異なるレーンの直進ルートL1a上に、障害物Oが位置している場合には、センサ67からトラクタ1の前方に発振されるパルス波は、障害物Oに到達しない。このため、センサ67による検知がなされず、自動運転は継続される。この状態から、更にトラクタ1が走行を進め、障害物Oが位置している直進ルートL1aに侵入すると、図10(c)に示すように、トラクタ1は障害物Oに近づく。障害物O及びトラクタ1のセンサ67の離間距離が距離D以下である場合には、センサ67により障害物Oが検知される。センサ67が障害物Oを検知したと判定される。
【0068】
制御装置60(自動運転制御部63)は、障害物の回避ができないと判断した場合、トラクタ1の制動を行う。本実施形態では、右左の後輪7Rのサイドブレーキ11を作動させて、トラクタ1を停止させる。より具体的には、制御装置60(自動運転制御部63)は、センサ67が障害物Oを検知したと判定された場合、制動方向に操作シリンダ13が操作されるよう、制御弁21に制御信号を送出する(図2を参照)。なお、サイドブレーキ11の作動に代えて、又は、サイドブレーキ11の作動に加えて、変速装置5が減速方向に変速するよう、変速装置5が制御されてもよい。この場合、制御装置60(自動運転制御部63)は、センサ67が障害物Oを検知したと判定された場合、第1作動弁25及び第2作動弁26に制御信号を送出する。また、制御装置60(自動運転制御部63)は、センサ67が障害物Oを検知したと判定された場合、原動機4を停止するよう制御してもよい。
【0069】
制御装置60(自動運転制御部63)は、走行車体3の自動運転において、障害物の回避が可能であると判断した場合は、障害物を回避するための走行経路を、走行予定ルート(走行経路)L1とは別に作成し、作成した走行経路に沿って移動するように、操舵装置29の操舵の制御を行う。なお、障害物を回避した場合には、制御装置60(自動運転制御部63)は、走行予定ルート(走行経路)L1に沿って移動するように、操舵装置29の操舵の制御を行う。
【0070】
さて、制御装置60(自動運転制御部63)は、センサ67の検出情報に基づいて、走行車体3の自動運転を制御するだけでなく、観測衛星103が観測した障害物の観測情報に基づいて、走行車体3の自動運転を制御する。制御装置60(自動運転制御部63)は、センサ67が障害物Oを検出していない、即ち、検出情報が障害物Oの検出を示していない場合において、観測情報が走行車体3の周囲に障害物Oが存在することを示しているときは、障害物Oの観測(検知)に対応した自動運転の制御を行う。
【0071】
観測衛星103は、観測エリア150の範囲内における障害物Oの観測情報に基づいて、センサ67が障害物Oを検知していない状態においても、障害物Oを検知する。図12に示すように、制御装置60(自動運転制御部63)では、例えば、端末装置100から逐次送出される観測データ(観測情報)が、矩形の観測エリア150に対応する画像にそれぞれ変換される。当該画像を、矩形四隅の1点(例えば、左下の端点)を原点O1とし、横軸X、縦軸Yとした2次元座標系に、フィットさせる。そして、制御装置60(自動運転制御部63)では、周期t毎にて生成される観測エリア150の画像が、その都度機械学習されていく。
【0072】
図12(a)に示すように、圃場Fの何れにおいても障害物Oが存在せず(図10(a)の状態に対応する画像)、圃場Fの画像から認識される状態の変化が殆どない場合の画像が、教師データとして利用される。制御装置60(自動運転制御部63)では、機械学習の結果と、最新の圃場Fの画像とが比較されて、圃場Fの画像から認識される状態の変化がある否かが、判断される。ここにおいて、圃場Fの画像の変化は、例えば、図12(b)に示すように、圃場Fの地表に障害物Oが存在している場合の画像があげられる(図10(b)~(d)の状態に対応する画像)。2次元座標系において、障害物Oの位置が、座標(X1,Y1)の位置に対応している場合、当該座標(X1,Y1)近傍の画素に変化が生じたものとして、制御装置60(自動運転制御部63)は、障害物Oが存在していると判断する。
【0073】
制御装置60(自動運転制御部63)は、トラクタ1(走行車体3)が自動運転されている状態において、センサ67が障害物Oを検出しなかった場合であっても観測衛星103によって障害物Oが観測(検出)された場合、自動運転の制御として、走行車体3の制動制御、或いは、回避制御の自動運転等を行う。制御装置60(自動運転制御部63)によるトラクタ1の制動制御、或いは、障害物Oの回避制御は、上述したセンサ67で検知した場合での自動運転の制御と同様である。なお、観測衛星103によって障害物Oが観測(検出)された場合において、トラクタ1(走行車体3)と障害物Oとの離間距離が距離D以下である場合に、トラクタ1の制動制御(トラクタ1の停止)、或いは、障害物Oの回避制御を行ってもよいが、これに限定されない。
【0074】
制御装置60(自動運転制御部63)は、少なくとも、検出情報が障害物Oの検出を示している場合及び観測情報が走行車体3の周囲に障害物が存在することを示している場合のいずれかに、注意を促すための警告の制御を実行してもよい。例えば、制御装置60(自動運転制御部63)は、図10(b)に示すように、検出情報が障害物Oの検出を示していない場合において、観測情報が走行車体3の周囲に障害物Oが存在することを観測したときには、注意を促すための警告を実行する。また、制御装置60(自動運転制御部63)は、図10(c)に示すように、検出情報が障害物Oの検出を示している場合、注意を促すための警告を実行する。制御装置60(自動運転制御部63)は、例えば、障害物Oが観測(検知)された場合に、外部装置70の表示部70A、及び、表示装置50の表示部52に、「障害物あり」等のメッセージが表示されるように警告を表示する制御を行ってもよい。或いは、制御装置60(自動運転制御部63)は、例えば、障害物Oが観測(検知)された場合に、トラクタ1(走行車体3)に設けたスピーカが、障害物Oがあることを示す警告の音を発生するように制御を行ってもよいし、トラクタ1(走行車体3)に設けたライト(光源)が、障害物Oがあることを示す警告の光を発光するように制御してもよい。制御装置60(自動運転制御部63)は、センサ67による障害物Oの検知と、観測衛星101による障害物Oの検知とが区別できるように、警告の形態を変更してもよい。
【0075】
さて、センサ67によって障害物Oを検出し且つ、観測衛星103によっても障害物Oを観測(検出)する場合がある。制御装置60(自動運転制御部63)は、センサ67によって障害物Oを検出し(検出情報が障害物Oの検出を示し)、観測衛星103によっても障害物Oを観測(検出)する。観測情報が走行車体3の周囲に障害物Oが存在することを観測したときには、センサ67の検出情報に基づいて、自動運転を制御する。例えば、図10(b)に示すように、トラクタ1(走行車体3)が障害物Oと離れた場所でも観測衛星103によって障害物Oを観測することができる。この場合、制御装置60(自動運転制御部63)は、トラクタ1(走行車体3)と障害物Oとの離間距離が長いため、警告の制御を行う。このような状況において、図10(c)、図10(d)に示すように、センサ67によって障害物Oを検出した場合は、制御装置60(自動運転制御部63)によるトラクタ1の制動制御、或いは、障害物Oの回避制御を実行する。
【0076】
<<公道での障害物検知>>
本実施形態のトラクタ1は、測位衛星102、測位装置40、及び、自動運転制御部63により、圃場F以外の場所においても自動運転が可能となっている。図13に示すように、例えば、圃場Fの外側の領域における所定の位置(トラクタ1の車庫などの位置)から、トラクタ1を自動運転させて、公道Rを経て圃場Fまで走行させてもよい。より具体的には、表示装置50の操作により、所定のナビゲーションシステムのアプリケーションを起動させ、目的地の圃場Fの位置を入力することで、現在地(始発位置)から目的地の圃場Fまでの走行予定ルートL2が、自動的に設定されてもよい。この場合、設定された走行予定ルートL2は公道Rを含んでおり、トラクタ1は、当該走行予定ルートL2を走行するよう、公道Rを経て圃場Fまで自動運転制御されるものとする。
【0077】
図13(a)に示すように、公道Rを含む走行予定ルートL2において、障害物がない場合には、センサ67による検知がなされずにトラクタ1が走行予定ルートL2を走行していく。図13(b)に示すように、例えば、トラクタ1が走行予定ルートL2における公道Rを走行しており、その先に障害物Oが位置している場合であって、障害物O及びトラクタ1のセンサ67の離間距離が距離Dより大きい場合には、センサ67からトラクタ1の前方に発振されるパルス波は、障害物Oに到達しない。このため、センサ67による検知がなされず、センサ67に基づく制御装置60(自動運転制御部63)の制動は実行されない。
【0078】
この状態から、更にトラクタ1が走行を進め、図13(c)に示すように、トラクタ1は障害物Oに近づく。障害物O及びトラクタ1のセンサ67の離間距離が距離D以下である場合には、センサ67により障害物Oが検知される。センサ67が障害物Oを検知したと判定され、センサ67に基づく制御装置60(自動運転制御部63)の制動が実行される。
【0079】
一方、図13(d)に示すように、障害物O及びトラクタ1のセンサ67の離間距離が距離D以下であっても、上記土煙C等が介在する場合には、センサ67からトラクタ1の前方に発振されるパルス波は、障害物Oに到達しない。従って、センサ67による検知がなされず、センサ67に基づく制御装置60(自動運転制御部63)の制動は実行されない。
【0080】
また、図13(b)に示すように、障害物Oが存在するものの、障害物O及びトラクタ1のセンサ67の離間距離が大きく(離間距離>距離D)、センサ67による検知がなされる前の状態であっても、できるだけ早期に障害物Oを検知することが好適である。以上のことから、検知システムSでは、観測衛星103により取得される観測データに基づいて、公道Rにおける障害物Oも検知されるようになっている(図1を参照)。
【0081】
公道Rにおける障害物Oを検知する場合、図14に示すように、上述した設定画面M4にて、目的地の圃場F、及び、圃場Fに通じる公道Rを含む範囲の地図を、地図表示部125に表示させる。観測エリア設定部110にて、地図表示部125に表示される地図の緯度LA1~LA4、経度LO1~LO4が決定されて、観測エリア150が設定される。なお、本実施形態では、目的地の圃場F、及び、圃場Fに通じる公道Rを含む周辺のエリアが、観測エリア150として設定されるものとする。設定された観測エリア150、及び、観測タイミング入力部126に入力された取得周期tは、記憶装置112に記憶されるとともに、観測指示部113にて、観測衛星103に向けて送出される。
【0082】
図15に示すように、制御装置60(自動運転制御部63)では、端末装置100から逐次送出される観測データが、矩形の観測エリア150に対応する画像にそれぞれ変換される。当該画像を2次元座標系にフィットさせ、周期t毎にて生成される観測エリア150の画像が、その都度機械学習されていく。図15(a)に示すように、公道Rの何れにおいても障害物Oが存在せず(図13(a)の状態に対応する画像)、公道Rの画像から認識される状態の変化が殆どない場合の画像が、教師データとして利用される。制御装置60(自動運転制御部63)では、機械学習の結果と、最新の公道Rの画像とが比較されて、公道Rの画像から認識される状態の変化がある否かが、判断される。ここにおいて、公道Rの画像の変化は、例えば、図15(b)に示すように、公道Rの地表に障害物Oが存在している場合の画像があげられる(図13(b)~(d)の状態に対応する画像)。2次元座標系において、障害物Oの位置が、座標(X1,Y1)の位置に対応している場合、当該座標(X1,Y1)近傍の画素に変化が生じたものとして、制御装置60(自動運転制御部63)は、障害物Oを検知する。
【0083】
そして、制御装置60(自動運転制御部63)が障害物Oを検知したと判定した場合には、上述したような自動運転の制御を行う。
【0084】
図16は、作業機101の制御装置60(自動運転制御部63)の作動を示すフローチャートの一例である。測位衛星102、及び、観測衛星103は、それぞれ常時駆動しているとともに、端末装置100、作業機101、基地局104、及び、外部装置70は、既に通信ネットワークNに接続され、情報通信可能となっているものとする(図1を参照)。また、圃場Fにおいて障害物Oを検知する場合には、既に、走行予定ルートL1が設定されており、圃場Fでの自動運転制御が開始されているものとする。公道Rにおいて障害物Oを検知する場合には、既に、走行予定ルートL2が設定されており、公道Rでの自動運転制御が開始されているものとする。障害物Oの検知は、圃場F及び公道Rの何れか一方、又は、両方にて、実行されてもよい。
【0085】
外部装置70の表示部70Aに表示される設定画面M4を介して、観測エリア設定部110にて、観測衛星103による地表の観測エリア150、及び、観測データを取得する周期tが設定される(S1)。圃場Fにおいて障害物Oを検知する場合には、1つの圃場Fを含むエリアが設定され、公道Rにおいて障害物Oを検知する場合には、目的地の圃場F、及び、圃場Fに通じる公道Rを含む周辺のエリアが設定される(図11図14を参照)。
【0086】
観測指示部113にて、設定された観測エリア150、及び、周期tに基づく指示信号が、基地局104を介して観測衛星103に送出される(S2)。観測衛星103より、トラクタ1を含む観測エリア150に対応する観測データが、周期t毎に取得されて(S3)、取得された観測データが、端末装置100に逐次送信されて記憶されていく(S4)。記憶された観測データは、端末装置100から作業機101へ周期t毎に逐次送信されて(S5)、制御装置60(自動運転制御部63)にて、送信されてきた観測データが画像に変換され、圃場F又は公道Rの画像が機械学習される。(S6)。
【0087】
次いで、自動運転しているトラクタ1のセンサ67が用いられ、障害物Oが検知されたか否かが判定される(S7)。障害物O及びトラクタ1のセンサ67の離間距離が距離D以下であって、センサ67にて障害物Oを検出可能な状態(図10(c)及び図13(c)を参照)である場合、ステップS7にて「Yes」と判定され、制御装置60(自動運転制御部63)による制動制御、警告制御、回避制御の少なくとも1つが実行される(S8)。
【0088】
他方、障害物Oが存在しない場合(図10(a)及び図13(a)を参照)、障害物Oが存在するものの、障害物O及びトラクタ1のセンサ67の離間距離が大きい状態(離間距離>距離D、図10(b)及び図13(b)を参照)である場合、又は、障害物O及びトラクタ1のセンサ67の離間距離が距離D以下であっても、土煙C等により遮断されてセンサ67にて障害物Oを検出できない状態(図10(d)及び図13(d)を参照)である場合、ステップS7にて「No」と判定される。この場合、センサ67による障害物Oの検知がなされない。
【0089】
次いで、制御装置60(自動運転制御部63)にて、圃場F又は公道Rの画像における学習結果と、最新の圃場F又は公道Rの画像とが比較されて、圃場F又は公道Rの画像に変化があるか否かが判定される(S9)。ステップS9にて「Yes」と判定された場合、圃場F又は公道Rに障害物Oが存在するとして、制御装置60(自動運転制御部63)により障害物Oの検知がなされる。即ち、センサ67による障害物Oの検知がなされない場合である、図10(b),(d)、図13(b),(d)の状態であっても、観測衛星103の観測データに基づき障害物Oが検知される。そして、制御装置60(自動運転制御部63)による制動制御、警告制御、回避制御の少なくとも1つが実行される(S8)。一方、ステップS9にて「No」と判定された場合、圃場F又は公道Rに障害物Oが存在しないとして、制御装置60(自動運転制御部63)により障害物Oの検知がなされない(図10(a)及び図13(a)を参照)。この場合、自動運転によるトラクタ1の走行が継続される。
【0090】
制御装置60(自動運転制御部63)は、観測情報に基づいて、観測衛星103が観測した障害物Oが、走行車体3の走行予定ルート(走行経路)L1に存在するか否かを判断し、且つ、走行予定ルート(走行経路)L1に障害物Oが存在すると判断した場合は、走行車体3が走行予定ルート(走行経路)L1を走行したときに障害物Oを回避できるか否かを判断する。図13(b)■(d)の状態において、観測衛星103の観測データに基づき障害物Oが検知されると、制御装置60(自動運転制御部63)は、観測データ(画像)から障害物Oの大きさを推定する。障害物Oが大きく、障害物Oによって公道Rを塞いでいると推定される場合、例えば、障害物Oが存在する公道Rの位置において、障害物Oを除く公道Rの道幅が走行車体3、又は、作業装置の最大幅よりも小さい場合、制御装置60(自動運転制御部63)は、走行車体3のすれ違いができないと判断する。制御装置60(自動運転制御部63)は、すれ違いができないと判断した場合、走行車体3の走行予定ルート(走行経路)L1を変更する。
【0091】
障害物Oを除く公道Rの道幅が、走行車体3、又は、作業装置の最大幅よりも大きい場合、制御装置60(自動運転制御部63)は、走行車体3のすれ違いができると判断する。なお、走行車体3のすれ違いは、上述した回避制御の一種であり、走行車体3のすれ違いができる場合は、制御装置60(自動運転制御部63)は、走行車体3の進行方向に設定した走行予定ルート(走行経路)L1の一部であって障害物Oの近傍のルート(経路)を、障害物Oを迂回するように変更する。したがって、走行車体3のすれ違いができる場合は、障害物Oの近傍のルート(経路)だけを局所的経路設定によって、変更して自動走行を行う。一方、走行車体3のすれ違いができない場合は、制御装置60(自動運転制御部63)は、走行予定ルート(走行経路)L1を大局的経路設計によって大幅に変更し、自動走行前に予め設定した走行予定ルート(走行経路)L1を大幅に変更する。
【0092】
[第2実施形態]
上記第1実施形態においては、制御装置60(自動運転制御部63)にて、観測データから変換された圃場F又は公道Rの画像に、変化があるか否かが判定される。圃場F又は公道Rの画像に変化があると判定された場合、障害物Oが存在するとして、制御装置60(自動運転制御部63)により障害物Oの検知がなされるようになっていた。本発明の第2実施形態に係る制御装置60(自動運転制御部63)においては、圃場F又は公道R上の移動体を障害物Oとして、制御装置60(自動運転制御部63)は、観測にて認識される移動体の位置の経時変化に基づいて、移動体(障害物O)を検知する。第2実施形態は、この点についてのみ、第1実施形態と異なる。以下、第2実施形態の第1実施形態と異なる点について説明する。
【0093】
図17に示すように、圃場F上の移動体(障害物O)を検知する場合には、制御装置60(自動運転制御部63)にて、圃場Fの画像に対し、2値化処理等の所定の画像処理を施すことにより、障害物Oに対応する位置を識別し、障害物Oの位置に2次元座標系における座標(X1,Y1)を割り当てる。図18に示すように、公道R上の移動体(障害物O)を検知する場合にも、制御装置60(自動運転制御部63)にて、圃場Fの画像に対し、上述と同様に障害物Oの位置に2次元座標系における座標(X1,Y1)を割り当てる。
【0094】
図17及び図18の何れに示す場合においても、2次元座標系において、上記設定された周期t毎に取得される各観測データから、座標(X1,Y1)の位置の変化を軌跡として取得できる。制御装置60(自動運転制御部63)は、この座標(X1,Y1)の軌跡に基づいて、移動体(障害物O)の位置の経時変化を取得する。
【0095】
より具体的には、例えば、時刻θ=θ0の観測データにおける座標(X1,Y1)を基準点として、θ0から周期tが経過したときの時刻θ=θ0+tの観測データにおける座標(X1,Y1)に基づいて、移動距離D1が決定される。更に、θ0から周期2tが経過したときの時刻θ=θ0+2tの観測データにおける座標(X1,Y1)に基づいて、移動距離D2が決定される。このように、移動距離D1[θ=θ0+t],D2[θ=θ0+2t],・・・,Dn[θ=θ0+nt]が、逐次決定されていく。そして、決定された各移動距離D1~Dn、及び、下記(1)式に基づいて、経時変化dD/dθを決定する。ここにおいて、値nは自然数であり、変化の感度に応じて適宜調整されてもよい。値nは、例えば、周期tが短いほどより大きい数となるよう調整されてもよい。
【0096】
dD/dθ=(D1+D2+・・・+Dn)/(n*t) ・・・(1)
【0097】
制御装置60(自動運転制御部63)は、上記決定された経時変化dD/dθが、閾値(dD/dθ)th以内の値であるか否かに基づいて、移動体(障害物O)の検知を行う。経時変化dD/dθが大きい場合には、将来的に、移動体(障害物O)の移動距離が大きくなり、移動後の位置は広い範囲に推移する可能性が大きい。このため、移動する移動体(障害物O)、及び、自動運転にて走行しているトラクタ1が、互いに近接していく可能性も大きくなる。この場合に、トラクタ1において、圃場F上を移動している移動体(障害物O)、又は、公道R上を移動している移動体(障害物O)とのすれ違い走行が困難であるとして、制御装置60(自動運転制御部63)による制動制御、警告制御、回避制御の少なくとも1つが実行されるようになっている。
【0098】
ここにおいて、閾値(dD/dθ)thは、例えば、トラクタ1と移動体(障害物O)との位置関係、トラクタ1の車速、走行予定ルートL1,L2の長さ等に基づいて、調整されてもよい。より具体的には、トラクタ1及び移動体(障害物O)の離間距離が小さいほど、トラクタ1の車速が大きいほど、又は、走行予定ルートL1,L2の長さが短いほど、閾値(dD/dθ)thの値をより小さい値に設定してもよい。即ち、dD/dθ≦(dD/dθ)thの関係にある場合には、移動体(障害物O)及びトラクタ1が互いに近接する可能が大きくなく、移動体(障害物O)の検知を行わない。一方、dD/dθ>(dD/dθ)thの関係にある場合には、移動体(障害物O)及びトラクタ1が互いに近接する可能性が大きく、移動体(障害物O)の検知を行い、すれ違い走行が困難であるとして、トラクタ1の制動制御及び警告表示制御を実行する。
【0099】
図19に示すように、第2実施形態の作動を示すフローチャートにおいては、図16のステップS6に代えて、制御装置60(自動運転制御部63)にて、観測データを画像に変換して移動体(障害物O)の経時変化dD/dθが決定される(S11)。図16のステップS9に代えて、経時変化dD/dθが、閾値(dD/dθ)thよりも大きいか否かが判定される(S12)。なお、図19において、図16に示すステップと同じものについては、同じ符号を付すことで作動の説明を省略する。
【0100】
第2実施形態の効果を説明する。経時変化dD/dθが大きい場合には、将来的に、移動体(障害物O)の移動距離が大きくなり、移動後の位置は広い範囲に推移する可能性が大きい。このため、移動する移動体(障害物O)、及び、自動運転にて走行しているトラクタ1が、互いに近接していく可能性も大きくなる。このことに基づいて、上記第2実施形態によれば、経時変化dD/dθが大きい場合に、トラクタ1における移動体(障害物O)とのすれ違い走行が困難であるとして、制動制御、警告制御、回避制御を実行できる。従って、障害物Oが移動体として圃場Fを移動する場合であっても、走行しているトラクタ1が障害物Oに衝突する前に、トラクタ1を早期かつ確実に制動することができる。また、オペレータ等に早期かつ確実に注意を促すことができ、トラクタ1の制動操作や操舵操作に早期かつ確実に移行できる。また、障害物Oを回避するようトラクタ1を走行させることができる。以上より、障害物Oに起因して、トラクタ1の走行継続が困難となったり、トラクタ1が走行予定ルートL1,L2から離脱し復帰が困難となる事象を、早期かつ確実に抑制できる。
【0101】
<まとめ>
以上説明したように、本発明の実施形態に係る作業機101の自動運転制御システムは、自動運転が可能なトラクタ1(走行車体)に設けられ、障害物Oを検知可能なセンサ67と、センサ67の障害物Oの検出に関する検出情報に基づいて、トラクタ1の自動運転を制御可能な制御装置60(自動運転制御部63)と、を備える。制御装置60は、観測衛星103が観測した障害物Oの観測情報に基づいて、トラクタ1の自動運転を制御する。
【0102】
これによれば、障害物Oの検知にあたり、センサ67の検出情報、及び/又は、観測衛星103により取得される観測情報を利用することができる。このため、圃場F、公道R等における障害物Oを、早期かつ確実に検知できる。従って、早期かつ確実に、障害物Oの影響が走行に及ばないよう自動運転させることができる。より具体的な自動運転の制御態様としては、例えば、トラクタ1を停止させる制御(制動制御)、障害物Oを回避する制御(回避制御)、注意を促すための警告を実行する制御(警告制御)などが、用いられてもよい。以上より、障害物Oに起因して、トラクタ1の走行継続が困難となったり、トラクタ1が走行予定ルートL1,L2から離脱し復帰が困難となる事象を、早期かつ確実に抑制できる。
【0103】
制御装置60(自動運転制御部63)は、検出情報が障害物Oの検出を示していない場合において、観測情報がトラクタ1の周囲に障害物Oが存在することを示しているときには、障害物Oの観測に対応した自動運転を制御する。
【0104】
センサ67の検出情報として、例えば、障害物O及びトラクタ1のセンサ67の離間距離に応じて得られる情報などが挙げられ、より具体的には、センサ67は、当該離間距離が距離D以下である場合に、障害物Oが存在することを示すようになっていてもよい。このような場合に、圃場F、公道R等において、障害物O及びトラクタ1のセンサ67の離間距離が距離D以下であっても、土煙C等の介在により、センサ67による検知が困難となる事象が生じ得る。また、障害物Oが存在するものの、障害物O及びトラクタ1のセンサ67の離間距離が大きく(離間距離>距離D)、センサ67による検知がなされる前の状態であっても、できるだけ早期に障害物Oを検知することが好適である。上記構成によれば、観測衛星103により取得される観測データに基づくことで、上述のように、センサ67による検知が困難となる事象が生じる場合や、センサ67による検知がなされる前の状態であっても、早期かつ確実に、障害物Oの影響が走行に及ばないよう自動運転させることができる。
【0105】
制御装置60(自動運転制御部63)は、検出情報が障害物Oの検出を示し、且つ、観測情報がトラクタ1の周囲に障害物Oが存在することを観測したときには、検出情報に基づいて、自動運転を制御する。
【0106】
これによれば、トラクタ1の周囲に障害物Oが存在していることを、より確実に検知することができ、障害物Oの影響が走行に及ばないよう自動運転させることができる。
【0107】
制御装置60(自動運転制御部63)は、少なくとも、検出情報が障害物Oの検出を示している場合及び観測情報がトラクタ1の周囲に障害物Oが存在することを示している場合のいずれかに、注意を促すための警告を実行する。
【0108】
これによれば、警告制御の実行にあたり、センサ67の検出情報、及び/又は、観測衛星103により取得される観測情報を利用することができる。従って、オペレータ等に早期かつ確実に注意を促すことができ、トラクタ1の制動操作や操舵操作に早期かつ確実に移行できる。より具体的な警告制御の態様としては、例えば、外部装置の画面にメッセージを表示する制御、トラクタ1の音源から警告音を発生させる制御、トラクタ1の光源から光を発光させる制御などが、用いられてもよい。
【0109】
また、上記実施形態においては、制御装置60は、トラクタ1を制動すること、及び、オペレータ等に注意を促すことが両方可能となっている。このため、障害物Oに起因して、トラクタ1の走行継続が困難となったり、トラクタ1が走行予定ルートL1,L2から離脱し復帰が困難となる事象を、更に確実に抑制できる。
【0110】
制御装置60(自動運転制御部63)は、検出情報が障害物の検出を示していない場合において、観測情報がトラクタ1の周囲に障害物が存在することを観測したときには、注意を促すための警告を実行する。
【0111】
これによれば、観測衛星103により取得される観測データに基づくことで、上述のように、センサ67による検知が困難となる事象が生じる場合や、センサ67による検知がなされる前の状態であっても、早期かつ確実に警告制御を実行することができる。
【0112】
制御装置60(自動運転制御部63)は、観測情報に基づいて、観測衛星103が観測した障害物Oが、トラクタ1の走行予定ルートL1,L2に存在するか否かを判断し、且つ、走行予定ルートL1,L2に障害物Oが存在すると判断した場合は、トラクタ1が走行予定ルートL1,L2を走行したときに障害物Oを回避できるか否かを判断する。
【0113】
これによれば、走行予定ルートL1,L2における障害物Oの検知、及び、トラクタ1が障害物Oを回避できるか否かの判断にあたり、観測衛星103により取得される観測情報を利用することができる。このため、走行予定ルートL1,L2における障害物Oを、早期かつ確実に検知できる。トラクタ1が障害物Oを回避できると判断された場合、トラクタ1を走行予定ルートL1,L2にて走行させることができ、トラクタ1が障害物Oを回避できないと判断された場合には、制動制御、回避制御、警告制御などを実行することができる。
【0114】
制御装置60(自動運転制御部63)は、障害物Oの大きさに基づいてすれ違いができるか否かを判断する。
【0115】
これによれば、トラクタ1が障害物Oとすれ違いできるか否かの判断にあたり、観測情報として、障害物Oの大きさを反映させることができる。従って、上記判断を精度良く実行できる。
【0116】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0117】
1 :トラクタ
11 :サイドブレーキ
12 :ブレーキペダル
13 :操作シリンダ
21 :制御弁
29 :操舵装置
40 :測位装置
45A :通信装置
50 :表示装置
60 :制御装置
63 :自動運転制御部
65 :運転切換スイッチ
67 :センサ
70 :外部装置
100 :端末装置
101 :作業機
102 :測位衛星
103 :観測衛星
110 :観測エリア設定部
113 :観測指示部
150 :観測エリア
C :土煙
dD/dθ:経時変化
F :圃場
N :情報通信ネットワーク
N1 :車両用通信ネットワーク
O :障害物
R :公道
S :検知システム
t :周期
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20