(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093894
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】カール部を備えた金属カップ
(51)【国際特許分類】
B65D 1/46 20060101AFI20240702BHJP
B65D 8/04 20060101ALI20240702BHJP
B65D 1/26 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B65D1/46
B65D8/04 M
B65D1/26 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210532
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠島 信宏
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 健
(72)【発明者】
【氏名】田中 章太
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 江利華
【テーマコード(参考)】
3E033
3E061
【Fターム(参考)】
3E033AA08
3E033BA08
3E033BA09
3E033CA02
3E033DA10
3E033DE20
3E033FA10
3E033GA02
3E061AA26
3E061AB06
3E061AB07
3E061AB08
(57)【要約】
【課題】カール部の変形が有効に防止された金属カップを提供する。
【解決手段】上端に開口が形成されている金属カップ1において、上端開口を取り巻くようにカール部13が形成されており、カール部13の全周にわたって樹脂製補強部材15がカール部15の外面側或いは内面側に選択的に設けられていることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端に開口が形成されている金属カップにおいて、
前記上端開口を取り巻くようにカール部が形成されており、該カール部の全周にわたって樹脂製補強部材が該カール部の外面側或いは内面側に選択的に設けられていることを特徴とする金属カップ。
【請求項2】
前記樹脂製補強部材は、前記カール部の外面を完全に覆うように設けられているフィルムである請求項1に記載の金属カップ。
【請求項3】
前記樹脂製補強部材が、延伸フィルムであり、接着剤により、前記カール部の外面を完全に覆うように接着固定されている請求項2に記載の金属カップ。
【請求項4】
前記樹脂製補強部材は、リングの形態を有しており、前記カール部で覆われるように該カール部の内面側に設けられている請求項1に記載の金属カップ。
【請求項5】
前記樹脂製補強部材が、ゴム弾性を有しているリングである請求項4に記載の金属カップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口上端にカール部が形成された金属カップに関する。
【背景技術】
【0002】
喫飲などのために使用されるカップ形状の器としては、従来、紙やプラスチック製のものが広く使用されていた。これらの素材から成形された器は、軽量であり、しかも成形容易であるため、安価であり、使い捨ての用途に適しているからである。しかしながら、近年における資源の枯渇、ゴミ問題などの環境上の観点から、金属カップが注目されている。金属カップは、紙やプラスチック製のカップに比して、強度や耐久性が高く、繰り返し使用に適しており、資源の枯渇化やゴミの発生を大幅に抑制することができるからである。
【0003】
ところで、金属カップは、鋭利な開口端部を有しており、特にスポーツ観戦などで販売される飲料用として使用された場合の安全性に問題がある。飲料喫飲後の金属カップは、極めて雑に取り扱われ、鋭利な端部が人体に接触する場合が多いからである。このため、金属カップの上端には、丸められたカール部が形成され、鋭利な端部が人体に触れないようにされている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、上記のカール部は、低強度となっており、何かにぶつかったりすると容易に凹んだりしてしまう。このような変形が生じると、鋭利な部分が生じてしまい、安全性が問題となってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、カール部の変形が有効に防止された金属カップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、上端に開口が形成されている金属カップにおいて、
前記上端開口を取り巻くようにカール部が形成されており、該カール部の全周にわたって樹脂製補強部材が該カール部の外面側或いは内面側に選択的に設けられていることを特徴とする金属カップが提供される。
尚、本発明において、樹脂製補強部材が選択的に設けられているとは、カール部が形成されている部分に設けられていることを意味する。即ち、この樹脂製補強部材は、金属カップの内面或いは外面の全体にわたって設けられている有機樹脂被覆とは別個の部材である。
【0008】
本発明の金属カップにおいては、
(1)前記樹脂製補強部材は、前記カール部の外面を完全に覆うように設けられているフィルムであること、
(2)前記樹脂製補強部材が、延伸フィルムであり、接着剤により、前記カール部の外面を完全に覆うように接着固定されていること、
或いは、
(3)前記樹脂製補強部材はリングの形態を有しており、前記カール部で覆われるように該カール部の内面側に設けられていること、
(4)前記樹脂製補強部材が、ゴム弾性を有していること、
という態様を採り得る。
【発明の効果】
【0009】
本発明の金属カップは、カール部の外面側或いは内面側に樹脂製補強部材が設けられているため、カール部の変形が有効に防止されている。このため、カール部の変形により、鋭利な部分の形成が防止されているので、安全性が極めて高い。
従って、本発明の金属カップは、例えばスポーツ観戦などに際して販売される飲料用として使用された場合にも、高い安全性が確保されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の金属カップの全体の形態を示す概略側断面図である。
【
図2】
図1の金属カップが有するカール部の一例を示す部分拡大側断面図。
【
図3】
図1の金属カップが有するカール部の他の例を示す部分拡大側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1において、全体として1で示す本発明の金属カップは、上端が開口している筒状胴部3と、筒状胴部3の下端を閉じている底部5とからなっている。
底部5は、フラットであってもよいが、通常、環状の接地部7を有しており、この接地部7の外側が、屈曲しているチャーム部9により筒状胴部3の下端に連なっており、接地部7の内側が、ドーム状に凹んだ凹部11となっている。底部は、ドーム状に限らずフラット部としてもよい。
【0012】
また、スタック性を確保する場合には、
図1に示されているように、筒状胴部3の上端開口径Dが、筒状胴部3の下端の外径dよりも大きく設定される。特に、これにより、空の金属カップ1を積み重ねることができるので、搬送や保管に有利である。
【0013】
上述した形態の金属カップ1においては、また、筒状胴部3の上端に、外方に向かって凸となっているカール部13が全周にわたって形成されている。即ち、このようなカール部13を形成することにより、金属製の鋭利な端部13aが人体に接触することが有効に防止される。
【0014】
このような形態の金属カップ1において、構成素材である金属は、種々の金属ないし合金材であってよく、例えば、アルミニウム、銅、鉄或いは、これらの金属を含む合金、さらにはブリキなどの錫めっき鋼板や化成処理を施したアルミニウム板などの表面処理鋼板であってよい。一般的には、スチール、ステンレススチール、アルミニウムもしくはアルミニウム合金などが好適であるが、特に軽量性や加工性などの観点から、アルミニウム若しくはその合金が好適である。
【0015】
さらに、金属カップ1の内面は、有機樹脂被覆が積層されていてもよい。有機樹脂被覆としては、アクリル系塗料、ウレタン系塗料、シリコン系塗料、フッ素系塗料などの塗料に由来する被覆や、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の熱可塑性樹脂であり、耐腐食性や、過酷な成形加工に際しての表面荒れなどを抑制するために設けられるものであり、通常、100μm以下の薄い膜である。
また、上記のような有機樹脂被覆は、印刷特性や耐腐食性、耐傷付き性を確保するため、金属カップ1の外面に設けられていてもよい。
【0016】
このような金属カップ1は、例えば、金属製の薄肉の素板(内面となる側には、前述した有機樹脂被覆が形成されていてよい)を用いての打抜き、絞り、再絞り-しごき加工を行い、必要に応じて再絞りを複数回行い、次いで底部についてドーミング加工を行い、その後、洗浄乾燥を行った後、必要に応じて、外面塗料の焼付、仕上げニス塗布焼付などにより外面に有機樹脂被覆を形成し、さらに、塗料により有機樹脂被覆を形成する場合には、外面塗料の塗布及び焼き付けを行った後、カール加工が行われ、カール部13が形成される。
【0017】
上述した金属カップ1においては、カール部13の全周にわたって、樹脂製補強部材15が設けられる。カール部13は、非常に変形しやすい形態を有している。このため、本発明では、補強部材15によって、カール部13の強度を高め、変形し難くするわけである。このような樹脂製補強部材15は、大きく分けて、フィルムタイプとリングタイプの2つに分類することができる。このような樹脂製補強部材15のタイプを、
図2及び
図3に示した。
【0018】
図2に示されている樹脂製補強部材15は、フィルムタイプであり、フィルムの形態を有している(補強フィルムと呼ぶ)。補強フィルム15は、カール部13の外面を覆うように設けられており、カール部13の外面の傷付きを防止している。また、
図2から理解されるように、この補強フィルムは、カール部13の先端13aを覆い隠すように延びており、その先端15aがカール部13の先端13aからはみ出ている。これにより、カール部13が大きく変形した場合にも、その先端13aが外部に露出せず、鋭利な先端による傷付きを有効に防止することができる。
【0019】
このような補強フィルム15は、フィルム形成可能な樹脂材料、例えば種々の熱可塑性樹脂などから形成され、通常、10~1000μm程度の厚みを有している。
【0020】
また、補強フィルム15は、延伸されていることが好適であり、例えば、ポリプロピレンの延伸フィルム、ナイロン等のポリアミドの延伸フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルの延伸フィルムを、樹脂製補強部材15のフィルムとして好適に使用することができる。これらの延伸フィルムは、突き刺し強度が高く、カール部13の傷付き防止効果が極めて高い。
【0021】
上述した補強フィルム15は、カール加工前に、金属カップ1の筒状胴部3の上端内面に融着固定され、この後、カール加工を行い、筒状胴部3の上端をフィルム15と共に外方にカールさせることにより設けられる。この場合、補強フィルム15が未延伸フィルムの場合には、熱融着により筒状胴部3の上端内面に融着固定することができるが、延伸フィルムの場合には、エポキシ系、ウレタン系などのドライラミネート接着剤を用いて筒状胴部3の上端内面に融着固定することができる。
【0022】
図3に示されている樹脂製補強部材15は、リングタイプであり、無端状である(補強リングと呼ぶ)。補強リング15は、カール部13により覆われるように設けられている。即ち、補強リング15は、カール部13の芯材となって、カール部13の変形を防止するものである。カール部13の外面の傷付き防止という点では、フィルムタイプの方が優れているが、変形防止という点では、このリングタイプの方が優れており、耐衝撃性の点でも優れている。
【0023】
この補強リング15は、装着性等も考慮してゴム弾性を有している熱可塑性エラストマーにより形成されており、その厚みは、カール部13のカールの程度に応じて、カール部13により完全に被覆される程度の厚みに設定されていればよい。
【0024】
上記の熱可塑性エラストマーとしては、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体等のエチレン-α-オレフィン共重合体エラストマー、エチレン-プロピレン-非共役ジエン共重合体等のエチレン-α-オレフィン-非共役ジエン共重合体エラストマー、スチレン-ブタジエン共重合体エラストマー、スチレン-イソプレン共重合体エラストマー、スチレン-エチレン-プロピレン共重合体等のスチレン系エラストマーを挙げることができ、一般的には、コスト等の観点から、エチレン-α-オレフィン共重合体エラストマーが好適に使用される。
【0025】
上述した補強リング15は、カール加工前に、金属カップ1の筒状胴部3の上端部分を補強リング15内に嵌め込み、この状態でカール加工を行い、筒状胴部3の上端に補強リング15を巻き込むように外方にカールさせることにより、カール部13の芯材として、補強リング15を設けることができる。
【0026】
上述した本発明の金属カップ1は、カール部13の変形し難く、カール部13の変形による傷付きが有効に防止され、安全性が極めて高い。
【符号の説明】
【0027】
1:金属カップ
3:胴部
5:底部
7:接地部
13:カール部
15:樹脂製補強部材(補強フィルム、補強リング)