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特開2024-93895ポリプロピレン系樹脂発泡粒子およびポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体
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  • 特開-ポリプロピレン系樹脂発泡粒子およびポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093895
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】ポリプロピレン系樹脂発泡粒子およびポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/16 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
C08J9/16 CES
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210534
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100123009
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】益本 恭志
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA24
4F074AA24A
4F074AA98
4F074BA32
4F074BC12
4F074CA34
4F074CA39
4F074CA49
4F074DA02
4F074DA12
4F074DA22
4F074DA33
4F074DA35
4F074DA59
(57)【要約】
【課題】
バイオマス由来ポリプロピレン系樹脂を含み、優れたポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体を提供可能なポリプロピレン系樹脂発泡粒子およびこれを用いて製造されたポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体を提供する。
【解決手段】
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、当該発泡粒子の基材樹脂が、分子鎖中にバイオマス由来のモノマー成分を含むバイオマス由来ポリプロピレン系樹脂Aと、化石燃料由来ポリプロピレン系樹脂Bと、を含み、上記基材樹脂がバイオマス由来ポリプロピレン系樹脂Aを3重量%以上60重量%以下と化石燃料由来ポリプロピレン系樹脂Bを40重量%以上97重量%以下(ただし、両者の合計が100重量%である)とを含有し、発泡粒子成形体は、上記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を型内成形して構成される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子であって、
前記発泡粒子の基材樹脂が、分子鎖中にバイオマス由来のモノマー成分を含むバイオマス由来ポリプロピレン系樹脂Aと、化石燃料由来ポリプロピレン系樹脂Bと、を含み、
前記基材樹脂が前記バイオマス由来ポリプロピレン系樹脂Aを3重量%以上60重量%以下と前記化石燃料由来ポリプロピレン系樹脂Bを40重量%以上97重量%以下(ただし、両者の合計が100重量%である)とを含有するポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項2】
ASTM D6866-21により測定される前記バイオマス由来ポリプロピレン系樹脂Aのバイオマス度が10%以上50%以下である請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項3】
ASTM D6866-21により測定される前記発泡粒子のバイオマス度が1%以上30%以下である請求項1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項4】
前記基材樹脂の融点Tmが135℃以上160℃以下である請求項1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項5】
前記バイオマス由来ポリプロピレン樹脂Aの融点Tmが160℃以上170℃以下であり、前記化石燃料由来ポリプロピレン系樹脂Bの融点Tmが135℃以上145℃以下である請求項1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項6】
前記バイオマス由来ポリプロピレン系樹脂Aがプロピレンの単独重合体であり、230℃、荷重2.16kgで測定される該バイオマス由来ポリプロピレン系樹脂Aのメルトマスフローレート(MFR)が1g/10min以上5g/10min以下である請求項1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項7】
前記化石燃料由来ポリプロピレン系樹脂Bがプロピレン‐エチレンランダム共重合体であり、該プロピレン‐エチレンランダム共重合体のエチレン成分含有量が1重量%以上5重量%である請求項1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項8】
230℃、荷重2.16kgで測定される前記基材樹脂のメルトマスフローレート(MFR)が5g/10min以上15g/10min以下である請求項1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項9】
230℃、荷重2.16kgで測定される前記化石燃料由来ポリプロピレン系樹脂Bのメルトマスフローレート(MFRB)に対する230℃、荷重2.16kgで測定される前記バイオマス由来ポリプロピレン系樹脂Aのメルトマスフローレート(MFR)の比(MFR/MFR)が0.2以上0.8以下である請求項1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項10】
発泡粒子を10℃/分の加熱速度で23℃から200℃まで加熱する熱流束示差走査熱量測定(DSC)で得られるDSC曲線において、前記DSC曲線が主融解ピークと該主融解ピークの頂点温度よりも高温側に頂点温度を有する融解ピーク(高温ピーク)とを有し、前記高温ピークの融解熱量が、10J/g以上30J/g以下である請求項1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項11】
請求項1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を型内成形してなることを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス由来のポリプロピレン系樹脂を含むポリプロピレン系樹脂発泡粒子およびこれを用いて製造されたポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系樹脂を含むポリプロピレン系樹脂発泡粒子を型内成形することによって、強度および緩衝性に優れたポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体が得られることが知られている。たとえばポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体は、梱包材、自動車用部材、建築用部材など種々の用途に用いられている。
【0003】
ところで、近年、大気中の二酸化炭素濃度の増大や、化石燃料資源の枯渇化といった環境負荷に対する意識が高まっている。これに対し、植物度の高い植物由来ポリエチレン系樹脂を含むポリエチレン系樹脂発泡シートに関する技術が提案されている(たとえば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-60528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、ポリプロピレン系樹脂発泡体に関しては、これまで植物由来のポリプロピレン系樹脂を含むバイオマス由来のポリプロピレン系樹脂原料を用いた樹脂発泡粒子に関する技術は提案されていなかった。そのため、バイオマス由来の原料を使用し、上述する環境負荷の低減に対応できるポリプロピレン系樹脂発泡粒子およびポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体に関する技術の提案が望まれている。
【0006】
本発明は、かかる要望に鑑みてなされたものであり、バイオマス由来のポリプロピレン系樹脂を含み、優れたポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体を提供可能なポリプロピレン系樹脂発泡粒子およびこれを用いて製造されたポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、上記発泡粒子の基材樹脂が、分子鎖中にバイオマス由来のモノマー成分を含むバイオマス由来ポリプロピレン系樹脂Aと、化石燃料由来ポリプロピレン系樹脂Bと、を含み、上記基材樹脂が上記バイオマス由来ポリプロピレン系樹脂Aを3重量%以上60重量%以下と上記化石燃料由来ポリプロピレン系樹脂Bを40重量%以上97重量%以下(ただし、両者の合計が100重量%である)とを含有することを特徴とする。
【0008】
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体は、本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を型内成形してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、バイオマス由来のポリプロピレン系樹脂を含んで構成され環境負荷の低減に貢献する上、発泡粒子成形体内部の融着性、二次発泡性、回復性等において、優れたポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体を提供可能である。
したがって本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体は、環境負荷の低減を図りつつ、従来と同様に種々の分野において使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態であるポリオレフィン系樹脂発泡粒子の全融解熱量及び高温ピーク熱量を得るための、JIS K7122:1987年に記載されたプラスチックの転移熱測定方法に従って得たDSC曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子(以下、単に本発明の発泡粒子と言う場合がある)の基材樹脂は、ポリプロピレン系樹脂を主成分とし、分子鎖中にバイオマス由来のモノマー成分を含むバイオマス由来ポリプロピレン系樹脂Aと、化石燃料由来ポリプロピレン系樹脂Bと、を含む。
本発明の発泡粒子における基材樹脂は、上記バイオマス由来ポリプロピレン系樹脂Aを3重量%以上60重量%以下と、上記化石燃料由来ポリプロピレン系樹脂Bを40重量%以上97重量%以下(ただし、両者の合計が100重量%である)とを含有する。即ち、基材樹脂中に含まれるバイオマス由来ポリプロピレン系樹脂Aと化石燃料由来ポリプロピレン系樹脂Bの合計100重量%において、バイオマス由来ポリプロピレン系樹脂Aの含有量は3重量%以上60重量%以下であり、化石燃料由来ポリプロピレン系樹脂Bの含有量は40重量%以上97重量%以下である。
かかる本発明の発泡粒子は、バイオマス由来のポリプロピレン系樹脂を含み環境負荷の低減に貢献する上、型内成形により発泡粒子成形体内部の融着性、二次発泡性、養生後の回復性等に優れた発泡粒子成形体を提供することが可能である。
【0012】
本発明に関しバイオマスとは、再生可能な、生物由来の有機性資源(ただし、石油石炭等の化石燃料由来の有機性資源を除く)を指す。バイオマス由来ポリプロピレン系樹脂Aとは、バイオマス由来のモノマーが重合してなるバイオマス由来のモノマー成分を分子鎖中に含むポリプロピレン系樹脂を指す。ポリプロピレン系樹脂Aは、バイオマス由来のモノマー成分のみから構成されてもよいし、バイオマス由来のモノマー成分と化石燃料由来のモノマー成分とから構成されてもよい。
化石燃料由来ポリプロピレン系樹脂Bとは、実質的に化石燃料由来のモノマーのみが重合することで得られるポリプロピレン系樹脂を指す。化石燃料由来ポリプロピレン系樹脂Bは、分子鎖中に化石燃料由来のモノマー成分のみを含むことが好ましい。
【0013】
本発明において、バイオマス由来のモノマーは、バイオマス原料から製造されるプロピレン、エチレン又は炭素数4以上8以下のα-オレフィンを指す。また本発明において、バイオマス由来のモノマー成分とは、モノマーであるプロピレン、エチレン又は炭素数4以上8以下のα-オレフィンが付加重合することで生じる重合体における構成単位を指す。バイオマス由来のモノマーの製造方法は特に限定されず、バイオマス原料由来のアルコールの脱水、バイオマス原料由来のナフサを分解する等、従来公知の方法により得ることができる。バイオマス由来のモノマーの製造に使用されるバイオマス原料としては、農畜産物、林産物、藻類等から得られる単糖類、多糖類、植物性油脂、動物性油脂等が挙げられる。本発明において、バイオマス由来のモノマーを製造する際に用いられるバイオマス原料は、食料との非競合性や、副産物および廃棄物系バイオマスの利用により、循環型社会に貢献する観点から、廃食油、黒液、トール油、パーム油製造時の廃液(palm oil mill effluent)、微細藻類が含有する油脂等から製造されるバイオナフサを分解することで得られるプロピレンの使用が好ましい。
【0014】
本発明において、化石燃料由来のモノマーは、化石燃料から製造されるプロピレン、エチレン又は炭素数4以上8以下のα-オレフィンを指す。化石燃料由来のモノマーの製造方法は特に限定されず、石油化学工業で実施されている公知の方法により製造できる。例えば、石油精製の過程で得られたナフサの熱分解と分留により上記の化石燃料由来のモノマーを得ることができる。
【0015】
以下に、本発明についてさらに詳細に説明する。尚、以下の説明において、適宜、本発明の好ましい数値範囲を示す場合がある。この場合に、数値範囲の上限および下限に関する好ましい範囲、より好ましい範囲、特に好ましい範囲は、上限および下限の全ての組み合わせから決定することができる。また以下の説明において、バイオマス由来ポリプロピレン系樹脂Aを単にポリプロピレン系樹脂Aと記載する場合があり、また化石燃料由来ポリプロピレン系樹脂Bを単にポリプロピレン系樹脂Bと記載する場合がある。
【0016】
[基材樹脂]
上述するとおり、本発明における基材樹脂は、バイオマス由来ポリプロピレン系樹脂Aを3重量%以上60重量%以下、および化石燃料由来ポリプロピレン系樹脂Bを40重量%以上97重量%以下(ただし、両者の合計が100重量%である)の範囲で含む。
本発明者の検討によれば、基材樹脂としてバイオマス由来ポリプロピレン系樹脂Aを用いた発泡粒子は、成形性が損なわれやすいことが確認された。そこで、バイオマス由来ポリプロピレン系樹脂Aに対し化石燃料由来ポリプロピレン系樹脂Bを配合するとともに、両者の配合割合を上記範囲内とすることによって、良好な成形性を示しうる発泡粒子成形体を提供可能であることを見出した。
より優れた成形性を示す発泡粒子成形体を提供する観点から、ポリプロピレン系樹脂Aとポリプロピレン系樹脂Bとの合計100重量%中におけるバイオマス由来ポリプロピレン系樹脂Aの割合は、50重量%以下であることが好ましく、45重量%以下であることがより好ましく、30重量%以下であることがさらに好ましい。また、バイオマス由来ポリプロピレン系樹脂を充分に活用し環境負荷の低減に大きく貢献する観点から、ポリプロピレン系樹脂Aとポリプロピレン系樹脂Bとの合計100重量%中におけるバイオマス由来ポリプロピレン系樹脂Aの割合は、5重量%以上であることが好ましく、10重量%以上であることがより好ましい。基材樹脂中におけるポリプロピレン系樹脂Aとポリプロピレン系樹脂Bとの合計の配合割合は、基材樹脂100重量%において、80重量%以上であることが好ましく、90重量%であることがより好ましく、95重量%以上であることがさらに好ましい。
【0017】
本明細書においてポリプロピレン系樹脂とは、プロピレンの単独重合体又はプロピレンに由来する構成単位を、50重量%を超えて含むポリプロピレン系共重合体をいう。上記プロピレンの単独重合体としては、例えばアイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン及びアタクチックポリプロピレン等のプロピレンの単独重合体が例示される。
また上記ポリプロピレン系共重合体としては、例えば、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン共重合体などのプロピレンとエチレン又は炭素数4以上のα-オレフィンとの共重合体や、プロピレン-アクリル酸共重合体、プロピレン-無水マレイン酸共重合体等が例示できる。尚、これらの共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体のいずれでもよい。
また上述する重合体は架橋したものであってもよいが、環境負荷の低減により一層貢献する観点から無架橋のものであることが好ましい。
【0018】
本発明における基材樹脂は、上述するポリプロピレン系樹脂に加え、その他の重合体や添加剤を含んでいてもよい。
その他の重合体としては、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等のポリプロピレン系樹脂以外の熱可塑性樹脂や、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー等のエラストマー等が例示される。これらの他の重合体は2種以上含まれていてもよい。
基材樹脂中におけるその他の重合体の配合割合は、基材樹脂100重量%において5重量%以下であることが好ましく、3重量%以下であることがより好ましく、1重量%以下であることがさらに好ましく、0重量%、つまり、発泡粒子は重合体としてポリプロピレン系樹脂のみを含むことが最も好ましい。
【0019】
また上記重合体以外の添加剤として、例えば、着色剤、酸化防止剤、帯電防止剤、界面活性剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤等の機能性添加剤が添加されてもよい。基材樹脂中における添加剤の配合割合は、基材樹脂100重量%において20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましく、5重量%以下であることがさらに好ましい。
【0020】
本明細書においてバイオマス由来ポリプロピレン系樹脂Aは上述のポリプロピレン系樹脂から構成される。前記ポリプロピレン系樹脂Aは2種以上のバイオマス由来ポリプロピレン系樹脂を含んでもよい。成形可能なスチーム圧力範囲の拡張および、成形サイクルの短縮を両立できる発泡粒子を提供する観点からポリプロピレン系樹脂Aはプロピレンの単独重合体、又はプロピレン-エチレンブロック共重合体であることが好ましく、プロピレンの単独重合体であることがより好ましい。
【0021】
本明細書において化石燃料由来ポリプロピレン系樹脂Bは上述のポリプロピレン系樹脂から構成される。前記ポリプロピレン系樹脂Bは石油燃料などの化石燃料由来であれば2種以上の化石燃料由来ポリプロピレン系樹脂を混合したものであってもよい。ポリプロピレン系樹脂Bは、良好な成形性を示し、表面性が良好な発泡粒子成形体を得ることができる発泡粒子を提供する観点からプロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレン-ブテンランダム共重合体であることが好ましく、プロピレン-エチレンランダム共重合体であることがさらに好ましい。
【0022】
基材樹脂を構成するポリプロピレン系樹脂Aに含まれるポリプロピレン系樹脂と、ポリプロピレン系樹脂Bに含まれるポリプロピレン系樹脂は、同種の樹脂であってもよいし異なっていてもよい。
たとえば、バイオマス由来ポリプロピレン系樹脂Aおよび化石燃料由来ポリプロピレン系樹脂Bは、それぞれがプロピレンの単独重合体であってもよいし、それぞれがポリプロピレン系共重合体であってもよし、一方がプロピレンの単独重合体であり他方がポリプロピレン系共重合体であってもよい。
【0023】
本発明の好ましい実施形態の一つにおいて、化石燃料由来ポリプロピレン系樹脂Bは、ポリプロピレン系共重合体を含むことが好ましく、プロピレン-エチレンランダム共重合体を含むことがより好ましい。バイオマス由来ポリプロピレン系樹脂Aに対し、プロピレン-エチレンランダム共重合体等のポリプロピレン系共重合体を含む化石燃料由来ポリプロピレン系樹脂Bを配合させることによって、より優れた成形性を示す発泡粒子成形体を提供可能である。かかる観点から、化石燃料由来ポリプロピレン系樹脂Bは、プロピレン-エチレンランダム共重合体であることが好ましく、当該プロピレン-エチレンランダム共重合体のエチレン成分含有量が1重量%以上5重量%以下であることがより好ましく、1.5重量%以上4重量%以下であることがさらに好ましい。
【0024】
たとえば、バイオマス由来ポリプロピレン系樹脂Aがプロピレンの単独重合体、又はプロピレン-エチレンブロック共重合体であり、かつ、化石燃料由来ポリプロピレン系樹脂Bがプロピレン-エチレンランダム共重合体等のポリプロピレン系共重合体である態様は、本発明の発泡粒子において好ましく、バイオマス由来ポリプロピレン系樹脂Aがプロピレンの単独重合体あり、かつ、化石燃料由来ポリプロピレン系樹脂Bがプロピレン-エチレンランダム共重合体等のポリプロピレン系共重合体である態様は、本発明の発泡粒子においてさらに好ましい。
【0025】
(ポリプロピレン系樹脂Aのバイオマス度)
本発明において、バイオマス由来ポリプロピレン系樹脂AのASTM D6866-21により測定されるバイオマス度(biobased carbon content)は、1%以上100%以下であることが好ましい。環境負荷の低減に対する貢献度がより充分である観点から、上記ポリプロピレン系樹脂Aのバイオマス度は10%以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましく、25%以上であることが特に好ましい。一方、提供される発泡粒子成形体の成形性を良好に維持しつつ環境負荷の低減に貢献する観点から、上記ポリプロピレン系樹脂Aのバイオマス度は、50%以下であることがより好ましく、48%以下であることがさらに好ましく、45%以下であることが特に好ましい。
【0026】
(ポリプロピレン系樹脂Bのバイオマス度)
本発明において、化石燃料由来ポリプロピレン系樹脂BのASTM D6866-21により測定されるバイオマス度(biobased carbon content)にて測定されるバイオマス度は0%であることが好ましい。
【0027】
(基材樹脂の融点)
基材樹脂の融点Tmは、特に限定されないが、135℃以上160℃以下であることが好ましく、140℃以上157℃以下であることがより好ましい。発泡粒子に含まれるポリプロピレン系樹脂Aおよびポリプロピレン系樹脂Bの融点が異なる場合であっても、基材樹脂として上述する範囲の融点Tmとなるよう調整されることによって、最終的に提供される発泡粒子成形体の成形性が良好である。
【0028】
基材樹脂の融点Tmは、JIS K7121:1987に基づいて求めることができる。この際、試験片の状態調節としては、「(2)一定の熱処理を行った後、融解温度を測定する場合」が採用される。
より具体的には、ペレット状の基材樹脂を試験片として、JIS K7121:1987に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に基づいて、10℃/分の昇温速度で23℃から200℃まで昇温した後に、10℃/分の冷却速度で23℃まで降温し、再度10℃/分の昇温速度で23℃から200℃まで昇温した際に得られるDSC曲線により定まる融解ピークの頂点温度をポリプロピレン系樹脂の融点とする。なお、DSC曲線において融解ピークが2つ以上現れる場合は、最も面積の大きな融解ピークの頂点の温度を融点とする。この際、各融解ピークの頂点温度の間に位置するDSC曲線の谷間の温度を境にして各融解ピークを区別して各融解ピークの面積(融解熱量)を比較することで、最も大きな面積を有する融解ピークを判断することができる。DSC曲線の谷間の温度は、DSCの微分曲線(DDSC)を参照して、微分曲線の縦軸の値が0となる温度から判断することができる。測定装置としては、熱流束示差走査熱量測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)社製、型番:DSC7020)などが挙げられる。
【0029】
(基材樹脂を構成する樹脂の融点)
本発明においてバイオマス由来ポリプロピレン樹脂Aの融点Tmは、特に限定されないが、一例として融点Tmが155℃以上170℃以下であるポリプロピレン樹脂Aが挙げられ、158℃以上170℃以下であることが好ましく、160℃以上170℃以下であるポリプロピレン系樹脂Aが基材樹脂を構成することがさらに好ましい。かかる融点範囲のポリプロピレン系樹脂Aに対し、化石燃料由来ポリプロピレン系樹脂Bの融点Tmは、130℃以上150℃以下であることが好ましく、135℃以上145℃以下であることがより好ましい。かかる融点範囲のポリプロピレン樹脂Aおよびポリプロピレン樹脂Bを配合することによって、基材樹脂の融点Tmを望ましい範囲に調整し易く、また最終的に提供される発泡粒子成形体の成形性が良好である。
【0030】
ポリプロピレン系樹脂Aの融点Tmおよびポリプロピレン系樹脂Bの融点Tmは、それぞれペレット状の基材樹脂の替りにペレット状のポリプロピレン系樹脂Aまたはペレット状のポリプロピレン系樹脂Bを用いること以外は、上述する基材樹脂の融点Tmの測定と同様の測定方法により計測される。
【0031】
(基材樹脂を構成する樹脂の結晶化温度)
本発明においてバイオマス由来ポリプロピレン系樹脂Aの結晶化温度Tcは発泡粒子の成形時における成形サイクルを短縮する観点から、110℃以上130℃以下であることが好ましく、113℃以上128℃以下であることが好ましく、115℃以上123℃であることがさらに好ましい。かかる結晶化温度範囲のポリプロピレン系樹脂Aに対し、化石燃料由来ポリプロピレン系樹脂Bの結晶化温度Tcは、成形範囲に優れる発泡粒子を得ることができる観点から、90℃以上110℃以下であることが好ましく、92℃以上109℃以下であることが好ましく、94℃以上108℃以下であることがさらに好ましい。
【0032】
ポリプロピレン系樹脂Aの結晶化温度Tcおよびポリプロピレン系樹脂Bの結晶化温度TcはJIS K7121:1987に基づき、熱流束示差走査熱量測定により求められる結晶化ピークの頂点の温度を意味する。試験片の状態調節として、「(2)一定の熱処理を行った後、融解温度を測定する場合」を採用し、冷却速度として毎分10℃を採用する。なお、結晶化ピークが2つ以上現れる場合には、最も面積の大きな結晶化ピークの頂点の温度を結晶化温度とする。
【0033】
(ポリプロピレン系樹脂Aのメルトマスフローレート(MFR))
バイオマス由来ポリプロピレン系樹脂Aは、230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトマスフローレート(MFR)が1g/10min以上100g/10min以下であることが好ましい。さらに、以下に示す(I)または(II)を満たすポリプロピレン系樹脂の使用がより好ましい。
(I)バイオマス由来ポリプロピレン系樹脂Aがプロピレンの単独重合体であり、かつ230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトマスフローレート(MFR)が1g/10min以上5g/10min以下である。
(II)バイオマス由来ポリプロピレン系樹脂Aがプロピレン-エチレンブロック共重合体であり、かつ、230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトマスフローレート(MFR)が50g/10min以上80g/10min以下である。
特に好ましい範囲としては上記の(I)の範囲が挙げられる。
メルトマスフローレート(MFR)が上記範囲内であることで発泡粒子の型内成形時における成形可能なスチーム圧力範囲が広くなり、成形範囲に優れる発泡粒子を得ることができる。
【0034】
(ポリプロピレン系樹脂Bのメルトマスフローレート(MFR))
化石燃料由来ポリプロピレン系樹脂Bは、230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトマスフローレート(MFR)が5g/10min以上20g/10min以下であることが好ましい。特には、化石燃料由来ポリプロピレン系樹脂Bがプロピレン-エチレンランダム共重合体等のポリプロピレン系共重合体であり、かつ230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトマスフローレート(MFR)が5g/10min以上15g/10min以下であることが好ましい。
メルトマスフローレート(MFRB)が上記範囲内であることで発泡粒子の型内成形時における成形可能なスチーム圧力範囲が広くなり、成形範囲に優れる発泡粒子を得ることができる。
【0035】
(MFR/MFR
バイオマス由来ポリプロピレン系樹脂Aの230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトマスフローレート(MFR)の、化石燃料由来ポリプロピレン系樹脂Bの230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトマスフローレート(MFRB)に対する比(MFR/MFR)は、0.2以上0.8以下であることが好ましく、0.3以上0.7以下であることがより好ましい。
特に、プロピレンの単独重合体であるポリプロピレン系樹脂Aのメルトマスフローレート(MFR)が1g/10min以上5g/10min以下であり、かつ比(MFR/MFR)は、0.2以上0.8以下であることが好ましい。
比(MFR/MFR)が上述する範囲であることにより、バイオマス由来ポリプロピレン系樹脂Aのメルトマスフローレート(MFR)が、一般的なポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体の製造において低い値である場合であっても、基材樹脂のメルトマスフローレート(MFR)を望ましい範囲に調整し易い。その結果、良好な成形性を示す発泡粒子成形体を提供し易い。
【0036】
(基材樹脂のメルトマスフローレート(MFR))
基材樹脂の230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトマスフローレート(MFR)は、5g/10min以上15g/10min以下であることが好ましい。充分に成形性の良好な発泡粒子成形体を提供する観点から、基材樹脂のメルトマスフローレート(MFR)は、5g/10min以上であることが好ましく、7g/10min以上であることがより好ましく、7.5g/10min以上であることがさらに好ましい。表面性が良好な発泡粒子成形体を提供する観点から、基材樹脂のメルトマスフローレート(MFR)は、15g/10min以下であることが好ましく、12g/10min以下であることがより好ましく、10g/10min以下であることがさらに好ましい。
たとえば、上述する比(MFR/MFR)が0.2以上0.8以下の範囲であって、基材樹脂のメルトマスフローレート(MFR)が5g/10min以上15g/10min以下である場合、発泡粒子の型内成形時における成形可能なスチーム圧力範囲が広くなり、成形範囲に優れる発泡粒子を得る観点で好ましい。
【0037】
上述するポリプロピレン系樹脂A、ポリプロピレン系樹脂Bおよび基材樹脂それぞれのメルトマスフローレートは、JIS K7210-1:2014に基づき、230℃、荷重2.16kgの条件で測定される。
【0038】
[発泡粒子]
(発泡粒子のバイオマス度)
上述する基材樹脂を用いて構成される本発明の発泡粒子は、バイオマス由来ポリプロピレン系樹脂Aを含み環境負荷の低減に貢献するとともに、後述する成形性の良好な本発明の発泡粒子成形体を提供することが可能である。
本発明のポリプロピレン系発泡粒子のASTM D6866-21により測定されるバイオマス度は、1%以上30%以下であることが好ましい。環境負荷の低減への貢献度がより充分である観点から、上記発泡粒子のバイオマス度は1%以上であることが好ましく、2%以上であることがより好ましく、5%以上であることがさらに好ましく、10%以上であることが特に好ましい。一方、提供される発泡粒子成形体の成形性を良好に維持しつつ環境負荷の低減に貢献する観点から、上記発泡粒子のバイオマス度は、30%以下であることが好ましく、25%以下であることがより好ましく、21%以下であることがさらに好ましく、18%以下であることが特に好ましい。
【0039】
(発泡粒子の製造方法)
本発明の発泡粒子は、バイオマス由来ポリプロピレン系樹脂Aを3重量%以上60重量%以下と、化石燃料由来ポリプロピレン系樹脂Bを40重量%以上97重量%以下(ただし、両者の合計が100重量%である)とを含有する基材樹脂を用いて、公知の発泡粒子製造方法に倣って製造することができる。尚、上記基材樹脂は、ポリプロピレン系樹脂Aおよびポリプロピレン系樹脂Bに加え、適宜、その他の重合体や添加剤が含まれてもよいことは上述のとおりである。
たとえば、上述するポリプロピレン系樹脂Aおよびポリプロピレン系樹脂B等の原料を用い押出方法により樹脂粒子を製造し、これを発泡させることで本発明の発泡粒子を製造することができる。より具体的には、まず押出機に所定の原料を供給して混錬し、重量および形状が調整された小ペレット状の樹脂粒子を製造する。そして上記樹脂粒子を、水等の水性媒体、無機分散剤、界面活性剤等の分散助剤が仕込まれた圧力容器に供給し、分散工程、発泡剤含浸工程、発泡工程を含む発泡粒子の製造工程を実施し、発泡粒子を製造することができる。
上記分散工程は、圧力容器内の無機分散剤を含む水性媒体中に樹脂粒子を分散させる工程である。上記発泡剤含浸工程は、圧力容器内で樹脂粒子に二酸化炭素等の発泡剤を含浸させる工程である。上記発泡工程は、発泡剤を含む樹脂粒子を水性媒体と共に圧力容器から放出して発泡させる工程である。本発明の発泡粒子は上述する工程以外に適宜任意の工程を追加することができる。
【0040】
(発泡粒子の高温ピーク、高温ピークの融解熱量、全融解熱量)
本発明の発泡粒子が良好な結晶状態に調整される観点からは、発泡粒子を10℃/分の加熱速度で23℃から200℃まで加熱する熱流束示差走査熱量測定により得られるDSC曲線(図1参照)において、発泡粒子の主融解ピーク(固有ピーク)の頂点温度よりも高温側に頂点温度を有する融解ピーク(高温ピーク)が現れることが好ましい。
この場合のDSC曲線とは、前記測定方法により、発泡粒子を加熱することにより得られるDSC曲線(第1回目の加熱におけるDSC曲線)を意味する。また、発泡粒子の主融解ピーク(固有ピーク)とは、発泡粒子を構成する基材樹脂の固有の結晶の融解により生じるピークを意味する。なお、固有ピークは、発泡粒子を構成する基材樹脂が通常有する結晶の融解によって現れるピークであると考えられる。
一方、固有ピークの高温側に頂点温度を有する融解ピーク(高温ピーク)とは、第1回目のDSC曲線で確認できる前記固有ピークよりも高温側に存在するピークである。この高温ピークが現れる場合、発泡粒子を構成する基材樹脂中に通常有する結晶とは異なる二次結晶が存在するものと推定される。なお、発泡粒子を10℃/分の加熱速度で23℃から200℃まで加熱(第1回目の加熱)した後、10℃/分の冷却速度で200℃から23℃まで冷却し、その後再び10℃/分の加熱速度で23℃から200℃まで加熱(第2回目の加熱)したときに得られるDSC曲線(第2回目の加熱におけるDSC曲線)においては、発泡粒子を構成する基材樹脂が通常有する結晶の融解による固有ピークのみが現れる。この固有ピークは前記第1回目の加熱におけるDSC曲線にも第2回目の加熱におけるDSC曲線にも現れるため、第1回目、第2回目のDSC曲線の形状と、ピーク位置を比較することでいずれのピークが固有ピーク、高温ピークであるかを確認することができる。
発泡粒子を用いて緩衝性と剛性のバランスに優れる発泡粒子成形体を得る観点から、上記高温ピークの融解熱量は、10J/g以上50J/g以下であることが好ましく、110J/g以上30J/g以下であることがより好ましく、15J/g以上25J/g以下であることがさらに好ましい。
また発泡粒子の型内成形時における成形可能スチームな圧力範囲が広くなり、成形範囲に優れる発泡粒子を得るの観点から、本発明の発泡粒子における全融解熱量は、60J/g以上100J/g以下であることが好ましく、70J/g以上90J/g以下であることがより好ましい。
【0041】
上述する高温ピークを得るための調整は、たとえば、上述する分散工程及び/又は発泡剤含浸工程において、圧力容器内の温度の昇温速度の調整や、圧力容器内の温度を所定の温度で所定時間保持するなどの調整を行うことで実施される。より具体的には、たとえば、上述する分散工程及び/又は発泡剤含浸工程において、(基材樹脂の融点-20℃)以上(基材樹脂の融解終了温度)未満の温度で10~60分程度保持する一段保持工程を行う。その後、(基材樹脂の融点-15℃)から(基材樹脂の融解終了温度)未満の温度に調節する。そして、必要によりその温度でさらに10~60分程度保持する二段保持工程を行う。次いで、発泡工程を行うことにより、高温ピークを有する発泡粒子を製造することができる。
【0042】
発泡粒子の高温ピーク熱量および全融解熱量は、JIS K7122:1987に記載されたプラスチックの転移熱測定方法に基づいて、発泡粒子1~3mgを試験片とし、10℃/分の加熱速度で23℃から試験片の融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱して得られる、第1回目の加熱におけるDSC曲線(図1参照)から求められる。
【0043】
より具体的には、図1に示すDSC曲線において、DSC曲線上における80℃に相当する点Iと、発泡粒子の融解終了温度に相当する点IIとを結ぶ直線を引く。尚、融解終了温度は、高温ピークbにおける高温側の端点であり、DSC曲線における、高温ピークbと、高温ピークbよりも高温側のベースラインとの交点である。
図1に示すとおり、点Iと点IIとを結ぶ直線を引いた後、固有ピークaと高温ピークbとの間に存在する極大点IIIを通りグラフの縦軸に平行な直線と、点Iと点IIとを結んだ直線との交点をIVとする。
そして、点Iと点IVを結ぶ直線、点IIIと点IVとを結ぶ直線、および点Iと点IIIとを結ぶDSC曲線の面積を固有ピークaの面積とする。また点IVと点IIとを結ぶ直線、点IIIと点IVとを結ぶ直線、及び点IIIと点IIとを結ぶDSC曲線によって囲まれる部分(斜線部分)の面積を高温ピークbの面積とする。上述のとおり求めた固有ピークaの面積と高温ピークbの面積との合計から発泡粒子の全融解熱量の値を算出し、高温ピークbの面積から発泡粒子の高温ピーク熱量の値を算出する。
【0044】
(発泡粒子の見掛け密度)
本発明の発泡粒子の見掛け密度は、成形の際に使用するスチーム量を抑えることで省エネルギー化を図る観点から20kg/m以上120kg/m以下であることが好ましく、30kg/m以上90kg/m以下であることがより好ましい。
【0045】
発泡粒子の見掛け密度は、以下の方法により測定される。まず、測定に供する発泡粒子を温度23℃、相対湿度50%、1atmの環境中で24時間以上放置する。このようにして得られた重量W(g)の発泡粒子群をメスシリンダー内に充填し、メスシリンダー底面で床面を数度、軽く叩くことにより、メスシリンダー内の発泡粒子群の充填高さを安定させる。メスシリンダーの目盛りが指す発泡粒子群の嵩体積V(L)を読み取り、発泡粒子群の重量Wを発泡粒子群の嵩体積Vで除す(W/V)。これにより求められる値をkg/mに単位換算することにより、発泡粒子の見掛け密度(kg/m)を得ることができる。
【0046】
(発泡粒子の平均気泡径)
本発明の発泡粒子の平均気泡径は、発泡粒子成形体の表面平滑性をより向上させる観点から40μm以上200μm以下であることが好ましく、60μm以上180μm以下であることがより好ましい。
【0047】
発泡粒子の平均気泡径は、次のようにして求められる。まず、発泡粒子を二等分した断面の写真を撮影する。撮影された写真上で発泡粒子断面の面積が概ね二等分となるように直線を引き、発泡粒子の周縁から対向する周縁までの線分の長さLを該線分に接する全ての気泡の数Nで除した値(L/N)を1つの発泡粒子の平均気泡径とする。この操作を10個以上の発泡粒子について行い、その算術平均値を発泡粒子の平均気泡径とする。
【0048】
(発泡粒子の独立気泡率)
本発明の発泡粒子の独立気泡率は、発泡粒子の型内成形時における成形可能スチームな圧力範囲が広くなり、成形範囲に優れる発泡粒子を得る観点から70%以上99%以下であることが好ましく、80%以上99%以下であることがより好ましい。
【0049】
発泡粒子の独立気泡率は、以下のように測定される。まず、嵩体積約20cmの発泡粒子群を水に浸漬することにより、発泡粒子群の見掛けの体積Vaを測定する。次に見掛けの体積Vaを測定した発泡粒子群を十分に乾燥させた後、ASTM-D2856-94に記載されている手順Cに準じて、発泡粒子群の体積(発泡粒子を構成する樹脂の体積と、発泡粒子内の独立気泡部分の気泡全容積との和)の値(真の体積Vx)を測定する。この真の体積Vxの測定には、空気比較式比重計が用いられる。上記空気比較式比重計としては、たとえば東京サイエンス(株)製の空気比較式比重計1000型が挙げられる。次いで、下記の式(1)により独立気泡率を算出する。異なる測定用サンプルを用い、上述と同様の手順で5回の独立気泡率の測定を行い、各測定で得られた値の算術平均値を求め、これを発泡粒子の独立気泡率とする。
[数1]
独立気泡率(%)=(Vx-W/ρ)×100/(Va-W/ρ)・・・(1)
Vx:上記方法で測定される発泡粒子群の真の体積(cm
Va:発泡粒子群をメスシリンダー中の水に沈めた際の水位上昇分から測定される発泡粒子群の見掛けの体積(cm
W:発泡粒子群の重量(g)
ρ:発泡粒子を構成する樹脂の密度(g/cm
【0050】
[発泡粒子成形体]
次に本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体(以下、単に本発明の発泡粒子成形体ともいう)について説明する。本発明の発泡粒子成形体は、上述する本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を型内成形して得られる。
本発明の発泡粒子成形体は、バイオマス由来ポリプロピレン原料を含み、環境負荷の低減に貢献するとともに、発泡粒子成形体内部の融着性、二次発泡性、および養生後の回復性に優れ、良好な成形性を示しうる。また本発明の発泡粒子成形体は、表面平滑性に優れ、見掛け密度を好ましい範囲に調整可能である。そのため本発明の発泡粒子成形体は、化石燃料由来ポリプロピレン系樹脂のみから製造された発泡粒子を用いて製造された発泡粒子成形体(以下、単に従来の発泡粒子成形体ともいう)と同様に、梱包材や自動車部材、建築材料などの種々の用途に好適に使用可能である。
【0051】
(発泡粒子成形体の見掛け密度)
本発明の発泡粒子成形体の見掛け密度は、軽量性と剛性等の機械的物性とのバランスに優れる観点から20kg/m以上120kg/m以下であることが好ましく、30kg/m以上90kg/m以下であることがより好ましい。
【0052】
発泡粒子成形体の見掛け密度は、発泡粒子成形体の重量を外径寸法に基づいて算出される体積で除することにより算出される。尚、外形寸法から体積を算出することが難しい場合には、水没法により発泡粒子成形体の体積を求めることができる。
【0053】
(発泡粒子成形体の収縮率)
本発明の発泡粒子を型内成形してなる発泡粒子成形体は、収縮率を小さく抑えることが可能である。たとえば、本発明の発泡粒子成形体は、2.5%以下の収縮率を示すことが可能である、さらに2.0%以下の収縮率を示すことが可能である。そのため本発明は、所望形状の発泡粒子成形体を提供可能である。
【0054】
ここでいう収縮率とは、型内成形に用いられた成形型の寸法に対する発泡粒子成形体の寸法変化率を指し、以下のとおり測定される。まず、型内成形後、成形型から取り出した発泡粒子成形体を温度23℃、相対湿度50%の環境下に24時間静置して養生する。その後、発泡粒子成形体の長辺の寸法(LB)を測定する。成形型の長辺の寸法(LA)に対する、成形型の長辺の寸法(LA)と発泡粒子成形体の長辺の寸法(LB)との差の比率(([LA-LB]/LA)×100)を算出し、成形型の寸法に対する発泡粒子成形体の収縮率を得る。
【0055】
(発泡粒子成形体の製造方法)
本発明の発泡粒子成形体は、上述する本発明の発泡粒子を用いて型内成形により製造される。上記型内成形は、発泡粒子を用いた公知の型内成形方法を広く含む。たとえば、本発明の発泡粒子成形体は、以下のとおり製造される。まず所望する発泡粒子成形体の形状に対応したキャビティを有する成形型内に本発明の発泡粒子を充填し、スチーム等の加熱媒体により成形型内に充填された発泡粒子に所定の成形圧力をかけて加熱する。上記成形圧力は、たとえば、0.2MPa(G)以上、0.5MPa(G)以下の範囲で調整することができる。尚、本明細書において(G)とは、ゲージ圧、つまり、大気圧を基準とした圧力の値を示す。このようにキャビティ内の発泡粒子を加熱することによって更に発泡させると共に、発泡粒子を相互に融着させる。次いでスチーム等による加熱終了後、放圧するとともに、速やかに成形型および成形型内の成形体の冷却を開始し、成形型の内面に生じる圧力(面圧)が0.04MPa(G)になったことが確認されたら冷却を終了し、当該成形型から発泡粒子成形体を取り出す。ここでの冷却方法は特に限定されないが、たとえば水冷等が挙げられる。かかる一連の成形工程によって、キャビティの形状に応じた発泡粒子成形体が得られる。
型内成形後における冷却時間として、スチームによる加熱が終了し冷却が開始された時点から、成形型の内面に生じる圧力(面圧)が0.04MPa(G)になった時点までの時間が測定される。当該冷却時間は、発泡粒子成形体の成形サイクルの指標とすることができる。
【0056】
(発泡粒子成形体の表面平滑性)
本発明の発泡粒子成形体は、バイオマス原料が含まれているにも関わらず、良好な表面平滑性を示しうる。特に優れた表面平滑性を示す発泡粒子成形体を提供する観点から、発泡粒子成形体のバイオマス度は20%未満であることが好ましく、18%以下であることがより好ましい。発泡粒子の表面平滑性の具体的な評価方法については、後述する実施例の記載が参照される。
【実施例0057】
以下に本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。各基材樹脂を用いた発泡粒子の調製における発泡温度および発泡圧力は、表1、表2に示した。また発泡粒子成形体の製造における成形圧力は、予備的に行った発泡粒子成形体の製造において確認された下限成形圧力を採用した。実施例および比較例に用いたポリプロピレン系樹脂は以下のとおりである。
<バイオマス由来ポリプロピレン系樹脂A>
・PPA1(プロピレン単独重合体、品番HP456J、Lyondellbasell社製、曲げ弾性率1500MPa)
・PPA2(プロピレン単独重合体、品番HP640J、Lyondellbasell社製、曲げ弾性率1600MPa)
・PPA3(プロピレン-エチレンブロック共重合体、品番EP348U、Lyondellbasell社製、曲げ弾性率950MPa)
<化石燃料由来ポリプロピレン系樹脂B>
・PPB1(プロピレン-エチレンランダム共重合体、エチレン成分含有量3.1%、バイオマス度0%、曲げ弾性率950MPa)
【0058】
<実施例1>
(樹脂粒子の調製)
内径50mmの押出機、および該押出機の下流側に付設されたストランド形成用ダイを備える製造装置を準備した。
表1に示すバイオマス由来ポリプロピレン系樹脂Aおよび石油由来ポリプロピレン系樹脂Bからなる基材樹脂に加え、気泡調整剤としてのホウ酸亜鉛(基材樹脂100重量部に対して0.1重量部)とを押出機に供給し、溶融混練し樹脂溶融物を得た。上記樹脂溶融物をストランド形成用ダイに導入してストランドを押出した。押出されたストランドを水冷し、ペレタイザーで切断し、1個当たりの平均重量が1.0mgの樹脂粒子を得た。
【0059】
(発泡粒子本体の調製)
得られた樹脂粒子1kgを、水性分散媒である水3Lと共に、内容量5Lの加圧可能な密閉容器内に供給した。また、樹脂粒子100重量部に対して、無機分散剤としてカオリン0.3重量部、界面活性剤(商品名:ネオゲン、第一工業製薬株式会社製、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)0.004重量部(有効成分として)をそれぞれ密閉容器内に添加した。
次いで、密閉容器内を撹拌しながら2℃/分の昇温速度で、発泡温度(164.5℃)になるまで加熱昇温し、その後、密閉容器内に発泡剤として二酸化炭素を圧入し、ゲージ圧で1.8MPa(G)となるまで加圧し、同温度、同圧力で15分間保持した。これにより、得られる発泡粒子のDSC測定によるDSC曲線に高温ピークが現れるよう調整した。
その後、密閉容器の内容物(樹脂粒子及び水)を大気圧下に放出して、見掛け密度45kg/mの発泡粒子を得た。
【0060】
(発泡粒子成形体の製造)
得られた発泡粒子を、縦250mm×横200mm×高さ20mmの直方体の発泡粒子成形体を成形可能な成形キャビティを有する成形型(金型)に充填して以下の加熱方法で加熱を行った。
加熱方法は、金型の両面に設けられたドレン弁を開放した状態で当該金型にスチームを供給して予備加熱(排気工程)を行った。その後、金型の一方側からスチームを供給して加熱し、更に金型の他方側からスチームを供給して加熱を行った。続いて、表中に示す下限成形圧力である0.3MPa(G)の成形圧力で、金型の両側からスチームを供給して加熱した。加熱終了後、放圧するとともに速やかに水冷を開始し、発泡粒子成形体の発泡力による表面圧力が0.04MPa(G)になるまで水冷を行った。水冷終了後、成形型から発泡粒子成形体を取り出し、これを実施例1とした。尚、水冷開始から成形型の内面に生じる圧力(面圧)が0.04MPa(ゲージ圧)に到達するまでに要した時間を測定し、これを成形サイクル(冷却時間(秒))とし、表1に示した。
【0061】
実施例1に使用した基材樹脂および発泡粒子について、後述する測定および評価を行った。また実施例1である発泡粒子成形体について、後述する測定および評価を行った。結果は表1に示す。
【0062】
<実施例2~9、比較例1~3>
また表1、表2に記載の内容に変更したこと以外は、上述する実施例1と同様に発泡粒子成形体を製造し、これを実施例2~9および比較例1~3とした。そして、実施例1に関する測定および評価と同様に、他の実施例および比較例についても測定および評価を行った。結果は表1、表2に示す。
【0063】
<基材樹脂>
(ポリプロピレン系樹脂Aのバイオマス度)
基材樹脂に配合したポリプロピレン系樹脂Aのバイオマス度を、ASTM D6866-21に準拠して以下のように測定した。
基材樹脂に配合したポリプロピレン系樹脂Aを測定に供する樹脂として用い、当該樹脂を燃焼させることで、二酸化炭素(CO)を発生させ、真空ラインで二酸化炭素を精製した。精製した二酸化炭素を、鉄を触媒として水素で還元し、グラファイト(C)を生成させた。その後、グラファイトを内径1mmのカソードにハンドプレス機で詰め、それをホイールにはめ込み、NEC社製タンデム加速器をベースとした14C-AMS専用装置に装着した。装置による測定により、14Cの計数、13C濃度(13C/12C)、14C濃度(14C/12C)の測定を行った。測定では、米国国立標準局(NIST)から提供されたシュウ酸(HOxII)を標準試料とした。この標準試料とバックグラウンド試料の測定も同時に実施した。
得られた測定結果から、標準試料の現代炭素に対する試料炭素の14C割合を算出し、次に基準試料からの13C濃度のずれを補正することにより、補正されたpMC(percent Modern Carbon)値を得る。
バイオマス度は上記の補正されたpMC値を用いて算出した。大気補正係数はASTM D6866-21に記載された2019年-2021年の値を用いた(100.0pMC)。本発明にかかわるポリプロピレン系樹脂のバイオマス度の測定には、ポリプロピレン系樹脂が製造された年のASTM D6866に記載された大気補正係数を用いてバイオマス度を決定する。
【0064】
(融点)
基材樹脂に配合したポリプロピレン系樹脂Aの融点Tmを、JIS K7121:1987に準拠し測定した。この際、試験片の状態調節としては、「(2)一定の熱処理を行った後、融解温度を測定する場合」を採用した。具体的には、まずペレット状のポリプロピレン系樹脂A(5mg)を試験片として、JIS K7121:1987に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に基づいて、10℃/分の昇温速度で23℃から200℃まで昇温した後に、10℃/分の冷却速度で23℃まで降温し、再度10℃/分の昇温速度で23℃から200℃まで昇温した際に得られるDSC曲線により定まる融解ピークの頂点温度をポリプロピレン系樹脂Aの融点Tmとした。測定装置として、熱流束示差走査熱量測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)社製、型番:DSC7020)を用いた。
ペレット状のポリプロピレン系樹脂B(5mg)を用いたこと以外は上述と同様に融点を測定し、ポリプロピレン系樹脂Bの融点Tmを測定した。またはペレット状の基材樹脂(5mg)を用いたこと以外は上述と同様に融点を測定し、基材樹脂の融点Tmを測定した。
【0065】
(結晶化温度Tc)
ポリプロピレン系樹脂Aおよびポリプロピレン系樹脂Bそれぞれを測定試料として用い、JIS K7121:1987に基づき、熱流束示差走査熱量測定により求められる結晶化ピークの頂点の温度を求め、これをポリプロピレン系樹脂Aの結晶化温度Tcおよびポリプロピレン系樹脂Bの結晶化温度Tcとした。尚、試験片の状態調節として、「(2)一定の熱処理を行った後、融解温度を測定する場合」を採用し、冷却速度として毎分10℃を採用した。なお、結晶化ピークが2つ以上現れる場合には、最も面積の大きな結晶化ピークの頂点の温度を結晶化温度とした。
【0066】
(メルトマスフローレート(MFR))
JIS K7210-1:2014に基づき、230℃、荷重2.16kgの条件でポリプロピレン系樹脂Aのメルトマスフローレート(MFR)、ポリプロピレン系樹脂Bのメルトマスフローレート(MFR)、基材樹脂のメルトマスフローレート(MFR)をそれぞれ求めた。
また、上述のとおり求めたポリプロピレン系樹脂BのMFRに対するポリプロピレン系樹脂AのMFRの比率(MFR/MFR)を算出した。
【0067】
<発泡粒子>
(高温ピーク熱量、全融解熱量)
発泡粒子の高温ピーク熱量および全融解熱量は、JIS K7122:1987に記載されたプラスチックの転移熱測定方法に基づいて、発泡粒子1~3mgを試験片とし、10℃/分の加熱速度で23℃から試験片の融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱して得られるDSC曲線から求めた。具体的には、図1を用いて上述で説明するとおり、各発泡粒子を用いて得られたDSC曲線において、DSC曲線上における80℃に相当する点Iと、発泡粒子の融解終了温度に相当する点IIとを結ぶ直線を引いた。尚、融解終了温度は、高温ピークbにおける高温側の端点であり、DSC曲線における、高温ピークbと、高温ピークbよりも高温側のベースラインとの交点である。
図1において参照されるとおり、点Iと点IIとを結ぶ直線を引いた後、固有ピークaと高温ピークbとの間に存在する極大点IIIを通りグラフの縦軸に平行な直線と、点Iと点IIとを結んだ直線との交点をIVとした。
そして、点Iと点IVを結ぶ直線、点IIIと点IVとを結ぶ直線、および点Iと点IIIとを結ぶDSC曲線の面積を固有ピークaの面積とした。また点IVと点IIとを結ぶ直線、点IIIと点IVとを結ぶ直線、及び点IIIと点IIとを結ぶDSC曲線によって囲まれる部分(斜線部分)の面積を高温ピークbの面積とした。上述のとおり求めた固有ピークaの面積と高温ピークbの面積との合計から発泡粒子の全融解熱量(J/g)の値を算出し、高温ピークbの面積から発泡粒子の高温ピーク熱量(J/g)の値を算出した。
【0068】
(バイオマス度)
測定試料として発泡粒子を用いたこと以外はASTM D6866-21に準拠して上記の基材樹脂に関するバイオマス度の測定手法と同様に測定した。
【0069】
(見掛け密度)
測定に供する発泡粒子を温度23℃、相対湿度50%、1atmの環境中で24時間以上放置した。このようにして得られた重量W(g)の発泡粒子群をメスシリンダー内に充填し、メスシリンダー底面で床面を数度、軽く叩くことにより、メスシリンダー内の発泡粒子群の充填高さを安定させた。メスシリンダーの目盛りが指す発泡粒子群の嵩体積V(L)を読み取り、発泡粒子群の重量Wを発泡粒子群の嵩体積Vで除した(W/V)。これにより求められる値をkg/mに単位換算することにより、発泡粒子の見掛け密度(kg/m)を得た。
【0070】
(平均気泡径)
発泡粒子を二等分した断面の写真を撮影した。撮影された写真上で発泡粒子断面の面積が概ね二等分となるように直線を引き、発泡粒子の周縁から対向する周縁までの線分の長さLを該線分に接する全ての気泡の数Nで除した値(L/N)を1つの発泡粒子の平均気泡径とした。この操作を10個以上の発泡粒子について行い、その算術平均値を発泡粒子の平均気泡径とした。
【0071】
(独立気泡率)
嵩体積約20cmの発泡粒子群を水に浸漬することにより、発泡粒子群の見掛けの体積Vaを測定した。次に見掛けの体積Vaを測定した発泡粒子群を十分に乾燥させた後、ASTM-D2856-94に記載されている手順Cに準じて、発泡粒子の体積(発泡粒子を構成する樹脂の容積と、発泡粒子内の独立気泡部分の気泡全容積との和)の値(真の体積Vx)を測定した。この真の体積Vxの測定には、東京サイエンス(株)製の空気比較式比重計1000型を用いた。
次いで、下記の式(1)により独立気泡率を算出した。異なる測定用サンプルを用い、上述と同様の手順で5回、独立気泡率の測定を行い、各測定で得られた値の算術平均値を求め、これを発泡粒子の独立気泡率とした。
[数2]
独立気泡率(%)=(Vx-W/ρ)×100/(Va-W/ρ)・・・(1)
Vx:上記方法で測定される発泡粒子群の真の体積(cm
Va:発泡粒子群をメスシリンダー中の水に沈めた際の水位上昇分から測定される発泡粒子群の見掛けの体積(cm
W:発泡粒子群の重量(g)
ρ:発泡粒子を構成する樹脂の密度(g/cm
【0072】
下限成形圧及び成形可能範囲を以下の基準で評価した。なお、下限成形圧が低いほど、また、成形可能範囲が広いほど、発泡粒子は成形性に優れていると判断できる。
(下限成形圧力)
型内成形時の成形圧力以外は、各実施例または各比較例の製造と同様の方法により、予備的に発泡粒子成形体の製造を行った。そして、後述する融着率、二次発泡性および回復性の評価を行い、3項目全てにおいて合格(〇)となった発泡粒子成形体を製造することができた成形圧力のうち、最も低い成形圧力を下限成形圧力とした。3項目全てを合格する発泡粒子成形体を得ることができなかった発泡粒子においては、融着率、回復性の2項目を合格する発泡粒子成形体を製造することができた成形圧力のうち、最も低い成形圧力を下限成形圧力とした。
【0073】
(成形可能範囲評価)
上述のとおり確認された下限成形圧力から0.02MPa(G)間隔で成形圧力を変化させた以外は各実施例または各比較例と同様の方法により、発泡粒子成形体を成形した。そして得られた発泡粒子成形体を用い、後述した方法と同様にして融着率、二次発泡性及び回復性の評価を行い、3項目全てにおいて合格(〇)となった発泡粒子成形体を製造できた成形圧力を、発泡粒子成形体を成形することが可能な成形圧力と判断し、以下のとおり評価した。
◎・・・3項目全てにおいて合格の発泡粒子成形体が得られる成形圧力の範囲が2点以上である。
〇・・・3項目全てにおいて合格の発泡粒子成形体が得られる成形圧力の範囲が1点である。
×・・・3項目全てにおいて合格の発泡粒子成形体が得られる成形圧力の範囲が無い。
【0074】
<発泡粒子成形体>
(見掛け密度)
発泡粒子成形体の見掛け密度を、発泡粒子成形体の重量を外径寸法に基づいて算出される体積で除することにより算出した。
【0075】
(収縮率)
型内成形に用いられた成形型の寸法に対する発泡粒子成形体の寸法変化率(収縮率)を以下のとおり測定した。まず、型内成形後、成形型から取り出した発泡粒子成形体を温度23℃、相対湿度50%の環境下に24時間静置して養生した。その後、発泡粒子成形体の長辺の寸法(LB)を測定した。成形型の長辺の寸法(LA)に対する、成形型の長辺の寸法(LA)と発泡粒子成形体の長辺の寸法(LB)との差の比率(([LA-LB]/LA)×100)を算出し、成形型の寸法に対する発泡粒子成形体の収縮率を得た。
【0076】
(成形サイクル)
上述するとおり、型内成形後、放圧するとともに水冷を開始し、成形型の内面に生じる圧力(面圧)が0.04MPa(ゲージ圧)に低下するまで水冷した。このとき、水冷開始から成形型の内面に生じる圧力(面圧)が0.04MPa(ゲージ圧)に低下するまでの時間を測定し、これを冷却時間(秒)として成形サイクルの指標とした。水冷時間が短いほど成形サイクルに優れていると判断できる。
【0077】
(融着率)
発泡粒子成形体の中央部から試験片(縦100mm×横100mm×厚み:発泡粒子成形体の厚み)を切り出し、カッターナイフで各試験片の厚み方向に約5mmの切り込みを入れた後、切り込み部から試験片を破断させた。次に、発泡粒子成形体の破断面に存在する発泡粒子の個数(n)と、材料破壊した発泡粒子の個数(b)を測定した。そして全体の発泡粒子の個数(n)に対する、材料破壊した発泡粒子の個数(b)を百分率で表して融着率(%)とし、以下のとおり評価した。尚、表1、表2には、上述のとおり得られた融着率(%)の数値を示した。
〇・・・融着率が80%以上であった。
×・・・融着率が80%未満であった。
【0078】
(二次発泡性)
発泡粒子成形体の表面を目視で観察し、二次発泡性を以下のとおり評価した。
〇・・・発泡粒子成形体表面の発泡粒子間隙が十分に埋まっている。
×・・・発泡粒子成形体表面の発泡粒子間隙が明らかに埋まっていない。
【0079】
(回復性)
型内成形後、成形型から取り出され発泡粒子成形体を、温度23℃、相対湿度50%の環境下に24時間静置して養生した。
養生後の発泡粒子成形体を厚み方向から見た平面視における4か所の角からスキン面の中央に向かって10mm離れた位置で発泡粒子成形体の厚みを測定した。そして、これらの厚みのうち、最も大きい値を発泡粒子成形体の角部の厚みとした。これとは別に、発泡粒子成形体を厚み方向から見た平面視における、縦方向及び横方向のいずれにおいても中央となる位置で発泡粒子成形体の厚みを測定し、この値を発泡粒子成形体の中央部の厚みとした。そして、発泡粒子成形体の角部の厚みに対する中央部の厚みの比(%)を算出し、以下のとおり評価した。
〇・・・比(%)90%以上であった。
×・・・比(%)90%未満であった。
【0080】
(バイオマス度)
樹脂として発泡粒子成形体を用いたこと以外はASTM D6866-21に準拠して上記の基材樹脂に関するバイオマス度の測定手法と同様に測定した。
【0081】
(独立気泡率)
測定対象として発泡粒子成形体の内部から15mm角の立方体を切り出し、用いたこと以外は上述する発泡粒子の独立気泡率の測定と同様の方法で、発泡粒子成形体の独立気泡率を測定した。
【0082】
(表面平滑性)
発泡粒子成形体の表面平滑性を目視で観察し、以下のとおり評価した。
◎・・・発泡粒子成形体の表面に皺や収縮、陥没による凹凸がなく、良好な表面状態である。
〇・・・発泡粒子成形体の表面に皺や収縮、陥没による凹凸がやや認められる。
×・・・発泡粒子成形体の表面の皺や収縮、陥没による凹凸が著しい。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)ポリプロピレン系樹脂発泡粒子であって、
前記発泡粒子の基材樹脂が、分子鎖中にバイオマス由来のモノマー成分を含むバイオマス由来ポリプロピレン系樹脂Aと、化石燃料由来ポリプロピレン系樹脂Bと、を含み、
前記基材樹脂が前記バイオマス由来ポリプロピレン系樹脂Aを3重量%以上60重量%以下と前記化石燃料由来ポリプロピレン系樹脂Bを40重量%以上97重量%以下(ただし、両者の合計が100重量%である)とを含有することを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
(2)ASTM D6866-21により測定される前記バイオマス由来ポリプロピレン系樹脂Aのバイオマス度が10%以上50%以下である上記(1)に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
(3)ASTM D6866-21により測定される前記発泡粒子のバイオマス度が1%以上30%以下である上記(1)又は(2)に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
(4)前記基材樹脂の融点Tmが135℃以上160℃以下である上記(1)から(3)のいずれいか一項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
(5)前記バイオマス由来ポリプロピレン樹脂Aの融点Tmが160℃以上170℃以下であり、前記化石燃料由来ポリプロピレン系樹脂Bの融点Tmが135℃以上145℃以下である上記(1)から(4)のいずれいか一項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
(6)前記バイオマス由来ポリプロピレン系樹脂Aがプロピレンの単独重合体であり、230℃、荷重2.16kgで測定される該バイオマス由来ポリプロピレン系樹脂Aのメルトマスフローレート(MFR)が1g/10min以上5g/10min以下である上記(1)から(5)のいずれいか一項に記載のポリプロピレン系発泡粒子。
(7)前記化石燃料由来ポリプロピレン系樹脂Bがプロピレン-エチレンランダム共重合体であり、該プロピレン-エチレンランダム共重合体のエチレン成分含有量が1重量%以上5重量%である上記(1)から(6)のいずれいか一項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
(8)230℃、荷重2.16kgで測定される前記基材樹脂のメルトマスフローレート(MFR)が5g/10min以上15g/10min以下である上記(1)から(7)のいずれいか一項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
(9)230℃、荷重2.16kgで測定される前記化石燃料由来ポリプロピレン系樹脂Bのメルトマスフローレート(MFRB)に対する230℃、荷重2.16kgで測定される前記バイオマス由来ポリプロピレン系樹脂Aのメルトマスフローレート(MFR)の比(MFR/MFR)が0.2以上0.8以下である上記(1)から(8)のいずれいか一項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
(10)発泡粒子を10℃/分の加熱速度で23℃から200℃まで加熱する熱流束示差走査熱量測定(DSC)で得られるDSC曲線において、該DSC曲線が主融解ピークと該主融解ピークの頂点温度よりも高温側に頂点温度を有する融解ピーク(高温ピーク)とを有し、前記高温ピークの融解熱量が、10J/g以上30J/g以下である上記(1)から(9)のいずれいか一項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
(11)上記(1)から(10)のいずれいか一項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を型内成形してなることを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体。
図1