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特開2024-93898液封入式防振装置および液封入式防振装置の製造方法
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  • 特開-液封入式防振装置および液封入式防振装置の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093898
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】液封入式防振装置および液封入式防振装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16F 13/10 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
F16F13/10 J
F16F13/10 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210539
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】村上 智洋
(72)【発明者】
【氏名】方村 知行
【テーマコード(参考)】
3J047
【Fターム(参考)】
3J047AA03
3J047DA01
3J047DA02
3J047FA02
3J047GA01
(57)【要約】
【課題】ダイヤフラムを適切に組み付けることができる液封入式防振装置および液封入式防振装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】ダイヤフラム15は、環状部材16の内周側で複数の壁部23に接触する接触部15aを備える。縮径前の第2取付具12(シール壁部14)の内周面に接触するまで環状部材16が径方向で位置ずれしても、接触部15aと壁部23との接触によって仕切体20に対する環状部材16の傾きを規制できる。この傾きを規制した状態で第2取付具12を縮径加工することにより、第2取付具12の内周側にダイヤフラム15(環状部材16)を適切な角度で固定できる。即ち、仕切体20が周方向に並ぶ複数の板状の壁部23を備え、且つ環状部材16の径方向の厚みが薄く形成される場合であっても、ダイヤフラム15を適切に組み付けることができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材および筒状の第2部材と、前記第1部材および前記第2部材を連結するゴム状弾性体製の防振基体と、前記防振基体との間に液体が封入された液室を形成するダイヤフラムと、前記ダイヤフラムの外縁に固定され、前記第2部材の内周側に保持される環状の環状部材と、前記液室を前記防振基体側の第1液室と前記ダイヤフラム側の第2液室とに仕切る仕切体と、を備え、
前記仕切体は、径方向に延びる板状に形成され、前記仕切体の外縁に周方向に並ぶ複数の壁部を備え、
前記環状部材は、軸方向の厚みよりも径方向の厚みが薄く形成され、
前記ダイヤフラムは、前記環状部材の内周側で前記壁部に接触することによって前記仕切体に対する前記環状部材の傾きを規制する接触部を備えることを特徴とする液封入式防振装置。
【請求項2】
前記接触部は、周方向で連続して形成されることを特徴とする請求項1記載の液封入式防振装置。
【請求項3】
前記接触部は、前記環状部材の軸方向端面よりも前記仕切体側に突出する突起であることを特徴とする請求項1記載の液封入式防振装置。
【請求項4】
前記ダイヤフラムは、前記環状部材と前記接触部との間に形成され、周方向に連続する溝状の凹部を備えることを特徴とする請求項3記載の液封入式防振装置。
【請求項5】
第1部材および筒状の第2部材と、前記第1部材および前記第2部材を連結するゴム状弾性体製の防振基体と、前記防振基体との間に液体が封入された液室を形成するダイヤフラムと、前記ダイヤフラムの外縁に固定され、前記第2部材の内周側に保持される環状の環状部材と、前記液室を前記防振基体側の第1液室と前記ダイヤフラム側の第2液室とに仕切る仕切体と、を備え、前記仕切体が、径方向に延びる板状に形成され、前記仕切体の外縁に周方向に並ぶ複数の壁部を備え、前記環状部材が、軸方向の厚みよりも径方向の厚みが薄く形成され、前記ダイヤフラムが、前記環状部材の内周側に形成される接触部を備える液封入式防振装置の製造方法であって、
複数の前記壁部に前記環状部材を重ねる第1工程と、
前記第1工程の後に前記第2部材を縮径させる第2工程と、を備え、
前記第1工程において、縮径前の前記第2部材の内周面に接触するまで前記環状部材が径方向で位置ずれした場合に、前記壁部の軸方向端面に前記接触部を接触させることによって前記仕切体に対する前記環状部材の傾きを規制することを特徴とする液封入式防振装置の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液封入式防振装置および液封入式防振装置の製造方法に関し、特に、ダイヤフラムを適切に組み付けることができる液封入式防振装置および液封入式防振装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン等の振動源を車体に支持する防振装置として、例えば特許文献1に開示される液封入式防振装置が知られている。この液封入式防振装置は、振動源側に取り付けられる第1部材(第1取付け部材1)と、車体側に取り付けられる筒状の第2部材(第2取付け部材2)と、第1部材および第2部材を連結する防振基体(ゴム基体3)と、を備える。第2部材に取り付けられたダイヤフラムと防振基体との間には液室(液封入室5)が形成され、この液室が仕切体(仕切り部材6)によって第1液室と第2液室とに仕切られる。
【0003】
ダイヤフラムの外縁には円環状の環状部材が固定(接着)される。特許文献1に記載の環状部材は、軸方向の厚みよりも径方向の厚みが厚くなっているが、ダイヤフラムの耐久性を向上させるためには、環状部材の径方向での厚みを薄く形成し、環状部材の内径を大きく確保することが好ましい。環状部材の内径を大きくすれば、その分、ダイヤフラムの自由長を長くできるためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-231483号公報(例えば、段落0021~0025、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、環状部材の内径を大きくすると、ダイヤフラムを適切に組み付けることが難しくなる場合がある。この問題点について、図4及び図5を参照して説明する。図4は、参考例の液封入式防振装置210の断面図であり、図5は、仕切体20の斜視図である。なお、図4では、縮径加工前の第2取付具12(第2部材)の開口を上向きにした状態が図示される。また、図4に示す液封入式防振装置210は、ダイヤフラム215の構成が異なる点を除き、後述する(図1に示す)液封入式防振装置10と同一の構成である。
【0006】
図4に示すように、ダイヤフラム215を液封入式防振装置210に組み付ける際には、筒状の第2取付具12の内周側にセットされた仕切体20に環状部材16を重ねた状態で、第2取付具12に縮径加工が施される。この時、環状部材16の軸心と仕切体20の軸心とが一致して(同心となって)いる状態、即ち仕切体20に環状部材16が正しく重ねられた状態であれば、仕切体20に対する環状部材16の傾きは生じ難い。
【0007】
しかし、環状部材16が仕切体20の外縁を超える位置まで径方向で位置ずれすると、第2取付具12と仕切体20との間に入り込むようにして環状部材16が傾いてしまう。このような環状部材16の傾きは、図5に示すような複数の壁部23が仕切体20の外縁に形成されている場合に生じ易くなる。なお、複数の壁部23を備える仕切体20に対し、内径を大きくした環状部材16を重ねる構造(図4に示す構成)は、本願出願時において未公知のものである。
【0008】
図5に示すように、仕切体20は、円筒状の筒部21と、その筒部21の軸方向端部(図5の下側の端部)からフランジ状(径方向外側)に張り出す張出部22と、その張出部22および筒部21から突出するリブ状の壁部23と、を備え、これらの各部21~23が金属や合成樹脂を用いて一体に形成される。
【0009】
図5に示す例では、12枚の壁部23が周方向に沿って並べられており、これら複数の壁部23は、その板厚方向を周方向に向ける板状に形成される。このような周方向に並ぶ複数の壁部23が仕切体20の外縁部分に形成されているため、仕切体20(壁部23)に環状部材16を重ねた際には、仕切体20と環状部材16との接触点(環状部材16の傾きを規制する点)が減少する。
【0010】
よって、図4に示すように、環状部材16が壁部23を超える位置まで径方向で位置ずれすると、仕切体20に対する環状部材16の傾きが生じ易くなる。更に、環状部材16の内径を大きくする(径方向における厚みを薄くする)と、径方向における環状部材16の位置ずれが僅かな場合であっても、環状部材16が壁部23を超えて第2取付具12と仕切体20との間に入り込んでしまうため、環状部材16が傾き易くなる。環状部材16が傾いた状態で第2取付具12を縮径加工すると、ダイヤフラム215を適切に組み付けることができないという問題点がある。
【0011】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、ダイヤフラムを適切に組み付けることができる液封入式防振装置および液封入式防振装置の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するために本発明の液封入式防振装置は、第1部材および筒状の第2部材と、前記第1部材および前記第2部材を連結するゴム状弾性体製の防振基体と、前記防振基体との間に液体が封入された液室を形成するダイヤフラムと、前記ダイヤフラムの外縁に固定され、前記第2部材の内周側に保持される環状の環状部材と、前記液室を前記防振基体側の第1液室と前記ダイヤフラム側の第2液室とに仕切る仕切体と、を備え、前記仕切体は、径方向に延びる板状に形成され、前記仕切体の外縁に周方向に並ぶ複数の壁部を備え、前記環状部材は、軸方向の厚みよりも径方向の厚みが薄く形成され、前記ダイヤフラムは、前記環状部材の内周側で前記壁部に接触することによって前記仕切体に対する前記環状部材の傾きを規制する接触部を備える。
【0013】
本発明の液封入式防振装置の製造方法は、第1部材および筒状の第2部材と、前記第1部材および前記第2部材を連結するゴム状弾性体製の防振基体と、前記防振基体との間に液体が封入された液室を形成するダイヤフラムと、前記ダイヤフラムの外縁に固定され、前記第2部材の内周側に保持される環状の環状部材と、前記液室を前記防振基体側の第1液室と前記ダイヤフラム側の第2液室とに仕切る仕切体と、を備え、前記仕切体が、径方向に延びる板状に形成され、前記仕切体の外縁に周方向に並ぶ複数の壁部を備え、前記環状部材が、軸方向の厚みよりも径方向の厚みが薄く形成され、前記ダイヤフラムが、前記環状部材の内周側に形成される接触部を備える液封入式防振装置の製造方法であって、複数の前記壁部に前記環状部材を重ねる第1工程と、前記第1工程の後に前記第2部材を縮径させる第2工程と、を備え、前記第1工程において、縮径前の前記第2部材の内周面に接触するまで前記環状部材が径方向で位置ずれした場合に、前記壁部の軸方向端面に前記接触部を接触させることによって前記仕切体に対する前記環状部材の傾きを規制する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の液封入式防振装置によれば、次の効果を奏する。ダイヤフラムは、環状部材の内周側で壁部に接触する接触部を備えるので、第2部材を縮径加工する前の状態で環状部材が径方向で位置ずれしても、仕切体に対する環状部材の傾きを壁部と接触部との接触によって規制できる。即ち、仕切体が周方向に並ぶ複数の板状の壁部を備え、且つ環状部材の径方向の厚みが薄く形成される場合であっても、ダイヤフラムを適切に組み付けることができるという効果がある。
【0015】
請求項2記載の液封入式防振装置によれば、請求項1記載の液封入式防振装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。接触部が周方向で連続して形成されるので、環状部材を周方向で位置決めすることなく、複数の壁部に対して接触部を接触させることができる。よって、ダイヤフラムの組み付け作業の作業性が向上するという効果がある。
【0016】
請求項3記載の液封入式防振装置によれば、請求項1記載の液封入式防振装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。接触部は、環状部材の軸方向端面よりも仕切体側に突出する突起であるので、仕切体に環状部材を重ねた時にゴム状弾性体の接触部を壁部に接触させることができる。これにより、仕切体に対して環状部材が径方向で位置ずれし難く(滑り難く)なるので、ダイヤフラムを適切に組み付けることができるという効果がある。
【0017】
請求項4記載の液封入式防振装置によれば、請求項3記載の液封入式防振装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。ダイヤフラムは、環状部材と接触部との間に形成され、周方向に連続する溝状の凹部を備える。これにより、ダイヤフラム及び環状部材からなる成形体を加硫成形する際に、ダイヤフラムの凹部を形成するための金型の突起によって環状部材の内周側をシールできる。よって、環状部材の軸方向端面と金型との間にゴム材料が侵入することを抑制できるという効果がある。
【0018】
請求項5記載の液封入式防振装置の製造方法によれば、次の効果を奏する。複数の壁部に環状部材を重ねる第1工程と、第1工程の後に前記第2部材を縮径させる第2工程と、を備える。第1工程において、縮径前の第2部材の内周面に接触するまで環状部材が径方向で位置ずれしても、壁部の軸方向端面に接触部が接触するように構成されるので、かかる接触によって仕切体に対する環状部材の傾きを規制できる。即ち、仕切体が周方向に並ぶ複数の板状の壁部を備え、且つ環状部材の径方向の厚みが薄く形成される場合であっても、ダイヤフラムを適切に組み付けることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態における液封入式防振装置の断面図である。
図2】(a)は、第2取付具を縮径加工する前の状態を示す液封入式防振装置の断面図であり、(b)は、図2(a)の状態から環状部材が径方向で位置ずれした状態を示す液封入式防振装置の断面図である。
図3】(a)は、図2(b)のIIIa部分におけるダイヤフラム及び環状部材の部分拡大断面図であり、(b)は、ダイヤフラムを加硫成形する下型および上型の部分拡大断面図である。
図4】参考例の液封入式防振装置の断面図である。
図5】仕切体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態における液封入式防振装置10の断面図である。なお、図1では、液封入式防振装置10がエンジンを支持する前の状態(即ち、エンジンの重量が付加される前の状態)であって、液封入式防振装置10に振動が入力されていない静置状態を図示している。また、図1の液封入式防振装置10の断面図は、筒状の第2取付具12の軸心Cを含む軸方向断面図である。
【0021】
以下の説明では、第2取付具12の軸方向における一側(図1の上側)を液封入式防振装置10の上側、同方向における他側(図1の下側)を下側などとして説明するが、この液封入式防振装置10の上下と、液封入式防振装置10が取り付けられる車両の上下とは必ずしも一致しない。
【0022】
液封入式防振装置10は、自動車のエンジンを弾性支持するエンジンマウントである。液封入式防振装置10は、振動源であるエンジン(図示せず)側に取り付けられる第1取付具11と、支持側の車体(図示せず)に取り付けられる筒状の第2取付具12と、第1取付具11及び第2取付具12を連結する防振基体13と、を備える。
【0023】
第1取付具11は、第2取付具12の上方に位置するように第2取付具12の軸心C上に配置されたボス金具であり、鉄鋼やアルミニウム合金などの金属により形成される。第1取付具11の上端面にはボルト孔が形成され、第1取付具11は、ボルト孔に取り付けられるボルト(図示せず)によってエンジン側に取り付けられる。
【0024】
第2取付具12は、鉄鋼などの金属を用いて円筒状に形成される。第2取付具12は、上端側の大径部12aと、大径部12aの下端に連なり下方へ向かって徐々に内外径が小さくなる縮径部12bと、縮径部12bの下端に連なり大径部12aよりも内外径が小さい小径部12cと、を備える。車体側に設けた筒状のブラケットに大径部12aを嵌め込むことによって第2取付具12が車体側に取り付けられる。
【0025】
防振基体13は、ゴムや熱可塑性エラストマ等の弾性体を用いて略傘状に形成される。防振基体13は、第1取付具11の下部と、大径部12a及び縮径部12bの内周面とにそれぞれ加硫接着され、これらを連結する。防振基体13の下端部にはゴム膜状のシール壁部14が連なり、シール壁部14は、小径部12cの内周面を全周にわたって覆っている。このシール壁部14は第2取付具12の一部である。
【0026】
第2取付具12には、小径部12cの下端側の開口部を塞ぐダイヤフラム15が環状部材16を介して取り付けられる。ダイヤフラム15は、ゴム等の弾性体製の膜である。環状部材16は、鉄鋼などの金属を用いて円環状に形成され、環状部材16の内周面の全周にわたってダイヤフラム15の外縁が加硫接着される。
【0027】
防振基体13、第2取付具12及びダイヤフラム15により区画される密閉空間によって液室が形成される。液室には、エチレングリコール等の不凍性の液体(図示せず)が封入される。液室は、仕切体20により、防振基体13が室壁の一部を構成する第1液室17と、ダイヤフラム15が室壁の一部を構成する第2液室18とに仕切られる。
【0028】
なお、図1に示す仕切体20は、図5に示す仕切体20と同一の構成であり、筒部21、張出部22及び壁部23を備えている。シール壁部14の上端から径方向内側へ段差状に張り出す防振基体13の段差13aに張出部22の上面が接触し、シール壁部14を介して第2取付具12の内周面の全周にわたって仕切体20の外周面が押し付けられている。
【0029】
軸方向における壁部23の端縁23a(下縁)は、筒部21の下縁から径方向に延びる直線状に形成され、壁部23の外周縁23bは、張出部22の外周縁から軸方向に延びる直線状に形成される。即ち、壁部23は、筒部21の外周面と張出部22の下面とを繋ぐ矩形の板状に形成される。
【0030】
壁部23は、周方向に沿って複数(本実施形態では、12箇所に)並べられている。仕切体20には、複数の壁部23同士の間隔が比較的狭い領域と、広い領域とが周方向で交互に形成されている(図5参照)。即ち、本実施形態では、複数の壁部23が周方向で不等間隔に並んでいるが、壁部23が周方向で等間隔に並ぶ構成でも良い。
【0031】
仕切体20は、筒部21の内周面に接続される円盤状の仕切部24と、その仕切部24の上面および下面に形成される上側リブ部25及び下側リブ部26と、を備え、これらの各部24~26は筒部21と一体に形成される。
【0032】
仕切部24の中央には円形の開口24aが形成される。上側リブ部25は、筒部21の内周面の上端部から開口24aに向けて下降傾斜する壁状に形成され、下側リブ部26は、筒部21の内周面の下端部から開口24aに向けて上昇傾斜する壁状に形成される。
【0033】
上側リブ部25及び下側リブ部26は、周方向に複数(本実施形態では、8枚が放射状に)並べられており、これらの複数の上側リブ部25及び下側リブ部26の各々は、上下に重なる位置に配置される。
【0034】
仕切体20やダイヤフラム15(環状部材16)は、第2取付具12を縮径加工することによってシール壁部14の内周側に保持される。この縮径加工について、図2を参照して説明する。図2(a)は、第2取付具12を縮径加工する前の状態を示す液封入式防振装置10の断面図であり、図2(b)は、図2(a)の状態から環状部材16が径方向で位置ずれした状態を示す液封入式防振装置10の断面図である。なお、図2では、縮径加工前の第2取付具12の開口を上向きにした状態が図示される。
【0035】
図2に示すように、液封入式防振装置10にダイヤフラム15を組み付ける際には先ず、縮径前の第2取付具12の内周側に仕切体20をセットし、その仕切体20の軸方向端面(図2の上側の面)に環状部材16を重ねる(第1工程)。仕切体20に環状部材16を重ねた状態で、第2取付具12の直径を縮小させること(第2工程)により、第2取付具12の内周側にダイヤフラム15が組み付けられる(図1参照)。
【0036】
第2取付具12に縮径加工が施される前の状態では、第2取付具12(シール壁部14)の内径D1が環状部材16の外径D2や仕切体20の外径D3よりも大きい。仕切体20の外径D3とは、壁部23の端縁23aと外周縁23bとの交点を壁部23の外縁Eとした場合に、複数の壁部23の外縁Eを含む円の直径である。
【0037】
第2取付具12の縮径前の状態において、仕切体20の軸心と環状部材16の軸心とが一致する定位置(以下、単に「定位置」という。)に環状部材16を配置した場合、環状部材16の外周面と第2取付具12(シール壁部14)の内周面との間には「(D1-D2)/2」の大きさの隙間Gが生じる。よって、環状部材16が定位置から第2取付具12(シール壁部14)に接触するまで径方向で位置ずれした場合、環状部材16が最大で「(D1-D2)/2」の距離だけ変位することになる。本実施形態では、このような環状部材16の変位が生じても、ダイヤフラム15の接触部15aが壁部23の端縁23aに接触するように構成されている。
【0038】
接触部15aは、環状部材16よりも仕切体20側に突出する突起である。接触部15aは、周方向に連続する環状に形成されており、この接触部15aの頂点P(壁部23との接触部分における内縁)を含む円の直径をD4とする。環状部材16を定位置に配置した場合、接触部15aの頂点Pから壁部23の外縁Eまでの距離は「(D3-D4)/2」で示されるが、この距離は、縮径前の第2取付具12(シール壁部14)と環状部材16との間の隙間Gよりも大きくなっている(「D1-D2<D3-D4」を満たす)。
【0039】
これにより、縮径前の第2取付具12(シール壁部14)の内周面に接触するまで環状部材16が径方向で位置ずれしても(図2(b)参照)、壁部23の端縁23aに接触部15aが接触した状態を維持できる。接触部15aと壁部23の端縁23aとの接触によって仕切体20に対する環状部材16の傾きを規制できるので、この傾きを規制した状態で第2取付具12を縮径加工することにより、第2取付具12の内周側にダイヤフラム15(環状部材16)を適切な角度で固定できる。即ち、本実施形態のように、仕切体20が周方向に並ぶ複数の板状の壁部23を備え、且つ環状部材16の径方向の厚みが薄く形成される場合であっても、ダイヤフラム15を適切に組み付けることができる。
【0040】
このように、仕切体20に対する環状部材16の傾きを接触部15aで規制する場合、例えば接触部15aを周方向で断続して形成する構成を採用することも可能である。しかし、このような構成では、複数の壁部23に接触部15aが接触するように環状部材16を周方向で位置決めする必要がある。
【0041】
これに対して本実施形態では、接触部15aが周方向で連続する環状に形成されるので、環状部材16を周方向で位置決めすることなく、複数の壁部23に対して接触部15aを接触させることができる。よって、ダイヤフラム15の組み付け作業の作業性が向上する。
【0042】
また、ダイヤフラム15を適切に組み付けできる程度であれば、環状部材16の軸方向端面(図2の下側の面)から接触部15aを突出させない構成でも良い。しかし、このような構成では、ゴム製の接触部15aではなく、金属製の環状部材16が仕切体20に接触することになるため、環状部材16が径方向で位置ずれし易くなる(例えば金属同士の接触であると滑り易くなる)。
【0043】
これに対して本実施形態の接触部15aは、環状部材16の軸方向端面よりも仕切体20(壁部23)側に突出する突起であるので、仕切体20に環状部材16を重ねた時に、環状部材16ではなく、接触部15aを壁部23に接触させることができる。ゴム製の接触部15aを壁部23(仕切体20)に接触させることにより、仕切体20に対して環状部材16が径方向で位置ずれし難く(滑り難く)なるので、ダイヤフラム15を適切に組み付けることができる。
【0044】
次いで、図3を参照して、ダイヤフラム15及び環状部材16からなる成形体の成形方法について説明する。図3(a)は、図2(b)のIIIa部分におけるダイヤフラム15及び環状部材16の部分拡大断面図であり、図3(b)は、ダイヤフラム15を加硫成形する下型30及び上型40の部分拡大断面図である。なお、図3(a)では、変形例の接触部15a1を2点鎖線で図示している。
【0045】
図3に示すように、ダイヤフラム15及び環状部材16からなる成形体は、下型30及び上型40を用いた加硫金型によって成形される。下型30は、ダイヤフラム15の軸方向一側(図3(a)の下側)の外形を形成するための金型である。下型30及び上型40には、環状部材16を挟持するための第1溝31,41が形成され、これらの第1溝31,41は、型締め時に上下に対面する環状の凹みである。下型30の第1溝31の内周側(図3(b)の左側)には、第2溝32が形成される。第2溝32は、ダイヤフラム15の接触部15aを形成するための環状の凹みである。
【0046】
下型30の各溝31,32の間には、上方に突出する突起33が形成される。突起33は、第1溝31の内壁および第2溝32の外壁を構成する(第1溝31の内縁および第2溝32の外縁から立ち上がる)凸形状に形成され、この突起33により、型締め時に環状部材16の内周側がシールされる。突起33が環状部材16の内周側をシールすることにより、下型30及び上型40の間のキャビティC内に注入されたゴム材料が環状部材16の軸方向端面と第1溝31との間に浸入することを抑制できる。
【0047】
突起33が環状部材16の内周側をシールすることにより、環状部材16とダイヤフラム15の接触部15aとの間には、周方向に連続する溝状の凹部15bが形成される。言い換えると、このような凹部15bを接触部15aと環状部材16と間に形成することにより、上述したように環状部材16の内周側を下型30の突起33によってシールできる。よって、環状部材16と下型30の第1溝31との間にゴム材料が侵入することを抑制できる。なお、ダイヤフラム15の軸方向他側(図3(a)の上側)の外縁部分にも凹部15cが形成される。凹部15cは、環状部材16の内周面に連なる環状の凹みであり、環状部材16の軸と直交する平面を対称面にして凹部15bと対称の形状に形成される。
【0048】
ここで、図1に示すように、仕切体20に環状部材16を重ねて第2取付具12を縮径加工させた後は、第2取付具12の軸方向端部を内周側にかしめることによってかしめ部12dを形成する。このかしめ加工時には、第2取付具12のかしめ部12d(シール壁部14)によって環状部材16が仕切体20側に押し込まれる。この場合、本実施形態のように、環状部材16の軸方向端面よりも仕切体20(壁部23)側に接触部15aが突出する構成であると、かしめ部12dをかしめる時に接触部15aが壁部23側に押し付けられる。
【0049】
このため、例えば図3(a)に2点鎖線で示すように、環状部材16の軸方向端面からの接触部15a1の突出量が多く、且つ凹部15bが省略されている構成の場合、上述したかしめ加工時に接触部15a1が壁部23に押し付けられると、接触部15a1の変形に伴う応力がダイヤフラム15と環状部材16との接合部分に集中し易くなる。
【0050】
これに対して本実施形態では、環状部材16の軸方向端面からの接触部15aの突出量が僅か(例えば、環状部材16の軸方向寸法の10%以下)であり、且つ接触部15aと環状部材16との間には周方向に連続する凹部15bが形成される。これにより、上述したかしめ加工時に、接触部15aが壁部23に押し付けられた時の接触部15aの変形量を小さくできると共に、かかる変形の一部を凹部15bで受け入れることができる。これにより、ダイヤフラム15と環状部材16との接合部分に応力が集中することを抑制できるので、ダイヤフラム15の耐久性を向上できる。
【0051】
また、環状部材16の軸心を含む断面において、接触部15aが壁部23側に凸の円弧状に形成され、この円弧状の接触部15aの外縁に円弧状の凹部15bが連なっている。接触部15a及び凹部15bからなる凹凸部分を滑らかな湾曲面で接続することにより、接触部15aが壁部23に押し付けられた時に、かかる凹凸部分の一部に応力が集中することを抑制できる。よって、ダイヤフラム15の耐久性を向上できる。
【0052】
以上、上記実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。
【0053】
上記実施形態では、接触部15aが周方向で連続して形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、接触部15aを周方向で断続して形成しても良い。接触部15aを周方向で断続して形成する構成とは、周方向に並ぶ複数の接触部15aの間に凹部を形成するものである。このような構成の場合、接触部15aを壁部23に接触させても良いし、各接触部15aの間に形成される凹部(複数の壁部23と対応した位置に形成されるもの)に壁部23を嵌め込んでも良い。各接触部15aの間の凹部に壁部23を嵌め込むことにより、ダイヤフラム15を周方向で位置決めできる。
【0054】
上記実施形態では、接触部15aが環状部材16よりも仕切体20(壁部23)側に突出する突起である場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、環状部材16の軸方向端面(仕切体20側の端面)と接触部15aとを面一に形成しても良い。また、ダイヤフラム15を適切に組み付けできる(環状部材16の過剰な傾きを規制できる)程度であれば、環状部材16の軸方向端面から接触部15aが突出しない(環状部材16の軸方向端面よりも接触部15aを僅かに低く形成する)構成でも良い。
【0055】
上記実施形態では、接触部15aと環状部材16との間に周方向に連続する凹部15bが形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、凹部15bを周方向で断続的に形成しても良いし、図3(a)に2点鎖線で示すように、凹部15bを埋めるような形状の接触部15a1をダイヤフラム15に形成する(凹部15bを省略する)構成でも良い。
【符号の説明】
【0056】
10 液封入式防振装置
11 第1取付具(第1部材)
12 第2取付具(第2部材)
13 防振基体
15 ダイヤフラム
15a 接触部
15b 凹部
16 環状部材
17 第1液室
18 第2液室
20 仕切体
23 壁部

図1
図2
図3
図4
図5