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特開2024-93901クロス下地材の表面仕上げ方法及びクロス下地材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093901
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】クロス下地材の表面仕上げ方法及びクロス下地材
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/07 20060101AFI20240702BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
E04F13/07 E
E04F13/07 G
E04F13/08 101Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210543
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000010065
【氏名又は名称】フクビ化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105809
【弁理士】
【氏名又は名称】木森 有平
(72)【発明者】
【氏名】藤本 浩明
【テーマコード(参考)】
2E110
【Fターム(参考)】
2E110AA42
2E110AB04
2E110AB23
2E110BB22
2E110BB23
2E110CA07
2E110CB02
2E110DC12
2E110EA04
2E110GA24Z
2E110GA32W
2E110GA34Z
2E110GB16W
2E110GB42Z
2E110GB43Z
(57)【要約】
【課題】 強化発泡樹脂製の造形材であるクロス下地材の表面であっても、前記V字状溝を形成して、その溝に石膏パテを確実に充填して平滑な表面に仕上げることができる。
【解決手段】 発泡樹脂成形による金型を用いて、クロス下地材1にV字状溝M1を形成し、前記V字状溝M1により石膏パテ52が前記V溝S1の奥まで入り込むように充填してから、コテ等の表面処理具を用いて充填したパテ剤を削り取るようにこそいで表面仕上げする。また、表面を機械的研磨で粗すことで表面凹凸(微細凹凸)を形成し、前記微細凹凸に石膏パテを充填してから表面の余分な石膏パテをコテ等の表面処理具で削り取るようにしても良い。
【選択図】 図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の壁に壁紙用の下地材として用いられるクロス下地材であって、表面から内部に向けて先端側(下方傾斜部)がV字状とされたV字状溝を形成し、前記V字状溝に石膏パテが入り込むように充填してから、コテ等の表面処理具を用いて表面の余分なパテ剤を削り取るようにこそいで表面仕上げすることを特徴とするクロス下地材の表面仕上げ方法。
【請求項2】
前記クロス下地材の表面に間隔を空けて並ぶ複数の凹溝により区画された複数の基本突条が形成されるか、及び/又は、前記各基本突条の表面に前記基本突条よりも小さい複数の微細突条が形成され、前記基本突条及び前記微細突条は、それぞれ建物の壁の延設方向と平行に延びるように形成され、前記V字状溝は、前記凹溝や前記基本突条及び前記微細突条に沿って直線状に形成されており、前記凹溝や前記基本突条及び前記微細突条とともに石膏パテを前記V字状溝に充填することを特徴とする請求項1記載のクロス下地材の表面仕上げ方法。
【請求項3】
前記クロス下地材が建物の出隅部において壁紙用の下地材として用いられるコーナ用のクロス下地材であって、第1壁部と第2壁部の二壁部を備えるものであり、前記第1壁部と第2壁部に対して対応した位置に配置される複数の前記下方傾斜部により前記V字状溝を前記第1壁部と第2壁部に同時に前記V字状溝を形成して、前記V字状の溝に石膏パテを充填することを特徴とする下地材を使用した請求項1記載のクロス下地材の表面仕上げ方法。
【請求項4】
建物の壁に壁紙用の下地材として用いられるクロス下地材であって、表面から内部に向けて先端側(下方傾斜部)がV字状とされたV字状溝を直線状にクロス下地材の長手方向に沿って複数形成されているものであり、前記V字状溝は石膏パテを充填するとともに、充填した後で表面の余分な石膏パテをコテ等の表面処理具で削り取るようにこそぐために使用されることを特徴とするクロス下地材。
【請求項5】
前記クロス下地材の表面に間隔を空けて並ぶ複数の凹溝により区画された複数の基本突条が形成され、前記各基本突条の表面に前記基本突条よりも小さい複数の微細突条が形成され、前記基本突条及び前記微細突条は、それぞれ建物の壁の延設方向と平行に延びるように形成され、前記V字状溝は、前記凹溝や前記基本突条、及び/又は、前記微細突条に直線状に形成されていることを特徴とする請求項4記載のクロス下地材。
【請求項6】
前記クロス下地材が建物の出隅部において壁紙用の下地材として用いられるコーナ用のクロス下地材であって、第1壁部と第2壁部の二壁部を備えていることを特徴とする請求項4記載のクロス下地材。
【請求項7】
前記V字状溝は、前記下方傾斜部の幅Mfが0.2mm~0.5mmであり、表面の表面からの深さMhが0.5mm~3.0mmであることを特徴とする請求項4記載のクロス下地材。
【請求項8】
建物の壁に壁紙用の下地材として用いられるクロス下地材であって、表面を機械的研磨で粗すことで表面凹凸(微細凹凸)を形成し、前記表面凹凸(微細凹凸)に石膏パテが入り込むように充填してから、コテ等の表面処理具を用いて表面の余分なパテ剤を削り取るようにこそいで表面仕上げされており、前記表面凹凸(微細凹凸)は、算術平均高さSaで3μm以上30μm以下の表面粗さであることを特徴とするクロス下地材の表面仕上げ方法。
【請求項9】
建物の壁に壁紙用の下地材として用いられるクロス下地材であって、表面を機械的研磨で粗すことで表面凹凸(微細凹凸)を形成し、前記表面凹凸(微細凹凸)は石膏パテを充填するとともに、充填した後で表面の余分な石膏パテをコテ等の表面処理具で削り取るようにこそぐために使用され、前記表面凹凸(微細凹凸)は、算術平均高さSaで3μm以上30μm以下の表面粗さであることを特徴とするクロス下地材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロス下地材の表面仕上げ方法に関し、下地面を平滑に仕上げるクロス下地材の表面仕上げ方法及びクロス下地材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、住宅等の建物の室内に壁紙を施工する場合、石膏ボード等の壁部材の表面に接着剤を介して壁紙を貼り付けるが、コーナ部において同様の接着剤による方法で壁紙を貼りつけても綺麗に仕上がらない、つまりクロス下地面を平滑に整えることができないことが多い。例えば、石膏ボードの端面同士を交差状に突き合わせて凸型のコーナ部(以下、これを出隅部という)を形成した場合、石膏ボード同士の突合せ部に比較的大きな隙間や段差が生じ易い。このように石膏ボードにより形成された出隅部に壁紙を貼り付けても、壁紙にしわやゆがみが生じ易く、施工性が悪いという問題があった。
【0003】
そこで、石膏ボードとは異なる合成樹脂等の材質で形成されたコーナ用クロス下地材を出隅部に取り付け、このコーナ用クロス下地材に壁紙を貼り付けることが提案されている。例えば、下記特許文献1には、発泡樹脂等の樹脂成形体からなる断面L字状のコーナ用クロス下地材を出隅部に取り付けるとともに、このコーナ用クロス下地材の表面にパテや接着剤を介して壁紙を貼り付けることが開示されている。
【0004】
上記特許文献1では、さらに、多数の縦溝(凹溝)により区画された多数の突条(リブ)をコーナ用クロス下地材の表面に形成することも提案されている。これによれば、コーナ用クロス下地材の表面に対する石膏パテまたは接着剤の結合強度、ひいては壁紙の結合強度が高まることが期待される。具体的に、上記特許文献1では、コーナ用クロス下地材の上記突条として、同一深さの縦溝により区画された一定パターンの突条が形成されている。しかしながら、本願発明者の知見によれば、このような一定パターンの突条を形成しただけでは、壁紙の結合強度が期待通りに高められないことが多い。このため、コーナ用クロス下地材の表面形状についてさらなる改善が求められていた。
【0005】
そこで、本願出願人は、特許文献2として、特許請求の範囲の請求項1に、「建物の出隅部において壁紙用の下地材として用いられるコーナ下地材であって、前記出隅部の基材の角部を覆うように取り付けられる互いに交差した第1壁部および第2壁部を備え、前記第1壁部および第2壁部の各表面に、間隔を空けて並ぶ複数の凹溝により区画された複数の基本突条が形成され、前記各基本突条の表面に、当該基本突条よりも小さい複数の微細突条が形成され、前記基本突条および微細突条は、それぞれ前記基材の延設方向と平行に延びるように形成され、前記微細突条は、断面視において三角形状に形成されるとともに、その三角形の頂点で交差する第1面および第2面を有し、前記第2面は第1面に比べて、前記第1壁部および第2壁部の各表面どうしが交差する外角部に近い側に位置し、前記第1面および第2面の各基端と交差する仮想の平面を仮想底面としたとき、前記第1面は当該仮想底面と第1角度をもって交差し、前記第2面は前記第1角度よりも大きい第2角度をもって前記仮想底面と交差する、ことを特徴とするコーナ下地材。」を開示している。
また、特許文献3には、その特許請求の範囲「(請求項1)クロス下地の表面処理方法であって、表面と、この表面よりも高い発泡率の内部発泡層とを有する樹脂成形体を内装下地に付設してクロス下地面を形成すると共に、この樹脂成形体の表面を貫いて内部発泡層に達する穿孔を前記樹脂成形体の表面に形成し、さらに、前記穿孔(24)を含む樹脂成形体の表面に石膏を基材にしたパテを塗布することを特徴とするクロス下地の表面処理方法。」が開示され、また、「(請求項2)前記穿孔(24)が、孔の側面に引っ掛かり部を備えることを特徴とする請求項1に記載のクロス下地の表面処理方法。」、また「(請求項3)前記穿孔(24)は、樹脂成形体硬化後の押圧穿設加工によって形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のクロス下地の表面処理方法。」が開示され、「(請求項4)前記樹脂成形体の表面に、前記内部発泡層には達しない深さの複数の溝を形成することを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のクロス下地の表面処理方法。」が開示されている。そして、特許文献3には、丸形の穿孔(24)が実施例で記載されており、表面を貫いて内部発泡層に達しており、また、丸形の穿孔(24)は、押圧穿設加工は、樹脂成形体の外形寸法を変えない様に施され、穿孔24の深さ、口径(この「口径」の記載から前記穿孔(24)は丸形と解される。)、ピッチ(間隔)、また、形成圧力等、その具体的数値は、材料の特性や、表面11の硬さ、膜厚、また発泡倍率を考慮した各種予備実験に基づいて決定される。なお、上記符号と括弧書きは、出願人が説明の便宜上記載したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-176612号公報
【特許文献2】特許第6979843号公報
【特許文献3】特許第6396053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したように、特許文献2は、「間隔を空けて並ぶ複数の凹溝により区画された複数
の基本突条が形成され、前記各基本突条の表面に、当該基本突条よりも小さい複数の微細突条が形成され」ているものであるが、クロス下地材の表面に基本突条や基本突条よりも小さい複数の微細突条が形成されるものであるために、石膏パテの量が充分に充填し得るものではなかった。すなわち、クロス下地材は強化発泡樹脂製の造形材であるために表面に凹凸が散逸して平滑に十分な量の石膏パテを塗布できなかった。すなわち、製品としての発泡樹脂製のクロス下地材の表面に単に石膏パテを塗布しても、表面の凹凸の大きさや石膏パテの種類によっては強固に塗布することはできなかった(発泡樹脂と石膏パテの材質の違いや粒子の大きさも原因と考えられる。)。
また、特許文献3には、丸形の穿孔(24)が実施例で記載されており、表面を貫いて内部発泡層に達しており、また、丸形の穿孔(24)は、押圧穿設加工によるものとされ、押圧穿設加工は、樹脂成形体の外形寸法を変えない様に施され、穿孔24の深さ
、口径(この「口径」の記載から前記穿孔(24)は丸形と解される。)、ピッチ(間隔)、また、形成圧力等、その具体的数値は、材料の特性や、表面11の硬さ、膜厚、また発泡倍率を考慮した各種予備実験に基づいて決定される。」と記載されている。
しかしながら、丸形の穿孔(24)では、クロス下地材の長手方向に効率よく形成することはできなかった(クロス下地材の全域に対して効率良く形成することができなかった)。また、表面を突き破って発泡層に対して効率よく穿孔を形成することが困難であった。特に、丸形の穿孔である場合、長手方向に連続的に早く形成することが困難であった。
なお、後述するように(表2を参照)、木工用ボンドなどの接着剤を用いてクロス下地材の表面に塗布してから壁紙を貼る方法もあるが、異なる組成物が塗布されることから、リサイクルに手間がかかる問題を有する。
【0008】
そこで本発明の目的は、製造により出来上がった強化発泡樹脂製の造形材の表面であっても、その溝に石膏パテを確実に充填して平滑な表面に仕上げることができるクロス下地材の表面仕上げ方法及びクロス下地材を提供することである。また、本発明の目的は、充填した石膏パテがクロス下地材の表面の余分な石膏パテをコテ等の表面処理具で削り取るようにこそいだ時でも、表面に石膏パテが残留して、壁紙(クロス)を綺麗に、かつ、早く仕上げることができるクロス下地材の表面仕上げ方法及びクロス下地材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、建物の壁に壁紙用の下地材として用いられるクロス下地材であって、表面から内部に向けて先端側(下方傾斜部)がV字状の前記下方傾斜部を用いて、V字状溝を形成し、前記V字状溝の奥まで石膏パテが入り込むように充填してから、コテ等の表面処理具を用いて表面の余分なパテ剤を削り取るようにこそいで表面仕上げすることを特徴とするクロス下地材の表面仕上げ方法である。ここで、前記先端部(下方傾斜部)は、できるだけ細幅が好ましく(表面仕上げで目立たないにするために)、また、前記V字状溝の深さは、前記クロス下地材の内部にまで到達することが好ましいために、深いことが好ましいが、一方でV字状溝が深すぎるとクロス下地材の強度が落ちて割れやすくなる問題がある。なお、所定長さのものを複数連結して深さを深くしても良い。また、「コテ等の表面処理具を用いて表面の余分なパテ剤を削り取るように」するとは、例えば、金属製のコテを用いて、その先端部を余分な石膏パテを前記V字状溝に対して接触するほどの力を込めて削り取るようにこそいで形成することを言う。そして、前記V字状溝は、型(金型)を用いて成型すると、安定した仕上がりになる。
本発明によれば、クロス下地材の表面から内部に向けて前記V字状溝を直線状に形成して、この直線形状の前記V字状溝に対してパテ剤を充填するために、例えば三角状の突起を有する金型により前記V字状溝を深く形成し、石膏パテの粒子がクロス下地材の奥まで入り込むことで、石膏パテの剥がれを防止できる。また、前記V字状溝を縦方向(Y方向)が連続して入ることができ、従来のスポット的な孔(丸形の溝)に比べて、パテが入りこむ表面積を多くできる。そして、コテ等の表面処理具を用いて表面の余分なパテ剤を削り取るようにして表面仕上げすると、V字状の入口が狭い幅で石膏パテが残るので(平滑に残るので)、壁紙(クロス)を綺麗に貼り付けることができるようになる。
【0010】
本発明としては、前記クロス下地材の表面に間隔を空けて並ぶ複数の凹溝により区画された複数の基本突条が形成され、及び/又は、前記各基本突条の表面に前記基本突条よりも小さい複数の微細突条が形成され、前記基本突条及び前記微細突条は、それぞれ建物の壁の延設方向と平行に延びるように形成され、前記V字状溝は、前記凹溝や前記基本突条及び/又は前記微細突条に沿って直線状に形成されており、前記凹溝や前記基本突条及び前記微細突条とともに石膏パテを前記V字状溝に充填することを特徴とする。ここで、前記V字状溝は表面からの深さMhが0.5mm~3.0mmで、前記先端部(下方傾斜部
)の幅Mfが0.2mm~0.5mmであることが好ましい。すなわち、表面S1の表面側の開口幅(最大幅)が下方傾斜部Maの幅及びMfが0.2~0.5mmになるように設定されている。なお、前記V字状溝の基端側の開口部Meの幅はできるだけ細幅が好ましい。
本発明によれば、前記V字状溝は、前記凹溝や前記基本突条及び/又は前記微細突条に沿って直線状に形成することで、クロス下地材の全域に対して効率よく形成することができる。また、前記V字状溝が前記凹溝や前記基本突条及び前記微細突条に直線状に形成されるので、従来例の丸形の穿孔等とは異なり、前記V字状溝が前記凹溝や前記基本突条及び/又は前記微細突条に隠れるようになり、美的外観上において肉眼では見え難くなり、縦方向の溝デザインとしての目的の前記凹溝や前記基本突条及び/又は前記微細突条のみが肉眼で認識できるようになる(クロス下地材の縦方向(Y方向)の溝のデザインに悪影響を及ぼさない。)。また、前記V字状溝を前記凹溝に設けることで、前記凹溝に充填される石膏パテと相まって、確実に石膏パテを充填することができるようになる。
ここで、前記V字状溝は表面からの深さMhが0.5mm~3.0mmであるときは、壁紙がはがれにくく、また、クロス下地材が割れ難かった。また、前記先端部(下方傾斜部)の幅Mfが0.2mm~0.5mmであるときは、壁紙がはがれにくく、また、クロス下地材が割れ難かった(表1参照)。
【0011】
本発明としては、前記クロス下地材が建物の出隅部において壁紙用の下地材として用いられるコーナ用のクロス下地材であって、第1壁部と第2壁部の二壁部を備えることを特徴とする。
本発明によれば、第1壁部と第2壁部の二壁部を備えるコーナ用のクロス下地材に対して、効率的にかつ綺麗に前記V字状溝を設けることができるようになる。
【0012】
また、本発明は、建物の壁に壁紙用の下地材として用いられるクロス下地材であって、表面から内部に向けて先端側(下方傾斜部)がV字状とされたV字状溝を直線状にクロス下地材の長手方向に沿って複数形成されているものであり、前記V字状溝は石膏パテを充填するとともに、充填した後で表面の余分な石膏パテをコテ等の表面処理具で削り取るようにこそぐために使用されることを特徴とするクロス下地材である。
本発明によれば、クロス下地材の表面から内部に向けて、前記V字状溝を直線状に形成して、この直線形状の前記V字状溝に対してパテ剤を充填してから、コテ等の表面処理具を用いて表面の余分なパテ剤を削り取るようにこそいで表面仕上げすると、石膏パテがクロス下地材の奥まで入り込むことで残り易くなるとともに(石膏パテの十分な量を確保できるとともに)、V字状の入口ができるだけ狭い幅で石膏パテが残るので(平滑に残るので)、壁紙(クロス)を綺麗に貼り付けることができるようになる。
【0013】
本発明としては、前記クロス下地材の表面に間隔を空けて並ぶ複数の凹溝により区画された複数の基本突条が形成されるか、及び/又は、前記各基本突条の表面に前記基本突条よりも小さい複数の微細突条が形成され、前記基本突条及び前記微細突条は、それぞれ建物の壁の延設方向と平行に延びるように形成され、前記V字状溝は、前記凹溝や前記基本突条及び/又は前記微細突条に直線状に形成されていることを特徴とするクロス下地材である。ここで、前記V字状溝は、前記凹溝や前記基本突条や前記微細突条の何処の位置に設けても良く、複数個設けても良い。前記形状の異なる前記V字状溝と組み合わせて形成することができる。
本発明によれば、前記V字状溝は、前記凹溝や前記基本突条及び前記微細突条に沿って直線状に形成することで、クロス下地材の全域に対して効率よく形成することができる。また、前記V字状溝が前記凹溝や前記基本突条及び/又は前記微細突条に直線状に形成されるので、従来例の丸形の穿孔等とは異なり、前記V字状溝が前記凹溝や前記基本突条及び/又は前記微細突条に隠れるようになり、美的外観上において肉眼では見え難くなり、デザインとしての目的の前記凹溝や前記基本突条及び/又は前記微細突条のみが肉眼で認識できるようになる(クロス下地材の溝のデザインに悪影響を及ぼさない。)。また、前記V字状溝を前記凹溝に設けることで、前記凹溝に充填される石膏パテとあいまって、確実に石膏パテを充填することができるようになる。また、前記V字状溝を複数設けたり、その方向(角度)を変更することで接触量をさらに増やせる可能性が高くなる。
【0014】
本発明としては、前記クロス下地材が建物の出隅部において壁紙用の下地材として用いられるコーナ用のクロス下地材であって、前記V字状溝を前記第1壁部と第2壁部に各々前記V字状溝を形成されていることを特徴とする。
本発明よれば、第1壁部と第2壁部の二壁部を備えるコーナ用のクロス下地材に対して、効率的にかつ綺麗に前記V字状溝を設けることできるようになる。
【0015】
また、本発明としては、建物の壁に壁紙用の下地材として用いられるクロス下地材であって、表面を機械的研磨で粗すことで前記表面に凹凸を形成し、石膏パテの粒子が表面凹凸(微細凹凸)に入りこんだ状態で、コテ等の表面処理具を用いて表面の余分なパテ剤を削り取るようにこそいで表面仕上げすることを特徴とする。ここで、機械的研磨とは、サンドペーパーやワイヤーブラシ等を機器に設置して研磨するものであり(表2参照)、ま
た、前記基本突条21や前記微細突条23及び前記表面S1の表面を研磨して、表面凹凸(微細凹凸)を形成することでも、石膏パテ52の接触面積を増やすことができ、石膏パテの剥がれを防止することが出来る。そして、これらの機械的研磨で表面を研磨してから前記V字状溝しても良く、また、前記V字状溝を形成してから、表面を機械研磨しても良い。また、前記凹溝に前記V字状溝を形成する場合は、前記凹溝の内壁面を機械的研磨で研磨してから前記凹溝に前記V字状溝を形成しても良い。なお、前記表面凹凸(微細凹凸)を発泡樹脂成形の金型でも成型可能である。
なお、発泡樹脂(発泡プラスチック)とは、合成樹脂中にガスを細かく分散させ、発泡状(フォーム)または多孔質形状に成形されたものを指し、固体である合成樹脂と気体の不均分散系とも定義できる。石膏パテ(パテ剤)とは、下地の不陸調整、石膏ボードの継ぎ手の目地、段差を平滑にするために使用する下地調整材であり、石膏系の粉末パテが主流であるが、樹脂系のパテもある。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、前記V字状溝を深く形成するので、石膏パテが前記V字状溝の奥まで入りこんで石膏パテの剥がれを防止できる。また、前記V字状溝を縦方向(Y方向)が連続して直線的に入ることができ、従来のスポット的な孔(丸形の溝)に比べて、パテが入りこむ表面積が多くできる。クロス下地に用いる樹脂成形体に石膏パテを確実に定着させることができるとともに、美的外観上において目立つ大きさものでない溝(前記V字状溝)であっても、また、製品として強化発泡樹脂製の造形材の表面であっても、前記V字状溝に石膏パテを確実に充填して平滑な表面に仕上げることができる。
さらに本発明によれば、強化発泡性樹脂製の造形材の表面を機械的研磨で粗すことによって、表面に凹凸(微細な凹凸)を形成することで、表面と石膏パテの接触面積を増やすことができ、石膏パテの剥がれを防止できる。
【0017】
また、本発明によれば、充填した石膏パテがクロス下地材の表面の余分な石膏パテをコテ等の表面処理具で削り取るようにこそいだ時でも、表面に石膏パテが平滑に残留して、壁紙(クロス)を綺麗に、かつ、早く仕上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態にかかるコーナ下地材が適用された建物の出隅部を示す断面図である。
図2】上記出隅部の一部分解斜視図である。
図3】上記コーナ下地材を示す斜視図である。
図4】上記コーナ下地材を示す断面図である。
図5図4の一部拡大図である。
図6】上記コーナ下地材に壁紙を貼り付ける手順を説明するための図である。
図7】上記コーナ下地材のV字状溝に石膏パテを充填した状態を説明するための図である。
図8】上記コーナ下地材のV字状溝の細幅を説明する図である。
図9】上記コーナ下地材のV字状溝を説明するための図である。
図10】本発明の第2実施形態を説明するための図である。
図11】本発明の第3実施形態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を図面を引用しながら説明する。
(第1の実施の形態)
図1図2は、本発明の一実施形態にかかるコーナ下地材1が適用された建物の出隅部Xを示す断面図および斜視図である。これら図1図2に示される出隅部Xは、例えば住宅等の建物の室内において室内空間Z側に凸となるように形成されたコーナ部であり、略90度の角度をもって交差する室内の2つの壁部材により形成されている。この出隅部Xの裏側には鋼製の基材30(図例ではC型鋼)が上下方向に延びるように配設されている。なお、基材30は鋼製のものに限られず、例えば木製の角材であってもよい。
【0020】
基材30が呈する角C字状断面の各辺のうち室内空間Z側を臨む2辺に対応する壁部を第1ベース壁31および第2ベース壁32とすると、これら第1ベース壁31および第2ベース壁32には、例えば石膏ボード等からなる第1壁部材41および第2壁部材42が図外のビス等を介してそれぞれ固定されている。第1壁部材41および第2壁部材42は
、基材30の各ベース壁31,32が交差する角部Cおよびその近傍を除いた領域に取り付けられており、第1壁部材41の端面41aと第2壁部材42の端面42aとが互いに離間している。そして、これら各端面41a,42aの間に形成される断面略L字状の空白領域を埋めるように、コーナ下地材1が取り付けられている。コーナ下地材1としては、例えば発泡性の塩化ビニル樹脂等からなる樹脂成形品が用いられる。
上記コーナ下地材1としては、例えば、ポリスチレンとブタジエン-スチレン共重合体をブレンドした強化発泡樹脂素材で形成されている。この種の発泡樹脂素材からなる樹脂成形体1は、押出成形によって製造されるため、その表面部分は、押出成形時に押し固められて高密度の非発泡層(表面)S1を形成する(図4、(図8(a)(b))。すな
わち、樹脂成形体の表面は、いわゆる膜状の表面S1で覆われる一方、下地材(樹脂成形体)1の内部では、樹脂素材の発泡化に伴い無数の気泡体(空隙)が形成されるため、これらの気泡体によって樹脂成形体内部に内部発泡層S2が形成される。
【0021】
基材30に対し図1の紙面右側に離れた位置には別の基材(図示省略)が配設されており、これら2つの基材の間を覆うように第1壁部材41が取り付けられている。第1壁部材41は、その一端部(コーナ下地材1に近接する部分)が基材30の第1ベース壁31に図外のビス等で締結されることにより、基材30に固定されている。
【0022】
基材30に対して、図1の紙面下側に離れた位置には別の基材(図示省略)が配設されており、これら2つの基材の間を覆うように第2壁部材42が取り付けられている。第2壁部材42は、その一端部(コーナ下地材1に近接する部分)が基材30の第2ベース壁32に図外のビス等で締結されることにより、基材30に固定されている。
【0023】
上記コーナ下地材1は、第1・第2壁部材41,42の各端面41a,42aの間の空白領域を埋めるように断面略L字状に形成されるとともに、基材30の室内空間Z側の角部C(稜線)に沿って上下方向に延びるように配置されている。コーナ下地材1は、基材30の第1ベース壁31に当接する第1壁部11と、第2ベース壁32に当接する第2壁部12とを有しており、第1壁部11が第1ベース壁31にビス37で締結されることにより、基材30に固定されている。
【0024】
第1壁部11の表面と第2壁部12の表面とが交差することにより、コーナ下地材1の室内空間Z側の角部をなす外角部15が形成されている。外角部15は、建物の出隅部Xにおける上下方向に延びる稜線を形成するものである。上記外角部15は、微小半径の丸みをもったR面とされている(後の図3図4参照)。
【0025】
コーナ下地材1の内角部、つまり室内空間Zと反対側の角部には、室内空間Z側に凹入するように除肉された除肉凹部16が形成されている。
【0026】
第1壁部11における第1壁部材41に近い側の端部には、当該端部の室内空間Z側の一部を除肉した面取り部17が形成されている。同様に、第2壁部12における第2壁部材42に近い側の端部には、当該端部の室内空間Z側の一部を除肉した面取り部18が形成されている。
【0027】
以上のような第1・第2壁部材41,42およびコーナ下地材1の各表面(室内空間Z側の面)には、後述する石膏パテ52および接着剤51を介して壁紙50が貼り付けられる。すなわち、壁紙50は、第1壁部材41の表面と、コーナ下地材1の第1壁部11および第2壁部12の各表面(外角部15を含む)と、第2壁部材42の表面とを連続して覆うように貼り付けられる。壁紙50は、意匠面を構成する軟質のシート状体であればよく、その材質および構造は特に限定されない。例えば紙、樹脂、布等の種々の材質やその混合物からなる軟質のシート状体を壁紙50として用いることができる。
【0028】
図3および図4は、コーナ下地材1を単体で示す斜視図および断面図であり、図5図4の一部拡大図である。これら図3図5および図1に示すように、コーナ下地材1の第1壁部11および第2壁部12の各表面には、上下方向(図1図4において紙面に直交する方向;言い換えると、基材30の延設方向)に延びる複数の基本突条21が形成されている。これら基本突条21は、略一定のピッチで横方向(上下方向と直交する方向)に並ぶように設けられており、各基本突条21の間には所定深さの凹溝22がそれぞれ形成されている。言い換えると、第1壁部11および第2壁部12にそれぞれ複数の凹溝22が間隔を空けつつ並設されることにより、隣接する凹溝22の間にそれぞれ基本突条21が区画形成されている。複数の基本突条21と複数の凹溝22とは、上下方向に沿って互いに平行に延びるとともに、横方向に交互に並ぶにように形成されている。
【0029】
複数の凹溝22は、それぞれ断面略台形の凹溝とされ、底面側ほど溝幅が拡大するように形成されている。すなわち、図5において、各凹溝22における底面部の溝幅をA、底面から最も離れた開放端部の溝幅をBとすると、A>Bという関係が理想だが、本実施形態はこれに限定されるものではない。各凹溝22の深さDは、例えばコーナ下地材1の厚みの2~10%程度となるように設定されている。
【0030】
第1壁部11および第2壁部12における複数の基本突条21の各表面には、基本突条21よりも突出量が小さい複数の微細突条23が上下方向に延びるように形成されている
。なお、微細突条23の突出量(後述する仮想底面Sから頂点Pまでの距離)は、上記の凹溝の深さDの2~10%程度となるように設定されている。
【0031】
図5に示すように、各微細突条23は、断面視で三角形状に形成されるとともに、その三角形の頂点Pの位置で交差する第1面23aおよび第2面23bを有している。第2面23bは、第1面23aと比べて、コーナ下地材1の外角部15に近い側に形成されている。
第1面23aおよび第2面23bの各基端と交差する仮想の平面を仮想底面Sとしたとき、第1面23aは仮想底面Sと第1角度θ1をもって交差し、第2面23bは仮想底面Sと第2角度θ2をもって交差している。また、第1面23aと第2面23bとは角度θ3をもって交差している。そして、第1角度θ1および第3角度θ3は、ともに90度よりも小さい鋭角に設定されている。これに対し、第2角度θ2は、他の角度θ1、θ3よりも大きい角度に設定されており、特に当実施形態では90度よりも大きい鈍角に設定されている。
【0032】
上記のような角度設定の結果、各微細突条23が呈する三角形は、コーナ下地材1の外角部15側に倒れるように変形した不等辺三角形となる。より詳しくは、仮想底面Sと直交しかつ仮想底面Sを二等分する仮想の平面を基準面Qとすると、微細突条23が呈する三角形は、その頂点Pが基準面Qよりも外角部15側に大きくオフセットするように形成されている。
【0033】
そして、前記V字状溝M1は、コーナ下地材1の製造の際の金型形状の工夫により成型することが出来、発泡樹脂製の造形材としての形状として製造する。前記V字状溝M1は、三角状の突起を有する金型や、前記凹溝22に対応する凹状の中に三角状の突起を有する金型を用いて、前記表面S1の奥に及ぶように形成されている。前記V字状溝M1は、前記凹溝22と前記V字状溝M1を同時に成型することもできる。前記凹溝22や前記基本突条21及び前記微細突条23に沿ってV字状溝M1が直線状に形成されている。表面S1からのからの長さ(深さ)Mhが0.5mm~3.0mmになるように成型する。具体的には、下方傾斜部Maの幅Mfが0.2~0.5mmである。すなわち、表面S1の表面側の開口幅(最大幅)Mfが0.2~0.5mmになるように設定されている。このようの前記V字状溝M1は、細幅であるが、発泡樹脂成形の金型による押出成型で製造できる。
【0034】
【表1】
【0035】
上記表1は、先端側(下方傾斜部)の幅Mf及び表面からの深さMhの各種サンプルを作製して、壁紙の剥がれにくさ、コーナ下地材の割れにくさの面で評価を行った結果を示す。
表1の実施例(a)は、Mfが0.1mm、Mhが3.0mmに設定したもので、壁紙50を施工した後、壁紙50を手で剥がそうとしたところ、パテの密着が弱く容易に剥がれた。また、コーナ下地材を曲げたとき割れにくかった。
表1の実施例(b)は、Mfが0.2mm、Mhが0.5mmに設定したもので、壁紙50を施工した後、壁紙50を手で剥がそうとしたところ、剥がれなかった。また、コーナ下地材を曲げたとき割れにくかった。
表1の実施例(c)は、Mfが0.4mm、Mhが3.0mmに設定したもので、壁紙50を施工した後、壁紙50を手で剥がそうとしたところ、剥がれなかった。また、コーナ下地材を曲げたとき割れにくかった。
表1の実施例(b)は、Mfが0.6mm、Mhが5.0mmに設定したもので、壁紙50を施工した後、壁紙50を手で剥がそうとしたところ、容易に剥がれた。また、コーナ下地材を曲げたとき、Mhが深く入っているため割れやすくなっていた。
なお、表1の実施例では、石膏パテのみを使用し(樹脂製ではなく、接着剤も別に使用しない)、また、クロス下地材(コーナ下地材)1としては、強化発泡樹脂製により製造したものを使用した。
したがって、前記V字状溝M1により石膏パテ52がV字状溝M1の奥まで入り込むように充填してから、コテ等の表面処理具を用いて表面の余分なパテ剤52を削り取るようにして表面仕上げする前記V字状溝M1は、前記凹溝22や前記基本突条21及び前記微細突条23とともに石膏パテを前記V字状溝に充填することができる。
【0036】
図9は、V字状溝を説明するための図である。凹溝22にV字状溝M1を形成したとき、前記表面S1から内部に向けてV字溝が形成されている。
図8(a)(b)は、本発明の実物の写真であり、図8(a)では、V字状溝M1を認識できるが、縮小した図8(b)では、認識が困難なほどである。
前記V字状溝M1や前記凹溝22は、できるだけ細幅が好ましく(表面仕上げで目立たないにするために)、また、深さは、前記クロス下地材の内部にまで接触することが好ましい。一方で深すぎるとクロス下地材1が前記V字状溝M1によって割れやすくなる問題がある。
【0037】
ボンドやプライマー等による表面仕上げと本願発明による表面仕上げとを比較検討すると(表2)、木工用ボンドなどの接着剤を用いてクロス下地材の表面に塗布してから壁紙
を貼る方法もあるが、異なる組成物が塗布されることから、リサイクルに手間がかかる問題を有する。さらに、プライマー(塗装や防水工事など建築工事で使われる下塗り用の塗料)では、経年変化により効果が落ちる可能性がある。また、これらボンドやプライマー等では、表面の凸凹が少なく、十分な密着性が得られない。
なお、クロス下地材の長手方向(Y方向)のみならず横方向(X方向)にも、前記V字状溝を設けることが考えられるが、X方向に設ける工程が増えることと、一度に形成することができないこと、縦方向(Y方向の溝デザインとはマッチングしない)問題がある。
【0038】
【表2】
【0039】
石膏パテ52が前記V字状溝M1の奥まで入り込むことで、表面の余分な石膏パテ52をこそいだ時にも(削り取るようにしても)、前記V字状溝の入口が狭い幅であると石膏パテ52が残るので(平滑に残るので)、壁紙(クロス)を綺麗に貼り付けることができるようになる。
【0040】
次に、以上のようなコーナ下地材1に壁紙50を貼り付ける手順について説明する。ここでは、壁紙50を貼り付ける前の準備段階として、クロス下地材(コーナ下地材)1は既に基材30にビス37を介して固定されているものとする。
なお、石膏パテ52を塗布する前に、クロス下地材(コーナ下地材)1に、前述したサンドペーパー等の機械的研磨で粗くしてから石膏パテ52を塗布することも可能である。
【0041】
壁紙50を貼り付けるには、まず、コーナ下地材1の第1壁部11および第2壁部12の各表面に石膏パテ52を塗布する。すなわち、第1・第2壁部11,12の各表面側に形成された複数の前記V字状溝M1と、複数の凹溝22と、各基本突条21の表面に形成された複数の微細突条23の間(隣接する微細突条23の間に形成される凹溝)と、第1壁部11と第1壁部材41との間に形成される面取り部17に対応する凹溝と、第2壁部12と第2壁部材42との間に形成される面取り部18に対応する凹溝とに、いずれも石膏パテ52が隙間なく充填されるように、第1・第2壁部11,12の各表面にまんべんなく石膏パテ52を塗布する。なお、石膏パテ52としては、コーナ下地材1と後述する接着剤51との双方に良好に結合し得るものが選定され、例えば、ペースト状の樹脂系母材に石膏粉を混ぜたものが好適である。
そして、本実施形態では、石膏パテ52が前記V字状溝M1の奥まで入り込むことで石膏パテ52の十分な量を確保できることともに、表面の余分な石膏パテ52を削り取るようにこそいだ時でも、前記V字状溝M1が狭い幅であると石膏パテを平滑に残すことができ、壁紙(クロス)を綺麗に貼り付けることができる。
【0042】
次に、図2図7(a)に示すように、裏面に接着剤51が塗布された壁紙50をコーナ下地材1に貼り付ける。具体的に、壁紙50は、第1壁部材41の表面と、コーナ下地材1の第1・第2壁部11,12の各表面と、第2壁部材42の表面とを連続して覆うように貼り付けられる。接着剤51としては、第1・第2壁部材41,42と壁紙50との双方に良好に結合し得るものが選定され、例えば第1・第2壁部材41,42が石膏ボードである場合には、例えばデンプン系接着剤が接着剤51として好適である。一方、コーナ下地材1は合成樹脂製であるため、石膏ボード等の材質を前提に選定された接着剤51との相性は本来的に高くない。しかしながら、当実施形態では、コーナ下地材1の表面が石膏パテ52で覆われており、この石膏パテ52と接着剤51との間に高い結合性が確保されるように石膏パテ52の材質が選定されているので、これら接着剤51および石膏パテ52を介して、壁紙50はコーナ下地材1に十分な強度で接着される。
【0043】
上記第1の実施形態では、出隅部Xの裏側に位置する基材30にコーナ下地材1が取り付けられ、このコーナ下地材1に石膏パテ52および接着剤51を介して壁紙50が貼り付けられる。コーナ下地材1は、基材30における角部Cを挟んだ2つのベース壁31,32にそれぞれ取り付けられる互いに交差した第1壁部11および第2壁部12を有している。第1壁部11および第2壁部12の各表面には、間隔を空けて並ぶ複数の凹溝22により区画された複数の基本突条21が形成され、各基本突条21の表面には、当該基本突条21よりも小さい複数の微細突条23が形成されているが、さらに、前記基本突条21や前記微細突条23に前記V字状溝M1を設けることで(図6)、前記V字状溝M1を介して石膏パテ52が充填され、壁紙50とコーナ下地材1との結合強度が十分に高められるという利点がある。
上記実施形態では、コーナ下地材1の第1・第2壁部11,12に複数の凹溝22が形成されるので、この凹溝22に充填された石膏パテ52がいわゆるアンカー効果を発揮し、石膏パテ52のコーナ下地材1に対する結合強度が全体的に高められる。加えて、複数
の凹溝22の間に形成された複数の基本突条21の各表面に微細突条23が形成されるので、石膏パテ52(および接着剤51)を介して壁紙50がコーナ下地材1に貼り付けられた状態で、仮に壁紙50に何らかの外力が加わったとしても、その外力に伴う石膏パテ52の局所変形が微細突条23により抑制される。例えば、基本突条21の表面から仮に微細突条23が省略された場合(基本突条21の表面が平滑面とされた場合)には、基本突条21の表面と壁紙50との間に塗布された薄層の石膏パテが比較的容易にせん断方向に変形すると考えられる。このため、例えば壁紙50に繰り返し外力が加わったような場合に、石膏パテと基本突条21との結合が比較的容易に解除されて、壁紙50が剥がれるおそれがある。これに対し、上記第1実施形態のように、基本突条21の表面に複数の微細突条23を形成した場合には、各微細突条23の間に形成された微小な凹溝にそれぞれ石膏パテ52が入り込むので、例えば壁紙50に加わった外力を受けて石膏パテ52がせん断方向に変形しようとしても、その変形が微細突条23により阻止される。これにより
、石膏パテ52と基本突条21との結合強度が高められるので、上述した基本突条21の間の凹溝22によるアンカー効果と相俟って、壁紙50がコーナ下地材1から剥がれるのを効果的に抑制することができる。
【0044】
また、上記第1実施形態では、各微細突条23が断面視において三角形状に形成されるとともに、その第1面23aと仮想底面Sとの交差角度(第1角度)θ1よりも、第2面23bと仮想底面Sとの交差角度(第2角度)θ2の方が大きく設定されている。言い換えると、各微細突条23が呈する三角形は、その頂点Pが基準面Q(仮想底面Sと直交しかつ仮想底面Sを二等分する面)よりもコーナ下地材1の外角部15側にオフセットするような形状、いわば外角部15側を向いて倒れるように変形した不等辺三角形状に形成されている。このような構成によれば、壁紙50をより安定的にコーナ下地材1に結合させることができるという利点がある。
すなわち、各微細突条23が上記のような不等辺三角形状に形成された場合、各微細突条23の間に充填された石膏パテ52は、特に図7(b)の矢印D1に示すせん断方向に変形し難くなる。このため、経年劣化等による壁紙50の破損が最も起き易い外角部15を起点として、壁紙50が図7(b)の矢印D2に示す方向に剥がれようとしても、その剥がれを各微細突条23の間の石膏パテ52により効果的に抑制することができ、壁紙50の結合強度を安定的に維持することができる。
【0045】
特に、上記実施形態では、第1角度θ1が90度未満の鋭角に設定され、かつ第2角度θ2が90度よりも大きい鈍角に設定されているので、矢印D1に示すせん断方向に石膏パテ52が変形するのをより効果的に抑制することができ、壁紙50の結合強度をより安定的に維持することができる。
【0046】
また、上記実施形態では、隣接する基本突条21の間に形成される凹溝22が、その底面側ほど幅広になるように(図5においてA>Bとなるように)形成されているので、凹溝22によるアンカー効果をより高めることができ、コーナ下地材1に対する石膏パテ52の結合強度を全体的に十分に高めることができる。
【0047】
なお、上記第1実施形態では、コーナ下地材1の表面に石膏パテ52を塗布しかつ壁紙50の裏面に接着剤51を塗布することにより、これら接着剤51および石膏パテ52を介して壁紙50とコーナ下地材1とを貼り付けるようにしたが、例えば石膏パテまたは接着剤からなる一層の充填材だけで十分な結合強度が得られる場合には、その一層の充填材だけを用いて壁紙50を貼り付けるようにしてもよい。
上記第1実施形態では、基本突条21の表面の微細突条23を断面視三角形状に形成したが、微細突条23の断面形状は種々変更可能である。例えば、三角形の頂点に丸みを有する微細突条23を形成してもよく、また、三角形とは異なる(例えば台形状の)断面形状を有した微細突条23を形成してもよい。そして、前記基本突条21や前記微細突条23に前記V字状溝M1が隠れるように形成することが好ましい。
【0048】
(第2の実施の形態)
上記第1実施形態では、前記V字状溝M1を前記基本突条21や前記微細突条23に設けたが、前記V字状溝M1は、前記凹溝22に設けることができる(図10)。この場合、クロス下地材1の表面には前記V字状溝M1は現れない。また、石膏パテ52が前記V字状溝M1の奥まで入り込むことで、表面の余分な石膏パテをコテ等の表面処理具で削り取るようにこそいだ時でも、表面に石膏パテが残留して、壁紙(クロス)を綺麗に、かつ、早く仕上げることができる。また、例えば、前記凹溝22の何処の位置に設けても良く、複数個設けても良く、これらの組み合わせをしたもの(前記形状の異なる前記V字状溝M2,M3と組み合わせて)形成することができる。このような前記V字状溝M1は、前記凹溝22に対応する凹状の中に三角状の突起を有する金型を用いて、発泡樹脂製の造形材としての形状として製造できる。
【0049】
クロス下地材1の表面に直接前記V字状溝M1を形成する場合には、美的外観上できるだけ目立たないようにするために(前記V字状溝M1の幅をできるだけ細幅にするために)、その幅が、通常は、前記一方が傾斜面とされて他方が垂直面とされる方が好ましい。この実施例では、表面S1の表面側の開口幅(最大幅)が下方傾斜部Maの幅Mfが0.2~0.5mmになるように設定されている。このように、先端部(傾斜部)Maは、表面仕上げで目立たないにするために、できるだけ細幅であることが好ましい。
【0050】
(第3の実施の形態)
上記第1実施形態では、前記V字状溝M1を前記基本突条21や前記微細突条23に設けたが、図11に示すように、前記V字状溝M1は、前記表面S1の表面から直接に形成することができる。この場合、クロス下地材1の表面に前記V字状溝M1が現れる。本実施形態では、前記V字状溝M1は、三角状の突起を有する金型を用いて成型できる。
【0051】
また、本実施形態では、石膏パテ52のみ使用したが、石膏パテ52とともに接着剤を使用したり、プライマーなどと共に使用することも可能である。
また、表3に示すようにサンドペーパーやワイヤーブラシ等の機械的研磨にて、クロス下地1材の表面や、また、前記基本突条21や前記微細突条23及び前記表面S1の表面を研磨して、表面凹凸(微細凹凸)を形成することでも、石膏パテ52の粒子が表面凹凸(微細凹凸)に入りこみ、石膏パテ52の剥がれを防止することが出来る。このような表面凹凸(微細凹凸)も、金型を用いて成型することもできる。
なお、本実施形態の施工方法は、第1実施形態と同様であるので、重複する記載を避けるため説明を省く。
そして、クロス下地材1の長手方向に沿って、前記V字状溝M1と前記表面凹凸(微細凹凸)とを交互に設けたり、クロス下地材1の表面全域に前記表面凹凸(微細凹凸)を形成して、その中で、前記V字状溝M1を所定間隔で設けることもできる。また、コーナ下地材においては、第1壁部11には、長手方向に前記V字状溝M1を設け、第2の壁部12には前記表面凹凸(微細凹凸)を設けたりして、種々の組み合わせをすることも可能である。
【0052】
(第4の実施の形態)
上記第1実施形態から第3実施形態の様にV字状溝M1を設けることで、石膏パテ52の粒子がV字状溝の奥まで入りこむことで石膏パテ52の剥がれを防止する方法の他に、表3に示すようにサンドペーパーやワイヤーブラシ等の機械的研磨にて、前記基本突条21や前記微細突条23及び前記表面S1の表面を研磨して、表面凹凸(微細凹凸)を形成することでも、石膏パテ52の粒子が表面凹凸(微細凹凸)に入りこみ、石膏パテ52の剥がれを防止することが出来る。なお、本実施形態の施工方法は、第1実施形態と同様であるので、重複する記載を避けるため説明を省く。
【0053】
【表3】
【0054】
表3の実施例(a)~(c)は、前記表面S1の表面を480倍に拡大したものであり、(a)は、40番手のサンドペーパーで前記表面S1の表面を粗したもの、(b)は、ワイヤーブラシで前記表面S1の表面を粗したもの、(c)は、表面粗し処理をしていないブランク品である。ここで、Saは算術平均高さを示し、Szは最大高さを示し、Strは、表面性状のアスペクト比を示し、Spcは、山頂点の算術平均曲率を示し、Sdrは界面の展開面積比を示す。
実施例(a)の表面Sの表面凹凸(微細凹凸)は、算術平均高さSaが12.070μmであった。この状態で、第1実施形態と同じ工程でコーナ下地材1を用いて、壁紙50を施工した後、壁紙50を手で剥がそうとしたが、剥がれなかった。
実施例(b)の表面S1の表面凹凸(微細凹凸)は、算術平均高さSaが29.267μmであった。この状態で、第1実施形態と同じ工程でコーナ下地材1を用いて、壁紙50を施工した後、壁紙50を手で剥がそうとしたが、剥がれなかった。
実施例(c)の表面S1の表面凹凸(微細凹凸)は、算術平均高さSaが1.101μmであった。この状態で、第1実施形態と同じ工程でコーナ下地材1を用いて、壁紙50を施工した後、壁紙50を手で剥がそうとしたところ、容易に剥がれた。なお、ブランク品とは、仕上げられていない状態の製品を言う。これは、製品としての発泡樹脂製のクロス下地材1の表面が上記μm単位で粗されることで、発泡樹脂の粒子と石膏パテの粒子が馴染んだことに原因あると考えられる。
以上から、上記微細凹凸の算術平均高さSaの上限が30.00μm程度であり、下限は算術平均高さSaで2~3μm程度以上の範囲と考えられ、算術平均高さSaで3μm以上30μm以下の表面高さであれば、本願発明の範囲になると考えられる。ここで、機械的研磨で表面S1を研磨してから前記V字状溝M1~M4を形成しても良く、また、前記V字状溝M1~M4を形成してから、表面を機械研磨しても良い。また、前記凹溝22に前記V字状溝M1~M4を形成する場合は、前記凹溝22の内壁面を機械的研磨で研磨してから前記凹溝に前記V字状溝を形成しても良い。さらに、機械的研磨で表面を研磨する場合は、前記基本突条21や前記微細突条23に代えて、クロス下地材1の長手方向における所定幅や、所定間隔をおいた複数の所定幅を設けても良く、これらに研磨処理を施しても良い。
【符号の説明】
【0055】
1 クロス下地材(コーナ下地材)、
11 第1壁部、12 第2壁部、15 外角部、
21 基本突条、
22 凹溝、
23 微細突条、
30 基材、
50 壁紙、
52 石膏パテ(パテ剤)、
S1 表面(クロス下地材の表面)、S2 発泡層(内部発泡層)
S 仮想底面(微細突条23の突出量についての仮想底面Sから頂点Pまでの距離)、
Sa 算術平均高さ、
X 出隅部、
M1 V字状溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11