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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093912
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】複層塗膜形成方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 7/14 20060101AFI20240702BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20240702BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20240702BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B05D7/14 L
B05D7/00 P
B05D1/36 B
B05D7/24 301N
B05D7/24 301F
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210561
(22)【出願日】2022-12-27
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】棚橋 朗
(72)【発明者】
【氏名】藤本 慶昭
(72)【発明者】
【氏名】井原 知邦
【テーマコード(参考)】
4D075
【Fターム(参考)】
4D075AE06
4D075DA35
4D075DC12
4D075EA39
4D075EA43
4D075EB22
4D075EB45
4D075EC07
4D075EC11
4D075EC33
(57)【要約】
【課題】平滑性及びシーラー隠蔽性に優れた複層塗膜を形成できる、複層塗膜形成方法を提供すること。
【解決手段】シーラー(S)を塗装して未硬化のシーラー塗膜を形成する工程、プレヒート処理及び加熱硬化を行わず、特定の水性中塗り塗料(X)を塗装して未硬化の中塗り塗膜を形成する工程、プレヒート処理及び加熱硬化を行わず、水性ベースコート塗料(Y)を塗装して未硬化のベースコート塗膜を形成する工程、未硬化のシーラー塗膜、未硬化の中塗り塗膜及び未硬化のベースコート塗膜をプレヒート処理するプレヒート工程、クリヤー塗料(Z)を塗装して未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程、プレヒート処理されたシーラー塗膜、中塗り塗膜及びベースコート塗膜、並びに、未硬化のクリヤー塗膜からなる複層塗膜を加熱硬化させて、硬化した複層塗膜を形成させる焼付工程、を含む複層塗膜形成方法とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘミング部を有する自動車車体に複層塗膜を形成する方法であって、前記自動車車体に下記工程(1)~(6)を順次行ない、
工程(1):シーラー(S)を塗装して未硬化のシーラー塗膜を形成する工程
工程(2):前記工程(1)で形成された未硬化のシーラー塗膜上に、プレヒート処理及び加熱硬化を行わず、水性中塗り塗料(X)を塗装して未硬化の中塗り塗膜を形成する工程
工程(3):前記工程(2)で形成された未硬化の中塗り塗膜上に、プレヒート処理及び加熱硬化を行わず、水性ベースコート塗料(Y)を塗装して未硬化のベースコート塗膜を形成する工程
工程(4):前記未硬化のシーラー塗膜、未硬化の中塗り塗膜及び未硬化のベースコート塗膜をプレヒート処理するプレヒート工程
工程(5):前記工程(4)でプレヒート処理されたベースコート塗膜上に、クリヤー塗料(Z)を塗装して未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程
工程(6):プレヒート処理されたシーラー塗膜、中塗り塗膜及びベースコート塗膜、並びに、未硬化のクリヤー塗膜からなる複層塗膜を加熱硬化させて、硬化した複層塗膜を形成させる焼付工程
前記水性中塗り塗料(X)が、
水酸基含有樹脂(x1)、硬化剤(x2)、顔料(x3)及び粘性調整剤(x4)を含有し、
前記粘性調整剤(x4)が、会合型粘性調整剤(x41)及び前記会合型粘性調整剤(x41)とは異なるアルカリ膨潤型粘性調整剤(x42)を含み、
前記会合型粘性調整剤が(x41)が、炭素数が8~36の疎水基を有する(メタ)アクリル酸コポリマー系増粘剤であり、
前記会合型粘性調整剤(x41)と前記アルカリ膨潤型粘性調整剤(x42)との固形分質量比が97/3~70/30の範囲内であり、
前記中塗り塗膜の乾燥膜厚が、20μm未満である、
複層塗膜形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複層塗膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護の観点から、塗料から放出される揮発性有機化合物(VOC)を低減することが要求されており、産業機械、建設機械、鋼製家具及び物置、自動車外板、自動車部品等の工業製品塗装の各分野で有機溶剤型塗料から水性塗料への置換が進んでいる。
自動車の塗装においても、以前は大量の有機溶剤型塗料が使用され、それらの塗料から排出されるVOCの低減が急務となっていたが、自動車の下塗り、中塗り及びベースコート塗装工程で用いられる各種塗料に関して、有機溶剤型塗料から水性塗料への置換が進められ、現在では、水性塗料による塗装が主流となっている。
【0003】
さらに、以前は中塗り、上塗りの塗膜層ごとに行われていた加熱硬化工程を一部省略(主に中塗り塗装後の加熱硬化工程やプレヒート工程を省略)することによる塗装工程の短縮も環境負荷低減のために開発が進められ、省工程での自動車塗装も主流になりつつある。
【0004】
しかしながら、前記水性塗料を用いた省工程での自動車塗装においては、水性中塗り塗料と水性ベースコート塗料との層間における混層による形成塗膜の平滑性の低下が生じやすい。
【0005】
また、ヘミング部(端部の折り返し構造を有する部位)を有する自動車車体の塗装においては、一般にドア等のヘミング部位にシーラーを塗布後、プレヒート工程及び/又は加熱硬化工程を行い、次いで、中塗り塗料、ベースコート塗料が順次塗装される。省工程の観点から、シーラー塗布後の加熱硬化工程及びプレヒート工程を省略することが検討されているが、シーラーに含まれる可塑剤等の影響により中塗り塗膜の粘度が低下することで、中塗りの膜厚が薄くなり、シーラーが隠蔽できない場合がある。
【0006】
特許文献1には、ヘミング部を有する自動車車体に、下記工程(1)~(5)を順次行なう複層塗膜形成方法であって、工程(1):シーラー(S)を塗装してシーラー塗膜を形成する工程、工程(2):前記工程(1)で形成されたシーラー塗膜上に、中塗り塗料(X)を塗装して中塗り塗膜を形成する工程、工程(3):前記工程(2)で形成された中塗り塗膜上に、水性ベース塗料(Y)を塗装してベース塗膜を形成する工程、工程(4):前記工程(3)で形成されたベース塗膜上に、水酸基含有アクリル樹脂及びポリイソシアネート化合物を含有するクリヤー塗料(Z)を塗装してクリヤー塗膜を形成する工程、工程(5):前記工程(1)~(4)で形成されたシーラー塗膜、中塗り塗膜、ベース塗膜及びクリヤー塗膜を加熱硬化する工程、前記中塗り塗料(X)が、(A)水酸基含有ポリエステル樹脂、(B)メラミン樹脂及びブロックポリイソシアネート化合物のうちの少なくとも1種、(C)硬化触媒、(D)顔料、及び(E)有機溶剤を含有し、前記中塗り塗料(X)中に含まれる前記(D)顔料の濃度(PWC)が40~60%で、前記(C)硬化触媒の含有量が0.1~0.5質量%であり、未硬化の前記シーラー塗膜上に形成された前記中塗り塗膜を硬化した後の塗面の水接触角を、水滴下後1分後で70°~75°の範囲内とする複層塗膜形成方法が記載されている。特許文献1には、前記方法により、可塑剤等の影響による塗膜のハガレ等の不具合を抑制し、仕上がり外観に優れた複層塗膜を形成できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-221469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の複層塗膜形成方法では、中塗り塗料として水性中塗り塗料を使用した場合、特にシーラー塗布後の加熱硬化工程及びプレヒート工程を省略した場合に、複層塗膜の平滑性及びシーラー隠蔽性が十分でないことがあった。
【0009】
本発明の目的は、平滑性及びシーラー隠蔽性に優れた複層塗膜を形成できる、複層塗膜形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、ヘミング部を有する自動車車体に複層塗膜を形成する方法であって、前記自動車車体に下記工程(1)~(6)を順次行ない、
工程(1):シーラー(S)を塗装して未硬化のシーラー塗膜を形成する工程
工程(2):前記工程(1)で形成された未硬化のシーラー塗膜上に、プレヒート処理及び加熱硬化を行わず、水性中塗り塗料(X)を塗装して未硬化の中塗り塗膜を形成する工程
工程(3):前記工程(2)で形成された未硬化の中塗り塗膜上に、プレヒート処理及び加熱硬化を行わず、水性ベースコート塗料(Y)を塗装して未硬化のベースコート塗膜を形成する工程
工程(4):前記未硬化のシーラー塗膜、未硬化の中塗り塗膜及び未硬化のベースコート塗膜をプレヒート処理するプレヒート工程
工程(5):前記工程(4)でプレヒート処理されたベースコート塗膜上に、クリヤー塗料(Z)を塗装して未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程
工程(6):プレヒート処理されたシーラー塗膜、中塗り塗膜及びベースコート塗膜、並びに、未硬化のクリヤー塗膜からなる複層塗膜を加熱硬化させて、硬化した複層塗膜を形成させる焼付工程
前記水性中塗り塗料(X)が、水酸基含有樹脂(x1)、硬化剤(x2)、顔料(x3)及び粘性調整剤(x4)を含有し、前記粘性調整剤(x4)が、会合型粘性調整剤(x41)及び前記会合型粘性調整剤(x41)とは異なるアルカリ膨潤型粘性調整剤(x42)を含み、前記会合型粘性調整剤が(x41)が、炭素数が8~36の疎水基を有する(メタ)アクリル酸コポリマー系増粘剤であり、前記会合型粘性調整剤(x41)と前記アルカリ膨潤型粘性調整剤(x42)との固形分質量比が97/3~70/30の範囲内であり、前記中塗り塗膜の乾燥膜厚が、20μm未満である、
複層塗膜形成方法によれば、上記目的を達成できることを見出した。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、平滑性及びシーラー隠蔽性に優れた複層塗膜を形成できる、複層塗膜形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の複層塗膜形成方法について詳細に説明する。
本発明の複層塗膜形成方法(以下、単に「本発明の方法」ともいう)は、ヘミング部を有する自動車車体に複層塗膜を形成する方法であって、下記工程(1)~(6)を順次行うものである。
工程(1):シーラー(S)を塗装して未硬化のシーラー塗膜を形成する工程
工程(2):前記工程(1)で形成された未硬化のシーラー塗膜上に、プレヒート処理及び加熱硬化を行わず、特定の水性中塗り塗料(X)を塗装して未硬化の中塗り塗膜を形成する工程
工程(3):前記工程(2)で形成された未硬化の中塗り塗膜上に、プレヒート処理及び加熱硬化を行わず、水性ベースコート塗料(Y)を塗装して未硬化のベースコート塗膜を形成する工程
工程(4):前記未硬化のシーラー塗膜、未硬化の中塗り塗膜及び未硬化のベースコート塗膜をプレヒート処理するプレヒート工程
工程(5):前記工程(4)でプレヒート処理されたベースコート塗膜上に、クリヤー塗料(Z)を塗装して未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程
工程(6):プレヒート処理されたシーラー塗膜、中塗り塗膜及びベースコート塗膜、並びに、未硬化のクリヤー塗膜からなる複層塗膜を加熱硬化させて、硬化した複層塗膜を形成させる焼付工程
【0013】
工程(1)~(6)について、以下に詳細に説明する。
【0014】
<被塗物>
本発明の方法が適用される被塗物は、ヘミング部を有する自動車車体であれば特に限定されない。
ヘミング部とは、車体を形成する鋼板のインナーパネルとアウターパネルとを重ね合わせ、インナーパネルの端部を挟む様にアウターパネルの縁部がインナーパネル側に折り返された、いわゆるヘミング加工がされた部分のことである。ヘミング部はこのような狭隘な構造であるために溜りが生じやすい。さらに、ヘミング加工が難しい鋼板の角(あるいは緩やかにカーブする形状)の部分等はヘミング加工が不十分となって、ヘミング部の間隙が生じやすい。このようなヘミング部とヘミング部の間隙部はさらに溜まりが発生しやすい部分である。本発明の方法では、このようなヘミング部を有する自動車車体に複層塗膜を形成する際に有用な方法である。
【0015】
自動車車体を形成する被塗物の材質としては、特に限定されるものではない。例えば、鉄、アルミニウム、アルミニウム合金、真鍮、銅、ブリキ、ステンレス鋼、亜鉛メッキ鋼、亜鉛合金(Zn-Al、Zn-Ni、Zn-Fe等)メッキ鋼、錫メッキ鋼等の金属材料等を挙げることができる。
【0016】
また、ヘミング部を有する自動車車体は、金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものであってもよい。
【0017】
上記ヘミング部を有する自動車車体は、下塗りとして、電着塗装されたものが好ましく、なかでも、カチオン電着塗料によって下塗り塗膜が形成された車体がより好ましい。
【0018】
<工程(1)>
本発明の方法によれば、ヘミング部を有する自動車車体に、まず、工程(1)として、シーラー(S)が塗装され、未硬化のシーラー塗膜が形成される。
【0019】
一般に、自動車車体の塗装において、ヘミング部、溶接部等には、中塗り塗装に先立って、防水や外観品質の向上のために、一般にシーラーとよばれる充填剤の塗装がよく行われている。
【0020】
前記シーラー(S)としては、一般に、ビニル樹脂系シーリング剤若しくは塩化ビニル樹脂系ゾル塗料等が使用されることが多い。
ビニル樹脂系シーリング剤としては、例えば、アイシン化工株式会社製「シールエース390A」、アサヒゴム株式会社製「サンダイン2690A-2」等が挙げられる。
塩化ビニル樹脂系ゾル塗料としては、例えば、アサヒゴム株式会社製「615-2」、アイシン化工株式会社製「PV-129」、セメダインヘンケル株式会社製「PT187」等が挙げられる。
【0021】
上記シーラー(S)には、副成分として、可塑剤等が含まれていることが多く、この可塑剤の影響(可塑剤が次工程で塗装される中塗り塗膜にブリード(移行)する)により、未硬化のシーラー塗膜上に形成される中塗り塗膜の粘度が低下し、例えば、自動車車体の垂直部等において、シーラー隠蔽性の低下等の塗装の不具合を発生させる原因となっている。
【0022】
シーラー(S)は、エアスプレー、エアレススプレー、刷毛塗り、へら塗り等公知の方法で、塗装することができ、その膜厚は、硬化塗膜に基づいて1mm以下となるように塗装することが好ましい。
【0023】
<工程(2)>
本発明の方法によれば、次に、工程(1)で形成されたシーラー塗膜上に、プレヒート処理及び加熱硬化を行わず、水性中塗り塗料(X)が塗装され、未硬化の中塗り塗膜が形成される。
【0024】
<水性中塗り塗料(X)>
本発明の方法において、水性中塗り塗料(X)は、水酸基含有樹脂(x1)、硬化剤(x2)、顔料(x3)及び粘性調整剤(x4)を含有する塗料組成物である。本発明の方法で用いる水性中塗り塗料(X)は、会合型粘性調整剤(x41)と該会合型粘性調整剤(x41)とは異なるアルカリ膨潤型粘性調整剤(x42)を含む。このような水性中塗り塗料(X)を用いてシーラー塗膜上に未硬化の中塗り塗膜を形成することで、中塗り塗膜がシーラーに含まれる可塑剤の影響を受け難くなり、シーラー隠蔽性の低下を抑制できる。
【0025】
<<水酸基含有樹脂(x1)>>
水酸基含有樹脂(x1)は、水酸基を含有する樹脂であれば、特に限定されるものではなく、樹脂の種類としては、具体的には、例えば、水酸基含有アクリル樹脂、水酸基含有ポリエステル樹脂、水酸基含有ポリエーテル樹脂、水酸基含有ポリカーボネート樹脂、水酸基含有ポリウレタン樹脂などを挙げることができる。なかでも、水酸基含有樹脂(x1)として、水酸基含有アクリル樹脂(x11)及び水酸基含有ポリエステル樹脂(x12)のうちのいずれか1種を含むことが好ましい。
【0026】
(水酸基含有アクリル樹脂(x11))
水酸基含有アクリル樹脂(x11)は、例えば、水酸基含有重合性不飽和モノマー及び該水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーを、それ自体既知の方法、例えば、有機溶媒中での溶液重合法、水中でのエマルション重合法等の方法により共重合せしめることによって製造することができる。
【0027】
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーは、1分子中に水酸基及び重合性不飽和結合をそれぞれ1個以上有する化合物である。該水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の、(メタ)アクリル酸と炭素数2~8の2価アルコールとのモノエステル化物;該(メタ)アクリル酸と炭素数2~8の2価アルコールとのモノエステル化物のε-カプロラクトン変性体;N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド;アリルアルコール、さらに、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができる。但し、本発明においては、後述する(xvii)紫外線吸収性官能基を有する重合性不飽和モノマーに該当するモノマーは、上記水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーとして規定されるべきものであり、水酸基含有重合性不飽和モノマーからは除かれる。これらは、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーとしては、例えば、下記モノマー(i)~(xx)等を使用することができる。これらの重合性不飽和モノマーは単独でもしくは2種以上で組み合わせて使用することができる。
【0029】
(i)アルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート:例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等。
【0030】
(ii)イソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー:イソボルニル(メタ)アクリレート等。
【0031】
(iii)アダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー:アダマンチル(メタ)アクリレート等。
【0032】
(iv)トリシクロデセニル基を有する重合性不飽和モノマー:トリシクロデセニル(メタ)アクリレート等。
【0033】
(v)芳香環含有重合性不飽和モノマー:ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等。
【0034】
(vi)アルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー:ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等。
【0035】
(vii)フッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー:パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等。
【0036】
(viii)マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー。
【0037】
(ix)ビニル化合物:N-ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等。
【0038】
(x)カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー:(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート等。
【0039】
(xi)含窒素重合性不飽和モノマー:(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン化合物との付加物等。
【0040】
(xii)重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー:アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等。
【0041】
(xiii)エポキシ基含有重合性不飽和モノマー:グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等。
【0042】
(xiv)分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート。
【0043】
(xv)スルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー:2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-スルホエチル(メタ)アクリレート、アリルスルホン酸、4-スチレンスルホン酸等;これらスルホン酸のナトリウム塩及びアンモニウム塩等。
【0044】
(xvi)リン酸基を有する重合性不飽和モノマー:アシッドホスホオキシエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシプロピル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシポリ(オキシエチレン)グリコール(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシポリ(オキシプロピレン)グリコール(メタ)アクリレート等。
【0045】
(xvii)紫外線吸収性官能基を有する重合性不飽和モノマー:2-ヒドロキシ-4-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(3-アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-(3-アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2-[2-ヒドロキシ-5-[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール等。
【0046】
(xviii)光安定性重合性不飽和モノマー:4-(メタ)アクリロイルオキシ1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-(メタ)アクリロイル-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-(メタ)アクリロイル-4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-クロトノイル-4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等。
【0047】
(xix)カルボニル基を有する重合性不飽和モノマー:アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4~7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等。
【0048】
(xx)酸無水物基を有する重合性不飽和モノマー:無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等。
【0049】
本明細書において、重合性不飽和基とは、ラジカル重合しうる不飽和基を意味する。かかる重合性不飽和基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。
【0050】
また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」はアクリレート又はメタクリレートを意味する。「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。また、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル又はメタクリロイルを意味する。また、「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミド又はメタクリルアミドを意味する。
【0051】
上記水酸基含有アクリル樹脂(x11)を製造する際の前記水酸基含有重合性不飽和モノマーの使用割合は、モノマー成分の合計量を基準として、1~50質量%の範囲内であることが好ましく、2~40質量%の範囲内であることがより好ましく、3~30質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0052】
上記水酸基含有アクリル樹脂(x11)は、形成される複層塗膜の平滑性等の観点から、水酸基価が、1~150mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、2~120mgKOH/gの範囲内であることがより好ましく、5~100mgKOH/gの範囲内であることがさらに好ましい。
【0053】
上記水酸基含有アクリル樹脂(x11)は、形成される複層塗膜の平滑性及びシーラー隠蔽性等の観点から、酸価が、1~150mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、5~100mgKOH/gの範囲内であることがより好ましく、5~80mgKOH/gの範囲内であることがさらに好ましい。
【0054】
上記水酸基含有アクリル樹脂(x11)を、前記水中でのエマルション重合法によって得る場合、該エマルション重合は、従来公知の方法により行うことができる。例えば、乳化剤の存在下で、重合開始剤を使用して重合性不飽和モノマー混合物をエマルション重合することにより行うことができる。上記乳化剤としてはアニオン性乳化剤及びノニオン性乳化剤を好適に使用することができる。
【0055】
該アニオン性乳化剤としては、例えば、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルリン酸等のナトリウム塩やアンモニウム塩を挙げることができる。また、ノニオン性乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等を挙げることができる。
【0056】
また、1分子中にアニオン性基とポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基とを有するポリオキシアルキレン基含有アニオン性乳化剤;1分子中にアニオン性基とラジカル重合性不飽和基とを有する反応性アニオン性乳化剤等を使用することもできる。上記反応性アニオン性乳化剤としては、アリル基、メタリル基、(メタ)アクリロイル基、プロペニル基、ブテニル基等のラジカル重合性不飽和基を有するスルホン酸化合物のナトリウム塩、該スルホン酸化合物のアンモニウム塩等を挙げることができる。
【0057】
上記乳化剤の使用量は、使用される全モノマーの総量に対して、0.1~15質量%程度であることが好ましく、0.5~10質量%程度であることがより好ましく、1~5質量%程度であることがさらに好ましい。
【0058】
前記重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキシド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキシド、ステアロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、tert-ブチルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシラウレート、tert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert-ブチルパーオキシアセテート、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(2-メチルプロピオンニトリル)、アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、4、4’-アゾビス(4-シアノブタン酸)、ジメチルアゾビス(2-メチルプロピオネート)、アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド]、アゾビス{2-メチル-N-[2-(1-ヒドロキシブチル)]-プロピオンアミド}等のアゾ化合物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩等を挙げることができる。これらの重合開始剤は、単独で又は2種以上組合せて使用することができる。また、上記重合開始剤に、必要に応じて、糖、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、鉄錯体等の還元剤を併用して、レドックス開始剤とすることもできる。
【0059】
上記重合開始剤の使用量は、一般に、使用される全モノマーの総量に対して、0.1~5質量%の範囲内であることが好ましく、0.2~3質量%の範囲内であることがより好ましい。該重合開始剤の添加方法は、特に制限されるものではなく、その種類及び量等に応じて適宜選択することができる。例えば、予めモノマー混合物又は水性媒体に含有させることもできるし、或いは重合時に一括して添加することもできるし、又は滴下することもできる。
【0060】
本発明の水性中塗り塗料(X)が前記水酸基含有アクリル樹脂(x11)を含有する場合、該水酸基含有アクリル樹脂(x11)の含有量は、形成される複層塗膜の平滑性及びシーラー隠蔽性等の観点から、水性中塗り塗料(X)中の合計樹脂固形分量を基準として、1~70質量%の範囲内であることが好ましく、2~60質量%の範囲内であることがより好ましく、3~50質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0061】
(水酸基含有ポリエステル樹脂(x12))
水酸基含有ポリエステル樹脂(x12)は、既知の方法で、常法に従い、多塩基酸と多価アルコールとをエステル化反応させることによって合成することができる。
【0062】
上記多塩基酸は、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物であり、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸及びこれらの無水物などが挙げられる。また、該多価アルコールは、1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物であり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,9-ノナンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチルペンタンジオール、水素化ビスフェノールA等のジオール類、及びトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の三価以上のポリオール成分、並びに、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロールペンタン酸、2,2-ジメチロールヘキサン酸、2,2-ジメチロールオクタン酸等のヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。
【0063】
また、プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイドなどのα-オレフィンエポキシド、カージュラE10(HEXION社製、商品名、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)などのモノエポキシ化合物などを酸と反応させて、これらの化合物をポリエステル樹脂に導入してもよい。
【0064】
また、前記水酸基含有ポリエステル樹脂(x12)は、あまに油脂肪酸、やし油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ゴマ油脂肪酸、エノ油脂肪酸、麻油脂肪酸、トール油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸などの(半)乾性油脂肪酸などで変性された脂肪酸変性ポリエステル樹脂であってもよい。これらの脂肪酸の変性量は、一般に、油長で30質量%以下であることが適している。また、水酸基含有ポリエステル樹脂(x12)は、安息香酸などの一塩基酸を一部反応させたものであってもよい。
【0065】
また、上記水酸基含有ポリエステル樹脂(x12)は、該樹脂の調製中又は調製後に、脂肪酸、モノエポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物、アクリル樹脂等で変性することができる。
【0066】
上記脂肪酸としては、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等が挙げられる。
【0067】
また、上記モノエポキシ化合物としては、例えば、「カージュラE10P」(商品名、HEXION社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)を好適に用いることができる。
【0068】
また、上記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、リジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート化合物;水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン-2,4-ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン-2,6-ジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3-(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート化合物;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;リジントリイソシアネートなどの3価以上のポリイソシアネート等の有機ポリイソシアネートそれ自体;これらの各有機ポリイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂、水等との付加物;これらの各有機ポリイソシアネート同士の環化重合体(例えば、イソシアヌレート)、ビウレット型付加物等が挙げられる。これらのポリイソシアネート化合物は、単独で又は2種以上混合して使用することができる。
【0069】
また、前記水酸基含有ポリエステル樹脂(x12)をアクリル樹脂で変性する方法としては、既知の方法を用いることができ、例えば、重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂と重合性不飽和モノマーとの混合物を重合させる方法、水酸基及びカルボキシル基含有ポリエステル樹脂とアクリル樹脂との樹脂同士の反応による方法等を挙げることができる。
【0070】
上記水酸基含有ポリエステル樹脂(x12)は、形成される複層塗膜の平滑性等の観点から、水酸基価が、1~250mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、2~200mgKOH/gの範囲内であることがより好ましく、5~200mgKOH/gの範囲内であることがさらに好ましい。
【0071】
また、上記水酸基含有ポリエステル樹脂(x12)は、形成される複層塗膜の平滑性及びシーラー隠蔽性等の観点から、酸価が、1~150mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、2~100mgKOH/gの範囲内であることがより好ましく、2~50mgKOH/gの範囲内であることがさらに好ましい。
【0072】
また、上記水酸基含有ポリエステル樹脂(x12)の数平均分子量は、800~100,000の範囲内であることが好ましく、1,000~50,000の範囲内であることがより好ましく、1,200~10,000の範囲内であることがさらに好ましい。
【0073】
なお、本明細書において、平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフで測定したクロマトグラムから標準ポリスチレンの分子量を基準にして算出した値である。ゲルパーミエーションクロマトグラフは、「HLC8120GPC」(東ソー社製)を使用した。カラムとしては、「TSKgel G-4000HXL」、「TSKgel G-3000HXL」、「TSKgel G-2500HXL」、「TSKgel G-2000HXL」(いずれも東ソー(株)製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1mL/min、検出器;RIの条件で行った。
【0074】
本発明の水性中塗り塗料(X)が前記水酸基含有ポリエステル樹脂(x12)を含有する場合、該水酸基含有ポリエステル樹脂(x12)の含有量は、形成される複層塗膜の平滑性及びシーラー隠蔽性等の観点から、水性中塗り塗料(X)中の合計樹脂固形分量を基準として、1~70質量%の範囲内であることが好ましく、2~50質量%の範囲内であることがより好ましく、3~30質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0075】
<<硬化剤(x2)>>
硬化剤(x2)は、前記水酸基含有樹脂(x1)中の架橋性官能基と反応して、水性中塗り塗料(X)を硬化し得る化合物である。該硬化剤(x2)は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0076】
上記硬化剤(x2)としては、例えば、アミノ樹脂(x21)、ポリイソシアネート化合物(x22)、ブロック化ポリイソシアネート化合物(x23)、ポリカルボジイミド化合物、エポキシ基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、ヒドラジド基含有化合物、セミカルバジド基含有化合物等が挙げられる。
なかでも、形成される複層塗膜の平滑性等の観点から、アミノ樹脂(x21)、ポリイソシアネート化合物(x22)及びブロック化ポリイソシアネート化合物(x23)から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、アミノ樹脂(x21)及びブロック化ポリイソシアネート化合物(x23)のうちのいずれか1種を含むことがさらに好ましい。
【0077】
(アミノ樹脂(x21))
上記アミノ樹脂(x21)としては、アミノ成分とアルデヒド成分との反応によって得られる部分メチロール化アミノ樹脂又は完全メチロール化アミノ樹脂を使用することができる。アミノ成分としては、例えば、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等が挙げられる。アルデヒド成分としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
【0078】
また、上記メチロール化アミノ樹脂のメチロール基を、適当なアルコールによって、部分的に又は完全にエーテル化したものも使用することができる。エーテル化に用いられるアルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、2-エチル-1-ブタノール、2-エチル-1-ヘキサノール等が挙げられる。
【0079】
上記アミノ樹脂としては、メラミン樹脂が好ましい。特に、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したメチルエーテル化メラミン樹脂、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をブチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したブチルエーテル化メラミン樹脂、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコール及びブチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したメチル-ブチル混合エーテル化メラミン樹脂を含むことが好ましく、メチル-ブチル混合エーテル化メラミン樹脂を含むことがより好ましい。
【0080】
上記メラミン樹脂は、形成される複層塗膜の平滑性等の観点から、重量平均分子量が400~6,000の範囲内であることが好ましく、500~4,000の範囲内であることがより好ましく、600~3,000の範囲内であることがさらに好ましい。
【0081】
上記メラミン樹脂としては市販品を使用することができる。市販品の商品名としては、例えば、「サイメル202」、「サイメル203」、「サイメル238」、「サイメル250」、「サイメル251」、「サイメル303」、「サイメル323」、「サイメル324」、「サイメル325」、「サイメル327」、「サイメル350」、「サイメル385」、「サイメル1156」、「サイメル1158」、「サイメル1116」、「サイメル1130」(以上、オルネクスジャパン社製)、「ユーバン120」、「ユーバン20HS」、「ユーバン20SE60」、「ユーバン2021」、「ユーバン2028」、「ユーバン28-60」(以上、三井化学社製)等が挙げられる。
【0082】
本発明の水性中塗り塗料(X)が、上記メラミン樹脂を含有する場合、水性中塗り塗料(X)は硬化触媒として、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸等のスルホン酸;該スルホン酸とアミンとの中和塩;リン酸エステル化合物とアミンとの中和塩等を含有することができる。
【0083】
前記硬化剤(x2)が、上記アミノ樹脂(x21)を含有する場合、該アミノ樹脂(x21)の含有量は、形成される複層塗膜の平滑性等の観点から、硬化剤(x2)の合計固形分量を基準として、10~100質量%の範囲内であることが好ましく、30~90質量%の範囲内であることがより好ましく、50~80質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0084】
(ポリイソシアネート化合物(x22))
前記ポリイソシアネート化合物(x22)は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物であって、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、該ポリイソシアネートの誘導体等を挙げることができる。
【0085】
上記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトヘキサン酸メチル(慣用名:リジンジイソシアネート)等の脂肪族ジイソシアネート;2,6-ジイソシアナトヘキサン酸2-イソシアナトエチル、1,6-ジイソシアナト-3-イソシアナトメチルヘキサン、1,4,8-トリイソシアナトオクタン、1,6,11-トリイソシアナトウンデカン、1,8-ジイソシアナト-4-イソシアナトメチルオクタン、1,3,6-トリイソシアナトヘキサン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアナト-5-イソシアナトメチルオクタン等の脂肪族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0086】
前記脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、4-メチル-1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート(慣用名:水添TDI)、2-メチル-1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-もしくは1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、メチレンビス(4,1-シクロヘキサンジイル)ジイソシアネート(慣用名:水添MDI)、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;1,3,5-トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5-トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,6-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)-ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン等の脂環族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0087】
前記芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンビス(4,1-フェニレン)ジイソシアネート(慣用名:MDI)、1,3-もしくは1,4-キシリレンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω’-ジイソシアナト-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-又は1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート;1,3,5-トリイソシアナトメチルベンゼン等の芳香脂肪族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0088】
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート(慣用名:2,4-TDI)もしくは2,6-トリレンジイソシアネート(慣用名:2,6-TDI)もしくはその混合物、4,4’-トルイジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタン-4,4’,4’’-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアナトベンゼン、2,4,6-トリイソシアナトトルエン等の芳香族トリイソシアネート;4,4’-ジフェニルメタン-2,2’,5,5’-テトライソシアネート等の芳香族テトライソシアネート等を挙げることができる。
【0089】
また、前記ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネートのダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)、クルードTDI等を挙げることができる。
【0090】
上記ポリイソシアネート及びその誘導体は、それぞれ単独で用いてもよく又は2種以上併用してもよい。また、これらポリイソシアネートのうち、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート及びこれらの誘導体が好ましい。
【0091】
また、前記ポリイソシアネート化合物としては、上記ポリイソシアネート及びその誘導体と、該ポリイソシアネートと反応し得る化合物とを、イソシアネート基過剰の条件で反応させてなるプレポリマーを使用してもよい。該ポリイソシアネートと反応し得る化合物としては、例えば、水酸基、アミノ基等の活性水素基を有する化合物が挙げられ、具体的には、例えば、多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂、アミン、水等を使用することができる。
【0092】
前記硬化剤(x2)が、上記ポリイソシアネート化合物(x22)を含有する場合、該ポリイソシアネート化合物(x22)の含有量は、形成される複層塗膜の平滑性等の観点から、硬化剤(x2)の合計固形分量を基準として、5~80質量%の範囲内であることが好ましく、8~60質量%の範囲内であることがより好ましく、10~40質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0093】
また、上記ポリイソシアネート化合物としては、イソシアネート基含有重合性不飽和モノマーの重合体、又は該イソシアネート基含有重合性不飽和モノマーと該イソシアネート基含有重合性不飽和モノマー以外の重合性不飽和モノマーとの共重合体を使用してもよい。
【0094】
(ブロック化ポリイソシアネート化合物(x23))
前記ブロック化ポリイソシアネート化合物(x23)は、上記ポリイソシアネート化合物(x22)のイソシアネート基を、ブロック剤でブロックした化合物である。
【0095】
上記ブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、ブチルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸メチル等のフェノール系;ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム、β-プロピオラクタム等のラクタム系;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ラウリルアルコール等の脂肪族アルコール系;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノール等のエーテル系;ベンジルアルコール、グリコール酸、グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチル、乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート等のアルコール系;ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトン等の活性メチレン系;ブチルメルカプタン、t-ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、2-メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール等のメルカプタン系;アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミド等の酸アミド系;コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミド等のイミド系;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N-フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミン等アミン系;イミダゾール、2-エチルイミダゾール等のイミダゾール系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素等の尿素系;N-フェニルカルバミン酸フェニル等のカルバミン酸エステル系;エチレンイミン、プロピレンイミン等のイミン系;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリ等の亜硫酸塩系;アゾール系の化合物等が挙げられる。上記アゾール系の化合物としては、ピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール、3-メチルピラゾール、4-ベンジル-3,5-ジメチルピラゾール、4-ニトロ-3,5-ジメチルピラゾール、4-ブロモ-3,5-ジメチルピラゾール、3-メチル-5-フェニルピラゾール等のピラゾール又はピラゾール誘導体;イミダゾール、ベンズイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール等のイミダゾール又はイミダゾール誘導体;2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾリン誘導体等が挙げられる。
なかでも、好ましいブロック剤としては、活性メチレン系のブロック剤、ピラゾール又はピラゾール誘導体が挙げられる。
【0096】
ブロック化を行なう(ブロック剤を反応させる)にあたっては、必要に応じて溶剤を添加して行なうことができる。ブロック化反応に用いる溶剤としてはイソシアネート基に対して反応性でないものが良く、例えば、アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン類、酢酸エチルのようなエステル類、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)のような溶剤を挙げることができる。
【0097】
また、上記ブロック剤として、1個以上のヒドロキシル基と1個以上のカルボキシル基を有するヒドロキシカルボン酸、例えば、ヒドロキシピバリン酸、ジメチロールプロピオン酸等も使用できる。特に、上記ヒドロキシカルボン酸を用いてイソシアネート基をブロックした後、該ヒドロキシカルボン酸のカルボキシル基を中和して水分散性を付与したブロック化ポリイソシアネート化合物を、好適に用いることができる。
【0098】
前記硬化剤(x2)が、ブロック化ポリイソシアネート化合物(x23)を含有する場合、該ブロック化ポリイソシアネート化合物(x23)の含有量は、形成される複層塗膜の平滑性等の観点から、硬化剤(x2)の合計固形分量を基準として、5~80質量%の範囲内であることが好ましく、8~60質量%の範囲内であることがより好ましく、10~40質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0099】
上記硬化剤(x2)の含有量は、形成される複層塗膜の平滑性等の観点から、水性中塗り塗料(X)中の合計樹脂固形分量を基準として、10~80質量%の範囲内であることが好ましく、15~75質量%の範囲内であることがより好ましく、20~70質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0100】
<<顔料(x3)>>
本発明の水性中塗り塗料(X)は顔料(x3)を含有する。
また、本発明の水性中塗り塗料(X)は乾燥膜厚で15μm塗装した場合に下層の塗膜の色を隠蔽できることが好ましい。
【0101】
前記顔料(x3)としては、例えば、着色顔料(x31)、体質顔料(x32)、光輝性顔料(x33)等を挙げることができる。該顔料(x3)は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0102】
(着色顔料(x31))
上記着色顔料(x31)としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料などが挙げられ、なかでも、酸化チタン及び/又はカーボンブラックを好適に使用することができる。
【0103】
本発明の水性中塗り塗料(X)が、上記着色顔料(x31)を含有する場合、該着色顔料(x31)の含有量は、形成される複層塗膜の平滑性及びシーラー隠蔽性等の観点から、水性中塗り塗料(X)中の合計樹脂固形分100質量部を基準として、1~180質量部の範囲内であることが好ましく、5~140質量部の範囲内であることがより好ましく、10~120質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0104】
(体質顔料(x32))
また、前記体質顔料(x32)としては、例えば、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナホワイト等が挙げられ、なかでも硫酸バリウム及び/又はタルクを好適に使用することができる。
【0105】
なかでも、本発明の水性中塗り塗料(X)が、上記体質顔料(x32)として、平均一次粒子径が1μm以下の硫酸バリウム、さらに好ましくは平均一次粒子径が0.01~0.8μmの範囲内である硫酸バリウムを含有することが、平滑性に優れた複層塗膜を得られるため、好適である。
【0106】
なお、本発明における硫酸バリウムの平均一次粒子径は、硫酸バリウムを走査型電子顕微鏡で観察し、電子顕微鏡写真上に無作為に引いた直線上にある硫酸バリウム粒子20個の最大径を平均した値である。
【0107】
本発明の水性中塗り塗料(X)が、上記体質顔料(x32)を含有する場合、該体質顔料(x32)の含有量は、形成される複層塗膜の平滑性等の観点から、水性中塗り塗料(X)中の合計樹脂固形分100質量部を基準として、1~150質量部の範囲内であることが好ましく、5~130質量部の範囲内であることがより好ましく、10~110質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0108】
(光輝性顔料(x33))
また、前記光輝性顔料(x33)としては、例えば、アルミニウム(蒸着アルミニウムも含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、ガラスフレーク、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタン及び/又は酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタン及び/又は酸化鉄で被覆された雲母等が挙げられる。なかでも、アルミニウム顔料を使用することが好ましい。アルミニウム顔料には、ノンリーフィング型アルミニウム顔料とリーフィング型アルミニウム顔料があるが、いずれも使用することができる。なかでも、ノンリーフィング型アルミニウム顔料を使用することが好ましい。
【0109】
上記光輝性顔料(x33)はりん片状であることが好ましい。また、該光輝性顔料(x33)としては、長手方向寸法が1~100μm、特に5~40μm、厚さが0.001~5μm、特に0.01~2μmの範囲内にあるものが適している。
【0110】
本発明の水性中塗り塗料(X)が、上記光輝性顔料(x33)を含有する場合、該光輝性顔料(x33)の含有量は、形成される複層塗膜の平滑性及びシーラー隠蔽性等の観点から、水性中塗り塗料(X)中の合計樹脂固形分100質量部を基準として、1~100質量部の範囲内であることが好ましく、2~60質量部の範囲内であることがより好ましく、3~40質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0111】
また、本発明において、上記顔料(x3)の含有量は、形成される複層塗膜の平滑性及びシーラー隠蔽性等の観点から、水性中塗り塗料(X)中の合計樹脂固形分100質量部に対して、1~180質量部の範囲内であることが好ましく、5~170質量部の範囲内であることがより好ましく、10~160質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0112】
<<粘性調整剤(x4)>>
本発明の粘性調整剤(x4)は、会合型粘性調整剤(x41)及び前記会合型粘性調整剤(x41)とは異なるアルカリ膨潤型粘性調整剤(x42)を含む。会合型粘性調整剤(x41)は疎水性の会合によるネットワーク形成により粘性が発現し、複層塗膜の平滑性を向上させることができるが、シーラーに含まれる可塑剤によって会合が阻害されやすい。本発明者らの検討により、会合型粘性調整剤(x41)とともにアルカリ膨潤型粘性調整剤(x42)を併用することで、平滑性を与えながら、可塑剤による影響を抑制してシーラー隠蔽性を保つことができる。
【0113】
(会合型粘性調整剤(x41))
上記会合型粘性調整剤(x41)は、炭素数が8~36の疎水基を有する(メタ)アクリル酸コポリマー系増粘剤である。
【0114】
上記会合型粘性調整剤(x41)としては、ポリアクリル酸塩、ポリアクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体等を挙げることができる。
【0115】
上記会合型粘性調整剤(x41)は、形成される複層塗膜の平滑性及びシーラー隠蔽性等の観点から、酸価が、30~350mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、80~320mgKOH/gの範囲内であることがより好ましく、80~300mgKOH/gの範囲内であることがさらに好ましい。
【0116】
上記会合型粘性調整剤(x41)としては、
(x411)(メタ)アクリル酸又はその塩、
(x412)下記一般式(1)で表される重合性不飽和モノマー、
(x413)アルキル基の炭素数が1~4であるアルキル(メタ)アクリレート、及び
(x414)重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー、
を含有する重合性不飽和モノマー混合物を共重合することによって得られる共重合体を含むことが好ましい。
【0117】
【化1】
【0118】
(式(1)中、Rは水素原子又はメチル基、R及びRは、各々独立に、水素原子、メチル基又はエチル基、Rは炭素数8~36の炭化水素基、nは3~100の整数を表す。)
【0119】
〔(メタ)アクリル酸(塩)(x411)〕
上記(メタ)アクリル酸(塩)(x411)とは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸塩又はメタクリル酸塩を意味する。
塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩;メチルアミン塩、エチルアミン塩、プロピルアミン塩、ブチルアミン塩等の炭素数1~4のアルキルアミン塩;等が含まれる。
【0120】
上記(メタ)アクリル酸(塩)としては、アクリル酸、メタクリル酸及びメタクリル酸アンモニウム塩及びジメチルエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等の3級アミン塩が好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましく、メタクリル酸がさらに好ましい。
【0121】
〔重合性不飽和モノマー(x412)〕
前記重合性不飽和モノマー(x412)は、下記一般式(1)で表される重合性不飽和モノマーである。
【0122】
【化2】
【0123】
(式(1)中、Rは水素原子又はメチル基、R及びRは各々独立に、水素原子、メチル基又はエチル基、Rは炭素数8~36の炭化水素基、nは3~100の整数を表す。Cは炭素原子、Hは水素原子、Oは酸素原子である。)
【0124】
上記Rは水素原子又はメチル基であり、メチル基であることが好ましい。
【0125】
また、上記R及びRは、各々独立に、水素原子、メチル基又はエチル基を表し、形成される複層塗膜の平滑性及びシーラー隠蔽性等の観点から、各々独立に水素原子又はメチル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
【0126】
また、上記Rは、炭素数8~36の炭化水素基であり、好ましくは炭素数12~32のアルキル基又はアルケニル基であって、例えば、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、直鎖アルケニル基、分岐アルケニル基等が含まれる。
【0127】
上記直鎖アルキル基としては、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-エイコシル基、n-ヘンエイコシル基、n-ドコシル基等が挙げられ、分岐アルキル基としては、2-エチルヘキシル基、イソデシル基、イソトリデシル基、イソステアリル基、2-ブチルオクチル基、2-(3-メチルブチル)-1,6-ジメチルヘキシル基、2-ペンチルノニル基、2-ヘキシルデシル基、2-ヘプチルウンデシル基、3-(1,3,3-トリメチルブチル)-5,7,7-トリメチルオクチル基、2-オクチルドデシル基、2-ノニルトリデシル基等が挙げられる。
【0128】
前記直鎖アルケニル基としては、n-オクテニル基、n-デセニル基、n-ウンデセニル基、n-ドデセニル基、n-トリデセニル基、n-テトラデセニル基、n-ペンタデセニル基、n-ヘキサデセニル基、n-ヘプタデセニル基、n-オクタデセニル基等が挙げられ、分岐アルケニル基としては、イソオクテニル基、イソデセニル基、イソウンデセニル基、インドデセニル基、イソトリデセニル基、イソテトラデセニル基、イソペンタデセニル基、イソヘキサデセニル基、イソヘプタデセニル基、イソオクタデセニル基等が挙げられる。
【0129】
また、nは3~100の整数であり、なかでも、形成される複層塗膜の平滑性及びシーラー隠蔽性等の観点から、10~80の整数であることが好ましく、20~60の整数であることがより好ましい。
【0130】
上記重合性不飽和モノマー(x412)としては、n-ドコサノールエチレンオキシド3~60モル付加体の(メタ)アクリレート、n-ヘンエイサノールエチレンオキシド3~60モル付加体の(メタ)アクリレート、n-エイコサノールエチレンオキシド3~60モル付加体の(メタ)アクリレート、n-ノナデカノールエチレンオキシド3~60モル付加体の(メタ)アクリレート、n-オクタデカノールエチレンオキシド3~60モル付加体の(メタ)アクリレート、n-ヘプタデカノールエチレンオキシド3~60モル付加体の(メタ)アクリレート及びn-ヘキサデカノールエチレンオキシド3~60モル付加体の(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0131】
なかでも、n-ドコサノールエチレンオキシド3~60モル付加体の(メタ)アクリレート、n-オクタデカノールエチレンオキシド3~60モル付加体の(メタ)アクリレート、n-ヘキサデカノールエチレンオキシド3~60モル付加体の(メタ)アクリレート、特にn-ドコサノールエチレンオキシド3~60モル付加体の(メタ)アクリレート及びn-オクタデカノールエチレンオキシド3~60モル付加体の(メタ)アクリレートを好適に使用することができる。
【0132】
〔アルキル基の炭素数が1~4であるアルキル(メタ)アクリレート(x413)〕
前記アルキル基の炭素数が1~4であるアルキル(メタ)アクリレート(x413)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、iso-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0133】
なかでも、形成される複層塗膜の平滑性及びシーラー隠蔽性等の観点から、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、特にメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレートを好適に使用することができる。
【0134】
〔重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー(x414)〕
前記重合性不飽和モノマー(x414)としては、前記(メタ)アクリル酸(塩)(x411)、重合性不飽和モノマー(x412)及びアルキル(メタ)アクリレート(x413)と共重合でき、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーであれば特に限定されず、例えば、重合性不飽和基を1分子中に2個有する2官能重合性不飽和モノマー(x4141)、重合性不飽和基を1分子中に3個有する3官能重合性不飽和モノマー(x4142)、重合性不飽和基を1分子中に4~8個有する4~8官能重合性不飽和モノマー(x4143)等を使用することができる。
【0135】
《2官能重合性不飽和モノマー(x4141)》
上記2官能重合性不飽和モノマー(x4141)としては、例えば、ポリオールのジ(メタ)アクリレート、ポリオールアルキレンオキシド付加体のジ(メタ)アクリレート等を使用することができる。
【0136】
上記ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチルー1,3-ジオール、トリシクロデカンジメチロール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメチロール、ハイドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン及びグリセリン等が挙げられ、なかでも、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチルー1,3-ジオール、トリシクロデカンジメチロール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメチロール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、グリセリンを好適に使用することができる。
【0137】
前記ポリオールアルキレンオキシド付加体としては、上記ポリオールのアルキレンオキシド付加体であれば特に制限されないが、アルキレンオキシドの付加モル数が、ポリオール1molに対して、2~100mol、好ましくは4~80mol、さらに好ましくは6~60molの範囲内であることが好適である。
【0138】
上記アルキレンオキシドとしては、炭素数2~4のアルキレンオキシドを好適に使用することができ、該炭素数2~4のアルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラハイドロフラン等が挙げられる。なかでも、エチレンオキシドを使用することが好ましい。
【0139】
また、上記アルキレンオキシドは、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。アルキレンオキシドを2種以上使用する場合、該アルキレンオキシドの配列順序はブロック、ランダム又はこれらの混合のいずれでもよい。上記アルキレンオキシドを2種以上使用する場合、該アルキレンオキシドはエチレンオキシドを含有することが好ましく、なかでも、該エチレンオキシドの含有率が、アルキレンオキシドの総量を基準として、30~100mol%の範囲内であることが好ましく、50~100mol%の範囲内であることがより好ましく、70~100mol%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0140】
《3官能重合性不飽和モノマー(x4142)》
前記3官能重合性不飽和モノマー(x4142)としては、例えば、1分子中に3個以上の水酸基を有するポリオールのトリ(メタ)アクリレート及びポリオールアルキレンオキシド付加体のトリ(メタ)アクリレート等を使用することができる。
【0141】
上記1分子中に3個以上の水酸基を有するポリオールとしては、例えば、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ジグリセリン、トリグリセリン、ジトリメチロールプロパン、トリストリメチロールプロパン及びシクロヘキサンテトラオール等を使用することができる。
【0142】
また、前記ポリオールアルキレンオキシド付加体のトリ(メタ)アクリレートにおけるアルキレンオキシドの付加モル数は、ポリオール1molに対して、3~200molの範囲内であることが好ましく、6~150molの範囲内であることがより好ましく、9~100molの範囲内であることがさらに好ましい。
【0143】
上記アルキレンオキシドとしては、炭素数2~4のアルキレンオキシドを好適に使用することができ、該炭素数2~4のアルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラハイドロフラン等が挙げられる。なかでも、エチレンオキシドを使用することが好ましい。
【0144】
また、上記アルキレンオキシドは、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。アルキレンオキシドを2種以上使用する場合、該アルキレンオキシドの配列順序はブロック、ランダム又はこれらの混合のいずれでもよい。上記アルキレンオキシドを2種以上使用する場合、該アルキレンオキシドはエチレンオキシドを含有することが好ましく、なかでも、該エチレンオキシドの含有率が、アルキレンオキシドの総量を基準として、30~100mol%の範囲内であることが好ましく、50~100mol%の範囲内であることがより好ましく、70~100mol%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0145】
《4~8官能重合性不飽和モノマー(x4143)》
前記4~8官能重合性不飽和モノマー(x4143)としては、例えば、1分子中に4個以上の水酸基を有するポリオールのテトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサ(メタ)アクリレート、へプタ(メタ)アクリレート、オクタ(メタ)アクリレート及びポリオールアルキレンオキシド付加体のテトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサ(メタ)アクリレート、へプタ(メタ)アクリレート、オクタ(メタ)アクリレート等を使用することができる。
【0146】
上記1分子中に4個以上の水酸基を有するポリオールとしては、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、テトラペンタエリスリトール、ヘキサペンタエリスリトール、ジグリセリン、トリグリセリン、ジトリメチロールプロパン、トリストリメチロールプロパン、シクロヘキサンテトラオール、ソルビタン等を使用することができる。
【0147】
また、ポリオールアルキレンオキシド付加体のテトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサ(メタ)アクリレート、へプタ(メタ)アクリレート、オクタ(メタ)アクリレートにおけるアルキレンオキシドの付加モル数は、ポリオール1molに対して、3~200molの範囲内であることが好ましく、6~150molの範囲内であることがより好ましく、9~100molの範囲内であることがさらに好ましい。
【0148】
上記アルキレンオキシドとしては、炭素数2~4のアルキレンオキシドを好適に使用することができ、該炭素数2~4のアルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラハイドロフラン等が挙げられる。なかでも、エチレンオキシドを使用することが好ましい。
【0149】
また、上記アルキレンオキシドは、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。アルキレンオキシドを2種以上使用する場合、該アルキレンオキシドの配列順序はブロック、ランダム又はこれらの混合のいずれでもよい。上記アルキレンオキシドを2種以上使用する場合、該アルキレンオキシドはエチレンオキシドを含有することが好ましく、なかでも、該エチレンオキシドの含有率が、アルキレンオキシドの総量を基準として、30~100mol%の範囲内であることが好ましく、50~100mol%の範囲内であることがより好ましく、70~100mol%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0150】
《その他の重合性不飽和モノマー(x415)》
前記前記会合型粘性調整剤(x41)には、上記(x411)~(x414)に加えその他の重合性不飽和モノマー(x415)を含む重合性不飽和モノマー混合物の共重合体も含まれる。
【0151】
上記その他の重合性不飽和モノマー(x415)としては、前記重合性不飽和モノマー(x411)~(x414)と共重合できる重合性不飽和モノマーであれば特に限定されないが、なかでも、形成される複層塗膜の平滑性及びシーラー隠蔽性等の観点から、エチレン性不飽和カルボン酸(塩)、ポリオキシアルキレン(アルキレンオキシド付加mol数2~100)(メタ)アクリル酸モノエステル、アルコキシポリアルキレングリコール(アルキレンオキシド付加mol数2~100)(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート及びアミド基含有重合性不飽和モノマー、好ましくはクロトン酸、イソクロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、ポリオキシエチレン(エチレンオキシド付加mol数2~100)モノ(メタ)アクリレート、炭素数1~6の脂肪族アルコールエチレンオキシド付加物(エチレンオキシド付加mol数2~100)の(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミド、さらに好ましくはマレイン酸、フマル酸、ポリオキシエチレン(エチレンオキシド付加mol数2~100)モノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミドを好適に使用することができる。
【0152】
上記重合性不飽和モノマー(x411)~(x415)は、それぞれ、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0153】
前記会合型粘性調整剤(x41)は、前記重合性不飽和モノマー(x411)~(x414)及び必要に応じて(x415)を含有する重合性不飽和モノマー混合物を共重合することによって得られる。共重合に際しての重合性不飽和モノマー(x411)~(x415)の使用割合は、重合性不飽和モノマーの合計質量、すなわち(x411)~(x415)の合計質量を基準にして、下記の範囲内とすることができる。
(メタ)アクリル酸(塩)(x411)の配合割合は、好ましくは1~50質量%の範囲内、より好ましくは1~45質量%の範囲内、さらに好ましくは7~40質量%の範囲内である。
重合性不飽和モノマー(x412)の配合割合は、好ましくは5~60質量%の範囲内、より好ましくは10~55質量%の範囲内、さらに好ましくは20~50質量%の範囲内である。
アルキル基の炭素数が1~4であるアルキル(メタ)アクリレート(x413)の配合割合は、好ましくは5~80質量%の範囲内、より好ましくは7~75質量%の範囲内、さらに好ましくは10~70質量%の範囲内である。
重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー(x414)の配合割合は、好ましくは0.05~5質量%の範囲内、より好ましくは0.07~4質量%の範囲内、さらに好ましくは0.1~3質量%の範囲内である。
その他の重合性不飽和モノマー(x415)の配合割合は、好ましくは0~20質量%の範囲内、より好ましくは0~15質量%の班員愛、さらに好ましくは0~10質量%の範囲内である。
【0154】
重合性不飽和モノマー(x411)~(x415)の配合割合が上記範囲内である場合、複層塗膜の平滑性及びシーラー隠蔽性等が良好となる。
【0155】
上記重合性不飽和モノマー(x411)~(x415)の共重合は、乳化重合法、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法等の従来公知の方法により行なうことができる。なかでも、乳化重合法及び溶液重合法、好ましくは溶液重合法により行なうことが好適である。
【0156】
また、本発明において、会合型粘性調整剤(x41)は、形成される複層塗膜の平滑性及びシーラー隠蔽性等の観点から、水性中塗り塗料(X)中の合計樹脂固形分100質量部に対して、0.05~0.7質量部の範囲内であることが好ましく、0.1~0.6質量部の範囲内であることがより好ましく、0.2~0.5質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0157】
(アルカリ膨潤型粘性調整剤(x42))
前記アルカリ膨潤型粘性調整剤(x42)は、一般に、酸基を含有するビニルポリマーエマルションであり、アルカリ物質で中和することにより水に溶解又は膨潤して剪断減粘性が付与され、増粘性を示すものである。
本発明のアルカリ膨潤型粘性調整剤(x42)は、前記会合型粘性調整剤(x41)とは異なる粘性調整剤であり、炭素数が8~36の疎水基を含まない。
【0158】
本発明の水性中塗り塗料(X)において、上記アルカリ膨潤型粘性調整剤(x42)を含むことによって、シーラー(S)に含まれる可塑剤の影響を低減することができる。
【0159】
前記ビニルポリマーエマルションは酸性領域においては低粘度の液体であり、これをアンモニア、アミン化合物又は無機塩基等で中和することによってビニルポリマーエマルションが膨潤し増粘性が付与される。
前記ビニルポリマーエマルション中のビニルポリマーは架橋していても、未架橋もしくは一部架橋したポリマーであっても構わない。
【0160】
前記アルカリ膨潤型粘性調整剤(x42)としては、例えば、プライマルASE-60、プライマルASE-75、プライマルASE-95NP(以上、ロダウケミカル社製、商品名、アクリル系エマルション)、ビスカレックスHV-30、ビスカレックスHM、ビスカレックスVS、ビスカレックスVG2(以上、ヘキスト合成(株)、商品名、アクリル系エマルション)、SNシックナー618、SNシックナー630、SNシックナー634、SNシックナー636、SNシックナー650(以上、サンノプコ社製、商品名、アクリル系)等を挙げることができる。
【0161】
また、本発明において、アルカリ膨潤型粘性調整剤(x42)は、形成される複層塗膜の平滑性及びシーラー隠蔽性等の観点から、水性中塗り塗料(X)中の合計樹脂固形分100質量部に対して、0.02~0.3質量部の範囲内であることが好ましく、0.03~0.2質量部の範囲内であることがより好ましく、0.05~0.1質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0162】
前記会合型粘性調整剤(x41)と上記アルカリ膨潤型粘性調整剤(x42)との固形分質量比((x41)/(x42))が97/3~70/30の範囲内である。
前記会合型粘性調整剤(x41)と上記アルカリ膨潤型粘性調整剤(x42)との固形分質量比は、形成される複層塗膜の平滑性及びシーラー隠蔽性等の観点から、95/5~73/27の範囲内であることが好ましく、92/8~77/23の範囲内であることがより好ましく、90/10~80/20の範囲内であることがさらに好ましい。
【0163】
本発明の水性中塗り塗料(X)は、粘性調整剤(x4)として、会合型粘性調整剤(x41)及びアルカリ膨潤型粘性調整剤(x42)以外の公知の粘性調整剤(以下、「その他の粘性調整剤(x43)」ともいう)も必要に応じて併せて使用することができる。
【0164】
上記その他の粘性調整剤(x43)としては、例えば、ケイ酸塩、金属ケイ酸塩、モンモリロナイト、コロイド状アルミナ等の無機系増粘剤;カゼイン、カゼイン酸ソーダ、カゼイン酸アンモニウム等のタンパク質系増粘剤;アルギン酸ソーダ等のアルギン酸系増粘剤;プルロニックポリエーテル、ポリエーテルジアルキルエステル、ポリエーテルジアルキルエーテル、ポリエーテルエポキシ変性物等のポリエーテル系増粘剤;ビニルメチルエーテル-無水マレイン酸共重合体の部分エステル等の無水マレイン酸共重合体系増粘剤;ポリアマイドアミン塩等のポリアマイド系増粘剤等;カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の繊維素誘導体系粘性調整剤が挙げられる。
【0165】
これらのその他の粘性調整剤(x43)はそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0166】
<<その他の成分>>
本発明の水性中塗り塗料(X)は、さらに必要に応じて、水酸基含有樹脂(x1)及び硬化剤(x2)以外の樹脂、有機溶剤、硬化触媒、分散剤、沈降防止剤、消泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤、表面調整剤等を含有することができる。
【0167】
上記水酸基含有樹脂(x1)及び硬化剤(x2)以外の樹脂としては、例えば、水酸基を含有しないポリウレタン樹脂、水酸基を含有しないアクリル樹脂、水酸基を含有しないポリエステル樹脂、水酸基を含有しないアクリル変性ポリエステル樹脂、水酸基を含有しないアクリル変性ポリウレタン樹脂、水酸基を含有しないポリエーテル樹脂、水酸基を含有しないポリカーボネート樹脂、水酸基を含有しないエポキシ樹脂、水酸基を含有しないアルキド樹脂、水酸基を含有しないポリオレフィン樹脂等が挙げられる。なかでも、本発明の水性中塗り塗料(X)が、水酸基含有樹脂(x1)及び硬化剤(x2)以外の樹脂の少なくともその一種として、水酸基を含有しないポリウレタン樹脂を含有することが好ましい。
【0168】
本発明の水性中塗り塗料(X)が、上記水酸基を含有しないポリウレタン樹脂を含有する場合、該水酸基を含有しないポリウレタン樹脂の含有量は、形成される複層塗膜の平滑性及びシーラー隠蔽性等の観点から、水性中塗り塗料(X)中の合計樹脂固形分量を基準として、2~40質量%の範囲内であることが好ましく、3~20質量%の範囲内であることがより好ましく、5~15質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0169】
前記有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸メチル等のエステル系溶剤;イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、2-エチルヘキサノール等のアルコール系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート等のグリコールエーテル系溶剤;芳香族炭化水素系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤等が挙げられる。
【0170】
本発明の水性中塗り塗料(X)は、その使用に際して、必要に応じて水及び/又は有機溶剤等を添加して希釈し、適正粘度に調整することにより塗装することができる。
【0171】
適正粘度は、塗料組成により異なるが、例えば、温度20℃においてB型粘度計で測定する6rpmで1分後の粘度(本明細書では「B6値」ということがある)が、形成される複層塗膜の平滑性及びシーラー隠蔽性等の観点から、100~3000mPa・sの範囲内であることが好ましく、300~2000mPa・sの範囲内であることがより好ましく、500~1500mPa・sの範囲内であることがさらに好ましい。このとき、使用する粘度計は、「LVDV-I」(商品名、BROOKFIELD社製、B型粘度計)である。
【0172】
本発明において、水性塗料とは、有機溶剤型塗料と対比される用語であって、一般に、水又は水を主成分とする媒体(水性媒体)に、塗膜形成樹脂、顔料等を分散及び/又は溶解させた塗料を意味する。
【0173】
本発明の水性中塗り塗料(X)の上記水の含有量は、形成される複層塗膜の平滑性及びシーラー隠蔽性等の観点から、溶媒の総量を基準として、50~90質量%の範囲内であることが好ましく、55~85質量%の範囲内であることがさらに好ましく、60~80質量%の範囲内であることがさらに特に好ましい。
【0174】
また、本発明の水性中塗り塗料(X)の塗料固形分濃度は、通常、5~70質量%程度、好ましくは10~60質量%程度である。
【0175】
本発明の水性中塗り塗料(X)は、一液型塗料又は多液型塗料のいずれであってもよいが、塗料の混合工程が無く生産性に優れる、塗装機械のメンテナンスの簡略化ができる等の観点から、一液型塗料であることが好ましい。
【0176】
上記水性中塗り塗料(X)は、塗装に適正な粘度に調整した後に、回転霧化塗装、エアスプレー、エアレススプレー等公知の方法で、必要に応じて印加して、塗装することができる。
【0177】
上記水性中塗り塗料(X)から形成される中塗り塗膜の膜厚は、乾燥膜厚に基づいて、20μm未満であり、形成される複層塗膜の平滑性及びシーラー隠蔽性等の観点から、7~19μmの範囲内であることが好ましく、10~18μmの範囲内であることがより好ましく、11~17μmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0178】
水性中塗り塗料(X)を塗装して得られる中塗り塗膜それ自体は、通常、約120℃~約180℃の温度で硬化させることができる。
【0179】
<工程(3)>
本発明の方法によれば、次に、工程(2)で形成された未硬化の中塗り塗膜上に、プレヒート処理及び加熱硬化を行わず、水性ベースコート塗料(Y)が塗装され、未硬化のベースコート塗膜が形成される。
【0180】
<水性ベースコート塗料(Y)>
水性ベースコート塗料(Y)は、公知の熱硬化性水性ベースコート塗料をいずれも使用できる。例えば、カルボキシル基、水酸基等の架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の基体樹脂と、ブロックされていてもよいポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂等の硬化剤からなる樹脂成分とを、顔料、その他の添加剤と共に水に溶解ないし分散させて塗料化したものを使用することができる。
【0181】
上記顔料としては、例えば、前記顔料(x3)と同様のものが挙げられる。
【0182】
また、前記水性ベースコート塗料(Y)の塗料固形分濃度は、通常、5~60質量%程度、好ましくは10~50質量%程度である。
【0183】
上記水性ベースコート塗料(Y)は、一液型塗料又は多液型塗料のいずれであってもよいが、塗料の混合工程が無く生産性に優れる、塗装機械のメンテナンスの簡略化ができる等の観点から、一液型塗料であることが好ましい。
【0184】
上記水性ベースコート塗料(Y)は、塗装に適正な粘度に調整した後に、回転霧化塗装、エアスプレー、エアレススプレー等公知の方法で、必要に応じて印加して、塗装することがでる。
【0185】
上記水性ベースコート塗料(Y)から形成されるベースコート塗膜の膜厚は、乾燥膜厚に基づいて、形成される複層塗膜の平滑性及びシーラー隠蔽性等の観点から、10~25μmの範囲内であることが好ましく、10~20μmの範囲内であることがより好ましく、13~17μmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0186】
上記水性ベースコート塗料(Y)を塗装して得られるベースコート塗膜それ自体は、通常、約120℃~約180℃の温度で硬化させることができる。
【0187】
<工程(4)>
本発明の方法によれば、次に、工程(1)~(3)で形成された前記未硬化のシーラー塗膜、未硬化の中塗り塗膜及び未硬化のベースコート塗膜を、プレヒート処理する。プレヒート処理により、各膜における固形分濃度を高め、これにより後述の塗膜硬化時における泡の発生を抑制でき、仕上がり外観を良好にできる。
【0188】
上記プレヒート処理の温度は、40~100℃の範囲内であることが好ましく、50~90℃の範囲内であることがより好ましく、60~80℃の範囲内であることがさらに好ましい。該プレヒートの時間は、30秒間~15分間の範囲内であることが好ましく、1~10分間の範囲内であることがより好ましく、2~5分間の範囲内であることがさらに好ましい。
【0189】
<工程(5)>
本発明の方法によれば、次に、プレヒート処理されたベースコート塗膜上に、クリヤー塗料(Z)が塗装され、未硬化のクリヤー塗膜が形成される。
【0190】
<クリヤー塗料(Z)>
クリヤー塗料(Z)としては、自動車車体等の塗装用として公知の熱硬化性クリヤー塗料組成物をいずれも使用できる。該熱硬化性クリヤー塗料組成物としては、例えば、架橋性官能基を有する基体樹脂及び硬化剤を含有する有機溶剤型熱硬化性塗料組成物、水性熱硬化性塗料組成物、粉体熱硬化性塗料組成物等を挙げることができる。なかでも、形成される複層塗膜の平滑性等の観点から、架橋性官能基を有する基体樹脂及び架橋剤を含有する有機溶剤型熱硬化性塗料組成物が好ましい。
【0191】
上記基体樹脂が有する架橋性官能基としては、例えば、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アルコキシシリル基等を挙げることができる。基体樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂などを挙げることができる。硬化剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、カルボキシル基含有化合物、カルボキシル基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、エポキシ基含有化合物などを挙げることができる。
【0192】
また、上記クリヤー塗料(Z)の塗料固形分濃度は、通常、20~70質量%程度、好ましくは30~60質量%程度である。
【0193】
上記クリヤー塗料(Z)は、一液型塗料又は多液型塗料のいずれであってもよいが、塗料の混合工程が無く生産性に優れる、塗装機械のメンテナンスの簡略化ができる等の観点から、一液型塗料であることが好ましい。
【0194】
上記クリヤー塗料(Z)は、塗装に適正な粘度に調整した後に、回転霧化塗装、エアスプレー、エアレススプレー等公知の方法で、必要に応じて印加して、塗装することがでる。
【0195】
上記クリヤー塗料(Z)から形成されるクリヤー塗膜の膜厚は、乾燥膜厚に基づいて、形成される複層塗膜の平滑性等の観点から、10~60μmの範囲内であることが好ましく、15~55μmの範囲内であることがより好ましく、20~50μmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0196】
上記クリヤー塗料(Z)を塗装して得られるクリヤー塗膜それ自体は、通常、約120℃~約180℃の温度で硬化させることができる。
【0197】
<工程(6)>
本発明の方法によれば、次に、プレヒート処理されたシーラー塗膜、中塗り塗膜及びベースコート塗膜、並びに、未硬化のクリヤー塗膜からなる複層塗膜を加熱硬化させて、硬化した複層塗膜を形成させる。
【0198】
この焼付工程における加熱は、通常の塗膜の加熱手段、例えば、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱等により行うことができる。加熱温度は、60~180℃の範囲内であることが好ましく、110~170℃の範囲内であることがより好ましく、130~160℃の範囲内であることがさらに好ましい。また加熱時間は、特に制限されるものではないが10~90分間の範囲内であることが好ましく、15~60分間の範囲内であることがより好ましく、15~30分間の範囲内であることがさらに好ましい。
【0199】
加熱硬化の前に適宜プレヒートを行ってもよい。プレヒートの温度は、40~100℃の範囲内であることが好ましく、50~90℃の範囲内であることがより好ましい。プレヒートの時間は、30秒間~15分間の範囲内であることが好ましく、1~10分間の範囲内であることがより好ましい。
【0200】
この加熱により、シーラー塗膜、中塗り塗膜、ベースコート塗膜及びクリヤー塗膜の層からなる複層塗膜を硬化させることができる。
【0201】
また、本発明の方法により得られる複層塗膜は、形成される複層塗膜の平滑性等の観点から、その膜厚を乾燥塗膜に基づいて、45~95μmの範囲内であることが好ましく、50~90μmの範囲内であることがより好ましい。
【実施例0202】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものである。また、塗膜の膜厚は硬化塗膜に基づく。
【0203】
<水酸基含有アクリル樹脂(x11)の製造>
製造例1
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、プロピレングリコールモノプロピルエーテル30部を仕込み85℃に昇温後、スチレン6部、メチルメタクリレート30部、n-ブチルアクリレート25部、2-エチルヘキシルアクリレート20部、4-ヒドロキシブチルアクリレート13部、アクリル酸6部、プロピレングリコールモノプロピルエーテル10部及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)2部の混合物を4時間かけてフラスコに滴下し、滴下終了後1時間熟成した。その後さらにプロピレングリコールモノプロピルエーテル5部及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)1部の混合物を1時間かけてフラスコに滴下し、滴下終了後1時間熟成した。さらに2-(ジメチルアミノ)エタノール7.4部を添加して中和し、脱イオン水を徐々に添加することにより、固形分濃度40%の水酸基含有アクリル樹脂(x11-1)の水分散体を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂(x11-1)の酸価は47mgKOH/g、水酸基価は51mgKOH/g、重量平均分子量は50000であった。
【0204】
製造例2
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器に、脱イオン水82部、アデカリアソープSR-1025(商品名、アデカ社製、乳化剤、有効成分25%。)1.0部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、75℃に昇温した。次いで下記のモノマーと開始剤の乳化物(注1)全量のうちの3%量及び0.5%過硫酸アンモニウム水溶液10部とを反応容器内に導入し75℃で2時間保持した。その後、残りのモノマーと開始剤の乳化物を5時間かけて反応容器内に滴下し、滴下終了後6時間熟成を行なった。その後、30℃まで冷却し、5.0%ジメチルエタノールアミン水溶液と脱イオン水を用いて固形分40%、pH6.8となるように調整した。ついで、200メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、固形分濃度40%の水酸基含有アクリル樹脂(x11-2)の水分散体を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂(x11-2)の酸価は11mgKOH/g、水酸基価は24mgKOH/g、重量平均分子量は290万であった。
(注1)モノマーと開始剤の乳化物:脱イオン水55部、ラテムルE-118B(商品名、花王社製、乳化剤、有効成分26%。)4部、スチレン10部、メチルメタクリレート53.5部、n-ブチルアクリレート30部、2-ヒドロキシエチルアクリレート5部及びアクリル酸1.5部、2,2′-アゾビス〔2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン〕0.2部を混合攪拌して、モノマーと開始剤の乳化物を得た。
【0205】
<水酸基含有ポリエステル樹脂(x12)の製造>
製造例3
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン174部、ネオペンチルグリコール327部、アジピン酸352部、イソフタル酸109部及び1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物101部を仕込み、160℃から230℃まで3時間かけて昇温させた後、生成した縮合水を水分離器により留去させながら230℃で保持し、酸価が3mgKOH/g以下となるまで反応させた。この反応生成物に、無水トリメリット酸59部を添加し、170℃で30分間付加反応を行った後、50℃以下に冷却し、2-(ジメチルアミノ)エタノールを酸基に対して当量添加し中和してから、脱イオン水を徐々に添加することにより、固形分濃度45%の水酸基含有ポリエステル樹脂(x12-1)の水分散体を得た。得られた水酸基含有ポリエステル樹脂(x12-1)の酸価は35mgKOH/g、水酸基価は128mgKOH/g、数平均分子量は1500であった。
【0206】
<会合型粘性調整剤(x41)の製造>
製造例4
加熱装置、攪拌装置、温度計及び還流冷却器を備えた4つ口フラスコに、メチルトリグリコール350部を仕込み、80~90℃に昇温した。次に、撹拌下、当該メチルトリグリコールに、メタクリル酸20部、n-オクタデシルアルコールエチレンオキシド60モル付加物のアクリレート19.5部、エチルアクリレート60部及びエチレングリコールエチレンオキシド15モル付加物のジアクリレート0.5部からなる単量体混合物と、2,2’-アソビスイソブチロニトリルの1%メチルトリグリコール溶液50部とをそれぞれ1.5時間かけて滴下した。その間、反応温度は80~90℃を保持した。滴下終了後、反応生成物を3時間同温度に保った後、室温まで冷却することにより、固形分濃度20%の会合型粘性調整剤(x41-1)溶液を得た。
【0207】
製造例5
加熱装置、攪拌装置、温度計及び還流冷却器を備えた4つ口フラスコに、メチルトリグリコール350部を仕込み、80~90℃に昇温した。次に、当該メチルトリグリコールに、撹拌下、メタクリル酸20部、n-ヘキシルアルコールエチレンオキシド30モル付加物のアクリレート19.5部、プロピルアクリレート60部及びエチレングリコールエチレンオキシド15モル付加体のジアクリレート0.5部からなる単量体混合物と、2,2’-アソビスイソブチロニトリルの1%メチルトリグリコール溶液50部とをそれぞれ1.5時間かけて滴下した。その間、反応温度は80~90℃を保持した。滴下終了後、反応生成物を3時間同温度に保った後、室温まで冷却することにより、固形分濃度20%の会合型粘性調整剤(x41-2)溶液を得た。
【0208】
<水酸基を含有しないポリウレタン樹脂(U)の製造>
製造例6
温度計、撹拌装置及び還流コンデンサーを備えた反応槽に、「PTMG1000」(商品名、三菱ケミカル社製、数平均分子量が1000であるポリテトラメチレンエーテルグリコール)211.9部、2,2-ジメチロールプロピオン酸11.5部、トリメチロールプロパン6.9部、イソホロンジイソシアネート112.2部及びメチルエチルケトン298.5部を仕込み、反応系を窒素ガスで置換した後、撹拌下80℃で反応させて、遊離イソシアネート基含有量3.2%のNCO末端ウレタンプレポリマーを得た。得られた該メチルエチルケトン溶液を40℃に冷却し、トリエチルアミン9.8部を含む脱イオン水493.2gを加えて乳化した後、これに5%エチレンジアミン水溶液159.2部を添加し、60分間撹拌後、メチルエチルケトンを減圧加熱下に留去し、脱イオン水で濃度調整して、固形分濃度35%、酸価14mgKOH/gの水酸基を含有しないポリウレタン樹脂(U-1)の水分散液を得た。
【0209】
<顔料分散ペーストの製造>
製造例7
製造例1で得た水酸基含有アクリル樹脂(x11-1)の水分散体37.5部(固形分15部)、「JR-806」(商品名、テイカ社製、ルチル型二酸化チタン)55部、「バリエースB-35」(商品名、堺化学工業社製、硫酸バリウム粉末、平均一次粒子径0.5μm)40部「カーボンMA-100」(商品名、ケミカル社製、カーボンブラック)2.5部、及び脱イオン水5部を混合し、2-(ジメチルアミノ)エタノールでpH8.0に調整した後、ペイントシェーカーで30分間分散して顔料分散ペースト(P-1)を得た。
【0210】
<水性中塗り塗料(X)の製造>
製造例8
製造例7で得た顔料分散ペースト(P-1)140部(固形分112.5部)、製造例2で得た水酸基含有アクリル樹脂(x11-2)の水分散体37.5部(固形分15部)、製造例3で得た水酸基含有ポリエステル樹脂(x12-1)の水分散体11.1部(固形分5部)、「サイメル325」(商品名、オルネクス社製、メラミン樹脂、固形分80%)50部(固形分40部)、「バイヒジュールVPLS2310」(商品名、住化コベストロウレタン社製、オキシムブロックポリイソシアネート化合物、固形分38%)39.5部(固形分15部)、製造例4で得た会合型粘性調整剤(x41-1)2.125部(固形分0.425部)、「プライマル ASE-60」(商品名、ダウケミカル社製、ポリアクリル酸系増粘剤、固形分28%)0.268部(固形分0.075部)、製造例6で得た水酸基を含有しないポリウレタン樹脂(U-1)の水分散体28.6部(固形分10部))を均一に混合した。
次いで、得られた混合物に、2-(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を添加し、pH8.0、塗料固形分濃度51%、温度20℃、ローター回転数6rpmにおけるブルックフィールド粘度計による塗料粘度が1200mPa・sである水性中塗り塗料(X-1)を得た。
【0211】
製造例9~20
製造例8において、配合組成を下記表1~2に示す通りとする以外は、製造例8と同様にして、水性中塗り塗料(X-2)~(X-13)を得た。
【0212】
【表1】
【0213】
【表2】
【0214】
なお、表中に記載の各成分は以下の通りである。
(注2)「SNシックナー634」商品名、サンノプコ社製、ポリアクリル酸系増粘剤
(注3)「UH-752」:商品名、ADEKA社製、ウレタン会合型増粘剤
【0215】
<試験板の作製>
(試験用被塗物の作製)
上端にヘミング部を有する10cm×30cmの大きさとしたリン酸亜鉛処理された冷延鋼板に「エレクロン9910」(商品名、関西ペイント株式会社製、熱硬化性エポキシ樹脂系カチオン電着塗料)を膜厚20μmとなるように電着塗装し、170℃で30分間加熱して硬化させ、試験用被塗物とした。
【0216】
実施例1
(試験用塗装板の作製)
上記試験用被塗物の上端のヘミング部に、シーラー(商品名「サンダイン2690A-2」、アサヒゴム社製、自動車用シーラー)を、幅5cm、乾燥膜厚0.5mm程度の厚さになるようにへらで表面を均一にした後、常温で5分静置して部分的に未硬化のシーラー塗膜が形成された試験用被塗物を得た。次いで、該部分的に未硬化のシーラー塗膜が形成された試験用被塗物上に、前記製造例8で得た水性中塗り塗料(X-1)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、シーラーが塗装されていない部分における乾燥膜厚が15μmとなるように塗装し、5分間放置後、未硬化の中塗り塗膜を得た。次いで、該未硬化の中塗り塗膜上に「WBC-713D No.B82」(商品名、関西ペイント社製、アクリルメラミン樹脂系水性ベースコート塗料、青系塗色)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、シーラーが塗装されていない部分における乾燥膜厚が15μmとなるように静電塗装し、5分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行なって未硬化のベースコート塗膜を得た。次いで、該未硬化のベースコート塗膜上に「DKC-K12-1」(商品名、関西ペイント社製、アクリル樹脂系溶剤型上塗りクリヤー塗料)をシーラーが塗装されていない部分における乾燥膜厚が35μmとなるように回転霧化型の静電塗装し、該塗装板をほぼ垂直に立てて、7分間放置した後、140℃で30分間加熱して、シーラー塗膜、中塗り塗膜、ベースコート塗膜及びクリヤー塗膜からなる複層塗膜を硬化させることにより試験用塗装板No.1を作製した。
【0217】
実施例2~11、比較例1~7
実施例1において、水性中塗り塗料(X)とシーラーが塗装されていない部分における水性中塗り塗料(X)の乾燥膜厚を表3~5に示すものとする以外は、実施例1と同様にして、試験用塗装板No.2~18を作製した。
【0218】
<シーラー隠蔽性試験>
上記試験用塗装板No.1~18のシーラーが塗装されている部分について、シーラーの隠蔽状態を観察し、下記基準にて評価した。◎及び〇を合格とした。結果を表3~5に示す。
(評価基準)
◎:シーラーが隠蔽されている。
〇:わずかにシーラーが透けているが実用上問題がない。
△:シーラーが透けていて実用上問題がある。
×:著しくシーラーが透けていて実用上明らかに問題がある。
【0219】
<平滑性試験>
前記試験用塗装板No.1~18のシーラーが塗装されていない部分について、「Wave Scan」(商品名、BYK Gardner社製)によって測定されるLong Wave(LW)値に基づいて、平滑性を下記基準にて評価した。LW値が小さいほど塗面の平滑性が高いことを示し、◎及び〇を合格とした。結果を表3~5に示す。
(評価基準)
◎:LW値が15未満。
〇:LW値が15以上20未満。
△:LW値が20以上25未満。
×:LW値が25以上。
【0220】
【表3】
【0221】
【表4】
【0222】
【表5】
【0223】
表3~5より、実施例1~11の試験用塗装板No.1~11は、シーラー隠蔽性及び平滑性に優れ、両特性を両立できることがわかった。