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特開2024-9392アンモニア分解システム、内燃機関システム及びアンモニア分解方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009392
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】アンモニア分解システム、内燃機関システム及びアンモニア分解方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/04 20060101AFI20240116BHJP
   F02M 21/02 20060101ALI20240116BHJP
   F02M 25/00 20060101ALI20240116BHJP
   F01N 5/02 20060101ALI20240116BHJP
   B01J 35/50 20240101ALI20240116BHJP
   B01J 23/63 20060101ALI20240116BHJP
   B01J 23/83 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
C01B3/04 B
F02M21/02 G
F02M25/00 F
F01N5/02 H
B01J35/02 G
B01J23/63 M
B01J23/83 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110876
(22)【出願日】2022-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(72)【発明者】
【氏名】御手洗 健太
(72)【発明者】
【氏名】川邊 研
(72)【発明者】
【氏名】関根 泰
(72)【発明者】
【氏名】土井 咲英
【テーマコード(参考)】
4G169
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA05A
4G169BA05B
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BC12A
4G169BC12B
4G169BC13A
4G169BC13B
4G169BC43A
4G169BC43B
4G169BC51A
4G169BC66A
4G169BC67A
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169BC70A
4G169BC70B
4G169CB81
4G169DA06
4G169EE03
(57)【要約】
【課題】水素の発生量を調節しやすいアンモニア分解システム、内燃機関システム及びアンモニア分解方法を提供する。
【解決手段】アンモニア分解システム10は、分解部1と、制御部2と、を備える。分解部1は、アンモニアを分解する。制御部2は、分解部1でのアンモニアの分解率を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアを分解する分解部と、
前記分解部でのアンモニアの分解率を制御する制御部と、を備える、
アンモニア分解システム。
【請求項2】
前記分解部は、
アンモニアを分解する触媒と、
前記触媒に電場を印加する電極と、を有する、
請求項1に記載のアンモニア分解システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記触媒の温度、前記触媒を流れる電流値、及び前記触媒を通過するアンモニアの流量の少なくとも1つを変化させることで、前記分解率を変化させる、
請求項2に記載のアンモニア分解システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記電流値が大きくなるほど前記分解率が高くなるように、少なくとも前記電流値によって前記分解率を変化させる、
請求項3に記載のアンモニア分解システム。
【請求項5】
前記触媒を加熱する加熱部を更に備え、
前記加熱部は、前記触媒の温度を50℃以上、600℃以下の範囲とする、
請求項2又は3に記載のアンモニア分解システム。
【請求項6】
前記触媒は、活性金属と酸化物とを有し、
前記活性金属は、Ru,Ni,Fe,Coのいずれかであって、
前記酸化物は、Ce,Zr,Ba,Srのいずれかを含む、
請求項2又は3に記載のアンモニア分解システム。
【請求項7】
前記酸化物は、CeO,CeZr(1-x),BaZrO,SrBa(1-x)ZrOのいずれかである、
請求項6に記載のアンモニア分解システム。
【請求項8】
請求項1に記載のアンモニア分解システムと、
前記アンモニア分解システムから出力されるガスの供給を受けて駆動するエンジンと、を備える、
内燃機関システム。
【請求項9】
前記エンジンの排熱を利用して前記分解部を加熱する、
請求項8に記載の内燃機関システム。
【請求項10】
前記エンジンは、前記分解部で得られる水素を燃料の少なくとも一部として利用する、
請求項8又は9に記載の内燃機関システム。
【請求項11】
前記エンジンは、前記分解部で得られる水素と、アンモニアと、を燃料として利用する、
請求項10に記載の内燃機関システム。
【請求項12】
前記エンジンの燃料としてのアンモニアは、前記分解部で分解されるアンモニアと、共通のタンクに収容されている、
請求項11に記載の内燃機関システム。
【請求項13】
アンモニアを分解部で分解すること、
前記分解部でのアンモニアの分解率を制御することと、を有する、
アンモニア分解方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニアを分解するアンモニア分解システム、内燃機関システム及びアンモニア分解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術として、アンモニアを分解する触媒(アンモニアクラッカー触媒)を含み、アンモニアを分解して水素を生じさせるアンモニア分解システム(アンモニアクラッカー装置)が知られている(例えば、特許文献1参照)。関連技術では、アンモニアを燃料とするエンジン(アンモニアエンジン)は、アンモニアの着火性が悪いという特性からエンジンの低負荷運転時および高負荷運転時にアンモニアの燃焼が不十分となる点に着目し、アンモニアを分解して得られる水素を助燃剤として使用する。
【0003】
ここで、関連技術においては、エンジンとアンモニア分解システムとの間にアンモニア酸化装置を設け、アンモニアの酸化反応による酸化熱により排ガスを昇温させることを可能とする。これにより、エンジンからの排ガスの温度が低い低負荷運転時にも触媒の温度をその作動温度以上に維持することが可能となり、安定したエンジンの運転が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-121509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、関連技術に係るアンモニア分解システムでは、(昇温された)排ガスの温度等により水素の生成量が勝手に決まるため、エンジンでの燃料の燃焼効率を適切に調節することが難しい場合がある。
【0006】
本発明の目的は、水素の発生量を調節しやすいアンモニア分解システム、内燃機関システム及びアンモニア分解方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るアンモニア分解システムは、分解部と、制御部と、を備える。前記分解部は、アンモニアを分解する。前記制御部は、前記分解部でのアンモニアの分解率を制御する。
【0008】
本発明の一態様に係る内燃機関システムは、前記アンモニア分解システムと、エンジンと、を備える。前記エンジンは、前記アンモニア分解システムから出力されるガスの供給を受けて駆動する。
【0009】
本発明の一態様に係るアンモニア分解方法は、アンモニアを分解部で分解すること、前記分解部でのアンモニアの分解率を制御することと、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、水素の発生量を調節しやすいアンモニア分解システム、内燃機関システム及びアンモニア分解方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態1に係る内燃機関システムの構成を示す概略図である。
図2図2は、実施形態1に係るアンモニア分解システムの構成を示す概略図である。
図3図3は、実施形態1に係るアンモニア分解システムにおいて、触媒の温度を変化させた場合のアンモニアの分解率の実績値の一例を示すグラフである。
図4図4は、実施形態1に係るアンモニア分解システムにおいて、触媒に流れる電流値を変化させた場合のアンモニアの分解率の実績値の一例を示すグラフである。
図5図5は、実施形態1に係るアンモニア分解システムにおいて、触媒に流れる電流値を変化させた場合のアンモニアの分解率の実績値の一例を示すグラフである。
図6図6は、実施形態1に係るアンモニア分解システムにおいて、アンモニアの流量を変化させた場合のアンモニアの分解率の実績値の一例を示すグラフである。
図7図7は、実施形態1に係るアンモニア分解システムにおいて、触媒の材料を変更した場合のアンモニアの分解率の実績値の一例を示すグラフである。
図8図8は、実施形態1に係るアンモニア分解システムにおいて、アンモニアの流量を変化させた場合のアンモニアの分解率の実績値の一例を示すグラフである。
図9図9は、実施形態1に係るアンモニア分解システムにおいて、触媒の材料を変更した場合のアンモニアの分解率の実績値の一例を示すグラフである。
図10図10は、実施形態1に係るアンモニア分解システムにおいて、触媒の材料を変更した場合のアンモニアの分解率の実績値の一例を示すグラフである。
図11図11は、実施形態1に係るアンモニア分解システムにおいて、触媒にてアンモニアが分解される様子を模式的に示す説明図である。
図12図12は、実施形態2に係る内燃機関システムの構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する趣旨ではない。また、添付図面においては、各部の詳細形状等の図示を適宜省略する。
【0013】
(実施形態1)
[1]内燃機関システムの全体構成
まず、本実施形態に係る内燃機関システム100の全体構成について、図1を参照して説明する。図1においては、内燃機関システム100の各部の構成を模式的に示し、かつ気体(ガス)又は液体の流れについては太線矢印で示し、熱の流れについては点線矢印にて示している。
【0014】
本実施形態に係る内燃機関システム100は、図1に示すように、内燃機関システム100の主構成となるエンジン101を備える。ここでいう「エンジン」は、燃料を燃焼させて機械的エネルギー(動力)を生じさせる熱機関であって、燃料の燃焼が機関の内部で行われ、燃焼ガスを動作ガスとして熱エネルギーを機械的エネルギーに変える原動機である内燃機関を含む。つまり、エンジン101は、供給される燃料を用いて動力(機械的エネルギー)を発生させる。
【0015】
本実施形態では一例として、船舶に用いられる内燃機関システム100について説明する。つまり、内燃機関システム100は、船舶の船体に搭載される。内燃機関システム100のエンジン101は、船体を推進させる推進力を発生させるための駆動源として用いられる。本実施形態ではさらに、内燃機関システム100のエンジン101は、船体で使用される電気エネルギー(電力)を生成する発電機を駆動させるための駆動源としても利用可能である。つまり、内燃機関システム100のエンジン101は、船体の推進力発生用、又は船体の発電機駆動用の駆動源として用いられる。発電機で生成される電気エネルギーは、蓄電装置に蓄えられてもよい。
【0016】
船舶は、海、湖又は河川等の水上を航行(航走)する移動体である。本実施形態では一例として、船舶は、例えば外航船のように、1回の燃料補給で比較的長距離を航行する船舶である。船舶の船体は、プロペラを有している。プロペラは、プロペラシャフトによって内燃機関システム100のエンジン101と連結されている。船舶は、エンジン101で発生する動力を受けてプロペラシャフトを中心にプロペラを回転させることにより、船体を前進又は後進させるための推進力を生じさせる。
【0017】
また、本実施形態では、船舶は、人(操縦者)の操作(遠隔操作を含む)に応じて動作する構成であって、特に、操縦者である人が搭乗可能な有人タイプであることとする。そのため、船舶は、操縦者の操作を受け付ける操作盤を船体に有しており、操作盤に対する操作に応じて、内燃機関システム100のエンジン101を駆動させる。これにより、船舶は、操縦者の操作に応じてエンジン101を駆動し、プロペラを回転させることによって船体を前進又は後進させることが可能となる。また、船体は、舵機構、表示装置、通信装置、及び照明設備等を含む種々の船内設備を更に備えている。
【0018】
ところで、本実施形態に係るエンジン101は、少なくとも水素を燃料又は助燃剤として用いるエンジンである。つまり、内燃機関システム100では、水素タンク102に貯留されている水素を、水素燃料供給装置103にてエンジン101に供給することによって、エンジン101を駆動させる。特に本実施形態では、エンジン101は、水素(H)とアンモニア(NH)とを混ぜた燃料ガスを燃焼させる混焼エンジンを、エンジン101の例として説明する。さらに、エンジン101は、理論空燃比よりも希薄(空気過剰)側で燃焼される希薄燃焼(リーンバーン)のエンジンであることとする。そのため、本実施形態に係る内燃機関システム100では、アンモニアタンク104に貯留されているアンモニアを、アンモニア燃料供給装置105にてエンジン101に供給する。これにより、エンジン101には水素及びアンモニアが供給されることになり、水素及びアンモニアを燃料として用いてエンジン101が駆動される。
【0019】
このエンジン101は、アンモニアを主燃料とするアンモニアエンジンの一種であり、化石燃料(軽油又はガソリン等)を主燃料とするエンジンに比較して、二酸化炭素の排出量を少なく抑えることができる、という利点がある。しかも、このエンジン101においては、水素とアンモニアとの両方が燃料(又は助燃剤)として用いられるため、火が着きにくく燃えにくいというアンモニアの弱点を水素にて補うことができる。つまり、アンモニアと水素との混合ガスを用いることで、エンジン101は、アンモニアを燃料としつつも、アンモニアのみを燃料とする場合に比べて燃焼性を向上させ、幅広い運転領域(負荷領域)で使用しやすくなる。また、このエンジン101は、水素のみを燃料とする場合に比べて、燃焼効率を適切に制御しやすいため、異常燃焼の発生を抑え、高出力化を図りやすい。
【0020】
ここで、本実施形態に係る内燃機関システム100では、アンモニアを分解して得られる水素を、燃料(又は助燃剤)としてエンジン101に供給する。そのため、アンモニアを分解するアンモニア分解システム10が用いられている。アンモニア分解システム10は、アンモニアを分解して水素及び窒素を得る。すなわち、アンモニア分解システム10にアンモニア(NH)が供給されると、アンモニア分解システム10からは、水素(H)及び窒素(N)、更には分解されずに残った残留アンモニア(NH)が出力される。このように、本実施形態に係る内燃機関システム100は、アンモニア分解システム10と、エンジン101と、を備えている。エンジン101は、アンモニア分解システム10から出力されるガス(水素)の供給を受けて駆動する。
【0021】
具体的に、内燃機関システム100は、エンジン101、水素タンク102、水素燃料供給装置103、アンモニアタンク104及びアンモニア燃料供給装置105に加えて、アンモニア分解システム10と、気化器106と、を備えている。アンモニアタンク104には、液体のアンモニア(液化アンモニア)が貯留されている。気化器106は、アンモニアタンク104内の液化アンモニアを気化し、気体(ガス)からなるアンモニアをアンモニア分解システム10に供給する。アンモニア分解システム10は、アンモニアを分解して得られるガス(水素)を水素タンク102に出力する。これにより、エンジン101に燃料として供給される水素は、アンモニア分解システム10にてアンモニアから生成され、水素タンク102に(一時的に)貯留されることになる。
【0022】
上記構成の内燃機関システム100によれば、エンジン101の燃料としての水素を、効率的かつ安全に供給することが可能となる。つまり、アンモニアは、水素に比較して、例えば、体積エネルギー密度が大きく、かつ温和な条件で液化する。そのため、内燃機関システム100において、アンモニアタンク104に貯留されているアンモニアをアンモニア分解システム10にて都度分解して燃料としての水素を得ることで、燃料としての水素を圧縮気体又は液体の状態で貯留する場合に比べて、貯留物の体積エネルギー密度の向上を図ることができる。したがって、タンク(アンモニアタンク104)の容量が同じであれば、より多くの燃料を貯留することができ、同量の燃料(水素)を貯留するのであれば、より小さなタンク(アンモニアタンク104)で足りる。このように、燃料としての水素を効率的(より小さなタンクで)かつ安全に供給できることは、例えば外航船のように、1回の燃料補給で比較的長距離を航行する船舶において特に有用である。
【0023】
より詳細には、内燃機関システム100は、エンジン101、水素タンク102、水素燃料供給装置103、アンモニアタンク104、アンモニア燃料供給装置105、アンモニア分解システム10及び気化器106に加えて、圧縮機107及び熱交換器108を備える。圧縮機107は、内燃機関システム100の周囲から吸気される空気(大気)を圧縮し、圧縮空気を燃料(水素及びアンモニア)と共にエンジン101に供給する。熱交換器108は、エンジン101から排気される排ガスと熱媒体(冷媒)との間で熱交換を行い、排ガスの熱エネルギーを回収して排ガスを冷却する。
【0024】
さらに、熱交換器108で回収された熱エネルギーは、アンモニア分解システム10に供給されるアンモニアへと送られる。つまり、気化器106で気化されてアンモニア分解システム10に供給されるアンモニアは、熱交換器108で回収されたエンジン101の排熱によって加熱される。そして、加熱されたアンモニアは、アンモニア分解システム10の分解部1に供給されるので、熱交換器108で回収されたエンジン101の排熱は間接的に分解部1を加熱する。このように、本実施形態に係る内燃機関システム100では、エンジン101の排熱を利用して分解部1を加熱する。本実施形態では、分解部1は触媒11(図2参照)を有しており、触媒11が加熱されることによって、分解部1(触媒11)でのアンモニアの分解率が向上する。
【0025】
このように、エンジン101の排熱を有効利用することで、分解部1(触媒11)の加熱に要するエネルギーを少なく抑えることが可能である。しかも、エンジン101の排熱が分解部1の加熱に利用されることで、排ガスの冷却も行われることにもなる。ここで、内燃機関システム100は、エンジン101の排熱を利用して分解部1を間接的に加熱する構成に限らず、例えば、エンジン101の排熱を直接的に分解部1に送ることによって分解部1を直接的に加熱してもよい。また、ここでいうエンジン101の排熱は、排ガスの熱に限らず、例えば冷却水又は潤滑油等の熱であってもよい。つまり、熱交換器108は、排ガスに加えて又は代えて、例えば、エンジン101で加熱された冷却水又は潤滑油等と熱媒体との間で熱交換を行い、冷却水又は潤滑油等から熱エネルギーを回収してもよい。
【0026】
以上説明したように、本実施形態に係る内燃機関システム100では、エンジン101は、(アンモニア分解システム10の)分解部1で得られる水素を燃料の少なくとも一部として利用する。これにより、エンジン101の燃料としての水素を、効率的かつ安全に供給することが可能となる。
【0027】
さらに、エンジン101は、(アンモニア分解システム10の)分解部1で得られる水素と、アンモニアと、を燃料として利用する。これにより、化石燃料(軽油又はガソリン等)を主燃料とするエンジンに比較して、二酸化炭素の排出量を少なく抑えることができる。しかも、アンモニアと水素とを燃料として用いることで、エンジン101は、アンモニアのみを燃料とする場合に比べて燃焼性を向上させ、幅広い運転領域(負荷領域)で使用しやすくなり、水素のみを燃料とする場合に比べて、異常燃焼の発生を抑え、高出力化を図りやすい。
【0028】
また、本実施形態では、エンジン101の燃料としてのアンモニアは、(アンモニア分解システム10の)分解部1で分解されるアンモニアと、共通のタンク(アンモニアタンク104)に収容されている。つまり、1つのアンモニアタンク104に収容(貯留)されているアンモニアは、アンモニア燃料供給装置105により燃料としてエンジン101に供給される一方で、気化器106によりアンモニア分解システム10の分解部1に供給されて分解される。したがって、水素とアンモニアとをエンジン101の燃料として用いながらも、これら2種類の燃料の大元は1つのタンク(アンモニアタンク104)に貯留することができ、タンクをコンパクトにでき、タンクの補充作業も簡単になる。
【0029】
[2]定義
本開示でいう「分解」は、化学反応の一種であって、一つの化合物が成分単体、又はより簡単な化合物に分かれる化学分解(Chemical decomposition)を意味し、化学合成(Chemical synthesis)とは逆の過程を意味する。分解には通常は外部からのエネルギーの供給が必要であり、そのエネルギー源によって、例えば、熱分解、光分解、電気分解又は放射線分解等の種々の分解がある。本実施形態では一例として、アンモニア分解システム10は、触媒11を用いて、アンモニア(NH)を水素(H)と窒素(N)とに分解する。ただし、アンモニア分解システム10は、供給されるアンモニアの少なくとも一部を水素と窒素とに分解すればよく、その全量を分解することに限らない。アンモニア分解システム10に供給されたものの、分解されずに残ったアンモニアを「残留アンモニア」とも呼ぶ。
【0030】
本開示でいう「触媒」は、分解等の化学反応において、それ(触媒)自身は変化しないが、化学反応を促進させる物質である。厳密には、「触媒」はその反応に対して何らかの相互作用を生じ、時には「触媒」自身も変化することで、反応の経路を変えて反応を促進する。そして、反応後には「触媒」が元に戻ることで、結果的に「触媒」自身は変化せずに残ることになる。本実施形態では一例として、アンモニア分解システム10の分解部1は、アンモニアを分解する触媒11(アンモニア分解触媒)を有し、触媒11を用いてアンモニアの分解を行う。
【0031】
本開示でいう「分解率」は、化合物の分解に際して、当該化合物の全量に対して実際に分解される化合物の分量の割合を意味する。同量の化合物については、分解率が高いほどに分解される化合物の分量が多くなり、分解率が低いほどに分解される化合物の分量が少なくなる。本実施形態では一例として、アンモニア分解システム10におけるアンモニアの分解に係る分解率を「0%」から「100%」までの百分率で表すこととする。例えば、分解率が「0%」であれば、アンモニア分解システム10に供給されるアンモニアは一切分解されず、その全量が残留アンモニアとなる。反対に、分解率が「100%」であれば、アンモニア分解システム10に供給されるアンモニアはその全量が分解され、残留アンモニアは生じない。分解率が「50%」であれば、アンモニア分解システム10に供給されるアンモニアはその半分の量が分解され、残り半分の量が残留アンモニアとなる。
【0032】
[3]アンモニア分解システムの構成
次に、本実施形態に係るアンモニア分解システム10の構成について、図2を参照して説明する。図2は、分解部1の構成を模式的に示す概略図である。
【0033】
関連技術として、エンジンとアンモニア分解システムとの間にアンモニア酸化装置を設け、アンモニアの酸化反応による酸化熱により排ガスを昇温させることを可能とする技術が提案されている。これにより、エンジンからの排ガスの温度が低い低負荷運転時にも触媒の温度をその作動温度以上に維持することが可能となり、安定したエンジンの運転が可能となる。
【0034】
しかし、関連技術に係るアンモニア分解システムでは、(昇温された)排ガスの温度等により水素の生成量が勝手に決まるため、エンジンでの燃料の燃焼効率を適切に調節することが難しい場合がある。そこで、本実施形態に係るアンモニア分解システム10は、水素の発生量を調節しやすくする目的で、以下に説明する構成を採用する。
【0035】
すなわち、本実施形態に係るアンモニア分解システム10は、分解部1と、制御部2と、を備えている。分解部1は、アンモニアを分解する装置である。制御部2は、分解部1でのアンモニアの分解率を制御する。つまり、アンモニア分解システム10は、分解部1に対して外部(気化器106)から供給されるアンモニアを、分解部1にて分解する。本実施形態では一例として、分解部1はアンモニアを水素と窒素とに分解し、そのうちの水素については水素タンク102(図1参照)に出力する。つまり、アンモニア分解システム10は、アンモニアを分解して得られるガス(水素)を水素タンク102に(一時的に)貯留する。
【0036】
本実施形態に係るアンモニア分解システム10では、分解部1におけるアンモニアの分解率は固定的ではなく、制御部2にて制御(調節)可能である。制御部2は、例えば、アンモニアの分解率(アンモニア分解率)を「0%」以上「100%」以下の可変範囲内で変化させる。制御部2が分解率を「0%」に制御すれば、分解部1でアンモニアは一切分解されないため、アンモニアを分解して得られる水素の発生量は最小(0)である。反対に、制御部2が分解率を「100%」に制御すれば、アンモニアは分解部1でその全量が分解されるので、アンモニアを分解して得られる水素の発生量は最大となる。
【0037】
以上説明した構成によれば、本実施形態に係るアンモニア分解システム10は、分解部1におけるアンモニアの分解率を可変となるので、アンモニアを分解して得られる水素の生成量についても調節可能となる。したがって、水素の発生量を調節しやすいアンモニア分解システム10を提供することが可能になる。
【0038】
また、本実施形態に係るアンモニア分解システム10では、上述したように分解部1は、アンモニアを分解する触媒11を有している。さらに、分解部1は、触媒11に電場を印加する電極12,13を有している。要するに、本実施形態では、分解部1は、例えば、触媒11を挟むように設けられた一対の電極12,13を有しており、これら一対の電極12,13から触媒11に電場(電界)を印加する。これにより、触媒11に電場が印加されない場合に比較して、特に触媒11の温度が低い環境下において、触媒11でのアンモニアの分解を促進することができる。
【0039】
具体的に、図2に示すように、アンモニア分解システム10は、触媒11及び電極12,13を含む分解部1、並びに制御部2に加えて、電源装置3を備えている。電源装置3は、分解部1における一対の電極12,13と電気的に接続されており、一対の電極12,13間に直流電圧を印加する装置である。電源装置3から一対の電極12,13間に直流電圧が印加されることで、一対の電極12,13から触媒11に電場が印加される。電源装置3は、例えば数百V程度の直流電圧を発生し、一対の電極12,13間に印加する。
【0040】
本実施形態では一例として、電源装置3は、電極12を負極、電極13を正極として、一対の電極12,13間に直流電圧を印加する。これにより、電源装置3は、一対の電極12,13間に、電極12を低電位側、電極13を高電位側とする直流電圧を印加する。ここで、電源装置3は、正極側となる電極13を基準電位点(グランド)とし、一対の電極12,13間にマイナスの電圧を印加する。ただし、この構成に限らず、触媒11に電場が印加されればよいので、電源装置3は、例えば、低電位側の電極12をグランド、高電位側の電極13をプラス電位とすることで、一対の電極12,13間にプラスの電圧を印加してもよい。
【0041】
より詳細には、分解部1は、図2に示すように、触媒11及び一対の電極12,13に加えて、導入口14、排出口15、筒状体16、触媒固定層17、メッシュ18及び温度センサ19を有している。
【0042】
導入口14は、分解部1において分解されるガス(アンモニア)が導入される開口部である。排出口15は、分解部1にてアンモニアを分解して得られるガスが排出される開口部である。筒状体16は、例えば、円筒状に形成されており、少なくとも触媒11を収容する。導入口14は、筒状体16の長手方向の一端部に設けられ、排出口15は、筒状体16の長手方向の他端部に設けられている。これにより、導入口14から導入されるガスは、筒状体16を通して、排出口15から排出可能となる。そして、当該ガス(アンモニア)は、筒状体16に収容された触媒11にて分解されるため、筒状体16を通過する際に分解されることになる。
【0043】
筒状体16には、触媒固定層17及びメッシュ18が収容されている。触媒11は、触媒固定層17上に、メッシュ18を介して積層されている。ここで、一対の電極12,13は、それぞれ棒状電極であって、筒状体16の長手方向の両端部から触媒11に対して挿入されている。さらに、温度センサ19は、一例として熱電対であって、筒状体16の長手方向の他端部から触媒に挿入されており、反応場の温度(触媒温度)をリアルタイムで計測する。温度センサ19での触媒温度の計測値は、制御部2に出力される。
【0044】
本実施形態では、分解部1に対して、アンモニアと共に不活性ガス(一例としてアルゴン)が導入される。そのため、図2に示すように、導入口14からはアンモニア(NH)及びアルゴン(Ar)が導入され、分解部1の触媒11にてアンモニアが分解され、排出口15からは水素(H)、窒素(N)、(残留)アンモニア(NH)及びアルゴン(Ar)が排出される。ただし、不活性ガスはアンモニアの分解に必須ではない。
【0045】
以上説明したように、アンモニア分解システム10の分解部1は、触媒11に対して(一対の)電極12,13から電場(電界)が印加される構成であるため、特に触媒11の温度が低い環境下においても、触媒11でのアンモニアの分解を促進することができる。特に、内燃機関システム100のエンジン101からの排熱が十分でない環境において、触媒11の温度を上げるには、昇温用に追加でアンモニアを供給する必要があり、このことが内燃機関システム100としての燃費を悪化させる場合がある。これに対して、本実施形態のように、触媒11に電場を印加することで低温域においても触媒11でのアンモニアの分解が促進される構成では、そもそも触媒11の温度をそこまで上げる必要がなく、内燃機関システム100としての燃費の悪化を抑えやすくなる。
【0046】
また、本実施形態に係るアンモニア分解システム10は、触媒11を加熱する加熱部4を更に備えている。加熱部4は、触媒11の温度を50℃以上、600℃以下の範囲とする。すなわち、触媒11でのアンモニアの分解率を上げるべく、加熱部4は、触媒11の温度が50℃以上、600℃以下の範囲となるように、触媒11を加熱する。加熱部4は、気化器106で気化されてアンモニア分解システム10に供給されるアンモニアを加熱することによって触媒11を間接的に加熱してもよいし、ヒータ等を用いて触媒11を直接的に加熱してもよい。しかも、本実施形態では、上述したように触媒11に対して電場が印加されるので、加熱部4としては、例えば300℃以上といった高温にまで触媒11を加熱しなくとも、触媒11でのアンモニアの分解を十分に実現することが可能である。
【0047】
ただし、加熱部4によって加熱される触媒11の温度の下限値は50℃に限らず、例えば、50℃未満であってもよいし、100℃、150℃、200℃、250℃又は300℃等であってもよい。同様に、加熱部4によって加熱される触媒11の温度の上限値は600℃に限らず、例えば、600℃より高温であってもよいし、350℃、400℃、450℃、500℃又は550℃等であってもよい。一例として、加熱部4は、触媒11の温度が100℃以上、400℃以下の範囲となるように、触媒11を加熱することがより好ましい。
【0048】
また、本実施形態では、上述したようにエンジン101の排熱を利用して分解部1が加熱されるので、加熱部4は、少なくともエンジン101の排熱を利用して触媒11を加熱してもよい。このように、エンジン101の排熱を有効利用することで、加熱部4において、触媒11の加熱に要するエネルギーを少なく抑えることが可能である。特に、300℃以下の低温域で触媒11が使用される場合には、エンジン101の排熱のみで十分に触媒11を加熱することができるため、別途、加熱装置を設ける必要が無く、アンモニア分解システム10の小型化及び簡略化を図りやすい。
【0049】
ところで、本実施形態に係るアンモニア分解システム10は、上述したように分解部1におけるアンモニアの分解率(アンモニア分解率)を、制御部2にて制御(調節)可能である。ここで、制御部2は、触媒11の温度、触媒11を流れる電流値、及び触媒11を通過するアンモニアの流量の少なくとも1つを変化させることで、分解率を変化させる。つまり、触媒11の温度、触媒11を流れる電流値、及び触媒11を通過するアンモニアの流量、という3つのパラメータのうち、少なくとも1つのパラメータを変化させることにより、アンモニア分解率が変化する。本実施形態では一例として、制御部2は、触媒11の温度、触媒11を流れる電流値、及び触媒11を通過するアンモニアの流量の全てを制御可能に構成されている。
【0050】
例えば、制御部2は、触媒11を流れる電流値が大きくなるほど(アンモニアの)分解率が高くなるように、少なくとも電流値によって(アンモニアの)分解率を変化させる。具体的に、制御部2は、電源装置3を制御可能に構成されており、電源装置3から分解部1(一対の電極12,13間)に供給される電流の大きさ(電流値)を制御することによって、触媒11を流れる電流の大きさ(電流値)を制御する。つまり、電源装置3は、出力電流が一定ではなく、出力電流が可変であって、その電流値が制御部2によって制御される。制御部2は、触媒11を流れる電流値を連続的に変化させてもよいし、段階的(非連続)に変化させてもよい。
【0051】
そして、基本的には、電源装置3の出力電流が大きくなれば、触媒11を流れる電流値が大きくなり、アンモニア分解率は高くなるため、アンモニアを分解して得られる水素の発生量が増加する。反対に、電源装置3の出力電流が小さくなれば、触媒11を流れる電流値が小さくなり、アンモニア分解率は低くなるため、アンモニアを分解して得られる水素の発生量が減少する。これにより、比較的簡単な構成で、アンモニア分解率を制御(調節)することができ、しかも、電流値の変化に対するアンモニア分解率の応答性は比較的高いため、制御部2は、アンモニア分解率をリアルタイムで制御しやすい。
【0052】
また、制御部2は、触媒11の温度が高く(高温に)なるほど(アンモニアの)分解率が高くなるように、少なくとも触媒11の温度によって(アンモニアの)分解率を変化させる。具体的に、制御部2は、加熱部4を制御可能に構成されており、加熱部4から触媒11に加えられる熱エネルギーの大きさを制御することによって、触媒11の温度を制御する。つまり、加熱部4は、出力が一定ではなく、出力が可変であって、その出力(熱エネルギー)が制御部2によって制御される。制御部2は、触媒11の温度を連続的に変化させてもよいし、段階的(非連続)に変化させてもよい。
【0053】
そして、基本的には、触媒11の温度が高くなれば、アンモニア分解率は高くなるため、アンモニアを分解して得られる水素の発生量が増加する。反対に、触媒11の温度が低くなれば、アンモニア分解率は低くなるため、アンモニアを分解して得られる水素の発生量が減少する。これにより、比較的簡単な構成で、アンモニア分解率を制御(調節)することができ、しかも、触媒11の温度変化に対するアンモニア分解率の応答性は比較的高いため、制御部2は、アンモニア分解率をリアルタイムで制御しやすい。
【0054】
また、制御部2は、触媒11を通過するアンモニアの流量(流速)が小さくなるほど(アンモニアの)分解率が高くなるように、少なくとも触媒11を通過するアンモニアの流量によって(アンモニアの)分解率を変化させる。具体的に、制御部2は、分解部1に供給されるアンモニアの流量を制御可能に構成されており、分解部1に供給されるアンモニアの流量を制御することによって、触媒11を通過するアンモニアの流量(流速)を制御する。つまり、触媒11を通過するアンモニアの流量(流速)は一定ではなく可変であって、その値(流量)が制御部2によって制御される。制御部2は、触媒11を通過するアンモニアの流量を連続的に変化させてもよいし、段階的(非連続)に変化させてもよい。
【0055】
そして、基本的には、触媒11を通過するアンモニアの流量が小さくなれば、アンモニア分解率は高くなるため、アンモニアを分解して得られる水素の濃度が上昇する。反対に、触媒11を通過するアンモニアの流量が大きくなれば、アンモニア分解率は低くなるため、アンモニアを分解して得られる水素の濃度が低下する。これにより、比較的簡単な構成で、アンモニア分解率を制御(調節)することができ、しかも、触媒11を通過するアンモニアの流量に対するアンモニア分解率の応答性は比較的高いため、制御部2は、アンモニア分解率をリアルタイムで制御しやすい。
【0056】
ここで、触媒11は、活性金属と酸化物とを有する。活性金属は、ルテニウム(Ru),ニッケル(Ni),鉄(Fe),コバルト(Co)のいずれかであって、酸化物は、セリウム(Ce),ジルコニウム(Zr),Ba(バリウム),Sr(ストロンチウム)のいずれかを主成分として含む。つまり、触媒11は、ルテニウム等の活性金属と、セリウム等の活性金属からなる触媒担体と、を有している。このような触媒11において、制御部2は、例えば、触媒11の温度、触媒11を流れる電流値、及び触媒11を通過するアンモニアの流量の少なくとも1つを変化させることで、アンモニア分解率を変化させることが可能である。
【0057】
より詳細には、本実施形態では、触媒担体としての酸化物は、CeO,CeZr(1-x),BaZrO,SrBa(1-x)ZrOのいずれかである。ここで、「x」は「0」以上「1」以下の範囲の任意の値であって(つまり「0≦x≦1」)、例えば、CeZr(1-x)であれば、一例としてCe0.5Zr0.5等を含む。
【0058】
上記構成のアンモニア分解システム10によれば、アンモニアを分解部1で分解すること、分解部1でのアンモニアの分解率を制御することと、を有するアンモニア分解方法が具現化される。このようなアンモニア分解方法は、アンモニア分解システム10を用いずに具現化されてもよい。
【0059】
[4]実績値
以下に、本実施形態に係るアンモニア分解システム10において、触媒11の温度、触媒11を流れる電流値、又は触媒11を通過するアンモニアの流量等を変化させた場合の、アンモニアの分解率の実績値について、図3図10を参照して説明する。図3図10は、横軸に触媒11の温度等の種々のパラメータをとり、縦軸にアンモニアの分解率(アンモニア分解率)をとった、実績値の一例を示すグラフである。さらに、アンモニアの分解率は、触媒11の量、及び触媒11の材料(成分)によっても変化するので、以下では、触媒11の材料等を変えた場合のアンモニアの分解率の実績値についても説明する。
【0060】
図3は、触媒11の温度(横軸)を変化させた場合のアンモニアの分解率の実績値を示すグラフである。図3の触媒11の温度以外の試験条件は、(「電場あり」の場合の)触媒11に流れる電流値が「6mA」、触媒11の材料が「5wt%Ru/CeO」、触媒11の量が「100mg」、アンモニアが流量を「50mL/min」、反応圧力が「大気圧」である。図3では、黒丸のプロットP1が触媒11に電場が印加されている「電場あり」のデータを示し、黒三角のプロットP2が触媒11に電場が印加されていない「電場なし」のデータを示す。
【0061】
図3から明らかなように、触媒11の温度が高くなるにつれて、アンモニア分解率が高くなる傾向がある。さらに、触媒11の温度が「300℃」以下の範囲においては、「電場あり」の方が、「電場なし」の場合に比べて、アンモニアの分解が促進されてアンモニア分解率が高くなる効果が顕著である。例えば、触媒11の温度が「100℃」という低温域においては、「電場なし」ではアンモニア分解率が略「0%」であるのに対し、「電場あり」ではアンモニア分解率が「20%」を超えている。
【0062】
図4は、触媒11に流れる電流値(横軸)を変化させた場合のアンモニアの分解率の実績値を示すグラフである。図4の電流値以外の試験条件は、触媒11の温度が「150℃」、触媒11の材料が「5wt%Ru/CeO」、触媒11の量が「300mg」、アンモニアの流量が「10mL/min」、反応圧力が「大気圧」である。
【0063】
図4から明らかなように、触媒11に流れる電流が大きくなるにつれて、アンモニア分解率が高くなる傾向がある。例えば、電流値が「10mA」付近になると、触媒11の温度が「150℃」という低温域にあるにもかかわらず、アンモニア分解率は「100%」付近まで上昇する。
【0064】
図5は、触媒11の量及びアンモニアの流量といった諸条件が図4と異なる状況下において、触媒11に流れる電流値(横軸)を変化させた場合のアンモニアの分解率の実績値を示すグラフである。図5の電流値以外の試験条件は、触媒11の温度が「125℃」、触媒11の材料が「5wt%Ru/CeO」、触媒11の量が「100mg」、アンモニアの流量が「50mL/min」、反応圧力が「大気圧」である。つまり、触媒11の量及びアンモニアの流量については、図4よりも図5の実績値の方が、アンモニア分解率が低くなる条件に設定されている。
【0065】
図5から明らかなように、触媒11の量及びアンモニアの流量といった諸条件が変わっても、触媒11に流れる電流が大きくなるにつれて、アンモニア分解率が高くなるという傾向については同様である。言い換えれば、例えば触媒11の量を減らした場合であっても、電源装置3から触媒11に印加される電場(電力)を増大させ、触媒11に流れる電流値を大きくすることにより、触媒11の量を減らす前と同等のアンモニア分解率を実現することも可能である。
【0066】
図6は、アンモニアの流量を変化させた場合のアンモニアの分解率の実績値を示すグラフである。図6では、触媒11の量をアンモニアの流速で除した「触媒サイズ」を横軸とする。つまり、アンモニアの流量が小さくなるほど触媒サイズは大きくなる。図6の試験条件は、(「電場あり」の場合の)触媒11に流れる電流値が「6mA」、触媒11の材料が「5wt%Ru/CeO」、触媒11の量が「300mg」、反応圧力が「大気圧」である。この場合において、アンモニアの流量を「5mL/min」から「50mL/min」の範囲で変化させた場合の触媒サイズを横軸とする。図6では、白丸のプロットP1が触媒11に電場が印加されている「電場あり」でかつ触媒11の温度が「130℃」から「140℃」の間にある場合のデータを示し、黒丸のプロットP2が「電場あり」でかつ触媒11の温度が「45℃」である場合のデータを示し、黒四角のプロットP3が「電場あり」でかつ触媒11の温度が「70℃」である場合のデータを示し、黒三角のプロットP4が触媒11に電場が印加されていない「電場なし」のデータを示す。
【0067】
図6から明らかなように、触媒11を通過するアンモニアの流量(流速)が小さくなるにつれて、つまり触媒サイズが大きくなるにつれて、アンモニア分解率が高くなる傾向がある。しかも、触媒11の温度が「150℃」以下、又は「100℃」以下という低温域にあるにもかかわらず、「電場あり」の条件下では、十分にアンモニアの分解が促進され、特に触媒11の温度が「130℃」から「140℃」の間にあれば、アンモニア分解率は「100%」付近まで上昇する。さらに、触媒11の温度が「45℃」であってもアンモニア分解率は略「75%」に達し、触媒11の温度が「70℃」であってもアンモニア分解率は略「80%」に達している。一方、「電場なし」の場合には、アンモニアの流量が変化してもアンモニアの分解は略促進されない。
【0068】
図7は、触媒11の材料(成分)を変更した場合のアンモニアの分解率の実績値を示すグラフである。図7では、触媒11の温度を横軸とする。図7の試験条件は、(「電場あり」の場合の)触媒11に流れる電流値が「6mA」、触媒11の量が「100mg」、アンモニアの流量が「50mL/min」、反応圧力が「大気圧」である。この場合において、触媒11の材料が「5wt%Ru/CeO」、「3wt%Ni/CeO」、「3wt%Fe/CeO」であるときのそれぞれの実績値を、図7に示している。また、図7では、触媒11の温度が「100℃」のときのデータを抜き出して、触媒11の活性金属(ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)又は鉄(Fe))ごとに棒グラフとして並べた結果を、吹き出し内に示す。
【0069】
図7では、黒丸のプロットP1が、触媒11に電場が印加されている「電場あり」で、かつ活性金属としてルテニウム(Ru)を含む触媒11(5wt%Ru/CeO)を採用した場合のデータを示し、白丸のプロットP2が、触媒11に電場が印加されていない「電場なし」で、かつ活性金属としてルテニウムを含む触媒11を採用した場合のデータを示す。また、黒ひし形のプロットP3が、「電場あり」で、かつ活性金属としてニッケル(Ni)を含む触媒11(3wt%Ni/CeO)を採用した場合のデータを示し、白ひし形のプロットP4が、「電場なし」で、かつ活性金属としてニッケルを含む触媒11を採用した場合のデータを示す。さらに、黒三角のプロットP5が、「電場あり」で、かつ活性金属として鉄(Fe)を含む触媒11(3wt%Fe/CeO)を採用した場合のデータを示し、白三角のプロットP6が、「電場なし」で、かつ活性金属として鉄を含む触媒11を採用した場合のデータを示す。
【0070】
図7から明らかなように、触媒11の温度が「500℃」付近の高温域においては、ルテニウムが最もアンモニア分解率が高く、次いでニッケルのアンモニア分解率が高く、鉄が最もアンモニア分解率が低くなる。ただし、「電場あり」の条件下では、触媒11の温度が「100℃」付近の低温域にあるにもかかわらず、ルテニウムのみならず、ニッケル及び鉄であっても、「20%」前後のアンモニア分解率が実現される。このことから、触媒11の材料によって、温度に対するアンモニア分解促進の感度が異なることが分かる。
【0071】
図8は、触媒11の材料が「3wt%Ni/CeO」である場合において、アンモニアの流量を変化させた場合のアンモニアの分解率の実績値を示すグラフである。図8では、触媒11の量をアンモニアの流速で除した「触媒サイズ」を横軸とする。図8の試験条件は、触媒11の温度が「100℃」、触媒11に流れる電流値が「6mA」、触媒11の量が「300mg」、反応圧力が「大気圧」である。この場合において、アンモニアの流量を「5mL/min」から「50mL/min」の範囲で変化させた場合の触媒サイズを横軸とする。
【0072】
図8から明らかなように、ルテニウムに比べて採用しやすいニッケルを活性金属に用いた場合でも、触媒11を通過するアンモニアの流量(流速)が小さくなるにつれて、つまり触媒サイズが大きくなるにつれて、アンモニア分解率が高くなる傾向がある。しかも、触媒11の温度が「100℃」という低温域にあるにもかかわらず、「電場あり」の条件下では、十分にアンモニアの分解が促進され、アンモニア分解率は「80%」付近まで上昇する。このように、ニッケルを活性金属に用いた場合でも、触媒11を通過するアンモニアの流量(流速)を変化させることで、アンモニア分解率の制御が可能である。
【0073】
図9は、触媒11の材料(成分)を変更した場合のアンモニアの分解率の実績値を示すグラフである。図9では、触媒11の温度を横軸とする。図9の試験条件は、(「電場あり」の場合の)触媒11に流れる電流値が「6mA」、触媒11の量が「100mg」、アンモニアの流量が「50mL/min」、反応圧力が「大気圧」である。この場合において、触媒11の材料が「5wt%Ru/SrBa(1-x)ZrO(x=0.125)」、「5wt%Ru/CeO」であるときのそれぞれの実績値を、図9に示している。図9では、黒丸のプロットP1が、触媒11に電場が印加されている「電場あり」で、かつ酸化物として「SrBa(1-x)ZrO(x=0.125)」を含む触媒11を採用した場合のデータを示し、黒ひし形のプロットP2が、「電場あり」で、かつ酸化物として「CeO」を含む触媒11を採用した場合のデータを示す。図9の黒三角のプロットP3は、触媒11に電場が印加されていない「電場なし」のデータを示す。
【0074】
図9から明らかなように、触媒11の活性金属を変えずに、酸化物のみ変更した場合でも、触媒11の温度が「100℃」という低温域において、「電場あり」の条件下では、十分にアンモニアの分解が促進される。
【0075】
図10は、触媒11の材料(成分)を変更した場合のアンモニアの分解率の実績値を示すグラフである。図10では、触媒11に占める活性金属としてのルテニウム(Ru)の比率、つまり活性金属の担持量(wt%)を横軸とする。図10の試験条件は、触媒11の温度が「100℃」、触媒11に流れる電流値が「6mA」、触媒11の量が「100mg」、アンモニアの流量が「50mL/min」、反応圧力が「大気圧」である。この場合において、触媒11の材料が「1wt%Ru/CeO」、「3wt%Ru/CeO」、「5wt%Ru/CeO」、「7wt%Ru/CeO」であるときのそれぞれの実績値を、図10に示している。
【0076】
図10から明らかなように、触媒11の温度が「100℃」という低温域においても、触媒11の活性金属の担持量が大きくなるにつれて、アンモニア分解率が高くなる傾向がある。
【0077】
[5]メカニズム
次に、本実施形態に係るアンモニア分解システム10におけるアンモニアの分解促進のメカニズムについて、図11を参照して説明する。図11は、触媒11にてアンモニアが分解される様子を模式的に示しており、上段には比較例として触媒11に電場が印加されていない「電場なし」の場合を示し、下段には触媒11に電場が印加されている「電場あり」の場合を示す。
【0078】
まず、触媒11に電場が印加されていない比較例において、触媒金属(活性金属)に吸着されたアンモニア(NH)から水素等のイオン(H)又は原子(H)が引き抜かれることがある。ただし、当該イオンは、触媒担体としての酸化物の表面にとどまることになり、積極的には移動しない。
【0079】
これに対して、本実施形態のように触媒11に電場が印加されている場合、水素等のイオン(H)が、電場(電界)によって引っ張られて触媒担体としての酸化物の表面を移動する。より詳細には、イオンの移動機構として、電荷を持ったイオンそのものが移動する「Vehicle Mechanism」と、例えば触媒11の表面に吸着した水を介してプロトンがホッピングする(Proton Hopping)ことで見かけ上イオンが移動する「Grotthuss Mechanism」と、の2通りの機構が考えられる。特に、プロトンホッピングは、水素原子が正の電荷を帯びた状態のプロトン(H)が水分子と結合すると、元々存在する酸素原子と水素原子との結合が切れ、隣接する水分子にプロトンが渡されることが繰り返される現象を意味する。これにより、あたかもバケツリレーかのように、見かけ上、プロトンが触媒11の表面を素早く移動するような振る舞いを見せる。いずれの移動機構であっても、積極的に移動するイオンが、アンモニア等の分子と物理的に衝突することで、アンモニア(NH)の水素及び窒素への分解が促進されると推察される。結果的に、触媒11に電場が印加されていない場合に比較して、特に触媒11の温度が低い環境下においても、触媒11でのアンモニアの分解が促進される。
【0080】
ただし、ここに述べる分解促進のメカニズムは一説に過ぎず、アンモニア分解システム10の構成等を限定する趣旨ではない。
【0081】
[6]変形例
以下、実施形態1の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0082】
本開示におけるアンモニア分解システム10は、制御部2としてのコンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしての1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における制御部2としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。また、制御部2に含まれる一部又は全部の機能部は電子回路で構成されていてもよい。
【0083】
また、アンモニア分解システム10の少なくとも一部の機能が、1つの筐体内に集約されていることはアンモニア分解システム10に必須の構成ではなく、アンモニア分解システム10の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。反対に、実施形態1において、複数の装置に分散されている機能が、1つの筐体内に集約されていてもよい。
【0084】
さらに、内燃機関システム100の少なくとも一部は、船体に搭載されることに限らず、船体とは別に設けられてもよい。一例として、アンモニア分解システム10の制御部2が、船体とは別に設けられたサーバ装置によって具現化される場合、サーバ装置と船体(の通信装置)との間の通信により、制御部2による内燃機関システム100の制御が可能となる。制御部2の少なくとも一部の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
【0085】
また、内燃機関システム100が搭載される船舶は、外航船のように、1回の燃料補給で比較的長距離を航行する船舶に限らず、例えば、海においてスポーツ又はレクリエーション等に用いられる小型船舶である「プレジャーボート」等であってもよい。さらに、内燃機関システム100が搭載される船舶は、貨物船及び貨客船等を含む商船、タグボート及びサルベージ船等を含む作業船、気象観測船及び練習船等を含む特殊船、漁船、並びに艦艇等であってもよい。また、船舶は、操縦者が搭乗する有人タイプに限らず、人(操縦者)が遠隔操作可能であるか、又は自律運航可能な無人タイプの船舶であってもよい。また、船舶は、船体にエンジン101に加えて、モータ(電動機)等の1以上の動力源を備えていてもよい。内燃機関システム100は、例えば、作業機械、車両又は飛翔体等、船舶以外に用いられてもよい。
【0086】
また、アンモニア分解システム10は、内燃機関システム100以外に用いられてもよい。つまり、アンモニア分解システム10で得られるガス(水素)がエンジン101の燃料として用いられることは、アンモニア分解システム10に必須の構成ではなく、アンモニア分解システム10でアンモニアを分解して得られるガス(水素又は窒素)がエンジン101以外に用いられてもよい。この場合に、アンモニア分解システム10でアンモニアを分解して得られるガスを貯留するタンク(水素タンク102等)が設けられてもよいし、省略されてもよい。あるいは、アンモニア分解システム10は、アンモニアの分解を目的に用いられてもよく、この場合、アンモニアを分解して得られるガス(水素又は窒素)は排気されてもよい。
【0087】
また、触媒11に電場が印加されればよいのであって、分解部1が一対の電極12,13を有することは必須ではなく、例えば単一の電極12のみを分解部1が有していてもよい。さらに、電源装置3がアンモニア分解システム10の構成要素に含まれることも必須ではなく、アンモニア分解システム10外の電源装置から、触媒11(一対の電極12,13間)に対して電圧が印加されてもよい。
【0088】
また、分解部1でのアンモニアの分解率を制御する制御部2を備えることは、アンモニア分解システム10に必須の構成ではなく、制御部2は省略されてもよい。また、分解部1が、触媒11と、電極12,13と、を有することは、アンモニア分解システム10に必須の構成ではない。制御部2が、触媒11の温度、触媒11を流れる電流値、及び触媒11を通過するアンモニアの流量の少なくとも1つを変化させることで、分解率を変化させることも、アンモニア分解システム10に必須の構成ではない。制御部2が、電流値が大きくなるほど分解率が高くなるように、少なくとも電流値によって分解率を変化させることも、アンモニア分解システム10に必須の構成ではない。
【0089】
また、触媒を加熱する加熱部4はアンモニア分解システム10に必須の構成ではなく、加熱部4は省略されてもよい。触媒11の活性金属が、Ru,Ni,Fe,Coのいずれかであること、触媒11の酸化物が、Ce,Zr,Ba,Srのいずれかを含むことも、アンモニア分解システム10に必須の構成ではない。酸化物が、CeO2,CexZr(1-x)O2,BaZrO3,SrxBa(1-x)ZrO3のいずれかであることも、必須の構成ではない。
【0090】
また、エンジン101の排熱を利用して分解部1を加熱することは、内燃機関システム100に必須の構成ではない。エンジン101が、分解部1で得られる水素を燃料の少なくとも一部として利用することも、内燃機関システム100に必須の構成ではない。エンジン101の燃料としてのアンモニアが、分解部1で分解されるアンモニアと、共通のタンクに収容されていることも必須ではなく、別々のタンクに収容されてもよい。
【0091】
(実施形態2)
本実施形態に係る内燃機関システム100Aは、図12に示すように、アンモニアをエンジン101の燃料とせず、水素のみをエンジン101の燃料とする点で、実施形態1に係る内燃機関システム100と相違する。以下、実施形態1と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
【0092】
すなわち、本実施形態では、エンジン101に対してアンモニアを供給するためのアンモニア燃料供給装置105(図1参照)が省略されており、エンジン101には水素のみが燃料として供給される。そのため、本実施形態では、エンジン101は、水素燃料供給装置103から供給される水素を燃料として動力を発生する水素専焼エンジン(Hydrogen fueled internal combustion engine)である。このエンジン101によれば、アンモニアと水素との混合ガスを燃料として用いる場合に比べ、未燃アンモニア又は温室効果ガスの発生を抑えて、よりクリーンな排ガスを実現できる。
【0093】
本実施形態に係る内燃機関システム100Aにおいても、燃料として用いられる水素は、アンモニア分解システム10にてアンモニアを分解して得られる。したがって、本実施形態においても、実施形態1と同様に、アンモニアタンク104に貯留されている(液化)アンモニアから燃料を生成することができるので、エンジン101の燃料としての水素を、効率的かつ安全に供給することが可能となる。
【0094】
実施形態2の変形例として、内燃機関システム100Aのエンジンは、気体燃料(水素)を空気と混合させてからエンジン101の燃焼室に流入させる予混合燃焼方式と、液体燃料をエンジン101の燃焼室内に噴射して燃焼する拡散燃焼方式と、のいずれにも対応可能な、いわゆるデュアルフューエルエンジン(DFエンジン)であってもよい。ここで、液体燃料は一例として化石燃料(軽油又はガソリン等)、バイオ燃料又は合成燃料等であることとする。より詳細には、液体燃料として軽油等を用いることで、内燃機関システム100は、燃料に水素を用いるガスモードと、燃料に軽油等を用いるディーゼルモードと、のいずれにも対応可能である。ここで、ガスモードにおいては着火用燃料として少量の液体燃料(軽油等)が更に用いられてもよい。
【0095】
実施形態2に係る構成(変形例を含む)は、実施形態1で説明した種々の構成(変形例を含む)と適宜組み合わせて採用可能である。
【0096】
〔発明の付記〕
以下、上述の実施形態から抽出される発明の概要について付記する。なお、以下の付記で説明する各構成及び各処理機能は取捨選択して任意に組み合わせることが可能である。
【0097】
<付記1>
アンモニアを分解する分解部と、
前記分解部でのアンモニアの分解率を制御する制御部と、を備える、
アンモニア分解システム。
【0098】
<付記2>
前記分解部は、
アンモニアを分解する触媒と、
前記触媒に電場を印加する電極と、を有する、
付記1に記載のアンモニア分解システム。
【0099】
<付記3>
前記制御部は、前記触媒の温度、前記触媒を流れる電流値、及び前記触媒を通過するアンモニアの流量の少なくとも1つを変化させることで、前記分解率を変化させる、
付記2に記載のアンモニア分解システム。
【0100】
<付記4>
前記制御部は、前記電流値が大きくなるほど前記分解率が高くなるように、少なくとも前記電流値によって前記分解率を変化させる、
付記3に記載のアンモニア分解システム。
【0101】
<付記5>
前記触媒を加熱する加熱部を更に備え、
前記加熱部は、前記触媒の温度を50℃以上、600℃以下の範囲とする、
付記2~4のいずれかに記載のアンモニア分解システム。
【0102】
<付記6>
前記触媒は、活性金属と酸化物とを有し、
前記活性金属は、Ru,Ni,Fe,Coのいずれかであって、
前記酸化物は、Ce,Zr,Ba,Srのいずれかを含む、
付記2~5のいずれかに記載のアンモニア分解システム。
【0103】
<付記7>
前記酸化物は、CeO,CeZr(1-x),BaZrO,SrBa(1-x)ZrOのいずれかである、
付記6に記載のアンモニア分解システム。
【0104】
<付記8>
付記1~7のいずれかに記載のアンモニア分解システムと、
前記アンモニア分解システムから出力されるガスの供給を受けて駆動するエンジンと、を備える、
内燃機関システム。
【0105】
<付記9>
前記エンジンの排熱を利用して前記分解部を加熱する、
付記8に記載の内燃機関システム。
【0106】
<付記10>
前記エンジンは、前記分解部で得られる水素を燃料の少なくとも一部として利用する、
付記8又は9に記載の内燃機関システム。
【0107】
<付記11>
前記エンジンは、前記分解部で得られる水素と、アンモニアと、を燃料として利用する、
付記10に記載の内燃機関システム。
【0108】
<付記12>
前記エンジンの燃料としてのアンモニアは、前記分解部で分解されるアンモニアと、共通のタンクに収容されている、
付記11に記載の内燃機関システム。
【符号の説明】
【0109】
1 分解部
2 制御部
4 加熱部
10 アンモニア分解システム
11 触媒
12,13 電極
100,100A 内燃機関システム
101 エンジン
104 アンモニアタンク(タンク)
図1
図2
図3
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図12