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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093934
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】切断装置
(51)【国際特許分類】
   B23D 29/00 20060101AFI20240702BHJP
   B23D 33/00 20060101ALI20240702BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20240702BHJP
   B26B 15/00 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B23D29/00 A
B23D33/00 A
B23Q17/00 B
B26B15/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210594
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006301
【氏名又は名称】マックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】須藤 昂平
【テーマコード(参考)】
3C029
3C039
3C051
3C065
【Fターム(参考)】
3C029EE04
3C039FA03
3C051FF01
3C065BA21
3C065EA02
3C065EA08
3C065EA11
3C065EA27
3C065FA06
3C065FA07
(57)【要約】
【課題】切断刃と被切断物との位置関係が不適切となっている状態のまま、被切断物の切断を開始してしまうことの無い切断装置、を提供する。
【解決手段】切断装置10は、鉄筋RBを挟み込んで切断する一対の切断刃111と、切断刃111の動作に必要な駆動力を発生させる電動モーター400と、電動モーター400の動作を制御する制御部520と、使用者が行う操作によりオン状態とオフ状態との間で切り替えられるトリガスイッチ12と、一対の切断刃111の間に鉄筋RBが有るときにはオン状態となり、無いときにはオフ状態となるように設けられた検知部800と、を備える。制御部520は、トリガスイッチ12及び検知部800の両方がオン状態のときに、一対の切断刃111を閉じる動作を実行させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動式の切断装置であって、
被切断物を挟み込んで切断する一対の切断刃と、
前記切断刃の動作に必要な駆動力を発生させる電動モーターと、
前記電動モーターの動作を制御する制御部と、
使用者が行う操作によりオン状態とオフ状態との間で切り替えられる操作部と、
一対の前記切断刃の間に前記被切断物が有るときにはオン状態となり、無いときにはオフ状態となるように設けられた検知部と、を備え、
前記制御部は、前記操作部及び前記検知部の両方がオン状態のときに、一対の前記切断刃を閉じる動作を実行させる、切断装置。
【請求項2】
前記制御部は、
一対の前記切断刃を閉じる動作を行っている期間において、
前記操作部がオフ状態となったときは、一対の前記切断刃を閉じる動作を停止させる一方、
前記検知部がオフ状態となったときは、一対の前記切断刃を閉じる動作を継続させる、請求項1に記載の切断装置。
【請求項3】
前記検知部は、
一対の前記切断刃の間に挿入された前記被切断物に当接し、当該被切断物からの力を受けて動作する動作部を有する、請求項1に記載の切断装置。
【請求項4】
前記動作部は、前記切断刃よりも先端側に向けて突出している、請求項3に記載の切断装置。
【請求項5】
前記切断刃が停止しているときに、
前記操作部及び前記検知部のうち一方のみがオン状態となったまま、所定期間が経過した場合には、
前記制御部は、
その後において、前記操作部及び前記検知部の両方がオン状態となっても、一対の前記切断刃を閉じる動作を開始させない、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動式の切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動式の切断装置としては、例えば下記特許文献1に記載されているような電動式剪定挟等が知られている。電動式の切断装置においては、使用者の把持力に替えて、電動モーターの駆動力によって切断刃を動作させ、一対の切断刃で挟み込むことによって被切断物を切断する。上記の電動式剪定挟は木の枝等を被切断物とするものであるが、例えば鉄筋等のような金属を被切断物とする切断装置も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-40594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
切断装置には、切断刃の動作を開始させるためのスイッチとして、例えば使用者の指によって操作されるトリガスイッチ等が設けられることが多い。しかしながら、例えば、切断刃の間の適切な位置に被切断物が入り込んでいない状態等においては、使用者によってトリガスイッチがオン状態とされても、切断刃を動作させるのは好ましくない。
【0005】
本発明は、切断刃と被切断物との位置関係が不適切となっている状態のまま、被切断物の切断を開始してしまうことの無い切断装置、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る切断装置は、電動式の切断装置であって、被切断物を挟み込んで切断する一対の切断刃と、切断刃の動作に必要な駆動力を発生させる電動モーターと、電動モーターの動作を制御する制御部と、使用者が行う操作によりオン状態とオフ状態との間で切り替えられる操作部と、一対の切断刃の間に被切断物が有るときにはオン状態となり、無いときにはオフ状態となるように設けられた検知部と、を備える。制御部は、操作部及び検知部の両方がオン状態のときに、一対の切断刃を閉じる動作を実行させる。
【0007】
上記構成の切断装置は、一対の切断刃の間に被切断物が有るときにはオン状態となり、無いときにはオフ状態となるように設けられた検知部が、使用者によって操作される操作部とは別に設けられている。制御部は、操作部及び検知部の両方がオン状態のときに、一対の切断刃を閉じる動作を実行させる。
【0008】
被切断物が適切な位置に配置されていない状態においては、検知部はオフ状態となるので、操作部がオン状態とされても切断刃は動作しない。これにより、切断刃と被切断物との位置関係が不適切となっている状態のまま、切断刃の動作が開始されてしまう事態を防止することができる。
【0009】
また、被切断物が適切な位置に配置され、検知部がオン状態となっているときであっても、操作部がオフ状態のままであるときには、やはり切断刃は動作しない。これにより、使用者の意思に反して切断部が動作してしまうような事態をも防止することができる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、切断刃と被切断物との位置関係が不適切となっている状態のまま、被切断物の切断を開始してしまうことの無い切断装置、が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1実施形態に係る切断装置の構成を示す図である。
図2図2は、第1実施形態に係る切断装置が備えるガイドプレートの構成を示す図である。
図3図3は、第1実施形態に係る切断装置が備える検知部の構成を示す図である。
図4図4は、第1実施形態に係る切断装置が備える制御基板の構成を示す図である。
図5図5は、第1実施形態に係る制御基板によって実行される処理の流れを示すフローチャートである。
図6図6は、第1実施形態に係る制御基板によって実行される処理の流れを示すフローチャートである。
図7図7は、第1実施形態の変形例に係る制御基板によって実行される処理の流れを示すフローチャートである。
図8図8は、第1実施形態の他の変形例に係る制御基板によって実行される処理の流れを示すフローチャートである。
図9図9は、第2実施形態に係る切断装置が備える検知部の構成を示す図である。
図10図10は、床の近くにある鉄筋を切断する場合の問題点について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0013】
第1実施形態について説明する。本実施形態に係る切断装置10は、電動式の切断装置であって、建設現場等において鉄筋を切断するための装置として構成されている。図1を主に参照しながら、切断装置10の構成について説明する。切断装置10は、ハウジング11と、トリガスイッチ12と、切断機構100と、ボール螺子200と、減速機300と、電動モーター400と、制御基板500と、蓄電池600と、を備えている。尚、切断装置10は、これらに加えて検知部800(図3を参照)をも備えているのであるが、図1においてはその図示が省略されている。
【0014】
ハウジング11は、切断装置10の外形を区画する容器であって、例えば樹脂により形成されている。ハウジング11の内部には、後述のボール螺子200や減速機300等が収容されている。図1においては、ハウジング11のうち紙面手前側の部分が除去されており、切断装置10の内部構成が断面図として示されている。
【0015】
トリガスイッチ12は、使用者の指によって操作されるスイッチである。使用者は、トリガスイッチ12に指をかけて手前側に引き込む操作を行うことにより、トリガスイッチ12をオン状態にすることができる。使用者が指の力を緩めると、トリガスイッチ12はばねの力によって元の位置に戻り、オフ状態となる。トリガスイッチ12がオン状態とオフ状態との間で切り替えられると、それに対応する信号が後述の制御基板500に送信される。トリガスイッチ12は、使用者が行う操作によりオン状態とオフ状態との間で切り替えられる「操作部」に該当する。後に説明するように、使用者は、鉄筋の切断を開始させるために必要な操作の一つとして、トリガスイッチ12をオン状態に切り替える。
【0016】
切断機構100は、被切断物である鉄筋を切断する部分である。切断機構100は、一対の刃部材110と、一対のリンク部材120と、を有している。
【0017】
それぞれの刃部材110には、被切断物を挟み込んで切断する切断刃111が形成されている。刃部材110は、ハウジング11に対し固定された軸101の回りにおいて、回動自在な状態で保持されている。本実施形態では、切断刃111の刃先の稜線が、概ね同一の平面を通る軌道で動作するように、それぞれの刃部材110が対向配置されている。これにより、それぞれの切断刃111が互いに離間した開状態と、それぞれの切断刃111が互いに当接(又は近接)した閉状態と、を切り換えることが可能となっている。図1の例では、一対の切断刃111が閉状態となっている。
【0018】
リンク部材120は棒状の部材であって、一端が軸102を介して刃部材110に接続されており、他端が軸231を介して後述の連結部材230に接続されている。リンク部材120及び刃部材110は、軸102の周りにおいて互いに回動自在な状態で接続されている。同様に、リンク部材120及び連結部材230は、軸231の周りにおいて互いに回動自在な状態で接続されている。後に説明するように、連結部材230は、電動モーター400の駆動力によって、図1の左右方向に移動する。
【0019】
図1の状態から、連結部材230が左方向に移動すると、図1の上側にある刃部材110は反時計回り方向に回転し、図1の下側にある刃部材110は時計回り方向に回転する。これにより、一対の切断刃111は閉状態から開状態になる。一方、一対の切断刃111が開状態となっているときに、連結部材230が図1の右方向に移動すると、図1の上側にある刃部材110は時計回り方向に回転し、図1の下側にある刃部材110は反時計回り方向に回転する。これにより、一対の切断刃111は閉状態に戻る。このように、一対の刃部材110、一対のリンク部材120、及び連結部材230の全体は、所謂「トグルリンク機構」を構成している。
【0020】
本実施形態では、刃部材110の近傍に一対のガイドプレート700が設けられている。ガイドプレート700は、金属により形成された板状の部材であって、図1における紙面手前側及び奥側の両方から刃部材110を挟み込むように配置されている。一対のガイドプレート700の形状は互いに同一である。図2に示されるように、それぞれのガイドプレート700には凹部710が形成されている。
【0021】
説明の便宜上、図1における右側のことを以下では「先端側」とも称し、同図における左側のことを以下では「後端側」とも称する。凹部710は、ガイドプレート700の先端側から後端側に向かって後退するように形成されている。図1図2のように切断装置10を側面側から見た場合においては、それぞれの凹部710は、閉じた状態における切断刃111を含む位置に形成されている。切断刃111が全開となっている待機状態においては、それぞれの切断刃111は凹部710の外側に退避した状態となり、図2の視点においては、ガイドプレート700によって刃部材110の全体が隠れた状態となる。ガイドプレート700は、待機状態の切断刃111を覆い保護する機能と、被切断物である鉄筋を、凹部710に沿って一対の切断刃111の間へと導く機能と、の両方を有している。ガイドプレート700は更に、凹部710において鉄筋を挟み込むことで、切断前後における切断装置10の姿勢を安定させる機能をも有している。
【0022】
ボール螺子200は、電動モーター400の回転運動を、連結部材230の直線運動に変換し、これにより切断機構100を動作させるための装置である。ボール螺子200は、螺子軸210と、ナット220と、連結部材230と、を有している。
【0023】
螺子軸210は、後端側から先端側に向かって直線状に伸びる棒状の部材である。螺子軸210の外周面には雄螺子が形成されている。電動モーター400が駆動されると、螺子軸210はその中心軸回りにおいて回転する。
【0024】
ナット220は、螺子軸210を外周側から囲むように配置された略円筒形状の部材である。ナット220の内周面には雌螺子が形成されており、螺子軸210の外周面に形成された雄螺子に対し螺合している。ナット220は、螺子軸210の長手方向に沿った移動は許容されている一方で、螺子軸210の中心軸回りにおける回転は規制されている。このため、螺子軸210がその中心軸回りにおいて回転すると、ナット220は、当該中心軸に沿って図1の左右方向に移動する。
【0025】
連結部材230は、ナット220に対し取り付けられた部材であって、ナット220と共に螺子軸210に沿って移動する部材である。連結部材230は、ナット220から先端側に向けて突出するように取り付けられている。連結部材230のうち先端側の端部近傍となる部分には、先に述べた軸231を介して一対のリンク部材120が接続されている。
【0026】
連結部材230の外周面には磁石241が取り付けられている。また、連結部材230の近傍となる位置には、ホールセンサ242がハウジング11に対して取り付けられている。ホールセンサ242が取り付けられている位置は、図1の状態からナット220が後端に移動して切断刃111が全開となったときに、連結部材230の磁石241と対向する位置となっている。切断刃111が全開になると、磁石241と対向することによってホールセンサ242から信号が発信され、当該信号が制御基板500に入力される。
【0027】
減速機300は、電動モーター400の出力軸410の回転を、減速した上でボール螺子200の螺子軸210に伝達する装置である。
【0028】
電動モーター400は、切断刃111の動作に必要な駆動力を発生させるための回転電機であって、例えばブラシレスDCモーターである。電動モーター400は出力軸410を有している。出力軸410は略円柱形状の部材であって、その中心軸は螺子軸210の中心軸と一致している。出力軸410の一部は減速機300に向けて突出しており、減速機300に接続されている。
【0029】
電動モーター400のコイルに電流が供給されると、出力軸410がその中心軸周りに回転する。出力軸410の回転は減速機300を介して螺子軸210に伝達され、ナット220を先端側もしくは後端側に向けて移動させる。これにより、先に述べたように切断機構100の切断刃111を開閉動作させる。
【0030】
電動モーター400の内部には、回転センサ420が設けられている。回転センサ420は、出力軸410が所定角度だけ回転する毎にパルス信号を発信するセンサであって、電動モーター400が有する基板430の上に設けられている。回転センサ420からのパルス信号は制御基板500に送信される。制御基板500は、パルス信号の数をカウントすることにより、特定のタイミング以降における出力軸410の回転角度を把握することができる。また、制御基板500は、単位時間あたりに入力されるパルス信号の数に基づいて、出力軸410の回転速度をも把握することができる。回転センサ420は、出力軸410の回転角度及び回転速度を測定できるものであれば、本実施形態とは異なる種類のセンサであってもよく、電動モーター400とは異なる位置に別途設けられたセンサであってもよい。
【0031】
制御基板500は、電動モーター400を含む切断装置10の全体の動作を制御するために設けられた回路基板である。制御基板500は、電動モーター400に供給される電流を調整するためのインバーター回路や、インバーター回路におけるスイッチング動作等を制御するためのマイコン等を含む。
【0032】
蓄電池600は、電動モーター400や制御基板500の動作に必要な電力を蓄えておくものであり、例えばリチウムイオンバッテリーである。切断装置10のうち蓄電池600が内蔵されている部分は、バッテリーパックとしてハウジング11から着脱することが可能となっており、外部の充電器に接続して充電を行うことができる。このような態様に換えて、蓄電池600がハウジング11に取り付けられている状態のまま、蓄電池600の充電を行うことが可能な構成としてもよい。
【0033】
図3に示されるように、切断刃111の近傍となる位置には、検知部800が設けられている。検知部800は、被切断物を検知するためのスイッチであって、一対の切断刃111の間の所定位置に鉄筋RBが有るときにはオン状態となり、無いときにはオフ状態となるように構成されている。検知部800は、動作部810と、スイッチ820と、を有している。
【0034】
動作部810は、螺子軸210の中心軸と平行な方向に移動可能な状態で、例えばガイドプレート700によって保持された部材である。動作部810は、第1部分811と、第2部分812とを有している。第1部分811は、螺子軸210の中心軸と平行に直線状に伸びる部分である。第2部分812は、第1部分811のうち先端側の端部から、第1部分811に対し垂直な方向に直線状に伸びる部分である。
【0035】
図3のように動作部810に鉄筋RBが触れていない状態においては、第2部分812は、側面視において凹部710の一部と重なる位置にある。具体的には、第2部分812は、凹部710のうち後端側の端部近傍の部分と重なっている。
【0036】
図3に示される動作部810の位置は、その可動範囲のうち最も先端側となる位置である。図3の状態から、切断装置10を鉄筋RB側に動かして行くと、鉄筋RBは、相対的に凹部710の奥側へと移動する。つまり、その途中において、鉄筋RBは第2部分812に当接し、以降は動作部810と共に奥側(後端側)へと移動して行く。最終的には、鉄筋RBは凹部710の最も奥側となる位置まで移動する。鉄筋RBが凹部710の奥側に到達した時点においては、動作部810は、その可動範囲のうち最も後端側となる位置にある。このように、動作部810は、一対の切断刃111の間に挿入された鉄筋RBに当接し、鉄筋RBからの力を受けて動作する。
【0037】
スイッチ820は、動作部810の動作を電気信号に変換する部分である。スイッチ820は、動作部810よりも後端側となる位置において、例えばガイドプレート700により保持されている。スイッチ820は可動部821を有している。可動部821は、スイッチ820の本体部分から先端側に向かって突出しており、その先端が、第1部分811のうち後端側の端部に当接している。可動部821は、不図示のばねにより先端側に向けて付勢されている。
【0038】
図3の状態においては、検知部800のスイッチ820はオフ状態となっている。上記のように鉄筋RBが凹部710の奥側へと移動し、鉄筋RBからの力によって動作部810が後端側へと移動すると、第1部分811からの力によって可動部821が後端側へと押し込まれる。これにより、スイッチ820はオフ状態からオン状態に変化する。その後、鉄筋RBの切断が完了し、凹部710から鉄筋RBが無くなると、スイッチ820は再びオフ状態に戻る。スイッチ820がオン状態とオフ状態との間で切り替えられると、それに対応する信号が後述の制御基板500に送信される。後に説明するように、制御基板500は、トリガスイッチ12(操作部)及び検知部800の両方がオン状態となったときにのみ、切断刃111の動作を開始させる。
【0039】
本実施形態の検知部800は、上記のように、鉄筋RBに対し動作部810を物理的に接触させることで鉄筋RBの有無を検知する「コンタクトスイッチ」として構成されている。このような態様に換えて、検知部800が、例えば光学センサ等により、鉄筋RBの有無を非接触で検知するようなスイッチとして構成されていてもよい。
【0040】
制御基板500の構成について、図4を参照しながら説明する。マイコンを含む制御基板500は、その機能を表す要素として、位置取得部510と、制御部520と、を備えている。
【0041】
位置取得部510は、切断刃111の現在位置を取得する処理、を行う部分である。本実施形態では、磁石241とホールセンサ242が対向したときを基準とした、回転センサ420から入力されるパルス信号のカウント値が、切断刃111の「現在位置」として位置取得部510により算出され取得される。位置取得部510により取得される「現在位置」は、切断刃111の現在位置を直接的又は間接的に示す指標であればよく、パルス信号のカウント値以外の値であってもよい。例えば、一対の切断刃111の間の角度をθとしたときに、当該θの値が上記の「現在位置」として用いられてもよい。
【0042】
切断刃111の現在位置の取得を可能とするために、切断装置10が起動された際等においてリセット動作を行うこととすればよい。リセット動作では、例えば、一対の切断刃111が閉状態から開状態になる方向に電動モーター400を駆動させ、ホールセンサ242からの検知信号が入力された時点で電動モーター400を停止させればよい。この時点からパルス信号のカウントを開始すれば、以降における切断刃111の現在位置を正確に取得することができる。
【0043】
制御部520は、電動モーター400の動作を制御する部分である。制御部520は、電動モーター400に供給される電流の大きさを例えばPWM制御により調整することで、切断刃111の開閉動作を制御する。また、制御部520は、電動モーター400が備える複数のコイルの一部を周期的に又は連続的に短絡させる、所謂「ショートブレーキ」を行うことで、切断刃111の制動動作をも制御する。
【0044】
制御基板500により実行される処理について、図5を参照しながら説明する。図5のフローチャートに示される一連の処理は、上記のリセット動作が完了した以降、所定の制御周期が経過する毎に、制御基板500によって繰り返し実行されるものである。
【0045】
当該処理の最初のステップS01では、トリガスイッチ12がオン状態であるか否かが判定される。トリガスイッチ12がオフ状態のままである場合には、ステップS10に移行する。ステップS10では、許可フラグの値が0に設定される。「許可フラグ」とは、検知部800よりも先にトリガスイッチ12がオン状態とされたこと、を記憶しておくための内部変数である。ステップS10の後は、図5の処理を一旦終了する。
【0046】
ステップS01において、トリガスイッチ12がオン状態とされた場合には、ステップS02に移行する。ステップS02では、検知部800がオフ状態であるか否かが判定される。検知部800がオフ状態である場合には、ステップS03に移行する。ステップS03では、許可フラグの値が1に設定される。その後、ステップS04に移行する。ステップS02において、検知部800がオン状態であった場合には、ステップS03を経ることなくステップS04に移行する。
【0047】
ステップS04では、許可フラグの値が1であるか否かが判定される。検知部800の方が先にオン状態となり、その後にトリガスイッチ12がオン状態とされた場合には、許可フラグの値は0になっている。この場合、図5の処理を一旦終了する。検知部800がオフ状態のときに、トリガスイッチ12が先にオン状態とされた場合には、許可フラグの値は1になっている。この場合、ステップS05に移行する。
【0048】
ステップS05では、検知部800がオン状態であるか否かが再度判定される。検知部800がオフ状態のままであった場合には、図5の処理を一旦終了する。トリガスイッチ12に続いて検知部800もオン状態になると、ステップS06に移行する。ステップS06では、電動モーター400を駆動させてそれぞれの切断刃111を閉方向に動作させ始める処理が、制御部520によって行われる。これにより、鉄筋の切断が開始される。
【0049】
ステップS06に続くステップS07では、トリガスイッチ12がオン状態のままになっているか否かが判定される。トリガスイッチ12がオン状態であれば、ステップS08に移行する。ステップS08では、切断刃111が全閉位置に到達したか否かが判定される。本実施形態では、「全閉位置」として、一対の切断刃111同士が互いに当接する位置が設定されるが、互いに当接する直前の位置が「全閉位置」として設定されてもよい。切断刃111が未だ全閉位置に到達していない場合には、全閉位置に向けた切断刃111の動作を継続させながら、ステップS07以降の処理が再度実行される。切断刃111が全閉位置に到達すると、ステップS09に移行する。
【0050】
ステップS09では、切断刃111の動作を停止させる処理が行われる。具体的には、切断刃111を制動するためのショートブレーキ等の処理が開始される。ステップS09では、電動モーター400への電流供給を単に停止することで、切断刃111を停止させることとしてもよい。切断刃111の動作を停止させる処理に続いて、切断刃111を全開位置に戻す処理が自動的に行われてもよい。
【0051】
尚、切断刃111の動作を停止させる処理が開始されるタイミングは、本実施形態のように切断刃111が全閉位置に到達したタイミングであってもよいが、これとは異なるタイミングであってもよい。例えば、切断刃111が、全閉位置よりも手前側の所定位置に到達したタイミングで、切断刃111の動作を停止させる処理が開始されてもよい。
【0052】
ステップS07において、トリガスイッチ12がオフ状態とされた場合には、ステップ09に移行する。これにより、切断刃111が全閉位置に到達するのを待つことなく、切断刃111の動作が停止される。
【0053】
以上のように、本実施形態の切断装置10において、制御部520は、トリガスイッチ12(操作部)及び検知部800の両方がオン状態となったときに、一対の切断刃111を閉じる動作を開始させるように構成されている。具体的には、トリガスイッチ12が先にオン状態となり、その後に検知部800がオン状態となった場合にのみ、切断刃111の動作が開始されることとなる。このような構成においては、使用者は、トリガスイッチ12をオンにした状態のまま、鉄筋を凹部710の内側に繰り返し入り込ませて行くことで、連続的に切断を行うことができる。
【0054】
鉄筋が適切な位置(凹部710の最も奥側)に配置されていない状態においては、検知部800はオフ状態となるので、トリガスイッチ12がオン状態とされても切断刃111は動作しない。これにより、切断刃111と鉄筋との位置関係が不適切となっている状態のまま、切断刃111の動作が開始されてしまう事態を防止することができる。
【0055】
また、鉄筋が適切な位置に配置され、検知部800がオン状態となっているときであっても、トリガスイッチ12がオフ状態のままであるときには、やはり切断刃111は動作しない。これにより、使用者の意思に反して切断刃111が動作してしまうような事態をも防止することができる。
【0056】
本実施形態の制御部520は、一対の切断刃111を閉じる動作を行っている期間において、トリガスイッチ12がオフ状態となったときは、ステップS07からステップS09に移行して、切断刃111を閉じる動作を停止させる。一方、上記期間において、仮に検知部800がオフ状態となっても、切断刃111を停止させることなく動作を継続させる。
【0057】
鉄筋の切断が開始された後は、例えば、鉄筋が変形する等の影響によって検知部800がオフ状態となってしまう可能性が有る。このような場合には、切断刃111の動作を停止させることなく、切断を継続させた方が好ましい場合が多い。そこで、本実施形態では上記のように、切断の途中で検知部800がオフ状態となっても、切断刃111を停止させないこととしている。
【0058】
図6に示される一連の処理は、図5に示される一連の処理と並行して、制御基板500によって繰り返し実行されるものである。最初のステップS21では、許可フラグの値が1であるか否かが判定される。許可フラグの値が0である場合には、ステップS25に移行する。ステップS25では、期間の計測がリセットされる。ここでいう「期間」とは、許可フラグの値が1に変化してから、切断刃111の動作が開始されるまでの期間のことであり、制御基板500のタイマーによって計測されているものである。ステップS25の後は、図6の処理を一旦終了する。
【0059】
ステップS21において、許可フラグの値が1となっていた場合には、ステップS22に移行する。上記の期間は、ステップS22に最初に移行した時点から計測され始めることとなる。ステップS22では、切断刃111が動作中であるか否かが判定される。切断刃111が動作中である場合には、ステップS25に移行する。切断刃111の動作が未だ開始されていない場合には、ステップS23に移行する。
【0060】
ステップS23では、ステップS22に最初に移行した時点から、予め設定された所定期間が経過したか否かが判定される。所定期間が未だ経過していない場合には、図6の処理を一旦終了する。所定期間が経過した場合には、ステップS24に移行する。
【0061】
ステップS24に移行したということは、トリガスイッチ12がオン状態とされた後、検知部800がオン状態となることなく、所定期間が経過したということである。このような状況は、通常の作業時においては生じにくい状況であるため、何らかの異常事態が生じている可能性が高い。そこで、ステップS24では、異常モードに切り替える処理が行われる。異常モードでは、その後においてトリガスイッチ12及び検知部800の両方がオン状態となっても、制御部520は切断刃111を動作させない。その際、このような異常モードに切り替わったことを、例えばランプの点灯等によって使用者に報知することとしてもよい。
【0062】
本実施形態では、トリガスイッチ12が先にオン状態となり、その後に検知部800がオン状態となった場合にのみ、切断刃111の動作が開始される。この順序は適宜変更してもよい。例えば、図5に示される一連の処理に替えて、図7に示される一連の処理が実行されることとしてもよい。図7の変形例は、図5のステップS01、S02、S05を、それぞれステップS31、S32、S35に置き換えたものとなっている。
【0063】
ステップS31では、検知部800がオン状態であるか否かが判定される。オン状態であればステップS32に移行し、オフ状態であればステップS10に移行する。ステップS32では、トリガスイッチ12がオフ状態であるか否かが判定される。オフ状態であればステップS03に移行し、オン状態であればステップS04に移行する。
【0064】
この変形例における許可フラグは、トリガスイッチ12よりも先に検知部800がオン状態とされたこと、を記憶しておくための内部変数として用いられる。この変形例では、検知部800が先にオン状態となり、その後にトリガスイッチ12がオン状態となった場合にのみ、切断刃111の動作が開始されることとなる。
【0065】
この変形例においても、図7の処理と並行して図6の処理が実行される。これにより、検知部800がオン状態とされた後、トリガスイッチ12がオン状態となることなく、所定期間が経過した場合には、ステップS24に移行して異常モードに切り替えられる。つまり、その後においてトリガスイッチ12及び検知部800の両方がオン状態となっても、制御部520は切断刃111を動作させない。
【0066】
このように、切断刃111が停止しているときに、トリガスイッチ12及び検知部800のうち一方のみがオン状態となったまま、所定期間が経過した場合には、制御部520は、その後において、トリガスイッチ12及び検知部800の両方がオン状態となっても、一対の切断刃111を閉じる動作を開始させない。
【0067】
図5に示される一連の処理に替えて、図8に示される一連の処理が実行されることとしてもよい。
【0068】
図8の最初のステップS41では、検知部800がオン状態であるか否かが判定される。検知部800がオン状態であればステップS42に移行し、オフ状態であれば図8の処理を一旦終了する。
【0069】
ステップS42では、トリガスイッチ12がオン状態であるか否かが判定される。トリガスイッチ12がオン状態であればステップS06に移行し、オフ状態であれば図8の処理を一旦終了する。ステップS06以降で実行される処理は、図5の第1実施形態の場合と同じである。
【0070】
この変形例においては、トリガスイッチ12及び検知部800の両方がオン状態になると、その順序によることなく、制御部520は常に切断刃111を動作させ始める。この変形例においても、トリガスイッチ12及び検知部800のうち一方のみがオン状態となったまま、所定期間が経過した場合には、異常モードに切り替えることとしてもよい。
【0071】
第2実施形態について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。図9に示されるように、本実施形態は、検知部800が有する動作部810の形状において、第1実施形態と異なっている。尚、本実施形態で制御基板500により実行される処理は、図5ではなく、図7又は図8に示される変形例と同じ処理である。
【0072】
図10には、床FLの近くに配置された鉄筋RBを、第1実施形態に係る切断装置10で切断しようとしている様子が描かれている。この場合、凹部710の奥側にある動作部810に鉄筋RBが当接するよりも前に、ガイドプレート700の先端が床FLに当たってしまう。検知部800がオン状態とならないので、使用者がトリガスイッチ12をオン状態にしても、切断刃111は動作しない。つまり、鉄筋RBが切断刃111の間にあるにも拘らず、切断刃111により鉄筋RBを切断することができない。そこで、本実施形態に係る切断装置10は、動作部810の形状を工夫することにより、上記問題を解決している。尚、同様の問題は、地面に対し垂直な壁面等の近くに鉄筋RBが配置されている場合にも生じ得る。
【0073】
図9に示されるように、本実施形態の動作部810は、第1部分811及び第2部分812に加えて、第3部分813と、第4部分814と、を更に有している。
【0074】
第3部分813は、第2部分812のうち第1部分811とは反対側の端部から、先端側に向けて直線状に伸びる部分である。第4部分814は、第3部分813のうち先端側の端部から、第3部分813に対し垂直な方向に直線状に伸びる部分である。
【0075】
動作部810が鉄筋RBや床FLに触れていない状態においては、動作部810のうち第4部分814は、ガイドプレート700の先端よりも更に先端側に向けて突出している。その突出量は、可動部821の動作ストロークに概ね等しい。尚、切断装置10にガイドプレート700が設けられていない場合には、第4部分814を、切断刃111の先端から上記ストローク分だけ突出させればよい。
【0076】
図9のように、切断刃111の間に鉄筋RBを挟み込んだ状態で、切断装置10を床FL側に移動させると、ガイドプレート700よりも先に第4部分814が床に当接する。切断装置10を更に床FL側に移動させると、床FLからの力によって動作部810及び可動部821が押し込まれて、検知部800はオン状態になる。
【0077】
このように、本実施形態では、鉄筋RBが動作部810に当接しなくても、床FLからの力によって動作部810が動作し、検知部800がオン状態となる。従って、その後において使用者がトリガスイッチ12をオン状態にすれば、鉄筋RBの切断が開始される。
【0078】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0079】
10:切断装置
12:トリガスイッチ
111:切断刃
400:電動モーター
520:制御部
800:検知部
810:動作部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10