(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093938
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】人力駆動車用の電気モータのステータ、人力駆動車用の電気モータ、および、人力駆動車用のコンポーネント
(51)【国際特許分類】
H02K 3/46 20060101AFI20240702BHJP
H02K 1/18 20060101ALI20240702BHJP
H02K 3/34 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
H02K3/46 B
H02K1/18 C
H02K3/34 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210599
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】藤原 岳志
(72)【発明者】
【氏名】阿部 佑亮
【テーマコード(参考)】
5H601
5H604
【Fターム(参考)】
5H601AA09
5H601BB30
5H601CC01
5H601CC11
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601DD18
5H601DD42
5H601DD47
5H601EE03
5H601EE19
5H601GA02
5H601GB05
5H601GB12
5H601GB33
5H601GB48
5H601GC02
5H601GC12
5H601GD02
5H601GD08
5H601GD13
5H601GD22
5H601JJ07
5H604AA08
5H604BB01
5H604BB08
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC15
5H604CC16
5H604PB03
(57)【要約】
【課題】複数の絶縁部材を好適に組み立てできる、人力駆動車用の電気モータのステータ、人力駆動車用の電気モータ、および、人力駆動車用のコンポーネントを提供する。
【解決手段】人力駆動車用の電気モータのステータは、ステータコアと、複数の絶縁部材と、コイルと、を備え、ステータコアは、複数の分割コアを含み、複数の分割コアのそれぞれは、ヨーク部分と、複数のティースのうちの少なくとも1つと、を含み、ヨーク部分は、第1コア端面と、第2コア端面と、を含み、第1コア端面および第2コア端面は、ステータの中心軸心と平行に形成され、複数の絶縁部材は、周方向に並んで配置され、複数の絶縁部材のそれぞれは、第1絶縁端面と、第2絶縁端面と、を含み、第1絶縁端面および第2絶縁端面は、非平行部分をそれぞれ有し、非平行部分は、ステータの中心軸心に関する径方向から見て、ステータコアに重なる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人力駆動車用の電気モータのステータであって、
ヨーク、および、前記ヨークから突出する複数のティースを含むステータコアと、
前記ヨークの一部を覆う第1部分、および、前記複数のティースの少なくとも一部を覆う第2部分を含む複数の絶縁部材と、
前記第2部分に巻き付けられるコイルと、を備え、
前記ステータコアは、前記ステータの中心軸心に関する周方向に並ぶ複数の分割コアを含み、
前記複数の分割コアのそれぞれは、
前記ヨークの一部を構成するヨーク部分と、
前記ヨーク部分に設けられる前記複数のティースのうちの少なくとも1つと、を含み、
前記複数の分割コアのそれぞれの前記ヨーク部分は、前記周方向において第1コア端面と、前記周方向において前記第1コア端面とは反対側の第2コア端面と、を含み、
前記第1コア端面および前記第2コア端面は、前記ステータの前記中心軸心と平行に形成され、
前記複数の絶縁部材は、前記周方向に並んで配置され、
前記複数の絶縁部材のそれぞれは、前記周方向において第1絶縁端面と、前記周方向において前記第1絶縁端面とは反対側の第2絶縁端面と、を含み、
前記第1絶縁端面および前記第2絶縁端面は、前記ステータの前記中心軸心に平行な第1方向とは異なる第2方向に延びる非平行部分をそれぞれ有し、
前記非平行部分は、前記ステータの前記中心軸心に関する径方向から見て、前記ステータコアに重なる、ステータ。
【請求項2】
前記非平行部分は、凸部および凹部の少なくとも1つによって形成される、請求項1に記載のステータ。
【請求項3】
前記コイルの直径を1とした場合における前記凸部の突出する長さは、0.2以上1未満である、請求項2に記載のステータ。
【請求項4】
前記コイルの直径を1とした場合における前記凹部の陥没する長さは、0.2以上1未満である、請求項2に記載のステータ。
【請求項5】
前記非平行部分は、前記第1方向に対して傾斜する傾斜面を含む、請求項1に記載のステータ。
【請求項6】
前記第1方向に対する前記傾斜面の角度は、10度以上60度未満である、請求項5に記載のステータ。
【請求項7】
前記非平行部分は、湾曲部を含む、請求項1に記載のステータ。
【請求項8】
前記複数の分割コアは、前記周方向において互いに隣り合う第1分割コアおよび第2分割コアを含み、
前記複数の絶縁部材は、前記第1分割コアに設けられる第1絶縁部材と、前記第2分割コアに設けられる第2絶縁部材とを含み、
前記第1分割コアの前記第1コア端面は、前記第2分割コアの前記第2コア端面と接触し、
前記第1絶縁部材の前記第1絶縁端面と、前記第2絶縁部材の前記第2絶縁端面との間には、第1間隙が形成される、請求項1に記載のステータ。
【請求項9】
前記コイルの直径を1とした場合における前記第1間隙の大きさは、0以上1未満である、請求項8に記載のステータ。
【請求項10】
前記複数の絶縁部材のそれぞれは、
前記第1方向において第1端部および第2端部を含み、
前記第1端部を含む第1端部側部分と、前記第1端部側部分とは別体に形成される前記第2端部を含む第2端部側部分と、を含む、請求項1に記載のステータ。
【請求項11】
前記非平行部分は、前記第1端部側部分および前記第2端部側部分のそれぞれに設けられる、請求項10に記載のステータ。
【請求項12】
前記複数の分割コアのそれぞれは、前記複数のティースのうちの1つを含む、請求項1に記載のステータ。
【請求項13】
前記複数の絶縁部材の数は、前記複数の分割コアの数と等しい、請求項12に記載のステータ。
【請求項14】
人力駆動車用の電気モータであって、
請求項1から13のいずれか一項に記載のステータと、
前記ステータに対して回転可能なロータと、を備える、電気モータ。
【請求項15】
前記ヨークは、筒状に形成され、
前記ロータは、前記径方向において前記ヨークの内側に配置される、請求項14に記載の電気モータ。
【請求項16】
人力駆動車用のコンポーネントであって、
請求項14に記載の電気モータを備える、コンポーネント。
【請求項17】
ドライブユニットであり、
前記電気モータは、前記人力駆動車に推進力を付与するように構成される、請求項16に記載のコンポーネント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、人力駆動車用の電気モータのステータ、人力駆動車用の電気モータ、および、人力駆動車用のコンポーネントに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示される電気モータは、周方向に並べられる複数のインシュレータを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的の1つは、複数の絶縁部材を好適に組み立てできる人力駆動車用の電気モータのステータ、人力駆動車用の電気モータ、および、人力駆動車用のコンポーネントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1側面に従うステータは、人力駆動車用の電気モータのステータであって、ヨーク、および、前記ヨークから突出する複数のティースを含むステータコアと、前記ヨークの一部を覆う第1部分、および、前記複数のティースの少なくとも一部を覆う第2部分を含む複数の絶縁部材と、前記第2部分に巻き付けられるコイルと、を備え、前記ステータコアは、前記ステータの中心軸心に関する周方向に並ぶ複数の分割コアを含み、前記複数の分割コアのそれぞれは、前記ヨークの一部を構成するヨーク部分と、前記ヨーク部分に設けられる前記複数のティースのうちの少なくとも1つと、を含み、前記複数の分割コアのそれぞれの前記ヨーク部分は、前記周方向において第1コア端面と、前記周方向において前記第1コア端面とは反対側の第2コア端面と、を含み、前記第1コア端面および前記第2コア端面は、前記ステータの前記中心軸心と平行に形成され、前記複数の絶縁部材は、前記周方向に並んで配置され、前記複数の絶縁部材のそれぞれは、前記周方向において第1絶縁端面と、前記周方向において前記第1絶縁端面とは反対側の第2絶縁端面と、を含み、前記第1絶縁端面および前記第2絶縁端面は、前記ステータの前記中心軸心に平行な第1方向とは異なる第2方向に延びる非平行部分をそれぞれ有し、前記非平行部分は、前記ステータの前記中心軸心に関する径方向から見て、前記ステータコアに重なる。
第1側面のステータによれば、複数の絶縁部材は、第1方向とは異なる第2方向に延びる非平行部分をそれぞれ有する、第1絶縁端面と、第2絶縁端面と、を含むため、複数の絶縁部材の第1方向へのずれが発生しにくい。したがって、ステータは、複数の絶縁部材を好適に組み立てできる。
【0006】
本開示の第1側面に従う第2側面のステータにおいて、前記非平行部分は、凸部および凹部の少なくとも1つによって形成される。
第2側面のステータによれば、絶縁部材は、非平行部分が凸部および凹部の少なくとも1つによって形成されるため、複数の絶縁部材の第1方向へのずれが発生しにくい。
【0007】
本開示の第2側面に従う第3側面のステータにおいて、前記コイルの直径を1とした場合における前記凸部の突出する長さは、0.2以上1未満である。
第3側面のステータによれば、絶縁部材は、コイルの直径を1とした場合における突出する長さが0.2以上1未満の凸部によって、複数の絶縁部材の第1方向へのずれを抑制できる。
【0008】
本開示の第2または第3側面に従う第4側面のステータにおいて、前記コイルの直径を1とした場合における前記凹部の陥没する長さは、0.2以上1未満である。
第4側面のステータによれば、コイルの直径を1とした場合における陥没する長さが0.2以上1未満の凹部によって、複数の絶縁部材の第1方向へのずれを抑制できる。
【0009】
本開示の第1から第4側面のいずれか1つに従う第5側面のステータにおいて、前記非平行部分は、前記第1方向に対して傾斜する傾斜面を含む。
第5側面のステータによれば、傾斜面によって、複数の絶縁部材の第1方向へのずれを抑制できる。
【0010】
本開示の第5側面に従う第6側面のステータにおいて、前記第1方向に対する前記傾斜面の角度は、10度以上60度未満である。
第6側面のステータによれば、第1方向に対する傾斜面の角度が10度以上60度未満の傾斜面によって、複数の絶縁部材の第1方向へのずれを抑制できる。
【0011】
本開示の第1から第6側面いずれか1つに従う第7側面のステータにおいて、前記非平行部分は、湾曲部を含む。
第7側面のステータによれば、湾曲部によって、複数の絶縁部材の第1方向へのずれを抑制できる。
【0012】
本開示の第1から第7側面のいずれか1つに従う第8側面のステータにおいて、前記複数の分割コアは、前記周方向において互いに隣り合う第1分割コアおよび第2分割コアを含み、前記複数の絶縁部材は、前記第1分割コアに設けられる第1絶縁部材と、前記第2分割コアに設けられる第2絶縁部材とを含み、前記第1分割コアの前記第1コア端面は、前記第2分割コアの前記第2コア端面と接触し、前記第1絶縁部材の前記第1絶縁端面と、前記第2絶縁部材の前記第2絶縁端面との間には、第1間隙が形成される。
第8側面のステータによれば、第1絶縁部材の第1絶縁端面と、第2絶縁部材の第2絶縁端面との間には、第1間隙が形成されるため、ステータを組み立てやすい。
【0013】
本開示の第8側面に従う第9側面のステータにおいて、前記コイルの直径を1とした場合における前記第1間隙の大きさは、0以上1未満である。
第9側面のステータによれば、コイルの直径を1とした場合における第1間隙の大きさを0以上1未満にできる。
【0014】
本開示の第1から第9側面のいずれか1つに従う第10側面のステータにおいて、前記複数の絶縁部材のそれぞれは、前記第1方向において第1端部および第2端部を含み、前記第1端部を含む第1端部側部分と、前記第1端部側部分とは別体に形成される前記第2端部を含む第2端部側部分と、を含む。
第10側面のステータによれば、複数の絶縁部材のそれぞれは、第1端部側部分と、第1端部側部分とは別体に形成される第2端部を含む第2端部側部分と、を含むため、ステータを組み立てやすい。
【0015】
本開示の第10側面に従う第11側面のステータにおいて、前記非平行部分は、前記第1端部側部分および前記第2端部側部分のそれぞれに設けられる。
第11側面のステータによれば、非平行部分は、第1端部側部分および第2端部側部分のそれぞれに設けられるため、ステータを組み立てやすい。
【0016】
本開示の第1から第11側面のいずれか1つに従う第12側面のステータにおいて、前記複数の分割コアのそれぞれは、前記複数のティースのうちの1つを含む。
第12側面のステータによれば、複数の分割コアのそれぞれが複数のティースのうちの1つを含むため、複数のティースのそれぞれにコイルを巻き付けやすい。
【0017】
本開示の第12側面に従う第13側面のステータにおいて、前記複数の絶縁部材の数は、前記複数の分割コアの数と等しい。
第13側面のステータによれば、複数の絶縁部材の数が複数の分割コアの数と等しいため、複数の分割コアのそれぞれに絶縁部材を設けられる。
【0018】
本開示の第14側面に従う電気モータは、人力駆動車用の電気モータであって、第1から第14側面のいずれか1つに記載のステータと、前記ステータに対して回転可能なロータと、を備える。
第14側面の電気モータによれば、ステータの複数の絶縁部材を好適に組み立てできるため、電気モータの製造効率に貢献できる。
【0019】
本開示の第14側面に従う第15側面の電気モータにおいて、前記ヨークは、筒状に形成され、前記ロータは、前記径方向において前記ヨークの内側に配置される。
第15側面の電気モータによれば、ロータが径方向においてヨークの内側に配置される電気モータの製造効率に貢献できる。
【0020】
本開示の第16側面に従うコンポーネントは、人力駆動車用のコンポーネントであって、第14または第15側面に記載の電気モータを備える。
第16側面のコンポーネントによれば、電気モータの製造効率に貢献できるため、コンポーネントの製造効率に貢献できる。
【0021】
本開示の第16側面に従う第17側面のコンポーネントは、ドライブユニットであり、前記電気モータは、前記人力駆動車に推進力を付与するように構成される。
第17側面のコンポーネントによれば、電気モータによって人力駆動車に推進力を付与するコンポーネントの製造効率に貢献できる。
【発明の効果】
【0022】
本開示の人力駆動車用の電気モータのステータ、人力駆動車用の電気モータ、および、人力駆動車用のコンポーネントは、複数の絶縁部材を好適に組み立てできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第1実施形態の人力駆動車用の電気モータのステータ、人力駆動車用の電気モータ、および、人力駆動車用のコンポーネントを含む人力駆動車の側面図である。
【
図7】
図3のステータコアの第1分割コアおよび第2分割コアの正面図である。
【
図11】
図3の第1分割コア、第2分割コア、第1絶縁部材、および、第2絶縁部材の正面図である。
【
図13】第2実施形態の第1分割コア、第2分割コア、第1絶縁部材、および、第2絶縁部材の正面図である。
【
図15】第1変更例の第1分割コア、第2分割コア、第1絶縁部材、および、第2絶縁部材の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第1実施形態>
図1から
図11を参照して、人力駆動車用の電気モータ52のステータ70、人力駆動車用の電気モータ52、および、人力駆動車用のコンポーネント50が説明される。人力駆動車は、少なくとも1つの車輪を有し、少なくとも人力駆動力によって駆動できる乗り物である。人力駆動車は、例えばマウンテンバイク、ロードバイク、シティバイク、カーゴバイク、ハンドバイク、および、リカンベントなど種々の種類の自転車を含む。人力駆動車が有する車輪の数は限定されない。人力駆動車は、例えば、1輪車および2輪以上の車輪を有する乗り物も含む。人力駆動車は、人力駆動力のみによって駆動できる乗り物に限定されない。人力駆動車は、人力駆動力だけではなく、電気モータの駆動力を推進に利用するE-bikeを含む。E-bikeは、電気モータによって推進が補助される電動アシスト自転車を含む。以下、それぞれの実施形態において、人力駆動車は、自転車として説明される。
【0025】
人力駆動車10は、例えば、少なくとも1つの車輪12と、車体14と、を含む。少なくとも1つの車輪12は、例えば、前輪12F、および、後輪12Rを含む。車体14は、例えば、フレーム16を含む。フレーム16には、例えば、サドルが取り付けられる。
【0026】
人力駆動車10は、例えば、人力駆動力が入力されるクランク18をさらに含む。クランク18は、例えば、フレーム16に対して回転可能なクランク軸20と、クランクアーム22とを含む。クランクアーム22は、例えば、第1クランクアーム22A、および、第2クランクアーム22Bを含む。第1クランクアーム22A、および、第2クランクアーム22Bは、例えば、クランク軸20の軸方向の両方の端部にそれぞれ設けられる。
【0027】
クランクアーム22には、例えば、ペダル24が連結される。ペダル24は、例えば、第1ペダル24A、および、第2ペダル24Bを含む。第1クランクアーム22Aには、例えば、第1ペダル24Aが連結される。第2クランクアーム22Bには、例えば、第2ペダル24Bが連結される。フレーム16には、例えば、フロントフォーク26が接続される。フロントフォーク26には、例えば、前輪12Fが取り付けられる。フロントフォーク26には、例えば、ハンドルバー28がステム30を介して連結される。後輪12Rは、例えば、フレーム16に支持される。
【0028】
本実施形態では、クランク18は、駆動機構32によって後輪12Rと連結される。後輪12Rは、例えば、クランク軸20が回転することによって駆動される。前輪12Fおよび後輪12Rの少なくとも1つは、駆動機構32によってクランク18に連結されてもよい。駆動機構32は、例えば、クランク軸20に連結される少なくとも1つの第1回転体34を含む。少なくとも1つの第1回転体34は、例えば、フロントスプロケットを含む。少なくとも1つの第1回転体34は、プーリ、または、ベベルギアを含んでいてもよい。クランク軸20は、フロントスプロケットと、ワンウェイクラッチを介して連結されてもよい。
【0029】
駆動機構32は、例えば、少なくとも1つの第2回転体36および伝達体38をさらに含む。伝達体38は、例えば、少なくとも1つの第1回転体34の回転力を少なくとも1つの第2回転体36に伝達するように構成される。伝達体38は、例えば、チェーンを含む。伝達体38は、ベルト、または、シャフトを含んでいてもよい。少なくとも1つの第2回転体36は、例えば、リアスプロケットを含む。少なくとも1つの第2回転体36は、プーリ、または、ベベルギアを含んでもよい。チェーンは、例えば、フロントスプロケットおよびリアスプロケットに巻き掛けられる。少なくとも1つの第2回転体36は、例えば、後輪12Rに連結される。後輪12Rは、例えば、少なくとも1つの第2回転体36の回転にともなって回転するように構成される。
【0030】
少なくとも1つの第2回転体36と、後輪12Rとは、第1ワンウェイクラッチを介して接続されてもよい。第1ワンウェイクラッチは、例えば、ローラクラッチ、スプラグクラッチ、および、ラチェットクラッチの少なくとも1つを含む。第1ワンウェイクラッチは、少なくとも1つの第1回転体34の前転に伴って、少なくとも1つの第2回転体36が回転する場合、少なくとも1つの第2回転体36から後輪12Rに駆動力を伝達する。第1ワンウェイクラッチは、後輪12Rが前転する速度が、少なくとも1つの第2回転体36が前転する速度よりも高い場合に、後輪12Rと少なくとも1つの第2回転体36との相対回転を許容するように構成される。
【0031】
人力駆動車10は、例えば、バッテリ40をさらに含む。バッテリ40は、1または複数のバッテリ素子を含む。バッテリ素子は、充電池を含む。バッテリ40は、例えば、人力駆動車用のコンポーネント50に電力を供給するように構成される。バッテリ40は、例えば、コンポーネント50と有線または無線によって通信可能に接続される。バッテリ40は、例えば、電力線通信(PLC;Power Line Communication)、CAN(Controller Area Network)、または、UART(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter)によってコンポーネント50と通信可能である。
【0032】
人力駆動車用のコンポーネント50は、例えば、電気モータ52を備える。コンポーネント50は、例えば、ドライブユニット54、電動変速機、電動アジャスタブルシートポスト、および、電動サスペンションの少なくとも1つである。本実施形態では、コンポーネント50は、ドライブユニット54である。以下、コンポーネント50は、ドライブユニット54として説明される。
【0033】
ドライブユニット54は、例えば、電気モータ52を含む。電気モータ52は、人力駆動車10に推進力を付与するように構成される。電気モータ52は、例えば、伝達体38を駆動するように構成される。電気モータ52は、例えば、人力駆動力に応じて、人力駆動車10に推進力を付与するように構成される。電気モータ52は、例えば、1または複数の電気モータを含む。電気モータ52は、例えば、ブラシレスモータである。電気モータ52は、例えば、第1ペダル24A、および、第2ペダル24Bから、少なくとも1つの第2回転体36までの人力駆動力の動力伝達経路に含まれる部材の少なくとも1つに、回転力を伝達するように構成される。
【0034】
本実施形態の電気モータ52は、インナロータ型のモータである。電気モータ52は、アウタロータ型のモータであってもよい。人力駆動車用の電気モータ52は、例えば、ステータ70と、ステータ70に対して回転可能なロータ56と、を備える。ロータ56は、金属材料によって形成される。ロータ56は、例えば、ステータ70の中心軸心A1に平行な第1方向Y1に貫通する孔56Aを有する。ロータ56は、例えば、少なくとも一部がロータ56の内部に配置される。本実施形態の電気モータ52は、インナロータ型のモータである。電気モータ52は、例えば、ブラシレスモータである。
【0035】
電気モータ52は、例えば、出力軸58をさらに備える。出力軸58は、例えば、孔56Aに設けられる。出力軸58の回転軸は、ステータ70の中心軸心A1と一致する。出力軸58は、例えば、第1ペダル24A、および、第2ペダル24Bから、少なくとも1つの第2回転体36までの人力駆動力の動力伝達経路に含まれる部材の少なくとも1つに、電気モータ52の回転力を伝達する。
【0036】
本実施形態では、電気モータ52は、例えば、少なくとも1つの第1回転体34を介して伝達体38を駆動するように構成される。電気モータ52は、例えば、フレーム16に設けられ、少なくとも1つの第1回転体34に回転力を伝達するように構成される。電気モータ52は、第2回転体36を介して伝達体38を駆動するように構成されてもよい。電気モータ52は、人力駆動車10のハブに設けられ、第2回転体36に回転力を伝達するように構成されてもよい。
【0037】
ドライブユニット54は、例えば、ハウジング60をさらに含む。ハウジング60は、フレーム16に取り付けられる。ハウジング60は、クランク軸20を回転可能に支持する。電気モータ52は、少なくとも1つの第1回転体34を介さずに、伝達体38に回転力を伝達するように構成されてもよい。電気モータ52が、少なくとも1つの第1回転体34を介さずに、伝達体38に回転力を伝達するように構成される場合、例えば、出力軸58または出力軸58の力が伝達される部材に、伝達体38と係合するスプロケットが設けられる。
【0038】
ドライブユニット54は、例えば、出力部62をさらに含む。出力部62と、クランク軸20とは、例えば、同軸に配置される。出力部62は、例えば、人力駆動力と電気モータ52の出力とが伝達されるように構成される。出力部62は、例えば、クランク軸20の回転力と電気モータ52の出力とが伝達されるように構成される。出力部62は、例えば、筒状に形成される。出力部62は、例えば、クランク軸20の回転中心軸心B1まわりにおいて、クランク軸20の外周部に設けられる。少なくとも1つの第1回転体34は、例えば、出力部62と一体回転するように出力部62の端部62Aに連結される。
【0039】
ドライブユニット54は、例えば、減速機64を含む。減速機64は、例えば、電気モータ52と人力駆動力の動力伝達経路との間に設けられる。減速機64は、例えば、少なくとも1つの減速部分を含む。少なくとも1つの減速部分は、例えば、第1減速部分64Aと、第2減速部分64Bと、第3減速部分64Cとを含む。減速機64は、1つ、2つ、または、4つ以上の減速部分を含んでいてもよい。
【0040】
第1減速部分64Aは、例えば、電気モータ52の回転トルクが伝達される。第1減速部分64Aは、例えば、互いに噛み合う2つの歯車を含む。第1減速部分64Aは、歯車に代えて、ベルトおよびプーリを含んでもよい。第1減速部分64Aは、歯車に代えて、スプロケットおよびチェーンを含んでもよい。
【0041】
第2減速部分64Bは、例えば、第1減速部分64Aを介して電気モータ52の回転トルクが伝達される。第2減速部分64Bは、例えば、互いに噛み合う2つの歯車を含む。第2減速部分64Bは、歯車に代えて、ベルトおよびプーリを含んでもよい。第2減速部分64Bは、歯車に代えて、スプロケットおよびチェーンを含んでもよい。
【0042】
第3減速部分64Cは、例えば、第2減速部分64Bを介して電気モータ52の回転トルクが伝達される。第3減速部分64Cは、例えば、出力部62に電気モータ52の回転トルクを伝達する。第3減速部分64Cは、例えば、互いに噛み合う2つの歯車を含む。第3減速部分64Cは、歯車に代えて、ベルトおよびプーリを含んでもよい。第3減速部分64Cは、歯車に代えて、スプロケットおよびチェーンを含んでもよい。
【0043】
ドライブユニット54は、例えば、第2ワンウェイクラッチ66をさらに含む。第2ワンウェイクラッチ66は、例えば、クランク軸20から少なくとも1つの第1回転体34までの動力伝達経路の間に設けられる。第2ワンウェイクラッチ66は、例えば、クランク軸20と出力部62との間に設けられる。
【0044】
第2ワンウェイクラッチ66は、例えば、クランク軸20が前転する場合に、少なくとも1つの第1回転体34を前転させる。第2ワンウェイクラッチ66は、例えば、クランク軸20が後転する場合に、クランク軸20と少なくとも1つの第1回転体34との相対回転を許容するように構成される。第2ワンウェイクラッチ66は、例えば、ローラクラッチ、スプラグクラッチ、および、ラチェットクラッチの少なくとも1つを含む。
【0045】
ドライブユニット54は、例えば、第3ワンウェイクラッチ68をさらに含む。第3ワンウェイクラッチ68は、例えば、電気モータ52から少なくとも1つの第1回転体34までの動力伝達経路の間に設けられる。第3ワンウェイクラッチ68は、例えば、減速機64に設けられる。
【0046】
第3ワンウェイクラッチ68は、例えば、電気モータ52の回転力を出力部62に伝達するように構成される。第3ワンウェイクラッチ68は、例えば、クランク軸20が前転する場合に、クランク軸20の回転力が電気モータ52に伝達されることを抑制するように構成される。第3ワンウェイクラッチ68は、例えば、ローラクラッチ、スプラグクラッチ、および、ラチェットクラッチの少なくとも1つを含む。
【0047】
電気モータ52の少なくとも一部は、例えば、ハウジング60の内部空間に収容される。ロータ56は、例えば、ハウジング60に回転可能に支持される。ロータ56は、例えば、出力軸58を介して、ハウジング60に回転可能に支持されてもよい。ステータ70は、例えば、ハウジング60に支持される。電気モータ52は、ハウジング60とは別体に形成されるモータハウジングを備え、モータハウジングがハウジング60に取り付けられることによってハウジング60に設けられてもよい。
【0048】
人力駆動車用の電気モータ52のステータ70は、ステータコア72と、複数の絶縁部材74と、コイル76と、を備える。ステータコア72は、ヨーク78、および、ヨーク78から突出する複数のティース80を含む。コイル76は、例えば、少なくとも1つの巻線76Aを含む。巻線76Aは、例えば、複数の絶縁部材74を介して、各ティース80に巻き付けられる。巻線76Aは、例えば、絶縁電線である。電気モータ52は、交流モータを構成する。本実施形態では、電気モータ52は、三相交流モータを構成する。各ティース80に巻き付けられる各巻線76Aは、スター結線(Y結線)、または、デルタ結線(Δ結線)される。三相交流モータにおけるコイル76の結線方法については、公知であるため説明を省略する。
【0049】
ヨーク78は、例えば、筒状に形成される。ロータ56は、例えば、ステータ70の中心軸心A1に関する径方向R1においてヨーク78の内側に配置される。複数のティース80は、例えば、径方向R1において、ヨーク78から突出する。径方向R1は、例えば、中心軸心A1と直交する方向である。
【0050】
ステータコア72は、ステータ70の中心軸心A1に関する周方向X1に並ぶ複数の分割コア82を含む。複数の分割コア82は、例えば、中心軸心A1を中心とする円環状に配置される。複数の分割コア82の数は、例えば、複数のティース80の数に等しい。本実施形態では、複数の分割コア82のそれぞれは、1つのティース80を有する。本実施形態では、複数の分割コア82の数は、12個であり、複数のティース80の数も12個であるので、電気モータ52は、12極の電気モータである。複数の分割コア82は、例えば、磁性を有する金属材料によって形成される。複数の分割コア82のそれぞれは、例えば、中心軸心A1に平行な第1方向Y1に複数の電磁鋼板を積層することによって形成される。
【0051】
複数の分割コア82のそれぞれは、ヨーク78の一部を構成するヨーク部分78Aと、ヨーク部分78Aに設けられる複数のティース80のうちの少なくとも1つと、を含む。複数の分割コア82は、例えば、それぞれのヨーク部分78Aが全体で円環状をなすように、ステータ70の中心軸心A1に関する周方向X1に配置される。ヨーク部分78Aが円環状をなすように配置されることによって、ヨーク78が筒状に形成される。
【0052】
複数の分割コア82のそれぞれは、例えば、複数のティース80のうちの1つを含む。1つの分割コア82は、例えば、ヨーク部分78Aと、1つのティース80と、を含む。ヨーク部分78Aは、例えば、ティース80と一体に形成される。各分割コア82において、ティース80は、例えば、径方向R1の内側に向かって、ヨーク部分78Aから突出する。複数のティース80は、例えば、ヨーク部分78Aの内壁面78Bからステータ70の中心軸心A1に向かって突出する。複数のティース80の径方向R1におけるティース遊端部80Aは、ステータ70の中心軸心A1に関する周方向X1にそれぞれ突出する。複数のティース80の形状については、公知の技術を用いることができる。
【0053】
複数の分割コア82のそれぞれのヨーク部分78Aは、周方向X1において第1コア端面82Aと、周方向X1において第1コア端面82Aとは反対側の第2コア端面82Bと、を含む。第1コア端面82Aおよび第2コア端面82Bは、ステータ70の中心軸心A1と平行に形成される。ヨーク部分78Aのうちの1つの第1コア端面82Aは、例えば、周方向X1において、ヨーク部分78Aのうちの他の1つの第2コア端面82Bと接触する。
【0054】
複数の分割コア82は、例えば、周方向X1において互いに隣り合う第1分割コア84および第2分割コア86を含む。第1分割コア84の第1コア端面82Aは、例えば、第2分割コア86の第2コア端面82Bと接触する。
【0055】
複数の絶縁部材74は、周方向X1に並んで配置される。複数の絶縁部材74は、例えば、複数の分割コア82と、コイル76とを電気的に絶縁する。複数の絶縁部材74は、例えば、樹脂材料を含む。複数の絶縁部材74は、例えば、複数のティース80に取り付けられる。1つのティース80には、例えば、1つの絶縁部材74が取り付けられる。複数の絶縁部材74の数は、例えば、複数の分割コア82の数と等しい。複数の絶縁部材74は、例えば、12個の絶縁部材74を含む。
【0056】
複数の絶縁部材74のそれぞれは、例えば、第1方向Y1において第1端部74Aおよび第2端部74Bを含む。複数の絶縁部材74のそれぞれは、例えば、第1端部74Aを含む第1端部側部分74Cと、第1端部側部分74Cとは別体に形成される第2端部74Bを含む第2端部側部分74Dと、を含む。第1端部側部分74Cのうちの第2端部側部分74D側の端部は、例えば、第2端部側部分74Dのうちの第1端部側部分74Cの端部と対応する形状を有する。第1端部側部分74Cと、第2端部側部分74Dとは、例えば、同一の形状を有する。第1端部側部分74Cと、第2端部側部分74Dとは、互いに異なる形状を含んでもよい。第1端部側部分74Cと、第2端部側部分74Dとは、例えば、第1方向Y1において、互いに反対を向くように配置される。第1端部側部分74Cと第2端部側部分74Dとは、例えば、互いに接触しないように配置される。第1方向Y1における第1端部側部分74Cと第2端部側部分74Dとの隙間は、巻線76Aの直径以下である。第1端部側部分74Cと第2端部側部分74Dとは、少なくとも一部が接触するように配置されてもよい。
【0057】
複数の絶縁部材74は、ヨーク78の一部を覆う第1部分74E、および、複数のティース80の少なくとも一部を覆う第2部分74Fを含む。コイル76は、例えば、第2部分74Fに巻き付けられる。第1部分74Eは、例えば、周方向X1および第1方向Y1に延びる。第2部分74Fは、例えば、第1部分74Eから径方向R1に延びる筒状部74Kと、筒状部74Kの絶縁部材遊端部74Mから周方向X1および第1方向Y1に延びる鍔部74Nと、を有する。鍔部74Nは、複数のティース80の径方向R1におけるティース遊端部80Aを囲むように形成される。鍔部74Nは、筒状部74Kに巻き付けられる巻線76Aの径方向R1の内側への移動を阻止する。筒状部74Kは、例えば、四角筒状に形成される。筒状部74Kの外周面の角部には、筒状部74Kに巻き付けられる巻線76Aのずれを抑制するための少なくとも1つの切り欠き74Pが形成される。少なくとも1つの切り欠き74Pは、筒状部74Kの外周面の角部のそれぞれにおいて、径方向R1に等間隔に形成される。複数の絶縁部材74は、複数のティース80の径方向R1におけるティース遊端面80Bが露出するように各分割コア82に設けられる。
【0058】
第1部分74Eは、例えば、ヨーク部分78Aの内壁面78Bの少なくとも一部を覆う。第2部分74Fは、例えば、複数のティース80の第1方向Y1における両方の端面、および、複数のティース80の周方向X1における両方の端面を覆う。第1端部側部分74Cは、例えば、第1部分74Eの少なくとも一部および第2部分74Fの少なくとも一部を含む。第2端部側部分74Dは、例えば、第1部分74Eの少なくとも一部および第2部分74Fの少なくとも一部を含む。第1端部側部分74Cは、例えば、第1方向Y1における複数のティース80の一方の端面、および、内壁面78Bの少なくとも一部を覆う。第2端部側部分74Dは、例えば、第1方向Y1における複数のティース80の他方の端面、および、内壁面78Bの少なくとも一部を覆う。
【0059】
複数の絶縁部材74のそれぞれは、周方向X1において第1絶縁端面74Gと、周方向X1において第1絶縁端面74Gとは反対側の第2絶縁端面74Hと、を含む。第1絶縁端面74Gは、周方向X1における、第1部分74Eの一方の端部に設けられ、第2絶縁端面74Hは、周方向X1における、第1部分74Eの他方の端部に設けられる。複数の絶縁部材74は、例えば、周方向X1において隣り合う第1絶縁端面74Gおよび第2絶縁端面74Hが、互いに接触しないように配置される。複数の絶縁部材74は、例えば、周方向X1において隣り合う第1絶縁端面74Gおよび第2絶縁端面74Hの少なくとも一部が、互いに接触するように配置されてもよい。
【0060】
第1絶縁端面74Gおよび第2絶縁端面74Hは、ステータ70の中心軸心A1に平行な第1方向Y1とは異なる第2方向Y2に延びる非平行部分88をそれぞれ有する。非平行部分88は、ステータ70の中心軸心A1に関する径方向R1から見て、ステータコア72に重なる。第1絶縁端面74Gに非平行部分88が設けられることによって、第1絶縁端面74Gの少なくとも一部は、第1方向Y1と異なる方向に延びる。非平行部分88は、例えば、第1絶縁端面74Gの少なくとも一部に設けられる。非平行部分88は、第1絶縁端面74Gの全体に設けられてもよく、一部にのみ設けられてもよい。第2絶縁端面74Hに非平行部分88が設けられることによって、第2絶縁端面74Hの少なくとも一部は、第1方向Y1と異なる方向に延びる。非平行部分88は、例えば、第2絶縁端面74Hの少なくとも一部に設けられる。非平行部分88は、第2絶縁端面74Hの全体に設けられてもよく、一部にのみ設けられてもよい。
【0061】
本実施形態では、第1絶縁端面74Gの非平行部分88は、第1絶縁端面74Gの一部に設けられる。第1絶縁端面74Gのうちの非平行部分88とは異なる部分は、第1方向Y1に実質的に平行に延びる。本実施形態では、第2絶縁端面74Hの非平行部分88は、第2絶縁端面74Hの一部に設けられる。第2絶縁端面74Hのうちの非平行部分88とは異なる部分は、第1方向Y1に実質的に平行に延びる。
【0062】
第1絶縁端面74Gの非平行部分88と、第2絶縁端面74Hの非平行部分88とは、例えば、第1方向Y1において実質的に同じ位置に設けられる。第1絶縁端面74Gの非平行部分88と、第2絶縁端面74Hの非平行部分88とは、例えば、対応する形状を有する。
【0063】
第1絶縁端面74Gおよび第2絶縁端面74Hは、例えば、第1端部側部分74Cおよび第2端部側部分74Dのそれぞれに設けられる。非平行部分88は、例えば、第1端部側部分74Cおよび第2端部側部分74Dのそれぞれに設けられる。非平行部分88は、第1端部側部分74Cのみに設けられてもよく、第2端部側部分74Dのみに設けられてもよい。
【0064】
非平行部分88は、例えば、凸部88Aおよび凹部88Bの少なくとも1つによって形成される。凸部88Aが第1絶縁端面74Gに設けられる場合、凸部88Aは、例えば、第1絶縁端面74Gと隣り合う第2絶縁端面74Hに向かって突出する。凸部88Aが第2絶縁端面74Hに設けられる場合、凸部88Aは、例えば、第2絶縁端面74Hと隣り合う第1絶縁端面74Gに向かって突出する。凹部88Bが第1絶縁端面74Gに設けられる場合、凹部88Bは、例えば、第1絶縁端面74Gと隣り合う第2絶縁端面74Hと反対側に向かって凹む。凹部88Bが第2絶縁端面74Hに設けられる場合、凹部88Bは、例えば、第2絶縁端面74Hと隣り合う第1絶縁端面74Gとは反対側に向かって凹む。
【0065】
非平行部分88は、例えば、凸部88Aおよび凹部88Bの両方を含む。例えば、第1絶縁端面74Gおよび第2絶縁端面74Hの一方が凸部88Aを含み、第1絶縁端面74Gおよび第2絶縁端面74Hの他方が凹部88Bを含む。凸部88Aおよび凹部88Bの少なくとも1つは、例えば、第1端部側部分74Cおよび第2端部側部分74Dの少なくとも1つに設けられる。凸部88Aおよび凹部88Bの少なくとも1つは、例えば、第1端部側部分74Cおよび第2端部側部分74Dの両方に設けられる。
【0066】
コイル76の直径を1とした場合における凸部88Aの突出する長さL1は、例えば、0.2以上1未満である。コイル76の直径を1とした場合における凹部88Bの陥没する長さL2は、例えば、0.2以上1未満である。凸部88Aの突出する長さL1は、例えば、凹部88Bの陥没する長さL2と等しい。凸部88Aおよび凹部88Bは、例えば、少なくとも段差部が第2方向Y2に延びる。第1方向Y1における凸部88Aの長さは、例えば、第1方向Y1におけるステータの長さの1/3以上2/3未満である。第1方向Y1における凹部88Bの長さは、例えば、第1方向Y1におけるステータの長さの1/3以上2/3未満である。本実施形態では、第1方向Y1における凸部88Aの長さは、第1方向Y1における凹部88Bの長さに等しい。
【0067】
複数の絶縁部材74は、例えば、第1分割コア84に設けられる第1絶縁部材90と、第2分割コア86に設けられる第2絶縁部材92とを含む。第1分割コア84および第2分割コア86は、例えば、複数の分割コア82のうちの周方向X1において隣り合う任意の2つの分割コア82である。第1絶縁部材90および第2絶縁部材92は、例えば、複数の絶縁部材74のうちの周方向X1において隣り合う任意の2つの絶縁部材74である。第1絶縁部材90の第1絶縁端面74Gと、第2絶縁部材92の第2絶縁端面74Hとは、例えば、相補的な形状を有する。
【0068】
第1絶縁部材90の第1絶縁端面74Gと、第2絶縁部材92の第2絶縁端面74Hとの間には、第1間隙94が形成される。第1間隙94は、例えば、複数の絶縁部材74のうちの第1絶縁部材90、および、第2絶縁部材92以外の絶縁部材74の間にも形成される。第1間隙94は、非平行部分88と対応する部分にも設けられる。第1間隙94の大きさL3は、例えば、第1方向Y1のいずれの部分においても、予め定める範囲内である。コイル76の直径を1とした場合における第1間隙94の大きさL3は、例えば、0以上1未満である。コイル76の直径を1とした場合における第1間隙94の大きさL3は、例えば、0.2以上0.8未満である。第1間隙94の大きさL3は、例えば、巻線76Aの直径以下である。第1間隙94の大きさL3は、例えば、ステータ70を組み立てる場合に、絶縁部材74の寸法公差に適した大きさである。第1間隙94は、凸部88Aおよび凹部88Bの少なくとも1つによって、直線方向に延びない。
【0069】
ステータ70の組立工程は、例えば、第1工程、第2工程、および、第3工程を含む。ステータ70の組立工程は、第1工程、第2工程、および、第3工程の順に行われる。
【0070】
第1工程は、複数の分割コア82のそれぞれに複数の絶縁部材74のうちの1つを取り付ける工程である。複数の絶縁部材74は、例えば、射出成形などの樹脂成形によってあらかじめ形成されている。第1工程において、複数の分割コア82のそれぞれには、例えば、第1方向Y1における複数のティース80の一方の端面を覆うように、第1端部側部分74Cが取り付けられる。第1工程において、複数の分割コア82のそれぞれには、例えば、第1方向Y1における複数のティース80の他方の端面を覆うように、第2絶縁端面74Hが取り付けられる。第1工程が終了した状態において、複数の分割コア82は、ヨーク部分78Aの内壁面78Bの少なくとも一部が第1部分74Eによって覆われ、複数のティース80の少なくとも一部が第2部分74Fによって覆われる。
【0071】
第2工程は、複数のティース80のそれぞれに、巻線76Aを巻き付けることによって、コイル76を形成する工程である。1つのティース80には、1本の巻線76Aが巻き付けられる。各巻線76Aの一方の端部および他方の端部から、2本の口出線が引き出される。第2工程において、巻線76Aは、複数の絶縁部材74の第2部分74Fを介して、巻線機によって複数のティース80に巻き付けられる。巻線機は、例えば、フライヤ式の巻線機である。巻線機は、ノズル式の巻線機であってもよい。
【0072】
第3工程は、複数の分割コア82を、円環状に組み立てる工程である。第3工程では、例えば、12個の分割コア82のそれぞれのヨーク部分78Aが円環状となるように、各分割コア82が周方向X1に配置される。第3工程において、複数のティース80は、例えば、径方向R1に、ヨーク部分78Aの内壁面78Bから突出するように配置される。第3工程において、複数の絶縁部材74も周方向X1に並ぶように配置されるため、複数の絶縁部材74のうちの隣り合う2つの絶縁部材74の間に、第1間隙94が形成される。
【0073】
第1工程において、1つの絶縁部材74の非平行部分88が、周方向X1において隣り合う他の絶縁部材74の非平行部分88と第1方向Y1において接触することによって、1つの絶縁部材74と、周方向X1において隣り合う他の絶縁部材74との第1方向Y1におけるずれが抑制される。
【0074】
第3工程後において、例えば、各ティース80から引き出される2本の口出線は、他の口出線の少なくとも1つと直接またはバスバー等を介して結合される。巻線76Aのうちの口出線と連続する部分は、第2工程を経た後から口出線が結合されるまで、ティース80に対して移動できる。口出線は、例えば、巻線76Aのうちの口出線と連続する部分を適切に伸ばした状態において、他の口出線と結合される。絶縁部材74は、凸部88Aおよび凹部88Bの少なくとも1つを含むため、第3工程および第3工程の後において巻線76Aのうちの口出線と連続する部分が第1間隙94に移動した状態が形成されにくい。したがって、巻線76Aのうちの口出線と連続する部分を適切に伸ばした状態が形成されやすいため、ステータ70の製造効率が向上する。
【0075】
<第2実施形態>
図12および
図13を参照して、第2実施形態の人力駆動車用の電気モータ52のステータ70が説明される。第2実施形態の人力駆動車用の電気モータ52のステータ70のうちの第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同一の符号を付して重複する説明が省略される。
【0076】
第2実施形態の非平行部分88は、第1方向Y1に対して傾斜する傾斜面96を含む。第1方向Y1に対する傾斜面96の角度Dは、例えば、10度以上60度未満である。第1方向Y1に対する傾斜面96の角度Dは、例えば、30度以上60度未満である。第2実施形態の第1端部側部分74Cおよび第2端部側部分74Dは、例えば、同一の形状を含む。第2実施形態において、第2方向Y2は、傾斜面96の傾斜方向と対応する。
【0077】
傾斜面96は、例えば、第1端部側部分74Cのうちの第1絶縁端面74Gに設けられる第1傾斜面96A、および、第1端部側部分74Cのうちの第2絶縁端面74Hに設けられる第2傾斜面96Bを含む。第1傾斜面96Aは、例えば、第2傾斜面96Bと実質的に平行である。第1方向Y1に対する第1傾斜面96Aおよび第2傾斜面96Bのそれぞれの角度D1は、例えば、10度以上60度未満である。第1方向Y1に対する第1傾斜面96Aおよび第2傾斜面96Bのそれぞれの角度D1は、例えば、30度以上60度未満である。
【0078】
傾斜面96は、例えば、第2端部側部分74Dのうちの第1絶縁端面74Gに設けられる第3傾斜面96C、および、第2端部側部分74Dのうちの第2絶縁端面74Hに設けられる第4傾斜面96Dを含む。第3傾斜面96Cは、例えば、第4傾斜面96Dと実質的に平行である。第1方向Y1に対する第3傾斜面96Cおよび第4傾斜面96Dのそれぞれの角度D2は、例えば、10度以上60度未満である。第1方向Y1に対する第3傾斜面96Cおよび第4傾斜面96Dのそれぞれの角度D2は、例えば、30度以上60度未満である。
【0079】
角度D1は、例えば、角度D2と等しい。第1傾斜面96Aおよび第2傾斜面96Bは、例えば、第1方向Y1に対して第3傾斜面96Cおよび第4傾斜面96Dとは反対方向に傾く。したがって、第1間隙94は、直線方向に延びない。
【0080】
第1傾斜面96Aおよび第2傾斜面96Bのそれぞれは、例えば、第1方向Y1において、第1端部側部分74Cのうちの第2端部側部分74D側の端部を含む。第3傾斜面96Cおよび第4傾斜面96Dのそれぞれは、例えば、第1方向Y1において、第2端部側部分74Dのうちの第1端部側部分74C側の端部を含む。第1傾斜面96Aのうちの第2端部側部分74D側の端部の周方向X1における位置は、例えば、第3傾斜面96Cのうちの第1端部側部分74C側の端部の周方向X1における位置とは異なる。第2傾斜面96Bのうちの第2端部側部分74D側の端部の周方向X1における位置は、例えば、第4傾斜面96Dのうちの第1端部側部分74C側の端部の周方向X1における位置とは異なる。
【0081】
第1傾斜面96Aおよび第3傾斜面96Cは、例えば、第1方向Y1に対して第2傾斜面96Bおよび第4傾斜面96Dとは反対方向に傾くため、第3工程および第3工程の後において巻線76Aのうちの口出線と連続する部分が第1間隙94に移動した状態が形成されにくい。したがって、巻線76Aのうちの口出線と連続する部分が適切に伸ばされた状態が形成されやすいため、ステータ70の製造効率が向上する。
【0082】
<変更例>
各実施形態に関する説明は、本開示に従う人力駆動車用の電気モータのステータ、人力駆動車用の電気モータ、および、人力駆動車用のコンポーネントが取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本開示に従う人力駆動車用の電気モータのステータ、人力駆動車用の電気モータ、および、人力駆動車用のコンポーネントは、例えば、以下に示される各実施形態の変更例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変更例が組み合わせられた形態を取り得る。以下の変更例において、各実施形態と共通する部分については、各実施形態と同一の符号を付してその説明が省略される。
【0083】
・第1および第2実施形態において、第1端部側部分74Cの第1絶縁端面74G、第1端部側部分74Cの第2絶縁端面74H、第2端部側部分74Dの第1絶縁端面74G、および、第1端部側部分74Cの第2絶縁端面74Hのうちの1つ、2つ、または、3つは、非平行部分88を含まなくてもよい。第1端部側部分74Cの第1絶縁端面74G、第1端部側部分74Cの第2絶縁端面74H、第2端部側部分74Dの第1絶縁端面74G、および、第1端部側部分74Cの第2絶縁端面74Hのうちの非平行部分88を含まない面は、例えば、第1方向Y1に平行する。
【0084】
・第2実施形態において、第1傾斜面96A、第2傾斜面96B、第3傾斜面96C、および、第4傾斜面96Dの少なくとも1つの傾き方向を変更してもよい。第1傾斜面96Aおよび第2傾斜面96Bの少なくとも1つは、例えば、第1方向Y1に対して第3傾斜面96Cおよび第4傾斜面96Dの少なくとも1つと同じ方向に傾く。第1傾斜面96Aは、例えば、第1方向Y1に対して第2傾斜面96Bと異なる方向に傾く。第3傾斜面96Cは、例えば、第1方向Y1に対して第4傾斜面96Dと異なる方向に傾く。
【0085】
・
図14および
図15に示されるように、非平行部分88は、湾曲部88Cを含んでいてもよい。
図14および
図15において、第2方向Y2は、湾曲部88Cに沿う方向を含む。第1端部側部分74Cの第1絶縁端面74G、第1端部側部分74Cの第2絶縁端面74H、第2端部側部分74Dの第1絶縁端面74G、および、第1端部側部分74Cの第2絶縁端面74Hは、例えば、それぞれ湾曲部88Cを含む。湾曲部88Cは、例えば、波状に形成される。湾曲部88Cは、1つの凸部、または、1つの凹部を含んでもよい。
【0086】
・非平行部分88は、ステータ70の中心軸心A1に平行な第1方向Y1とは異なる第2方向Y2に延びていれば、非平行部分88の形状は適宜変更できる。
【0087】
本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、所望の選択肢の「1つ以上」を意味する。一例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が2つであれば「1つの選択肢のみ」または「2つの選択肢の双方」を意味する。他の例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が3つ以上であれば「1つの選択肢のみ」または「2つ以上の任意の選択肢の組み合わせ」を意味する。
【符号の説明】
【0088】
10…人力駆動車、50…コンポーネント、52…電気モータ、54…ドライブユニット、56…ロータ、70…ステータ、72…ステータコア、74…絶縁部材、74A…第1端部、74B…第2端部、74C…第1端部側部分、74D…第2端部側部分、74E…第1部分、74F…第2部分、74G…第1絶縁端面、74H…第2絶縁端面、76…コイル、78…ヨーク、78A…ヨーク部分、80…ティース、82…分割コア、82A…第1コア端面、82B…第2コア端面、84…第1分割コア、86…第2分割コア、88…非平行部分、88A…凸部、88B…凹部、88C…湾曲部、90…第1絶縁部材、92…第2絶縁部材、94…第1間隙、96…傾斜面。