(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093944
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】ショベル
(51)【国際特許分類】
E02F 9/22 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
E02F9/22 R
E02F9/22 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210605
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】502246528
【氏名又は名称】住友建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】三崎 陽二
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB01
2D003AB02
2D003AB03
2D003AB04
2D003BA01
2D003BA03
2D003BB07
2D003CA02
2D003DA03
2D003DB02
2D003FA02
(57)【要約】
【課題】操作性を向上するショベルを提供する。
【解決手段】下部走行体と、上部旋回体と、アタッチメントと、前記アタッチメントを動作させる油圧アクチュエータと、第1油圧ポンプと、第2油圧ポンプと、前記第2油圧ポンプから前記油圧アクチュエータに供給される作動油の流量を制御する第1方向制御弁と、前記第1油圧ポンプから前記油圧アクチュエータに供給される作動油の流量を制御する第2方向制御弁と、前記第1方向制御弁及び前記第2方向制御弁に供給される2次圧を制御する電磁比例弁と、操作レバーを有する操作装置と、前記操作レバーの操作が入力され、前記電磁比例弁を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記第1方向制御弁を介して供給される作動油と前記第2方向制御弁を介して供給される作動油とが合流して前記油圧アクチュエータに作動油が供給される状態において、前記操作レバーの操作量に対して遅れ処理を行って前記電磁比例弁を制御する、ショベル。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、
上部旋回体と、
アタッチメントと、
前記アタッチメントを動作させる油圧アクチュエータと、
第1油圧ポンプと、
第2油圧ポンプと、
前記第2油圧ポンプから前記油圧アクチュエータに供給される作動油の流量を制御する第1方向制御弁と、
前記第1油圧ポンプから前記油圧アクチュエータに供給される作動油の流量を制御する第2方向制御弁と、
前記第1方向制御弁及び前記第2方向制御弁に供給される2次圧を制御する電磁比例弁と、
操作レバーを有する操作装置と、
前記操作レバーの操作が入力され、前記電磁比例弁を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記第1方向制御弁を介して供給される作動油と前記第2方向制御弁を介して供給される作動油とが合流して前記油圧アクチュエータに作動油が供給される状態において、前記操作レバーの操作量に対して遅れ処理を行って前記電磁比例弁を制御する、
ショベル。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記操作レバーの操作量に基づいて前記第1方向制御弁及び前記第2方向制御弁に供給される2次圧を算出し、
算出した前記2次圧に基づいて、前記遅れ処理を行って前記電磁比例弁を制御する、
請求項1に記載のショベル。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記第1方向制御弁を介して供給される作動油と前記第2方向制御弁を介して供給される作動油とが合流して前記油圧アクチュエータに作動油が供給される前に前記遅れ処理開始する、
請求項2に記載のショベル。
【請求項4】
前記制御装置は、
算出した前記2次圧が第1基準値以上の場合、前記遅れ処理を行って前記電磁比例弁を制御する、
請求項2に記載のショベル。
【請求項5】
前記第1基準値は、
前記第1方向制御弁を介して供給される作動油と前記第2方向制御弁を介して供給される作動油とが合流して前記油圧アクチュエータに作動油が供給される直前または合流時の2次圧である、
請求項4に記載のショベル。
【請求項6】
前記遅れ処理は、一次遅れ処理である、
請求項1に記載のショベル。
【請求項7】
前記第1方向制御弁と前記第2方向制御弁とは、互いに特性が異なり、
前記第1方向制御弁が前記第2方向制御弁よりも先に開口する、
請求項1に記載のショベル。
【請求項8】
前記制御装置は、
前記操作レバーの操作量の変化量が第2基準値以上の場合、前記遅れ処理を行わずに前記操作レバーの操作量に対して前記電磁比例弁を制御する、
請求項1に記載のショベル。
【請求項9】
前記制御装置は、
前記油圧アクチュエータの負荷圧に基づいて、前記第1基準値を決定する、
請求項4に記載のショベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショベルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、2系統の油圧ポンプと、2系統の高圧油圧ラインと、高圧油圧ラインのそれぞれに設けられた方向制御弁及びネガコン絞りと、ブームシリンダと、を備え、2系統の油圧ポンプから供給された作動油が合流してブームシリンダに供給されるショベルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、2系統の油圧ポンプから供給された作動油が合流する際、油圧アクチュエータに供給される作動油の流量が増加及び減少を伴って変動することにより、油圧アクチュエータの動作速度が加速及び減速を伴って変動する。これにより、ショベルに不快な振動が発生するおそれがある。
【0005】
そこで、上記課題に鑑み、操作性を向上するショベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、本発明の実施例に係るショベルは、下部走行体と、上部旋回体と、アタッチメントと、前記アタッチメントを動作させる油圧アクチュエータと、第1油圧ポンプと、第2油圧ポンプと、前記第2油圧ポンプから前記油圧アクチュエータに供給される作動油の流量を制御する第1方向制御弁と、前記第1油圧ポンプから前記油圧アクチュエータに供給される作動油の流量を制御する第2方向制御弁と、前記第1方向制御弁及び前記第2方向制御弁に供給される2次圧を制御する電磁比例弁と、操作レバーを有する操作装置と、前記操作レバーの操作が入力され、前記電磁比例弁を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記第1方向制御弁を介して供給される作動油と前記第2方向制御弁を介して供給される作動油とが合流して前記油圧アクチュエータに作動油が供給される状態において、前記操作レバーの操作量に対して遅れ処理を行って前記電磁比例弁を制御する。
【発明の効果】
【0007】
上述の実施形態によれば、操作性を向上するショベルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】ショベルに搭載される油圧システムの構成例を示す図である。
【
図3】ブームシリンダの操作に関する油圧システム部分を抜き出した図である。
【
図5】メインポンプの圧力、流量及びトルクの関係を示すグラフの一例である。
【
図6】コントローラによる比例弁の制御の一例を示すフローチャートである。
【
図7】レバー操作に対する2次圧の変化の一例を示すグラフである。
【
図8】メインポンプの圧力、流量及びトルクの関係を示すグラフの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
最初に、
図1を参照して、本発明の実施形態に係る掘削機としてのショベル100について説明する。
図1は、ショベル100の側面図である。
【0010】
本実施形態では、ショベル100の下部走行体1はクローラを含む。クローラは、下部走行体1に搭載されている走行アクチュエータとしての走行油圧モータ2Mによって駆動される。具体的には、クローラは左クローラ及び右クローラを含む。左クローラは左走行油圧モータ2MLによって駆動され、右クローラは右走行油圧モータ2MRによって駆動される。
【0011】
下部走行体1には旋回機構2を介して上部旋回体3が旋回可能に搭載されている。旋回機構2は、上部旋回体3に搭載されている旋回アクチュエータとしての旋回油圧モータ2Aによって駆動される。但し、旋回アクチュエータは、電動アクチュエータとしての旋回電動発電機であってもよい。
【0012】
上部旋回体3にはブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端にはアーム5が取り付けられ、アーム5の先端にはエンドアタッチメントとしてのバケット6が取り付けられている。ブーム4、アーム5及びバケット6は、アタッチメントの一例であるアタッチメントATを構成する。ブーム4はブームシリンダ7で駆動され、アーム5はアームシリンダ8で駆動され、バケット6はバケットシリンダ9で駆動される。ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9は、アタッチメントアクチュエータを構成している。
図1に示す例では、バケット6は、掘削バケットであるが、スケルトンバケット又は(除礫バケット)であってもよい。また、バケット6は、バケットチルト機構を備えていてもよい。
【0013】
上部旋回体3には、運転室としてのキャビン10が設けられ、且つ、エンジン11等の動力源が搭載されている。キャビン10の内部には、操作装置26及びコントローラ30等が設けられている。また、上部旋回体3には、空間認識装置70等が取り付けられている。なお、本書では、便宜上、上部旋回体3における、アタッチメントATが取り付けられている側を前方とし、カウンタウェイトが取り付けられている側を後方とする。
【0014】
空間認識装置70は、ショベル100の周囲の三次元空間に存在する物体を認識するように構成されている。また、空間認識装置70は、空間認識装置70又はショベル100から認識された物体までの距離を算出するように構成されていてもよい。空間認識装置70は、例えば、超音波センサ、ミリ波レーダ、撮像装置、LIDAR、距離画像センサ、赤外線センサ等、又はそれらの任意の組み合わせを含む。撮像装置は、例えば、単眼カメラ又はステレオカメラ等である。本実施形態では、空間認識装置70は、キャビン10の上面前端に取り付けられた前方センサ70F、上部旋回体3の上面後端に取り付けられた後方センサ70B、上部旋回体3の上面左端に取り付けられた左方センサ70L、及び、上部旋回体3の上面右端に取り付けられた右方センサ(不図示)を含む。上部旋回体3の上方の空間に存在する物体を認識する上方センサがショベル100に取り付けられていてもよい。
【0015】
操作装置26は、操作者がアクチュエータの操作のために用いる装置である。操作装置26は、例えば、操作レバー及び操作ペダルを含む。アクチュエータは、油圧アクチュエータ及び電動アクチュエータの少なくとも1つを含む。
【0016】
コントローラ30は、ショベル100を制御するための制御装置である。本実施形態では、コントローラ30は、CPU、揮発性記憶装置、及び不揮発性記憶装置等を備えたコンピュータで構成されている。そして、コントローラ30は、各機能に対応するプログラムを不揮発性記憶装置から読み出して揮発性記憶装置にロードし、対応する処理をCPUに実行させる。各機能は、例えば、操作者によるショベル100の手動操作をガイド(案内)するマシンガイダンス機能、及び、操作者によるショベル100の手動操作を支援したり或いはショベル100を自動的或いは自律的に動作させたりするマシンコントロール機能を含む。コントローラ30は、ショベル100の周囲の監視範囲内に存在する物体とショベル100との接触を回避するためにショベル100を自動的或いは自律的に動作させたり或いは停止させたりする接触回避機能を含んでいてもよい。ショベル100の周囲の物体の監視は、監視範囲内だけでなく監視範囲外に対しても実行される。
【0017】
次に、
図2を参照し、ショベル100に搭載される油圧システムの構成例について説明する。
図2は、ショベル100に搭載される油圧システムの構成例を示す図である。
図2は、機械的動力伝達系、作動油ライン、パイロットライン及び電気制御系を、それぞれ、二重線、実線、破線及び点線で示している。
【0018】
ショベル100の油圧システムは、主に、エンジン11、レギュレータ13、メインポンプ14、パイロットポンプ15、コントロールバルブユニット17、操作装置26、吐出圧センサ28、操作センサ29、及びコントローラ30等を含む。
【0019】
図2において、油圧システムは、エンジン11によって駆動されるメインポンプ14から、センターバイパス管路40又はパラレル管路42を経て作動油タンクまで作動油を循環させることができるように構成されている。
【0020】
エンジン11は、ショベル100の駆動源である。本実施形態では、エンジン11は、例えば、所定の回転数を維持するように動作するディーゼルエンジンである。エンジン11の出力軸は、メインポンプ14及びパイロットポンプ15のそれぞれの入力軸に連結されている。
【0021】
メインポンプ14は、作動油ラインを介して作動油をコントロールバルブユニット17に供給できるように構成されている。本実施形態では、メインポンプ14は、斜板式可変容量型油圧ポンプである。
【0022】
レギュレータ13は、メインポンプ14の吐出量を制御できるように構成されている。本実施形態では、レギュレータ13は、コントローラ30からの制御指令に応じてメインポンプ14の斜板傾転角を調節することによってメインポンプ14の吐出量を制御する。
【0023】
パイロットポンプ15は、パイロット圧生成装置の一例であり、パイロットラインを介して油圧制御機器に作動油を供給できるように構成されている。本実施形態では、パイロットポンプ15は、固定容量型油圧ポンプである。但し、パイロット圧生成装置は、メインポンプ14によって実現されてもよい。すなわち、メインポンプ14は、作動油ラインを介して作動油をコントロールバルブユニット17に供給する機能に加え、パイロットラインを介して各種油圧制御機器に作動油を供給する機能を備えていてもよい。この場合、パイロットポンプ15は、省略されてもよい。
【0024】
コントロールバルブユニット17は、ショベル100における油圧システムを制御する油圧制御装置である。本実施形態では、コントロールバルブユニット17は、制御弁171~176を含む。制御弁175は制御弁(第2方向制御弁)175L及び制御弁(第1方向制御弁)175Rを含み、制御弁176は制御弁176L及び制御弁176Rを含む。コントロールバルブユニット17は、制御弁171~176を通じ、メインポンプ14が吐出する作動油を1又は複数の油圧アクチュエータに選択的に供給できるように構成されている。制御弁171~176は、例えば、メインポンプ14から油圧アクチュエータに流れる作動油の流量、及び、油圧アクチュエータから作動油タンクに流れる作動油の流量を制御する。油圧アクチュエータは、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、左走行油圧モータ2ML、右走行油圧モータ2MR及び旋回油圧モータ2Aを含む。
【0025】
操作装置26は、操作者がアクチュエータを操作できるように構成されている。本実施形態では、操作装置26は、操作者が油圧アクチュエータを操作できるように構成された油圧アクチュエータ操作装置を含む。具体的には、油圧アクチュエータ操作装置は、パイロットラインを介して、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、コントローラ30によって制御される比例弁31を介してコントロールバルブユニット17内の対応する制御弁171~176のパイロットポートに供給できるように構成されている。パイロットポートのそれぞれに供給される作動油の圧力(パイロット圧)は、油圧アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26の操作方向及び操作量に応じた圧力である。
【0026】
吐出圧センサ28は、メインポンプ14の吐出圧を検出できるように構成されている。本実施形態では、吐出圧センサ28は、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0027】
操作センサ29は、操作者による操作装置26の操作の内容を検出できるように構成されている。本実施形態では、操作センサ29は、アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26の操作方向及び操作量を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0028】
メインポンプ14は、左メインポンプ14L及び右メインポンプ14Rを含む。そして、左メインポンプ14Lは、左センターバイパス管路40L又は左パラレル管路42Lを経て作動油タンクまで作動油を循環させ、右メインポンプ14Rは、右センターバイパス管路40R又は右パラレル管路42Rを経て作動油タンクまで作動油を循環させる。
【0029】
左センターバイパス管路40Lは、コントロールバルブユニット17内に配置された制御弁171、173、175L及び176Lを通る作動油ラインである。右センターバイパス管路40Rは、コントロールバルブユニット17内に配置された制御弁172、174、175R及び176Rを通る作動油ラインである。
【0030】
制御弁171は、左メインポンプ14Lが吐出する作動油を左走行油圧モータ2MLへ供給し、且つ、左走行油圧モータ2MLが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0031】
制御弁172は、右メインポンプ14Rが吐出する作動油を右走行油圧モータ2MRへ供給し、且つ、右走行油圧モータ2MRが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0032】
制御弁173は、左メインポンプ14Lが吐出する作動油を旋回油圧モータ2Aへ供給し、且つ、旋回油圧モータ2Aが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0033】
制御弁174は、右メインポンプ14Rが吐出する作動油をバケットシリンダ9へ供給し、且つ、バケットシリンダ9内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0034】
制御弁175Lは、左メインポンプ14Lが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。制御弁175Rは、右メインポンプ14Rが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給し、且つ、ブームシリンダ7内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0035】
制御弁176Lは、左メインポンプ14Lが吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、且つ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0036】
制御弁176Rは、右メインポンプ14Rが吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、且つ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0037】
左パラレル管路42Lは、左センターバイパス管路40Lに並行する作動油ラインである。左パラレル管路42Lは、制御弁171、173、及び175Lの何れかによって左センターバイパス管路40Lを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。右パラレル管路42Rは、右センターバイパス管路40Rに並行する作動油ラインである。右パラレル管路42Rは、制御弁172、174、及び175Rの何れかによって右センターバイパス管路40Rを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。
【0038】
レギュレータ13は、左レギュレータ13L及び右レギュレータ13Rを含む。左レギュレータ13Lは、左メインポンプ14Lの吐出圧に応じて左メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節することによって、左メインポンプ14Lの吐出量を制御する。具体的には、左レギュレータ13Lは、例えば、左メインポンプ14Lの吐出圧の増大に応じて左メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節して吐出量を減少させる。右レギュレータ13Rについても同様である。吐出圧と吐出量との積で表されるメインポンプ14の吸収パワー(油圧(ポンプ)馬力)がエンジン11の出力パワー(エンジン馬力)を超えないようにするためである。
【0039】
操作装置26は、左操作レバー26L、右操作レバー26R及び走行レバー26Dを含む。走行レバー26Dは、左走行レバー26DL及び右走行レバー26DRを含む。
【0040】
左操作レバー26Lは、旋回操作とアーム5の操作に用いられる。左操作レバー26Lは、前後方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁176のパイロットポートに導入させる。また、左右方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁173のパイロットポートに導入させる。
【0041】
具体的には、左操作レバー26Lは、アーム閉じ方向に操作された場合に、制御弁176Lの右側パイロットポートに作動油を導入させ、且つ、制御弁176Rの左側パイロットポートに作動油を導入させる。また、左操作レバー26Lは、アーム開き方向に操作された場合には、制御弁176Lの左側パイロットポートに作動油を導入させ、且つ、制御弁176Rの右側パイロットポートに作動油を導入させる。また、左操作レバー26Lは、左旋回方向に操作された場合に、制御弁173の左側パイロットポートに作動油を導入させ、右旋回方向に操作された場合に、制御弁173の右側パイロットポートに作動油を導入させる。
【0042】
図2に示す例では、左操作レバー26Lは、前後方向に操作されたときにアーム操作レバーとして機能し、左右方向に操作されたときに旋回操作レバーとして機能する。
【0043】
右操作レバー26Rは、ブーム4の操作とバケット6の操作に用いられる。右操作レバー26Rは、前後方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁175のパイロットポートに導入させる。また、左右方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁174のパイロットポートに導入させる。
【0044】
具体的には、右操作レバー26Rは、ブーム下げ方向に操作された場合に、制御弁175Rの左側パイロットポートに作動油を導入させる。また、右操作レバー26Rは、ブーム上げ方向に操作された場合には、制御弁175Lの右側パイロットポートに作動油を導入させ、且つ、制御弁175Rの左側パイロットポートに作動油を導入させる。また、右操作レバー26Rは、バケット閉じ方向に操作された場合に、制御弁174の右側パイロットポートに作動油を導入させ、バケット開き方向に操作された場合に、制御弁174の左側パイロットポートに作動油を導入させる。
【0045】
図2に示す例では、右操作レバー26Rは、前後方向に操作されたときにブーム操作レバーとして機能し、左右方向に操作されたときにバケット操作レバーとして機能する。
【0046】
走行レバー26Dは、クローラの操作に用いられる。具体的には、左走行レバー26DLは、左クローラの操作に用いられる。左走行ペダルと連動するように構成されていてもよい。左走行レバー26DLは、前後方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁171のパイロットポートに導入させる。右走行レバー26DRは、右クローラの操作に用いられる。右走行ペダルと連動するように構成されていてもよい。右走行レバー26DRは、前後方向に操作されると、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁172のパイロットポートに導入させる。
【0047】
吐出圧センサ28は、吐出圧センサ28L及び吐出圧センサ28Rを含む。吐出圧センサ28Lは、左メインポンプ14Lの吐出圧を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。吐出圧センサ28Rについても同様である。
【0048】
操作センサ29は、操作センサ29LA、29LB、29RA、29RB、29DL、29DRを含む。操作センサ29LAは、操作者による左操作レバー26Lに対する前後方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作の内容は、例えば、レバー操作方向、レバー操作量(レバー操作角度)等である。
【0049】
同様に、操作センサ29LBは、操作者による左操作レバー26Lに対する左右方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作センサ29RAは、操作者による右操作レバー26Rに対する前後方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作センサ29RBは、操作者による右操作レバー26Rに対する左右方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作センサ29DLは、操作者による左走行レバー26DLに対する前後方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作センサ29DRは、操作者による右走行レバー26DRに対する前後方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0050】
コントローラ30は、操作センサ29の出力を受信し、必要に応じてレギュレータ13に対して制御指令を出力し、メインポンプ14の吐出量を変化させる。また、コントローラ30は、絞り18の上流に設けられた制御圧センサ19の出力を受信し、必要に応じてレギュレータ13に対して制御指令を出力し、メインポンプ14の吐出量を変化させる。絞り18は左絞り18L及び右絞り18Rを含み、制御圧センサ19は左制御圧センサ19L及び右制御圧センサ19Rを含む。
【0051】
左センターバイパス管路40Lには、最も下流にある制御弁176Lと作動油タンクとの間に左絞り18Lが配置されている。そのため、左メインポンプ14Lが吐出した作動油の流れは、左絞り18Lで制限される。そして、左絞り18Lは、左レギュレータ13Lを制御するための制御圧を発生させる。左制御圧センサ19Lは、この制御圧を検出するためのセンサであり、検出した値をコントローラ30に対して出力する。コントローラ30は、この制御圧に応じて左メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節することによって、左メインポンプ14Lの吐出量を制御する。コントローラ30は、この制御圧が大きいほど左メインポンプ14Lの吐出量を減少させ、この制御圧が小さいほど左メインポンプ14Lの吐出量を増大させる。右メインポンプ14Rの吐出量も同様に制御される。
【0052】
具体的には、
図2で示されるようにショベル100における油圧アクチュエータが何れも操作されていない待機状態の場合、左メインポンプ14Lが吐出する作動油は、左センターバイパス管路40Lを通って左絞り18Lに至る。そして、左メインポンプ14Lが吐出する作動油の流れは、左絞り18Lの上流で発生する制御圧を増大させる。その結果、コントローラ30は、左メインポンプ14Lの吐出量を許容最小吐出量まで減少させ、吐出した作動油が左センターバイパス管路40Lを通過する際の圧力損失(ポンピングロス)を抑制する。一方、何れかの油圧アクチュエータが操作された場合、左メインポンプ14Lが吐出する作動油は、操作対象の油圧アクチュエータに対応する制御弁を介して、操作対象の油圧アクチュエータに流れ込む。そして、左メインポンプ14Lが吐出する作動油の流れは、左絞り18Lに至る量を減少或いは消失させ、左絞り18Lの上流で発生する制御圧を低下させる。その結果、コントローラ30は、左メインポンプ14Lの吐出量を増大させ、操作対象の油圧アクチュエータに十分な作動油を循環させ、操作対象の油圧アクチュエータの駆動を確かなものとする。なお、コントローラ30は、右メインポンプ14Rの吐出量も同様に制御する。
【0053】
上述のような構成により、
図2の油圧システムは、待機状態においては、メインポンプ14における無駄なエネルギ消費を抑制できる。無駄なエネルギ消費は、メインポンプ14が吐出する作動油がセンターバイパス管路40で発生させるポンピングロスを含む。また、
図2の油圧システムは、油圧アクチュエータを作動させる場合には、メインポンプ14から必要十分な作動油を作動対象の油圧アクチュエータに確実に供給できる。
【0054】
即ち、コントローラ30は、吐出圧と吐出量との積で表されるメインポンプ14の吸収パワー(油圧(ポンプ)馬力)がエンジン11の出力パワー(エンジン馬力)を超えないように算出された第1の吐出量と、制御圧センサ19で検出された制御圧に基づいて算出された第2の吐出量と、のうち、小さい方の吐出量となるようにレギュレータ13を制御する。
【0055】
また、ブームシリンダ7にはブームロッド圧センサS7R及びブームボトム圧センサS7Bが取り付けられている。アームシリンダ8にはアームロッド圧センサS8R及びアームボトム圧センサS8Bが取り付けられている。バケットシリンダ9にはバケットロッド圧センサS9R及びバケットボトム圧センサS9Bが取り付けられている。ブームロッド圧センサS7R、ブームボトム圧センサS7B、アームロッド圧センサS8R、アームボトム圧センサS8B、バケットロッド圧センサS9R及びバケットボトム圧センサS9Bは、集合的に「シリンダ圧センサ」とも称される。また、旋回油圧モータ2Aには左旋回圧センサS10L及び右旋回圧センサS10Rが取り付けられている。
【0056】
ブームロッド圧センサS7Rはブームシリンダ7のロッド側油室の圧力(以下、「ブームロッド圧」とする。)を検出し、ブームボトム圧センサS7Bはブームシリンダ7のボトム側油室の圧力(以下、「ブームボトム圧」とする。)を検出する。アームロッド圧センサS8Rはアームシリンダ8のロッド側油室の圧力(以下、「アームロッド圧」とする。)を検出し、アームボトム圧センサS8Bはアームシリンダ8のボトム側油室の圧力(以下、「アームボトム圧」とする。)を検出する。バケットロッド圧センサS9Rはバケットシリンダ9のロッド側油室の圧力(以下、「バケットロッド圧」とする。)を検出し、バケットボトム圧センサS9Bはバケットシリンダ9のボトム側油室の圧力(以下、「バケットボトム圧」とする。)を検出する。左旋回圧センサS10Lは、旋回油圧モータ2Aの左側ポートにおける作動油の圧力を検出する。右旋回圧センサS10Rは、旋回油圧モータ2Aの右側ポートにおける作動油の圧力を検出する。各センサで検出された値は、コントローラ30に送信される。
【0057】
次に、
図3を参照し、コントローラ30がマシンコントロール機能によってアクチュエータを動作させるための構成について説明する。
図3は、油圧システムの一部を抜き出した図である。具体的には、
図3は、ブームシリンダ7の操作に関する油圧システム部分を抜き出した図である。
【0058】
図3に示すように、油圧システムは、比例弁31を含む。比例弁31は、比例弁31BL及び31BRを含む。
【0059】
比例弁31は、マシンコントロール用制御弁として機能する。比例弁31は、パイロットポンプ15とコントロールバルブユニット17内の対応する制御弁のパイロットポートとを接続する管路に配置され、その管路の流路面積を変更できるように構成されている。本実施形態では、比例弁31は、コントローラ30が出力する制御指令に応じて動作する。そのため、コントローラ30は、操作者による操作装置26の操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31を介し、コントロールバルブユニット17内の対応する制御弁のパイロットポートに供給できる。そして、コントローラ30は、比例弁31が生成するパイロット圧を、対応する制御弁のパイロットポートに作用させることができる。
【0060】
この構成により、コントローラ30は、特定の操作装置26に対する操作が行われていない場合であっても、その特定の操作装置26に対応する油圧アクチュエータを動作させることができる。また、コントローラ30は、特定の操作装置26に対する操作が行われている場合であっても、その特定の操作装置26に対応する油圧アクチュエータの動作を強制的に停止させることができる。
【0061】
例えば、
図3に示すように、右操作レバー26Rは、ブーム4を操作するために用いられる。具体的には、右操作レバー26Rは、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、前後方向への操作に応じたパイロット圧を制御弁175のパイロットポートに作用させる。より具体的には、右操作レバー26Rは、ブーム上げ方向(後方向)に操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧を制御弁175Rの左側パイロットポートに作用させる。また、右操作レバー26Rは、ブーム下げ方向(前方向)に操作された場合には、操作量に応じたパイロット圧を制御弁175Rの右側パイロットポートに作用させる。
【0062】
操作センサ29RAは、操作者による右操作レバー26Rに対する前後方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0063】
比例弁31BLは、コントローラ30が出力する制御指令(電流指令)に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から比例弁31BLを介して制御弁175Rの左側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調整する。比例弁31BRは、コントローラ30が出力する制御指令(電流指令)に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から比例弁31BRを介して制御弁175Rの右側パイロットポートに導入される作動油によるパイロット圧を調整する。比例弁31BLは、制御弁175Rを任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調整可能である。また、比例弁31BRは、制御弁175Rを任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調整可能である。
【0064】
また、比例弁31BLと制御弁175の一方のポート(制御弁175Rの左側ポート)とを接続するパイロットラインには、パイロット圧を検出するパイロット圧センサ32BLが設けられている。また、比例弁31BRと制御弁175の他方のポート(制御弁175Rの右側ポート)とを接続するパイロットラインには、パイロット圧を検出するパイロット圧センサ32BRが設けられている。各パイロット圧センサ32BL,32BRで検出された値は、コントローラ30に送信される。
【0065】
この構成により、コントローラ30は、操作者によるブーム上げ操作に応じ、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31BLを介し、制御弁175Rの左側パイロットポートに供給できる。また、コントローラ30は、操作者によるブーム上げ操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31BLを介し、制御弁175Rの左側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、操作者によるブーム上げ操作に応じ、或いは、操作者によるブーム上げ操作とは無関係に、ブーム4を上げることができる。
【0066】
また、コントローラ30は、操作者によるブーム下げ操作に応じ、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31BRを介し、制御弁175Rの右側パイロットポートに供給できる。また、コントローラ30は、操作者によるブーム下げ操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31BRを介し、制御弁175Rの右側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、操作者によるブーム下げ操作に応じ、或いは、操作者によるブーム下げ操作とは無関係に、ブーム4を下げることができる。
【0067】
なお、
図3においては、コントローラ30は、比例弁31BL,31BRを制御し、制御弁175Rにパイロット圧を供給する構成について説明した。同様に、コントローラ30は、比例弁(図示せず)を制御し、制御弁175Lにパイロット圧を供給する。
【0068】
また、この構成により、コントローラ30は、操作者によるブーム上げ操作が行われている場合であっても、必要に応じて、制御弁175のブーム上げ側のパイロットポート(制御弁176Rの左側パイロットポート及び制御弁175Lの右側パイロットポート)に作用するパイロット圧を減圧し、ブーム4の上げ動作を強制的に停止させることができる。操作者によるブーム下げ操作が行われているときにブーム4の下げ動作を強制的に停止させる場合についても同様である。
【0069】
また、詳細な説明を省略するが、操作者によるアーム開き操作又はアーム閉じ操作が行われている場合にアーム5の動作を強制的に停止させる場合、操作者によるバケット閉じ操作又はバケット開き操作が行われている場合にバケット6の動作を強制的に停止させる場合、及び、操作者による旋回操作が行われている場合に上部旋回体3の旋回動作を強制的に停止させる場合についても同様である。また、操作者による走行操作が行われている場合に下部走行体1の走行動作を強制的に停止させる場合についても同様である。
【0070】
ショベル100は、下部走行体1を自動的に前進・後進させる構成を備えていてもよい。この場合、左走行油圧モータ2MLの操作に関する油圧システム部分、及び、右走行油圧モータ2MRの操作に関する油圧システム部分は、ブームシリンダ7の操作に関する油圧システム部分等と同じように構成されてもよい。
【0071】
また、操作装置26の形態として電気式操作レバーに関する説明を記載したが、電気式操作レバーではなく油圧式操作レバーが採用されてもよい。この場合、油圧式操作レバーのレバー操作量は、圧力センサによって圧力の形で検出されてコントローラ30へ入力されてもよい。また、油圧式操作レバーとしての操作装置26と各制御弁のパイロットポートとの間には電磁弁が配置されてもよい。電磁弁は、コントローラ30からの電気信号に応じて動作するように構成される。この構成により、油圧式操作レバーとしての操作装置26を用いた手動操作が行われると、操作装置26は、レバー操作量に応じてパイロット圧を増減させることで各制御弁を移動させることができる。また、各制御弁は電磁スプール弁で構成されていてもよい。この場合、電磁スプール弁は、電気式操作レバーのレバー操作量に対応するコントローラ30からの電気信号に応じて動作する。
【0072】
次に、オペレータが操作装置26の右操作レバー26Rを操作することにより、ブームシリンダ7を動作させる場合を例に説明する。オペレータが操作装置26の右操作レバー26Rを操作すると、操作センサ29RAで右操作レバー26Rの操作が検出され、検出された右操作レバー26Rの操作がコントローラ30に入力される。コントローラ30は、右操作レバー26Rの操作量に応じた制御弁175の2次圧(パイロット圧)となるように、比例弁31の電流値(電流指令、制御指令)を制御して出力する。これにより、制御弁175のパイロットポートに2次圧が作用して、制御弁175のスプールが移動することにより、制御弁175のPT開口(メインポンプ14から作動油タンクへの油路の開口)、PC開口(メインポンプ14からブームシリンダ7への油路の開口)、CT開口(ブームシリンダ7から作動油タンクへの油路の開口)の開口面積が制御される。
【0073】
ここで、ブームシリンダ7を動作させるために右操作レバー26Rを中立位置から傾倒方向に操作すると、制御弁175のPT開口の開口面積が減少し、メインポンプ14のポンプ圧(吐出圧センサ28の圧力)が上昇する。更に、右操作レバー26Rを操作すると、制御弁175のPT開口の開口面積が更に減少し、制御弁175のPC開口及びCT開口の開口面積が増加する。
【0074】
ポンプ圧が負荷圧よりも高圧になると、ロードチェック弁を押し開き、メインポンプ14から制御弁175のPC開口を通過して、ブームシリンダ7一方の室(例えば、ボトム側油室)に作動油が供給される。同時に、制御圧センサ19で検出される制御圧(ネガコン圧ともいう。)が低下することにより、レギュレータ13はメインポンプ14の吐出量を増加するように制御する。そして、負荷圧がブームシリンダ7に作用することによってブームシリンダ7が作動し、ブームシリンダ7他方の室(例えば、ロッド側油室)から流出した作動油は、制御弁175のCT開口を通過して、作動油タンクへ戻る。
【0075】
ここで、ブームシリンダ7に供給される作動油を制御する制御弁175(175R,175L)について、
図4を用いて説明する。
図4は、制御弁175の特性の一例を示すグラフである。
【0076】
図4(a)は、制御弁175Rの開口特性及び圧力特性を示すグラフである。
図4(a)において、横軸は、スプールストロークを示す。縦軸は、開口面積または圧力を示す。具体的には、グラフ中の破線で示すPTは、PT開口の開口面積を示す。グラフ中の一点鎖線で示すPCは、PC開口の開口面積を示す。グラフ中の二点鎖線で示すCTは、CT開口の開口面積を示す。また、グラフ中の実線で示す圧力特性は、右メインポンプ14Rから供給される作動油の圧力を示す。
【0077】
図4(a)に示すように、制御弁175Rは、スプールストロークが増加すると、PT開口の開口面積が減少するとともに、PC開口の開口面積及びCT開口の開口面積が増加する特性を有している。また、PT開口の開口面積が減少すると、右メインポンプ14Rのポンプ圧が上昇して負荷圧以上になり、作動油が制御弁175RのPC開口を通ってアクチュエータ(ブームシリンダ7)に流れた場合、絞り18に流れる流量が減少し、制御圧センサ19Rで検出される制御圧(ネガコン圧)が減少する。これにより、制御圧(ネガコン圧)で制御される右メインポンプ14Rの圧力特性は、スプールストロークが増加すると、右メインポンプ14Rから吐出される作動油の圧力(吐出圧センサ28Rで検出される圧力)が増加する。
【0078】
なお、圧力特性は、作動油の圧力がリリーフ弁(図示せず)のリリーフ圧に達すると、リリーフ弁が開くことで、作動油の圧力が一定となる。また、
図4(a)及び後述する
図4(b)に示す圧力特性は、アクチュエータ(ブームシリンダ7)が停止している時の圧力特性を示す。アクチュエータに作動油が供給されアクチュエータが動作すると、作動油の圧力は、
図4(a)及び後述する
図4(b)に示す圧力特性以下の圧力となる。即ち、アクチュエータの停止時において作動油の圧力が最大圧力となり、
図4(a)及び後述する
図4(b)に示す圧力特性はアクチュエータ停止時の取りうる最大圧力を示す。
【0079】
図4(b)は、制御弁175Lの開口特性及び圧力特性を示すグラフである。
図4(b)において、横軸は、スプールストロークを示す。縦軸は、開口面積または圧力を示す。具体的には、グラフ中の破線で示すPTは、PT開口の開口面積を示す。グラフ中の一点鎖線で示すPCは、PC開口の開口面積を示す。また、グラフ中の実線で示す圧力特性は、左メインポンプ14Lから供給される作動油の圧力を示す。
【0080】
図4(b)に示すように、制御弁175Lは、スプールストロークが増加すると、PT開口の開口面積が減少するとともに、PC開口の開口面積が増加する特性を有している。また、PT開口の開口面積が減少すると、左メインポンプ14Lのポンプ圧が上昇して負荷圧以上になり、作動油が制御弁175LのPC開口を通ってアクチュエータ(ブームシリンダ7)に流れた場合、絞り18に流れる流量が減少し、制御圧センサ19Lで検出される制御圧(ネガコン圧)が減少する。これにより、制御圧(ネガコン圧)で制御される左メインポンプ14Lの圧力特性は、スプールストロークが増加すると、左メインポンプ14Lから吐出される作動油の圧力(吐出圧センサ28Lで検出される圧力)が増加しやすくなる。換言すれば、制御圧(ネガコン圧)で制御される左メインポンプ14Lの圧力特性は、スプールストロークが増加すると、左メインポンプ14Lから吐出される作動油の圧力(吐出圧センサ28Lで検出される圧力)が増加する可能性が高くなる。さらに換言すれば、制御圧(ネガコン圧)で制御される左メインポンプ14Lの圧力特性は、スプールストロークが増加すると、左メインポンプ14Lから吐出される作動油の圧力(吐出圧センサ28Lで検出される圧力)の取りうる最大圧力が上昇する。なお、アクチュエータ(ブームシリンダ7)の動作時における作動油の圧力は、アクチュエータの負荷に依存する。
【0081】
また、制御弁175Lの開口特性は、制御弁173を介して旋回油圧モータ2Aに供給される作動油、制御弁176Lを介してアームシリンダ8に供給される作動油に与える影響を抑制するように、制御弁175Rの開口特性とは異なる特性を有している。
【0082】
また、
図4(a)及び
図4(b)にブーム負荷圧の一例を示す。ここで、制御弁175RのPT開口の開口面積と制御弁175LのPT開口の開口面積とが等しければ、制御弁175Rの圧力特性と制御弁175Lの圧力特性とが等しくなる。また、制御弁175Rと制御弁175Lで特性が異なることにより、ブーム負荷圧とポンプ圧(圧力特性)が等しくなるスプールストロークが異なる。換言すれば、スプールストロークに対する圧力特性は、制御弁175Rと制御弁175Lとで異なっている。具体的には、
図4(a)及び
図4(b)に示す例において、ロードチェック弁が開くスプールストロークは、制御弁175Rの方が制御弁175Lよりも短い。即ち、ブームシリンダ7には、右メインポンプ14Rから吐出された作動油が先に供給され、左メインポンプ14Lから吐出された作動油が後から合流する。
【0083】
図4(c)は、制御弁175R及び制御弁175Lのスプールストローク特性を示すグラフである。横軸は、2次圧を示す。縦軸は、スプールストロークを示す。制御弁175R及び制御弁175Lは、例えばスプールを中立位置に付勢するばねのばね定数が異なっている。これにより、制御弁175R及び制御弁175Lへの2次圧に対して、スプールストロークが異なる。
【0084】
また、
図4(c)において、2次圧の圧力411は、後述するステップS105の閾値(第1基準値)の圧力の一例を示す。また、2次圧の圧力412は、左メインポンプ14Lから制御弁175Lを介してブームシリンダ7に作動油が供給される圧力を示す。ここで、2次圧の圧力411は、2次圧の圧力412よりも小さな値に設定される。即ち、左メインポンプ14Lから制御弁175Lを介してブームシリンダ7に作動油が供給されるよりも前に、2次圧の圧力411に達する。
【0085】
即ち、2次圧に対して、制御弁175Rのスプールは、制御弁175Lのスプールよりも先に動作を開始する。また、制御弁175Lのスプールは、制御弁175Rよりも狭い2次圧の範囲でフルストロークまで変化する。即ち、制御弁175Lのスプールストロークの傾きは、制御弁175Rのスプールストロークの傾きよりも大きくなっている。
【0086】
オペレータがブーム上げ操作(右操作レバー26Rを後方向に傾倒)すると、制御弁175(175R,175L)のパイロットポートに2次圧が作用する。
図2(c)に示すように、まず、右メインポンプ14R側の制御弁175Rのスプールが駆動する。右メインポンプ14Rのポンプ圧が負荷圧よりも高圧になると、制御弁175Rの側のロードチェック弁を押し開き、右メインポンプ14Rから制御弁175Rを介してブームシリンダ7に作動油が供給される。
【0087】
そして、オペレータが更に操作(右操作レバー26Rを後方向に更に傾倒)すると、制御弁175(175R,175L)のパイロットポートに作用する2次圧が増加し、
図2(c)に示すように、左メインポンプ14L側の制御弁175Lのスプールも駆動する。左メインポンプ14Lのポンプ圧が負荷圧よりも高圧になると、制御弁175Lの側のロードチェック弁を押し開き、左メインポンプ14Lから制御弁175Lを介してブームシリンダ7に作動油が供給される。これにより、右メインポンプ14Rから制御弁175Rを介して供給された作動油と、左メインポンプ14Lから制御弁175Lを介して供給された作動油と、が合流して、ブームシリンダ7に作動油が供給される。ここで、右メインポンプ14R及び左メインポンプ14Lの吐出量は、油圧(ポンプ)馬力がエンジン馬力を超えないようにする馬力制御によって制御される。
【0088】
図5は、メインポンプ14の圧力、流量及びトルクの関係を示すグラフの一例である。なお、
図5(及び後述する
図8)の説明において、左メインポンプ14Lを第1油圧ポンプP1とも称し、右メインポンプ14Rを第2油圧ポンプP2とも称する。横軸は、第1油圧ポンプP1(左メインポンプ14L)から供給される作動油の圧力と、第2油圧ポンプP2(右メインポンプ14R)から供給される作動油の圧力と、とを合計した圧力である。即ち、ブームシリンダ7に供給される作動油の圧力を示す。縦軸の一方は圧力を示し、縦軸の他方はトルクを示す。
【0089】
破線で示すグラフは、第1油圧ポンプP1(左メインポンプ14L)及び第2油圧ポンプP2(右メインポンプ14R)のそれぞれから供給可能な作動油の流量を示す。一点鎖線で示すグラフは、メインポンプ14の圧力及び流量の積であるメインポンプ14のトルクを示す。
【0090】
低圧力の領域においては、レギュレータ13によって制御されるメインポンプ14の斜板傾転角が最大傾転となり、メインポンプ14の流量が一定となる。このため、破線で示す供給可能な作動油の流量は一定であり、一点鎖線で示すトルクは圧力の増加に伴って増加する。
【0091】
一方、高圧力の領域においては、油圧(ポンプ)馬力がエンジン馬力を超えないようにする馬力制御によって流量が制御される。このため、一点鎖線で示すトルクは一定に制御され、破線で示す供給可能な作動油の流量は圧力の増加に伴って減少する。
【0092】
状態501は、馬力制御において、第2油圧ポンプP2(右メインポンプ14R)のみからブームシリンダ7に作動油が供給される状態を示す。
【0093】
状態502は、馬力制御において、第2油圧ポンプP2(右メインポンプ14R)から供給される作動油と第1油圧ポンプP1(左メインポンプ14L)から供給される作動油とが合流してブームシリンダ7に作動油が供給される状態を示す。
【0094】
なお、馬力制御において、状態501において第2油圧ポンプP2(右メインポンプ14R)のみからブームシリンダ7に供給される作動油の流量と、状態502において第2油圧ポンプP2(右メインポンプ14R)及び第1油圧ポンプP1(左メインポンプ14L)からブームシリンダ7に供給される作動油の流量の合計と、は等しい。また、馬力制御において、第2油圧ポンプP2(右メインポンプ14R)から供給される作動油の流量と、第1油圧ポンプP1(左メインポンプ14L)から供給される作動油の流量と、は等しい。
【0095】
左メインポンプ14Lのポンプ圧が負荷圧よりも高圧になり制御弁175Lの側のロードチェック弁が開くことで状態501から状態502に移行する場合、メインポンプ14(14R,14L)の流量がコントローラ30によって馬力制御される。ここで、メインポンプ14(14R,14L)は、流量制御の応答性が低い。また、エンジン11の回転数が低下することを防止するために、メインポンプ14(14R,14L)のトルク制御は迅速に行うことが求められる。このため、
図5の実線で示す軌跡510に示すように、メインポンプ14(14R,14L)の流量が変動する。即ち、状態502の圧力よりも高い圧力まで上昇し、状態502の流量よりも低い流量まで減少した後、状態502の圧力及び流量に制御される。このように、メインポンプ14(14R,14L)の流量が減少と増加を伴い、メインポンプ14(14R,14L)の圧力が増加と減少を伴うことにより、ブーム4の動作速度が加速及び減速を伴って変動する。これにより、ショベル100に不快な振動が発生するおそれがある。
【0096】
次に、本実施形態に係るコントローラ30による比例弁31の制御について、
図6を用いて説明する。
図6は、コントローラ30による比例弁31の制御の一例を示すフローチャートである。
【0097】
ステップS101において、コントローラ30は、操作レバーの操作量を検出する。ここでは、コントローラ30は、オペレータによって操作された右操作レバー26Rの操作量を操作センサ29RAで検出する。
【0098】
ステップS102において、コントローラ30は、操作レバーの操作量の変化量を算出する。ここでは、コントローラ30は、操作量の変化量として、操作速度(単位時間当たりの操作量の変化量)を算出する。また、操作量の変化量として、操作加速度(単位時間当たりの操作速度の変化量)を算出してもよい。
【0099】
ステップS103において、コントローラ30は、ステップS102で算出した操作量の変化量は、閾値(第2基準値)以内であるか否かを判定する。ここで、閾値(第2基準値)は、後述する遅れ処理(S106参照)をキャンセルするか否かを判定するための閾値である。ステップS102で算出した操作量の変化量が閾値以内である場合(S103・YES)、コントローラ30の制御はステップS104に進む。ステップS102で算出した操作量の変化量が閾値以内でない場合(S103・NO)、コントローラ30の制御はステップS107に進む。
【0100】
ステップS104において、コントローラ30は、ステップS101で検出した操作量に基づいて、比例弁31を制御した場合に制御弁175のパイロットポートに作用する2次圧を算出する。ここでは、コントローラ30は、ステップS101で検出した操作量と、コントローラ30に設定された操作量と比例弁31への電流値(電流指令、制御指令)との特性と、比例弁31の電流値(電流指令、制御指令)と2次圧の特性と、に基づいて、2次圧を算出する。
【0101】
ステップS105において、コントローラ30は、ステップS104で算出した2次圧は、閾値(第1基準値)以上であるか否かを判定する。ここで、閾値(第1基準値)は、後述する遅れ処理(S106参照)をキャンセルするか否かを判定するための閾値である。
図4(c)において、閾値(第1基準値)の一例として2次圧の圧力411を示す。ステップS104で算出した2次圧が閾値以上である場合(S105・YES)、コントローラ30の制御はステップS106に進む。ステップS104で算出した2次圧が閾値以上でない場合(S105・NO)、コントローラ30の制御はステップS107に進む。
【0102】
ここで、制御弁175Rの作動油と制御弁175Lの作動油とが合流してブームシリンダ7に供給される際の制御弁175のスプールストロークは、負荷圧によって変動するものの、所定の範囲が限定されている。ステップS105における2次圧の閾値(第1基準値、
図4(c)における2次圧の圧力411)は、制御弁175Rの作動油と制御弁175Lの作動油とが合流してブームシリンダ7に供給される2次圧(
図4(c)における2次圧の圧力412)よりも前の2次圧で設定される。
【0103】
ステップS106において、コントローラ30は、操作センサ29RAで検出した操作量に対して、遅れ処理を行って比例弁31の電流値(電流指令、制御指令)を制御する。即ち、コントローラ30は、ブーム上げ動作時において、ステップS101で検出した操作量と、コントローラ30に設定された操作量と比例弁31への電流値(電流指令、制御指令)との特性と、に基づいて算出された比例弁31への電流値の増加量よりも小さな電流値の増加量の電流値を比例弁31へ出力する。なお、操作量に対する遅れ処理は、例えば一次遅れ処理であってもよい。なお、遅れ処理は、一次遅れ処理に限られるものではない。例えば、2次圧の増加速度に制限を設ける処理(制御)であってもよい。また、二次遅れ等であってもよい。
【0104】
ステップS107において、コントローラ30は、操作センサ29RAで検出した操作量に基づいて、比例弁31の電流値(電流指令、制御指令)を制御する。換言すれば、ステップS106に示す操作量に対する遅れ処理をキャンセルして、比例弁31の電流値(電流指令、制御指令)を制御する。
【0105】
図7は、レバー操作に対する2次圧の変化の一例を示すグラフである。
図7(a)において、参考例における2次圧701を実線で示す。参考例では、ステップS106に示す遅れ処理を行わずに、操作センサ29RAで検出した操作量に基づいて、比例弁31の電流値(電流指令、制御指令)を制御する。これに対し、本制御における2次圧702を破線で示す。
【0106】
また、
図7(a)において、2次圧の圧力711は、ステップS105の閾値(第1基準値)の圧力の一例を示し、
図4(c)の2次圧の圧力411に相当する。また、
図7(a)において、2次圧の圧力712は、左メインポンプ14Lから制御弁175Lを介してブームシリンダ7に作動油が供給される圧力、換言すれば、制御弁175Lの作動油と制御弁175Rの作動油とが合流してブームシリンダ7に供給開始される圧力を示し、
図4(c)の2次圧の圧力412に相当する。
【0107】
本制御では、2次圧が閾値(第1基準値)よりも小さい領域においては、操作センサ29RAで検出した操作量に基づいて、比例弁31の電流値を制御する(S107参照)。即ち、実線で示す参考例の2次圧701と破線で示す本制御の2次圧702とは、一致している。なお、この領域では、制御弁175Rの作動油のみがブームシリンダ7に供給される状態である。
【0108】
2次圧が閾値(第1基準値)よりも大きい領域においては、遅れ処理を行って比例弁31の電流値を制御する(S106参照)。これにより、
図7に示すように、本制御の2次圧702は、参考例の2次圧701に遅れて緩やかに上昇する。そして、遅れ処理を開始した後に更に右操作レバー26Rを操作して左メインポンプ14Lのポンプ圧が負荷圧よりも高圧になり制御弁175Lの側のロードチェック弁が開くことで制御弁175Lの作動油が制御弁175Rの作動油に合流してブームシリンダ7に供給される。即ち、制御弁175Lの作動油が制御弁175Rの作動油に合流してブームシリンダ7に供給される状態において、遅れ処理を行って比例弁31の電流値が制御される。
【0109】
本制御によれば、作動油が合流する際には2次圧の上昇の傾きが緩やかになるように制御されている。これにより、第1油圧ポンプP1の圧力上昇が緩和される。また、ポンプ流量の変化が少なくなり、ブーム4の動作速度の変動が緩和される。これにより、ショベル100の振動を低減することができる。
【0110】
また、
図7(b)において、右操作レバー26Rを急速に操作した場合(S102・NO)における2次圧の変化を実線721で示す。また、
図7(b)において、2次圧の圧力711は、ステップS105の閾値(第1基準値)の圧力の一例を示し、
図4(c)の2次圧の圧力411に相当する。この場合、遅れ処理(S106参照)をキャンセルすることにより、速やかにブームシリンダ7を動作させることができる。即ち、急速に右操作レバー26Rを操作して操作量の変化量が閾値(第2基準値)以上である場合(S103・NO)、2次圧がステップS105の閾値(
図7(b)において2次圧の圧力711)を超えている場合であっても、遅れ処理(S106参照)をキャンセルすることにより、速やかにブームシリンダ7を動作させることができる。
【0111】
図8は、メインポンプ14の圧力、流量及びトルクの関係を示すグラフの一例である。なお、
図8の説明において、左メインポンプ14Lを第1油圧ポンプP1とも称し、右メインポンプ14Rを第2油圧ポンプP2とも称する。横軸は、第1油圧ポンプP1(左メインポンプ14L)から供給される作動油の圧力と、第2油圧ポンプP2(右メインポンプ14R)から供給される作動油の圧力と、とを合計した圧力である。即ち、ブームシリンダ7に供給される作動油の圧力を示す。縦軸の一方は圧力を示し、縦軸の他方はトルクを示す。
【0112】
破線で示すグラフは、第1油圧ポンプP1(左メインポンプ14L)及び第2油圧ポンプP2(右メインポンプ14R)のそれぞれから供給可能な作動油の流量を示す。一点鎖線で示すグラフは、メインポンプ14の圧力及び流量の積であるメインポンプ14のトルクを示す。
【0113】
状態501は、馬力制御において、第2油圧ポンプP2(右メインポンプ14R)のみからブームシリンダ7に作動油が供給される状態を示す。
【0114】
状態502は、馬力制御において、第2油圧ポンプP2(右メインポンプ14R)から供給される作動油と第1油圧ポンプP1(左メインポンプ14L)から供給される作動油とが合流してブームシリンダ7に作動油が供給される状態を示す。
【0115】
左メインポンプ14Lのポンプ圧が負荷圧よりも高圧になり制御弁175Lの側のロードチェック弁が開くことで状態501から状態502に移行する場合、メインポンプ14(14R,14L)の流量がコントローラ30によって馬力制御される。前述した様に、メインポンプ14(14R,14L)は、流量制御の応答性が低い。また、エンジン11の回転数が低下することを防止するために、メインポンプ14(14R,14L)のトルク制御は迅速に行うことが求められる。
【0116】
これに対し、
図7(a)に示す本制御における2次圧702(破線)で示すように、2次圧の上昇の傾きが緩やかになるように抑制される。これにより、
図8の実線で示す軌跡520に示すように、メインポンプ14(14R,14L)の流量が変動する。
【0117】
ここで、
図7(a)に示す参考例における2次圧701(実線)の制御において、2次圧の上昇の傾きに対してメインポンプ14(14R,14L)の流量制御の応答性が遅れる。このため、
図5のメインポンプ14(14R,14L)の流量の軌跡510に示すように、状態501から状態502に移行する間に、メインポンプ14(14R,14L)の圧力の増加及び減少を伴い、メインポンプ14(14R,14L)の流量の減少及び増加を伴う。よって、圧力及び流量の変動は双方向となる。この圧力及び流量の増加及び減少の両方を伴う変動によって、ブーム4の動作速度が加速及び減速を伴って変動する。これにより、ショベル100に不快な振動が発生するおそれがある。
【0118】
これに対し、
図7(b)に示す本制御における2次圧702(破線)の制御において、2次圧の上昇の傾きが緩やかになるように抑制されることにより、メインポンプ14(14R,14L)の流量制御の応答性の範囲内に収めることができる。このため、
図8のメインポンプ14(14R,14L)の流量の軌跡520に示すように、状態501から状態502に移行する間に、メインポンプ14(14R,14L)の圧力は減少を伴うことなく単調に増加し、メインポンプ14(14R,14L)の流量は増加を伴うことなく単調に減少する。よって、圧力及び流量の変動は一方向となる。また、ブーム4の動作速度が加減速を伴って変動することを抑制する。これにより、ショベル100に不快な振動が発生することを抑制する。
【0119】
なお、本実施形態に係るコントローラ30による比例弁31の制御は、ブームシリンダ7を制御する制御弁175の比例弁31を例に説明したが、これに限られるものではない。例えば、アームシリンダ8を制御する制御弁176の比例弁の制御に適用してもよい。
【0120】
なお、本実施形態に係る比例弁31の制御において、ステップS105における閾値(第1基準値)は、固定値であるものとして説明したがこれに限られるものではない。コントローラ30は、ブームロッド圧センサS7R及び/又はブームボトム圧センサS7Bを用いてブームシリンダ7の負荷圧を検出し、検出した負荷圧に基づいて閾値(第1基準値)を変更してもよい。これにより、制御弁175Rの作動油と制御弁175Lの作動油とが合流してブームシリンダ7に供給されるタイミングを好適に算出することができ、合流するタイミングの直前又は合流するタイミングと同時に遅れ処理(S106)を開始することができる。
【0121】
また、比例弁31(31BR,31BL)は、制御弁175R,175Lの2次圧を制御するものとして説明した。即ち、比例弁31の遅れ処理による制御によって、制御弁175Rの2次圧及び制御弁175Lの2次圧の両方を緩やかに上昇させるものとして説明した。本実施形態に係るショベル100の構成は、これに限られるものではない。制御弁175Rの2次圧を制御する比例弁31(31BR,31BL)とは別に、制御弁175Lの2次圧を制御する比例弁(図示せず)を設けることにより、制御弁175Rの2次圧と制御弁175Lの2次圧を個別に制御可能な構成であってもよい。この構成の場合、制御弁175Rの比例弁31及び制御弁175Lの比例弁(図示せず)の両方において、遅れ処理を行ってもよい。また、制御弁175Lの比例弁(図示せず)にのみ、遅れ処理を行ってもよい。
【0122】
また、
図6に示す遅れ処理を含む比例弁31の制御と、遅れ処理を含まない比例弁31の制御と、を切り替える切替スイッチを備える構成であってもよい。これにより、オペレータはショベル100の振動を抑制する制御と、遅れ処理をキャンセルしてブーム4の動作速度を優先する制御と、を切り替えることができる。
【0123】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0124】
1 下部走行体
2 旋回機構
3 上部旋回体
4 ブーム
5 アーム
6 バケット
7 ブームシリンダ
8 アームシリンダ(油圧アクチュエータ)
9 バケットシリンダ(油圧アクチュエータ)
13 レギュレータ
14 メインポンプ(油圧ポンプ)
14L,P1 左メインポンプ(第1油圧ポンプ)
14R,P2 右メインポンプ(第2油圧ポンプ)
15 パイロットポンプ
17 コントロールバルブユニット
18 絞り
19 制御圧センサ
171~176 制御弁
175R 制御弁(第1方向制御弁)
175L 制御弁(第2方向制御弁)
30 コントローラ(制御装置)
26 操作装置
26R 右操作レバー
26L 左操作レバー
31 比例弁(電磁比例弁)
100 ショベル