(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093952
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/00 20060101AFI20240702BHJP
B60C 5/00 20060101ALI20240702BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20240702BHJP
B60C 11/13 20060101ALI20240702BHJP
B60C 11/12 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B60C11/00 C
B60C5/00 H
B60C11/03 B
B60C11/00 F
B60C11/00 D
B60C11/03 100C
B60C11/13 B
B60C11/12 A
B60C11/12 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210620
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 恭介
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BA05
3D131BA20
3D131BB01
3D131BC12
3D131BC31
3D131BC34
3D131CB06
3D131EA05U
3D131EA10V
3D131EA10X
3D131EB05U
3D131EB23V
3D131EB23X
3D131EB92V
3D131EB92W
3D131EB92X
(57)【要約】
【課題】高速耐久性と制動性能とを両立することができる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】本実施形態の空気入りタイヤは、正規リム組み内圧未充填状態のタイヤ幅方向断面において、外側ショルダー陸36oのタイヤ軸方向中央でのゴム厚みTsoが、内側ショルダー陸36iのタイヤ軸方向中央でのゴム厚みTsiより大きく、外側中間陸38oのタイヤ軸方向中央でのゴム厚みTmoが、内側中間陸38iのタイヤ軸方向中央でのゴム厚みTmiより大きく、車両内側領域Riのトレッドゴム22iの損失係数tanδが、車両外側領域Roのトレッドゴム22oの損失係数tanδより大きい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッドゴムにタイヤ周方向に延びる4本以上の主溝が形成されたトレッドを備え、車両に対する装着の向きが指定された空気入りタイヤであって、
前記トレッドゴムが、
最も車両外側に設けられた外側ショルダー主溝と車両外側の接地端とで区画された外側ショルダー陸と、最も車両内側に設けられた内側ショルダー主溝と車両内側の接地端とで区画された内側ショルダー陸と、前記外側ショルダー主溝とタイヤ軸方向内側に隣接する主溝とで区画された外側中間陸と、前記内側ショルダー主溝とタイヤ軸方向内側に隣接する主溝とで区画された内側中間陸と、を備えた、空気入りタイヤにおいて、
正規リム組み内圧未充填状態のタイヤ幅方向断面において、
前記外側ショルダー陸のタイヤ軸方向中央でのゴム厚みが、前記内側ショルダー陸のタイヤ軸方向中央でのゴム厚みより大きく、
前記外側中間陸のタイヤ軸方向中央でのゴム厚みが、前記内側中間陸のタイヤ軸方向中央でのゴム厚みより大きく、
タイヤ赤道面よりも車両内側に存在する車両内側領域の前記トレッドゴムの損失係数tanδが、タイヤ赤道面よりも車両外側に存在する車両外側領域の前記トレッドゴムの損失係数tanδより大きい、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記車両内側領域に設けられた前記主溝の溝幅が、前記車両外側領域に設けられた前記主溝の溝幅より大きい、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記トレッドゴムは、前記車両内側領域に設けられた内側サイプと、前記車両外側領域に設けられた外側サイプと、を備え、
前記内側サイプのサイプ幅は前記外側サイプのサイプ幅より広い、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記外側ショルダー主溝の溝幅は、前記外側ショルダー主溝とタイヤ軸方向内側に隣接する主溝の溝幅より狭い、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤにおいては、高速耐久性とともに制動性能に優れることが要求されている。
【0003】
特許文献1では、高速耐久性及び制動性能の両立を図るため、トレッドを車両装着時に内側となる車両内側領域、中央領域および車両装着時に外側となる車両外側領域とにおよそ3等分に区分し、トレッドゴムの、タイヤ幅方向の300%引っ張りモジュラス(A)に対するタイヤ周方向の300%引っ張りモジュラス(B)の比率(B/A)をモジュラス比としたときに、車両外側領域のモジュラス比がトレッド中央領域および車両内側領域のモジュラス比より小さくなるようにトレッドゴムを配向することが開示されている。
【0004】
高速耐久性を高めるためにはトレッドゴムに低発熱性のゴムを用いてエネルギーロスを小さくすることが好ましい。一方、制動性能を高めるためにはトレッドゴムに高発熱性のゴムを用いてエネルギーロスを大きくすることが好ましい。高速耐久性と制動性能は、トレッドゴムの配合において背反するゴム物性を要求するため、両立することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、高速耐久性と制動性能とを両立することができる空気入りタイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態の空気入りタイヤは、トレッドゴムにタイヤ周方向に延びる4本以上の主溝が形成されたトレッドを備え、車両に対する装着の向きが指定された空気入りタイヤであって、前記トレッドゴムが、最も車両外側に設けられた外側ショルダー主溝と車両外側の接地端とで区画された外側ショルダー陸と、最も車両内側に設けられた内側ショルダー主溝と車両内側の接地端とで区画された内側ショルダー陸と、前記外側ショルダー主溝とタイヤ軸方向内側に隣接する主溝とで区画された外側中間陸と、前記内側ショルダー主溝とタイヤ軸方向内側に隣接する主溝とで区画された内側中間陸と、を備えた、空気入りタイヤにおいて、正規リム組み内圧未充填状態のタイヤ幅方向断面において、前記外側ショルダー陸のタイヤ軸方向中央でのゴム厚みが、前記内側ショルダー陸のタイヤ軸方向中央でのゴム厚みより大きく、前記外側中間陸のタイヤ軸方向中央でのゴム厚みが、前記内側中間陸のタイヤ軸方向中央でのゴム厚みより大きく、タイヤ赤道面よりも車両内側に存在する車両内側領域の前記トレッドゴムの損失係数tanδが、タイヤ赤道面よりも車両外側に存在する車両外側領域の前記トレッドゴムの損失係数tanδより大きいものである。
【発明の効果】
【0008】
上記の空気入りタイヤでは、トレッドゴムのゴム厚みと損失係数tanδを上記のように設定することにより、高速耐久性と制動性能とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る空気入りタイヤの断面図
【
図2】
図1の空気入りタイヤのトレッドパターンを示す展開図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態の空気入りタイヤについて図面を参照して説明する。
【0011】
本明細書において、接地状態とは、空気入りタイヤを正規リムにリム組みし、正規内圧を充填した状態で平坦な路面に垂直に置き、正規荷重を加えた状態のことである。接地端Ei、Eoとは、接地状態において、路面に接地するトレッド面のタイヤ軸方向端のことである。また、サイプとは、接地状態において接地面への開口が閉じる溝のことであり、例えば、幅が2mm未満の狭い溝のことを意味する。周方向に延びる主溝及びスリットは、サイプより幅が広く、接地状態において接地面への開口が閉じない溝のことであり、例えば、幅が2mm以上の溝のことを意味する。
【0012】
正規リムとは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムである。例えば、正規リムとは、JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、又はETRTO規格における「Measuring Rim」のことである。
【0013】
正規内圧とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧である。例えば、正規内圧とは、JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、又はETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」のことである。ただし空気入りタイヤが乗用車用である場合は、正規内圧は180kPaである。
【0014】
正規荷重とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重である。例えば、正規荷重とは、JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、又はETRTO規格における「LOAD CAPACITY」のことである。ただし空気入りタイヤが乗用車用である場合は、正規荷重は、内圧180kPaの対応荷重の85%である。
【0015】
また、図中、符号CLは、タイヤ軸方向中心に相当するタイヤ赤道面を示す。符号WDは、タイヤ軸方向(タイヤ幅方向とも称される)を示す。タイヤ軸方向内側とはタイヤ赤道面CLに近づく方向をいい、タイヤ軸方向外側とはタイヤ赤道面CLから離れる方向をいう。符号CDはタイヤ回転軸を中心とした円周上の方向であるタイヤ周方向を示す。また、タイヤ径方向内側とはタイヤ回転軸に近づく方向であり、タイヤ径方向外側とはタイヤ回転軸から離れる方向である。
【0016】
図1に示す一実施形態に係る空気入りタイヤは、左右一対のビード10と、ビード10からタイヤ径方向外方に延びる左右一対のサイドウォール12と、サイドウォール12のタイヤ径方向外方端同士を繋いで接地面を構成するトレッド14とを備える。
【0017】
この空気入りタイヤは、車両への装着の向きが指定されたタイヤである。すなわち、車両に装着する際の車両内側に装着される面と車両外側に装着される面とが予め定められている。なお、
図1及び
図2では、タイヤ赤道面CLの右側が車両装着姿勢において車両外側に配置され、タイヤ赤道面CLの左側が車両装着姿勢において車両内側に配置される。
【0018】
一対のビード10には、それぞれリング状のビードコア16が埋設されている。ビードコア16のタイヤ径方向外側には、タイヤ径方向外側に向かって先細り状をなす硬質ゴム製のビードフィラー18が設けられている。
【0019】
空気入りタイヤは、一対のビード10間に跨がってトロイダル状に延びるカーカス層20を備える。カーカス層20は、トレッド14から両側のサイドウォール12を経てビード10に至り、ビード10においてビードコア16の周りにタイヤ幅方向内側から外側に折り返されることにより、カーカス層20の両端部が係止されている。カーカス層20は、有機繊維コードからなるカーカスコードをタイヤ周方向CDに対して実質上直角になるように配列しゴムで被覆してなる少なくとも1枚のカーカスプライからなり、この例では2枚のカーカスプライで構成されている。
【0020】
トレッド14は、タイヤ軸方向WDにおいて、車両内側に位置する車両内側領域Riと車両外側に位置する車両外側領域Roとに区分される。車両内側領域Riは、タイヤ赤道面CLを中心にして接地面14aをタイヤ幅方向に2分割したときに、車両内側に配置される領域をいう。車両外側領域Roは、タイヤ赤道面CLを中心にして接地面14aをタイヤ幅方向に2分割したときに、車両外側に配置される領域をいう。
【0021】
トレッド14の車両内側領域Riには地面と接するトレッドゴム22iが設けられ、トレッド14の車両外側領域Roには地面と接するトレッドゴム22oが設けられている。
【0022】
トレッドゴム22oとトレッドゴム22iは、損失係数tanδの異なるゴム組成物で形成されている。具体的には、車両内側領域Riのトレッドゴム22iの損失係数tanδが、車両外側領域Roのトレッドゴム22oの損失係数tanδより大きい。つまり、車両内側領域Riのトレッドゴム22iは車両外側領域Roのトレッドゴム22oより高発熱性のゴムから構成されている。一例を挙げると、トレッドゴム22iの損失係数tanδは、例えば、0.30~0.34であってもよい。トレッドゴム22oの損失係数tanδは、例えば、0.21~0.24であってもよい。
【0023】
なお、トレッドゴム22i,22oの損失係数tanδは、JIS K6394-2007に準拠して、株式会社東洋精機製作所製の粘弾性試験機を用い、静歪み10%、動歪み±2%、周波数50Hz、温度60℃の条件下で測定したときの値である。
【0024】
なお、この例では、
図1に示すように、車両外側領域Roのトレッドゴム22oと車両内側領域Riのトレッドゴム22iとの境界面は、ベルト24に近づくほど車両内側へ向かうようにタイヤ径方向に対して傾斜して設けられている。このようにトレッドゴム22iとトレッドゴム22oとの境界面がタイヤ赤道面CLの両側にわたって設けられてもよい。
【0025】
また、特に図示しないが、トレッドゴム22i,22oのタイヤ径方向内側にトレッドゴム22i,22oと異なる種類のゴム組成物からなるベースゴムを、タイヤ軸方向WDの略全体にわたって設けてもよい。
【0026】
トレッド14におけるカーカス層20の外周側には、カーカス層20とトレッドゴム22i,22oとの間にベルト24が設けられている。ベルト24は、ベルトコードをタイヤ周方向CDに対して10°~35°の傾斜角度で配列した、少なくとも2枚の交差ベルトプライからなる。この例では、ベルト24は、タイヤ径方向内側に配された第1ベルトプライ26と、その外周側に配された第2ベルトプライ28との2層構造である。このうち第1ベルトプライ26が最も幅の広い最大幅ベルトプライであり、そのタイヤ幅方向外端がベルト24のタイヤ幅方向端であるベルト端に相当する。
【0027】
本実施形態では、ベルト24のタイヤ径方向外側、すなわち、ベルト24とトレッドゴム22i,22oとの間にベルト補強層30が設けられている。ベルト補強層30は、タイヤ周方向CDに対して実質的に平行に延びるコードを有するキャッププライにより構成されている。
【0028】
図2に示されるように、トレッド14の表面を構成するトレッドゴム22i,22oには、タイヤ周方向CDに延びる4本以上(本実施形態では、4本)の主溝32i,32o,34i,34oが、タイヤ軸方向WDに間隔をあけて設けられている。
【0029】
具体的には、車両内側のトレッドゴム22iには、トレッド14に設けられた主溝のうちで最も車両内側に内側ショルダー主溝32iが設けられ、内側ショルダー主溝32iとタイヤ赤道面CLとの間に内側センター主溝34iが設けられている。また、車両外側のトレッドゴム22oには、トレッド14に設けられた主溝のうちで最も車両外側に外側ショルダー主溝32oが設けられ、外側ショルダー主溝32oとタイヤ赤道面CLとの間に外側センター主溝34oが設けられている。
【0030】
上記4本の周方向の主溝32i,32o,34i,34oによって、トレッドゴム22iには、内側ショルダー主溝32iと車両内側の接地端Eiとの間に位置する内側ショルダー陸36iと、内側ショルダー主溝32iと内側センター主溝34iとの間に位置する内側中間陸38iとが設けられている。トレッドゴム22oには、外側ショルダー主溝32oと車両外側の接地端Eoとの間に位置する外側ショルダー陸36oと、外側ショルダー主溝32oと外側センター主溝34oとの間に位置する外側中間陸38oとが設けられている。また、内側センター主溝34iと外側センター主溝34oとの間には、トレッドゴム22iとトレッドゴム22oに跨がってセンター陸40が設けられている。
【0031】
また、車両内側領域Riのトレッドゴム22iには、タイヤ周方向CDに対して交差する方向に延びる内側スリット42iとサイプ44i,46i,48iが設けられ、車両外側領域Roのトレッドゴム22oには、タイヤ周方向CDに対して交差する方向に延びる外側スリット42oとサイプ44o,46o,48oが設けられている。
【0032】
内側ショルダー陸36iには、複数の内側スリット42i及び内側ショルダーサイプ44iがタイヤ周方向CDに間隔をおいて交互に複数設けられている。内側スリット42iは、一端が内側接地端Eiに開口し、他端が内側ショルダー陸36i内で終端している。内側ショルダーサイプ44iは、内側ショルダー陸36iを貫通するサイプである。内側ショルダーサイプ44iは、一端が内側接地端Eiに開口し、他端が内側ショルダー主溝32iに開口している。
【0033】
外側ショルダー陸36oには、複数の外側スリット42o及び外側ショルダーサイプ44oがタイヤ周方向CDに間隔をおいて交互に複数設けられている。外側スリット42oは、一端が外側接地端Eoに開口し、他端が外側ショルダー陸36o内で終端している。外側ショルダーサイプ44oは、外側ショルダー陸36oを貫通するサイプである。外側ショルダーサイプ44oは、一端が外側接地端Eoに開口し、他端が外側ショルダー主溝32oに開口している。
【0034】
内側中間陸38iには、内側中間サイプ46iがタイヤ周方向CDに間隔をおいて複数設けられている。内側中間サイプ46iは、一端が内側ショルダー主溝32iに開口し、他端が内側中間陸38iで終端するサイプと、一端が内側センター主溝34iに開口し、他端が内側中間陸38iで終端するサイプとを備える。一端が内側ショルダー主溝32iに開口するサイプ46iと、一端が内側センター主溝34iに開口するサイプ46iとがタイヤ周方向CDに間隔をあけて交互に設けられている。
【0035】
外側中間陸38oには、外側中間サイプ46oがタイヤ周方向CDに間隔をおいて複数設けられている。外側中間サイプ46oは、一端が外側ショルダー主溝32oに開口し、他端が外側中間陸38oで終端するサイプと、一端が外側センター主溝34oに開口し、他端が外側中間陸38oで終端するサイプとを備える。一端が外側ショルダー主溝32oに開口するサイプと、一端が外側センター主溝34oに開口するサイプとがタイヤ周方向CDに間隔をあけて交互に設けられている。
【0036】
また、センター陸40には、複数の内側センターサイプ48i及び外側センターサイプ48oがタイヤ周方向CDに間隔をおいて交互に設けられている。
【0037】
内側センターサイプ48iは、一端が内側センター主溝34iに開口し、他端がタイヤ赤道面CLより車両内側で終端している。内側センターサイプ48iはセンター陸40の車両内側領域に設けられている。外側センターサイプ48oは、一端が外側センター主溝34oに開口し、他端がタイヤ赤道面CLより車両外側で終端している。外側センターサイプ48oはセンター陸40の車両外側領域に設けられている。
【0038】
本実施形態に係る空気入りタイヤでは、正規リムにリム組し、
図1に示すような内圧を充填していない状態(正規リム組み内圧未充填状態)のタイヤ幅方向断面において、外側ショルダー陸36oのゴム厚みTsoが、内側ショルダー陸36iのゴム厚みTsiより大きく、また、外側中間陸38oのゴム厚みTmoが、内側中間陸38iのゴム厚みTmiより大きい。好ましくは、外側ショルダー陸36oのゴム厚みTso及び外側中間陸38oのゴム厚みTmoが、内側ショルダー陸36iのゴム厚みTsi及び内側中間陸38iのゴム厚みTmiのいずれのゴム厚みよりも大きい。
【0039】
ここで、ゴム厚みTsoは、外側ショルダー陸36oのタイヤ軸方向中央における接地面14aからベルト補強層30までの線分の長さである。ゴム厚みTsiは、内側ショルダー陸36iのタイヤ軸方向中央における接地面14aからベルト補強層30までの線分の長さである。ゴム厚みTmoは、外側中間陸38oのタイヤ軸方向中央における接地面14aからベルト補強層30までの線分の長さである。ゴム厚みTmiは、内側中間陸38iのタイヤ軸方向中央における接地面14aからベルト補強層30までの線分の長さである。
【0040】
一例を挙げると、外側ショルダー陸36oのゴム厚みTsoは6.3mm~7.0mm、内側ショルダー陸36iのゴム厚みTsiは5.6mm~6.2mm、外側中間陸38oのゴム厚みTmoは8.5mm~8.7mm、内側中間陸38iのゴム厚みTmiは8.2mm~8.4mmであってもよい。外側ショルダー陸36oのゴム厚みTsoと内側ショルダー陸36iのゴム厚みTsiとの差(Tso-Tsi)を0.3mm~0.5mmとすることができ、外側中間陸38oのゴム厚みTmoと内側中間陸38iのゴム厚みTmiとの差(Tmo-Tmi)を0.3mm~0.5mmとすることができる。
【0041】
本実施形態の空気入りタイヤでは、車両外側領域Roに設けられた外側ショルダー陸36o及び外側中間陸38oのゴム厚みが、車両内側領域Riに設けられた内側ショルダー陸36i及び内側中間陸38iのゴム厚みより大きいため、通常走行時における車両外側領域Roと路面との接地面積が、車両内側領域Riと路面との接地面積より大きくなる。そのため、通常走行時には、損失係数tanδの小さい低発熱性のゴムからなる車両外側領域Roの寄与が高発熱性のゴムからなる車両内側領域Riより大きくなり、タイヤの発熱を抑え高速耐久性能を向上することができる。
【0042】
また、空気入りタイヤは、一般的に下方から上方に向けて車両内側へ傾斜するようなキャンバー角を有して車両に装着されており、制動時にトレッドゴムの車両内側に大きな荷重が作用する。そのため、制動時には、グリップ性能に優れた高発熱性のゴムからなる車両内側領域Riの寄与が大きくなり、制動性能を向上することができる。
【0043】
本実施形態の空気入りタイヤでは、内側ショルダー主溝32iの溝幅Wsiが外側ショルダー主溝32oの溝幅Wsoより広いことが好ましい。また、内側センター主溝34iの溝幅Wciが外側センター主溝34oの溝幅Wcoより広いことが好ましい。これにより、高発熱性のゴムから構成される車両内側領域Riにおいて走行時に発生する熱が放熱されやすくなり、高速耐久性を向上させることができる。
【0044】
本実施形態の空気入りタイヤでは、トレッドゴム22の車両内側領域Riに設けられたサイプ(本実施形態では、内側ショルダーサイプ44i及び内側中間サイプ46i)のサイプ幅SWiが、トレッドゴム22の車両外側領域Roに設けられたサイプ(本実施形態では、外側ショルダーサイプ44o及び外側中間サイプ46o)のサイプ幅SWoより広いことが好ましい。これにより、通常走行時に接地面積が小さくなる車両内側領域Riに設けられるゴム量を減らし、車両内側領域Riと車両外側領域Roとの間に生じる摩耗差を抑えることができる。
【0045】
本実施形態の空気入りタイヤでは、車両外側領域Roに設けられた主溝のうち、最も車両外側に設けられた主溝(外側ショルダー主溝32o)の溝幅は、この主溝とタイヤ軸方向内側に隣接する主溝(外側センター主溝34o)の溝幅より狭いことが好ましい。これにより、コーナリング時に力が作用しやすい外側ショルダー陸36oの高剛性化を図り、コーナリングパワーを向上させて操縦安定性能を向上することができる。
【0046】
本実施形態の空気入りタイヤでは、トレッドゴム22の車両内側領域Riに設けられた主溝(内側ショルダー主溝32i及び内側センター主溝34i)のタイヤ周方向1周分の容積の総和Viが、トレッドゴム22の車両外側領域Roに設けられた周方向溝(外側ショルダー主溝32o及び外側センター主溝34o)のタイヤ周方向1周分の容積の総和Voより大きいことが好ましい。
【0047】
車両内側領域Riにおける主溝の容積の総和Viを車両外側領域Roにおける主溝の容積の総和Voより大きくすることで、高発熱性のゴムから構成される車両内側領域Riにおいて走行時に発生する熱が放熱されやすくなり、高速耐久性を向上させることができる。しかも、車両内側領域Riにおける主溝の容積の総和Viを大きくすることで、通常走行時に接地面積が小さくなる車両内側領域Riに設けられるゴム量を減らし、車両内側領域Riと車両外側領域Roとの間に生じる摩耗差を抑えることができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【実施例0049】
上記実施形態の効果を確認するために、実施例および比較例のタイヤ(タイヤサイズ:255/35R20、空気圧:300KPa)について、高速耐久性能、制動性能、及び耐偏摩性能の評価を行った。実施例1~3及び比較例1~3のタイヤの基本的な構成は上記実施形態で説明した通りであり、下記表1に示すように各諸元を設定してタイヤを試作した。評価方法は以下の通りである。
【0050】
[高速耐久性能]
高速耐久力の評価はECE-R30(ECONOMICCOMMISION FOR EUROPE REGULATION No.30)延長条件で実施しタイヤ故障までの走行時間を指数化したものである。指数化に際しては比較例1の走行時間を100とした。指数が大きいほど、高速耐久力が高いことを示す。
【0051】
[制動性能]
テストタイヤを装着した実車(2名乗車)で乾燥路を走行し、速度100km/hで制動力をかけてABSを作動させたときの制動距離を測定して、その逆数を算出した。比較例1の結果を100とした指数で評価し、数値が大きいほどドライ制動性能に優れることを示す。
【0052】
[耐偏摩耗性能]
タイヤを車両に装着し、4名乗車相当(ドライバー+55kgの重り×3個)の荷重を積載し、12000km走行させた。走行後に、2本の空気入りタイヤについて、センターブロックの踏み込み側と蹴り出し側の摩耗差を測定した。そして、2本の空気入りタイヤの摩耗差の平均値を求め、その平均値の逆数を指数化した。指数は、比較例1を100とする指数で示した。この指数が大きくなるほど、摩耗差が小さく、耐偏摩耗性能に優れることを意味する。
【0053】
【表1】
結果は、表1に示す通りである。外側ショルダー陸36oのタイヤ軸方向中央でのゴム厚みTsoが、内側ショルダー陸36iのタイヤ軸方向中央でのゴム厚みTsiより大きく、外側中間陸38oのタイヤ軸方向中央でのゴム厚みTmoが、内側中間陸38iのタイヤ軸方向中央でのゴム厚みTmiより大きく、車両内側領域Riのトレッドゴム22iの損失係数tanδが、車両外側領域Roのトレッドゴム22oの損失係数tanδより大きい実施例1~3であると、高速耐久性と制動性能とを両立することができた。
10…ビード、12…サイドウォール、14…トレッド、14a…接地面、22i…トレッドゴム、22o…トレッドゴム、24…ベルト、26…第1ベルトプライ、28…第2ベルトプライ、30…ベルト補強層、32i…内側ショルダー主溝、32o…外側ショルダー主溝、34i…内側センター主溝、34o…外側センター主溝、36i…内側ショルダー陸、36o…外側ショルダー陸、38i…内側中間陸、38o…外側中間陸、40…センター陸、42i…内側スリット、42o…外側スリット、44i…内側ショルダーサイプ、44o…外側ショルダーサイプ、46i…内側中間サイプ、46o…外側中間サイプ、48i…内側センターサイプ、48o…外側センターサイプ、CL…タイヤ赤道面、WD…タイヤ軸方向、Ri…車両内側領域、Ro…車両外側領域