(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093955
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】硬質表面用液体洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
C11D 17/08 20060101AFI20240702BHJP
C11D 3/30 20060101ALI20240702BHJP
C11D 3/37 20060101ALI20240702BHJP
C11D 3/386 20060101ALI20240702BHJP
C11D 1/72 20060101ALI20240702BHJP
C11D 1/722 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
C11D17/08
C11D3/30
C11D3/37
C11D3/386
C11D1/72
C11D1/722
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210625
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】319001710
【氏名又は名称】シーバイエス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100207295
【弁理士】
【氏名又は名称】寺尾 茂泰
(72)【発明者】
【氏名】石川 直愛
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AC08
4H003AC23
4H003BA12
4H003DA05
4H003DA17
4H003DA19
4H003DB01
4H003DC02
4H003EA19
4H003EB05
4H003EB08
4H003EB14
4H003EB22
4H003EB30
4H003EB32
4H003EB41
4H003EC01
4H003EC02
4H003ED02
4H003FA04
4H003FA06
4H003FA19
4H003FA28
(57)【要約】
【課題】洗浄に用いる水の硬度が高い場合であっても、デンプン汚れ、油脂汚れ、タンパク質汚れに対して十分な洗浄性、および再付着防止性が得られ、洗浄組成物の系の安定性に優れる硬質表面用液体洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】(A)アルカノールアミン、(B)高分子電解質重合体、(C)ノニオン性界面活性剤、(D)酵素、(E)可溶化剤および(F)水を含有し、(B)高分子電解質重合体が、下記の(B1)および(B2)を含有し、(B2)に対する(B1)の質量比(B1/B2)が0.1~6に設定されている硬質表面用液体洗浄剤組成物。
(B1)25℃におけるpHが4以下の、カルボキシ基を有する質量平均分子量が1000~500000である高分子電解質重合体:0.5~5質量%。
(B2)カルボキシ基を有する質量平均分子量が1000~100000の高分子電解質重合体のカリウム塩および/またはナトリウム塩:0.5~5質量%。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルカノールアミン、(B)高分子電解質重合体、(C)ノニオン性界面活性剤、(D)酵素、(E)可溶化剤および(F)水を含有する硬質表面用液体洗浄剤組成物であって、
前記(B)高分子電解質重合体が、下記の(B1)および(B2)を含有し、(B1)および(B2)の含有量が硬質表面用液体洗浄剤組成物全体に対し、それぞれ下記の範囲に設定され、(B2)に対する(B1)の質量比(B1/B2)が0.1~6に設定されている硬質表面用液体洗浄剤組成物。
(B1)25℃におけるpHが4以下の、カルボキシ基を有する質量平均分子量が1000~500000である高分子電解質重合体:0.5~5質量%。
(B2)カルボキシ基を有する質量平均分子量が1000~100000の高分子電解質重合体のカリウム塩および/またはナトリウム塩:0.5~5質量%。
【請求項2】
前記(C)ノニオン性界面活性剤が、下記の(C1)、(C2)および(C3)からなる群から選ばれた少なくとも1種を有し、(C1)、(C2)および(C3)の含有量が硬質表面用液体洗浄剤組成物全体に対し、それぞれ下記の範囲に設定され、(C1)、(C2)および(C3)の合計が硬質表面用液体洗浄剤組成物全体の1~10質量%である請求項1記載の硬質表面用液体洗浄剤組成物。
(C1)1質量%水溶液の曇点が35℃以下である、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルからなるノニオン性界面活性剤:5質量%以下。
(C2)1質量%水溶液の曇点が35℃以下である、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとポリアルキレングリコールの混合物からなるノニオン性界面活性剤:5質量%以下。
(C3)1質量%水溶液の曇点が35℃以下である、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルエーテルからなるノニオン性界面活性剤:10質量%以下。
【請求項3】
25℃におけるpHが8.0~10.0の範囲に設定されている請求項1または2記載の硬質表面用液体洗浄剤組成物。
【請求項4】
キレート剤を含まないか、含む場合その含有量が1質量%以下である請求項1または2記載の硬質表面用液体洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質表面用液体洗浄剤組成物に関し、さらに詳しくは、食器や各種容器、器具等の硬表面を自動洗浄機によって洗浄する際に用いられる硬質表面用液体洗浄剤組成物に関するものである。
【0002】
従来、ホテル、レストラン、学校、病院、飲食店、給食会社、会社の食堂等において、使用後の食器を効率よく洗浄するため、自動食器洗浄機が広く用いられている。また、食器に限らず、各種製造工場、加工工場等においても、器具や容器、流通に用いられるプラスチックコンテナ等を洗浄するために、様々な自動洗浄機が用いられている。さらに、一般家庭においても、近年急速に自動洗浄機が普及してきている。
【0003】
このため、硬質表面洗浄用の自動洗浄機に用いる洗浄剤組成物として、種々のものが提案されている。例えば、特許文献1には、洗浄性および泡切れ性に優れる洗浄剤組成物として、ノニオン性界面活性剤を3種類用意し、アルカノールアミンおよび酵素を含有するものが提案されている。また、特許文献2には、強固に付着したデンプン汚れに効果的に作用し、洗浄性を高める洗浄剤組成物として、α-アミラーゼおよびアルカリプロテアーゼを含有するものが提案されている。そして、特許文献3には、原液を弱アルカリ性とした場合でも、茶渋汚れの着色の防止と、茶渋汚れや他の汚れに対する洗浄性が高められた洗浄剤組成物として、低分子キレート剤と、アクリル酸およびマレイン酸の共重合体と、アルカノールアミン化合物とを含有するものが提案されている。さらに、特許文献4には、蓄積汚れを除去する洗浄剤組成物として、ポリアクリル酸(塩)と、マレイン酸(塩)-アクリル酸(塩)共重合体と、マレイン酸(塩)-オレフィン共重合体とを含有するものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2581231号公報
【特許文献2】特開平11-228992号公報
【特許文献3】特開2008-163079号公報
【特許文献4】特開2020-180227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のものは、洗浄に用いる水の硬度が高い場合には、十分な洗浄性が得られないという問題がある。また、仕上がり性に影響を及ぼす、汚れの再付着に関する言及がない。特許文献2のものは、汚染布に対する洗浄性の裏付けはあるものの、硬質表面での実施例が一例もなく、硬質表面に対する洗浄性の裏付けがない。また、このものは、デンプン汚れに対する洗浄性を向上されるものであり、デンプン汚れ以外の汚れ(例えば、油脂汚れ、タンパク質汚れ)に対する洗浄性、再付着防止性への言及はない。特許文献3のものは、洗浄に用いる水の硬度が高い場合には、茶渋の悪化やスケールが発生する可能性がある。また、茶渋以外の汚れに対する洗浄性への言及はない。特許文献4のものは、各成分を組み合わせることによる洗浄性は認められるものの、洗浄組成物を液体とする場合、系の安定性に問題が生じるおそれがあるため、固形成型するものの開示しかない。
【0006】
そこで、本発明ではこのような背景の下において、洗浄に用いる水の硬度が高い場合であっても、デンプン汚れ、油脂汚れ、タンパク質汚れに対して十分な洗浄性、および再付着防止性が得られ、洗浄組成物の系の安定性に優れる硬質表面用液体洗浄剤組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
しかるに、本発明者は、かかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、弱アルカリ性の硬質表面用液体洗浄剤組成物において、酸と塩の2種類の高分子電解質重合体を併用することにより、従来、液体洗浄剤組成物に安定した状態で含有させることが困難であった分子量10000以上の高分子電解質重合体を安定した状態で含有させることができ、かつ、キレート剤を含有させなくても、デンプン汚れ、油脂汚れ、タンパク質汚れの洗浄性および再付着防止性を向上できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[4]の態様を有する。
[1] (A)アルカノールアミン、(B)高分子電解質重合体、(C)ノニオン性界面活性剤、(D)酵素、(E)可溶化剤および(F)水を含有する硬質表面用液体洗浄剤組成物であって、上記(B)高分子電解質重合体が、下記の(B1)および(B2)を含有し、(B1)および(B2)の含有量が硬質表面用液体洗浄剤組成物全体に対し、それぞれ下記の範囲に設定され、(B2)に対する(B1)の質量比(B1/B2)が0.1~6に設定されている硬質表面用液体洗浄剤組成物。
(B1)25℃におけるpHが4以下の、カルボキシ基を有する質量平均分子量が1000~500000である高分子電解質重合体:0.5~5質量%。
(B2)カルボキシ基を有する質量平均分子量が1000~100000の高分子電解質重合体のカリウム塩および/またはナトリウム塩:0.5~5質量%。
[2] 上記(C)ノニオン性界面活性剤が、下記の(C1)、(C2)および(C3)からなる群から選ばれた少なくとも1種を有し、(C1)、(C2)および(C3)の含有量が硬質表面用液体洗浄剤組成物全体に対し、それぞれ下記の範囲に設定され、(C1)、(C2)および(C3)の合計が硬質表面用液体洗浄剤組成物全体の1~10質量%である[1]記載の硬質表面用液体洗浄剤組成物。
(C1)1質量%水溶液の曇点が35℃以下である、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルからなるノニオン性界面活性剤:5質量%以下。
(C2)1質量%水溶液の曇点が35℃以下である、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとポリアルキレングリコールの混合物からなるノニオン性界面活性剤:5質量%以下。
(C3)1質量%水溶液の曇点が35℃以下である、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルエーテルからなるノニオン性界面活性剤:10質量%以下。
[3] 25℃におけるpHが8.0~10.0の範囲に設定されている[1]または[2]記載の硬質表面用液体洗浄剤組成物。
[4] キレート剤を含まないか、含む場合その含有量が1質量%以下である[1]
~[3]のいずれか記載の硬質表面用液体洗浄剤組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、(A)アルカノールアミン、(B)高分子電解質重合体、(C)ノニオン性界面活性剤、(D)酵素、(E)可溶化剤および(F)水を含有し、上記(B)高分子電解質重合体が、特定の酸および塩の2種類の高分子電解質重合体を含有しているため、分子量10000以上の(B)高分子電解質重合体の塩を含有させた場合であっても貯蔵安定性が担保される。しかも、上記2種類の高分子電解質重合体を所定の割合で併用しているため、キレート剤を含有させなくても、デンプン汚れ、油脂汚れ、タンパク質汚れ等の種類の異なる汚れの洗浄性および再付着防止性を向上させることができる。
したがって、本発明は、自動食器洗浄機用洗剤、前洗い用洗剤、直接噴霧用洗剤等の幅広い用途において、各種汚れに対する優れた洗浄性を有し、貯蔵安定性、酵素活性安定性、低泡性、再付着防止性に対しても優れた効果を奏するため、汎用性に優れ使い勝手がよい。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための形態の例に基づいて本発明を説明する。但し、本発明が、次に説明する実施形態に限定されるものではない。
また、本発明において「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意とともに、「好ましくはXより大きい」または「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
そして、「X以上」(Xは任意の数字)または「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」または「Y未満であることが好ましい」旨の意も包含する。
さらに、「Xおよび/またはY(X,Yは任意の構成)」とは、XおよびYの少なくとも一方を意味するものであって、Xのみ、Yのみ、XおよびY、の3通りを意味するものである。
【0011】
本発明の一実施形態にかかる硬質表面用液体洗浄剤組成物(以下、「洗浄剤組成物」という場合がある)は、(A)アルカノールアミン、(B)高分子電解質重合体、(C)ノニオン性界面活性剤、(D)酵素、(E)可溶化剤および(F)水を含有する硬質表面用液体洗浄剤組成物であって、
前記(B)高分子電解質重合体が、下記の(B1)および(B2)を含有し、(B1)および(B2)の含有量が硬質表面用液体洗浄剤組成物全体に対し、それぞれ下記の範囲に設定され、(B2)に対する(B1)の質量比(B1/B2)が0.1~6に設定されている硬質表面用液体洗浄剤組成物である。
(B1)25℃におけるpHが4以下の、カルボキシ基を有する質量平均分子量が1000~500000である高分子電解質重合体。
(B2)カルボキシ基を有する質量平均分子量が1000~100000の高分子電解質重合体のカリウム塩および/またはナトリウム塩。
以下、各成分について説明する。
【0012】
<A成分:アルカノールアミン>
本発明の(A)成分として用いられるアルカノールアミンは、例えば、アルカン骨格にヒドロキシ基とアミノ基を持つ化合物を用いることができる。
このような化合物としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-メチルエタノールアミンがあげられる。
なかでも、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-メチルエタノールアミンが好ましく用いられる。さらに好ましくは、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミンである。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0013】
上記(A)成分の含有量は、特に限定するものではないが、例えば、本洗浄剤組成物全体に対し、10~30質量%の範囲内に設定することが好ましく、12~25質量%の範囲内に設定することがより好ましく、さらに好ましくは15~22質量%の範囲とすることである。すなわち、(A)成分の含有量が少なすぎると、タンパク質汚れの洗浄性に劣る傾向がみられ、逆に(A)成分の含有量が多すぎると、食器洗浄機で使用した際のすすぎ性が悪化するとともに、洗浄剤組成物の各性能のバランスが悪くなり、他成分との相乗効果が得られにくくなるだけでなく、コスト面でも不利になる傾向がみられるためである
【0014】
<B成分:高分子電解質重合体>
本発明の(B)成分として用いられる高分子電解質重合体は、下記の(B1)および(B2)をそれぞれ特定量含有し、(B2)に対する(B1)の質量比(B1/B2)が0.1~6に設定されているため、本発明に分子量10000以上の高分子電解質重合体の塩を使用する場合であっても、(A)成分との併用が可能となり系の安定性を図ることができる。
(B1)25℃におけるpHが4以下の、カルボキシ基を有する質量平均分子量が1000~500000である高分子電解質重合体。
(B2)カルボキシ基を有する質量平均分子量が1000~100000の高分子電解質重合体のカリウム塩および/またはナトリウム塩。
なお、本発明において「高分子電解質重合体」とは、分子量が数千から数十万であって、高分子鎖中に解離基を有し、水中で解離して高分子イオンとなるポリマーを意味する。
【0015】
上記(B1)成分としては、例えば、アクリル酸重合体、マレイン酸重合体、アクリル酸-マレイン酸共重合体、ポリ-α-ヒドロキシアクリル酸、アクリル酸-マレイン酸系-ポリエチレングリコール共重合体、オレフィン-マレイン酸共重合体、アクリル酸-スルホン酸系共重合体等があげられ、マレイン酸重合物、アクリル酸・マレイン酸コポリマー、ポリアクリル酸がより好ましく用いられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
上記(B1)の質量平均分子量は、上記のとおり1000~500000であるが、洗浄剤組成物の粘度上昇の点から、好ましくは1500~250000であり、より好ましくは1800~150000である。
上記(B1)成分の含有量は、pHが降下する点、洗浄剤組成物全体としての貯蔵安定性の点から、洗浄剤組成物全体質量に対して0.5~5質量%の範囲内に設定されるものであり、1~3質量%の範囲内に設定されることが好ましい。
【0016】
上記(B1)は、通常、水溶液として用いられるものであり、あり姿でのpHが25℃の温度下において4以下であり、好ましくはpH1.0~4.0であり、さらに好ましくはpH1.5~3.5である。
【0017】
上記(B2)としては、例えば、アクリル酸重合体の塩、マレイン酸重合体の塩、アクリル酸-マレイン酸共重合体の塩、ポリ-α-ヒドロキシアクリル酸の塩、アクリル酸-マレイン酸系-ポリエチレングリコール共重合体の塩、オレフィン-マレイン酸共重合体の塩、アクリル酸-スルホン酸系共重合体の塩があげられる。また、これらの塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、エタノールアミン塩等があげられ、ポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸-スルホン酸系共重合体のナトリウム塩、アクリル酸-マレイン酸共重合体のナトリウム塩、オレフィン-マレイン酸共重合体のナトリウム塩がより好ましく用いられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
上記(B2)の質量平均分子量は、上記のとおり1000~100000であるが、洗浄剤組成物の組成バランスの点から、好ましくは1500~60000であり、より好ましくは2000~25000であり、さらに好ましくは3000~20000である。
上記(B2)成分の含有量は、洗浄剤組成物全体としての貯蔵安定性の点から、洗浄剤組成物全体質量に対して0.5~5質量%の範囲内に設定されるものであり、1~3質量%の範囲内に設定されることが好ましい。
【0018】
(B1)の(B2)に対する質量比(B1/B2)は、上記のとおり0.1~6に設定されるが、なかでも、0.2~4の範囲に設定されることが好ましく、0.6~3の範囲に設定されることがより好ましい。上記質量比(B1/B2)が低すぎると全体としてのバランスが悪くなり、貯蔵安定性が低下する傾向がみられ、逆に高すぎると全体としてのpHが低下し、所望の洗浄性を得られにくい傾向がみられる。
【0019】
上記(B)成分全体の含有量は、特に限定するものではないが、洗浄剤組成物全体に対して1~5.5質量%の範囲にあることが好ましく、より好ましくは1~3質量%である。すなわち、高分子電解質重合体の含有量が少なすぎると、所望の再付着防止効果や洗浄性、スケール生成抑制効果を得られにくい傾向がみられ、また、高分子電解質重合体の含有量が多すぎると、全体としてのバランスが悪くなり、貯蔵安定性が低下するとともに、他成分との相乗効果がそれ以上得られない傾向がみられる。上記(B)成分は、pH調整にも用いることができる。
とりわけ、(B1)と(B2)の合計質量が、(B)成分全体質量に対して70~100質量%の範囲内に設定されることが好ましく、より好ましくは85~100質量%の範囲に設定されることであり、さらに好ましくは100質量%に設定されることである。すなわち、(B1)と(B2)の合計質量が上記範囲内に設定されると、他成分とのバランスにおける金属イオン封鎖能、スレッシュホールド効果、水不溶性物質の分散性、汚れの再付着防止効果や洗浄性により優れる傾向がみられる。
【0020】
<C成分:ノニオン性界面活性剤>
本発明の(C)成分として用いられるノニオン性界面活性剤は、下記の(C1)、(C2)および(C3)からなる群から選ばれる少なくとも一つを含有するものであることが好ましい。
(C1)1質量%水溶液の曇点が35℃以下である、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルからなるノニオン性界面活性剤。
(C2)1質量%水溶液の曇点が35℃以下である、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとポリアルキレングリコールの混合物からなるノニオン性界面活性剤。
(C3)1質量%水溶液の曇点が35℃以下である、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルエーテルからなるノニオン性界面活性剤。
【0021】
上記(C1)としては、例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオキシブチレンアルキルエーテル等の、1質量%水溶液の曇点が35℃以下であるものがあげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
また、ポリオキシアルキレンの付加重合の形態については、2種若しくは3種のモノマーのランダムまたはブロック共重合体であってもよい。上記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルのアルキル基の炭素数は、8~22であることが好ましく、10~20であることがより好ましく、12~18であることがさらに好ましい。上記(C1)として、これらの界面活性剤を特定量以下で用いることにより、洗浄性と抑泡性をより発揮すると考えられる。上記(C1)の含有量は洗浄剤組成物全体の5質量%以下に設定されることが好ましい。
【0022】
上記(C2)に用いるポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、アルキル基の炭素数が6~24の直鎖または分岐のアルコールにエチレンオキサイド(以下「エチレンオキサイド」を「EO」と略す)を1~40モルとプロピレンオキサイド(以下「プロピレンオキサイド」を「PO」と略す)1~50モルとを付加したポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンアルキルエーテル)であり、例えば、炭素数が6~18の直鎖または分岐のアルコールにEOを1~20モルとPO1~20モルとを付加しEO/POの重量比が0.5~5の範囲にあるもの、炭素数が6~18の直鎖または分岐のアルコールにEO1~15モルとPO1~50モルとを付加しEO/POの重量比が0.05~1の範囲にあるものが好ましく用いられる。
また、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルと混合されるポリアルキレングリコールは、炭化水素がエーテル結合した重合体であり、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。また、これらの2以上のランダムまたはブロック共重合体であってもよい。ポリアルキレングリコールの分子量は特に限定するものではないが、分散均一性の観点から、500~100000であるものが好ましく用いられる。
上記(C2)の含有量は洗浄剤組成物全体の5質量%以下に設定されることが好ましい。
【0023】
上記(C3)は、1質量%水溶液の曇点が35℃以下であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルエーテルであり、なかでも低泡性の点で、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテルがより好ましく用いられる。上記(C3)の含有量は洗浄剤組成物全体の10質量%以下に設定されることが好ましい。
【0024】
上記(C1)、(C2)および(C3)は、いずれも1質量%水溶液の曇点が35℃以下のものを用いている。すなわち、本発明に含有される(C)成分のノニオン性界面活性剤として曇点35℃を超えるものを用いると、他のノニオン性界面活性剤を洗浄剤組成物中に可溶化する点では有利であるが、食器洗浄機のような洗浄液を噴射して洗浄する機械で使用する場合に他のノニオン性界面活性剤の抑泡性を低下させる傾向がみられるためである。
【0025】
また、本発明においては、上記(C1)、(C2)および(C3)の合計質量は、通常、洗浄剤組成物全体の1~10質量%に設定され、好ましくは1.5~7質量%であり、より好ましくは2~5質量%である。
すなわち、上記(C1)、(C2)および(C3)の合計質量が上記範囲内に設定されていると、特に油脂に対する洗浄性および再付着防止性が高くなる傾向がみられる。
なお、上記(C1)、(C2)および(C3)の合計質量が多すぎると、全体としてのバランスが悪くなる傾向がみられるだけでなく、他成分との相乗効果による洗浄性能が飽和となりコスト面で不利になる傾向がみられ、逆に少なすぎると、抑泡性および可溶化能が十分に発揮できない傾向がみられる。
【0026】
上記(C2)の(C1)に対する質量比(C2/C1)は、洗浄性の点から、1.5~5に設定されることが好ましく、2~4に設定されることがより好ましい。
また、上記(C2)の(C3)に対する質量比(C2/C3)は、抑泡性の点から、1.5~5に設定されることが好ましく、2~4に設定されることがより好ましい。
【0027】
<D成分:酵素>
本発明の(D)成分である酵素としては、各種洗浄剤用酵素を用いることができる。このような酵素としては、例えば、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、グルカナーゼがあげられる。これらの酵素は、単独用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記(D)成分は、他の洗浄剤成分では補い難い特定の汚れに対する洗浄効果を、その酵素活性によって得るために用いるものであり、洗浄効果およびコスト面から、α-アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼが好ましく用いられる。
【0028】
上記(D)成分の含有量は、特に限定するものではないが、洗浄剤組成物全体に対して0.1~7質量%の範囲にあることが好ましく、より好ましくは0.5~5質量%である。すなわち、(D)成分の含有量が上記範囲内に設定されていると、デンプン、油脂、タンパク質の各種汚れの分解性が高くなり、しかも再付着防止性も高くなる傾向がみられる。
なお、(D)成分の含有量が少なすぎると、他成分とのバランスから洗浄性の向上に乏しくなり、逆に(D)成分の含有量が多すぎると、他成分との相乗効果が得られにくくなるだけでなく、コスト面でも不利となる。
【0029】
<E成分:可溶化剤>
本発明の(E)成分である可溶化剤は、(C)成分であるノニオン性界面活性剤を安定的に可溶化することを目的として用いられるものであり、例えば、芳香族スルホン酸塩、アルキルポリグルコシドがあげられる。とりわけ、可溶化力が優れる点、広域な温度帯で貯蔵安定性が高い点で、クメンスルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩および6~16個の炭素原子のアルキル残基を含有するアルキルポリグルコシドが好ましく用いられ、クメンスルホン酸ナトリウム、ヘキシルグルコシド、デシルグルコシドがより好ましい。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
上記(E)成分の含有量は、特に限定するものではないが、例えば、本洗浄剤組成物全体に対し、5~25質量%の範囲内に設定することが好ましく、7~22質量%の範囲内に設定することがより好ましく、さらに好ましくは10~20質量%の範囲とすることである。すなわち、(E)成分の含有量が上記範囲内に設定されていると、系の安定性がより高くなる傾向がみられる。
なお、(E)成分の含有量が少なすぎると、(C)成分を可溶化できる量が少なくなる傾向がみられ、逆に(E)成分の含有量が多すぎると、可溶化能が飽和となり、コスト的に不利になる傾向がみられるためである。
【0030】
<F成分:水>
本発明の(F)成分の水としては、純水、イオン交換水、軟水、蒸留水、水道水等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
なお、上記「水」は、洗浄剤組成物を構成する各成分に由来する結晶水や水溶液の形で含まれる水と、外から加えられる水との総和であり、洗浄剤組成物全体が100質量%となるようバランスとして含有される。
【0031】
本発明の洗浄剤組成物は、上記(A)~(F)成分を必須成分として調製されるが、さらに各種の任意成分を適宜含有することができる。このような任意成分としては、例えば、水溶性溶剤、酵素安定化剤、中和成分、防腐剤、香料、増粘剤、殺菌剤等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0032】
ただし、本発明は、アルカノールアミンでpH調整することができるため、通常、pH調整剤は必要ではない。すなわち、貯蔵安定性が悪化する点、コスト的に不利になる点からは、pH調整剤を含まないことが好ましく、pH調整剤を含有する場合であっても、洗浄剤組成物全体の1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、さらに好ましくは、含有しないことである。
【0033】
また、本発明はキレート剤を含有しなくても、油脂汚れ、タンパク質汚れの再付着防止性を発揮するため、キレート剤を含有しなくてよい。すなわち、貯蔵安定性が悪化する点、排水による環境リスクを減らす点からは、キレート剤を含まないことが好ましく、キレート剤を含有する場合であっても、洗浄剤組成物全体の1質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましく、さらに好ましくは、含有しないことである。
【0034】
本発明の洗浄剤組成物は、前記必須成分(A)~(F)と、必要に応じて含有されるこれらの任意成分を用いて、通常の、洗浄剤組成物を調製する方法にしたがって調製することができる。
【0035】
このようにして得られた本発明の洗浄剤組成物は、(A)アルカノールアミン、(B)高分子電解質重合体、(C)ノニオン性界面活性剤、(D)酵素、(E)可溶化剤および(F)水を含有し、上記(B)高分子電解質重合体が、下記の(B1)および(B2)を含有し、(B1)および(B2)の含有量が硬質表面用液体洗浄剤組成物全体に対し、それぞれ下記の範囲に設定され、(B2)に対する(B1)の質量比(B1/B2)が0.1~6に設定されている。
(B1)25℃におけるpHが4以下の、カルボキシ基を有する質量平均分子量が1000~500000である高分子電解質重合体:0.5~5質量%。
(B2)カルボキシ基を有する質量平均分子量が1000~100000の高分子電解質重合体のカリウム塩および/またはナトリウム塩:0.5~5質量%。
【0036】
本発明の洗浄剤組成物によれば、水の硬度によらず洗浄性、低泡性、再付着防止性を発揮することができる。また、キレート剤を含有しないか、ごく低含有量の液体洗浄剤組成物であっても系の安定が図られ、貯蔵安定性および酵素活性安定性に優れるとともに、デンプン汚れ、油脂汚れ、タンパク質汚れの各種汚れの再付着防止性を発揮することができるため、使い勝手がよい。
【0037】
なかでも、25℃におけるpHが8.0~10.0の範囲に設定されているものが好ましく、より好ましくはpH8.5~9.5の範囲にあるものである。すなわち、pHが高い程、より高い洗浄力が期待できるが、pHが高くなりすぎると、環境や安全性に悪影響を与える傾向がみられる。しかし、本発明の洗浄剤組成物においてpHが上記範囲内に設定されていると、環境や安全性に配慮しつつ、高い洗浄性を発揮することができる。また、アルミニウム素材の食器や調理器具等の被洗浄物の侵食を防止することができるため、汎用性を高めることができる。さらに、酵素活性安定性を担保でき、長期保存に適したものとすることができる。
上記pHは、洗浄剤組成物を希釈する前の原液を測定したものである。
【0038】
そして、本発明の洗浄剤組成物は、ガラス、陶磁器、金属、プラスチック等の硬表面の洗浄用途に適しているだけでなく、各種製造工場,加工工場等における器具や容器、流通に用いられるプラスチックコンテナ等を洗浄するための自動洗浄機用途としても使用可能である。このほか、食品工場・食品加工工場等のタイル、床等の硬表面の洗浄、飲料用のガラス瓶・ビール瓶等の容器洗浄、金属表面洗浄にも好ましく用いることができる。特に、ホテル、レストラン、学校、病院、飲食店、給食会社、会社の食堂等における自動食器洗浄機に好適に用いることができる。
【0039】
なお、本発明の洗浄剤組成物は、汚れの種類や汚れの量(程度)を考慮して、通常、0.02~0.5質量%の洗浄剤水溶液として、例えば、自動洗浄機に供給することにより、対象物に対して優れた洗浄性を発揮することができる。
【実施例0040】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0041】
[実施例1~23、比較例1~12]
後記の表1~6に示す組成(各表の数値は有り姿を「質量%」で示したものである)の洗浄剤組成物を調製し、洗浄試験1(自動食器洗浄機用洗剤としての洗浄性)、洗浄試験2(前洗い用洗剤としての洗浄性)、洗浄試験3(直接汚れに噴霧して使用する場合の洗浄性)、洗浄試験4(水の硬度が高い場合の洗浄性)、貯蔵安定性、酵素活性安定性、低泡性、再付着防止性について評価し、pH(原液、25℃)を測定した。これらの結果を後記の表1~6に併せて示す。
なお、各項目の試験方法、評価基準は、下記に示すとおりである。
【0042】
[洗浄試験1]
自動食器洗浄機用洗剤としての洗浄性を評価するため、以下のとおり試験および評価を行った。
・試験方法
調製された洗浄剤組成物を業務用の自動食器洗浄機(JWE-680UB-G、ホシザキ社製)に投入し、下記の運転条件で運転した。そして、下記の被洗浄物である磁器皿または茶碗を10枚一組として洗浄し、その洗浄性を後記の評価基準で評価した。
なお、洗浄対象となる汚れとして、デンプン(お粥)汚れ、油脂(牛脂)汚れおよびタンパク質(卵黄)汚れの3種類を用意し、それぞれの汚れに対する評価を行った。
*運転条件
洗剤濃度 :0.20%
洗浄温度 :45℃
すすぎ温度 :80℃
洗浄コース :標準洗浄サイクル(洗浄:30秒、すすぎ:8秒)
使用水の硬度:(CaCO3として)50~60ppm
デンプン(お粥)汚れ:米飯40gをお湯400gに入れ、90~100℃にて、20分間煮立たせた後、その上澄みを茶碗に0.6g/個となるように付着させ、常温で30分間乾燥させ、洗浄直前に10分間40℃にて浸漬したものを用いた。
油脂(牛脂)汚れ:直径25cmの磁器皿に、精製牛脂を4g/枚となるように付着させたものを用いた。
タンパク質(卵黄)汚れ:直径25cmの磁器皿に鶏卵の卵黄を4g/枚となるように付着させ、常温で1時間乾燥させ、洗浄直前に30分間40℃にて浸漬したものを用いた。
・評価基準
デンプン(お粥)汚れについては、ヨウ素溶液を洗浄後の茶碗に塗布し、油脂(牛脂)汚れについては、オイルレッド液を洗浄後の磁器皿に塗布し、タンパク質(卵黄)汚れについては、そのまま、それぞれ目視にて以下の基準にしたがって汚れ除去具合を評価した。
◎:90%以上の汚れ除去。
○:70%以上で90%未満の汚れ除去。
△:50%以上で70%未満の汚れ除去。
×:50%未満の汚れ除去。
【0043】
[洗浄試験2]
前洗い用洗剤としての洗浄性を評価するため、以下のとおり試験および評価を行った。
・試験方法
汚れが付着した食器として「洗浄試験1」で作製したものと同様のものを、汚れの種類毎に5枚準備し、これらを調製された洗浄剤水溶液に下記の条件にて漬けた。
その後、業務用の自動食器洗浄機(JWE-680UB-G、ホシザキ社製)にて、洗剤を入れずに、下記の方法で洗浄し、下記の評価基準で評価した。
*浸漬条件
洗剤濃度 :0.10%
浸漬温度 :25℃
浸漬時間 :10分
*洗浄機運転条件
洗浄温度 :45℃
すすぎ温度 :80℃
洗浄コース :標準洗浄サイクル(洗浄:30秒間、すすぎ:8秒間)
使用水の硬度:(CaCO3として)50~60ppm
・評価基準
デンプン(お粥)汚れについては、ヨウ素溶液を洗浄後の茶碗に塗布し、油脂(牛脂)汚れについては、オイルレッド液を洗浄後の磁器皿に塗布し、タンパク質(卵黄)汚れについては、そのまま、それぞれ目視にて以下のように汚れ除去具合を評価した。
◎:90%以上の汚れ除去。
○:70%以上で90%未満の汚れ除去。
△:50%以上で70%未満の汚れ除去。
×:50%未満の汚れ除去。
【0044】
[洗浄試験3]
直接汚れに噴霧して使用する場合の洗浄性を評価するため、以下のとおり試験および評価を行った。
・試験方法
汚れが付着した食器として「洗浄試験1」で作製したものと同様のものを、汚れの種類毎に5枚準備した。準備した汚れが付着した皿に対し、スプレーボトルに入れた10質量%に調製された洗浄剤水溶液を満遍なく噴霧し、室温(23℃近傍)で1時間放置後、業務用の自動食器洗浄機(JWE-680UB-G、ホシザキ社製)にて、洗剤を入れずに、下記の条件で洗浄し、下記の評価基準に基づいて評価した。
*洗浄機運転条件
洗浄温度 :45℃
すすぎ温度 :80℃
洗浄コース :標準洗浄サイクル(洗浄:30秒間、すすぎ:8秒間)
使用水の硬度:(CaCO3として)50~60ppm
・評価基準
デンプン(お粥)汚れについては、ヨウ素溶液を洗浄後の茶碗に塗布し、油脂(牛脂)汚れについては、オイルレッド液を洗浄後の磁器皿に塗布し、タンパク質(卵黄)汚れについては、そのまま、それぞれ目視にて以下のように汚れ除去具合を評価した。
◎:90%以上の汚れ除去。
○:70%以上で90%未満の汚れ除去。
△:50%以上で70%未満の汚れ除去。
×:50%未満の汚れ除去。
【0045】
[洗浄試験4]
水の硬度が高い場合の洗浄性を評価するため、以下のとおり試験および評価を行った。
・試験方法
人工硬水を用いて、0.20%に調製された洗浄剤組成物をリーナツ試験法(JIS K 3362:2008)により洗浄評価を行った。
なお、被洗浄物は、76mm×26mmのスライドグラスにデンプン(お粥)汚れ、油脂(牛脂)汚れおよびタンパク質(卵黄)汚れの3種類をそれぞれ、スライドグラスに塗布し、24時間乾燥させて作製した。各汚れが付着したスライドガラス3枚を一組として下記洗浄条件で洗浄し、その洗浄性を下記の評価基準で評価した。
*洗浄条件
洗剤濃度 :0.20%
洗浄温度 :45℃
洗浄時間 :10分
使用する人工硬水の硬度:(CaCO3 として)150ppm
デンプン(お粥)汚れ:米飯40gをお湯400gに入れ、90~100℃にて、20分間煮立たせた後、その上澄みをスライドグラスに0.01g/枚となるように付着させ、常温で30分間乾燥させ、洗浄直前に10分間40℃にて浸漬したものを用いた。
油脂(牛脂)汚れ:牛脂および大豆油を体積比1:1で混合した油脂20gと、モノオレイン0.25gと、オイルレッド0.1gとを、クロロホルム60mLに溶解し、この溶解物を0.02g/枚となるようにスライドグラスに付着させたものを用いた。
タンパク質(卵黄)汚れ:鶏卵の卵黄を0.2g/枚となるようにスライドグラスに付着させ、常温で1時間乾燥させ、洗浄直前に30分間40℃にて浸漬したものを用いた。
・評価基準
デンプン(お粥)汚れについては、ヨウ素溶液を洗浄後の茶碗に塗布し、油脂(牛脂)汚れおよびタンパク質(卵黄)汚れについては、そのまま目視にて以下の基準にしたがって汚れ除去具合を評価した。
◎:90%以上の汚れ除去。
○:70%以上で90%未満の汚れ除去。
△:50%以上で70%未満の汚れ除去。
×:50%未満の汚れ除去。
【0046】
[貯蔵安定性]
・試験方法
調製された洗浄剤組成物を100mLのガラス瓶に入れ、恒温槽(SLI-4S、須中理化工業社製)により40℃の雰囲気下に置くとともに、インキュベーター(MTH-2400、SANYO社製)により-5℃から5℃にプログラムコントロールされた雰囲気下に置き、その状態で1カ月保管した。そして、その外観を目視により観察し、下記の評価基準で評価した。
・評価基準
◎:1カ月後、濁り・分離・析出等の外観変化は全くなかった。
○:1カ月後、濁り・分離・析出等の外観変化がわずかにみられた。
△:2週間後、濁り・分離もしくは析出等の外観変化がわずかにみられた。
×:調整直後に、濁り・分離もしくは析出等の外観変化があった。
【0047】
[酵素活性安定性]
・試験方法
α-アミラーゼおよびプロテアーゼに関しては、40℃にて2週間経過した洗浄剤組成物中の酵素活性値を求め、リパーゼおよびセルラーゼに関しては、室温(23℃近傍)4週間経過した洗浄剤組成物中の酵素活性値から残存率を算出して、下記のように評価した。
ただし、上記酵素活性値は、つぎのようにして求めた。
*α-アミラーゼ活性値の求め方
洗浄剤水溶液中に、デンプンの分解により発色する指示薬と、デンプンとを含んだ錠剤(ファデバス錠)を投入し、色素の濃度を測定した。
*プロテアーゼ活性値の求め方
洗浄剤水溶液とカゼイン溶液を混合し、トリクロロ酢酸溶液を加えた後、Folin-Ciocalten試薬を滴下して、溶液の発色を測定した。
*リパーゼ活性値の求め方
オリーブ油を乳化させた液を作製し、洗浄剤水溶液を加えて撹拌した後、フェノールフタレイン指示薬を数滴加え、水酸化ナトリウム液にて滴定した。
・評価基準
◎:残存率70%以上。
○:残存率40%以上70%未満。
△:残存率25%以上40%未満。
×:残存率25%未満。
【0048】
[低泡性]
・試験方法
水道水で希釈した洗浄剤組成物と十分にかき混ぜた鶏卵(全卵)30gを業務用の自動食器洗浄機(JWE-680UB-G、ホシザキ社製)に投入し、下記の運転条件で運転した。そして、洗浄液の泡立ちを目視により後記の評価基準で評価した。
*運転条件
洗浄剤濃度 :0.10質量%
洗浄温度 :40℃
洗浄コース :標準洗浄サイクル(洗浄:43秒間、すすぎ:15秒間)
水道水の硬度:(CaCO3として)50~60mg/L
・評価基準
◎:運転時に泡が液面から50mm未満で、かつ運転終了後速やかに泡が消える。
○:運転時に泡が液面から50mm未満で、かつ運転終了後1分経過以内に泡が消える。
△:運転時に泡が液面から50mm以上であるが、運転終了後1分経過以内に泡が消える。
×:運転時の泡の高さにかかわらず、運転終了後1分経過後も泡が消えずに残っている。
【0049】
[再付着防止性]
・試験方法
調製された洗浄剤組成物とともにオイルレッドで着色したサラダ油30gを業務用の自動食器洗浄機(JWE-680UB-G、ホシザキ社製)に投入し、下記の運転条件で運転して、メラミン製の清浄皿への汚れの付着の程度を目視で確認し、以下の評価基準に基づいて評価した。
*運転条件
洗浄剤濃度 :0.2質量%
洗浄温度 :60℃
すすぎ温度 :80℃
すすぎ水量 :2.2L
洗浄コース :標準洗浄サイクル(洗浄:50秒間、すすぎ:10秒間)
水道水の硬度:(CaCO3として)60mg/L
・評価基準
◎:清浄皿に汚れが全く付着していなかった。
○:清浄皿に汚れがほとんど付着していなかった。
△:清浄皿に汚れが付着していた。
×:清浄皿に汚れがかなり付着していた。
【0050】
[pH:原液、25℃]
・測定方法
pHメーター(pH METER F-12、堀場製作所社製)を用いて、JIS Z-8802:1984にしたがって、洗浄剤組成物の原液の25℃におけるpH値を測定し、下記の評価基準に基づいて評価した。
・評価基準
◎:8.0以上で10.0以下。
×:8.0未満または10.0を超える。
【0051】
なお、以下の表1~6に示した成分の詳細は以下のとおりであり、特に記載がないかぎり、各表中の数値は、有効濃度で示している。
【0052】
[A成分:アルカノールアミン]
・アルカノールアミン1:
(トリエタノールアミン)
商品名:トリエタノールアミンS、日本触媒社製
・アルカノールアミン2:
(モノエタノールアミン)
商品名:モノエタノールアミン、日本触媒社製
【0053】
[B成分:高分子電解質重合体]
(B1)
・高分子電解質重合体1:
(マレイン酸重合物、平均分子量2,000、純分50%)
商品名:ノンポールPMA-50W、日油社製(pH:1)
・高分子電解質重合体2:
(アクリル酸・マレイン酸コポリマー、平均分子量3,000、純分50%)
商品名:ノンポールPMA-50W、日油社製(pH1.5)
・高分子電解質重合体3:
(ポリアクリル酸、平均分子量4,500、純分48%)
商品名:Acusol445、ダウ・ケミカル社製(pH3.5)
・高分子電解質重合体4:
(ポリアクリル酸、平均分子量10,000、純分45%)
商品名:アクアリックHL-415、日本触媒社製(pH2)
・高分子電解質重合体5:
(ポリアクリル酸、平均分子量100,000、純分35%)
商品名:SokalanPA80S、BASF社製(pH2)
(B2)
・高分子電解質重合体6:
(ポリアクリル酸ナトリウム、平均分子量3,500、純分44%)
商品名:アクアリックDL-40S、日本触媒社製
・高分子電解質重合体7:
(アクリル酸-スルホン酸系共重合体のNa塩、平均分子量3,000、純分50%)
商品名:アクアリックGL-246、日本触媒社製
・高分子電解質重合体8:
(アクリル酸-マレイン酸共重合体のNa塩、平均分子量60,000、純分40%)
商品名:アクアリックTL-200、日本触媒社製
・高分子電解質重合体9:
(オレフィン-マレイン酸共重合体のNa塩、平均分子量12,000、純分25%)
商品名:SokalanCP9、BASF社製
【0054】
[C成分:ノニオン性界面活性剤]
(C1)
・ノニオン性界面活性剤1:
(ポリオキシエチレンアルキルエーテル、1質量%水溶液での曇点17℃)
商品名:セドランSF-506、三洋化成工業社製
(C2)
・ノニオン性界面活性剤2:
(ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとポリアルキレングリコールの混合物、1質量%水溶液での曇点18℃)
商品名:ダウファックスDF-147Defoamer、ダウ・ケミカル社製
・ノニオン性界面活性剤3:
(ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとポリアルキレングリコールの混合物、1質量%水溶液での曇点33℃)
商品名:ノイゲンLF-202N、第一工業製薬社製
(C3)
・ノニオン性界面活性剤4:
(ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、1質量%水溶液での曇点20℃)
商品名:ノイゲンLF-40X、第一工業製薬社製
(C1,C2およびC3以外のノニオン性界面活性剤)
・ノニオン性界面活性剤5:
(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(プルロック型ブロックポリマー)、1質量%水溶液での曇点60℃)
商品名:エパン740、第一工業製薬社製
・ノニオン性界面活性剤6:
(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(リバースプルロニック型ブロックポリマー)、1質量%水溶液での曇点50℃)
商品名:プルロニック(登録商標)RPE1740、BASF社製
【0055】
[D成分:酵素]
・酵素1:(α-アミラーゼ)
商品名:Stainzyme Plus12L、ノボザイムズジャパン社製
・酵素2:(α-アミラーゼ)
商品名:Achieve Alpha100L、ノボザイムズジャパン社製
・酵素3:(プロテアーゼ)
商品名:PROGRESS UNO 100L、ノボザイムズジャパン社製
・酵素4:(リパーゼ)
商品名:LIPEX 100L、ノボザイムズジャパン社製
【0056】
[E成分:可溶化剤]
・可溶化剤1:
(クメンスルホン酸ナトリウム、有効成分量40%)
商品名:テイカトックスN5040、テイカ社製
・可溶化剤2:
(ヘキシルグルコシド、有効成分量75%)
商品名:AG6206、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製
・可溶化剤3:
(デシルグルコシド、有効成分量65%)
商品名:ALKYL POLYGLYCOSIDES APG0810 65%、アゼリスジャパン社製
【0057】
[その他の成分]
・安定化剤
(塩化カルシウム、無水物として74.3%)
商品名:塩化カルシウム 粒状、セントラル硝子社製
・水溶性溶剤
(グリセリン、有効成分量99%)
商品名:食品添加物グリセリン、ミヨシ油脂社製
・キレート剤
(クエン酸1水塩、有効成分量91%)
商品名:精製クエン酸(結晶)、扶桑化学工業社製
[F成分:水]
・イオン交換水
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
上記の結果から、実施例1~23では、どの評価項目に対しても概ね優れた評価が得られていることがわかる。
一方、本発明で規定する範囲から外れている比較例1~12は、「×」の評価があり、洗浄試験1、洗浄試験2、洗浄試験3、洗浄試験4、貯蔵安定性、酵素活性安定性、低泡性、再付着防止性のいずれかに問題があることがわかる。
なお、実施例のなかでも、(A)の含有量が多いものは、タンパク質に対する洗浄性が高くなる傾向がみられる。しかし、(A)の含有量が多くても(B1)の含有量も多いものは、(A)が中和剤として働いてしまい、タンパク質に対する洗浄性が減少する傾向がみられる。
本発明の硬質表面用液体洗浄剤組成物は、洗浄に用いる水の硬度が高い場合であっても、デンプン汚れ、油脂汚れ、タンパク質汚れに対して十分な洗浄性、および再付着防止性が得られ、洗浄組成物の系の安定性に優れており、大いに期待される。