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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093964
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】排ガス浄化用触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 33/00 20060101AFI20240702BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20240702BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20240702BHJP
   B01J 27/053 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B01J33/00 C ZAB
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/10 A
B01J27/053 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210636
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】大関 武尚
(72)【発明者】
【氏名】平尾 哲大
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AB01
3G091BA11
3G091GB05W
3G091GB07W
4D148AA06
4D148AA13
4D148AA18
4D148AB01
4D148AB02
4D148BA01Y
4D148BA02Y
4D148BA03X
4D148BA06Y
4D148BA07Y
4D148BA08X
4D148BA15X
4D148BA18X
4D148BA19X
4D148BA25Y
4D148BA30Y
4D148BA31X
4D148BA32Y
4D148BA33X
4D148BA34Y
4D148BA41X
4D148BA42X
4D148BA45Y
4D148BB02
4D148BB16
4D148BC02
4D148BC05
4D148CC32
4D148CC47
4D148DA03
4D148DA20
4D148EA04
4G169AA03
4G169BA01B
4G169BA13A
4G169BB02A
4G169BB06B
4G169BB10A
4G169BB10B
4G169BB16A
4G169BB16B
4G169BC09A
4G169BC09B
4G169BC13B
4G169BC16A
4G169BC40B
4G169BC42B
4G169BC43B
4G169BC44B
4G169BC51B
4G169BC71A
4G169BC71B
4G169BC72A
4G169BC72B
4G169CA09
4G169DA06
4G169EA18
4G169EB14X
4G169EC02Y
4G169EC03Y
4G169EC28
4G169ED07
4G169EE01
4G169EE09
(57)【要約】
【課題】リンによる被毒の抑制と、優れた排ガス浄化性能とが両立された排ガス浄化用触媒を提供すること。
【解決手段】ここに開示される排ガス浄化用触媒は、内燃機関から排出される排ガスを浄化する排ガス浄化用触媒である。該排ガス浄化用触媒は、基材11と、基材11の上に配置され、触媒金属およびOSC材を含む触媒層20と、触媒層20の上に配置され、リン捕捉成分として硫酸カルシウムおよび/または炭酸カルシウムを含み、触媒金属を実質的に含まないリン捕捉層30とを備えている。リン捕捉層30は、排ガス流通方向における基材11の上流側の端部から下流側に向かって配置されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出される排ガスを浄化する排ガス浄化用触媒であって、
基材と、
前記基材の上に配置され、触媒金属およびOSC材を含む触媒層と、
前記触媒層の上に配置され、リン捕捉成分として硫酸カルシウムおよび/または炭酸カルシウムを含み、前記触媒金属を実質的に含まないリン捕捉層と
を備えており、
前記リン捕捉層は、排ガス流通方向における前記基材の上流側の端部から下流側に向かって配置されている、排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
前記触媒層は、
前記基材の上に配置され、前記触媒金属として少なくともPdを含む第1触媒層と、
前記第1触媒層の上に配置され、前記触媒金属として少なくともRhを含む第2触媒層と
を備えている、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項3】
前記リン捕捉層は、前記リン捕捉成分に加えてAl含有酸化物を含む、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項4】
前記Al含有酸化物の比表面積が50m/g以上である、請求項3に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項5】
前記基材の上流側端部から下流側端部までの排ガス流通方向の全長を100%としたときに、前記リン捕捉層の排ガス流通方向の平均長さは少なくとも30%以上である、請求項1または2に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項6】
前記リン捕捉層の排ガス流通方向における下流側において、前記触媒層が配置されていない、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用触媒に関する。詳しくは、内燃機関の排気経路に配置され、該内燃機関から排出される排ガスを浄化する排ガス浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
車両などの内燃機関から排出される排ガスには、窒素酸化物(NOx)、炭化水素(HC:Hydro-Carbon)、一酸化炭素(CO)などの有害成分が含まれる。これら有害成分を排ガス中から効率よく反応・除去するために、従来から排ガス浄化用触媒が利用されている。
【0003】
排ガス中には、潤滑油添加剤等に由来するリン化合物が含まれている。排ガスとともに当該リン化合物が排ガス浄化用触媒中に流入することにより、触媒金属等の周囲に付着することがある。このような現象は、一般的に「リン被毒」と呼ばれている。かかるリン被毒によって例えば触媒金属の触媒活性が低下し、排ガス浄化用触媒の浄化性能が低下し得る。このようなリン被毒を抑制に関連する従来技術文献として、例えば特許文献1~3が挙げられる。
【0004】
特許文献1には、シリコン化合物およびリン化合物による排ガス浄化用触媒成分の被毒を防止するために、カルシウムおよびマグネシウムの少なくとも一方の金属元素を含む非酸化物を含有する被毒防止層が設けることが記載されている。また、特許文献2には、リンによる被毒を抑制するために、特定の構造を有する複合酸化物を含むリン捕集層を設けることが記載されている。特許文献3には、排ガス浄化用触媒において触媒層の上流側に触媒金属を含まない毒捕捉領域を設けることが記載されている。また、当該毒捕捉領域の下流側では触媒金属の濃度が高い領域を設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許2897367号公報
【特許文献2】国際公開2021/261363号
【特許文献3】特開2013-6179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らが検討した結果、排ガス浄化用触媒は、特に上流側の表層部分においてリン被毒を受けやすいことを見出した。また、リンによる被毒は、触媒金属だけではなく酸素吸蔵放出能を有するOSC(oxygen storage capacity)材にも付着して、当該OSC材の酸素吸蔵放出能を低下させ得る。しかしながら、特許文献1では、OSC材のリン被毒については検討されていない。
【0007】
近年では、排ガス浄化システムの使用年数が増加しており、排ガス浄化用触媒に堆積するリン化合物の量も増加傾向にある。このため、大量のリンを捕捉するための技術が求められている。しかしながら、特許文献1および2に記載された構成では、リン捕捉性能が十分ではなく、大量のリン化合物が流入した場合には排ガス浄化用触媒の浄化性能が低下する。また、リン捕捉性能を高めるためにリン捕捉剤の含有量を増やした場合には、相対的に触媒金属やOSC材の含有量が減るため、排ガス浄化用触媒の浄化性能が低下する。
【0008】
また、特許文献3に記載される構成のように、触媒層の上流側に触媒金属を含まない毒捕捉領域を配置した場合には、例えばエンジン始動直後等、排ガス浄化用触媒が十分に暖機されていない状態での浄化性能が好ましくないことを見出した。本発明者らの検討によれば、触媒金属の量が同じであれば、排ガス浄化用触媒において上流側に触媒金属が配置されていることにより、エンジン始動直後でも好適な浄化性能が発揮される。このため、引用文献3に記載されている構成では、排ガス浄化用触媒の上流側において触媒金属が配置されないため暖機性能が著しく低下し得る。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、リンによる被毒の抑制と、優れた排ガス浄化性能とが両立された排ガス浄化用触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を実現するべく、ここに開示される技術によって下記の構成の排ガス浄化用触媒が提供される。
【0011】
ここに開示される排ガス浄化用触媒(1)は、内燃機関から排出される排ガスを浄化する排ガス浄化用触媒である。該排ガス浄化用触媒は、基材と、上記基材の上に配置され、触媒金属およびOSC材を含む触媒層と、上記触媒層の上に配置され、リン捕捉成分として硫酸カルシウムおよび/または炭酸カルシウムを含み、上記触媒金属を実質的に含まないリン捕捉層とを備えている。上記リン捕捉層は、排ガス流通方向における上記基材の上流側の端部から下流側に向かって配置されている。
【0012】
硫酸カルシウムおよび/または炭酸カルシウムは、硫酸バリウムなどの従来のリン捕捉成分と比較してグラム当たりのリン捕捉量が多い。このため、浄化性能を発揮させるための触媒金属やOSC材の含有量を十分に確保したうえで、リンの捕捉量も増加させることができる。また、リン捕捉層を触媒層の上であって、かつ、上流側端部を含む位置に配置することで、排ガス中に含まれるリン化合物を効果的に捕捉することができる。かかる構成によれば、リンによる被毒の抑制と、優れた排ガス浄化性能とが両立された排ガス浄化用触媒を実現することができる。
【0013】
ここに開示される排ガス浄化用触媒(2)では、上記排ガス浄化用触媒(1)において、上記触媒層が上記基材の上に配置され、上記触媒金属として少なくともPdを含む第1触媒層と、上記第1触媒層の上に配置され、上記触媒金属として少なくともRhを含む第2触媒層とを備えている。
これによって、HC、CO、およびNOxを効率よく浄化することができる。
【0014】
ここに開示される排ガス浄化用触媒(3)では、上記排ガス浄化用触媒(1)または(2)において、上記リン捕捉層は、上記リン捕捉成分に加えてAl含有酸化物を含む。
これにより、リン捕捉層のリンの捕捉性能をより向上することができる。
【0015】
ここに開示される排ガス浄化用触媒(4)では、上記排ガス浄化用触媒(3)において、上記Al含有酸化物の比表面積が50m/g以上である。
これにより、リン捕捉層のリン捕捉性能がより好適に向上する。
【0016】
ここに開示される排ガス浄化用触媒(5)では、上記排ガス浄化用触媒(1)~(4)のいずれかにおいて、上記リン捕捉層の延伸方向の長さは、上記基材の上流側端部から下流側端部までの全長を100%としたときに30%以上80%以下である。
これにより、触媒層の上流側はリン捕捉層によってリン被毒を抑制することができ、触媒層の下流側は排ガスと接触しやすくなるため浄化性能をより好適に発揮することができる。
【0017】
ここに開示される排ガス浄化用触媒(6)では、上記排ガス浄化用触媒(1)~(5)のいずれかにおいて、上記リン捕捉層の排ガス流通方向における下流側において、上記触媒層が配置されていない。
これにより、エンジン始動直後でも好適な浄化性能が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、一実施形態に係る排ガス浄化システムの模式図である。
図2図2は、一実施形態に係る排ガス浄化用触媒を模式的に示す斜視図である。
図3図3は、一実施形態に係る排ガス浄化用触媒における触媒層の構成を模式的に示す図である。
図4図4は、実施例1および2と比較例1~4のOSC維持率を比較したグラフである。
図5図5は、実施例1および2と比較例1~4の50%浄化達成温度を比較したグラフである。
図6図6は、実施例2および11と比較例12~14のOSC維持率を比較したグラフである。
図7図7は、実施例2および11と比較例12~14の50%浄化達成温度を比較したグラフである。
図8図8は、実施例1、2、21および22、比較例1および参考例23のOSC維持率を比較したグラフである。
図9図9は、実施例1、2、21および22、比較例1および参考例23の50%浄化達成温度を比較したグラフである。
図10図10は、実施例2および31~34と比較例12のOSC維持率を比較したグラフである。
図11図11は、実施例2および31~34と比較例12の50%浄化達成温度を比較したグラフである。
図12図12は、実施例2および41~44と比較例12のOSC維持率を比較したグラフである。
図13図13は、実施例2および41~44と比較例12の50%浄化達成温度を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。各図における寸法関係(長さ、幅、厚みなど)は、実際の寸法関係を必ずしも反映するものではない。また、本明細書において範囲を示す「A~B」(A,Bは任意の数値)の表記は、A以上B以下を意味する。
【0020】
<排ガス浄化システム>
図1は、排ガス浄化システム1の模式図である。排ガス浄化システム1は、内燃機関(エンジン)2と、排ガス浄化装置3と、を備えている。排ガス浄化システム1は、内燃機関2から排出される排ガスに含まれる有害成分、例えば、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)を浄化するとともに、排ガスに含まれる融資状物質(PM)を捕集する。なお、図1の矢印は、排ガスの流動方向を示している。また、以下の説明では、排ガスの流れに沿って、内燃機関2に近い側を上流側(「排ガス流入側」、「フロント側」ともいう。)、内燃機関2から遠ざかる側を下流側(「排ガス流出側」、「リア側」ともいう。)という。
【0021】
内燃機関2は、ここではガソリン車両のガソリンエンジンを主体として構成されている。ただし、内燃機関2は、ガソリン以外のエンジン、例えばディーゼルエンジンやハイブリッド車に搭載されるエンジン等であってもよい。内燃機関2は、燃焼室(図示せず)を備えている。燃焼室は、燃料タンク(図示せず)に接続されている。燃料タンクには、ここではガソリンが貯留されている。ただし、燃料タンクに貯留される燃料はディーゼル燃料(軽油)等であってもよい。燃焼室では、燃料タンクから供給された燃料が酸素と混合され、燃焼される。これにより、燃焼エネルギーが力学的エネルギーへと変換される。燃焼室は、排気ポートに連通している。排気ポートは、排ガス浄化装置3に連通している。燃焼された燃料ガスは、排ガスとなって排ガス浄化装置3に排出される。排ガスは、未燃成分(有害成分)を含んでいる。
【0022】
排ガス浄化装置3は、排気経路4と、エンジンコントロールユニット(Engine Control Unit:ECU)7と、センサ8と、第1触媒10と、第2触媒9と、を備えている。排気経路4は、排ガスが流通する排ガス流路である。本実施形態の排気経路4は、エキゾーストマニホールド5と、排気管6と、を備えている。エキゾーストマニホールド5の一端(上流側の端部)は、内燃機関2の排気ポート(図示せず)に接続されている。エキゾーストマニホールド5の他端(下流側の端部)は、排気管6に接続されている。排気管6の途中には、上流側から順に第1触媒10と第2触媒9とが配置されている。
【0023】
第2触媒9については従来と同様でよく、特に限定されない。第2触媒9は、例えば、従来公知の酸化触媒(DOC)、3元触媒、NOx吸着還元触媒(LNT)などであってもよい。第2触媒9は、例えば、担体と、該担体に担持された貴金属、例えば、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)などを備えていてもよい。なお、第2触媒9は必須の構成ではなく、省略することもできる。
【0024】
第1触媒10は、ここでは排ガスと最初に接触する触媒である。第1触媒10は、ここに開示される排ガス浄化用触媒の一例である。以下では、第1触媒10を「排ガス浄化用触媒10」ということがある。第1触媒10は、詳しくは後述するが、排ガスの有害成分であるHC、CO、およびNOxを浄化する機能を有する。なお、第1触媒10と第2触媒9との配置は、任意に可変であってもよい。また、第1触媒10と第2触媒9との個数は特に限定されず、それぞれ複数個が設けられていてもよい。また、第1触媒10の上流側には、第1触媒10および第2触媒とは異なる構成の触媒、例えば、通常運転時に(リーン条件下で)NOxを吸蔵し、燃料を多めに噴射した時に(リッチ雰囲気で)HC、COを還元剤としてNOxを浄化するNOx吸着還元(NSR:NOx Storage-Reduction)触媒等がさらに配置されていてもよい。
【0025】
ECU7は、内燃機関2と排ガス浄化装置3とを制御する。ECU7の構成については、従来と同様でよく、特に限定されない。ECU7は、例えば、プロセッサや集積回路である。ECU7は、内燃機関2や排ガス浄化装置3の各部位に設置されているセンサ(例えば、圧力センサ、酸素センサ、温度センサ等)8と、電気的に接続されている。センサ8で検知した情報は、入力ポート(図示せず)を介して電気信号としてECU7に受信される。ECU7は、例えば車両の運転状態や、内燃機関2から排出される排ガスの量、温度、圧力等の情報を受信する。ECU7は、例えば受信した情報に応じ、出力ポート(図示せず)を介して制御信号を送信する。ECU7は、例えば、内燃機関2から排出される排ガスの量等に応じて、排ガス浄化装置3の起動と停止とを制御する。
【0026】
<排ガス浄化用触媒>
図2は、ここに開示される排ガス浄化用触媒10を模式的に示す斜視図である。図3は、排ガス浄化用触媒10を筒軸方向に沿って切断した断面を模式的に示す断面図である。なお、図2および図3の矢印は、排ガスの流れを示している。すなわち、図2および図3では、左側が相対的に内燃機関2に近い排気経路4の上流側(フロント側)であり、右側が相対的に内燃機関2から遠い排気経路4の下流側(リア側)である。また、図2および図3において、符号Xは、排ガス浄化用触媒10(第1触媒10)の筒軸方向を表している。第1触媒10は、筒軸方向Xが排ガスの流動方向に沿うように排気経路4に設置されている。以下では、筒軸方向Xにうち、X1の側が上流側(排ガス流入側、フロント側ともいう。)であり、X2の側が下流側(排ガス流出側、リア側ともいう。)である。
【0027】
第1触媒10は、排ガス中の有害成分であるHC、CO、およびNOxを浄化する機能を有する。ここに開示される排ガス浄化用触媒10は、リン化合物を含む排ガスを好ましく浄化することができる。例えば排ガス浄化用触媒10は、オイル由来のリンが触媒に到達し、多量に被毒付着しても高い浄化性能を維持することができる。特に限定されないが、排ガス浄化用触媒10は、排ガス浄化用触媒1個あたりにおけるリン化合物の含有量がリン元素換算で、8g~13g程度であっても排ガス中のCO、HC、NOxを好適に浄化することができる。なお、排ガス浄化用触媒1個当たりのリン化合物の含有量は、XRF(蛍光X線分析法)等によって確認することができる。第1触媒10のX1側の端部は排ガスの流入口10aであり、X2側の端部は排ガスの流出口10bである。第1触媒10の外形は、ここでは円筒形状である。ただし、第1触媒10の外形は特に限定されず、例えば、楕円筒形状、多角筒形状、パイプ状、フォーム上、ペレット形状、繊維状等であってもよい。
【0028】
第1触媒10は、例えば図3に示すように、基材11と、基材11の上に形成された触媒層20と、触媒層20の上に形成されたリン捕捉層30と、を備えている。このような構成によれば、排ガス浄化用触媒10に流入した排ガスは、触媒層20よりも先にリン捕捉層30と接触する。このため、排ガス中に含まれるリン化合物が触媒層20に付着することを好適に抑制することができる。これにより、触媒層20に含まれる触媒金属の触媒機能やOSC(oxygen storage capacity)材の酸素吸蔵放出能がリンによって阻害されないため、好適な浄化性能を発揮させることができる。
【0029】
基材11は、第1触媒10の骨組みを構成するものである。基材11としては特に限定されず、従来この種の用途に用いられる種々の素材および形態のものが使用可能である。図示例では、基材11として、ストレートフロー構造の基材が用いられている。基材11は、例えば、コージェライト、チタン酸アルミニウム、炭化ケイ素等のセラミックスで構成されるセラミックス製であってもよいし、ステンレス鋼(SUS)、Fe-Cr-Al系合金、Ni-Cr-Al系合金等で構成されるメタル担体であってもよい。図2に示すように、基材11は、ここではハニカム構造を有している。基材11は、筒軸方向Xに規則的に配列された複数のセル(空洞)12と、複数のセル12を仕切る隔壁(リブ)14と、を備えている。特に限定されるものではないが、基材11の筒軸方向Xに沿う長さ(全長)は、概ね10mm~500mm、例えば50mm~300mmであってもよい。また、基材11の体積は、概ね0.1L~10L、例えば1L~5Lであってもよい。なお、本明細書において、「基材の体積」とは、基材11自体の体積(純体積)に加えて、内部のセル12の容積を含んだ見かけの体積(嵩容積)をいう。
【0030】
セル12は、排ガスの流路である。セル12は、筒軸方向Xに延びている。セル12は、基材11を筒軸方向Xに貫通する貫通孔である。セル12の形状、大きさ、数等は、例えば第1触媒10に供給される排ガスの流量や成分などを考慮して設計することができる。セル12の筒軸方向Xに直交する断面の形状は特に限定されない。セル12の断面形状は、例えば正方形、平行四辺形、長方形、台形等の矩形や、その他の多角形(例えば三角形、六角形、八角形)、円形状等の種々の幾何学形状であってもよい。隔壁14は、セル12に面し、隣り合うセル12の間を区切っている。特に限定されるものではないが、隔壁14の厚み(表面に直交する方向の寸法。以下同じ。)は、機械的強度を向上や、圧損を低減する観点から、概ね10μm~500μm、例えば20μm~100μmであってもよい。
【0031】
触媒層20は、排ガスを浄化する場である。ここに開示される触媒層20は、触媒金属とOSC材とを含んでいる。第1触媒10に流入した排ガスは、第1触媒10の流路内(セル12)を流動している間に触媒層20と接触する。これにより、排ガス中の有害成分が浄化される。例えば排ガスに含まれるHCやCOは、触媒層20の触媒機能によって酸化され、水や二酸化炭素等に変換(浄化)される。また、例えばNOxは、触媒層20の触媒機能によって還元され、窒素に変換(浄化)される。
【0032】
触媒層20は、図3に示すように、筒軸方向Xと直交する厚み方向において、後述するリン捕捉層30よりも、基材11の表面に近い側に設けられている。触媒層20は、基材11の表面、具体的には隔壁14の上に設けられている。ただし、触媒層20は、その一部またはその全部が、触媒層20の内部に浸透していてもよい。触媒層20は、典型的には連通した多数の空隙を有する多孔質体である。
【0033】
図3に示す例では、触媒層20は、筒軸方向Xに直交する厚み方向において、相互に構成の異なる二つの触媒層が積層された積層構造を有している。すなわち、触媒層20は、ここでは、基材11の隔壁14の表面に設けられた第1触媒層21と、第1触媒層21の上に設けられた第2触媒層22と、を備えている。第1触媒層21と第2触媒層22とは、長さや厚みが相互に異なっていてもよい。また、第1触媒層21と第2触媒層22との間には、さらに組成や性状の異なる第3の層(中間層)が設けられていてもよい。触媒層20は、第1触媒層21と、1つまたは2つ以上の第3の層と、第2触媒層22とを備えていてもよい。
【0034】
第1触媒層21と第2触媒層22とは、それぞれ触媒金属を含んでいる。触媒金属は、排ガス中の有害成分を浄化する貴金属である。触媒金属としては特に限定されず、従来この種の触媒において用いられ得る貴金属を用いてよい。かかる貴金属の具体例としては、白金族元素である、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir);金(Au);銀(Ag)が挙げられる。これらは、単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、触媒性能の観点から、Pt、Rh、Pd、IrおよびRuが好ましく、Pt、RhおよびPdがより好ましい。触媒金属の含有量は、特に限定されないが、筒軸方向Xに沿って触媒層20が形成されている基材の部分の体積1Lあたり、例えば0.05g/L~10g/Lであることが好ましく、0.1g/L~5g/Lであってもよい。
【0035】
ここに開示される排ガス浄化用触媒10では、第1触媒層21と第2触媒層22とは、相互に異なる種類の触媒金属を含んでいることが好ましい。例えば、第1触媒層21が酸化活性の高い酸化触媒を含み、第2触媒層22が還元活性の高い還元触媒を含むとよい。具体的には、第1触媒層21は、触媒金属としてPdおよびPtのうち少なくとも一つを含むことが好ましく、Pdを含むことがより好ましい。また、第2触媒層22は、還元活性の高い還元触媒を含む。第2触媒層22は、触媒金属としてRhを含むことが好ましい。これにより、排ガス中に含まれる、HC、COおよびNOxをいずれも好適に浄化することができる。また、触媒金属を異なる層に配置することにより、貴金属のシンタリング等が抑制されて、それぞれの触媒金属の浄化性能が好適に発揮され得る。
【0036】
ここに開示される排ガス浄化用触媒10では、第1触媒層21が触媒金属としてPdを含み、第2触媒層22が触媒金属としてRhを含むことが好ましい。Rhは、HC、CONOxのいずれの浄化にも寄与が高く、特にNOxの浄化への寄与が高い。そして、触媒層20において表層側(すなわち第2触媒層22)にRhを配置することでHC、CO、NOxを効率よく浄化することができるため好ましい。一方で、Rhは、Pdと比較してリン被毒によって活性低下しやすい傾向にある。このため、リン被毒環境下では、Rhを表層側に配置することは好ましくない。そこで、ここに開示される排ガス浄化用触媒10では、後述するリン捕捉層30を、Rhを含む第2触媒層22の上に設けることにより、第2触媒層22のリン被毒を好適に抑制する。かかる構成によれば、Rhのリン被毒を好適に抑制することができるため、Rhを表層側に配置することができ、HC、COおよびNOxを、いずれも好適に浄化することができる排ガス浄化用触媒が実現される。
【0037】
触媒金属は、排ガスとの接触面積を高める観点から、十分に小さい粒子状であることが好ましい。触媒金属の平均粒子径は、概ね0.1nm~15nm、例えば10nm以下、さらには5nm以下であるとよい。なお、本明細書において、「平均粒子径」とは、透過電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)観察で求められる20個以上の粒径の個数基準の平均値である。
【0038】
第1触媒層21と第2触媒層22とは、それぞれ、触媒金属を担持する担体を含有している。担体としては特に限定されず、従来この種の触媒において用いられ得る無機化合物を用いてよい。担体は、比表面積が大きい無機多孔質体であるとよい。なお、本明細書において「比表面積」とは、特に記載のない限り、BET法により測定される比表面積を指す。担体としては、例えば、アルミナ(Al)、ジルコニア(ZrO)、シリカ(SiO)、セリア(CeO)、チタニア(TiO)等の金属酸化物や、その固溶体(例えば、セリア-ジルコニア複合酸化物等)、あるいはそれらの組み合わせが挙げられる。担持材料の形状(外形)は特に限定されないが、より大きい比表面積を確保できるという観点から、粉末状のもの(例えば、アルミナ粉末等)が好ましく用いられ得る。担体粒子としては、比表面積が50m/g以上500m/g以下(例えば200m/g以上400m/g以下)であることが、耐熱性、構造安定性の観点からは好ましい。また、担体粒子の平均粒子径は、例えば0.001μm~10μm(好ましくは0.01μm~5μm)程度であるとよい。
【0039】
第1触媒層21と第2触媒層22とは、それぞれOSC材を含んでいる。OSC材は、排ガスの空燃比がリーンであるときに排ガス中の酸素を吸蔵し、排ガスの空燃比がリッチであるときに吸蔵されている酸素を放出する機能(酸素吸蔵放出能)を有し、雰囲気変動を緩和する作用を有する成分である。OSC材は、触媒金属の担体として機能していてもよいし、触媒金属を担持していない非担持体であってもよい。OSC材としては、具体的に例えば、酸素吸蔵能の高いセリア(CeO2)を含む金属酸化物(Ce含有酸化物)が挙げられる。Ce含有酸化物は、セリアであってもよく、セリアとセリア以外の金属酸化物との複合酸化物であってもよい。Ce含有酸化物は、耐熱性や耐久性を向上する観点等から、Zrを含む酸化物、例えばCeO-ZrO複合酸化物(CZ複合酸化物)であるとよい。CZ複合酸化物は、例えばLa、Pr10、Nd、Y等の希土類金属酸化物をさらに含んでいてもよい。
【0040】
CZ複合酸化物は、Ceリッチであってもよく、Zrリッチであってもよい。いくつかの態様において、セリアの混合割合は、CZ複合酸化物の全体を100質量%としたときに、概ね10質量%~70質量%、例えば20質量%~60質量%であるとよい。セリアの混合割合が所定値以上であることにより、酸素吸蔵放出能をより向上させることができる。一方で、セリアの混合割合が所定値以下であることにより、耐熱性を向上することができる。上記範囲内であるとここに開示される技術の効果と耐熱性とを高いレベルで兼ね備えることができる。
【0041】
触媒層20は、上記した触媒金属、OSC材に加えて、他の成分を含有していてもよい。具体的に例えば、触媒層20は助触媒成分を含んでいてもよい。助触媒成分の好適例としては、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属元素が挙げられる。触媒層20は、例えばアルカリ土類金属元素の酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩、ハロゲン化物等の形態で含有されていてもよい。触媒層20における、このようなBa等のアルカリ土類金属元素の含有量は、筒軸方向Xに沿って触媒層20が形成されている基材の部分の体積1Lあたり、例えば0.1g/L~10g/L(好ましくは1g/L~10g/L)程度であるとよい。特に限定されないが、第1触媒層21において、触媒金属としてのPdと、助触媒成分(特にはBa)とを共存させることにより、BaからPdへの電子供与によりPdのシンタリングが抑制されて、Pdの触媒活性を向上することができる。したがって、助触媒成分を含む場合には、第1触媒層21に助触媒成分を含み、Pdと共存させることが好ましい。
【0042】
触媒層20は、排ガスの流入口10aから下流側に向かって、筒軸方向Xに沿うように設けられていてもよいし、排ガスの流出口10bから上流側に向かって、筒軸方向Xに沿うように設けられていてもよい。好ましくは、触媒層20は排ガスの流入口10aから下流側に向かって、筒軸方向Xに沿うように設けられているとよい。触媒層20は、基材11の上に連続的に設けられていてもよく、断続的に設けられていてもよい。触媒層20の筒軸方向Xの全体のコート幅(平均長さ)L1は、例えば基材11の大きさや排ガス浄化用触媒10に流通する排ガスの流量等を考慮して設計すればよい。いくつかの態様において、触媒層20の筒軸方向Xのコート幅L1は、排ガス浄化用触媒10の筒軸方向Xの全長をLとしたときに、0.5L≦L1≦Lを満たし、好ましくは、0.8L≦L1≦L、例えば、0.9L≦L1≦Lを満たしている。
【0043】
触媒層20のコート量(成形量)は、特に限定されない。触媒層20のコート量は、筒軸方向Xに沿って触媒層20が形成されている基材の部分の体積1Lあたり、例えば10g/L~500g/Lであり、100g/L~300g/Lであってもよい。上記範囲を満たすことにより、有害成分の浄化性能の向上と圧損の低減とを高いレベルで両立することができる。また、触媒層20の厚みは、特に限定されず、耐久性や耐剥離性等を考慮して適宜設計すればよい。触媒層20の厚み(筒軸方向Xに直交する厚み方向の平均長さ)は、例えば1~100μmであり、5~100μmであってもよい。
【0044】
リン捕捉層30は、排ガス中に含まれるリン化合物を捕捉する機能を有する。リン捕捉層30がリン化合物を捕捉することにより、触媒層20がリンによって被毒されて浄化性能が低下することを抑制することができる。本発明者らの検討によれば、排ガス浄化用触媒10は、排ガスの流入側(上流側)の表層部分が最もリン被毒を受けやすいことを見出した。このため、図3に示すように、リン捕捉層30は、排ガス浄化用触媒10の筒軸方向Xと直交する厚み方向において触媒層20の上(すなわち、触媒層20よりも基材11の表面から離れた側)であって、かつ、流入口10a(すなわち、上流側の端部)から下流側に向かって、筒軸方向Xに沿うように配置される。これにより、排ガス中に含まれるリン化合物を好適に捕捉することができ、触媒層20がリンによって被毒され難く、十分な浄化性能が確保される。特に限定されないが、リン捕捉層30におけるリン捕捉成分の含有量は、筒軸方向Xに沿ってリン捕捉層30が形成されている基材の部分の体積1Lあたり、例えば1g/L~100g/Lであることが好ましく、20g/L~80g/Lであることがより好ましく、30g/L~80g/Lであることがさらに好ましい。
【0045】
リン捕捉層30は、リン捕捉成分として硫酸カルシウムおよび/または炭酸カルシウムを含む。リンを捕捉する成分として、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、マグネシウム(Mg)等が知られているが、本発明者らは、これらの中でも、カルシウムはグラム当たりのリン捕捉量が非常に大きく、少ない添加量で大量のリンを捕捉できることを見出した。また、カルシウムを硫酸カルシウムおよび炭酸カルシウムとしてリン捕捉層30に含ませることにより、リンとの反応性がさらに向上することも見出した。これにより、リン捕捉成分として硫酸カルシウムおよび/または炭酸カルシウムを含むことにより、従来のリン捕捉成分と同程度の含有量であってもリンの捕捉量を大幅に増加させることができる。したがって、排ガス浄化用触媒10において触媒金属やOSC材等の量が十分に確保されるため、浄化性能を十分に発揮しつつ、リン被毒を抑制することができる。なお、リン捕捉層に硫酸カルシウムおよび/または炭酸カルシウムが含まれることは、例えばSEM-EDX(Scanning Electron Microscopy - Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)、EPMA(Electron Probe Micro Analyzer)によるコート層(リン捕捉層)の観察、あるいは掻き取ったコート層(リン捕捉層)のXRD(X-ray Diffraction)分析によって確認することができる。
【0046】
さらに、本発明者らが検討した結果によれば、カルシウムは、他の材料と比較してリンとの反応性が高く、リンとの化合物の安定性が高いことを見出した。具体的には、例えばアルミナ等の他材料では、一度リンと化合してリンを捕捉したとしても、高温環境(例えば800℃以上の環境)や酸化還元の厳しい雰囲気下では分解し、リンを放出する。そして、放出されたリンはいずれ触媒層20に到達して触媒金属(例えば、RhやPd)が被毒される。一方で、本発明者らが検討した結果によれば、カルシウムはリンとの化合物が非常に安定で、例えば1000℃以上の高温環境や酸化還元の厳しい雰囲気下でも化学状態が変わらず、捕捉したリンを放出しない。このように、ここに開示される排ガス浄化用触媒10では、カルシウムをリン捕捉成分として用いることにより、リンの再放出も抑制して、リンが触媒層20へ移動することを防止することができる。したがって、より好適に触媒層20をリン被毒から守ることができる。
【0047】
リン捕捉層30は、上記リン捕捉成分に加えて、Al含有酸化物を含むことが好ましい。リン捕捉層30がAl含有酸化物を含むことにより、例えばリンの捕捉性能がより向上し得る。また、リン捕捉層30がAl含有酸化物を含むことにより、リン捕捉層30の耐熱性を向上する機能、リン捕捉層30の耐久性を向上する機能、および、触媒層20からリン捕捉層30の剥離を抑制する機能のうち少なくとも1つが向上する。Al含有酸化物は、アルミナ(Al)であってもよいし、アルミナとアルミナ以外の金属酸化物(例えば希土類金属酸化物)との複合酸化物であってもよい。Al含有酸化物は、耐熱性や耐久性を向上する観点から、例えば、La-Al複合酸化物であるとよい。La-Al複合酸化物は、Laリッチであってもよく、Alリッチであってもよい。La-Al複合酸化物におけるアルミナ以外の金属酸化物の混合割合は特に限定されない。使用に伴う経年劣化を抑制する等の観点から、La-Al複合酸化物の全体を100質量%としたときに、アルミナ以外の金属酸化物が例えば50質量%未満であり、0.1質量%~20質量%であってよい。
【0048】
ここに開示される排ガス浄化用触媒10においては、リン捕捉層30は、比表面積が20m/g以上であるAl含有酸化物を含むことが好ましく、比表面積が50m/g以上であるAl含有酸化物を含むことがより好ましい。より好ましくは、リン捕捉層30は、比表面積が50m/g以上であるアルミナを含むとよい。アルミナの比表面積は、80m/g以上であることが好ましく、100m/g以上であることがより好ましい。比表面積の上限は、特に限定されないが、例えば220m/g以下であってもよく、200m/g以下であることが好ましい。比表面積が50m/g以上であるアルミナを用いることにより、排ガス中に含まれるリン化合物との接触点が増えてより好適にリン化合物を捕捉することができる。これにより、触媒層20のリン被毒をさらに抑制することができるため、排ガス浄化用触媒10の浄化性能が向上する
【0049】
排ガス浄化用触媒10において、上記のとおり、リン捕捉成分に加えてAl含有酸化物を含むことによりリンの捕捉量を増加させることができる。したがって、かかる観点からは、アルミナの含有量は、筒軸方向Xに沿ってリン捕捉層30が形成されている基材の部分の体積1Lあたり、例えば20g/L以上であることが好ましく、30g/L以上であることがより好ましい。一方で、リン捕捉層30がアルミナを多く含みすぎる場合には、リン捕捉層30の厚みが厚くなる虞があり、排ガスが触媒層20に接触し難くなるため好ましくない。したがって、かかる観点からは、アルミナの含有量は、筒軸方向Xに沿ってリン捕捉層30が形成されている基材の部分の体積1Lあたり、90g/L以下であることが好ましく、80g/L以下であることがより好ましい。
【0050】
触媒層20は、上記した触媒金属、Al含有酸化物に加えて、他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、例えばシリカゾル等のバインダ、各種添加剤等が挙げられる。
【0051】
上記したように、触媒層20は触媒金属とOSC材とを含んでいる。触媒金属は、リン被毒を受けた場合には、触媒性能が低下する。また、OSC材がリン被毒した場合には、酸素吸蔵放出能が好適に発揮されなくなるため、触媒全体としての浄化性能が低下する。本発明者らが検討した結果によれば、上記したようにリンの捕捉性能が高い硫酸カルシウムや炭酸カルシウムを触媒層20中に混合した場合であっても、触媒金属やOSC材に対するリン被毒を抑制することは難しい。このため、ここに開示される排ガス浄化用触媒10においては、図3に示すように、リン捕捉層30と触媒層20とは独立しており、リン捕捉層30が触媒層20の上に配置されている。また、上記した観点から、リン捕捉層30は触媒金属を実質的に含まないことが好ましく、リン捕捉層30は触媒金属およびOSC材を実質的に含まないことがより好ましい。
なお、本明細書において、リン捕捉層がある成分を実質的に含まないとは、リン捕捉層を形成するにあたって少なくとも意図的に当該成分を混入させないことを意味する。したがって、例えば他の層の形成にあたって、もしくは排ガス浄化用触媒の使用段階において、他の層から意図せず上記成分が混入することは許容され得る。また、不可避的な微量成分の混在が許容されることは言うまでもない。特に限定されるものではないが、リン捕捉層がある成分を実質的に含まないとは、例えば、リン捕捉層の全質量に対する当該成分の含有量が、1質量%以下(好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0質量%)であることをいう。
【0052】
リン捕捉層30は、上記したとおり、排ガスの流入口10a(すなわち上流側の端部)から下流側に向かって、筒軸方向Xに沿うように設けられている。リン捕捉層30は、触媒層20の上に連続的に設けられていることが好ましい。これにより、触媒層20のリン被毒を好適に抑制することができる。特に限定されないが、排ガス浄化用触媒10の筒軸方向Xにおいて上流側の端部を0%、下流側の端部を100%としたときに、リン捕捉層30は、少なくとも30%以上のコート幅(平均長さ)で設けられていることが好ましく、40%以上のコート幅で設けられていてもよく、50%以上のコート幅で設けられていてもよく、例えば100%のコート幅で(すなわち筒軸方向Xの全長に)設けられていてもよい。これにより、流入した排ガスは触媒層20に接触するよりも先にリン捕捉層30と接触するため、リン化合物を好適に捕捉することができ、触媒層20のリン被毒が抑制される。一方で、排ガスと触媒層20との接触性の観点からは、排ガス浄化用触媒10の上流側において触媒層20の上にリン捕捉層30が配置され、下流側では触媒層20の上にリン捕捉層30が配置されていなくてもよい。具体的に、排ガス浄化用触媒10の筒軸方向Xにおいて上流側の端部を0%、下流側の端部を100%としたときに、リン捕捉層30は、90%以下のコート幅で設けられていることが好ましく、80%以下のコート幅で設けられていることがより好ましく、70%以下のコート幅で設けられていてもよく、60%以下のコート幅で設けられていてもよい。例えば、リン捕捉層30は、筒軸方向Xの長さを100%としたときに、30%以上90%以下(好ましくは30%以上80%以下)のコート幅で上流側の端部から下流側に向けて設けられているとよい。これにより、排ガス浄化用触媒10の上流側ではリン被毒が好適に抑制され、下流側では排ガスと触媒層20とが好適に接触するため、排ガス浄化用触媒10の全体としての浄化性能が向上する。
【0053】
ここに開示される排ガス浄化用触媒10では、リン捕捉層30の下流側に、触媒金属を含む触媒層20が配置されていないことが好ましい。排ガス浄化用触媒10において触媒金属の含有量が同じである場合、触媒金属を下流側に配置すると排ガス浄化用触媒10が十分に暖機されていない状態での浄化性能が低下するためである。これは、触媒の暖気過程では上流側から順に温まるため、触媒金属量が同じであれば上流側に触媒金属を配置することにより、暖機中であっても浄化性能を確保することができる。一方で、下流側は上流側と比較すると暖機が遅く、下流側に触媒金属を配置した場合には、当該触媒金属の活性温度になるまで浄化性能が十分に発揮されない。したがって、上記観点からは、リン捕捉層30の下流側に触媒層20が配置されていないことが好ましい。
【0054】
リン捕捉層30のコート量(成形量)は、特に限定されない。リン捕捉層30のコート量は、筒軸方向Xに沿ってリン捕捉層30が形成されている基材の部分の体積1Lあたり、例えば10g/L~200g/Lであり、30g/L~100g/Lであってもよく、50g/L~100g/Lであってもよい。上記範囲を満たすことにより、リン捕捉層30によるリン捕捉機能を好適に発揮させることができる。また、リン捕捉層30の厚みは、特に限定されず、耐久性や耐剥離性等を考慮して適宜設計すればよい。リン捕捉層30の厚み(筒軸方向Xに直交する厚み方向の平均長さ)は、例えば1~100μmであり、5~100μmであってもよい。
【0055】
<排ガス浄化用触媒の製造方法>
上記したような排ガス浄化用触媒10は、例えば以下の手順によって作製することができる。まず、基材11と、第1触媒層21を形成するための第1触媒層形成用スラリーと、第2触媒層22を形成するための第2触媒層形成用スラリーと、リン捕捉層30を形成するためのリン捕捉層形成用スラリーと、を用意する。第1触媒層形成用スラリーおよび第2触媒層形成用スラリーについては、三元触媒を含有する触媒層を形成するための公知の触媒層形成用スラリーと同様であってよい。例えば、第1触媒層形成用スラリーおよび第2触媒層形成用スラリーは、貴金属源(例えば、貴金属をイオンとして含む溶液)、担体、および任意成分(バインダ、各種添加剤等)を、分散媒に分散させることにより調製することができる。また、リン捕捉層形成用スラリーは、リン捕捉成分としての硫酸カルシウムおよび/または炭酸カルシウム、Al複合酸化物、および任意成分(バインダ、各種添加剤等)を、分散媒に分散させることにより調製することができる。
【0056】
次いで、第1触媒層形成用スラリーと、第2触媒層形成用スラリーと、リン捕捉層形成用スラリーとを基材11に塗工する。これらのスラリーの塗工は、従来使用されている方法、例えば含浸法やウォッシュコート法等で行うことができる。一例では、まず、上記で調製した第1触媒層形成用スラリーを基材11の流入口10a側の端部からセル12に流入させ、筒軸方向Xに沿って所定の長さまで供給し、乾燥した後、焼成する。次いで、上記で調製した第2触媒層形成用スラリーを基材11の流入口10a側の端部からセル12に流入させ、筒軸方向Xに沿って所定の長さまで供給し、乾燥した後、焼成する。そして、リン捕捉層形成用スラリーを基材11の流出口10b側の端部からセル12に流入させ、筒軸方向Xに沿って所定の長さまで供給し、乾燥した後、焼成する。スラリーの乾燥や焼成の方法(時間や温度等)は従来と同様であってよい。これにより、基材11に触媒層20およびリン捕捉層30を形成することができる。このようにして排ガス浄化用触媒10を形成することができる。
【0057】
上述した排ガス浄化用触媒は、自動車やトラック等の車両や、自動二輪車や原動機付き自転車をはじめとして、船舶、タンカー、水上バイク、パーソナルウォータークラフト、船外機などのマリン用製品、草刈機、チェーンソー、トリマーなどのガーデニング用製品、ゴルフカート、四輪バギーなどのレジャー用製品、コージェネレーションシステムなどの発電設備、ゴミ焼却炉などの内燃機関から排出される排ガスの浄化に好適に用いることができる。
【0058】
以下、本発明に関する試験例を説明するが、本発明を以下の試験例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の試験例において「g/L」との単位は、円筒軸方向において、所定の層が形成された基材の部分の体積1L当たりの含有量を示す。
【0059】
<第1の試験>
ここでは、組成が異なる5種類のスラリー(A)~(E)を用いて構成が異なる排ガス浄化用触媒を作製し、リン被毒を好適に抑制できる構成を検討した。
【0060】
1.各例の作製
まず、円筒形状のハニカム基材(コージェライト製、容量:1.2L、基材の直径:118mm、基材の全長:112mm)を用意した。次に、以下の5種類のスラリー(第1触媒層形成用スラリー、第2触媒層形成用スラリー、リン捕捉層形成用スラリー、第1混合層形成用スラリー、第2混合層形成用スラリー)を調製した。なお、アルミナとしてはLaを含む複合化アルミナ(Al)であり、比表面積が100m/gであるものを用いた。また、OSC材としては、La、Pr、NdおよびYを添加成分として含むセリア-ジルコニア(CeO-ZrO)複合酸化物を用いた。
(A)第1触媒層形成用スラリー:OSC材と、アルミナと、硝酸Pd水溶液と、助触媒としての硫酸バリウム(BaSO)と、アルミナ系バインダとを蒸留水中で混合した。そして、この混合液をミリングして粒子径を制御し、第1触媒層形成用スラリーを調製した。
(B)第2触媒層形成用スラリー:OSC材と、アルミナと、塩酸Rh水溶液と、アルミナ系バインダとを蒸留水中で混合した。そして、この混合液をミリングして粒子径を制御し、第2触媒層形成用スラリーを調製した。
(C)リン捕捉層形成用スラリー:リン捕捉成分としての硫酸カルシウム(CaSO)と、アルミナと、アルミナ系バインダとを蒸留水中で混合した。そして、この混合液をミリングして粒子径を制御し、リン捕捉層形成用スラリーを調製した。
(D)第1混合層形成用スラリー:OSC材と、アルミナと、硝酸Pd水溶液と、リン捕捉成分としての硫酸カルシウム(CaSO)と、アルミナ系バインダとを蒸留水中で混合した。そして、この混合液をミリングして粒子径を制御し、触媒金属としてのPdと、リン捕捉成分としての硫酸カルシウムとを含む第1混合層形成用スラリーを調製した。
(E)第2混合層形成用スラリー:OSC材と、アルミナと、塩酸Rh水溶液と、リン捕捉成分としての硫酸カルシウム(CaSO)と、アルミナ系バインダとを蒸留水中で混合した。そして、この混合液をミリングして粒子径を制御し、触媒金属としてのRhと、リン捕捉成分としての硫酸カルシウムとを含む第2混合層形成用スラリーを調製した。
【0061】
[比較例1]
第1触媒層形成用スラリーを、基材の上流側(排ガス流入側)から流し込み、ブロアーで吸引することで、基材の筒軸方向の全長の100%に当たる部分にコートした。当該第1触媒層形成用スラリーのコート量は、Pdの含有量が2.83g/Lとなるようにした。そして、これを250℃の乾燥機で1時間乾燥した後、500℃の電気炉で1時間焼成した。これにより、基材の隔壁の表面に第1触媒層を形成した。
次に、第2触媒層形成用スラリーを、基材の上流側から流し込み、ブロアーで吸引することで、基材の筒軸方向の全長の100%に当たる部分にコートした。当該第2触媒層形成用スラリーのコート量は、Rhの含有量が0.12g/Lとなるようにした。そして、これを250℃の乾燥機で1時間乾燥した後、500℃の電気炉で1時間焼成した。これにより、上記形成した第1触媒層の表面に第2触媒層を形成した。このようにして、リン捕捉層を有しない、比較例1の排ガス浄化用触媒を得た。
【0062】
[比較例2]
第1触媒層形成用スラリーを比較例1と同様にして基材にコートし、乾燥および焼成した。これにより、基材の隔壁の表面に第1触媒層を形成した。次に、第2混合層形成用スラリーを、基材の上流側から流し込み、ブロアーで吸引することで、基材の筒軸方向の全長の100%に当たる部分にコートした。当該第2混合層形成用スラリーのコート量は、Rhの含有量が0.12g/L、リン捕捉成分の含有量が硫酸カルシウム換算で30g/Lとなるようにした。そして、これを250℃の乾燥機で1時間乾燥した後、500℃の電気炉で1時間焼成した。これにより、上記形成した第1触媒層の表面に、触媒金属としてのRhと、リン捕捉成分としての硫酸カルシウムとを含む第2混合層を形成した。このようにして、第1触媒層の表面に第2混合層を有する、比較例2の排ガス浄化用触媒を得た。
【0063】
[比較例3]
第1混合層形成用スラリーを、基材の上流側から流し込み、ブロアーで吸引することで、基材の筒軸方向の全長の100%に当たる部分にコートした。当該第1混合層形成用スラリーのコート量は、Pdの含有量が2.83g/L、リン捕捉成分の含有量が硫酸カルシウム換算で30g/Lとなるようにした。そして、これを250℃の乾燥機で1時間乾燥した後、500℃の電気炉で1時間焼成した。これにより、基材の隔壁の表面に、触媒金属としてのPdと、リン捕捉成分としての硫酸カルシウムとを含む第1混合層を形成した。次に、第2触媒層形成用スラリーを比較例1と同様にして基材にコートし、乾燥および焼成した。これにより、上記形成した第1混合層の表面に第2触媒層を形成した。このようにして、第1混合層の表面に第2触媒層を有する、比較例3の排ガス浄化用触媒を得た。
【0064】
[比較例4]
第1触媒層形成用スラリーを比較例1と同様にして基材にコートし、乾燥および焼成した。これにより、基材の隔壁の表面に第1触媒層を形成した。次に、第2触媒層形成用スラリーを比較例1と同様にして基材にコートし、乾燥および焼成した。これにより、第1触媒層の表面に、第2触媒層を形成した。そして、リン捕捉層形成用スラリーを、基材の下流側(排ガス流出側)から流し込み、ブロアーで吸引することで、基材の筒軸方向の下流側から40%に当たる部分(すなわち、基材の筒軸方向の上流側の端部を0%、下流側の端部を100%としたときに、60%~100%の部分)にコートした。当該リン捕捉層形成用スラリーのコート量は、リン捕捉成分の含有量が硫酸カルシウム換算で30g/Lとなるようにした。これを250℃の乾燥機で1時間乾燥した後、500℃の電気炉で1時間焼成した。これにより、上記形成した第2触媒層の表面であって、基材の筒軸方向の下流側から40%の部分にリン捕捉成分として硫酸カルシウムを含むリン捕捉層を形成した。このようにして、基材の筒軸方向の全長において、第1触媒層と、第2触媒層とを有し、基材の筒軸方向の下流側から40%の部分にリン捕捉層を有する比較例4の排ガス浄化用触媒を得た。
【0065】
[実施例1]
第1触媒層形成用スラリーを、基材の上流側(排ガス流入側)から流し込み、ブロアーで吸引することで、基材の筒軸方向の全長の100%に当たる部分にコートした。当該第1触媒層形成用スラリーのコート量は、Pdの含有量が2.83g/Lとなるようにした。そして、これを250℃の乾燥機で1時間乾燥した後、500℃の電気炉で1時間焼成した。これにより、基材の隔壁の表面に、触媒金属としてPdを含む第1触媒層を形成した。
次に、第2触媒層形成用スラリーを、基材の上流側から流し込み、ブロアーで吸引することで、基材の筒軸方向の全長の100%に当たる部分にコートした。当該第2触媒層形成用スラリーのコート量は、Rhの含有量が0.12g/Lとなるようにした。そして、これを250℃の乾燥機で1時間乾燥した後、500℃の電気炉で1時間焼成した。これにより、上記形成した第1触媒層の表面に、触媒金属としてRhを含む第2触媒層を形成した。
そして、リン捕捉層形成用スラリーを、基材の上流側から流し込み、ブロアーで吸引することで、基材の筒軸方向の全長の100%に当たる部分にコートした。当該リン捕捉層形成用スラリーのコート量は、アルミナの含有量が50g/L、リン捕捉成分の含有量が硫酸カルシウム換算で30g/Lとなるようにした。これを250℃の乾燥機で1時間乾燥した後、500℃の電気炉で1時間焼成した。これにより、上記形成した第2触媒層の表面に、リン捕捉成分として硫酸カルシウムを含むリン捕捉層を形成した。このようにして、基材の筒軸方向の全長において、第1触媒層と、第2触媒層と、リン捕捉層とを有する実施例1の排ガス浄化用触媒を得た。
【0066】
[実施例2]
リン捕捉層形成用スラリーを、基材の上流側から流し込み、ブロアーで吸引することで、基材の筒軸方向の上流側から40%に当たる部分(すなわち、基材の筒軸方向の上流側の端部を0%、下流側の端部を100%としたときに、0%~40%の部分)にコートした。このこと以外は実施例1と同様にした。このようにして、基材の筒軸方向の全長において、第1触媒層と、第2触媒層とを有し、基材の筒軸方向の上流側から40%の部分にリン捕捉層を有する実施例2の排ガス浄化用触媒を得た。
【0067】
[リン被毒耐久試験]
各例の排ガス浄化用触媒において、リン被毒ありの耐久試験と、リン被毒なしの耐久試験とをそれぞれ実施した。リン被毒ありの耐久試験は、以下のようにして実施した。まず、5LのV型エンジンの排気系に各例の排ガス浄化用触媒を設置した。次いで、市販のガソリンに高濃度のリン(P)を含有するエンジンオイルを混入させ、エンジン内でガソリンを燃焼させることにより、リン化合物を含む排ガスを生成した。リン化合物を含有する排ガスを各例の排ガス浄化用触媒に通過させることでリン被毒を行いつつ、触媒温度950℃で150時間保持するリン被毒ありの耐久試験を行った。なお、このときの排ガス浄化用触媒へのリン被毒は、触媒1個当たりリン元素換算で13gとなるように制御した。
【0068】
リン被毒なしの耐久試験は、以下のようにして実施した。5LのV型エンジンの排気系に各例の排ガス浄化用触媒を設置した。そして、エンジン内で市販のガソリンを燃焼させ、触媒温度950℃で150時間保持することによりリン被毒なしの耐久試験を行った。
【0069】
[OSC維持率の評価]
各例の排ガス浄化用触媒のOSC維持率は、リン被毒ありの耐久試験を実施した排ガス浄化用触媒のOSC量Aと、リン被毒なしの耐久試験を実施した排ガス浄化用触媒のOSC量Bを求め、OSC量Bに対するOSC量Aの比から算出した。すなわち、各例のOSC維持率は、式:各例のOSC維持率(%)=(各例の排ガス浄化用触媒のOSC量A/各例の排ガス浄化用触媒のOSC量B)×100;から算出することができる。
【0070】
各例の排ガス浄化用触媒のOSC量Aは次のようにして求めた。2LのL型エンジンの排気系にリン被毒ありの耐久試験後の各例の排ガス浄化用触媒を設置し、該触媒の下流側にOセンサを取り付けた。エンジンに供給する混合ガスの空燃比(A/F)をリッチとリーンとの間で所定時間ごとに周期的に切り替えながら、Oセンサの挙動の遅れから各例の排ガス浄化用触媒のOSC量Aを算出した。
各例の排ガス浄化用触媒のOSC量Bは、2LのL型エンジンの排気系にリン被毒なしの耐久試験後の各例の排ガス浄化用触媒を設置したこと以外は、OSC量Aと同様にして算出した。
算出した各例のOSC量Aと、OSC量Bとを用いて、上記した式から各例の排ガス浄化用触媒のOSC維持率(%)を算出した。結果を図4に示す。
【0071】
[CO、HCおよびNOx浄化性能の評価]
リン被毒ありの耐久試験を実施した各例の排ガス浄化用触媒に対して、CO浄化性能、HC浄化性能およびNOx浄化性能をそれぞれ評価する評価試験を実施した。まず、2LのL型エンジンの排気系に、リン被毒ありの耐久試験を実施した各例の排ガス浄化用触媒を設置した。そして、A/F=14.6としたエンジン出ガスを供給しながら、温度を150℃から500℃まで昇温速度10℃/minで昇温した。このときの排ガス浄化用触媒への流入ガスのCO、HCおよびNOxの濃度と、排ガス浄化用触媒からの流出ガスのCO、HCおよびNOxの濃度との比から、CO浄化率、HC浄化率およびNOx浄化率を連続的に測定して、各成分の浄化率が50%に達したときの流入ガスの温度(50%浄化達成温度)をそれぞれ求めた。なお、HC浄化率は、全炭化水素(THC)浄化率として求めた。50%浄化達成温度が低いほど、浄化性能が良好なことを示している。結果を図5に示す。
【0072】
図4に示すように、触媒金属およびOSC材を含む触媒層と、該触媒層の表面であって、上流側端部を含む領域においてリン捕捉成分を含むリン捕捉層と、を有する実施例1および実施例2の排ガス浄化用触媒では、リン被毒処理および耐久試験後であっても、OSC維持率が高いことがわかる。また、図5に示すように、実施例1および実施例2の排ガス浄化用触媒では、リン被毒処理および耐久試験後であってもCO浄化性能、HC浄化性能およびNOx浄化性能が顕著に高いことがわかる。これは、リン捕捉層が上流側の端部を含む領域に設けられていることにより、第1触媒層および第2触媒層に含まれる触媒金属とOSC材の被毒を、ともに抑制することができるためと推測される。これにより、触媒金属に十分に酸素が供給されてCO、HCおよびNOxの浄化性能が向上すると推測される。
【0073】
さらに、実施例1と実施例2を比較すると、上流側の端部から40%の部分にリン捕捉層を有する実施例2のほうが、CO浄化性能、HC浄化性能およびNOx浄化性能がより高いことがわかる。これは、リン被毒を受けやすい上流側の端部を含む領域にリン捕捉層を設け、リン被毒を受け難い下流側では第2触媒層を露出させることにより、第2触媒層と排ガスとが接触しやすくなるため、浄化性能が向上すると推測される。
【0074】
<第2の試験>
ここでは、リン捕捉層形成用スラリーに含まれるリントラップ成分を変更して、リン被毒を好適に抑制できる成分を検討した。
【0075】
[実施例11]
リン捕捉層形成用スラリーに含まれるリン捕捉成分を炭酸カルシウム(CaCO)に変更した。このリン捕捉層形成用スラリーのコート量は、リン捕捉成分の含有量が炭酸カルシウム換算で30g/Lとなるように変更した。このこと以外は実施例2と同様にして、実施例11の排ガス浄化用触媒を得た。
【0076】
[比較例12]
リン捕捉層形成用スラリーに代えて、リン捕捉成分を含まないスラリーを調製した。そして、このスラリーのコート量は、アルミナの含有量が50g/Lとなるようにした。このこと以外は実施例2と同様にして、リン捕捉成分を含まない、比較例12の排ガス浄化用触媒を得た。
【0077】
[比較例13]
リン捕捉層形成用スラリーに含まれるリン捕捉成分を硫酸バリウム(BaSO)に変更した。このリン捕捉層形成用スラリーのコート量は、リン捕捉成分の含有量が硫酸バリウム換算で30g/Lとなるように変更した。このこと以外は実施例2と同様にして、比較例13の排ガス浄化用触媒を得た。
【0078】
[比較例14]
リン捕捉層形成用スラリーに含まれるリン捕捉成分を硫酸ストロンチウム(SrSO)に変更した。このリン捕捉層形成用スラリーのコート量は、リン捕捉成分の含有量が硫酸ストロンチウム換算で30g/Lとなるように変更した。このこと以外は実施例2と同様にして、比較例14の排ガス浄化用触媒を得た。
【0079】
[OSC維持率の評価]
上記作製した実施例11、比較例12~14の排ガス浄化用触媒に対して、上記と同様にしてOSC維持率を評価した。すなわち、各例の排ガス浄化用触媒につき、リン被毒ありの耐久試験を実施したものと、リン被毒なしの耐久試験を実施したものをそれぞれ用意した。そして、リン被毒ありの耐久試験を実施した排ガス浄化用触媒のOSC量A、およびリン被毒なしの耐久試験を実施した排ガス浄化用触媒のOSC量Bを求め、OSC量Bに対するOSC量Aの比から、各例のOSC維持率を算出した。結果を図6に示す。なお、図6には、実施例2の結果も併せて示した。
【0080】
[CO、HCおよびNOx浄化性能の評価]
リン被毒ありの耐久試験を実施した実施例11、比較例12~14の排ガス浄化用触媒に対して、上記と同様にしてCO浄化性能、HC浄化性能およびNOx浄化性能をそれぞれ評価した。50%浄化達成温度が低いほど、浄化性能が良好なことを示している。結果を図7に示す。なお、図7には、実施例2の結果も併せて示した。
【0081】
図6に示すように、リン捕捉成分として硫酸カルシウムおよび炭酸カルシウムを含む実施例2および実施例11では、リン被毒処理および耐久試験後であっても、OSC維持率が高いことがわかる。また、図7に示すように、実施例2および実施例11の排ガス浄化用触媒では、リン被毒処理および耐久試験後であってもCO浄化性能、HC浄化性能およびNOx浄化性能が顕著に高いことがわかる。これは、カルシウムは、グラム当たりのリンの捕捉量が大きくリンとの反応性が高いため、触媒金属やOSC材の被毒を好適に抑制できるためと推測される。
【0082】
<第3の試験>
ここでは、リン捕捉層の筒軸方向のコート幅を変更して、リン被毒を好適に抑制できる構成について検討した。
【0083】
[実施例21]
リン捕捉層形成用スラリーを、基材の上流側から流し込み、ブロアーで吸引することで、基材の筒軸方向の上流側の端部から30%に当たる部分にコートした。このこと以外は実施例1と同様して、実施例21の排ガス浄化用触媒を得た。
【0084】
[実施例22]
リン捕捉層形成用スラリーを、基材の上流側から流し込み、ブロアーで吸引することで、基材の筒軸方向の上流側の端部から80%に当たる部分にコートした。このこと以外は実施例1と同様して、実施例22の排ガス浄化用触媒を得た。
【0085】
[参考例23]
リン捕捉層形成用スラリーを、基材の上流側から流し込み、ブロアーで吸引することで、基材の筒軸方向の上流側の端部から15%に当たる部分にコートした。このこと以外は実施例1と同様して、参考例23の排ガス浄化用触媒を得た。
【0086】
[OSC維持率の評価]
上記作製した実施例21、22および参考例23の排ガス浄化用触媒に対して、上記と同様にして各例のOSC維持率を評価した。すなわち、各例の排ガス浄化用触媒につき、リン被毒ありの耐久試験を実施したものと、リン被毒なしの耐久試験を実施したものをそれぞれ用意した。そして、リン被毒ありの耐久試験を実施した排ガス浄化用触媒のOSC量A、およびリン被毒なしの耐久試験を実施した排ガス浄化用触媒のOSC量Bを求め、OSC量Bに対するOSC量Aの比から、各例のOSC維持率を算出した。結果を図8に示す。なお、図8には、実施例1、2および比較例1の結果も併せて示した。
【0087】
[CO、HCおよびNOx浄化性能の評価]
リン被毒ありの耐久試験を実施した実施例21、22および参考例23の排ガス浄化用触媒に対して、上記と同様にしてCO浄化性能、HC浄化性能およびNOx浄化性能をそれぞれ評価した。50%浄化達成温度が低いほど、浄化性能が良好なことを示している。結果を図9に示す。なお、図9には、実施例1、2および比較例1の結果も併せて示した。
【0088】
図8に示すように、上流側の端部から下流側に向けて少なくとも30%以上のコート幅でリン捕捉層が設けられている実施例1,2、21および22の排ガス浄化用触媒では、リン被毒処理および耐久試験後であっても、OSC維持率が顕著に高いことがわかる。また、図9に示すように、実施例1,2、21および22の排ガス浄化用触媒では、リン被毒処理および耐久試験後であってもCO浄化性能、HC浄化性能およびNOx浄化性能が顕著に高いことがわかる。これは、排ガス浄化用触媒において上流側の端部から30%程度までの領域は、特にリン被毒を受けやすいためであると推測される。このため、リン捕捉層を上流側の端部から下流側に向けて、少なくとも30%以上のコート幅で配置することにより、リン被毒を好適に抑制して、高いレベルで排ガス浄化用触媒の浄化性能を発揮させることができる。
【0089】
<第4の試験>
ここでは、リン捕捉層形成用スラリーに含まれるアルミナの含有量を変更して、リン被毒を好適に抑制できる構成について検討した。
【0090】
[実施例31]
リン捕捉層形成用スラリーに含まれるアルミナの含有量を変更し、リン捕捉層形成用スラリーのコート量を、アルミナの含有量が10g/Lとなるように変更した。このこと以外は実施例2と同様にして、実施例31の排ガス浄化用触媒を得た。
【0091】
[実施例32]
リン捕捉層形成用スラリーに含まれるアルミナの含有量を変更し、リン捕捉層形成用スラリーのコート量を、アルミナの含有量が30g/Lとなるように変更した。このこと以外は実施例2と同様にして、実施例32の排ガス浄化用触媒を得た。
【0092】
[実施例33]
リン捕捉層形成用スラリーに含まれるアルミナの含有量を変更し、リン捕捉層形成用スラリーのコート量を、アルミナの含有量が80g/Lとなるように変更した。このこと以外は実施例2と同様にして、実施例33の排ガス浄化用触媒を得た。
【0093】
[実施例34]
リン捕捉層形成用スラリーに含まれるアルミナの含有量を変更し、リン捕捉層形成用スラリーのコート量を、アルミナの含有量が100g/Lとなるように変更した。このこと以外は実施例2と同様にして、実施例34の排ガス浄化用触媒を得た。
【0094】
[OSC維持率の評価]
上記作製した実施例31~34の排ガス浄化用触媒に対して、上記と同様にして各例のOSC維持率を評価した。すなわち、各例の排ガス浄化用触媒につき、リン被毒ありの耐久試験を実施したものと、リン被毒なしの耐久試験を実施したものをそれぞれ用意した。そして、リン被毒ありの耐久試験を実施した排ガス浄化用触媒のOSC量A、およびリン被毒なしの耐久試験を実施した排ガス浄化用触媒のOSC量Bを求め、OSC量Bに対するOSC量Aの比から、各例のOSC維持率を算出した。結果を図10に示す。なお、図10には、実施例2および比較例12の結果も併せて示した。
【0095】
[CO、HCおよびNOx浄化性能の評価]
リン被毒ありの耐久試験を実施した実施例31~34の排ガス浄化用触媒に対して、上記と同様にしてCO浄化性能、HC浄化性能およびNOx浄化性能をそれぞれ評価した。50%浄化達成温度が低いほど、浄化性能が良好なことを示している。結果を図11に示す。なお、図11には、実施例2および比較例12の結果も併せて示した。
【0096】
図10に示すように、リン捕捉層がリン捕捉成分に加えてアルミナを含むことにより、リン被毒処理および耐久試験後であっても、OSC維持率が高いことがわかる。また、図11に示すように、リン捕捉層がリン捕捉成分に加えてアルミナを含むことにより、リン被毒処理および耐久試験後であってもCO浄化性能、HC浄化性能およびNOx浄化性能が高いことがわかる。これは、リン捕捉層において、リン捕捉成分とともにアルミナが含まれていることにより、排ガス浄化用触媒に流入したリンを好適に捕捉することができるためと推測される。これによって、触媒金属やOSC材の被毒を抑制できると推測される。
【0097】
さらに、図10よび図11に示すように、リン捕捉層に含まれるアルミナの含有量が30g/L以上80g/L以下である実施例2、32および33と、リン捕捉層に含まれるアルミナの含有量が10g/Lである実施例31および100g/Lである実施例34とを比較すると、実施例2、32および33の方がOSC維持率が高く、浄化性能が良好であることがわかる。これは、リン捕捉層において、リン捕捉成分に加えてアルミナを含む場合であって、さらにリン捕捉層においてアルミナの含有量が30g/L以上であることにより、リンの捕捉量が特に好適に増加するためと推測される。また、アルミナの含有量が100g/L程度になるとリン捕捉層が厚くなる傾向にあり、流入した排ガスと触媒層とが接触しにくくなるためと推測される。
【0098】
<第5の試験>
ここでは、リン捕捉層形成用スラリーに含まれるアルミナの比表面積を変更して、リン被毒を好適に抑制できる構成について検討した。なお、アルミナの比表面積はアルミナを熱処理をすることによって調製した。
【0099】
[実施例41]
リン捕捉層形成用スラリーに含まれるアルミナを、比表面積が20m/gのアルミナに変更した。このこと以外は実施例2と同様にして、実施例41の排ガス浄化用触媒を得た。
【0100】
[実施例42]
リン捕捉層形成用スラリーに含まれるアルミナを、比表面積が50m/gのアルミナに変更した。このこと以外は実施例2と同様にして、実施例42の排ガス浄化用触媒を得た。
【0101】
[実施例43]
リン捕捉層形成用スラリーに含まれるアルミナを、比表面積が80m/gのアルミナに変更した。このこと以外は実施例2と同様にして、実施例43の排ガス浄化用触媒を得た。
【0102】
[実施例44]
リン捕捉層形成用スラリーに含まれるアルミナを、比表面積が200m/gのアルミナに変更した。このこと以外は実施例2と同様にして、実施例44の排ガス浄化用触媒を得た。
【0103】
[OSC維持率の評価]
上記作製した実施例41~44の排ガス浄化用触媒に対して、上記と同様にして各例のOSC維持率を評価した。すなわち、各例の排ガス浄化用触媒につき、リン被毒ありの耐久試験を実施したものと、リン被毒なしの耐久試験を実施したものをそれぞれ用意した。そして、リン被毒ありの耐久試験を実施した排ガス浄化用触媒のOSC量A、およびリン被毒なしの耐久試験を実施した排ガス浄化用触媒のOSC量Bを求め、OSC量Bに対するOSC量Aの比から、各例のOSC維持率を算出した。結果を図12に示す。なお、図12には、実施例2および比較例12の結果も併せて示した。
【0104】
[CO、HCおよびNOx浄化性能の評価]
リン被毒ありの耐久試験を実施した実施例41~44の排ガス浄化用触媒に対して、上記と同様にしてCO浄化性能、HC浄化性能およびNOx浄化性能をそれぞれ評価した。50%浄化達成温度が低いほど、浄化性能が良好なことを示している。結果を図13に示す。なお、図13には、実施例2および比較例12の結果も併せて示した。
【0105】
図12に示すように、リン捕捉層において、リン捕捉成分に加えてアルミナを含む場合であって、さらに当該アルミナの比表面積が50m/g以上200m/g以下である実施例2および実施例42~44では、リン被毒処理および耐久試験後であっても、特にOSC維持率が高いことがわかる。また、図13に示すように、実施例2および実施例42~44の排ガス浄化用触媒では、リン被毒処理および耐久試験後であってもCO浄化性能、HC浄化性能およびNOx浄化性能が特に高いことがわかる。これは、アルミナの比表面積が一定以上であることにより、排ガス浄化用触媒に流入したリンを好適に捕捉することができるためと推測される。これにより、より好適に触媒金属やOSC材の被毒を抑制できると推測される。
【0106】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎない。本発明は、他にも種々の形態にて実施することができる。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を、他の変形態様に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形態様を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
【符号の説明】
【0107】
1 排ガス浄化システム
2 内燃機関(エンジン)
3 排ガス浄化装置
4 排気経路
5 エキゾーストマニホールド
6 排気管
7 エンジンコントロールユニット
8 センサ
9 第2触媒
10 第1触媒
10a 流入口
10b 流出口
11 基材
12 セル(空洞)
14 隔壁(リブ)
20 触媒層
21 第1触媒層
22 第2触媒層
30 リン捕捉層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13