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  • 特開-ガイドワイヤ 図1
  • 特開-ガイドワイヤ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093976
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】ガイドワイヤ
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/09 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
A61M25/09 514
A61M25/09 516
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210653
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市井 悠葵
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA29
4C267BB02
4C267BB05
4C267GG14
4C267HH11
(57)【要約】
【課題】コアシャフトと外装体とを接合するための接着剤を目視可能にし、接着剤の充填状態を容易に確認可能なガイドワイヤを提供する。
【解決手段】ガイドワイヤは、コアシャフトと、コアシャフトの外周に沿って配置された外装体と、コアシャフトと外装体との間に充填された接合部材とを備える。接合部材は、湿気硬化型接着剤からなる。接合部材の少なくとも最表層には、湿気硬化型接着剤と水分とが反応して白色化した白色層が存在する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアシャフトと、
前記コアシャフトの外周に沿って配置された外装体と、
前記コアシャフトと前記外装体との間に充填された接合部材と、を備え、
前記接合部材は、湿気硬化型接着剤からなり、
前記接合部材の少なくとも最表層には、前記湿気硬化型接着剤と水分とが反応して白色化した白色層が存在する、ガイドワイヤ。
【請求項2】
前記白色層の内側に、前記湿気硬化型接着剤が水分と反応して硬化した透明層が存在する、請求項1に記載のガイドワイヤ。
【請求項3】
前記外装体はコイル体であって、前記白色層は、前記コイル体の素線の間から目視可能である、請求項1または請求項2に記載のガイドワイヤ。
【請求項4】
前記湿気硬化型接着剤は、シアノアクリレート系接着剤である、請求項1または請求項2に記載のガイドワイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガイドワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
医療用ガイドワイヤは、コアシャフトと、コアシャフトの外周に沿って配置された外装体とを備えている。外装体(例えば、コイル体)は、その先端部および基端部においてコアシャフトに接合されている。外装体のコアシャフトに対する接合手段としては、ロウ付け、溶接、または接着剤が用いられている。
【0003】
引用文献1、2には、接合手段の一例として、接着剤またはエラストマーをコアとコイル体との間に充填する方法が開示されている。これらの接着剤またはエラストマーは、通常無色透明であり、充填量や軸方向の充填長さを目視で確認することは難しい。
【0004】
無色透明の接着剤を目視で確認可能にする方法の一例として、特許文献3には、接着剤に着色剤を添加し、接着剤を目視可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5280666号公報
【特許文献2】特開2005-348919号公報
【特許文献3】特開平08-100164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、医療用ガイドワイヤの接着剤に着色剤を添加することは、人体への影響を考慮する必要があり、着色剤を採用することは容易ではない。
【0007】
そこで、本開示は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、コアシャフトと外装体とを接合するための接着剤を目視可能にし、接着剤の充填状態を容易に確認可能なガイドワイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を解決するために、本開示の一態様であるガイドワイヤは、コアシャフトと、前記コアシャフトの外周に沿って配置された外装体と、前記コアシャフトと前記外装体との間に充填された接合部材と、を備え、前記接合部材は、湿気硬化型接着剤からなり、前記接合部材の少なくとも最表層には、前記湿気硬化型接着剤と水分とが反応して白色化した白色層が存在する。
【0009】
前記白色層の内層に、前記湿気硬化型接着剤が水分と反応して硬化した透明層が存在してもよい。
【0010】
前記外装体はコイル体であって、前記白色層は、前記コイル体の素線の間から目視可能であってもよい。
【0011】
記湿気硬化型接着剤は、シアノアクリレート系接着剤であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、コアシャフトと外装体とを接合するための接着剤を目視可能にし、接着剤の充填状態を容易に確認可能なガイドワイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係るガイドワイヤの模式図である。
図2】ガイドワイヤの接合部材の断面構造の模式図である。
図3】接合部材の白色層の形成方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の一実施形態に係るガイドワイヤについて図面を参照して説明するが、本発明は、当該図面に記載の実施形態にのみ限定されるものではない。なお、本開示において、先端とはガイドワイヤにおいて先端接合部材31が位置する端部を意味し、基端とは当該先端とは反対側の端部を意味する。
【0015】
図1は、実施形態に係るガイドワイヤ1の模式図である。図1に示すように、ガイドワイヤ1は、コアシャフト10と、コイル体20と、接合部材30とを備える。
【0016】
コアシャフト10は、ガイドワイヤ1の基端から先端まで延びる断面円形の長尺状の部材である。コアシャフト10は、先端側から順に、細径部11と、テーパ部12と、太径部13とを有する。細径部11は、太径部13よりも外径が小さく構成されている。テーパ部12は、太径部12との境界から細径部11との境界に向かって外径が徐々に小さくなっている。太径部13は、ガイドワイヤ1の基端まで延びている。太径部13の基端部において、ユーザによるガイドワイヤ1の回転操作等が行われる。
【0017】
コアシャフト10を構成する材料としては、例えば、SUS304などのステンレス鋼、Ni-Ti合金、Co-Cr合金などの金属材料等が挙げられる。コアシャフト10の全長は例えば1,800~3,000mm、細径部11の長さは例えば50~600mm、テーパ部12の長さは例えば60~220mmである。細径部11の外径は、例えば0.181~0.705mmであり、太径部12の外径は、例えば0.35~0.76mm程度である。
【0018】
外装体であるコイル体20は、コアシャフト10の先端部(細径部11とテーパ部12の一部)の外周に沿って配置されている。コイル体20は、金属素線をコアシャフト10の周りに螺旋状に巻回することにより、中空円筒形状に形成されている。コイル体20を構成する金属素線は、1本若しくは複数本の単線、または1本若しくは複数本の撚線である。コイル体20の金属素線を構成する材料としては、例えば、タングステン、SUS316などのステンレス鋼、Ni-Ti合金などの超弾性合金、白金などの放射線不透過性の金属等が挙げられる。コイル体20の全長は、例えば50~200mmであり、コイル体20の外径は、例えば0.185~0.76mmである。
【0019】
接合部材30は、コアシャフト10とコイル体20とを接合している。接合部材30は、コアシャフト10とコイル体20との間の隙間、および、コイル体20の素線の隙間に充填されている。接合部材30は、細径部11とコイル体20の先端部とを接合する先端側接合部材31と、テーパ部12とコイル体20の基端部とを接合する基端側接合部材32とを有する。接合部材30を構成する材料としては、例えば、空気中の水分と反応して硬化する湿気硬化型接着剤である。湿気硬化型接着剤は、例えば、シアノアクリレート系接着剤およびシリコーンゴム系接着剤である。先端側接合部材31および基端側接合部材32の全長(接着剤の染み込み長)は、例えば0.2~2.6mmである。
【0020】
図2は、ガイドワイヤ1の接合部材30(先端接合部材31)の断面構造の模式図である。
【0021】
先端接合部材31は、細径部11とコイル体20との間の隙間、および、コイル体20の素線の隙間に充填されている。先端側接合部材31は、その表面全体を構成する白色層31Aと、白色層31Aの内側に位置し全体が白色層31Aに覆われた透明層31Bとを有する。白色層31Aは、シアノアクリレート系接着剤が過剰な水分との反応によって白色化した白色ポリマー層である。透明層31Bは、シアノアクリレート系接着剤が水分(例えば、空気中の水分)と反応して硬化した透明ポリマー層である。基端側接合部材32も同様に、白色層32Aと透明層32Bとを有する(図3(c)参照)。白色層31A、32Aは、ポリα-シアノアクリレートにより構成される。
【0022】
このように、接合部材30の少なくとも最表層には、湿気硬化型接着剤と水分とが反応して白色化した白色層31A、32Aが存在する。これにより、コアシャフト10とコイル体12とを接合するための接合部材30を目視可能になるので、接合部材30の充填状態を容易に確認可能となる。白色層31A、32Aの内側に、湿気硬化型接着剤が空気中の水分と反応して硬化した透明層31B、32Bが存在する。このように、着色が必要な表面層のみを白色層31A、32Aとしているので、接合部材の全体が透明層の場合と比較して、接合部材30の特性が変わるのを抑制することができる。白色層31A、32Aは、コイル体12の素線の間から目視可能であるので、接合部材30の目視が容易となる。
【0023】
図3は、接合部材30の白色層31A、32Aの形成方法の説明図である。
【0024】
図3(a)は、細径部11とコイル体20の先端部との隙間、およびテーパ部12とコイル体20の基端部との隙間に、接着剤33、34を塗布した状態を示している。接着剤33、34を塗布してから5秒以内に、細径部11、テーパ部12、およびコイル体20を、図3(b)に示すように、容器40内の常温の水Wに漬け、約15秒間浸漬させる。接着剤33、34を、水に浸すことにより、接着剤33が過剰な水分と反応して白化し、接着剤33、34の表面に白色層が形成される。細径部11、テーパ部12、およびコイル体20を、容器40から出して、接着剤33の全体が硬化することにより、図3(c)に示すように、白色層31Aおよび透明層31Bを有する先端接合部材31と、白色層32Aおよび透明層32Bを有する基端側接合部材32が形成される。
【0025】
[実施例]
次に、本開示のガイドワイヤ1の引張強度の測定結果について説明する。測定に使用したガイドワイヤの形状は、上記の実施形態のガイドワイヤ1と同様である。接合部材30の形態および材料を変えて引張強度の測定を行った。引張試験は、試験機によりコイルとコアシャフトとを互いに反対方向に引っ張って破断させ、破断時の強度を引張強度[N]として測定した。測定結果を表1に示す。
【表1】
【0026】
実施例1および比較例1では、接着剤としてシアノアクリレート系の湿気硬化型接着剤Aを用い、実施例2および比較例2では、接着剤としてシアノアクリレート系の湿気硬化型接着剤Bを用いている。比較例3では、接着剤として従来品であるロウ材を用いている。実施例1、2では、接合部材は白色層を有している。比較例1、2では、接着剤を水に浸漬させておらず、接合部材は白色層を有していない。すなわち、比較例1、2では、接合部材は全て透明層により構成されている。
【0027】
表1に示すように、実施例1、2と、比較例1-3との間で、引張強度に大きな差はみられない。よって、本実施形態の接合部材30を用いても、従来品と比較してコアシャフト10とコイル体20との接合強度に大きな変化のないガイドワイヤ1を提供することができる。
【0028】
なお、本開示は、上述した実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0029】
例えば、コイル体20の先端部および基端部をコアシャフト10と接合したが、コイル体20の全長においてコアシャフト10と接合してもよい。接合部材30(31、32)は、白色層31A、32Aと透明層31B、32Bにより構成したが、白色層31A、32Aのみにより構成してもよい。コイル体20の先端部を、先端側接合部材31ではなく、プラズマ溶接によりコアシャフト10と接合し、コイル体20の基端部のみを基端側接合部32によりコアシャフト10と接合するようにしてもよい。外装体はコイル体20であったが、円筒状のパイプにレーザ加工等により螺旋状のスリットを形成したものを外装体として用いてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1:ガイドワイヤ
10:コアシャフト
20:コイル体
30:接合部材
31:先端側接合部材
32:基端側接合部材
31A、32A:白色層
31B、32B:透明層
図1
図2
図3