(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093977
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】ねじ付き容器
(51)【国際特許分類】
B65D 8/06 20060101AFI20240702BHJP
B65D 77/04 20060101ALI20240702BHJP
A45D 40/04 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B65D8/06 A
B65D77/04 A
A45D40/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210657
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100113169
【弁理士】
【氏名又は名称】今岡 憲
(72)【発明者】
【氏名】山崎 祥吾
【テーマコード(参考)】
3E061
3E067
【Fターム(参考)】
3E061AA26
3E061AB09
3E061DA02
3E061DA12
3E061DB11
3E061DB14
3E067AA04
3E067AB81
3E067BA02B
3E067BA02C
3E067BB14B
3E067BB14C
3E067BC03B
3E067BC03C
3E067BC07C
3E067EA32
3E067EB17
3E067EB27
3E067EE59
3E067FA04
3E067FC01
(57)【要約】
【課題】ネジ機構を利用して細長い縦長の外観でも内容物を最後まで使い切ることができる、使用性の良いねじ付き容器を提供する。
【解決手段】雌ねじ部10を有する外筒壁6を備え、この外筒壁6の上端に口部Оを開口した縦筒状の外容器体2と、前記雌ねじ部10と螺合する雄ねじ部30を有する内筒壁24を備え、上方より前記口部Оを介して前記外容器体2の奥B側へ螺入された有底筒状の内容器体20とを具備する。前記内容器体20は、前記外容器体2より低背であり、かつ前記口部Оより離れた第1位置から前記口部Оへ接近する第2位置へ回転操作により螺上昇する。前記内容器体20が前記第2位置へ螺上昇した上昇状態で、前記雄ねじ部30の下端m2寄りの部分32と前記雌ねじ部10の上端f1寄りの部分12とを係止させることで、内容器体20が前記第1位置側へ戻ることを規制する戻り止め機構Dを設けた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
雌ねじ部(10)を有する外筒壁(6)を備え、この外筒壁(6)の上端に口部(О)を開口した縦筒状の外容器体(2)と、
前記雌ねじ部(10)と螺合する雄ねじ部(30)を有する内筒壁(24)を備え、上方より前記口部(О)を介して前記外容器体(2)の奥(B)側へ螺入された有底筒状の内容器体(20)と、
を具備し、
前記内容器体(20)は、前記外容器体(2)より低背であり、かつ前記口部(О)より離れた第1位置から前記口部(О)へ接近する第2位置へ回転操作により螺上昇させることができ、
前記内容器体(20)が前記第2位置へ螺上昇した上昇状態で、前記雄ねじ部(30)の下端(m2)が、前記雌ねじ部(10)の上端(f1)より下方に距離(L)を存して位置しており、
かつ、前記上昇状態で前記雄ねじ部(30)の下端(m2)寄りの部分(32)と前記雌ねじ部(10)の上端(f1)寄りの部分(12)とを係止させることにより、前記雄ねじ部(30)の戻りを規制する戻り止め機構(D)を設けたことを特徴とする、ねじ付き容器。
【請求項2】
前記雌ねじ部(10)は、前記戻り止め機構(D)として、当該雌ねじ部(10)の上フランク面(11U)に配備された切欠段部(16)を有しており、
この切欠段部(16)は、当該切欠段部(16)から前記雌ねじ部(10)の上端(f1)に亘る範囲で前記雌ねじ部(10)の厚み方向(t)の上半部(i)を切り欠くことで形成されており、
当該切欠段部(16)に前記雄ねじ部(30)の下端(m2)が突き当たることで、前記雄ねじ部(30)の螺退動作後の戻りが防止されることを特徴とする、請求項1に記載のねじ付き容器。
【請求項3】
前記内筒壁(24)の上端面(29)側に、前記外筒壁(6)の内側周面(8)に摺接することにより、この内側周面(8)に付着した内容物を剥ぎ取ることが可能な剥ぎ取り部(S)を形成したことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のねじ付き容器。
【請求項4】
前記内筒壁(24)の上周端の周方向の一部に、前記外筒壁(6)の内側周面(8)に添って、前記内容器体(20)の回転操作のための指掛け部(34)を形成したことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のねじ付き容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじ付き容器、特に整髪料などのクリームを収容したねじ付き容器に関する。
【背景技術】
【0002】
整髪料などを収納する容器として、次のものが知られている。
・直筒状の外容器内に内容器を着脱自在に嵌合させかつ外容器の口部にキャップを装着させてなり、全体として外径に比べて低背の容器(特許文献1)。
・有底筒状の容器体に内嵌させた中栓にスリット状の挿通孔を穿設し、この挿通孔にヘラを支承させ、かつ、前記容器体の口部にキャップを装着した容器(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-195406
【特許文献2】特開2005-80731
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の容器は、内容物を指で掬い取るために、全体として低背に形成しているが、市場には、縦方向に細長いシルエットの外観の良い容器を提供したいという要請がある。
しかしながら、縦に丈の長い形態とすると、容器の口部から片手の指を挿入するときに、指の付け根付近が口部に当たって指先が容器の奥まで届かないので、使用性が良くない。
特許文献2の構成では、ヘラの長さを調整することにより、背が高い容器の奥にもヘラの先端を届かせることができるが、ヘラを紛失して使えなくなる可能性があり、また、内容物を指で掬うときに比べて、内容物を残らず剥ぎ取ることが難しい。
【0005】
本発明の第1の目的は、ネジ機構を利用して、細長い縦長の外観でも内容物を最後まで使い切ることができる使用性の良いねじ付き容器を提供することであり、第2の目的は、容器体内面から内容物を適切に剥ぎ取ることが可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の手段は、雌ねじ部10を有する外筒壁6を備え、この外筒壁6の上端に口部Оを開口した縦筒状の外容器体2と、
前記雌ねじ部10と螺合する雄ねじ部30を有する内筒壁24を備え、上方より前記口部Оを介して前記外容器体2の奥B側へ螺入された有底筒状の内容器体20と、
を具備し、
前記内容器体20は、前記外容器体2より低背であり、かつ前記口部Оより離れた第1位置から前記口部Оへ接近する第2位置へ回転操作により螺上昇させることができ、
前記内容器体20が前記第2位置へ螺上昇した上昇状態で、前記雄ねじ部30の下端m2が、前記雌ねじ部10の上端f1より下方に距離Lを存して位置しており、
かつ、前記上昇状態で前記雄ねじ部30の下端m2寄りの部分32と前記雌ねじ部10の上端f1寄りの部分12とを係止させることにより、前記雄ねじ部30の戻りを規制する戻り止め機構Dを設けた。
【0007】
本手段では、
図1(B)に示すように、雌ねじ部10を有する外筒壁6を備える縦筒状の外容器体2と、前記雌ねじ部10と螺合する雄ねじ部30を有する内筒壁24を備える内容器体20とを具備するねじ付き容器を提案している。
前記内容器体20は、前記外容器体2より低背であり、かつ外容器体2の口部Оより離れた第1位置(
図1(B)参照)から、前記口部Оへ接近する第2位置(
図2参照)へ、回転操作により螺上昇させることができるように構成した。
この構造によれば、細長いシルエットを保ちつつ、指が容器の奥まで入れずらく内容物を使い切れないという可能性を解消することができる。
螺退動作後の雄ねじ部30の戻りを規制する戻り止め機構Dを設けたから、その戻りにより内容器体20の底部が不意に下降してしまうことがなくなり、内容物を最後まで確実に使い切ることができるので、使用性がよい。
【0008】
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ前記雌ねじ部10は、前記戻り止め機構Dとして、当該雌ねじ部10の上フランク面11Uに配備された切欠段部16を有しており、
この切欠段部16は、当該切欠段部16から前記雌ねじ部10の上端f1に亘る範囲で前記雌ねじ部10の厚み方向tの上半部iを切り欠くことで形成されており、
当該切欠段部16に前記雄ねじ部30の下端m2が突き当たることで、前記雄ねじ部30の螺退動作後の戻りが防止される。
【0009】
本手段では、前記雌ねじ部10は、
図3(A)に示す如く、前記戻り止め機構Dとして、当該雌ねじ部10の上フランク面11Uに配備された切欠段部16を有する。
この切欠段部16は、
図3(B)に示す如く、当該切欠段部16から前記雌ねじ部10の上端f1に亘る範囲で前記雌ねじ部10の厚み方向tの上半部iを切り欠くことで形成されている。
この構造によれば、雄ねじ部30の下端m2が、
図4(A)に示す切欠段部16の上側の箇所(上フランク面11U)から、
図5(A)に示す如く、切欠段部16の下側へ、内容器体20及び内容物の自重によって落ちる。そして、戻り方向への外力Fが作用すると、前記雄ねじ部30の下端m2が切欠段部16に突き当たって前記外力Fに抵抗する。これにより、前記雄ねじ部30が螺退動作後に戻ることを防止する機能が担保される。
【0010】
第3の手段は、第1の手段又は第2の手段を有し、かつ前記内筒壁24の上端面29側に、前記外筒壁6の内側周面8に摺接することにより、この内側周面8に付着した内容物を剥ぎ取ることが可能な剥ぎ取り部Sを形成した。
【0011】
本手段では、
図1(B)に示す如く、前記内筒壁24の上端面29側に、内容物Cの剥ぎ取り部Sを形成することを提案している。この剥ぎ取り部Sは、
図2に示す如く、前記内容器体20を螺上昇させたときに、前記外筒壁6の内側周面8に摺接することにより、この内面から内容物を剥ぎ取ることができる。
この構造によれば、
図2に想像線で示すように、剥ぎ取った内容物Cは内筒壁24の内面側へ押し出されるために、これを指先で掬い取ることが容易にできる。
故に、内容物を無駄なく使い切ることができて、経済的である。
【0012】
第4の手段は、第1の手段又は第2の手段を有し、かつ前記内筒壁24の上周端の周方向の一部に、前記外筒壁6の内側周面8に添って、前記内容器体20の回転操作のための指掛け部34を形成した。
【0013】
本手段では、前記内筒壁24の上部に、
図1(B)に示す如く、前記内容器体20を回転操作するための指掛け部34を形成した。
この構造によれば、前記内容器体20を第1位置から第2位置へ螺上昇させることが容易であり、当該指掛け部34を前記外筒壁6の内側周面8に添って設けたから、内容器体20の内部から内容物を指で取り出す作業の邪魔にならない。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ネジ機構を利用して、細長い縦長の外観でも内容物を最後まで使い切ることができ、使用性の良い。
また外容器体2の内側周面8から内容物を適切に剥ぎ取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係るねじ付き容器の初期状態を示しており、同図(A)は一部を切り欠いて示す平面図であって、その図中のJは同図(B)のJ-J方向に見て切り欠いた箇所であり、同図(B)は、部分断面図である。
【
図2】
図1に示す容器の内容器体を上昇させた状態を示す半断面図である。
【
図3】前記容器の外容器体の構造を示しており、同図(A)は
図2のIII(A)-III(A)方向から見た断面図、同図(B)は当該断面図の要部拡大図である。
【
図4】
図2中のKで示す要部の作用を、雄ねじ部の下端が切欠段部から脱落する直前の状態で描いたものであり、同図(A)は当該要部を径方向内側から見た様子を、同図(B)は当該要部を周方向から見た様子をそれぞれ描いている。
【
図5】
図2中のKで示す要部の作用を、雄ねじ部の下端が切欠段部から脱落した直後の状態で描いたものであり、同図(A)は当該要部を径方向内側から見た様子を、同図(B)は当該要部を周方向から見た様子をそれぞれ描いている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1から
図5は、本発明の実施形態に係るねじ付き容器を示している。この容器は、整髪料などのクリーム状の内容物を収納するためのものであり、外容器体2と、内容器体20と、キャップ40とからなる。これら各部材は、合成樹脂で形成することができる。
【0017】
外容器体2は、
図1(B)に示す如く、縦方向に細長く丈の長い円筒状の形態を有する形態を有する。本実施形態の外容器体2は、外底部4の周端から、雌ねじ部10を有する外筒壁6を立設させてなる。この外筒壁6の内側周面8は、その筒長全長に亘って等径に形成されている。また外筒壁6の上端には、広口の口部Оが開口されている。
図示例の外筒壁6は、大外径の下方壁部6aと中外径の中間壁部6bと小外径の上方壁部6cとからなる。そして、この上方壁部6cの外側に、前記キャップ40を螺合させるための補助ねじ18が付設されており、かつ、前記下方壁部6aの内側に前記雌ねじ部10が形成されている。もっとも、これらの構造は適宜変更することができる。
図示例では、雌ねじ部10の上端(「雌側上端」という)f1は下方壁部6aの上端付近に、また雌ねじ部10の下端(「雌側下端」という)f2は下方壁部6aの下端付近にそれぞれ配置されている。もっとも、これらの配置は適宜変更することができる。
【0018】
前記雌ねじ部10は、後述の雄ねじ部30に対する戻り止め機構Dを有する。この戻り止め機構は、内容器体20の後述の上昇状態(第2位置へ上昇した状態)を保持する役目を有する。
本実施形態の戻り止め機構Dは、
図3(A)に示す如く、前記雌ねじ部10の上側の側面11U(以下「上フランク面」と称する)に配備された切欠段部16として形成されている。もっともこの構成は適宜変更することができ、雄ねじ部の戻りを規制できるならば、どのような構造でも構わない。
なお、本明細書において、「フランク」とは、ねじの「側面」(flank)という意味に用いる。そして、雌ねじ部10の下側の側面11Lを「下フランク面」と称する。
前記切欠段部16は、
図3(B)に示す如く、当該切欠段部16から前記雌側上端f1に亘る範囲で、前記雌ねじ部10の厚み方向tの上半部iを切り欠く形状とすることにより、形成されている。
なお、この文章中で「厚み方向の上半部」とは、「厚み方向に二つに分けたうちの上部分」という程度の意味であり、厚み方向に2等分した構造に限定されない。
切欠段部16付きの雌ねじ部10を形成するためには、予め一定の厚みの雌ねじ部を形成した後に、既存のネジ加工技術を用いて、前記切欠段部16の形成箇所をネジ切り始めとして、当該箇所から雌側上端f1に亘って雌ねじ部10の上半部iを除去すればよい。
前記切欠段部16に対しては、後述の雄ねじ部30の雄側下端m2が突き当たることにより、雄ねじ部30の戻りを防止する機能が発揮される。
本明細書においては、前記切欠段部16を境として、前記雌ねじ部10の上端f1寄りの部分12を、雌ねじ部10の残りの部分と区別して、雌ねじ部の基部と称する。また雌ねじ部の基部12の上面を低位面部14と称する。
この低位面部14は、雌ねじ部10の螺旋方向に沿って傾斜した平坦面に形成されている。低位面部14は、
図5(A)に示す状態で、後述の雄ねじ部30の先部32を受持するための受け部としての役割りを有する。
低位面部14の長さは、内容器体20を回し過ぎたときでも、前記雄ねじ部の先部32が前記低位面部14の上に落ちるように長く設定するとよい。
図示例では、低位面部14の長さが、雌ねじ部10の1ターン分より若干長くなるように調整している。もっとも、低位面部14の長さは、適宜変更することができる。
【0019】
内容器体20は、内底部22の周端から、前記雌ねじ部10と螺合する雄ねじ部30を有する内筒壁24を立設してなる。
この内容器体20は、上方より前記口部Оを介して外容器体2の上部へ進入させた後に、前記雄ねじ部30の螺進方向への回転操作により、前記外容器体2の奥B側へ螺入されるように形成されている。具体的には、内容器体20の開口部付近を把持して固定し、下方から外容器体2を回しながら外嵌させ、かつ螺合すればよい。
この内容器体20は、前記外容器体2より低背であり、前記外容器体2内に内容物Cを充填することにより、当該内容物C中に埋没される。
また、前記内容器体20は、前記口部Оより離れた第1位置(
図1(B)参照)から前記口部Оへ接近する第2位置(
図2参照)へ回転操作により螺上昇させることができる。
図示例では、この螺上昇状態において、内容器体20の上端面29が外容器体2の口部Оと同じ高さに在るように設計されている。
前記内容器体20の深さは、利用者の人差し指の長さと同程度以内(好ましくは人差し指の第2関節から指先までの長さ程度)とし、内容器体20の上端開口から指を入れて指先が内底部22まで容易に届くように設計するとよい。
本実施形態では、前記内筒壁24の上端部を、上端大径のテーパ状部28とするとともに、内筒壁24の残りの部分を、前記外筒壁6と同心状の直筒部26に形成している。そして、この直筒部26の外面に、前記雄ねじ部30を形成している。
【0020】
前記雄ねじ部30は、前記雌ねじ部10と螺合することにより、前記内容器体20を外容器体2内に支持する役目を有する。
なお、本明細書において、「螺合」とは、前記内容器体20を前記外容器体2内に支持できるように、前記雌ねじ部10の上フランク面11Uの上に雄ねじ部30が当接していればよい。故に、
図4(B)に示すように、雌ねじ部10の下フランク面11Lと雄ねじ部30の隣接部分との間に空隙aがある構造でも構わない。この構造では、雌ねじ部の隣接するねじ山同士の間に雄ねじ部30が遊嵌される。故に、螺進及び螺退操作の際に雄ねじ部30と雌ねじ部10との間に作用する摩擦抵抗が小さく、僅かな力で操作できる。その反面、雄ねじ部30が螺退操作後に逆方向へ不意に戻る可能性が大きいため、この不都合を阻止するために、前述の戻り止め機構Dが設けられている。
本明細書では、雄ねじ部30の螺進方向の先側部分、すなわち、雄ねじ部30の下端m2寄りの部分32を、「先部」と称する。また雄ねじ部30の下端m2を「雄側下端」と、雄ねじ部30の上端m1を、「雄側上端」とそれぞれ称する。
前記雄側下端m2は、内容器体20を
図2に示す第2位置へ上昇させたときに、
図3(A)に示す如く、前記雌側上端f1より下方に、嵌合代である距離Lを存して配置されている。
こうすることにより、内容器体20が第2位置にあるときに、前記雄ねじ部30の先部32が前記雌ねじ部10の基部12の上に支持され、かつ、これら先部32及び基部12が相互に係止することができるようにしている。
【0021】
本実施形態において、雌ねじ部10及び雄ねじ部30は、それぞれ一条ねじとして形成されている。もっとも雌ねじ部10及び雄ねじ部30は、2条ねじとして形成してもよい。
この場合には、2本の雌ねじ部10に、切欠段部16及び低位面部14をそれぞれ形成し、
図2に示す内容器体20の上昇状態で、2本の雄ねじ部30の基部12が、おのおの対応する雌ねじ部10の基部12によって支持されるように設けるとよい。
【0022】
本実施形態では、
図1(B)に示す如く、前述のテーパ状部28の内面及び前記内容器体20の上端面29で、剥ぎ取り部Sを形成している。この剥ぎ取り部Sは、前記外筒壁6の内側周面8に付着した内容物を剥ぎ取る(こそぎ取る)ための部位である。
前記剥ぎ取り部Sは、外筒壁6の内側周面8に密接されている。前述の如く、内容器体20が前記第1位置から第2位置へ移動するときには、前記剥ぎ取り部Sが前記外筒壁6の内側周面8に摺接することにより、この内側周面8から内容物Cが剥ぎ取られる。
図示例の剥ぎ取り部Sは、
図1(A)に示す如く、前記内側周面8に対してその全周に亘って密接する周状剥ぎ取り部として形成されている。
図示例では、直筒部26の上端から拡開するテーパ状部28の上端側を、外筒壁6の内側周面8に密接させたから、
図2に示す如く、そのテーパ状部28が、当該内側周面8から剥ぎ取られた内容物Cを直筒部26側へ導く(流下させる)漏斗の如き役目を果たす。従って、剥ぎ取られた内容物Cを、テーパ状部28又は直筒部26の内面から指で容易に掬いとることができる。
【0023】
また本実施形態では、
図1(B)に示す如く、前記テーパ状部28の周方向の一部を凹没させることにより、前記内容器体20の回転操作のための指掛け部34を形成した。
好適な図示例では、
図1(A)に示す如く、周方向に180°離れた位置に、一対の指掛け部34が形成されている。
本実施形態の指掛け部34は、前記内側周面8に添って形成されているため、
図2に示す状態で内容器体20の内側(特に内周面及び底面)から内容物を掬い取る作業の邪魔にならない。また、その指掛け部34を設けることによって内容器体20の内容積が減少することもない。
ここで、「内周表面に添って」とは、内周表面の近傍にあるという意味であり、内周表面から若干離れていても構わない。
図示例の指掛け部34は、内筒壁24の上端部の一部を下方へ凹没させる凹状指掛け部であるが、内筒壁24から上方へ凸出させる凸状指掛け部としても構わない。
指掛け部34は、前記内容器体20が第1位置にある状態で、少なくとも利用者が外容器体2の口部Оから片手の二指を挿入して指先が届く範囲に配置する。好適な一実施例として、 前記外容器体2の口部Оから内容器体20の上端面29までの高低差を、利用者の人差し指の第2関節から指先までの長さ程度とすることができる。
【0024】
キャップ40は、天板42の周端から、前記外筒壁6(図示例では上方壁部6c)の外面に螺合させるキャップ周壁44を垂設させてなる。
【0025】
前記構成において、この容器を使用するときには、
図1(B)の状態から、キャップ40を外し、外容器体2の口部Оから人差し指を入れて、内要物を掬い取ればよい。当該口部Оから浅い部分の内容物を使い終わると、内容物に埋もれていた、一対の指掛け部34を含む内容器体20の上部分が現れる。
それら一対の指掛け部34に指を掛けて、雄ねじ部30の螺退方向へ回転させると、外容器体2に対して内容器体20が螺上昇し、その結果、内容物の表面も高くなる。
内容器体20の上昇の途中で、前記剥ぎ取り部Sが外筒壁6の内側周面8を摺接して、この内側周面8に付着した内容物Cを剥ぎ取る。剥ぎ取られた内容物Cは、
図2に想像線で示す如く、内方へ順次押し出され、テーパ状部28を経て直筒部26内へ流れ込むので、後の取り出し作業において、指先で容易に掬い取ることができる。
内容器体20の上昇により、内容器体20の上端面29が外容器体2の口部Оの高さに到達し、内容器体20が上昇し切ったとき、
図4(A)に示す如く、内容器体20の雄ねじ部30の下端m2(雄側下端)が切欠段部16に到達し、次に、
図5(A)に示す如く、内容器体20及び内容器体内の内容物の自重により、低位面部14へ落ちる。これにより、雄ねじ部30の螺退方向と逆向き(戻り方向)に外力Fが作用しても、
図5(A)に想像線で示す如く、雄側下端m2が切欠段部16に突き当たることにより、戻り止め機能が作用する。これにより、内容器体20が下がってしまう(螺下降する)不都合を抑制できる。
こうすることにより、内容器体20が第2位置へ上昇した状態が安定的に維持され、内容器体20に指を入れて内容物を取り出すことができる。
必要量の内容物を取り出し終えたときには、外容器体2に再びキャップ40を装着して作業を終了する。
【0026】
前記構成及び作用によれば、縦筒状の外容器体2の雌ねじ部10に内容器体20の雄ねじ部30を螺合させたから、内容物の残量の減少に伴い内容器体を螺上昇させることで、細長いシルエットを守りつつ容器の奥まで指を届かせることができ、また雄ねじ部の戻り止め機構Dを設けたから、内容物を最後まで確実に使い切ることができ、使用性がよい。
雌ねじ部の上フランク面11Uに切欠段部16を設けたから、重力の作用により切欠段部16へ雄ねじ部30の下端m2を係止させ、戻り防止機能を発揮させることができる。
前記内筒壁24の上端面29側に、前記外筒壁6の内側周面8に付着した内容物を剥ぎ取るための剥ぎ取り部Sを形成したから、内容物を無駄なく使い切ることができる。
前記内筒壁24の上部に、前記内容器体20を回転操作するための指掛け部34を形成したから、前記内容器体20を螺上昇させることが容易であり、当該指掛け部34を前記内側周面8に添って設けたから、内容物を指で取り出す作業の邪魔にならない。
【符号の説明】
【0027】
2…外容器体 4…外底部 6…外筒壁 6a…下方壁部 6b…中間壁部
6c…上方壁部 8…内側周面 10…雌ねじ部 11U…上フランク面
11L…下フランク面 12…雌ねじ部の基部(雌ねじ部の上端寄り部分)
14…低位面部 16…切欠段部 18…補助ねじ
20…内容器体 22…内底部 24…内筒壁 26…直筒部 28…テーパ状部
29…上端面 30…雄ねじ部 32…雄ねじ部の先部(雄ねじ部の下端寄り部分)
34…指掛け部
40…キャップ 42…天板 44…キャップ周壁
a…空隙 B…奥 C…内容物 D…戻り止め機構 F…外力
f1…雌側上端(雌ねじ部の上端) f2…雌側下端 i…雌ねじ部の上半部
L…距離(螺合代) m1…雄側上端 m2…雄側下端(雄ねじ部の下端)
О…口部(開口部) S…剥ぎ取り部 t…厚み方向