(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093991
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】固体電解質用樹脂材料、固体電解質用樹脂材料組成物、シート材および電池
(51)【国際特許分類】
H01B 1/06 20060101AFI20240702BHJP
H01M 10/0565 20100101ALI20240702BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240702BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240702BHJP
C08F 32/08 20060101ALI20240702BHJP
C08K 3/105 20180101ALI20240702BHJP
C08L 45/00 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
H01B1/06 A
H01M10/0565
H01M10/052
H01M4/62 Z
C08F32/08
C08K3/105
C08L45/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210676
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100173428
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】加藤 優志
(72)【発明者】
【氏名】久保田 匠
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
5G301
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
4J002BK001
4J002DD006
4J002DD036
4J002DD056
4J002DD086
4J002DE196
4J002DF026
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4J002EW016
4J002FD116
4J002GQ02
4J100AR11P
4J100BA05P
4J100BA07P
4J100BA08P
4J100CA01
4J100DA01
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4J100JA43
5G301CA16
5G301CD01
5H029AJ06
5H029AK01
5H029AK03
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5H029AL02
5H029AL03
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5H029AL07
5H029AL08
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5H050BA16
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5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050CB13
5H050DA13
5H050EA25
5H050HA02
5H050HA14
(57)【要約】
【課題】 本発明の目的は、幅広い温度領域にわたって安定的に優れたイオン伝導度を示す固体電解質用樹脂材料を提供すること、また、前記固体電解質用樹脂材料を含む固体電解質用樹脂材料組成物、シート材および電池を提供すること。
【解決手段】本発明の固体電解質用樹脂材料は、主鎖にノルボルネン由来の構造を有するとともに、側鎖にエチレンオキシド構造を有することを特徴とする。本発明の固体電解質用樹脂材料は、下記式[I]で示されるモノマー成分を含むものであることが好ましい。
【化1】
(式[I]中、nは、1以上の整数であり、Rは、水素原子または炭化水素基である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鎖にノルボルネン由来の構造を有するとともに、側鎖にエチレンオキシド構造を有することを特徴とする固体電解質用樹脂材料。
【請求項2】
固体電解質用樹脂材料は、下記式[I]で示されるモノマー成分を含むものである請求項1に記載の固体電解質用樹脂材料。
【化1】
(式[I]中、nは、1以上の整数であり、Rは、水素原子または炭化水素基である。)
【請求項3】
上記式[I]中におけるnは2以上6以下である請求項2に記載の固体電解質用樹脂材料。
【請求項4】
重量平均分子量が3,000以上200,000以下である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の固体電解質用樹脂材料。
【請求項5】
平均重合度が10以上900以下である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の固体電解質用樹脂材料。
【請求項6】
軟化点が-30℃以上150℃以下である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の固体電解質用樹脂材料。
【請求項7】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の固体電解質用樹脂材料と、リチウム塩とを含むことを特徴とする固体電解質用樹脂材料組成物。
【請求項8】
前記リチウム塩が、LiSCN、LiN(CN)2、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、LiPF6、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、Li(CF3SO2)3C、LiSbF6、Li(FSO2)2N、LiC4F9SO3、LiN(SO2CF2CF3)2、LiPF3(CF2CF3)3、LiPF3(C2F5)3、LiPF3(CF3)3、LiCl、LiF、LiBr、LiI、LiB(C2O4)2、リチウムジフルオロ(オキサレート)ボレートおよびリチウムビス(オキサレート)ボレートよりなる群から選択される少なくとも1種である請求項7に記載の固体電解質用樹脂材料組成物。
【請求項9】
前記固体電解質用樹脂材料組成物中に含まれる前記リチウム塩が有する全リチウム原子数に対する、前記固体電解質用樹脂材料組成物中に含まれる前記固体電解質用樹脂材料が有する全酸素原子数の比率が、4.0以上33.3以下である請求項7に記載の固体電解質用樹脂材料組成物。
【請求項10】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の固体電解質用樹脂材料を含む材料で構成されていることを特徴とするシート材。
【請求項11】
正極層と、
負極層と、
前記正極層と前記負極層との間に位置する電解質層とを備える電池であって、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の固体電解質用樹脂材料を含んでいることを特徴とする電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質用樹脂材料、固体電解質用樹脂材料組成物、シート材および電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、リチウムイオン二次電池等の二次電池には液体の電解質が用いられてきた。しかしながら、液体の電解質を使用すると、製品容器からの漏液が懸念されることから、信頼性を高めるための改良が求められていた。
【0003】
このような問題を解決する目的で、液体の電解質に代わって固体電解質を用いる方法が検討されているが、液体の電解質に比べてイオン伝導度が低いという問題があった。
【0004】
このような問題を解決する目的で、電解質用高分子として、ポリエチレンオキシドを用いる試みがある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、ポリエチレンオキシドを用いた場合、高温領域では比較的高いイオン伝導度を示すものの、温度が低下すると、イオン伝導度が急激に低下するという問題があった。このように、イオン伝導度の温度依存性が大きくなると、電池の使用温度範囲でイオン伝導度が急激に変化するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、幅広い温度領域にわたって安定的に優れたイオン伝導度を示す固体電解質用樹脂材料を提供すること、また、前記固体電解質用樹脂材料を含む固体電解質用樹脂材料組成物、シート材および電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記(1)~(11)の本発明により達成される。
(1) 主鎖にノルボルネン由来の構造を有するとともに、側鎖にエチレンオキシド構造を有することを特徴とする固体電解質用樹脂材料。
【0009】
(2) 固体電解質用樹脂材料は、下記式[I]で示されるモノマー成分を含むものである上記(1)に記載の固体電解質用樹脂材料。
【化1】
(式[I]中、nは、1以上の整数であり、Rは、水素原子または炭化水素基である。)
【0010】
(3) 上記式[I]中におけるnは2以上6以下である上記(2)に記載の固体電解質用樹脂材料。
【0011】
(4) 重量平均分子量が3,000以上200,000以下である上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の固体電解質用樹脂材料。
【0012】
(5) 平均重合度が10以上900以下である上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の固体電解質用樹脂材料。
【0013】
(6) 軟化点が-30℃以上150℃以下である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の固体電解質用樹脂材料。
【0014】
(7) 上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の固体電解質用樹脂材料と、リチウム塩とを含むことを特徴とする固体電解質用樹脂材料組成物。
【0015】
(8) 前記リチウム塩が、LiSCN、LiN(CN)2、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、LiPF6、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、Li(CF3SO2)3C、LiSbF6、Li(FSO2)2N、LiC4F9SO3、LiN(SO2CF2CF3)2、LiPF3(CF2CF3)3、LiPF3(C2F5)3、LiPF3(CF3)3、LiCl、LiF、LiBr、LiI、LiB(C2O4)2、リチウムジフルオロ(オキサレート)ボレートおよびリチウムビス(オキサレート)ボレートよりなる群から選択される少なくとも1種である上記(7)に記載の固体電解質用樹脂材料組成物。
【0016】
(9) 前記固体電解質用樹脂材料組成物中に含まれる前記リチウム塩が有する全リチウム原子数に対する、前記固体電解質用樹脂材料組成物中に含まれる前記固体電解質用樹脂材料が有する全酸素原子数の比率が、4.0以上33.3以下である上記(7)または(8)に記載の固体電解質用樹脂材料組成物。
【0017】
(10) 上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の固体電解質用樹脂材料を含む材料で構成されていることを特徴とするシート材。
【0018】
(11) 正極層と、
負極層と、
前記正極層と前記負極層との間に位置する電解質層とを備える電池であって、
上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の固体電解質用樹脂材料を含んでいることを特徴とする電池。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、幅広い温度領域にわたって安定的に優れたイオン伝導度を示す固体電解質用樹脂材料を提供すること、また、前記固体電解質用樹脂材料を含む固体電解質用樹脂材料組成物、シート材および電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】全固体電池の一例を模式的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図を参照しつつ、本発明について詳細に説明する。
[1]固体電解質用樹脂材料
本発明の固体電解質用樹脂材料は、固体電解質の形成に用いる樹脂材料である。
なお、本発明において、固体電解質とは、全固体電解質、半固体電解質、ゲル電解質を含む概念であり、固体電解質用樹脂材料に加えて、液状成分もしくは電解液を含むものであってもよい。
【0022】
そして、本発明の固体電解質用樹脂材料は、主鎖にノルボルネン由来の構造を有するとともに、側鎖にエチレンオキシド構造を有することを特徴とする。
【0023】
これにより、幅広い温度領域にわたって安定的に優れたイオン伝導度を示す固体電解質用樹脂材料を提供することができる。このような優れた効果が得られるのは、以下のような理由によると考えられる。すなわち、エチレンオキシド構造を有することにより、高いイオン伝導度を確保しつつ、ノルボルネン由来の主鎖構造に結合する側鎖に、当該エチレンオキシド構造を有することにより、エチレンオキシド構造単独では生じやすい結晶化を抑制することができる。その結果、幅広い温度領域にわたって安定的に優れたイオン伝導度を示すことができるものと考えられる。また、固体電解質用樹脂材料が、主鎖に剛直なノルボルネン由来の構造を有することで、例えば、フィルム等に成形した場合に、良好な機械特性を得ることができる。また、固体電解質用樹脂材料の耐熱性を優れたものとすることができる。その結果、例えば、電池の製造過程での熱処理により、固体電解質用樹脂材料が分解し、ガスが発生することを効果的に防止することができる。
【0024】
また、固体電解質用樹脂材料の無機材料(例えば、後述する無機固体電解質や、活物質、集電体等)に対する密着性を優れたものとすることができる。
【0025】
一般的に、酸化物系無機固体電解質は、イオン伝導度は高いものの界面抵抗が大きく、界面抵抗低減のため焼結等の高温処理が必要だが、本発明の固体電解質用樹脂材料と複合化することにより、焼結等の高温処理を行わなくても、界面抵抗を低減でき、イオン伝導度が高く、かつ、柔軟な複合シートを好適に形成することができる。
【0026】
また、酸化物系無機固体電解質は、焼結等の高温処理を行わなければ、電極材料との間での界面抵抗が大きくなり、充放電に不具合が生じるが、本発明の固体電解質用樹脂材料と複合化することにより、焼結等の高温処理を行わなくても、電極に好適に結着することができ、良好な充放電特性を得ることができる。以上のようなことから、固体電解質用樹脂材料を含む材料で構成された電池の充放電特性、信頼性等を優れたものとすることができる。
【0027】
本発明の固体電解質用樹脂材料は、主鎖にノルボルネン由来の構造を有するものであるが、当該ノルボルネン由来の構造としては、例えば、単量体としての下記式[II]で示される構造が挙げられる。
【0028】
【化2】
(式[II]中のR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10のうちの少なくとも1つが、前記側鎖に結合する単結合(直接結合)または2価の原子もしくは原子団であり、残りが、1価の原子または原子団である。)
【0029】
前記2価の原子団としては、例えば、直鎖または分岐のアルキレン基等が挙げられる。
【0030】
前記1価の原子としては、例えば、水素原子が挙げられる。
前記1価の原子団としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等の炭化水素基等が挙げられ、さらに、これらが前記2価の原子または前記2価の原子団に結合した構造のもの等が挙げられる。
【0031】
中でも、前記ノルボルネン由来の構造は、上記式[II]中のR1~R10のうちの1つのみが前記側鎖に結合する単結合であり、それ以外の9つが水素原子であるのが好ましい。
【0032】
これにより、前述したような本発明による効果がより顕著に発揮される。また、固体電解質用樹脂材料の原料であるモノマーの合成をより高い収率で行うことができるとともに、当該モノマーの重合反応もより効率よく進行させることができ、本発明の固体電解質用樹脂材料の収率を高いものとすることができる。
【0033】
また、この場合、前記側鎖に結合する単結合は、上記式[II]中のR3~R6のうちのいずれか1つであるのが好ましい。
【0034】
これにより、前述したような本発明による効果がさらに顕著に発揮される。また、固体電解質用樹脂材料の原料であるモノマーの合成をさらに高い収率で行うことができるとともに、当該モノマーの重合反応もさらに効率よく進行させることができ、本発明の固体電解質用樹脂材料の収率をさらに高いものとすることができる。
【0035】
本発明の固体電解質用樹脂材料がノルボルネン由来の構造として上記式[II]で示される構造を含むものである場合、本発明の固体電解質用樹脂材料は、分子内に、上記式[II]で示される構造のうち互いに異なる複数種の構造を含んでいてもよい。
【0036】
本発明の固体電解質用樹脂材料は、側鎖にエチレンオキシド構造を有するものである。
当該エチレンオキシド構造は、単独で存在するもの(エチレングリコール分子同士が縮合した構造を有さないもの)であってもよいし、繰り返し構造を有するもの(エチレングリコール分子同士が縮合した構造を有するもの)であってもよいが、繰り返し構造を有するもの(エチレングリコール分子同士が縮合した構造を有するもの)であるのが好ましい。
これにより、固体電解質用樹脂材料のイオン伝導度をより高いものとすることができる。
【0037】
本発明の固体電解質用樹脂材料の側鎖を構成するエチレンオキシド構造が、繰り返し構造を有するもの(エチレングリコール分子同士が縮合した構造を有するもの)である場合、当該エチレンオキシド構造中におけるエチレングリコール分子の分子数は、2以上6以下であるのが好ましく、2以上5以下であるのがより好ましく、2以上3以下であるのがさらに好ましい。
【0038】
これにより、前述したような本発明による効果がより顕著に発揮される。また、後述するようなシート材に加工した際のシートの安定性、取り扱い性がより優れたものとなる。
【0039】
なお、本発明の固体電解質用樹脂材料は、分子内に、エチレングリコール分子の縮合数が互いに異なる複数種の構造を含んでいてもよい。
【0040】
本発明の固体電解質用樹脂材料は、下記式[I]で示されるモノマー成分を含むものであるのが好ましい。
【0041】
【化3】
(式[I]中、nは、1以上の整数であり、Rは、水素原子または炭化水素基である。)
【0042】
これにより、前述したような本発明による効果がより顕著に発揮される。また、固体電解質用樹脂材料のイオン伝導度をより高いものとすることができる。また、後述するようなシート材に加工した際のシートの安定性、取り扱い性がより優れたものとなる。
【0043】
上記式[I]中におけるnは、2以上6以下であるのが好ましく、2以上5以下であるのがより好ましく、2以上3以下であるのがさらに好ましい。
【0044】
これにより、前述したような本発明による効果がより顕著に発揮される。また、後述するようなシート材に加工した際のシートの安定性、取り扱い性がより優れたものとなる。
【0045】
上記式[I]中におけるRは、水素原子または炭化水素基であればよいが、炭素数が1以上4以下のアルキル基であるのが好ましく、メチル基であるのがより好ましい。
【0046】
これにより、前述したような本発明による効果がより顕著に発揮される。また、後述するようなシート材に加工した際のシートの安定性、取り扱い性がより優れたものとなる。
【0047】
本発明の固体電解質用樹脂材料が上記式[I]で示されるモノマー成分を含むものである場合、本発明の固体電解質用樹脂材料は、分子内に、上記式[I]で示されるモノマー成分のうち互いに異なる複数種のモノマー成分を含んでいてもよい。
【0048】
本発明の固体電解質用樹脂材料は、主鎖に、ノルボルネン由来の構造を有していればよく、ノルボルネン由来の構造に加えて、ノルボルネン由来ではない構造(例えば、上記式[II]以外のモノマー成分)を主鎖に有していてもよい。
【0049】
このような場合、本発明の固体電解質用樹脂材料の主鎖を構成する全モノマー成分中に占める、ノルボルネン由来の構造を有するモノマー成分の割合は、95.0mol%以上であるのが好ましく、98.0mol%以上であるのがより好ましく、100mol%であるのがさらに好ましい。
【0050】
本発明の固体電解質用樹脂材料は、側鎖に、エチレンオキシド構造を有していればよく、エチレンオキシド構造に加えて、エチレンオキシド構造以外の構造を側鎖に有していてもよい。
【0051】
本発明の固体電解質用樹脂材料を構成する全モノマー成分に占める上記式[I]で示されるモノマー成分の割合は、90.0mol%以上であるのが好ましく、95.0mol%以上であるのがより好ましく、100mol%であるのがさらに好ましい。
【0052】
また、本発明の固体電解質用樹脂材料の重量平均分子量は、3,000以上200,000以下であるのが好ましく、4,000以上180,000以下であるのがより好ましく、5,000以上160,000以下であるのがさらに好ましい。
【0053】
これにより、固体電解質用樹脂材料のイオン伝導度と、後述するようなシート材に加工した際のシートの安定性、取り扱い性とを、より高いレベルで両立することができる。
【0054】
本発明の固体電解質用樹脂材料の平均重合度は、10以上900以下であるのが好ましく、13以上800以下であるのがより好ましく、16以上700以下であるのがさらに好ましい。
【0055】
これにより、固体電解質用樹脂材料のイオン伝導度と、後述するようなシート材に加工した際のシートの安定性、取り扱い性とを、より高いレベルで両立することができる。
【0056】
本発明の固体電解質用樹脂材料の軟化点は、-30℃以上150℃以下であるのが好ましく、-20℃以上135℃以下であるのがより好ましく、-15℃以上120℃以下であるのがさらに好ましい。
【0057】
これにより、固体電解質用樹脂材料のイオン伝導度と、後述するようなシート材に加工した際のシートの安定性、取り扱い性とを、より高いレベルで両立することができる。
【0058】
なお、軟化点は、TMA/SS6100を使用し、昇温速度3℃/min、荷重圧縮30mNで測定という条件で、求めることができる。後に説明する実施例でも、軟化点は、このような条件で求めた。
【0059】
[2]固体電解質用樹脂材料組成物
次に、本発明の固体電解質用樹脂材料組成物について説明する。
【0060】
本発明の固体電解質用樹脂材料組成物は、前述した本発明の固体電解質用樹脂材料と、リチウム塩とを含むことを特徴とする。
【0061】
これにより、幅広い温度領域にわたって安定的に優れたイオン伝導度を示す固体電解質用樹脂材料を含む固体電解質用樹脂材料組成物を提供することができる。その結果、幅広い温度領域にわたって安定的に優れたイオン伝導度を示す固体電解質を形成することができる。
【0062】
なお、本発明の固体電解質用樹脂材料が分子内にリチウム塩の構造を有する場合には、本発明の固体電解質用樹脂材料組成物は、当該固体電解質用樹脂材料以外のリチウム塩を含む。
【0063】
本発明の固体電解質用樹脂材料組成物中における本発明の固体電解質用樹脂材料の含有量は、特に限定されないが、本発明の固体電解質用樹脂材料組成物の全固形分に対する比率が、45質量%以上90質量%以下であるのが好ましく、50質量%以上88質量%以下であるのがより好ましく、55質量%以上85質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0064】
これにより、固体電解質用樹脂材料組成物を用いて形成される固体電解質のイオン伝導度をより優れたものとすることができる。
【0065】
本発明の固体電解質用樹脂材料組成物中に含まれるリチウム塩は、特に限定されないが、LiSCN、LiN(CN)2、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、LiPF6、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、Li(CF3SO2)3C、LiSbF6、Li(FSO2)2N、LiC4F9SO3、LiN(SO2CF2CF3)2、LiPF3(CF2CF3)3、LiPF3(C2F5)3、LiPF3(CF3)3、LiCl、LiF、LiBr、LiI、LiB(C2O4)2、リチウムジフルオロ(オキサレート)ボレートおよびリチウムビス(オキサレート)ボレートよりなる群から選択される少なくとも1種であるのが好ましく、Li(CF3SO2)2Nであるのがより好ましい。
【0066】
これにより、固体電解質用樹脂材料組成物を用いて形成される固体電解質のイオン伝導度をより優れたものとすることができる。
【0067】
本発明の固体電解質用樹脂材料組成物中におけるリチウム塩の含有量は、特に限定されないが、本発明の固体電解質用樹脂材料組成物の全固形分に対する比率が、5質量%以上55質量%以下であるのが好ましく、10質量%以上50質量%以下であるのがより好ましく、15質量%以上45質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0068】
これにより、固体電解質用樹脂材料組成物を用いて形成される固体電解質のイオン伝導度をより優れたものとすることができる。
【0069】
本発明の固体電解質用樹脂材料組成物中における本発明の固体電解質用樹脂材料組成物とリチウム塩との含有量の比率は特に限定されないが、本発明の固体電解質用樹脂材料組成物中に含まれるリチウム塩が有する全リチウム原子数に対する、当該固体電解質用樹脂材料組成物中に含まれる本発明の固体電解質用樹脂材料が有する全酸素原子数の比率が、4.0以上33.3以下であるのが好ましく、4.5以上25.0以下であるのがより好ましく、5.0以上20.0以下であるのがさらに好ましい。
【0070】
これにより、固体電解質用樹脂材料組成物を用いて形成される固体電解質のイオン伝導度をより優れたものとすることができる。
【0071】
本発明の固体電解質用樹脂材料組成物は、前述した本発明の固体電解質用樹脂材料以外の樹脂材料をさらに含んでいてもよい。以下、このような樹脂材料を「その他の樹脂材料」とも言う。
【0072】
その他の樹脂材料としては、例えば、主鎖にノルボルネン由来の構造を有するものの側鎖にエチレンオキシド構造を有さない樹脂材料、側鎖にエチレンオキシド構造を有するものの主鎖にノルボルネン由来の構造を有さない樹脂材料等が挙げられる。また、その他の樹脂材料としては、例えば、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PVF(ポリフッ化ビニル)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PVA(ポリビニルアルコール)、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸やこれらの誘導体等が挙げられるが、特に、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミドやこれらの誘導体等が挙げられる。
【0073】
ただし、本発明の固体電解質用樹脂材料組成物の全固形分中に占めるその他の樹脂材料の割合は、20質量%以下であるのが好ましく、10質量%以下であるのがより好ましく、5質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0074】
本発明の固体電解質用樹脂材料組成物は、例えば、さらに、正極活物質や負極活物質等の活物質を含んでいてもよい。
【0075】
正極活物質としては、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4、Li2Mn2O3、LiCr0.5Mn0.5O2、LiFePO4、Li2FeP2O7、LiMnPO4、LiFeBO3、Li3V2(PO4)3、Li2CuO2、Li2FeSiO4、Li2MnSiO4等が挙げられる。また、正極活物質としては、例えば、LiFeF3等のフッ化物、LiBH4やLi4BN3H10等のホウ素化物錯体化合物、ポリビニルピリジン-ヨウ素錯体等のヨウ素錯体化合物、硫黄等の非金属化合物等を用いることもできる。
【0076】
負極活物質としては、例えば、Nb2O5、V2O5、TiO2、In2O3、ZnO、SnO2、NiO、ITO、AZO、GZO、ATO、FTO、Li4Ti5O12、Li2Ti3O7等の金属酸化物、金属硫化物等が挙げられる。また、負極活物質としては、例えば、Li、Al、Si、Si-Mn、Si-Co、Si―Ni、Sn、Zn、Sb、Bi、In、Au等の金属および合金、黒鉛、ハードカーボン等の炭素材料、LiC24、LiC6等のような炭素材料の層間にリチウムイオンが挿入された物質等を用いてもよい。
【0077】
本発明の固体電解質用樹脂材料組成物が正極活物質を含むものである場合、当該固体電解質用樹脂材料組成物を後述するような電池の正極層の形成に好適に用いることができ、本発明の固体電解質用樹脂材料組成物が負極活物質を含むものである場合、当該固体電解質用樹脂材料組成物を後述するような電池の負極層の形成に好適に用いることができる。
【0078】
本発明の固体電解質用樹脂材料組成物は、例えば、さらに、無機固体電解質を含んでいてもよい。
【0079】
無機固体電解質としては、例えば、LiLaZrO系化合物、LiLaZrNbO系化合物、LiLaZrTaO系化合物、LiLaTaO系化合物、LiLaTiO系化合物、LiAlGePO系化合物、LiAlTiPO系化合物、LiPO系化合物、LiSiO系化合物、LiBO系化合物、LiPS系化合物、LiPSCl系化合物等が挙げられる。
【0080】
本発明の固体電解質用樹脂材料組成物が無機固体電解質を含むものである場合、本発明の固体電解質用樹脂材料組成物の全固形分中に占める無機固体電解質の割合は、0.1質量%以上20質量%以下であるのが好ましく、0.2質量%以上18質量%以下であるのがより好ましく、0.3質量%以上15質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0081】
本発明の固体電解質用樹脂材料組成物は、例えば、さらに、25℃において、液状を呈する液状成分を含んでいてもよい。
【0082】
これにより、固体電解質用樹脂材料組成物の取り扱いのしやすさが向上し、固体電解質の形成をより好適に行うことができる。
【0083】
前記液状成分としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール、ベンジルアルコール等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酪酸ブチル、安息香酸メチル等のエステル類;ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン(THF)、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレンジグリコールモノメチルエーテル、エチレンジグリコールエチルメチルエーテル等のエーテル類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソブチルケトン(DIBK)、シクロヘキサノン等のケトン類;アセトニトリル等のニトリル類;ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン(メシチレン、ヘミメリテン、プソイドクメン)、エチルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素や、これらの誘導体(例えば、これらの化合物が有する水素原子を他の原子または原子団(官能基等)で置換した化合物)等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0084】
本発明の固体電解質用樹脂材料組成物が前記液状成分を含むものである場合、本発明の固体電解質用樹脂材料組成物中に占める前記液状成分の割合は、0.001質量%以上10質量%以下であるのが好ましく、0.005質量%以上5質量%以下であるのがより好ましい。
【0085】
これにより、固体電解質用樹脂材料組成物の取り扱いのしやすさをより優れたものとしつつ、固体電解質の形成時における液状成分の除去をより好適に行うことができ、固体電解質の生産性をより優れたものとすることができる。
【0086】
本発明の固体電解質用樹脂材料組成物は、前述した成分以外の成分を含んでいてもよい。以下、このような成分のことを「その他の成分」とも言う。
【0087】
その他の成分としては、例えば、密着助剤、レベリング剤、消泡剤、着色剤、酸化防止剤、難燃剤、シリカ等の無機充填剤、パラフィン、ワセリン等の中鎖ノルマルアルカン類や、ロジン、松脂、カナダバルサム等の天然系材料、ブチルグライム、テトラグライム等のグライム類等が挙げられる。
【0088】
ただし、本発明の固体電解質用樹脂材料組成物中に占めるその他の成分の割合は、10質量%以下であるのが好ましく、5質量%以下であるのがより好ましく、3質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0089】
[3]シート材
次に、本発明のシート材について説明する。
【0090】
本発明のシート材は、前述した本発明の固体電解質用樹脂材料を含む材料で構成されていることを特徴とする。
【0091】
これにより、幅広い温度領域にわたって安定的に優れたイオン伝導度を示す固体電解質用樹脂材料を含むシート材を提供することができる。また、このようなシート材を用いることにより、層状(シート状)の固体電解質を好適に形成することができる。その結果、後述するような電池の製造に好適に適用することができる。より具体的には、シート材が活物質を含まないものである場合には、電池の固体電解質層の形成に好適に用いることができ、シート材が正極活物質を含むものである場合には、電池の正極層の形成に好適に用いることができ、シート材が負極活物質を含むものである場合には、電池の負極層の形成に好適に用いることができる。
【0092】
本発明のシート材中における本発明の固体電解質用樹脂材料の含有量は、45質量%以上90質量%以下であるのが好ましく、50質量%以上88質量%以下であるのがより好ましく、55質量%以上85質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0093】
これにより、固体電解質用樹脂材料組成物を用いて形成される固体電解質のイオン伝導度をより優れたものとすることができる。
【0094】
本発明のシート材は、本発明の固体電解質用樹脂材料以外の成分を含んでいてもよい。
このような成分としては、例えば、固体電解質用樹脂材料組成物で述べた成分等が挙げられる。
【0095】
本発明のシート材の厚さは、特に限定されないが、5μm以上5000μm以下であるのが好ましく、10μm以上1000μm以下であるのがより好ましい。
【0096】
これにより、シート材単体としての機械強度をより好適に保持し易くなるため、電池の製造工程時等にシート材の取り扱いがより容易になる。
【0097】
本発明のシート材は、いかなる方法で製造したものであってもよいが、例えば、以下のような方法により好適に製造することができる。
【0098】
すなわち、前述したシート材の構成材料またはその前駆体を含む組成物を、シート状に成形することにより、シート材を得ることができる。
【0099】
前記組成物中に含むことができる、シート材の構成材料の前駆体としては、例えば、前述した本発明の固体電解質用樹脂材料やその他の樹脂材料に対応するオリゴマーやプレポリマー等が挙げられる。
【0100】
シート材の製造には、前述した固体電解質用樹脂材料組成物を用いることができる。
シート材の製造に液状成分を含む組成物を用いる場合、例えば、組成物の調製時には過剰量の液状成分を用いて、シート状への成形前に液状成分の一部を除去して、スラリー状としてもよい。
【0101】
液状成分を含む組成物を用いてシート材を製造する場合、例えば、キャスト塗工等の各種塗工法を用いて層を形成した後、当該層から、液状成分を除去することにより、好適にシート材を得ることができる。
【0102】
なお、シート材中には、その製造過程で用いた液状成分の一部が残存していてもよい。このような場合、電池の製造過程で当該液状成分を除去してもよい。
【0103】
[4]電池
次に、本発明の電池について説明する。
【0104】
本発明の電池は、正極層と、負極層と、前記正極層と前記負極層との間に位置する電解質層とを備える電池であって、前述した本発明の固体電解質用樹脂材料を含んでいることを特徴とする。
【0105】
これにより、幅広い温度領域にわたって安定的に優れたイオン伝導度を示す固体電解質用樹脂材料を含む電池を提供することができる。その結果、幅広い温度領域にわたって安定的に優れた充放電特性を発揮することができ、信頼性に優れた電池を提供することができる。
【0106】
以下、電池の中でも、特に、二次電池としての全固体電池について、代表的に説明する。
【0107】
図1は、全固体電池の一例を模式的に示す縦断面図である。
図1に示すように、全固体電池10は、正極層11と、負極層12と、正極層11と負極層12との間に介在する固体電解質層13とを備えている。
【0108】
正極層11および負極層12は、それぞれ、層状、特に、シート状をなすものであり、固体電解質と電極活物質とを含み、固体電解質層13は、層状、特に、シート状をなすものであり、固体電解質を含んでいる。
【0109】
正極層11、負極層12および固体電解質層13のうち、少なくとも1つが、固体電解質として、本発明に係る固体電解質用樹脂材料を含んでいる。
【0110】
特に、少なくとも、固体電解質層13が本発明に係る固体電解質用樹脂材料を含んでいるのが好ましく、正極層11および固体電解質層13のいずれもが本発明に係る固体電解質用樹脂材料を含んでいるのがより好ましい。
【0111】
正極層11中に含まれる活物質、すなわち、正極活物質としては、通常、無機材料が用いられる。より具体的には、正極活物質としては、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4、Li2Mn2O3、LiCr0.5Mn0.5O2、LiFePO4、Li2FeP2O7、LiMnPO4、LiFeBO3、Li3V2(PO4)3、Li2CuO2、Li2FeSiO4、Li2MnSiO4等が挙げられる。また、正極活物質としては、例えば、LiFeF3等のフッ化物、LiBH4やLi4BN3H10等のホウ素化物錯体化合物、ポリビニルピリジン-ヨウ素錯体等のヨウ素錯体化合物、硫黄等の非金属化合物等を用いることもできる。
【0112】
負極層12中に含まれる活物質、すなわち、負極活物質としては、通常、無機材料が用いられる。より具体的には、負極活物質としては、例えば、Nb2O5、V2O5、TiO2、In2O3、ZnO、SnO2、NiO、ITO、AZO、GZO、ATO、FTO、Li4Ti5O12、Li2Ti3O7等の金属酸化物、金属硫化物等が挙げられる。また、負極活物質としては、例えば、Li、Al、Si、Si-Mn、Si-Co、Si―Ni、Sn、Zn、Sb、Bi、In、Au等の金属および合金、黒鉛、ハードカーボン等の炭素材料、LiC24、LiC6等のような炭素材料の層間にリチウムイオンが挿入された物質等を用いてもよい。
【0113】
本発明の固体電解質用樹脂材料は、それ自体のイオン伝導度に優れるとともに、無機材料に対する密着性にも優れるため、本発明の固体電解質用樹脂材料と、当該固体電解質用樹脂材料に接触する上記のような活物質との密着性を優れたものとすることができ、これらの間での不本意な密着不良、剥離等を効果的に防止することができ、全固体電池10全体としてのイオン伝導度を長期間にわたって安定的に優れたものとすることができる。
【0114】
また、正極層11の固体電解質層13に対向する面とは反対の面側や、負極層12の固体電解質層13に対向する面とは反対の面側には、図示しない集電体が設けられていてもよい。
【0115】
集電体は、通常、後述するような無機材料で構成されている。
このような無機材料で構成される集電体に接触する部位、すなわち、正極層11や負極層12が本発明の固体電解質用樹脂材料を含む材料で構成されていると、当該部位と前記集電体との密着性を優れたものとすることができ、全固体電池10の信頼性をより優れたものとすることができる。
【0116】
集電体は、正極層11や負極層12に対する電子の授受を担うよう設けられた導電体である。集電体としては、通常、十分に電気抵抗が小さく、また充放電によって電気伝導特性やその機械構造が実質的に変化しない材料で構成されるものが用いられる。具体的には、例えば、Al、Ti、Pt、Au、Cu等が好適に用いられ、ステンレスのような合金系材料も用途に応じて好適に用いられる。
集電体の形状は、特に限定されず、例えば、箔状、板状、メッシュ状等が挙げられる。
【0117】
全固体電池は、いかなる用途のものであってもよい。全固体電池が電源として適用される電子機器としては、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、ビデオカメラ、電卓、電子ゲーム機器、パーソナルコンピューター、デジタルカメラ等が挙げられる。また、全固体電池は、例えば、自動車等の移動体に適用してもよい。より具体的には、例えば、電気自動車、プラグインハイブリッド自動車、ハイブリッド自動車、燃料電池自動車等の蓄電池に好適に適用することができる。また、例えば、家庭用電源、工業用電源、太陽光発電の蓄電池等にも適用することができる。
【0118】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、前述したものに限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0119】
例えば、本発明は、前述したような全固体電池に適用されるものに限定されない。より具体的には、例えば、本発明の電池は、燃料電池、レドックスフロー電池等の全固体電池以外の電池であってもよい。
【実施例0120】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0121】
[5]固体電解質用樹脂材料の製造
(実施例A1)
まず、下記式[III]で示される化合物:29.24g(129.28ミリモル)を、トルエン:228.86gと酢酸エチル:276.51gとの混合溶媒に溶解し、この溶液を反応容器に充填した。
【0122】
【0123】
前記溶液に、窒素を30分間散布して酸素を除去し、その後60℃に加熱した。前記溶液の温度が60℃になったところで、47.647gのトルエン中に(η6-トルエン)Ni(C6F5)2:2.508g(5.17ミリモル)を含む溶液(グローブボックス内で調製したもの)を、シリンジによって反応容器に加えた。この混合物を60℃において2.0時間撹拌した後、30質量%のH2O2水溶液:2.33g(129.3ミリモル)を加え、溶液を50℃にした。
【0124】
次に、上記の反応混合物を酢酸:34.05g(567.0ミリモル)および30質量%のH2O2水溶液:66.34g(1950.0ミリモル)で処理してNi残渣を除去し、次に水とイソプロピルアルコール(IPA)で洗浄した。
【0125】
次に、溶媒をロータリーエバポレーターで蒸発させることによって除去して、重合反応物を得た。この重合反応物に、同質量のアセトンを加えて溶解し、その後、前記重合反応物の14倍過剰量のヘプタンに加えて攪拌し、未反応の単量体を除去した。
【0126】
前記工程より得た生成物を、60℃において真空によって16時間乾燥することにより、下記式[IV]で示される固体電解質用樹脂材料:18g(収率:62%)を単離した。
【0127】
【0128】
上記のようにして得られた固体電解質用樹脂材料は、重量平均分子量が12400、数平均分子量が8600、平均重合度が38、軟化点が32℃であった。
【0129】
(実施例A2~A6)
反応条件を変更することにより、重量平均分子量、数平均分子量、軟化点の条件が表1に示すものとなるようにした以外は、それぞれ、前記実施例A1と同様にして固体電解質用樹脂材料を製造した。
【0130】
(実施例A7)
まず、下記式[V]で示される化合物:13.11g(48.48ミリモル)を、トルエン:106.18gと酢酸エチル:124.05gとの混合溶媒に溶解し、この溶液を反応容器に充填した。
【0131】
【0132】
前記溶液に、窒素を30分間散布して酸素を除去し、その後60℃に加熱した。前記溶液の温度が60℃になったところで、17.868gのトルエン中に(η6-トルエン)Ni(C6F5)2:0.940g(1.94ミリモル)を含む溶液(グローブボックス内で調製したもの)を、シリンジによって反応容器に加えた。この混合物を60℃において2.0時間撹拌した後、30質量%のH2O2水溶液:0.87g(48.48ミリモル)を加え、溶液を50℃にした。
【0133】
次に、上記の反応混合物を酢酸:15.26g(254.1ミリモル)および30質量%のH2O2水溶液:29.72g(873.6ミリモル)で処理してNi残渣を除去し、次に水とイソプロピルアルコール(IPA)で洗浄した。
【0134】
次に、溶媒をロータリーエバポレーターで蒸発させることによって除去して、重合反応物を得た。この重合反応物に、同質量のアセトンを加えて溶解し、その後、前記重合反応物の14倍過剰量のヘプタンに加えて攪拌し、未反応の単量体を除去した。
【0135】
前記工程より得た生成物のアセトン溶液を、60℃において真空によって16時間乾燥することにより、下記式[VI]で示される固体電解質用樹脂材料:6g(収率:46%)を単離した。
【0136】
【0137】
上記のようにして得られた固体電解質用樹脂材料は、重量平均分子量が12800、数平均分子量が8100、平均重合度が30、軟化点が-15℃であった。
【0138】
(実施例A8)
まず、下記式[VII]で示される化合物:15.24g(48.48ミリモル)を、トルエン:135.64gと酢酸エチル:144.57gとの混合溶媒に溶解し、この溶液を反応容器に充填した。
【0139】
【0140】
前記溶液に、窒素を30分間散布して酸素を除去し、その後60℃に加熱した。前記溶液の温度が60℃になったところで、8.93gのトルエン中に(η6-トルエン)Ni(C6F5)2:0.470g(0.97ミリモル)を含む溶液(グローブボックス内で調製したもの)を、シリンジによって反応容器に加えた。この混合物を60℃において2.0時間撹拌した後、30質量%のH2O2水溶液:0.44g(24.24ミリモル)を加え、溶液を50℃にした。
【0141】
次に、上記の反応混合物を酢酸:17.71g(294.9ミリモル)および30質量%のH2O2水溶液:34.50g(1014.1ミリモル)で処理してNi残渣を除去し、次に水とイソプロピルアルコール(IPA)で洗浄した。
【0142】
次に、溶媒をロータリーエバポレーターで蒸発させることによって除去して、下記式[VIII]で示される重合体と未反応の式[VII]で示される化合物とを含む重合反応物を得た。この重合反応物に、同質量のアセトンを加えて溶解し、その後、前記重合反応物の14倍過剰量のヘプタンに加えて攪拌し、未反応の単量体を除去した。
【0143】
前記工程より得た生成物のアセトン溶液を、60℃において真空によって16時間乾燥することにより、下記式[VIII]で示される固体電解質用樹脂材料:5g(収率:33%)を単離した。
【0144】
【0145】
上記のようにして得られた固体電解質用樹脂材料は、重量平均分子量が16400、数平均分子量が11600、平均重合度が37、軟化点が-21℃であった。
【0146】
(比較例A1)
ポリエチレンオキサイド(重量平均分子量:20000)を用意し、本比較例では、これを固体電解質用樹脂材料として用いた。
【0147】
表1に実施例A1~A8および比較例A1の固体電解質用樹脂材料の条件をまとめて示す。表1中、ポリエチレンオキサイドを「PEO」と示した。
【0148】
【0149】
[6]固体電解質用樹脂材料組成物の製造
(実施例B1)
前記実施例A1で得られた固体電解質用樹脂材料:100質量部と、リチウム塩としてのLi(CF3SO2)2N(LiTFSI):19質量部と、溶媒としてのアセトンとを混合して、透明な液体を得た。その後、この液体を60℃で1時間真空乾燥に供することにより、アセトンを除去し、固体電解質用樹脂材料組成物を得た。
【0150】
(実施例B2、B3)
固体電解質用樹脂材料とリチウム塩との混合比率を変更した以外は、前記実施例B1と同様にして電解質用樹脂材料組成物を製造した。
【0151】
(実施例B4)
前記実施例A2で得られた固体電解質用樹脂材料:100質量部と、リチウム塩としてのLi(CF3SO2)2N(LiTFSI):41質量部と、溶媒としてのアセトンとを混合して、透明な液体を得た。その後、この液体を60℃で1時間真空乾燥に供することにより、アセトンを除去し、固体電解質用樹脂材料組成物を得た。
【0152】
(実施例B5、B6)
前記実施例A2で得られた固体電解質用樹脂材料の代わりに、それぞれ、前記実施例A3、A4で得られた固体電解質用樹脂材料を用いた以外は、前記実施例B4と同様にして固体電解質用樹脂材料組成物を製造した。
【0153】
(実施例B7、B8)
前記実施例A1で得られた固体電解質用樹脂材料の代わりに、それぞれ、前記実施例A5、A6で得られた固体電解質用樹脂材料を用いた以外は、前記実施例B1と同様にして固体電解質用樹脂材料組成物を製造した。
【0154】
(実施例B9)
前記実施例A7で得られた固体電解質用樹脂材料:100質量部と、リチウム塩としてのLi(CF3SO2)2N(LiTFSI):21質量部と、溶媒としてのアセトンとを混合して、透明な液体を得た。その後、この液体を60℃で1時間真空乾燥に供することにより、アセトンを除去し、固体電解質用樹脂材料組成物を得た。
【0155】
(実施例B10~B12)
固体電解質用樹脂材料とリチウム塩との混合比率を変更した以外は、前記実施例B9と同様にして電解質用樹脂材料組成物を製造した。
【0156】
(実施例B13)
前記実施例A8で得られた固体電解質用樹脂材料:100質量部と、リチウム塩としてのLi(CF3SO2)2N(LiTFSI):23質量部と、溶媒としてのアセトンとを混合して、透明な液体を得た。その後、この液体を60℃で1時間真空乾燥に供することにより、アセトンを除去し、固体電解質用樹脂材料組成物を得た。
【0157】
(実施例B14~B16)
固体電解質用樹脂材料とリチウム塩との混合比率を変更した以外は、前記実施例B13と同様にして電解質用樹脂材料組成物を製造した。
【0158】
(比較例B1)
前記比較例A1で得られた固体電解質用樹脂材料:100質量部と、リチウム塩としてのLi(CF3SO2)2N(LiTFSI):33質量部と、溶媒としてのアセトンとを混合して、透明な液体を得た。その後、この液体を60℃で1時間真空乾燥に供することにより、アセトンを除去し、固体電解質用樹脂材料組成物を得た。
【0159】
(比較例B2、B3)
固体電解質用樹脂材料とリチウム塩との混合比率を変更した以外は、前記比較例B1と同様にして電解質用樹脂材料組成物を製造した。
【0160】
[7]評価
[7-1]イオン伝導度評価
【0161】
前記実施例B1~B16および前記比較例B1~B3の各固体電解質用樹脂材料組成物を用いて、以下のようにしてイオン伝導度の評価を行った。
【0162】
すなわち、後述する[7-3]の評価で〇または△のものについては、上記[6]で得られた固体電解質用樹脂材料組成物を0.8MPa、100℃で5分間の真空プレスを行うことによりシート状に成形し、さらにその後、60℃で15時間真空乾燥して水分除去することにより、サンプルシートを得た。このようにして得られたサンプルシートは、いずれも、残留溶媒量が0.1質量%以下、水分量が500ppm以下であった。
【0163】
得られたサンプルシートを用いて、60℃、45℃、30℃の各温度で、交流インピーダンス法によりイオン伝導度を測定した。測定した周波数範囲は、1Hz~50kHzであり、電圧は0.5Vで測定した。
【0164】
一方、後述する[7-3]の評価で×のものについては、真空プレスによるシート状への成形、真空乾燥による水分除去を行うことなく、上記[6]で得られた固体電解質用樹脂材料組成物を、サンプルシートの代わりに用いて、上記と同様にしてイオン伝導度の測定を行った。
【0165】
[7-2]形状保持性評価
前記実施例B1~B16および前記比較例B1~B3の各固体電解質用樹脂材料組成物を、それぞれ、ガラス板に付着させ、ガラス板を垂直に保持して24時間静置した後、24時間経過後に、固体電解質用樹脂材料組成物が自重で変形するかどうかを確認した。
【0166】
自重で変形したものを「×」と評価し、自重で変形しなかったものを「〇」と評価した。
【0167】
[7-3]自立フィルム性評価
上記[7-2]で「〇」の評価の固体電解質用樹脂材料組成物については、0.8MPa、100℃で5分間の真空プレスを行い、さらにその後、60℃で15時間真空乾燥して水分除去することにより、フィルム状の成形体の製造を試みた。
ここで、フィルム状の成形体が得られなかったものを「×」と評価した。
【0168】
フィルム状の成形体が得られたものについては、直径13mmの棒に外周に沿わせてフィルム状の成形体を湾曲させた。
【0169】
ここで、割れや不可逆的な変形が生じたものを「△」と評価し、割れや不可逆的な変形が生じなかったものを「〇」と評価した。
【0170】
これらの結果を、前記実施例B1~B16および比較例B1~B3の固体電解質用樹脂材料組成物の構成とともに、表2にまとめて示す。なお、表2中、固体電解質用樹脂材料組成物中における固体電解質用樹脂材料とリチウム塩との比率について、固体電解質用樹脂材料組成物中に含まれるリチウム塩が有する全リチウム原子数に対する、固体電解質用樹脂材料組成物中に含まれる固体電解質用樹脂材料が有する全酸素原子数の比率を「[O]/[Li]」と示し、固体電解質用樹脂材料組成物でのリチウム塩の含有率に対する固体電解質用樹脂材料の含有率の質量比での比率を「質量比」と示した。
【0171】
【0172】
表2から明らかなように、前記実施例B1~B16では、いずれも、前記比較例B1~B3よりも優れた結果が得られた。
【0173】
また、固体電解質用樹脂材料の重量平均分子量を3,000以上200,000以下の範囲内で、平均重合度を10以上900以下の範囲内で、軟化点を-30℃以上150℃以下の範囲内で種々変更した以外は、前記実施例と同様にして、固体電解質用樹脂材料、固体電解質用樹脂材料組成物を製造し、前記と同様にして評価を行ったところ、前記と同様に優れた結果が得られた。
【0174】
また、固体電解質用樹脂材料組成物中に含まれるリチウム塩が有する全リチウム原子数に対する、当該固体電解質用樹脂材料組成物中に含まれる固体電解質用樹脂材料が有する全酸素原子数の比率が、4.0以上33.3以下の範囲内で種々変更した以外は、前記実施例と同様にして、固体電解質用樹脂材料組成物を製造し、前記と同様にして評価を行ったところ、前記と同様に優れた結果が得られた。