(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093995
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】有機金属錯体、電解液、および電池
(51)【国際特許分類】
H01M 8/18 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
H01M8/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210682
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116366
【弁理士】
【氏名又は名称】二島 英明
(72)【発明者】
【氏名】花房 慶
(72)【発明者】
【氏名】高桑 達哉
(72)【発明者】
【氏名】増田 周弥
(72)【発明者】
【氏名】大川 建二郎
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA03
5H126BB10
5H126GG01
5H126GG02
5H126GG17
5H126RR01
(57)【要約】
【課題】水に対する高い溶解性と安定性とを有する有機金属錯体を提供する。
【解決手段】中心金属と、配位子とを有し、前記中心金属は、遷移金属元素であり、前記配位子は、アミノ基と、カルボキシル基と、複素環式化合物とを含む、有機金属錯体。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心金属と、配位子とを有し、
前記中心金属は、遷移金属元素であり、
前記配位子は、アミノ基と、カルボキシル基と、複素環式化合物とを含む、
有機金属錯体。
【請求項2】
前記複素環式化合物が不飽和結合を有する、請求項1に記載の有機金属錯体。
【請求項3】
前記複素環式化合物が芳香環を有する、請求項2に記載の有機金属錯体。
【請求項4】
前記複素環式化合物を構成する環は5員環以上8員環以下である、請求項1に記載の有機金属錯体。
【請求項5】
前記複素環式化合物を構成する環はヘテロ原子を含み、
前記ヘテロ原子は、硫黄、酸素、窒素およびリンからなる群より選択される少なくとも一種の原子である、請求項1に記載の有機金属錯体。
【請求項6】
前記ヘテロ原子が窒素である、請求項5に記載の有機金属錯体。
【請求項7】
前記複素環式化合物は、イミダゾール基、ピラゾール基、オキサゾール基、イソオキサゾール基、チアゾール基、イソチアゾール基、トリアゾール基、ピロール基、フラザン基、オキサジアゾール基、チアジアゾール基、ジオキサゾール基、ジチアゾール基、テトラゾール基、オキサテトラゾール基、チアテトラゾール基、ペンタゾール基、ピリジン基、ピラン基、ホスホリン基、チオピラン基、ピラジン基、ピリミジン基、ピリダジン基、オキサジン基、チアジン基、ジオキシン基、ジチイン基、トリアジン基、アゼピン基、オキセピン基、チエピン基、ジアゼピン基、チアゼピン基、インドール基、イソインドール基、ベンゾイミダゾール基、プリン基、ベンゾトリアゾール基、キノリン基、イソキノリン基、キナゾリン基、シンノリン基およびプテリジン基からなる群より選択される少なくとも一種の官能基を含む、請求項1に記載の有機金属錯体。
【請求項8】
前記配位子の分子量が300以下である、請求項1に記載の有機金属錯体。
【請求項9】
前記中心金属に対する前記配位子のモル比が1以上3以下である、請求項1に記載の有機金属錯体。
【請求項10】
前記中心金属は、クロム、チタン、鉄、マンガンおよびセリウムからなる群より選択される少なくとも一種の元素である、請求項1に記載の有機金属錯体。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の有機金属錯体と、水とを含む、
電解液。
【請求項12】
請求項11に記載の電解液を備える、
電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、有機金属錯体、電解液、および電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1から特許文献3は、レドックスフロー電池に使用される電解液を開示する。電解液は、酸化還元反応を行う活物質が溶媒に溶解した溶液である。特許文献1は、鉄イオンとエチレンジアミン四酢酸(EDTA)とを含む負極電解液を開示する。鉄イオンは、負極活物質として機能する。特許文献2は、チタンイオンとEDTAとを含む負極電解液、およびクロムイオンとEDTAとを含む負極電解液を開示する。チタンイオンおよびクロムイオンは、負極活物質として機能する。特許文献3は、マンガンイオンとEDTAとを含む正極電解液を開示する。マンガンイオンは、正極活物質として機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭56-42970号公報
【特許文献2】特開昭57-9072号公報
【特許文献3】特開昭57-9073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、レドックスフロー電池に使用する電解液には、水を溶媒とする水系電解液が使用されている。レドックスフロー電池は、正極活物質と負極活物質との酸化還元電位の差によって、起電力が発生する。電解液は、レドックスフロー電池のエネルギー密度を高める目的で、活物質の濃度が高いことが望まれる。そのため、活物質には、水に対する溶解性と安定性が要求される。
【0005】
電解液の溶媒に対する活物質の溶解度を高めるために、金属イオンに有機化合物が結合された金属錯体を活物質に用いることが検討されている。しかし、従来の金属錯体からなる活物質は、水に対する溶解性が十分とはいえない。
【0006】
本開示は、水に対する高い溶解性と安定性とを有する有機金属錯体を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の有機金属錯体は、
中心金属と、配位子とを有し、
前記中心金属は、遷移金属元素であり、
前記配位子は、アミノ基と、カルボキシル基と、複素環式化合物とを含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示の有機金属錯体は、水に対する高い溶解性と安定性とを有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、レドックスフロー電池の構成を示す概略図である。
【
図2】
図2は、ヒスチジンの構造を模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、リシンの構造を模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、トリエチレンテトラミンの構造を模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、グルタミン酸の構造を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、イミダゾール基の構造を模式的に示す図である。
【
図7】
図7は、フェノール基の構造を模式的に示す図である。
【
図8】
図8は、ベンゼン基の構造を模式的に示す図である。
【
図9】
図9は、チアゾール基の構造を模式的に示す図である。
【
図10】
図10は、ピロール基の構造を模式的に示す図である。
【
図11】
図11は、ホスホリン基の構造を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0011】
(1)本開示の有機金属錯体は、
中心金属と、配位子とを有し、
前記中心金属は、遷移金属元素であり、
前記配位子は、アミノ基と、カルボキシル基と、複素環式化合物とを含む。
【0012】
本開示の有機金属錯体は、中心金属のまわりに配位子が結合している化合物である。配位子は、アミノ基とカルボキシル基とを有するアミノ酸であって、複素環式化合物を含む有機化合物である。つまり、本開示の有機金属錯体は、アミノ酸金属錯体である。本開示の有機金属錯体は、例えば、電池の電解液に含まれる活物質に利用できる。
【0013】
本開示の有機金属錯体は、配位子が複素環式化合物を含むアミノ酸であることで、水に対する高い溶解性と安定性とを有する。アミノ酸は極性が高いため、アミノ酸を配位子とした有機金属錯体は溶解性が高い。更に、有機金属錯体の構造は、配位子が複素環式化合物を含むアミノ酸であることで、対称性が低い。このような構造を有する有機金属錯体は、高い溶解性を有する。また、この有機金属錯体は、ヤーンテラー効果によって、安定性が高くなる。
【0014】
(2)上記(1)の有機金属錯体において、
前記複素環式化合物が不飽和結合を有してもよい。
【0015】
上記(2)の有機金属錯体は、安定性が高い。
【0016】
(3)上記(2)の有機金属錯体において
前記複素環式化合物が芳香環を有してもよい。
【0017】
上記(3)の有機金属錯体は、安定性が高い。芳香環は不飽和結合を有している。
【0018】
(4)上記(1)から(3)のいずれかの有機金属錯体において、
前記複素環式化合物を構成する環は5員環以上8員環以下であってもよい。
【0019】
複素環式化合物の環が5員環以上であることで、安定性が高い。複素環式化合物の環が8員環以下であることで、有機金属錯体が水に溶けやすい。
【0020】
(5)上記(1)から(4)のいずれかの有機金属錯体において、
前記複素環式化合物を構成する環はヘテロ原子を含み、
前記ヘテロ原子は、硫黄、酸素、窒素およびリンからなる群より選択される少なくとも一種の原子であってもよい。
【0021】
複素環式化合物の環にヘテロ原子が存在する場合、有機金属錯体の構造の対称性が低くなる。そのため、有機金属錯体の溶解性が高くなる。また、複素環式化合物の環にヘテロ原子が存在することで、有機金属錯体の安定性が高くなる。
【0022】
(6)上記(5)の有機金属錯体において、
前記ヘテロ原子が窒素であってもよい。
【0023】
上記(6)の有機金属錯体は、溶解性が高く、かつ安定性が高い。
【0024】
(7)上記(1)から(6)のいずれかの有機金属錯体において、
前記複素環式化合物は、イミダゾール基、ピラゾール基、オキサゾール基、イソオキサゾール基、チアゾール基、イソチアゾール基、トリアゾール基、ピロール基、フラザン基、オキサジアゾール基、チアジアゾール基、ジオキサゾール基、ジチアゾール基、テトラゾール基、オキサテトラゾール基、チアテトラゾール基、ペンタゾール基、ピリジン基、ピラン基、ホスホリン基、チオピラン基、ピラジン基、ピリミジン基、ピリダジン基、オキサジン基、チアジン基、ジオキシン基、ジチイン基、トリアジン基、アゼピン基、オキセピン基、チエピン基、ジアゼピン基、チアゼピン基、インドール基、イソインドール基、ベンゾイミダゾール基、プリン基、ベンゾトリアゾール基、キノリン基、イソキノリン基、キナゾリン基、シンノリン基およびプテリジン基からなる群より選択される少なくとも一種の官能基を含んでもよい。
【0025】
上記(6)の有機金属錯体は、溶解性が高く、かつ安定性が高い。上記した各官能基はいずれも、ヘテロ原子を含む芳香環を有する複素環式化合物である。また、これらの官能基は、5員環以上8員環以下の複素環式化合物である。
【0026】
(8)上記(1)から(7)のいずれかの有機金属錯体において、
前記配位子の分子量が300以下であってもよい。
【0027】
配位子の分子量が300以下であることで、有機金属錯体が水に溶けやすい。
【0028】
(9)上記(1)から(8)のいずれかの有機金属錯体において、
前記中心金属に対する前記配位子のモル比が1以上3以下であってもよい。
【0029】
中心金属に対する配位子のモル比が上記範囲であることで、有機金属錯体が水に溶けやすい。
【0030】
(10)上記(1)から(9)のいずれかの有機金属錯体において、
前記中心金属は、クロム、チタン、鉄、マンガンおよびセリウムからなる群より選択される少なくとも一種の元素であってもよい。
【0031】
上記した各元素は安価である。
【0032】
(11)本開示の電解液は、
上記(1)から(10)のいずれか1つに記載の有機金属錯体と、水とを含む。
【0033】
本開示の電解液は、上記した有機金属錯体が水に溶解した水系電解液である。本開示の電解液は、有機金属錯体の濃度を高めることができ、かつ、有機金属錯体が電解液中に安定して存在する。本開示の電解液は、各種の電解液、例えば、電池の電解液、キャパシタの電解液に利用できる。
【0034】
(12)本開示の電池は、
上記(11)に記載の電解液を備える。
【0035】
本開示の電池は、上記した電解液を備えることで、エネルギー密度が高い。本開示の電池は、電解液を用いる各種の電池、例えば、レドックスフロー電池である。
【0036】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の実施形態に係る、有機金属錯体、電解液、および電池の具体例を説明する。図面において、図中の同一符号は同一または相当部分を示す。
なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0037】
[有機金属錯体]
実施形態の有機金属錯体は、中心金属と、配位子とを有する。実施形態の有機金属錯体の特徴の1つは、配位子が複素環式化合物を含むアミノ酸である点である。以下、有機金属錯体の構成を詳しく説明する。
【0038】
(中心金属)
中心金属は、遷移金属元素である。遷移金属元素とは、周期表の第3族元素から第12族元素に属する元素のことをいう。周期表とは、IUPAC(International Union of Pure and Applied Chemistry)で定められた長周期型周期表のことをいう。中心金属は、通常、金属イオンの状態で存在している。中心金属を構成する遷移金属元素は、1種でもよいし、2種以上でもよい。
【0039】
中心金属は、有機金属錯体の用途に応じて、遷移金属元素の中から適宜選択することができる。有機金属錯体は、例えば、電池の電解液に含まれる活物質に用いることができる。例えば、有機金属錯体の用途が電池の活物質である場合、中心金属は、酸化還元反応によって価数が変化する遷移金属元素であってもよい。中心金属は、例えば、クロム(Cr)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)およびセリウム(Ce)からなる群より選択される少なくとも一種の元素である。これらの元素は、安価かつ容易に入手しやすい。
【0040】
(配位子)
配位子は、中心金属に結合している分子である。配位子は、アミノ基(-NH2)と、カルボキシル基(-COOH)と、複素環式化合物とを含む有機化合物である。配位子は、アミノ基とカルボキシル基とを有するアミノ酸である。つまり、配位子は、複素環式化合物を含むアミノ酸である。アミノ基の数は1または2以上である。カルボキシル基の数は1または2以上である。複素環式化合物の数は1または2以上である。アミノ基の数、カルボキシル基の数、および複素環式化合物の数は、いずれも特に限定されない。アミノ基の数は、例えば1以上3以下である。カルボキシル基の数は、例えば1以上3以下である。複素環式化合物の数は、例えば1以上3以下である。アミノ基の数、カルボキシル基の数、および複素環式化合物の数はそれぞれ、1または2でもよい。
【0041】
有機金属錯体は、中心金属に有機化合物からなる配位子が結合することによって形成される。配位子は、中心金属を挟むようにまたは囲むように配位する。1つの中心金属に対する配位子の数は、例えば1以上6以下である。配位子の数は2以上であってもよい。1つの配位子において、1つの中心金属に結合している原子の数は1または2以上である。この中心金属と直接結合する配位原子の数を配位数という。中心金属と1つの原子で結合している配位子は単座配位子と呼ばれる。中心金属と複数の原子で結合している配位子は多座配位子と呼ばれる。配位数が2以上である多座配位子は、配位数が1である単座配位子に比べて、有機金属錯体の構造が安定しやすい。配位子の配位数は、例えば1以上8以下である。配位子の配位数は4以下であってもよい。
【0042】
実施形態の有機金属錯体は、配位子が複素環式化合物を含むアミノ酸であることで、水に対する高い溶解性と安定性とを有する。アミノ酸は極性が高いため、アミノ酸を配位子とした有機金属錯体は溶解性が高い。更に、有機金属錯体の構造は、配位子が複素環式化合物を含むアミノ酸であることで、対称性が低い。このような構造を有する有機金属錯体は、高い溶解性を有する。溶解性は、水への溶けやすさを示す性質である。溶解性が高いほど、水に溶けやすい。また、この有機金属錯体は、ヤーンテラー効果によって、安定性が高くなる。安定性とは、中心金属と配位子との結合の強さを示す性質である。安定性が高いほど、中心金属と配位子とが分離しにくい。その他、実施形態の有機金属錯体は、中心金属が配位子と錯体を形成することで、中心金属の酸化還元電位を制御することができる。
【0043】
(複素環式化合物)
複素環式化合物は、複数の炭素原子が環状に結合した環を有する。複素環式化合物を構成する環は炭素原子だけでなく、ヘテロ原子を含む。つまり、複素環式化合物における環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されている。ヘテロ原子とは、炭素以外の原子のことをいう。ヘテロ原子は、例えば、硫黄(S)、酸素(O)、窒素(N)およびリン(P)からなる群より選択される少なくとも一種の原子である。複素環式化合物に含まれるヘテロ原子の数は1でもよいし、2以上でもよい。ヘテロ原子の数は、例えば1以上4以下である。複素環式化合物に含まれるヘテロ原子の少なくとも1つは窒素であってもよい。つまり、複素環式化合物が1つ以上の窒素を含んでいてもよい。
【0044】
複素環式化合物の環にヘテロ原子が存在する場合、有機金属錯体の構造の対称性が低くなる。そのため、有機金属錯体の溶解性が高くなる。また、複素環式化合物の環にヘテロ原子が存在することで、有機金属錯体の安定性が高くなる。つまり、複素環式化合物の環がヘテロ原子を含む場合、有機金属錯体の溶解性および安定性が高くなる。
【0045】
〈不飽和結合〉
複素環式化合物は不飽和結合を有してもよい。不飽和結合とは、環を構成する原子が二重結合していることをいう。複素環式化合物は芳香環を有してもよい。つまり、複素環式化合物は芳香族化合物であってもよい。芳香環は不飽和結合を有している。複素環式化合物が不飽和結合を有することで、有機金属錯体の安定性が高くなる。
【0046】
〈環員数〉
複素環式化合物を構成する環は、例えば5員環以上8員環以下であってもよい。5員環とは、複素環式化合物における環を構成する原子の数が5であることをいう。環を構成する原子の数を環員数という。環員数が大きいほど、環が大きい。複素環式化合物の環が5員環以上であることで、有機金属錯体の安定性が高くなる。複素環式化合物の環が8員環以下であることで、有機金属錯体が水に溶けやすい。つまり、複素環式化合物の環が5員環以上8員環以下である場合、有機金属錯体の溶解性および安定性が高くなる。複素環式化合物の環は5員環または6員環であってもよい。
【0047】
複素環式化合物は、例えば、イミダゾール基、ピラゾール基、オキサゾール基、イソオキサゾール基、チアゾール基、イソチアゾール基、トリアゾール基、ピロール基、フラザン基、オキサジアゾール基、チアジアゾール基、ジオキサゾール基、ジチアゾール基、テトラゾール基、オキサテトラゾール基、チアテトラゾール基、ペンタゾール基、ピリジン基、ピラン基、ホスホリン基、チオピラン基、ピラジン基、ピリミジン基、ピリダジン基、オキサジン基、チアジン基、ジオキシン基、ジチイン基、トリアジン基、アゼピン基、オキセピン基、チエピン基、ジアゼピン基、チアゼピン基、インドール基、イソインドール基、ベンゾイミダゾール基、プリン基、ベンゾトリアゾール基、キノリン基、イソキノリン基、キナゾリン基、シンノリン基およびプテリジン基からなる群より選択される少なくとも一種の官能基を含んでもよい。
【0048】
上記した各官能基はいずれも、ヘテロ原子を含む芳香環を有し、かつ、5員環以上8員環以下の複素環式化合物である。複素環式化合物が上記した官能基を含むことで、有機金属錯体の溶解性および安定性が高くなる。
【0049】
〈分子量〉
配位子の分子量は、例えば300以下であってもよい。配位子の分子量が300以下であることで、有機金属錯体が水に溶けやすい。その結果、有機金属錯体の溶解性が高くなる。配位子の分子量が小さいほど、有機金属錯体の溶解性が高くなる。配位子の分子量は、更に250以下、200以下であってもよい。配位子の分子量の下限は、例えば130以上である。配位子の分子量は、130以上300以下、150以上300以下、160以上250以下、または170以上200以下であってもよい。
【0050】
〈中心金属に対する配位子のモル比〉
中心金属に対する配位子のモル比は、例えば1以上3以下であってもよい。中心金属に対する配位子のモル比が上記範囲であることで、有機金属錯体が水に溶けやすい。その結果、有機金属錯体の溶解性が高くなる。中心金属に対する配位子のモル比は、更に1.5以上2.5以下であってもよい。上記モル比は、中心金属1モルに対する配位子のモル数の比を意味する。即ち、上記モル比は、配位子のモル数を中心金属のモル数で割った値である。
【0051】
<有機金属錯体の具体例>
以下、有機金属錯体の一例を具体的に説明する。実施形態の有機金属錯体は、中心金属が配位子と錯体を形成することで、中心金属の酸化還元電位を制御することができる。有機金属錯体は、例えば、後述するレドックスフロー電池の活物質に利用できる。
【0052】
中心金属の具体例は、Cr、Ti、Fe、MnおよびCeからなる群より選択される少なくとも一種の元素である。これらの元素は、酸化還元反応によって価数が変化する。各元素の水溶液中におけるアクア錯体の標準酸化還元電位を以下に示す。
Cr2+/Cr3+:約-0.4V
Ti3+/Ti4+:約+0.1V
Fe2+/Fe3+:約+0.7V
Mn2+/Mn3+:約+1.5V
Ce3+/Ce4+:約+1.7V
【0053】
中心金属に配位子が結合することにより中心金属の酸化還元電位が変化する。有機金属錯体は、中心金属の酸化還元電位をプラスまたはマイナスのいずれかにシフトさせることができる。中心金属がFe、MnまたはCeである場合、酸化還元電位を例えば+1.0V近くに制御することができる。Fe、MnまたはCeを中心金属とした有機金属錯体は、例えば、レドックスフロー電池の正極活物質に用いることができる。中心金属がCrまたはTiである場合、酸化還元電位を例えば-1.0V近くに制御することができる。CrまたはTiを中心金属とした有機金属錯体は、例えば、レドックスフロー電池の負極活物質に用いることができる。実施形態の有機金属錯体をレドックスフロー電池の活物質に用いた場合、レドックスフロー電池の起電力を2V程度まで高めることが可能である。
【0054】
配位子の具体例は、ヒスチジンである。ヒスチジンは、アミノ基とカルボキシル基とを有し、かつ、複素環式化合物を含むアミノ酸である。アミノ基の数は1である。カルボキシル基の数は1である。複素環式化合物の数は1である。複素環式化合物はイミダゾール基である。イミダゾール基は、ヘテロ原子を含む芳香環を有する。イミダゾール基を構成する芳香環は5員環である。イミダゾール基に含まれるヘテロ原子はNである。イミダゾール基は、芳香環の中に2つのNを含む。ヒスチジンの分子量は155.15である。
【0055】
[電解液]
実施形態の電解液は、上述した実施形態の有機金属錯体と、水とを含む。実施形態の電解液は、有機金属錯体が水に溶解した水系電解液である。
【0056】
実施形態の電解液は、中心金属となる金属イオンが含まれる水溶液に配位子となる有機化合物を加えて、攪拌することで製造することできる。これにより、金属イオンと配位子とが反応して有機金属錯体が生成される。攪拌時間は、金属イオンと配位子とが十分に反応する時間であればよい。攪拌時間は、常温の場合では、例えば10時間以上100時間以下である。常温とは、15℃以上30℃以下のことをいう。攪拌する際に水溶液を加熱してもよい。攪拌する際に水溶液を加熱した場合、金属イオンと配位子とが反応しやすくなり、有機金属錯体が生成されやすい。そのため、攪拌時間を短縮することができる。加熱温度は、例えば50℃以上120℃以下である。
【0057】
実施形態の電解液は、例えば、後述するレドックスフロー電池の電解液に利用できる。電解液に含まれる有機金属錯体は、レドックスフロー電池の活物質として機能する。例えば、Fe、MnまたはCeを中心金属とした有機金属錯体を含む電解液は、レドックスフロー電池の正極電解液に用いることができる。例えば、CrまたはTiを中心金属とした有機金属錯体を含む電解液は、レドックスフロー電池の負極電解液に用いることができる。実施形態の電解液をレドックスフロー電池の電解液に用いた場合、レドックスフロー電池の起電力を2V程度まで高めることが可能である。
【0058】
上述したように、実施形態の有機金属錯体は水に対する高い溶解性と安定性とを有する。有機金属錯体がこのような性質を有することにより、実施形態の電解液は、有機金属錯体の濃度を高めることができ、かつ、有機金属錯体が電解液中に安定して存在する。
【0059】
[電池]
実施形態の電池は、上述した実施形態の電解液を備える。実施形態の電池は、例えば、レドックスフロー電池である。以下、レドックスフロー電池を「RF電池」という。
【0060】
(RF電池)
図1を参照して、RF電池10の一例を説明する。RF電池10は、電解液循環型の二次電池である。RF電池10は、正極電解液に含まれる正極活物質と負極電解液に含まれる負極活物質との酸化還元反応によって充電と放電を行う。
【0061】
正極電解液および負極電解液のうち少なくとも一方の電解液は、上述した実施形態の電解液である。正極電解液は、例えば、Fe、MnまたはCeを中心金属とした有機金属錯体を含む水系電解液である。負極電解液は、例えば、Fe、MnまたはCeを中心金属とした有機金属錯体を含む水系電解液である。有機金属錯体は活物資として機能する。上述したように、有機金属錯体が高い溶解度を有するため、電解液中の有機金属錯体の濃度を高められる。また、有機金属錯体が電解液中に安定して存在するため、エネルギー密度を高められる。実施形態の電解液を備えるレドックスフロー電池は高いエネルギー密度を有する。
【0062】
RF電池10は、電力系統に接続された変電設備71に接続されている。RF電池10と変電設備71の間には、交流/直流変換器7が設けられている。電力系統には、発電部8および負荷9が接続されている。RF電池10は、発電部8で発電された電力を充電したり、充電した電力を負荷9に放電したりすることが可能である。発電部8は、例えば、自然エネルギーを利用した発電設備、およびその他一般の発電設備である。自然エネルギーを利用した発電設備は、例えば、太陽光発電、および風力発電である。RF電池10は、例えば、負荷平準化用途、瞬低補償、非常用電源といった用途、自然エネルギー発電の出力平滑化用途に利用される。
【0063】
図1に示すように、RF電池10は電池セル100を備える。電池セル100には電解液が供給される。RF電池10を備える電池システム1は、電池セル100と、電解液が貯留されるタンク2p、2nと、各タンク2p、2nと電池セル100とをつなぐ配管3p、3nと、各配管3p、3nに設けられたポンプ40とを備える。タンク2pは正極電解液が貯留されている。タンク2nは負極電解液が貯留されている。正極電解液は、配管3pを通ってタンク2pと電池セル100との間を循環する。負極電解液は、配管3nを通ってタンク2nと電池セル100との間を循環する。
【0064】
(電池セル)
電池セル100は、正極電極104と負極電極105と隔膜101とを備える。隔膜101は正極電極104と負極電極105との間に配置される。電池セル100は、隔膜101によって正極セル102と負極セル103とに分離されている。正極電極104は正極セル102に配置されている。負極電極105は負極セル103に配置されている。正極セル102には正極電解液が供給される。負極セル103には負極電解液が供給される。電池セル100の構成は、公知の構成を適宜利用できる。
【0065】
配管3pおよび配管3nは同じ構成である。各配管3p、3nは、第一配管31と第二配管32とを備える。ポンプ40は第一配管31に設けられている。ポンプ40は、タンク2p、2n内の電解液を電池セル100へ循環させる。配管3pにおける第一配管31は、タンク2pから電池セル100に正極電解液を送る配管である。配管3pにおける第二配管32は、電池セル100からタンク2pに正極電解液を戻す配管である。即ち、正極電解液は、タンク2pから第一配管31を通って正極セル102に供給される。正極セル102から排出された正極電解液は、第二配管32を通ってタンク2pに戻される。配管3nにおける第一配管31は、タンク2nから電池セル100に負極電解液を送る配管である。配管3nにおける第二配管32は、電池セル100からタンク2nに負極電解液を戻す配管である。即ち、負極電解液は、タンク2nから第一配管31を通って負極セル103に供給される。負極セル103から排出された負極電解液は、第二配管32を通ってタンク2nに戻される。充電または放電を行うときは、電解液がポンプ40によって循環される。充電および放電を行わないときは、ポンプ40が停止され、電解液が循環されない。
【0066】
RF電池10は、単数の電池セル100を備えてもよいし、複数の電池セル100を備えてもよい。
図1に示すRF電池10は、複数の電池セル100が積層されたセルスタック200を備える。セルスタック200は、セルフレーム120、正極電極104、隔膜101、負極電極105が順に繰り返し積層されて構成される。セルスタック200の両端にはエンドプレート210が配置される。エンドプレート210間を締付部材230で締め付けることによりセルスタック200が一体化される。セルスタック200の構成は、公知の構成を適宜利用できる。
【0067】
セルフレーム120は双極板121と枠体122とを有する。双極板121は正極電極104と負極電極105との間に配置される。枠体122は双極板121の周囲に設けられる。枠体122の内側には、双極板121と枠体122により凹部が形成される。凹部は、双極板121の両側にそれぞれ設けられている。各凹部には、双極板121を挟んで正極電極104と負極電極105とがそれぞれ収納される。
【0068】
図1に示すように、隣り合う各セルフレーム120の双極板121の間に、隔膜101を挟んで正極電極104と負極電極105とが配置されることにより、1つの電池セル100が形成される。各セルフレーム120の枠体122の間には、例えば環状のシール部材127が配置される。セルスタック200における電池セル100の積層数は適宜選択できる。
【0069】
詳細な図示は省略するが、枠体122は、各電解液を供給する給液マニホールドおよび各電解液を排出する排液マニホールドを有する。各マニホールドは、枠体122を貫通するように設けられており、セルフレーム120が積層されることで各電解液の流路を構成する。これら各流路は、第一配管31および第二配管32にそれぞれつながっている。
【0070】
[試験例1]
表1に示す有機化合物を配位子に用いた有機金属錯体の試料を設計した。試料No.1-1の配位子はヒスチジンである。ヒスチジンは、
図2に示される構造を有する有機化合物である。ヒスチジンは、複素環式化合物を有するアミノ酸である。複素環式化合物はイミダゾール基である。試料No.1-2の配位子はリシンである。リシンは、
図3に示される構造を有する有機化合物である。リシンは、複素環式化合物を有さないアミノ酸である。試料No.1-3の配位子はトリエチレンテトラミン(TETA)である。TETAは、
図4に示される構造を有する有機化合物である。TETAは、カルボキシル基と複素環式化合物を含まない。試料No.1-4の配位子はグルタミン酸である。グルタミン酸は、
図5に示される構造を有する有機化合物である。グルタミン酸は、複素環式化合物を有さないアミノ酸である。それぞれの配位子におけるアミノ基の数、カルボキシル基の数、複素環式化合物の数、および配位子の分子量を表1に示す。
【0071】
表1に示す配位子と中心金属とを組み合わせた有機金属錯体の評価を行った。中心金属はMnである。それぞれの有機金属錯体における中心金属の種類、配位数、および中心金属に対する配位子のモル比を表1に示す。表1に示す配位子がMnに結合された有機金属錯体の各試料について、酸化還元電位、溶解度、および安定化エネルギーを求めた。各試料の酸化還元電位、溶解度、および安定化エネルギーを表1に示す。
【0072】
酸化還元電位は、水溶液中おける有機金属錯体の酸化還元電位である。有機金属錯体の酸化還元電位は計算により求めた。酸化還元電位は、酸化状態の有機金属錯体の標準生成ギブスエネルギーと還元状態の有機金属錯体の標準生成ギブスエネルギーとをそれぞれ計算し、反応電子あたりの標準生成ギブスエネルギーの差を電位に換算して求める。
【0073】
溶解度とは、有機金属錯体が1リットルの水に溶解することができる限界の量である。溶解度の単位は、モル/リットル(mol/L)である。水の温度は25℃である。溶解度は、水に対する有機金属錯体の溶解性を表す指標である。有機金属錯体の溶解度が大きいほど、水に対する溶解性が高いといえる。溶解度が1.1mol/L以上であれば、高い溶解性を有する。溶解度は、1.3mol/L以上、更に1.4mol/L以上でもよい。
【0074】
有機金属錯体の溶解度は計算により求めた。溶解度は、次のようにして求めた。COSMO-RS(Conductor like Screening Model for Realistic Solvation)法により、水に対する有機金属錯体の溶解度を計算する。得られた溶解度に対して、溶解度が既知である分子の計算値と実測値とにより得られた相関式を用いて補正を加える。具体的には、量子化学計算ソフトウェア「TURBOMOLE 2022」を用いて、基底関数にTZVPを用いて構造を最適化する。最適化した構造について、ソフトウェア「COSMOtherm 2022」を用いてCOSMO-RS法による計算を行う。
【0075】
安定化エネルギーとは、中心金属と配位子とが結合して1モルの有機金属錯体を生成する際のエネルギーのことをいう。安定化エネルギーの単位は、キロジュール/モル(kJ/mol)である。安定化エネルギーは、有機金属錯体の安定性を示す指標である。安定化エネルギーが高い有機金属錯体は、中心金属と配位子との結合が弱いため、中心金属と配位子とが分離しやすい。安定化エネルギーが低い有機金属錯体は、中心金属と配位子との結合が強いため、有機金属錯体の構造が安定している。つまり、安定化エネルギーが低いほど、有機金属錯体の安定性が高いといえる。安定化エネルギーが-75kJ/mol以下であれば、高い安定性を有する。安定化エネルギーは、-80kJ/mol以下、更に-90kJ/mol以下でもよい。
【0076】
有機金属錯体の安定化エネルギーは計算により求めた。安定化エネルギーは、有機金属錯体の298Kにおける標準生成ギブスエネルギーに基づいて計算できる。安定化エネルギーは、6配位のアクア錯体と有機金属錯体との標準生成ギブスエネルギーの差を求めた。
【0077】
【0078】
試料No.1-1の溶解度は1.8mol/Lである。試料No.1-1は、1.1mol/L以上、更には1.3mol/L超という高い溶解度を有する。試料No.1-1の安定化エネルギーは-108.3kJ/molである。試料No.1-1は、-75kJ/mol以下、更には-80kJ/mol以下という低い安定化エネルギーを有する。試料No.1-1は、試料No.1-2から試料No.1-4に比べて、水に対する高い溶解性と安定性とを有する。
【0079】
[試験例2]
表2に示す有機化合物を配位子に用いた有機金属錯体の試料を設計した。試料No.2-1の配位子はヒスチジンである。ヒスチジンは、
図6に示すイミダゾール基を有するアミノ酸である。イミダゾール基は、ヘテロ原子を含む芳香環を有する複素環式化合物である。イミダゾール基は5員環である。イミダゾール基は、芳香環の中に2つのNを含む。試料No.2-2の配位子はチロシンである。チロシンは、
図7に示すフェノール基を有するアミノ酸である。フェノール基は、6つの炭素原子からなるベンゼン環にヒドロキシ基(-OH)が結合した環式化合物である。フェノール基は6員環である。試料No.2-3の配位子はフェニルアラニンである。フェニルアラニンは、
図8に示すベンゼン基を有するアミノ酸である。ベンゼン基は、ベンゼン環からなる環式化合物である。ベンゼン基は6員環である。フェノール基およびベンゼン基は複素環式化合物ではない。フェノール基およびベンゼン基はヘテロ原子を有さない。それぞれの配位子における複素環式化合物の有無、ヘテロ原子の有無、および配位子の分子量を表2に示す。
【0080】
表2に示す配位子と中心金属とを組み合わせた有機金属錯体の評価を行った。それぞれの有機金属錯体における中心金属の種類、配位数、および中心金属に対する配位子のモル比を表2に示す。試験例1と同様に、有機金属錯体の各試料について、酸化還元電位、溶解度、および安定化エネルギーを求めた。各試料の酸化還元電位、溶解度、および安定化エネルギーを表2に示す。
【0081】
【0082】
試料No.2-1は、試料No.2-2および試料No.2-3に比べて、溶解度が高い。この結果から、配位子の官能基がヘテロ原子を含む複素環式化合物である場合、溶解性が高くなると考えられる。
【0083】
[試験例3]
表3に示す複素環式化合物を有するアミノ酸を配位子に用いた有機金属錯体の試料を設計した。試料No.3-1の配位子は、ヒスチジンのイミダゾール基をチアゾール基に置換した有機化合物である。試料No.3-2の配位子は、ヒスチジンのイミダゾール基をピロール基に置換した有機化合物である。試料No.3-3の配位子は、ヒスチジンのイミダゾール基をホスホリン基に置換した有機化合物である。チアゾール基、ピロール基およびホスホリン基は、ヘテロ原子を含む芳香環を有する複素環式化合物である。チアゾール基は、
図9に示すように、芳香環の中に1つのNと1つのSとを含む。チアゾール基は5員環である。ピロール基の一例は、
図10に示すように、芳香環の中に1つのNを含む。ピロール基は5員環である。ホスホリン基は、
図11に示すように、芳香環の中に1つのPを含む。ホスホリン基は6員環である。
【0084】
表3に示す複素環式化合物を有するアミノ酸を配位子に用いた有機金属錯体の評価を行った。それぞれの有機金属錯体における中心金属の種類、配位数、および中心金属に対する配位子のモル比は、表2に示す試料No.2-1と同じである。試験例1と同様に、有機金属錯体の各試料について、酸化還元電位、溶解度、および安定化エネルギーを求めた。各試料の酸化還元電位、溶解度、および安定化エネルギーを表3に示す。
【0085】
【0086】
試料No.3-1から試料のNo.3-3では、溶解度が1.1mol/L以上、かつ、安定化エネルギーが-75kJ/mol以下である。この結果から、複素環式化合物に含まれるヘテロ原子がN以外であっても、溶解性および安定性が高くなると考えられる。
【符号の説明】
【0087】
1 電池システム
7 交流/直流変換器、71 変電設備
8 発電部、9 負荷
2p、2n タンク
3p、3n 配管
10 RF電池
31 第一配管、32 第二配管
40 ポンプ
100 電池セル
101 隔膜、102 正極セル、103 負極セル
104 正極電極、105 負極電極
120 セルフレーム
121 双極板、122 枠体
127 シール部材
200 セルスタック 210 エンドプレート、230 締付部材