(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094005
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】電動乗り物に用いられるハイブリッドバッテリーの電気エネルギーの出力分配を制御する方法
(51)【国際特許分類】
B60L 58/18 20190101AFI20240702BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B60L58/18
H01M10/48 P
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210697
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】514173696
【氏名又は名称】國家中山科學研究院
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林道勤
(72)【発明者】
【氏名】呉祈陞
(72)【発明者】
【氏名】曾世昌
(72)【発明者】
【氏名】鍾智賢
(72)【発明者】
【氏名】游國輝
(72)【発明者】
【氏名】任國光
【テーマコード(参考)】
5H030
5H125
【Fターム(参考)】
5H030AA01
5H030AS08
5H030FF41
5H125AA03
5H125AC12
5H125BC28
5H125EE01
5H125EE27
5H125EE29
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、バッテリーの電気エネルギーの出力方法に関するものであって、特に、電動乗り物に用いられるハイブリッドバッテリーの電気エネルギーの出力分配を制御する方法に関するものである。
【解決手段】電動乗り物は、電動モータの運転を制御するためにコンピューターシステムで設定済みのハイブリッドバッテリーの電気エネルギーの出力分配を制御する方法を利用し、(A)高エネルギー密度バッテリー、高工率密度バッテリーのバッテリーデータを提供するステップと、(B)境界条件を設定するステップと、(C)エネルギー消耗目標関数を設定するステップと、(D)最小等価エネルギー消費に関する多次元の表を作成するために、大域的検索アルゴリズムを利用し、多重ループ検索を行って、前記エネルギー消耗目標関数を通じて各種走行状況での最小等価エネルギー消費値を計算するステップと、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータの運転を制御するためにコンピューターシステムで設定済みのハイブリッドバッテリーの電気エネルギーの出力分配を制御する方法を利用し、電動乗り物に用いられるものであって、
(A)高エネルギー密度バッテリー、高工率密度バッテリーのバッテリーデータを提供するステップと、
(B)境界条件を設定するステップと、
(C)エネルギー消耗目標関数を設定するステップと、
(D)最小等価エネルギー消費に関する多次元の表を作成するために、大域的検索(global research)アルゴリズムを利用して、多重ループ検索を行うことで、前記エネルギー消耗目標関数を通じて各種走行状況での最小等価エネルギー消費値を計算するステップと、
(E)前記最小等価エネルギー消費に関する多次元の表を前記コンピューターシステムに記憶し、前記コンピューターシステムが前記最小等価エネルギー消費に関する多次元の表を利用して、前記電動モータの運転を制御するステップと、を含み、
前記境界条件は、
(a)前記高エネルギー密度バッテリー及び前記高工率密度バッテリーの健康状態(SOH)の最高、最低境界値に関する条件と、
(b)前記高エネルギー密度バッテリー及び前記高工率密度バッテリーの残量状態(SOC)の最高、最低境界値に関する条件と、
(c)前記高エネルギー密度バッテリーの充放電率(C-rate)の最高、最低境界値に関する条件と、を含み、
前記エネルギー消耗目標関数は、J=F(高エネルギーSOH)×F(高エネルギーSOC)×F(高エネルギーC_rate)×(P高エネルギー/η高エネルギー)+F(高工率SOH)×F(高工率SOC)×(P高工率/η高工率)であり、
Jはエネルギー消耗目標関数値であり、Fは重み係数関数値であり、Pはバッテリー出力工率であり、ηはバッテリー放電効率である、
電動乗り物に用いられるハイブリッドバッテリーの電気エネルギーの出力分配を制御する方法。
【請求項2】
前記高エネルギー密度バッテリーは、リチウム三元バッテリーである、
請求項1に記載の電動乗り物に用いられるハイブリッドバッテリーの電気エネルギーの出力分配を制御する方法。
【請求項3】
前記リチウム三元バッテリーは、前記電動モータに電気的に接続する、
請求項2に記載の電動乗り物に用いられるハイブリッドバッテリーの電気エネルギーの出力分配を制御する方法。
【請求項4】
前記高工率密度バッテリーは、チタン酸リチウムバッテリーである、
請求項1に記載の電動乗り物に用いられるハイブリッドバッテリーの電気エネルギーの出力分配を制御する方法。
【請求項5】
前記チタン酸リチウムバッテリーは、前記電動モータに電気的に接続する、
請求項4に記載の電動乗り物に用いられるハイブリッドバッテリーの電気エネルギーの出力分配を制御する方法。
【請求項6】
前記高エネルギー密度バッテリー及び前記高工率密度バッテリーの動作状態時における健康状態(SOH)値は、前記高エネルギー密度バッテリー及び前記高工率密度バッテリーの健康状態(SOH)の最高、最低境界値の間になくてはならない、
請求項1に記載の電動乗り物に用いられるハイブリッドバッテリーの電気エネルギーの出力分配を制御する方法。
【請求項7】
前記高エネルギー密度バッテリー及び前記高工率密度バッテリーの動作状態時における残量状態(SOC)値は、前記高エネルギー密度バッテリー及び前記高工率密度バッテリーの残量状態(SOC)の最高、最低境界値の間になくてはならない、
請求項1に記載の電動乗り物に用いられるハイブリッドバッテリーの電気エネルギーの出力分配を制御する方法。
【請求項8】
前記高エネルギー密度バッテリーの動作状態時における充放電率(C-rate)値は、前記高エネルギー密度バッテリーの充放電率(C-rate)の最高、最低境界値の間になくてはならない、
請求項1に記載の電動乗り物に用いられるハイブリッドバッテリーの電気エネルギーの出力分配を制御する方法。
【請求項9】
前記コンピューターシステムは、電気エネルギーの最良出力分配を得るために直接探索手段又は内挿探索手段で前記最小等価エネルギー消費に関する多次元の表を検索する、
請求項1に記載の電動乗り物に用いられるハイブリッドバッテリーの電気エネルギーの出力分配を制御する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーの電気エネルギーの出力方法に関するものであって、特に、電動乗り物に用いられるハイブリッドバッテリーの電気エネルギーの出力分配を制御する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電動車には鉛蓄バッテリーが採用されていたが、バッテリーの性能には持続力不足等の課題があったため、普及していなかった。その後、燃料エンジン車の急速な台頭により、電気自動車は市場から姿を消した。しかし近年、温暖化危機や深刻化している環境汚染に伴い、現在、車両の技術発展が低排気、省エネ等の技術に向かっていることから、車両の電動動力技術が早期の鉛蓄バッテリーを使用していたのが、次第に高エネルギー密度のリチウムバッテリー等に移り変わってきている。
【0003】
今日に至るまで発展してきた電動車産業では、現在、主に電力源は、単一の高エネルギー密度のリチウムバッテリーで開発が進められてきた。リチウムバッテリーは、数多くの利点を有することから、広く利用される。しかし、それ自体は、高電流に対する耐性が低く、工率密度が比較的低く、充電速度が遅く、バッテリー循環回数が少ない等の無視できない欠点を抱えていることから、上記欠点も現在の電動車産業における重大な課題になる。
【0004】
例えば、電動車がブレーキをかける時、たびたび電気エネルギーのフィードバックが発生し、その電流が大き過ぎることからリチウムバッテリーの劣化速度が加速し、ひいては、バッテリーが内部抵抗の急激な上昇によりバッテリーの故障に繋がることや、工率密度が低いため、バッテリーは所要の電気エネルギーのニーズを満足することができず、バッテリーのエネルギー消費の増加にも至り、バッテリー電量の消耗の速度を加速させるといったことがあった。
【0005】
したがって、この業界では、一式バッテリーマネジメントシステム(BMS:battery management system)を配備することによって、バッテリーモジュールの即時状態をフィードバック、制御して、動力バッテリーモジュールの安全性、信頼性を確保している。バッテリーの残量状態(SOC:state of charge)は、BMSにおいて最も重要なパラメータであり、バッテリー状態の測定機能において最も重要な部分でもある。
【0006】
しかし、化学バッテリーの内部は、複雑であり、制御不可能であることから、内部の測定可能なパラメータの量は、有限であり、かつ特性間の相互関連性があったり、リアルタイムの衰弱性があったり、時変に強くて非常に非線形な特性予測が難しい要素が存在していることから、モデルに基づいて対応するアルゴリズムを結合して推定するしかできない。
【0007】
バッテリーの健康状態(SOH:state of health)もBMSにおいても非常に重要なパラメータである。動力バッテリーの急速充放電能力や蓄電能力は、バッテリーの絶え間ない劣化に伴い下がっていく。したがって、SOH値を即時に推定することにより、長時間充放電する状況でのバッテリーの劣化状況を測定することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の通り、現時点における先行技術の電動車のバッテリーは、単一類型のバッテリーであり、バッテリーマネジメントシステム(BMS)を通じてバッテリーの状況を把握したとしても、例えば、坂道を登るなど瞬時に大きな電流を出力する必要がある場合など走行条件の変化により、バッテリーモジュールが発熱しやすいことから、バッテリーの寿命が短くなるなどのやむを得ない損傷が発生することには変わりがない。
【0009】
したがって、現在の業界は、2種類の異なる特性があるリチウムバッテリーを使用してハイブリッドバッテリーシステムを構築し、優れたハイブリッドバッテリーの電気エネルギーの出力分配を制御する方法を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
先行技術の課題を改善するために、本発明は、電動乗り物に用いられるハイブリッドバッテリーの電気エネルギーの出力分配を制御する方法を提供する。
【0011】
上記電動乗り物に用いられるハイブリッドバッテリーの電気エネルギーの出力分配を制御する方法は、高エネルギー密度バッテリー、高工率密度バッテリー、境界条件及び大域的検索(global research)アルゴリズム等を整合することで、異なる走行状況下における最小エネルギー消費の出力データを得ることができる。これにより、バッテリーシステムの全体効率を向上させることや、バッテリーの劣化速度を遅くすることができる。このようにすることで、コスト及び機能を同時に兼ね備えることができ、最小等価エネルギー消費でハイブリッドバッテリーシステムの電気エネルギーの最良出力分配を得ることができるので、電池の使用における最良のコストで電動乗り物を運転することができる。
【0012】
本発明は、電動乗り物に用いられるハイブリッドバッテリーの電気エネルギーの出力分配を制御する方法であり、電動モータの運転を制御するためにコンピューターシステムで設定済みのハイブリッドバッテリーの電気エネルギーの出力分配を制御する方法を利用し、電動乗り物に用いられるものであって、(A)高エネルギー密度バッテリー、高工率密度バッテリーのバッテリーデータを提供するステップと、(B)境界条件を設定するステップと、(C)エネルギー消耗目標関数を設定するステップと、(D)最小等価エネルギー消費に関する多次元の表を作成するために、大域的検索(global research)アルゴリズムを利用して、多重ループ検索を行うことで、前記エネルギー消耗目標関数を通じて各種走行状況での最小等価エネルギー消費値を計算するステップと、(E)前記最小等価エネルギー消費に関する多次元の表を前記コンピューターシステムに記憶し、前記コンピューターシステムが前記最小等価エネルギー消費に関する多次元の表を利用して、前記電動モータの運転を制御するステップと、を含み、前記境界条件は、(a)前記高エネルギー密度バッテリー及び前記高工率密度バッテリーの健康状態(SOH)の最高、最低境界値に関する条件と、(b)前記高エネルギー密度バッテリー及び前記高工率密度バッテリーの残量状態(SOC)の最高、最低境界値に関する条件と、(c)前記高エネルギー密度バッテリーの充放電率(C-rate)の最高、最低境界値に関する条件とを含み、前記エネルギー消耗目標関数は、J=F(高エネルギーSOH)×F(高エネルギーSOC)×F(高エネルギーC_rate)×(P高エネルギー/η高エネルギー)+F(高工率SOH)×F(高工率SOC)×(P高工率/η高工率)であり、Jはエネルギー消耗目標関数値であり、Fは重み係数関数値であり、Pはバッテリー出力工率であり、ηはバッテリー放電効率であり、前記コンピューターシステムは、電気エネルギーの最良出力分配を得るために直接探索手段又は内挿探索手段で前記最小等価エネルギー消費に関する多次元の表を検索する。
【0013】
ステップ(B)おける前記境界条件は、以下の通りである。
【0014】
SOH高エネルギー(min)≦SOH高エネルギー≦SOH高エネルギー(max)
SOH高工率(min)≦SOH高工率≦SOH高工率(max)
SOC高エネルギー(min)≦SOC高エネルギー≦SOC高エネルギー(max)
SOC高工率(min)≦SOC高工率≦SOC高工率(max)
C_rate高エネルギー(min)≦C_rate高エネルギー≦C_rate高エネルギー(max)
【0015】
SOH高エネルギー(min)は、高エネルギー密度バッテリーの健康状態の最低境界値であり、SOH高エネルギーは、高エネルギー密度バッテリーの即時健康状態であり、SOH高エネルギー(max)は、高エネルギー密度バッテリーの健康状態の最高境界値であり、SOH高工率(min)は、高工率密度バッテリーの健康状態の最低境界値であり、SOH高工率は、高工率密度バッテリーの即時健康状態であり、SOH高工率(max)は、高工率密度バッテリーの健康状態の最高境界値であり、SOC高エネルギー(min)は、高エネルギー密度バッテリーの残量状態の最低境界値であり、SOC高エネルギーは、高エネルギー密度バッテリーの即時残量状態であり、SOC高エネルギー(max)は、高エネルギー密度バッテリーの残量状態の最高境界値であり、SOC高工率(min)は、高工率密度バッテリー残量状態の最低境界値であり、SOC高工率は、高工率密度バッテリーの即時残量状態であり、SOC高工率(max)は、高工率密度バッテリーの残量状態の最高境界値であり、C_rate高エネルギー(min)は、高エネルギー密度バッテリーの充放電率の最低境界値であり、C_rate高エネルギーは、高エネルギー密度バッテリーの即時充放電率であり、C_rate高エネルギー(max)は、高エネルギー密度バッテリーの充放電率の最高境界値である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一実施例において、前記高エネルギー密度バッテリーは、リチウム三元バッテリーであり(但し、これに限られない)、前記高工率密度バッテリーは、チタン酸リチウムバッテリーであり(但し、これに限られない)、前記リチウム三元バッテリー及び前記チタン酸リチウムバッテリーは、いずれも同一の前記電動モータに電気的に接続する。本実施例の境界条件について、(1)前記高エネルギー密度バッテリー(例えば、リチウム三元バッテリー)及び高工率密度バッテリー(例えば、チタン酸リチウムバッテリー)の動作状態時における健康状態(SOH)値は、前記高エネルギー密度バッテリー及び前記高工率密度バッテリーの健康状態(SOH)の最高、最低境界値の間になくてはならなく、(2)前記高エネルギー密度バッテリー(例えば、リチウム三元バッテリー)及び高工率密度バッテリー(例えば、チタン酸リチウムバッテリー)の動作状態時における残量状態(SOC)値は、前記高エネルギー密度バッテリー及び前記高工率密度バッテリーの残量状態(SOC)の最高、最低境界値の間になくてはならなく、(3)前記高エネルギー密度バッテリー(例えば、リチウム三元バッテリー)の動作状態時における充放電率(C-rate)値は、前記高エネルギー密度バッテリーの充放電率(C-rate)の最高、最低境界値の間になくてはならない。また、本実施例において、前記高エネルギー密度バッテリー(リチウム三元バッテリー)又は高工率密度バッテリー(チタン酸リチウムバッテリー)の動作状態が境界条件内にない場合、前記バッテリーを電気エネルギーの出力として使用しない。
【0017】
以上の概説と以下の詳細な説明及び図面は、いずれも本発明の所要の目的を達するために採る方法、手段、効果を説明するためのものである。本発明の他の目的及び利点については、後続の説明と図面で述べる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の電動乗り物に用いられるハイブリッドバッテリーの電気エネルギーの出力分配を制御するシステムの構造参考図である。
【
図2】本発明の電動乗り物に用いられるハイブリッドバッテリーの電気エネルギーの出力分配を制御する方法のフローチャートである。
【
図3】本発明のリチウム三元バッテリーのSOC値が90%である時のエネルギー分配図である。
【
図4】本発明のリチウム三元バッテリーのSOC値が30%時である時のエネルギー分配図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下は、特定の具体的な実施例により本発明の実施形態を説明するためのものであり、当業者は本明細書の開示する内容に基づき本発明の他の利点及び効果を容易に理解することができる。
【0020】
図1を参照されたい。本発明の電動乗り物に用いられるハイブリッドバッテリーの電気エネルギーの出力分配を制御するシステムの構造参考図である。
図1に示すように、前記電動乗り物に用いられるハイブリッドバッテリーの電気エネルギーの出力分配を制御するシステム100の構造は、高エネルギー密度バッテリー11及び高工率密度バッテリー12からなるエネルギーユニット、電動モータ13の動力ユニット及び伝動機構14を含み、前記電動乗り物は、電動バス(但し、これに限らない)であってもよい。
【0021】
本実施例の前記ハイブリッドバッテリーの電気エネルギーの出力分配を制御するシステム100構造において、前記高エネルギー密度バッテリー11及び高工率密度バッテリー12は、生成したバッテリーの出力電気エネルギーを前記電動モータ13に供給し、前記電動モータ13は、エネルギーを前記伝動機構14に出力することにより、前記電動乗り物が運動エネルギーを生成する。
【0022】
図2を参照されたい。本発明の電動乗り物に用いられるハイブリッドバッテリーの電気エネルギーの出力分配を制御する方法のフローチャートである。
【0023】
図2に示すように、ハイブリッドバッテリーの電気エネルギーの出力分配を制御する方法は、電動乗り物に用いられるものであり、電動モータの運転を制御するためにコンピューターシステムで設定済みのハイブリッドバッテリーの電気エネルギーの出力を分配する方法を利用し、その方法は、まず、高エネルギー密度バッテリー11、高工率密度バッテリー12のバッテリーデータを提供するステップS201を含み、前記バッテリーデータは、バッテリー出力工率、バッテリーの健康状態(SOH)、バッテリーの残量状態(SOC)、バッテリーの充放電率(C-rate)等のデータを含み、これらのバッテリーデータは、記憶ユニットに記憶され、前記記憶ユニットは、前記コンピューターシステムに内蔵されてもよいが、これに限らない。
【0024】
本実施例において、前記高エネルギー密度バッテリー11は、前記電動モータ13に電気的に接続されるリチウム三元バッテリーであり、前記高工率密度バッテリー12は、前記電動モータ13に電気的に接続されるチタン酸リチウムバッテリーである。
【0025】
次に、ステップS202のように、境界条件S202を設定し、前記境界条件は、(a)前記高エネルギー密度バッテリー11及び前記高工率密度バッテリー12の健康状態(SOH)の最高、最低境界値に関する条件と、(b)前記高エネルギー密度バッテリー11及び前記高工率密度バッテリー12の残量状態(SOC)の最高、最低境界値に関する条件と、(c)前記高エネルギー密度バッテリー11の充放電率(C-rate)の最高、最低境界値に関する条件と、を含む。本実施例において、ステップS202における前記境界条件は、以下の通りである。
【0026】
SOH高エネルギー(min)≦SOH高エネルギー≦SOH高エネルギー(max)
SOH高工率(min)≦SOH高工率≦SOH高工率(max)
SOC高エネルギー(min)≦SOC高エネルギー≦SOC高エネルギー(max)
SOC高工率(min)≦SOC高工率≦SOC高工率(max)
C_rate高エネルギー(min)≦C_rate高エネルギー≦C_rate高エネルギー(max)
【0027】
SOH高エネルギー(min)は、高エネルギー密度バッテリー11の健康状態の最低境界値であり、SOH高エネルギーは、高エネルギー密度バッテリー11の即時健康状態であり、SOH高エネルギー(max)は、高エネルギー密度バッテリー11の健康状態の最高境界値であり、SOH高工率(min)は、高工率密度バッテリー12の健康状態の最低境界値であり、SOH高工率は、高工率密度バッテリー12の即時健康状態であり、SOH高工率(max)は、高工率密度バッテリー12の健康状態の最高境界値であり、SOC高エネルギー(min)は、高エネルギー密度バッテリー11の残量状態の最低境界値であり、SOC高エネルギーは、高エネルギー密度バッテリー11の即時残量状態であり、SOC高エネルギー(max)は、高エネルギー密度バッテリー11の残量状態の最高境界値であり、SOC高工率(min)は、高工率密度バッテリー12の残量状態の最低境界値であり、SOC高工率は、高工率密度バッテリー12の即時残量状態であり、SOC高工率(max)は、高工率密度バッテリー12の残量状態の最高境界値であり、C_rate高エネルギー(min)は、高エネルギー密度バッテリー11の充放電率の最低境界値であり、C_rate高エネルギーは、高エネルギー密度バッテリー11の即時充放電率であり、C_rate高エネルギー(max)は、高エネルギー密度バッテリー11の充放電率の最高境界値である。
【0028】
前記コンピューターシステムは、以下のことを判断しなくてはならず、(1)前記高エネルギー密度バッテリー11(例えば、リチウム三元バッテリー)及び高工率密度バッテリー12(例えば、チタン酸リチウムバッテリー)の動作状態時における健康状態(SOH)値が前記高エネルギー密度バッテリー11及び高工率密度バッテリー12の健康状態(SOH)の最高、最低境界値の間にあることと、(2)前記高エネルギー密度バッテリー11(例えば、リチウム三元バッテリー)及び高工率密度バッテリー12(例えば、チタン酸リチウムバッテリー)の動作状態時における残量状態(SOC)値が前記高エネルギー密度バッテリー11及び高工率密度バッテリー12の残量状態(SOC)の最高、最低境界値の間にあることと、(3)前記高エネルギー密度バッテリー11(例えば、リチウム三元バッテリー)の動作状態時における充放電率(C-rate)値が前記高エネルギー密度バッテリー11の充放電率(C-rate)の最高、最低境界値の間にあることである。
【0029】
前記高エネルギー密度バッテリー11(例えば、リチウム三元バッテリー)又は高工率密度バッテリー12(例えば、チタン酸リチウムバッテリー)の動作状態が境界条件内にない場合、前記バッテリーを電気エネルギーの出力として使用しない。
【0030】
その後、ステップS203のように、エネルギー消耗目標関数を設定する。
【0031】
前記エネルギー消耗目標関数は、J=F(高エネルギーSOH)×F(高エネルギーSOC)×F(高エネルギーC_rate)×(P高エネルギー/η高エネルギー)+F(高工率SOH)×F(高工率SOC)×(P高工率/η高工率)である。
【0032】
Jはエネルギー消耗目標関数値であり、Fは重み係数関数値であり、Pはバッテリー出力工率であり、ηはバッテリー放電効率であり、そのうち、F(高エネルギーSOH)は、高エネルギー密度バッテリー11の健康状態の重み係数関数値であり、F(高エネルギーSOC)は高エネルギー密度バッテリー11の残量状態の重み係数関数値であり、F(高エネルギーC_rate)は、高エネルギー密度バッテリー11の充放電率の重み係数関数値であり、P高エネルギーは高エネルギー密度バッテリー11のバッテリー出力工率であり、η高エネルギーは高エネルギー密度バッテリー11のバッテリー放電効率であり、F(高工率SOH)は高工率密度バッテリー12の健康状態の重み係数関数値であり、F(高工率SOC)は高工率密度バッテリー12の残量状態の重み係数関数値であり、P高工率は高工率密度バッテリー12のバッテリー出力工率であり、η高工率は高工率密度バッテリー12のバッテリー放電効率である。
【0033】
上述において、前記エネルギー消耗目標関数を設けるのは、電動乗り物の走行状態での最小エネルギー消費を求めるためである。
【0034】
ステップS204について、最小等価エネルギー消費に関する多次元の表を設けるために、大域的検索(global research)アルゴリズムで多重ループ検索を行うことにより、前記エネルギー消耗目標関数を通じて各種走行状況での最小等価エネルギー消費値を計算する。
【0035】
本実施例において、大域的検索(global research)アルゴリズムを運用して演算を行い、多重ループ検索を利用し、離散パラメータ、各種走行状態での所要の出力工率、リチウム三元バッテリーのSOH値、チタン酸リチウムバッテリーのSOH値、リチウム三元バッテリーのSOC値、チタン酸リチウムバッテリーのSOC値及びリチウム三元バッテリーの出力工率に基づきオフライン演算にて目標関数計算を通じて各種走行条件での最小等価エネルギー消費値を求めるので、電動乗り物のバッテリーエネルギー出力の最良の分配比率を提供することができる。
【0036】
最後に、ステップS205のように、前記最小等価エネルギー消費に関する多次元の表を前記コンピューターシステムに記憶し、前記コンピューターシステムが前記最小等価エネルギー消費に関する多次元の表を利用して前記電動モータの運転を制御する。
【0037】
前記コンピューターシステムは、電気エネルギーの最良出力分配を得るために直接探索手段又は内挿探索手段で前記最小等価エネルギー消費に関する多次元の表を検索して、最良の電気エネルギーの出力分配を得る。
【0038】
また、本実施例において、設けられた最小等価エネルギー消費に関する多次元の表を、ハイブリッドバッテリーを有する電動乗り物の最良化されたエネルギー源管理の根拠とすることができるので、実際の使用時に、前記コンピューターシステムは、前記電動乗り物のバッテリーの現段階の状態及び所望の工率又はエネルギーのみに応じて、前記最小等価エネルギー消費に関する多次元の表をリアルタイムに直接探索又は内挿探索で探索をすることにより、最小総エネルギー消費を有する最良の動力分配比率を迅速に得ることができ、そして生成されるバッテリーの出力電気エネルギーを前記電動モータ13に供給し、前記電動モータ13は、エネルギー出力を前記伝動機構14に供給することにより、前記電動乗り物は運動エネルギーを生成することができる。
【0039】
これにより、好適に連続してエネルギー分配をするという目的を達成する。
【0040】
図3を参照されたい。本発明のリチウム三元バッテリーのSOC値が90%である時のエネルギー分配図である。
図4を参照されたい。本発明のリチウム三元バッテリーのSOC値在30%時のエネルギー分配図である。
【0041】
図3に示すように、電動乗り物又は電動車両は、正常状態において、チタン酸リチウムバッテリーとリチウム三元バッテリーのSOC値とが正常動作の区間にある場合、二種のバッテリーがバッテリー効率分配に基づきエネルギー出力をすることにより、エネルギー消耗を最良化するという効果を奏することができる。
【0042】
本実施例において、チタン酸リチウムバッテリーのSOC値が比較的高い状態(90%)にある時、回生制動エネルギーの裕度を確保するために、チタン酸リチウムバッテリーのエネルギー分配の比例を上げ、反対に、リチウム三元バッテリーの出力比例を下げ、チタン酸リチウムバッテリーのSOC値が不足する時、リチウム三元バッテリーのエネルギー分配の比例を上げることがある。
【0043】
リチウム三元バッテリーのSOC値が30%まで下がる時、
図4に示すように、リチウム三元バッテリーのSOC値が不足するため、全体的工率の提供傾向が下げると共に、チタン酸リチウムバッテリーの放電比例が上昇することがある。チタン酸リチウムバッテリーのSOC値が充足し、かつ所要の工率が低い時、リチウム三元バッテリーの電力消耗を減少させるために、リチウム三元バッテリーは電力供給にほとんど関与せず、SOC値のレベルを維持することにより、過放電の状況を避けることができる。
【0044】
図3、4から分かるように、二種のバッテリー状態に応じて全体のエネルギートレンドを調整し、バッテリーを保護して通常動作時のエネルギー消耗を最適に維持すると共に、バッテリーの過放電や、C-rateが負荷範囲を超過する等の不適当にバッテリーを使用することにより、バッテリーの劣化加速を避けることができる。
【0045】
各国の政策は車両の電動化を積極的に推し進めていることから、各種電動車両の研究開発及び応用は既に未来のトレンドとなっているが、バッテリーの特性の制限により、単一のバッテリーを運用して交通状況に有効に対応することはできず、かつバッテリー使用の寿命を長くして、コストを低くするというニーズを満足しなくてはならないことから、ハイブリッド電力の配置を採用して、制御技術を運用することにより、伝動車はバッテリーの使用における最適なコストで走行することができる。
【0046】
上記実施例は、例示的に本発明の特徴及びその効果を説明したものであり、本発明の実質的な技術的内容の範囲を制限するものではない。当業者であれば、本発明の精神及び範疇に反することなく、上記実施例に修正及び変更を加えることができる。よって、本発明の権利保護範囲は、特許請求の範囲の記載に記載された通りである。
【符号の説明】
【0047】
11 高エネルギー密度バッテリー
12 高工率密度バッテリー
13 電動モータ
14 伝動機構
100 混合バッテリーの電気エネルギーの出力分配を制御するシステム
S201-S205 ステップ
【手続補正書】
【提出日】2023-12-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータの運転を制御するためにコンピューターシステムで設定済みのハイブリッドバッテリーの電気エネルギーの出力分配を制御する方法を利用し、電動乗り物に用いられるものであって、
(A)高エネルギー密度バッテリー、高工率密度バッテリーのバッテリーデータを提供するステップと、
(B)境界条件を設定するステップと、
(C)エネルギー消耗目標関数を設定するステップと、
(D)最小等価エネルギー消費に関する多次元の表を作成するために、大域的検索(global research)アルゴリズムを利用して、多重ループ検索を行うことで、前記エネルギー消耗目標関数を通じて各種走行状況での最小等価エネルギー消費値を計算するステップと、
(E)前記最小等価エネルギー消費に関する多次元の表を前記コンピューターシステムに記憶し、前記コンピューターシステムが前記最小等価エネルギー消費に関する多次元の表を利用して、前記電動モータの運転を制御するステップと、を含み、
前記境界条件は、
(a)前記高エネルギー密度バッテリー及び前記高工率密度バッテリーの健康状態(SOH)の最高、最低境界値に関する条件と、
(b)前記高エネルギー密度バッテリー及び前記高工率密度バッテリーの残量状態(SOC)の最高、最低境界値に関する条件と、
(c)前記高エネルギー密度バッテリーの充放電率(C-rate)の最高、最低境界値に関する条件と、を含み、
前記エネルギー消耗目標関数は、J=F(高エネルギーSOH)×F(高エネルギーSOC)×F(高エネルギーC_rate)×(P高エネルギー/η高エネルギー)+F(高工率SOH)×F(高工率SOC)×(P高工率/η高工率)であり、
Jはエネルギー消耗目標関数値であり、Fは重み係数関数値であり、Pはバッテリー出力工率であり、ηはバッテリー放電効率であり、
前記リチウム三元バッテリーは、前記電動モータに電気的に接続され、
前記チタン酸リチウムバッテリーは、前記電動モータに電気的に接続され、
前記高エネルギー密度バッテリー及び前記高工率密度バッテリーの動作状態時における健康状態(SOH)値は、前記高エネルギー密度バッテリー及び前記高工率密度バッテリーの健康状態(SOH)の最高、最低境界値の間になくてはならず、
前記高エネルギー密度バッテリー及び前記高工率密度バッテリーの動作状態時における残量状態(SOC)値は、前記高エネルギー密度バッテリー及び前記高工率密度バッテリーの残量状態(SOC)の最高、最低境界値の間になくてはならず、
前記高エネルギー密度バッテリーの動作状態時における充放電率(C-rate)値は、前記高エネルギー密度バッテリーの充放電率(C-rate)の最高、最低境界値の間になくてはならず、
前記コンピューターシステムは、電気エネルギーの最良出力分配を得るために直接探索手段又は内挿探索手段で前記最小等価エネルギー消費に関する多次元の表を検索する
ことを特徴とする、電動乗り物に用いられるハイブリッドバッテリーの電気エネルギーの出力分配を制御する方法。
【請求項2】
前記高エネルギー密度バッテリーは、リチウム三元バッテリーであることを特徴とする、請求項1に記載の電動乗り物に用いられるハイブリッドバッテリーの電気エネルギーの出力分配を制御する方法。
【請求項3】
前記高工率密度バッテリーは、チタン酸リチウムバッテリーであることを特徴とする、請求項1に記載の電動乗り物に用いられるハイブリッドバッテリーの電気エネルギーの出力分配を制御する方法。