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特開2024-94010通信端末装置、通信衛星装置、および衛星通信システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094010
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】通信端末装置、通信衛星装置、および衛星通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 16/28 20090101AFI20240702BHJP
   H04W 84/06 20090101ALI20240702BHJP
   H04B 7/06 20060101ALI20240702BHJP
   H04B 7/185 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
H04W16/28
H04W84/06
H04B7/06 956
H04B7/185
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210706
(22)【出願日】2022-12-27
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人情報通信研究機構「革新的情報通信技術研究開発委託研究/Beyond 5G研究開発促進事業/次世代の5次元モバイルインフラ技術の研究開発」産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】須尭 一志
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 真吾
(72)【発明者】
【氏名】若藤 健司
(72)【発明者】
【氏名】小野 真和
【テーマコード(参考)】
5K067
5K072
【Fターム(参考)】
5K067AA21
5K067DD11
5K067DD24
5K067EE02
5K067EE07
5K067KK02
5K072AA04
5K072BB02
5K072BB13
5K072BB22
5K072DD01
5K072DD11
5K072FF15
5K072GG02
5K072GG05
(57)【要約】
【課題】ビームの方向の速やかな決定を容易とする通信端末装置、通信衛星装置、および衛星通信システムを実現する。
【解決手段】通信端末装置(10)は、電波ビームによって通信衛星装置(20)と通信する通信端末装置であって、1以上の通信衛星装置からの複数のビーコン(Fa1~Fa3)を受信し、且つ、指向性を有する電波ビームを送受信するアンテナ(11)と、制御部(13)と、を備え、制御部は、複数のビーコンに含まれる情報に基づいて、電波ビームの複数の方位候補を決定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波ビームによって通信衛星装置と通信する通信端末装置であって、
1以上の通信衛星装置からの複数のビーコンを受信し、且つ、指向性を有する電波ビームを送受信するアンテナと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記複数のビーコンに含まれる情報に基づいて、前記アンテナから送信する前記電波ビームの複数の方位候補を決定する、通信端末装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記複数の方位候補に優先度を付与し、
前記優先度に基づいて、前記複数の方位候補から方位を選択し、
前記選択された方位に、接続要求を含む電波ビームを送信する、請求項1に記載の通信端末装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記選択された方位に送信された前記電波ビームの接続要求に応答する、応答電波ビームの受信の有無を判定し、
前記応答電波ビームを受信していないと判定したときは、残りの方位候補から次の方位を選択して、接続要求を含む電波ビームを送信し、
前記応答電波ビームを受信したと判定したときは、前記電波ビームによる通信を継続する、
請求項2に記載の通信端末装置。
【請求項4】
前記情報は、前記1以上の通信衛星装置の移動速度を含み、
前記制御部は、前記1以上の通信衛星装置の移動速度に基づいて、前記電波ビームの方位を調節することで、前記電波ビームによる通信を継続する、請求項3に記載の通信端末装置。
【請求項5】
前記情報は、1以上の通信衛星装置の第1の座標、前記第1の座標からの第1のビーコンの第1の送信時刻、1以上の通信衛星装置の第2の座標、前記第2の座標からの第2のビーコンの第2の送信時刻を含み、
前記制御部は、
前記第1のビーコンの第1の受信時刻、前記第2のビーコンの第2の受信時刻を取得し、
前記第1の送信時刻および前記第1の受信時刻に基づいて、前記第1の座標と前記通信端末装置間の第1の距離を導出し、
前記第2の送信時刻および前記第2の受信時刻に基づいて、前記第2の座標と前記通信端末装置間の第2の距離を導出し、
前記第1、第2の座標、および前記第1、第2の距離に基づいて、前記複数の方位候補を決定する、請求項1に記載の通信端末装置。
【請求項6】
前記情報は、前記第1のビーコンの第1の送信強度、および前記第2のビーコンの第2の送信強度を含み、
前記制御部は、
前記第1のビーコンの第1の受信強度、および前記第2のビーコンの第2の受信強度を取得し、
前記第1、第2の送信強度および前記第1、第2の受信強度に基づいて、前記第1、第2の距離を補正する、請求項5に記載の通信端末装置。
【請求項7】
前記情報は、前記第1のビーコンの第1の送信強度、および前記第2のビーコンの第2の送信強度を含み、
前記制御部は、
前記第1のビーコンの第1の受信強度、および前記第2のビーコンの第2の受信強度を取得し、
前記第1、第2の距離、前記第1、第2の送信強度、および前記第1、第2の受信強度に基づいて、タイマの時刻を校正し、
前記校正されたタイマは、前記第1の受信時刻、前記第2の受信時刻の取得に用いられる、請求項5に記載の通信端末装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記第1、第2の座標にそれぞれ対応する第1、第2の方位候補を決定する、請求項5に記載の通信端末装置。
【請求項9】
請求項1に記載の通信端末装置と電波ビームによって通信する通信衛星装置であって、
前記通信端末装置からの接続要求を含む電波ビームを受信するアンテナと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記接続要求を含む電波ビームに応答する、応答電波ビームを送信させる、通信衛星装置。
【請求項10】
請求項1に記載の通信端末装置と請求項9に記載の通信衛星装置とを備える衛星通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信端末装置、通信衛星装置、および衛星通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電波を用いて、地上側の通信端末と宇宙側の通信衛星との間で通信を行うことがある。用いる電波の波長が比較的短い場合(例えば、ミリ波)、通信端末が通信衛星にビーム(電波)の方向を合わせることが好ましい(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2021/199218号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、例えば、アンテナが小さい場合、ビーム(電波)の方向を合わせることは容易ではない。
【0005】
通信端末が指向性アンテナの向きを変えて、通信衛星を検索することが考えられる。しかし、検索には時間を要し、且つ、検索が失敗する可能性もある。一方、通信衛星から送信された通信衛星の位置情報に基づいて、通信端末の指向性アンテナの向きを決定することが考えられる。この位置情報は、低周波、または広指向性のビーコンを用いて送信される。通信端末は、通信端末自体の位置情報と送信された通信衛星の位置情報とからビームの方向を決定することができる。
【0006】
ここで、通信端末の移動等に起因して、通信端末の位置情報の取得が必要となることがある。しかし、この取得は、例えば、GPS(Global Positioning System)を利用すると、30秒~数分程度の時間を要する。この結果、通信端末と通信衛星間での迅速な通信は困難となる。さらに、通信衛星は、移動しているため、通信端末との通信可能時間は長くはない。この結果、位置情報の取得に時間を要し、通信衛星と通信できる時間が短くなったり、通信できなかったりすることがあり得る。
【0007】
本発明の一態様は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的の一例は、ビームの方向の速やかな決定を容易とする通信端末装置、通信衛星装置、および衛星通信システムを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る通信端末装置は、電波ビームによって通信衛星装置と通信する通信端末装置であって、1以上の通信衛星装置からの複数のビーコンを受信し、且つ、指向性を有する電波ビームを送受信するアンテナと、制御部と、を備え、前記制御部は、前記複数のビーコンに含まれる情報に基づいて、前記アンテナから送信する前記電波ビームの複数の方位候補を決定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、ビームの方向の速やかな決定を容易とする通信端末装置、通信衛星装置、および衛星通信システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る通信端末装置を表すブロック図である。
図2】本発明の実施形態に係る衛星通信システムを表す図である。
図3】本発明の実施形態に係る通信衛星装置を表すブロック図である。
図4】本発明の実施形態に係る通信方法を表すフロー図である。
図5】通信許容時間の導出を説明するための図である。
図6】ビームフォーミング候補の優先度を説明するための図である。
図7】2つの通信衛星装置による方位決定を表す図である。
図8】2つの通信衛星装置による方位決定を表す図である。
図9】2つの通信衛星装置による方位決定を表す図である。
図10】2つの通信衛星装置による方位決定を表す図である。
図11】決定される方位を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔例示的実施形態1〕
本発明の第1の例示的実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。本例示的実施形態は、後述する例示的実施形態の基本となる形態である。
【0012】
(通信端末装置の構成)
本例示的実施形態に係る通信端末装置の構成について、図1を参照して説明する。図1は、通信端末装置10の構成を示すブロック図である。第1の例示的実施形態に係る通信端末装置10は、アンテナ11、送受信部12、制御部13を有する。
【0013】
通信端末装置10は、電波ビームによって通信衛星装置と通信する。アンテナ11は、1以上の通信衛星装置からの複数のビーコンを受信し、且つ、指向性を有する電波のビームを送受信する。アンテナ11は、電波ビームの送受信に対応する指向性モードとビーコンの送受信に対応する無指向性モードを切り替えることができる。この切り替えは、周期的に行うことができる。なお、アンテナ11は、電波ビームの送受信に対応する第1のアンテナ要素とビーコンの送受信に対応する第2のアンテナ要素とを有してもよい。
【0014】
複数のビーコンは、複数の通信衛星装置それぞれから送信された複数のビーコンであっても良いし、1の通信衛星装置から送信された複数のビーコンであっても良い。例えば、1の通信衛星装置が移動しながら複数のビーコンを送信することができる。送受信部12は、アンテナ11を用いて、ビーコンの受信、ビームの送受信を行う。制御部13は、送受信部12によるビーコン、ビームの送受信を制御する。
【0015】
制御部13は、複数のビーコンに含まれる情報に基づいて、アンテナ11から送信する電波ビームの複数の方位候補を決定し、この決定に従って、送受信部12を制御して、通信衛星装置に向けて電波ビームを送信する。
【0016】
制御部13は、少なくとも1つのプロセッサPR1、および少なくとも1つのメモリM1から構成することができる。メモリM1には、プロセッサPR1を制御部13として動作させるためのプログラムP1が記録されている。プロセッサPR1は、プログラムP1をメモリM1から読み取って実行することにより、制御部13の各機能を実現する。
【0017】
プロセッサPR1としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、MPU(Micro Processing Unit)、FPU(Floating point number Processing Unit)、PPU(Physics Processing Unit)、TPU(Tensor Processing Unit)、量子プロセッサ、マイクロコントローラ、又は、これらの組み合わせなどを用いることができる。メモリM1としては、例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又は、これらの組み合わせなどを用いることができる。
【0018】
以上のように、本例示的実施形態1に係る通信端末装置10においては、複数のビーコンに含まれる情報に基づいて、アンテナ11から送信する電波のビームの複数の方位候補を決定する。これにより、電波のビームの方位を決定することが容易となる。
【0019】
〔例示的実施形態2〕
本発明の第2の例示的実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、例示的実施形態1にて説明した構成要素と同じ機能を有する構成要素については、同じ符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0020】
(衛星通信システム1の構成)
図2は、本発明の実施形態に係る衛星通信システム1を表す図である。衛星通信システム1は、複数の通信衛星装置20(A1~A3,B1~B3)、通信端末装置10(C)を有する。通信端末装置Cは、地上面S側に、複数の通信衛星装置A1~A3,B1~B3は宇宙側に配置され、相互に通信可能である。ここでは、通信端末装置および通信衛星装置について、その構成に関わるときは、符号10,20を用い、その位置(座標)に関わるときは、符号A1~A3,B1~B3,Cを用いることとする。紙面の左右、上下にx、y方向を設定している。
【0021】
通信衛星装置A1~A3、B1~B3は、例えば、比較的低軌道のLEO(Low Earth Orbit:地球低軌道)衛星である。ここでは、判り易さのために、通信衛星装置A1~A3は、直線La上に、通信衛星装置B1~B3は、直線Lb上に配置される。通信端末装置Cは、一例として、標高0の地上S上の座標(x0、y0)に、通信衛星装置A1~A3は、一例として、座標(0,0)、(0,y2)、(0,y3)に配置される。
【0022】
ここで、通信衛星装置A1~A3は、3つの通信衛星装置20、1の通信衛星装置20のいずれでもよい。すなわち、1の通信衛星装置20が直線(軌道)Laに沿って、座標A1,A2,A3を移動してもよい。同様に、通信衛星装置B1~B3も、3つの通信衛星装置20、1の通信衛星装置20のいずれでもよい。
【0023】
通信端末装置10と通信衛星装置20間の通信には、指向性を有する電波のビーム(ビームフォーミングされた電波)が用いられる。また、電波のビームによる通信を支援するために、通信衛星装置(座標)A1~A3,B1~B3から指向性を有しない電波のビーコンFa1~Fa3,Fb1~Fb3が送信される。通信端末装置Cは、1以上の通信衛星装置(座標)A1~A3,B1~B3からのビーコンFa1~Fa3,Fb1~Fb3中の複数のビーコンに基づいて、送信する電波ビームの複数の方位候補を決定する。
【0024】
(通信衛星装置20の構成)
図3は、通信衛星装置20(A1~A3,B1~B3)の構成の一例を表すブロック図である。通信衛星装置20は、アンテナ21,送受信部22,姿勢制御部23,制御部24を有する。
【0025】
アンテナ21は、無指向性のビーコン、および指向性のビームを送受信できる。アンテナ21は、電波ビームの送受信に対応する指向性モードとビーコンの送受信に対応する無指向性モードを切り替えることができる。この切り替えは、周期的に行うことができる。アンテナ21は、電波ビームの送受信に対応する第1のアンテナ要素とビーコンの送受信に対応する第2のアンテナ要素とを有してもよい。
【0026】
ビーコンFa1~Fa3,Fb1~Fb3は、汎用、または専用の無線通信チャンネルを用いて送信される。なお、このチャンネルの情報は、通信衛星装置20と通信端末装置10間、複数の通信衛星装置20間で共有される。
【0027】
ビーコンFa1~Fa3,Fb1~Fb3は、例えば、1以上の通信衛星装置A1~A3,B1~B3の情報、より具体的には、衛星識別情報(通信衛星装置20を識別する情報)、ビーコン識別情報(同一の通信衛星装置20から送信される複数のビーコンを識別する情報)、通信衛星装置20の座標A1~A3,B1~B3、移動速度(例えば、移動速度の絶対値、および移動方向を含む移動速度ベクトル)、送信強度(送信時のビーコンの強度)、送信時刻(ビーコンを送信した時刻)を含むことができる。
【0028】
通信衛星装置20は、他の通信衛星装置20との間でビーコン(衛星間ビーコン)を送受信し、所望のビーコン情報を共有できる。すなわち、1の通信衛星装置20から通信端末装置10に出射されるビーコン(ビーコン情報)は、その通信衛星装置20自体の情報のみならず、他の通信衛星装置20の情報をも含む、複数の通信衛星装置20の情報を含むことができる。
【0029】
送受信部22は、アンテナ21を用いて、ビーコンの受信、ビームの送受信を行う。姿勢制御部23は、通信衛星装置20の姿勢、動き等を調節する。制御部24は、送受信部22によるビーコン、ビームの送受信、姿勢制御部23による通信衛星装置20の姿勢等の調節を制御する。
【0030】
制御部24は、少なくとも1つのプロセッサPR2、および少なくとも1つのメモリM2から構成することができる。メモリM2には、プロセッサPR2を制御部24として動作させるためのプログラムP2が記録されている。プロセッサPR2は、プログラムP2をメモリM2から読み取って実行することにより、制御部24の各機能を実現する。なお、プロセッサPR2、メモリM2は、通信端末装置10のプロセッサPR1、メモリM1と同様に、CPU等、フラッシュメモリ等から構成することができる。
【0031】
例示的実施形態2における通信端末装置10の構成は、例示的実施形態1と同様に、図1で表すことができ、アンテナ11、送受信部12、制御部13を有する。通信端末装置10は、時刻を計時するタイマおよび通信端末装置10の方位を検出する方位センサを有してもよい。後述のように、通信端末装置10の制御部13は、通信衛星装置20からのビーコンに基づいて、タイマの時刻を校正できる。方位センサは、例えば、地球の磁気の方向(北の方向)を検出する磁気コンパスである。通信端末装置10は、方位センサを基準として、電波ビームの方位を決定することができる。例示的実施形態2における通信端末装置10は、例示的実施形態1と実質的に異なるものではないので、他の詳細な説明を省略する。
【0032】
(通信方法の流れ)
図4は、本発明の実施形態に係る通信方法を表すフロー図である。衛星通信システム1での処理の流れを表す。
【0033】
(1)複数の通信衛星装置20間でのビーコン情報の同期(ステップS11)
通信衛星装置20間で通信衛星装置20の情報が共有、同期される。通信衛星装置20のアンテナ21は、他の通信衛星装置20との間で、ビーコン(衛星間ビーコン)を送受信できる。制御部24は、衛星間ビーコンに含まれる、他の通信衛星装置20の座標、移動速度を取得し、メモリM2に保存できる。この結果、通信衛星装置20は、他の通信衛星装置20の座標、移動速度を含むビーコンを通信端末装置10に送信することが可能となる。
【0034】
通信衛星装置20間で、通信端末装置10に関わる情報(例えば、通信端末装置10から他の通信衛星装置20への接続要求、および他の通信衛星装置20での通信端末装置10との接続状況)が、共有、同期されてもよい。すなわち、通信衛星装置20間で送受信される衛星間ビーコンは、通信端末装置10から他の通信衛星装置20への接続要求、および他の通信衛星装置20での通信端末装置10との接続状況を含み、これら通信端末装置10の情報をメモリM2に保存することができる。
【0035】
この結果、通信衛星装置20が、他の通信衛星装置20への接続要求を含む電波ビームを通信端末装置10から受信した場合、他の通信衛星装置20に代わって、通信端末装置10と通信することが可能となる。この場合、通信衛星装置20の制御部24は、他の通信衛星装置20への接続要求および他の通信衛星装置20での通信端末装置10との接続状況に基づき、他の通信衛星装置20に代わって、応答電波ビームを送信するか否かを決定する。また、例えば、他の通信衛星装置20において、通信端末装置10との接続が失われる場合、通信衛星装置20の制御部24は、他の通信衛星装置20での通信端末装置10との接続状況に基づき、他の通信衛星装置20に代わって、通信端末装置10との接続を継続するか否かを決定することができる。
【0036】
(2)1以上の通信衛星装置20から通信端末装置10へのビーコンの送信(ステップS12、S13)
1以上の通信衛星装置20から通信端末装置10に複数のビーコンが送信され、通信端末装置10は、1以上の通信衛星装置20からの複数のビーコンを受信する。例えば、座標A1~A3に配置される3つの通信衛星装置20がビーコンFa1~Fa3を送信する。既述のように、1の通信衛星装置20が座標A1~A3を移動して、ビーコンFa1~Fa3を送信してもよい。このいずれにおいても、通信端末装置10は、ビーコンFa1~Fa3に含まれる座標A1、A2,A3の情報等を用いて、送信する電波ビームの複数の方位候補を決定することができる。なお、ビーコンの数は、3に限らず、2、または4以上であってもよい。ビーコンの数が多いと、決定される方位候補の精度の向上を図ることができる。
【0037】
通信端末装置10の制御部13は、ビーコンの受信時刻(通信端末装置10がビーコンを受信した時刻)、およびビーコンの受信強度(受信レベル)を取得する。ビーコンの受信強度は、誤差(例えば、物理層におけるドップラー、混信、降雨などに起因する誤差)を排除する誤差補正が行われていることが好ましい。
【0038】
このとき、通信端末装置10の制御部13は、不適切なビーコン(例えば、送信後、反射または回折されたビーコン)を除外できる。例えば、(ビーコンに含まれる)通信衛星装置20での送信時刻と、通信端末装置10でのビーコンの受信時刻とを比較して、その差が所定値より大きいビーコンを除外する。このとき、制御部13のタイマの時刻が校正されていること(例えば、通信衛星装置20のタイマと同期されていること)が好ましい。後述のように、通信端末装置10の制御部13は、通信衛星装置20からのビーコンに基づいて、タイマの時刻を校正できる。
【0039】
通信端末装置10の制御部13は、例えば、ビーコンに含まれる衛星識別情報を用いて、不適切なビーコン(例えば、サイバー攻撃(再生攻撃)によるビーコン)を除外してもよい。通信端末装置10の制御部13は、例えば、電波の発信源をマップ化した電波マップを用いて、ビーコン以外の電波を除外してもよい。電波マップを用いて、例えば、地上にある携帯電話の基地局からの電波を除外できる。
【0040】
(3)通信端末装置10によるビームフォーミング候補の決定(ステップS14)
通信端末装置10の制御部13は、1以上の通信衛星装置20から送信された複数のビーコンに含まれる情報(例えば、複数の座標A1~A3の情報)に基づいて、ビームフォーミングする範囲の候補(例えば、送信する電波ビームの複数の方位候補)を決定する。なお、この詳細は後述する。
【0041】
(4)ビームフォーミングの実施(ステップS15~S17)
通信端末装置10の制御部13は、複数の方位候補に優先度を付与し、ビームフォーミングを実施する。すなわち、通信端末装置10の制御部13は、優先度に基づいて、複数の方位候補から方位を選択し、選択された方位に、接続要求を含む電波ビームを送信する。接続要求は、通信端末装置10の座標、および選択された方位を含むことができる。
【0042】
通信衛星装置20のアンテナ21は、通信端末装置10からの接続要求を含む電波ビームを受信する。通信衛星装置20の制御部24は、送受信部22を制御して、接続要求を含む電波ビームに応答する、応答電波ビームを送信させる。制御部24は、例えば、接続要求を含む電波ビームの受信強度を取得し、この受信強度に基づいて、応答電波ビームを送信するか否かを決定する。制御部24は、応答電波ビームを送信すると決定した場合、応答電波ビームを送信させる。制御部24は、応答電波ビームを送信しないと決定した場合、応答電波ビームを送信させない。
【0043】
より具体的には、制御部24は、接続要求を含む電波ビームの受信強度などに基づいて決定された通信許容時間に基づいて、応答電波ビームを送信するか否かを決定することができる。例えば、通信許容時間が所定値より短い場合、制御部24は、応答電波ビームを送信しないと決定する。この場合、通信衛星装置20と通信端末装置10との接続処理は、続行されない。通信許容時間は、通信端末装置10と通信衛星装置20間で通信が可能な時間であり、通信衛星装置20が高速で移動し、継続的に通信可能な時間が比較的短いために(例えば、1分程度)設定される。通信許容時間は、例えば、通信端末装置10からの接続要求を含む電波ビームの受信強度(受信レベル)、この接続要求に含まれる通信端末装置10の座標、通信衛星装置20の移動速度、および選択された方位等から導出できる。
【0044】
以下、通信許容時間の導出につき、より具体的に説明する。基本的に、通信許容時間tは、通信端末装置10と通信衛星装置20間で通信が開始されてから、通信衛星装置20が移動して、通信端末装置10との距離が通信限界距離Rに達するまでの時間tによって規定できる。
【0045】
通信限界距離Rは、通信端末装置10と通信衛星装置20と間での通信が限界となる距離である。通信限界距離Rにおいて、通信端末装置10における、通信衛星装置20からの電波ビームの受信強度が、最低受信レベルとなる。通信限界距離Rは、通信端末装置10からの接続要求を含む電波ビームを受信したときの、通信端末装置10と通信衛星装置20間の距離L0、および、この電波ビーム受信強度に基づき、算出できる。なお、この算出において、電波の強度が、距離の2乗に反比例して減衰することが考慮される。
【0046】
ここで、例えば、図5に示すように、通信開始時の通信端末装置10および通信衛星装置20の位置をそれぞれ、(Xa,Ya,0)、(Xb,Yb,H)とし、通信衛星装置20が速度vでt時間(通信許容時間)移動して、通信限界距離Rに達した時の通信衛星装置20の位置を(Xc,Yc,H)とする。ここでは、判り易さのために、通信衛星装置20の高さが一定である場合を想定している。
【0047】
通信衛星装置20の移動距離Lは、次の式(1)に基づき、算出できる(余弦定理)。
cos(180-θ)=(α+L-R)/(2*α*L) …式(1)
α=[(Xb-Xa)+(Yb-Ya)1/2
θ:通信端末装置10から通信衛星装置20に向かう方向に対して、通信衛星装置20の移動方向がなす角度
【0048】
この結果、次の式(2)が導かれる。
cos(180-θ)*2*α*L=α+L-R …式(2)
さらに、A=cos(180-θ)*αとすると、以下の式(3)が成立する。
2*A*L-L=α-R
-2*A*L+L=(A-L)=-α+R+A …式(3)
【0049】
ここで、L≧0であり、Aが負の値をとることから、移動距離Lは、以下の式(4)で表される。
L=(-α+R+A1/2+A …式(4)
そして、通信衛星装置20の移動速度vから、式(5)のように、通信許容時間tが求められる。
t=L/v …式(5)
【0050】
以上のように、通信許容時間tは、例えば、通信端末装置10からの接続要求を含む電波ビームの受信強度(受信レベル)、通信端末装置10の座標(Xa,Ya,0)、通信衛星装置20の移動速度v等から導出できる。
【0051】
既述のように、通信衛星装置20は、衛星間ビーコンを用いて、通信端末装置10から他の通信衛星装置20への接続要求、および他の通信衛星装置20での通信端末装置10との接続状況を共有することができる。従って、通信衛星装置20が、他の通信衛星装置20への接続要求を含む電波ビームを通信端末装置10から受信した場合、通信衛星装置20の制御部24は、他の通信衛星装置20への接続要求およびその接続状況に基づき、他の通信衛星装置20に代わって、通信端末装置10に応答電波ビームを送信するか否かを決定することができる。他の通信衛星装置20に代わって、通信端末装置10に応答電波ビームを送信すると決定された場合、他の通信衛星装置20への接続要求を含む電波ビームを受信した通信衛星装置20は、通信端末装置10に応答電波ビームを送信する。
【0052】
通信衛星装置20からの応答電波ビームを受信した通信端末装置10は、接続確認を含む電波ビームを通信衛星装置20に送信し、通信衛星装置20がこの接続確認を受信することで、通信端末装置10と通信衛星装置20との接続が確立する(ステップS16,S18)。
【0053】
通信衛星装置20の制御部24は、応答電波ビームの送信後、例えば、通信端末装置10と接続しない状態が所定時間継続する場合、通信端末装置10と接続不可と判定する。この場合、制御部24は、メモリM2から通信端末装置10の情報を削除し、接続をリセットする。また、通信衛星装置20と通信端末装置10の接続状況を非接続とする。
【0054】
通信端末装置10の制御部13は、選択された方位に送信された電波ビームの接続要求に応答する、応答電波ビームの受信の有無を判定する。制御部13は、応答電波ビームを受信していないと判定したときは、残りの方位候補から次の方位を選択して、接続要求を含む電波ビームを送信する(ステップS17、S15)。制御部13は、応答電波ビームを受信したと判定したときは、電波ビームによる通信を継続する。
【0055】
(5)通信端末装置10、通信衛星装置20間での通信(ステップS18)
通信衛星装置20と通信端末装置10間での接続が確立した後は、通信衛星装置20と通信端末装置10間でユーザデータ等が送受信される。このとき、通信端末装置10の制御部13は、1以上の通信衛星装置20からの複数のビーコンに含まれる情報(例えば、1以上の通信衛星装置20の移動速度)に基づいて、電波ビームの方位を調節することで(移動する通信衛星装置20への追従)、電波ビームによる通信衛星装置20との通信を継続することができる。
【0056】
なお、短期的な通信切断において、通信端末装置10の制御部13は、複数の通信衛星装置20の情報(例えば、複数の通信衛星装置20の移動速度)に基づいて、電波ビームの方位を調節することで、通信の再開を図ってもよい。例えば、制御部13は、通信衛星装置20の移動をシミュレーションし、想定方向にビームを向けさせる。但し、所定時間、または所定回数を超える電波ビームの送信によっても接続が再開されない場合、接続再開の試みを停止してもよい。
【0057】
通信衛星装置20は、通信端末装置10と接続状態であっても、接続している時間が接続可能時間(通信衛星装置20が通信端末装置10と連続して接続可能な時間)を超えた場合は、通信端末装置10との接続を解除することができる。既述のように、通信衛星装置20は、比較的高速で移動するために、接続可能時間は制限される。接続可能時間は、例えば、通信衛星装置20の座標、移動速度、および通信端末装置10の座標に基づいて、決定される。また、通信衛星装置20は、通信端末装置10と接続状態であっても、ユーザデータの無通信状態が一定時間継続する場合、通信端末装置10との接続を解除してもよい。
【0058】
(ビームフォーミング候補の決定の詳細)
以下、ビームフォーミング候補の決定の詳細を説明する。
既述のように、通信端末装置10は、1以上(一例として、1~3)の通信衛星装置20から複数(一例として、2または3)のビーコンを受信し、複数のビーコンに含まれる情報に基づいて、複数のビームフォーミング候補(例えば、ビームを向ける方位)を決定する。複数のビームフォーミング候補には、優先度が設定される。
【0059】
優先度は、例えば、ビームフォーミング候補の配置に基づいて、設定できる。例えば、図6のCA1に示すように、通信端末装置10から見てビームフォーミング候補が中心の候補A0,その外周の候補A11~A16のように配置されていたとする。この場合、候補A0,A11~A16の順に優先度を付与することができる。これは、中心から外側に向かう方向に優先度を付与していると考えることができる。ここでは、一例として、候補A11~A16について、反時計回りに優先度を付与している。なお、時計回りに、例えば、候補A16~A11の順に優先度を付与してもよい。
【0060】
候補A11~A16を囲むように、候補A21~A2jがさらにある場合(j:2以上の整数)、候補A0,A11~A16、A21~A2jの順に、中心から渦巻き状に外側に向かうように、優先度を付与してもよい。
【0061】
ここで、図6のCA2に示すように、2組の候補A0,A11~A16(A群),B0,B11~B16(B群)がある場合を考える。この場合、A0,B0,A11,B11,…A16,B16のように、A群、B群交互に優先度を設定することができる。
【0062】
但し、候補A0,A11,B0,B11,A12,A13,B12,B13,~A14,A15,B14,A15のように、複数個毎、交互に優先度を付与してもよい。ここでは、2つずつ交互としているが、3つ以上交互としてもよい。このようにすると、通信端末装置10のビーム方向をA群,B群間で切り替えるときに、ある程度の時間を要する場合に、処理の効率化を図れる。
【0063】
以上のように、複数のビームフォーミング候補に優先度を設定することで、処理の効率化を図ることができる。
【0064】
複数のビーコンは、複数の通信衛星装置20の座標、移動速度、ビーコンの送信強度、送信時刻を含むことができる。通信端末装置10は、通信端末装置の方位(向き、傾き)、ビーコンの受信強度、受信時刻の情報を取得できる。
【0065】
ここでは、通信端末装置10は、通信端末装置10自体の座標、ビーコンの受信時刻に関して、ある程度の誤差があり得ると仮定する。すなわち、通信端末装置10は、移動(携帯)可能であり、その座標が一定しない。通信端末装置10は、例えば、GPS(Global Positioning System)衛星から自身の正確な座標を取得することができるが、この取得には、ある程度の時間(例えば、30秒~数分程度)を要する。この所要時間は、通信衛星装置20との迅速な通信等を阻害する。また、通信端末装置10のクロックは、一般に正確性を欠くため、ビーコンの受信時刻にも誤差が生じ得る。
【0066】
ここでは、通信端末装置10の制御部13は、複数のビーコンに含まれる情報に基づき、通信衛星装置20からの通信端末装置10への距離、さらには、相対的な位置(相対座標)を算出し、通信端末装置10からの通信衛星装置20の方位(方向・仰ぎ角)を推測する。なお、後述のように、これらの算出には、三平方の定理、ヘロンの公式等を用いることができる。
【0067】
(a)距離の算出:通信端末装置10から通信衛星装置20までの距離Dの算出
(a1)距離Dの算出の困難性
次に示すように、通信端末装置10から通信衛星装置20までの距離Dを精度よく算出することは容易ではない。
【0068】
通信衛星装置Cと通信端末装置(座標)A1の距離D1を算出することを考える。この距離D1は、原理的には、ビーコンの到達時間Δtから計算できる。ビーコンの到達時間tは、通信衛星装置A1からのビーコンFa1の送信時刻t01と通信端末装置Cでのビーコンの受信時刻t02の差t(=t02-t01)であり、距離D1は、「t・C」として算出できる(C:光、電波の速度)。しかし、既述のように、通信端末装置10のタイマの時刻は、距離D1を計算するには、精度が十分でないことが多い。
【0069】
一方、ビーコンの電力損失ΔPから距離Dを求めることも可能である。すなわち、電力損失ΔPは、通信衛星装置A1から送信時のビーコンの送信電力P0(dB値)と通信端末装置10で受信時のビーコンの受信電力P1(dB値)の差ΔP(=P0-P1)であり、距離D1は、「ΔP/α」として算出できる(α:距離減衰率、単位距離に対するビーコンの減衰率)。しかし、電力損失ΔPに基づく、距離D1の算出は、一般に誤差が大きい。
【0070】
以上のように、通信端末装置10から通信衛星装置20までの距離Dを精度よく算出することは容易ではない。しかし、次に示すように、2つまたは3つの通信衛星装置(座標)A1~A3の情報を用いることで、通信端末装置10から通信衛星装置20までの距離Dを精度よく算出することが可能となる。以下、順に説明する。
【0071】
(a2)2つの通信衛星装置(座標)A1,Aを用いる距離Dの算出
2つの通信衛星装置(座標)A1,A2を用いて、通信端末装置Cと2つの座標A1,A2それぞれとの距離D1,D2の算出精度を向上する手法を説明する。既述のように、通信衛星装置A1,A2は、同一の通信衛星装置でもよい。
【0072】
制御部13は、2つのビーコンの到達時間t1,t2の差Δt(=t1-t2)に基づき、2つの座標A1,A2それぞれとの距離D1,D2の差分(=D1-D2)を求め、さらに、その距離による減衰から距離D1,D2を補正する。また、制御部13は、その距離の減衰からタイマの時刻を校正し、通信衛星装置20のタイマと同期させることができる。なお、後述のように、距離D1,D2に基づいて、複数の方位候補を決定することができる。
【0073】
以下、距離D1,D2の補正の詳細を説明する。
自由空間での電波の伝搬損失(自由空間損失)Sは、以下の式(11)で表される。
S=(4*π*r/λ) ……式(11)
λ:電波の波長
r:電波の伝搬距離
dBで換算した自由空間損失Sdbは、以下の式(12)で表される。
Sdb=20*log(4*π*r/λ) ……式(12)
【0074】
通信衛星装置A1,A2から送信された送信電力Ps1,Ps2のビーコンが、通信端末装置10において受信電力Pr1,Pr2で受信されたとする。これら、送信電力Ps1,Ps2、受信電力Pr1,Pr2から、座標A1,A2からそれぞれ送信された電波の損失S1,S2を求めることができる。本来、これらの損失S1,S2の比は、距離D1,D2の差分に対応するはずである。すなわち、距離D1,D2の差分(=D1-D2)を距離rとして式(11)から算出した損失と、損失S1,S2の比は一致するはずである。
【0075】
しかし、既述のように、距離D1,D2に誤差があるため、測定された電力に基づく損失S1,S2の比は、式(12)に基づき算出される損失Sとは対応しない。このため、式(11)または(12)に基づき算出される伝搬損失Sが、損失S1,S2の比と対応するような、距離L1,L2の差分を求めることで、距離L1,L2を補正することができる。
【0076】
なお、電波の損失は、自由空間損失に限られず、天候、例えば、降雨により損失もあり得る。このため、損失は、自由空間損失のみでなく、天候による損失を加味することが好ましい。天候による損失は、実測や経験値から定めることができる。
【0077】
補正された距離L1,L2に基づいて、タイマの時刻を校正できる。例えば、次の式(15)に基づいて、タイマの時刻を校正できる。
t1=t0+L1/c ……式(15)
t1:校正後のタイマの時刻
t0:座標A1において通信衛星装置20がビーコンを送信した時刻(ビーコン中の情報に含まれる)
c:光(ビーコン)の速度
【0078】
以上のように、距離に起因する減衰(損失)を考慮することで、距離D1,D2を補正し、さらに、通信端末装置10のタイマを校正することができる。
【0079】
以上を纏めると、次のようになる。すなわち、複数のビーコン(ここでは、ビーコンFa1.Fa2)に含まれる情報は、1以上の通信衛星装置20の第1の座標A1、第1の座標A1からの第1のビーコンFa1の第1の送信時刻、1以上の通信衛星装置20の第2の座標A2、第2の座標A2からの第2のビーコンFa2の第2の送信時刻を含む。制御部13は、第1のビーコンFa1の第1の受信時刻、第2のビーコンFa2の第2の受信時刻を取得し、第1の送信時刻および第1の受信時刻に基づいて、第1の座標A1と通信端末装置C間の第1の距離D1を導出し、第2の送信時刻および第2の受信時刻に基づいて、第2の座標A2と通信端末装置C間の第2の距離D2を導出する。制御部13は、第1、第2の座標、および第1、第2の距離D1,D2に基づいて、複数の方位候補を決定することができる。
【0080】
複数のビーコンに含まれる情報は、第1のビーコンFa1の第1の送信強度、および第2のビーコンFa2の第2の送信強度を含む。制御部13は、例えば、第1のビーコンFa1の第1の受信強度、および第2のビーコンFa2の第2の受信強度を取得する。制御部13は、第1、第2の送信強度および第1、第2の受信強度に基づいて、第1、第2の距離D1,D2を補正することができる。
【0081】
複数のビーコンに含まれる情報は、第1のビーコンFa1の第1の送信強度、および第2のビーコンFa2の第2の送信強度を含む。制御部13は、第1のビーコンFa1の第1の受信強度、および第2のビーコンFa2の第2の受信強度を取得する。制御部13は、第1、第2の距離D1,D2、第1、第2の送信強度、および第1、第2の受信強度に基づいて、タイマの時刻を校正する。時刻が校正されたタイマは、第1の受信時刻、第2の受信時刻の取得に用いることができる。
【0082】
ここで、2つの通信衛星装置A1、A2を用いる場合、通信衛星装置A1、A2は、比較的近距離に配置されるよう、距離を調節しながら移動するものとする。複数の通信衛星装置20間の距離が大きいと、通信衛星装置20間で天候の相違が大きく、複数の通信衛星装置20それぞれから送信されるビーコンFa1~Fa3の減衰が大きく異なり、距離D1,D2の的確な補正、タイマの時刻の校正が困難になる。
【0083】
(a3)3つの通信衛星装置(座標)A1~A3を用いる距離Dの算出
次に3つの通信衛星装置(座標)A1~A3を用いて、距離D1,D2の算出精度を向上する手法を説明する。既述のように、通信衛星装置A1~A3は、同一の通信衛星装置でもよい。ここでも、3つの通信衛星装置A1~A3を用いる場合、通信衛星装置A1~A3は、比較的近距離に配置されるよう、距離を調節しながら移動するものとする。
【0084】
ここでは、図2に示すように、3つの座標A1~A3,および通信端末装置Cは、xy平面上にあるとする。例えば、通信衛星装置A1~A3が座標A1(0,0)、A2(0,ya2)、A3(0,ya3)に、通信端末装置Cが座標C(x3,y3)に配置されるとする。但し、この座標A1~A3,Cの設定は、判り易さのためのものであり、この設定を除外しても、以下の手法は成立する。
【0085】
通信端末装置Cのタイマの時刻のずれによる、距離の誤差をαとする。次の式(21)が成立する(三平方の定理)。
D1=(x3+y31/2+α
D2=[x3+(ya2-y3)1/2+α
D3=[x3+(ya3-y3)1/2+α …(21)
ここで、
D1:通信端末装置Cと通信衛星装置A1間の距離
D2:通信端末装置Cと通信衛星装置A2間の距離
D3:通信端末装置Cと通信衛星装置A3間の距離
【0086】
式(21)より、x3、y3,αを導出することができる。すなわち、3つの式に対して、3つの未知数x3、y3,αがあるので、3つの式を連立させることで、未知数x3、y3,αを導出することができる。
【0087】
すなわち、3つの座標A1~A3を用いることで、距離D1~D3の誤差αをキャンセルした通信端末装置10の座標C(x3,y3)を算出できる。また、算出された距離の誤差αに基づき、通信端末装置10のタイマの時刻を校正し、通信衛星装置20のタイマと同期させることができる。
【0088】
(b)通信端末装置10に対する通信衛星装置20の相対位置の算出
以下、距離D1,D2に基づく、通信端末装置Cに対する通信衛星装置A1,A2の相対位置の算出の手法を説明する。
【0089】
ここでは、座標A1、A2、および座標Cからの座標A1,A2の距離D1,D2が判っており、通信端末装置Cの高度を0と仮定する。例えば、座標A1、A2を(0,0,H)、(0,By,H)とし、座標Cを(x3,y3,0)とする。
【0090】
通信衛星装置A1、A2の地上面S(高度0)への射影を座標A10、A20とする。このとき座標A10、A20間の距離D00、座標A10、C間のD10、座標A20、C間の距離D20を計算して、通信端末装置Cの座標(x3,y3,0)を算出できる。このようにして、制御部13は、例えば、第1、第2の通信衛星装置A1,A2にそれぞれ対応する第1、第2の方位候補を決定することができる。
【0091】
このとき、通信端末装置Cの座標の候補はx方向に2つある。すなわち、図7図8に示すように、座標A1,A2、座標A1,A2から座標Cへの距離D1、D2が特定されたとき、図9に示すように、地上面S上での座標CはC1,C2と2つの可能性がある。これを通信端末装置Cから見ると、図10に示すように、方位には、2つの方位AZ1,AZ2の可能性があることになる。この場合、制御部13は、第1、第2の座標A1,A2、および第1、第2の距離D1、D2に基づいて、第1の座標に対応する2の方位候補を決定してもよい。
【0092】
ここで、距離D1、D2に誤差があり、通信端末装置Cの高度とは限らないため、算出される通信端末装置Cの座標にも誤差がある。このような誤差を考慮してビーム合わせの検索範囲を絞ることができる。
【0093】
以下、図11に基づき、通信端末装置Cの座標を算出する。ここで、通信衛星装置A1、A2の座標を(0,0,H)、(0,y2,H)、通信端末装置Cの座標を(x3、y3、0)とする。また、座標A1、A2の地上面Sへの射影をA10(0,0,0),A20(0,y2,0)とする。このとき、次の式(22)を用いて、通信端末装置10の座標を算出できる。
【0094】
すなわち、座標A10、A20、Cを結ぶ三角形の面積S1は、次の式(22)により求められる(ヘロンの公式)。
S1=[s*(s-y2)( s-D10) ( s-D20)]1/2
s=(y2+D10+D20)/2 …(22)
ここで、
D10:座標C、A10間の距離
D20:座標C、A20間の距離
【0095】
距離D10、D20は、次の式(23)によって表される。
D10=(D1-H)1/2
D20=(D2-H)1/2 …(23)
ここで、
D1:座標C、A1間の距離
D2:座標C、A2間の距離
【0096】
面積S1は、次の式(24)で表されるため、式(25)が成立する。
S1=(y2*x3)/2 …(24)
x3=2*S1/y2 …(25)
【0097】
x3よりy3を算出できる。
y3=[D10-x31/2 …(26)
【0098】
ここで、D20が次の条件(27)を満たすときは、y3は負の値となる
D20>[y2+x31/2 …(27)
【0099】
以上のように、通信衛星装置20の座標A1,A2、通信端末装置10(座標C)から座標A1,A2への距離D1、D2が判れば、通信端末装置10の座標Cを算出できる。さらに、座標Cから通信端末装置10に対する通信衛星装置(座標)A1,A2の相対座標を算出できる。
【0100】
(c)通信端末装置Cから通信衛星装置A1,A2への方位の算出
通信端末装置Cの座標から通信衛星装置A1,A2への方位、仰ぎ角を算出できる。
通信端末装置Cから通信衛星装置A1への角度θ1は、次の式(31)によって表せる。
θ1=180-(α+β) …(31)
α:座標A10、A20のなす直線が北方向に対してなす角度
β:座標A10、A20、Cのなす三角形TRが座標A10においてなす角度
【0101】
ここで、三角形TRの三辺の長さが分かっていることから、第二余弦定理より角度βを算出し、角度θ1を求めることができる。
cos(β)=(y2+D10-D20)/(2*y2*D10)…(32)
【0102】
通信衛星装置A2への角度も同等に計算できる。
通信端末装置Cから通信衛星装置A2への角度θ2は、次の式(33)によって表せる。
θ2=180-(α+β)-γ …(33)
γ:座標A10、A20、Cのなす三角形TR2が座標Cにおいてなす角度
【0103】
三角形TR2の三辺の長さが分かっていることから、角度γを第二余弦定理より算出し、角度θ2を求めることができる。
通信衛星装置A1に対する仰ぎ角度ω1も第二余弦定理より求められる。
cos(ω1)=(D10+D1-H)/(2*D10*D1) …(34)
【0104】
以上のように、通信端末装置10の制御部13は、GPS衛星を用いることなく、複数のビーコンに含まれる情報から電波ビームの方位候補を決定でき、ビーム方位の速やかな決定が容易となる。
【0105】
〔付記事項1〕
本発明は、上述した実施形態に限定されるものでなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。例えば、上述した実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0106】
〔付記事項2〕
上述した実施形態の一部又は全部は、以下のようにも記載され得る。ただし、本発明は、以下の記載する態様に限定されるものではない。
【0107】
(付記1)
付記1の通信端末装置(10)は、電波ビームによって通信衛星装置(20)と通信する通信端末装置であって、1以上の通信衛星装置からの複数のビーコンを受信し、且つ、指向性を有する電波ビームを送受信するアンテナ(11)と、制御部(13)と、を備え、前記制御部は、前記複数のビーコンに含まれる情報に基づいて、前記アンテナから送信する前記電波ビームの複数の方位候補を決定する。これにより、複数のビーコンに含まれる情報に基づいて、電波ビームの複数の方位候補を決定することで、ビーム方位の速やかな決定が容易となる。
【0108】
(付記2)
付記2の通信端末装置(10)は、付記1において、前記制御部は、前記複数の方位候補に優先度を付与し、前記優先度に基づいて、前記複数の方位候補から方位を選択し、前記選択された方位に、接続要求を含む電波ビームを送信する。これにより、優先度に基づいて、複数の方位候補から方位を選択することで、ビーム方位の速やかな決定が容易となる。
【0109】
(付記3)
付記3の通信端末装置(10)は、付記2において、前記制御部は、前記選択された方位に送信された前記電波ビームの接続要求に応答する、応答電波ビームの受信の有無を判定し、前記応答電波ビームを受信していないと判定したときは、残りの方位候補から次の方位を選択して、接続要求を含む電波ビームを送信し、前記応答電波ビームを受信したと判定したときは、前記電波ビームによる通信を継続する。これにより、応答電波ビームの受信の有無を判定することで、通信衛星装置との速やかな接続が容易となる。
【0110】
(付記4)
付記4の通信端末装置(10)は、付記3において、前記情報は、前記1以上の通信衛星装置の移動速度を含み、前記制御部は、前記1以上の通信衛星装置の移動速度に基づいて、前記電波ビームの方位を調節することで、前記電波ビームによる通信を継続する。これにより、通信衛星装置の移動速度に基づいて、電波ビームの方位を調節することで、通信衛星装置との接続の維持が容易となる。
【0111】
(付記5)
付記5の通信端末装置(10)は、付記1~4のいずれかにおいて、前記情報は、前記1以上の通信衛星装置の第1の座標(A1)、前記第1の座標からの第1のビーコンの第1の送信時刻、前記1以上の通信衛星装置の第2の座標(A2)、前記第2の座標からの第2のビーコンの第2の送信時刻を含み、前記制御部は、前記第1のビーコンの第1の受信時刻、前記第2のビーコンの第2の受信時刻を取得し、前記第1の送信時刻および前記第1の受信時刻に基づいて、前記第1の座標と前記通信端末装置間の第1の距離を導出し、前記第2の送信時刻および前記第2の受信時刻に基づいて、前記第2の座標と前記通信端末装置間の第2の距離を導出し、前記第1、第2の座標(A1,A2)、および前記第1、第2の距離(D1,D2)に基づいて、前記複数の方位候補を決定する。これにより、第1、第2の座標との第1、第2の距離に基づいて、複数の方位候補を決定することで、通信衛星装置との速やかな接続が容易となる。
【0112】
(付記6)
付記6の通信端末装置(10)は、付記5において、前記情報は、前記第1のビーコンの第1の送信強度、および前記第2のビーコンの第2の送信強度を含み、前記制御部は、前記第1のビーコンの第1の受信強度、および前記第2のビーコンの第2の受信強度を取得し、前記第1、第2の送信強度および前記第1、第2の受信強度に基づいて、前記第1、第2の距離を補正する。第1、第2のビーコンの送信強度および受信強度に基づいて、第1、第2の通信衛星装置との距離を補正することで、より正確な方位候補の決定が容易となる。
【0113】
(付記7)
付記7の通信端末装置(10)は、付記5において、前記情報は、前記第1のビーコンの第1の送信強度、および前記第2のビーコンの第2の送信強度を含み、前記制御部は、前記第1のビーコンの第1の受信強度、および前記第2のビーコンの第2の受信強度を取得し、前記第1、第2の距離、前記第1、第2の送信強度、および前記第1、第2の受信強度に基づいて、タイマの時刻を校正し、前記校正されたタイマは、前記第1の受信時刻、前記第2の受信時刻の取得に用いられる。第1、第2のビーコンの送信強度および受信強度に基づいて、タイマの時刻を校正することで、より正確な方位候補の決定が容易となる。
【0114】
(付記8)
付記8の通信端末装置(10)は、付記5において、前記制御部は、前記第1、第2の座標にそれぞれ対応する第1、第2の方位候補を決定する。これにより、第1、第2の通信衛星装置にそれぞれ対応する的確な第1、第2の方位候補を決定できる。
【0115】
(付記9)
付記9の通信衛星装置(20)は、付記1~8いずれかの通信端末装置と電波ビームによって通信する通信衛星装置であって、前記通信端末装置からの接続要求を含む電波ビームを受信するアンテナと、制御部と、を備え、前記制御部は、前記接続要求を含む電波ビームに応答する、応答電波ビームを送信させる。これにより、接続要求を含む電波ビームに応答する、応答電波ビームを送信させることで、通信端末装置との速やかな接続が容易となる。
【0116】
(付記10)
付記10の衛星通信システムは、付記1~8いずれかの通信端末装置と付記9の通信衛星装置とを備える。これにより、通信端末装置と通信衛星装置との速やかな接続を容易とする衛星通信システムを提供できる。
【0117】
(付記11)
付記11の通信端末装置(10)は、付記5において、前記制御部は、前記第1、第2の座標、および前記第1、第2の距離に基づいて、前記第1の通信衛星装置に対応する2の方位候補を決定する。これにより、第1、第2の通信衛星装置の座標、および第1、第2の通信衛星装置との距離に基づく、方位の不確定性に対応する方位候補を決定できる。
【0118】
(付記12)
付記12の通信衛星装置(20)は、付記9において、前記制御部は、前記接続要求を含む電波ビームの受信強度を取得し、前記受信強度に基づいて、前記応答電波ビームを送信するか否かを決定し、前記応答電波ビームを送信すると決定したときに、前記応答電波ビームを送信させる。これにより、受信強度に基づいて、応答電波ビームを送信するか否かを決定することで、接続時間を確保した通信が容易となる。
【0119】
(付記13)
付記13の通信衛星装置(20)は、付記9または12において、前記制御部は、前記応答電波ビームの送信後、前記通信端末装置と接続しない状態が所定時間継続する場合、前記通信端末装置と接続不可と判定する。これにより、通信端末装置と接続しない状態を速やかに解消したリソースの有効活用が容易となる。
【0120】
(付記14)
付記14の通信衛星装置(20)は、付記9、12、13のいずれかにおいて、前記アンテナは、他の通信衛星装置との間で、衛星間ビーコンを送受信し、前記制御部は、前記衛星間ビーコンに含まれる、前記他の通信衛星装置の座標、移動速度を取得し、前記他の通信衛星装置の座標、移動速度を含むビーコンを前記通信端末装置に送信させる。これにより、1のビーコンが他の通信衛星装置の情報を含めて送信可能となり、通信衛星装置の情報の有効活用が図られる。
【0121】
(付記15)
付記15の通信衛星装置(20)は、付記14において、前記衛星間ビーコンは、他の通信衛星装置への接続要求、および前記他の通信衛星装置での前記通信端末装置との接続状況を含み、前記通信衛星装置が、前記他の通信衛星装置への接続要求を含む電波ビームを前記通信端末装置から受信した場合、前記制御部は、前記他の通信衛星装置への接続要求および前記接続状況に基づき、前記他の通信衛星装置に代わって、前記応答電波ビームを送信するか否かを決定する。これにより、他の通信衛星装置に代わって通信端末装置に接続することが容易となり、複数の通信衛星装置の有効活用が容易となる。
【0122】
(付記16)
付記16の通信端末装置(10)は、電波ビームによって通信衛星装置(20)と通信する通信端末装置であって、1以上の通信衛星装置からの複数のビーコンを受信し、且つ、指向性を有する電波ビームを送受信するアンテナ(11)と、プロセッサ(13)と、を備え、前記プロセッサは、前記複数のビーコンに含まれる情報に基づいて、前記アンテナから送信する前記電波ビームの複数の方位候補を決定する処理を実行する。
【0123】
なお、この通信端末装置(10)は、更にメモリを備えていてもよく、このメモリには、前記電波ビームの複数の方位候補を決定する処理を前記プロセッサに実行させるためのプログラムが記憶されていてもよい。また、このプログラムは、コンピュータ読み取り可能な一時的でない有形の記録媒体に記録されていてもよい。
【符号の説明】
【0124】
1 衛星通信システム
10 通信端末装置
11 アンテナ
12 送受信部
13 制御部
20 通信衛星装置
21 アンテナ
22 送受信部
23 姿勢制御部
24 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
図10
図11