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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094014
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】三次元造形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/393 20170101AFI20240702BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20240702BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240702BHJP
   B29C 64/118 20170101ALI20240702BHJP
【FI】
B29C64/393
B33Y50/02
B33Y30/00
B29C64/118
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210713
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】武本 和大
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AC02
4F213AP12
4F213AQ01
4F213AR13
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL15
4F213WL32
4F213WL74
4F213WL85
4F213WL96
(57)【要約】
【課題】トライアンドエラーを行うことなく、造形条件設定の作業負担を低減する。
【解決手段】フィラメントF(造形材料)を積層するための造形台Pと、フィラメントFを造形台P方向に送り出す、送り出し機構3と、フィラメントFを加熱する加熱部4と、加熱部4により可塑化されたフィラメントFを噴射する噴射部5と、噴射部5から噴射されるフィラメントFを撮像する撮像部6と、撮像部6によって得られた画像から、フィラメントFの噴射状態を数値化する画像処理手段71と、噴射部5により噴射された1または複数の噴射状態に対する数値化と、所定以上の造形品質となる造形条件と対応付けられた数値化とに基づいて、最適な造形条件を算出する算出手段72と、を備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形材料で形成した層を積層することにより造形物を造形する三次元造形装置であって、
前記造形材料を積層するための造形台と、
前記造形材料を造形台方向に送り出す、送り出し手段と、
前記造形材料を加熱する加熱手段と、
前記加熱手段により可塑化された造形材料を噴射する噴射部と、
前記噴射部から噴射される造形材料を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段によって得られた画像から、造形材料の噴射状態を数値化する画像処理手段と、
前記噴射部により噴射された1または複数の噴射状態に対する数値化と、所定以上の造形品質となる造形条件と対応付けられた数値化とに基づいて、最適な造形条件を算出する算出手段と、
を備えることを特徴とする三次元造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層を積層することで三次元造形物を造形する三次元造形物製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、層を積層することで三次元造形物を造形する三次元造形物製造装置が使用されている。
【0003】
特許文献1には、造形物MOの形状を示すデータに基づいて材料の吐出経路を示す造形データを生成する生成部と、造形データに基づいて吐出部の移動を制御する移動制御部とを備え、生成部は、単位面積あたりの材料の吐出量が一定とならないように吐出経路を調整することを特徴とした制御装置に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-55155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、造形品質を向上させるために、造形データに基づいて単位面積あたりの材料の吐出量を調整するが、最適な吐出量の調整には、トライアンドエラーを行って、材料の加熱温度や造形速度などの造形条件を決める必要があり、作業者の作業負担が大きかった。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、トライアンドエラーを行うことなく、造形条件設定の作業負担を低減する三次元造形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る三次元造形装置の特徴は、
造形材料で形成した層を積層することにより造形物を造形する三次元造形装置であって、
前記造形材料を積層するための造形台と、
前記造形材料を造形台方向に送り出す、送り出し手段と、
前記造形材料を加熱する加熱手段と、
前記加熱手段により可塑化された造形材料を噴射する噴射部と、
前記噴射部から噴射される造形材料を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段によって得られた画像から、造形材料の噴射状態を数値化する画像処理手段と、
前記噴射部により噴射された1または複数の噴射状態に対する数値化と、所定以上の造形品質となる造形条件と対応付けられた数値化とに基づいて、最適な造形条件を算出する算出手段と、を備えることにある。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る三次元造形装置の特徴によれば、トライアンドエラーを行うことなく、造形条件設定の作業負担を低減することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る実施の形態の三次元造形装置の概略構成を示す図である。
図2】最適な造形条件の算出の方法について模式的に説明した図である。図2(a)は、側面図であり、(b)は、排出長さの適正値を示した図である。
図3】フィラメント(造形材料)の太さに基づいた最適な造形条件の算出の方法について模式的に説明した図である。
図4】本発明に係る実施の形態の三次元造形装置における処理内容を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一若しくは同等の部位や構成要素には、同一若しくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0011】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
<印刷システムの構成>
図1は、本発明に係る実施の形態の三次元造形装置の概略構成を示す図である。
【0013】
図1に示すように、三次元造形装置1は、リール2と、送り出し機構3と、加熱部4と、噴射部5と、撮像部6と、画像処理部7と、造形台Pとを備える。
【0014】
三次元造形装置1の底部には、造形物Mを積層させる載置台となる造形台Pが設置されている。造形物Mの材料として、熱可塑性樹脂をマトリックスとした樹脂組成物からなる長尺のフィラメントFを用いられる。
【0015】
リール2は、可塑性のワイヤ状の造形材料であるフィラメントFを巻回している。
【0016】
送り出し機構3は、造形台Pの上方に設置されており、リール2から導出されたフィラメントFを保持し、図示しないステッピングモータなどによりフィラメントFを所定量だけ下方(造形台P方向)へと送り出す。
【0017】
加熱部4は、図示しないフィラメントFを加温するヒーターと、フィラメントFの温度を検出する温度センサとを有しており、温度センサにより検出した温度を所定の温度に維持するように、ヒーターによりフィラメントFを加温する。
【0018】
噴射部5は、先端に噴出穴が設けられており、加熱部4により加温されることにより粘度が上昇したフィラメントFを噴射する。
【0019】
撮像部6は、結像光学系(例えばレンズ)、撮像素子(例えばCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor))等を備えたカメラであり、噴射部5から噴射されたフィラメントFの状態を撮像する。
【0020】
画像処理部7は、撮像部6により撮像された撮影画像データを処理し、樹脂の排出長さや形状、太さを数値化する。
【0021】
具体的には、画像処理部7は、その機能上、画像処理手段71と、算出手段72と、記憶手段73とを有している。
【0022】
画像処理手段71は、撮像部6により撮像された撮影画像データから、造形材料の噴射状態を数値化する。造形材料の噴射状態を数値化については、例えば、画像処理手段71は、撮像画像データから、濃度値の多値化処理やエッジ検出処理などを行い、抽出された噴射状態の画像から長さ、太さ(幅)、形状、濃度値を抽出し、予め決められたルールに従って数値化(長さX1,幅Y1、形状Z1、濃度N1)を行う。そして、画像処理手段71は、造形条件を変更して、上記の噴射部5による噴射、撮像部6による撮像、画像処理手段71による数値化を繰り返す。
【0023】
算出手段72は、噴射部5により噴射された1または複数の噴射状態に対する数値化と、所定以上の造形品質となる造形条件と対応付けられた数値化とに基づいて、最適な造形条件を算出する。
【0024】
具体的には、算出手段72は、噴射部5により噴射された1または複数の噴射状態の数値化と、後述する記憶手段73に記憶されたテーブルを参照して、造形品質良好となる数値化データとなる造形条件を最適造形条件として決定する。ここで、造形条件としては、例えば、送り出し機構3による送り出し圧力(送り出し量プロファイル)、送り出し機構3による送り出し速度(送り出し速度プロファイル)、加熱部4による加熱温度(加熱プロファイル)がある。
【0025】
記憶手段73は、メモリなどで構成され、噴射状態の数値化データ(長さX1~XN,幅Y1~YN、形状、濃度)と造形品質が良好な場合とが対応付けられたテーブルを記憶してる。なお、このテーブルは予め噴射状態を変化させたときの造形品質の確認により実験的に作成される。
【0026】
このテーブルの作成方法として、例えば、送り出し機構3がフィラメントF(造形材料)を送り出す際の圧力を検出する検出機(図示しない)を備え、検出器により検出された圧力に基づいて最適な造形条件を算出するようにしてもよい。
【0027】
また、噴射部5により噴射されたフィラメントF(造形材料)の排出長さまたは排出速度を数値化し、数値化された排出長さと、送り出し機構3によるフィラメントF(造形材料)の送り出し量との関係を元に、最適な造形条件を算出するようにしてもよい。
【0028】
図2は、最適な造形条件の算出の方法について模式的に説明した図である。図2(a)は、側面図であり、(b)は、排出長さの適正値を示した図である。
【0029】
図2(a)に示すように、フィラメントF(造形材料)の排出長さLは、噴射部5の先端の噴出穴51から下方に延びたフィラメントF(造形材料)の先端までの長さを示している。
【0030】
図2(b)では、送り出し機構3によるフィラメントF(造形材料)の送り出し量D101~D103ごとの、フィラメントF(造形材料)の排出の時間と、フィラメントF(造形材料)の排出長さLとの関係を示している。
【0031】
図2(b)に示すように、送り出し量D101では、送り出し量に対し排出長さLが不足している。これは、噴射部5の温度が低いため、フィラメントF(造形材料)が十分に溶け切っていないと予測できる。
【0032】
一方、送り出し量D103では、送り出し量D103よりも排出長さLが長い。すなわち、送出し停止後も漏れ出している状態となっている。これは、噴射部5の温度が高いため、フィラメントF(造形材料)が余分に溶けてしまっていると予測できる。
【0033】
送り出し量D102では、送り出し量に対し排出長さLが適正長さとなっている。そのため、この送り出し量D102における排出長さLに基づいて、テーブルが作成される。
【0034】
また、噴射部5により噴射されたフィラメントF(造形材料)の太さを数値化し、数値化された太さと、送り出し機構3によるフィラメントF(造形材料)の送り出し量との関係を元に、最適な造形条件を算出するようにしてもよい。
【0035】
図3は、フィラメントF(造形材料)の太さに基づいた最適な造形条件の算出の方法について模式的に説明した図である。
【0036】
図3に示すように、フィラメントF(造形材料)の太さを測定する際、測定ポイントP1においては、フィラメントF(造形材料)の太さが細くなっており、測定ポイントP2においては、フィラメントF(造形材料)の太さが正常になっている。
【0037】
このように、フィラメントF(造形材料)の太さが細くなったり太くなったりと繰り返している場合、送り出し機構3によるフィラメントF(造形材料)の送り出し速度が速すぎ、フィラメントF(造形材料)の溶融が間に合っていないと予測できる。
【0038】
また、フィラメントF(造形材料)の太さが常時細い、または曲がる場合には、噴射部5が詰まっている可能性が高い。
【0039】
そこで、適正にフィラメントF(造形材料)が造形されている場合における送り出し機構3によるフィラメントF(造形材料)の送り出し速度に基づいて、テーブルが作成される。
【0040】
図4は、本発明に係る実施の形態の三次元造形装置1における処理内容を示したフローチャートである。
【0041】
図4に示すように、ステップS11において、三次元造形装置1は、加熱部4により噴射部5を加熱する。この時、温度センサにより温度が一定となるよう制御する。
【0042】
ステップS13において、送り出し機構3がフィラメントF(造形材料)を所定の速度で送り出す。
【0043】
ステップS15において、撮像部6が、噴射部5により噴射されたフィラメントF(造形材料)を撮像する。
【0044】
ステップS17において、画像処理手段71は、撮像部6により撮像された撮影画像データから、造形材料の噴射状態を数値化(長さX1,幅Y1、形状Z1、濃度N1)する。
【0045】
ステップS19において、別の条件で次の測定を行うために、一度排出されたフィラメントF(造形材料)を除去する。図示しないが、三次元造形装置1は、フィラメントF(造形材料)を除去する除去機構を有している。
【0046】
ステップS21において、画像処理手段71は、ステップS11における加熱部4の加熱温度やステップS13における送り出し機構3のフィラメントF(造形材料)を送り出し速度を変更して、ステップS11~S19を繰り返し実行する。
【0047】
ステップS23において、算出手段72は、ステップS17で得られた噴射部5により噴射された噴射状態に対する数値化と、テーブルとに基づいて、最適な加熱温度や送り出し速度などの最適な造形条件を算出する。
【0048】
(付記)
本出願は、以下の発明を開示する。
【0049】
(付記1)
造形材料で形成した層を積層することにより造形物を造形する三次元造形装置であって、
前記造形材料を積層するための造形台と、
前記材料を造形台方向に送り出す、送り出し手段と、
前記造形材料を加熱する加熱手段と、
前記加熱手段により可塑化された造形材料を噴射する噴射部と、
前記噴射部から噴射される造形材料を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段によって得られた画像から、造形材料の噴射状態を数値化する画像処理手段と、
前記噴射部により噴射された1または複数の噴射状態に対する数値化と、所定以上の造形品質となる造形条件と対応付けられた数値化とに基づいて、最適な造形条件を算出する算出手段と、
を備えることを特徴とする三次元造形装置。
【0050】
これにより、噴射部により噴射された1または複数の噴射状態に対する数値化と、所定以上の造形品質となる造形条件と対応付けられた数値化とに基づいて、最適な造形条件を算出するので、トライアンドエラーを行うことなく、造形条件設定の作業負担を低減することが出来る。
【符号の説明】
【0051】
1 三次元造形装置
2 リール
3 送り出し機構
4 加熱部
5 噴射部
6 撮像部
7 画像処理部
71 画像処理手段
72 算出手段
73 記憶手段
図1
図2
図3
図4