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  • 特開-積層発泡シートの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094015
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】積層発泡シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 37/15 20060101AFI20240702BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20240702BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240702BHJP
   B29C 48/32 20190101ALI20240702BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20240702BHJP
   B29C 48/21 20190101ALI20240702BHJP
   B29C 48/49 20190101ALI20240702BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240702BHJP
   B29C 44/24 20060101ALI20240702BHJP
   B29K 23/00 20060101ALN20240702BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20240702BHJP
【FI】
B32B37/15
B32B5/18
B32B27/32 C
B29C48/32
B29C44/00 E
B29C48/21
B29C48/49
B32B27/00 C
B29C44/24
B29K23:00
B29L9:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210714
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】100126413
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 太亮
(72)【発明者】
【氏名】角田 博俊
(72)【発明者】
【氏名】栢木 佑典
(72)【発明者】
【氏名】勝山 直哉
【テーマコード(参考)】
4F100
4F207
4F214
【Fターム(参考)】
4F100AK01C
4F100AK04C
4F100AK06A
4F100AK25B
4F100AK68C
4F100AL01C
4F100AL09B
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CA01A
4F100CA04B
4F100CB00B
4F100DJ01A
4F100EH20
4F100JA04A
4F100JA05B
4F100JA06
4F100JA13
4F100JB16B
4F100JK12B
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
4F207AA07
4F207AA21
4F207AA45
4F207AB02
4F207AB07
4F207AG01
4F207AG03
4F207AH81
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4F207KK56
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4F207KM15
4F214AA07
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4F214AH81
4F214AR06
4F214AR17
4F214UA11
4F214UB02
4F214UN04
4F214UN56
4F214UP88
(57)【要約】      (修正有)
【課題】低見掛け密度の場合でも良好な粘着性を発現する粘着層を形成する積層発泡シートの製造方法の提供。
【解決手段】発泡層と、粘着層と、発泡層と粘着層とを接着する中間層とを共押出しする、見掛け密度20kg/m以上200kg/m以下の粘着性の積層発泡シートの製造方法において、発泡層が低密度ポリエチレンと物理発泡剤を含み、粘着層がアクリル系熱可塑性エラストマーと揮発性可塑剤を含み、アクリル系熱可塑性エラストマーがメタクリル酸エステル系重合体からなるハードセグメントとアクリル酸エステル系重合体からなるソフトセグメントとのブロック共重合体であり、アクリル系熱可塑性エラストマーのデュロメータ硬さが50以下、粘着層形成用溶融物中の揮発性可塑剤がアルコール及びジアルキルエーテルの群より選択される1種以上、揮発性可塑剤が粘着層形成用溶融物中の重合体1kgに対し0.5mol以上6.5mol以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡層を形成するための発泡層形成用溶融物と、粘着層を形成するための粘着層形成用溶融物と、前記発泡層と前記粘着層とを接着する中間層を形成するための中間層形成用溶融物と、を共押出することにより、前記発泡層と前記中間層と前記粘着層とがこの順で積層された積層構造を有し見掛け密度が20kg/m以上200kg/m以下である、粘着性を有する積層発泡シートを製造する方法であって、
前記発泡層形成用溶融物が低密度ポリエチレンと物理発泡剤とを含み、
前記粘着層形成用溶融物がアクリル系熱可塑性エラストマーと揮発性可塑剤とを含み、
前記アクリル系熱可塑性エラストマーがメタクリル酸エステル系重合体からなるハードセグメントとアクリル酸エステル系重合体からなるソフトセグメントとのブロック共重合体であり、
前記アクリル系熱可塑性エラストマーのタイプAデュロメータ硬さが50以下であり、
前記粘着層形成用溶融物に含まれる前記揮発性可塑剤がアルコール及びジアルキルエーテルからなる群より選択される1種以上であり、
前記揮発性可塑剤の配合量が前記粘着層形成用溶融物に含まれる重合体1kgに対して0.5mol以上6.5mol以下である、積層発泡シートの製造方法。
【請求項2】
前記積層発泡シートは、無架橋である、
請求項1に記載の積層発泡シートの製造方法。
【請求項3】
前記アクリル系熱可塑性エラストマーのタイプAデュロメータ硬さが20以下である、
請求項1又は2に記載の積層発泡シートの製造方法。
【請求項4】
前記アクリル系熱可塑性エラストマーの230℃、荷重2.16kgの条件にて測定されるメルトマスフローレイトが50g/10min以上300g/10min以下である、
請求項1又は2に記載の積層発泡シートの製造方法。
【請求項5】
前記低密度ポリエチレンの融点(Tm)が100℃以上130℃以下であり、前記低密度ポリエチレンの融点(Tm)と前記アクリル系熱可塑性エラストマーの前記ハードセグメントのガラス転移温度(TgH)との差[(Tm)-(TgH)]が-30℃以上20℃以下である、
請求項1又は2に記載の積層発泡シートの製造方法。
【請求項6】
前記粘着層形成用溶融物に含まれる前記揮発性可塑剤がエタノール及びジメチルエーテルからなる群より選択される1以上である、
請求項1又は2に記載の積層発泡シートの製造方法。
【請求項7】
前記中間層形成用溶融物が、エチレン系共重合体を含み、
前記エチレン系共重合体の構造単位としてエチレンに由来する第1の構造単位、及び極性基を有するモノマーに由来する第2の構造単位を備える、
請求項1又は2に記載の積層発泡シートの製造方法。
【請求項8】
前記エチレン系共重合体中の前記第2の構造単位の含有割合が10質量%以上30質量%以下である、
請求項7に記載の積層発泡シートの製造方法。
【請求項9】
前記粘着層の坪量が4g/m以上20g/m以下である、
請求項1又は2に記載の積層発泡シートの製造方法。
【請求項10】
前記中間層の坪量が0.5g/m以上10g/m以下である、
請求項1又は2に記載の積層発泡シートの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着性を有する積層発泡シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン系樹脂を基材樹脂とするポリエチレン系樹脂発泡シートは、柔軟性が高く、衝撃吸収性に優れているため緩衝材や養生シート等の用途に用いられている。これらの中でも、粘着性を有する積層発泡シートは、テープ等の粘着用の部材を別途用いることなく粘着対象に貼り付けることができるため、簡易養生分野等の広範な用途で使用される。
【0003】
粘着性を有する積層発泡シートとして、たとえば特許文献1、2が開示されている。特許文献1では、アクリル系粘着剤組成物を剥離フィルム上に塗工して得られた粘着層形成フィルムを、表面にコロナ放電処理を施された発泡シートの表面に転写することにより粘着性を有する積層発泡シートが製造されている。また、特許文献2では、アクリル系粘着剤溶液を発泡シートの表面に塗布することにより粘着性を有する積層発泡シートが製造されている。しかしながら、これらの方法では、粘着層形成フィルムを発泡シートに転写する工程や、アクリル系粘着溶液を発泡シートに塗布、乾燥する工程が必要となり、製造プロセスが多い。また、アクリル系粘着剤の溶解に用いられる溶剤処理のため環境負荷の増大の問題が指摘される。
【0004】
一方、特許文献3には、共押出法を用いて発泡層と粘着層と積層することにより粘着性を有する積層発泡シートを製造する技術が開示されている。特許文献3の方法によれば、特許文献1、2に示す方法よりも、製造工程が少ない観点では、生産性に優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-185310号公報
【特許文献2】特開2010-215906号公報
【特許文献3】特開2011-6624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献3の技術では、見掛け密度の低い発泡シートを製造しようとした場合、粘着性の良好な積層発泡シートを得る観点から改善の余地があった。
【0007】
本発明の目的は、見掛け密度が低い場合にあっても良好な粘着性を発現する積層発泡シートの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、次の(1)から(10)に示す発明を要旨とする。
【0009】
(1)発泡層を形成するための発泡層形成用溶融物と、粘着層を形成するための粘着層形成用溶融物と、前記発泡層と前記粘着層とを接着する中間層を形成するための中間層形成用溶融物と、を共押出することにより、前記発泡層と前記中間層と前記粘着層とがこの順で積層された積層構造を有し見掛け密度が20kg/m以上200kg/m以下である、粘着性を有する積層発泡シートを製造する方法であって、
前記発泡層形成用溶融物が低密度ポリエチレンと物理発泡剤とを含み、
前記粘着層形成用溶融物がアクリル系熱可塑性エラストマーと揮発性可塑剤とを含み、
前記アクリル系熱可塑性エラストマーがメタクリル酸エステル系重合体からなるハードセグメントとアクリル酸エステル系重合体からなるソフトセグメントとのブロック共重合体であり、
前記アクリル系熱可塑性エラストマーのタイプAデュロメータ硬さが50以下であり、
前記粘着層形成用溶融物に含まれる前記揮発性可塑剤がアルコール及びジアルキルエーテルからなる群より選択される1種以上であり、
前記揮発性可塑剤の配合量が前記粘着層に含まれる重合体1kgに対して0.5mol以上6.5mol以下である、積層発泡シートの製造方法。
(2)前記積層発泡シートは、無架橋である、
上記(1)に記載の積層発泡シートの製造方法。
(3)前記アクリル系熱可塑性エラストマーのタイプAデュロメータ硬さが20以下である、
上記(1)又は(2)に記載の積層発泡シートの製造方法。
(4)前記アクリル系熱可塑性エラストマーの230℃、荷重2.16kgの条件にて測定されるメルトマスフローレイトが50g/10min以上300g/10min以下である、
上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の積層発泡シートの製造方法。
(5)前記低密度ポリエチレンの融点(Tm)が100℃以上130℃以下であり、前記低密度ポリエチレンの融点(Tm)と前記アクリル系熱可塑性エラストマーの前記ハードセグメントのガラス転移温度(TgH)との差[(Tm)-(TgH)]が-30℃以上20℃以下である、
上記(1)から(4)のいずれか1つに記載の積層発泡シートの製造方法。
(6)前記粘着層形成用溶融物に含まれる前記揮発性可塑剤がエタノール及びジメチルエーテルからなる群より選択される1以上である、
上記(1)から(5)のいずれか1つに記載の積層発泡シートの製造方法。
(7)前記中間層形成用溶融物が、エチレン系共重合体を含み、
前記エチレン系共重合体の構造単位としてエチレンに由来する第1の構造単位及び極性基を有するモノマーに由来する第2の構造単位を備える、
上記(1)から(6)のいずれか1つに記載の積層発泡シートの製造方法。
(8)前記エチレン系共重合体中の前記第2の構造単位の含有割合が10%以上30%以下である、
上記(7)に記載の積層発泡シートの製造方法。
(9)前記粘着層の坪量が4g/m以上20g/m以下である、
上記(1)から(8)のいずれか1つに記載の積層発泡シートの製造方法。
(10)前記中間層の坪量が0.5g/m以上10g/m以下である、
上記(1)から(9)のいずれか1つに記載の積層発泡シートの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、見掛け密度が低い場合にあっても良好な粘着性を発現する粘着層を形成することを可能とする積層発泡シートの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、積層発泡シートの製造方法の一実施例を説明するための図である。
図2図2は、積層発泡シートの一実施例を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態の一例について以下に説明する。
【0013】
なお、本発明は、以下に説明する形態等に限定されない。
【0014】
[1 積層発泡シートの製造方法]
本発明は、粘着性を有する積層発泡シート(以下、単に、積層発泡シートと称呼する)を製造する方法である。本発明にかかる製造方法により、図2に示すように、積層発泡シート1として、発泡層10と中間層11と粘着層12とをこの順に積層した構造を有し且つ見掛け密度が30kg/m以上200kg/m以下である粘着発泡シートが得られる。図2は、本発明にかかる製造方法で得られる積層発泡シートの一実施例を示す断面図である。このような積層発泡シートは、発泡層を形成するための発泡層形成用溶融物と、粘着層を形成するための粘着層形成用溶融物と、前記発泡層と前記粘着層とを接着する中間層を形成するための中間層形成用溶融物と、を共押出すること(共押出法を適用すること)により製造される。なお、発泡層形成用溶融物と、中間層形成用溶融物と、粘着層形成用溶融物を区別しない場合には、単に、溶融物と総称する。また、以下において溶融物を共押出することにより積層した構造を形成する方法は、共押出法と称呼する。
【0015】
(共押出法)
積層発泡シートを製造するための共押出法について説明する。共押出法を実施するために用いる装置は、特に限定されるものではない。上記したような発泡層と中間層と粘着層の3層が積層した構造を有する積層発泡シート形成するための装置としては、例えば図1に示すような、共押出用の押出機(共押出装置)が採用される。図1は、共押出装置の構成の一実施例を模式的に示す図である。図1の例に示す共押出装置100は、発泡層形成用押出機40と、中間層形成用押出機41と、粘着層形成用押出機42と、共押出ダイ43とを備える。共押出ダイ43に対しては、発泡層形成用押出機40の吐出口、中間層形成用押出機41の吐出口、及び粘着層形成用押出機42の吐出口が接続されている。なお、発泡層形成用押出機と、中間層形成用押出機と、粘着層形成用押出機を区別しない場合には、単に、押出機と総称する。なお、図1の例では、発泡層形成用押出機40は、直列につながる第1押出機40Aと第2押出機40Bを備えるタンデム押出機となっており、中間層形成用押出機41と、粘着層形成用押出機42は、発泡層形成用押出機40となるタンデム押出機に取り付けられた共押出ダイ43に接続されるサブ押出機となっている。
【0016】
図1の共押出装置100を用いた例では、共押出法は、それぞれの押出機の内部で形成された発泡層形成用溶融物、中間層形成用溶融物及び粘着層形成用溶融物を共押出ダイ43に導き、共押出ダイ43の押出口から同時に押し出すことで実現することができる。共押出ダイ43としては、図1の例では、環状の押出口を備えた環状ダイが用いられている。ただし、共押出ダイとして線状の押出口を備えたフラットダイを用いてもよい。
【0017】
図1の共押出装置100の例では、共押出ダイ43の押出口から発泡層形成用溶融物と中間層形成用溶融物と粘着層形成溶融物との積層体が筒状に押し出される。発泡層形成用溶融物は、共押出ダイ43の押出口から大気中に押し出されると、発泡層形成用溶融物が発泡しながら膨張することで発泡層が形成されるため、筒状積層発泡体13が形成される。筒状積層発泡体13は、発泡層と、中間層形成用溶融物で構成された層と、粘着層形成溶融物で構成された層とを積層した構造を有している。また、発泡層形成溶融物で構成された層の膨張に伴い、粘着層形成用溶融物で構成された層及び中間層形成用溶融物で構成された層が引き伸ばされる。押出口から押し出された筒状積層発泡体13は、その内側から圧縮空気等で拡幅しつつ、筒状積層発泡体の内側をマンドレル等の拡幅装置に沿わせてローラ53,54等で引き取られながら冷却されることにより、発泡層、粘着層形成用溶融物で構成された層及び中間層形成用溶融物で構成された層を固化させる。これにより発泡層に形成された気泡構造がおおむね固定される。そして、拡幅装置上で筒状積層発泡体13が切り開かれる。こうして、発泡層と中間層と粘着層とがこの順で積層された、少なくとも3層構造を有する積層発泡シート1が得られる。なお、粘着層形成用溶融物で構成された層及び中間層形成用溶融物で構成された層は、積層発泡シート1においてそれぞれ粘着層及び中間層に対応する。共押出ダイとして環状ダイを使用した場合には、例えば1000mm以上の幅を有するような、幅の広い積層発泡シートを製造しやすい。また、環状ダイを使用した場合には、例えば3mm以下の全体厚みを有するような、厚みの薄い積層発泡シートを製造しやすい。
【0018】
共押出ダイが、フラットダイである場合には、フラットダイの押出口から、発泡層形成用溶融物の層と中間層形成用溶融物の層と粘着層形成用溶融物の積層体がシート状に押し出される。押出口から積層体が大気中に押し出されると、発泡層形成用溶融物が発泡しながら膨張する。これに伴い、中間層形成用溶融物の層と粘着層形成用溶融物の層が引き伸ばされる。そして、積層発泡体を拡幅装置に沿わせて引き取りながら冷却する。これにより、積層発泡シートを得ることができる。
【0019】
共押出法によって積層発泡シートを安定して製造する観点から、発泡層形成用溶融物と中間層形成用溶融物と粘着層形成用溶融物のいずれの溶融物においても架橋剤を含まないことが好ましい。
【0020】
(発泡層形成用溶融物)
発泡形成用溶融物は、少なくとも低密度ポリエチレンと物理発泡剤とを含む。発泡層形成用溶融物は、例えば、次のような工程を用いて得ることができる。発泡層形成用押出機に低密度ポリエチレンと必要に応じて添加される気泡調整剤等の添加剤とを供給し、溶融混練する。次いで、発泡層形成用押出機に物理発泡剤を圧入する(加圧しつつ供給する)。発泡層形成用押出機の内部で溶融した低密度ポリエチレン系樹脂を含む溶融物に対して物理発泡剤が供給され、さらにその溶融物が混練されることにより、発泡層形成用溶融物が得られる。発泡層形成用溶融物に含まれる重合体を第1重合体と呼ぶ。
【0021】
(低密度ポリエチレン)
低密度ポリエチレン(PE-LD)は、長鎖分岐構造を有し、密度が910kg/m以上930kg/m未満のポリエチレンを示す。低密度ポリエチレンは、発泡層形成用溶融物における第1重合体の主成分である。低密度ポリエチレンが第1重合体の主成分であるとは、第1重合体中に占める低密度ポリエチレンの質量割合が60質量%以上であることを意味し、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、100質量%、すなわち発泡層形成用溶融物が重合体成分として低密度ポリエチレンのみを含むことが特に好ましい。第1重合体の主成分として低密度ポリエチレンを含むことにより、得られる積層発泡シートは緩衝性に優れるものとなる。
【0022】
低密度ポリエチレンの融点は、100℃以上130℃以下であることが好ましい。この場合には、押出発泡性に優れると共に、緩衝性に優れる発泡層を安定して形成することができる。かかる観点から、発泡層に含まれる低密度ポリエチレンの融点は、102℃以上125℃以下であることが好ましく、105℃以上120℃以下であることがより好ましく、108℃以上115℃以下であることがさらに好ましい。
【0023】
低密度ポリエチレンの融点は、JIS K7121:2012に規定されたプラスチックの転移温度測定方法により次に示すように測定することができる。まず、「一定の熱処理を行った後、融解温度を測定する場合」に従い、加熱速度及び冷却速度を10℃/分に設定して試験片の状態調節を行う。その後、加熱速度を10℃/分に設定して熱流束DSC(つまり、示差走査熱量測定)を行い、DSC曲線を取得する。得られたDSC曲線における吸熱ピークの頂点温度を融点とする。なお、DSC曲線に複数の吸熱ピークが現れている場合には、高温側のベースラインを基準として、最も面積の大きな融解ピークの頂点温度を融点とする。
【0024】
(物理発泡剤)
物理発泡剤としては、例えば、有機系物理発泡剤や無機系物理発泡剤を挙げることができる。有機系物理発泡剤としては、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ノルマルヘキサン、並びにイソヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタンやシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素、塩化メチルや塩化エチル等の塩化炭化水素、1,1,1,2-テトラフルオロエタンや1,1-ジフルオロエタン等のフッ化炭化水素等が挙げられる。無機系物理発泡剤としては、例えば、窒素、二酸化炭素、空気、並びに水等が挙げられる。発泡層形成用溶融物に対して用いられる物理発泡剤は、1種類の化合物で構成されてもよいし、2種類以上の化合物が含まれていてもよい。
【0025】
低密度ポリエチレンと物理発泡剤との相溶性や発泡層形成用溶融物の発泡性の観点からは、発泡層形成用溶融物に対して用いられる物理発泡剤としては、有機系物理発泡剤が好ましく、有機系物理発泡剤のなかでもノルマルブタン、イソブタンまたはこれらの混合物がより好ましい。
【0026】
物理発泡剤の配合量は、発泡剤の種類や所望する見掛け密度等に応じて適宜設定することができる。例えば、物理発泡剤が混合ブタンである場合、物理発泡剤の配合量は、発泡層形成用溶融物に含まれる第1重合体100質量部対して3質量部以上30質量部以下であることが好ましく、4質量部以上25質量部以下であることがより好ましく、5質量部以上20質量部以下であることがさらに好ましい。混合ブタンとしては、イソブタン30質量%とノルマルブタン70質量%とからなる混合物を例示することができる。
【0027】
(他の重合体)
発泡層形成用溶融物には、本発明の効果を損なわない範囲で、低密度ポリエチレンを除く他の重合体が含まれていてもよい。低密度ポリエチレンを除く他の重合体としては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(PE-LLD)、高密度ポリエチレン(PE-HD)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリスチレン系樹脂等の熱可塑性樹脂や、エチレンプロピレンゴム、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体等のエラストマー等を挙げることができる。発泡層形成用溶融物における他の重合体の含有量は、低密度ポリエチレン100質量部に対して20質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることがさらに好ましく、0質量部、つまり、発泡層形成用溶融物を構成する重合体成分が低密度ポリエチレンのみからなることが特に好ましい。発泡層形成用溶融物に、これらの「他の重合体」が含まれる場合には、これらの「他の重合体」は、第1重合体を構成する成分である。
【0028】
(添加剤)
発泡層形成用溶融物には、添加剤が含まれてもよい。添加剤としては、気泡調整剤、酸化防止剤、熱安定剤、耐候剤、紫外線吸収剤、難燃剤、充填材、抗菌剤等を挙げることができる。気泡調整剤としては、無機系気泡調整剤や有機系気泡調整剤を使用することができる。無機系気泡調整剤としては、ホウ酸亜鉛、ホウ酸マグネシウム、硼砂等のホウ酸金属塩や塩化ナトリウム、水酸化アルミニウム、タルク、ゼオライト、シリカ、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム等を挙げることができる。有機系気泡調整剤としては、リン酸-2,2-メチレンビス(4,6-tert-ブチルフェニル)ナトリウムや安息香酸ナトリウム、安息香酸アルミニウム、ステアリン酸ナトリウム等を挙げることができる。発泡層形成用溶融物に添加される気泡調整剤は、1種類の化合物でもよいし、2種類以上の化合物でもよい。発泡層形成用溶融物に含まれる添加剤の配合量は、例えば、発泡層形成用溶融物に含まれる第1重合体100質量部に対して10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、3質量部以下であることがさらに好ましい。
【0029】
(粘着層形成用溶融物)
粘着層形成用溶融物は、アクリル系熱可塑性エラストマーと揮発性可塑剤とを含む。粘着層形成用溶融物は、例えば、次のような工程を用いて得ることができる。粘着層形成用押出機にアクリル系熱可塑性エラストマーと揮発性可塑剤とを供給し、溶融混練する。これにより、粘着層形成用溶融物が得られる。粘着層形成用溶融物に含まれる重合体を第2重合体と呼ぶ。
【0030】
(アクリル系熱可塑性エラストマー)
粘着層形成用溶融物に含まれるアクリル系熱可塑性エラストマーは、粘着層形成用溶融物における第2重合体の主成分である。アクリル系熱可塑性エラストマーが第2重合体の主成分であるとは、第2重合体中に占めるアクリル系熱可塑性エラストマーの質量割合が60質量%以上であることを意味し、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは75質量%以上である。第2重合体中に占めるアクリル系熱可塑性エラストマーの質量割合の上限は特に限定されないが、100質量%であってもよく、90質量%であってもよい。
【0031】
アクリル系熱可塑性エラストマーは、メタクリル酸エステル系重合体からなるハードセグメントとアクリル酸エステル系重合体からなるソフトセグメントとのブロック共重合体である。
【0032】
ハードセグメントを形成するメタクリル酸エステル系重合体を構成するメタクリル酸エステル単量体としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル等のメタクリル酸アルキルエステルが好ましく、メタクリル酸メチルがより好ましい。前記メタクリル酸アルキルエステル単量体においてアルキル基は直鎖状であっても分岐状であってもよい。前記アクリル系熱可塑性エラストマーがメタクリル酸メチル共重合体からなるハードセグメントを有する場合には、得られる積層発泡シートの粘着層の凝集力をより高めることができる。
【0033】
ソフトセグメントを形成するアクリル酸エステル系重合体を構成するアクリル酸エステル単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル等のアクリル酸アルキルエステルが好ましく、アクリル酸ブチル及び/又はアクリル酸2-エチルヘキシルがより好ましく、アクリル酸ブチルがさらに好ましい。前記アクリル酸アルキルエステル単量体においてアルキル基は直鎖状であっても分岐状であってもよい。前記アクリル系熱可塑性エラストマーがアクリル酸ブチル共重合体からなるソフトセグメントを有する場合には、得られる積層発泡シートの粘着性をより高めることができる。
【0034】
前記ブロック共重合体は、例えば、一般式A-B-Aで表されるアクリル系トリブロック共重合体や、一般式A-Bで表されるアクリル系ジブロック共重合体が例示される。ここで、Aで表される重合体ブロックは、メタクリル酸エステル系重合体からなるハードセグメントを意味し、Bで表される共重合体ブロックは、アクリル酸エステル系重合体からなるソフトセグメントを意味する。得られる積層発泡シートの粘着性をより高める観点からはアクリル系トリブロック共重合体であることが好ましい。本明細書において、Aで表される重合体ブロックを、ハードセグメント(A)と称呼することがある。Bで表される重合体ブロックを、ソフトセグメント(B)と称呼することがある。
【0035】
前記アクリル系熱可塑性エラストマーにおけるハードセグメント(A)とソフトセグメント(B)との質量割合(質量%)は、粘着力と凝集力とをバランスよく高める観点から、(ハードセグメント(A)の質量割合):(ソフトセグメント(B)の質量割合)の比率で、5:95~50:50であることが好ましく、10:90~40:60であることがより好ましい。
【0036】
このようなアクリル系熱可塑性エラストマーの例として、メタクリル酸メチル(MMA)とアクリル酸n-ブチル(nBA)とをもちいた、MMAのポリマー(PMMA)-nBAのポリマー(PnBA)-MMAのポリマー(PMMA)のトリブロック共重合体を例示することができる。このトリブロック共重合体は、PMMAがハードセグメントとなっており、PnBAがソフトセグメントとなっている。
【0037】
アクリル系熱可塑性エラストマーの重量平均分子量は、粘着力と凝集力とのバランスの観点から、3万以上30万であることが好ましく、5万以上20万以下であることがより好ましい。アクリル系熱可塑性エラストマーの重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算分子量として測定される。
【0038】
(ガラス転移温度)
上記ハードセグメントは、そのガラス転移温度(TgH)が100℃以上140℃以下であることが好ましく、110℃以上130℃以下であることがより好ましい。また、ソフトセグメントは、そのガラス転移温度(TgS)が-40℃以上-60℃以下の範囲であることが好ましい。ガラス転移温度は、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」に記載の方法に準拠して測定される値である。具体的には、JIS K7121:1987における3.(3)に記載の状態調節を行い、状態調節後、熱流束示差走査熱量測定(DSC)により加熱速度10℃/分の条件で測定される中間点ガラス転移温度を意味する。ただし、DSC曲線において明瞭な転移温度が観察されない場合には、加熱速度を2℃/分とする。
【0039】
([(Tm)-(TgH)])
また、発泡層を構成する低密度ポリエチレンの融点(Tm)と粘着層を構成するアクリル系熱可塑性エラストマーのハードセグメントのガラス転移温度(TgH)との差値である[(Tm)-(TgH)]は、押出温度が過度に高くなることを抑制し、見掛け密度の小さな積層発泡シートをより安定して得やすい観点及び粘着層形成用溶融物に添加される揮発性可塑剤の配合量がより少ない場合でも粘着性の高い積層発泡シートを安定して得やすい観点からは、-30℃以上であることが好ましい。一方、得られる積層発泡シートの凝集力をより高める観点からは、20℃以下であることが好ましい。上記観点から、[(Tm)-(TgH)]は、-20℃以上10℃以下であることがより好ましく、-15℃以上5℃以下であることがさらに好ましく、-10℃以上0℃以下であることが特に好ましい。
【0040】
(硬度)
アクリル系熱可塑性エラストマーのタイプAデュロメータ硬さ(硬度と称呼することがある)は、50以下である。硬度は、ISO7619-1(タイプA)に準じて定められる。なお、タイプAデュロメータ硬さを測定する際には、タイプAデュロメータを測定試料の表面に押し付けて密着させてから15秒後にデュロメータの指示値を読み取ることとする。測定は23℃、相対湿度50%の雰囲気下で行う。
【0041】
後述のように、積層発泡シートを共押出法で製造する場合、粘着層形成用溶融物の層が引き伸ばされた際に、アクリル系熱可塑性エラストマーが延伸配向の影響を受けるため、粘着層の粘着性が低下しやすかった。一方、本発明においてはアクリル系熱可塑性エラストマーのタイプAデュロメータ硬さを50以下とすることにより、延伸配向の影響を緩和させ、積層発泡シートの粘着性を高めることができる。上記観点からアクリル系熱可塑性エラストマーのタイプAデュロメータ硬さは、30以下であることが好ましく、25以下であることがより好ましく、20以下であることが特に好ましい。アクリル系熱可塑性エラストマーのタイプAデュロメータ硬さの下限は特に制限がないが、概ね5である。
【0042】
(メルトマスフローレイト)
アクリル系熱可塑性エラストマーのメルトマスフローレイト(MFR)が30g/10min以上500g/10min以下であることが好ましい。アクリル系熱可塑性エラストマーのMFRは、JIS K7210-1(2014)に規定された方法に基づき、230℃、荷重2.16kgの条件にて測定される値である。
【0043】
アクリル系熱可塑性エラストマーのMFRが上記範囲内にあると、低密度ポリエチレンを主成分とする発泡層を有する積層発泡シートを共押出法で製造する場合に、低温での押出発泡が行われても、粘着層形成用溶融物が適度な流動性を示し、積層発泡シートの粘着性をより高めることができる。上記観点から、アクリル系熱可塑性エラストマーのMFRが50g/10min以上300g/10min以下であることが好ましく、55g/10min以上200g/10min以下であることが好ましい。
【0044】
(揮発性可塑剤)
粘着層形成用溶融物には、揮発性可塑剤が含まれる。揮発性可塑剤は、粘着層形成用溶融物の溶融粘度を低下させる作用を有するとともに、積層発泡シートにおける粘着層において残存しにくい、すなわち共押出後に粘着層から揮発するように、構成されている。
【0045】
粘着層形成用溶融物に含まれる揮発性可塑剤は、アルコール及びジアルキルエーテルからなる群より選択される1種以上である。これらの揮発性可塑剤は適度な極性を有しており、前記熱可塑性エラストマーを適度に可塑化し、粘着層形成用溶融物の溶融伸びを向上させることができる。そして、発泡層形成用溶融物の発泡に伴う発泡層形成用溶融物の層の膨張に追従して粘着層形成用溶融物の層が伸びやすくなる。そのため、粘着層形成用溶融物の押出温度を発泡層形成用溶融物の押出温度に近づけても、粘着層に裂け等が生じる虞を抑制することができる。その結果、粘着層が良好に形成された見掛け密度の小さな積層発泡シートを共押出法により安定して製造することが可能となる。また、得られる積層発泡シートの粘着性を向上させることができる。
【0046】
アルコールは、炭素数1以上4以下の脂肪族アルコールを例示することができる。アルコールとしては、具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール(エタノール)、n‐プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。これらの中でも、エタノールが取扱い性、安全性に優れるとともに、積層発泡シートの粘着性をより高める観点から好ましい。ジアルキルエーテルは、炭素数2以上8以下の脂肪族ジアルキルエーテルを例示することができる。ジアルキルエーテルとしては、具体的には、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、ジメチルエーテルが取扱い性、安全性等の観点から好ましい。粘着層形成用溶融物に添加される揮発性可塑剤は、上記したような化合物の1種類でもよいし、2種類以上の組み合わせでもよい。
【0047】
揮発性可塑剤の沸点は、120℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましい。このような範囲の沸点を有する揮発性可塑剤は、共押出後の粘着層から自然に揮散しやすく、粘着層から除去されやすい。なお、揮発性可塑剤の沸点の下限は、概ね-50℃であることが好ましい。
【0048】
(揮発性可塑剤の配合量)
粘着層形成用溶融物においては、揮発性可塑剤の配合量が粘着層形成用溶融物に含まれる第2重合体1kgに対して0.5mol以上6.5mol以下である。粘着層形成用溶融物に含まれる第2重合体は、粘着層形成用溶融物に含まれる全ての重合体を意味する。例えば、粘着層形成用溶融物が重合体として前記アクリル系熱可塑エラストマーと粘着付与樹脂とを含む場合には、揮発性可塑剤の配合量は該アクリル系熱可塑エラストマーと該粘着付与樹脂との合計1kgに対して0.5mol以上6.5mol以下である。揮発性可塑剤の配合量がこの範囲にあることで、粘着層の粘着力を十分に確保することが容易となる。粘着層形成用溶融物に添加される揮発性可塑剤の配合量が過剰であると、可塑剤によって粘着層が発泡した状態となりやすく、粘着層と接着対象との接触面積の低下を引き起こして粘着性が低下する虞がある。粘着層形成用溶融物に添加される揮発性可塑剤の配合量が過少であると、粘着層形成用溶融物の層が引き伸ばされた際に、アクリル系熱可塑性エラストマーの延伸配向の影響を過度に受けるため粘着層が硬くなりやすく、得られる積層発泡シートの粘着性が低下する虞がある。また、粘着層に裂けが生じやすく、良好な積層発泡シートを得ることができない虞がある。
【0049】
粘着層の粘着力を上記したように十分に確保する観点からは、揮発性可塑剤の配合量が粘着層形成用溶融物に含まれる第2重合体1kgに対して1.0mol以上6.0mol以下であることが好ましく、2.0mol以上5.0mol以下であることがより好ましい。
【0050】
(他の重合体)
粘着層形成用溶融物には、本発明の効果を損なわない範囲で、前記アクリル系熱可塑性エラストマーを除く他の重合体が含まれていてもよい。前記アクリル系熱可塑性エラストマーを除く他の重合体としては、例えば、後述する粘着付与樹脂や、低密度ポリエチレン(PE-LD)、直鎖状低密度ポリエチレン(PE-LLD)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等の熱可塑性樹脂、オレフィン系熱可塑エラストマー等のエラストマー等を挙げることができる。粘着層における他の重合体の含有量は、前記アクリル系熱可塑性エラストマー100質量部に対して40質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましく、20質量部以下であることがさらに好ましく、10質量部以下であることが特に好ましい。粘着層形成用溶融物にこれらの「他の重合体」が含まれる場合、これらの「他の重合体」は、第2重合体を構成する成分である。
【0051】
前記粘着付与樹脂としては、ロジン樹脂、ロジンエステル樹脂、水素添加ロジン樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、石油系樹脂、キシレン樹脂、スチレン樹脂などを例示することができる。粘着付与樹脂の配合量は、たとえばアクリル系熱可塑性エラストマー100質量部に対し、1~40質量部であることが好ましく、5~35質量部であることがさらに好ましく、10~30質量部であることが特に好ましい
【0052】
(添加剤)
粘着層形成用溶融物には、添加剤が含まれてもよい。添加剤としては、酸化防止剤、熱安定剤、耐候剤、紫外線吸収剤、難燃剤、充填材、抗菌剤、滑剤等を挙げることができる。粘着層形成用溶融物に含まれる添加剤の配合量は、例えば、粘着層形成用溶融物に含まれる重合体100質量部に対して10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、3質量部以下であることがさらに好ましい。
【0053】
(中間層形成用溶融物)
中間層形成用溶融物は、少なくとも発泡層と粘着層とを接着する重合体を含むものであれば特に限定されない。中間層形成用溶融物は、例えば、次のような工程を用いて得ることができる。中間層形成用押出機に重合体を供給し、溶融混練する。これにより、中間層形成用溶融物が得られる。中間層形成用溶融物に含まれる重合体を第3重合体と呼ぶ。第3重合体はエチレン系共重合体を含むことが好ましく、第3重合体中に占めるエチレン系共重合体の質量割合が50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。
【0054】
エチレン系共重合体は、その構造単位としてエチレンに由来する構造単位(第1の構造単位)及び極性基を有するモノマーに由来する構造単位(第2の構造単位)を備えることが好ましい。極性基を有するモノマーとしては、酢酸ビニル等を例示することができる。構造単位は、重合体を構成する分子構造におけるモノマーに対応する構造部分を示す。このような、エチレン系共重合体としては、エチレンと極性基を有するモノマーとの共重合体や、エチレンと極性基を有するモノマーとこれらのモノマー以外の他のモノマーとの共重合体などを例示することができる。
【0055】
エチレン系共重合体としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)やエチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン-アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸エチル共重合体(EEMA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン-アクリル酸ブチル共重合体(EBA)等が挙げられる。中間層が粘着層及び発泡層の両層に対して剥離されにくい層とする観点(中間層と粘着層との接着性及び中間層と発泡層との接着性を高める観点)からは、エチレン系共重合体は、エチレン-酢酸ビニル共重合体であることが好ましい。
【0056】
エチレン系共重合体においては、極性基を有するモノマーに由来する構造単位の含有割合(第2の構造単位の含有割合)は10質量%以上35質量%以下であることが好ましい。エチレン系共重合体において極性基を有するモノマーに由来する構造単位の含有割合が10質量%以上35質量%以下であることで、積層発泡シートにおいて中間層と粘着層との接着性及び中間層と発泡層との接着性をより向上させることができる。この観点から、エチレン系共重合体において極性基を有するモノマーに由来する構造単位の含有割合が10質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。
【0057】
エチレン系重合体の融点は、見掛け密度の小さい積層発泡シートをより安定して製造する観点からは、40℃以上130℃以下であることが好ましく、45℃以上110℃以下であることがより好ましく、50℃以上105℃以下であることがさらに好ましく、55℃以上90℃以下であることが特に好ましい。エチレン系重合体の融点は、発泡層を構成する低密度ポリエチレンの融点と同様の方法により測定される。
【0058】
エチレン系共重合体としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)やエチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン-アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸エチル共重合体(EEMA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン-アクリル酸ブチル共重合体(EBA)等が挙げられる。中間層が粘着層及び発泡層の両層に対して剥離されにくい層とする観点(中間層と粘着層との接着性及び中間層と発泡層との接着性を高める観点)からは、エチレン系共重合体は、エチレン-酢酸ビニル共重合体であることが好ましい。
【0059】
(揮発性可塑剤)
中間層形成用溶融物においては、粘着層形成用溶融物と同様に、揮発性可塑剤が添加されてもよい。中間層形成用溶融物に添加できる揮発性可塑剤としては、上記した粘着層形成用溶融物に添加される揮発性可塑剤と同様のもののほか、炭素数3以上5以下の飽和炭化水素等を用いることができる。中間層形成用溶融物に揮発性可塑剤が添加されている場合、中間層形成用溶融物の溶融粘度を低下させることができる。そのため、中間層形成用溶融物に揮発性可塑剤が添加されていることで、中間層形成用溶融物の押出樹脂温度を高めることなく発泡層形成用溶融物に追従することができ、見掛け密度の低い積層発泡シートをより安定して製造することができる。中間層形成用溶融物に添加される揮発性可塑剤は炭素数3以上5以下の飽和炭化水素が好ましい。中間層形成用溶融物における揮発性可塑剤の配合量は、中間層形成用溶融物に含まれる第3重合体1kgに対して1.0mol以上6.0mol以下であることが好ましく、2.0mоl以上5.0mоl以下であることがより好ましい。
【0060】
[2 積層発泡シート]
上述した製造方法により、例えば図2に示すような積層発泡シート1が得られる。積層発泡シート1は、上述したように発泡層10と中間層11と粘着層12とをこの順に積層した構造を有する粘着発泡シートである。少なくとも粘着層は積層発泡シートの最表面に位置している。
【0061】
(発泡層)
発泡層は、発泡層形成用溶融物の層を発泡させた構造を有し、発泡層形成用溶融物に含まれる重合体(第1重合体)から構成される。発泡層においては、低密度ポリエチレンが、発泡層の主成分である。低密度ポリエチレンが発泡層の主成分であるとは、発泡層中に占める低密度ポリエチレンの質量割合が60質量%以上であることを意味し、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上である。発泡層中に占める低密度ポリエチレンの質量割合の上限は特に限定されないが、概ね95質量%である。
【0062】
なお、上記で説明した製造方法の例では、図2に示すように、積層発泡シート1は、発泡層10の一方の面10A上に、順に、中間層11、粘着層12を積層した構造(多層構造)を形成しているが、一方の面に背反する他方の面(図2においては、中間層11に向かい合うほうの面10Aとは逆側の面10B)に、発泡層10とは異なる他の層が積層されてもよい。他の層は、上述した中間層11や粘着層12でもよいし、中間層11や粘着層12とは異なる層でもよい。また、後述するように、中間層は、発泡層と粘着層との間に位置し、発泡層と粘着層とを接着することができれば多層構造を有していてもよい。
【0063】
(粘着層)
粘着層は、粘着層形成用溶融物に含まれる重合体(第2重合体)から構成される。粘着層においては、アクリル系熱可塑性エラストマーが、粘着層の主成分である。アクリル系熱可塑性エラストマーが粘着層の主成分であるとは、粘着層中に占めるアクリル系熱可塑性エラストマーの質量割合が60質量%以上であることを意味し、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは75質量%以上である。粘着層中に占めるアクリル系熱可塑性エラストマーの質量割合の上限は特に限定されないが、概ね90質量%である。
【0064】
(粘着層の坪量)
積層発泡シートにおいては、粘着層の坪量が2g/m以上であることが好ましい。この場合には、粘着層が十分な粘着性を示すことができる。この観点から、粘着層の坪量は3g/m以上であることがより好ましく、4g/m以上であることがさらに好ましく、5g/以上であることが特に好ましい。また、積層発泡シートにおいては、粘着層の坪量が25g/m以下であることが好ましい。この場合には、粘着層が発泡して気泡構造が形成されることが抑制されやすく、粘着性の低下が生じる虞をより確実に低減することができる。この観点から、粘着層の坪量は20g/m以下であることがより好ましく、15g/m以下であることがさらに好ましく、10g/m以下であることが特に好ましい。なお、粘着層が積層発泡シートの両面側に積層されている場合には、粘着層の坪量は、片面当たりの坪量を意味する。
【0065】
(坪量の測定)
粘着層の坪量の測定方法としては、例えば、次のような方法を挙げることができる。まず、粘着層の平均厚みを測定する。粘着層の平均厚みの単位を換算した後、粘着層の密度(g/m)を乗じることにより粘着層の坪量(単位:g/m)を得ることができる。粘着層の平均厚みの測定方法は以下の通りである。まず、積層発泡シートを押出方向に垂直な面で切断する。このとき形成される切断面において、切断面の長手方向(つまり、押出方向及び厚み方向の両方に対して直角な方向)の長さを11等分するようにして10か所の測定位置を設定する。顕微鏡を用いてこれらの測定位置における積層発泡シートの断面を観察し、各測定位置における粘着層の厚みを測定する。これらの厚みの算術平均値を、粘着層の平均厚み(単位:μm)とする。
【0066】
また、粘着層の坪量は、本発明にかかる製造方法の実施の際に用いられる溶融物の吐出量等の条件によっても特定することができる。すなわち、粘着層形成用溶融物の吐出量をX1(kg/時)、積層発泡シートの幅(筒状積層発泡体を切り開いて積層発泡シートを形成する場合には、筒状積層発泡体の全周長さを示すものとする)W(単位:m)、筒状積層発泡体の引取速度L(m/時)を用いて、下記(1)式に示す数式より片面当たりの粘着層の坪量(kg/m)を求めることもできる。なお、坪量は、g/mに単位換算されてもよい。
【0067】
【数1】
【0068】
(中間層)
中間層は、発泡層と粘着層との間に介在しており、発泡層と粘着層とを接着する。中間層は、中間層形成用溶融物に含まれる重合体(第3重合体)から構成される。中間層は、発泡層と粘着層との間に位置し、発泡層と粘着層とを接着することができれば多層構造を有していてもよい。例えば、中間層は互いに組成の異なる溶融物から形成される第1中間層と第2中間層との積層体として構成されていてもよい。このような積層発泡シートは、例えば以下の方法により製造することができる。具体的には、発泡層を形成するための発泡層形成用溶融物と、粘着層を形成するための粘着層形成用溶融物と、前記第1中間層を形成するための第1中間層形成用溶融物と、前記第2中間層を形成するための第2中間層形成用溶融物と、を共押出することにより、前記発泡層と前記第1中間層と前記第2中間層と前記粘着層とがこの順で積層された積層発泡シートを製造することができる。
【0069】
(中間層の坪量)
積層発泡シートにおいては、中間層の坪量が0.5g/m以上10g/m以下であることが好ましい。中間層の坪量が、この範囲内の値であると発泡層と粘着層との剥離生じる虞をより確実に低減することができる。この観点から、中間層の坪量は1g/m以上9g/m以下であることがより好ましく、3g/m以上8g/m以下であることがさらに好ましい。なお、中間層が積層発泡シートの両面側に積層されている場合には、中間層の坪量は、片面当たりの坪量を意味する。
【0070】
(坪量の測定)
中間層の坪量の測定方法としては、上述した粘着層の坪量の測定方法と同様の方法を用いることができる。
【0071】
(無架橋)
本発明にかかる製造方法により得られる積層発泡シートは、無架橋であることが好適である。積層発泡シートが無架橋であるとは、発泡層と中間層と粘着層のそれぞれが、いずれも無架橋であることを示すものとする。積層発泡シートが無架橋であるとは、具体的には、積層発泡シートの熱キシレン抽出法による不溶分が5質量%以下であることをいう。積層発泡シートのリサイクルがより容易になる観点及び得られる積層発泡シートの緩衝性をより高める観点から、積層発泡シートの熱キシレン抽出法による不溶分の割合は、3質量%以下であることが好ましく、0であることが最も好ましい。
【0072】
(熱キシレン抽出法)
積層発泡シートの熱キシレン抽出法によるキシレン不溶分(質量%)は、積層発泡シートから約1g(その正確な重量をWp(g)とする)の試験片を切り出して150mLの丸底フラスコに入れ、100mLのキシレンを加え、マントルヒーターで加熱して6時間還流させた後、溶け残った残渣を100メッシュの金網で濾過して分離し、80℃の減圧乾燥器で8時間以上乾燥し、この際に得られた乾燥物重量の重量Wm(g)を測定し、下記式(2)に示す数式により求められる。なお、残渣の濾過は金網で速やかに行うことが好ましい。
【0073】
【数2】
【0074】
(見掛け密度)
本発明にかかる製造方法により得られる積層発泡シートとして、その見掛け密度が20kg/m以上200kg/m以下であるような見掛けの低い粘着発泡シートが得られる。軽量性、緩衝性等と機械強度とのバランスの観点から、積層発泡シートの見掛け密度は30kg/m以上150kg/m以下であることが好ましく、45kg/m以上100kg/m以下であることがより好ましい。
【0075】
(見掛け密度の算出方法)
積層発泡シートの見掛け密度(kg/m)は、積層発泡シートの坪量を積層発泡シートの全体厚みで除した後、単位をkg/mに換算することにより算出することができる。なお、積層発泡シートの全体厚みと坪量は、次に示す測定方法を用いて定めることができる。
【0076】
(積層発泡シートの全体厚み)
積層発泡シートを押出方向に垂直な面で切断して切断面を得る。この切断面において厚みの測定位置として10か所選択した。これらの測定位置は、切断面の長手方向(積層発泡シートを押出方向に直交及び積層発泡シートを厚み方向に直交する方向)における間隔が等しくなるように定められた。それぞれの測定位置での厚みを測定した。それぞれの測定位置で測定された厚みの算術平均値を算出する。この算出された値が、積層発泡シートの全体厚みとされる。
【0077】
(積層発泡シートの坪量)
積層発泡シートの坪量は、積層発泡シート1m当たりの質量(単位:g/m)として次のようにして定められる。積層発泡シートから一辺25mmの寸法で正方形状に試験片が切り出される。そして試験片の質量(g)が測定される。試験片の寸法と質量に基づき、積層発泡シートの坪量が算出される。
【0078】
[3 作用及び効果]
これまでの粘着性を有する積層発泡シートを製造する技術には、発泡シートに例えばアクリル系粘着溶液等の粘着溶液を塗布する工程や、粘着溶液を乾燥する工程が必要とされる(例えば、上述した特許文献1、2)。そのため、製造プロセスが多いことが問題となっており、またアクリル系粘着剤の溶解に用いられる溶剤処理のため環境負荷の増大の問題もある。そこで、共押出法を用いて発泡層と粘着層と積層することにより粘着性を有する積層発泡シートを製造する技術が提案されている(例えば、上述した特許文献3)。しかしながら、これまでの共押出法を用いて製造される積層発泡シートは、発泡倍率が1.1倍から3.0倍程度と低いものであり、高い見掛け密度を有するものにとどまっていた。
【0079】
本発明においては、従来よりも共押出発泡時の押出樹脂温度を低くすることにより、高い発泡倍率とした場合の気泡構造の破壊を防止することが可能となった。一方、押出樹脂温度を低く設定すると、粘着層形成用溶融物の温度が低い状態で引きのばされてしまい、得られる積層発泡シートにおいて、粘着層の粘着性が低下しやすくなり、また、積層発泡シートを製造する際に粘着層に裂けを生じやすくなるという、新たな課題を見出した。特に、見掛け密度の低い積層発泡シートを製造する場合には、発泡層形成用溶融物の層の発泡と拡幅に伴い粘着層形成用溶融物の層がより多く引き延ばされるようになるため、これらの課題はより顕著となる。
【0080】
粘着性を有する積層発泡シートとして緩衝性を向上させるために、発泡層を構成する基材樹脂として低密度ポリエチレンを好適に採用することができる。一般に、共押出法で見掛け密度の低い積層発泡シートを製造する場合、溶融物の押出樹脂温度は、発泡層の基材樹脂の融点に近い温度に設定されることが好適とされる。低密度ポリエチレンの融点は、高密度ポリエチレンやポリプロピレン系樹脂等の融点に比べて比較的低い。
【0081】
したがって、共押出を用いて粘着性を有する積層発泡シートを製造する方法においては、発泡層を構成する基材樹脂が低密度ポリエチレンのように融点の比較的低い樹脂である場合にあっても粘着性を有する積層発泡シートの低密度化を可能とするためには、押出時の樹脂温度が低くても粘着層に裂けを生じにくく且つ粘着性の粘着性を確保できることが要請される。
【0082】
本発明にかかる製造方法によれば、粘着層が特定のアクリル系熱可塑性エラストマーを含み、粘着層形成用溶融物に特定の揮発性可塑剤が特定の範囲で添加されているため、共押出法を用いて粘着性を有する積層発泡シートを製造する際にかかる溶融物の延伸配向に起因する粘着層の残留応力を低減することができ、さらには、低い押出温度で共押出が実施されても、粘着層の粘着性を確保することができる。したがって、緩衝性に優れるとともに、低密度でも粘着層に裂けがなく且つ十分な粘着性を有する積層発泡シートを安定して得ることができる。
【0083】
なお、共押出による製造方法で得られる積層発泡シートは、粘着層が前記特定のアクリル系熱可塑性エラストマーから構成されている。前記熱可塑性エラストマーは、上述したようにソフトセグメントとハードセグメントを有するブロック共重合体であり、発泡シートの粘着層においてハードセグメントがドメインと呼ばれる物理架橋による、いわゆる疑似架橋構造を形成するため、粘着層は凝集力に優れた層となると考えられる。また、ソフトセグメントが常温条件下で粘着性を示すため、粘着層が優れた粘着力を示すものと考えられる。
【0084】
本発明にかかる製造方法においては、粘着層形成用溶融物には可塑剤として特定の揮発性可塑剤が特定の範囲で添加されている。可塑剤が揮発性可塑剤であることで、粘着層を形成した後において、粘着層に可塑剤が残留することがなく、粘着対象を汚染する虞を低減することができる。また、粘着層形成用溶融物に含まれるアクリル系熱可塑性エラストマーが極性を有するため、可塑剤としては、極性を有するとともに、アクリル系熱可塑性エラストマーとの相溶性を有するものが選ばれる。ただし、アクリル系熱可塑性エラストマーとの相溶性が高すぎると、可塑剤のわずかな添加量の変化で粘着層形成用溶融物の粘度が大きく変動して安定して積層発泡シートを製造することができない虞がある。一方、アクリル系熱可塑性エラストマーとの相溶性が低すぎると、粘着層形成用溶融物を十分に可塑化することができず、粘着性が低下する虞がある。これらの観点を考慮し、揮発性可塑剤として、アルコール及びジアルキルエーテルからなる群より選択される1種以上が用いられる。
【0085】
アクリル系樹脂を粘着層として用いる場合、一般的には、粘着層の凝集力を担保して良好な粘着性を発揮させるために、アクリル系樹脂を架橋させる。しかしながら、架橋構造を有する粘着層を共押出法により形成させることは難しい。本発明にかかる製造方法では、特定のアクリル系熱可塑性エラストマーを用いているため、得られる積層発泡シートの粘着層は、使用時においてハードセグメントが疑似架橋を形成するため、架橋剤等を用いることなく、十分な凝集力を発現し、良好な粘着性を発揮できる。さらに、被包装物への粘着剤成分の移行が抑制されやすくなる。なお、上記疑似架橋は押出機内での溶融混練により溶融して塑性変形可能となるため、共押出法により粘着層を形成させることができる。また、本発明にかかる製造方法で得られる積層発泡シートが無架橋である場合、積層発泡シートのリサイクル性が向上する。このように、本発明にかかる製造方法では、粘着層を形成する樹脂として所定の熱可塑性エラストマーが使用されるため、共押出法により粘着層を形成でき、また、粘着層に十分な粘着性を発現させることができるとともに、常温において粘着層の凝集力を担保することができ、且つ、粘着層を無架橋とすることができることに伴いリサイクル性を向上させることもできる。
【0086】
また、本発明にかかる製造方法によれば、粘着層と発泡層との間に中間層が形成されており、粘着層と中間層との剥離が抑制される。
【0087】
[4 適用例]
本発明にかかる製造方法を用いて製造された粘着性を有する積層発泡シートは、テープ等の粘着用の部材を別途用いることなく粘着対象に貼り付けることができる。また、低密度ポリエチレンを基材樹脂とする発泡層を有するものであるため、柔軟性が高く、衝撃吸収性に優れているため緩衝材や簡易養生分野等の養生シート等、広範な用途で使用することができる。
【0088】
次に、具体的な実施例を用いて更に詳細に説明する。
【実施例0089】
(共押出装置)
共押出装置として、第一押出機と第二押出機とを連結したタンデム押出機と、2つのサブ押出機と、タンデム押出機とサブ押出機のいずれの押出機の吐出口も接続された共押出ダイとを備えたものが用いられた。タンデム押出機は、発泡層形成用押出機であり、2つの押出機は、粘着層形成用押出機と中間層形成用押出機である。共押出ダイは環状の押出口を有する環状ダイである。
【0090】
(粘着層を構成する樹脂)
積層発泡シートの粘着層を構成する樹脂として、表1に示すエラストマーが用いられた。各エラストマーについて、表1の「識別用表記」欄に示す記載を用いて表記する。また、各エラストマーのうちLA3320、LA2330、LA2140、及びLA2250で識別されるエラストマーは、いずれもアクリル系熱可塑性エラストマーであり、メタクリル酸メチルをハードセグメントとしアクリル酸ブチルをソフトセグメントとするA-B-A型のトリブロック共重合体となっている。これらのアクリル系熱可塑性エラストマーは、いずれも粘着剤としての用途が推奨されたグレードとして市販されている。D-1320P、SIS5403及びTR2827で識別されるエラストマーは、いずれもスチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)である。In-9507で識別されるエラストマーは、オレフィン系熱可塑性エラストマーである。
【0091】
表1において「クラリティ」、「DYNARON」、及び「Infuse」は、商標である。
【0092】
表1において「硬度」の値は、タイプAデュロメータ硬さを示す値である。硬度は、ISO7619-1(タイプA)に準じて測定された。具体的には、タイプAデュロメータを測定試料(試験片)の表面に押し付けて密着させてから15秒後にデュロメータの指示値を読み取った。試験片は、縦30mm、横30mm、厚み10mmの型にペレット状の原料(エラストマー)を入れ、ヒートプレスすることにより作製した。測定は23℃、相対湿度50%の雰囲気下で行った。また、表1の「MFR」は、JIS K7210-1(2014)に規定された方法に基づき、230℃、荷重2.16kgの条件で測定されたメルトマスフローレイトの値(g/10min)である。ただし、オレフィン系熱可塑性エラストマーのメルトマスフローレイトは、190℃、荷重2.16kgの条件で測定された値である。また、表1の「ガラス転移温度(TgS)」は、アクリル系熱可塑性エラストマーを構成するソフトセグメントのガラス転移温度であり、「ガラス転移温度(TgH)」は、アクリル系熱可塑性エラストマーを構成するハードセグメントのガラス転移温度である。ガラス転移温度は、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」に記載の方法に準拠し、熱流束示差走査熱量測定(DSC)により測定される中間点ガラス転移温度である。ただし、ガラス転移温度の測定においては、加熱速度を2℃/分とした。
【0093】
(発泡層及び中間層のそれぞれを構成する樹脂)
発泡層を構成する基材樹脂としては、低密度ポリエチレン(PE-LD)(ENEOS NUC社製、グレード:NUC-8321)を準備した。準備されたPE-LD(ENEOS NUC社製、グレード:NUC-8321)を記載する場合には、8321を識別用の記載として用いることがある。低密度ポリエチレン(NUC-8321)は、密度922kg/m、融点112℃、MFR(190℃、荷重2.16kg)2.4g/10分である。中間層を構成する基材樹脂としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)(三井・ダウポリケミカル社製、商品名:EV250)、及びEVA(三井・ダウポリケミカル社製、商品名:EV150)を準備した。次のような樹脂が準備された。準備されたEVA(三井・ダウポリケミカル社製、商品名:EV250)、及びEVA(三井・ダウポリケミカル社製、商品名:EV150)は、それぞれEV250、EV150を識別用の記載として用いる。エチレン-酢酸ビニル共重合体(EV250)は、融点71℃であり、MFR(190℃、荷重2.16kg)が15g/10分である。エチレン-酢酸ビニル共重合体(EV150)は、融点61℃であり、MFR(190℃、荷重2.16kg)が30g/10分である。
【0094】
(変性率)
EV250とEV150は、変性率が互いに異なっている。この変性率は、EVA100質量%における酢酸ビニル成分の含有量(質量%)を示す。EV250とEV150の変性率は、表2の例えば実施例1と実施例5に明記されている。
【0095】
(可塑剤)
粘着層形成用溶融物に添加される可塑剤として、ジメチルエーテル(DME)、エタノール(EtOH)、ポリエチレングリコール(三洋化成工業社製、商品名PEG300)、混合ブタン(m-Bu)、及び水を準備した。混合ブタンは、ノルマルブタン70質量%とイソブタン30質量%とからなる。上記した可塑剤のうち、ジメチルエーテル(DME)、エタノール(EtOH)が、各実施例に使用された本発明にかかる揮発性可塑剤に対応する。なお、表3において、ポリエチレングリコール(三洋化成工業社製、商品名PEG300)は、PEG300と表記する。
【0096】
【表1】
【0097】
実施例1から14
実施例1から14のそれぞれについて次に示すように積層発泡シートを製造した。
【0098】
(積層発泡シートの製造)
表1、表2に示す発泡層を形成する基材樹脂となる低密度ポリエチレン(LDPE8321)をタンデム押出機の第一押出機に供給し、さらに第一押出機内で加熱溶融し混練して樹脂溶融物を形成した。このとき、樹脂溶融物を形成する際には、気泡調整剤も第一押出機に投入された。気泡調整剤の添加量は、100質量部の低密度ポリエチレンに対して1質量部の割合であった。気泡調整剤としては、クエン酸と重曹との混合物(大日精化工業株式会社製「ファインセルマスターPO217K」)が用いられた。なお、「ファインセルマスター」は、商標である。
【0099】
第一押出機内で溶融した低密度ポリエチレンと気泡調整剤との混合物(樹脂溶融物)に物理発泡剤を加圧しながら供給し、第一押出機内でさらに混練した。以上により、発泡層形成用溶融物を得た。なお、物理発泡剤としては、ノルマルブタン70質量%とイソブタン30質量%とからなる混合ブタンを使用した。物理発泡剤の配合量は、表2に示す。表2において、物理発泡剤欄における「m-Bu」は上述した混合ブタンを示す。なお、このことは表3についても同様である。また、表2における粘着層及び中間層の揮発性可塑剤欄、表3における粘着層の可塑剤欄、中間層の揮発性可塑剤欄において「m-Bu」が記載されている場合についても、m-Buは上述した混合ブタンを示す。なお、表2の各実施例では、粘着層及び中間層の形成の際に用いられる可塑剤として揮発性可塑剤となっているため、可塑剤の欄について揮発性可塑剤と欄の名称を表記している。表3の各比較例では、中間層の形成の際に用いられる可塑剤として揮発性可塑剤となっているため、中間層に関する可塑剤の欄について揮発性可塑剤と欄の名称を表記している。また、表3について粘着層の欄に関して、表2の揮発性可塑剤欄に対応する欄について可塑剤と欄の名称を表記する。
【0100】
第一押出機内で得られた発泡層形成用溶融物は、第二押出機に移送され、第二押出機において所定の温度に調整された。
【0101】
粘着層形成用押出機に対しては、粘着層を形成する表1、表2に示すアクリル系熱可塑性エラストマーが供給された。また、粘着層形成用押出機に対しては表2に示す可塑剤(実施例1から14では揮発性可塑剤)が表2に示す配合量で供給された。粘着層形成用押出機の内部においてこれらを混練することにより、粘着層形成用溶融物を得た。
【0102】
中間層形成用押出機に対しては、中間層を形成する表2に示す樹脂(EV250又はEV150)が供給された。また、中間層形成用押出機に対しては表2に示す揮発性可塑剤が表2に示す配合量で供給された。揮発性可塑剤としては、m-Buが用いられた。中間層形成用溶融物に添加されるm-Buは、粘着層形成用溶融物に添加される可塑剤で説明したm-Buと同様に、ノルマルブタン70質量%とイソブタン30質量%とからなる。中間層形成用押出機の内部においてこれらを混練することにより、中間層形成用溶融物を得た。なお、実施例14については中間層形成溶融物に対して揮発性可塑剤は添加されなかった。
【0103】
発泡層形成用押出機、粘着層形成用押出機及び中間層形成用押出機の各押出機で得られたそれぞれの溶融物は、共押出ダイに供給される。このとき、共押出ダイの内部で、内側から順に、発泡層形成用溶融物の層、中間層形成用溶融物の層、および粘着層形成用溶融物の層が積層されるようにそれぞれの溶融物が合流する。そして、発泡層形成用溶融物、粘着層形成用溶融物および粘着層形成用溶融物が、共押出ダイの押出口から吐出されることで、筒状積層発泡体が得られた。なお、発泡層形成用溶融物、中間層形成用溶融物、および粘着層形成用溶融物が吐出される際の樹脂温度(押出樹脂温度)は、表2に示すとおりである。得られた筒状積層発泡体については、その内側にマンドレルを挿入し筒状積層発泡体をマンドレルに沿って引き取りつつ冷却した。また、このとき筒状積層発泡体が切り開かれ、実施例1から14のそれぞれについて積層発泡シートが得られた。
【0104】
実施例1から14のそれぞれで得られる積層発泡シートは、いずれも発泡層と、中間層と、粘着層とをこの順に積層した3層の積層構造を有する積層発泡シートである。実施例1から14により得られた積層発泡シートについて、熱キシレン抽出法による不溶分の割合(質量%)は、0であった。すなわち、発泡層と中間層と粘着層は、いずれも無架橋である。
【0105】
実施例1から実施例14のそれぞれで得られる積層発泡シートについて、その全厚み(mm)が測定された。測定方法は、上述した方法を用いられた。結果を、表2に示す。また、表2においては、積層発泡シートの発泡層、中間層及び粘着層の坪量が記載されている。各層の坪量は、積層発泡シートの製造工程における、溶融物の吐出量(吐出速度)、積層発泡シートの引取速度及び積層発泡シートの幅に基づき以下の式(3)、(4)及び(5)により求められた坪量の値(kg/m)をg/mに単位換算した。なお、式(5)は、上述した式(1)と同じであるが、説明の便宜上、下記にも示す。表2においては、積層発泡シートの全体坪量も記載されている。積層発泡シートの全体坪量は、発泡層、中間層及び粘着層の坪量の合計である。また、積層発泡シートの全体坪量と全厚みとから積層発泡シートの見掛け密度を求めた。
【0106】
【数3】
【数4】
【数5】
【0107】
上記式(3)、式(4)及び式(5)において、X2は発泡層形成用溶融物の吐出量(単位:kg/時)、X3は中間層形成用溶融物の吐出量、X1は粘着層形成用溶融物の吐出量、Lは積層発泡シートの引取速度(単位:m/時)、Wは積層発泡シートの幅(単位:m)を意味する。
【0108】
実施例1から実施例14のそれぞれで得られる積層発泡シートについて、次に示すように、その粘着力を測定した。
【0109】
(粘着力)
積層発泡シートの粘着力は、剥離強度を測定することで定めることができる。剥離強度(N/25mm)は、JISZ0237に準拠した試験(90°剥離試験)に基づき定めることができる。具体的には、得られる積層発泡シートの中央部付近から幅:25mm、長さ:100mm、厚み:全体厚みの矩形状に打ち抜いて試験片を作製した。次いで粘着層が形成されている側の表面を粘着対象であるステンレス板(SUS304板)の表面に貼り付けた。貼り付けは、23℃の条件下で2kgのローラーを600mm/分の速度で2往復して圧着することにより行った。その後、1分以内に引張試験機にて試験片を90°剥離させ、その剥離強度(N/25mm)を求めた。引張試験速度は300mm/分とした。結果を表2に示す。積層発泡シートの粘着力は、次に示す基準で評価された。実施例1から14のいずれについても、積層発泡シートの粘着力が発現していることが認められた。
【0110】
(粘着力の評価基準)
◎(きわめて良好): 剥離強度が、0.5N/25mm以上である。
〇(良好): 剥離強度が、0.1N/25mm以上0.5N/25mm未満である。
×(不良): 剥離強度が、0.1N/25mm未満である。
【0111】
また、実施例1から実施例14のそれぞれで得られる積層発泡シートについて、粘着層の成膜状況を評価した。粘着層の成膜状況の評価は、次に示す、粘着層の裂け、粘着層の発泡、及び粘着層の剥離の評価として示される。結果を表2に示す。実施例1から14のいずれについても、発泡層の裂け、発泡層の発泡、及び発泡層の剥離のいずれについても良好またはきわめて良好であると評価された。
【0112】
(粘着層の裂け)
得られた積層発泡シートを目視にて観察し、粘着層の裂けの程度を評価した。具体的には、積層発泡シートの幅方向中央部の任意の位置において、縦20mm×横20mmの正方形の観察領域を決め、当該観察領域中に観察された裂けの数を数えた。この観察を押出方向に沿って等間隔に定めた5箇所の観察領域において行い、観察された裂けの数を算術平均することにより粘着層400mm当たりの裂けの数を求めた。粘着層の裂けの程度は、この裂けの数の値をもとに、以下の基準で評価した。なお、粘着層の裂けとは、粘着層に形成されている長さ0.5mm以上の穴(貫通穴であるか非貫通穴であるかは問わない)を意味する。
【0113】
(粘着層の裂けの程度の評価基準)
◎(きわめて良好): 粘着層400mm当たりの裂けの数が1個未満である。
〇(良好): 粘着層400mm当たりの裂けの数が1個以上5個未満である。
×(不良): 粘着層400mm当たりの裂けの数が5個以上である。
【0114】
(粘着層の発泡)
走査型電子顕微鏡(SEM)「HITACHI製Miniscope TM-1000」にて、倍率100倍にて粘着層の表面の写真を撮影した。写真での観察領域内に認められる粘着層の発泡部分の有無と発泡部分が認められる場合にはその面積割合の値に基づき、以下の基準にて粘着層の発泡を評価した。なお、発泡部分の面積割合は、観察領域に占める発泡部分の面積割合を示し、写真の画像解析を用いて定めることができる。
【0115】
(粘着層の発泡の程度の評価基準)
◎(きわめて良好): 粘着層の観察領域に占める発泡部分の面積割合が10%未満である。
〇(良好): 粘着層の観察領域に占める発泡部分の面積割合が10%以上70%未満である。
×(不良): 粘着層の観察領域に占める発泡部分の面積割合が70%以上である。
【0116】
(粘着層の剥離)
得られる積層発泡シートの中央部付近から幅:24mm、長さ:100mm、厚み:全体厚みの矩形状に打ち抜いて2枚の試験片を作製した。次いで2枚の試験片の粘着層が形成されている面同士を張り合わせ、23℃の条件下で2kgのローラーを600mm/分の速度で2往復して圧着した。その後、1分以内に引張試験機にて試験片を90°剥離させた。引張試験速度は300mm/分とした。その後、2枚の試験片の粘着層の剥離状況を観察し、以下の基準にて評価した。
【0117】
(粘着層の剥離状況の評価基準)
◎(きわめて良好): いずれの試験片の粘着層も剥離が認められない。
〇(良好): 少なくともいずれかの粘着層の一部に剥離が認められる。
×(不良): 少なくともいずれかの粘着層に全面的な剥離が認められる。
【0118】
比較例1
比較例1では、中間層を形成させずに積層発泡シートを製造した例である。発泡層形成用溶融物には、表3に示す樹脂と物理発泡剤が表3に示す配合量で用いられ、発泡層が形成された。粘着層形成用溶融物には、表3に示すエラストマーと可塑剤が表3に示す配合量で用いられ、粘着層が形成された。発泡層形成用溶融物と粘着層形成用溶融物を用いて、実施例1で示す方法と同様に共押出を実施したが、押出直後から発泡層と粘着層とが剥離して積層発泡シートを得ることができなかった。したがって、シート物性及び各種評価(粘着力の測定、粘着力の評価及び成膜状況の評価)は行わず、表3には記号「‐」を示した。
【0119】
比較例2
比較例2では、粘着層形成用溶融物における揮発性可塑剤の添加が省略された。粘着層形成用溶融物には、表3に示すエラストマーが用いられた。発泡層形成用溶融物には、表3に示す樹脂と物理発泡剤が表3に示す配合量で用いられた。中間層形成用溶融物には、表3に示す樹脂と揮発性可塑剤が表3に示す配合量で用いられた。発泡層形成用溶融物と粘着層形成用溶融物と中間層形成用溶融物とを用いて、実施例1で示す方法と同様に共押出が実施されることで、発泡層と中間層と粘着層とをこの順に積層した3層構造を有する積層発泡シートが得られた。なお、表3及び本明細書の説明においては、説明の便宜上、粘着層形成用溶融物の層について粘着性が不足している場合についても、粘着層形成用溶融物の層を粘着層と表記する。
【0120】
比較例2で得られた積層発泡シートについて、実施例1と同様に、全体厚みと全体坪量と見掛け密度、粘着力を測定し、粘着性を評価した。また、比較例2で得られた積層発泡シートについて、実施例1と同様に、粘着層の裂け、発泡及び剥離を評価した。結果を表3に示す。比較例2の積層発泡シートは、粘着層に裂けが多発していた。また、十分な粘着力が得られていないことが認められた。
【0121】
比較例3および比較例4
比較例3および比較例4は粘着層形成用溶融物に配合される揮発性可塑剤の配合量を変更した例である。具体的には、比較例3および比較例4では、粘着層形成用溶融物には、表3に示すエラストマーと揮発性可塑剤が表3に示す配合量で用いられた。発泡層形成用溶融物には、表3に示す樹脂と物理発泡剤が表3に示す配合量で用いられた。中間層形成用溶融物には、表3に示す樹脂と揮発性可塑剤が表3に示す配合量で用いられた。発泡層形成用溶融物と粘着層形成用溶融物と中間層形成用溶融物を用いて、実施例1で示す方法と同様に共押出が実施された。これにより発泡層と中間層と粘着層とをこの順に積層した3層構造を有する積層発泡シートが得られた。
【0122】
比較例3及び4で得られた積層発泡シートについて、実施例1と同様に、全体厚みと全体坪量と見掛け密度、粘着力を測定し、粘着性を評価した。また、得られた積層発泡シートについて、実施例1と同様に、粘着層の裂け、発泡及び剥離を評価した。結果を表3に示す。粘着層形成用溶融物に配合される揮発性可塑剤の配合量が少なすぎる比較例3では、粘着層に裂けが多発していた。また、十分な粘着力が得られていないことが認められた。粘着層形成用溶融物に配合される揮発性可塑剤の配合量が多すぎる比較例4では、粘着層が発泡していた。また、十分な粘着力が得られていないことが認められた。
【0123】
比較例5
比較例5は粘着層形成用溶融物に配合される揮発性可塑剤の種類を混合ブタンとした例である。具体的には、比較例5では、粘着層形成用溶融物には、表3に示すエラストマーと揮発性可塑剤が表3に示す配合量で用いられた。発泡層形成用溶融物には、表3に示す樹脂と物理発泡剤が表3に示す配合量で用いられた。中間層形成用溶融物には、表3に示す樹脂と揮発性可塑剤が表3に示す配合量で用いられた。発泡層形成用溶融物と粘着層形成用溶融物と中間層形成用溶融物を用いて、実施例1で示す方法と同様に共押出を実施したが、粘着層が形成されず、所望の積層発泡シートを得ることができなかった。したがって、比較例5では、比較例1と同様に、シート物性及び各種評価は行わず、表3には記号「‐」を示した。
【0124】
比較例6
比較例6は粘着層形成用溶融物に配合されるエラストマーを硬度の高いアクリル系熱可塑性エラストマーとした例である。具体的には、比較例6では、粘着層形成用溶融物には、表3に示すエラストマーと揮発性可塑剤が表3に示す配合量で用いられた。発泡層形成用溶融物には、表3に示す樹脂と物理発泡剤が表3に示す配合量で用いられた。中間層形成用溶融物には、表3に示す樹脂と揮発性可塑剤が表3に示す配合量で用いられた。発泡層形成用溶融物と粘着層形成用溶融物と中間層形成用溶融物を用いて、実施例1で示す方法と同様に共押出が実施された。これにより発泡層と中間層と粘着層とをこの順に積層した3層構造を有する積層発泡シートが得られた。
【0125】
比較例6で得られた積層発泡シートについて、実施例1と同様に、全体厚みと全体坪量と見掛け密度、粘着力を測定し、粘着性を評価した。また、比較例6で得られた積層発泡シートについて、実施例1と同様に、粘着層の裂け、発泡及び剥離を測定した。結果を表3に示す。比較例6の積層発泡シートは、粘着層に裂けが多発していた。また、十分な粘着力が得られていないことが認められた。
【0126】
比較例7
比較例7は粘着層形成用溶融物に配合される可塑剤の種類を非揮発性のPEG300とした例である。具体的には、比較例7では、粘着層形成用溶融物には、表3に示すエラストマーと可塑剤が表3に示す配合量で用いられた。発泡層形成用溶融物には、表3に示す樹脂と物理発泡剤が表3に示す配合量で用いられた。中間層形成用溶融物には、表3に示す樹脂と揮発性可塑剤が表3に示す配合量で用いられた。発泡層形成用溶融物と粘着層形成用溶融物と中間層形成用溶融物を用いて、実施例1で示す方法と同様に共押出が実施された。これにより発泡層と中間層と粘着層とをこの順に積層した3層構造を有する積層発泡シートが得られた。
【0127】
比較例7で得られた積層発泡シートについて、実施例1と同様に、全体厚みと全体坪量と見掛け密度、粘着力を測定し、粘着性を評価した。また、比較例7で得られた積層発泡シートについて、実施例1と同様に、粘着層の裂け、発泡及び剥離を測定した。結果を表3に示す。比較例7の積層発泡シートは、ほとんど粘着力が得られていないことが認められた。
【0128】
比較例8から比較例11
比較例8から比較例11では、粘着層形成用溶融物に配合されるエラストマーの種類をアクリル系熱可塑性エラストマー以外のエラストマーとした例である。具体的には、粘着層形成用溶融物には、表3に示すエラストマーと可塑剤が表3に示す配合量で用いられた。比較例8から比較例10では、粘着層に含まれる樹脂としてスチレン系熱可塑性エラストマーが用いられた。比較例11では、粘着層に含まれる樹脂としてオレフィン系熱可塑性エラストマーが用いられた。発泡層形成用溶融物には、表3に示す樹脂と物理発泡剤が表3に示す配合量で用いられた。中間層形成用溶融物には、表3に示す樹脂と揮発性可塑剤が表3に示す配合量で用いられた。発泡層形成用溶融物と粘着層形成用溶融物と中間層形成用溶融物を用いて、実施例1で示す方法と同様に共押出が実施されることで、発泡層と中間層と粘着性溶融物の層とをこの順に積層した構造を有する積層発泡シートが得られた。なお、比較例8では中間層を形成させなくても発泡層と粘着層とが剥離しないため、中間層の形成を省略した。
【0129】
比較例8から比較例11で得られた積層発泡シートについて、それぞれ実施例1と同様に、全体厚みと全体坪量と見掛け密度、粘着力を測定し、粘着性を評価した。また、比較例8から比較例11で得られた積層発泡シートについて、実施例1と同様に、粘着層の裂け、発泡及び剥離を測定した。結果を表3に示す。比較例8から比較例11の積層発泡シートは、ほとんど粘着力が得られていないことが認められた。
【0130】
比較例12
比較例12は粘着層形成用溶融物に配合される可塑剤の種類を水とした例である。具体的には、比較例12では、粘着層形成用溶融物には、表3に示すエラストマーと可塑剤が表3に示す配合量で用いられた。発泡層形成用溶融物には、表3に示す樹脂と物理発泡剤が表3に示す配合量で用いられた。中間層形成用溶融物には、表3に示す樹脂と揮発性可塑剤が表3に示す配合量で用いられた。発泡層形成用溶融物と粘着層形成用溶融物と中間層形成用溶融物を用いて、実施例1で示す方法と同様に共押出を実施したが、粘着層が形成されず、所望の積層発泡シートを得ることができなかった。したがって、比較例12では、比較例1と同様に、シート物性及び各種評価は行わず、表3には記号「‐」を示した。
【0131】
【表2】
【0132】
【表3】
【0133】
以上、本発明にかかる積層発泡シートの製造方法、積層発泡シート、及び適用例について具体的に説明したが、これらは一例であり、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0134】
例えば、上述において挙げた構成、方法、工程、形状、材料および数値等はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料および数値等を用いてもよい。また、上述の実施形態等の構成、方法、工程、形状、材料および数値等は、本発明の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0135】
1 :積層発泡シート
10 :発泡層
10A :面
10B :面
11 :中間層
12 :粘着層
13 :筒状積層発泡体
40 :発泡層形成用押出機
40A :第1押出機
40B :第2押出機
41 :中間層形成用押出機
42 :粘着層形成用押出機
43 :共押出ダイ
53 :ローラ
54 :ローラ
100 :共押出機

図1
図2