(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094018
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】乗用型田植機
(51)【国際特許分類】
A01C 11/02 20060101AFI20240702BHJP
A01C 11/00 20060101ALI20240702BHJP
A01C 15/00 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
A01C11/02 313C
A01C11/00 302
A01C15/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210717
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】澤田 航希
【テーマコード(参考)】
2B052
2B060
2B062
【Fターム(参考)】
2B052BC09
2B052BC16
2B060AA10
2B060AC03
2B060AD09
2B060AE10
2B060BA07
2B060BB06
2B060CC08
2B062AA02
2B062AB01
2B062AB07
2B062BA05
2B062BA13
2B062BA18
2B062CA30
(57)【要約】
【課題】植付クラッチ及び施肥クラッチを各別に切り替えることが可能な乗用型田植機が要望されている。
【解決手段】乗用型田植機は、植付装置への動力を断続する植付クラッチ23と、施肥装置への動力を断続する施肥クラッチ24と、植付クラッチ23を切り替える植付切り替え部材26と、施肥クラッチ24を切り替える施肥切り替え部材27と、植付切り替え部材26及び施肥切り替え部材27を切り替え駆動するモータM1と、モータM1からの動力が伝達される主リンク機構29と、主リンク機構29に連動して植付切り替え部材26に動力を伝達する植付リンク機構30と、主リンク機構29に連動して施肥切り替え部材27に動力を伝達する施肥リンク機構31と、を備えている。植付リンク機構30及び施肥リンク機構31は、主リンク機構29に各別に連動可能に構成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗を田面に植え付ける植付装置と、
肥料を田面に供給する施肥装置と、
前記植付装置への動力を断続する植付クラッチと、
前記施肥装置への動力を断続する施肥クラッチと、
前記植付クラッチを切り替える植付切り替え部材と、
前記施肥クラッチを切り替える施肥切り替え部材と、
前記植付切り替え部材及び前記施肥切り替え部材を切り替え駆動するモータと、
前記モータからの動力が伝達される主リンク機構と、
前記主リンク機構に連動して前記植付切り替え部材に動力を伝達する植付リンク機構と、
前記主リンク機構に連動して前記施肥切り替え部材に動力を伝達する施肥リンク機構と、を備え、
前記植付リンク機構及び前記施肥リンク機構は、前記主リンク機構に各別に連動可能に構成されている乗用型田植機。
【請求項2】
前記植付リンク機構は、機体左右方向に沿って延びる揺動軸心周りで揺動可能な植付中間リンクを有し、
前記施肥リンク機構は、前記植付中間リンクと共通の前記揺動軸心周りで揺動可能な施肥中間リンクを有し、
前記主リンク機構は、前記植付中間リンク及び前記施肥中間リンクに連動連結される主ロッドを有し、
前記植付中間リンクに、前記主ロッドが挿通され、前記揺動軸心を中心とする円弧形状の第一長孔が形成され、
前記施肥中間リンクに、前記主ロッドが挿通され、前記揺動軸心を中心とする円弧形状の第二長孔が形成され、
前記植付中間リンク及び前記施肥中間リンクは、前記モータからの動力が前記主ロッドに伝達されることにより、前記植付クラッチが切りとなり、かつ、前記施肥クラッチが切りとなる第一状態と、前記植付クラッチが切りとなり、かつ、前記施肥クラッチが入りとなる第二状態と、前記植付クラッチが入りとなり、かつ、前記施肥クラッチが入りとなる第三状態と、に状態変更可能に構成されている請求項1に記載の乗用型田植機。
【請求項3】
前記植付中間リンクを前記揺動軸心周りで上側に揺動付勢する付勢部材を備え、
前記第一状態において、前記第一長孔の上端は、前記第二長孔の上端よりも上側に位置している請求項2に記載の乗用型田植機。
【請求項4】
前記植付装置は、複数条分のマット状苗が載置される苗載せ台と、苗を植え付ける条を選択する複数の植付少数条クラッチと、前記複数の植付少数条クラッチを切り替え駆動する少数条モータと、を有し、
前記施肥装置は、施肥を行う条を選択する複数の施肥少数条クラッチを有し、
前記複数の施肥少数条クラッチは、前記少数条モータによって切り替え駆動され、
前記少数条モータは、前記苗載せ台におけるマット状苗が載置される側の面とは反対側の面に配置されている請求項1から3の何れか一項に記載の乗用型田植機。
【請求項5】
前記少数条モータからの動力を前記複数の施肥少数条クラッチに伝達する複数の操作ケーブルを備え、
前記複数の操作ケーブルは、前記苗載せ台における機体左右方向の一方側の側部に沿って配策されている請求項4に記載の乗用型田植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用型田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗用型田植機として、例えば、特許文献1に記載の乗用型田植機が知られている。特許文献1に記載の乗用型田植機は、苗を田面に植え付ける植付装置と、肥料を田面に供給する施肥装置と、植付装置への動力を断続する植付クラッチと、施肥装置への動力を断続する施肥クラッチと、植付クラッチを切り替える植付切り替え部材と、施肥クラッチを切り替える施肥切り替え部材と、植付切り替え部材及び施肥切り替え部材を切り替え駆動するモータと、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の乗用型田植機では、植付クラッチ及び施肥クラッチを各別に切り替えることができない。
【0005】
上記状況に鑑み、植付クラッチ及び施肥クラッチを各別に切り替えることが可能な乗用型田植機が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の特徴は、
苗を田面に植え付ける植付装置と、
肥料を田面に供給する施肥装置と、
前記植付装置への動力を断続する植付クラッチと、
前記施肥装置への動力を断続する施肥クラッチと、
前記植付クラッチを切り替える植付切り替え部材と、
前記施肥クラッチを切り替える施肥切り替え部材と、
前記植付切り替え部材及び前記施肥切り替え部材を切り替え駆動するモータと、
前記モータからの動力が伝達される主リンク機構と、
前記主リンク機構に連動して前記植付切り替え部材に動力を伝達する植付リンク機構と、
前記主リンク機構に連動して前記施肥切り替え部材に動力を伝達する施肥リンク機構と、を備え、
前記植付リンク機構及び前記施肥リンク機構は、前記主リンク機構に各別に連動可能に構成されていることにある。
【0007】
本特徴構成によれば、植付リンク機構及び施肥リンク機構が、主リンク機構に各別に連動することにより、植付リンク機構及び施肥リンク機構が、主リンク機構からの動力を植付切り替え部材及び施肥切り替え部材に各別に伝達する。これにより、植付クラッチ及び施肥クラッチを各別に切り替えることができる。
【0008】
さらに、本発明において、
前記植付リンク機構は、機体左右方向に沿って延びる揺動軸心周りで揺動可能な植付中間リンクを有し、
前記施肥リンク機構は、前記植付中間リンクと共通の前記揺動軸心周りで揺動可能な施肥中間リンクを有し、
前記主リンク機構は、前記植付中間リンク及び前記施肥中間リンクに連動連結される主ロッドを有し、
前記植付中間リンクに、前記主ロッドが挿通され、前記揺動軸心を中心とする円弧形状の第一長孔が形成され、
前記施肥中間リンクに、前記主ロッドが挿通され、前記揺動軸心を中心とする円弧形状の第二長孔が形成され、
前記植付中間リンク及び前記施肥中間リンクは、前記モータからの動力が前記主ロッドに伝達されることにより、前記植付クラッチが切りとなり、かつ、前記施肥クラッチが切りとなる第一状態と、前記植付クラッチが切りとなり、かつ、前記施肥クラッチが入りとなる第二状態と、前記植付クラッチが入りとなり、かつ、前記施肥クラッチが入りとなる第三状態と、に状態変更可能に構成されていると好適である。
【0009】
本特徴構成によれば、植付中間リンク及び施肥中間リンクが、第一状態、第二状態及び第三状態の順に状態変更されることにより、施肥クラッチが植付クラッチよりも先に入りとなる。これにより、植付装置によって苗を田面に植え付けるよりも先に、施肥装置によって肥料を田面に供給することができる。
【0010】
さらに、本発明において、
前記植付中間リンクを前記揺動軸心周りで上側に揺動付勢する付勢部材を備え、
前記第一状態において、前記第一長孔の上端は、前記第二長孔の上端よりも上側に位置していると好適である。
【0011】
本特徴構成によれば、主ロッドの下端部が第二長孔の上端に接触している状態において、揺動軸心周りにおける植付中間リンクの上側への揺動が、主ロッドによって阻害されることがない。
【0012】
さらに、本発明において、
前記植付装置は、複数条分のマット状苗が載置される苗載せ台と、苗を植え付ける条を選択する複数の植付少数条クラッチと、前記複数の植付少数条クラッチを切り替え駆動する少数条モータと、を有し、
前記施肥装置は、施肥を行う条を選択する複数の施肥少数条クラッチを有し、
前記複数の施肥少数条クラッチは、前記少数条モータによって切り替え駆動され、
前記少数条モータは、前記苗載せ台におけるマット状苗が載置される側の面とは反対側の面に配置されていると好適である。
【0013】
本特徴構成によれば、少数条モータを利用して、複数の施肥少数条クラッチを切り替え駆動することができる。また、苗載せ台におけるマット状苗が載置される側の面とは反対側の面のスペースを利用して、少数条モータを配置することができる。
【0014】
さらに、本発明において、
前記少数条モータからの動力を前記複数の施肥少数条クラッチに伝達する複数の操作ケーブルを備え、
前記複数の操作ケーブルは、前記苗載せ台における機体左右方向の一方側の側部に沿って配策されていると好適である。
【0015】
本特徴構成によれば、複数の操作ケーブルをまとめて配策することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図3】植付装置及び施肥装置に動力を伝達する構成を示す図である。
【
図4】植付クラッチ及び施肥クラッチを切り替える構成を示す図である。
【
図5】モータ、リンク機構、植付切り替え部材及び施肥切り替え部材を示す右側面図である。
【
図6】モータ、リンク機構、植付切り替え部材及び施肥切り替え部材を示す平面図である。
【
図7】第一状態における、植付第一中間リンク及び施肥第一中間リンクを示す右側面図である。
【
図8】第二状態における、植付第一中間リンク及び施肥第一中間リンクを示す右側面図である。
【
図9】第三状態における、植付第一中間リンク及び施肥第一中間リンクを示す右側面図である。
【
図10】植付少数条クラッチ及び施肥少数条クラッチを切り替える構成を示す図である。
【
図11】少数条モータ及び施肥操作ケーブルの配置構成を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。なお、以下では、矢印Fの方向を「機体の前方」、矢印Bの方向を「機体の後方」、矢印Lの方向を「機体の左方」、矢印Rの方向を「機体の右方」、矢印Uの方向を「機体の上方」、矢印Dの方向を「機体の下方」とする。
【0018】
図1及び
図2には、乗用型田植機を示している。
図1及び
図2に示すように、乗用型田植機は、走行機体1と、原動部2と、運転部3と、ステップ4と、植付装置5と、施肥装置6と、変速部7(
図3参照)と、を備えている。
【0019】
走行機体1は、左右の前輪9と、左右の後輪10と、機体フレーム11と、を備えている。機体フレーム11は、左右の前輪9及び左右の後輪10に支持されている。
【0020】
原動部2は、走行機体1の前部に設けられている。原動部2は、エンジンE(
図3参照)と、エンジンEを収容するボンネット12と、を備えている。
【0021】
運転部3には、運転者が搭乗する。運転部3は、原動部2の後方に設けられている。運転部3は、運転座席13と、走行機体1を操向操作するためのステアリングホイール14と、を備えている。
【0022】
ステップ4は、機体フレーム11上に設けられている。ステップ4は、前ステップ15と、中ステップ16と、後ステップ17と、を備えている。
【0023】
前ステップ15は、機体フレーム11上の前部におけるボンネット12の周囲に設けられている。後ステップ17は、機体フレーム11上の後部における運転座席13の周囲に設けられている。中ステップ16は、機体フレーム11上における前ステップ15と後ステップ17との間の箇所に設けられている。
【0024】
植付装置5は、苗を田面に植え付ける。本実施形態では、植付装置5は、八条植えの植付装置によって構成されている。植付装置5は、走行機体1の後方に設けられている。植付装置5は、リンク機構19によって昇降可能に構成されている。植付装置5は、リンク機構19を介して機体フレーム11の後部に支持されている。植付装置5は、複数条分(本実施形態では、八条分)のマット状苗が載置される苗載せ台18を備えている。
【0025】
施肥装置6は、肥料を田面に供給する。本実施形態では、施肥装置6は、八条施肥の施肥装置によって構成されている。施肥装置6は、走行機体1の後部における運転座席13の後方に設けられている。
【0026】
変速部7は、エンジンEからの動力を変速する。変速部7からの動力は、左右の前輪9、左右の後輪10、植付装置5及び施肥装置6に伝達される。
【0027】
図3に示すように、変速部7は、静油圧式の無段変速装置21と、変速ケース20と、を備えている。変速ケース20は、ギヤ式の変速装置22、植付クラッチ23及び施肥クラッチ24を収容している。変速部7は、エンジンEからの動力を無段変速装置21によって変速し、無段変速装置21からの動力を変速装置22によって変速する。
【0028】
植付クラッチ23は、植付装置5への動力を断続する。植付クラッチ23は、植付装置5に動力を伝達する入り状態と、植付装置5に動力を伝達しない切り状態と、に切り替え可能に構成されている。植付クラッチ23は、変速装置22から植付装置5への動力伝達経路に設けられている。
【0029】
施肥クラッチ24は、施肥装置6への動力を断続する。施肥クラッチ24は、施肥装置6に動力を伝達する入り状態と、施肥装置6に動力を伝達しない切り状態と、に切り替え可能に構成されている。施肥クラッチ24は、変速装置22から施肥装置6への動力伝達経路に設けられている。
【0030】
図4に示すように、植付クラッチ23は、植付切り替え部材26によって切り替えられる。施肥クラッチ24は、施肥切り替え部材27によって切り替えられる。植付切り替え部材26及び施肥切り替え部材27は、モータM1によって切り替え駆動される。モータM1からの動力は、リンク機構28によって、植付切り替え部材26及び施肥切り替え部材27に伝達される。モータM1は、クラッチレバー25の操作に応じて駆動される。
【0031】
リンク機構28は、モータM1からの動力を植付切り替え部材26及び施肥切り替え部材27に伝達する。リンク機構28は、主リンク機構29と、植付リンク機構30と、施肥リンク機構31と、を備えている。主リンク機構29は、モータM1からの動力を植付リンク機構30及び施肥リンク機構31に伝達する。すなわち、主リンク機構29は、モータM1からの動力が伝達される。植付リンク機構30は、主リンク機構29に連動して植付切り替え部材26に動力を伝達する。施肥リンク機構31は、主リンク機構29に連動して施肥切り替え部材27に動力を伝達する。
【0032】
図5及び
図6に示すように、植付クラッチ23は、爪クラッチによって構成されている。植付クラッチ23は、一対の噛み合い部材23A・23Bを備えている。一方の噛み合い部材23Aは、他方の噛み合い部材23Bに噛み合うように、バネ32によって他方の噛み合い部材23B側に移動付勢されている。
【0033】
一方の噛み合い部材23Aと他方の噛み合い部材23Bとが噛み合うことにより、植付クラッチ23が入りとなる。植付クラッチ23が入りとなることにより、植付出力軸33から植付装置5に向けて動力が出力される。一方の噛み合い部材23Aと他方の噛み合い部材23Bとの噛み合いが解除されることにより、植付クラッチ23が切りとなる。
【0034】
植付切り替え部材26は、機体左右方向に沿って移動可能に構成されている。植付切り替え部材26は、植付クラッチ23が入りとなる入位置と、植付クラッチ23が切りとなる切位置と、に切り替え可能に構成されている。
【0035】
植付切り替え部材26が前記入位置に切り替えられることにより、一方の噛み合い部材23Aがバネ32の付勢力によって他方の噛み合い部材23B側に移動されて、他方の噛み合い部材23Bと噛み合って、植付クラッチ23が入りとなる。植付切り替え部材26が前記切位置に切り替えられることにより、一方の噛み合い部材23Aが植付切り替え部材26によってバネ32の付勢力に抗して他方の噛み合い部材23Bとは反対側に移動されて、他方の噛み合い部材23Bとの噛み合いが解消されて、植付クラッチ23が切りとなる。
【0036】
施肥クラッチ24は、爪クラッチによって構成されている。施肥クラッチ24は、一対の噛み合い部材24A・24Bを備えている。一方の噛み合い部材24Aは、他方の噛み合い部材24Bに噛み合うように、バネ34によって他方の噛み合い部材24B側に移動付勢されている。
【0037】
一方の噛み合い部材24Aと他方の噛み合い部材24Bとが噛み合うことにより、施肥クラッチ24が入りとなる。施肥クラッチ24が入りとなることにより、施肥出力軸35から施肥装置6に向けて動力が出力される。一方の噛み合い部材24Aと他方の噛み合い部材24Bとの噛み合いが解除されることにより、施肥クラッチ24が切りとなる。
【0038】
施肥切り替え部材27は、上下方向に沿って延びる揺動軸心Z1周りで揺動可能に構成されている。施肥切り替え部材27は、施肥クラッチ24が入りとなる入位置と、施肥クラッチ24が切りとなる切位置と、に切り替え可能に構成されている。
【0039】
施肥切り替え部材27が前記入位置に切り替えられることにより、一方の噛み合い部材24Aがバネ34の付勢力によって他方の噛み合い部材24B側に移動されて、他方の噛み合い部材24Bと噛み合って、施肥クラッチ24が入りとなる。施肥切り替え部材27が前記切位置に切り替えられることにより、一方の噛み合い部材24Aが施肥切り替え部材27によってバネ34の付勢力に抗して他方の噛み合い部材24Bとは反対側に移動されて、他方の噛み合い部材24Bとの噛み合いが解消されて、施肥クラッチ24が切りとなる。
【0040】
主リンク機構29は、主リンク36と、主ロッド37と、を備えている。植付リンク機構30は、植付第一中間リンク38(本発明に係る「植付中間リンク」に相当)と、植付ロッド39と、植付第二中間リンク40と、を備えている。施肥リンク機構31は、施肥第一中間リンク41(本発明に係る「施肥中間リンク」に相当)と、施肥第二中間リンク42と、施肥第三中間リンク43と、施肥ロッド44と、を備えている。
【0041】
主リンク36は、機体左右方向に沿って延びる揺動軸心X1周りで揺動可能に構成されている。主リンク36は、支軸45に支持されている。支軸45には、モータM1からの動力がギヤ式の動力伝達機構(図示省略)を介して伝達される。主リンク36は、支軸45に対して相対回転不能(支軸45と一体回転可能)に構成されている。支軸45は、機体左右方向に沿って延びている。主リンク36は、支軸45の右端部に設けられている。
【0042】
主ロッド37は、主リンク36と植付第一中間リンク38及び施肥第一中間リンク41とに亘って設けられている。主ロッド37の上端部は、主リンク36に支持されている。主ロッド37の下端部は、植付第一中間リンク38及び施肥第一中間リンク41に支持されている。すなわち、主ロッド37は、植付第一中間リンク38及び施肥第一中間リンク41に連動連結されている。
【0043】
植付第一中間リンク38は、主ロッド37と植付ロッド39とに亘って設けられている。植付第一中間リンク38は、機体左右方向に沿って延びる揺動軸心X2周りで揺動可能に構成されている。植付第一中間リンク38は、バネ46(本発明に係る「付勢部材」に相当)によって、側面視で揺動軸心X2周りで時計回りに揺動付勢されている。すなわち、バネ46は、植付第一中間リンク38を揺動軸心X2周りで上側に揺動付勢している。植付第一中間リンク38は、支軸47に支持されている。植付第一中間リンク38は、支軸47に対して相対回転可能に構成されている。支軸47は、機体左右方向に沿って延びている。植付第一中間リンク38は、支軸47の右端部に設けられている。
【0044】
植付第一中間リンク38には、主ロッド37が挿通される長孔38a(本発明に係る「第一長孔」に相当)が形成されている。長孔38aは、揺動軸心X2を中心とする円弧形状に形成されている。長孔38aには、主ロッド37の下端部が挿通されている。
【0045】
植付ロッド39は、植付第一中間リンク38と植付第二中間リンク40とに亘って設けられている。植付ロッド39の前端部は、植付第二中間リンク40に支持されている。植付ロッド39の後端部は、植付第一中間リンク38に支持されている。
【0046】
植付第二中間リンク40は、植付ロッド39と植付切り替え部材26とに亘って設けられている。植付第二中間リンク40は、上下方向に沿って延びる揺動軸心Z2周りで揺動可能に構成されている。
【0047】
施肥第一中間リンク41及び施肥第二中間リンク42は、揺動軸心X2周りで揺動可能に構成されている。すなわち、施肥第一中間リンク41及び施肥第二中間リンク42は、植付第一中間リンク38と共通の揺動軸心X2周りで揺動可能に構成されている。施肥第一中間リンク41及び施肥第二中間リンク42は、バネ(図示省略)によって、側面視で揺動軸心X2周りで反時計回りに揺動付勢されている。施肥第一中間リンク41及び施肥第二中間リンク42は、支軸47に支持されている。施肥第一中間リンク41及び施肥第二中間リンク42は、支軸47に対して相対回転不能(支軸47と一体回転可能)に構成されている。施肥第一中間リンク41は、支軸47の右端部に設けられている。具体的には、施肥第一中間リンク41は、支軸47の右端部における植付第一中間リンク38よりも右側の箇所に設けられている。施肥第二中間リンク42は、支軸47の左端部に設けられている。
【0048】
施肥第一中間リンク41には、主ロッド37が挿通される長孔41a(本発明に係る「第二長孔」に相当)が形成されている。長孔41aは、揺動軸心X2を中心とする円弧形状に形成されている。長孔41aには、主ロッド37の下端部が挿通されている。長孔38a及び長孔41aは、揺動軸心X2を中心とする同一の円弧上に形成されている。
【0049】
施肥第三中間リンク43は、施肥第二中間リンク42と施肥ロッド44とに亘って設けられている。施肥第三中間リンク43の前端部は、施肥ロッド44に支持されている。施肥第三中間リンク43の後端部は、施肥第二中間リンク42に支持されている。
【0050】
施肥ロッド44は、施肥第三中間リンク43と施肥切り替え部材27とに亘って設けられている。施肥ロッド44の前端部は、施肥切り替え部材27に支持されている。施肥ロッド44の後端部は、施肥第三中間リンク43に支持されている。
【0051】
図7から
図9に示すように、植付リンク機構30及び施肥リンク機構31は、主リンク機構29に各別に連動可能に構成されている。植付第一中間リンク38及び施肥第一中間リンク41は、モータM1からの動力が主ロッド37に伝達されることにより、第一状態(
図7参照)と、第二状態(
図8参照)と、第三状態(
図9参照)と、に状態変更可能に構成されている。主リンク36がモータM1からの動力によって揺動軸心X1周りで時計回りに揺動されることにより、植付第一中間リンク38及び施肥第一中間リンク41が、前記第一状態(
図7参照)、前記第二状態(
図8参照)及び前記第三状態(
図9参照)の順に状態変更される。すなわち、植付第一中間リンク38及び施肥第一中間リンク41が、前記第一状態、前記第二状態及び前記第三状態の順に状態変更されることにより、施肥クラッチ24が植付クラッチ23よりも先に入りとなる。
【0052】
図7に示すように、前記第一状態は、植付クラッチ23が切りとなり、かつ、施肥クラッチ24が切りとなる状態である。施肥第一中間リンク41は、前記バネによって、側面視で揺動軸心X2周りで反時計回りに揺動付勢されているところ、主ロッド37の下端部が施肥第一中間リンク41の長孔41aの上端に接触することにより、施肥第一中間リンク41が前記第一状態に位置決めされる。すなわち、施肥クラッチ24が切りとなる。
【0053】
植付第一中間リンク38は、バネ46によって、側面視で揺動軸心X2周りで時計回りに揺動付勢されているところ、植付切り替え部材26が一方の噛み合い部材23Aに突き当たることにより(
図5及び
図6参照)、植付第一中間リンク38が前記第一状態に位置決めされる。すなわち、植付クラッチ23が切りとなる。
【0054】
前記第一状態にいて、植付第一中間リンク38の長孔38aの上端は、主ロッド37の下端部よりも上側に位置している。すなわち、前記第一状態において、植付第一中間リンク38の長孔38aの上端は、施肥第一中間リンク41の長孔41aの上端よりも上側に位置している。
【0055】
図8に示すように、前記第二状態は、植付クラッチ23が切りとなり、かつ、施肥クラッチ24が入りとなる状態である。主ロッド37の下端部が
図8に示す位置まで下降することにより、施肥第一中間リンク41が前記バネの付勢力によって側面視で揺動軸心X2周りで反時計回りに揺動されて、前記第二状態まで揺動する。すなわち、施肥クラッチ24が入りとなる。主ロッド37の下端部が施肥第一中間リンク41の長孔41aの上端に接触することにより、施肥第一中間リンク41が前記第二状態に位置決めされる。前記第二状態において、施肥第一中間リンク41の長孔41aの上端は、揺動軸心X2よりも上側に位置している。
【0056】
植付第一中間リンク38は、バネ46によって、側面視で揺動軸心X2周りで時計回りに揺動付勢されているところ、主ロッド37の下端部が植付第一中間リンク38の下端に接触していないため、植付第一中間リンク38は、揺動軸心X2周りで反時計回りに揺動しない。すなわち、植付クラッチ23は、切りのままである。
【0057】
図9に示すように、前記第三状態は、植付クラッチ23が入りとなり、かつ、施肥クラッチ24が入りとなる状態である。主ロッド37の下端部が
図9に示す位置まで下降することにより、主ロッド37の下端部が植付第一中間リンク38の長孔38aの下端に接触して、植付第一中間リンク38をバネ46の付勢力に抗して揺動軸心X2周りで反時計回りに揺動させる。すなわち、植付クラッチ23が入りとなる。
【0058】
図10に示すように、植付装置5は、苗を植え付ける条を選択する複数(本実施形態では、四つ)の植付少数条クラッチ48と、複数の植付少数条クラッチ48を切り替え駆動する少数条モータM2と、を備えている。少数条モータM2は、操作スイッチ49の操作に応じて駆動される。植付少数条クラッチ48は、二条を一組として苗を植え付ける条を選択する。施肥装置6は、施肥を行う条を選択する複数(本実施形態では、四つ)の施肥少数条クラッチ50を備えている。施肥少数条クラッチ50は、二条を一組として施肥を行う条を選択する。複数の施肥少数条クラッチ50は、少数条モータM2によって切り替え駆動される。すなわち、少数条モータM2は、複数の植付少数条クラッチ48と複数の施肥少数条クラッチ50とで共用されている。少数条モータM2からの動力は、カム機構51に伝達される。
【0059】
カム機構51と複数の植付少数条クラッチ48とに亘って、複数(本実施形態では、四つ)の植付操作ケーブル52が設けられている。植付操作ケーブル52は、カム機構51からの動力を植付少数条クラッチ48に伝達する。すなわち、植付操作ケーブル52は、少数条モータM2からの動力を植付少数条クラッチ48に伝達する。
【0060】
カム機構51と複数の施肥少数条クラッチ50とに亘って、複数(本実施形態では、四つ)の施肥操作ケーブル53(本発明に係る「操作ケーブル」に相当)が設けられている。施肥操作ケーブル53は、カム機構51からの動力を施肥少数条クラッチ50に伝達する。すなわち、施肥操作ケーブル53は、少数条モータM2からの動力を施肥少数条クラッチ50に伝達する。
【0061】
図11に示すように、少数条モータM2は、苗載せ台18の前面に配置されている。すなわち、少数条モータM2は、苗載せ台18におけるマット状苗が載置される側の面とは反対側の面に配置されている。複数の施肥操作ケーブル53は、カム機構51から施肥装置6に向けて延ばされている。複数の施肥操作ケーブル53は、苗載せ台18における機体左右方向の一方側(本実施形態では、右側)の側部に沿って配策されている。
【0062】
以下、本発明に係る別実施形態について説明する。
【0063】
(1)上記実施形態では、植付第一中間リンク38及び施肥第一中間リンク41は、前記第一状態と、前記第二状態と、前記第三状態と、に状態変更可能に構成されている。しかし、植付第一中間リンク38及び施肥第一中間リンク41は、前記第一状態と、前記第三状態と、に状態変更可能に構成されていれば、前記第二状態に状態変更可能に構成されていなくてもよい。
【0064】
(2)上記実施形態では、前記第一状態において、植付第一中間リンク38の長孔38aの上端は、施肥第一中間リンク41の長孔41aの上端よりも上側に位置している。
しかし、前記第一状態において、植付第一中間リンク38の長孔38aの上端は、施肥第一中間リンク41の長孔41aの上端と同じ高さ位置に位置していてもよい。
【0065】
(3)上記実施形態では、複数の施肥少数条クラッチ50は、少数条モータM2によって切り替え駆動される。しかし、複数の施肥少数条クラッチ50は、少数条モータM2とは別のモータによって切り替え駆動されてもよい。
【0066】
(4)上記実施形態では、少数条モータM2は、苗載せ台18におけるマット状苗が載置される側の面とは反対側の面(前面)に配置されている。しかし、少数条モータM2は、苗載せ台18におけるマット状苗が載置される側の面とは反対側の面(前面)とは別の箇所に配置されていてもい。
【0067】
(5)上記実施形態では、複数の施肥操作ケーブル53は、苗載せ台18における機体左右方向の一方側(右側)の側部に沿って配策されている。複数の施肥操作ケーブル53は、苗載せ台18における機体左右方向の他方側(左側)の側部に沿って配策されていてもよい。
【0068】
(6)上記実施形態では、植付装置5は、八条植えの植付装置によって構成されている。しかし、植付装置5は、八条植えの植付装置に限定されるものではない。例えば、植付装置5は、四条から六条、十条植えの植付装置によって構成されていてもよい。
【0069】
(7)上記実施形態では、施肥装置6は、八条施肥の施肥装置によって構成されている。しかし、施肥装置6は、八条施肥の施肥装置に限定されるものではない。例えば、施肥装置6は、四条から六条、十条施肥の施肥装置によって構成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、乗用型田植機に利用可能である。
【符号の説明】
【0071】
5 植付装置
6 施肥装置
18 苗載せ台
23 植付クラッチ
24 施肥クラッチ
26 植付切り替え部材
27 施肥切り替え部材
29 主リンク機構
30 植付リンク機構
31 施肥リンク機構
37 主ロッド
38 植付第一中間リンク(植付中間リンク)
38a 長孔(第一長孔)
41 施肥第一中間リンク(施肥中間リンク)
41a 長孔(第二長孔)
48 植付少数条クラッチ
50 施肥少数条クラッチ
53 施肥操作ケーブル(操作ケーブル)
M1 モータ
M2 少数条モータ
X2 揺動軸心