(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094022
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】乗用型田植機
(51)【国際特許分類】
A01C 11/02 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
A01C11/02 313C
A01C11/02 311W
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210721
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】澤田 航希
【テーマコード(参考)】
2B062
【Fターム(参考)】
2B062AA14
2B062AA20
2B062AB01
2B062BA04
2B062BA18
2B062BA19
2B062BA62
(57)【要約】
【課題】少数条クラッチを断続操作するクラッチ操作部を保護し得る乗用型田植機を構成する。
【解決手段】苗載せ台18と複数の植付伝動ケース14と、植付伝動ケース14からの駆動力により苗を田面Gに植え付ける植付アームと、を備えて苗植付装置が構成されている。植付伝動ケース14に、植付アームに供給される駆動力を断続する少数条クラッチ36と、少数条クラッチ36を断続操作するクラッチ操作部41,42とを備え、クラッチ操作部41,42を覆うカバー50を備えた。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の後部に配置され、マット状苗を載置する苗載せ台と、
前記走行機体の後方に延出する複数の植付伝動ケースと、
前記植付伝動ケースからの駆動力により前記苗載せ台に載置された前記マット状苗から苗を切り出して田面に植え付ける植付アームと、を備えて苗植付装置が構成され、
前記植付伝動ケースに、前記植付アームに駆動力を伝えられる駆動力を断続する少数条クラッチと、前記少数条クラッチを断続操作するクラッチ操作部とが備えられ、前記クラッチ操作部を覆うカバーを備えている乗用型田植機。
【請求項2】
前記植付伝動ケースが、前記苗植付装置に備えられる機器を支持する支持杆の下端の連結が可能であり、少なくとも前記支持杆の下端部が挿通する挿通開口が、前記カバーに形成されている請求項1に記載の乗用型田植機。
【請求項3】
前記カバーが、上壁部と、左右の側壁部と、縦向きの後壁部とを有し、左右の前記側壁部の少なくとも一方が前記植付伝動ケースに連結固定され、
前記挿通開口を形成するため、前記カバーが、前記後壁部から前記上壁部に亘る領域のうち、予め設置された開口予定領域の切り取りが可能な樹脂によって形成されている請求項2に記載の乗用型田植機。
【請求項4】
複数の前記開口予定領域が設定され、前記カバーは、複数の前記開口予定領域における肉厚を異ならせている請求項3に記載の乗用型田植機。
【請求項5】
複数の前記開口予定領域の肉厚が、前記カバーのそのほかの領域の肉厚よりも薄く設定されている請求項4に記載の乗用型田植機。
【請求項6】
左右一対の前記側壁部の少なくとも一方に、前記カバーを前記植付伝動ケースに固定する貫通孔状のボルト挿通孔が形成され、
金型を用いた前記カバーの成形時に前記ボルト挿通孔を形成する前記金型の食い切り部が配置された凹部が前記側壁部に形成されている請求項3に記載の乗用型田植機。
【請求項7】
前記カバーが、前壁部を更に備えており、当該前壁部は、前記カバーの成形時に前記上壁部の前端から突出し、その突出端が下方に向かう姿勢に折り曲げ可能に形成されている請求項3に記載の乗用型田植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の後方に延出する植付伝動ケースの近傍に対する泥土の付着を抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、乗用型田植機の苗植付装置が記載されている。この苗植付装置は、植付伝動ケースより高い位置に薬剤供給装置を備え、植付時に跳ね上げられた泥土の飛散を防止する泥除けカバーを備えた構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1にも記載されるように、薬剤供給装置を備えるものでは、植付伝動ケースに下端を固定した支持杆によって薬剤供給装置が支持される。また、植付伝動ケースは、植付伝動ケースで駆動される植付アームの駆動と停止とを可能にするため少数条クラッチを内蔵しており、この少数条クラッチを断続操作する操作アーム等の操作部が植付伝動ケースの外面に備えられる。
【0005】
尚、このように植付伝動ケースの外面に備えられる操作アーム等は、ワイヤ等を介して植付伝動ケース毎に操作される。
【0006】
また、少数条クラッチを断続操作する操作アーム等は、露出状態で配置されるため、泥土が付着し、円滑な作動が困難になることも懸念される。
【0007】
このような理由から、少数条クラッチを断続操作するクラッチ操作部を保護し得る乗用型田植機が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る乗用型田植機の特徴構成は、走行機体の後部に配置され、マット状苗を載置する苗載せ台と、前記走行機体の後方に延出する複数の植付伝動ケースと、前記植付伝動ケースからの駆動力により前記苗載せ台に載置された前記マット状苗から苗を切り出して田面に植え付ける植付アームと、を備えて苗植付装置が構成され、前記植付伝動ケースに、前記植付アームに駆動力を伝えられる駆動力を断続する少数条クラッチと、前記少数条クラッチを断続操作するクラッチ操作部とが備えられ、前記クラッチ操作部を覆うカバーを備えている点にある。
【0009】
本構成によると、カバーがクラッチ操作部を覆うことにより、例えば、植付作動時に泥土が飛散しても、クラッチ操作部に付着することがない。従って、少数条クラッチを断続操作するクラッチ操作部を保護し得る乗用型田植機が構成された。
【0010】
他の構成として、前記植付伝動ケースが、前記苗植付装置に備えられる機器を支持する支持杆の下端の連結が可能であり、少なくとも前記支持杆の下端部が挿通する挿通開口が、前記カバーに形成されても良い。
【0011】
植付伝動ケースに泥除け用のカバーを備える構成では、特許文献1に記載される支持杆の下端の連結が困難になる。特に、乗用型田植機は、オプションとして薬剤以外を散布する装置等を備えることもある。このような課題に対し、少なくとも支持杆の下端部が挿通する挿通開口がカバーに形成されることにより、植付伝動ケースに支持杆の下端を連結する場合に、支持杆をカバーの挿通開口に挿通することにより、カバーが支持杆の配置を妨げることがない。
【0012】
他の構成として、前記カバーが、上壁部と、左右の側壁部と、縦向きの後壁部とを有し、左右の前記側壁部の少なくとも一方が前記植付伝動ケースに連結固定され、前記挿通開口を形成するため、前記カバーが、前記後壁部から前記上壁部に亘る領域のうち、予め設置された開口予定領域の切り取りが可能な樹脂によって形成されても良い。
【0013】
これによると、カバーのうち、支持杆の下端の形態に対応した開口予定領域の切り取ることにより、支持杆の下端が挿通するに適した挿通開口を形成することが可能となる。
【0014】
他の構成として、複数の前記開口予定領域が設定され、前記カバーは、複数の前記開口予定領域における肉厚を異ならせても良い。
【0015】
これによると、例えば、異なる肉厚の境界部分に沿ってカバーの一部を切り取ることにより開口予定領域に挿通開口を形成することが可能となる。
【0016】
他の構成として、複数の前記開口予定領域の肉厚が、前記カバーのそのほかの領域の肉厚よりも薄く設定されても良い。
【0017】
これによると、開口予定領域の肉厚が、カバーのそのほかの領域より肉厚より薄いため、切り取り作業を容易に行える。
【0018】
他の構成として、左右一対の前記側壁部の少なくとも一方に、前記カバーを前記植付伝動ケースに固定する貫通孔状のボルト挿通孔が形成され、金型を用いた前記カバーの成形時に前記ボルト挿通孔を形成する前記金型の食い切り部が配置された凹部が前記側壁部に形成されても良い。
【0019】
これによると、カバーの側壁部に凹部が形成されるものの、金型を用いた食い切りにより、側壁部にボルト挿通用のボルト挿通孔を形成できる。
【0020】
他の構成として、前記カバーが、前壁部を更に備えており、当該前壁部は、前記カバーの成形時に前記上壁部の前端から突出し、その突出端が下方に向かう姿勢に折り曲げ可能に形成されても良い。
【0021】
これによると、樹脂でカバーを成形する際に、上壁部の前端から前方に延出する形態で形成し、突出端を下方に折り曲げることにより前壁を形成することが可能となる。その結果、単純な成形により、上壁部、左右の側壁部、後壁部、及び、前壁部を有するカバーの製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図3】苗植付装置のうちカバーを備えた部位の側面図である。
【
図4】植付伝動ケースとカバーとの分解斜視図である。
【
図7】別実施形態(a)のカバーを備えた部位の側面図である。
【
図9】別実施形態(b)のカバーを備えた部位の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に乗用型田植機Aが示され、
図2に苗植付装置5の平面が示されている。これらの図において、Fは前方向を示し、Bは後方向を示し、Uは上方向を示し、Dは下方向を示し、Rは右方向を示し、Lは左方向を示している。
【0024】
(乗用型田植機の全体構成)
図1に示すように、右及び左の前輪1、右及び左の後輪2によって走行自在な走行機体3が構成されている。走行機体3の後部から後方に延出したリンク機構4の後端に苗植付装置5が支持されている。施肥装置6が走行機体3の後部に支持され、整地装置Eが苗植付装置5の前部に配置されている。
【0025】
走行機体3の後部とリンク機構4とに亘って油圧シリンダ7が接続されている。油圧シリンダ7の伸縮駆動により苗植付装置5の昇降が行われる。
【0026】
運転座席8及び前輪1を操向操作する操縦ハンドル9が、走行機体3に設けられている。右及び左の支柱状フレーム10が、走行機体3の前部の右部及び左部に連結されている。この支柱状フレーム10に予備苗載せ台11が備えられている。予備苗載せ台11は苗植付装置5の苗載せ台18に補給されるマット状苗が載置される。
【0027】
(苗植付装置の構成)
図1~
図3に示すように、苗植付装置5は、フィードケース12と、支持フレーム13と、複数の植付伝動ケース14と、複数の回転ケース15と、複数の植付アーム16と、複数のフロート17と、苗載せ台18とを有して8条植え型に構成されている。
【0028】
フィードケース12は、リンク機構4の後部に支持されている。支持フレーム13は、左右方向に延びる角パイプ状でありフィードケース12連結されている。複数(4つの)植付伝動ケース14は、夫々の前端を支持フレーム13に連結することにより、走行機体3の後方に延出する。
【0029】
回転ケース15は、植付伝動ケース14の後部の右部及び左部に配置され、左右向きの回転駆動軸35により回転可能に支持されている。この回転ケース15に対し、一対の植付アーム16が取り付けられている。
【0030】
苗載せ台18は、複数の植付伝動ケース14の上面に備えた摺動レール19に支持されている。回転ケース15に取付られた一対の植付アーム16は、回転ケース15の回転に伴い、苗載せ台18に載置されたマット条苗の下端から苗を切り出し田面Gに植え付ける作動を行う。
【0031】
この乗用型田植機Aは、走行機体3の前進に伴い、整地装置Eにより田面Gの整地が行われる。また、苗植付装置5は、走行機体3の前進に伴い、苗載せ台18を左右方向に沿って往復駆動させる作動を行う。これにより、苗載せ台18に載置されたマット条苗の下端から植付アーム16が苗を順次切り出し田面Gに植え付ける。
【0032】
(施肥装置)
図1に示すように、施肥装置6は、ホッパー21と、繰り出し部22と、ブロア23と、作溝器24と、ホース25とを有している。
【0033】
施肥装置6は、ホッパー21に肥料が貯留される。また、施肥装置6は、走行機体3の前進に伴って繰り出し部22がホッパー21に貯留された肥料をホース25に繰り出す。
【0034】
繰り出された肥料は、ブロア23から供給される空気の流れにより作溝器24に供給される。作溝器24は、先端を田面Gより下方に突入させる位置に配置し、この作溝器24で田面Gに形成される溝に肥料が供給される。作溝器24で田面Gに形成された溝は、走行機体3の走行に伴い、覆土部材(図示せず)が埋め戻す。
【0035】
(苗植付装置の駆動構成)
図1~
図4に示すように、走行機体3に搭載されたエンジン(図示せず)の動力が、伝動軸26(
図1参照)からフィードケース12に伝えられる。複数の植付伝動ケース14の前端部分には、左右方向に沿う入力軸31を内蔵している。複数の入力軸31に連結する複数の中間駆動軸32を入力軸31と同軸芯上に備えている。複数の中間駆動軸32は夫々に対応する筒状ケース37に収容されている。
【0036】
複数の中間駆動軸32のうち左右方向の中央のものに連結する受動軸28を備えている。この受動軸28は、駆動チェーン29を介してフィードケース12の駆動力が伝えられる。これによりフィードケース12の駆動力が複数の入力軸31と複数の中間駆動軸32とに伝えられる。
【0037】
複数の入力軸31の駆動力を駆動側のスプロケットに伝える位置にトルクリミッター33を備えている。このトルクリミッター33は、複数の植付伝動ケース14の夫々の内部に備えられる。トルクリミッター33から駆動力が伝えられる駆動側のスプロケットから植付伝動ケース14の後部の回転駆動軸35の従動側スプロケットに駆動力を伝える伝動チェーン34を備えている。この伝動チェーン34は、複数の植付伝動ケース14の夫々の内部に収容されている。
【0038】
複数の回転駆動軸35の夫々に少数条クラッチ36を備えている。少数条クラッチ36は、伝動チェーン34から回転駆動軸35に伝えられる駆動力を断続する。
【0039】
少数条クラッチ36を操作するクラッチ操作軸41(クラッチ操作部の一例)が植付伝動ケース14の上面に出退自在に支持されている。また、植付伝動ケース14の側面にクラッチ操作軸41を押し込み操作するクラッチ操作レバー42(クラッチ操作部の一例)が支持されている。
【0040】
少数条クラッチ36は、非操作状態で伝動状態を維持し、この非操作状態でクラッチ操作軸41は上側に突出する。また、少数条クラッチ36はクラッチ操作軸41の押し込み操作により遮断状態に切り換わる。
【0041】
クラッチ操作レバー42の操作部材42aに操作ワイヤ43の端部が連結している。操作ワイヤ43は植付伝動ケース14と等しい数だけ備えられ、これらの操作ワイヤ43の前端位置は、人為操作型のレバー、あるいは、電動モータの駆動力により複数の操作ワイヤ43を選択的に引き操作する機構に連結する。
【0042】
この構成により、複数の植付伝動ケース14の夫々における少数条クラッチ36で伝動を遮断することにより、植付アーム16を1つの単位として複数の単位での苗の植付停止が可能となる。
【0043】
(薬剤散布装置)
乗用型田植機Aは、
図3に二点鎖線で示すように、苗植付装置5の植付伝動ケース14より上側に薬剤散布装置Cの装着が可能である。この装着を行う場合には、植付伝動ケース14の上面に支持杆45の下端が支持される。
【0044】
前述したクラッチ操作軸41と、クラッチ操作レバー42とは、田面Gに近い高さに配置されている。このため泥土が付着し作動不良に陥ることもあった。このような不都合を解消するために、
図3、
図4に示すように、クラッチ操作軸41、クラッチ操作レバー42を覆うカバー50が備えられる。
【0045】
カバー50は、植付伝動ケース14に備えられ、このカバー50を備えた状態で薬剤散布装置Cが装着される。
【0046】
カバー50は樹脂製であり、
図4、
図5に示すように、上壁部51と、左側壁部52(側壁部の一例)と、右側壁部53(側壁部の一例)と、後壁部54と、前壁部55とを備えている。後壁部54は、少なくとも支持杆45の挿通が可能な挿通開口50Hが形成される。
【0047】
上壁部51と、左側壁部52と、右側壁部53と、後壁部54とは一体形成されている。これに対し、前壁部55は、
図5に示すようにカバー50の成形時に上壁部51の前端から突出する姿勢で形成される。この前壁部55は、突出端を下方に折り曲げ可能に形成されている。
【0048】
前壁部55は、左右方向の両端に突起55aが形成されている。カバー50の左側壁部52と、右側壁部53との端部には、突起55aが係合する係合凹部49が形成されている。これにより、前壁部55を下方に折り曲げることにより、左側壁部52、右側壁部53の内側に前壁部55が嵌まり込み、突起55aと係合凹部49とが係合する。その結果、前壁部55の位置が固定される。
【0049】
図4に示すように、植付伝動ケース14の上面から上側に突出するリブ14aに孔部14bが形成されている。カバー50は、右側壁部53に一対の貫通孔状のボルト挿通孔53aが形成されている。
【0050】
この構成から、ボルト挿通孔53aに固定ボルト56を挿通し、この固定ボルト56を更にリブ14aの孔部14bに挿通し、ナット57の締結により、カバー50は植付伝動ケース14に固定される。このようにカバー50が植付伝動ケース14に固定されることにより、カバー50の内部にクラッチ操作軸41とクラッチ操作レバー42とが収容され、泥土の付着が解消される。
【0051】
カバー50は、金型成形により製造され、金型の食い切り部によりボルト挿通孔53aが食い切り孔として形成されている。
図5に示すように、金型の食い切り部が配置された空間を凹部53bとして右側壁部53の内面に形成されている。
【0052】
(カバーの挿通開口)
図3、
図4に示すように、薬剤散布装置C(機器の一例)を支持する支持杆45は、基端部に支持プレート46が固設されている。この支持プレート46は縦向き姿勢であり、貫通孔46aが形成されている。この構成から、支持プレート46を右側壁部53の内面に配置し、固定ボルト56を、カバー50のボルト挿通孔53a、支持プレート46の貫通孔46a、リブ14aの孔部14b、の夫々に挿通し、ナット57の締結により、カバー50と共に支持プレート46が植付伝動ケース14に固定される。
【0053】
また、カバー50の後壁部54は、支持杆45の基端部が挿通する挿通開口50Hを形成している。この挿通開口50Hは、後壁部54の下端から上側に亘る領域を人為的に切り取ることによって形成される。
【0054】
つまり、
図5に示すように、カバー50は、後壁部54から上壁部51に亘る領域に開口予定領域Nが設定されている。この開口予定領域Nは、第1開口領域Naと、第2開口領域Nbと、第3開口領域Ncとが予め設定されている。
【0055】
第1開口領域Naは、第1開口幅Waで後壁部54の下端から後壁部54の領域内に形成される。第2開口領域Nbは、第2開口幅Wbで後壁部54の下端から上壁部51に達する領域に形成される。第3開口領域Ncは、第2開口幅Wbで後壁部54の下端から上壁部51のうち第2開口領域Nbより前側に達する領域に形成される。
【0056】
これら第1開口領域Naと、第2開口領域Nbと、第3開口領域Ncとの人為作業による切り取りを容易に行えるように、夫々の領域の肉厚を異ならせている。具体的な形態としてカバー50の全体の肉厚を基準厚として、第3開口領域Ncの肉厚を基準厚より薄くし、これより第2開口領域Nbの肉厚を薄くし、これより第1開口領域Naの肉厚を薄くしている。
【0057】
尚、第1開口領域Naと、第2開口領域Nbと、第3開口領域Ncとの肉厚を、基準厚より、第3開口領域Nc、第2開口領域Nb、第1開口領域Naの肉厚を、この順序で厚くすることも可能である。また、オプションで採用される後付けキット(施薬機、リア施肥機、播種機、その他)の種類によって後付け頻度の高いキットに対応した開口領域が第1開口領域Na、第2開口領域Nb、第3開口領域Ncのいずれかであり、開口頻度が高い開口領域を他の開口領域に比べて肉厚を薄くすることも可能である。
【0058】
図4のカバー50は、第1開口領域Naを切り取ることにより挿通開口50Hが形成され、この挿通開口50Hに対して支持杆45の基端部分が後方に向けて挿通する。
【0059】
〔実施形態の作用効果〕
このように、カバー50を植付伝動ケース14に連結固定することにより、カバー50の上壁部51と、左側壁部52と、右側壁部53と、後壁部54とが、クラッチ操作軸41(クラッチ操作部)とクラッチ操作レバー42(クラッチ操作部)とを覆う位置に配置される。その結果、植付作動時に泥土が飛散しても、泥土がクラッチ操作軸41やクラッチ操作レバー42に付着することがなく、これらの円滑な作動が維持される。
【0060】
また、苗植付装置5に薬剤散布装置Cを装着するため、植付伝動ケース14に支持杆45の下端が連結固定される。この連結固定を可能にするため、カバー50の後壁部54に対し支持杆45の下端の形態に対応した挿通開口50Hが形成される。その結果、カバー50を取り外すことなく、支持杆45の基端を支持し薬剤散布装置Cが装着される。
【0061】
カバー50は、支持杆45の基端の形態に対応する複数の開口予定領域Nが予め設定され、複数の開口予定領域Nの肉厚を異ならせている。これにより、複数の開口予定領域Nの1つを選択して挿通開口50Hを形成する場合には、肉厚に基づいてカバー50の位置部を切り取ることにより、必要とするサイズの挿通開口50Hを形成できる。
【0062】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い(実施形態と同じ機能を有するものには、実施形態と共通の番号、符号を付している)。
【0063】
(a)
図6、
図7に示すように、植付伝動ケース14の上面のリブ14aに支持プレート46を連結した状態で、後方の斜め上に突出するように姿勢を設定して支持杆45を支持プレート46に連結する。
【0064】
このように、支持杆45が後方の斜め上へ突出する構成では、支持杆45がカバー50の上壁部51の領域に挿通する位置関係となる。このような理由から、カバー50を
図5に示す第2開口領域Nbの領域を切り取ることにより、挿通開口50Hは、上壁部51から後壁部54に亘る領域に形成される。
【0065】
この別実施形態(a)では、実施形態に記載した薬剤散布装置Cの同様の構成の散布装置を支持対象としており、支持杆45の上端部に散布装置が連結する。
【0066】
(b)
図8、
図9に示すように、植付伝動ケース14の上面のリブ14aに連結した状態で支持プレート46が、カバー50の上壁部51の上側に延出する。このように支持プレート46が形成され、この支持プレート46の上端近傍にロッド状の複数の支持杆45を支持する。
【0067】
この別実施形態(b)の構成では、支持プレート46が、上壁部51を上側に挿通する状態で配置される。このような理由から、カバー50を
図5に示す第2開口領域Nbの領域を切り取ることにより、挿通開口50Hは、上壁部51から後壁部54に亘る領域に形成される。
【0068】
この別実施形態(b)の構成では複数の支持杆45によって泥土の飛散を防止する飛散防止カバー(図示せず:機器の一例)を支持対象としており、複数の支持杆45の上端に水平姿勢で飛散防止カバーが支持される。
【0069】
(c)実施形態に記載した薬剤散布装置Cと、別実施形態(b)に記載した飛散防止カバーと共に苗植付装置5に支持する。このような形態の支持を可能にするため、実施形態に記載した支持プレート46と、別実施形態(b)に記載した支持プレート46とを重ねた状態で植付伝動ケース14に固定する。
【0070】
(d)開口予定領域同士の間又は、開口予定領域とケースの他の領域との間に開口形状に沿った点線状の微小開口が形成されるようにしてもよい。こうする事で工具レス又は最小限の工具で必要な領域に押し出しの力を加える事で簡単に開口する事が可能となる。
【0071】
(e)別実施形態(c)(d)の構成では、挿通開口50Hに対し支持杆45の下端と、支持プレート46とが挿通するため、これらの挿通を可能にする挿通開口50Hがカバー50に形成される。この挿通開口50Hは、開口予定領域Nとして予め設定することも可能であるが、開口予定領域Nを設定せずに、カバー50のうち、対応する箇所を切り取ることによって形成しても良い。
【0072】
(f)挿通開口50Hは、カバー50の上壁部51にのみに形成する構成や、上壁部51から側壁部に亘る領域に形成されても良い。
【0073】
(g)挿通開口50Hが形成されないカバー50を植付伝動ケース14に備えることも考えられる。このように構成することにより、少数条クラッチ36を断続操作するクラッチ操作レバー42を保護できる。
【0074】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、各条クラッチを内蔵した植付伝動ケースを有する乗用型田植機に利用することができる。
【符号の説明】
【0076】
5 苗植付装置
6 走行機体
14 植付伝動ケース
16 植付アーム
18 苗載せ台
36 少数条クラッチ
41 クラッチ操作軸(クラッチ操作部)
42 クラッチ操作レバー(クラッチ操作部)
45 支持杆
50 カバー
50H 挿通開口
51 上壁部
52 左側壁部(側壁部)
53 右側壁部(側壁部)
53a ボルト挿通孔
53b 凹部
54 後壁部
55 前壁部
C 薬剤散布装置(機器)
G 田面
N 開口予定領域