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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094026
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】カニ脚肉風練製品用着色製剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 17/00 20160101AFI20240702BHJP
   A23L 5/44 20160101ALI20240702BHJP
【FI】
A23L17/00 102Z
A23L5/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210726
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000175283
【氏名又は名称】三栄源エフ・エフ・アイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 貴明
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼▲崎▼ 孝治
【テーマコード(参考)】
4B018
4B034
【Fターム(参考)】
4B018LB05
4B018MA01
4B018MA07
4B018MD07
4B018MD34
4B018MD35
4B018MD46
4B018MD53
4B018MD72
4B018ME14
4B018MF01
4B034LB08
4B034LC03
4B034LE10
4B034LE16
4B034LK05Z
4B034LK11Z
4B034LK16Z
4B034LK17Z
4B034LK33Z
4B034LP11
4B034LP20
(57)【要約】
【課題】耐光性、耐熱性に優れ、pHによる色調変化が少なく、包装用フィルムに対する伸展性、及びすり身への結着性が優れたカニ脚肉風練製品用着色製剤を提供すること。
【解決手段】(A)リコピン、(B)セルロース又はセルロース誘導体、(C)卵白、及び(D)水性溶媒を含有するカニ脚肉風練製品用着色製剤、並びに同着色製剤を用いるカニ脚肉風練製品の製造方法。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)リコピン、
(B)セルロース又はセルロース誘導体、
(C)卵白、及び
(D)水性溶媒
を含有するカニ脚肉風練製品用着色製剤。
【請求項2】
(E)デンプンを更に含む、請求項1に記載のカニ脚肉風練製品用着色製剤。
【請求項3】
(F)レシチンを更に含む、請求項1に記載のカニ脚肉風練製品用着色製剤。
【請求項4】
セルロース又はセルロース誘導体が、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる群から選択される、請求項1に記載のカニ脚肉風練製品用着色製剤。
【請求項5】
デンプンが、コーンスターチ、ばれいしょデンプン、かんしょデンプン、タピオカデンプン、サゴデンプン、葛デンプン、わらびデンプン、蓮根デンプン、緑豆デンプン及びリン酸架橋デンプンからなる群から選択される、請求項2に記載のカニ脚肉風練製品用着色製剤。
【請求項6】
レシチンが、大豆レシチン、菜種レシチン、卵黄レシチン及びヒマワリレシチンからなる群から選択される、請求項3に記載のカニ脚肉風練製品用着色製剤。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載のカニ脚肉風練製品用着色製剤を包装用フィルムの表面に塗付する工程、
塗付された包装用フィルムで練製品を包装する工程、及び
包装された練製品を加熱処理して、リコピンを練製品に転写する工程を含む、カニ脚肉風練製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カニ脚肉風練製品用着色製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
カニ脚肉風練製品は、「風味かまぼこ(かに風味)」(日本農林規格等に関する法律の品質表示基準)とも呼ばれる。1970年前半に日本で開発され、日本及び海外で広く受け入れられ、販売されている。
【0003】
カニ脚肉風練製品には、カニ肉は含まれず、魚肉のすり身にカニの香りと味を、最外層に食品添加物の赤色の食用色素をつけて製造される。
例えば、すり身を主原料として調味料、カニのエキス分等を含む混練物を押し出し、ロール等で薄くシート状に延ばしてから蒸し上げる。次に、このシート状物を繊維状に裁断し、得られた繊維状物を必要に応じて結着剤等を用いてカニ脚肉に近い太さに結束する。着色剤塗布装置で包装用フィルムに、天然のカニ脚肉に近い着色剤を塗布して着色フィルムを得、その後フィルムと練製品との密着、及び包装したままでの蒸し上げる加熱によって練製品表面に着色剤を付着させることで製造される(特許文献1)。
【0004】
特許文献1には、魚肉すり身を主要成分とする混練物に所望の加工を施こす工程、天然水産物の外観状模様を、包装用フィルムの表面に可食性インキで印刷する工程、前記加工済混練物の表面が前記印刷された模様と接するようにして前記加工済混練物を前記包装用フィルムで包装する工程、前記模様を前記加工済混練物の表面に転写する工程を含むことを特徴とする水産物コピー食品の製造方法が記載されている。
【0005】
特許文献2には、次の成分(A)~(E)を含有し、(A)油溶性色素結晶、(B)HLB10~15のポリグリセリン脂肪酸エステル、(C)HLB2~6のソルビタン脂肪酸エステル及び/又はHLB2~6のジグリセリン脂肪酸エステル、(D)水及び(E)多価アルコール類、(B)、(C)、(D)及び(E)の混合液中に(A)が分散されてなることを特徴とする色素製剤が記載されている。
【0006】
本出願の出願人は、特許文献2の実施例6に記載されたリコピン結晶を粉砕分散した液状の色素製剤を用いて、包装用フィルムに塗布してすり身に結着させたところ、包装用フィルム上に撥水して伸展せず、すり身が斑に着色され、包装用フィルムに色素が残った。特許文献1及び特許文献2で用いられる色素製剤には、上記の問題がある。
【0007】
天然のカニ脚肉に近い着色剤としては、コチニール色素、各種アントシアニン系色素、クチナシ色素、紅コウジ色素等が知られている。例えば、紅コウジ色素はタンパク質に染色性が良く、食用着色剤として広く用いられている。しかし、これらの天然色素は食品のpHにより色調が変化したり、耐熱性、耐光性が悪いなどの欠点を有し、充分満足のできるものではなかった(特許文献2)。
他方、リコピン等の鮮やかな赤色を呈し高い耐光性を有する結晶性カロテノイド色素は、脂溶性であるために、水性溶媒に分散し難く、タンパク質に対する染色性が劣るとの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭63-7761号公報
【特許文献2】特開2008-63476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、耐光性、耐熱性に優れ、pHによる色調変化が少なく、包装用フィルムに対する伸展性、及びすり身への結着性が優れたカニ脚肉風練製品用着色製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者らは、上記の本発明の課題を解決するべく鋭意検討した結果、耐光性、耐熱性に優れ、pHによる色調変化が少ないリコピンを色素として用いて、セルロース又はセルロース誘導体、及び卵白を含有する着色製剤が、意外にも、包装用フィルムに対する伸展性、及びすり身への結着性が優れており、カニ脚肉風練製品を製造することできることを見出して、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
[1](A)リコピン、
(B)セルロース又はセルロース誘導体、
(C)卵白、及び
(D)水性溶媒を含有するカニ脚肉風練製品用着色製剤。
[2](E)デンプンを更に含む、[1]に記載のカニ脚肉風練製品用着色製剤。
[3](F)レシチンを更に含む、[1]又は[2]に記載のカニ脚肉風練製品用着色製剤。
[4] セルロース又はセルロース誘導体が、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる群から選択される、[1]~[3]のいずれかに記載のカニ脚肉風練製品用着色製剤。
【0012】
[5] デンプンが、コーンスターチ、ばれいしょデンプン、かんしょデンプン、タピオカデンプン、サゴデンプン、葛デンプン、わらびデンプン、蓮根デンプン、緑豆デンプン及びリン酸架橋デンプンからなる群から選択される、[2]~[4]のいずれかに記載のカニ脚肉風練製品用着色製剤。
[6] レシチンが、大豆レシチン、菜種レシチン、卵黄レシチン及びヒマワリレシチンからなる群から選択される、[3]~[5]のいずれかに記載のカニ脚肉風練製品用着色製剤。
[7] [1]~[6]のいずれかに記載のカニ脚肉風練製品用着色製剤を包装用フィルムの表面に塗付する工程、
塗付された包装用フィルムで練製品を包装する工程、及び
包装された練製品を加熱処理して、リコピンを練製品に転写する工程を含む、カニ脚肉風練製品の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によって、耐光性、耐熱性に優れ、pHによる色調変化が少なく、包装用フィルムに対する伸展性、及びすり身への結着性が優れたカニ脚肉風練製品用着色製剤を提供することができる。本発明のカニ脚肉風練製品用着色製剤を用いることで、カニ脚肉風練製品を製造することできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1、比較例1及び2のカニ脚肉風練製品用着色製剤をフィルムの表面に塗付した状態の写真である。
図2】実施例1のカニ脚肉風練製品用着色製剤をフィルムの表面に塗付し、塗付されたフィルムで練製品を包装し、加熱処理して、リコピンを練製品に転写し、フィルムを剥がした状態の写真である。
図3】比較例1と実施例2~5のカニ脚肉風練製品用着色製剤をフィルムの表面に塗付し、塗付されたフィルムで練製品を包装し、加熱処理して、リコピンを練製品に転写し、フィルムを剥がした状態の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.カニ脚肉風練製品用着色製剤
本発明のカニ脚肉風練製品用着色製剤は、以下の(A)~(D)の成分を含む。
(A)リコピン、
(B)セルロース又はセルロース誘導体、
(C)卵白、及び
(D)水性溶媒。
本発明のカニ脚肉風練製品用着色製剤は、更に(E)デンプン及び/又は(F)レシチンを含むことも好ましい。
【0016】
(A)リコピンは、トマト色素の主成分であり、鮮やかな赤色を呈し高い耐光性を有する結晶性カロテノイド色素である。本発明の効果を奏する限り、如何なるリコピンも用いることができる。
リコピンの含有量としては、カニ脚肉風練製品用着色製剤に対して、例えば0.05~1質量%が挙げられ、好ましくは0.1~0.5質量%が挙げられ、より好ましくは0.15~0.3質量%が挙げられる。
【0017】
(B)セルロース又はセルロース誘導体としては、例えばセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、結晶性セルロース、発酵セルロース等が挙げられ、好ましくはメチルセルロースが挙げられる。セルロース又はセルロース誘導体を本発明のカニ脚肉風練製品用着色製剤に含むことで、リコピンの熱、光及び脂質成分による退色及び変色を防止することができる。また、包装用フィルムに対するリコピンの伸展性を向上させることができる。
セルロース又はセルロース誘導体の含有量としては、リコピン1質量部に対して、例えば1~100質量部が挙げられ、好ましくは5~50質量部が挙げられ、より好ましくは10~30質量部が挙げられる。
【0018】
(C)卵白とは鳥類など有羊膜類の卵において卵黄膜と卵殻膜の間にあるゾル状の物質である。90%近くが水分で、残りは主にタンパク質である。タンパク質の主成分はアルブミンであり、本発明には、アルブミン単体での使用も含まれる。
卵白を本発明のカニ脚肉風練製品用着色製剤に含むことで、タンパク質に対する染色性が劣るリコピンのすり身への結着性が向上する。この結着性の向上は、包装用フィルムと練製品と密着させて蒸し上げて加熱する際、リコピンを分散させたまま卵白が固化するためであると考えられる。なお、リコピンをすり身に結着させる助剤として、アラビアガム、ガディガム、アルギン酸ナトリウム、大豆多糖類、及び脱アシルジェランガムの多糖類を検討したが、十分な結着性は得られなかった。
卵白の含有量としては、カニ脚肉風練製品用着色製剤に対して、例えば0.5~20質量%が挙げられ、好ましくは1~10質量%が挙げられ、より好ましくは3~7質量%が挙げられる。
【0019】
(D)水性溶媒としては、例えば揮発性親水性溶媒と水の混合溶媒が挙げられる。揮発性親水溶媒としては、例えばアルコールが挙げられ、好ましくはエタノール等が挙げられる。好ましい水性溶媒としては、例えばエタノールと水の混合溶媒が挙げられる。揮発性親水性溶媒と水の混合溶媒を用いることで、包装用フィルムに対するリコピンの伸展性を向上させることができる。揮発性親水性溶媒と水の混合溶媒の混合質量比は例えば1:9~5:5が挙げられ、好ましくは1.5:8.5~3:7が挙げられる。
【0020】
(E)デンプンとしては、例えばコーンスターチ、ばれいしょデンプン、かんしょデンプン、タピオカデンプン、サゴデンプン、葛デンプン、わらびデンプン、蓮根デンプン、緑豆デンプン、リン酸架橋デンプン等が挙げられ、好ましくは馬鈴薯デンプン等が挙げられる。エンプンを本発明のカニ脚肉風練製品用着色製剤に更に含むことで、リコピンのすり身への結着性が更に向上される。
デンプンの含有量としては、カニ脚肉風練製品用着色製剤に対して、例えば0.5~20質量%が挙げられ、好ましくは1~10質量%が挙げられ、より好ましくは3~7質量%が挙げられる。
【0021】
(F)レシチンとしては、例えば大豆レシチン、酵素分解大豆レシチン、分別大豆レシチン、菜種レシチン、酵素分解菜種レシチン、分別菜種レシチン、卵黄レシチン、酵素分解卵黄レシチン、分別卵黄レシチン、ヒマワリレシチン等が挙げられ、好ましくは酵素分解大豆レシチン等が挙げられる。レシチンを本発明のカニ脚肉風練製品用着色製剤に更に含むことで、カニ脚肉風練製品用着色製剤からの包装用フィルムの剥離性が向上する。
レシチンの含有量としては、カニ脚肉風練製品用着色製剤に対して、例えば0.1~3質量%が挙げられ、好ましくは0.2~2質量%が挙げられ、より好ましくは0.3~1質量%が挙げられる。
【0022】
本発明のカニ脚肉風練製品用着色製剤には、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて他の成分、例えば他の着色料、香料、脂質、脂肪酸、アミノ酸類、酵素、ビタミン類、分散剤、酸化防止剤、防腐剤、矯味剤、乳化剤等を配合することもできる。
【0023】
2.カニ脚肉風練製品の製造方法
本発明のカニ脚肉風練製品は、常法に従って製造することができる。例えば、以下の工程で製造することができる。
本発明のカニ脚肉風練製品用着色製剤を包装用フィルムの表面に塗付する工程、
塗付された包装用フィルムで練製品を包装する工程、及び
包装された練製品を加熱処理して、リコピンを練製品に転写する工程。
【実施例0024】
以下に、本発明を実施例にて説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0025】
カニ脚肉風練製品用着色製剤の調製
実施例1~9、比較例1及び2
表1に記載された添加量(質量部)の各成分を混合して、カニ脚肉風練製品用着色製剤を調製した。
【表1】
【0026】
リコピンベース No.36138:三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製
リコピンベース No.34824:三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製
卵白パウダー:EPS S.p.A 社製,EGG WHITE POWDER
馬鈴薯デンプン:ホクレン農業協同組合連合会製,馬鈴しょでん粉
酵素分解大豆レシチン:三菱商事ライフサイエンス株式会社製,エルマイザーA
【0027】
伸展性の評価
HDフィルムを2cm幅に切断し、調製されたカニ脚肉風練製品用着色製剤0.1mLを滴下して、スパーテルで伸ばした。その状態を以下の基準で伸展性を評価した。
○:十分に伸展する。
△:一部の製剤が集まる。
×:伸展しない。
【0028】
フィルム転写による着色の評価
<すり身の調製>
冷凍すり身(ニチモウ株式会社製,冷凍助宗すり身(A級))100質量部、食塩3質量部、馬鈴薯デンプン10質量部、細かく砕いた氷60質量部(合計173質量部)を、乳鉢でよくすり混ぜて、すり身を調製した。すり身7.5gをスティック状に成型して、以下の着色の評価を行った。
【0029】
<着色の評価>
HDフィルムを6cm幅に切断し、調製されたカニ脚肉風練製品用着色製剤0.1mLを滴下して、スパーテルで伸ばした。そのフィルムの上に、スティック状のすり身を載せてフィルムで覆った。蒸し器(100℃)で30分間、蒸した。その後、フィルムを剥がして、すり身へのリコピンの結着性とフィルム上のリコピンの残存性を確認した。
【0030】
〔すり身へのリコピンの結着性〕
結着性は以下の基準で評価した。
○:すり身にリコピンが結着する。
△:すり身にリコピンが薄く結着する。
×:すり身にリコピンが斑に結着し、リコピンが結着しない部分が存在する。
【0031】
〔フィルム上のリコピンの残存性〕
残存性は、以下の基準で評価した。
○:フィルム上にリコピンがほぼ残存しない。
△:フィルム上にリコピンが僅かに残存する。
×:フィルム上にリコピンが多く残存する。
【0032】
【表2】
【0033】
伸展性、結着性及び残存性の評価結果を、図1~3及び表2に示す。
・伸展性の評価結果
図1及び表2に記載の通り、実施例1~9のカニ脚肉風練製品用着色製剤は、評価が○であり、優れた伸展性が見られた。それに対して、比較例1のカニ脚肉風練製品用着色製剤は、評価が×であり、伸展性が劣っていた。比較例2のカニ脚肉風練製品用着色製剤は、評価が△であり、伸展性が不十分であった。
以上の通り、カニ脚肉風練製品用着色製剤の伸展性のためには、メチルセルロース等のセルロース又はセルロース誘導体が必要であり、更に水性溶媒として揮発性親水性溶媒と水の混合溶媒が好ましいことが分かる。
【0034】
・結着性の評価結果
図2と3及び表2に記載の通り、実施例1~9のカニ脚肉風練製品用着色製剤は、評価が○であり、優れた結着性が見られた。それに対して、比較例1のカニ脚肉風練製品用着色製剤は、評価が×であり、結着性が劣っていた。以上の通り、カニ脚肉風練製品用着色製剤の結着性のためには、卵白が必要であることが分かる。また、図3の実施例2と実施例1、3~5とを比較すると、デンプンを更に含むことが結着性のために好ましいことが分かる。
【0035】
・残存性の評価結果
図2と3及び表2に記載の通り、実施例1、5、6と9のカニ脚肉風練製品用着色製剤は、評価が○であり、優れた残存性が見られた。それに対して、比較例1、実施例2及び7のカニ脚肉風練製品用着色製剤は、評価が×であり、残存性が劣っていた。実施例3、4と8のカニ脚肉風練製品用着色製剤は、評価が△であり、残存性が不十分であった。以上の通り、カニ脚肉風練製品用着色製剤の残存性のためには、レシチンが必要であることが分かる。
【0036】
紅コウジ色素を含有するカニ脚肉風練製品用着色製剤の調製
比較例3
紅コウジ色素(色価63.5,三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製,サンレッド(登録商標)MR)20質量部、95%エタノール10質量部、及びイオン交換水70質量部(合計100質量部)を混合して、紅コウジ色素を含有するカニ脚肉風練製品用着色製剤を調製した。
【0037】
実施例1と比較例3のカニ脚肉風練製品用着色製剤を用いて、上記の着色の評価と同様にして、カニ脚肉風練製品を調製した。
得られたカニ脚肉風練製品に10,000ルックスの光を24時間照射して、耐光性を評価した。具体的には、分光測色計CM-700d(コニカミノルタ株式会社)を用いて色差を測定した。その結果を表3に示す。
【0038】
【表3】
【0039】
実施例1の着色製剤(リコピン含有)では、10,000ルックスの光で24時間照射されても、色差に大きな変化が見られなかった。また、肉眼での変化が観察されなかった。比較例3の着色製剤(紅コウジ色素含有)では、L値(白さ)が上昇し、a値(赤み)が低下し、色差も大きくなった。肉眼でも明らかな退色が観察された。
以上の通り、本願発明のリコピンを含有するカニ脚肉風練製品用着色製剤は、優れた耐光性を有することが認められた。
【0040】
今回開示された実施の形態及び実施例はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によって、耐光性、耐熱性に優れ、pHによる色調変化が少なく、包装用フィルムに対する伸展性、及びすり身への結着性が優れたカニ脚肉風練製品用着色製剤、並びに同着色製剤を用いるカニ脚肉風練製品の製造方法が提供される。
図1
図2
図3