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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094027
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】配筋測定システム及び配筋測定方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/12 20060101AFI20240702BHJP
   G01B 11/08 20060101ALI20240702BHJP
   G01B 11/14 20060101ALI20240702BHJP
   G01B 11/02 20060101ALI20240702BHJP
   G01J 5/48 20220101ALI20240702BHJP
   G01N 25/00 20060101ALN20240702BHJP
【FI】
E04G21/12 105Z
G01B11/08 H
G01B11/14 H
G01B11/02 H
G01J5/48 C
G01N25/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210727
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】395013212
【氏名又は名称】株式会社IHIインフラ建設
(71)【出願人】
【識別番号】509104470
【氏名又は名称】株式会社アイティーティー
(74)【代理人】
【識別番号】100170025
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 一
(72)【発明者】
【氏名】若林 良幸
(72)【発明者】
【氏名】辻井 祐
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 和也
(72)【発明者】
【氏名】小林 崇
(72)【発明者】
【氏名】石川 直
【テーマコード(参考)】
2F065
2G040
2G066
【Fターム(参考)】
2F065AA07
2F065AA12
2F065AA22
2F065AA26
2F065BB12
2F065BB28
2F065CC14
2F065DD03
2F065FF04
2F065FF61
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065QQ21
2F065QQ28
2F065QQ33
2G040AA05
2G040AB08
2G040BA16
2G040BA25
2G040CA01
2G040DA06
2G040EA08
2G040HA05
2G066AC09
2G066AC11
2G066AC20
2G066BA14
2G066BC15
2G066CA01
2G066CA02
2G066CA04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】鉄筋の径、ピッチ、鉄筋の長さ、鉄筋の本数のいずれかを精度高く測定する配筋測定システム及び方法を提供する。
【解決手段】加熱手段10は、配筋2を構成する複数の鉄筋層20のうち、測定対象となる対象鉄筋層20aの一部を加熱する。熱画像取得制御部101が、加熱された対象鉄筋層20aを単眼のサーモカメラ11で撮影して、当該対象鉄筋層20aを示す熱画像を取得する。変換制御部102が、取得された熱画像内の対象鉄筋層20aにおける鉄筋の写真座標系の二次元位置を世界座標系の三次元位置に変換する。特定制御部103が、取得された熱画像内の対象鉄筋層20aにおける鉄筋の境界線を特定する。測定制御部104が、変換された鉄筋の境界線Lの世界座標系の三次元位置に基づいて、当該鉄筋の径、隣接する二つの鉄筋間の距離、特定の鉄筋の長手方向の長さ、対象鉄筋層20aに含まれる鉄筋の本数のいずれかを含む配筋情報を測定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配筋を構成する複数の鉄筋層のうち、測定対象となる対象鉄筋層の一部を加熱する加熱手段と、
前記加熱された対象鉄筋層を単眼のサーモカメラで撮影して、当該対象鉄筋層を示す熱画像を取得する熱画像取得制御部と、
前記取得された熱画像内の対象鉄筋層における鉄筋の写真座標系の二次元位置を世界座標系の三次元位置に変換する変換制御部と、
前記取得された熱画像内の対象鉄筋層における鉄筋の境界線を特定する特定制御部と、
前記変換された鉄筋の境界線の世界座標系の三次元位置に基づいて、当該鉄筋の径、隣接する二つの鉄筋間の距離、特定の鉄筋の長手方向の長さ、前記対象鉄筋層に含まれる鉄筋の本数のいずれかを含む配筋情報を測定する測定制御部と、
を備える配筋測定システム。
【請求項2】
前記加熱手段は、ブロアー、テープヒーター、リボンヒーターのいずれかである、
請求項1に記載の配筋測定システム。
【請求項3】
前記加熱手段は、テープヒーターであり、
前記テープヒーターを特定の鉄筋の長手方向に沿って配置することで、前記特定制御部は、当該特定の鉄筋の長手方向の両端部の境界線を特定し、前記測定制御部は、当該特定の鉄筋の長手方向の両端部の境界線の間の距離を測定することで、当該特定の鉄筋の長手方向の長さを前記配筋情報として測定する、
請求項1に記載の配筋測定システム。
【請求項4】
前記加熱手段は、リボンヒーターであり、
前記リボンヒーターは、特定の鉄筋の一部に巻き付けられる、
請求項1に記載の配筋測定システム。
【請求項5】
加熱手段により、配筋を構成する複数の鉄筋層のうち、測定対象となる対象鉄筋層の一部を加熱する加熱工程と、
前記加熱された対象鉄筋層を単眼のサーモカメラで撮影して、当該対象鉄筋層を示す熱画像を取得する熱画像取得制御工程と、
前記取得された熱画像内の対象鉄筋層における鉄筋の写真座標系の二次元位置を世界座標系の三次元位置に変換する変換制御工程と、
前記取得された熱画像内の対象鉄筋層における鉄筋の境界線を特定する特定制御工程と、
前記変換された鉄筋の境界線の世界座標系の三次元位置に基づいて、当該鉄筋の径、隣接する二つの鉄筋間の距離、特定の鉄筋の長手方向の長さ、前記対象鉄筋層に含まれる鉄筋の本数のいずれかを含む配筋情報を測定する測定制御工程と、
を備える配筋測定システムの配筋測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配筋測定システム及び配筋測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、配筋を構成する鉄筋の径及びピッチを測定する技術が多種存在する。例えば、特開2017-15455号公報(特許文献1)には、同一面上に配置された複数の鉄筋の径及びピッチの少なくとも一方を測定する配筋測定装置が開示されている。この配筋測定装置は、撮影レンズ及びイメージセンサーを備えたカメラと、カメラに備えられた距離計と、撮影方向特定部と、測定部と、を備える。撮影方向特定部は、鉄筋及び平行四辺形、正多角形又は真円を形作る測定基準を有し、鉄筋に対して一定位置に配置された測定基準部材を一画面に収めてカメラで撮影した画像を取得し、画像に含まれる測定基準の形状に基づいて、カメラによる鉄筋の撮影方向を特定する。測定部は、距離計で測定されたカメラから測定基準部材までの距離の情報、撮影方向特定部で特定された撮影方向の情報、撮影レンズの焦点距離の情報及びイメージセンサーの画素サイズの情報に基づいて、画像から鉄筋の径及びピッチの少なくとも一方を測定する。これにより、汎用性の高い測定が可能となるとしている。
【0003】
又、特開2020-26663号公報(特許文献2)には、計測部と、検査画像生成部と、修正部と、を備える配筋検査装置が開示されている。計測部は、配筋が撮影された配筋画像に基づき配筋の状態を計測して、配筋の計測データを生成する。検査画像生成部は、配筋画像に計測データを合成した検査画像を生成する。修正部は、表示された検査画像の計測データに対して操作部により修正操作がされた場合に、計測部に対して計測データの修正を指示する。これにより、撮影画像に基づく配筋検査で計測結果にエラーが認められた場合に、再撮影しなくてもエラーの補正ができるとしている。
【0004】
又、特開2021-1468号公報(特許文献3)には、配筋の正否を判定する配筋検査システムであって、重畳画像生成部と、対象層画像生成部と、鉄筋領域抽出部と、中心線生成部と、中心線数算出部と、配筋判定部と、を備える配筋検査システムが開示されている。重畳画像生成部は、配筋の所定の層の上に配置されたマーカを単眼カメラにより異なる角度から撮影した複数の画像を重ね合わせた重畳画像を生成する。対象層画像生成部は、重畳画像において、配筋の所定の層の対象層画像を生成する。鉄筋領域抽出部は、対象層画像に基づいて、配筋の鉄筋領域を抽出し、中心線生成部は、鉄筋領域の中心線を生成する。中心線数算出部は、所定の範囲に含まれる中心線の数を算出し、配筋判定部は、中心線の数と、設計データとの正否を判定する。これにより、配筋における複数の層のうち、マーカを配置した層の鉄筋を表示した対象層画像を生成することができ、簡易な構成で、マーカを配置した層の鉄筋の本数を算出して、その正否を判定することができるとしている。
【0005】
又、特開2019-196992号公報(特許文献4)には、種別マーカ取付工程と、スケール配置工程と、配筋検査画像取得工程と、配筋検査情報生成工程と、を含み、配筋検査情報をもとに配筋検査を行う配筋検査方法が開示されている。種別マーカ取付工程は、鉄筋コンクリート構造物の構築時において、鉄筋の配筋前または配筋後に、用いられる鉄筋の径を含む鉄筋種別を示す種別マーカを付する。スケール配置工程は、種別マーカが配列された位置にスケールを配置し、配筋検査画像取得工程は、スケール及び種別マーカを含めた配筋検査画像を取得する。配筋検査情報生成工程は、配筋検査画像内のスケール及び種別マーカをもとに画像処理を施し、配筋された鉄筋の鉄筋種別、配筋本数、及び配筋ピッチを含む配筋検査情報を生成する。これにより、配筋検査画像を用いて配筋検査情報を簡易な構成で取得し、迅速かつ精度の高い配筋検査を行うことができるとしている。
【0006】
又、特開2021-85838号公報(特許文献5)には、建造物の工事において鉄筋を検査する配筋検査システムであって、第1の画像取得部と、第2の画像取得部と、制御部と、を備える配筋検査システムが開示されている。第1の画像取得部は、鉄筋の距離画像を取得し、第2の画像取得部は、鉄筋の静止画像を取得する。制御部は、距離画像及び静止画像を演算処理する。ここで、制御部は、計測対象の鉄筋を選定し、鉄筋を計測する基準となる計測線を設定し、静止画像を用いて、計測線上で計測対象の鉄筋のエッジを抽出する。又、制御部は、距離画像から、抽出されたエッジの座標を決定し、決定されたエッジの座標を用いて、鉄筋の間隔及び直径の少なくとも一つを計測する。これにより、配筋の状態を簡単に計測できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-15455号公報
【特許文献2】特開2020-26663号公報
【特許文献3】特開2021-1468号公報
【特許文献4】特開2019-196992号公報
【特許文献5】特開2021-85838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、測定基準部材を鉄筋に配置した上で、カメラで画像を撮影して、カメラによる鉄筋の撮影方向を特定するため、特定の測定基準部材を用意する必要があり、手間や準備が掛かるという課題がある。又、特許文献2に記載の技術では、配筋画像に計測データを合成した検査画像を生成するため、データの合成を適切に行う必要があり、合成が不適切な場合に不具合が生じるという課題がある。
【0009】
又、特許文献3に記載の技術では、様々な角度で撮影したマーカを含む複数の画像を重ね合わせた重畳画像を生成するため、様々な角度でマーカを撮影する必要があり、特許文献4に記載の技術では、スケールと種別マーカを配筋に設置する必要があり、いずれも手間や準備が掛かるという課題がある。
【0010】
更に、特許文献5に記載の技術では、鉄筋の距離画像を取得するための第1の画像取得部(TOFカメラ)と、鉄筋の静止画像を取得するための第2の画像取得部(RGBカメラ)を備えるため、特殊な装置を必要とするという課題がある。
【0011】
そこで、本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、単眼のサーモカメラを用いて、配筋を構成する特定の鉄筋層の複数の鉄筋の径、ピッチ、鉄筋の長さ、鉄筋の本数のいずれかを精度高く測定することが可能な配筋測定システム及び配筋測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る配筋測定システムは、加熱手段と、熱画像取得制御部と、変換制御部と、特定制御部と、測定制御部と、を備える。加熱手段は、配筋を構成する複数の鉄筋層のうち、測定対象となる対象鉄筋層の一部を加熱する。熱画像取得制御部は、前記加熱された対象鉄筋層を単眼のサーモカメラで撮影して、当該対象鉄筋層を示す熱画像を取得する。変換制御部は、前記取得された熱画像内の対象鉄筋層における鉄筋の写真座標系の二次元位置を世界座標系の三次元位置に変換する。特定制御部は、前記取得された熱画像内の対象鉄筋層における鉄筋の境界線を特定する。測定制御部は、前記特定された鉄筋の境界線の世界座標系の三次元位置に基づいて、当該鉄筋の径、隣接する二つの鉄筋間の距離、特定の鉄筋の長手方向の長さ、前記対象鉄筋層に含まれる鉄筋の本数のいずれかを含む配筋情報を測定する。
【0013】
又、本発明に係る配筋測定方法は、加熱工程と、熱画像取得制御工程と、変換制御工程と、特定制御工程と、測定制御工程と、を備える。本発明に係る配筋測定方法の各工程は、本発明に係る配筋測定システムの手段及び各制御部に対応する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、単眼のサーモカメラを用いて、配筋を構成する特定の鉄筋層の複数の鉄筋の径、ピッチ、鉄筋の長さ、鉄筋の本数のいずれかを精度高く測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る配筋測定システムの概略図及び機能ブロック図である。
図2】本発明に係る配筋測定方法の実行手順の一例を示す図である。
図3】ブロアーにより対象鉄筋層を加熱した場合の一例を示す平面斜視図である。
図4】サーモカメラにより加熱後の対象鉄筋層を撮影した場合の一例を示す平面斜視図である。
図5】サーモカメラによりキャリブレーションした場合の一例を示す平面斜視図である。
図6】実像カメラによりキャリブレーションし、実像画像と熱画像とを重ね合わせた場合の一例を示す平面斜視図である。
図7】鉄筋の境界線の世界座標系の三次元位置に基づいて、鉄筋の径及び隣接する二つの鉄筋間の距離を測定した場合の一例を示す平面斜視図と拡大図とである。
図8】テープヒーターにより対象鉄筋層を加熱して鉄筋の径及び隣接する二つの鉄筋間の距離を測定した場合の一例を示す平面斜視図である。
図9】リボンヒーターにより対象鉄筋層を加熱して鉄筋の径及び隣接する二つの鉄筋間の距離を測定した場合の一例を示す平面斜視図である。
図10】実像カメラで撮影した二本の鉄筋とマーカの実像画像と、サーモカメラで撮影した二本の鉄筋とマーカの熱画像である。
図11】ブロアーで加熱したマーカと上方の鉄筋をサーモカメラで撮影した場合の熱画像(図11A)と、測定時の上方の鉄筋を示す熱画像(図11B)と、である。
図12】ブロアーで加熱した下方の鉄筋をサーモカメラで撮影した場合の熱画像(図12A)と、測定時の下方の鉄筋を示す熱画像(図12B)と、である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明し、本発明の理解に供する。尚、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0017】
本発明に係る配筋測定システム1は、図1に示すように、加熱手段10と、単眼のサーモカメラ11と、端末装置12とから基本的に構成されている。
【0018】
ここで、加熱手段10の種類に特に限定は無いが、例えば、図1では、加熱手段10は、熱風を放出するブロアー(熱風機、温風機)を挙げることが出来る。加熱手段10は、配筋2を構成する複数の鉄筋層20のうち、測定対象となる対象鉄筋層20a(例えば、最上の鉄筋層)の一部を加熱する。
【0019】
又、単眼のサーモカメラ11は、対象物の遠赤外線エネルギーを可視化し、可視化された熱画像を表示することが出来る。単眼のサーモカメラ11とは、一つのレンズを有するサーモカメラを意味する。サーモカメラ11の種類に特に限定は無いが、例えば、デジタルサーモカメラを挙げることが出来る。
【0020】
又、端末装置12は、一般に使用されるコンピュータであり、CPU、ROM、RAM、HDD、SSDを内蔵しており、CPUは、例えば、RAMを作業領域として利用し、ROM、HDD等に記憶されているプログラムを実行する。又、後述する各制御部についても、CPUがプログラムを実行することで当該各制御部を実現する。
【0021】
又、端末装置12は、デスクトップ型コンピュータ、ノート型コンピュータ、ハンドヘルドコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistance)、モバイルコンピュータ等を採用することが出来る。又、端末装置12とサーモカメラ11との通信接続形態は、有線でも無線でも良く、ケーブルで接続されても、赤外線通信や近距離無線通信でも構わない。更に、加熱手段10の接続形態に特に限定は無く、端末装置12に通信可能に接続されていても、端末装置12から切り離していても構わない。
【0022】
ここで、熱画像内の対象物の写真座標系の二次元位置を世界座標系の三次元位置に変換するために、本発明に係る配筋測定システム1は、マーカ13(校正プレートともいう)と、単眼の実像カメラ14とを更に備えても良い。
【0023】
ここで、マーカ13は、単眼のサーモカメラ11又は単眼の実像カメラ14をキャリブレーションするための基準であり、サーモカメラ11又は実像カメラ14をキャリブレーションすることで、サーモカメラ11で撮影された熱画像又は実像カメラ14で撮影された実像画像(撮影画像)の対象物の写真座標系の二次元位置(XY)を世界座標系の三次元位置(XYZ)に変換することが出来る。キャリブレーションでは、マーカ13を用いてカメラが撮影した画像の校正パラメータを算出することに相当する。
【0024】
ここで、マーカ13は、例えば、4つの目印(例えば、反射板等)を備え、それぞれの目印の間の距離が予め測定されているマーカであれば、特に限定は無い。例えば、図1に示すように、マーカ13は、正方形に形成された枠材13aと、枠材13aの四隅に設けられた4つの目印13bとで構成されている。4つの目印13bの間の縦方向と横方向との距離は、予め測定されており、これらの距離を用いて、サーモカメラ11又は実像カメラ14のキャリブレーションを行うことが出来る。目印14bは、例えば、円形に構成することが可能である。
【0025】
又、単眼の実像カメラ14は、対象物を含む実像画像を撮影することが出来れば、特に限定は無く、例えば、市販のデジタルカメラ、計測カメラ、デジタルビデオカメラ{例えば、15FPS(Frame Per Second)}、Webカメラ等を挙げることが出来る。サーモカメラ11でキャリブレーションが不可能であれば、実像カメラ14でキャリブレーションを行って、実像カメラ14の実像画像と、サーモカメラ11の熱画像とを対応付けることで、サーモカメラ11の熱画像内の対象物の写真座標系の二次元位置を世界座標系の三次元位置に変換することが出来る。又、端末装置12と実像カメラ14との通信接続形態は、サーモカメラ11の通信接続形態と同様に、有線でも無線でも構わない。
【0026】
次に、図1図2を参照しながら、本発明の実施形態に係る配筋測定方法の実行手順について説明する。先ず、ユーザーが、配筋測定システム1を携帯して、配筋2のある現場に訪れて、端末装置12の電源を投入して、配筋測定の準備を行う。
【0027】
次に、ユーザーが、加熱手段10(例えば、ブロアー)を携帯して、図3に示すように、配筋2を構成する複数の鉄筋層20のうち、測定対象となる対象鉄筋層20a(例えば、最上の鉄筋層)にマーカ13を配置して、その対象鉄筋層20aにブロアー10で熱風を当てて、この対象鉄筋層20aを加熱する(図2:S101)。
【0028】
ここで、加熱手段10による加熱方法に特に限定は無いが、例えば、ユーザーが、ブロアー10の熱風を対象鉄筋層20aの複数の鉄筋に満遍なく吹き付けることで、ブロアー10が対象鉄筋層20aの一部又は全部を加熱することが出来る。鉄筋は、空気と比較して熱伝導率に優れるため、熱風を受けることで、熱風を受けた鉄筋の部分の温度が直ぐに上昇する。又、対象鉄筋層20aでは、複数の鉄筋のそれぞれが溶接されていることから、熱風を受けた鉄筋の部分の熱が対象鉄筋層20aに伝達して、複数の鉄筋が加熱する。尚、上述では、対象鉄筋層20aが最上の鉄筋層(上筋)としているが、これに限らず、下方の鉄筋層(下筋)であっても構わない。又、ブロアー10で対象鉄筋層20aを加熱する際に、対象鉄筋層20a又は対象鉄筋層20aの周囲に断熱材を設けて、対象鉄筋層20aに熱が効果的に伝わるようにしても構わない。
【0029】
さて、例えば、ユーザーが、ブロアー10の熱風を対象鉄筋層20aに吹き付けることで、図3に示すように、最上の対象鉄筋層20aが斜線で示すように加熱されたとする。そして、加熱手段10の加熱が完了すると、次に、端末装置12の熱画像取得制御部101が、加熱された対象鉄筋層20aを単眼のサーモカメラ11で撮影して、当該対象鉄筋層20aを示す熱画像Tを取得する(図2:S102)。
【0030】
ここで、熱画像取得制御部101の取得方法に特に限定は無いが、例えば、ユーザーが、加熱手段10による加熱を完了すると、単眼のサーモカメラ11を、対象鉄筋層20aを撮影することが可能な所定の位置に設置して、サーモカメラ11の電源を投入し、端末装置12に撮影を指示する。すると、端末装置12の熱画像取得制御部101は、図4に示すように、サーモカメラ11に熱画像Tを撮影させるとともに、その撮影された熱画像Tを取得する。
【0031】
ここで、取得された熱画像Tには、先ほど加熱された対象鉄筋層20aが鮮明に映し出される。一方で、加熱されていない鉄筋層は映し出されないことになる。このように、熱を使って、対象鉄筋層20aを加熱して、その熱画像Tを取得することで、配筋2のうち、対象鉄筋層20aだけを抽出することが出来る。
【0032】
従来では、実像カメラを用いて、配筋2を撮影して、撮影された実像画像の中から、対象鉄筋層20aを抽出することが行われていたが、この場合、実像画像では、配筋2のうち、最上の対象鉄筋層20aの他に、下方の複数の鉄筋層も併せて映し出されているため、対象鉄筋層20aと他の複数の鉄筋層とを区別して選定する必要があった。実際、鉄筋は細長いため、実像画像の中では、どの鉄筋がどの鉄筋層を構成しているかを区別することは極めて困難である。本発明では、加熱手段10とサーモカメラ11を利用することで、熱画像Tにおいて対象鉄筋層20aのみを容易に抽出することが出来るため、その後の解析をミス無く円滑に行うことが可能となる。
【0033】
さて、熱画像取得制御部101の取得が完了すると、次に、端末装置12の変換制御部102が、取得された熱画像T内の対象鉄筋層20aにおける鉄筋21aの写真座標系の二次元位置を世界座標系の三次元位置に変換する(図2:S103)。
【0034】
ここで、変換制御部102の変換方法に特に限定は無い。例えば、サーモカメラ11をキャリブレーションすることが出来る場合は、下記のようになる。即ち、図5に示すように、変換制御部102が、サーモカメラ11を使って、対象鉄筋層20aに配置されたマーカ13を撮影する。例えば、マーカ13の枠体13aと目印13bとを金属製に構成し、マーカ13を加熱手段10により加熱することで、サーモカメラ11が、目印13bを含むマーカ13を熱画像T内に捉えることが出来る。その他に、マーカ13の目印13bに熱源を設けることで、サーモカメラ11が、マーカ13の目印13bを熱画像T内に捉えることが出来る。次に、変換制御部102は、所定のメモリに予め記憶されたマーカ13の4つの目印13bのそれぞれの距離d1、d2、d3、d4(ここでは、マーカ13が正方形であるため、全て同じ距離となる)を取得し、写真座標系における熱画像T内のマーカ13の目印13bの二次元位置(XY)を取得し、これらのデータを用いて、世界座標系におけるサーモカメラ11のカメラ位置(XYZ)及びカメラ角度(αβγ)を算出する。そして、変換制御部102は、世界座標系におけるサーモカメラ11のカメラ位置(XYZ)及びカメラ角度(αβγ)を活用して、熱画像T内の対象鉄筋層20aにおける鉄筋21aの写真座標系の二次元位置を世界座標系の三次元位置に変換することが出来る。これをサーモカメラ11のキャリブレーションという。
【0035】
一方、サーモカメラ11をキャリブレーションすることが出来ない場合は、マーカ13と実像カメラ14とを活用して、下記のようになる。即ち、図6に示すように、ユーザーが、単眼の実像カメラ14を、単眼のサーモカメラ11と同様の所定の位置に設置して、実像カメラ14の電源を投入し、端末装置12に撮影を指示する。すると、端末装置12の変換制御部102は、実像カメラ14に実像画像Rを撮影させるとともに、その撮影された実像画像Rを取得する。
【0036】
ここで、対象鉄筋層20aにはマーカ13が設置されているため、実像画像Rにはマーカ13と4つの目印13bが映し出される。そこで、上述と同様に、変換制御部102は、実像カメラ14のキャリブレーションを行う。即ち、変換制御部102は、所定のメモリに予め記憶されたマーカ13の4つの目印13bのそれぞれの距離d1、d2、d3、d4を取得し、写真座標系における実像画像R内のマーカ13の目印13bの二次元位置(XY)を取得し、これらのデータを用いて、世界座標系における実像カメラ14のカメラ位置(XYZ)及びカメラ角度(αβγ)を算出する。そして、変換制御部102は、世界座標系における実像カメラ14のカメラ位置(XYZ)及びカメラ角度(αβγ)を活用して、実像画像R内の対象鉄筋層20aにおける鉄筋21aの写真座標系の二次元位置を世界座標系の三次元位置に変換することが出来る。これを実像カメラ14のキャリブレーションという。
【0037】
ここで、変換制御部102は、実像画像Rと熱画像Tとを関連付けるために、熱画像Tの対象鉄筋層20aを基準として、この熱画像Tを実像画像Rに重ね合わせる。実像画像Rにも対象鉄筋層20aが映し出されていることから、熱画像Tの対象鉄筋層20aと実像画像Rの対象鉄筋層20aとを対応付けることで、熱画像Tを実像画像Rに重ね合わせる。変換制御部102は、熱画像Tを実像画像Rに重ね合わせることで、実像画像Rにおける鉄筋21aの世界座標系の三次元位置を、熱画像Tにおける鉄筋21aの世界座標系の三次元位置として利用することが出来る。
【0038】
ここで、サーモカメラ11でキャリブレーションする場合でも実像カメラ14でキャリブレーションする場合でも、撮影画像の画素がそのまま寸法に密接に関連することから、カメラの撮影画像の画素数が多い方が好ましく、又、撮影画像の解像度は高ければ高いほど好ましい。
【0039】
さて、変換制御部102の変換が完了すると、次に、端末装置12の特定制御部103が、取得された熱画像T内の対象鉄筋層20aにおける鉄筋21aの境界線Lを特定する(図2:S104)。
【0040】
ここで、特定制御部103の特定方法に特に限定は無いが、例えば、図4に示すように、特定制御部103が、熱画像Tに対して、境界線を検出するための所定のエッジ処理を実行することで、熱画像Tに映し出されている対象鉄筋層20aの鉄筋21aの境界線Lを特定する。
【0041】
ここで、エッジ処理の種類に特に限定は無いが、例えば、ソーベルフィルタ、ラプラシアンフィルタ、キャニーフィルタ等を挙げることが出来る。ソーベルフィルタとは、対象画素の画素に対して左右に隣り合う画素の濃度値(輝度)の一次微分を算出して、境界線Lを特定する。ラプラシアンフィルタとは、対象画素の画素値に対して左右に隣り合う画素の濃度値の二次微分を算出して、境界線Lを特定する。キャニーフィルタは、画像の平滑化を行うガウシアンフィルタに、ソーベルフィルタを組み合わせて、輪郭を検出し、境界線Lを特定する。
【0042】
尚、上述では、先ず、S102において、変換制御部102が変換した後に、S103において、特定制御部103が特定したが、この順番に特に限定は無く、例えば、先に、特定制御部103が特定して、後に、変換制御部102が変換しても構わない。
【0043】
さて、特定制御部103の特定が完了すると、最後に、端末装置12の測定制御部104が、変換された鉄筋21aの境界線Lの世界座標系の三次元位置に基づいて、当該鉄筋21aの径D、隣接する二つの鉄筋21a間の距離p、又は特定の鉄筋21aの長手方向の長さE、対象鉄筋層20aに含まれる鉄筋21aの本数のいずれかを含む配筋情報を測定する(図2:S105)
【0044】
ここで、測定制御部104の測定方法に特に限定は無いが、例えば、図7に示すように、測定制御部104が、所定の鉄筋21aの径Dを測定する場合は、所定の鉄筋21aの径方向(短手方向)における左右両側の境界線Lの二つの位置P1、P2を特定し、特定した二つの位置P1、P2の世界座標系の三次元位置P1(XP1、YP1、ZP1)、P2(XP2、YP2、ZP2)を取得する。そして、測定制御部104は、二つの位置P1、P2の世界座標系の三次元位置P1(XP1、YP1、ZP1)、P2(XP2、YP2、ZP2)を用いて、二つの位置P1、P2の距離を、鉄筋21aの径Dとして算出する。これにより、鉄筋21aの径Dを測定することが出来る。
【0045】
又、測定制御部104が、隣接する二つの鉄筋21a間の距離pを測定する場合は、第一の鉄筋21aの径方向における一方側(ここでは、右側)の境界線Lの一つの位置P3と、第一の鉄筋21aと隣接する第二の鉄筋21aであって、第一の鉄筋21aの径方向の一つの位置P3を通過する延長線上に直近に位置する第二の鉄筋21aの径方向における他方側(ここでは、第一の鉄筋21aに近接する左側)の境界線Lの一つの位置P4と、を特定する。続いて、測定制御部104は、特定した二つの位置P3、P4の世界座標系の三次元位置P3(XP3、YP3、ZP3)、P4(XP4、YP4、ZP4)を取得する。そして、測定制御部104は、二つの位置P3、P4の世界座標系の三次元位置P3(XP3、YP3、ZP3)、P4(XP4、YP4、ZP4)を用いて、二つの位置P3、P4の距離を、第一の鉄筋21aと第二の鉄筋21aの間の距離pとして算出する。これにより、隣接する二つの鉄筋21a間の距離pを測定することが出来る。
【0046】
ここで、測定制御部104は、このような処理を熱画像T内の対象鉄筋層20aの鉄筋21aについて繰り返すことで、対象鉄筋層20aの鉄筋21aの径D及び隣接する二つの鉄筋21a間の距離pを測定していくことが出来る。
【0047】
尚、上述では、鉄筋21aの径D及び隣接する二つの鉄筋21a間の距離pを測定したが、これに限らず、例えば、鉄筋21aの長手方向の両側の二つの位置から、特定の鉄筋21aの長手方向の長さEを測定しても構わない。ここで、鉄筋21aの長手方向の長さEに特に限定は無く、鉄筋21aの長手方向の両端部の境界線の間の距離でも良いし、鉄筋21aの長手方向のうち、任意の二点の位置の間の距離でも構わない。
【0048】
更に、熱画像Tに存在し、対象鉄筋層20aに含まれる鉄筋21aの本数を測定しても構わない。ここで、鉄筋21aの本数の測定方法に特に限定無いが、例えば、鉄筋21aの本数は、特定された鉄筋21aの境界線から、一本の鉄筋21aを構成する境界線の群を一本の鉄筋21a毎に特定し、特定した一本の鉄筋21aを構成する境界線の群の数を数えることで測定することが出来る。ここで、熱画像Tに対象鉄筋層20aを構成する鉄筋21aの全てが映し出されている場合には、一枚の熱画像Tで対象鉄筋層20aを構成する全ての鉄筋21aの本数を測定することが可能である。一方、熱画像Tに対象鉄筋層20aを構成する鉄筋21aの一部が映し出されている場合には、対象鉄筋層20aを構成する鉄筋21aを部分的に熱画像Tで撮影し、各熱画像T毎に対象鉄筋層20aに含まれる鉄筋21aの本数を測定し、各熱画像T毎に測定した鉄筋21aの本数を全て合算することで、対象鉄筋層20aを構成する全ての鉄筋21aの本数を測定することが出来る。
【0049】
さて、測定制御部104は、測定結果を配筋情報として収集し、ユーザーに表示する。これにより、ユーザーは、簡単に対象鉄筋層20aの配筋情報を確認することが出来る。このように、本発明では、単眼のサーモカメラを用いて、配筋を構成する特定の鉄筋層の複数の鉄筋の径、ピッチ、鉄筋21aの長手方向の長さ、対象鉄筋層20aに含まれる鉄筋21aの本数のいずれかを精度高く測定することが可能となる。
【0050】
ところで、上述では、加熱手段10としてブロアーを採用したが、他の加熱手段10を採用しても構わない。例えば、加熱手段10として電熱メッシュヒーターを採用しても良いし、超音波やレーザーを採用しても構わない。
【0051】
又、加熱手段10として硬いテープヒーターを採用し、図8に示すように、テープヒーター10を対象鉄筋層20aの複数の鉄筋21aの上に載せて、複数の鉄筋21aの一部を加熱しても良い。ここでは、上下の二つの鉄筋層20が設けられ、上方の鉄筋層20aが対象鉄筋層として設定されている。そして、二つのテープヒーター10を用意して、一方のテープヒーターを複数の鉄筋21aの上に横切るように配置し、他方のテープヒーター10を特定の鉄筋21aの上に、当該特定の鉄筋21aの長手方向に沿って配置することで、二つのテープヒーター10を上下左右に展開するように配置している。このようにしても、テープヒーター10が設置された鉄筋21aの部分における鉄筋21aの径D又は隣接する二つの鉄筋21a間の距離pを測定することが出来る。又、テープヒーター10を特定の鉄筋21a1の長手方向に沿って配置することで、特定制御部103は、当該特定の鉄筋21a1の長手方向の両端部21a2、21a3の境界線Lを特定し、測定制御部104は、当該特定の鉄筋21a1の長手方向の両端部21a2、21a3の境界線Lの間の距離Eを測定することで、当該特定の鉄筋21a1の長手方向の長さEを配筋情報として測定することも可能である。
【0052】
又、図8において、特定制御部103は、熱画像Tのうち、特定の鉄筋21a1の短手方向の両端部21a4、21a5の境界線Lを特定し、測定制御部104は、特定の鉄筋21a1の短手方向の両端部21a4、21a5の境界線Lの間の距離が、鉄筋21aの径を中心とした所定の範囲内に含まれていれば、当該特定の鉄筋21a1の短手方向の両端部21a4、21a5の境界線L(二本の境界線L)を一本の鉄筋21aを構成する境界線Lとして特定する。ここで、鉄筋21a1の短手方向の両端部21a4、21a5の境界線Lの特定について、境界線Lの長手方向に沿った延長線上に他の境界線Lが存在する場合は、特定制御部103は、他の境界線Lは、テープヒーター10等の設置物により、境界線Lと分離しているだけで、一本の鉄筋21aを構成する境界線Lであると判定し、他の境界線Lも、一本の鉄筋21aを構成する境界線Lとして特定する。特定制御部103は、このような処理を全ての鉄筋21aについて行い、測定制御部104は、一本の鉄筋21aを構成する境界線Lの数を数えることで、鉄筋21aの数を測定することが出来る。
【0053】
又、加熱手段10として柔らかいリボンヒーターを採用し、図9に示すように、リボンヒーター10を対象鉄筋層20aの複数の鉄筋21aの上に載せて、複数の鉄筋21aの一部を加熱しても良い。ここで、リボンヒーター10は、柔軟性を有するため、ユーザーは、リボンヒーター10を特定の鉄筋21aの一部に巻き付けるとともに、面ファスナーや接着テープ等の着脱手段10aを用いて、リボンヒーター10を特定の鉄筋21aに固定しても良いし、リボンヒーター10を特定の鉄筋21aの特定の位置に巻き付けても良い。このようにしても、リボンヒーター10が設置された鉄筋21aの部分における鉄筋21aの径D又は隣接する二つの鉄筋21a間の距離pを測定することが出来る。尚、リボンヒーター10であっても、上述と同様に、特定の鉄筋21a1の長手方向の長さEや対象鉄筋層20aに含まれる鉄筋21aの数を測定することは出来る。
【0054】
特に、リボンヒーター10が、特定の鉄筋21aの一部に巻き付けられると、リボンヒーター10と特定の鉄筋21aとの接触面積を増加させて、当該鉄筋21aを確実に加熱することが可能となるとともに、当該鉄筋21aの特定の位置を目印として利用することが可能となる。熱画像Tにおいて鉄筋21a1の目印を作ることで、その後の鉄筋21aの確認などが円滑に進み、加熱の確実性と測定精度の向上を期待することが出来る。
【0055】
又、加熱手段10について、対象鉄筋層20a又は特定の鉄筋21aへの熱の伝わりを促進するために、例えば、対象鉄筋層20a又は特定の鉄筋21aに断熱材を設けたり、対象鉄筋層20a又は特定の鉄筋21aの周囲に断熱材を設けたりしても構わない。その他に、対象鉄筋層20a又は特定の鉄筋21aに熱伝導の高い高伝熱材を設けて、高伝熱材を介して熱の伝わりを促進しても良い。尚、断熱材や高伝熱材の種類に特に限定は無く、テープやシート、塗料等を挙げることが出来る。
【実施例0056】
以下に、実際に測定した結果を用いて、具体的に説明する。
【0057】
先ず、図1に示すように、加熱手段10としてブロアー(簡易温風機)と、単眼のサーモカメラ11として、640x480ピクセルの画素を得ることが出来るFlir社のサーモカメラと、画像解析可能な端末装置12とを用意した。又、試験体として、径が13mmと22mmの鉄筋を用意した。又、マーカ13として、アルミ製の枠体13aとアルミ製の目印13bで構成されたものを用意した。
【0058】
次に、試験室の壁面に、径が22mmの二本の鉄筋21aを立て掛けるとともに、キャリブレーション可能なマーカ13を二本の鉄筋21aに配置し、ブロアーで二本の鉄筋21aを加熱した後に、サーモカメラ11でその熱画像を撮影した。
【0059】
図10Aには、実像カメラ14で撮影した二本の鉄筋21aとマーカ13の実像画像Rと、サーモカメラ11で撮影した二本の鉄筋21aとマーカ13の熱画像Tとが示されている。図10Aに示すように、ブロアーで二本の鉄筋21aを加熱することで、二本の鉄筋21aの境界線が明確に熱画像Tに表れていることが理解される。又、鉄筋21aと外気との温度差が2度~3度ほどあれば、鉄筋21aが明確に識別可能であることが分かった。
【0060】
今度は、実験室の床面に、四本の鉄筋21aを上方に配置し、三本の鉄筋21aを下方に配置するとともに、下方の鉄筋21aの長手方向を上方の鉄筋21aの長手方向に対して直角方向に設定して、複数の鉄筋21aを二段に組んだ。上方の鉄筋21aの径と下方の鉄筋21aの径とをノギスで測定したところ、上方の鉄筋21aの径は18.6mmであり、下方の鉄筋21aの径は12.8mmであった。ここで、隣り合う下方の二本の鉄筋21aのピッチは、100.0mmと設定した。
【0061】
そして、上方の鉄筋21aの上にマーカ13を配置し、先ず、キャリブレーションのために、ブロアーでマーカ13を加熱して、サーモカメラ11でその熱画像を撮影した。すると、図11Aに示すように、マーカ13と外気との温度差が7度~8度の範囲内であり、マーカ13の四つの目印13bが明確に表されていることが理解される。マーカ13の四つの目印13aを用いてサーモカメラ11のキャリブレーションを行った。熱画像Tには、マーカ13とともに上方の鉄筋21aが明確に表されていることから、次に、図11Bに示すように、手動で、上方の鉄筋21aの径方向における左右両側の境界線Lの二つの位置P1、P2を特定し、特定した二つの位置P1、P2の世界座標系の三次元位置P1(XP1、YP1、ZP1)、P2(XP2、YP2、ZP2)を取得した。そして、二つの位置P1、P2の世界座標系の三次元位置P1(XP1、YP1、ZP1)、P2(XP2、YP2、ZP2)の距離を算出することで、上方の鉄筋21aの径を測定した。測定は、上方の鉄筋21aの径方向における左右両側の境界線Lの異なる位置で複数回繰り返した。その結果、測定値は、18.4mm~18.7mmとなり、ノギスでの初期測定値の18.6mmに対して0.1mm~0.2mmの範囲内での誤差であり、極めて精度高く測定することが出来た。
【0062】
次に、ブロアーで三本の下方の鉄筋21aを加熱して、サーモカメラ11でその熱画像を撮影した。すると、図12Aに示すように、下方の鉄筋21aと外気との温度差が7度~8度の範囲内であり、三本の下方の鉄筋21aが明確に表されていることが理解される。そして、図12Bに示すように、手動で、下方の鉄筋21aの径方向における左右両側の境界線Lの二つの位置P1、P2を特定し、特定した二つの位置P1、P2の世界座標系の三次元位置P1(XP1、YP1、ZP1)、P2(XP2、YP2、ZP2)を取得した。そして、二つの位置P1、P2の世界座標系の三次元位置P1(XP1、YP1、ZP1)、P2(XP2、YP2、ZP2)の距離を算出することで、下方の鉄筋21aの径を測定した。測定は、下方の鉄筋21aの径方向における左右両側の境界線Lの異なる位置で複数回繰り返した。その結果、測定値は、12.6mm~13.0mmとなり、ノギスでの初期測定値の12.8mmに対して0.2mmの範囲内での誤差であり、極めて精度高く測定することが出来た。又、隣り合う二本の下方の鉄筋21aのピッチを測定したところ、100.0mmの値を算出することが出来た。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上のように、本発明は、簡単な構成であるにもかかわらず、複数の鉄骨が上下方向に重なり合っている配筋において同一面上の鉄筋の径、ピッチ、鉄筋の長さ、鉄筋の本数のいずれかを測定する技術として有用であり、単眼のサーモカメラを用いて、配筋を構成する特定の鉄筋層の複数の鉄筋の径、ピッチ、鉄筋の長さ、鉄筋の本数のいずれかを精度高く測定することが可能な配筋測定システム及び配筋測定方法として有効である。
【符号の説明】
【0064】
1 配筋測定システム
10 加熱手段
11 サーモカメラ
12 端末装置
13 マーカ
14 実像カメラ
101 熱画像取得制御部
102 変換制御部
103 特定制御部
104 測定制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12