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特開2024-94034酸素吸収性樹脂組成物、成形体及び多層構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094034
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】酸素吸収性樹脂組成物、成形体及び多層構造体
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/02 20060101AFI20240702BHJP
   C08L 3/02 20060101ALI20240702BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20240702BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20240702BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
C08L23/02
C08L3/02
C08K3/08
B32B27/18 G
B32B27/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210734
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 正隆
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F100AB02A
4F100AB02H
4F100AJ07A
4F100AJ07H
4F100AK03A
4F100BA02
4F100CA09A
4F100DA01
4F100GB15
4F100JD03
4J002AB04X
4J002BB03W
4J002BB07W
4J002BB12W
4J002BB15W
4J002BB17W
4J002BF03W
4J002DA086
4J002FD206
(57)【要約】
【課題】SDGsに貢献しつつ、優れた酸素吸収性能を発揮し得る、酸素吸収性樹脂組成物、並びにこれを用いた成形体及び多層構造体を提供する。
【解決手段】アルファ化デンプンと、鉄粉を主成分として含む脱酸素剤組成物と、ポリオレフィン樹脂とを含む、酸素吸収性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルファ化デンプンと、鉄粉を主成分として含む脱酸素剤組成物と、ポリオレフィン樹脂とを含む、酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項2】
前記アルファ化デンプン及び前記脱酸素剤組成物の合計含有量が、10質量%以上60質量%以下である、請求項1に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項3】
前記脱酸素剤組成物に対する前記アルファ化デンプンの質量比[アルファ化デンプン/脱酸素剤組成物]が、0.15以上2.5以下である、請求項1又は2に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項4】
前記アルファ化デンプンが、アルファ化米である、請求項1~3のいずれか1項に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリオレフィン樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びエチレン-プロピレンコポリマーからなる群から選択される1種以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の酸素吸収性樹脂組成物からなる、成形体。
【請求項7】
前記成形体が、フィルム又はシートである、請求項6に記載の成形体。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の成形体からなる酸素吸収層を含む、多層構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素吸収性樹脂組成物、並びにこれを用いた成形体及び多層構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
食品や医薬品、金属製品に代表される、酸素の影響を受けて変質し易い各種製品の酸化を防止する目的で、酸素除去を行う脱酸素剤が従来より使用されている。この脱酸素剤として初期に開発され現在も多く使用されている形態は、粒状又は粉状の脱酸素剤組成物を小袋に詰めたものである。これを改良するものとして、より取扱いが容易で適用範囲が広く、誤食などの問題のない安全な脱酸素体として、脱酸素剤組成物を固定したフィルム又はシート状の形態が考えられている。このようなフィルム又はシート状の脱酸素体は、例えば包装容器や包装袋として用いることができ、包装容器や包装袋自体に酸素吸収性能を持たせることができる。
【0003】
一般に、脱酸素剤組成物をフィルム又はシートの形状とするためには、熱可塑性樹脂をマトリックス成分に利用して、粒状又は粉状の脱酸素剤組成物を複合化する方法が簡便に用いられている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-72941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals,SDGs)として、化石燃料の多用がもたらす環境問題を克服しつつ、新たな産業振興と経済成長を実現することが提唱されており、その一環としてバイオマスの利用が注目されている。
【0006】
バイオマスは、太陽エネルギーを使って水と二酸化炭素から生物が光合成によって生成した有機物であり、生命と太陽エネルギーがある限り持続的に再生可能な資源である。また、バイオマスの燃焼時に放出される二酸化炭素は、化石燃料の燃焼時に放出される二酸化炭素とは異なり、生物の成長過程で光合成により大気中から吸収した二酸化炭素であるため、大気中に新たな二酸化炭素を増加させるものではない。このようなバイオマスは、いわゆる「カーボンニュートラル」な資源といえる。
【0007】
例えば、上記のようなフィルム又はシート状の脱酸素体においても、マトリックス成分として用いる熱可塑性樹脂の少なくとも一部を、化石燃料由来の原料から、バイオマス由来の原料に切り替えることができれば、化石燃料の使用量削減及びプラスチックごみの削減を通じて、SDGsに貢献可能となり得る。
【0008】
そこで本発明は、SDGsに貢献しつつ、優れた酸素吸収性能を発揮し得る、酸素吸収性樹脂組成物、並びにこれを用いた成形体及び多層構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
[1] アルファ化デンプンと、鉄粉を主成分として含む脱酸素剤組成物と、ポリオレフィン樹脂とを含む、酸素吸収性樹脂組成物。
[2] 前記アルファ化デンプン及び前記脱酸素剤組成物の合計含有量が、10質量%以上60質量%以下である、上記[1]に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
[3] 前記脱酸素剤組成物に対する前記アルファ化デンプンの質量比[アルファ化デンプン/脱酸素剤組成物]が、0.15以上2.5以下である、上記[1]又は[2]に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
[4] 前記アルファ化デンプンが、アルファ化米である、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
[5] 前記ポリオレフィン樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びエチレン-プロピレンコポリマーからなる群から選択される1種以上である、上記[1]~[4]のいずれか1項に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
[6] 上記[1]~[5]のいずれか1項に記載の酸素吸収性樹脂組成物からなる、成形体。
[7] 前記成形体が、フィルム又はシートである、上記[6]に記載の成形体。
[8] 上記[6]又は[7]に記載の成形体からなる酸素吸収層を含む、多層構造体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、SDGsに貢献しつつ、優れた酸素吸収性能を発揮し得る、酸素吸収性樹脂組成物、並びにこれを用いた成形体及び多層構造体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に従う酸素吸収性樹脂組成物、並びにこれを用いた成形体及び多層構造体の実施形態について、以下で詳細に説明する。
なお、本明細書において、数値の記載に関する「A~B」という用語は、「A以上B以下」(A<Bの場合)又は「A以下B以上」(A>Bの場合)を意味する。また、本発明において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0012】
[酸素吸収性樹脂組成物]
本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、アルファ化デンプンと、鉄粉を主成分として含む脱酸素剤組成物と、ポリオレフィン樹脂とを含む。
本発明の酸素吸収性樹脂組成物は上記構成であることにより、SDGsに貢献しつつ、優れた酸素吸収性能を発揮し得る。
【0013】
これまで、マトリックス成分としての熱可塑性樹脂には、化石燃料由来のポリオレフィン樹脂が広く用いられてきた。
しかし、マトリックス成分として用いる熱可塑性樹脂の少なくとも一部を、化石燃料由来の原料から、バイオマス由来の原料に切り替えることができれば、化石燃料の使用量削減及びプラスチックごみの削減を通じて、SDGsに貢献可能となり得る。
そこで、本発明者は鋭意検討した結果、バイオマス由来の原料としてアルファ化デンプンを用いた樹脂に着目し、マトリックス成分として用いる熱可塑性樹脂の少なくとも一部を、アルファ化デンプンを用いた樹脂で置き換えることを検討した。その結果、驚くべきことに、酸素吸収性樹脂組成物にアルファ化デンプンが配合されることで、酸素吸収性能が劇的に向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物において、酸素吸収性能が劇的に向上する理由については定かではないが、以下のように推察する。
通常、酸素吸収性樹脂組成物が優れた酸素吸収性能を発揮するためには、酸素吸収性樹脂組成物中に含まれる脱酸素剤組成物、特に脱酸素反応の主剤である鉄粉が、より多くの水及び酸素と接触し、反応することが望まれる。
しかし、酸素吸収性樹脂組成物の場合、樹脂マトリックスの中に脱酸素剤組成物が固定された状態となるため、脱酸素剤組成物は水や酸素と接触する機会が制限され、脱酸素剤組成物が本来もつ酸素吸収性能を十分に発揮できない傾向にある。
これに対し、本発明の酸素吸収性樹脂組成物では、樹脂マトリックス中に、脱酸素剤組成物と共に、アルファ化デンプンが練り込まれていることで、アルファ化デンプンが保持又は吸水した水分が、近接する脱酸素剤組成物の粒子に、適度に且つ継続的に供給されると考えられる。その結果、脱酸素剤組成物が本来もつ酸素吸収性能が十分に発揮され、酸素吸収性樹脂組成物がアルファ化デンプンを含まない場合に比べて、酸素吸収性能が劇的に向上したものと推察される。
【0015】
以下、本実施形態に係る酸素吸収性樹脂組成物について、詳細を説明する。
【0016】
<アルファ化デンプン>
本発明で用いられるアルファ化デンプンは、酸素吸収性樹脂組成物のマトリックス成分及びフィラーとして機能する。
特に、本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、脱酸素剤組成物と共に、アルファ化デンプンを含有することで、アルファ化デンプンが保持又は吸水した水分を、近接する脱酸素剤組成物の粒子に、適度に且つ継続的に供給でき、脱酸素剤組成物が本来持つ酸素吸収性能が十分に発揮され、酸素吸収性樹脂組成物としての酸素吸収性能が劇的に向上する。
【0017】
なお、本明細書において「アルファ化デンプン」とは、水分と加熱によってデンプンを糊化(アルファ化)させ、熱可塑性を持たせたものを指す。
【0018】
このようなアルファ化デンプンの原材料としては、デンプンを主成分とする穀物、例えば米、小麦、サトウキビ、そば、とうもろこし類、馬鈴薯及びさつまいも等の芋類、大豆、小豆等の豆類等を例示することができる。中でも、米を好適に用いることができる。上記原材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
中でも、アルファ化デンプンとしては、米を原材料とするアルファ化米が好ましい。
原材料としての米は、特に限定されないが、食糧問題等を考慮し、古米やくず米等の食されることのない「非食用米」が通常用いられる。
【0020】
酸素吸収性樹脂組成物中のアルファ化デンプンの含有量は、例えば1質量%以上55質量%以下であり、SDGsへの貢献、酸素吸収性能及び成形加工性の観点から、好ましくは5質量%以上50質量%以下、より好ましくは10質量%以上40質量%以下、更に好ましくは15質量%以上35質量%以下である。
【0021】
<脱酸素剤組成物>
本発明で用いられる脱酸素剤組成物は、鉄粉を主成分として含む。該脱酸素剤組成物における鉄粉は、脱酸素反応の主剤である。脱酸素剤組成物は、粒状又は粉状で用いられ、樹脂マトリックス中に分散して、酸素吸収性能を発揮する。
【0022】
脱酸素剤組成物としては、鉄粉を主成分として含むものであれば、特に限定されず、公知の脱酸素剤組成物を用いることができる。
なお、本明細書において、脱酸素剤組成物が「鉄粉を主成分として含む」とは、脱酸素剤組成物中の鉄粉の含有量が60質量%以上であることを意味する。
また、脱酸素剤組成物中の鉄粉の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、より更に好ましくは95質量%以上であり、また上限は例えば100質量%であり、好ましくは99質量%以下である。具体的には、脱酸素剤組成物中の鉄粉の含有量は、好ましくは80質量%以上100質量%以下、より好ましくは85質量%以上100質量%以下、更に好ましくは90質量%以上99質量%以下、より更に好ましくは95質量%以上99質量%以下である。
【0023】
脱酸素剤組成物に用いられる鉄粉としては、樹脂中に分散可能で脱酸素反応を起こすことができるものであれば特に制限はなく、通常脱酸素剤組成物として用いられる鉄粉を使用することができる。鉄粉は、鉄(0価の金属鉄)の表面が露出したものが好ましいが、本発明の効果を妨げない範囲で、通常の金属表面のように極薄い酸化被膜を有するものであってもよい。鉄粉の具体例としては、還元鉄粉、海綿鉄粉、噴霧鉄粉、鉄研削粉、電解鉄粉、粉砕鉄等を用いることができる。また、不純物としての酸素及びケイ素等の含量が少ない鉄粉が好ましく、金属鉄含量が95質量%以上である鉄粉が特に好ましい。
【0024】
鉄粉の平均粒子径は、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下、更に好ましくは10μm以上200μm以下、より更に好ましくは20μm以上100μm以下である。また鉄粉の最大粒子径は、好ましくは500μm以下、より好ましくは400μm以下、更に好ましくは50μm以上350μm以下、より更に好ましくは50μm以上300μm以下である。外観が良好な成形体を得るの観点からは、鉄粉の粒子径は小さいほど平滑な酸素吸収層を形成できるので好ましいが、コストの観点からは、成形体の外観に大きな影響を与えない範囲であれば鉄粉の粒子径は多少大きくてもよい。
なお、鉄粉の最大粒子径及び平均粒子径は実施例に記載の方法により測定される。
【0025】
脱酸素剤組成物は、必要に応じて、上記主成分(主剤)以外の成分を含んでいてもよい。
具体的には、脱酸素剤組成物は、例えば鉄粉とハロゲン化金属とからなる脱酸素剤組成物が好ましく、鉄粉にハロゲン化金属を付着させた脱酸素剤組成物がより好ましい。
【0026】
ハロゲン化金属は、金属鉄の酸素吸収反応に触媒的に作用するものである。ハロゲン化金属を構成する金属の好ましい具体例としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、銅、亜鉛、アルミニウム、スズ、鉄、コバルト及びニッケルからなる群から選択される1種以上が挙げられる。特に、リチウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム及び鉄からなる群から選択される1種以上が好ましい。また、ハロゲン化物の好ましい具体例としては、塩化物、臭化物、ヨウ化物が挙げられ、特に塩化物が好ましく、塩化カルシウムがより好ましい。
脱酸素剤組成物中のハロゲン化金属の含有量は、鉄粉100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上20質量部以下であり、より好ましくは0.2質量部以上5質量部以下、更に好ましくは1質量部以上3質量部以下である。
また、ハロゲン化金属は、水溶液にして鉄粉に被覆させることが好ましい。
【0027】
酸素吸収性樹脂組成物中の脱酸素剤組成物の含有量は、例えば5質量%以上59質量%以下、好ましくは10質量%以上55質量%以下、より好ましくは15質量%以上50質量%以下、更に好ましくは20質量%以上50質量%以下である。脱酸素剤組成物の含有量が上記範囲内であると、酸素吸収性能が向上し、成形加工性も良好となる。
【0028】
また、酸素吸収性樹脂組成物中の鉄粉の含有量は、例えば4質量%以上59質量%以下であり、好ましくは8質量%以上55質量%以下、より好ましくは15質量%以上50質量%以下、更に好ましくは15質量%以上40質量%以下である。脱酸素剤組成物の含有量が上記範囲内であると、酸素吸収性能が向上し、成形加工性も良好となる。
【0029】
酸素吸収性樹脂組成物中のアルファ化デンプン及び脱酸素剤組成物の合計含有量は、好ましくは10質量%以上60質量%以下、より好ましくは20質量%以上55質量%以下であり、更に好ましくは30質量%以上55質量%以下である。脱酸素剤組成物の含有量が上記範囲内であると、酸素吸収性能が向上し、成形加工性も良好となる。
【0030】
酸素吸収性樹脂組成物中の脱酸素剤組成物に対するアルファ化デンプンの質量比[アルファ化デンプン/脱酸素剤組成物]は、好ましくは0.15以上2.5以下、より好ましくは0.5以上2.0以下であり、更に好ましくは0.7以上1.7以下である。上記範囲内であることで、SDGsに貢献しつつ、優れた酸素吸収性能を発揮し得る酸素吸収性樹脂組成物となる。
【0031】
<ポリオレフィン樹脂>
ポリオレフィン樹脂は、熱可塑性樹脂であり、酸素吸収性樹脂組成物のマトリックス成分として機能する。
【0032】
本発明で用いられるポリオレフィン樹脂としては、融点が50℃以上200℃以下であるものが好ましい。このようなポリオレフィン樹脂は、アルファ化デンプンを良好に分散させることができ、成形性も良好となる。ポリオレフィン樹脂の融点は、より好ましくは80℃以上200℃以下であり、更に好ましくは100℃以上180℃以下である。
なお、ポリオレフィン樹脂の融点は実施例に記載の方法により測定される。
【0033】
本発明で用いられるポリオレフィン樹脂は、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、エチレン-プロピレンランダムコポリマー、エチレン-プロピレンブロックコポリマー等のポリオレフィン類;エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体等のポリオレフィン共重合体;上記ポリオレフィン類又は上記ポリオレフィン共重合体とシリコン樹脂とのグラフト重合物等が挙げられ、これらの中でも好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン及びエチレン-プロピレンコポリマーからなる群から選択される1種以上、より好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン及びエチレン-プロピレンコポリマーからなる群から選択される1種以上、更に好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンからなる群から選択される1種以上、より更に好ましくはポリエチレンである。ポリエチレンの中でもガス透過性の観点から低密度ポリエチレンが好ましく、直鎖状低密度ポリエチレンがより好ましい。
ポリオレフィン樹脂は、上記成分を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
酸素吸収性樹脂組成物中のポリオレフィン樹脂の含有量は、例えば30質量%以上90質量%以下、好ましくは35質量%以上80質量%以下、より好ましくは40質量%以上70質量%以下である。
【0035】
酸素吸収性樹脂組成物中のポリオレフィン樹脂に対するアルファ化デンプンの質量比〔アルファ化デンプン/ポリオレフィン樹脂〕は、例えば0.10以上1.80以下、好ましくは0.10以上1.25以下、より好ましくは0.15以上1.00以下、更に好ましくは0.20以上1.00以下である。上記範囲内であることで、SDGsに貢献しつつ、優れた酸素吸収性能を発揮し得る。
【0036】
<他の成分>
酸素吸収性樹脂組成物は、上記アルファ化デンプン、脱酸素剤組成物及びポリオレフィン樹脂以外の他の成分を含有してもよい。
他の成分としては、ポリオレフィン樹脂以外の他の熱可塑性樹脂や、各種添加剤が挙げられる。
他の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;アイオノマー;エラストマー等が挙げられる。
また、添加剤としては、酸化カルシウム等の消泡剤や、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の滑剤、フェノール系又はリン系等の酸化防止剤、酸化チタン等の有機系若しくは無機系の染料又は顔料等の着色剤、シラン系又はチタネート系等の分散剤、ポリアクリル酸系の吸水剤、シリカ又はクレー等の充填剤、ゼオライト又は活性炭等のガス吸着剤等が挙げられる。
【0037】
酸素吸収性樹脂組成物が上記アルファ化デンプン及びポリオレフィン樹脂以外の他の熱可塑性樹脂を含む場合、酸素吸収性樹脂組成物中のポリオレフィン樹脂に対する他の熱可塑性樹脂の質量比〔他の熱可塑性樹脂/ポリオレフィン樹脂〕は、例えば0.5/99.5以下、好ましくは0.1/99.9以下である。また、酸素吸収性樹脂組成物は、上記ポリオレフィン樹脂以外の他の熱可塑性樹脂を含まないことが好ましい。
【0038】
また、酸素吸収性樹脂組成物が上記のような添加剤を含む場合、酸素吸収性樹脂組成物中の添加剤の含有量は、例えば10質量%以下である。
【0039】
<製造方法>
本発明の酸素吸収性樹脂組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば以下の好適例が挙げられる。
酸素吸収性樹脂組成物は、アルファ化デンプンと、鉄粉を主成分として含む脱酸素剤組成物と、ポリオレフィン樹脂とを混練し、更に必要に応じて他の熱可塑性樹脂や、添加剤を混練し、樹脂中にアルファ化デンプン及び脱酸素剤組成物を均一に分散させることで得られる。
【0040】
アルファ化デンプンとしては、予め樹脂と混錬して、複合化した樹脂組成物(以下、「アルファ化デンプン含有樹脂組成物」という。)を好適に用いることができる。
アルファ化デンプン含有樹脂組成物は特に限定されないが、例えば、デンプンを主成分とする穀物及び水と、ポリオレフィン樹脂とをそれぞれ二軸押出混練機に投入し、混練機内で穀物中のデンプンをアルファ化しながら、ポリオレフィン樹脂と溶融混練して複合化し、ペレット化したもの等が挙げられる。
【0041】
このようなアルファ化デンプン含有樹脂組成物において、アルファ化デンプンの含有量は特に限定されないが、SDGsへの貢献、並びに樹脂組成物としての均一性及び安定性の観点から、例えば20質量%以上80質量%以下、好ましくは40質量%以上70質量%以下、より好ましくは45質量%以上70質量%以下である。
また、アルファ化デンプン含有樹脂組成物は、必要に応じて溶化剤等の添加剤を更に含んでいてもよい。
【0042】
アルファ化デンプンがアルファ化米である場合には、アルファ化米含有樹脂組成物を用いることが好ましい。本発明で好ましく用いられるアルファ化米含有樹脂組成物の市販品例としては、株式会社バイオマスレジン南魚沼製のライスレジンシリーズ「R50E-4」、「R55J-1」、「R70J-1」等挙げられる。
【0043】
また、均一な酸素吸収性樹脂組成物を得る観点では、以下の製造方法がより好ましい。
アルファ化デンプン含有樹脂組成物(X)を準備する工程と、
脱酸素剤組成物とポリオレフィン樹脂と含む脱酸素剤含有樹脂組成物(Y)を準備する工程と、
前記アルファ化デンプン含有樹脂組成物(X)と脱酸素剤含有樹脂組成物(Y)とを混錬して酸素吸収性樹脂組成物を得る工程とを含む、酸素吸収性樹脂組成物の製造方法。
【0044】
アルファ化デンプン含有樹脂組成物(X)を準備する工程は、例えば、アルファ化デンプンと樹脂とを混錬してアルファ化デンプン含有樹脂組成物(X)を得る工程であってもよいし、市販されているアルファ化デンプン含有樹脂組成物(X)を入手し、そのまま用いる工程であってよい。
また、脱酸素剤含有樹脂組成物(Y)との相溶性を更に向上させる観点では、予めアルファ化デンプン含有樹脂組成物(X)とポリオレフィン樹脂とを混錬してアルファ化デンプン含有樹脂組成物(X’)を得る工程を更に含むことが好ましい。
【0045】
脱酸素剤含有樹脂組成物(Y)を準備する工程は、例えば、脱酸素剤組成物とポリオレフィン樹脂とを混練して脱酸素剤含有樹脂組成物(Y)を得る工程であってもよいし、市販されている脱酸素剤含有樹脂組成物(Y)を入手し、そのまま用いる工程であってよい。
【0046】
また、必要に応じて添加剤を配合する場合は、例えば前記脱酸素剤含有樹脂組成物(Y)を得る工程において、予め添加剤とポリオレフィン樹脂とを混錬して得た添加剤含有樹脂組成物を、脱酸素剤組成物及びポリオレフィン樹脂と共に配合して混錬してもよいし、予め添加剤が配合された状態で市販されているアルファ化デンプン含有樹脂組成物(X)や脱酸素剤含有樹脂組成物(Y)を入手し、そのまま用いてもよい。
【0047】
[成形体]
本発明の成形体は、本発明の酸素吸収性樹脂組成物からなる。このような成形体は、SDGsに貢献しつつ、優れた酸素吸収性能を発揮し得る。
【0048】
本成形体は、本発明の酸素吸収性樹脂組成物を成形したものであれば特に限定はされないが、例えば、フィルム又はシートであることが好ましい。
なお、本明細書では、JIS Z0108:2012の「包装用語」規格に基づき、厚さが250μm未満の膜状の成形体を「フィルム」と称し、厚さ250μm以上の板状の成形体を「シート」と称する。
【0049】
成形体の厚さや形状等は特に限定されないが、成形体がフィルムである場合、その厚さは、例えば10μm以上250μm未満、好ましくは10μm以上200μm以下、より好ましくは50μm以上200μm以下であり、また成形体がシートである場合、その厚さは、例えば250μm以上1000μm以下であり、好ましくは300μm以上600μm以下である。成形体の厚さは、用途に応じて適宜選択することが好ましい。
【0050】
上記成形体は公知の方法により作製することができる。
例えば、酸素吸収性樹脂組成物を溶融混練する工程と、該酸素吸収性樹脂組成物を成形する工程とを含む、成形体の製造方法が挙げられる。
具体的には、成形体が、フィルム又はシートである場合、(1)押出機で酸素吸収性樹脂組成物を溶融混練した後、ストランドダイより押出、冷却し、ペレッタイザーでペレット化し、酸素吸収性樹脂組成物からなるペレットをプレスしてフィルム又はシートを得てもよいし、(2)押出機で酸素吸収性樹脂組成物を溶融混練した後、Tダイより製膜してフィルム又はシートを得てもよい。なお、安定的な生産性の観点から、好ましくは上記(2)である。
【0051】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、アルファ化デンプンを含有しているため、アルファ化デンプンの焼けを防止する観点及び成形性を良好とする観点から、混練押出時の加熱温度は好ましくは170℃以上195℃以下、より好ましくは180℃以上190℃以下である。上記範囲内であれば、アルファ化デンプンの状態を良好に維持することができる。
【0052】
[多層構造体]
本発明の多層構造体は、本発明の成形体であるフィルム又はシートを含む。このような多層構造体は、酸素吸収性能に優れ、SDGsに貢献し得るものとなる。
このような多層構造体は、本発明の成形体からなる酸素吸収層を含むものであれよく、例えばガスバリア層、接着層及び酸素吸収層がこの順に積層された多層構造を有するものがより好ましい。
【0053】
<ガスバリア層>
上記ガスバリア層は、外部から進入する酸素を遮断する役割を果たす。
ガスバリア層は、その目的に応じて、上記多層構造体中に1層でもよく、2層以上設けてもよい。2層以上設けることで、外部からの酸素の侵入をより効率的に抑制することができる。
ガスバリア層は、無機蒸着フィルム、金属薄膜、又はエチレンビニルアルコール共重合体及びポリアミド樹脂等のガスバリア樹脂から選択される1種以上を含む層であることが好ましく、ガスバリア性の観点から、無機蒸着フィルムがより好ましい。
【0054】
本ガスバリア層の厚さは、構成する材料によって異なるが、例えば無機蒸着フィルムである場合、好ましくは0.01μm以上100μm以下であり、より好ましくは0.5μm以上50μm以下であり、更に好ましくは1μm以上30μm以下である。
また、多層構造体中のガスバリア層の厚みの割合は、ガスバリア性、透明性及びコストの観点から、多層構造体の全厚みの好ましくは2~20%、より好ましくは5~15%、更に好ましくは5~10%である。
ガスバリア層は1種類の材料からなっていてもよく、複数の材料からなっていてもよい。複数の材料からなる場合、積層して用いてもよく、積層して用いることでより高いバリア効果を発揮することができる。
【0055】
<接着層>
接着層は、接着性樹脂を主成分として含む。
接着性樹脂としては、特に限定されず、公知の接着性熱可塑性樹脂を用いることができる。例えば、オレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン類、ポリエステル系樹脂、ポリイソシアネート系樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、多層構造体中の接着層の厚みの割合は、接着性及びコストの観点から、多層構造体の全厚みの好ましくは0.1~15%、より好ましくは1~10%、更に好ましくは3~8%である。
【0056】
<酸素吸収層>
酸素吸収層は、本発明の成形体であるフィルム又はシートからなる。すなわち、酸素吸収層は、アルファ化デンプンと、脱酸素剤組成物と、ポリオレフィン樹脂とを含む酸素吸収性樹脂組成物からなる。したがって、本酸素吸収層は、前記[酸素吸収性樹脂組成物]の項に記載した各成分及び各比率であることが好ましい。
【0057】
好適な本酸素吸収層の厚さは、成形体がフィルム又はシートである場合の厚さと同様であり、成形体がフィルムである場合は、例えば10μm以上250μm未満、好ましくは10μm以上200μm以下、より好ましくは50μm以上200μm以下であり、成形体がシートである場合は、例えば250μm以上1000μm以下であり、好ましくは250μm以上600μm以下である。
また、多層構造体中の酸素吸収層の厚みの割合は、多層構造体の全厚みの好ましくは10~40%であり、より好ましくは15~25%、更に好ましくは15~20%である。当該範囲内であれば、多層構造体の成形加工性及び外観に悪影響を与えることなく良好な酸素吸収性能を発揮することができる。
【0058】
<その他の層>
また、上記多層構造体は、必要に応じて、上記ガスバリア層、接着層、及び酸素吸収層以外の他の層を有していてもよい。
他の層としては、例えば表基材層や、酸素透過層、シーラント層等が挙げられる。
【0059】
表基材層は、上記ガスバリア層側に配置される層であり、ガスバリア層の保護層の役割を果たすと共に、本多層積層体の意匠性や強度を向上する役割を果たす。
酸素透過層は、上記酸素吸収層側に配置される層であり、容器内の収納物が酸素吸収層に直接接触するのを防ぐ隔離層の役割を果たすと共に、酸素吸収層がその酸素吸収機能を十分に発揮できるように容器内の酸素を迅速かつ効率よく透過する役割を果たす。
シーラント層は、上記酸素吸収層側に配置される層であり、本発明の多層構造体を例えば袋状の包装材として用いる場合などに、最内層としてヒートシールする役割を果たす。なお、酸素透過層は、シーラント層を兼ねてもよい。
上記他の層は、特に限定されるものではなく、各層として公知のものを使用することができる。
【0060】
本発明の多層構造体は、本発明の成形体からなる酸素吸収層を含むものであれば特に限定はされないが、好ましくは多層フィルム又は多層シートであり、より好ましくは多層フィルムである。
なお、本明細書では、JIS Z0108:2012の「包装用語」規格に基づき、厚さが250μm未満の膜状の多層構造体を「多層フィルム」と称し、厚さ250μm以上の板状の多層構造体を「多層シート」と称する。
【0061】
また、多層構造体の厚さは特に限定されないが、多層構造体が多層フィルムである場合、その厚さは、例えば20μm以上250μm未満、好ましくは50μm以上250μm未満、より好ましくは100μm以上220μm以下であり、また多層構造体が多層シートである場合、その厚さは、例えば250μm以上1000μm以下であり、好ましくは250μm以上600μm以下である。
【0062】
上記多層構造体は公知の方法により作製することができる。
例えば、上記の各層は、各層材料の性状、加工目的、加工工程等に応じて、共押出し法、各種ラミネート法、各種コーティング法などの公知の方法を適宜組み合わせて積層することができる。具体的には、(1)ガスバリア層及び酸素吸収層の各層に対応するフィルム又はシートを予め作製又は準備し、少なくとも一方の層に、接着性樹脂を酢酸エチル等の溶剤に溶かした接着剤を塗布して乾燥し、ラミネーターにより2層をドライラミネートして、ガスバリア層、接着層及び酸素吸収層が外層から内層へこの順に積層された層構成を有する多層構造体を得る方法や、(2)ガスバリア層、接着層及び酸素吸収層の各層に対応する押出機で各層を構成する材料を溶融混練した後、T-ダイ、サーキュラーダイ等の多層多重ダイスを通して同時溶融押出することによって、ガスバリア層、接着層及び酸素吸収層が外層から内層へこの順に積層された層構成を有する多層構造体を得る方法等が挙げられる。
【0063】
本発明の多層構造体は、SDGsに貢献でき、酸素吸収性能に優れるため、種々の物品の包装容器に適している。
本発明の多層構造体からなる容器の形態は特に限定されず、蓋材、トレー、パウチ及びラミネートチューブ等が挙げられ、これらの中でもトレーが好ましい。
【0064】
また、容器の被保存物としては、例えば牛乳、乳製品、ジュース、コーヒー、茶類、アルコール飲料等の飲料;ソース、醤油、ドレッシング等の液体調味料、スープ、シチュー、カレー、乳幼児用調理食品、介護調理食品等の調理食品;ジャム、マヨネーズ、ケチャップ、ゼリー等のペースト状食品;ツナ、魚貝等の水産製品;チーズ、バター等の乳加工品;肉、サラミ、ソーセージ、ハム等の畜肉加工品;にんじん、じゃがいも等の野菜類;卵;麺類;調理前の米類、調理された炊飯米、米粥等の加工米製品;農薬、殺虫剤等の化学品;医薬品;化粧品;ペットフード;シャンプー、リンス、洗剤等の雑貨品;種々の物品を挙げることができる。これらの中でもボイル処理、レトルト処理等の熱殺菌処理を施す、果肉、果実汁、コーヒー等を用いたゼリー、羊羹、調理炊飯米、加工米製品、乳幼児用調理食品、介護調理食品、カレー、スープ、シチュー、ジャム、マヨネーズ、ケチャップ、ペットフード、及び水産加工品に好適である。
【0065】
上記容器は公知の方法により作製することができる。
例えば、本発明の多層シートを加熱成形することで、所定の形状の容器に成形することができる。成形方法としては、真空成形、圧空成形、プラグアシスト成形等を適用することができる。なお、成形時の加熱温度は、好ましくは170℃以上190℃以下である。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【実施例0067】
以下、実施例及び比較例を用いて本実施形態を詳しく説明するが、本実施形態は本発明の作用効果を奏する限りにおいて適宜変更することができる。
【0068】
<材料>
実施例及び比較例で使用した材料を以下に示す。
・アルファ化デンプン含有樹脂組成物(X):アルファ化米含有樹脂組成物であるライスレジン(株式会社バイオマスレジン南魚沼製「R50E-4」、組成;アルファ化米50質量%、ポリエチレン50質量%)
・脱酸素剤含有樹脂組成物(Y):三菱瓦斯化学株式会社製、組成;脱酸素剤組成物(鉄粉:98.5質量%、塩化カルシウム:1.5質量%)60質量%、ポリエチレン(融点126.9℃)22.9質量%、その他添加剤17.1質量%
<融点の測定>
上記ポリエチレンの融点は、JIS K 0129:2005に準じて、示差走査熱測定器(株式会社島津製作所製「DSC-60」)を用いて測定した。
・直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE):日本ポリエチレン株式会社製「KC580S」、融点;111.0℃(測定方法は同上。)
【0069】
<酸素吸収性樹脂組成物及びその成形体の作製>
(実施例1)
アルファ化デンプン含有樹脂組成物(X)と、脱酸素剤含有樹脂組成物(Y)とを、質量比〔(X)/(Y)〕が2/1となるように配合し、ドライブレンドした後、ラボプラストミル(株式会社東洋精機製作所製「4C150」)を用い、180℃以上190℃以下で混練押出をし、Tダイより製膜を行い、酸素吸収性樹脂組成物からなる成形体であるフィルム(単層、厚さ:150μm)を得た。
【0070】
(実施例2)
実施例2は、アルファ化デンプン含有樹脂組成物(X)に替えて、以下の方法で作製したアルファ化デンプン含有樹脂組成物(X’)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で酸素吸収性樹脂組成物からなる成形体であるフィルムを得た。
[アルファ化デンプン含有樹脂組成物(X’)の作製]
アルファ化デンプン含有樹脂組成物(X)と、LLDPEとを、質量比〔組成物(X)/LLDPE〕が1/1となるように配合し、ドライブレンドした後、小型二軸セグメント押出機(株式会社東洋精機製作所製「2D15W」)を用い、180℃以上190℃以下で混練押出をし、ストランドダイより押出、冷却し、ペレッタイザーで切断してペレット(アルファ化デンプン含有樹脂組成物(X’))を得た。
【0071】
(実施例3)
実施例3は、アルファ化デンプン含有樹脂組成物(X’)について、アルファ化デンプン含有樹脂組成物(X)とLLDPEとの質量比〔組成物(X)/LLDPE〕を1/2に変更した以外は、実施例2と同様の方法で酸素吸収性樹脂組成物からなる成形体であるフィルムを得た。
【0072】
(比較例1)
比較例1は、アルファ化デンプン含有樹脂組成物(X)に替えて、LLDPEを使用した以外は、実施例1と同様の方法で酸素吸収性樹脂組成物からなる成形体であるフィルムを得た。
【0073】
<評価>
実施例及び比較例で作製したフィルムを用いて以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0074】
(酸素吸収量)
酸素吸収量の測定は、以下の方法により行った。
まず、実施例及び比較例で作製したフィルム(厚さ150μm)を10mm×10mmの寸法でカットし、測定用サンプルを6枚得た。
上記測定用サンプル2枚を、40℃の空気500mlと、10mlのイオン交換水で濡らした脱脂綿と共に、アルミニウム箔ラミネートプラスチックフィルム袋(株式会社サンエー化研製、サイズ180mm×250mm、以下「アルミバリア袋」という)に収容し、開口部をヒートシールして封止した。更に、この時のアルミバリア袋内の酸素濃度(初期酸素濃度)を測定した。
そして、上記アルミバリア袋を速やかに40℃の恒温槽に入れ、7日間保持した。この間、3日、7日のそれぞれの経過時点において、アルミバリア袋内の酸素濃度(保存後の酸素濃度)を測定し、それぞれの経過時点における酸素吸収量(初期酸素濃度-保存後の酸素濃度)を算出した。
なお、酸素濃度は、ガス分析計(MOCON社製「Check Mate 3」)を使用して測定した。測定は、ガス分析計に付随しているサンプルリング用シリコンチューブの先端にある中空針を、アルミバリア袋に予め貼り付けておいたサンプリング用ゴムシートから袋内部に挿入して、アルミバリア袋内の酸素濃度を計測することにより行った。
上記測定は各実施例及び比較例につき、各3回ずつ行い、それぞれの平均値を算出した。結果を表1に示す。酸素吸収量は多いほど、酸素吸収性能に優れることを意味する。
【0075】
【表1】
【0076】
表1に示すように、アルファ化デンプンであるアルファ化米と、鉄粉を主成分として含む脱酸素剤組成物と、ポリオレフィン樹脂とを含む酸素吸収性樹脂組成物は、酸素吸収性能に優れていることが確認された(実施例1~3)。
【0077】
一方、アルファ化デンプンを含まない酸素吸収性樹脂組成物は、上記本発明の酸素吸収性樹脂組成物(実施例1~3)に比べて、酸素吸収性能が劣ることが確認された(比較例1)。
【0078】
また、本発明の酸素吸収性樹脂組成物(実施例1~3)は、樹脂マトリックスの一部をバイオマス由来の原料であるアルファ化デンプンが担っているため、SDGsに貢献し得るものである。