(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094038
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】電動アシスト自転車の駆動システム、電動アシスト自転車、電動アシスト自転車の制御方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
B62M 6/50 20100101AFI20240702BHJP
【FI】
B62M6/50
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210745
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東 周彦
(72)【発明者】
【氏名】服部 陽一郎
(57)【要約】
【課題】制御モードを変更する際の、電動アシスト自転車の乗り心地を更に向上できる駆動システムを提供する。
【解決手段】制御装置30は、第1モードから第2モードへの変更条件が満たされたときに、ペダル2aの軌跡Loの最上点P0に対応するクランク角度位置に、90度を加算した角度位置P1と、最上点P0に対応するクランク角度位置に、135度を加算した角度位置P2との間の変更開始位置Psで、第1アシスト比から第2アシスト比に向けたアシスト比の変化を開始する。制御装置30は、変更開始位置Psに少なくとも45度を加算した変更終了位置Peで、アシスト比が第2アシスト比に到達するようにアシスト比を変化させる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク軸に取り付けられたペダルに作用する踏力を検知するセンサと、
前記ペダルの踏み込みをアシストするための電動モータと、
制御モードに応じたアシスト比と前記センサで検知した踏力とに基づいて、前記電動モータを制御する制御装置と
を有し、
前記制御装置は、前記制御モードとして、第1アシスト比に基づいて前記電動モータを制御する第1制御モードと、第2アシスト比に基づいて前記電動モータを制御する第2制御モードとを有し、
前記制御装置は、
前記第1モードから前記第2モードへの変更条件が満たされたときに、前記ペダルの軌跡の最上点に対応する前記クランク軸の角度位置に、90度を加算した角度位置と、前記最上点に対応する前記クランク軸の角度位置に、135度を加算した角度位置との間の変更開始位置で、前記第1アシスト比から前記第2アシスト比に向けたアシスト比の変化を開始し、
前記変更開始位置に少なくとも45度を加算した変更終了位置で前記アシスト比が前記第2アシスト比に到達するように前記アシスト比を変化させる
電動アシスト自転車の駆動システム。
【請求項2】
前記変更開始位置と前記変更終了位置との間の角度差は、135度以下である
請求項1に記載される電動アシスト自転車の駆動システム。
【請求項3】
前記変更開始位置と前記変更終了位置との間の角度差は、60度以上である
請求項1に記載される電動アシスト自転車の駆動システム。
【請求項4】
前記変更終了位置は、前記最上点に135度を加算した角度位置と、前記最上点に225度を加算した角度位置との間である
請求項1に記載される電動アシスト自転車の駆動システム。
【請求項5】
前記変更終了位置は、前記最上点に270度以下の角度を加算した角度位置である
請求項1に記載される電動アシスト自転車の駆動システム。
【請求項6】
前記変更終了位置は、前記最上点に225度以下の角度を加算した角度位置である
請求項5に記載される電動アシスト自転車の駆動システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記クランク軸の角度位置が前記変更開始位置と前記変更終了位置との間にあるときに、前記アシスト比が前記第1アシスト比から前記第2アシスト比に徐々に近づくように、前記アシスト比を算出する
請求項1に記載される電動アシスト自転車の駆動システム。
【請求項8】
前記クランク軸の角度位置の変化量を検知するためのセンサを有し、
前記制御装置は、前記ペダルが前記変更開始位置と前記変更終了位置との間にあるときに、前記クランク軸の角度位置の変化量に基づいて前記アシスト比を算出する
請求項1に記載される電動アシスト自転車の駆動システム。
【請求項9】
前記制御装置は、前記第1アシスト比と第2アシスト比との差と、前記変更開始位置と前記変更終了位置との間の角度差とに基づいて、前記アシスト比の変化率を算出する
請求項8に記載される電動アシスト自転車の駆動システム。
【請求項10】
請求項1に記載される駆動システムと、
前記電動モータが出力するアシストトルクが伝えられる車輪と
を有している電動アシスト自転車。
【請求項11】
制御モードに応じたアシスト比とセンサで検知した踏力とに基づいて電動モータを制御し、前記制御モードとして、第1アシスト比に基づいて前記電動モータを制御する第1制御モードと、第2アシスト比に基づいて前記電動モータを制御する第2制御モードとを有している、電動アシスト自転車の制御方法であって、
前記第1モードから前記第2モードへの変更条件が満たされたときに、ペダルの軌跡の最上点に対応するクランク軸の角度位置に、90度を加算した角度位置と、前記最上点に対応する前記クランク軸の角度位置に、135度を加算した角度位置との間の変更開始位置で、前記第1アシスト比から前記第2アシスト比に向けたアシスト比の変化を開始し、
前記変更開始位置に少なくとも45度を加算した変更終了位置で前記アシスト比が前記第2アシスト比に到達するように前記アシスト比を変化させる
電動アシスト自転車の制御方法。
【請求項12】
制御モードに応じたアシスト比とセンサで検知した踏力とに基づいて、電動モータを制御し、前記制御モードとして、第1アシスト比に基づいて前記電動モータを制御する第1制御モードと、第2アシスト比に基づいて前記電動モータを制御する第2制御モードとを有している制御装置として、コンピュータを機能させるプログラムであって、
前記第1モードから前記第2モードへの変更条件が満たされたときに、前記ペダルの軌跡の最上点に対応する前記クランク軸の角度位置に、90度を加算した角度位置と、前記最上点に対応する前記クランク軸の角度位置に、135度を加算した角度位置との間の変更開始位置で、前記第1アシスト比から前記第2アシスト比に向けたアシスト比の変化を開始する手段、及び
前記変更開始位置に少なくとも45度を加算した変更終了位置で前記アシスト比が前記第2アシスト比に到達するように前記アシスト比を変化させる手段
としてコンピュータを機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動アシスト自転車の駆動システム、電動アシスト自転車、電動アシスト自転車の制御方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電動アシスト自転車の多くは、電動モータが出力するアシストトルクが相対的に大きいモードや、アシストトルクが相対的に小さいモードなど、複数の制御モードを有している。下記特許文献1では、ペダルの1サイクルにおけるモード変更のタイミング(アシスト比を変更するタイミング)について開示されている。具体的には、一方のペダルが、その軌跡の最下点に比較的近い角度位置にあるときに、アシスト比を変更することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で開示されるように、一方のペダルが最下点の近くにあるときにアシスト比が変更されると、ライダーの乗り心地に影響することがある。
【0005】
本開示は、制御モードを変更する際の電動アシスト自転車の乗り心地を更に向上できる、駆動システム、及び電動アシスト自転車、電動アシスト自転車の制御方法、プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示で提案する電動アシスト自転車の駆動システムは、クランク軸に取り付けられたペダルに作用する踏力を検知するセンサと、前記ペダルの踏み込みをアシストするための電動モータと、制御モードに応じたアシスト比と前記センサで検知した踏力とに基づいて、前記電動モータを制御する制御装置とを有している。前記制御装置は、前記制御モードとして、第1アシスト比に基づいて前記電動モータを制御する第1制御モードと、第2アシスト比に基づいて前記電動モータを制御する第2制御モードとを有している。前記制御装置は、前記第1モードから前記第2モードへの変更条件が満たされたときに、前記ペダルの軌跡の最上点に対応する前記クランク軸の角度位置に、90度を加算した角度位置と、前記最上点に対応する前記クランク軸の角度位置に、135度を加算した角度位置との間の変更開始位置で、前記第1アシスト比から前記第2アシスト比に向けたアシスト比の変化を開始している。前記制御装置は、前記変更開始位置に少なくとも45度を加算した変更終了位置で、前記アシスト比が前記第2アシスト比に到達するように前記アシスト比を変化させる。
【0007】
この駆動システムによると、制御モードの変更に起因するアシスト比の変化の、乗り心地への影響を低減できる。
【0008】
(2)(1)の駆動システムにおいて、前記変更開始位置と前記変更終了位置との間の角度差は、135度以下であってよい。これによると、アシスト比の変更に過度に多くの時間を要することを抑えることができる。
【0009】
(3)(1)又は(2)の駆動システムにおいて、前記変更開始位置と前記変更終了位置との間の角度差は、60度以上であってよい。これによると、アシストトルクの急激な変化を、より効果的に抑えることができる。
【0010】
(4)(1)乃至(3)の駆動システムにおいて、前記変更終了位置は、前記最上点に135度を加算した角度位置と、前記最上点に225度を加算した角度位置との間であってよい。クランク軸がこのような角度位置にあるとき、踏力は弱くなる。言い換えれば、踏力が弱くなったタイミングで、アシスト比の変更が完了する。そのため、アシスト比の変化がライダーによって感知され難くなり、乗り心地が更に向上され得る。
【0011】
(5)(1)乃至(4)の駆動システムにおいて、前記変更終了位置は、前記最上点に270度以下の角度を加算した角度位置であってよい。これによると、変更後の制御モードによるアシスト比での走行開始が過度に遅れることを、抑えることができる。
【0012】
(6)(1)乃至(5)の駆動システムにおいて、前記変更終了位置は、前記最上点に225度以下の角度を加算した角度位置であってよい。これによると、変更後の制御モードによるアシスト比での走行開始が過度に遅れることを、効果的に抑えることができる。
【0013】
(7)(1)乃至(6)の駆動システムにおいて、前記制御装置は、前記クランク軸の角度位置が前記変更開始位置と前記変更終了位置との間にあるときに、前記アシスト比が前記第1アシスト比から前記第2アシスト比に徐々に近づくように、前記アシスト比を算出してよい。
【0014】
(8)(1)乃至(6)の駆動システムは、前記クランク軸の角度位置の変化量を検知するためのセンサを有してよい。前記制御装置は、前記ペダルが前記変更開始位置と前記変更終了位置との間にあるときに、前記クランク軸の角度位置の変化量に基づいて前記アシスト比を算出してよい。これによると、前記変更開始位置と前記変更終了位置との間でアシスト比を変化させることが容易となる。
【0015】
(9)(1)乃至(8)の駆動システムにおいて、前記制御装置は、前記第1アシスト比と第2アシスト比との差と、前記変更開始位置と前記変更終了位置との間の角度差とに基づいて、前記アシスト比の変化率を算出してよい。これによると、クランク軸の角度が予め規定した変更終了位置に到達したときにアシスト比の変化を完了させることを、容易化できる。
【0016】
(10)本開示で提案する電動アシスト自転車は、(1)乃至(9)に記載される駆動システムと、前記電動モータが出力するアシストトルクが伝えられる車輪とを有している。
【0017】
(12)本開示で提案する電動アシスト自転車の制御方法は、制御モードに応じたアシスト比とセンサで検知した踏力とに基づいて電動モータを制御し、前記制御モードとして、第1アシスト比に基づいて前記電動モータを制御する第1制御モードと、第2アシスト比に基づいて前記電動モータを制御する第2制御モードとを有している。前記制御方法は、前記第1モードから前記第2モードへの変更条件が満たされたときに、ペダルの軌跡の最上点に対応するクランク軸の角度位置に、90度を加算した角度位置と、前記最上点に対応する前記クランク軸の角度位置に、135度を加算した角度位置との間の変更開始位置で、前記第1アシスト比から前記第2アシスト比に向けたアシスト比の変化を開始する。前記制御方法は、前記変更開始位置に少なくとも45度を加算した変更終了位置で前記アシスト比が前記第2アシスト比に到達するように前記アシスト比を変化させる。
【0018】
(13)本開示で提案するプログラムは、制御モードに応じたアシスト比とセンサで検知した踏力とに基づいて、電動モータを制御し、前記制御モードとして、第1アシスト比に基づいて前記電動モータを制御する第1制御モードと、第2アシスト比に基づいて前記電動モータを制御する第2制御モードとを有している制御装置として、コンピュータを機能させる。前記プログラムは、前記第1モードから前記第2モードへの変更条件が満たされたときに、前記ペダルの軌跡の最上点に対応する前記クランク軸の角度位置に、90度を加算した角度位置と、前記最上点に対応する前記クランク軸の角度位置に、135度を加算した角度位置との間の変更開始位置で、前記第1アシスト比から前記第2アシスト比に向けたアシスト比の変化を開始する手段、及び、前記変更開始位置に少なくとも45度を加算した変更終了位置で前記アシスト比が前記第2アシスト比に到達するように前記アシスト比を変化させる手段としてコンピュータを機能させる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本開示で提案する車両の一例を示す側面図である。
【
図2】電動アシスト自転車の構成を示すブロック図である。
【
図3】制御装置が有している機能を示すブロック図である。
【
図4】アシスト比の変更に係る変更開始位置と変更終了位置とを説明するための図である。
【
図5】ピーク踏力検出部及び開始位置検出部が実行する処理を説明するためのタイムチャートである。
【
図6】制御装置が実行する制御モードの変更に関連する処理の流れを示すフロー図である。
【
図7】制御装置が実行する制御モードの変更に関連する処理の別の例を示すフロー図である。
【
図8】制御装置の処理の結果の例を示すタイムチャートである。
【
図9】制御装置の処理の結果の別の例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示で提案する電動アシスト自転車について説明する。
図1は本開示で提案する電動アシスト自転車の一例である電動アシスト自転車100の側面図である。
図2は電動アシスト自転車100の構成を示すブロック図である。
図2において太い実線は動力の伝達を表し、細い実線は信号や電流を表している。電動アシスト自転車100はライダーの踏力を補助するための駆動システム10を有している。駆動システム10は、後述する電動モータ21や、制御装置30、モータ駆動装置39、及び操作入力装置58などの電装品で構成される。以下では、電動アシスト自転車100を単に自転車と記載する。
【0021】
[電動アシスト自転車のハードウェア]
図1に示すように、自転車100はクランク軸2を有している。クランク軸2の右端と左端とには、クランクアームを介して、右ペダル2aと左ペダル2aがそれぞれ取り付けられている。クランク軸2はシートチューブ11の下端で支持されている。シートチューブ11の上端にはサドル18が固定されている。自転車100の前部には、ハンドルステム8と、ハンドルステム8の上部に固定されているハンドル7と、ハンドルステム8の下部に固定されているフロントフォーク19と、フロントフォーク19の下端で支持されている前輪9とが設けられている。ハンドルステム8はフレーム17の前端に設けられているヘッドパイプ17aで支持されている。フレーム17の形状は
図1に示す例に限られず、適宜変更されてもよい。
【0022】
自転車100はドライブユニット20(
図1参照)を有している。ドライブユニット20は、ライダーによる後輪6の駆動を補助するアシストトルクを出力する電動モータ21(
図2参照)や減速機25(
図2参照)で構成される。電動モータ21はバッテリ22から供給される電力で駆動する。バッテリ22は、例えば、シートチューブ11の後側に配置され、ドライブユニット20はクランク軸2の後側に配置されてよい。電動モータ21とバッテリ22の位置は、自転車100の例に限られず、適宜変更されてよい。
【0023】
ペダル2aを通してクランク軸2に加えられた力は、
図2に示すように、一方向クラッチ23を通して合力伝達機構24に伝えられる。電動モータ21から出力されるアシストトルクは、減速機25と一方向クラッチ26とを通して、合力伝達機構24に伝えられる。
【0024】
合力伝達機構24は、軸や、軸に設けられている回転部材、チェーン5(
図1参照)などによって構成され、クランク軸2に加えられた力と、電動モータ21から出力されるトルクとを合成する。合力伝達機構24の一例では、2つの力(トルク)は共通の軸や共通の回転部材に入力されることによって合成される。クランク軸2に加えられた力と、電動モータ21から出力されるトルクの双方が、チェーン5に入力されて、合成されてもよい。合力伝達機構24で合成された動力は、
図2に示すように、変速機構27と一方向クラッチ28とを通して後輪6に伝えられてよい。変速機構27は、例えばハンドル7に設けられた操作部材(例えば、レバー)の操作によって変速可能な機構である。
【0025】
自転車100は、ライダーがペダル2aに加える踏力を検知するための踏力センサ41(
図2参照)を有している。踏力センサ41は、例えばクランク軸2に生じたトルクに応じた信号を出力するトルクセンサであってよい。以下では、踏力センサ41で検知するトルクを単に「踏力」と称する。
【0026】
自転車100は、クランク軸2の角度位置の変化に応じて信号を出力するクランク回転センサ45を有している。クランク回転センサ45は、例えばクランク軸2の単位角度変化毎(例えば、1度の変化毎)に、パルス信号を発生するセンサである。制御装置30は、クランク回転センサ45の信号に基づいて、クランク軸2の角度位置の変化量や、クランク軸2の回転速度などを算出する。なお、クランク回転センサ45として、クランク軸2の絶対角度(角度位置)を検知可能なセンサが利用されてもよい。
【0027】
自転車100は、電動モータ21の回転に応じた信号を出力するモータ回転センサ(エンコーダ)42と、車輪の回転に応じた信号を出力する車輪回転センサ43を有している。制御装置30は、モータ回転センサ42の出力に基づいて、電動モータ21の回転速度を算出し、車輪回転センサ43の出力に基づいて車速を算出する。車輪回転センサ43は、前輪9に取り付けられていてもよいし、後輪6に取り付けられていてもよい。
【0028】
また、自転車100は、
図2で示すように、操作入力装置58を有している。操作入力装置58は、ライダーが操作可能な操作部材(例えば、ボタンやレバー)を含み、それらの操作に応じた信号を制御装置30に入力する。ライダーは、例えば、操作入力装置58を通して、電動モータ21の制御モードを選択できる。操作入力装置58として、表示装置(不図示)に触れたライダーの指の位置を検知するタッチセンサが利用されてもよい。
【0029】
[制御装置]
制御装置30は、電動モータ21の制御に係るプログラムやマップを保持している1又は複数のメモリと、そのプログラムを実行する1又は複数のマイクロプロセッサとを有している。制御装置30は、踏力センサ41の出力に基づいて、電動モータ21を制御する。
【0030】
[複数の制御モード]
制御装置30は、電動モータ21の制御モードとして、アシスト比が異なる複数の制御モードを有している。制御装置30は、例えば3つの制御モードを有する(以下では、これらのモードをそれぞれ「強モード」、「標準モード」、及び「エコモード」と称する。)。制御モードの数は、3つより少なくてもよいし、3つより多くてもよい。
【0031】
制御装置30のメモリには、アシスト比を規定する1又は複数のマップ(以下では「アシスト比マップ」と称する)が格納されてよい。例えば、複数のアシスト比マップが、複数の制御モードにそれぞれ対応していてよい。例えば3つの制御モード(強モード、標準モード、及びエコモード)が規定されている場合、3つのアシスト比は強モード>標準モード>エコモードとなってよい。アシスト比は、例えば車速に応じて設定されていてよい。自転車100の走行時、制御装置30は、現在選択されている制御モードに対応するアシスト比マップを参照し、車輪回転センサ43の出力に基づいて算出した車速に対応するアシスト比を算出してよい。
【0032】
アシスト比の算出には、演算式が利用されてもよい。この場合、演算式は、複数の制御モードのそれぞれについて設けられ、アシスト比と車速との関係を規定していてよい。また、アシスト比の算出の他の例では、アシスト比マップと演算式の双方が利用されてもよい。例えば、複数の制御モードにおいて共通に利用されるアシスト比マップが規定されていてよい。そして、例えば、標準モードでは、共通のアシスト比マップから得られた値がそのままアシスト比として利用される一方で、エコモードや強モードにおいては、共通のアシスト比マップから得られる値を補正して得られる値が、アシスト比として利用されてもよい。
【0033】
[制御装置が有する機能]
図3は、制御装置30が有している機能を示すブロック図である。制御装置30は、その機能として、制御モード管理部31と、アシスト比算出部32と、アシストトルク算出部33と、ピーク踏力検出部34とを有している。これらは、制御装置30を構成するマイクロプロセッサが、メモリに保存されているプログラムを実行することによって、実現される。
【0034】
[制御モード管理部]
制御モード管理部31は、自転車100の運転状況やライダーの指示に応じて制御モードを変更する。制御モードが変更されると、アシスト比の算出に利用されるアシスト比マップや算出式が、変更される。
【0035】
制御モード管理部31は、予め規定された制御モードの変更条件が充足されるか否かを判定する。その変更条件が充足されると、制御モード管理部31は、ライダーの操作によらず、自動的に制御モードを変更する。制御モード管理部31は、例えば、踏力センサ41の出力に基づいて算出した踏力が、変更条件を満たすか否かを判定する。
【0036】
例えば、制御モード管理部31は、所定回数(1回又は複数回)のペダル2aの踏み込み動作において、ピーク踏力が閾値を上回るか否かを判定する。ピーク踏力とは、1回の踏み込み動作における踏力の極大である。そして、1又は複数のピーク踏力が閾値を上回ったとき、制御モード管理部31は制御モードをアップ側に変更する。(「アップ側への変更」とは、より高いアシスト比が算出される制御モードへの変更を意味する。)また、制御モード管理部31は、所定回数(1回又は複数回)のペダル2aの踏み込み動作において、ピーク踏力が閾値を下回ったか否かを判定する。そして、1又は複数のピーク踏力が閾値を下回ったとき、制御モード管理部31は制御モードをダウン側に変更する。し(「ダウン側への変更」は、より低いアシスト比が算出される制御モードへの変更を意味する。)ピーク踏力は、後述するピーク踏力検出部34の処理によって検出される。
【0037】
制御モード管理部31は、所定回数(1回又は複数回)のペダル2aの踏み込み動作における踏力の平均を算出してもよい。そして、その平均が閾値を上回る場合に、制御モード管理部31は制御モードをアップ側に変更したり、その平均が閾値を下回る場合に、制御モード管理部31は制御モードをアップ側に変更してもよい。
【0038】
これらの閾値は、変更に係る制御モード毎に設定されていてよい。例えば、エコモードから標準モードへの変更や、標準モードから強モードへの変更などについて、異なる閾値が設定されていてよい。
【0039】
なお、自転車100は操作入力装置58(
図2参照)を有している。ライダーはモード変更指示を操作入力装置58を通して制御装置30に入力できる。モード変更条件の一つは、このようなモード変更指示が操作入力装置58から制御装置30に入力されることであってもよい。
【0040】
[アシスト比算出部]
アシスト比算出部32は、現在選択されている制御モードに対応するアシスト比マップや演算式を利用して、車輪回転センサ43によって検知された車速に対応するアシスト比を算出する。
【0041】
アシスト比算出部32は、上述した制御モードの変更条件が満たされたときには、変更前の制御モードで規定されるアシスト比から、変更後の制御モードで規定されるアシスト比に向けて、アシスト比を徐々に変化させる。アシスト比算出部32は、クランク軸2の角度位置が予め規定された位置に達したときに、アシスト比の変更を開始する。
【0042】
以下では、クランク軸2の角度位置を「クランク角度位置」と称する。変更前の制御モードを「第1制御モード」と称し、第1制御モードによって算出されるアシスト比を「第1アシスト比」と称する。また、変更後の制御モードを「第2制御モード」と称し、第2制御モードによって算出されるアシスト比を「第2アシスト比」と称する。アシスト比の変更を開始する角度位置を「変更開始位置」と称し、アシスト比の変更が終了する角度位置を「変更終了位置」と称する。
【0043】
図4は、変更開始位置と変更終了位置とを説明するための図であり、クランク軸2及びペダル2aの軌跡Loを示している。
【0044】
変更開始位置Psは、ペダル2aの軌跡Loの最上点P0に対応する角度位置に、90度を加算した角度位置P1と、最上点P0に対応する角度位置に、135度を加算した角度位置P2との間に規定された位置である。変更終了位置Peは、変更開始位置Psに、少なくとも45度を加算した位置である。アシスト比算出部32は、クランク角度位置が変更開始位置Psに達したときに、アシスト比の変更を開始する。アシスト比算出部32は、クランク角度位置が変更終了位置Peに達したときにアシスト比が第2アシスト比に到達するように、アシスト比を徐々に変化させる。
【0045】
このようなアシスト比算出部32の処理によると、制御モードの変更に起因するアシスト比の変化の、乗り心地への影響を低減できる。一般的に、最上点P0から90度だけ回転した位置(
図4において角度位置P1)に、ペダル2aがあるときに、踏力は最大となる。この角度位置P1を過ぎると、踏力は徐々に弱くなる。したがって、上述した変更開始位置Psと変更終了位置Peとの間では、比較的弱い踏力がペダル2aに入力される。言い換えれば、踏力が弱くなる期間に合わせて、アシスト比が変化する。そのため、アシスト比の変化がライダーによって感知され難くなり、乗り心地が更に向上され得る。
【0046】
このことは、特に制御モードのアップ側への変更時に、効果的である。上述した変更開始位置Psと変更終了位置Peとの間では、ペダル2aに作用する踏力は徐々に弱くなる一方で、制御モードのアップ側への変更時にはアシスト比は徐々に高くなる。そのため、踏力の減少に起因する、アシストトルクの低下或いは自転車100の加速度の低下を、アシスト比の上昇によって補うことができる。その結果、乗り心地が更に向上され得る。
【0047】
変更開始位置Psと変更終了位置Peとの間の角度差Δθ(
図4参照)は、60度以上であるのが好ましい。これによると、制御モードの変更に起因するアシストトルクの急激な変化を、更に効果的に抑えることができる。
【0048】
変更開始位置Psと変更終了位置Peとの間の角度差Δθ(
図4参照)は、135度以下であってよい。これによると、第1アシスト比から第2アシスト比へのアシスト比の変更に、過度に多くの時間を要することを抑えることができる。角度差Δθは、より好ましくは、90度以下であってよい。これによると、アシスト比の変化速度を適切化できる。変更開始位置Psと変更終了位置Peとの間の角度差は、実質的に70度であってよい。
【0049】
変更終了位置Peは、最上点P0に対応する角度位置に360度以下の角度を加算した位置であってよい。これによると、ペダル2aが再び最上点P0に達する前にアシスト比の変更が終了することとなり、第2アシスト比での走行開始が遅れることを抑えることができる。
【0050】
変更終了位置Peは、最上点P0に270度以下の角度を加算した角度位置であってよい。これによると、変更後の制御モードによるアシスト比での走行開始が過度に遅れることを、効果的に抑えることができる。
【0051】
変更終了位置は、最上点P0に対応する角度位置に、225度以下の角度を加算した位置であってよい。これによると、第2アシスト比での走行開始が遅れることを、更に効果的に抑えることができる。
【0052】
変更終了位置Peは、最上点P0に対応する角度位置に、135度を加算した角度位置P2と、最上点P0に対応する角度位置に、225度を加算した角度位置P4との間であってよい。つまり、変更終了位置Peは、ペダル2aの最下点に対応する角度位置P3の近くであってよい。ペダル2aがこのような角度位置にあるとき、踏力は弱くなる。言い換えれば、踏力が弱くなったタイミングで、アシスト比の変更が完了する。そのため、アシスト比の変化がライダーによって感知され難くなり、乗り心地が更に向上され得る。
【0053】
アシスト比算出部32による、アシスト比の緩やかな変更は、制御モードがアップ側に変更される場合においてのみ実行されてよい。制御モードがダウン側に変更される場合には、上述したアシスト比算出部32の処理は実行されなくてもよい。
【0054】
制御モードがダウン側に変更される場合、クランク角度位置が所定の位置に到達したときに、アシスト比は直ちに変更されてよい。ここで言及する所定の位置は、例えば、ペダル2aの最下点に対応する角度位置P3の近くであってよい。
【0055】
[アシスト比の算出]
アシスト比算出部32は、クランク角度位置が変更開始位置Psと変更終了位置Peとの間にあるときに、アシスト比が第1アシスト比から第2アシスト比に徐々に近づくように、アシスト比を算出する。アシスト比算出部32は、例えば、クランク角度位置に基づいてアシスト比を算出する。より具体的には、アシスト比算出部32は、クランク角度位置と、第1アシスト比と第2アシスト比との差と、変更開始位置Psと変更終了位置Peとの角度差Δθとに基づいて、アシスト比を算出する。
【0056】
アシスト比算出部32は、第1アシスト比R1と第2アシスト比R2との差と、変更開始位置Psと変更終了位置Peとの間の角度差Δθとに基づいて、例えばアシスト比の変化率を算出する。変化率とは、クランク軸2の角度位置の単位変化(例えば、1度)に対応するアシスト比の変化量である。変化率は、例えば、以下の式1-1によって算出され得る。
r=(R2-R1)/Δθ ・・・・・(式1-1)
・r:アシスト比の変化率
・R1:第1アシスト比
・R2:第2アシスト比
・Δθ:変更開始位置Psと変更終了位置Peとの間の角度差
【0057】
アシスト比算出部32は、変更開始位置Psからのクランク軸2の角度位置の変化量(すなわち変更開始位置Psと現在のクランク角度位置との差)と、変化率と基づいて、アシスト比を算出する。アシスト比算出部32は、例えば、以下の式1-2を利用してアシスト比を算出する。
Rx=r×θ+R1 ・・・・・(式1-2)
・Rx:変更開始位置Psと変更終了位置Peとの間の位置でのアシスト比
・r:アシスト比の変化率
・θ:変更開始位置Psを0度としたときの、クランク軸2の現在の角度位置(以下において、変更経過角度)
【0058】
アシスト比算出部32は、クランク回転センサ45の出力に基づいて、クランク角度位置を、所定の周期で算出する。アシスト比算出部32は、クランク角度位置が変更開始位置Psに到達したときから、式1-2において利用する「変更経過角度θ」を計数する。
【0059】
式1-1及び式1-2によると、変更経過角度θが角度差Δθに近づくにつれて、アシスト比Rxは第2アシスト比R2に徐々に近づく。そして、変更経過角度θが角度差Δθに到達したとき、すなわち、現在のクランク角度位置が予め設定された変更終了位置Peに到達したときに、アシスト比Rxは第2アシスト比R2に到達する。つまり、アシスト比Rxが第2アシスト比R2に到達する角度位置を、アシスト比R1・R2によらず固定できる。
【0060】
アシスト比R1・R2は、アシスト比の変更が開始する直前に算出された車速に応じたアシスト比であってよい。すなわち、アシスト比算出部32は、第1制御モードに対応するアシスト比マップ又は演算式を利用して、アシスト比の変更が開始する直前に算出された車速に対応するアシスト比を第1アシスト比R1として算出する。また、アシスト比算出部32は、第2制御モードに対応するアシスト比マップ又は演算式を利用して、アシスト比の変更が開始する直前に算出された車速に対応するアシスト比を第2アシスト比R2として算出する。
【0061】
なお、アシスト比算出部32の処理は、式1-1及び式1-2を利用した例に限られない。
【0062】
例えば、アシスト比算出部32は、クランク軸2の変更経過角度θと、予め設定されたアシスト比の変化率(クランク角度位置の単位変化(例えば、1度)あたり変化量)とに基づいて、アシスト比を算出してよい。
【0063】
この場合、クランク角度位置が上述した角度位置P5(最上点P0に270度を加算した位置)に達する前に、アシスト比が第2アシスト比に到達するように、アシスト比の変化率は予め規定されていてよい。或いは、変更終了位置Peが角度位置P2(
図4参照)と角度位置P4(
図4参照)との間に、結果的に収まるように、アシスト比の変化率は予め設定されていてよい。
【0064】
更に他の例として、アシスト比算出部32は、アシスト比の変更を開始してからの経過時間(以下において変更経過時間)に基づいて、アシスト比を算出してもよい。例えば、アシスト比算出部32は、変更経過時間と、アシスト比の変化速度(単位時間あたりのアシスト比の変化量)とに基づいて、アシスト比を算出してもよい。
【0065】
この場合、クランク角度位置が上述した角度位置P5(最上点P0に270度を加算した位置)に達する前に、アシスト比が第2アシスト比に到達するように、アシスト比の変化速度は予め設定されていてよい。或いは、変更終了位置Peが角度位置P2(
図4参照)と角度位置P4(
図4参照)との間に結果的に収まるように、アシスト比の変化速度は予め設定されていてよい。
【0066】
更に他の例として、アシスト比算出部32は、第1アシスト比R1と第2アシスト比R2との差と、変更開始位置Psから変更終了位置Peまでクランク角度位置が変化するのに要すべき時間とに基づいて、アシスト比の変化速度を算出してよい。そして、アシスト比算出部32は、変更経過時間と、変化速度とに基づいて、アシスト比を算出してよい。
【0067】
[開始位置判定部及びピーク踏力検出部]
アシスト比算出部32は、開始位置検出部32aを含んでいる。開始位置検出部32aは、クランク角度位置が変更開始位置Psに到達したことを検出する。開始位置検出部32aは、例えば、踏力センサ41の出力と、クランク回転センサ45の出力とに基づいて、変更開始位置Psへの到達を検出する。
【0068】
図5は、開始位置検出部32aとピーク踏力検出部34とが行う処理の例を説明するためのタイムチャートである。同図の縦軸は、踏力センサ41の出力に基づいて検知される踏力である。同図に示すように、踏力は周期的に変動している。例えば、ピーク踏力Pk1が得られるt1では、一方のペダル2a(例えば、右ペダル2a)は水平位置(角度位置P1、
図4参照)にあると推定される。また、踏力が極小となるt2では、この一方のペダル2aは最下点(角度位置P3、
図4参照)にあると推定される。また、次のピーク踏力Pk2が得られるt3では、他方のペダル2a(例えば、左ペダル2a)が水平位置(角度位置P1、
図4参照)にあると推定され、踏力が極小となるt4では、この他方のペダル2aが最下点(角度位置P3、
図4参照)にあると推定される。
【0069】
ピーク踏力検出部34は、「1回の漕ぎ」における踏力の極大(すなわち、ピーク踏力)を探索する。「1回の漕ぎ」とは、例えば、各ペダル2aの最上点P0から、最下点までの動きに相当する。上の例では、右ペダル2aについての「1回の漕ぎ」は、踏力が極小となるt0から、踏力が次の極小となるt2までの期間に対応する。また、左ペダル2aについての「1回の漕ぎ」は、踏力が極小となるt2から、踏力が次の極小となるt4までの期間に対応する。
【0070】
ピーク踏力検出部34は、例えば、踏力センサ41の出力に基づいて、1回の漕ぎに要する時間よりも十分に短いサンプリング周期で踏力を検知する。メモリには、ピーク踏力の候補が記録されている。ピーク踏力検出部34は、メモリに記録しているピーク踏力の候補と、新たに検知した踏力とを比較する。新たに検知した踏力がメモリに記録している候補より大きい場合、ピーク踏力検出部34は、メモリに記録しているピーク踏力の候補を、新たに検知した踏力に書き換える。反対に、新たに検知した踏力が、メモリに記録しているピーク踏力の候補より小さい場合、ピーク踏力検出部34は、メモリに記録しているピーク踏力の候補を維持する。
【0071】
そして、クランク軸2が所定角度だけ回転する間(
図5においてt1~t11の期間、及びt3~t31の期間)、メモリに記録している踏力が変更されなかった場合、ピーク踏力検出部34は、メモリに記録されている候補を、ピーク踏力として確定する。以下では、この所定角度を「ピーク判定角度」(
図5参照)と称する。ピーク判定角度は、例えば20度であるが、20度より小さい角度(例えば、10度)であってもよいし、20度より大きな角度(例えばさ30度)であってもよい。
【0072】
開始位置検出部32aは、ピーク踏力がペダル2aに入力されたタイミング(
図5において時点t1)から、クランク軸2が所定角度だけ回転した時点での角度位置を、変更開始位置Psとする。以下では、この所定角度を「開始遅れ角度」と称する。この開始遅れ角度は、上述したピーク判定角度(例えば、20度)と同じであってよい。この場合、クランク角度位置がピーク判定角度に到達し、ピーク踏力が確定するのと同じタイミングで、変更開始位置Psへ到達したと判断される。これとは異なり、開始遅れ角度は、ピーク判定角度よりも大きくてもよい。例えば、変更開始検出部32aは、ピーク踏力がペダル2aに入力されたタイミング(
図5においてt1)から、ピーク判定角度よりも大きな開始遅れ角度(例えば30度)だけクランク軸2が回転した時点での角度位置を、変更開始位置Psとしてもよい。
【0073】
なお、クランク回転センサ45は、クランク軸2の単位角度変化毎(例えば、1度の変化毎)にパルス信号を発生するセンサではなく、絶対角度に応じた信号を出力するセンサであってもよい。この場合、そのセンサの出力に基づいて、変更開始位置Psが検出されてよい。この場合、変更開始位置Psの検出において、ピーク踏力は利用されなくてよい。
【0074】
[アシストトルク算出部]
アシストトルク算出部33は、アシスト比算出部32によって算出されたアシスト比と、踏力センサ41によって検知した踏力とに基づいて、アシストトルクを算出する。具体的には、アシストトルク算出部33は、アシスト比に踏力を乗じた結果をアシストトルクとして算出する。アシストトルク算出部33は、所定回数の漕ぎにおける踏力の平均に、アシスト比を乗じた結果を、アシストトルクとして算出してもよい。ここでは、漕ぎの回数は、上述した各ペダル2aの最上点P0から最下点までの動きを1回の漕ぎとして計数されてよい。これとは異なり、アシストトルク算出部33は、所定時間における踏力の平均に、アシスト比を乗じた結果を、アシストトルクとして算出してもよい。さらに他の例として、アシストトルク算出部33は、そのような平均を利用することなく、アシスト比算出部32によって算出されたアシスト比を、現在の踏力に乗じ、その結果をアシストトルクとして算出してもよい。制御装置30は、アシストトルクに応じた指令値を、モータ駆動装置39に出力する。
【0075】
[処理の流れ]
制御装置30が実行する処理の例について説明する。
図6は、制御装置30が実行する、制御モードの変更に関連する処理の流れを示すフロー図である。
図6で示す処理は、自転車100が走行している間、繰り返し実行される。
【0076】
まず、ピーク踏力検出部34が、踏力センサ41の出力に基づいてピーク踏力を検出する(S101)。ピーク踏力は、
図5を参照しながら説明したように、1回の漕ぎにおける踏力の極大である。制御モード管理部31は、制御モードの変更条件が成立したか否かを判定する(S102)。制御モード管理部31は、例えば、S101で検出されたピーク踏力が、閾値を超えたか否かを判定する。
【0077】
制御モードの変更条件が成立していない場合(S102において「No」)、制御装置30は今回の処理を終了する。なお、S102の判定において制御モードの変更条件が成立していない場合、アシスト比算出部32とアシストトルク算出部33とによって、現在の制御モードにおけるアシスト比及びアシストトルクの算出処理が実行される。例えば、アシスト比算出部32は、現在の制御モードについて規定されているアシスト比マップや演算式を利用して、アシスト比を算出する。アシストトルク算出部33は、算出されたアシスト比と、踏力センサ41によって検出した踏力とに基づいて、アシストトルクを算出する。アシスト比等の算出処理の実行周期と、
図6で示す処理の実行周期は、同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0078】
制御モードの変更条件が成立した場合(S102において「Yes」)、制御モード管理部31は制御モードを変更する(S103)。制御モード管理部31は、変更後の制御モードを、新たに選択された制御モードとして制御装置30のメモリに記録してもよい。
【0079】
次に、開始位置検出部32aは、クランク角度位置が変更開始位置Psに到達したか否かを判定する(S104)。例えば、開始位置検出部32aは、ピーク踏力がペダル2aに入力された角度位置(
図6では時点t1での角度位置)から、開始遅れ角度だけクランク軸2が回転したか否かを判定する。開始位置検出部32aは、クランク角度位置が変更開始位置Psに達するまで、S104の判定処理を所定の周期で繰り返し実行する。
【0080】
クランク角度位置が変更開始位置Psに到達すると(S104において「Yes」)、アシスト比算出部32は、アシスト比の変化率を算出する(S105)。変化率は、例えば、上述した(式1-1)を利用して算出され得る。
【0081】
アシスト比算出部32は、変更開始位置Psからのクランク角度位置の変化量、すなわち、変更開始位置Psと現在のクランク角度位置との差を算出する(S106)。そして、アシスト比算出部32は、S106で算出されたクランク角度位置の変化量と、S105で算出されたアシスト比の変化率とに応じたアシスト比を算出する(S107)。この算出には、例えば上述した(式1-2)が利用されてよい。
【0082】
アシストトルク算出部33は、算出されたアシスト比と、踏力センサ41で検知した踏力とに基づいて、アシストトルクを算出する(S108)。S108において、アシストトルク算出部33は、上述したように、所定回数の漕ぎにおける踏力の平均や、所定時間における踏力の平均、そのような平均ではない現在の踏力などを利用してよい。制御装置30は、算出されたアシストトルクに応じた指令値をモータ駆動装置39に出力する。
【0083】
アシスト比算出部32は、クランク角度位置が変更終了位置Peに到達したか否かを判定する(S109)。ここで、クランク角度位置が未だ変更終了位置Peに到達していない場合(S109において「No」)、制御装置30はS106に戻り、以降の処理を再び実行する。一方、クランク角度位置が変更終了位置Peに到達した場合(S109において「Yes」)、制御装置30は今回の処理を終了する。
【0084】
なお、開始位置検出部32aは、ピーク踏力がペダル2aに入力されたタイミング(
図5においてt1)から、開始遅れ角度だけクランク軸2が回転した時点での角度位置を変更開始位置Psとする。上述したように、この開始遅れ角度は、ピーク判定角度と同じであってよい。このような処理がなされる場合、S101においてピーク踏力が検出された時点でクランク軸2は既に変更開始位置Psに到達しているので、S104の処理は実行されなくてよい。
図7は、このような場合に、制御装置30が実行する処理の流れの例を示すフロー図である。
図7で示す処理は、自転車100が走行している間、繰り返し実行される。
【0085】
制御装置30(ピーク踏力検出部34)は、例えば、踏力センサ41の出力に基づいて所定のサンプリング周期で踏力を検知し、メモリに記録されているピーク踏力の候補を更新する(S201)。具体的には、制御装置30は、メモリに記録されているピーク踏力の候補と、新たに検知した踏力とを比較する。新たに検知した踏力がメモリに記録されている候補より大きい場合、制御装置30は、メモリに記録しているピーク踏力の候補を、新たに検知した踏力に書き換える。反対に、新たに検知した踏力が、メモリに記録されているピーク踏力の候補より小さい場合、制御装置30は、メモリに記録しているピーク踏力の候補を維持する。
【0086】
制御装置30は、メモリに記録されている最新のピーク踏力の候補が検知された角度位置から、クランク軸2がピーク判定角度だけ回転したか否かを判定する(S202)。上述したように、
図7で説明する処理において、ピーク判定角度と開始遅れ角度は同じである。従って、S202の判定は、言い換えれば、クランク角度位置が変更開始位置Psに到達したか否かの判定である。
【0087】
クランク軸2の回転が未だピーク判定角度に達していない場合(S202において「No」)、制御装置30の処理はS201に戻る。一方、クランク軸2の回転がピーク判定角度に達している場合(S202において「Yes」)、制御装置30(ピーク踏力検出部34)は、メモリに記録されている最新の候補を、ピーク踏力として確定する(S203)。ここでは開始遅れ角度とピーク判定角度は同じであるので、ピーク踏力が確定した時点で、クランク角度位置は変更開始位置Psに到達している。
【0088】
以降の処理は、
図6の例と同様に実行されてよい。すなわち、制御モード管理部31は、制御モードの変更条件が成立したか否かを判定する(S204)。制御モードの変更条件が成立していない場合(S204において「No」)、制御装置30は今回の処理を終了する。なお、制御モードの変更条件が成立していない場合には、アシスト比算出部32とアシストトルク算出部33とによって、現在の制御モードにおけるアシスト比及びアシストトルクの算出処理が実行される。
【0089】
制御モードの変更条件が成立した場合(S204において「Yes」)、制御モード管理部31は制御モードを変更する(S205)。また、アシスト比算出部32は、アシスト比の変化率を算出する(S206)。変化率は、例えば、上述した(式1-1)を利用して算出され得る。そして、アシスト比算出部32は、変更開始位置Psからのクランク角度位置の変化量、すなわち、変更開始位置Psと現在のクランク角度位置との差を算出する(S207)。アシスト比算出部32は、S207で算出されたクランク角度位置の変化量と、S206で算出されたアシスト比の変化率とに応じたアシスト比を算出する(S208)。この算出には、例えば上述した(式1-2)が利用されてよい。
【0090】
アシストトルク算出部33は、算出されたアシスト比と、踏力センサ41で検知した踏力とに基づいて、アシストトルクを算出する(S209)。アシスト比算出部32は、クランク角度位置が変更終了位置Peに到達したか否かを判定する(S210)。ここで、クランク角度位置が未だ変更終了位置Peに到達していない場合(S210において「No」)、制御装置30はS207に戻り、以降の処理を再び実行する。一方、クランク角度位置が変更終了位置Peに到達した場合(S210において「Yes」)、制御装置30は今回の処理を終了する。
【0091】
[タイムチャート]
図8は、制御装置30の処理の結果の例を示すタイムチャートである。
図8(a)は踏力の変化を示している。
図8(b)はアシスト比の変化を示している。
図8(c)はクランク角度位置の変化を示している。
図8(a)及び
図8(c)で示すように、ここでは踏力が極小になるクランク角度位置を0度としている。
図8(d)はアシストトルクの変化を示している。
図8では、制御モードがアップ側に変更される場合について説明する。
【0092】
時点t1において、制御モードの変更条件を規定する閾値Th1を超えたピーク踏力がペダル2aに入力されている。上述したように、ピーク踏力検出部34は、過去に検出されたピーク踏力の候補と、新たに検出されたピーク踏力と比較する。そして、新たに検出されたピーク踏力がピーク踏力の候補より高い場合、ピーク踏力の候補を新たに検出されたピーク踏力に書き換える。クランク軸2が所定角度(ピーク判定角度、例えば20度)だけ回転する間にピーク踏力の候補が変化しない場合に、その候補をピーク踏力として確定する。
図8(a)で示す例では、時点t2においてピーク踏力Pk1が確定している。
【0093】
また、制御モード管理部31は、時点t2において、このピーク踏力Pk1が閾値Th1を超えているか否かを判定する。
図8(a)で示すピーク踏力Pk1は閾値Th1より高いので、制御モード管理部31は、制御モードをアップ側(例えば、エコモードから標準モード)に変更する。
図8で示す例では、開始遅れ角度はピーク判定角度と同じである。そのため、時点t2でのクランク角度位置が変更開始位置Psとなっている。従って、アシスト比算出部32は、時点t2から、第1アシスト比(変更前の制御モードでのアシスト比)から第2アシスト比(変更後の制御モードでのアシスト比)に向けて、アシスト比を徐々に上昇させる。
【0094】
なお、開始遅れ角度はピーク判定角度より大きくてもよい。この場合、アシスト比算出部32は、時点t2から遅れて、アシスト比を第1アシスト比から第2アシスト比に向けて上昇させることとなる。
【0095】
時点t3において、クランク角度位置は変更終了位置Peに到達し(
図8(c))、アシスト比は第2アシスト比に到達している(
図8(b))。この変更開始位置Psから変更終了位置Peまでの期間では、
図8(a)で示すように踏力は減少する一方で、
図8(b)で示すようにアシスト比は上昇する。
図8(d)では、現在の踏力(平均ではなく)にアシスト比を乗じた結果が、アシストトルクとして算出されている。そのため、時点t2までの期間では、アシストトルクは踏力に合わせて変動している。ところが、時点t2~t3の期間では、アシスト比は徐々に上昇するので、
図8(d)で示すように、アシストトルクの変化を低減できる。
【0096】
なお、
図8(b)で示す破線L3は、時点t3までアシスト比は第1アシスト比で固定で、時点t3(例えば、クランク角度位置が180度になる時点)でアシスト比を瞬時に第2アシスト比に上昇する例を示している。この場合、
図8(d)の破線L4で示すように、時点t3までは、踏力の減少に合わせてアシストトルクも減少し、時点t3においてアシスト比の瞬時の上昇に合わせて、アシストトルクも急激に上昇している。破線L3・L4との比較で示されるように、制御装置30の処理によると、制御モードの変更条件が満たされたときのアシストトルクの急激な変化を抑えることができる。
【0097】
図9は、制御装置30の処理の結果の別の例を示すタイムチャートである。
図9(a)、(b)、(c)、及び(d)は、
図8と同様に、踏力の変化、アシスト比の変化、クランク角度位置の変化、及びアシストトルクの変化をそれぞれ示している。
図9(e)は、自転車100の前後方向での加速度の変化を示している。自転車100の加速度は、
図9(a)で示す踏力と、
図9(d)で示すアシストトルクとの和に対応している。
図9でも、
図8と同様に、制御モードがアップ側に変更される場合について説明する。
【0098】
図9は、
図8とは異なり、所定回数の漕ぎにおける踏力の平均(又は所定時間における踏力の平均)と、アシスト比とに基づいて、アシストトルクが算出される例を説明する。
図9(a)、(b)、及び(c)で示される踏力等の変化は、
図8と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0099】
図9では、アシストトルクは、踏力の平均とアシスト比とに基づいて、算出される。そのため、
図9(d)で示すように、時点t2までの期間では、アシストトルクは、
図9(a)で示す踏力ほどには変化していない。自転車100の加速度は、踏力とアシストトルクとの和に対応しているので、
図9(e)で示すように、時点t2までの期間では、自転車100の加速度は踏力に合わせて変化している。
【0100】
図9(b)で示すように、アシスト比は、時点t2から徐々に上昇している。踏力の平均は大きくは変化しないため、時点t2~t3の期間では、アシストトルクもアシスト比に合わせて徐々に上昇する。一方、この期間(変更開始位置Psから変更終了位置Peの角度範囲)では、
図9(a)で示すように、踏力は徐々に減少する。そのため、踏力の減少をアシストトルクの上昇が補い、自転車100の加速度の変化が抑えられる。これにより、制御モードの変更時における自転車100の乗り心地が向上され得る。
【0101】
なお、
図9(d)の破線L5及び
図9(e)の破線L6は、
図9(b)の破線L3で示すように、アシスト比が時点t3まで一定で、時点t3において第1アシスト比から第2アシスト比に変化する場合の、アシストトルク及び自転車100の加速度をそれぞれ示している。この場合、時点t2~t3の期間においても、踏力の平均には大きな変化がなく、またアシスト比は一定であるので、
図9(d)の破線L5で示すように、アシストトルクに大きな変化はない。一方、この期間において、踏力は減少するので(
図9(a))、自転車100の加速度もそれに合わせて減少する(
図9(e)の破線L6)。
図9(b)の破線L3で示すように、時点t3において、アシスト比が第1アシスト比から第2アシスト比に変化すると、アシストトルクが急上昇し(
図9(d)の破線L5)、その結果、自転車100の加速度もそれに合わせて急上昇すする(
図9(e)の破線L6)。このことが制御モードの変更時における乗り心地に影響する。本開示で提案する制御装置30の処理によれば、そのような加速度の急激な変化が抑えられる。
【0102】
[まとめ]
(1)駆動システム10は、
クランク軸2に取り付けられたペダル2aに作用する踏力を検知するセンサと、
ペダル2aの踏み込みをアシストするための電動モータ21と、
制御モードに応じたアシスト比とセンサで検知した踏力とに基づいて、電動モータ21を制御する制御装置30とを有している。
制御装置30は、制御モードとして、第1アシスト比に基づいて電動モータ21を制御する第1制御モードと、第2アシスト比に基づいて電動モータ21を制御する第2制御モードとを有している。制御装置30は、第1モードから第2モードへの変更条件が満たされたときに、ペダル2aの軌跡Loの最上点P0に対応するクランク角度位置に、90度を加算した角度位置P1と、最上点P0に対応するクランク角度位置に、135度を加算した角度位置P2との間の変更開始位置Psで、第1アシスト比から第2アシスト比に向けたアシスト比の変化を開始している。制御装置30は、変更開始位置Psに少なくとも45度を加算した変更終了位置Peで、アシスト比が第2アシスト比に到達するようにアシスト比を変化させる。
【0103】
この駆動システム10によると、アシスト比が徐々に変化するので、制御モードの変更に起因するアシスト比の変化の、乗り心地への影響を低減できる。変更開始位置Psと変更終了位置Peとの間では、踏力は弱くなる。言い換えれば、踏力が弱くなる期間に合わせて、アシスト比が変化する。そのため、アシスト比の変化がライダーによって感知され難くなり、乗り心地が更に向上され得る。
【0104】
(2)(1)の駆動システム10において、変更開始位置Psと変更終了位置Peとの間の角度差Δθは、135度以下であってよい。これによると、アシスト比の変更に過度に多くの時間を要することを抑えることができる。
【0105】
(3)(1)又は(2)の駆動システム10において、変更開始位置Psと変更終了位置Peとの間の角度差Δθは、60度以上であってよい。これによると、アシストトルクの急激な変化を、より効果的に抑えることができる。
【0106】
(4)(1)乃至(3)の駆動システム10において、変更終了位置Peは、最上点P0に135度を加算した角度位置P2と、最上点P0に225度を加算した角度位置P4との間であってよい。クランク軸2がこのような角度位置にあるとき、踏力は弱くなる。言い換えれば、踏力が弱くなったタイミングで、アシスト比の変更が完了する。そのため、アシスト比の変化がライダーによって感知され難くなり、乗り心地が更に向上され得る。
【0107】
(5)(1)乃至(4)の駆動システム10において、変更終了位置Peは、最上点P0に270度以下の角度を加算した角度位置であってよい。これによると、変更後の制御モードによるアシスト比での走行開始が過度に遅れることを、抑えることができる。
【0108】
(6)(1)乃至(5)の駆動システム10において、変更終了位置Peは、最上点P0に225度以下の角度を加算した角度位置であってよい。これによると、変更後の制御モードによるアシスト比(第2アシスト比)での走行開始が過度に遅れることを、効果的に抑えることができる。
【0109】
(7)(1)乃至(6)の駆動システム10において、制御装置30は、クランク角度位置が変更開始位置Psと変更終了位置Peとの間にあるときに、アシスト比が第1アシスト比から第2アシスト比に徐々に近づくように、アシスト比を算出してよい。
【0110】
(8)(1)乃至(6)の駆動システム10は、クランク角度位置の変化量を検知するためのセンサ45を有してよい。制御装置30は、ペダル2aが変更開始位置Psと変更終了位置Peとの間にあるときに、クランク角度位置の変化量に基づいてアシスト比を算出してよい。これによると、変更開始位置Psと変更終了位置Peとの間でアシスト比を変化させることが容易となる。
【0111】
(9)(1)乃至(8)の駆動システム10において、制御装置30は、第1アシスト比と第2アシスト比との差と、変更開始位置Psと変更終了位置Peとの間の角度差Δθとに基づいて、アシスト比の変化率を算出してよい。これによると、クランク角度位置が予め規定した変更終了位置Peに到達したときに、アシスト比の変化を完了させることを、容易化できる。
【0112】
(10)本開示で提案する電動アシスト自転車100は、(1)乃至(9)に記載される駆動システム10と、電動モータ21が出力するアシストトルクが伝えられる車輪とを有している。
【0113】
本開示で提案する駆動システムは、上述した例に限られない。
【0114】
例えば、制御装置30は、第1アシスト比と第2アシスト比との差と、変更開始位置Psと変更終了位置Peとの間の角度差Δθとに基づいて、アシスト比の変化率を算出している。制御モードの変更条件が満たされたとき、アシスト比は、この変化率と、アシスト比の変更を開始する位置からのクランク角度位置の変化量とに基づいて、算出されてよい。この処理は、上述した変更開始位置Ps(角度位置P1とP2との間)と、変更終了位置Peとで規定される範囲とは異なる範囲で、アシスト比が変更される駆動システムに適用されてもよい。
【符号の説明】
【0115】
2:クランク軸、2a:ペダル、5:チェーン、6:後輪、7:ハンドル、8:ハンドルステム、9:前輪、10:駆動システム、11:シートチューブ、17:フレーム、17a:ヘッドパイプ、18:サドル、19:フロントフォーク、20:ドライブユニット、21:電動モータ、22:バッテリ、23:一方向クラッチ、24:合力伝達機構、25:減速機、26:一方向クラッチ、27:変速機構、28:一方向クラッチ、30:制御装置、31:制御モード管理部、32:アシスト比算出部、32a:開始位置検出部、33:アシストトルク算出部、34:ピーク踏力検出部、39:モータ駆動装置、41:踏力センサ、42:モータ回転センサ、43:車輪回転センサ、45:クランク回転センサ、58:操作入力装置、100:電動アシスト自転車、P1・P2・P3・P4・P5:角度位置、Ps:変更開始位置、Pe:変更終了位置、R1:第1アシスト比、R2:第2アシスト比。