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特開2024-94047評価装置、評価方法、評価モデルの生成方法、および評価プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094047
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】評価装置、評価方法、評価モデルの生成方法、および評価プログラム
(51)【国際特許分類】
   A46B 15/00 20060101AFI20240702BHJP
   A61C 19/06 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
A46B15/00 K
A61C19/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210757
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】503109640
【氏名又は名称】サンスター スイス エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】井上 雅晴
(72)【発明者】
【氏名】清水 都
(72)【発明者】
【氏名】中西 隆
(72)【発明者】
【氏名】太田 安里
(72)【発明者】
【氏名】金田 健
【テーマコード(参考)】
3B202
4C052
【Fターム(参考)】
3B202AA06
3B202AB06
3B202AB07
3B202AB08
3B202GA07
4C052AA06
4C052MM10
4C052NN07
(57)【要約】
【課題】プラークを除去するブラッシング技術を評価することが可能な評価装置等を提供する。
【解決手段】評価装置(1)は、対象者の歯磨き時における歯ブラシの加速度を示す加速度データからブラッシングの大きさを示す指標値を算出する指標値算出部(102)と、指標値とプラーク除去率との相関関係に基づいて生成されたブラッシング技術の評価モデル(111)を用いて、指標値算出部(102)が算出する指標値から対象者のブラッシング技術の評価値を算出する技術評価部(104)と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の歯磨き時における歯ブラシの加速度データからブラッシングの大きさを示す指標値を算出する指標値算出部と、
前記指標値とプラーク除去率との相関関係に基づいて生成されたブラッシング技術の評価モデルを用いて、前記指標値算出部が算出する前記指標値から前記対象者のブラッシング技術の評価値を算出する技術評価部と、を備える評価装置。
【請求項2】
前記対象者が使用する歯ブラシの種類を識別する種類識別部を備え、
前記技術評価部は、歯ブラシの種類毎に予め生成された複数の前記評価モデルのうち、前記種類識別部の識別結果に応じた評価モデルを用いて前記評価値を算出する、請求項1に記載の評価装置。
【請求項3】
前記対象者のブラッシング時間を評価した評価値を算出する時間評価部と、
前記技術評価部が算出する評価値と、前記時間評価部が算出する評価値とに基づき、前記対象者のブラッシングの総合評価値を算出する総合評価部と、を備える請求項1または2に記載の評価装置。
【請求項4】
1または複数の情報処理装置により実行される評価方法であって、
対象者の歯磨き時における歯ブラシの加速度データからブラッシングの大きさを示す指標値を算出する指標値算出ステップと、
前記指標値とプラーク除去率との相関関係に基づいて生成されたブラッシング技術の評価モデルを用いて、前記指標値算出ステップで算出された前記指標値から前記対象者のブラッシング技術の評価値を算出する技術評価ステップと、を含む評価方法。
【請求項5】
1または複数の情報処理装置により実行される評価モデルの生成方法であって、
歯磨き時における歯ブラシの加速度データから算出される、ブラッシングの大きさを示す指標値と、当該ブラッシングのプラーク除去率との相関関係を定式化する定式化ステップと、
前記定式化により得られた関数に基づいて、前記指標値からブラッシング技術の評価値を算出するための評価モデルを生成するモデル生成ステップと、を含む評価モデルの生成方法。
【請求項6】
前記定式化ステップでは、個々の歯の表面を複数の領域に区分して算出した前記プラーク除去率と前記指標値との相関関係を定式化する、請求項5に記載の評価モデルの生成方法。
【請求項7】
請求項1に記載の評価装置としてコンピュータを機能させるための評価プログラムであって、前記指標値算出部および前記技術評価部としてコンピュータを機能させるための評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯磨きを評価する評価装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
対象者の歯磨きを評価し、その良し悪しをフィードバックする技術が従来から知られている。例えば、下記の特許文献1には、加速度センサを内蔵した歯ブラシを用いて歯磨きを行わせることが記載されている。そして、加速度センサの出力信号を解析して、歯のある表面部位におけるブラッシングサイクルを特定し、ブラッシングサイクル数と当該部位に設定された参照値と比較することにより、当該部位におけるブラッシングを評価することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2013-536018号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術は、ブラッシングサイクル数が参照値以上であれば十分なブラッシングができているとの仮定に基づいたものと理解される。しかしながら、実際には、同じ回数だけ歯ブラシを動かしていた場合でも、ブラッシング技術の差異により、ブラッシングの効果に差異が生じることがある。例えば、歯ブラシを大きく動かした場合と小刻みに動かした場合とを比較すると、前者では歯と歯の間や歯と歯茎の間等の部位にプラークが残りやすい傾向がある。そして、このような部位のプラークは、う蝕や歯周病の原因となり得る。
【0005】
このように、上述の従来技術では、プラークを除去するブラッシング技術を評価することができないという問題がある。本発明の一態様は、プラークを除去するブラッシング技術を評価することが可能な評価装置等を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る評価装置は、対象者の歯磨き時における歯ブラシの加速度データからブラッシングの大きさを示す指標値を算出する指標値算出部と、前記指標値とプラーク除去率との相関関係に基づいて生成されたブラッシング技術の評価モデルを用いて、前記指標値算出部が算出する前記指標値から前記対象者のブラッシング技術の評価値を算出する技術評価部と、を備える。
【0007】
また、本発明の一態様に係る評価方法は、上記の課題を解決するために、1または複数の情報処理装置により実行される評価方法であって、対象者の歯磨き時における歯ブラシの加速度を示す加速度データからブラッシングの大きさを示す指標値を算出する指標値算出ステップと、前記指標値とプラーク除去率との相関関係に基づいて生成されたブラッシング技術の評価モデルを用いて、前記指標値算出ステップで算出された前記指標値から前記対象者のブラッシング技術の評価値を算出する技術評価ステップと、を含む。
【0008】
また、本発明の一態様に係る評価モデルの生成方法は、上記の課題を解決するために、1または複数の情報処理装置により実行される評価モデルの生成方法であって、歯磨き時における歯ブラシの加速度を示す加速度データから算出される、ブラッシングの大きさを示す指標値と、当該ブラッシングのプラーク除去率との相関関係を定式化する定式化ステップと、前記定式化により得られた関数に基づいて、前記指標値からブラッシング技術の評価値を算出するための評価モデルを生成するモデル生成ステップと、を含む。
【0009】
本発明の各態様に係る評価装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記評価装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記評価装置をコンピュータにて実現させる評価装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、プラークを除去するブラッシング技術を評価することが可能な評価装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る評価装置の要部構成の一例を示すブロック図である。
図2】上記評価装置を含む評価システムの構成例を示す図である。
図3】上記評価システムに含まれるモデル生成装置の要部構成の一例を示すブロック図である。
図4】4001は指標値とプラーク除去率との関係を示し、4002は評価モデルの一例を示す。
図5】5001は4001とは歯ブラシの種類が異なる場合の指標値とプラーク除去率との関係を示し、5002は評価モデルの他の例を示す。
図6】評価モデルを生成する処理の一例を示すフローチャートである。
図7】ブラシ圧評価モデルの一例を示す図である。
図8】角度評価モデルの一例を示す図である。
図9】角度評価モデルの他の例を示す図である。
図10】ブラッシング技術の評価値を算出する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔評価システムの構成〕
本発明の一実施形態に係る評価システム100の構成を図2に基づいて説明する。図2は、評価装置1を含む評価システム100の構成例を示す図である。評価システム100は、対象者の歯ブラシ2を用いた歯磨きにおけるブラッシング技術(以降、単にブラッシング技術と記載する)を評価する機能を備えたシステムである。図2に示すように、評価システム100には、評価装置1と、歯ブラシ2と、モデル生成装置4と、が含まれている。歯ブラシ2は、図示しない加速度センサ等を備えており、ブラッシング時のセンシングデータを評価装置1に送信する。
【0013】
なお、歯ブラシ2は、ブラシ毛が植毛されたブラシ部を電力により動かす電動歯ブラシであってもよいし、ユーザが手動でブラッシングするマニュアル歯ブラシであってもよい。また、センサ等が搭載されている部分と、ブラシ部とは着脱可能に構成されていてもよい。この場合、歯ブラシ2におけるセンシングや通信の機能を維持しつつ、摩耗したブラシ部を交換することができる。
【0014】
従来、う蝕や歯周病の原因となり得るプラークを除去するブラッシング技術を評価することができていなかった。それに対して、本出願の発明者らは、ブラッシングの大きさとプラーク除去率との関係を調べる実験を行い、ブラッシングの大きさが特定の範囲であるときにプラーク除去率が高くなること、つまりブラッシングの大きさとプラーク除去率との間に相関関係があることを突き止めた。
【0015】
評価システム100は、ブラッシング時のセンシングデータを用いて、上記の相関関係に基づいて生成された評価モデル111によりブラッシング技術を評価する。これにより、評価システム100では、プラークを除去するブラッシング技術を評価することが可能になっている。
【0016】
ブラッシング技術の評価結果は、例えば評価装置1が備える表示部14に表示させてもよい。図2の例では、ブラッシング技術の評価値V1が表示部14に表示されていると共に、ブラッシング時間の評価値V2および総合評価値V3が表示部14に表示されている。なお、ブラッシング時間の評価値と総合評価値の詳細は後述する。
【0017】
〔モデル生成装置の構成〕
図3に基づきモデル生成装置4について説明する。モデル生成装置4は、評価モデル111を生成する。評価モデル111は、指標値とプラーク除去率との相関関係に基づいて生成されたブラッシング技術の評価モデルであり、上述のように評価装置1は評価モデル111を用いてブラッシング技術の評価値を算出する。モデル生成装置4は、制御部40と、記憶部41と、通信部42と、入力部43と、を備えている。
【0018】
制御部40はモデル生成装置4の各部を統括して制御する。制御部40は、一例において、CPU(Central Processing Unit)であってもよい。制御部40は、記憶部41に記憶されているソフトウェアである制御プログラムを読み取ってRAM(Random Access Memory)等のメモリに展開して各種機能を実行する。制御部40の構成について詳しくは後述する。
【0019】
記憶部41は、モデル生成装置4が使用する各種データを記憶する。例えば、記憶部41にはモデル生成装置4が生成した評価モデル111が記憶される。評価モデル111は、異なる種類の歯ブラシ毎に生成してもよく、この場合、記憶部41には、歯ブラシの種類毎にそれぞれ異なる評価モデル111が記憶される。
【0020】
通信部42は、モデル生成装置4が他の装置と通信するためのものである。例えば、モデル生成装置4は、通信部42を介して評価装置1に評価モデル111を送信することもできる。なお、評価モデル111は必ずしも通信により評価装置1に供給する必要はなく、例えば評価装置1の製品出荷前に、評価装置1に評価モデル111を記憶させておいてもよい。
【0021】
入力部43は、モデル生成装置4に対する各種データの入力を受け付ける。例えば、評価モデル111の生成に必要な各種データを、入力部43を介して入力するようにしてもよい。なお、当該データは通信部42を介して取得されてもよい。
【0022】
〔制御部の構成〕
制御部40は、情報取得部401と、指標値算出部402と、除去率特定部403と、定式化部404と、モデル生成部405と、を含む。
【0023】
情報取得部401は、評価モデル111の生成に必要な各種データを取得する。各種データには、複数の被験者のブラッシング時に測定されたセンシングデータと、当該ブラッシングにおけるプラーク除去率とが含まれる。
【0024】
指標値算出部402は、各被験者について、当該被験者のブラッシングの大きさを示す指標値を算出する。ブラッシングの大きさが大きすぎると歯と歯の間や歯と歯茎の間等の部位にプラークが残りやすい傾向がある。このため、上記の指標値は、プラークを除去するブラッシング技術を評価するための指標値として好適である。ブラッシングの大きさはブラッシングの小刻み度と言い換えることもできる。
【0025】
指標値は、ブラッシングの大きさあるいは小刻み度を示すものであればよく、その算出方法も特に限定されない。例えば、被験者が使用する歯ブラシに3軸加速度センサを設けてブラッシング中の加速度データを計測する場合、情報取得部401はその加速度データを取得してもよく、指標値算出部402は、当該加速度データを用いて指標値を算出してもよい。
【0026】
加速度データを用いて指標値を算出する場合、指標値算出部402は、3軸の加速度データを合成した加速度合成ベクトル長を用いて指標値を算出してもよい。当該合成ベクトル長は下記の式1で表される。なお、式1におけるx_filtered、y_filtered、z_filteredは、互いに直交するX、Y、Zの各軸方向における加速度成分から重力加速度成分を除去したものである。
【0027】
【数1】
この場合、指標値算出部402は、例えば、被験者がブラッシングを開始してから終了するまでの時系列の加速度データから、歯ブラシの1回の往復動作が行われた期間、あるいは特定部位のブラッシングが行われた期間を特定し、当該期間における各軸成分の加速度の平均値から上記合成ベクトル長を算出して、算出した合成ベクトル長を指標値としてもよい。
【0028】
除去率特定部403は、指標値算出部402が算出する指標値に対応するプラーク除去率を特定する。情報取得部401が各被験者のプラーク除去率を示す情報を取得する場合、除去率特定部403は、当該情報を用いることにより、指標値算出部402が算出する指標値に対応するプラーク除去率を特定すればよい。
【0029】
また、情報取得部401は、ブラッシング後の各被験者のプラークの付着情報の検査結果を取得してもよい。この場合、除去率特定部403は、当該検査結果からプラーク除去率を算出すればよい。
【0030】
除去率特定部403が特定するプラーク除去率が、どのような算出方法で算出されたものであるかは特に限定されない。例えば、上記プラーク除去率は、PCR(O'LearyのPlaque Control Record)6点法を用いて算出されたものであってもよい。PCR6点法では、任意の被験歯面を片面につき、近心、中央、遠心に3分割する。例えば、全顎で28本の歯をもつ人の場合、(全顎の被験歯面の数)=28×3×2=168となる。そして、これらの領域のうちプラークが付着している領域の割合を示すPCR値を算出し、ブラッシング前のPCR値に対するブラッシング前後のPCR値の差が占める割合をプラーク除去率とする。
【0031】
つまり、PCR(%)=(プラーク付着歯面の数/被験歯面の数)×100である。例えば、ブラッシング前にプラークが付着していた100個の領域のうち、50個の領域にブラッシング後もプラークが付着していた場合、PCR=(50/100)×100=50(%)となる。
【0032】
また、プラーク除去率(%)=100×{(ブラッシング前のPCR-ブラッシング後のPCR)/(ブラッシング前のPCR)}、である。例えば、ブラッシング前のPCRが50%でブラッシング後のPCRが20%であった場合、プラーク除去率は、100×(50-20)/50=60(%)となる。
【0033】
プラーク除去率の算出は、上記にPCR6点法に限らず、どのような指標を用いてもよい。例えば、PCR4点法、PCR変法、OHI(Oral Hygiene Index)、QHI(Modified Quingley-Hein Plaque Index)等をプラーク除去率の算出に用いてもよい。
【0034】
除去率特定部403は、例えば、指標値算出部402が算出する指標値の元になった加速度データが測定されたときのブラッシングにおける全顎のプラーク除去率の平均値を、当該指標値に対応するプラーク除去率として特定してもよい。
【0035】
定式化部404は、被験者が行ったブラッシングにおける指標値と、当該ブラッシングのプラーク除去率との相関関係を定式化する。上述のように、指標値は指標値算出部402が算出し、プラーク除去率は除去率特定部403が特定するから、定式化部404は、これらの関係を定式化すればよい。
【0036】
図4の4001は指標値とプラーク除去率との関係を示す図である。図4の4001の各点は、各被験者について算出された指標値とプラーク除去率を示す。本願の発明者らは、指標値とプラーク除去率との関係は、図4の4001に示すように、y軸プラス方向に凸となることを発見した。
【0037】
定式化部404は、このような関係を定式化する。例えば、定式化部404は、当該関係を二次関数で近似してもよい。図4の4001に示される各点について二次関数で近似すると、y=-0.0027x+0.9307x-10.517、との式で定式化される。
【0038】
モデル生成部405は、定式化により得られた関数に基づいて、評価対象となる歯磨き時に算出される指標値からブラッシング技術の評価値を算出するための評価モデル111を生成する。
【0039】
図4の4002は、図4の4001に示される指標値とプラーク除去率との関係に基づいて生成した評価モデル111Aを示している。評価モデル111Aは、評価モデル111の一例である。評価モデル111Aでは、指標値が150~200の範囲においてブラッシング技術の評価値が最高点である100点となり、当該範囲から外れる程評価値が低くなり、指標値が70以下および270以上では60点となる。
【0040】
このような評価モデル111Aを生成する場合、モデル生成部405は、例えば定式化部404が生成する関数を用いて、プラーク除去率が第1の閾値TH1以上となる指標値の範囲を特定し、当該範囲の指標値に対応する評価値が最大値(例えば100点)となる式を生成してもよい。続いて、モデル生成部405は、プラーク除去率が第2の閾値TH2(TH2<TH1)未満となる指標値の範囲を特定し、当該範囲の指標値に対応する評価値が最小値(例えば60点)となる式を生成してもよい。そして、モデル生成部405は、その他の範囲について評価値が最大値から最小値まで単調に減少する式を設定してもよい。これにより、モデル生成部405は、図4の4002のグラフに示されるような式を評価モデル111として生成することができる。
【0041】
なお、定式化の方法は上述の例に限定されない。例えば、モデル生成部405は、定式化部404が定式化した関数のy座標の値(プラーク除去率)を評価値に換算する評価モデル111を生成してもよい。例えば、モデル生成部405は、定式化部404が定式化した関数のy座標の値が最大値となるときの評価値が最大値となるように、定式化部404が定式化した関数により算出される値をn倍(n>0)して評価値に換算する評価モデル111を生成してもよい。この場合、定式化部404が定式化した関数がy=-0.0027x+0.9307x-10.517であれば、評価モデルは(評価値)=n(-0.0027x+0.9307x-10.517)となる。
【0042】
ここで、指標値とプラーク除去率との関係は、使用する歯ブラシの種類等に応じて異なるものとなり得る。図5の5001は、図4の4001とは異なる歯ブラシを使用した場合の指標値とプラーク除去率との関係を示す図であり、図5の5002は5001で示す指標値と評価値との関係に基づく評価モデル111Bを示す。なお、歯ブラシの種類の差は、より詳細には、植毛パターン、フィラメント材、フィラメント径、毛丈、毛先形状、ヘッド台厚、ヘッド形状、および植毛本数等の少なくとも何れかの差である。
【0043】
図4の4001と図5の5001とを比較すれば分かるように、ブラッシングの大きさとプラーク除去率との関係は、使用する歯ブラシの種類に応じて異なるものとなり得る。例えば、図5の5001に示される関係は、定式化部404によって、y=-0.0011x+0.5722x-7.972、と定式化される。
【0044】
ここで、図5の5002に示される評価モデル111Bは指標値が240以上の範囲で評価値の減少率が大きく設定され、指標値が300以上の範囲では評価値が最小値(60点)に設定されている。これは、ブラッシングによる歯茎へのダメージを考慮したものである。つまり、ブラッシングの大きさを示す指標値とプラーク除去率との関係が、図5の5001のようにブラッシングがかなり大きい範囲でもプラーク除去率が高い場合、この関係をそのまま評価モデルに反映させると、歯茎が傷つくような激しいブラッシングでも高評価となる可能性がある。そこで、評価モデル111Bでは、上述のように、指標値が高い範囲では評価値が低くなるようにして、歯茎が傷つくような激しいブラッシングが促進されないようにしている。
【0045】
このように、モデル生成部405では、指標値が所定値以上の範囲において、指標値の増加に伴って評価値が減少する評価モデル111Bを生成してもよい。そして、モデル生成部405では、上記の減少率を、指標値が所定値以下の範囲における、指標値の減少に伴う評価値の減少率よりも大きく設定してもよい。これにより、歯茎が傷つかない範囲でのブラッシングに対して高い評価値を出力し、歯茎が傷つくような激しいブラッシングに対しては低い評価値を出力して、歯茎が傷つかない範囲でのブラッシングを促すことができる評価モデル111Bを生成することができる。
【0046】
モデル生成装置4は、図4および図5に示した評価モデル111Aおよび111Bのような歯ブラシの種類に応じた評価モデル111を予め生成し、評価装置1に提供しておいてもよい。これにより、評価装置1は、評価の対象者が使用する歯ブラシ2の種類に応じた評価モデル111を適用して妥当な評価値を算出することが可能になる。なお、評価装置1は、評価の対象者が使用する歯ブラシ2の種類が変わったときに、新しい歯ブラシ2の種類に応じた評価モデル111をモデル生成装置4から取得してもよい。この場合も同様の効果が得られる。
【0047】
〔処理の流れ(評価モデルの生成方法)〕
図6は、評価モデル111を生成する処理の一例を示すフローチャートである。図6に示すように、ステップS1では、情報取得部401が、各被験者がブラッシングを行ったときに測定された加速度データを取得する。なお、加速度データには、一人の被験者が行った複数回のブラッシングのそれぞれにおける加速度データが含まれていてもよい。
【0048】
ステップS2では、指標値算出部402が、前処理として、ステップS1で取得された加速度データから重力成分を除去する。そして、ステップS3では、指標値算出部402は、S2で前処理を施した加速度データを用いて、ブラッシングの大きさを示す指標値を算出する。なお、指標値は、複数の被験者のそれぞれについて算出される。
【0049】
ステップS4では、除去率特定部403は、S3で算出された各指標値に対応するプラーク除去率を特定する。上述のように、プラーク除去率はユーザに入力させてもよいし、プラーク除去率を算出するための元データを入力して除去率特定部403に算出させてもよい。
【0050】
ステップS5(定式化ステップ)では、定式化部404が、S3で算出された指標値と、S4で特定されたプラーク除去率との相関関係を定式化する。上述のように、定式化部404は、例えば二次関数による近似により相関関係を定式化してもよい。
【0051】
ステップS6(モデル生成ステップ)では、モデル生成部405が、ステップS5において定式化により得られた関数に基づいて、評価対象となる歯磨き時に算出される指標値からブラッシング技術の評価値を算出するための評価モデル111を生成する。そして、モデル生成部405は、生成した評価モデル111を記憶部41に記憶する。
【0052】
なお、モデル生成装置4の各機能は、複数の情報処理装置で構成されるシステムにより実現することも可能である。したがって、図6に示した各ステップの実行主体は上述の例に限られない。つまり、図6に示した各ステップは、1つの情報処理装置に実行させることもできるし、複数の情報処理装置に各ステップの処理を分担させることにより実行することもできる。
【0053】
以上のように、本実施形態の評価モデル111の生成方法は、1または複数の情報処理装置により実行される評価モデル111の生成方法であって、歯磨き時における歯ブラシの加速度データから算出される、ブラッシングの大きさを示す指標値と、当該ブラッシングのプラーク除去率との相関関係を定式化する定式化ステップ(ステップS5)と、定式化により得られた関数に基づいて、評価対象となる歯磨き時に算出される指標値からブラッシング技術の評価値を算出するための評価モデル111を生成するモデル生成ステップ(ステップS6)と、を含む。これにより、対象者のブラッシングの大きさを示す指標値から、当該対象者のブラッシング技術の評価値を算出することが可能な評価モデル111を生成することができる。そして、このようにして生成された評価モデル111を用いることにより、対象者のプラークを除去するブラッシング技術を評価することが可能になる。
【0054】
また、定式化ステップ(ステップS5)において、個々の歯の表面を複数の領域に区分して算出したプラーク除去率と指標値との相関関係を定式化することで、個々の歯の隅々までプラークを除去できているか否かを反映させた評価値を算出することができる。
【0055】
〔評価装置の構成〕
図1に基づいて評価装置1の構成を説明する。図1は、評価装置1の要部構成の一例を示すブロック図である。評価装置1は、ブラッシング技術の評価値を算出する装置である。図1に示すように、評価装置1は、制御部10と、記憶部11と、通信部12と、入力部13と、表示部14と、を備えている。
【0056】
制御部10は評価装置1の各部を統括して制御する。制御部10は、一例において、CPUであってもよい。制御部10は、記憶部11に記憶されているソフトウェアである制御プログラムを読み取ってRAM等のメモリに展開して各種機能を実行する。制御部10の構成について詳しくは後述する。
【0057】
記憶部11は、評価装置1が使用する各種データを記憶する。記憶部11は予め、歯ブラシ2の種類毎の評価モデル111、ブラシ圧評価モデル112および角度評価モデル113が記憶されていてもよい。ブラシ圧評価モデル112および角度評価モデル113について、詳しくは後述する。
【0058】
通信部12は、他の装置(例えば歯ブラシ2およびモデル生成装置4)と通信を行うためのものである。入力部13は、評価装置1に対する各種データの入力を受け付ける。入力部13は、例えば、対象者による歯ブラシ2の種類の入力を受け付ける。なお、歯ブラシ2が自機のブラシ部の種類を検出して評価装置1に通知する構成としてもよい。
【0059】
表示部14は、後述する表示制御部109から取得した表示情報に基づいて生成される情報を表示する。なお、表示部14は評価装置1に備わっていなくてもよく、評価装置1の外部に設けられて評価装置1と接続される形態であってもよい。
【0060】
〔制御部の構成〕
制御部10は、情報取得部101と、指標値算出部102と、種類識別部103と、技術評価部104と、時間評価部105と、ブラシ圧評価部106と、角度評価部107と、総合評価部108と、表示制御部109と、を含む。
【0061】
情報取得部101は、ブラッシング技術の評価値の算出に必要な各種データを取得する。これらのデータには、対象者のブラッシングの加速度データおよびブラシ圧データが含まれている。
【0062】
指標値算出部102は、対象者の歯磨き時における歯ブラシ2の加速度データから、ブラッシングの大きさを示す指標値を算出する。指標値算出部102は、モデル生成装置4の指標値算出部402と同じ方法で指標値を算出すればよい。
【0063】
種類識別部103は、対象者が使用する歯ブラシ2の種類を識別する。例えば、歯ブラシ2の種類は対象者等に入力させてもよく、この場合、種類識別部103は、入力部13または通信部12に対する入力の内容に基づいて歯ブラシ2の種類を識別する。
【0064】
技術評価部104は、評価モデル111を用いて、指標値算出部102が算出する指標値から対象者のブラッシング技術の評価値を算出する。また、歯ブラシ2の種類に応じた評価モデル111を使用可能である場合、技術評価部104は、歯ブラシの種類毎に予め生成された複数の評価モデル111のうち、種類識別部103の識別結果に応じた評価モデル111を用いて評価値を算出する。
【0065】
これにより、対象者が使用する歯ブラシの種類に応じた評価モデル111を用いて評価値を算出することができるので、使用された歯ブラシ2の種類に適合した妥当な評価値を算出することができる。
【0066】
例えば、対象者が図4の4002に示す評価モデル111Aに対応する歯ブラシ2で歯磨きを行ったとする。この場合、指標値算出部102により算出された指標値が150であれば、技術評価部104が算出する評価値は、評価モデル111Aに基づき100点となる。
【0067】
技術評価部104は、ブラッシング中にリアルタイムで評価値を算出することもできるし、ブラッシング後にブラッシング全体の評価値を算出することもできる。ブラッシング中にリアルタイムで評価値を算出する場合、指標値算出部102は、ブラッシング中に測定される時系列の加速度データからリアルタイムで指標値を算出する。そして、技術評価部104は、指標値算出部102によりリアルタイムで算出される指標値を評価モデル111に入力してブラッシング技術の評価値を算出する。一方、ブラッシング後に評価値を算出する場合、指標値算出部102は、ブラッシング期間中に測定された加速度データから指標値算出部102により随時算出された時系列の指標値の代表値(例えば平均値や最大値等)を用いて評価値を算出すればよい。
【0068】
また、技術評価部104は、全顎の評価値を算出することもできるし、口内の各エリアの評価値を算出することもできる。エリアごとの評価値を算出する場合、技術評価部104は、評価対象のエリアのブラッシング期間中に測定された加速度データから指標値算出部102により算出された時系列の指標値の代表値から評価値を算出すればよい。
【0069】
また、技術評価部104は、例えば、歯ブラシ2のブラシ部が当っている歯面上の箇所等に基づき、評価値を補正してもよい。
【0070】
時間評価部105は、対象者のブラッシング時間を評価した評価値を算出する。時間評価部105は、例えば、全顎におけるブラッシング時間を計測し、ブラッシング時間と予め設けられた全顎のブラッシング基準時間とに基づき、ブラッシング時間を評価する。例えば、ブラッシング基準時間が2分であり、ブラッシング時間が1分である場合、時間評価部105は評価値を、評価値=1分/2分×100=50と算出してもよい。時間評価部105を備えていることにより、評価装置1は、ブラッシング時間を加味した総合的なブラッシング評価を行うことができる。
【0071】
また、時間評価部105は、全顎おけるブラッシング時間だけでなく、口内を区分した各エリアにおけるブラッシング時間を評価した評価値を算出してもよい。また、複数の歯を含むエリアを設定する構成の他、個々の歯を1エリアとしてブラッシング時間を評価してもよい。この場合、エリアごとに基準時間を設けておけばよい。また、エリアごとのブラッシング時間を評価する場合、技術評価部104もエリアごとに評価値を算出してもよい。
【0072】
ブラシ圧評価部106は、対象者の歯磨き時における歯に対するブラシ圧を評価した評価値を算出する。例えば、ブラシ圧評価部106は、ブラシ圧評価モデル112を用いて当該評価値を算出してもよい。ブラシ圧評価モデル112は、適切な範囲のブラシ圧に対して高い評価値を返し、ブラシ圧が適切な範囲から外れる程低い評価値を返す関数であってもよい。
【0073】
図7はブラシ圧評価モデル112の一例を示す図である。図7に示すブラシ圧評価モデル112は、上に凸のグラフとなっており、このブラシ圧評価モデル112に最適なブラシ圧を入力すると、最大の評価値が出力される。また、入力するブラシ圧が最適値から離れるほど、ブラシ圧評価モデル112から出力される評価値は小さい値となる。ブラシ圧評価モデル112は、歯科衛生学的観点などに基づいて適宜設定すればよい。
【0074】
対象者のブラッシングにおけるブラシ圧は、例えば、歯ブラシ2にブラシ圧を測定する圧力センサを設けることにより測定することができる。そして、ブラシ圧評価部106は、測定されたブラシ圧を取得し、これをブラシ圧評価モデル112に入力することにより、当該ブラシ圧の評価値を算出することができる。例えば、所定間隔毎にブラシ圧の測定値を歯ブラシ2から評価装置1に送信させた場合、ブラシ圧評価部106は、所定間隔毎に評価値を算出することもできる。
【0075】
角度評価部107は、対象者の歯磨き時における歯ブラシ2の角度を評価した角度評価値を算出する。例えば、角度評価部107は、角度評価モデル113を用いて当該評価値を算出してもよい。角度評価モデル113は、適切な範囲の歯ブラシ2の角度に対して高い評価値を返し、歯ブラシ2の角度が適切な範囲から外れる程低い評価値を返す関数であってもよい。
【0076】
図8の8003には、角度評価モデル113の一例である角度評価モデル113Aを示している。また、図8の8001は歯ブラシの角度を説明する図であり、8002は歯ブラシのブラシ部の向きごとの最適な歯ブラシの角度の例を示す図である。なお、8001における「頭」はブラッシング者の頭部を真上から見た様子を示している。
【0077】
ここでは、8001に示すように、ブラシ部(ブラシ毛)がブラッシング者から見て水平方向右側を向いているときの歯ブラシの角度を0°、ブラシ部(ブラシ毛)がブラッシング者から見て鉛直上向きのときの歯ブラシの角度を90°、ブラシ部(ブラシ毛)がブラッシング者から見て水平方向左側を向いているときの歯ブラシの角度を180°として、歯ブラシの角度を規定する。この時、歯ブラシの角度によらず、歯ブラシのブラシ部はブラッシング者から見て手前側に、把持部は奥側に位置する。歯ブラシの角度は、ブラシ部の向きと言い換えることもできる。
【0078】
歯ブラシの適切な角度は、ブラッシングしているエリアによって変わり、また、ブラッシング法によっても変わる。例えば、ブラッシング者が、歯面に対して90°の角度でブラシ毛をあてるスクラビング法により右上頬側のエリアをブラッシングする場合、ブラシ毛はブラッシング者からみて左を向く。このとき、歯ブラシの角度を概ね135°から225°の範囲とすれば、歯面に対して90°の角度でブラシ毛を当てやすい。
【0079】
このように、ブラッシング法が決まっていれば、ブラッシングするエリアごとにブラシ毛の向きと適切な歯ブラシの角度の範囲を定めることができる。例えば、ブラッシング者がスクラビング法によりブラッシングする場合、図8の8002に示すように、ブラシ毛が右を向くときの適切な歯ブラシの角度は0°から45°までおよび315°から360°まで、ブラシ毛が上を向くときの適切な歯ブラシの角度は45°から135°まで、ブラシ毛が左を向くときの適切な歯ブラシの角度は135°から180°まで、ブラシ毛が下を向くときの適切な歯ブラシの角度は225°から315°までというように適切な角度を定めてもよい。
【0080】
そして、各範囲の中心位置およびその周辺で評価値が最大となり、中心位置から離れるほど評価値が下がる関数を作成し、これを角度評価モデル113とすればよい。この場合、ブラッシングするエリアごと(ブラッシング時のブラシ毛の向きごとと言い換えることもできる)に角度評価モデル113が生成される。
【0081】
図8の8003に示す角度評価モデル113Aは、スクラビング法によるブラッシング時にブラシ毛が左を向くエリアにおける歯ブラシ2の角度を評価するための評価モデルである。角度評価モデル113Aによれば、歯ブラシ2の角度が180°付近であるときに評価値が最大となり、180°から離れるにつれて評価値が低くなる。
【0082】
なお、傾き角度とブラッシングエリアの特定方法は特に限定されない。例えば、角度評価部107は、歯ブラシ2が備える加速度センサで測定された3軸の加速度データを解析することにより歯ブラシ2の傾き角度を算出することができる。また、例えば、ブラッシングエリアを指定するガイド情報を表示させる等して対象者にブラッシングを行わせれば、角度評価部107は、ガイド情報で指定されたエリアをブラッシングエリアであると特定することができる。
【0083】
角度評価部107は、例えば、所定間隔毎に歯ブラシ2の角度の評価値を算出してもよい。また、歯ブラシ2の角度は、図8の8001に示したような角度に限られず、ブラシ部の歯面に対する角度であってもよい。
【0084】
上述のように、歯ブラシの適切な角度はブラッシング法によって変わる。図9は、バス法によるブラッシング時に適用する角度評価モデルの例を示す図である。バス法は、歯面に対して45°の角度で歯ブラシ2を当てるブラッシング法である。なお、角度の定義は図8と同じである。
【0085】
バス法の場合もブラッシングするエリアごと(ブラッシング時のブラシ毛の向きごとと言い換えることもできる)に角度評価モデル113を生成しておけばよい。例えば、図9の9001に示すように、ブラシ毛が右~上を向くときの適切な歯ブラシの角度は0°から90°まで、ブラシ毛が上~左を向くときの適切な歯ブラシの角度は90°から180°まで、ブラシ毛が左~下を向くときの適切な歯ブラシの角度は180°から270°まで、ブラシ毛が下~右を向くときの適切な歯ブラシの角度は270°から360°までというように適切な角度を定めてもよい。
【0086】
そして、各範囲の中心位置およびその周辺で評価値が最大となり、中心位置から離れるほど評価値が下がる関数を作成し、これを角度評価モデル113とすればよい。図9の9002に示す角度評価モデル113Bは、バス法によるブラッシング時にブラシ毛が上~左を向くエリアにおける歯ブラシ2の角度を評価するための評価モデルである。角度評価モデル113Bによれば、歯ブラシ2の角度が135°付近であるときに評価値が最大となり、135°から離れるにつれて評価値が低くなる。
【0087】
なお、角度の評価は、上述のスクラビング法およびバス法に限られず、様々なブラッシング法について行うことができる。例えば、ブラッシング法に応じた角度評価モデル113を予め用意しておいてもよく、この場合、角度評価部107は、対象者が適用するブラッシング法に応じた角度評価モデル113を用いて適切に角度評価を行うことができる。
【0088】
総合評価部108は、技術評価部104が算出する評価値と、時間評価部105が算出する評価値と、に基づき、対象者のブラッシングの総合評価値を算出する。これにより、指標値だけでなく、ブラッシング時間についても加味した評価を行うことができる。
【0089】
総合評価部108は、例えば、技術評価部104が算出する評価値と、時間評価部105が算出する評価値との和あるいは平均値を総合評価値として算出してもよい。
【0090】
また、総合評価部108は、技術評価部104が算出する評価値と、時間評価部105が算出する評価値と、ブラシ圧評価部106が算出する評価値と、角度評価部107が算出する評価値と、基づき、対象者のブラッシングの総合評価値を算出してもよい。これにより、ブラシ圧および歯ブラシ2の角度についても加味した評価をおこなうことができる。その場合、総合評価部108は、例えば、技術評価部104が算出する評価値と、時間評価部105が算出する評価値と、ブラシ圧評価部106が評価した評価値と、角度評価部107が評価値と、の和あるいは平均値を総合評価値として算出してもよい。
【0091】
表示制御部109は、評価モデル111を用いて算出された各評価値を表示部14に表示させる。この際、表示制御部109は、各評価値および各評価値に関連する各種情報についても表示部14に表示させてもよい。表示制御部109は、ブラッシング後にブラッシング全体を評価した各評価値を表示させてもよいし、ブラッシング中にリアルタイムで各評価値を表示させてもよい。
【0092】
以上のように、評価装置1は、対象者の歯磨き時における歯ブラシ2の加速度データからブラッシングの大きさを示す指標値を算出する指標値算出部102と、指標値とプラーク除去率との相関関係に基づいて生成されたブラッシング技術の評価モデル111を用いて、指標値算出部102が算出する指標値から対象者のブラッシング技術の評価値を算出する技術評価部104と、を備える。このように、本発明では、ブラッシングの大きさを示す指標値とプラーク除去率との相関関係に基づいて生成されたブラッシング技術の評価モデル111を用いることで、ブラッシング技術を評価することが可能になる。
【0093】
〔処理の流れ(評価値の算出)〕
評価装置1がブラッシング技術の評価値を算出する処理(ブラッシング技術の評価方法)の流れを図10に基づいて説明する。図10は、ブラッシング技術の評価値を算出する処理の一例を示すフローチャートである。なお、本処理では、ブラッシング後に評価値を表示する場合について説明する。また、図10にはブラッシング時間の評価値の算出、ブラシ圧の評価値の算出、角度の評価値の算出および総合評価値の算出についても示しているが、これらの処理はブラッシング技術の評価値を算出する際に必須の処理ではない。
【0094】
ステップS11では、情報取得部101が、対象者の歯磨き時の加速度データを取得する。例えば、対象者が3分間のブラッシングを行った場合、その3分間に歯ブラシ2により測定された時系列の加速度データを取得する。ステップS12では、指標値算出部102は、ステップS11で取得された加速度データから重力成分を除去する前処理を行う。
【0095】
次に、ステップS13では、指標値算出部102は、ステップS12で重力成分が除去された加速度データを用いてブラッシングの大きさを示す指標値を算出する。そして、ステップS14では、技術評価部104は、ステップS13で算出された指標値に基づき、評価モデル111を用いてブラッシング技術の評価値を算出する。例えば、全顎のブラッシングの評価を行う場合、指標値算出部102は、ステップS13で算出された時系列の指標値の代表値(例えば平均値や最大値等)を用いて評価値を算出すればよい。
【0096】
ステップS16では、時間評価部105は、ブラッシング時間を評価した評価値を算出する。ステップS17では、ブラシ圧評価部106がブラシ圧の評価値を算出する。ステップS18では、角度評価部107が歯ブラシ2の角度の評価値を算出する。なお、ステップS14、16~18において評価の対象とする期間およびエリアは共通化しておく。例えば、全期間における全顎のブラッシングを評価する場合には、ステップS14、16~18の何れにおいても全期間における全顎のブラッシングの評価値を算出する。
【0097】
ステップS19では、総合評価部108は、技術評価部104が算出する評価値と、時間評価部105が算出する評価値と、ブラシ圧評価部106が算出する評価値と、角度評価部107が算出する評価値と、の平均値を総合評価値として算出し、表示制御部109に出力する。なお、総合評価部108は、各評価値の和を総合評価値としてもよい。そして、ステップS20では、表示制御部109は、ステップS19で算出された評価結果を表示部14に表示する。
【0098】
なお、評価装置1の各機能は、複数の情報処理装置で構成されるシステムにより実現することも可能であり、また、評価システム100を構成する装置は適宜変更することができる。したがって、図10に示した各ステップの実行主体は上述の例に限られない。つまり、図10に示した各ステップは、1つの情報処理装置に実行させることもできるし、複数の情報処理装置に各ステップの処理を分担させることにより実行することもできる。
【0099】
以上のように、本実施形態のブラッシング技術の評価方法は、1または複数の情報処理装置により実行される評価方法であって、対象者の歯磨き時における歯ブラシ2の加速度データからブラッシングの大きさを示す指標値を算出する指標値算出ステップ(ステップS13)と、指標値とプラーク除去率との相関関係に基づいて生成されたブラッシング技術の評価モデル111を用いて、指標値算出ステップで算出された指標値から対象者のブラッシング技術の評価値を算出する技術評価ステップ(ステップS14)と、を含む。よって、プラークを除去するブラッシング技術を評価することが可能になる。
【0100】
〔ソフトウェアによる実現例〕
評価装置1およびモデル生成装置4(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に制御部(10・40)に含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラム(評価プログラム/評価モデル生成プログラム)により実現することができる。
【0101】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0102】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0103】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0104】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0105】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0106】
1 評価装置
102 指標値算出部
103 種類識別部
104 技術評価部
105 時間評価部
108 総合評価部
111 評価モデル
2 歯ブラシ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10