IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社クボタの特許一覧

<>
  • 特開-ガタ量検出装置および作業車 図1
  • 特開-ガタ量検出装置および作業車 図2
  • 特開-ガタ量検出装置および作業車 図3
  • 特開-ガタ量検出装置および作業車 図4
  • 特開-ガタ量検出装置および作業車 図5
  • 特開-ガタ量検出装置および作業車 図6
  • 特開-ガタ量検出装置および作業車 図7
  • 特開-ガタ量検出装置および作業車 図8
  • 特開-ガタ量検出装置および作業車 図9
  • 特開-ガタ量検出装置および作業車 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094055
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】ガタ量検出装置および作業車
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/47 20100101AFI20240702BHJP
   B60K 17/10 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
F16H61/47
B60K17/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210771
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】小林 孝徳
(72)【発明者】
【氏名】松岡 潤樹
(72)【発明者】
【氏名】中塚 晶基
(72)【発明者】
【氏名】大辻 恭平
(72)【発明者】
【氏名】坂本 健太
【テーマコード(参考)】
3D042
3J053
【Fターム(参考)】
3D042AA05
3D042AB11
3D042BA02
3D042BA05
3D042BA08
3D042BA20
3D042BD04
3D042BD09
3J053AA01
3J053AB02
3J053AB07
3J053AB50
3J053DA06
3J053DA28
3J053DA30
3J053FC10
(57)【要約】
【課題】ユニバーサルジョイントに生じるガタに対応することを目的とする。
【解決手段】制御回転動力を出力するアクチュエータ27と、入力軸26の1回転未満の回転角に応じて所定の動作を行う動作対象装置と、制御回転動力を入力軸26に伝達するユニバーサルジョイント30と、入力軸26の回転量を計測する第一回転量検出部40と、入力軸26の回転量に基づいてユニバーサルジョイント30のガタ量を検出するガタ量検出制御部とを備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御回転動力を出力するアクチュエータと、
入力軸の1回転未満の回転角に応じて所定の動作を行う動作対象装置と、
前記制御回転動力を前記入力軸に伝達するユニバーサルジョイントと、
前記入力軸の回転量を計測する第一回転量検出部と、
前記入力軸の回転量に基づいて前記ユニバーサルジョイントのガタ量を検出するガタ量検出制御部とを備えるガタ量検出装置。
【請求項2】
前記第一回転量検出部は、前記入力軸の前記ユニバーサルジョイントとの接続部に設けられる請求項1に記載のガタ量検出装置。
【請求項3】
前記アクチュエータの回転量を計測する第二回転量検出部をさらに備え、
前記ガタ量検出制御部は、前記第一回転量検出部の検出結果と前記第二回転量検出部の検出結果とに基づいて前記ガタ量を求める請求項1に記載のガタ量検出装置。
【請求項4】
所定の基準回転量を記憶する記憶部をさらに備え、
前記ガタ量検出制御部は、前記第一回転量検出部の検出値から前記入力軸が回転し始めたことが検知される回転数以上に前記アクチュエータを一方の方向に回転させた後、前記アクチュエータを前記一方の方向に対する逆方向である他方の方向に回転させて、前記第一回転量検出部によって前記入力軸が回転し始めたことを検知し、前記アクチュエータを前記他方の方向に回転させ始めてから前記入力軸が回転し始めるまでの前記アクチュエータの回転量を第一計測回転量として前記第二回転量検出部から読み取る第一計測回転量取得処理を行い、前記基準回転量と前記第一計測回転量とに基づいて前記ガタ量を求める請求項3に記載のガタ量検出装置。
【請求項5】
前記ガタ量検出制御部は、前記第一計測回転量取得処理の後に、前記アクチュエータを前記一方の方向に回転させて、前記アクチュエータを前記一方の方向に回転させ始めてから前記入力軸が回転し始めるまでの前記アクチュエータの回転量を第二計測回転量として取得する第二計測回転量取得処理を行い、前記第一計測回転量と前記第二計測回転量と前記基準回転量とに基づいて前記ガタ量を求める請求項4に記載のガタ量検出装置。
【請求項6】
駆動源と、
走行装置と、
請求項1から5のいずれか一項に記載のガタ量検出装置とを備え、
前記動作対象装置は油圧ポンプを有する静油圧式無段変速装置であり、
前記入力軸は前記静油圧式無段変速装置が有する前記油圧ポンプの斜板の角度を変更するためのトラニオン軸であり、
前記アクチュエータは、前記トラニオン軸の回転量を制御するモータである作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転動力の伝達を中継するユニバーサルジョイントに生じるガタ量を検出するガタ量検出装置、および回転動力の伝達を中継するユニバーサルジョイントを備える作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、アクチュエータ(電動モータ)により動作対象装置(変速装置)の操作を行う作業車が開示されている。電動モータと変速装置とは、斜板変更機構(操作機構)とトラニオン軸とを介して接続され、さらに、斜板変更機構の出力軸とトラニオン軸とはユニバーサルジョイントを介して接続される。そして、電動モータの回転量に伴って変速装置が変速動作を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-102620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ユニバーサルジョイントの出力軸およびトラニオン軸との接続部分には、変速操作を繰り返すことによりガタが生じる場合がある。ユニバーサルジョイントにガタが生じると、電動モータを回転させてもユニバーサルジョイントまたはトラニオン軸が空転し、電動モータが変速装置を適切に操作できない場合があった。
【0005】
本発明は、ユニバーサルジョイントに生じるガタに対応することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態に係るガタ量検出装置は、制御回転動力を出力するアクチュエータと、入力軸の1回転未満の回転角に応じて所定の動作を行う動作対象装置と、前記制御回転動力を前記入力軸に伝達するユニバーサルジョイントと、前記入力軸の回転量を計測する第一回転量検出部と、前記入力軸の回転量に基づいて前記ユニバーサルジョイントのガタ量を検出するガタ量検出制御部とを備える。
【0007】
また、本発明の一実施形態に係る作業車は、駆動源と、走行装置と、前記ガタ量検出装置とを備え、前記動作対象装置は油圧ポンプを有する静油圧式無段変速装置であり、前記入力軸は前記静油圧式無段変速装置が有する前記油圧ポンプの斜板の角度を変更するためのトラニオン軸であり、前記アクチュエータは、前記トラニオン軸の回転量を制御するモータである。
【0008】
ユニバーサルジョイントに生じるガタ量を精度良く検出するために、入力軸の実際の回転量が検出され、入力軸の回転量とアクチュエータの回転量とからユニバーサルジョイントのガタ量が検出される。
【0009】
そして、ユニバーサルジョイントのガタ量等の影響を排除し、精度良く入力軸の回転量を検出する位置に第一回転量検出部が設けられる。これにより、精度良く入力軸の回転量を検出することができ、ユニバーサルジョイントに生じるガタ量を精度良く検出することができる。
【0010】
また、前記第一回転量検出部は、前記入力軸の前記ユニバーサルジョイントとの接続部に設けられてもよい。
【0011】
このような構成により、ユニバーサルジョイントから入力軸に制御回転動力が伝達される領域の近傍で入力軸の回転量を検出するため、精度良く入力軸の回転量を検出することができ、ユニバーサルジョイントに生じるガタ量を精度良く検出することができる。
【0012】
また、前記アクチュエータの回転量を計測する第二回転量検出部をさらに備え、前記ガタ量検出制御部は、前記第一回転量検出部の検出結果と前記第二回転量検出部の検出結果とに基づいて前記ガタ量を求めてもよい。
【0013】
また、所定の基準回転量を記憶する記憶部をさらに備え、前記ガタ量検出制御部は、前記第一回転量検出部の検出値から前記入力軸が回転し始めたことが検知される回転数以上に前記アクチュエータを一方の方向に回転させた後、前記アクチュエータを前記一方の方向に対する逆方向である他方の方向に回転させて、前記第一回転量検出部によって前記入力軸が回転し始めたことを検知し、前記アクチュエータを前記他方の方向に回転させ始めてから前記入力軸が回転し始めるまでの前記アクチュエータの回転量を第一計測回転量として前記第二回転量検出部から読み取る第一計測回転量取得処理を行い、前記基準回転量と前記第一計測回転量とに基づいて前記ガタ量を求めてもよい。
【0014】
また、前記ガタ量検出制御部は、前記第一計測回転量取得処理の後に、前記アクチュエータを前記一方の方向に回転させて、前記アクチュエータを前記一方の方向に回転させ始めてから前記入力軸が回転し始めるまでの前記アクチュエータの回転量を第二計測回転量として取得する第二計測回転量取得処理を行い、前記第一計測回転量と前記第二計測回転量と前記基準回転量とに基づいて前記ガタ量を求めてもよい。
【0015】
以上のような各構成により、モータの回転量をトラニオン軸に伝えるユニバーサルジョイントのガタ量を容易かつ精度良く求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】草刈機の構成例を示す右側面図である。
図2】草刈機の構成例を示す平面図である。
図3】草刈機の動力伝達系を説明する図である。
図4】変速装置と斜板変更機構との要部構成を例示する右側面図である。
図5】斜板変更機構およびユニバーサルジョイントの構成を例示する側面図および平面図である。
図6】ガタがない場合の出力軸とトラニオン軸との可動域を示す図である。
図7】ガタがある場合の出力軸とトラニオン軸との可動域を示す図である。
図8】ガタ量検出装置の構成を例示する図である。
図9】ガタ量を検出する際のユニバーサルジョイントとガタとの関係を例示する概念図である。
図10】ガタ量を検出するフローを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1および図2に、作業車の一例としてリモコン操縦される草刈機が示される。なお、図1図2において、「F」は機体前後方向(走行方向)に関して前方向を示し、「B」は後方向を示し、図1において、「U」は機体の鉛直方向(垂直方向)に関して上方向を示し、「D」は下方向を示し、図2において、「R」は機体前後方向に直交する機体横断方向(機体幅方向)に関して右方向を示し、「L」は左方向を示す。
【0018】
〔草刈機の全体構成〕
図1および図2に示すように、草刈機は、機体1と、機体1を対地支持する左走行ユニット2aと右走行ユニット2bとからなるクローラ型式の走行装置2と、機体1の前部に支持された草刈装置3とを備える。
【0019】
〔走行装置の構成〕
図1および図2に示すように、左走行ユニット2aと右走行ユニット2bは、それぞれ、駆動輪10と、複数の転輪11と、誘導輪12と、トラックフレーム13と、ガイド部材と、クローラベルト14とからなる。トラックフレーム13が前後方向に沿って配置され、複数の転輪11がトラックフレーム13に支持されて、誘導輪12がトラックフレーム13の後部に支持される。右および左の駆動輪10が、トランスミッション20に支持される。右の駆動輪10が、側面視で右のトラックフレーム13の前後中間部に対して上側に配置され、左の駆動輪10が、側面視で左のトラックフレーム13の前後中間部に対して上側に配置される。
【0020】
図2および図3に示すように、機体1には、駆動源の一例であるエンジン4とトランスミッション20が搭載される。エンジン4の出力軸4aとトランスミッション20の入力軸23が連結される。トランスミッション20の前部から、PTO軸24が機体前後方向に延びる。PTO軸24は草刈装置3に動力を伝達する。
【0021】
トランスミッション20は、左走行ユニット2aへ変速動力を伝達する左変速装置と、右走行ユニット2bへ変速動力を伝達する右変速装置とを備える。左変速装置の出力軸は、左走行ユニット2aの駆動輪10の車軸10aに連結され、右変速装置の出力軸は、右走行ユニット2bの駆動輪10の車軸10aに連結される。左変速装置および右変速装置は、静油圧式無段変速装置(HST:hydrostatic transmission)で構成されているので、以下、左変速装置を左HST21(動作対象装置)と称し、右変速装置を右HST22(動作対象装置)と称する。ただし、左変速装置(左HST21)および右変速装置(右HST22)は、HSTだけで構成されているのではなく、ギヤ伝動機構も付属している。左HST21および右HST22は、エンジン4からの動力(駆動回転動力)を、前進側および後進側に無段階に変速する。変速された動力(変速動力)は、右および左の駆動輪10に伝達され、駆動輪10が回動することよりクローラベルト14が回転駆動される。
【0022】
図1および図4に示すように、草刈機は、右および左のモータ27(アクチュエータ)と右および左の斜板変更機構25とを備える。右の斜板変更機構25は右HST22の上方に配置され、左の斜板変更機構25は左HST21の上方に配置される。左HST21および右HST22は、トラニオン軸26(入力軸)に入力される回転動力(制御回転動力)の回転量(回転角)に応じて油圧ポンプの斜板の角度が調整され、油圧ポンプの斜板の角度に応じた動力(変速動力)を出力する。つまり、トラニオン軸26は1回転未満の回転角の範囲で回転する。そして、油圧ポンプの斜板の角度はトラニオン軸26の1回転未満の回転角に応じて所定の角度に調整される。回転動力(制御回転動力)はモータ27から出力される。そのため、左HST21のトラニオン軸26は左のモータ27により操作され、右HST22のトラニオン軸26は右のモータ27により操作される。
【0023】
リモコン(図示せず)を介して変速操作されることによって、右および左の斜板変更機構25は左HST21および右HST22を別々に制御し、機体1の前進および後進、停止、前進および後進での右および左への旋回、右および左への信地旋回および超信地旋回を行う。
【0024】
〔斜板変更機構〕
図5に示すように、斜板変更機構25は、モータ27から出力される制御回転動力が伝達される制御入力軸25cと、モータ27の制御回転動力を出力する出力軸25aと、伝達部28(回転伝達部)を備える。出力軸25aから出力される制御回転動力は、トラニオン軸26に伝達されて油圧ポンプの斜板の角度を制御する。
【0025】
制御入力軸25cは、制御入力軸25cに支持されて制御入力軸25cの回転に伴って回転するギヤ27bを備える。
【0026】
伝達部28は一端にギヤ部28aを備える。伝達部28は、ギヤ部28aが制御入力軸25cのギヤ27bと噛み合うことにより一端が制御入力軸25cに支持さる。伝達部28の他端は出力軸25aに支持される。このような構成により、伝達部28は、モータ27の回転軸27a(制御入力軸25c)の回転に伴って、出力軸25aの軸芯25bを中心に(揺動支点として)揺動する。そして、伝達部28に支持された出力軸25aは、伝達部28の揺動に伴って回転する。その結果、出力軸25aは、モータ27の制御回転動力を出力する。
【0027】
なお、トラニオン軸26は、1回転未満の所定の角度範囲の回転角で油圧モータの斜板の角度を制御する。そのため、出力軸25aの回転角度を制限するために、斜板変更機構25はストッパー29を備える。
【0028】
ストッパー29は、伝達部28の揺動方向の両側にそれぞれ配置される。伝達部28は、モータ27の回転軸27aの回転に沿って揺動するが、ストッパー29により、揺動範囲が制限される。つまり、伝達部28が一方の方向に揺動すると、所定の角度だけ揺動した時点で一方のストッパー29に当接してそれ以上揺動することができない。同様に、伝達部28が一方の方向と逆側の他方の方向に揺動すると、所定の角度だけ揺動した時点で他方のストッパー29に当接してそれ以上揺動することができない。このようなストッパー29が設けられることにより、伝達部28の揺動範囲が1回転未満の所定の範囲内に規定されて、出力軸25aの回転角度が1回転未満の所定の角度範囲の回転角に制限される。
【0029】
〔ユニバーサルジョイント〕
図4および図5に示すように、斜板変更機構25の出力軸25aとトラニオン軸26とは、ユニバーサルジョイント30を介して接続される。ユニバーサルジョイント30を用いることにより、出力軸25aとトラニオン軸26とが同一軸線上に並ばない状態で配置されても、出力軸25aの回転動力(制御回転動力)をトラニオン軸26に精度良く伝達することができる。
【0030】
ユニバーサルジョイント30は、シャフト32と、シャフト32の両端のそれぞれに設けられるジョイント部33を備える。ジョイント部33は、一端に軸受部35が設けられ、他端に軸受部36が設けられる。軸受部35および軸受部36は、接続される軸を少なくとも向かい合う2方から挟み込む構成であり、接続される軸の周面と向かい合う部分に穴37Aが設けられる。軸受部35の穴37Aと軸受部36の穴37Aとは接続される軸の周面に沿ってずれた位置、例えば90°ずれた位置に設けられる。
【0031】
ジョイント部33は、シャフト32の両端に軸受部36が支持されることにより、シャフト32の両端に設けられる。軸受部36は、向かい合う2つの穴37Aとシャフト32とを貫通するようにピン37Bが挿通されることによりシャフト32に支持される。これにより、ジョイント部33とシャフト32とは、ピン37Bを中心に相対的に揺動(回転)することができる。
【0032】
ジョイント部33は、軸受部35を介して斜板変更機構25の出力軸25aに支持される。軸受部35は、向かい合う2つの穴37Aと出力軸25aとを貫通するようにピン37Bが挿通されることにより出力軸25aに支持される。同様に、ジョイント部33は、軸受部35を介してトラニオン軸26に支持される。軸受部35は、向かい合う2つの穴37Aとトラニオン軸26の接続部26aとを貫通するようにピン37Bが挿通されることによりトラニオン軸26に支持される。トラニオン軸26の接続部26aは、左HST21および右HST22から突出するトラニオン軸26の先端の領域であり、軸受部35に支持される領域またはその近傍の領域である。
【0033】
2つの軸受部35のそれぞれに出力軸25aおよびトラニオン軸26が接続されることにより、ジョイント部33と出力軸25aとはピン37Bを中心に相対的に揺動することができ、ジョイント部33とトラニオン軸26とはピン37Bを中心に相対的に揺動することができる。
【0034】
以上のようにユニバーサルジョイント30を介して出力軸25aとトラニオン軸26とが接続されることにより、ユニバーサルジョイント30の軸芯方向、出力軸25aの軸芯方向、およびトラニオン軸26の軸芯方向がずれた状態であっても、出力軸25aの回転動力(制御回転動力)をトラニオン軸26に伝達することができる。
【0035】
ユニバーサルジョイント30は使用を続けることにより劣化し、出力軸25aまたはトラニオン軸26とユニバーサルジョイント30とが接続される領域にガタが生じる。例えば、ピン37Bがすり減ったり、出力軸25a、トラニオン軸26およびシャフト32のうちの少なくともいずれかのピン37Bが挿通される穴や、軸受部35および軸受部36の少なくともいずれかの穴37Aが拡がったりすることによりガタが生じる。
【0036】
ユニバーサルジョイント30にガタが生じると、出力軸25aが回転しても、ユニバーサルジョイント30(シャフト32)は、ガタに相当する回転角だけ出力軸25aが回転する間は空転する。そのため、ユニバーサルジョイント30は出力軸25a対して遅れて回転し始める。同様に、ユニバーサルジョイント30(シャフト32)が回転しても、トラニオン軸26は、ガタに相当する回転角だけユニバーサルジョイント30が回転する間は空転する。そのため、トラニオン軸26はユニバーサルジョイント30に対して遅れて回転し始める。
【0037】
図6に示すように、ユニバーサルジョイント30にガタが生じていない場合は、出力軸25aが回転する範囲である可動域Woと、トラニオン軸26が回転する範囲である可動域Wtは一致する。そのため、出力軸25aが回転し始めると、ユニバーサルジョイント30およびトラニオン軸26もすぐに回転し始める。
【0038】
これに対して、図7に示すように、出力軸25aとユニバーサルジョイント30との接続領域、および、ユニバーサルジョイント30とトラニオン軸26との接続領域の少なくともいずれかにガタが生じている場合は、出力軸25aの可動域Woに比べて、トラニオン軸26の可動域Wtは狭くなる。そのため、ユニバーサルジョイント30は出力軸25aに対して遅れて回転し始め、トラニオン軸26はユニバーサルジョイント30に対して遅れて回転し始める。また、出力軸25aの回転角度に対して、ユニバーサルジョイント30およびトラニオン軸26の回転角度が小さくなる。なお、図7におけるaは、ガタによって減少したトラニオン軸26の可動域を表す。
【0039】
このように、ユニバーサルジョイント30にガタが生じていると、出力軸25aの回転に対する、トラニオン軸26の回転タイミングが遅れ、回転量が減少する。その結果、モータ27から出力される制御回転動力に対して、適切にトラニオン軸26が回転せず、左HST21および右HST22が適切に動作しない。
【0040】
そのため、ユニバーサルジョイント30のガタの大きさであるガタ量を検出し、適切な対応を行う必要がある。
【0041】
〔ガタ量の検出構成〕
以下、図4図5を参照し、図8を用いて、ユニバーサルジョイント30に生じるガタのガタ量を検出する構成について説明する。
【0042】
ユニバーサルジョイント30のガタ量はガタ量検出装置により検出される。ガタ量検出装置は、CPU等のプロセッサを備え、第一回転量検出部40、第二回転量検出部41、駆動制御部43、ガタ量検出制御部45、および記憶部49を備える。
【0043】
第一回転量検出部40はトラニオン軸26の回転量を計測する。第一回転量検出部40はトラニオン軸26に配置され、例えば、接続部26aに配置される。第一回転量検出部40はポテンショメータとすることができるが、トラニオン軸26の回転量、少なくともトラニオン軸26が回転し始めたことを検知できる検知機器・計測機器とすることができる。
【0044】
ユニバーサルジョイント30にガタが生じている場合、モータ27(回転軸27a/制御入力軸25c/出力軸25a)の回転量と、トラニオン軸26の回転量とは必ずしも一致しない。そのため、斜板変更機構25の出力軸25a等に第一回転量検出部40が設けられても、トラニオン軸26の回転量は精度良く計測できない。第一回転量検出部40はトラニオン軸26に配置されることにより、ユニバーサルジョイント30に生じたガタの影響を排除して、トラニオン軸26の回転量を精度良く計測することができる。
【0045】
第二回転量検出部41はモータ27の回転量を計測する。第二回転量検出部41は、モータ27の回転軸27aの回転量を計測してもよいし、制御入力軸25cの回転量を計測してもよい。第二回転量検出部41はポテンショメータ等の回転量を計測できる任意の検知機器・計測機器とすることができる。
【0046】
駆動制御部43は、CPU等のプロセッサを備え、リモコン(図示せず)に対する操作、およびガタ量検出制御部45の制御に応じて、モータ27の回転を制御する。
【0047】
記憶部49は、ユニバーサルジョイント30のガタ量を検出するための各種の検出結果や制御データを記憶する。例えば、記憶部49は、第一回転量検出部40および第二回転量検出部41の検出結果(検出値)を記憶する。また、記憶部49は、ユニバーサルジョイント30のガタ量を検出するためあらかじめ定められた基準回転量51を記憶する。
【0048】
ガタ量検出制御部45は、CPU等のプロセッサを備え、駆動制御部43を制御してモータ27を回転させながら、第一回転量検出部40によりトラニオン軸26が回転し始めたこと、および、第二回転量検出部41によりモータ27の回転量を計測して、ユニバーサルジョイント30に生じたガタのガタ量を検出する。つまり、ガタ量検出制御部45は、第一回転量検出部40の検出結果、第二回転量検出部41の検出結果、および基準回転量51に基づいてガタ量を検出する。
【0049】
〔ガタ量の検出手順〕
次に、図4図5図8を参照し、図9図10を用いて、ユニバーサルジョイント30に生じるガタのガタ量を検出する手順について説明する。ここで、図9は、ユニバーサルジョイント30の回転に伴う穴37A、ピン37B、およびガタの動きを模式的に示したものである。図9は、説明のために穴37Aを強調して横長に示し、ユニバーサルジョイント30の回転を平面的に示しているため、ユニバーサルジョイント30の側周面に移動する穴37Aをユニバーサルジョイント30からはみ出して示している。
【0050】
ユニバーサルジョイント30に生じるガタは、ジョイント部33の軸受部35および軸受部36の少なくともいずれかにおいて、ピン37Bがすり減ったり穴37Aが拡がったりして、穴37Aとピン37Bとの間に隙間ができることにより生じる。図9では、便宜的に、出力軸25a側のジョイント部33(軸受部35および軸受部36)の穴37Aとピン37Bとの間にできる隙間が隙間部Co1、トラニオン軸26側のジョイント部33(軸受部35および軸受部36)の穴37Aとピン37Bとの間にできる隙間が隙間部Ct1とされる。通常、隙間部Co1および隙間部Ct1はピン37Bの周囲(回転方向に対して両側)に生じる(図9の状態(a))。
【0051】
ガタ量を検出する際には、まず、回転に対してガタ量が及ぼす影響が最大となる状態にするために、ガタ量検出制御部45は、駆動制御部43を制御してモータ27(回転軸27a)を一方の方向に回転させる(図10のステップ#1 第一回転工程)。これにより、出力軸25a側のジョイント部33における隙間部Co1が減少していく。モータ27の回転の当初は、ガタ(隙間部Co1)があるため、出力軸25aが回転してもシャフト32(出力軸25a側の軸受部35)は回転せず、トラニオン軸26は回転しない。モータ27を回転させながら、ガタ量検出制御部45は、第一回転量検出部40の検出結果を確認して、トラニオン軸26が回転し始めたか否かを検出する(図10のステップ#2)。
【0052】
モータ27が一方の方向に回転するのに伴い出力軸25aが回転し、隙間部Co1の分だけ出力軸25aが回転すると、ピン37Bは穴37Aの端部と接する(図9の状態(b))。その後は、モータ27が一方の方向に回転するのに伴い、シャフト32(出力軸25a側の軸受部35)は回転する。しかし、シャフト32が回転しても、当初のうちは、ガタ(隙間部Ct1)があるため、トラニオン軸26(トラニオン軸26側の軸受部35)は回転しない(図10のステップ#2 No)。ガタ量検出制御部45は、少なくともトラニオン軸26が回転し始めるまで、モータ27を一方の方向に回転させる。
【0053】
モータ27が一方の方向にさらに回転すると、隙間部Ct1が減少していき、トラニオン軸26側の軸受部35において、ピン37Bは穴37Aの端部と接する(図9の状態(c))。この状態で、トラニオン軸26(トラニオン軸26側の軸受部35)は回転し始める。
【0054】
なお、トラニオン軸26が回転し始めた状態では、出力軸25a側の軸受部35には隙間部Coが存在し、トラニオン軸26側の軸受部35には隙間部Ctが存在する。この状態における隙間部Coと隙間部Ctとを合わせた隙間がユニバーサルジョイント30に生じたガタに相当する。
【0055】
また、この状態からモータ27が一方の方向にさらに回転すると、ガタ(隙間部Coと隙間部Ct)を維持した状態で、モータ27の回転に伴ってトラニオン軸26が回転する(図9の状態(d))。
【0056】
ガタ量検出制御部45は、トラニオン軸26が回転し始めると(図10のステップ#2 Yes)、第二回転量検出部41の検出結果から、トラニオン軸26が回転し始めた瞬間のモータ27(回転軸27a/出力軸25a)の回転角度を第一回転角度52Aとして取得(計測)し、記憶部49に記憶する(図10のステップ#3)。
【0057】
そして、ガタ量検出制御部45は、駆動制御部43を制御してモータ27(回転軸27a)を一方の方向に対する逆方向である他方の方向に回転させる(図10のステップ#4 第二回転工程)。なお、モータ27の回転方向の逆転はトラニオン軸26が回転し始めた際に行われてもよいが、ガタ量検出制御部45は、さらにモータ27を一方の方向に回転させた後、モータ27を他方の方向に回転させてもよい。例えば、ガタ量検出制御部45は、モータ27を一方の方向に、伝達部28がストッパー29に到達するまでの最大限まで回転させた後、モータ27を他方の方向に回転させてもよい。モータ27を回転させながら、ガタ量検出制御部45は、第一回転量検出部40の検出結果を確認して、トラニオン軸26が回転し始めたか否かを検出する(図10のステップ#5)。
【0058】
モータ27の回転の当初は、ガタ(隙間部Co)があるため、出力軸25aが回転してもシャフト32(出力軸25a側の軸受部35)は回転せず、トラニオン軸26は回転しない(図9の状態(e))。モータ27の回転に伴って隙間部Coは減少する(隙間部Co2)。
【0059】
さらに、モータ27が他方の方向に回転するのに伴い出力軸25aが回転し、隙間部Coの分だけ出力軸25aが回転すると、ピン37Bは穴37Aの端部と接する(図9の状態(f))。その後は、モータ27が他方の方向に回転するのに伴い、シャフト32(出力軸25a側の軸受部35)は回転する。しかし、シャフト32が回転しても、当初のうちは、ガタ(隙間部Ct)があるため、トラニオン軸26(トラニオン軸26側の軸受部35)は回転しない(図10のステップ#5 No)。ガタ量検出制御部45は、少なくともトラニオン軸26が回転し始めるまで、モータ27を他方の方向に回転させる。
【0060】
モータ27が他方の方向にさらに回転すると、隙間部Ctが減少していき、トラニオン軸26側の軸受部35において、ピン37Bは穴37Aの端部と接する(図9の状態(g))。この状態で、トラニオン軸26(トラニオン軸26側の軸受部35)は回転し始める。
【0061】
ガタ量検出制御部45は、トラニオン軸26が回転し始めると(図10のステップ#5 Yes)、第二回転量検出部41の検出結果から、トラニオン軸26が回転し始めた瞬間のモータ27(回転軸27a/出力軸25a)の回転角度を第二回転角度52Bとして取得(計測)し、記憶部49に記憶する(図10のステップ#6)。
【0062】
次に、ガタ量検出制御部45は、第一回転角度52Aと第二回転角度52Bとの差を第一計測回転量54Aとして求める(図10のステップ#7 第一計測工程/第一計測回転量取得処理)。第一計測回転量54Aは、ガタを相殺した状態(図9の状態(c))から、モータ27を他方の方向にガタ(隙間部Co+隙間部Ct)の分だけ回転させた状態(図9の状態(g))まで回転させた際のモータ27の回転量である。すなわち、第一計測回転量54Aはガタ(隙間部Co+隙間部Ct)に対応するモータ27の回転量である。
【0063】
次に、ガタ量検出制御部45は、駆動制御部43を制御してモータ27(回転軸27a)を再び一方の方向に回転させる(図10のステップ#8 第三回転工程)。なお、モータ27の回転方向の逆転はトラニオン軸26が回転し始めた際に行われてもよいが、ガタ量検出制御部45は、さらにモータ27を他方の方向に回転させた後、モータ27を一方の方向に回転させてもよい。例えば、ガタ量検出制御部45は、モータ27を他方の方向に、伝達部28がストッパー29に到達するまでの最大限まで回転させた後、モータ27を一方の方向に回転させてもよい。また、モータ27を回転させながら、ガタ量検出制御部45は、第一回転量検出部40の検出結果を確認して、トラニオン軸26が回転し始めたか否かを検出する(図10のステップ#9)。
【0064】
そして、ガタ量検出制御部45は、トラニオン軸26が回転し始めるまでモータ27を一方の方向に回転させ(図10のステップ#9 No)、トラニオン軸26が回転し始めると(図10のステップ#9 Yes)、第二回転量検出部41の検出結果から、トラニオン軸26が回転し始めた瞬間のモータ27(回転軸27a/出力軸25a)の回転角度を第三回転角度52Cとして取得(計測)し、記憶部49に記憶する(図10のステップ#10)。
【0065】
次に、ガタ量検出制御部45は、第二回転角度52Bと第三回転角度52Cとの差を第二計測回転量54Bとして求める(図10のステップ#11 第二計測工程/第二計測回転量取得処理)。第二計測回転量54Bはガタ(隙間部Co+隙間部Ct)に対応するモータ27の回転量である。
【0066】
次に、ガタ量検出制御部45は、第一計測回転量54Aと第二計測回転量54Bとの平均値である平均計測回転量54Cを求める(図10のステップ#12)。
【0067】
軸受部35および軸受部36において、穴37Aとピン37Bとの間には、ピン37Bが回転できるように、あらかじめわずかな隙間が設けられる。第一計測回転量54Aおよび第二計測回転量54Bとして計測されたガタ(隙間部Co+隙間部Ct)は、この隙間を含む。ユニバーサルジョイント30に生じたガタは、穴37Aとピン37Bとの間の隙間が拡がったものであり、ガタ量は隙間が拡がった量である。また、あらかじめ定められた隙間は所定の値に設計されており、この値に基づいて基準回転量51は決定することができる。このことから、ガタ量検出制御部45は、平均計測回転量54Cと基準回転量51とに基づいてガタ量を求める(図10のステップ#13 ガタ量検出工程)。具体的には、平均計測回転量54Cと基準回転量51との差がガタ量として求められる。例えば、基準回転量51から平均計測回転量54Cが減じられてガタ量とされる。
【0068】
以上のような手順でガタ量を検出することにより、ガタ量検出制御部45は、ガタの影響を最大限に受ける状態からモータ27を回転させ、トラニオン軸26の回転を検出することにより、ガタの影響を受ける回転量を容易に検出することができる。そのため、ユニバーサルジョイント30に生じたガタ量を容易に検出することができる。
【0069】
〔草刈機におけるガタ量の検出〕
次に、図4図5を参照し、図8図10を用いて、草刈機におけるユニバーサルジョイント30に生じるガタのガタ量を検出する手順について説明する。
【0070】
草刈機が製造された際、あるいは、左HST21および右HST22が組付けられた際といった、トラニオン軸26とユニバーサルジョイント30とが接続される組立時に、ガタ量検出制御部45は、エンジン4(測定対象となる左HST21または右HST22:以下単にHSTと称する場合がある)が停止している状態で、上述の手順で、第一計測回転量54Aおよび第二計測回転量54Bを計測し、平均計測回転量54Cを求める。そして、ガタ量検出制御部45は、求められた平均計測回転量54Cを基準回転量51として記憶部49に格納する。また、ガタ量には多少の許容範囲がある場合がある。その場合、基準回転量51は、平均計測回転量54Cに許容範囲に相当する回転量を加えた値とされてもよい。
【0071】
穴37Aとピン37Bとの間の隙間は設計値となるように製造されるが、ユニバーサルジョイント30の製造誤差や組付け誤差により、草刈機(ユニバーサルジョイント30)毎に差が生じる。ガタ量は、計測値と基準回転量51との差として求められるため、製造時(使用開始前)に実測された回転量から求められた平均計測回転量54Cを基準回転量51とすることにより、個体差による誤差を抑制し、精度良くガタ量を検出することができる。
【0072】
その後、ガタ量検出制御部45は、草刈機、あるいは左HST21および右HST22を使用する開始動作の度に自動的(自動制御により)にガタ量の検出を行う。例えば、ガタ量検出制御部45は、草刈機のエンジン4の始動操作が行われる度に、エンジン4(HST)が停止している状態でガタ量の検出を行う。ここで、HSTが動作している状態では、モータ27を回転させても、HSTの内圧や車軸圧力で斜板が押し戻されてトラニオン軸26の動作が安定しない場合がある。そのため、エンジン4(HST)を停止させて完全に車軸とトランスミッション20との間の動力伝達を切断した状態でガタ量の検出が行われる。さらに、ガタ量検出制御部45は、草刈機のエンジン4の始動時以外にも、動作中にエンジン4(HST)を停止させて自動的にガタ量の検出を行ってもよい。また、動作中に、トラニオン軸26が回転し始めるまでモータ27を一方の方向に回転させた後、トラニオン軸26が回転し始めるまでモータ27を他方の方向に回転させる動作が行われる際にも、ガタ量検出制御部45は、エンジン4(HST)を停止させて自動的にガタ量の検出を行ってもよい。
【0073】
ユニバーサルジョイント30のガタは、使用するにつれて発生し、大きくなる。そのため、定期的にガタ量が検出されることが好ましい。特に、草刈機(ユニバーサルジョイント30)が使用される際に、使用に先立ってガタ量が検出されることにより、ガタ量が許容範囲を超えていたとしても、事前に検知することができ、使用を控えたり、適切な対応をしたりすることができる。その結果、左HST21および右HST22等が精度良く操作できないといった、ガタが生じたことによる弊害を抑制することができる。
【0074】
〔ガタ量を検出した際の対応〕
次に、図4図5を参照し、図8図10を用いて、ガタ量を検出した際の対応について説明する。
【0075】
ガタ量検出装置は、CPU等のプロセッサを備える動力制御装置47を備える。動力制御装置47は、まず、ガタ量検出制御部45が検出したガタ量が、あらかじめ定められ記憶部49に格納された第一閾値56A以上であるか否かを検出する(図10のステップ#14)。ガタ量が第一閾値56A以上でない場合(図10のステップ#14 No)、処理を終了する。
【0076】
ガタ量が第一閾値56Aより大きい場合(図10のステップ#14 Yes)、動力制御装置47は、ガタ量に応じて、エンジン4から出力される駆動回転動力および油圧ポンプの斜板の角度に対する変速動力の対応関係を変更(動力制御)する(図10のステップ#15)。
【0077】
ユニバーサルジョイント30にガタが生じると、モータ27の回転量に対するトラニオン軸26の回転量が小さくなり、斜板の角度の変化が小さくなる。その結果、モータ27を回転させても、モータ27の回転量に応じた変速動力が左HST21および右HST22から出力されなくなり、モータ27の回転量に応じた草刈機の車速を発生させることができなくなる。そのため、動力制御装置47は、モータ27の回転量に対する変速動力が適切な値(設計値)となるように、斜板の角度の変化や駆動回転動力を調整する。
【0078】
例えば、動力制御装置47は、ガタ量に応じて、駆動回転動力、つまり、エンジン4の回転数を変更(調整)する。具体的には、ガタ量が第一閾値56Aより大きい場合、動力制御装置47は、ガタ量に応じてエンジン4の回転数を高める。
【0079】
これにより、ユニバーサルジョイント30にガタが生じたとしても、モータ27の回転量に対する変速動力の変動を抑制し、草刈機の車速を精度良く制御することができる。
【0080】
なお、ガタ量と第一閾値56Aとの比較を行わず、ガタ量検出制御部45が検出したガタ量に応じてエンジン4の回転数を変更(調整)してもよい。
【0081】
さらに、草刈機は警告部16を備え、ガタ量が第一閾値56Aより大きい場合、動力制御装置47は、警告部16に所定の警告を行わせる(図10のステップ#16)。これにより、草刈機の操縦者(作業者)は、ガタ量が大きいことを認知でき、適切な対応を行うことができる。
【0082】
警告と同時に、または警告とは別に、ガタ量が第一閾値56Aより大きい場合、動力制御装置47は、エンジン4を停止させてもよい(図10のステップ#17)。これにより、ガタ量が大きい場合には、走行(作業)が停止し、不適切な走行を抑制することができる。
【0083】
なお、ガタ量を検出した際の対応としては、ガタ量に応じて、動力制御、警告、およびエンジン4の停止のうちの少なくともいずれかが行われてもよいし、動力制御、警告、およびエンジン4の停止以外の対応が行われてもよい。
【0084】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、ガタ量検出制御部45は、第一計測回転量54Aおよび第二計測回転量54Bの平均である平均計測回転量54Cを求めてから、基準回転量51と平均計測回転量54Cとの差をガタ量として求めたが、基準回転量51に基づいて求められるガタ量は、別の方法で求められてもよい。
【0085】
例えば、ガタ量検出制御部45は、第一計測回転量54Aおよび第二計測回転量54Bを取得した際に、それぞれの回転量と基準回転量51との差を求め、この差の平均値をガタ量とする。具体的には、ガタ量検出制御部45は、第一計測回転量54Aを取得した際に、基準回転量51と第一計測回転量54Aとの差を第一ガタ量として求める。また、ガタ量検出制御部45は、第二計測回転量54Bを取得した際に、基準回転量51と第二計測回転量54Bとの差を第二ガタ量として求める。そして、ガタ量検出制御部45は、第一ガタ量と第二ガタ量との平均値をガタ量として求める。
【0086】
(2)上記実施形態において、ガタ量検出制御部45は、第一計測回転量54Aおよび第二計測回転量54Bの両方を取得することなく、第一計測回転量54Aおよび第二計測回転量54Bの一方のみを取得し、取得した第一計測回転量54Aおよび第二計測回転量54Bのいずれかと基準回転量51とに基づいてガタ量を求めてもよい。つまり、ガタ量検出制御部45は、トラニオン軸26が回転し始めるまでモータ27を一方の方向に回転させ、その後、モータ27を他方の方向に回転させ始めてからトラニオン軸26が回転し始めるまでのモータ27の回転量と基準回転量51との差をガタ量としてもよい。これにより、容易にガタ量を求めることができる。
【0087】
(3)上記各実施形態において、第一計測回転量54Aおよび第二計測回転量54Bの一方のみに基づいてガタ量を求める際にも、草刈機の製造時(トラニオン軸26とユニバーサルジョイント30とが接続される組立時)には、ガタ量検出制御部45は、第一計測回転量54Aおよび第二計測回転量54Bの両方を取得し、平均計測回転量54Cを基準回転量51としてもよい。逆に、第一計測回転量54Aおよび第二計測回転量54Bの一方のみに基づいてガタ量を求める際には、草刈機の製造時(トラニオン軸26とユニバーサルジョイント30とが接続される組立時)にも、ガタ量検出制御部45は、第一計測回転量54Aおよび第二計測回転量54Bの一方のみを取得し、取得した回転量を基準回転量51としてもよい。さらに、第一計測回転量54Aおよび第二計測回転量54Bの両方に基づいてガタ量を求める際にも、草刈機の製造時(トラニオン軸26とユニバーサルジョイント30とが接続される組立時)には、ガタ量検出制御部45は、第一計測回転量54Aおよび第二計測回転量54Bの一方のみを取得し、取得した回転量を基準回転量51としてもよい。
【0088】
(4)上記各実施形態において、駆動回転動力の変更に代えて、駆動回転動力の変更と共に、動力制御装置47は、伝達部28の揺動範囲を変更する構成としてもよい。
【0089】
具体的には、斜板変更機構25は、伝達部28の揺動範囲を規制するストッパー29を、揺動範囲を拡縮する方向に移動させるストッパー移動部29Aをさらに備える。
【0090】
そして、動力制御装置47は、ガタ量に応じてストッパー移動部29Aを制御してストッパー29を伝達部28の揺動方向に沿って移動させ、伝達部28の揺動範囲を拡縮する。例えば、ガタ量が第一閾値56Aより大きい場合、動力制御装置47は、ガタ量に応じて伝達部28の揺動範囲を拡張させる。
【0091】
これにより、ユニバーサルジョイント30にガタが生じたとしても、モータ27の回転量に対する変速動力の変動を抑制し、草刈機の車速を精度良く制御することができる。
【0092】
(5)上記各実施形態において、ガタ量検出制御部45は、第一計測回転量54Aと第二計測回転量54Bとの差があらかじめ定められた第二閾値56Bより大きい場合に、第一計測回転量54Aおよび第二計測回転量54Bの少なくともいずれかを再度取得してもよい。つまり、ガタ量検出制御部45は、第一計測回転量54Aと第二計測回転量54Bとの差があらかじめ定められた第二閾値56Bより大きい場合に、第一計測回転量取得処理および第二計測回転量取得処理の少なくともいずれかを再実施する。
【0093】
同じ時期に、モータ27を一方の方向に回転させて取得された第一計測回転量54Aと、モータ27を他方の方向に回転させて取得された第二計測回転量54Bとは、測定誤差の範囲内で略同じ値になる。第一計測回転量54Aと第二計測回転量54Bとの差が測定誤差を超える値(第二閾値56B)である場合、第一計測回転量54Aの計測、または、第二計測回転量54Bの計測、あるいはそれらの両方に不備があったと推測できる。
【0094】
第一計測回転量54Aと第二計測回転量54Bとの差があらかじめ定められた第二閾値56Bより大きい場合に、ガタ量検出制御部45が第一計測回転量54Aおよび第二計測回転量54Bの少なくともいずれかを再度取得することにより、計測に不備があっても、第一計測回転量54Aおよび第二計測回転量54Bを精度良く取得することができる。
【0095】
なお、第一計測回転量54Aと第二計測回転量54Bとの差があらかじめ定められた第二閾値56Bより大きい場合に限らず、ガタ量検出制御部45は、第一計測回転量54Aがあらかじめ定められた回転量より大きい場合に第一計測回転量54Aを再取得し、第二計測回転量54Bがあらかじめ定められた回転量より大きい場合に第二計測回転量54Bを再取得してもよい。
【0096】
(6)上記各実施形態において、ガタ量検出装置は上記のような機能ブロックから構成されるものに限定されず、任意の機能ブロックから構成されてもよい。例えば、ガタ量検出装置の各機能ブロックはさらに細分化されても良く、逆に、各機能ブロックの一部または全部がまとめられてもよい。また、ガタ量検出装置の機能は、上記機能ブロックに限らず、任意の機能ブロックが実行する方法により実現されてもよい。また、ガタ量検出装置の機能の一部または全部は、ソフトウエアで構成されてもよい。ソフトウエアに係るプログラムは、記憶部49等の任意の記憶装置に記憶され、ガタ量検出装置が備えるCPU等のプロセッサ、あるいは別に設けられたプロセッサにより実行される。また、ガタ量検出装置、駆動制御部43、ガタ量検出制御部45、および動力制御装置47のうちの少なくともいずれかは、草刈機のECU等に搭載されてもよい。
【0097】
(7)ユニバーサルジョイント30を介して回転動力(制御回転動力)が入力される軸(入力軸)は、HST(左HST21/右HST22)のトラニオン軸26に限らず、任意の動作対象装置の入力軸であってもよい。
【0098】
(8)上記各実施形態において、草刈機はリモコンにより操縦される構成に限らず、自動走行制御部によって自動走行する構成であってもよいし、運転者(操縦者/作業者)が搭乗し、操作具を操作することにより操縦される構成であってもよい。リモコン操縦される草刈機においては、リモコンの操作に応じてモータ27が動作(回転)し、油圧ポンプの斜板の角度が制御されるが、自動走行あるいは操作具に対する操作により操縦される場合にも、自動走行制御部の制御または操作具に対する操作に応じてモータ27が動作(回転)し、油圧ポンプの斜板の角度が制御される。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、草刈機に限らず、ユニバーサルジョイントを介して動力を伝達する構成を備える、農作業車やその他の作業車に適用することができる。
【符号の説明】
【0100】
2 走行装置
4 エンジン(駆動源)
21 左HST(動作対象装置/静油圧式無段変速装置)
22 右HST(動作対象装置/静油圧式無段変速装置)
23 入力軸
26 トラニオン軸(入力軸)
27 モータ(アクチュエータ)
30 ユニバーサルジョイント
40 第一回転量検出部
41 第二回転量検出部
43 駆動制御部
45 ガタ量検出制御部
49 記憶部
51 基準回転量
54A 第一計測回転量
54B 第二計測回転量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10