(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094057
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】分散装置および堆積装置
(51)【国際特許分類】
D04H 1/732 20120101AFI20240702BHJP
D04H 1/736 20120101ALI20240702BHJP
【FI】
D04H1/732
D04H1/736
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210776
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100173428
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】尾曲 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】松田 健作
(72)【発明者】
【氏名】西 敏蔵
【テーマコード(参考)】
4L047
【Fターム(参考)】
4L047AA08
4L047AB06
4L047EA03
(57)【要約】
【課題】材料を良好に分散することができる分散装置および堆積装置を提供すること。
【解決手段】繊維を含む材料を空気とともに供給する供給管と、前記材料を含む空気の第1旋回流を形成する第1旋回流形成部、および、前記第1旋回流形成部と連通し、前記材料を含む空気の前記第1旋回流と反対方向の第2旋回流を形成する第2旋回流形成部を有し、前記供給管と接続されたチャンバーとを有する供給部と、前記材料を放出する放出口が形成されたケーシングを有し、前記材料を前記ケーシング内で攪拌し、前記放出口から気中に放出して分散する分散部と、前記第1旋回流形成部および前記第2旋回流形成部と前記ケーシングとを連通する連通口を有する接続部と、を備えることを特徴とする分散装置。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維を含む材料を空気とともに供給する供給管と、前記材料を含む空気の第1旋回流を形成する第1旋回流形成部および前記第1旋回流形成部と連通し、前記材料を含む空気の前記第1旋回流と反対方向の第2旋回流を形成する第2旋回流形成部を有し、前記供給管と接続されたチャンバーと、を有する供給部と、
前記材料を放出する放出口が形成されたケーシングを有し、前記材料を前記ケーシング内で攪拌し、前記放出口から気中に放出して分散する分散部と、
前記第1旋回流形成部および前記第2旋回流形成部と、前記ケーシングとを連通する連通口を有する接続部と、を備えることを特徴とする分散装置。
【請求項2】
前記分散部は、前記ケーシング内に設置され、回転軸回りに回転する攪拌部材を有する請求項1に記載の分散装置。
【請求項3】
前記連通口は、前記回転軸と平行な第1方向に沿って延在する長尺状をなしている請求項2に記載の分散装置。
【請求項4】
前記第1旋回流形成部および前記第2旋回流形成部は、前記回転軸と平行な第1方向に沿って並んで配置されている請求項2または3に記載の分散装置。
【請求項5】
前記第1旋回流形成部の内周面は、湾曲した第1湾曲面であり、前記第2旋回流形成部の内周面は、湾曲した第2湾曲面である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の分散装置。
【請求項6】
前記第1湾曲面および前記第2湾曲面は、前記第1旋回流形成部および前記第2旋回流形成部の境界部に対し対称的な形状をなしている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の分散装置。
【請求項7】
前記供給管の下流側の端部は、前記第1旋回流形成部と前記第2旋回流形成部との境界部に接続されている請求項1に記載の分散装置。
【請求項8】
繊維を含む材料を空気とともに供給する供給管と、前記材料を含む空気の第1旋回流を形成する第1旋回流形成部および前記第1旋回流形成部と連通し、前記材料を含む空気の前記第1旋回流と反対方向の第2旋回流を形成する第2旋回流形成部を有し、前記供給管と接続されたチャンバーと、を有する供給部と、
前記材料を放出する放出口が形成されたケーシングを有し、前記材料を前記ケーシング内で攪拌し、前記放出口から気中に放出して分散する分散部と、
前記第1旋回流形成部および前記第2旋回流形成部と、前記ケーシングとを連通する連通口を有する接続部と、
前記分散部により分散された前記材料を堆積させる堆積部と、を備えることを特徴とする堆積装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散装置および堆積装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、水を極力使用しない乾式によるシート製造装置が提案されている。乾式のシート製造装置としては、古紙のような繊維を含む原料を解繊する解繊部と、解繊部で生成された解繊物を気中に分散させる分散部と、分散された解繊物を堆積させる堆積部と、堆積部で生成された堆積物をシート状に成形する成形部と、を備える構成が知られている。
【0003】
特許文献1に記載のシート製造装置では、供給管を介して解繊物が分散部に供給され、分散部内で解繊物を攪拌し、ほぐした後に解繊物を分散する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の装置では、十分にほぐされていない解繊物の塊が分散部に供給された場合、解繊物の塊の大きさや量等の程度によっては、分散部内での攪拌だけでは十分に解繊物をほぐすことができないおそれがある。この場合、解繊物を効率よく、良好に分散することができず、また、残存した解繊物の塊によって分散部等に目詰まりを生じ、処理効率の低下、装置の故障、装置の停止等の原因になりかねないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の分散装置は、繊維を含む材料を空気とともに供給する供給管と、前記材料を含む空気の第1旋回流を形成する第1旋回流形成部および前記第1旋回流形成部と連通し、前記材料を含む空気の前記第1旋回流と反対方向の第2旋回流を形成する第2旋回流形成部を有し、前記供給管と接続されたチャンバーと、を有する供給部と、
前記材料を放出する放出口が形成されたケーシングを有し、前記材料を前記ケーシング内で攪拌し、前記放出口から気中に放出して分散する分散部と、
前記第1旋回流形成部および前記第2旋回流形成部と、前記ケーシングとを連通する連通口を有する接続部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の堆積装置は、繊維を含む材料を空気とともに供給する供給管と、前記材料を含む空気の第1旋回流を形成する第1旋回流形成部および前記第1旋回流形成部と連通し、前記材料を含む空気の前記第1旋回流と反対方向の第2旋回流を形成する第2旋回流形成部を有し、前記供給管と接続されたチャンバーと、を有する供給部と、
前記材料を放出する放出口が形成されたケーシングを有し、前記材料を前記ケーシング内で攪拌し、前記放出口から気中に放出して分散する分散部と、
前記第1旋回流形成部および前記第2旋回流形成部と、前記ケーシングとを連通する連通口を有する接続部と、
前記分散部により分散された前記材料を堆積させる堆積部と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る分散装置および堆積装置を備えるシート製造装置を示す概略側面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す分散装置および堆積装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の分散装置および堆積装置を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0010】
<実施形態>
図1は、本発明の実施形態に係る分散装置および堆積装置を備えるシート製造装置を示す概略側面図である。
図2は、
図1に示す分散装置および堆積装置の斜視図である。
図3は、
図2中のA-A線断面図である。
図4は、
図2に示す供給部の断面平面図である。
【0011】
なお、以下では、説明の便宜上、
図1~
図4に示すように、互いに直交する3軸をx軸、y軸およびz軸とする。また、x軸とy軸を含むxy平面が水平面となっており、z軸が鉛直となっている。z軸方向から見た状態を「平面視」と言う。また、各軸の矢印が向いた方向を「+」、その反対方向を「-」と言う。また、
図1、
図2および
図3の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言う。また、各図において、繊維を含む材料が流れる方向の先を「下流側」、その反対側を「上流側」とも言う。
【0012】
図1に示すように、シート製造装置100は、本発明の堆積装置の一例である堆積装置10と、シート成形部20と、切断部21と、ストック部22と、回収部27と、を備えている。また、堆積装置10は、原料供給部11と、粗砕部12と、解繊部13と、選別部14と、第1ウェブ形成部15と、細分部16と、混合部17と、本発明の分散装置の一例である分散装置18と、第2ウェブ形成部19と、制御部28と、を備えている。
【0013】
また、シート製造装置100は、加湿部231と、加湿部232と、加湿部233と、加湿部234と、加湿部235と、加湿部236とを備えている。その他、シート製造装置100は、ブロアー173と、ブロアー261と、ブロアー262と、ブロアー263とを備えている。
【0014】
また、シート製造装置100では、原料供給工程と、粗砕工程と、解繊工程と、選別工程と、第1ウェブ形成工程と、分断工程と、混合工程と、分散工程と、第2ウェブ形成工程と、シート成形工程と、切断工程とがこの順に実行される。
【0015】
以下、各部の構成について説明する。
図1に示すように、原料供給部11は、粗砕部12に原料M1を供給する原料供給工程を行なう部分である。この原料M1としては、セルロース繊維を含む繊維含有物からなるシート状材料を用いることができる。なお、セルロース繊維とは、化合物としてのセルロースを主成分とし繊維状をなすものであればよく、セルロースの他に、ヘミセルロース、リグニンを含むものであってもよい。また、原料M1は、織布、不織布等、形態は問わない。また、原料M1は、例えば、古紙を解繊して再生、製造されたリサイクルペーパーや、合成紙のユポ紙(登録商標)であってもよいし、リサイクルペーパーでなくてもよい。また、本実施形態では、原料M1は、使用済みまたは不要となった古紙である。
【0016】
粗砕部12は、原料供給部11から供給された原料M1を気中等の気中で粗砕する粗砕工程を行なう部分である。粗砕部12は、一対の粗砕刃121と、シュート122とを有している。
【0017】
一対の粗砕刃121は、互いに反対方向に回転することにより、これらの間で原料M1を粗砕して、すなわち、裁断して粗砕片M2にすることができる。粗砕片M2の形状や大きさは、解繊部13における解繊処理に適しているのが好ましく、例えば、1辺の長さが100mm以下の小片であるのが好ましく、10mm以上70mm以下の小片であるのがより好ましい。
【0018】
シュート122は、一対の粗砕刃121の下方に配置され、例えば漏斗状をなすものとなっている。これにより、シュート122は、粗砕刃121によって粗砕されて落下してきた粗砕片M2を受けることができる。
【0019】
また、シュート122の上方には、加湿部231が一対の粗砕刃121に隣り合って配置されている。加湿部231は、シュート122内の粗砕片M2を加湿するものである。この加湿部231は、水分を含む図示しないフィルターを有し、フィルターに空気を通過させることにより、湿度を高めた加湿空気を粗砕片M2に供給する気化式、特に、温風気化式の加湿器で構成されている。加湿空気が粗砕片M2に供給されることにより、粗砕片M2が静電気によってシュート122等に付着するのを抑制することができる。
【0020】
シュート122は、管241を介して、解繊部13に接続されている。シュート122に集められた粗砕片M2は、管241を通過して、解繊部13に搬送される。
【0021】
解繊部13は、粗砕片M2を気中で、すなわち、乾式で解繊する解繊工程を行なう部分である。この解繊部13での解繊処理により、粗砕片M2から解繊物M3を生成することができる。ここで「解繊する」とは、複数の繊維が結着されてなる粗砕片M2を、繊維1本1本に解きほぐすことをいう。そして、この解きほぐされたものが解繊物M3となる。解繊物M3の形状は、線状や帯状である。また、解繊物M3同士は、絡み合って塊状となった状態、すなわち、いわゆる「ダマ」を形成している状態で存在してもよい。
【0022】
解繊部13は、例えば本実施形態では、高速回転するローターと、ローターの外周に位置するライナーとを有するインペラーミルで構成されている。解繊部13に流入してきた粗砕片M2は、ローターとライナーとの間に挟まれて解繊される。
【0023】
また、解繊部13は、ローターの回転により、粗砕部12から選別部14に向かう空気の流れ、すなわち、気流を発生させることができる。これにより、粗砕片M2を管241から解繊部13に吸引することができる。また、解繊処理後、解繊物M3を、管242を介して選別部14に送り出すことができる。
【0024】
管242の途中には、ブロアー261が設置されている。ブロアー261は、選別部14に向かう気流を発生させる気流発生装置である。これにより、選別部14への解繊物M3の送り出しが促進される。
【0025】
選別部14は、解繊物M3を、繊維の長さの大小によって選別する選別工程を行なう部分である。選別部14では、解繊物M3は、第1選別物M4-1と、第1選別物M4-1よりも大きい第2選別物M4-2とに選別される。第1選別物M4-1は、その後のシートSの製造に適した大きさのものとなっている。その平均長さは、1μm以上30μm以下であるのが好ましい。一方、第2選別物M4-2は、例えば、解繊が不十分なものや、解繊された繊維同士が過剰に凝集したもの等が含まれる。
【0026】
選別部14は、ドラム部141と、ドラム部141を収納するハウジング部142とを有する。
【0027】
ドラム部141は、円筒状をなす網体で構成され、その中心軸回りに回転する篩である。このドラム部141には、解繊物M3が流入してくる。そして、ドラム部141が回転することにより、網の目開きよりも小さい解繊物M3は、第1選別物M4-1として選別され、網の目開き以上の大きさの解繊物M3は、第2選別物M4-2として選別される。
【0028】
第1選別物M4-1は、ドラム部141から落下する。
一方、第2選別物M4-2は、ドラム部141に接続されている管243に送り出される。管243は、ドラム部141と反対側、すなわち、上流側が管241に接続されている。この管243を通過した第2選別物M4-2は、管241内で粗砕片M2と合流して、粗砕片M2とともに解繊部13に流入する。これにより、第2選別物M4-2は、解繊部13に戻されて、粗砕片M2とともに解繊処理される。
【0029】
また、ドラム部141からの第1選別物M4-1は、気中に分散しつつ落下して、ドラム部141の下方に位置する第1ウェブ形成部15に向かう。第1ウェブ形成部15は、第1選別物M4-1から第1ウェブM5を形成する第1ウェブ形成工程を行なう部分である。第1ウェブ形成部15は、メッシュベルト151と、3つの張架ローラー152と、吸引部153とを有している。
【0030】
メッシュベルト151は、無端ベルトであり、第1選別物M4-1が堆積する。このメッシュベルト151は、3つの張架ローラー152に掛け回されている。そして、張架ローラー152の回転駆動により、メッシュベルト151上の第1選別物M4-1は、下流側に搬送される。
【0031】
第1選別物M4-1は、メッシュベルト151の目開き以上の大きさとなっている。これにより、第1選別物M4-1は、メッシュベルト151の通過が規制され、よって、メッシュベルト151上に堆積することができる。また、第1選別物M4-1は、メッシュベルト151上に堆積しつつ、メッシュベルト151ごと下流側に搬送されるため、層状の第1ウェブM5として形成される。
【0032】
また、第1選別物M4-1には、例えば塵や埃等が混在しているおそれがある。塵や埃は、例えば、粗砕や解繊によって生じることがある。そして、このような塵や埃は、後述する回収部27に回収されることとなる。
【0033】
吸引部153は、メッシュベルト151の下方から空気を吸引するサクション機構である。これにより、メッシュベルト151を通過した塵や埃を空気ごと吸引することができる。
【0034】
また、吸引部153は、管244を介して、回収部27に接続されている。吸引部153で吸引された塵や埃は、回収部27に回収される。
【0035】
回収部27には、管245がさらに接続されている。また、管245の途中には、ブロアー262が設置されている。このブロアー262の作動により、吸引部153で吸引力を生じさせることができる。これにより、メッシュベルト151上における第1ウェブM5の形成が促進される。この第1ウェブM5は、塵や埃等が除去されたものとなる。また、塵や埃は、ブロアー262の作動により、管244を通過して、回収部27まで到達する。
【0036】
ハウジング部142は、加湿部232と接続されている。加湿部232は、加湿部231と同様の気化式の加湿器で構成されている。これにより、ハウジング部142内には、加湿空気が供給される。この加湿空気により、第1選別物M4-1を加湿することができ、よって、第1選別物M4-1がハウジング部142の内壁に静電力によって付着してしまうのを抑制することもできる。
【0037】
選別部14の下流側には、加湿部235が配置されている。加湿部235は、水を噴霧する超音波式加湿器で構成されている。これにより、第1ウェブM5に水分を供給することができ、よって、第1ウェブM5の水分量が調整される。この調整により、静電力による第1ウェブM5のメッシュベルト151への吸着を抑制することができる。これにより、第1ウェブM5は、メッシュベルト151が張架ローラー152で折り返される位置で、メッシュベルト151から容易に剥離される。
【0038】
加湿部235の下流側には、細分部16が配置されている。細分部16は、メッシュベルト151から剥離した第1ウェブM5を分断する分断工程を行なう部分である。細分部16は、回転可能に支持されたプロペラ161と、プロペラ161を収納するハウジング部162とを有している。そして、回転するプロペラ161により、第1ウェブM5を分断することができる。分断された第1ウェブM5は、細分体M6となる。また、細分体M6は、ハウジング部162内を下降する。
【0039】
ハウジング部162は、加湿部233と接続されている。加湿部233は、加湿部231と同様の気化式の加湿器で構成されている。これにより、ハウジング部162内には、加湿空気が供給される。この加湿空気により、細分体M6がプロペラ161やハウジング部162の内壁に静電力によって付着してしまうのを抑制することもできる。
【0040】
細分部16の下流側には、混合部17が配置されている。混合部17は、細分体M6と結着剤P1とを混合する混合工程を行なう部分である。この混合部17は、結着剤供給部171と、管172と、ブロアー173とを有している。
【0041】
管172の上流側端部は、細分部16のハウジング部162と接続され、管172の下流側端部は、ブロアー173の吸入口175に接続されている。ブロアー173の作動により、細分体M6と結着剤P1との混合物M7は、管172内を下流側へ向けて送り出される。
【0042】
管172の途中には、結着剤供給部171が接続されている。結着剤供給部171は、スクリューフィーダー174を有している。このスクリューフィーダー174が回転駆動することにより、結着剤P1を粉体または粒子として管172内に定量的に供給することができる。管172に供給された結着剤P1は、所望の比率で細分体M6と混合されて混合物M7となる。
【0043】
結着剤P1は、例えば、澱粉、デキストリン、グリコーゲン、アミロース、ヒアルロン酸、葛、こんにゃく、片栗粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉、天然ガム糊、繊維誘導糊、海藻類、動物性蛋白質等の天然物由来成分や、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、天然物由来成分であるのが好ましく、澱粉であるのがより好ましい。また、例えば、各種ポリオレフィン、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアミド等の熱可塑性樹脂、各種熱可塑性エラストマー等を用いることもできる。
【0044】
なお、結着剤供給部171から供給されるものとしては、結着剤P1の他に、例えば、繊維を着色するための着色剤、繊維の凝集や結着剤P1の凝集を抑制するための凝集抑制剤、繊維等を燃えにくくするための難燃剤、シートSの紙力を増強するための紙力増強剤等が含まれていてもよい。または、予めそれらを結着剤P1に含ませて複合化したものを結着剤供給部171から供給してもよい。
【0045】
管172の下流側にはブロアー173が設置され、ブロアー173の下流側には分散装置18が設置され、分散装置18の下流側には第2ウェブ形成部19が設置されている。ブロアー173の吐出口176には、分散装置18の供給管57の上流側端部が接続されている。
【0046】
管172内の細分体M6および結着剤P1は、ブロアー173の内部に設置された回転する羽根の作用により発生した気流により、ブロアー173内に導入され、撹拌、混合される。また、ブロアー173は、回転する羽根の作用により、吐出口より下流側へ向けて気流を放出する。すなわち、分散装置18に向かう気流を発生させる。このような気流により、細分体M6と結着剤P1とを撹拌、混合することができ、得られた混合物M7は、細分体M6と結着剤P1とが均一に分散した状態で、供給管57を経て分散装置18に流入する。また、混合物M7中の細分体M6は、管172およびブロアー173を通過する過程でほぐされて、より細かい繊維状となる。
【0047】
分散装置18は、繊維を含む材料、すなわち、混合物M7における、互いに絡み合った繊維同士をほぐして気中に分散させる分散工程を行うものである。分散装置18の構成については、後に詳述する。この分散装置18によって気中に分散された混合物M7は、落下して、下方に位置する第2ウェブ形成部19に向かう。
【0048】
第2ウェブ形成部19は、分散装置18により分散された混合物M7を堆積させる堆積部であり、混合物M7から第2ウェブM8を形成する第2ウェブ形成工程を行なう部分である。第2ウェブ形成部19は、メッシュベルト191と、張架ローラー192と、吸引部193とを有している。
【0049】
メッシュベルト191は、無端ベルトであり、混合物M7が堆積する。このメッシュベルト191は、4つの張架ローラー192に掛け回されている。そして、張架ローラー192の回転駆動により、メッシュベルト191上の混合物M7は、下流側に搬送される。
【0050】
また、メッシュベルト191上のほとんどの混合物M7は、メッシュベルト191の目開き以上の大きさである。これにより、混合物M7は、メッシュベルト191を通過してしまうのが規制され、よって、メッシュベルト191上に堆積することができる。また、混合物M7は、メッシュベルト191上に堆積しつつ、メッシュベルト191ごと下流側に搬送されるため、層状の第2ウェブM8として形成される。
【0051】
吸引部193は、メッシュベルト191の下方から空気を吸引するサクション機構である。これにより、メッシュベルト191上に混合物M7を吸引することができ、よって、混合物M7のメッシュベルト191上への堆積が促進される。
【0052】
吸引部193には、管246が接続されている。また、この管246の途中には、ブロアー263が設置されている。このブロアー263の作動により、吸引部193で吸引力を生じさせることができる。
【0053】
分散装置18の下流側には、加湿部236が配置されている。加湿部236は、加湿部235と同様の超音波式加湿器で構成されている。これにより、第2ウェブM8に水分を供給することができ、よって、第2ウェブM8の水分量が調整される。この調整により、静電力による第2ウェブM8のメッシュベルト191への吸着を抑制することができる。これにより、第2ウェブM8は、メッシュベルト191が張架ローラー192で折り返される位置で、メッシュベルト191から容易に剥離される。
【0054】
なお、加湿部231~加湿部236までに加えられる合計水分量は、例えば、加湿前の材料100質量部に対して0.5質量部以上20質量部以下であるのが好ましい。
【0055】
第2ウェブ形成部19の下流側には、シート成形部20が配置されている。シート成形部20は、第2ウェブM8からシートSを成形するシート成形工程を行なう部分である。このシート成形部20は、加圧部201と、加熱部202とを有している。
【0056】
加圧部201は、一対のカレンダーローラー203を有し、カレンダーローラー203の間で第2ウェブM8を加熱せずに加圧することができる。これにより、第2ウェブM8の密度が高められる。なお、このときの加熱の程度としては、例えば、結着剤P1を溶融させない程度であるのが好ましい。そして、この第2ウェブM8は、加熱部202に向けて搬送される。なお、一対のカレンダーローラー203のうちの一方は、図示しないモーターの作動により駆動する主動ローラーであり、他方は、従動ローラーである。
【0057】
加熱部202は、一対の加熱ローラー204を有し、加熱ローラー204の間で第2ウェブM8を加熱しつつ、加圧することができる。この加熱加圧により、第2ウェブM8内では、結着剤P1が溶融して、この溶融した結着剤P1を介して繊維同士が結着する。これにより、シートSが形成される。そして、このシートSは、切断部21に向けて搬送される。なお、一対の加熱ローラー204の一方は、図示しないモーターの作動により駆動する主動ローラーであり、他方は、従動ローラーである。
【0058】
シート成形部20の下流側には、切断部21が配置されている。切断部21は、シートSを切断する切断工程を行なう部分である。この切断部21は、第1カッター211と、第2カッター212とを有する。
【0059】
第1カッター211は、シートSの搬送方向と交差する方向、特に直交する方向にシートSを切断するものである。
【0060】
第2カッター212は、第1カッター211の下流側で、シートSの搬送方向に平行な方向にシートSを切断するものである。この切断は、シートSの両側端部、すなわち、+y軸方向および-y軸方向の端部の不要な部分を除去して、シートSの幅を整えるものであり、切断除去された部分は、いわゆる「みみ」と呼ばれる。
【0061】
このような第1カッター211と第2カッター212との切断により、所望の形状、大きさのシートSが得られる。そして、このシートSは、さらに下流側に搬送されて、ストック部22に蓄積される。
【0062】
このようなシート製造装置100が備える各部は、制御部28と電気的に接続されている。そして、これら各部の作動は、制御部28によって制御される。
【0063】
制御部28は、CPU(Central Processing Unit)281と、記憶部282とを有している。CPU281は、例えば、各種の判断や各種の命令等を行なうことができる。
【0064】
記憶部282は、例えば、シートSを製造するプログラム等の各種プログラムや、各種検量線、テーブル等が記憶されている。
【0065】
また、この制御部28は、シート製造装置100に内蔵されていてもよいし、外部のコンピューター等の外部機器に設けられていてもよい。また、外部機器は、例えば、シート製造装置100とケーブル等を介して通信される場合、無線通信される場合、例えばインターネット等のようなネットワークがシート製造装置100を介して接続されている場合等がある。
【0066】
また、CPU281と、記憶部282とは、例えば、一体化されて、1つのユニットとして構成されていてもよいし、CPU281がシート製造装置100に内蔵され、記憶部282が外部のコンピューター等の外部機器に設けられていてもよいし、記憶部282がシート製造装置100に内蔵され、CPU281が外部のコンピューター等の外部機器に設けられていてもよい。
【0067】
次に、分散装置18について説明する。
図2および
図3に示すように、分散装置18は、混合物M7を分散させる分散部4と、分散部4に混合物M7を供給する供給部5と、供給部5と分散部4とを接続する接続部7と、分散部4を覆うハウジング3と、を備える。
【0068】
ハウジング3は、4つの側壁311と、各側壁311の上部に位置する天板313とを有する筐体で構成されている。ハウジング3の内部には、これら4つの側壁311および天板313で囲まれた空間S1が形成され、空間S1内には、分散部4が収納されている。このため、空間S1は、分散空間とも言う。また、分散部4とメッシュベルト191との間の部分の大半は、ハウジング3により覆われている。
【0069】
ハウジング3は、メッシュベルト191に臨む下側開口312を有する。下側開口312は、分散部4で分散され、空間S1内を降下する混合物M7を第2ウェブ形成部19に向けて排出する排出部を構成する。下側開口312とメッシュベルト191との離間距離は、第2ウェブM8の形成に適した値とされ、例えば0mm以上、10mm以下とされる。
【0070】
ハウジング3を構成する4つの側壁311のうちの少なくとも1つは、鉛直方向に対し傾斜している。本実施形態では、4つの側壁311がそれぞれ鉛直方向に対し傾斜し、下側開口312に向かって広がるようなスカート部を形成している。換言すると、ハウジング3の空間S1は、水平面と平行な横断面の面積が、下方すなわち-z軸方向に向って漸増するような形状をなしている。これにより、空間S1内を第2ウェブ形成部19に向けて降下する混合物M7の攪拌およびほぐし効果がより良好に発揮され、また、メッシュベルト191上で、所望の面積および厚さの、すなわち必要かつ十分な面積および厚さの第2ウェブM8を形成することができる。
【0071】
なお、ハウジング3の空間S1は、水平面と平行な横断面の面積が、z軸方向に沿って一定な形状をなしていてもよい。
【0072】
供給部5および分散部4により混合物M7が十分に攪拌されてほぐされ、さらにハウジング3の空間S1において攪拌によるほぐしが継続されるため、第2ウェブ形成部19では、繊維の塊(ダマ)のない均質、均一な混合物M7の堆積物、すなわち第2ウェブM8が得られる。
【0073】
天板313には、開口314が設けられている。開口314は、供給部5の撹拌空間500と分散部4の収容空間S2とを連通する連通口71でもあり、y軸方向、すなわち回転軸Oと平行な第1方向に延在する長孔で構成されている。供給部5から供給される混合物M7は、開口314を経て分散部4内に供給される。
【0074】
また、
図1に示すように、ハウジング3には、加湿部234が接続されている。加湿部234は、加湿部231と同様の気化式の加湿器で構成されている。これにより、ハウジング3内には、加湿部234で生成された加湿空気がハウジング3内の空間S1に供給される。この加湿空気により、ハウジング3内を加湿することができ、よって、分散部4より分散された混合物M7がハウジング3の内壁に静電力によって付着してしまうのを抑制することもできる。
【0075】
図2および
図3に示すように、分散部4は、ケーシング41と、ケーシング41内で回転する攪拌部材6と、を有する。ケーシング41は、ハウジング3の天板313の下面に接合され、互いに平行に配置された一対の側壁42と、両側壁42の下端に接合され、混合物M7を放出する放出口44が形成された多孔質スクリーン43と、を有する。放出口44は、複数の小孔で構成される。
【0076】
一対の側壁42は、y軸方向に延在する長尺状をなし、開口314を挟んでx軸方向に所定距離離間して配置されている。
【0077】
多孔質スクリーン43は、y軸方向に延在し、下方すなわち-z軸方向に向って湾曲突出する半円筒状をなしている。すなわち、多孔質スクリーン43は、y軸を法線とする断面で見たとき、y軸方向のどの位置でも円弧状をなしている。これにより、混合物M7が分散部4内で円滑に移動することができ、撹拌が良好になされる。また、多孔質スクリーン43の2つの上端は、一対の側壁42の下端にそれぞれ連結されている。また、ケーシング41の-y軸側の端部および+y軸側の端部は、それぞれ、図示しない遮蔽壁によって塞がれている。これら一対の遮蔽壁は、後述する攪拌部材6の回転軸を回転可能に支持している。
【0078】
一対の側壁42、多孔質スクリーン43、一対の遮蔽壁および天板313で画成された空間が、混合物M7を収容する収容空間S2である。この収容空間S2は、供給部5の攪拌空間500に対し混合物M7をさらに攪拌してほぐす第2の攪拌空間としての機能を有し、空間S1は、収容空間S2から移行した混合物M7をさらに攪拌してほぐす第3の攪拌空間としての機能を有する。
【0079】
多孔質スクリーン43は、例えば、メッシュのような網状体や、多数の貫通孔を有する板材で構成することができる。これにより、分散部4内の混合物M7は、多孔質スクリーン43の放出口44を介して収容空間S2の外側に放出され、空間S1に分散される。また、多孔質スクリーン43の目開きサイズや貫通孔の大きさを適宜設定することにより、所望の繊維長さを有する混合物M7を優先的に分散させてメッシュベルト191上に堆積させることができる。
【0080】
攪拌部材6は、分散部4の収容空間S2内で回転することにより、分散部4内に供給された混合物M7を撹拌してほぐしつつ、多孔質スクリーン43からの分散を促進する機能を有する。攪拌部材6は、回転軸Oの回りに等角度間隔で配置された4つの羽根61を有する。羽根61は、y軸方向に延在する長尺な板材で構成されている。また各羽根61の一方の長辺側の端部は、互いに連結されており、その連結された部分を回転中心、すなわち、回転軸Oとして回転する。本実施形態では、攪拌部材6は、回転軸Oを法線とする断面が十字状をなしている。
【0081】
また、攪拌部材6は、図示しない回転駆動源に連結されており、この回転駆動源は
図1に示す制御部28によってその作動が制御される。本実施形態では、攪拌部材6は、+y軸側から見て時計回りに回転する。
【0082】
攪拌部材6の回転により、各羽根61が収容空間S2内の混合物M7を撹拌しつつ、ほぐしながら、多孔質スクリーン43に適量を押しつける。これにより、混合物M7が過度に供給されて多孔質スクリーン43に目詰まりが生じるのを防止しつつ、多孔質スクリーン43の全域から万遍なく良好に混合物M7を放出し、分散させることができる。
【0083】
また、攪拌部材6は、各羽根61が側壁42および多孔質スクリーン43と離間した状態で回転する。これにより、攪拌部材6の回転が円滑になされるとともに、羽根61と多孔質スクリーン43との間で混合物M7に過剰に圧力がかかるのを防止することができ、より良好な分散を行うことができる。
【0084】
なお、本実施形態では、羽根61は、4つ設けられている場合について説明したが、本発明ではこれに限定されず、例えば、1~3つでもよく、4つ以上であってもよい。また、各羽根61は、平板状である場合について説明したが、本発明ではこれに限定されず、例えば、回転軸Oを法線とする断面で見たとき、一方向に湾曲した形状をなしていてもよい。このように、攪拌部材6の構成、特に羽根61の形状、枚数、配置等は図示の構成に限定されない。また、分散部4では、攪拌部材6自体が省略されていてもよく、あるいは、図示と異なる攪拌機構、例えば回転せず、往復動する攪拌部材を有する機構が設置されていてもよい。
【0085】
供給部5は、ハウジング3の天板313の上方に設置されている。
図4に示すように、供給部5は、供給管57から供給された混合物M7を、第1旋回流5Aおよび第2旋回流5Bにより攪拌してほぐしながら分散部4に供給するものである。供給部5は、内部に攪拌空間500を有するチャンバー50を備える。チャンバー50は、天板51と、天板51の縁部から下方すなわち-z軸方向に向けて立設された側壁52とを有する。天板51は、平面視でメガネのような形状をなしている。側壁52は、天板51の縁部の全周にわたって、天板51の下方部分の空間を囲むように設けられている。
【0086】
側壁52の上方すなわち+z軸側で、かつ-x軸側の部分には、接続ポート54が設けられている。接続ポート54は、-x軸方向に向かって突出するように形成された筒状のポートである。接続ポート54には、供給管57の下流側の端部58が接続されている。一方、供給管57の上流側の端部は、ブロアー173の吐出口176に接続されている。ブロアー173の作動により、細分体M6および結着剤P1の混合物M7は、吐出口176より吐出され、供給管57および接続ポート54を順次経て、チャンバー50内に空気とともに流入する。
【0087】
本実施形態では、供給管57の端部58および接続ポート54は、それらの管軸がx軸方向と平行に配置されている。ただし、これに限らず、端部58および接続ポート54は、x軸に対し所定角度傾斜して配置されていてもよい。
【0088】
また、チャンバー50は、その下部に、下方へ向けて開放する下側開口53を有する。下側開口53は、側壁52の下端、すなわち-z軸側の端部に沿って形成された開口である。チャンバー50は、下側開口53がハウジング3の天板313に塞がれるように天板313の上面に接合されている。
【0089】
下側開口53は、平面視で、すなわちz軸方向から見たとき、開口314を包含している。これにより、チャンバー50の内部、すなわち第1旋回流形成部50Aの攪拌空間500Aおよび第2旋回流形成部50Bの攪拌空間500Bと、ケーシング41の内部、すなわち収容空間S2とが、下側開口53および開口314を介して連通する。換言すると、開口314は、第1旋回流形成部50Aおよび第2旋回流形成部50Bと、ケーシング41とを連通する連通口71である。
【0090】
そして、連通口71が形成された天板313は、その下面側で分散部4のケーシング41を支持固定するとともに、その上面側で供給部5のチャンバー50を支持固定している。すなわち、分散部4のケーシング41と供給部5のチャンバー50とは、天板313を介して接続されている。これにより、天板313は、分散部4と供給部5とを接続する接続部7として機能するものである。
【0091】
ただし、この構成に限定されず、接続部7は、他の構成のもの、例えばチャンバー50とケーシング41と接続する接続管やダクト等の接続部材で構成されていてもよい。
【0092】
図4に示すように、チャンバー50は、混合物M7を含む空気の第1旋回流5Aを形成する第1旋回流形成部50Aと、第1旋回流形成部50Aと連通し、混合物M7を含む空気の第2旋回流5Bを形成する第2旋回流形成部50Bとを有する。第1旋回流5Aの旋回方向は、第2旋回流5Bの旋回方向と反対方向である。第1旋回流形成部50Aと第2旋回流形成部50Bとは、境界部56を介して連通している。
【0093】
チャンバー50は、その内部に、混合物M7を攪拌してほぐす攪拌空間500を有する。攪拌空間500は、天板51、側壁52および天板313によって囲まれた空間である。攪拌空間500は、互いに連通する攪拌空間500Aおよび攪拌空間500Bで構成される。第1旋回流形成部50Aの内部空間が攪拌空間500Aであり、第2旋回流形成部50Bの内部空間が攪拌空間500Bである。
【0094】
第1旋回流形成部50Aおよび第2旋回流形成部50Bは、y軸方向に沿って、すなわち開口314の延在方向に沿って、または回転軸Oの軸方向に沿って並んで配置されている。第1旋回流形成部50Aが+y軸側に位置しており、第2旋回流形成部50Bが-y軸側に位置している。供給管57の端部58および接続ポート54は、第1旋回流形成部50Aおよび第2旋回流形成部50Bの境界部56に接続されている。
【0095】
側壁52の内面、すなわち攪拌空間500に臨む面の、境界部56における+x軸側の部分には、突出部55が設けられている。突出部55は、-x軸側、すなわち、接続ポート54側に向かって山形形状に突出形成されている。突出部55は、-x軸に行くにつれて幅が狭くなっており、先端が尖っている。突出部55は、z軸方向の全域にわたって形成されている。なお、突出部55は、省略されていても、本発明の効果を得ることができる。
【0096】
第1旋回流形成部50Aは、混合物M7を含む空気の第1旋回流5Aが形成される部分であり、第2旋回流形成部50Bは、混合物M7を含む空気の第2旋回流5Bが形成される部分である。
【0097】
図4に示すように、第1旋回流形成部50Aにおける側壁52の内面は、外側に向かって突出するように湾曲した第1湾曲面501Aである。第1湾曲面501Aは、+x軸側の部分よりも+y軸側の部分の方が、曲率が大きくなっている。
【0098】
第1湾曲面501Aの+y軸側の部分の曲率半径をR1とし、第1湾曲面501Aの+x軸側の部分の曲率半径をR2としたとき、R2≧R1であるのが好ましく、R2>R1であるのがより好ましい。この場合、R1/R2の値は、特に限定されないが、0.2以上0.9以下であることが好ましく、0.3以上0.75以下であるのがより好ましい。これにより、より攪拌に適した旋回流を形成することができる。
【0099】
第2旋回流形成部50Bにおける側壁52の内面は、外側に向かって突出するように湾曲した第2湾曲面501Bである。第2湾曲面501Bは、+x軸側の部分よりも-y軸側の部分の方が、曲率が大きくなっている。これらの部分の曲率半径の大小関係および比率は、第1湾曲面501Aと同様である。
【0100】
図4に示すように、第1旋回流形成部50Aおよび第2旋回流形成部50Bは、それらの境界部56に対し対称的な形状をなしている。すなわち、第1湾曲面501Aおよび第2湾曲面501Bは、境界部56に対し対称的な形状をなしている。これにより、第1旋回流5Aおよび第2旋回流5Bの形状等をバランス良く形成することができ、両旋回流の強度や旋回速度をより均等にすることができる。なお、境界部56は、x-z平面と平行な面で構成される。
【0101】
供給管57を下流方向へ流れ、接続ポート54から攪拌空間500に供給された混合物M7を含む空気(以下単に「空気」と言うことがある。)は、攪拌空間500内でまず+x軸方向に進み、突出部55に当たり+y軸側および-y軸側に分流される。すなわち、接続ポート54から攪拌空間500に供給された空気は、突出部55によって、攪拌空間500Aおよび攪拌空間500Bのそれぞれに分流される。
【0102】
ここで、分流されて攪拌空間500Aへ流れる空気の量すなわち混合物M7の量と、攪拌空間500Bへ流れる空気の量すなわち混合物M7の量とは、ほぼ等しいのが好ましいが、これに限らず、例えば、前者の空気量VAと後者の空気量VBとの比が、1:5~5:1の範囲であってもよい。
【0103】
攪拌空間500Aに分流された空気は、第1湾曲面501Aに沿って
図4中反時計回りに旋回しつつ、下方(-z軸方向)および旋回の中心部に向かって流れ、第1旋回流5Aを形成する。一方、攪拌空間500Bに分流された空気は、第2湾曲面501Bに沿って
図4中時計回りに旋回しつつ、下方(-z軸方向)および旋回の中心部に向かって流れ、
図3に示すような第2旋回流5Bを形成する。第1旋回流5Aおよび第2旋回流5Bは、攪拌空間500の下部に達すると、天板313に形成された開口314、すなわち連通口71に向かう。
【0104】
第1旋回流5Aおよび第2旋回流5Bは、互いに反対方向に旋回しつつ、開口314に向かう気流である。接続ポート54から空気とともに供給された混合物M7は、突出部55付近において分流され、第1旋回流5Aおよび第2旋回流5Bのそれぞれの気流に乗って攪拌され、ほぐされる。そして、混合物M7を含む第1旋回流5Aおよび第2旋回流5Bは、開口314付近で合流して、さらに攪拌が促進され、十分にほぐされた状態で、開口314を通過し、分散部4内に流入する。
【0105】
このように、供給部5は、分散部4による混合物M7の分散に先立って、第1旋回流5Aおよび第2旋回流5Bによって混合物M7を攪拌し、ほぐした状態で分散部4に混合物M7を供給する。これにより、分散部4は、混合物M7を良好に分散することができる。すなわち、混合物M7が多孔質スクリーン43の放出口44を通過する際に、放出口44が目詰まりするのを防止しつつ、かつ、多孔質スクリーン43の全域から万遍なく混合物M7を分散させることができる。これにより、混合物M7の円滑、良好な分散を行うことができる。
【0106】
図3および
図4に示すように、攪拌空間500のx軸方向の長さ(最大長さ)をLxとし、攪拌空間500のy軸方向の長さ(最大長さ)をLyとし、攪拌空間500のz軸方向の長さ(最大長さ)をLzとしたとき、以下のような関係を満足することが好ましい。
【0107】
Ly/Lxは、特に限定されないが、1.0以上5.0以下であるのが好ましく、2.0以上4.0以下であるのがより好ましい。これにより、第1旋回流5Aおよび第2旋回流5Bをより良好に形成することができ、混合物M7の攪拌、ほぐし効果が高まる。
【0108】
Lz/Lxは、特に限定されないが、0.5以上10.0以下であるのが好ましく、1.0以上5.0以下であるのがより好ましい。これにより、攪拌空間500のz軸方向の長さ、すなわち第1旋回流5Aおよび第2旋回流5Bのパス長さを十分に確保することができ、混合物M7を十分に攪拌してほぐすことができる。
【0109】
なお、図示されていないが、チャンバー50の内部に、整流板を設けることもできる。これにより、第1旋回流5Aおよび第2旋回流5Bの形状等をより良好に形成することができ、混合物M7の攪拌によるほぐし効果をより高めることができる。
【0110】
図3に示すように、開口314は、平面視で、すなわちz軸方向から見たとき、回転軸Oとは重ならない位置に設けられている。すなわち、開口314は、回転軸Oよりも-x軸側に設けられている。これにより、供給部5から分散部4に供給された混合物M7は、開口314の直下で回転する攪拌部材6の羽根61に即座に衝突することとなる。よって、攪拌部材6による攪拌をより良好に行うことができる。特に、
図3に示すように、開口314が回転軸Oよりも-x軸側に設けられ、かつ、+y軸側から見て攪拌部材6が反時計回りに回転している場合、開口314を通過して下方へ向かう混合物M7は、上昇して来る羽根61に正面から衝突することとなる。よって、攪拌部材6による攪拌をさらに効率良く良好に行うことができ、混合物M7のほぐし効果がより高まる。
【0111】
なお、上記の構成に限定されず、開口314は、平面視で回転軸Oよりも+x軸側に設けられていてもよく、平面視で回転軸Oと重なる位置に設けられていてもよい。開口314が回転軸Oよりも+x軸側に設けられている場合には、例えば、混合物M7の繊維の繊維長が比較的長い場合や、混合物M7の単位時間当たりの供給量が多い場合でも、分散部4内で塊を形成しにくいという利点がある。
【0112】
また、攪拌部材6は、その回転方向を時計回りと反時計回りとに切り替えることが可能なように構成されていてもよい。この場合、開口314が、平面視で回転軸Oと重ならない位置に設けられていれば、攪拌部材6の回転方向を切り替えることによって、上述したいずれの効果をも選択的に得ることができる。
【0113】
以上説明したように、分散装置18は、繊維を含む材料である混合物M7を空気とともに供給する供給管57と、混合物M7を含む空気の第1旋回流5Aを形成する第1旋回流形成部50Aおよび第1旋回流形成部50Aと連通し、混合物M7を含む空気の第1旋回流5Aと反対方向の第2旋回流5Bを形成する第2旋回流形成部50Bを有し、供給管57と接続されたチャンバー50と、を有する供給部5と、混合物M7を放出する放出口44が形成されたケーシング41を有し、混合物M7をケーシング41内で攪拌し、放出口44から気中に放出して分散する分散部4と、第1旋回流形成部50Aおよび第2旋回流形成部50Bと、ケーシング41とを連通する連通口71を有する接続部7と、を備える。これにより、供給部5は、分散部4による混合物M7の分散に先立ち、互いに反対方向の第1旋回流5Aおよび第2旋回流5Bにより、混合物M7を十分に攪拌し、ほぐした状態で分散部4に供給することができる。よって、分散部4は、放出口44に目詰まり等を生じることなく、混合物M7を円滑、良好に分散することができる。
【0114】
また、堆積装置10は、繊維を含む材料である混合物M7を空気とともに供給する供給管57と、混合物M7を含む空気の第1旋回流5Aを形成する第1旋回流形成部50Aおよび第1旋回流形成部50Aと連通し、混合物M7を含む空気の第1旋回流5Aと反対方向の第2旋回流5Bを形成する第2旋回流形成部50Bを有し、管172と接続されたチャンバー50と、を有する供給部5と、混合物M7を放出する放出口44が形成されたケーシング41を有し、混合物M7をケーシング41内で攪拌し、放出口44から気中に放出して分散する分散部4と、第1旋回流形成部50Aおよび第2旋回流形成部50Bとケーシング41とを連通する連通口71を有する接続部7と、分散部4により分散された混合物M7を堆積させる堆積部としての第2ウェブ形成部19と、を備える。これにより、供給部5は、分散部4による混合物M7の分散に先立ち、互いに反対方向の第1旋回流5Aおよび第2旋回流5Bにより、混合物M7を十分に攪拌し、ほぐした状態で分散部4に供給することができる。よって、分散部4は、放出口44に目詰まり等を生じることなく、混合物M7を円滑、良好に分散することができる。その結果、堆積部では、均一な厚さを有する良好な堆積物である第2ウェブM8を得ることができる。また、堆積部では、繊維の塊(ダマ)のない均質、均一な第2ウェブM8が得られる。
【0115】
また、前述したように、分散部4は、ケーシング41内に設置され、回転軸O回りに回転する攪拌部材6を有する。これにより、供給部5で攪拌してほぐされた混合物M7を、攪拌部材6によってさらに攪拌してほぐすことができる。よって、これら2段階のほぐしによる相乗効果により、分散部4は、混合物M7をさらに円滑、良好に分散することができる。
【0116】
なお、攪拌部材6は、省略されていてもよい。この場合、例えば、ケーシング41内に気流を形成して混合物M7を攪拌してほぐすことが好ましい。
【0117】
また、前述したように、連通口71は、回転軸Oと平行な第1方向に沿って延在する長尺状をなしている。これにより、供給部5は、分散部4に対し、第1方向のどの位置においても混合物M7が存在するように混合物M7を供給することができる。よって、攪拌部材6によって混合物M7をより万遍なく良好に攪拌してほぐすことができる。その結果、分散部4は、混合物M7をさらに良好に分散することができる。
【0118】
なお、上記構成に限定されず、連通口71(開口314)は、複数の孔で構成され、各孔がy軸方向、すなわち第1方向に沿って並んで配置された構成であってもよい。またy軸方向に沿って配置された複数の孔を、x軸方向に複数列配置してもよい。
【0119】
また、接続部7において、連通口71(開口314)の形状、寸法や、開口面積を調整可能な構成としてもよい。連通口71の開口面積を調整する方法としては、連通口71の開度を連続的または段階的に変え得るように連通口71を遮蔽するシャッターを設置することが挙げられる。また、接続部7において、供給部5および分散部4に対する連通口71の形成位置を調整可能な構成としてもよい。これにより、供給管57からの混合物M7の供給量、流速、流量等の諸条件に応じ、混合物M7の攪拌によるほぐしに最適な連通口71の条件を設定することができる。
【0120】
また、前述したように、第1旋回流形成部50Aおよび第2旋回流形成部50Bは、回転軸Oと平行な第1方向に沿って並んで配置されている。これにより、供給部5は、分散部4に対し、第1方向のどの位置においても十分にほぐされた混合物M7が存在するように混合物M7を供給することができる。よって、攪拌部材6によって混合物M7をさらに万遍なく良好に攪拌してほぐすことができる。その結果、分散部4は、混合物M7をさらに良好に分散することができる。
【0121】
また、前述したように、第1旋回流形成部50Aの内周面(側壁の内面)は、湾曲した第1湾曲面501Aであり、第2旋回流形成部50Bの内周面(側壁の内面)は、湾曲した第2湾曲面501Bである。これにより、第1旋回流形成部50Aは、より攪拌に適した第1旋回流5Aを形成することができ、第2旋回流形成部50Bは、より攪拌に適した第2旋回流5Bを形成することができる。よって、供給部5において混合物M7をさらに良好に攪拌してほぐすことができる。
【0122】
なお、上記構成に限定されず、第1旋回流形成部50Aおよび第2旋回流形成部50Bの内周面は、複数の平面を有していてもよく、湾曲面と平面とを組み合わせた構成であってもよい。
【0123】
また、前述したように、第1湾曲面501Aおよび第2湾曲面501Bは、第1旋回流形成部50Aおよび第2旋回流形成部50Bの境界部56に対し対称的な形状をなしている。これにより、第1旋回流5Aおよび第2旋回流5Bの形状等をバランス良く形成することができ、両旋回流の強度や旋回速度をより均等にすることができる。よって、供給部5において混合物M7をムラなく、効率よく攪拌してほぐすことができる。
【0124】
なお、上記構成に限定されず、第1湾曲面501Aおよび第2湾曲面501Bは、境界部56に対し非対称な形状をなしていてもよい。
【0125】
また、前述したように、供給管57の下流側の端部58は、第1旋回流形成部50Aと第2旋回流形成部50Bとの境界部56に接続されている。これにより、供給管57から供給された混合物M7は、第1旋回流形成部50Aと第2旋回流形成部50Bとに均等に、またはできるだけ均等に近づくように分けられ、第1旋回流5Aと第2旋回流5Bとをバランスよく形成することができる。よって、供給部5において混合物M7をムラなく攪拌してほぐすことができる。
【0126】
なお、上記構成に限定されず、供給管57は、その途中で2つに分岐しており、分岐した一方の分岐管の下流端が第1旋回流形成部50Aに、他方の分岐管の下流端が第2旋回流形成部50Bにそれぞれ接続される構成であってもよい。この場合、各分岐管のチャンバー50への接続方向および接続部位は、特に限定されず、例えば、各分岐管がチャンバー50に対し-x軸側または+x軸側から接続される構成であってもよく、一方の分岐管が第1湾曲面501Aに沿って接続され、かつ、他方の分岐管が第2湾曲面501Bに沿って接続される構成であってもよい。
【0127】
以上、本発明の分散装置および堆積装置を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明では、前記の実施形態に他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【符号の説明】
【0128】
3…ハウジング、4…分散部、5…供給部、5A…第1旋回流、5B…第2旋回流、6…攪拌部材、7…接続部、10…堆積装置、11…原料供給部、12…粗砕部、13…解繊部、14…選別部、15…第1ウェブ形成部、16…細分部、17…混合部、18…分散装置、19…第2ウェブ形成部、20…シート成形部、21…切断部、22…ストック部、27…回収部、28…制御部、41…ケーシング、42…側壁、43…多孔質スクリーン、44…放出口、50…チャンバー、50A…第1旋回流形成部、50B…第2旋回流形成部、51…天板、52…側壁、53…下側開口、54…接続ポート、55…突出部、56…境界部、57…供給管、58…端部、61…羽根、71…連通口、100…シート製造装置、121…粗砕刃、122…シュート、141…ドラム部、142…ハウジング部、151…メッシュベルト、152…張架ローラー、153…吸引部、161…プロペラ、162…ハウジング部、171…結着剤供給部、172…管、173…ブロアー、174…スクリューフィーダー、175…吸入口、176…吐出口、191…メッシュベルト、192…張架ローラー、193…吸引部、201…加圧部、202…加熱部、203…カレンダーローラー、204…加熱ローラー、211…第1カッター、212…第2カッター、231…加湿部、232…加湿部、233…加湿部、234…加湿部、235…加湿部、236…加湿部、241…管、242…管、243…管、244…管、245…管、246…管、261…ブロアー、262…ブロアー、263…ブロアー、281…CPU、282…記憶部、311…側壁、312…下側開口、313…天板、314…開口、500…攪拌空間、500A…攪拌空間、500B…攪拌空間、501A…第1湾曲面、501B…第2湾曲面、M1…原料、M2…粗砕片、M3…解繊物、M4-1…第1選別物、M4-2…第2選別物、M5…第1ウェブ、M6…細分体、M7…混合物、M8…第2ウェブ、O…回転軸、S…シート、S1…空間、S2…収容空間、Lx…長さ、Ly…長さ、Lz…長さ、P1…結着剤