IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本バイリーン株式会社の特許一覧

特開2024-94074貼付薬用支持体、および、その製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094074
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】貼付薬用支持体、および、その製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/02 20240101AFI20240702BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20240702BHJP
   A61F 13/0246 20240101ALI20240702BHJP
   B32B 5/28 20060101ALI20240702BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
A61F13/02 310F
A61K9/70 401
A61F13/02 310J
A61F13/02 390
B32B5/28
B32B5/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210812
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】花岡 博克
(72)【発明者】
【氏名】小路 喜朗
【テーマコード(参考)】
4C076
4F100
【Fターム(参考)】
4C076AA76
4C076BB31
4C076CC18
4C076FF70
4F100AK01
4F100AK01A
4F100AK42
4F100AK42A
4F100AK42B
4F100BA02
4F100BA07
4F100DG01
4F100DG01B
4F100EJ17
4F100EJ38
4F100EJ38A
4F100EJ42
4F100EJ50
4F100GB66
4F100JK06
4F100JL12
4F100JL12B
(57)【要約】
【課題】
種々の薬物を含む粘着剤が塗布された貼付薬を調製するため用いる、フィルム層と繊維層が積層一体化している貼付薬用支持体、および、その製造方法の提供を課題とする。
【解決手段】
「フィルム層と接着繊維を含む繊維層とを備えており、前記接着繊維によって前記フィルム層と前記繊維層とが積層一体化している、貼付薬用支持体」が少なくとも以下の構成1~2を有する場合、フィルム層に皺が発生するのを防止できると共に、フィルム層と繊維層との間に層間剥離が生じるのを抑制できることを見出した。
構成1:繊維層におけるフィルム層側の主面は、少なくとも二方向性の繊維配向を有している。
構成2:繊維層におけるフィルム層側と反対側の主面は、繊維層におけるフィルム層側の主面が有する繊維配向と異なる繊維配向を有している。
【選択図】 なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム層と接着繊維を含む繊維層とを備えており、前記接着繊維によって前記フィルム層と前記繊維層とが積層一体化している、貼付薬用支持体であって、
前記繊維層における前記フィルム層側の主面は、少なくとも二方向性の繊維配向を有しており、
前記繊維層における前記フィルム層と反対側の主面は、前記フィルム層側の主面が有する繊維配向と異なる繊維配向を有している、
貼付薬用支持体。
【請求項2】
フィルム層と接着繊維を含む繊維層とを備えており、前記接着繊維によって前記フィルム層と前記繊維層とが積層一体化している、貼付薬用支持体を製造する方法であって、
工程(1):フィルムを用意する工程、
工程(2):少なくとも二方向性の繊維配向を有している一方の主面と、前記一方の主面が有する繊維配向と異なる繊維配向を有しているもう一方の主面とを備える、接着繊維を含む布帛を用意する工程、
工程(3):前記布帛における前記一方の主面と、前記フィルムを積層して積層体を調製する工程、
工程(4):前記積層体へ熱または熱と圧力を作用させることで、前記接着繊維を軟化あるいは融解させる工程、
工程(5):熱または熱と圧力を作用させた後の積層体を冷却する工程、
を備える、貼付薬用支持体を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の薬物を含む粘着剤が塗布された貼付薬を調製するため用いる、フィルム層と繊維層が積層一体化している貼付薬用支持体、および、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人体に貼付し消炎鎮痛などの薬理効果や、冷却効果あるいは加熱効果といった種々の効能を人へ与える目的で、繊維ウェブや不織布、フィルム又はそれらの複合品などの支持体に、粘着剤(多くの場合、薬物を配合した粘着剤)を塗布した貼付薬が使われている。このような貼付薬は、パップ剤、プラスター剤、経皮吸収型全身製剤、或いは治療用粘着テープ等として広く知られている。
【0003】
特に、フィルム層と繊維層が積層一体化している貼付薬用支持体を採用し、繊維層側の主面へ粘着剤を塗布してなる貼付薬では、粘着剤が繊維間に入り込むことで貼付薬用支持体から粘着剤が剥がれ難い(投錨性に優れる)という効果が発揮されていると共に、フィルム層の存在によって、使用中の貼付薬におけるフィルム層上へ粘着剤が染み出すのが防止されている。
【0004】
このような構成を有する貼付薬用支持体として、例えば、特開2006-326963(特許文献1)に開示されている粘着テープ用基材が知られている。当該粘着テープ用基材は、フィルムと一方向乾式ウェブ(一方向性の繊維配向を有している主面を備えた乾式ウェブ)が積層一体化している構成を備える。
【0005】
特許文献1に係る粘着テープ用基材は、一方向乾式ウェブに含まれている接着繊維により、フィルムと一方向乾式ウェブの熱接着による積層一体化が良好に行われている。加えて、特許文献1には、フィルムとの剥離強度ならびに粘着剤への投錨性の双方を確保する目的から、一方向乾式ウェブの目付けは25g/m以下であるのが好ましいことが開示されている。
なお、特許文献1には比較例として、フィルムと目付25g/mのクロスレイウェブ(二方向性の繊維配向を有している主面を備えた乾式ウェブ)が、クロスレイウェブに含まれている接着繊維により、熱接着によって積層一体化した粘着テープ用基材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-326963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願出願人は、「フィルム層と接着繊維を含む繊維層とを備えており、前記接着繊維によって前記フィルム層と前記繊維層とが積層一体化している」という構成を備えた、特許文献1に開示されているような従来技術にかかる貼付薬用支持体、および、当該貼付薬用支持体における繊維層側の主面へ粘着剤を塗布してなる貼付薬について検討した。
【0008】
本願出願人が検討を続けた結果、流動性が高い粘着剤を採用した場合や粘着剤の塗布量を増量した場合、繊維層側の主面へ塗布した粘着剤が繊維層の端部よりも外側に染み出る現象(以降、コールドフローと称することがある)が発生することがあった。その結果、貼付薬の使用中に染み出た粘着剤が、人体の貼付薬を貼っている場所以外や衣服に付着する恐れがあった。更に、通常、貼付薬は使用時まで包装材に包まれているものであるが、包装材から貼付薬を取り出し使用するにあたり、貼付薬から染み出た粘着剤が包装材に残留することがあった。その結果、包装材から取り出した貼付薬は規定された塗布量の粘着剤を備えていないこととなり、当該貼付薬を用いても、期待する種々の効能を人へ与えることが困難となる恐れがあった。
【0009】
そこで本願出願人は、貼付薬用支持体が備える繊維層の目付を増すことで、粘着剤が保持され存在できる空間を増してコールドフローの発生を抑制することを試みた。確かに、繊維層の目付を増すことでコールドフローの発生を抑制できたものの、
・製造した貼付薬用支持体が備えるフィルム層に皺が発生するという問題や、
・フィルム層に積層一体化している繊維層の目付が増すにつれ、フィルム層から繊維層が剥がれ易くなり、繊維層との間に層間剥離が生じ易くなるという問題、
が発生した。
【0010】
特に、製造した貼付薬用支持体が備えるフィルム層に皺が発生するという問題が発生する理由としては、次の理由が考えられた。
【0011】
当該貼付薬用支持体は、繊維で構成されており多くの空隙を有することで伸縮性に富み変形し易い繊維層と、一般的にはそれよりも伸縮性に乏しく変形し難いフィルム層とが、積層一体化して構成されてなる。当該繊維層の目付が小さい場合(例えば、25g/m以下の場合)には、積層一体化しているフィルム層の存在によって、繊維層がわずかに伸縮するなどといった繊維層の意図しない変形が抑えられており、貼付薬用支持体のフィルム層に皺が発生し難い。しかしながら、当該繊維層の目付が増した場合(例えば、25g/mより重い場合)には、前述した繊維層の変形が積層一体化しているフィルム層の存在によっても抑えきれなくなり、繊維層が意図せず変形することがある。そして、このような繊維層の意図しない変形を受け、積層一体化しているフィルム層に皺が発生し易くなると考えられる。
【0012】
そして、このような皺が発生したフィルム層を備える貼付薬用支持体は、外観に劣るという問題や、貼付薬用支持体における露出しているフィルム層上へ鮮明な印刷を施し難いという問題を有しているものであった。
【0013】
更に、当該貼付薬用支持体ではフィルム層に皺が発生していることに起因して、フィルム層と積層一体化している繊維層も、フィルム層の変形に合わせて意図せず変形しているものとなる。その結果、当該貼付薬用支持体に粘着剤が均一に担持された貼付薬を提供することが困難である。
【0014】
本発明では、フィルム層に皺が発生するのを防止できると共に、フィルム層と繊維層との間に層間剥離が生じるのが抑制されている貼付薬用支持体、および、その製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、
「(請求項1)フィルム層と接着繊維を含む繊維層とを備えており、前記接着繊維によって前記フィルム層と前記繊維層とが積層一体化している、貼付薬用支持体であって、
前記繊維層における前記フィルム層側の主面は、少なくとも二方向性の繊維配向を有しており、
前記繊維層における前記フィルム層と反対側の主面は、前記フィルム層側の主面が有する繊維配向と異なる繊維配向を有している、
貼付薬用支持体。
(請求項2)フィルム層と接着繊維を含む繊維層とを備えており、前記接着繊維によって前記フィルム層と前記繊維層とが積層一体化している、貼付薬用支持体を製造する方法であって、
工程(1):フィルムを用意する工程、
工程(2):少なくとも二方向性の繊維配向を有している一方の主面と、前記一方の主面が有する繊維配向と異なる繊維配向を有しているもう一方の主面とを備える、接着繊維を含む布帛を用意する工程、
工程(3):前記布帛における前記一方の主面と、前記フィルムを積層して積層体を調製する工程、
工程(4):前記積層体へ熱または熱と圧力を作用させることで、前記接着繊維を軟化あるいは融解させる工程、
工程(5):熱または熱と圧力を作用させた後の積層体を冷却する工程、
を備える、貼付薬用支持体を製造する方法。」
である。
【発明の効果】
【0016】
本願出願人が検討を続けた結果、「フィルム層と接着繊維を含む繊維層とを備えており、前記接着繊維によって前記フィルム層と前記繊維層とが積層一体化している、貼付薬用支持体」が少なくとも以下の構成1~2を有する場合、フィルム層に皺が発生するのを防止できると共に、フィルム層と繊維層との間に層間剥離が生じるのを抑制できることを見出した。
構成1:繊維層におけるフィルム層側の主面は、少なくとも二方向性の繊維配向を有している。
構成2:繊維層におけるフィルム層側と反対側の主面は、繊維層におけるフィルム層側の主面が有する繊維配向と異なる繊維配向を有している。
【0017】
また、本発明にかかる貼付薬用支持体を製造する方法によって、上述した構成を備える貼付薬用支持体を製造し提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明では、例えば以下の構成など、各種構成を適宜選択できる。なお、本発明で説明する各種測定は特に記載や規定のない限り、常圧のもと25℃温度条件下で測定を行う。そして、本発明で説明する各種測定結果は特に記載や規定のない限り、求める値よりも一桁小さな値まで測定で求め、当該値を四捨五入することで求める値を算出する。具体例として、少数第一位までが求める値である場合、測定によって少数第二位まで値を求め、得られた少数第二位の値を四捨五入することで少数第一位までの値を算出し、この値を求める値とする。また、本発明で例示する各上限値および各下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0019】
以下、本発明の実施に好適な形態について説明する。
【0020】
本発明にかかる貼付薬用支持体は、フィルム層と接着繊維を含む繊維層とを備えており、前記接着繊維によって前記フィルム層と前記繊維層とが積層一体化している。ここでいう、接着繊維によってフィルム層と繊維層とが積層一体化しているとは、繊維層のフィルム層側主面に存在する接着繊維が、繊維層とフィルム層を接着しており、後述する層間剥離強度MDまたは層間剥離強度CDの少なくとも一方が0.01N/15mm以上の態様で、両層が積層していることを意味する。なお、当該値が高いほどより強固に積層一体化していることを意味することから、後述する層間剥離強度MDまたは層間剥離強度CDの少なくとも一方が0.36N/15mmよりも大きい態様で、両層が積層しているのが好ましい。
本発明にかかるフィルム層を構成する樹脂の種類は適宜選択でき、後述する繊維層を構成する繊維(他の繊維など)の構成樹脂として挙げる樹脂、あるいは、当該樹脂を複数種類混合してなる樹脂を採用できる。特に、フィルム層の構成樹脂がポリエチレンテレフタレートを含んでいる(より好ましくは、フィルム層の構成樹脂がポリエチレンテレフタレートのみである)と、フィルム層により粘着剤に含まれる成分が影響を受ける可能性を低減でき好ましく、また、粘着剤に含まれる成分がフィルム層に吸着されて人体側へ放出できなくなるという問題が発生するのを防止でき好ましい。
【0021】
更に、詳細は後述する本発明にかかる繊維層の構成繊維が、ポリエチレンテレフタレート(以降、PETと略すことがある)で構成されている場合には、フィルム層がPETで構成されていることで、フィルム層と繊維層をより強固に積層一体化して、本発明にかかる貼付薬用支持体を実現でき好ましい。
【0022】
また、フィルム層は、例えば、難燃剤、香料、顔料、染料、抗菌剤、抗黴材、光触媒粒子、乳化剤、分散剤、界面活性剤、増粘剤などの添加剤を含有していてもよい。顔料が含有されていることによって、肌の色をイメージした色(例えば、薄いオレンジ色など)の貼付薬用支持体を提供できる。
【0023】
そして、本発明にかかるフィルム層は、貼付薬用支持体における繊維層を構成する布帛の主面上に溶融した樹脂を展開して調製された樹脂層由来の層や、1軸延伸フィルムあるいは2軸延伸フィルムなどの事前に用意されたフィルム由来の層であることができる。このうち、「MYLAR」(帝人デュポンフィルム(株)製、登録商標)や「ルミラー」(東レ(株)製、登録商標)として市販される2軸延伸フィルムは、特に繊維層との積層一体化工程において、寸法安定性に優れることで、課題とする層間剥離の発生とフィルム層の皺の発生が防止できる貼付薬用支持体を実現できることから最も好適である。
【0024】
フィルム層の目付や厚みは、課題とする層間剥離の発生とフィルム層の皺の発生が防止できる貼付薬用支持体を実現できるように、また、望む物性を有する貼付薬用支持体を実現できるよう、適宜選択できる。
【0025】
フィルム層の目付は2~70g/mであることができ、4~45g/mであることができ、15~35g/mであることができる。本発明でいう「目付」とは主面における面積1mあたりの質量をいい、主面とは面積が最も広い面をいう。また、フィルム層の厚みは1.5~75μmであることができ、3~50μmであることができ、12~25μmであることができる。本発明でいう「厚み」は、JIS B7502(2016)に規定されている外側マイクロメーター(0~25mm)を用いて、無作為に選んで測定した10点の算術平均値をいう。
【0026】
なお、貼付薬用支持体を構成しているフィルム層の目付や厚みは、貼付薬用支持体から繊維層を除去してフィルム層を単離することで得られた、単体のフィルムの目付や厚みを測定することで求めることができる。
【0027】
本発明にかかる繊維層は、構成繊維に接着繊維を含む繊維の層であって、繊維ウェブや不織布あるいは織物や編物などの布帛由来の層である。特に、投錨性に優れるという効果が効果的に発揮される貼付薬用支持体を実現できるよう、繊維ウェブや不織布由来の繊維層であるのが好ましい。特に、後述する本発明にかかる繊維配向を備えた主面を有する繊維層を実現できるよう、少なくとも二方向性の繊維配向を有している一方の主面と、前記一方の主面が有する繊維配向と異なる繊維配向を有しているもう一方の主面とを備える、接着繊維を含む繊維ウェブや不織布由来の繊維層であるのが好ましい。このような繊維層は、クロスレイウェブと一方向繊維ウェブとを積層してなる積層ウェブ由来の繊維層であることができる。
【0028】
なお、クロスレイウェブとは、繊維配向が生産方向と平行とならないようにして一方向繊維ウェブを折りたたむことで形成された繊維ウェブであって、当該一方向繊維ウェブが折り重なっている部分において、折り重なっている各一方向繊維ウェブ部分ごとの各構成繊維が配向している方向が、生産方向と平行を成すことなく互いに異なっている繊維ウェブである。そのため、クロスレイウェブ由来の主面は、二方向性の繊維配向を有する。
本発明にかかる繊維層は、構成繊維に接着繊維を含んでいる。本発明でいう接着繊維とは、フィルム層を構成する樹脂の軟化温度よりも低い軟化温度を有する樹脂、あるいは、フィルム層を構成する樹脂の融点よりも低い融点を有する樹脂を構成樹脂に備えた繊維である。
【0029】
後述する貼付薬用支持体の製造方法で詳細を説明するが、繊維層に含まれる接着繊維は熱および/または熱と圧力を受けることで軟化あるいは溶融し、その後放冷することで固化して繊維層とフィルムを接着して積層一体化する役割を担う。また、接着繊維は繊維層の構成繊維同士を繊維接着する役割も担う。
【0030】
接着繊維を構成する樹脂の種類は適宜選択でき、例えば、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、炭化水素の一部をニトリル基またはフッ素或いは塩素といったハロゲンで置換した構造のポリオレフィン系樹脂など)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、全芳香族ポリエステル樹脂など)など、公知のポリマーを採用できる。なお、これらのポリマーは、直鎖状ポリマーまたは分岐状ポリマーのいずれからなるものでも構わず、またポリマーがブロック共重合体やランダム共重合体でも構わず、またポリマーの立体構造や結晶性の有無がいかなるものでもよい。更には、多成分の樹脂を混ぜ合わせたものでも良い。
【0031】
特に、接着繊維の構成樹脂がPET(より好ましくは、接着繊維の構成樹脂がPETのみ)であると、接着繊維により粘着剤に含まれる成分が影響を受ける可能性を低減でき好ましく、また、粘着剤に含まれる成分が接着繊維に吸着されて人体側へ放出できなくなるという問題が発生するのを防止でき好ましい。
【0032】
更に、本発明にかかるフィルム層がPETで構成されている場合には、特に、フィルム層と繊維層とが強固に積層一体化した貼付薬用支持体を実現でき好ましい。その結果、剛性に富み変形し難いことで、課題とする層間剥離の発生とフィルム層の皺の発生が防止できる貼付薬用支持体を実現でき好ましい。
【0033】
また、接着繊維は、例えば、難燃剤、香料、顔料、染料、抗菌剤、抗黴材、光触媒粒子、乳化剤、分散剤、界面活性剤、増粘剤などの添加剤を含有していてもよい。顔料が含有されていることによって、肌の色をイメージした色(例えば、薄いオレンジ色など)の貼付薬用支持体を提供できる。
【0034】
更に、接着繊維が未延伸PETを含んでいる(より好ましくは、接着繊維の構成樹脂が未延伸PETのみ)と、フィルム層と繊維層の構成樹脂が全てPETである貼付薬用支持体を実現でき好ましい。また、伸縮性など各種物性が近いフィルム層と繊維層とが積層一体化してなる貼付薬用支持体を実現できることで、更に、課題とする層間剥離の発生とフィルム層の皺の発生が防止できる貼付薬用支持体を実現でき好ましい。
【0035】
なお接着繊維の態様は適宜選択できるが、フィブリル繊維や単繊維、あるいは、例えば、芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型、オレンジ型、バイメタル型などの複合繊維であることができる。また、接着繊維は、断面が略円形の繊維や楕円形の繊維以外にも異形断面を有する繊維であってよい。なお、異形断面繊維として、中空形状、三角形形状などの多角形形状、Y字形状などのアルファベット文字型形状、不定形形状、多葉形状、アスタリスク形状などの記号型形状、あるいはこれらの形状が複数結合した形状などの繊維断面を有する繊維であってもよい。
【0036】
接着繊維の繊度や平均繊維長は、適宜調整するが、繊度は0.5~30dtexであることができ、1~15dtexであることができ、2~10dtexであることができ、3~5dtexであることができる。また、接着繊維は特定長にカットされた短繊維や長繊維、連続繊維(直接紡糸法を用いて調製された特定長にカットされていない繊維など)であることができる。平均繊維長は15~120mmであることができ、20~90mmであることができ、30~60mmであることができる。なお、「繊維長」は、JIS L1015(2010)、8.4.1c 直接法(C法)に則って測定された繊維長をいう。
【0037】
また、繊維層の剛性が富むことで変形し難く、課題とする層間剥離の発生とフィルム層の皺の発生が防止できる貼付薬用支持体を提供できるように、繊維層の全体に接着繊維が存在しているのが好ましい。
【0038】
繊維層は接着繊維以外の構成繊維として、他の繊維を含んでいても良い。本発明でいう他の繊維とは、接着繊維を構成する樹脂の軟化温度よりも高い軟化温度を有する樹脂、あるいは、接着繊維を構成する樹脂の融点よりも高い融点を有する樹脂を構成樹脂に備えた繊維であり、主として繊維層の骨格を成す役割を担う。なお、繊維層が他の繊維を含んでいる場合、接着繊維と他の繊維が混在してなる繊維層であるのが好ましい。接着繊維と他の繊維が混在していることによって、繊維層の剛性が富むことで変形し難く、課題とする層間剥離の発生とフィルム層の皺の発生が防止できる貼付薬用支持体を実現でき好ましい。
【0039】
他の繊維を構成する樹脂の種類は適宜選択でき、例えば、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、炭化水素の一部をニトリル基またはフッ素或いは塩素といったハロゲンで置換した構造のポリオレフィン系樹脂など)、スチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエーテル系樹脂(例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、芳香族ポリエーテルケトンなど)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、全芳香族ポリエステル樹脂など)、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド系樹脂(例えば、芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリエーテルアミド樹脂、ナイロン樹脂など)、二トリル基を有する樹脂(例えば、ポリアクリロニトリルなど)、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスルホン系樹脂(例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど)、フッ素系樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなど)、セルロース系樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルなどを共重合したポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリルと塩化ビニルまたは塩化ビニリデンを共重合したモダアクリル系樹脂など)など、公知のポリマーを採用できる。なお、これらのポリマーは、直鎖状ポリマーまたは分岐状ポリマーのいずれからなるものでも構わず、またポリマーがブロック共重合体やランダム共重合体でも構わず、またポリマーの立体構造や結晶性の有無がいかなるものでもよい。更には、多成分の樹脂を混ぜ合わせたものでも良い。
【0040】
特に、他の繊維の構成樹脂がPETを含んでいる(より好ましくは、他の繊維の構成樹脂が、接着繊維を構成するPETなどの樹脂よりも、融点あるいは軟化温度の高いPETのみ)と、他の繊維により粘着剤に含まれる成分が影響を受ける可能性を低減でき好ましく、また、粘着剤に含まれる成分が他の繊維に吸着されて人体側へ放出できなくなるという問題が発生するのを防止でき好ましい。
【0041】
なお他の繊維の態様は適宜選択できるが、フィブリル繊維や単繊維、例えば、芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型、オレンジ型、バイメタル型などの複合繊維であることができる。また、他の繊維は、断面形状が略円形の繊維や楕円形の繊維以外にも異形断面を有する繊維であってよい。なお、異形断面繊維として、中空形状、三角形形状などの多角形形状、Y字形状などのアルファベット文字型形状、不定形形状、多葉形状、アスタリスク形状などの記号型形状、あるいはこれらの形状が複数結合した形状などの繊維断面を有する繊維であってもよい。
【0042】
他の繊維の繊度や平均繊維長は、適宜調整するが、繊度は0.5~30dtexであることができ、1~15dtexであることができ、2~10dtexであることができ、3~5dtexであることができる。また、他の繊維は特定長にカットされた短繊維や長繊維、連続繊維(直接紡糸法を用いて調製された特定長にカットされていない繊維など)であることができる。平均繊維長は15~120mmであることができ、20~90mmであることができ、30~60mmであることができる。
【0043】
また、他の繊維は繊維層の骨格の役割を担うことができるが、繊維層の剛性が富むことで変形し難く、課題とする層間剥離の発生とフィルム層の皺の発生が防止できる貼付薬用支持体を提供できるように、繊維層の全体に他の繊維が存在しているのが好ましい。
前述したように、繊維層を構成する繊維の構成樹脂がPETを含んでいる(より好ましくは、繊維層を構成する繊維の構成樹脂がPETのみ)と、フィルム層と繊維層の構成樹脂が全てPETである貼付薬用支持体を実現でき好ましい。このような態様の貼付薬用支持体であると、繊維層を構成する繊維により粘着剤に含まれる成分が影響を受ける可能性を低減でき好ましく、また、粘着剤に含まれる成分が繊維層を構成する繊維に吸着されて人体側へ放出できなくなるという問題が発生するのを最も防止でき好ましい。
【0044】
また、伸縮性など各種物性が近いフィルム層と繊維層とが積層一体化してなる貼付薬用支持体を実現できることで、更に、課題とする層間剥離の発生とフィルム層の皺の発生が防止できる貼付薬用支持体を実現でき好ましい。
【0045】
繊維層を構成する繊維質量に占める、接着繊維の質量と他の繊維の質量の比率は適宜調整するが、100:0(繊維層の構成繊維が接着繊維のみ)であることができ、10:90~90:10であることができ、20:80~80:20であることができ、30:70~70:30であることができ、40:60~60:40であることができ、50:50であることができる。
【0046】
本発明にかかる貼付薬用支持体では、繊維層におけるフィルム層側の主面は、少なくとも二方向性の繊維配向を有していることを特徴としている。当該構成を満足する繊維層を備える貼付薬用支持体であるか否かは、以下の方法で確認できる。
【0047】
(少なくとも二方向性の繊維配向を有している主面を備えているか否かの確認方法)
(1)貼付薬用支持体からフィルム層を除去することで、フィルム層と積層一体化していた繊維層を単体で採取する。そして、採取した繊維層におけるフィルム層と接触していた側の主面に、接着繊維が存在していることを確認する。なお、確認には顕微鏡写真あるいは電子顕微鏡写真を使用することができる。
(2)採取した繊維層から、試験片(一辺10mm以上の正方形形状)を、貼付薬用支持体の繊維層を構成する布帛の生産方向(タテ方向)と一致する対向する二辺を有するように採取し、台紙に固定する。このとき、フィルム層と接触していた側の主面を露出させ観察できるように、台紙に固定する。
(3)台紙に固定されている試験片における露出している側の主面を構成している繊維の中から、当該主面側から見た際にタテ方向に対し繊維の長さ方向が右回りに0°より大きく90°未満の角度を有する状態で存在している繊維を、ランダムに20本以上選出する。なお、繊維の長さ方向とは、対象とする繊維を撮影した顕微鏡写真あるいは電子顕微鏡写真中に当該繊維を囲む最小の長方形を作図し、作図した当該長方形の長辺方向を指す。
(4)当該選出した繊維における繊維の長さ方向が試験片のタテ方向に対し成す角度とその平均値から、標準偏差を算出する。この時、標準偏差の値が20以内である場合、測定対象物を構成する繊維層は、試験片のタテ方向に対し右回りに0°より大きく90°未満の角度を有する繊維配向Aを有すると判断する。
(5)台紙に固定されている試験片における露出している側の主面を構成している繊維の中から、当該主面側から見た際に、試験片のタテ方向に対し繊維の長さ方向が左回りに0°より大きく90°未満の角度を有する状態で存在している繊維を、ランダムに20本以上選出する。
(6)当該選出した繊維における繊維の長さ方向が試験片のタテ方向に対し成す角度とその平均値から、標準偏差を算出する。この時、標準偏差の値が20以内である場合、測定対象物を構成する繊維層は、試験片のタテ方向に対し左回りに0°より大きく90°未満の角度を有する繊維配向Bを有すると判断する。
【0048】
以上の測定結果から、測定した試料が繊維配向Aならびに繊維配向Bを共に有する場合、当該試料を採取した繊維層は、少なくとも二方向性の繊維配向を有していると判断する。本発明にかかる、少なくとも二方向性の繊維配向を有している繊維層は、例えばクロスレイウェブが由来の主面を備える繊維層であることができる。
【0049】
一方、測定した試料が繊維配向Aまたは繊維配向Bのみを有している場合、測定した試料がタテ方向と平行を成す繊維配向のみを有している場合、測定した試料がタテ方向と直角を成す繊維配向のみを有している場合、当該試料を採取した繊維層は、一方向性の繊維配向のみを有していると判断する。このような繊維層は、例えば一方向繊維ウェブが由来の主面を備える繊維層である。
【0050】
また、測定した試料の構成繊維が不均一に配向している場合、当該試料を採取した繊維層は、特定の繊維配向を有していないと判断する。このような繊維層は、例えばランダムウェブが由来の主面を備える繊維層である。
【0051】
本発明にかかる貼付薬用支持体では、繊維層におけるフィルム層側の主面は、少なくとも二方向性の繊維配向を有していることを特徴としている。本構成を備えていることによって、接着繊維による繊維層とフィルム層との接着が強固に行われる結果、層間剥離が発生するのが防止できる。
【0052】
このような作用効果が発揮される理由は、以下のためだと考えられる。繊維層におけるフィルム層側の主面が、少なくとも二方向性の繊維配向を有している場合には、当該フィルム層側の主面において繊維層に含まれる接着繊維同士が、規則正しく配向して多数の繊維交点を備えている状態にある。その結果、規則正しく配向して多数の繊維交点を有した状態で繊維接着している接着繊維によって、繊維層がフィルム層と強固に接着していると考えられる。
【0053】
更に、本発明にかかる貼付薬用支持体では、繊維層におけるフィルム層と反対側の主面は、フィルム層側の主面が有する繊維配向(例えば、二方向性の繊維配向)と異なる繊維配向(例えば、一方向性の繊維配向)を有していることを特徴としている。
【0054】
当該構成を満足する繊維層を備える貼付薬用支持体であるか否かは、上述した(少なくとも二方向性の繊維配向を有している主面を備えているか否かの確認方法)において、(2)を以下の(2´)に変更し、その主面の繊維配向を観察し確認できる。
【0055】
(2´)採取した繊維層から、試験片(一辺10mm以上の正方形形状)を貼付薬用支持体の繊維層を構成する布帛の生産方向(タテ方向)と一致する対向する二辺を有するように採取し、台紙に固定する。このとき、フィルム層と接触していた側の主面と反対側の主面を露出させ観察できるように、台紙に固定する。
【0056】
以上の測定結果から、測定した試料におけるフィルム層と接触していた側の主面と反対側の主面が、フィルム層側の主面が有する繊維配向と異なる繊維配向を有している場合、例えば、
・測定した試料が繊維配向Aまたは繊維配向Bのみを有している場合、
・測定した試料がタテ方向と平行を成す繊維配向のみを有している場合、
・測定した試料がタテ方向と直角を成す繊維配向のみを有している場合
・測定した試料の構成繊維が不均一に配向しており(前述の方法で算出される標準偏差が20を超えており)、特定の繊維配向を有していない場合、
には、繊維層におけるフィルム層と反対側の主面が有する繊維配向は、繊維層におけるフィルム層側の主面が有する繊維配向(例えば、二方向性の繊維配向)と異なる繊維配向(例えば、一方向性の繊維配向)を有している、と判断する。
【0057】
本発明にかかる繊維層におけるフィルム層と反対側の主面は、例えば一方向繊維ウェブあるいはランダムウェブが由来の主面を備える繊維層であることができる。特に、フィルム層に皺が発生するのを防止できる効果が効率良く発揮されるよう、繊維層におけるフィルム層と反対側の主面は、一方向繊維ウェブが由来の主面を備えているのが好ましい。
【0058】
本発明にかかる貼付薬用支持体では、繊維層におけるフィルム層側と反対側の主面は、フィルム層側の主面が有する繊維配向と異なる繊維配向を有していることによって、フィルム層に皺が発生するのが防止できる。
【0059】
このような作用効果が発揮される理由は、以下のためだと考えられる。
【0060】
繊維層におけるフィルム層側と反対側の主面が、繊維層におけるフィルム層側の主面が有する繊維配向と異なる繊維配向を有している場合には、繊維層は当該反対側の主面(フィルム層側の主面と異なる繊維配向を有することで、異なる物性を有する主面)によって、より繊維同士の交点が多い状態の主面を備えた状態にある。その結果、同一の繊維配向のみで構成されている繊維層よりも、意図しない変形が抑えられている繊維層となることで、皺の発生が防止できる貼付薬用支持体を実現できると考えられる。
【0061】
以上のことから「フィルム層と接着繊維を含む繊維層とを備えており、前記接着繊維によって前記フィルム層と前記繊維層とが積層一体化している、貼付薬用支持体」が少なくとも以下の構成1~2を有することによって、フィルム層に皺が発生するのを防止できると共に、フィルム層と繊維層との間に層間剥離が生じるのが抑制されている貼付薬用支持体を提供できる。
構成1:繊維層におけるフィルム層側の主面は、少なくとも二方向性の繊維配向を有している。
構成2:繊維層におけるフィルム層と反対側の主面は、繊維層におけるフィルム層側の主面が有する繊維配向と異なる繊維配向を有している。
【0062】
繊維層の目付や厚みは、コールドフローの発生を抑制した貼付薬用支持体を実現できるように、適宜選択できるが、繊維層の目付は10~100g/mであることができ、30~80g/mであることができ、40~70g/mであることができる。
【0063】
また、繊維層の厚みは10~200μmであることができ、30~180μmであることができ、50~150μmであることができる。
【0064】
なお、貼付薬用支持体を構成している繊維層の目付や厚みは、貼付薬用支持体からフィルム層を除去することで得られた、単体の繊維層の目付や厚みを測定することで求めることができる。
【0065】
繊維層の密度は、コールドフローの発生を抑制した貼付薬用支持体を実現できるように、適宜選択できるが、100~1000kg/mであることができ、150~800kg/mであることができ、200~600kg/mであることができる。なお、繊維層の密度は、繊維層の目付を繊維層の厚みで除し算出した値である。
【0066】
貼付薬用支持体の目付や厚みは、希望する貼付薬を実現できるよう適宜選択できる。貼付薬用支持体の目付は27~170g/mであることができ、34~125g/mであることができ、45~105g/mであることができる。また、貼付薬用支持体の厚みは11.5~275μmであることができ、33~230μmであることができ、62~175μmであることができる。
【0067】
本発明の貼付薬用支持体の製造方法について、一例を挙げ説明する。本発明の貼付薬用支持体の製造方法は適宜選択できるが、例えば、以下の工程を経て製造できる。
工程(1):フィルムを用意する工程、
工程(2):少なくとも二方向性の繊維配向を有している一方の主面と、前記一方の主面が有する繊維配向と異なる繊維配向を有しているもう一方の主面とを備える、接着繊維を含む布帛を用意する工程、
工程(3):前記布帛における前記一方の主面と、前記フィルムを積層して積層体を調製する工程、
工程(4):前記積層体へ熱または熱と圧力を作用させることで、前記接着繊維を軟化あるいは融解させる工程、
工程(5):熱または熱と圧力を作用させた後の積層体を冷却する工程、
を採用できる。
【0068】
工程(1)において、用意するフィルムの種類は適宜選択できるが、ポリエチレンテレフタレートの2軸延伸フィルムを用いるのが好ましい。
【0069】
工程(2)において、当該構成を満足する布帛として、例えば、接着繊維を含むクロスレイウェブと、接着繊維を含む一方向繊維ウェブとが積層してなる積層ウェブを挙げることができる。両ウェブをただ重ね合わせてなる積層ウェブや、ニードルパンチ処理や水流絡合処理などへ供することによって互いの層間に存在する繊維同士が絡合してなる積層ウェブを用いることができる。
【0070】
工程(3)では、布帛における少なくとも二方向性の繊維配向を有している側の主面と、フィルムとが面するようにして、フィルムと布帛を重ね合わせ積層体を調製する。
なお、布帛が少なくとも二方向性の繊維配向を有している一方の主面を備えているか否か、また、布帛が前記一方の主面が有する繊維配向と異なる繊維配向を有しているもう一方の主面を備えているか否かは、上述した(少なくとも二方向性の繊維配向を有している主面を備えているか否かの確認方法)の工程(2)および工程(2´)において、布帛から試験片(一辺10mm以上の正方形形状)を採取し、当該試験片を用いることで確認できる。
【0071】
工程(4)において、積層体を加熱する温度は適宜調整するが、接着繊維を構成する樹脂が軟化する温度以上、フィルムを構成する樹脂および布帛に含まれる他の繊維を構成する樹脂が軟化する温度未満の温度で加熱する、あるいは、接着繊維を構成する樹脂が融解する温度以上、フィルムを構成する樹脂および布帛に含まれる他の繊維を構成する樹脂が融解する温度未満の温度で加熱するのが好ましい。なお、上述した樹脂の軟化温度はJIS K7206:2016「プラスチック-熱可塑性プラスチック-ビカット軟化温度(VST)の求め方」に従って確認できるものであり、上述した樹脂の融解温度はJIS K7121:2012「プラスチックの転移温度測定方法」に従って確認できる融解ピーク温度を指すものである。
【0072】
加熱処理の方法は適宜選択できるが、例えば、ロールにより加熱または加熱加圧する方法、オーブンドライヤー、遠赤外線ヒーター、乾熱乾燥機、熱風乾燥機などの加熱機へ供し加熱する方法、無圧下で赤外線を照射して含まれている樹脂を加熱する方法などを用いることができる。
【0073】
工程(4)では、積層体へ熱と圧力を作用させてもよい。接着繊維を構成する樹脂(例えば、未延伸ポリエチレンテレフタレート)が軟化する温度以上、融解する温度未満の加熱条件下で圧力を作用させることで未延伸繊維が潰れその繊維形状を変形させて、フィルムと布帛を接着できると共に、布帛の構成繊維同士を繊維接着できる。接着繊維がこのような態様で、フィルムと布帛を接着し積層一体化していることによって、また、布帛の構成繊維同士を繊維接着していることによって、課題とする層間剥離の発生とフィルム層の皺の発生が更に防止できる貼付薬用支持体を提供でき好ましい。
【0074】
そして、工程(5)において、積層体を加熱処理へ供した後、放冷するあるいは冷却することで、布帛の構成繊維同士を繊維接着でき、そして、フィルム層と布帛を接着できる。そして、フィルム由来のフィルム層と布帛由来の繊維層とが、繊維層に含まれる接着繊維によって接着して積層一体化してなる、貼付薬用支持体を製造できる。
【0075】
本発明にかかる貼付薬用支持体は、フィルム層と繊維層のみで構成されていても良いが、他の布帛や他のフィルム(無孔フィルムや多孔フィルム)あるいは発泡体(無孔発泡体や多孔発泡体)などの他の部材を、更に積層してなる構造であってもよい。他の部材を積層させる方法は適宜選択できるが、ただ積層しただけの態様であっても、パウダーバインダ、スプレーバインダ、ホットメルトなどのバインダにより接着して積層一体化した態様であっても、接着繊維など構成成分により接着して積層一体化した態様であってもよい。なお、他の部材の素材、目付や厚みなどの諸構成は、貼付薬用支持体に求められる態様に合わせ適宜調整あるいは選択できる。
【0076】
更に、本発明の貼付薬用支持体をリライアントプレス処理などの、表面を平滑とするために加圧処理する工程へ供してもよい。また、用途や使用態様に合わせて形状を打ち抜いた後に加熱成形する工程や、機能性成分を担持する工程、粘着剤との親和性を向上するための親水化処理工程など、各種二次加工工程へ供してもよい。
【実施例0077】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0078】
(使用した繊維とフィルム)
未延伸PET接着繊維・・・繊度:4.0dtex、繊維長:38mm、繊維断面形状:円形、融点:253℃、205℃の温度雰囲気下で軟化する。
延伸PET繊維・・・繊度:1.1dtex、繊維長:38mm、繊維断面形状:円形、融点:253℃、未延伸PET接着繊維よりも軟化温度が高い。
2軸延伸PETフィルム・・・非通気性、厚み:12μm、目付:17g/m、融点:256℃、未延伸PET接着繊維よりも軟化温度が高い。
【0079】
(比較例1)
未延伸PET接着繊維40質量%と延伸PET繊維60質量%を混綿し、フラットカード機へ供し一方向繊維ウェブを調製した。その後、当該一方向繊維ウェブを繊維配向が違えるようにして重ね合わせて、クロスレイウェブ(目付:25g/m)を調製した。なお、このようにして調製したクロスレイウェブの両主面は、いずれも二方向性の繊維配向を有しているものであった。
次いで、2軸延伸PETフィルムの一方の主面と、クロスレイウェブの一方の主面を重ね合わせて積層体を調製した。そして、積層体を205℃に加熱した金属ロールと弾性ロールからなるカレンダー装置へ供し、線圧30kg/cm、生産速度11m/分で、積層体に熱と圧力を作用させた。本工程によって、未延伸PET接着繊維のみが軟化するものであった。
その後、カレンダー装置へ供した後の積層体を放冷して、2軸延伸PETフィルム由来のフィルム層と、未延伸PET接着繊維を含むクロスレイウェブ由来の繊維層とを備えており、未延伸PET接着繊維によってフィルム層と繊維層とが積層一体化していると共に、繊維層の構成繊維同士が未延伸PET接着繊維によって繊維接着してなる、貼付薬用支持体を調製した。
【0080】
(比較例2)
未延伸PET接着繊維40質量%と延伸PET繊維60質量%を混綿し、フラットカード機へ供し一方向繊維ウェブを調製した。このとき、混綿する繊維質量を比較例1よりも増量した。その後、当該一方向繊維ウェブを繊維配向が違えるようにして重ね合わせて、クロスレイウェブ(目付:28g/m)を調製した。なお、このようにして調製したクロスレイウェブの両主面は、いずれも二方向性の繊維配向を有しているものであった。
このようにして調製したクロスレイウェブを用いたこと以外は、比較例1と同様にして、2軸延伸PETフィルム由来のフィルム層と、未延伸PET接着繊維を含むクロスレイウェブ由来の繊維層とを備えており、未延伸PET接着繊維によってフィルム層と繊維層とが積層一体化していると共に、繊維層の構成繊維同士が未延伸PET接着繊維によって繊維接着してなる、貼付薬用支持体を調製した。
【0081】
(比較例3)
未延伸PET接着繊維40質量%と延伸PET繊維60質量%を混綿し、フラットカード機へ供し一方向繊維ウェブを調製した。このとき、混綿する繊維質量を比較例2よりも増量した。その後、当該一方向繊維ウェブを繊維配向が違えるようにして重ね合わせて、クロスレイウェブ(目付:50g/m)を調製した。なお、このようにして調製したクロスレイウェブの両主面は、いずれも二方向性の繊維配向を有しているものであった。
このようにして調製したクロスレイウェブを用いたこと以外は、比較例1と同様にして、2軸延伸PETフィルム由来のフィルム層と、未延伸PET接着繊維を含むクロスレイウェブ由来の繊維層とを備えており、未延伸PET接着繊維によってフィルム層と繊維層とが積層一体化していると共に、繊維層の構成繊維同士が未延伸PET接着繊維によって繊維接着してなる、貼付薬用支持体を調製した。
【0082】
(実施例1)
未延伸PET接着繊維40質量%と延伸PET繊維60質量%を混綿し、フラットカード機へ供し一方向繊維ウェブを調製した。
また、未延伸PET接着繊維40質量%と延伸PET繊維60質量%を混綿し、フラットカード機へ供し一方向繊維ウェブを調製した。その後、当該一方向繊維ウェブを繊維配向が違えるようにして重ね合わせて、クロスレイウェブを調製した。
そして、一方向繊維ウェブとクロスレイウェブを積層して積層ウェブ(目付:50g/m、うち一方向繊維ウェブ由来の繊維層部分の目付:7g/m、うちクロスレイウェブ由来の繊維層部分の目付:43g/m)を調製した。なお、このようにして調製した積層ウェブにおける、一方の主面(クロスレイウェブ由来の主面)は二方向性の繊維配向を有しており、もう一方の主面(一方向繊維ウェブ由来の主面)は一方向性の繊維配向のみを有しているものであった。
次いで、2軸延伸PETフィルムの一方の主面と、積層ウェブにおけるクロスレイウェブ由来の主面を重ね合わせて積層体を調製した。
このようにして調製した積層体を用いたこと以外は、比較例1と同様にして、2軸延伸PETフィルム由来のフィルム層と、未延伸PET接着繊維を含む積層ウェブ由来の繊維層とを備えており、未延伸PET接着繊維によってフィルム層と繊維層とが積層一体化していると共に、繊維層の構成繊維同士が未延伸PET接着繊維によって繊維接着してなる、貼付薬用支持体を調製した。
【0083】
(比較例4)
未延伸PET接着繊維40質量%と延伸PET繊維60質量%を混綿し、フラットカード機へ供し一方向繊維ウェブを調製した。
また、未延伸PET接着繊維40質量%と延伸PET繊維60質量%を混綿し、フラットカード機へ供し一方向繊維ウェブを調製した。その後、当該一方向繊維ウェブを繊維配向が違えるようにして重ね合わせて、クロスレイウェブを調製した。
更に、未延伸PET接着繊維40質量%と延伸PET繊維60質量%を混綿し、フラットカード機へ供し別の一方向繊維ウェブを調製した。
そして、一方向繊維ウェブ-クロスレイウェブ-別の一方向繊維ウェブの順に積層して積層ウェブ(目付:50g/m、うち一方向繊維ウェブ由来の繊維層部分の目付:7g/m、うちクロスレイウェブ由来の繊維層部分の目付:30g/m、うち別の一方向繊維ウェブ由来の繊維層部分の目付:13g/m)を調製した。なお、このようにして調製した積層ウェブの両主面は、いずれも一方向性の繊維配向のみを有しているものであった。
次いで、2軸延伸PETフィルムの一方の主面と、積層ウェブにおける別の一方向繊維ウェブ由来の主面を重ね合わせて積層体を調製した。
このようにして調製した積層ウェブを用いたこと以外は、比較例1と同様にして、2軸延伸PETフィルム由来のフィルム層と、未延伸PET接着繊維を含む積層ウェブ由来の繊維層とを備えており、未延伸PET接着繊維によってフィルム層と繊維層とが積層一体化していると共に、繊維層の構成繊維同士が未延伸PET接着繊維によって繊維接着してなる、貼付薬用支持体を調製した。
【0084】
以上のようにして調製したいずれの貼付薬用支持体でも、未延伸PET接着繊維は潰れその繊維形状が変形することによって、フィルムと繊維層を接着していると共に繊維層の構成繊維同士は繊維接着しているものであった。
【0085】
調製した各貼付薬用支持体の諸物性を評価し、表1にまとめた。なお、調製した貼付薬用支持体の各種物性の測定方法は、以下の通りである、
【0086】
(皺の発生状態の確認方法)
調製した貼付薬用支持体における、フィルム層が露出している主面を目視で確認した。
比較例1で調製した貼付薬用支持体における、フィルム層が露出している主面に確認された皺の状態を基準として「〇」と評価した。そして、それよりも皺が多く発生していた比較例2の結果を「×」と評価した。また、「×」と評価されたものよりも皺が多く発生していたものを「××」と評価した。
【0087】
(コールドフロー抑制効果の評価方法)
一方の主面にシリコーン離型剤が被覆されたPET製フィルムを用意した。そして、当該PET製フィルムにおけるシリコーン離型剤が被覆された主面上に、次の組成を有する擬似膏体層(厚み:100μm)を塗工した。このようにして、PET製剥離フィルムを用意した。
(疑似膏体の組成)
スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体:4質量部
ポリイソブチレン:24質量部
水添ロジンエステル:30質量部
流動パラフィン:40質量部
そして、貼付薬用支持体における露出している不織布層と、PET製剥離フィルムにおける擬似膏体層とを重ね合わせ、次いでプレス装置へ供することで、両主面間に熱と圧力(プレス温度:100℃、プレス圧:0.1MPa)を作用させた。その後、貼付薬用支持体とPET製剥離フィルムの積層体を放冷して、貼付薬を調製した。
次いで、調製した貼付薬から切片(正方形、タテ:10mm、ヨコ:10mm)を、貼付薬用支持体の繊維層を構成する布帛の生産方向(タテ方向)と一致する対向する二辺を有するように採取し、採取した切片における両主面間に3g/cmの荷重をかけた状態で、60℃雰囲気下に24時間置きエイジングを行った。
エイジング後の切片において、粘着剤が繊維層の端部よりも外側に染み出る程度(コールドフローの程度)を目視で確認した。
比較例1で調製した貼付薬用支持体は、多くの粘着剤が繊維層の端部よりも外側に染み出ていたため「×」と評価した。そして、繊維層の端部よりも外側に染み出ていた粘着剤の量が、比較例1で調製した貼付薬用支持体よりも少なかった比較例2の結果を「〇」と評価した。また、繊維層の端部よりも外側に染み出ていた粘着剤の量が、「〇」と評価された貼付薬用支持体よりも少なかったものを「〇〇」と評価した。
【0088】
また、理解を容易にするため、繊維層を調製するため用いた繊維ウェブの積層構成を併記した。そして、調製した各貼付薬用支持体の繊維層における、フィルム層側の主面が備えている繊維配向と、フィルム層と反対側の主面が備えている繊維配向を確認し、表1にまとめた。
【0089】
【表1】
【0090】
比較例1と比較例2~3とを比較した結果から、繊維層の目付が25g/mより重い貼付薬用支持体(特に、繊維層の目付が28g/m以上の貼付薬用支持体)を用いて調製した貼付薬ではコールドフローの発生は抑制されていた。しかし、調製した繊維層の目付が25g/mより重い貼付薬用支持体(特に、繊維層の目付が28g/m以上の貼付薬用支持体)ではフィルム層に皺が発生し易くなることが判明した。
【0091】
そして、比較例3と実施例1とを比較した結果から、繊維層の目付が25g/mより重い貼付薬用支持体(特に、繊維層の目付が28g/m以上の貼付薬用支持体)であっても、繊維層におけるフィルム層と反対側の主面は、フィルム層側の主面が有する繊維配向と異なる繊維配向を有していることによって、フィルム層に皺が発生するのが防止されている貼付薬用支持体を提供できた。
【0092】
次いで、目付が同じ繊維層を備える比較例3と実施例1および比較例4の貼付薬用支持体について、フィルム層と繊維層との間の、層間剥離強度を以下測定方法によって評価した。そして、測定結果を表2にまとめた。
【0093】
(層間剥離強度の測定方法)
貼付薬用支持体の両主面に各々50mm幅×250mm長のクラフトテープ(品名:日東テープNo.712F)を貼付した。このとき、
・貼付薬用支持体が備える繊維層を構成する布帛の生産方向と、クラフトテープの長辺とが平行を成すようにして貼付した。
また、
・両主面にクラフトテープを貼付した貼付薬用支持体を、一方の主面からもう一方の主面に向かい透視したと仮定した際に、両クラフトテープの輪郭が重なり合うようにして貼付した。
その後、貼付薬用支持体から試験片(15mm幅×250mm長)を切り出した。このとき、
・貼付薬用支持体が備える繊維層を構成する布帛の生産方向と、試験片の長辺とが平行を成すようにして、試験片を切り出した。
また、
・試験片の両主面全体をクラフトテープが覆っている状態となるように、試験片を切り出した。
このようにして、切り出した試験片を3枚用意した。
その後、試験片の一端から対向するもう一端へ向かい50mm、繊維層から繊維層側に貼付されているクラフトテープを引き剥がし、また、試験片の一端から対向するもう一端へ向かい50mm、フィルム層からフィルム層側に貼付されているクラフトテープを引き剥がした。クラフトテープの引き剥がした各部分を、定速伸長型引張試験機(オリエンテック社製、テンシロン)のチャック間(50mm)に固定し、試験片の長辺方向と定速伸長型引張試験機による引張方向とが平行となるようにして、速度100mm/分で引張ることにより、試験片のフィルム層から繊維層を剥がすことを試みた。
そして、試験片のフィルム層から繊維層が完全に剥がれるまでの間に測定された、荷重(単位:N/15mm)を連続的に記録した。このとき、試験片の長辺方向へ向かい試験片のフィルム層から繊維層が、40mm剥がれた時に計測された荷重(単位:N/15mm)、80mm剥がれた時に計測された荷重(単位:N/15mm)、120mm剥がれた時に計測された荷重(単位:N/15mm)、160mm剥がれた時に計測された荷重(単位:N/15mm)を確認し、これら4つの測定値の平均値(単位:N/15mm)を求めた。
この測定を3枚の試験片について行い、各々で求めた「4つの測定値の平均値」の平均値を層間剥離強度MD(単位:N/15mm)とした。
【0094】
次いで、
・貼付薬用支持体が備える繊維層を構成する布帛の生産方向と、クラフトテープの長辺とが直角を成すようにして貼付したこと以外は、前述と同様にして、貼付薬用支持体から試験片(15mm幅×250mm長)を切り出した。
このようにして、切り出した試験片を3枚用意した。
その後、試験片の一端から対向するもう一端へ向かい50mm、繊維層から繊維層側に貼付されているクラフトテープを引き剥がし、また、試験片の一端から対向するもう一端へ向かい50mm、フィルム層からフィルム層側に貼付されているクラフトテープを引き剥がした。クラフトテープの引き剥がした各部分を、定速伸長型引張試験機(オリエンテック社製、テンシロン)のチャック間(50mm)に固定し、試験片の長辺方向と定速伸長型引張試験機による引張方向とが平行となるようにして、速度100mm/分で引張ることにより、試験片のフィルム層から繊維層を剥がすことを試みた。
そして、試験片のフィルム層から繊維層が完全に剥がれるまでの間に測定された、荷重(単位:N/15mm)を連続的に記録した。このとき、試験片の長辺方向へ向かい試験片のフィルム層から繊維層が、40mm剥がれた時に計測された荷重(単位:N/15mm)、80mm剥がれた時に計測された荷重(単位:N/15mm)、120mm剥がれた時に計測された荷重(単位:N/15mm)、160mm剥がれた時に計測された荷重(単位:N/15mm)を確認し、これら4つの測定値の平均値(単位:N/15mm)を求めた。
この測定を3枚の試験片について行い、各々で求めた「4つの測定値の平均値」の平均値を層間剥離強度CD(単位:N/15mm)とした。
【0095】
本測定方法において、層間剥離強度MDおよび層間剥離強度CDが高い貼付薬用支持体であるほど、フィルム層と繊維層との間に層間剥離が発生するのを抑制する効果に富むことを意味する。
【0096】
【表2】
【0097】
測定の結果から、実施例1で調製した貼付薬用支持体は、繊維層におけるフィルム層側の主面が、少なくとも二方向性の繊維配向を有していることによって、フィルム層と繊維層との間に層間剥離が発生するのが抑制された貼付薬用支持体であった。
【0098】
以上から、「フィルム層と接着繊維を含む繊維層とを備えており、前記接着繊維によって前記フィルム層と前記繊維層とが積層一体化している、貼付薬用支持体」は、
構成1:繊維層におけるフィルム層側の主面は、少なくとも二方向性の繊維配向を有している。
構成2:繊維層におけるフィルム層と反対側の主面は、繊維層におけるフィルム層側の主面が有する繊維配向と異なる繊維配向を有している。
という構成を備えていることによって、フィルム層に皺が発生するのを防止できると共に、フィルム層と繊維層との間に層間剥離が生じるのが抑制されている貼付薬用支持体であることが明らかとなった。
【0099】
(実施例2)
未延伸PET接着繊維40質量%と延伸PET繊維60質量%を混綿し、フラットカード機へ供し一方向繊維ウェブを調製した。
また、未延伸PET接着繊維70質量%と延伸PET繊維30質量%を混綿し、フラットカード機へ供し一方向繊維ウェブを調製した。その後、当該一方向繊維ウェブを繊維配向が違えるようにして重ね合わせて、クロスレイウェブを調製した。
そして、一方向繊維ウェブとクロスレイウェブを積層して積層ウェブ(目付:50g/m、うち一方向繊維ウェブ由来の繊維層部分の目付:7g/m、うちクロスレイウェブ由来の繊維層部分の目付:43g/m)を調製した。なお、このようにして調製した積層ウェブにおける、一方の主面(クロスレイウェブ由来の主面)は二方向性の繊維配向を有しており、もう一方の主面(一方向繊維ウェブ由来の主面)は一方向性の繊維配向のみを有しているものであった。
次いで、2軸延伸PETフィルムの一方の主面と、積層ウェブにおけるクロスレイウェブ由来の主面を重ね合わせて積層体を調製した。
このようにして調製した積層体を用いたこと以外は、比較例1と同様にして、2軸延伸PETフィルム由来のフィルム層と、未延伸PET接着繊維を含む積層ウェブ由来の繊維層とを備えており、未延伸PET接着繊維によってフィルム層と繊維層とが積層一体化していると共に、繊維層の構成繊維同士が未延伸PET接着繊維によって繊維接着してなる、貼付薬用支持体を調製した。
【0100】
(比較例5)
未延伸PET接着繊維40質量%と延伸PET繊維60質量%を混綿し、フラットカード機へ供し一方向繊維ウェブを調製した。
また、未延伸PET接着繊維40質量%と延伸PET繊維60質量%を混綿し、フラットカード機へ供し一方向繊維ウェブを調製した。その後、当該一方向繊維ウェブを繊維配向が違えるようにして重ね合わせて、クロスレイウェブを調製した。
そして、未延伸PET接着繊維40質量%と延伸PET繊維60質量%を混綿し、フラットカード機へ供し別の一方向繊維ウェブを調製した。
更に、未延伸PET接着繊維70質量%と延伸PET繊維30質量%を混綿し、フラットカード機へ供し更に別の一方向繊維ウェブを調製した。
そして、一方向繊維ウェブ-クロスレイウェブ-別の一方向繊維ウェブ-更に別の一方向繊維ウェブの順に積層して積層ウェブ(目付:50g/m、うち一方向繊維ウェブ由来の繊維層部分の目付:7g/m、うちクロスレイウェブ由来の繊維層部分の目付:30g/m、うち別の一方向繊維ウェブ由来の繊維層部分の目付:6.5g/m、うち更に別の一方向繊維ウェブ由来の繊維層部分の目付:6.5g/m)を調製した。なお、このようにして調製した積層ウェブの両主面は、いずれも一方向性の繊維配向のみを有しているものであった。
次いで、2軸延伸PETフィルムの一方の主面と、積層ウェブにおける更に別の一方向繊維ウェブ由来の主面を重ね合わせて積層体を調製した。
このようにして調製した積層ウェブを用いたこと以外は、比較例1と同様にして、2軸延伸PETフィルム由来のフィルム層と、未延伸PET接着繊維を含む積層ウェブ由来の繊維層とを備えており、未延伸PET接着繊維によってフィルム層と繊維層とが積層一体化していると共に、繊維層の構成繊維同士が未延伸PET接着繊維によって繊維接着してなる、貼付薬用支持体を調製した。
【0101】
以上のようにして調製したいずれの貼付薬用支持体でも、未延伸PET接着繊維は潰れその繊維形状が変形することによって、フィルムと繊維層を接着していると共に繊維層の構成繊維同士は繊維接着しているものであった。
【0102】
調製した各貼付薬用支持体の諸物性を評価し、表3にまとめた。また、理解を容易にするため、繊維層を調製するため用いた繊維ウェブの積層構成を併記した。そして、調製した各貼付薬用支持体の繊維層における、フィルム層側の主面が備えている繊維配向と、フィルム層と反対側の主面が備えている繊維配向を確認し、表3にまとめた。
【0103】
【表3】
【0104】
以上の結果から、本発明によって、フィルム層に皺が発生するのを防止できると共に、フィルム層と繊維層との間に層間剥離が生じるのが抑制されている貼付薬用支持体を提供できた。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の貼付薬用支持体およびその製造方法は、例えば、パップ剤、プラスター剤、経皮吸収型全身製剤、或いは治療用粘着テープ等の貼付薬用支持体として利用可能である。