(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094078
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】熱変色性筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 29/02 20060101AFI20240702BHJP
B43K 3/00 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B43K29/02 F
B43K3/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210819
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】安孫子 眞美
(57)【要約】
【課題】少ない部品点数で軸筒内部の気密性能を確保し、且つ摩擦体の装着が容易に行え、摩擦時に摩擦体がぐらつくことがなく安定した摩擦ができる熱変色性筆記具を提供する。
【解決手段】本願発明の熱変色性筆記具は、軸筒と、ペン先と、インキ吸蔵体と、インキ吸蔵体に収容される熱変色性インキと、軸筒の後方から着脱自在に螺着される摩擦体とを備える。軸筒は、後端の内面に雌ねじ部と、第1の気密部と、が設けられる。摩擦体は、雌ねじ部に螺合される雄ねじ部と、第2の気密部と、摩擦部と、が設けられる。第1の気密部と第2の気密部によって軸筒内部の気密性能を確保するための気密構造が設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒と、
前記軸筒の前端に設けられるペン先と、
前記ペン先と接続され前記軸筒の内部に収容されるインキ吸蔵体と、
前記インキ吸蔵体に収容される熱変色性インキと、
前記軸筒の後方から着脱自在に螺着される摩擦体と
を備え、
前記軸筒は、後端の内面に雌ねじ部と、第1の気密部と、が設けられ、
前記摩擦体は、前記雌ねじ部に螺合される雄ねじ部と、第2の気密部と、前記熱変色性インキの筆跡を摩擦し、その際に生じる摩擦熱で前記熱変色性インキの筆跡を熱変色可能な摩擦部と、が設けられ、
前記第1の気密部と前記第2の気密部によって前記軸筒と前記摩擦体との間の気密を維持するための気密構造が設けられている熱変色性筆記具。
【請求項2】
前記摩擦体は、前記摩擦部と、前記摩擦部とは異なる材料からなる前記雄ねじ部及び前記第2の気密部と、が二色成形により一体に形成される
請求項1に記載の熱変色性筆記具。
【請求項3】
前記第1の気密部は内向平滑面であり、前記第2の気密部は外向環状突起である
請求項2に記載の熱変色性筆記具。
【請求項4】
前記摩擦体の外面にスリット又は前記摩擦体の内部に軸方向に連通する貫通孔が設けられている
請求項3に記載の熱変色性筆記具。
【請求項5】
前記摩擦体が前記軸筒に螺着された状態で前記摩擦部の前端が前記軸筒の後端よりも前方に位置する
請求項1乃至4のいずれかに記載の熱変色性筆記具。
【請求項6】
前記摩擦体は、前記摩擦部の前端に鍔部を備え、
前記摩擦体が前記軸筒に螺着された状態で前記鍔部の前端が前記軸筒の後端に当接する
請求項1乃至4のいずれかに記載の熱変色性筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱変色性筆記具に関する。詳細には、熱変色性インキの筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱で前記熱変色性インキの筆跡を熱変色可能な摩擦体を具備してなる熱変色性筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、筒体の内面に栓体を圧入固着し、栓体によって前端開口部と後端開口部との間の筒体内部の通気を遮断し、栓体前方の筒体内部にインキを収容してなる筆記具が開示されている。該筆記具には、熱変色性の筆跡を摩擦しその際の摩擦熱で筆跡を熱変色させる弾性材料からなる摩擦変色部材としての突出部材(摩擦体)が後方より前方に挿入されている。
【0003】
また、特許文献2には、摩擦体を取り付けた軸筒の後端開口部における軸筒内部と軸筒外部との通気を確実に遮断できる熱変色性筆記具が開示されている。詳細には、摩擦体が、外面に環状の外側シール部を有する前側膨出部と、該前側膨出部の後方に連設される係合凹部と、該係合凹部の後方に連設される後側膨出部とからなり、軸筒に設けられた係合凸部と摩擦体に設けられた係合凹部とを係合させ、後側膨出部を軸筒の後端より後方に突出させ、外側シール部と内側シール部とを気密嵌合させる。これにより、軸筒の後端開口部における軸筒内部と軸筒外部との間の通気を遮断している。
【0004】
【特許文献1】特開2010-6055号公報
【特許文献2】特開2011-79206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開事された技術では、筒体の内面に栓体を圧入固着し、栓体によって前端開口部と後端開口部との間の筒体内部の通気を確実に遮断できるものの、軸筒の後端には栓体と摩擦体の2部品が設けられており、生産性を向上させるために部品点数を減らすことが課題であった。
【0006】
また、特許文献2に開示された技術では、摩擦体の後側膨出部が軸筒の後端開口部内面の係合凸部を、前方から後方に乗り越える際に大きな力が必要となり、容易に組み立てることが困難になる虞がある。また、前方から後方に乗り越える際に大きな力を必要としない寸法設定にした場合には、摩擦体がぐらつき、安定した適切な摩擦ができない虞がある。
【0007】
本発明は、以上のような知見に鑑みてなされたものであり、少ない部品点数で軸筒内部の通気を確実に遮断できる構成を実現し、且つ摩擦体の装着が容易に行え、摩擦の際に摩擦体がぐらつくことがなく安定した適切な摩擦ができる、熱変色性筆記具を提供することである。なお、本発明において、「前」とは、ペン先側を指し、「後」とは、その反対側を指す。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、軸筒と、前記軸筒の前端に設けられるペン先と、前記ペン先と接続され前記軸筒の内部に収容されるインキ吸蔵体と、前記インキ吸蔵体に収容される熱変色性インキと、前記軸筒の後方から着脱自在に螺着される摩擦体とを備え、前記軸筒は、後端の内面に雌ねじ部と、第1の気密部と、が設けられ、前記摩擦体は、前記雌ねじ部に螺合される雄ねじ部と、第2の気密部と、前記熱変色性インキの筆跡を摩擦し、その際に生じる摩擦熱で前記熱変色性インキの筆跡を熱変色可能な摩擦部と、が設けられ、前記第1の気密部と前記第2の気密部によって前記軸筒と前記摩擦体との間の気密を維持するための気密構造が設けられている熱変色性筆記具である。
【0009】
本発明によれば、軸筒の後方から着脱自在に螺着される摩擦体を備え、第1の気密部と第2の気密部によって軸筒と摩擦体との間の気密を維持するための気密構造が設けられている。このため、少ない部品点数で軸筒内部の通気を確実に遮断できる構成を実現し、且つ摩擦体の装着が容易に行え、摩擦の際に摩擦体がぐらつくことがなく安定した適切な摩擦をすることができる。
【0010】
好ましくは、前記摩擦体は、前記摩擦部と、前記摩擦部とは異なる材料からなる前記雄ねじ部及び前記第2の気密部と、が二色成形により一体に形成される。
【0011】
この場合、摩擦部と、摩擦部とは異なる材料からなる雄ねじ部及び第2の気密部と、が各々の部位に適した材料で形成されることで、所望する摩擦性能を得られるとともに、確実な螺合性能及び気密構造を得ることができる。また、摩擦部と、摩擦部とは異なる材料からなる雄ねじ部及び第2の気密部と、が二色成形により一体に形成されることで、摩擦の際に摩擦体がぐらつくことをより防ぐことができる。
【0012】
好ましくは、前記第1の気密部は内向平滑面であり、前記第2の気密部は外向環状突起である。この場合、第1の気密部と第2の気密部は線接触状態となり、外向環状突起の接触部に局所的な力がかかるため確実な気密性能を得るのに好適である。
【0013】
好ましくは、前記摩擦体の外面にスリット又は前記摩擦体の内部に軸方向に連通する貫通孔が設けられている。この場合、摩擦体装着時に軸筒内部の空気を圧縮することがないため、組立性を向上させることができる。
【0014】
好ましくは、前記摩擦体が前記軸筒に螺着された状態で前記摩擦部の前端が前記軸筒の後端よりも前方に位置する。この場合、二色成形の境界部が軸筒の内部に隠れることにより、優れた美観を有する摩擦部を実現することが可能になる。
【0015】
また、好ましくは、前記摩擦体は、前記摩擦部の前端に鍔部を備え、前記摩擦体が前記軸筒に螺着された状態で前記鍔部の前端が前記軸筒の後端に当接する。この場合、軸筒の後端の外径と摩擦部の最大外径(鍔部外径)とを略同じ寸法にできるため、軸筒の後端から摩擦部にかけて略段差のない形状にすることができ、優れた美観を有する摩擦部周辺を実現することできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、少ない部品点数で軸筒内部の通気を確実に遮断できる構成を実現し、且つ摩擦体の装着が容易に行え、摩擦の際に摩擦体がぐらつくことがなく安定した適切な摩擦をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の熱変色性筆記具を示す概略正面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態における熱変色性筆記具の要部拡大縦断面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態における摩擦体の斜視図である。
【
図4】本発明の第2実施形態における熱変色性筆記具の要部拡大縦断面図である。
【
図5】本発明の第2実施形態における摩擦体の斜視図である。
【
図6】本発明の第3実施形態における熱変色性筆記具の要部拡大縦断面図である。
【
図7】本発明の第3実施形態における摩擦体の斜視図である。
【
図8】本発明の第4実施形態における熱変色性筆記具の要部拡大縦断面図である。
【
図9】本発明の第4実施形態における摩擦体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の4つの実施形態について説明する。
【0019】
<第1実施形態>
【0020】
本発明の第1実施形態の熱変色性筆記具1を
図1乃至
図3に示す。本実施形態の熱変色性筆記具1は、
図1に示すように、軸筒3と、該軸筒3の前端に設けられるペン先4と、該ペン先4と接続され軸筒の内部に収容されるインキ吸蔵体5と、該インキ吸蔵体5に収容される熱変色性インキと、軸筒3の後方から着脱自在に螺着される摩擦体2と、軸筒3のペン先4側の外面に着脱自在に被着されるキャップ(不図示)と、を備える。
【0021】
・軸筒
図1に示すように、軸筒3は、筒状の前軸3aと、該前軸3aの後部外面に装着される筒状の後軸3bとを備える。前軸3a及び後軸3bは合成樹脂(例えばポリプロピレン等)の成形体から得られる。前軸3aの後部外面に後軸3bが装着される構造とは、例えば、前軸3a外面の突起と後軸3b内面の突起が乗り越える乗り越え嵌合、前軸3a外面の凹部と後軸3b内面の凸部が嵌合する凹凸嵌合、前軸3a外面と後軸3b内面が圧接する圧入嵌合、前軸3a外面のおねじ部と後軸3b内面のめねじ部が螺合するねじ嵌合等が挙げられる。
【0022】
・前軸
図1に示すように、前軸3aは、ペン先4が固着される先細状部と、該先細状部より後方に一体に連設される円筒状の前側筒部と、該前側筒部の後端より径方向外方に突出するように一体に連設される円板状の鍔部と、該鍔部より後方に一体に連設される円筒状の後側筒部(不図示)と、を備える。
【0023】
前軸3aの前端部には前方に向かうに従い縮径する先細状部が形成される。前軸3aの先細状部にはペン先取付孔が軸方向に貫設される。ペン先取付孔にペン先4が圧入固着される。前軸3a内部には、インキ吸蔵体5が収容され、インキ吸蔵体5の前端部とペン先4の後端部とが接続される。
【0024】
・後軸
図1に示すように、後軸3bは後方に向かうに従い縮径する外面を有する。後軸3bは両端が開口され、軸方向に貫通する内孔を有する。後軸3bの後端開口部に摩擦体2が挿着される。後軸3bの前部内面と前軸3aの後側筒部の外面とが気密嵌合される。後軸3bの外面には転写印刷により加飾部が設けられる。
【0025】
図2に示すように、軸筒3(後軸3b)は、後端の内面に雌ねじ部31と、第1の気密部と、が設けられる。該雌ねじ部31により摩擦体2を螺着することができる。また、第1の気密部は内向平滑面であり、第1の気密部と摩擦体2の第2の気密部23によって軸筒3と摩擦体2との間の気密を維持するための気密構造が設けられている。
【0026】
また、
図2に示すように、軸筒3(後軸3b)は、後述する摩擦体2の当接部24と当接する被当接部33を備える。本実施形態においては、被当接部33は雌ねじ部31の前方且つ第1の気密部の後方に設けられる、軸方向に直交する平面である。
【0027】
・ペン先
ペン先4は、合成樹脂(例えばポリエステル)繊維束の樹脂加工体である。ペン先4は、前端部がチゼル状(ノミ状)に形成される。ペン先4の後端部は後方に向かうに従い縮径するテーパ面を有する。ペン先4の後端部はインキ吸蔵体5の前端部に突き刺し接続される。
【0028】
ペン先4は、これ以外にも、例えば、前端にボールが回転可能に抱持されるボールペンチップ、連続気孔を有する合成樹脂の多孔質体より得られるペン体、軸方向のインキ導出通路を有する合成樹脂の押出成形により得られるプラスチップペン体、または毛筆ペン体等が挙げられる。また、ペン先4とインキ吸蔵体5との間にインキ誘導部材を介在させてもよいし、あるいは、ペン先4とインキ吸蔵体5を直接接続してもよい。
【0029】
・インキ吸蔵体
インキ吸蔵体5は、合成樹脂製繊維束(例えばポリエステル繊維束)と、その外周を包囲する円筒状の外皮とからなる。外皮は合成樹脂製筒体(例えば、ポリプロピレン樹脂の押出成形体)よりなる。本実施形態において、インキ吸蔵体5には熱変色性インキが含浸保持される。
【0030】
・インキ
本実施形態において、インキ吸蔵体5に収容されているインキは熱変色性インキである。熱変色性インキは、可逆熱変色性インキであることが好ましい。可逆熱変色性インキは、発色状態から加熱により消色する加熱消色型、発色状態または消色状態を互変的に特定温度域で記憶保持する色彩記憶保持型、または、消色状態から加熱により発色し、発色状態からの冷却により消色状態に復する加熱発色型等、種々のタイプを単独または併用して構成することができる。
【0031】
可逆熱変色性インキに含有される色材としては、例えば、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、及び、(ハ)前記両者が化学的に結びつく反応(呈色反応)の生起温度を決める反応媒体、の必須三成分を少なくとも含む可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させた可逆熱変色性顔料が好適に用いられる。
【0032】
・摩擦体
図2及び
図3に示すように、本実施形態の摩擦体2は、円筒状の小径部と、該小径部の後方に一体に連設される凸曲面状の摩擦部21と、該小径部上に形成される雄ねじ部22と、該雄ねじ部22の前方に形成される第2の気密部23と、軸筒3の被当接部33と当接する当接部24と、軸方向に連通する通気部と、を備える。
【0033】
雄ねじ部22は、後軸3bの雌ねじ部31に螺合され、これにより摩擦体2が軸筒3に着脱自在に装着される。また、第2の気密部23は、径方向外方に突出する外向環状突起である。前述の内向平滑面からなる第1の気密部32と、該外向環状突起である第2の気密部23によって軸筒3と摩擦体2との間の気密を維持するための気密構造が設けられている。
【0034】
また、第2の気密部23は外向平滑面であってもよい。この場合、第1の気密部32は、内向環状突起であることが好ましい。また、第2の気密部23が外向平滑面である場合、第1の気密部32が内向平滑面であってもよい。
【0035】
また、本実施形態において、当接部24は雄ねじ部22の前方且つ第2の気密部23の後方に設けられる、軸方向に直交する平面である。
【0036】
摩擦部21は、熱変色性インキの筆跡を摩擦し、その際に生じる摩擦熱で熱変色性インキの筆跡を熱変色可能である。摩擦部21は、後軸3bの後端より後方に突出される。後軸3bの後端より後方に突出する部分(摩擦部21)の最大外径は後軸3bの後端の外径以下に設定される。
【0037】
本実施の形態において、摩擦体2を構成する材料は、弾性を有する合成樹脂(ゴム、エラストマー)が好ましく、例えば、シリコーン樹脂、SBS樹脂(スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体)、SEBS樹脂(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体)、フッ素系樹脂、クロロプレン樹脂、ニトリル樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)又は2種以上のゴム弾性材料の混合物、及び、ゴム弾性材料と合成樹脂との混合物等が挙げられる。摩擦体2を構成する弾性を有する合成樹脂は、高摩耗性の弾性材料(例えば、消しゴム等)ではなく、摩擦時に摩耗カス(消しカス)が殆ど生じない低摩耗性の弾性材料である。摩擦体2は筆記具と別体の任意形状の部材である摩擦具とを組み合わせて筆記具セットを得ることもできるが、筆記具に摩擦体2を設けることにより、携帯性に優れたものとなる。
【0038】
摩擦体2は、ポリプロピレン樹脂及びスチレン系熱可塑性エラストマーの混合物、またはポリプロピレン樹脂及びポリプロピレン系熱可塑性エラストマーの混合物から形成されてもよい。混合物の配合比率がそれぞれ重量比で1:1~1:4であり、研磨剤、可塑剤、充填剤を含有せず、JIS K6251に規定されたデュロメータ硬度タイプAが70~100となる材質からなり、JIS S 6050-2002に規定する鉛筆描線の消し能力(消字率)が70%以下のものである可塑剤を含有しない低摩耗性の弾性材料から形成される。それによって摩擦体2は、擦過時に消しカスが生じにくく、熱変色性も優れているので有効である。
【0039】
摩擦体2は、摩擦時に摩耗カス(消しカス)が殆ど生じない低摩耗性の弾性材料から形成されるが、摩擦する面の種類若しくは状態又は摩擦の方法によっては、少しずつ摩耗又は破損する可能性がある。摩耗又は破損した摩擦体2では適切な摩擦ができず、熱変色性インキの筆跡を摩擦し、その際に生じる摩擦熱で熱変色性インキの筆跡を熱変色させることが困難となるおそれがある。
【0040】
また、摩擦体2は、摩擦する面に鉛筆等で筆記された筆跡があった場合又は摩擦する面が汚れていた場合は、鉛筆等の芯のカス又は汚れが摩擦体2に転写され、摩擦体2が汚損する可能性がある。汚損した摩擦体2では、別の紙面等を摩擦した際に摩擦体2に付着した汚れ等を紙面に転写してしまい、紙面を汚してしまうおそれがある。
【0041】
摩擦体2が摩耗若しくは破損又は汚損等した場合に、摩耗若しくは破損又は汚損等した摩擦体2を新しい摩擦体2に交換することで再度適切な摩擦をすることが可能となる。本実施形態の摩擦体2は螺合により着脱自在に装着されているため、容易に新しい摩擦体2に交換することが可能である。
【0042】
本実施形態の摩擦体2は、摩擦部21の外面に二面幅部やローレット部よりなる回転操作部が形成されてもよい。回転操作部を回転操作することにより、軸筒3と摩擦体2との螺合状態が容易に解除され、軸筒3と摩擦体2とのより容易な着脱が可能になる。回転操作部とは、例えば、スパナ掛け可能な6角形や8角形等の二面幅部、又はローレット部等を挙げることができる。
【0043】
また、
図2及び
図3に示すように、本実施形態において、通気部として摩擦体2の外面に軸方向に貫通するスリットが設けられている。なお、通気部25は、スリット以外にも、摩擦体2の内部に軸方向に連通する貫通孔でもよい。
【0044】
図2及び
図3に示すように、本実施形態の摩擦体2は、摩擦部21と、摩擦部21とは異なる材料からなる小径部(雄ねじ部22及び第2の気密部23)と、が二色成形により一体に形成される。また、本実施形態において、摩擦体2が軸筒3に螺着された状態で摩擦部21の前端が軸筒3の後端よりも前方に位置する。
【0045】
また、本実施形態において、摩擦体2は、前方に開口する内孔を軸心に備える。これにより、小径部(雄ねじ部22及び第2の気密部23)の肉厚を小さくして、成形上のヒケにより形状が不安定になることを防ぐことができる。
【0046】
以上のような構成の熱変色性筆記具1は、以下のように作用する。
【0047】
本実施形態の熱変色性筆記具1によれば、軸筒3の後方から摩擦体2が螺着されることで、容易且つ強固に摩擦体2を軸筒3に装着でき、摩擦の際に摩擦体2がぐらつくことがなく安定した適切な摩擦をすることができる。
【0048】
また、第1の気密部32と第2の気密部23によって軸筒3と摩擦体2との間の気密性能を得られる。すなわち、軸筒3内と軸筒3外との間の気密性能を得るための部品を別途必要とせず、少ない部品点数で熱変色性筆記具1を構成することができる。
【0049】
また、第1の気密部32は内向平滑面であり、第2の気密部23は外向環状突起であることで、第1の気密部32と第2の気密部23は線接触状態となり、外向環状突起の接触部に局所的な力がかかるため確実な気密性能を得るのに好適である。
【0050】
また、摩擦体2は、摩擦部21と、摩擦部21とは異なる材料からなる小径部(雄ねじ部22及び第2の気密部23)と、が二色成形により一体に形成される。これにより、摩擦部21と、摩擦部21とは異なる材料からなる小径部(雄ねじ部22及び第2の気密部23)と、が各々の部位に適した材料で形成されることで、所望する摩擦性能を得られるとともに、確実な螺合性能及び気密構造を得ることができる。また、摩擦体2の剛性を上げる効果もあり、摩擦の際に摩擦体2がぐらつくことがなく、より安定した適切な摩擦をすることができる。
【0051】
各々の部位に適した材料とは、摩擦体2であれば前述した軟質材料である合成樹脂(ゴム、エラストマー)が特に好ましい。また、小径部(雄ねじ部22及び第2の気密部23)であれば、硬質材料である合成樹脂(特にポリプロピレン)から形成されることが、より確実な気密を維持するための気密構造を得る上で好ましい。
【0052】
また、摩擦体2が軸筒3に螺着された状態で摩擦部21の前端が軸筒3の後端よりも前方に位置することで、二色成形の境界部が軸筒3の内部に隠れる。そのため、優れた美観を有する摩擦部21を実現することできる。
【0053】
また、摩擦体2を装着する際に、被当接部33と当接部24とが当接することにより、摩擦体2の螺合時のストッパとして機能し、緩みの無い螺合が可能となる。また、摩擦体2の軸筒3からの突出量が常に一定となり、容易に安定した組み立てが可能となる。
【0054】
また、通気部25として摩擦体2の外面に軸方向に貫通するスリットが設けられている。これにより、摩擦体2を装着する際に、通気部25を通して軸筒3内部の空気が外部に逃がすことができる。したがって、軸筒3内部の空気が圧縮されることがなく、組立性を向上させることができる。
【0055】
また、これにより、該スリットを回転操作部として用いることも可能であり、前述の通り、軸筒3と摩擦体2との螺合状態が容易に解除され、軸筒3と摩擦体2とのより容易な着脱が可能になる。
【0056】
以上の通り、本実施形態の熱変色性筆記具1によれば、少ない部品点数で軸筒3内部の通気を確実に遮断できる構成を実現し、且つ摩擦体2の装着が容易に行え、摩擦の際に摩擦体2がぐらつくことがなく安定した適切な摩擦をすることができる。
【0057】
<第2実施形態>
図4及び
図5に、本発明の第2実施形態を示す。これは、第1実施形態の変形例であり、第1実施形態と異なる点は、当接部24及び被当接部33の形状である。他の構成及び作用効果は第1実施形態と同じであるため、その説明は省略する。
【0058】
図4及び
図5に示すように、本実施形態において、軸筒3の被当接部33は雌ねじ部31の前方且つ第1の気密部32の後方に設けられ、軸方向前方に向かって先細状の切頭円錐面である。また、摩擦体2の当接部24は、雄ねじ部22の前方且つ第2の気密部23の後方に設けられる、軸方向前方に向かって先細状の切頭円錐面である。
【0059】
これにより、螺合していくことに伴い当接部24及び被当接部33の切頭円錐面が互いに食い込み、より強固に摩擦体2を螺合することができる。また、摩擦の際に摩擦体2がぐらつくことがなく、より安定した適切な摩擦をすることができる。
【0060】
また、螺合していくことに伴い当接部24及び被当接部33の切頭円錐面が互いに食い込んでいくことで、当接部24と被当接部33との間に気密構造を得ることができる。すなわち、第1の気密部32と第2の気密部23との間の気密構造に加えて、当接部24と被当接部33との間にも気密構造を備えることができるため、より確実な気密性能を得るのに好適である。
【0061】
<第3実施形態>
図6及び
図7に、本発明の第3実施形態を示す。これは、第1実施形態の変形例であり、第1実施形態と異なる点は、当接部24及び被当接部33の位置である。他の構成及び作用効果は第1実施形態と同じであるため、その説明は省略する。
【0062】
図6及び
図7に示すように、本実施形態において、軸筒3の被当接部33は軸筒3の後端面である。また、摩擦体2の当接部24は、摩擦部21の前方且つ雄ねじ部22の後方に設けられる、軸方向に直交する平面である。詳細には、雄ねじ部22の後方に鍔部が設けられ、該鍔部の前端面が本実施形態における当接部24である。
【0063】
これにより、軸筒3後端の外径と摩擦部21の最大外径(鍔部外径)とを略同じ寸法にできるため、軸筒3後端から摩擦部21にかけて略段差のない形状にすることができ、優れた美観を有する摩擦部周辺を実現することできる。
【0064】
<第4実施形態>
図8及び
図9に、本発明の第4実施形態を示す。これは、第2実施形態の変形例であり、第2実施形態と異なる点は3点である。1点目は、軸筒3内と軸筒3外との間の気密性能を得るための部品(栓体6)を備える点である。2点目は、摩擦体2に第2の気密部23を備えない点である。3点目は、通気部25の形態である。他の構成及び作用効果は第2実施形態と同じであるため、その説明は省略する。
【0065】
本実施形態の熱変色性筆記具1は、軸筒3内と軸筒3外との間の気密性能を得るための栓体6を軸筒3内面に備える。栓体6の外面と軸筒3内面に各々気密部を備えることで気密構造を得ることができる。したがって、摩擦体2に気密部(第2の気密部23)が不要である。
【0066】
詳細には、
図8に示すように、後軸3bの後方部内面に、環状シール部と、環状シール部の後方に位置する係止壁部とが一体に形成される。環状シール部と栓体6の外面とが径方向に気密嵌合されるとともに係止壁部と栓体6の後端とが軸方向に当接される。
【0067】
ただし、栓体6を備える本実施形態においても、摩擦体2に第2の気密部23を備えてもよい。これにより、より確実な気密性能を得ることができる。また、
図8に示すように、栓体6の前面は中詰が当接する中詰当接部としての機能を有している。
【0068】
また、本実施形態において、通気部25は、摩擦体2の軸心に位置する貫通孔である。これに伴う作用効果は、前述の実施形態1乃至3と同様である。なお、本実施形態においても通気部は、摩擦体2の外面に軸方向に貫通するスリットでもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 熱変色性筆記具
2 摩擦体
21 摩擦部
22 雄ねじ部
23 第2の気密部
24 当接部
25 通気部
3 軸筒
3a 前軸
3b 後軸
31 雌ねじ部
32 第1の気密部
33 被当接部
4 ペン先
5 インキ吸蔵体
6 栓体