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特開2024-94079吸遮音材、及び吸遮音材の吸音率がピークを示す周波数の制御方法
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  • 特開-吸遮音材、及び吸遮音材の吸音率がピークを示す周波数の制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094079
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】吸遮音材、及び吸遮音材の吸音率がピークを示す周波数の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/162 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
G10K11/162
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210821
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】川合 洋平
【テーマコード(参考)】
5D061
【Fターム(参考)】
5D061AA09
5D061AA26
5D061DD11
(57)【要約】
【課題】ポリウレタンフォームが用いられた吸遮音材の吸音ピーク周波数を制御し得る技術を提供すること
【解決手段】本技術では、ポリウレタンフォームが用いられた吸遮音材であって、[前記ポリウレタンフォームの外側から2mmの第1部分の流れ抵抗値]-[前記ポリウレタンフォームの前記第1部分に連続する厚さ2mmの第2部分の流れ抵抗値]≧3.0×10Ns/mである、吸遮音材を提供する。本技術では、また、前記ポリウレタンフォームの前記第1部分に連続する厚さ2mmの第2部分の流れ抵抗値と、の差を変動させることで、前記吸遮音材の吸音率がピークを示す周波数を制御する、制御方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンフォームが用いられた吸遮音材であって、
[前記ポリウレタンフォームの外側から2mmの第1部分の流れ抵抗値]-[前記ポリウレタンフォームの前記第1部分に連続する厚さ2mmの第2部分の流れ抵抗値]≧3.0×10Ns/mである、吸遮音材。
【請求項2】
[前記ポリウレタンフォームの外側から2mmの第1部分の密度]-[前記ポリウレタンフォームの前記第1部分に連続する厚さ2mmの第2部分の密度]≦15.0kg/mである、請求項1に記載の吸遮音材。
【請求項3】
前記ポリウレタンフォームの吸音率がピークを示す周波数が2000Hz以下である、請求項1に記載の吸遮音材。
【請求項4】
前記ポリウレタンフォームの周波数1000Hzにおける吸音率が、0.70以上である、請求項1に記載の吸遮音材。
【請求項5】
ポリウレタンフォームが用いられた吸遮音材の吸音率がピークを示す周波数を制御する方法であって、
前記ポリウレタンフォームの外側から2mmの第1部分の流れ抵抗値と、
前記ポリウレタンフォームの前記第1部分に連続する厚さ2mmの第2部分の流れ抵抗値と、の差を変動させることで、前記吸遮音材の吸音率がピークを示す周波数を制御する、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、吸遮音材に関する。より詳しくは、吸遮音材、及び吸遮音材の吸音ピーク周波数制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築分野や、車両・航空機等の運搬分野において、ポリウレタンフォームが用いられた吸遮音材が広く使用されている。例えば、車両分野においては、エンジン等から発生する騒音を低減させるために、吸遮音材が用いられている。近年では、吸遮音材は、その用途等に合わせて様々な技術開発が進められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、音源の外表面の一部または全部に配置されるポリウレタンフォームからなる吸遮音材であって、音源の外表面と対向するポリウレタンフォームの一側表面は、クローズドセル状態のスキン層からなり、ポリウレタンフォームの他側表面は、少なくとも一部がオープンセル状態のスキン層からなり、音源の外表面とポリウレタンフォームの一側表面のクローズドセル状態のスキン層の少なくとも端部の外周縁が密着することにより、音源の外表面とポリウレタンフォームの一側表面のクローズドセル状態のスキン層との間に密閉空間を形成することで、音源側からの音及び音源側とは反対側からの音の何れについても良好な吸音・遮音効果を発揮する技術が開示されている。
【0004】
特許文献2には、音源の外表面と対向するポリウレタンフォームの一側表面のスキン層の少なくとも一部は、塗膜部を有するクローズドセル状態のスキン層からなり、他側表面のスキン層の少なくとも一部は、オープンセル状態のスキン層からなり、音源の外表面と、一側表面の塗膜部を有するクローズドセル状態のスキン層の少なくとも端部の外周縁が密着することにより、音源の外表面と塗膜部を有するクローズドセル状態のスキン層との間を密閉状態にすることで、製造設備費を低減でき、音源の外表面が複雑な形状であっても追従性があり、かつ音源の外表面にオイルが付着してもポリウレタンフォームの内部にオイルが浸透し難く、吸音性及び遮音性を良好にする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-13007号公報
【特許文献2】特開2020-20855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、吸遮音材の吸音性は、用いるポリウレタンフォームの通気量で制御されていた。しかしながら、本願発明者は、後述する実施例で示すように、ポリウレタンフォームの通気量が同一であっても、吸音率がピークを示す周波数が変化することを見出した。即ち、吸遮音材に用いるポリウレタンフォームの通気量の制御だけでは、吸遮音材の吸音率がピークを示す周波数の制御までは行うことが難しいことを見出した。
【0007】
そこで、本技術では、ポリウレタンフォームが用いられた吸遮音材の吸音率がピークを示す周波数を制御し得る技術を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者らは、ポリウレタンフォームが用いられた吸遮音材の吸音率がピークを示す周波数を制御するために、鋭意研究を行った結果、ポリウレタンフォームの表面部と内部の流れ抵抗の差を変動させることで、吸遮音材の吸音率がピークを示す周波数を制御できることを見出し、本技術を完成させるに至った。
即ち、本技術では、まず、ポリウレタンフォームが用いられた吸遮音材であって、
[前記ポリウレタンフォームの外側から2mmの第1部分の流れ抵抗値]-[前記ポリウレタンフォームの前記第1部分に連続する厚さ2mmの第2部分の流れ抵抗値]≧3.0×10Ns/mである、吸遮音材を提供する。
本技術に係る吸遮音材は、[前記ポリウレタンフォームの外側から2mmの第1部分の密度]-[前記ポリウレタンフォームの前記第1部分に連続する厚さ2mmの第2部分の密度]≦15.0kg/mとすることができる。
本技術に係る吸遮音材には、吸音率がピークを示す周波数が2000Hz以下のポリウレタンフォームを用いることができる。
また、本技術に係る吸遮音材には、周波数1000Hzにおける吸音率が0.7以上のポリウレタンフォームを用いることができる。
【0009】
本技術では、次に、ポリウレタンフォームが用いられた吸遮音材の吸音率がピークを示す周波数を制御する方法であって、
前記ポリウレタンフォームの外側から2mmの第1部分の流れ抵抗値と、
前記ポリウレタンフォームの前記第1部分に連続する厚さ2mmの第2部分の流れ抵抗値と、の差を変動させることで、前記吸遮音材の吸音率がピークを示す周波数を制御する、制御方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例における吸音率の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本技術を実施するための好適な形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、いずれの実施形態も組み合わせることが可能である。また、これらにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0012】
1.吸遮音材
本技術に係る吸遮音材は、ポリウレタンフォームを用いる。その他の構成は、用いる用途等に合わせて自由に設計することができる。以下、本技術に係る吸遮音材に用いるポリウレタンフォームについて、詳細に説明する。
【0013】
(1)ポリウレタンフォーム
本技術に用いるポリウレタンフォームは、その表面部と内部の流れ抵抗の差を変動させることで、吸遮音材の吸音率がピークを示す周波数(以下「ピーク周波数」ともいう)が制御された構成である。具体的には、ポリウレタンフォームの表面部と内部の流れ抵抗の差を特定の値以上に設定することで、吸音率がピークを示す周波数が低周波域へ制御されている。即ち、本技術に係る吸遮音材は、用いるポリウレタンフォームの表面部と内部の流れ抵抗の差を特定の値以上に設定することで、低周波域における吸音率が向上した吸遮音材である。
【0014】
なお、本技術において、流れ抵抗とは、ISO 9053に基づく方法に準拠して測定された値である。
【0015】
より具体的には、本技術に用いるポリウレタンフォームは、[外側から2mmの第1部分の流れ抵抗値]-[前記第1部分に連続する厚さ2mmの第2部分の流れ抵抗値]≧3.0×10Ns/mであることを特徴とする。
【0016】
本技術に用いるポリウレタンフォームの[外側から2mmの第1部分の流れ抵抗値]-[前記第1部分に連続する厚さ2mmの第2部分の流れ抵抗値]の上限は、目的のピーク周波数に合わせて、自由に設定することができるが、例えば5.0×10Ns/m以下、好ましくは4.0×10Ns/m以下、より好ましくは3.0×10Ns/m以下である。
【0017】
本技術に用いるポリウレタンフォームの[外側から2mmの第1部分の流れ抵抗値]-[前記第1部分に連続する厚さ2mmの第2部分の流れ抵抗値]の下限は、3.0×10Ns/m以上であれば、目的のピーク周波数に合わせて、自由に設定することができるが、好ましくは4.0×10Ns/m以上、より好ましくは5.0×10Ns/m以上、更に好ましくは6.0×10Ns/m以上である。
【0018】
本技術に用いるポリウレタンフォームの密度は、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、自由に設定できるが、本願発明者は、ポリウレタンフォームの表面部と内部の密度に差を設けなくても、流れ抵抗に差を設けることで、吸音率がピークを示す周波数を制御できることに成功した。
【0019】
本技術では、ポリウレタンフォームの通気性が同程度であっても、表面部と内部の密度に問わず、流れ抵抗に差を設けることで、吸音率がピークを示す周波数を制御できる。即ち、本技術に用いるポリウレタンフォームは、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、その表面部の密度も内部の密度も特に限定されない。
【0020】
具体的には、本技術に用いるポリウレタンフォームの[外側から2mmの第1部分の密度]-[前記第1部分に連続する厚さ2mmの第2部分の密度]は、例えば15.0kg/m以下とすることができ、好ましくは12.0kg/m以下、より好ましくは9.0kg/m以下、更に好ましくは6.0kg/m以下とすることができる。
【0021】
なお、本技術において、ポリウレタンフォームの密度は、JIS K7222:2005/ISO 845:1988に基づく方法に準拠して測定した値である。
【0022】
本技術に用いるポリウレタンフォームの吸音率は、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、自由に制御することができるが、ピーク周波数を、例えば2000Hz以下、好ましくは1900Hz以下、より好ましくは1800Hz以下、更に好ましくは1700Hz以下に制御することができる。
【0023】
また、本技術に用いるポリウレタンフォームの周波数1000Hzにおける吸音率は、例えば0.70以上、好ましくは0.75以上、より好ましくは0.80以上に制御することができる。
【0024】
本技術に用いるポリウレタンフォームの周波数800Hzにおける吸音率は、例えば0.50以上、好ましくは0.54以上、より好ましくは0.57以上に制御することができる。
【0025】
本技術に用いるポリウレタンフォームの周波数1250Hzにおける吸音率は、例えば0.75以上、好ましくは0.80以上、より好ましくは0.85以上に制御することができる。
【0026】
本技術に用いるポリウレタンフォームの通気量は、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができるが、本願発明者は、ポリウレタンフォームの通気量が同程度であっても、表面部と内部の流れ抵抗に差を設けることで、吸音率がピークを示す周波数を制御できることに成功した。
【0027】
従来、ポリウレタンフォームの通気量を制御することで、吸音性の制御を行う技術もあったが、本技術では、ポリウレタンフォームの通気量を制御しなくても、表面部と内部の流れ抵抗に差を設けることで、吸音率がピークを示す周波数を制御できる。即ち、本技術に用いるポリウレタンフォームの通気量は、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、自由に設定することができる。
【0028】
具体的には、本技術では、ポリウレタンフォームの通気量の下限値として、例えば3.0cm/cm/s以上、好ましくは3.5cm/cm/s以上、より好ましくは4.0cm/cm/s以上に設定することができる。
【0029】
本技術に用いるポリウレタンフォームの通気量の上限値としては、例えば30.0cm/cm/s以下、好ましくは20.0cm/cm/s以下、より好ましくは10.0cm/cm/s以下に設定することができる。
【0030】
なお、本技術において、ポリウレタンフォームの通気量は、JIS K6400に基づく方法に準拠して測定した値である。
【0031】
本技術に用いるポリウレタンフォームの硬度は、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術に用いるポリウレタンフォームの厚み10mmにおけるアスカーC硬度の下限値としては、例えば18以上、好ましくは20以上、より好ましくは22以上である。
【0032】
本技術に用いるポリウレタンフォームの厚み10mmにおけるアスカーC硬度の上限値としては、例えば50以下、好ましくは45以下、より好ましくは40以下である。
【0033】
(2)ポリウレタンフォーム製造用の組成物
本技術に用いるポリウレタンフォームは、一般的なポリウレタンフォームの原料を含有するポリウレタンフォーム製造用の組成物から得られる。より具体的には、ポリウレタンフォーム製造用の組成物には、ポリオール、イソシアネート、発泡剤、架橋剤、触媒、整泡剤等を含有させることができる。以下、各成分について、詳細に説明する。
【0034】
(2-1)ポリオール
本技術に用いることができるポリオールとしては、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、ポリウレタンフォームの製造に用いることができるポリオールを、1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。例えば、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルエーテルポリオール、ポリマーポリオール等を挙げることができる。
【0035】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の脂肪族ジカルボン酸;リシノレイン酸等の脂肪族カルボン酸;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の脂環族ジカルボン酸;又はこれらの酸エステルもしくは酸無水物と、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール等、もしくは、これらの混合物との脱水縮合反応で得られるポリプロピレングリコールなどのポリエステルポリオール;ε-カプロラクトン、メチルバレロラクトン等のラクトンモノマーの開環重合で得られるポリラクトンポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等を挙げることができる。また、これらのほかに、ポリエステルポリオールとしては、例えば、天然由来のエステル基を有するポリオールが挙げられる。
【0036】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ジエチレングリコール等の多価アルコールの少なくとも1種と、ジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等とを反応させて得られるものを挙げることができる。
【0037】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン等の環状エーテルをそれぞれ重合させて得られるポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等、及び、これらのコポリエーテルが挙げられる。また、グリセリンやトリメチロールエタン等の多価アルコールを用い、上記の環状エーテルを重合させて得ることもできる。
【0038】
ポリエステルエーテルポリオールとしては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の脂環族ジカルボン酸;又はこれらの酸エステルもしくは酸無水物と、ジエチレングリコール、もしくはプロピレンオキシド付加物等のグリコール等、又は、これらの混合物との脱水縮合反応で得られるものを挙げることができる。
【0039】
ポリマーポリオールとは、ポリオール中でエチレン性不飽和モノマーを重合させて得られるもの、又はポリオール中にエチレン性不飽和モノマーの重合物を乳化分散させて得られるもの等である。具体的には、例えば、ポリオールにアクリロニトリル、スチレン等をグラフト重合させたものや、ポリオール中にポリスチレンやポリアクリロニトリルを分散させたもの等が挙げられる。
【0040】
本技術では、環境に考慮して、生分解性ポリオールを用いることもできる。本技術に用いることができる生分解性ポリオールとしては、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、ポリウレタンフォームの製造に用いることができる生分解性ポリオールを、1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。例えば、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)、セルロース、酢酸セルロース、キトサン、澱粉、加工澱粉、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、ヒマシ油系ポリオール等の水酸基を有する天然由来エステル等が挙げられる。
【0041】
(2-2)イソシアネート
本技術に用いることができるイソシアネートは、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、ポリウレタンフォームの製造に用いることができるイソシアネートを、1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。例えば、芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、及びこれらを変性して得られる変性ポリイソシアネートから1種以上を自由に組み合わせて用いることができる。
【0042】
本技術に用いることができる芳香族イソシアネートとしては、例えば、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメリックMDI(クルードMDI)、フェニレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0043】
脂肪族イソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキサメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0044】
本技術に用いるイソシアネートの量は、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、組成物中のイソシアネートの下限値は、ポリオール100質量部に対して、例えば40質量部以上、好ましくは45質量部以上、より好ましくは50質量部以上、更に好ましくは55質量部以上、より更に好ましくは60質量部以上である。組成物中のイソシアネートの含有量の下限値を、この範囲とすることにより、製造するポリウレタンフォームの強度を向上させることができる。
【0045】
本技術では、組成物中のイソシアネートの含有量の上限値は、ポリオール100質量部に対して、例えば90質量部以下、好ましくは85質量部以下、より好ましくは80質量部以下である。組成物中のイソシアネートの含有量の上限値を、この範囲とすることにより、ポリウレタンフォームの硬度が硬くなりすぎて脆くなり柔軟性が損なわれることを防止し、ポリウレタンフォームの弾性を向上させることができる。
【0046】
本技術に用いるポリウレタンフォームのイソシアネートインデックスも、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、イソシアネートインデックスの下限値は、例えば80以上、好ましくは90以上、より好ましくは95以上である。ポリウレタンフォームのイソシアネートインデックスの下限値を、この範囲とすることにより、製造するポリウレタンフォームの強度を向上させることができる。
【0047】
本技術では、イソシアネートインデックスの上限値は、例えば130以下、好ましくは125以下、より好ましくは120以下である。ポリウレタンフォームのイソシアネートインデックスの含有量の上限値を、この範囲とすることにより、ポリウレタンフォームの硬度が硬くなりすぎて脆くなり柔軟性が損なわれることを防止し、ポリウレタンフォームの弾性を向上させることができる。
【0048】
なお、本技術において、イソシアネートインデックスは、[(ポリウレタンフォーム製造用組成物中のイソシアネート当量/ポリウレタンフォーム製造用組成物中の活性水素の当量)×100]で算出した値である。
【0049】
(2-3)発泡剤
本技術に用いるポリウレタンフォームを製造には、発泡剤を用いることができる。本技術に用いることができる発泡剤としては、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、ポリウレタンフォームの製造に用いることができる発泡剤を、1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。
【0050】
発泡剤としては、例えば、水、炭化水素、ハロゲン系化合物等を挙げることができる。炭化水素としては、シクロペンタン、イソペンタン、ノルマルペンタン等を挙げることができる。前記ハロゲン系化合物としては、塩化メチレン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ノナフルオロブチルメチルエーテル、ノナフルオロブチルエチルエーテル、ペンタフルオロエチルメチルエーテル、ヘプタフルオロイソプロピルメチルエーテル等を挙げることができる。本技術では、これらの中でも発泡剤として水を用いることが好ましい。水は、イオン交換水、水道水、蒸留水等の何れでもよい。
【0051】
本技術に用いるポリウレタンフォームの製造に用いる組成物中の発泡剤の量は、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、組成物中の発泡剤の含有量の下限値は、ポリオール100質量部に対して、例えば、1.0質量部以上、好ましくは3.0質量部以上、より好ましくは3.4質量部以上である。組成物中の発泡剤の含有量の下限値を、この範囲とすることにより、泡化反応が促進されて、硬さが上がり、クラッシングにおいて、ポリウレタンフォームの表面部と内部で潰れ方に変化が生じると推定される。具体的には、ポリウレタンフォームの表面部が潰れにくく、内部が潰れやすくなると推定される。その結果、表面部と内部で流れ抵抗に差があるポリウレタンフォームを製造することができる。
【0052】
本技術では、組成物中の発泡剤の含有量の上限値は、ポリオール100質量部に対して、例えば、10質量部以下、好ましくは8質量部以下、より好ましくは6質量部以下である。組成物中の発泡剤の含有量の上限値を、この範囲とすることにより、発泡過剰による形成不良を抑制することができ、また、適正なポリウレタンフォーム密度、物性を得ることができる。
【0053】
本技術では、前記イソシアネートに対する発泡剤の量を、「発泡剤/NCO基の部数比」として、例えば1.6×10-3以上、好ましくは1.7×10-3以上、より好ましくは1.8×10-3以上に設定することができる。ここで「発泡剤/NCO基の部数比」とは、発泡剤の部数/(イソシアネートの部数×NCO%(NCO基としての部数))のことである。発泡剤/NCO基の部数比をこの範囲とすることにより、泡化反応が促進されて、硬さが上がり、クラッシングにおいて、ポリウレタンフォームの表面部と内部で潰れ方に変化が生じると推定される。具体的には、ポリウレタンフォームの表面部が潰れにくく、内部が潰れやすくなると推定される。その結果、表面部と内部で流れ抵抗に差があるポリウレタンフォームを製造することができる。
【0054】
なお、本技術では、発泡剤/NCO基の部数比の上限値は、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、自由に設定することができるが、例えば3.0×10-3以下、好ましくは2.5×10-3以下、より好ましくは2.3×10-3以下に設定することができる。発泡剤/NCO基の部数比の上限値を、この範囲とすることにより、発泡過剰による形成不良を抑制することができ、また、適正なポリウレタンフォーム密度、物性を得ることができる。
【0055】
(2-4)架橋剤
本技術に用いるポリウレタンフォームの製造には、架橋剤を用いることができる。本技術に用いることができる架橋剤としては、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、ポリウレタンフォームの製造に用いることができる架橋剤を、1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。
【0056】
架橋剤としては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,4-ブタントリオール、2-メチル-2,3,4-ブタントリオール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ペンタエリスリトール等を挙げることができる。
【0057】
本技術に用いるポリウレタンフォームの製造に用いる組成物中の架橋剤の量は、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、組成物中の架橋剤の含有量の下限値は、ポリオール100質量部に対して、例えば1.0質量部以上、好ましくは2.0質量部以上、より好ましくは2.3質量部以上である。組成物中の架橋剤の含有量の下限値を、この範囲とすることにより、樹脂化反応が促進されて、硬さが上がり、クラッシングにおいて、ポリウレタンフォームの表面部と内部で潰れ方に変化が生じると推定される。具体的には、ポリウレタンフォームの表面部が潰れにくく、内部が潰れやすくなると推定される。その結果、表面部と内部で流れ抵抗に差があるポリウレタンフォームを製造することができる。
【0058】
本技術では、組成物中の架橋剤の含有量の上限値は、ポリオール100質量部に対して、例えば、10質量部以下、好ましくは7質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。組成物中の架橋剤の含有量の上限値を、この範囲とすることにより、樹脂化反応の不安定化を防止することができる。その結果、機械的特性や外観の優れたポリウレタンフォームを得ることができる。
【0059】
本技術では、前記イソシアネートに対する架橋剤の量を、架橋剤/NCO基の部数比として、例えば8.0×10-4以上、好ましくは1.0×10-3以上、より好ましくは1.2×10-3以上に設定することができる。ここで「架橋剤/NCO基の部数比」とは、架橋剤の部数/(イソシアネートの部数×NCO%(NCO基としての部数))のことである。架橋剤/NCO基の部数比をこの範囲とすることにより、樹脂化反応が促進されて、硬さが上がり、クラッシングにおいて、ポリウレタンフォームの表面部と内部で潰れ方に変化が生じると推定される。具体的には、ポリウレタンフォームの表面部が潰れにくく、内部が潰れやすくなると推定される。その結果、表面部と内部で流れ抵抗に差があるポリウレタンフォームを製造することができる。
【0060】
なお、本技術では、架橋剤/NCO基の部数比の上限値は、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、自由に設定することができるが、例えば3.0×10-3以下、好ましくは2.5×10-3以下、より好ましくは2.0×10-3以下に設定することができる。架橋剤/NCO基の部数比の上限値を、この範囲とすることにより、樹脂化反応の不安定化を防止することができる。その結果、機械的特性や外観の優れたポリウレタンフォームを得ることができる。
【0061】
(2-5)触媒
本技術に用いるポリウレタンフォームの製造には、触媒を用いることができる。本技術に用いることができる触媒としては、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、ポリウレタンフォームの製造に用いることができる触媒を、1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。
【0062】
触媒としては、例えば、ジブチルチンジラウレート、スタナスオクトエート等の錫触媒や、フェニル水銀プロピオン酸塩あるいはオクテン酸鉛等の金属触媒(有機金属触媒)が挙げられる。また、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン(TEDA)、テトラメチルグアニジン、3-ジメチルアミノプロピルウレア、N,N-ジメチルドデシルアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N′,N″,N″-ペンタメチルジエチレントリアミン、イミダゾール系化合物、ジメチルピペラジン、N-メチル-N’-(2-ジメチルアミノ)エチルピペラジン、N-メチル-N’-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン等のピペラジン系アミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン等のモルホリン系アミン、1,8-ジアザビシクロ-[5,4,0]-ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ-[4,3,0]-ノネン-5(DBN)、1,8-ジアザビシクロ-[5,3,0]-デセン-7(DBD)、1,4-ジアザビシクロ-[3,3,0]オクテン-4(DBO)等のDBU同属体と称されるアミン等のアミン触媒も用いることができる。
【0063】
本技術に用いるポリウレタンフォームの製造に用いる組成物中の触媒の量は、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、組成物中の触媒の含有量の下限値は、ポリオール100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上である。組成物中の触媒の含有量の下限値を、この範囲とすることにより、樹脂化反応や泡化反応を促進させることができ、その結果、機械的特性や外観の優れたポリウレタンフォームを得ることができる。
【0064】
本技術では、組成物中の触媒の含有量の上限値は、ポリオール100質量部に対して、例えば、10質量部以下、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。組成物中の触媒の含有量の上限値を、この範囲とすることにより、樹脂化反応や泡化反応の不安定化を防止し、樹脂化反応と泡化反応のバランスを良好に保つことができる。その結果、機械的特性や外観の優れたポリウレタンフォームを得ることができる。
【0065】
(2-6)整泡剤
本技術に用いるポリウレタンフォームの製造には、整泡剤を用いることができる。本技術に用いることができる整泡剤としては、本技術の目的や作用効果を損なわない限り、ポリウレタンフォームの製造に用いることができる整泡剤を、1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。
【0066】
整泡剤としては、例えば、シリコーン系整泡剤、含フッ素化合物系整泡剤、界面活性剤等を挙げることができる。シリコーン系整泡剤としては、シロキサン鎖主体からなるもの、シロキサン鎖とポリエーテル鎖が線状の構造をとるもの、分岐し枝分かれしたもの、ポリエーテル鎖がシロキサン鎖にペンダント状に変性されたもの等が挙げられる。
【0067】
本技術に用いるポリウレタンフォームの製造に用いる組成物中の整泡剤の量は、本技術の目的や効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では、組成物中の整泡剤の含有量の下限値は、ポリオール100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは0.03質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上である。組成物中の整泡剤の含有量の下限値を、この範囲とすることにより、発泡反応を安定化することができ、その結果、機械的特性や外観の優れたポリウレタンフォームを得ることができる。
【0068】
本技術では、組成物中の整泡剤の含有量の上限値は、ポリオール100質量部に対して、例えば、5質量部以下、好ましくは3質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。組成物中の整泡剤の含有量の上限値を、この範囲とすることにより、コスト削減に貢献することができる。
【0069】
(2-7)その他
本技術に用いるポリウレタンフォームの製造には、本技術の目的や効果を損なわない限り、その他の成分として、ポリウレタンフォームの製造に用いることができる各種成分を、目的に応じて1種又は2種以上自由に選択して用いることができる。
【0070】
本技術に用いるポリウレタンフォームの製造に用いることができる成分としては、例えば、耐候剤、難燃剤、安定剤、可塑剤、着色剤、顔料、架橋剤、抗菌剤、分散剤、紫外線吸収剤等を挙げることができる。
【0071】
2.吸遮音材用ポリウレタンフォームの製造方法
本技術に用いるポリウレタンフォームは、前述した組成物の各成分を混合して組成物を調製し、樹脂化反応及び泡化反応を進行させることにより製造することができる。樹脂化反応及び泡化反応の方法は、本技術の目的や効果を損なわない限り、一般的な方法を自由に組み合わせて採用することができる。
【0072】
本技術に用いるポリウレタンフォームの製造方法における発泡は、スラブ発泡及びモールド発泡のいずれを採用することもできる。スラブ発泡は、ポリウレタンフォーム製造用組成物(ポリウレタンフォームの原料)を混合してベルトコンベア上に吐出し、大気圧下、常温で発泡させる方法である。一方、モールド発泡は、モールド(金型)のキャビティにポリウレタンフォーム製造用組成物(ポリウレタンフォームの原料)を混合して注入し、蓋をして、キャビティ形状に発泡させる方法である。さらに、スラブ発泡及びモールド発泡の中間的な発泡方法であって、モールド(金型)のキャビティにポリウレタンフォーム製造用組成物(ポリウレタンフォームの原料)を混合して注入し、蓋をせずにフリー発泡させる方法でもよい。
【0073】
以上説明した製造方法を行うことで、[ポリウレタンフォームの外側から2mmの第1部分の流れ抵抗値]-[ポリウレタンフォームの前記第1部分に連続する厚さ2mmの第2部分の流れ抵抗値]≧3.0×10Ns/mである吸遮音材用ポリウレタンフォームを製造することができる。
【0074】
3.吸遮音材の吸音率がピークを示す周波数制御方法
本技術に係る制御方法は、ポリウレタンフォームが用いられた吸遮音材の吸音率がピークを示す周波数を制御する方法であり、ポリウレタンフォームの外側から2mmの第1部分の流れ抵抗値と、ポリウレタンフォームの前記第1部分に連続する厚さ2mmの第2部分の流れ抵抗値と、の差を変動させることで、吸遮音材の吸音率がピークを示す周波数を制御する方法である。
【0075】
具体的な一例としては、例えば、ポリウレタンフォームの[外側から2mmの第1部分の流れ抵抗値]-[前記第1部分に連続する厚さ2mmの第2部分の流れ抵抗値]を、3.0×10Ns/m以上とすることで、吸音率がピークを示す周波数を低周波域へ制御することができる。
【0076】
なお、本技術に係る制御方法は、ポリウレタンフォームの吸音率がピークを示す周波数を低周波域へ制御することに限定されず、例えば、ポリウレタンフォームの[外側から2mmの第1部分の流れ抵抗値]-[前記第1部分に連続する厚さ2mmの第2部分の流れ抵抗値]を小さくすることで、吸音率がピークを示す周波数を高周波域へ制御することも可能である。
【0077】
第1部分と第2部分の流れ抵抗値の差を変動させる方法としては、例えば、ポリウレタンフォームの製造に用いる材料の種類や配合量等を工夫する方法、ポリウレタンフォームの製造方法を工夫する方法等が挙げられる。ポリウレタンフォームの製造に用いる材料の種類や配合量、ポリウレタンフォームの製造方法については、前述と同一であるため、ここでは説明を割愛する。
【0078】
なお、本技術では、以下の構成をとることも可能である。
[1]
ポリウレタンフォームが用いられた吸遮音材であって、
[前記ポリウレタンフォームの外側から2mmの第1部分の流れ抵抗値]-[前記ポリウレタンフォームの前記第1部分に連続する厚さ2mmの第2部分の流れ抵抗値]≧3.0×10Ns/mである、吸遮音材。
[2]
[前記ポリウレタンフォームの外側から2mmの第1部分の密度]-[前記ポリウレタンフォームの前記第1部分に連続する厚さ2mmの第2部分の密度]≦15.0kg/mである、[1]に記載の吸遮音材。
[3]
前記ポリウレタンフォームの吸音率がピークを示す周波数が2000Hz以下である、[1]又は[2]に記載の吸遮音材。
[4]
前記ポリウレタンフォームの周波数1000Hzにおける吸音率が、0.70以上である、[1]から[3]のいずれかに記載の吸遮音材。
[5]
ポリウレタンフォームが用いられた吸遮音材の吸音率がピークを示す周波数を制御する方法であって、
前記ポリウレタンフォームの外側から2mmの第1部分の流れ抵抗値と、
前記ポリウレタンフォームの前記第1部分に連続する厚さ2mmの第2部分の流れ抵抗値と、の差を変動させることで、前記吸遮音材の吸音率がピークを示す周波数を制御する、制御方法。
[6]
[前記ポリウレタンフォームの外側から2mmの第1部分の流れ抵抗値]-[前記ポリウレタンフォームの前記第1部分に連続する厚さ2mmの第2部分の流れ抵抗値]≧3.0×10Ns/mに制御することで、
前記ポリウレタンフォームの吸音率がピークを示す周波数を2000Hz以下に制御する、
[5]に記載の制御方法。
[7]
[前記ポリウレタンフォームの外側から2mmの第1部分の流れ抵抗値]-[前記ポリウレタンフォームの前記第1部分に連続する厚さ2mmの第2部分の流れ抵抗値]≧3.0×10Ns/mに制御することで、
ポリウレタンフォームの周波数1000Hzにおける吸音率を、0.70以上に制御する、
[5]又は[6]に記載の制御方法。
[8]
吸遮音材用のポリウレタンフォームの製造方法であって、
[外側から2mmの第1部分の流れ抵抗値]-[前記第1部分に連続する厚さ2mmの第2部分の流れ抵抗値]≧3.0×10Ns/mであるポリウレタンフォーム製造方法。
[9]
前記ポリウレタンフォームは、[外側から2mmの第1部分の密度]-[前記第1部分に連続する厚さ2mmの第2部分の密度]≦15.0kg/mである、[8]に記載のポリウレタンフォーム製造方法。
[10]
前記ポリウレタンフォームの吸音率がピークを示す周波数が2000Hz以下である、[8]又は[9]に記載のポリウレタンフォーム製造方法。
[11]
前記ポリウレタンフォームの周波数1000Hzにおける吸音率が、0.70以上である、[8]から[10]のいずれかに記載のポリウレタンフォーム製造方法。
【実施例0079】
以下、実施例に基づいて本技術を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本技術の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0080】
(1)原料

ポリオール:ポリプロピレングリコール(官能基数:3、数平均分子量:5000、EO比率:14%、水酸基価:35mgKOH/g)
架橋剤:ジエタノールアミン
触媒1:アミン系触媒(エボニック社製「DABCO NE300」)
触媒2:アミン系触媒(エボニック社製「DABCO 2040」)
触媒3:3-ジメチルアミノプロピルウレア
触媒4:N,N-ジメチルドデシルアミン
耐候剤:ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチルー4-ピペリジル)=デカンジオアートとメチル=1,2,2,6,6,ーペンタメチルピペリジンー4-イル=デカンジオアートの混合物
整泡剤:シリコーン系整泡剤
顔料:黒色系顔料
発泡剤:水
イソシアネート:変性MDI(NCO%:29.5%)
【0081】
(2)ポリウレタンフォームの製造
下記表1に示す各原料を撹拌混合して組成物を調製した後、調製した組成物をモールド形成により、500mm×500mm×10mmの各ポリウレタンフォームを製造した。
【0082】
(3)測定
製造した各ポリウレタンフォームについて、外側から2mmの第1部分及び第1部分に連続する厚さ2mmの第2部分の流れ抵抗及び密度を、下記の方法を用いて測定した。
[流れ抵抗]
ISO 9053に基づく方法に準拠して、製造したポリウレタンフォームの第1部分及び第2部分の流れ抵抗を測定した。
[密度]
JIS K7222:2005/ISO 845:1988に基づく方法に準拠して、製造したポリウレタンフォームの第1部分及び第2部分の密度を測定した。
【0083】
[通気量]
JIS K6400に基づく方法に準拠して、製造したポリウレタンフォームの通気量を測定した。
【0084】
(4)評価
[吸音率]
JIS A 1409に基づく方法に準拠して、製造したポリウレタンフォームの残響室法吸音率を測定した。
【0085】
[硬度]
JIS K 7312に準拠して、製造したポリウレタンフォームのアスカーC硬度及びアスカーF硬度を測定した。
【0086】
[引張強度][伸び率][引裂強度]
JIS K6400に基づく方法に準拠して、製造したポリウレタンフォームの引張強度、伸び率、及び引裂強度を測定した。
【0087】
(5)結果
結果を下記の表1に示す。また、吸音率の結果を、図1のグラフに示す。
【0088】
【表1】
【0089】
(6)考察
実施例1、2、及び比較例3は、通気量が同程度であった。しかし、ポリウレタンフォームの表面部と内部の流れ抵抗の差が1.9×10Ns/mの比較例3の吸音率が最大値(ピーク)を示す周波数は2000Hzを超えているのに対し、ポリウレタンフォームの表面部と内部の流れ抵抗の差が3.0×10Ns/m以上の実施例1及び2の吸音率がピークを示す周波数は2000Hz以下であった。この結果から、ポリウレタンフォームの通気量を制御しなくても、表面部と内部の流れ抵抗に差を設けることで、吸音率が最大値(ピーク)を示す周波数を制御できることが分かった。
【0090】
また、ポリウレタンフォームの表面部と内部の流れ抵抗の差が3.0×10Ns/m以上の実施例1及び2の周波数1000Hzにおける吸音率は、ポリウレタンフォームの表面部と内部の流れ抵抗の差が1.9×10Ns/mの比較例3の周波数1000Hzにおける吸音率に比べて、高い結果を示していた。この結果から、ポリウレタンフォームの表面部と内部の流れ抵抗の差を大きくすることで、より低周波域における吸音率を向上できることが分かった。
【0091】
比較例1及び2は、ポリウレタンフォームの表面部と内部の密度に大きな差があるが、ポリウレタンフォームの表面部と内部の流れ抵抗の差が15.0kg/m以下の実施例1及び2の方が、より低周波数において吸音率のピークを示し、周波数1000Hzにおける吸音率が高かった。この結果から、ポリウレタンフォームの表面部と内部の密度に差を設けなくても、表面部と内部の流れ抵抗に差を設けることで、吸音率がピークを示す周波数を制御でき、より低周波数における吸音率を向上できることが分かった。
図1