(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094086
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】固形粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/31 20060101AFI20240702BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20240702BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20240702BHJP
A61K 8/63 20060101ALI20240702BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240702BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20240702BHJP
A61K 8/46 20060101ALI20240702BHJP
A61K 8/29 20060101ALI20240702BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20240702BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20240702BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20240702BHJP
A61Q 1/10 20060101ALI20240702BHJP
A61Q 1/04 20060101ALI20240702BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20240702BHJP
A61K 8/891 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
A61K8/31
A61K8/37
A61K8/44
A61K8/63
A61K8/34
A61K8/49
A61K8/46
A61K8/29
A61K8/19
A61K8/25
A61Q1/00
A61Q1/10
A61Q1/04
A61K8/86
A61K8/891
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210832
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱田 紗輝
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 駿人
(72)【発明者】
【氏名】小栗 伸司
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB171
4C083AB172
4C083AB212
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB432
4C083AC012
4C083AC072
4C083AC352
4C083AC392
4C083AC422
4C083AC662
4C083AC782
4C083AC792
4C083AD112
4C083AD162
4C083AD492
4C083AD662
4C083BB21
4C083CC11
4C083CC13
4C083CC14
4C083DD16
4C083EE07
4C083FF05
(57)【要約】
【課題】微粒子の付着が抑制された固形粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】下記工程1~工程3を有する固形粒子の製造方法であって、
工程1:油性成分を含む原料組成物を加熱して流動性を付与する工程、
工程2:流動性を付与した前記原料組成物を吐出することで粒状化して粒状原料を形成する工程、
工程3:前記粒状原料を粉体中に滴下して、前記粒状原料の表面を前記粉体で被覆する工程、
前記工程2において、予め前記原料組成物を吐出し、粒状化する際に前記原料組成物が伸長する最大の長さを測定し、前記粒状原料の滴下距離の長さを、前記粒状化する際に伸長する最大長さに対する比率が、0超9以下となるように設定する、固形粒子の製造方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程1~工程3を有する固形粒子の製造方法であって、
工程1:油性成分を含む原料組成物を加熱して流動性を付与する工程、
工程2:流動性を付与した前記原料組成物を吐出することで粒状化して粒状原料を形成する工程、
工程3:前記粒状原料を粉体中に滴下して、前記粒状原料の表面を前記粉体で被覆する工程、
前記工程2において、予め前記原料組成物を吐出し、粒状化する際に前記原料組成物が伸長する最大の長さを測定し、前記粒状原料の滴下距離の長さを、前記粒状化する際に伸長する最大長さに対する比率が、0超9以下となるように設定する、固形粒子の製造方法。
【請求項2】
前記粉体がシリカを含む、請求項1に記載の固形粒子の製造方法。
【請求項3】
冷却する工程を更に有する、請求項1又は2に記載の固形粒子の製造方法。
【請求項4】
未付着の前記粉体を除去する工程を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の固形粒子の製造方法。
【請求項5】
工程2における前記粒状原料が、前記原料組成物の融点以上に加熱することで形成される、請求項1~4のいずれか1項に記載の固形粒子の製造方法。
【請求項6】
前記粉体の平均粒径D50が0.01μm以上500μm以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の固形粒子の製造方法。
【請求項7】
得られる前記固形粒子の1粒子あたりの平均質量が1mg以上10000mg以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の固形粒子の製造方法。
【請求項8】
前記粒状原料の表面を前記粉体で被覆する工程が、前記粉体が振動を付与された状態で行われる、請求項1~7のいずれか1項に記載の固形粒子の製造方法。
【請求項9】
前記振動の振幅が0.3mm以上であり、かつ周波数が30Hz以上である、請求項8に記載の固形粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固形粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで知られている固形化粧料等の固形粒子は一般に、ファンデーションのように粉体を圧縮成形して浅底のトレイ内に収容した形態や、口紅のように室温で固体の組成物を所定形状に成形した形態のものであった。このような形態の固形化粧料のほかに、近年では粒状の形態をした固形化粧料(粒状固形化粧料)が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、化粧料の原料を粒状にし、粒状にされた前記化粧料の原料の表面に粉体を付着させる、粒状固形化粧料の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の粒状固形化粧料は、化粧料の原料を粒状にする際に、望みの粒状にされた化粧料の他に微粒子が形成され、該微粒子が粒状固形化粧料に付着するという課題が生じていた。
【0006】
本発明は、微粒子の付着が抑制された固形粒子の製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、加熱により流動性を付与した油性成分を含む原料組成物を粒状にすることで形成した粒状原料を粉体中に滴下し、粒状原料の表面を粉体で被覆する際に、粒状原料を形成する工程において、原料組成物をノズルの吐出口から滴下した場合に、吐出口から原料組成物が伸長する最大の長さを基準として、滴下距離の長さを決めることで、微粒子の付着のない固形粒子が高収率で得られることを見出した。
本発明は、以下の〔1〕に関する。
〔1〕下記工程1~工程3を有する固形粒子の製造方法であって、
工程1:油性成分を含む原料組成物を加熱して流動性を付与する工程、
工程2:流動性を付与した前記原料組成物を吐出することで粒状化して粒状原料を形成する工程、
工程3:前記粒状原料を粉体中に滴下して、前記粒状原料の表面を前記粉体で被覆する工程、
前記工程2において、予め前記原料組成物を吐出し、粒状化する際に前記原料組成物が伸長する最大の長さを測定し、前記粒状原料の滴下距離の長さを、前記粒状化する際に伸長する最大長さに対する比率が、0超9以下となるように設定する、固形粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法によれば、微粒子の付着のない固形粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、固形粒子に微粒子が付着するメカニズムを示す模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【
図3】
図3は、振動フィーダーによる本発明の製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【
図4】
図4は、微粒子が付着していない固形粒子を示す模式図である。
【
図5】
図5は、微粒子が付着した固形粒子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。本発明は固形粒子の製造方法に関するものである。
【0011】
[固形粒子の製造方法]
本発明の固形粒子の製造方法は、下記工程1~工程3を有し、
工程1:油性成分を含む原料組成物を加熱して流動性を付与する工程、
工程2:流動性を付与した前記原料組成物を吐出することで粒状化して粒状原料を形成する工程、
工程3:前記粒状原料を粉体中に滴下して、前記粒状原料の表面を前記粉体で被覆する工程、
前記工程2において、予め前記原料組成物を吐出し、粒状化する際に前記原料組成物が伸長する最大の長さを測定し、前記粒状原料の滴下距離の長さを、前記粒状化する際に伸長する最大長さに対する比率が、0超9以下となるように設定する。
なお、本明細書において、「原料組成物」並びに「粒状原料」における「原料」の意味は、製造物である固形粒子の原料という意味であり、素材等を限定するものではない。
【0012】
本発明の固形粒子の製造方法は、微粒子の付着のない固形粒子を高収率で得られるという効果を奏する。このような効果を奏する理由は次のように考えられる。
本発明者らは、加熱により流動性を付与した油性成分を含む原料組成物を吐出して粒状に形成した粒状原料を粉体中に滴下する際に、原料組成物が伸長することで液柱を形成し、粒状原料が液柱から切断され分離する際に、粒状原料の他に副次的に微粒子が形成されることを見出した。この微粒子が粒状原料と同じ軌道で落下することにより、粉体に滴下した際に粒状原料に付着することで、微粒子が付着した固形粒子(以下「微粒子付着固形粒子」ともいう)が生じると考えられる。
【0013】
微粒子付着固形粒子が生じるメカニズム及び本発明の効果について、
図1を参照して以下に詳細に説明する。原料組成物を加熱して流動性を付与した原料組成物10がポンプ11等を用いて送液され、ノズル12の先端から吐出され、滴下する際に原料組成物が伸長・切断されることで粒状化し、粒状原料13及び微粒子14が形成される。粒状原料13及び微粒子14の落下軌道は同じだが、微粒子14の方が粒状原料よりも遅れて落下する。粒状原料13が粉体15中に滴下されると、粒状原料13が急速に冷却され、後から落下した微粒子14が、冷却された粒状原料13の上下方向の中心からややずれた位置に着弾すると粒状原料13に合一せず、付着した状態の微粒子付着固形粒子2が得られることを本発明者らは見出した。なお、微粒子14が、粒状原料13の上下方向の中心とほぼ同一の位置に着弾すると、微粒子14が粒状原料13と合一して一つの粒状原料13となり、また、微粒子14が、粒状原料13の前記中心から半径超の距離ずれた位置に落下した場合には、滴下された粒状原料13及び微粒子14は、それぞれの表面が粉体15で被覆されるため(以下、粉体で被覆された粒状原料13及び微粒子14を、それぞれ「固形粒子1」、「サテライト粒子3」という)、両粒子が付着することはない。また、ノズル12の先端から粉体15の表面までの滴下距離がある程度短いと、微粒子14が副生しないことも見出した。
【0014】
上記知見に基づき、種々検討したところ、予め原料組成物を吐出することにより粒状化する際に伸長する最大の長さを測定しておき、粒状原料の滴下距離の長さを、前記粒状化する際に伸長する最大長さに対する比率が特定の範囲となるように設定することで、前述のように微粒子14が副生しないか、又は微粒子14が副生しても粒状原料13が冷却される前に、微粒子14が粒状原料13に上下方向の真正面から着弾することにより、粒状原料13と微粒子14が合一され、微粒子の付着のない球状の固形粒子が高収率で得られることを見出した。
【0015】
本発明において、「微粒子」とは、粒状原料を形成させた際に副次的に生じる粒状原料よりも粒径の小さな粒子を意味する。具体的には、その直径が粒状原料の直径の3分の1よりも小さいものが微粒子である。
また、本明細書において、粒状原料13と微粒子14が合一する等の「合一」とは、微粒子14が粒状原料13に取り込まれ外形上区別がつかなくなることを意味し、粒状原料13に微粒子14が付着する等の「付着」とは、微粒子14と粒状原料13とが、微粒子14由来の部分と粒状原料13由来の部分が外形上区別可能な状態で1つの粒子を形成することを意味する。
【0016】
本発明の固形粒子の製造方法の一例について、
図2を参照して以下に説明する。工程1は、原料組成物を加熱して流動性を付与した原料組成物10を得る工程である。また、工程2は、流動性を付与した原料組成物10を粒状化して粒状原料13を形成する工程であり、
図2では、流動性を付与した原料組成物10をポンプ11を用いて送液し、ノズル12の先端から吐出し原料組成物10が伸長・切断されることで粒状原料13を形成している。さらに、工程3は、粒状原料13を粉体15中に滴下し、場合によって原料組成物10が伸長・切断されることで副生される微粒子14を、粒状原料13に合一させ、粒状原料13に粉体15を付着させることで粒状原料13の表面を粉体15で被覆し、固形粒子1を得る工程である。
本発明の製造方法において、粒状原料13の表面を粉体15で被覆するとは、粒状原料13の表面全体を粉体15が被覆しているだけではなく、粒状原料13の表面の少なくとも一部が粉体15で被覆されていることを意味する。耐付着性、輸送耐性を向上させる観点からは、粒状原料13の表面全体を粉体15が被覆していることが好ましい。
【0017】
〔工程1〕
工程1は、油性成分を含む原料組成物を加熱して流動性を付与する工程である。原料組成物が含む少なくとも1つの物質の融点以上に加熱することで流動性を付与した原料組成物10を得ることができる。また、原料組成物の融点以上に加熱することが好ましい。
原料組成物に流動性を付与するための温度としては、工程3において、粒状原料13の固化を遅らせ粉体15の付着を促す観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、更に好ましくは80℃以上、更に好ましくは85℃以上である。また、熱による原料組成物の劣化を防ぐ観点から、好ましくは150℃以下、より好ましくは130℃以下、更に好ましくは120℃以下、更に好ましくは115℃以下である。特に、原料組成物に流動性を付与するための温度は、好ましくは60℃以上150℃以下、より好ましくは70℃以上130℃以下、更に好ましくは80℃以上120℃以下、更に好ましくは85℃以上115℃以下である。
【0018】
〔工程2〕
工程2は、流動性を付与した原料組成物10を粒状化して粒状原料13を形成する工程である。
図2に示される流動性を付与した原料組成物10が、原料組成物を融点以上に加熱した液体であると、ポンプ11により送液された原料組成物10がノズル12の先端から吐出され、原料組成物10が伸長・切断されることで粒状原料13を液滴として形成することができる。また、流動性を付与した原料組成物10から粒状原料13を形成する装置は、
図2に記載される装置に限られず、公知の液滴製造装置等を用いることができる。
【0019】
流動性を付与した原料組成物10について、予め吐出することにより粒状化する際に前記原料組成物10が伸長する最大の長さを測定しておく。この伸長する最大長さは、原料組成物10のみならず、工程2における吐出温度や流量等の条件に影響を受けるものであり、個々の製造条件に特有のものであるため、本発明を実施する前に測定しておく必要がある。そして、工程2において、粒状原料13の滴下距離の長さを、前記原料組成物10が粒状化する際に伸長する最大長さに対する比率が、0超9以下となるように設定すると、当該比率が0超1未満である場合には、原料組成物10の粘度等にもよるが微粒子14が形成され難く、当該比率が1以上9以下の場合には微粒子14が形成されるが工程3において粒状原料13が粉体15中に滴下された際に粒状原料13と微粒子14が合一するため、微粒子の付着のない固形粒子が高収率で得ることができる。
原料組成物10が粒状化する際に伸長する最大長さに対する粒状原料13の滴下距離の長さの比率は、大きさの均一な粒状原料13を安定的に得る観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上であり、そして微粒子14を副生し難くし、又は副生した微粒子14を粒状原料13と合一させ、微粒子14の付着のない固形粒子13を得る観点から、好ましくは8.5以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは6以下、より更に好ましくは5.5以下である。
粒状原料13を滴下させる距離、すなわちノズル12の先端と粉体15の層の最表面との距離は、滴下した粒状原料13が粉体15と接触する際の衝撃を緩和し変形を防ぎ、かつ、滴下中に粒状原料13が冷却されることを抑制し、粒状原料13と微粒子14とを合一させる観点から、好ましくは200mm以下、より好ましくは170mm以下、更に好ましくは150mm以下、より更に好ましくは120mm、より更に好ましくは90mm以下である。また、滴下距離は、0mmよりも長く、すなわち粉体15とノズル12とが接していなければよく、粒状原料13を球状に形成させる点から、好ましくは2mm以上、より好ましくは3mm以上、更に好ましくは4mm以上である。
原料組成物10が粒状化する際に伸長する最大長さとは、原料組成物10を液状化して滴下距離を十分に長く取ってノズル12から吐出した際に、伸長した原料組成物10がいずれかの箇所で切断されて粒状原料13を形成する直前における、ノズル12の先端と伸長した原料組成物10の先端に形成される液滴(以下、「母粒子」ともいう)の下端との距離である。本発明における粒状原料13を滴下させる距離は、前述のように原料組成物10が伸長する最大長さに左右されるものであり、当該長さがノズル12の外径、原料組成物10の組成、温度及び原料組成物10がノズル12から吐出される際の流量により影響されるものであるため、粒状原料13を製造する際の前記条件が変化すれば、その都度設定し直す必要のあるものである。なお、前記「直前」のタイミングについては実施例に記載した方法により決定する。
原料組成物10が粒状化する際に伸長する最大長さは、粒状原料と微粒子を合一させて微粒子の付着のない固形粒子を得る観点から、好ましくは25mm以下、より好ましくは20mm以下、更に好ましくは18mm以下である。なお、原料組成物10が粒状化する際に伸長しなければ本発明の課題が生じないため下限に制限はない。通常、原料組成物10が粒状化する際に伸長する長さが2mm以上であれば、微粒子が付着した固形粒子が生じ得る。
原料組成物10が粒状化する際に伸長する最大長さは、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0020】
本発明の製造方法の対象物である固形粒子1は、コア部とコア部を被覆する粉体を取り込んだ原料組成物の層からなるシェル部とからなるため、その大きさは工程2で形成される粒状原料13とほぼ同じかやや大きめとなる。つまり粒状原料13は、得ようとする固形粒子1を平面上に載置したときの平均投影面積、直径、及び/又は重さを基に調整されることが好ましい。
粒状原料13の粒子径は主にノズルの外径に相関し、ノズル外径が大きいほど粒状原料13の粒子径は大きくなる。このために、例えば、液体である原料組成物10をノズル12の先端から吐出することにより粒状原料13を液滴として形成する場合、目的の固形粒子の粒径に応じてノズル12の外径を変えることができる。ノズル12の外径としては、固形粒子1の1回あたりの使用量に応じた粒径を得る観点から、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上、更に好ましくは1.5mm以上である。また、安定的に粒状原料13の滴下を行う観点から、好ましくは20mm以下、より好ましくは10mm以下、更に好ましくは5mm以下である。特に、ノズル12の外径としては、好ましくは0.5mm以上20mm以下、より好ましくは1mm以上10mm以下、更に好ましくは1.5mm以上5mm以下である。
【0021】
〔工程3〕
工程3は、粒状原料13を粉体15中に滴下し、必要に応じて粒状原料13と微粒子14とを合一させ、粒状原料13の表面を粉体15で被覆する工程である。粉体15は容器16に収容されていてもよい。また、後述する
図3のような装置を用いた場合には、粉体15は、振動フィーダー23の動作により篩24へ落下するが、その落下速度に合わせて粉体供給装置によりトラフ21上の粉体15が一定量になるように連続的に供給されるようにしてもよい。
なお、本工程において、「粒状原料13」は、粒状原料13と微粒子14とが合一したものも含むものとする。
粉体15の層の厚さは、滴下された粒状原料13の上部への粉体15の付着を促す観点から、好ましくは50mm以上、より好ましくは60mm以上、更に好ましくは70mm以上であり、そして、過剰な粉体の使用を避ける観点から、好ましくは250mm以下、より好ましくは230mm以下、更に好ましくは210mm以下である。また、後述する
図3のような装置を用いた場合には、滴下された粒状原料13の上部への粉体15の付着を促す観点から、好ましくは3mm以上、より好ましくは5mm以上、更に好ましくは8mm以上であり、また、過剰な粉体の使用を避ける観点から、粉体15の層の厚さは、好ましくは50mm以下、より好ましくは30mm以下、更に好ましくは20mm以下、更に好ましくは15mm以下である。
【0022】
粒状原料13の固化を遅らせ粉体15の付着を促す観点から、粉体15の温度は好ましくは5℃以上、より好ましくは15℃以上、更に好ましくは20℃以上である。また、粉体15の粒状原料13への過剰な付着を抑制する観点から、粉体15の温度は好ましくは60℃以下、より好ましくは55℃以下、更に好ましくは50℃以下、より更に好ましくは30℃以下である。特に、粉体15の温度は、好ましくは5℃以上60℃以下、より好ましくは15℃以上55℃以下、更に好ましくは20℃以上50℃以下、より更に好ましくは20℃~30℃(常温)である。
【0023】
粒状原料13の表面を粉体15で被覆する時間は、粒状原料13の表面における粉体の付着を促す観点から、好ましくは2秒間以上、より好ましくは3秒間以上、更に好ましくは4秒間以上である。また、生産性の観点から、粒状原料13の表面を粉体15で被覆する時間は、好ましくは24時間以下、より好ましくは12時間以下、更に好ましくは6時間以下である。
【0024】
粉体15を撹拌機17で撹拌することにより、粉体15中に滴下された粒状原料13は次の粒状原料13が滴下される前に滴下位置から移動し、粒状原料13同士が付着することを防ぐことができる。
【0025】
なお、粒状原料13の表面を粉体15で被覆する工程が、粉体15が振動を付与された状態で行われてもよい。例えば、
図3では、振動装置22上にトラフ21が設置された振動フィーダー23を用いることにより、トラフ21上の粉体15に振動が付与されている。この振動が付与された粉体15に、粒状原料13を滴下させることで、粉体15が振動を付与された状態で粒状原料13の表面を粉体15で被覆することができる。このとき、粉体15は、トラフ21の上に、粉体供給装置(不図示)により連続的に供給されることが好ましい。
粉体15が振動を付与された状態で、粒状原料13と粉体15とを接触させ、粒状原料13に粉体15を付着させることで粒状原料13の表面を粉体15で被覆することにより、粉体15を粒状原料13の表面から少なくとも80μm程度の深さまで取り込むことができ、耐付着性及び輸送耐性に優れた固形粒子が得られる。
また、粉体15を入れる容器としてトラフ21に代えてボウルを用いてもよい。振動装置上にボウルが設置されたボウルフィーダーを用いることにより、振動が付与された粉体と接触した粒状原料は、その表面が粉体で被覆されつつ、振動によりボウルの内壁に設けられたスロープを上昇する。粒状原料と粉体とを接触させる時間を長くする際に、トラフ21を用いる場合にはトラフを長くする必要があるが、ボウルを用いる場合にはスロープの螺旋の巻き数を高さ方向へ延ばせば済むのでスペース効率がよい。
【0026】
粒状原料13の表面を粉体15で被覆する際に粉体15に与えられる振動の振幅は、粒状原料13の表面における粉体15の付着を促す観点から、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.4mm以上、更に好ましくは0.5mm以上、更に好ましくは0.6mm以上である。そして、好ましくは5mm以下、より好ましくは4mm以下、更に好ましくは3mm以下、より更に好ましくは1.5mm以下、より更に好ましくは1.4mm以下、より更に好ましくは1.3mm以下である。特に、振動の振幅としては、好ましくは0.3mm以上5mm以下、より好ましくは0.4mm以上4mm以下、更に好ましくは0.5mm以上4mm以下、更に好ましくは0.5mm以上3mm以下、より更に好ましくは0.6mm以上3mm以下、より更に好ましくは0.3mm以上1.5mm以下、より更に好ましくは0.4mm以上1.4mm以下、より更に好ましくは0.5mm以上1.3mm以下、より更に好ましくは0.6mm以上1.3mm以下である。
なお、粉体15に与えられる振動の振幅は、振動装置22の直上の位置で測定することが好ましい。
また、粒状原料13の表面への粉体15の付着を促す観点から、振動の周波数は好ましくは30Hz以上、より好ましくは40Hz以上、更に好ましくは50Hz以上である。そして、好ましくは300Hz以下、より好ましくは100Hz以下、更に好ましくは75Hz以下、より更に好ましくは60Hz以下である。特に、振動の周波数としては、好ましくは30Hz以上300Hz以下、より好ましくは40Hz以上100Hz以下、更に好ましくは50Hz以上75Hz以下、より更に好ましくは50Hz以上60Hz以下である。
【0027】
図3に示した装置における粒状原料13の表面を粉体15で被覆する時間は、粒状原料13の表面における粉体の付着を促す観点から、好ましくは2秒間以上、より好ましくは3秒間以上、更に好ましくは4秒間以上である。また、生産性の観点から、粒状原料13の表面を粉体15で被覆する時間は、好ましくは300秒間以下、より好ましくは200秒間以下、更に好ましくは100秒間以下である。特に、粒状原料13の表面を粉体15で被覆する時間は、好ましくは2秒間以上300秒間以下、より好ましくは3秒間以上200秒間以下、更に好ましくは4秒間以上100秒間以下である。
【0028】
以上の工程3によって、粒状原料13の表面に粉体15を付着させ、粒状原料13の表面を粉体15で被覆することで固形粒子1を得ることができる。
【0029】
(冷却工程)
粉体15による粒状原料13の表面の被覆と同時に、及び/又は工程3の後に付加的な工程として粒状原料13の冷却する工程を有していてもよい。冷却を行うことで粒状原料13への粉体15の付着を一層確実なものとすることができる。冷却は例えば自然冷却であってもよく、あるいは強制冷却であってもよい。
自然冷却する場合、粒状原料13の表面が粉体15で被覆された固形粒子1を室温下に静置すればよい。
強制冷却する場合には、固形粒子1に気体を吹き付けたり、固形粒子1を冷蔵庫内に静置したり、固形粒子1を冷媒に接触させたりすればよい。
【0030】
粒状原料13の表面を粉体15で被覆する時点において、粒状原料13は軟化している。表面が粉体15で被覆された粒状原料13は、その後のいずれかの段階において固化される。「固化」とは、粒状原料13の硬さが、冷却により、流動性を付与される前の原料組成物の硬度となることをいう。
【0031】
粒状原料13を固化させた粉体15を含まない部分が、固形粒子1のコア部である。粒状原料13とは、原料組成物を粒状にして形成したものであり、かつ固化する前の状態のものである。また、この粒状原料13の表面近傍の内部で原料組成物が粉体15を取り込んだ部分が、固形粒子1のシェル部である。
【0032】
工程3の後、固形粒子1の冷却に先立ち、又は冷却後に、又は冷却と同時に、固形粒子1の表面に固着していない粉体15を除去することができる。固形粒子1の表面に固着していない粉体15とは、固形粒子1を例えば搬送するときに加わる振動等の外力によって固形粒子1から脱落する程度に弱く付着しているか、又は原料組成物由来の部分に全く付着していない粉体15のことである。
粉体の除去には、固形粒子1を通過させない程度の目開きを有する篩を用いることができる。また、
図3に示すように、トラフ21上を搬送され、篩24により固形粒子1と粉体15及びサテライト粒子3とを分離してもよい。なお、粉体15及びサテライト粒子3の混合物を別途篩により分離し、粉体15を再利用することもできる。
【0033】
[固形粒子]
本発明の製造方法で製造される固形粒子(以下、「本発明の固形粒子」ともいう)は、粒状である固形の原料組成物からなるコア部と、該コア部の表面の少なくとも一部を被覆しているシェル部とを有する、コアシェル構造を有する固形粒子である。シェル部は、粉体を取り込んだ原料組成物の層からなり、粉体は多層でも単層でもよく、粉体を構成する粒子間に隙間があってもよい。
【0034】
本発明の固形粒子は、粉体の付着及び原料組成物への取り込みにより、固形粒子の表面近傍内部の強度が向上しているため、輸送時に粒子同士又は粒子と容器との接触による固形粒子の破砕、変形、潰れ又は崩壊等を抑制できると考えられる。これにより、コア部の露出を抑制し、固形粒子同士の付着を抑制できるため、輸送耐性に優れると考えられる。さらに、表面近傍に粉体が存在するので使用感の低下を抑制できる。
「固形粒子」とは、室温(25℃)において固体であり、室温よりも高い温度、例えば50℃以上に加熱したときに軟化又は溶融し、流動性を得る性質を有する粒子のことである。このような固形粒子を得るには、後述するように、例えば、融点が50℃以上の原料組成物を用いればよい。
【0035】
〔固形粒子の形状〕
固形粒子は、その大きさに特に制限はないが、手に取りやすい等の使用のしやすさ、転がりにくさ、潰しやすさ、意匠性、及び製造のしやすさ等の観点から、平面上に載置したときの平均投影面積が好ましくは0.5mm2以上、より好ましくは1mm2以上、更に好ましくは1.5mm2以上である。また固形粒子は、手に取りやすい等の使用のしやすさ、潰しやすさ、及び意匠性等の点から、前記平均投影面積が好ましくは320mm2以下、より好ましくは80mm2以下、更に好ましくは20mm2以下である。特に、固形粒子は、前記平均投影面積が好ましくは0.5mm2以上320mm2以下、より好ましくは1mm2以上80mm2以下、更に好ましくは1.5mm2以上20mm2以下である。「平均投影面積」とは、無作為に抽出した10個の固形粒子を対象として、該固形粒子が、水平面上において最も安定した状態で載置された状態において真上からの光に対して該水平面に投影される面積の数平均値を意味する。
【0036】
固形粒子が球状又は略球状であるとき、その直径は、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上、更に好ましくは1.5mm以上であり、そして、好ましくは20mm以下、より好ましくは10mm以下、更に好ましくは5mm以下である。球状又は略球状の固形粒子の直径は、好ましくは0.5mm以上20mm以下、より好ましくは1mm以上10mm以下、更に好ましくは1.5mm以上5mm以下である。
また、固形粒子が扁球状又は略扁球状であるとき、その直径は上記水平投影から求められる円相当径であり、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上、更に好ましくは1.5mm以上であり、そして、好ましくは20mm以下、より好ましくは10mm以下、更に好ましくは5mm以下である。扁球状又は略扁球状の固形粒子の直径は、好ましくは0.5mm以上20mm以下、より好ましくは1mm以上10mm以下、更に好ましくは1.5mm以上5mm以下である。
更に、固形粒子が扁球状又は略扁球状であるとき、その高さは、固形粒子に接する面であって固形粒子が載置された水平面と水平であり且つ最も離れた場所に位置する面と該水平面との距離であり、好ましくは0.4mm以上、より好ましくは0.8mm以上、更に好ましくは1.2mm以上であり、そして、好ましくは16mm以下、より好ましくは8mm以下、更に好ましくは4mm以下である。扁球状又は略扁球状の固形粒子の高さは、好ましくは0.4mm以上16mm以下、より好ましくは0.8mm以上8mm以下、更に好ましくは1.2mm以上4mm以下である。
【0037】
固形粒子の1粒子あたりの平均質量は、好ましくは1mg以上、より好ましくは5mg以上であり、更に好ましくは10mg以上である。また、固形粒子の1粒子あたりの質量は、好ましくは10000mg以下、より好ましくは5000mg以下であり、更に好ましくは1000mg以下である。固形粒子の質量は、好ましくは1mg以上10000mg以下、より好ましくは5mg以上5000mg以下であり、更に好ましくは10mg以上1000mg以下である。「平均質量」とは、無作為に抽出した10個の固形粒子の質量の数平均値を意味する。
【0038】
粉体の性状、製造条件にも依存するが、固形粒子のシェル部の厚さは、耐付着性、輸送耐性の向上の観点から、80μm以上であることが好ましく、より好ましくは100μm以上、更に好ましくは110μm以上、より更に好ましくは120μm以上、より更に好ましくは130μm以上、より更に好ましくは150μm以上である。特にシェル部の厚さが110μm以上であると、固形粒子の耐付着性及び輸送耐性がより向上するため好ましい。また、使用感の低下を抑制する観点から、好ましくは300μm以下、より好ましくは250μm以下、更に好ましくは200μm以下である。
なお、シェル部の厚さは、前記厚さよりも直径が小さい粉体が多層になっている場合と、前記厚さの直径の粉体が単層になっている場合が含まれる。
【0039】
固形粒子中の粉体の含有量は、耐付着性、輸送耐性の向上の観点から、固形粒子の質量に対する割合が、好ましくは5.0質量%以上、より好ましくは7.0質量%以上、更に好ましくは7.5質量%以上、より更に好ましくは8.0質量%以上である。また、使用感に影響を与えない観点から好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下、より更に好ましくは13質量%以下、より更に好ましくは12質量%以下である。
【0040】
固形粒子の1粒子あたりの平均強度は、輸送耐性の観点から、好ましくは0.14N以上、より好ましくは0.16N以上である。また、固形粒子の1粒子あたりの平均強度は、使用感の観点から、好ましくは3N以下、より好ましくは1N以下である。固形粒子の平均強度は、好ましくは0.14N以上3N以下、より好ましくは0.16N以上1N以下である。「平均強度」とは、無作為に抽出した10個の固形粒子の強度の数平均値を意味する。固形粒子の強度は、実施例に記載の方法により測定される。
【0041】
[固形粒子の原料]
〔原料組成物〕
原料組成物は室温(25℃)において固体であり、かつ融点が好ましくは50℃以上、より好ましくは55℃以上、更に好ましくは60℃以上である。原料組成物を粒状化した粒状原料が固形粒子のコア部となるため、原料組成物がこの温度以上の融点を有することで、固形粒子を化粧料として用いられた時の使用感を良好にすることができる。また、原料組成物は、製造の容易性の観点から、その融点が好ましくは150℃以下、より好ましくは120℃以下、更に好ましくは110℃以下である。また、原料組成物がこの温度以下の融点を有することでも、固形粒子の使用感を良好にすることができる。特に、原料組成物の融点は、好ましくは50℃以上150℃以下、より好ましくは55℃以上120℃以下、更に好ましくは60℃以上110℃以下である。
【0042】
原料組成物は通常複数の物質を含む。この場合、原料組成物の融点は、医薬部外品原料規格一般試験法の第1法、第2法、又は第3法のいずれかにより測定される。いずれの方法を採用するかは、主に原料組成物の融点によって選択され、融点が75℃を超えるような高い場合には第1法を、融点が50℃以上75℃以下の場合には第2法を、更に50℃未満の場合には第3法を用いることができる。
【0043】
原料組成物は、本発明の固形粒子が好ましくは化粧料として用いられる観点から、化粧料原料組成物であることが好ましい。
原料組成物は好ましくは、1種又は2種以上の油性成分からなる連続相を有する。場合によっては、原料組成物は連続相中に分散した顔料等の粉体成分を含む。
油性成分としては、炭化水素油、エステル油、エーテル油、脂肪酸、アルコール、シリコーン油、フッ素油等が挙げられる。油性成分の炭素数は好ましくは6以上、より好ましくは10以上であり、好ましくは50以下、より好ましくは30以下である。具体的には、オゾケライト、セレシン等の鉱物系ワックス;パラフィン、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス、合成ワックス等の合成炭化水素;カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ライスワックス、サンフラワーワックス、水添ホホバ油、モクロウ等の植物系ワックス;ミツロウ、鯨ロウ等の動物性ワックス;シリコーンワックス、合成ミツロウ、合成モクロウ等の合成ワックス等のワックス;パルミチン酸デキストリン、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸イヌリン、12-ヒドロキシステアリン酸、ジブチルラウロイルグルタミド、ジブチルエチルヘキサノイルグルタミド、ポリアミド樹脂等の油性ゲル化剤;ワセリン、ビニルレザーワックス、ヘキサ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ジペンタエリスリチル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、テトラ(ヒドロキシステアリン酸/イソステアリン酸)ジペンタエリスリチル、水添パーム油、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、トリ(カプリル酸/カプリン酸/ミリスチン酸/ステアリン酸)グリセリル、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、オレイン酸フィトステリル、(エチルヘキサン酸/ステアリン酸/アジピン酸)グリセリル、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビス(ベヘニル/イソステアリル/フィトステリル)、硬質ラノリン、還元ラノリン、ビスジグリセリルポリアシルアジペート-2等のペースト油;流動パラフィン、軽質流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、ミネラルオイル、スクワラン、α-オレフィンオリゴマー、ポリイソブチレン、ポリブテン、水添ポリイソブテン、水添ポリデセン等の直鎖又は分岐の炭化水素油;イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸トリシクロデカンメチル、イソステアリン酸エチル、イソステアリン酸イソブチル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸2-ヘキシルデシル、コハク酸ジ2-エチルヘキシル、コハク酸ビスエトキシジグリコール、ラウリン酸ヘキシル、ジ(カプリル酸/カプリン酸)プロパンジオール、ジイソノナン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジイソステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、ジイソステアリン酸プロパンジオール、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、テトライソステアリン酸ジグリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、リンゴ酸オクチルドデシル、グリセリン脂肪酸エステル、ホホバ油、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸イソプロピル、2-エチルヘキサン酸セチル、トリ2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、2-エチルヘキサン酸2-ヘキシルデシル、ジ2-エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、ヒドロキシステアリン酸エチルヘキシル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリオクタン酸グリセリル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、トリメリト酸トリトリデシル、テトライソステアリン酸ジペンタエリスリチル、テトライソステアリン酸ペンタエリトリット、メトキシケイ皮酸オクチル、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、ダイマー酸ジイソプロピル、炭酸プロピレン等のエステル油;ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール等の高級アルコール;ジメチルポリシロキサン、ジメチルシクロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、トリメチルペンタフェニルトリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、高級アルコール変性オルガノポリシロキサン、ビスアルキル(C16-18)グリセリンウンデシルジメチコン等のシリコーン油;フルオロポリエーテル、パーフルオロアルキルエーテルシリコーン、フッ素変性シリコーン等のフッ素油;トコフェロール、ジプロピレングリコール、フェノキシエタノール等が挙げられる。これらの油性成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
固形粒子の使用感の点から、原料組成物は油性成分を好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、更に好ましくは75質量%以上含む。同様の観点から、原料組成物は油性成分を好ましくは100質量%以下、より好ましくは99質量%以下、更に好ましくは98質量%以下、更に好ましくは97質量%以下、更に好ましくは95質量%以下含む。特に、原料組成物は、油性成分を好ましくは40質量%以上100質量%以下、より好ましくは50質量%以上99質量%以下、更に好ましくは60質量%以上98質量%以下、更に好ましくは70質量%以上97質量%以下、更に好ましくは75質量%以上95質量%以下含む。
【0045】
原料組成物は20℃で固体状(融点が20℃を超える)である油性成分(例えば、上記ワックス)を含むことが、固形粒子の保形性を高める観点から好ましい。原料組成物は、20℃で固体状である油性成分を、固形粒子の保形性の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上含む。そして、20℃で固体状である油性成分を、固形粒子の使用感の観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下含む。特に、原料組成物は、20℃で固体状である油性成分を好ましくは5質量%以上30質量%以下、より好ましくは7質量%以上10質量%以下含む。また、原料組成物は20℃で液状(融点が20℃以下)である油性成分を含むことが、固形粒子の使用感を高める観点から好ましい。この観点から、原料組成物は20℃で液状である油性成分を好ましくは18質量%以上、より好ましくは25質量%以上、更に好ましくは35質量%以上含む。同様の観点から、原料組成物は20℃で液状である油性成分を好ましくは95質量%以下、より好ましくは93質量%以下、更に好ましくは90質量%以下含む。特に、原料組成物は、20℃で液状である油性成分を好ましくは18質量%以上95質量%以下、より好ましくは25質量%以上93質量%以下、更に好ましくは35質量%以上90質量%以下含む。
【0046】
油性成分が20℃で液状であるか否かは、各成分の安全データシート(SDS)・物理的状態に記載されている内容によって判定できる。原料組成物に20℃で液状である油性成分が上述の範囲で含まれていると、製造後の固形粒子のコア部の表面に油性成分が存在することになり、そのことに起因してコア部が他の物と結合しやすくなってしまう。これに対し、本発明の製造方法で製造された固形粒子は、コア部の表面がシェル部により被覆されているため、固形粒子同士又は他の物との意図しない結合が抑制され、耐付着性を有する。
【0047】
原料組成物に含まれる粉体成分としては、化粧料に従来用いられている各種のもの等を特に制限なく用いることができる。粉体成分は無機粉体でもよく、あるいは有機粉体でもよい。無機粉体と有機粉体とを併用してもよい。粉体成分を構成する粒子の形状に特に制限はなく、例えば球状、多面体状、フレーク状、紡錘状、繊維状、不定形、又はそれらの組み合わせであり得る。
【0048】
原料組成物に含まれる粉体成分としては、例えば着色顔料、光輝顔料及び体質顔料等の顔料を用いることができ、好ましくは、無機粉体の顔料である。
着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、黄酸化鉄、ベンガラ、黒酸化鉄、紺青、群青、酸化クロム、水酸化クロム等の金属酸化物;マンガンバイオレット、チタン酸コバルト等の金属錯体;更にカーボンブラック等の無機顔料;赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色227号、赤色228号、赤色230号、赤色401号、赤色405号、赤色505号、橙色203号、橙色204号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色401号、青色1号、青色404号等の合成有機顔料;β-カロチン、カラメル、パプリカ色素等の天然有機色素等が挙げられる。
光輝顔料としては、例えば、マイカ、合成フルオロフロゴパイト、ガラス、シリカ、アルミナ、タルク等の板状粉体等の表面を酸化チタン、酸化鉄、酸化ケイ素、紺青、酸化クロム、酸化スズ、水酸化クロム、金、銀、カルミン、赤色202号や黄色4号等の有機顔料等の着色剤で被覆したもの、及びポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層末、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム蒸着末、ポリエチレンテレフタレート・金蒸着積層末等のフィルム原反を任意形状に断裁したもの等が挙げられる。
体質顔料としては、例えば、シリカ、マイカ、合成フルオロフロゴパイト、ガラス末、硫酸バリウム、カオリン、ベントナイト、ヘクトライト、ゼオライト、オキシ塩化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、及びタルク等の無機粉体が挙げられる。
更には、ナイロン、ポリエチレン、(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー等のシリコーンエラストマー、ポリメタクリル酸メチル、ラウロイルリシン、シルクパウダー、セルロース末、長鎖脂肪酸の多価金属塩等の分散剤、及び各種ワックスパウダー等の有機粉末等が挙げられる。
【0049】
原料組成物に占める粉体成分の割合は好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、更に好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上である。また、原料組成物に占める粉体成分の割合は好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは45質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。特に、原料組成物に占める粉体成分の割合は好ましくは0.01質量%以上60質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上50質量%以下、更に好ましくは1質量%以上45質量%以下、更に好ましくは3質量%以上30質量%以下、更に好ましくは5質量%以上25質量%以下である。
【0050】
コア部の硬度は、固形粒子の使用感等に影響を与える要素の一つである。この観点から原料組成物の硬度は好ましくは500g以下、より好ましくは350g以下、更に好ましくは250g以下、より更に好ましくは150g以下である。一方、原料組成物の硬度を好ましくは0.5g以上、より好ましくは5g以上、更に好ましくは15g以上とすることで、原料組成物と他の物との意図しない結合を抑制できる。これらの観点から、原料組成物の硬度は好ましくは0.5g以上500g以下、より好ましくは5g以上350g以下、更に好ましくは15g以上250g以下、より更に好ましくは15g以上150g以下である。原料組成物の硬度は、実施例に記載の方法により測定される。
【0051】
〔粉体〕
工程3で使用する粉体の固形粒子の質量に対する割合(粉体付着率)は、耐付着性、輸送耐性の観点から、好ましくは4.0質量%以上、より好ましくは4.5質量%以上、更に好ましくは5.0質量%以上、より更に好ましくは6.0質量%以上である。また、使用感に影響を与えない観点から好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下、より更に好ましくは13質量%以下、より更に好ましくは12質量%以下である。
【0052】
粉体としては、化粧料に一般的に用いられるものと同様のものを特に制限なく用いることができ、粉体は無機粉体でもよく、無機粉体は顔料であってもよく、あるいは有機粉体でもよい。無機粉体と有機粉体とを併用してもよいが、無機粉体を含むことが好ましく、シリカが更に好ましい。
具体的には、前述の原料組成物に含まれる粉体成分と同じものを用いることができる。
【0053】
粉体としては、本発明の製造方法の対象物である固形粒子が、その製造過程において他の物に付着することが効果的に防止されるような大きさのものが好適に用いられる。例えば粉体を構成する粒子の大きさを、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積体積50容量%における体積累積粒径D50で表した場合、D50は好ましくは0.01μm以上で、より好ましくは0.1μm以上、更に好ましくは1μm以上、更に好ましくは5μm以上、更に好ましくは10μm以上である。この大きさの粉体を用いることで、粉体の除去操作を容易に行える。また、D50は好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下、更に好ましくは160μm以下、更に好ましくは100μm以下、更に好ましくは30μm以下である。この大きさの粉体を用いることで、粉体を容易に粒状原料の表面に付着させることができる。特にD50は好ましくは0.01μm以上500μm以下、より好ましくは0.1μm以上300μm以下、更に好ましくは1μm以上160μm以下、更に好ましくは5μm以上100μm以下、更に好ましくは10μm以上30μm以下である。
【0054】
固形粒子の製造過程における他の物との付着を効果的に防止する観点から、粉体はその吸油量が好ましくは5mL/100g以上、より好ましくは15mL/100g以上、更に好ましくは20mL/100g以上である。また粉体の吸油量は、粒状原料に含まれる油性成分が過度に粉体に吸収されないようにする観点から、好ましくは500mL/100g以下、より好ましくは400mL/100g以下、更に好ましくは350mL/100g以下である。吸油量はJIS K5101-13-1:2004に準拠して測定される。
【0055】
固形粒子中の粉体の量は、種々の方法により決定及び測定することが可能である。例えば、粉体が無機物である場合、以下に示すように示差熱熱重量同時測定装置を用い、固形粒子中の有機物を燃焼し、その残存率を測定することで定量することができる。無機物である粉体の量は、実施例に記載の方法により測定される。
【0056】
粉体が有機物である場合、固形粒子のすべての成分を溶媒で溶解したものを試料とし、1H-NMRやレーザー脱離イオン化質量分析法(LDI-MS)等の測定により、コア部に付着した粉体の量を定量することができる。
【0057】
本発明の製造方法で製造された固形粒子は、好ましくは化粧料として用いられる。例えば、固形粒子を潰して美容の目的でヒトの身体に塗布するという化粧方法に用いることができる。具体的には、固形粒子を化粧料パレット上に載置し、化粧筆を用いて潰した後に、化粧筆を用いて口紅のように口唇に塗布することができる。あるいは、固形粒子を手の甲上で潰してチークやコンシーラーのように頬に指で塗布することができる。あるいは、固形粒子を手の甲上で潰してハンドクリームのように指や手の甲に指で塗布することができる。更に、固形粒子を手で潰してオイルクレンジングのように使用することもできる。更に、固形粒子を手や道具を用いて潰し髪に塗布することで、トリートメントやヘアワックスのように使用することもできる。
【0058】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。
【実施例0059】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
〔原料組成物の調製〕
以下の表1に口紅用原料組成物の組成を、表2にアイシャドウ用原料組成物の組成を示す。いずれの原料組成物も、基剤原料を110℃で30分間加熱溶解し、ディスパーにて均一混合した。次に、着色顔料、光輝顔料、及び体質顔料、又は着色顔料、光輝顔料、及び分散剤を基剤原料に加えて更に15分間均一混合し、脱泡後に自然冷却にて固化させることで原料組成物を調製した。調製した原料組成物の融点を医薬部外品原料規格一般試験法に従い測定したところ、口紅用原料組成物については68℃、アイシャドウ用原料組成物については81℃であった。
【0060】
上記で調製した口紅用原料組成物を115℃にて加熱溶解し、樹脂製軟膏壺(直径30mm、高さ14mm)に高さ10mmまで充填した後、20℃で2時間冷却固化し、30℃で6時間以上静置した後でレオテック社製レオメーターを用いて、直径φ2mmの冶具にてtable speedが2mm/sの速さで冶具を深さ2mmまで針入させたときの加重の最大値を読み取ることによって測定したところ、口紅用原料組成物の硬度は35gであった。
上記で調製したアイシャドウ用原料組成物を同様の条件で測定したところ、硬度は41gであった。
【0061】
【0062】
【0063】
表1に示すように、口紅用原料組成物中の油性成分量は基材として示される成分の量89.4質量%であり、粉体成分量は着色顔料、光輝顔料、及び体質顔料の合計量10.6質量%であった。また、口紅用原料組成物中の融点が20℃を超える(20℃で固体である)油性成分量はパラフィン、ポリエチレンワックス、及びマイクロクリスタリンワックスの合計量8質量%であり、融点が20℃以下(20℃以下で液体である)の油性成分量はその他の成分の合計量81.4%であった。
表2に示すように、アイシャドウ用原料組成物中の油性成分量は基材として示される成分の量79.45質量%であり、粉体成分量は着色顔料、光輝顔料、及び分散剤の合計量20.55質量%であった。また、アイシャドウ用原料組成物中の融点が20℃を超える(20℃で固体である)油性成分量はパラフィン、合成ワックス、及びマイクロクリスタリンワックスの合計量9.0質量%であり、融点が20℃以下(20℃以下で液体である)油性成分量はその他の成分の合計量70.45質量%であった。
【0064】
〔原料組成物が粒状化する際に伸長する最大長さの測定〕
前記表1及び表2に従って調製した口紅用原料組成物及びアイシャドウ用原料組成物について、それぞれ表3に記載した滴下温度及び滴下流量でノズル12から吐出して粒状化する際に、各原料組成物がノズル12から垂れて伸長する最大長さを測定した。伸長する最大長さは、ハイスピードカメラ(Kron Technologies製chronos 1.4、フレームレート:500fps)を用いて観察し、伸長した各原料組成物がいずれかの箇所で切断される直前のフレームにおけるノズル12の先端から母粒子の下端までの距離とした。なお、伸長する最大長さの測定はそれぞれ3回ずつ行い、その平均は口紅用原料組成物については13.8mm、アイシャドウ用原料組成物については17.1mmであった。
【0065】
[実施例1]
工程1及び2(粒状原料の製造)
図3に示す装置によって、口紅用原料組成物から複数の粒状原料13を形成した。すなわち、原料組成物を90℃に加熱して溶融させることで流動性を付与した口紅用原料組成物10を、ポンプ11を用いて5.2mL/minで送液し、内径2.0mm、外径3.2mmのノズル12の先端より、表3に記載の滴下温度及び滴下距離で吐出することで、液滴としての粒状原料13を形成させた。なお、滴下距離とは、ノズル12の先端と粉体15の層の最表面との距離であり、滴下温度とはノズル12から吐出する際の原料組成物10の温度である。
【0066】
工程3(粒状原料の粉体への滴下及び粉体による被覆)
上記で形成された粒状原料13は、振動装置22及びトラフ21を備えた振動フィーダー23(シンフォニアテクノロジー株式会社製の小型電磁フィーダCF-2)で振幅0.663mm、周波数54.0Hzの振動が付与された温度25℃の粉体15が10mmの厚さで供給、載置されたトラフ21に、原料組成物が粒状化する際に伸長する最大長さの5.5倍の距離で滴下され、粒状原料13と粉体15とを接触させることで、粒状原料13の表面に粉体15を付着させた。
粉体15としては、平均粒径D50が15μmであり、吸油量が150mL/100gである球状シリカを用いた。これによって目的とする粒状原料13の表面に粉体15が付着することで、粒状原料13が粉体15で被覆された口紅用の固形粒子1を得た。
振幅の値は、レーザー変位計(キーエンス製LK―G5000)を用いて、トラフ21上面で振動装置22の直上の振幅を測定した値である。測定条件は拡散反射モード、サンプリング周期は200μs(5kHz)、移動平均4とした。
【0067】
(粉体の除去及び冷却)
その後、室温(25℃)下で目開き2,000μmの篩24を用いて粉体15と固形粒子1とを分離し、固形粒子1に付着していない粉体15を除去した。篩24上で1分間以上自然冷却し、固形粒子1を回収した。
【0068】
〔固形粒子1の評価〕
得られた固形粒子1から無作為に10個抽出し(但し、微粒子14が付着した粒子を含まない)評価を行ったところ、その平均質量は20.8mg、平均直径は4.1mm、平均高さは2.8mm、平均粉体付着率は9.8質量%であった。
【0069】
<粉体付着率>
固形粒子1中の粉体15として用いたシリカの量(付着率)は以下のとおり定量した。
得られた固形粒子1から無作為に10個抽出し、それぞれを株式会社日立ハイテクサイエンス製の示差熱熱重量同時測定装置TG-DTA EXSTAR 6200を用いて、200mL/minの空気供給下で25℃から600℃まで10℃/minで昇温し、燃焼後の残存物の質量を測定した。固形粒子1の製造に用いた原料組成物と同じ質量の原料組成物のみで同様の処理をした際の残存物の質量から以下の式で算出される値を粉体付着率とした。10個の固形粒子1の粉体付着率の平均を平均粉体付着率とする。
(粉体付着率(質量%))=(固形粒子1の残存物の質量%)-〔(原料組成物の残存物の質量%)÷[100-(原料組成物の残存物の質量%)]〕×[100-(固形粒子1の残存物の質量%)]
【0070】
<微粒子の付着率>
得られた固形粒子1から無作為に150個抽出し、粒状原料13の表面に微粒子14が付着した状態で、表面が粉体15により被覆されているかどうか目視で判別した。抽出した全固形粒子1から、
図4に示す微粒子付着無しの固形粒子1-1(粒状原料13と微粒子14とが合一後に粉体15により被覆)と、
図5に示す微粒子付着有りの固形粒子1-2(粒状原料13の表面に微粒子14が付着した粒子が粉体15により被覆)を選別し、微粒子付着率(%)を以下の式で算出した。実施例1の固形粒子において、微粒子付着率は7.6%であった。
微粒子付着率(%)=(固形粒子1-2(個)/固形粒子1(個))×100
【0071】
[実施例2及び3]
製造方法の各条件を表3に示すように変更した他は、実施例1と同様に口紅用の固形粒子1を製造した。得られた固形粒子1を実施例1と同様に評価した結果を表3に示す。
【0072】
[実施例4~9]
原料組成物をアイシャドウ用原料組成物に変更し、製造方法の各条件を表3に示すように変更した他は、実施例1と同様にアイシャドウ用の固形粒子1を製造した。得られた固形粒子1を実施例1と同様に評価した結果を表3に示す。
【0073】
[比較例1及び2]
製造方法の各条件を表3に示すように変更した他は、実施例1と同様に口紅用の固形粒子1を製造した。得られた固形粒子1を実施例1と同様に評価した結果を表3に示す。なお、比較例2の製造条件では、粒状原料が液柱から切断できなかったために粒状原料13を製造することができず、固形粒子1を製造できなかった。
【0074】
【0075】
表3に示すように、実施例1~9の製造方法によれば、粒状原料13と微粒子14とが合一後に粉体15により被覆されることによる外観が良好な球状の固形粒子1が高収率で得られた。
一方、比較例1の製造方法によれば、固形粒子の表面に微粒子が付着した外観が不良である固形粒子が多く得られた。
このように、本発明の製造方法によれば、固形粒子への微粒子の付着を抑制し、外観の良好な固形粒子を高収率で得ることができる。