(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094094
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】樹脂配管の気密性検査方法および樹脂配管の気密性検査装置
(51)【国際特許分類】
G01M 3/22 20060101AFI20240702BHJP
G01M 3/20 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
G01M3/22
G01M3/20 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210841
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100179947
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 晃太郎
(72)【発明者】
【氏名】柏又 智明
(72)【発明者】
【氏名】杉村 考之
【テーマコード(参考)】
2G067
【Fターム(参考)】
2G067AA11
2G067BB02
2G067BB03
2G067BB22
2G067CC04
2G067CC18
2G067DD17
2G067EE05
(57)【要約】
【課題】樹脂配管の気密性を簡易に検査することができ、加えて、検査できる樹脂配管に対してより自由度を持たせることができる、樹脂配管の気密性検査方法および気密性検査装置を提供する。
【解決手段】本発明は、樹脂配管の内部の気密性を検査するための、樹脂配管の気密性検査方法である。前記方法は、樹脂配管の内部ガスを除去し、その後、配管の内部に試験ガスを供給し、前記配管の内部を密閉し、前記配管を試験空間に配置し、前記試験空間に含まれる前記試験ガスの濃度を測定し、当該試験空間ガス濃度に基いて前記樹脂配管の気密性を判断する。気密性検査装置は、試験空間ガス濃度に基いて前記樹脂配管の気密性を判断する気密性判断部を含んでいる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂配管の気密性を検査するための、樹脂配管の気密性検査方法であって、
前記樹脂配管の内部ガスを除去する、樹脂配管内ガス除去工程と、
前記樹脂配管内ガス除去工程の後に、前記樹脂配管の内部に試験ガスを充填する、試験ガス充填工程と、
前記樹脂配管の内部を密閉する、樹脂配管密閉工程と、
前記樹脂配管を試験空間に配置する、樹脂配管配置工程と、
前記試験空間に含まれる前記試験ガスの濃度を試験空間ガス濃度として測定する、試験空間ガス濃度測定工程と、
前記試験空間ガス濃度に基いて前記樹脂配管の気密性を判断する、気密性判断工程と、を含んでいる、樹脂配管の気密性検査方法。
【請求項2】
前記試験空間の前記試験ガスに流動を生じさせる試験空間内ガス流動発生工程を、さらに含んでいる、請求項1に記載された樹脂配管の気密性検査方法。
【請求項3】
前記試験空間ガス濃度測定工程において、前記試験空間に含まれる前記試験ガスの濃度を、前記樹脂配管に沿った複数個所で測定する、請求項1に記載された樹脂配管の気密性検査方法。
【請求項4】
前記試験空間ガス濃度測定工程において、前記試験空間が複数の測定空間に区画されており、当該複数の測定空間のそれぞれで、前記試験空間に含まれる前記試験ガスの濃度を測定する、請求項1に記載された樹脂配管の気密性検査方法。
【請求項5】
樹脂配管の気密性を検査するための、樹脂配管の気密性検査装置であって、
前記樹脂配管の内部ガスを除去する、樹脂配管内ガス除去部と、
前記樹脂配管の内部に試験ガスを充填する、試験ガス充填部と、
前記樹脂配管の内部を密閉する、樹脂配管密閉部と、
前記樹脂配管を配置可能な試験空間を有している、試験容器と、
前記試験空間に配置されているとともに当該試験空間に含まれる前記試験ガスの濃度を電気信号に変換して試験空間ガス濃度として出力する、試験空間用ガスセンサと、
前記試験空間ガス濃度に基いて前記樹脂配管の気密性を判断する気密性判断部と、を含んでいる、樹脂配管の気密性検査装置。
【請求項6】
前記試験空間の試験ガスに流動を生じさせる試験空間内ガス流動発生部を、さらに含んでいる、請求項5に記載された樹脂配管の気密性検査装置。
【請求項7】
前記試験空間用ガスセンサは、前記樹脂配管に沿って配置された複数のガスセンサである、請求項5に記載された樹脂配管の気密性検査装置。
【請求項8】
前記試験容器は、前記試験空間を複数の測定空間に区画する仕切部を有している、請求項5に記載された樹脂配管の気密性検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂配管の気密性検査方法および樹脂配管の気密性検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の配管の気密性検査方法および気密性検査装置には、検査対象としての配管の内部に圧縮空気を注入し、次いで、当該圧縮空気が注入された前記配管を一定期間放置し、その後、圧縮空気の圧力の低下がないことが認められた場合には、前記配管を合格とするものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術は、圧縮空気を注入するために、前記配管の一端を気密に塞いだ状態で当該配管を試験台に対して支持する一方、前記配管の他端を塞ぐキャップに圧縮空気を注入するための通孔を設け、当該キャップをシリンダに挿入されたピストンロッドの先端に取り付けて当該ピストンロッドを押し込む方向に動作させる必要がある。このため、上記従来技術は、検査に要する工数が多く、複雑な装置を必要とする。さらに、上記従来技術は、試験台に支持する必要があるため、検査できる配管の長さに制約がある。
【0005】
本発明の目的は、樹脂配管の気密性を簡易に検査することができ、加えて、検査できる樹脂配管に対してより自由度を持たせることができる、樹脂配管の気密性検査方法および樹脂配管の気密性検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る、樹脂配管の気密性検査方法は、樹脂配管の内部の気密性を検査するための、樹脂配管の気密性検査方法であって、前記樹脂配管の内部ガスを除去する、樹脂配管内ガス除去工程と、前記樹脂配管内ガス除去工程の後に、前記樹脂配管の内部に試験ガスを充填する、試験ガス充填工程と、前記樹脂配管の内部を密閉する、樹脂配管密閉工程と、前記樹脂配管を試験空間に配置する、樹脂配管配置工程と、前記試験空間に含まれる前記試験ガスの濃度を試験空間ガス濃度として測定する、試験空間ガス濃度測定工程と、前記試験空間ガス濃度に基いて前記樹脂配管の気密性を判断する、気密性判断工程と、を含んでいる。本発明に係る、樹脂配管の気密性検査方法によれば、樹脂配管の気密性を簡易に検査することができ、加えて、検査できる樹脂配管の長さに対してより自由度を持たせることができる。
【0007】
(2)上記(1)の、樹脂配管の気密性検査方法は、前記試験空間の前記試験ガスに流動を生じさせる試験空間内ガス流動発生工程を、さらに含んでいることが好ましい。この場合、樹脂配管の気密性をより迅速に検査することができる。
【0008】
(3)上記(1)又は(2)の、樹脂配管の気密性検査方法は、前記試験空間ガス濃度測定工程において、前記試験空間に含まれる前記試験ガスの濃度を、前記樹脂配管に沿った複数個所で測定することが好ましい。この場合、樹脂配管の気密性をより迅速にかつより高い精度で検査することができる。
【0009】
(4)上記(1)~(3)のいずれか1つの、樹脂配管の気密性検査方法は、前記試験空間ガス濃度測定工程において、前記試験空間が複数の測定空間に区画されており、当該複数の測定空間のそれぞれで、前記試験空間に含まれる前記試験ガスの濃度を測定することが好ましい。この場合、樹脂配管の気密性をより迅速にかつより高い精度で検査することができる。
【0010】
(5)本発明に係る、樹脂配管の気密性検査装置は、樹脂配管の気密性を検査するための、樹脂配管の気密性検査装置であって、前記樹脂配管の内部ガスを除去する、樹脂配管内ガス除去部と、前記樹脂配管の内部に試験ガスを充填する、試験ガス充填部と、前記樹脂配管の内部を密閉する、樹脂配管密閉部と、前記樹脂配管を配置可能な試験空間を有している、試験容器と、前記試験空間に配置されているとともに当該試験空間に含まれる前記試験ガスの濃度を電気信号に変換して試験空間ガス濃度として出力する、試験空間用ガスセンサと、前記試験空間ガス濃度に基いて前記樹脂配管の気密性を判断する気密性判断部と、を含んでいる。本発明に係る、樹脂配管の気密性検査装置によれば、樹脂配管の気密性を簡易に検査することができ、加えて、検査できる樹脂配管に対してより自由度を持たせることができる。
【0011】
(6)上記(5)の、樹脂配管の気密性検査装置は、前記試験空間の試験ガスに流動を生じさせる試験空間内ガス流動発生部を、さらに含んでいることが好ましい。この場合、樹脂配管の気密性をより迅速に検査することができる。
【0012】
(7)上記(5)又は(6)の、樹脂配管の気密性検査装置において、前記試験空間用ガスセンサは、前記樹脂配管に沿って配置された複数のガスセンサであることが好ましい。この場合、樹脂配管の気密性をより迅速にかつより高い精度で検査することができる。
【0013】
(8)上記(5)~(7)のいずれか1つの、樹脂配管の気密性検査装置において、前記試験容器は、前記試験空間を複数の測定空間に区画する仕切部を有していることが好ましい。この場合、樹脂配管の気密性をより迅速にかつより高い精度で検査することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、樹脂配管の気密性を簡易に検査することができ、加えて、検査できる樹脂配管に対してより自由度を持たせることができる、樹脂配管の気密性検査方法および気密性検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る、樹脂配管の気密性検査方法を概略的に示すフローチャートである。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る、樹脂配管の気密性検査装置を概略的に示す図である。
【
図3】本発明の第2実施形態に係る、樹脂配管の気密性検査方法を概略的に示すフローチャートである。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る、樹脂配管の気密性検査装置を概略的に示す斜視図である。
【
図5】
図4の試験容器を概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の例示的な実施形態に係る、樹脂配管の内部の気密性を検査するための、樹脂配管の気密性検査方法と、当該気密性検査方法を実行可能な、本発明の例示的な実施形態に係る、樹脂配管の気密性検査装置について、説明をする。
【0017】
図1は、本発明の第1実施形態に係る、樹脂配管の内部の気密性を検査するための、樹脂配管の気密性検査方法を概略的に示すフローチャートである。また、
図2は、
図1のフローチャートに従って、当該気密性検査方法を実行可能な、本発明の第1実施形態に係る、樹脂配管の気密性検査装置1Aを概略的に示す。
【0018】
(気密性検査方法)
図1を参照すれば、本実施形態に係る、樹脂配管の気密性検査方法は、樹脂配管(10)の内部ガスを除去する、樹脂配管内ガス除去工程(ステップS1)と、前記樹脂配管内ガス除去工程(ステップS1)の後に、樹脂配管(10)の内部に試験ガス(g)を充填する、試験ガス充填工程(ステップS2)と、樹脂配管(10)の内部を密閉する、樹脂配管密閉工程(ステップS3)と、樹脂配管(10)の内部が密閉された後に当該樹脂配管(10)を試験空間(S)に配置する、樹脂配管配置工程(ステップS4)と、試験空間(S)に含まれる試験ガス(g)の濃度を試験空間ガス濃度C1として測定する、試験空間ガス濃度測定工程(ステップS6)と、試験空間ガス濃度C1に基いて樹脂配管(10)の気密性を判断する、気密性判断工程(ステップS8、ステップS10、ステップS11)と、を含んでいる。
【0019】
また、本実施形態に係る、気密性検査方法は、樹脂配管(10)を試験空間(S)に配置した後に当該試験空間(S)を閉じる、試験空間閉じ工程(ステップS5)を含んでいる。
【0020】
加えて、本実施形態に係る、気密性検査方法は、試験空間(S)の外部において試験ガス(g)の濃度を外部ガス濃度C2として測定する、外部ガス濃度測定工程(ステップS7)と、試験空間ガス濃度C1と外部ガス濃度C2とを比較して樹脂配管(10)の気密性をさらに判断する、気密性再判断工程(ステップS9、ステップS10、ステップS11)と、を含んでいる。
【0021】
ここで、本実施形態に係る、気密性検査方法をより具体的に説明する。
【0022】
ステップS1は、樹脂配管内ガス除去工程である。本実施形態では、例えば、樹脂配管(10)の長手方向一方側端部を密封しておく一方で、当該樹脂配管(10)の長手方向他方側端部に接続された配管内ガス除去部(2)を通して、樹脂配管(10)の内部に存在する内部ガス(例えば、空気)を取り除く。
【0023】
樹脂配管内ガス除去部(2)は、例えば、吸引要素(2a)を含む。具体的には、樹脂配管(10)の長手方向一方側端部に密封栓(4a)を取り付ける一方で、当該樹脂配管(10)の長手方向他方側端部に接続した吸引要素(2a)によって、樹脂配管(10)の内部ガスを吸引する。これによって、樹脂配管(10)の内部を減圧状態(より真空に近い状態が好ましい)にすることができる。
【0024】
吸引要素(2a)は、例えば、樹脂配管(10)の長手方向他方側端部側を減圧させることによって、樹脂配管(10)の内部ガスを吸引する。
【0025】
ステップS2は、試験ガス充填工程である。本実施形態では、樹脂配管(10)の内部ガスを取り除いたのち、当該樹脂配管(10)の長手方向他方側端部に接続された試験ガス充填部(3)から、当該樹脂配管(10)の内部に試験ガス(g)を供給する。このとき、試験ガス(g)は、樹脂配管(10)の内部が減圧されていることによって、当該樹脂配管(10)の内部に速やかに流入する。これによって、樹脂配管(10)の内部には、試験ガス(g)が迅速かつ高い濃度で充填される。
【0026】
試験ガス充填部(3)は、例えば、試験ガス供給源(3a)を含む。具体的には、樹脂配管(10)の長手方向一方側端部に密封栓(4a)を取り付けたままで、当該樹脂配管(10)の長手方向他方側端部に接続した試験ガス供給源(3a)から試験ガス(g)を供給する。試験ガス(g)は、試験ガス供給源(3a)からの圧送とともに樹脂配管(10)の内部が減圧状態にあることによって、樹脂配管(10)の内部に迅速かつ高い濃度で充填される。
【0027】
ただし、吸引要素(2a)又は試験ガス供給源(3a)と樹脂配管(10)との連通は、切り替えによって行うことができる。吸引要素(2a)と試験ガス供給源(3a)との切り替えは、例えば、吸引要素(2a)と樹脂配管(10)との間に配置した開閉弁(4b)と、試験ガス供給源(3a)と樹脂配管(10)との間に配置した開閉弁(4c)とによって行うことができる。
【0028】
試験ガス(g)としては、例えば、樹脂配管(10)に対するガス透過性能が低いガスが好ましい。ただし、本発明によれば、試験ガス(g)は、試験の重要性などの状況に応じたガス透過性能を有したガスであれば、適宜使用することができる。試験ガス(g)の具体例としては、二酸化炭素ガス、酸素ガス、窒素ガス、アルゴンガス、アルコールガス、窒素酸化物ガス、硫化水素ガス、アンモニアガスが挙げられる。試験ガス供給源(3a)としては、例えば、ガスボンベが挙げられる。また、樹脂配管(10)の材料としては、例えば、ポリブデン、架橋ポリエチレン、直鎖状ポリエチレンが挙げられる。本実施形態では、樹脂配管(10)は、ポリブデンによって形成されている。また、試験ガス(g)には、二酸化炭素ガスを使用している。
【0029】
ステップS3は、樹脂配管密閉工程である。本実施形態では、吸引要素(2a)及び試験ガス供給源(3a)を取り外すことなく、樹脂配管(10)の内部に試験ガス(g)が充填された状態のまま、当該樹脂配管(10)の内部を密閉する。これによって、樹脂配管(10)からの試験ガス(g)の予期せぬ漏れをより正確に検出することができる。
【0030】
樹脂配管(10)の密閉は、例えば、上述の2つの開閉弁(4b、4c)によって行うことができる。具体的には、樹脂配管(10)の長手方向一方側端部を密封したままで、上述の2つの開閉弁(4b、4c)を閉じる。この場合、樹脂配管内ガス除去部(2)及び試験ガス充填部(3)を取り外したのち、樹脂配管(10)の長手方向他方側端部を改めて密封することなく、樹脂配管(10)の内部を密封させることができる。ただし、樹脂配管(10)の密閉は、試験ガス充填部(3)を取り外すことによって行うこともできる。
【0031】
ステップS4は、樹脂配管配置工程である。本実施形態では、試験ガス(g)を充填させた樹脂配管(10)を試験空間(S)に配置する。試験空間(S)は、例えば、試験容器(5)の内部に形成された収容空間とすることができる。試験容器(5)は、例えば、容器本体(5a)と蓋(5b)とを備えるものとすることができる。この場合、試験空間(S)は、容器本体(5a)の内部に形成される。樹脂配管(10)は、例えば、容器本体(5a)に形成された開口(A5)を通して、試験空間(S)に配置される。開口(A5)は、例えば、容器本体(5a)の上部に形成することができる。試験容器(5)は、樹脂配管(10)全体を包囲することが好ましい。ただし、試験容器(5)は、試験空間(S)の一部を開放するものであってもよい。
【0032】
ステップS5は、試験空間閉じ工程である。本実施形態では、樹脂配管(10)を試験空間(S)に配置した後、当該試験空間(S)を、蓋(5b)によって閉じる。ここで、試験空間(S)を閉じるとは、当該試験空間(S)が完全に密閉されている場合と、当該試験空間(S)に外気が流入することを許容する場合との両方を含む。即ち、本発明において、試験空間(S)を閉じるとは、当該試験空間(S)を気密状態に閉じることに限定されるものではない。
【0033】
ステップS6は、試験空間ガス濃度測定工程である。本実施形態では、試験空間(S)に含まれる試験ガス(g)の濃度を試験空間ガス濃度C1として、当該試験空間ガス濃度C1を測定する。試験空間ガス濃度C1は、例えば、所定の時間間隔で連続的に測定される。
【0034】
試験空間(S)に含まれる試験ガス(g)の濃度(C1)は、試験空間用ガスセンサ(6)によって測定することができる。試験空間用ガスセンサ(6)には、例えば、試験ガス(g)の濃度を電気信号に変換して出力する、一般的なガスセンサを用いることができる。試験空間用ガスセンサ(6)は、試験容器(5)の内部の任意の位置に取り付けることができる。
【0035】
試験空間(S)に含まれる試験ガス(g)の濃度(C1)は、試験空間(S)の複数の位置で測定することが好ましい。この場合、試験空間ガス濃度(C1)のサンプルをより多く得ることができる。ただし、試験空間(S)に含まれる試験ガス(g)の濃度C1は、試験空間(S)の少なくとも1か所の位置で測定することもできる。
【0036】
ところで、試験ガス(g)が空気よりも重い場合、試験ガス(g)の濃度(C1)が測定される位置は、試験空間(S)の下側の位置とすることが好ましい。本実施形態において、試験ガス(g)は二酸化炭素である。この場合、試験ガス(g)の濃度(C1)は、試験空間(S)の下側の位置で測定することが好ましい。また、本実施形態とは反対に、試験ガス(g)が空気よりも軽い場合、試験ガス(g)の濃度(C1)は、試験空間(S)の上側の位置で測定することが好ましい。例えば、試験ガス(g)がアルゴンである場合、試験ガス(g)の濃度(C1)は、試験空間(S)の上側の位置で測定することが好ましい。
【0037】
特に、本実施形態のように、試験ガス(g)が空気よりも重い場合、試験空間(S)は、下側に向かうにしたがって先細るような傾斜底面(f5c)で区画されることが好ましい。また、本実施形態とは反対に、試験ガス(g)が空気よりも軽い場合、試験空間(S)は、上側に向かうにしたがって先細るような傾斜底面で区画されることが好ましい。
【0038】
なお、試験空間ガス濃度測定工程(ステップS6)は、試験空間閉じ工程(ステップS5)の後に開始することが効率的であるが、試験空間閉じ工程(ステップS5)に先立って開始してもよい。
【0039】
ステップS7は、外部ガス濃度測定工程である。本実施形態では、試験空間(S)の外側における試験ガス(g)の濃度を外部ガス濃度C2として、当該外部ガス濃度C2を測定する。外部ガス濃度C2は、試験空間ガス濃度C1と同様、例えば、所定の時間間隔で連続的に測定される。
【0040】
試験空間(S)の外側における試験ガス(g)の濃度(C2)は、外部用ガスセンサ(7)によって測定することができる。外部用ガスセンサ(7)には、試験空間用ガスセンサ(6)と同様に、例えば、試験ガス(g)の濃度を電気信号に変換して出力する、一般的なガスセンサを用いることができる。外部用ガスセンサ(7)は、試験容器(5)の周囲の任意の位置に取り付けることができる。
【0041】
試験空間(S)の外側における試験ガス(g)の濃度(C2)の測定は、試験空間(S)に近い外気で行うことが好ましいが、本発明によれば、これに限定されるものではない。試験空間(S)の外側における試験ガス(g)の濃度(C2)は、試験空間ガス濃度C1のように、試験空間(S)よりも外側(試験容器(5)の外側)の複数の位置で測定することができる。この場合、外部ガス濃度C2のサンプルをより多く得ることができる。ただし、試験空間(S)の外側における試験ガス(g)の濃度(C2)は、試験容器5の外側の少なくとも1か所の位置で測定してもよい。
【0042】
また、本実施形態では、外部ガス濃度測定工程(ステップS7)は、試験空間ガス濃度測定工程(ステップS6)の後に行われているが、試験空間ガス濃度測定工程(ステップS6)と同時に、或いは、試験空間ガス濃度測定工程(ステップS6)よりも前に開始することができる。また、外部ガス濃度測定工程(ステップS7)も、試験空間ガス濃度測定工程(ステップS6)と同様、試験空間閉じ工程(ステップS5)の後に開始することが効率的であるが、試験空間閉じ工程(ステップS5)に先立って開始してもよい。
【0043】
ステップS8は、気密性判断工程である。本実施形態では、例えば、試験空間用ガスセンサ(6)から測定された試験空間ガス濃度C1が上昇したどうかを判断する。本実施形態では、試験空間ガス濃度C1が上昇したときには、樹脂配管(10)の気密性を良好ではないと判断し、次の工程(ステップS9)に進む。その一方で、試験空間ガス濃度C1が上昇していないときには、ステップS11に進んで、樹脂配管(10)の気密性は良好であると判断する。これによって、樹脂配管(10)の気密性に問題が無いかどうかを試験(検査)することができる。
【0044】
試験空間ガス濃度C1が上昇したかどうかは、例えば、作業者が、ガスセンサからの電気信号に基づいてモニタ(ディスプレイ)に表示された試験空間ガス濃度C1の波形の変化から読み取ることができる。例えば、モニタに表示される波形が上昇した場合、作業者は、試験空間(S)に収容された樹脂配管(10)に漏れが生じている可能性が高いと判断することができる。これによって、樹脂配管(10)の気密性に問題が無いかどうかを、作業者自身が直接的に判断することができる。或いは、パーソナルコンピュータなどの処理装置(8)を用いて、当該処理装置(8)に、ガスセンサから算出された試験空間ガス濃度C1が所定の値以上となったかどうかで判断させることができる。例えば、ガスセンサから算出された試験空間ガス濃度C1が所定の値以上となった場合、処理装置(8)は、試験空間(S)に配置された樹脂配管(10)に漏れが生じている可能性が高いと判断する。これによって、樹脂配管(10)の気密性に問題が無いかどうかを、処理装置(8)に判断させることができる。
【0045】
本発明によれば、気密性判断工程(ステップS8)にて、試験空間ガス濃度C1が上昇したと判断した時点で、次の工程としてステップS10に進んで、樹脂配管(10)の気密性は良好ではないと判断することができる。
【0046】
その一方で、本実施形態では、試験空間ガス濃度C1が上昇したと判断した場合でも、外部ガス濃度C2との関係を考慮することにより、気密性判断試験の再試験が必要であるかどうかを慎重に判断している。
【0047】
ステップS9は、気密性再判断工程である。本実施形態では、試験空間ガス濃度C1の測定値と、外部ガス濃度C2の測定値とを比較して、試験空間ガス濃度C1が外部ガス濃度C2を超えているかどうかを判断する。本実施形態では、試験空間ガス濃度C1が外部ガス濃度C2を超えているときには、次の工程としてステップS10に進んで、樹脂配管(10)の気密性は良好ではないと判断する。その一方で、試験空間ガス濃度C1が外部ガス濃度C2以下であるときには、次の工程としてステップS11に進んで、樹脂配管(10)の気密性は良好であると判断する。これによって、樹脂配管(10)の気密性に問題が無いかどうかを、より正確に試験(検査)することができる。
【0048】
試験空間ガス濃度C1が外部ガス濃度C2を超えているかどうかは、例えば、作業者が、ガスセンサからの電気信号に基いてモニタに表示された試験空間ガス濃度C1の波形と、外部ガス濃度C2の波形との間の差から読み取ることができる。例えば、モニタの表示上、試験空間ガス濃度C1の波形が外部ガス濃度C2の波形を超えている場合、作業者は、試験空間(S)に収容された樹脂配管(10)に漏れが生じている可能性がより高いと判断することができる。これによって、樹脂配管(10)の気密性に問題が無いかどうかを、より正確に、作業者自身が直接的に判断することができる。或いは、処理装置(8)を用いて、当該処理装置(8)に、試験空間ガス濃度C1の波形と、外部ガス濃度C2の波形との間の差が所定の値以上となったかどうかで判断させることができる。例えば、試験空間ガス濃度C1の測定値が外部ガス濃度C2の測定値を超えている場合、処理装置(8)は、試験空間(S)に収容された樹脂配管(10)に漏れが生じている可能性がより高いと判断する。これによって、樹脂配管(10)の気密性に問題が無いかどうかを、より正確に、処理装置(8)に判断させることができる。
【0049】
ステップS10では、樹脂配管(10)の気密性は良好ではないことを、作業者に対してさらに認識させることができる。樹脂配管(10)の気密性が良好ではないと判断される場合、例えば、モニタ上に警告表示を表示させることにより、または、スピーカを通して警告音を発しさせることにより、作業者に対して認識させることができる。
【0050】
また、ステップS11でも、樹脂配管(10)の気密性は良好であることを、作業者に対してさらに認識させることができる。樹脂配管(10)の気密性が良好である判断される場合、例えば、モニタ上に警告表示と異なる表示をさせることにより、または、スピーカを通して警告音と異なる音を発しさせることにより、作業者に対して認識させることができる。
【0051】
上述のとおり、本実施形態に係る、気密性検査方法は、樹脂配管内ガス除去工程(ステップS1)と、試験ガス充填工程(ステップS2)と、樹脂配管密閉工程(ステップS3)と、樹脂配管配置工程(ステップS4)と、試験空間ガス濃度測定工程(ステップS6)と、試験空間ガス濃度(C1)に基いて判断される気密性判断工程(ステップS8、ステップS10、ステップS11)と、を含んでいる。これによって、作業者は、樹脂配管(10)の内部に試験ガス(g)を密閉充填して気密性の試験のための試験片とし、当該試験片を試験空間(S)に配置した後に、試験空間(S)に含まれる試験空間ガス濃度(C1)の上昇を追跡するだけで、樹脂配管(10)の気密性を検査することができる。
【0052】
即ち、本実施形態によれば、従来の技術のように、樹脂配管(10)の内部に圧縮空気を充填し、当該圧縮空気の圧力の低下を確認する必要がない。このため、本実施形態によれば、気密性の試験のための試験片は、樹脂配管(10)に圧縮ガスを充填させることなく、樹脂配管(10)の内部に試験ガス(g)を充填した後に当該樹脂配管(10)の内部を密閉するだけで形成することができる。また、本実施形態では、圧縮ガスを使用する必要が無いため、従来技術のように、ピストンなどの機構を別途動作させて樹脂配管(10)の長手方向端部の開口にキャップを強固に圧入させる必要がない。さらに、従来技術のように、樹脂配管(10)を試験空間(S)に取り付ける必要も無い。したがって、本実施形態によれば、検査に要する工数を軽減することができ、検査装置も簡易なものとすることができる。特に、本実施形態では、樹脂配管(10)を試験空間(S)に取り付けて固定する必要が無いことから、例えば、当該樹脂配管(10)を丸めた状態で試験空間(S)に配置することができる。したがって、本実施形態によれば、検査できる樹脂配管(10)に対して、例えば、検査できる樹脂配管(10)の長さに対して、より自由度を持たせることができる。
【0053】
上述のとおり、本実施形態に係る、樹脂配管の気密性検査方法によれば、樹脂配管(10)の気密性を簡易に検査することができ、加えて、検査できる樹脂配管(10)に対してより自由度を持たせることができる。
【0054】
特に、本実施形態に係る、樹脂配管の気密性検査方法では、樹脂配管(10)に試験ガス(g)を充填する前に、樹脂配管(10)の内部ガスを除去している。これによって、樹脂配管(10)の内部は、樹脂配管(10)の周囲に比べて、減圧された状態となっている。この場合、試験ガス(g)は、樹脂配管(10)の内部の負圧によって、積極的に吸引される。その結果、試験ガス(g)が樹脂配管(10)に充填される時間は、樹脂配管(10)の内部ガスを除去しない場合に比べて、大幅に短縮される。したがって、本実施形態に係る、樹脂配管の気密性検査方法によれば、樹脂配管(10)の気密性を迅速に検査することができる。
【0055】
また、本実施形態は、外部ガス濃度測定工程(ステップS7)と、試験空間ガス濃度C1と外部ガス濃度C2とに基いて判断される気密性再判断工程(ステップS9、ステップS10、ステップS11)と、を含んでいる。この場合、試験空間ガス濃度C1と外部ガス濃度C2を比較することによって、試験空間(S)と当該試験空間(S)よりも外側の外界との関係を考慮することができる。これによって、樹脂配管(10)の気密性をより高い精度で検査することができる。具体的には、試験容器(5)の蓋(5b)を閉じることによって試験空間(S)を外界に対して遮断することなく、当該試験空間(S)を外界に通じさせている場合でも、樹脂配管(10)の気密性をより高い精度で検査することができる。
【0056】
また、本実施形態において、試験空間ガス濃度C1は、試験空間(S)の複数の位置で測定される。この場合、試験空間ガス濃度C1のサンプルとしてより多くのサンプルが得られる。したがって、この場合、樹脂配管(10)の気密性をより高い精度で検査することができる。
【0057】
また、本実施形態では、試験ガス(g)が空気よりも重いガスであり、試験空間ガス濃度(C1)が測定される位置は、試験空間(S)の下半分の位置である。この場合、仮に樹脂配管(10)に充填された試験ガス(g)が試験空間(S)に漏れた場合、当該試験ガス(g)は、試験空間(S)の下側に沈降する傾向となる。したがって、この場合、試験空間ガス濃度(C1)のサンプルとして試験空間(S)の下半分のガス濃度を利用すれば、樹脂配管(10)の気密性をより迅速にかつより高い精度で検査することができる。
【0058】
また、本実施形態では、試験空間(S)は、下側に向かうにしたがって先細るような傾斜底面(f5c)で区画される。この場合、試験空間(S)に沈降する試験ガス(g)を当該試験空間(S)の最深部(5d)近くに集約し、当該試験ガス(g)の濃度を、試験空間ガス濃度C1のサンプルとして利用することができる、したがって、この場合、樹脂配管(10)の気密性をより一層迅速にかつより一層高い精度で検査することができる。
【0059】
また、本実施形態は、試験空間閉じ工程(ステップS5)を含んでいる。この場合、樹脂配管(10)を配置した後に試験空間(S)を閉じることにより、試験空間(S)の外からの、当該試験空間(S)への空気の流入を抑制することができる。また、この場合、空気中に含まれている試験ガス(g)と同様のガスが試験空間(S)に流入することに伴う、検査に対する外乱を抑制することができる。したがって、この場合、樹脂配管(10)の気密性をより高い精度で検査することができる。
【0060】
また、本実施形態において、試験ガス(g)は二酸化炭素ガスである。二酸化炭素は取り扱いが容易で、空気よりも重いために拡散し難い。したがって、この場合、樹脂配管(10)の気密性をより容易に検査することができる。
【0061】
また、本実施形態において、試験ガス(g)の濃度の測定に、当該試験ガス(g)の濃度を電気信号に変換して出力する、ガスセンサを用いることが好ましい。この場合、試験ガス(g)の濃度を容易に測定することができる。
【0062】
また、本実施形態では、気密性判断工程(ステップS8)は、例えば、樹脂配管配置工程(ステップS4)または試験空間閉じ工程(ステップS5)の終了後、所定時間tが経過するまで行わないようにすることができる。即ち、本実施形態では、樹脂配管(10)を試験空間(S)に配置した後、または、樹脂配管(10)を試験空間(S)に配置して蓋(5b)を閉じた後、所定時間tの間、樹脂配管(10)を試験空間(S)に放置し、当該試験空間(S)に含まれる試験ガス(g)が上昇するかどうかの判断を待つことができる。この場合、所定時間tは、例えば、樹脂配管(10)の気密性に問題がある場合を予め考慮しておくことにより、漏れた試験ガス(g)の測定が可能となると想定される時間に設定することができる。
【0063】
(気密性検査装置)
次に、
図2の気密性検査装置1Aについて説明をする。気密性検査装置1Aは、樹脂配管10の気密性を検査することができる。本実施形態において、樹脂配管10は、配管本体11と継手12とを備えている。配管本体11及び継手12の材料としては、例えば、ポリブデン、架橋ポリエチレン、直鎖状ポリエチレンが挙げられる。本実施形態では、配管本体11及び継手12は、ポリブデンによって形成されている。継手12は、配管本体11に接続されている。気密性検査装置1Aは、例えば、配管本体11と継手12との間の気密性を検査することができる。
【0064】
図2を参照すれば、気密性検査装置1Aは、樹脂配管10の内部ガスを除去する、配管内ガス除去部2と、樹脂配管10の内部に試験ガスgを充填する、試験ガス充填部3と、樹脂配管10の内部を密閉する、樹脂配管密閉部4と、樹脂配管10を配置可能な試験空間Sを有している、試験容器5と、試験空間Sに配置されているとともに当該試験空間Sに含まれる試験ガスgの濃度を電気信号に変換して試験空間ガス濃度C1として出力する、試験空間用ガスセンサ6と、試験空間ガス濃度C1に基いて樹脂配管10の気密性を判断する気密性判断部(8)と、を含んでいる。
【0065】
また、本実施形態では、試験容器5の外部に含まれる試験ガスgの濃度を電気信号に変換して外部ガス濃度C2として出力する、外部用ガスセンサ7と、試験空間ガス濃度C1と外部ガス濃度C2とに基いて樹脂配管10の気密性をさらに判断する気密性再判断部(8)と、を更に含んでいる。
【0066】
より具体的に説明すると、本実施形態では、配管内ガス除去部2は、吸引要素2aと、吸引要素2aを樹脂配管10に接続する接続用配管2bと、を有している。吸引要素2aとしては、例えば、真空ポンプが挙げられる。本実施形態において、吸引要素2aは、真空ポンプである。
【0067】
次いで、本実施形態では、試験ガス充填部3は、試験ガスgが充填された試験ガス供給源3aと、試験ガス供給源3aを樹脂配管10に接続する接続用配管3bと、減圧弁3cと、を有している。本実施形態において、接続用配管3bは、接続用配管2bと樹脂配管10の側で合流している。これによって、本実施形態において、樹脂配管10の長手方向他方側端部には、接続用配管2b及び接続用配管3bを1つの配管とした合流配管(2b,3b)が接続されている。
【0068】
試験ガス供給源3aとしては、例えば、ガスボンベが挙げられる。ガスボンベは、充填ガスを外部に圧送することができる。本実施形態において、試験ガス供給源3aは、二酸化炭素ガスボンベである。また、本実施形態において、接続用配管3bは、合流配管(2b,3b)として、樹脂配管10の継手12に接続されている。本実施形態では、継手12は、三又継手である。継手12の長手方向一方側端は、樹脂配管10の配管本体11の長手方向他方側端部に接続されている。また、継手12の長手方向他方側端には、圧力計9が接続されている。合流配管(2b,3b)は、継手12の分岐端部に接続されている。減圧弁3cは、試験ガス供給源3aから圧送される試験ガス(二酸化炭素ガス)gの圧力を減圧する。
【0069】
次いで、本実施形態において、樹脂配管密閉部4は、樹脂配管10の長手方向一方側端部を密封する密封栓4aと、吸引要素2aと合流配管(2b,3b)との間に配置した開閉弁4bと、試験ガス供給源3aと合流配管(2b,3b)との間に配置した開閉弁4cとを含んでいる。本実施形態において、樹脂配管10の長手方向一方側端部は、密封栓4aによって密封される一方で、樹脂配管10の長手方向他方側端部は、開閉弁4b及び4cを閉じることによって密封される。これによって、樹脂配管10の内部を密封することができる。
【0070】
密封栓4aは、例えば、樹脂、ゴムなどの弾性変形可能な材料によって形成することができる。本実施形態では、樹脂配管密閉部4には、圧力計9が含まれている。また、符号13は、樹脂配管に充填させた試験ガスgを抜き取るためのリーク弁である。本実施形態では、樹脂配管密閉部4には、圧力計9及びリーク弁13を含むことができる。ただし、圧力計9及びリーク弁13は、省略することもできる。さらに、樹脂配管密閉部4は、上述のとおり、2つの密封栓4aによって構成することができる。この場合、2つの密封栓4aの一方は、樹脂配管10の長手方向一方側端部を密封し、2つの密封栓4aの他方は、樹脂配管10の長手方向他方側端部を密封する。
【0071】
また、本実施形態において、試験容器5は、容器本体5aと蓋5bとを有している。試験空間Sは、容器本体5aの内部に形成されている。試験空間Sは、容器本体5aの側壁内面(側面f5s)と容器本体5aの底壁上面(最深部5d、傾斜底面f5c)と、蓋5cの下面f5bとによって形成されている。
【0072】
さらに、本実施形態において、試験空間Sは、下側に向かうにしたがって先細るような傾斜底面f5cで区画されている。本実施形態において、試験容器5は、上下方向に対して直交する面による、試験空間Sの断面面積が当該試験空間Sの最深部5dで最も小さくなるように構成されたものである。
図2を参照すれば、本実施形態では、試験空間Sの底面は、最深部5dと傾斜底面f5cとによって形成されている。また、本実施形態では、最深部5dは、試験空間Sの中心軸線上に配置されている。さらに、本実施形態では、傾斜底面f5cは、下方に向かうにしたがって最深部5dに向かうにように傾斜している。したがって、本実施形態において、試験空間Sの前記底面の形状は、例えば、
図2に示すように、下方にしたがって先細るすり鉢形状(逆円錐形状)となっている。ただし、本発明によれば、試験空間Sの前記底面の形状は、窪みを有した形状とすることができる。この場合、試験空間用ガスセンサ6は、前記窪みに配置することができる。また。この場合、試験空間Sの最深部5dは、本実施形態のように、1点の部分ではなく、平面とすることができる。さらに、本発明によれば、試験空間Sの前記底面の形状は、平面形状とすることができる。
【0073】
また、試験容器5は、試験空間Sを閉じることが可能な蓋5bを有している。蓋5bは、容器本体5aの開口A5を閉じることができる。蓋5bには、例えば、容器本体5aの開口A5を開閉可能な、開閉方式の蓋を採用することができる。本実施形態では、蓋5bは、容器本体5aに対する取付軸5pが1つの片開きの蓋としている。蓋5bは、外界の空気の流入がより抑えられる点では、容器本体5aの開口A5を気密状態に閉じるものであることが好ましい。蓋5bは、容器本体5aの開口A5を閉じることができるものあれば、例えば、容器本体5aに対する取付軸が1つの片開きの蓋、容器本体5aに対する前記取付軸が2つの観音開きの蓋とすることができる。ただし、蓋5bは、上述のとおり、気密状態に閉じることができるものに限定されるものではない。
【0074】
本実施形態では、試験空間用ガスセンサ6は、試験空間Sの複数の位置に配置されている。本実施形態では、試験空間用ガスセンサ6には、試験空間用ガスセンサ6aと、試験空間用ガスセンサ6bとの、2つの試験空間用ガスセンサが含まれている。
【0075】
また、本実施形態では、試験ガスgが空気よりも重いガスであることから、試験空間用ガスセンサ6は、試験空間Sの下半分の位置に配置されている。ここで、試験空間Sの下半分とは、試験空間Sの上面(蓋5cの下面f5b)と試験空間Sの最も下に位置する最深部5dとの間の、中心位置よりも下側の位置をいう。具体的には、試験空間用ガスセンサ6aは、試験空間Sの底面に配置されている。本実施形態では、試験空間Sの底面は、最深部5dと、最深部5dに向かって先細りする傾斜底面f5cとによって形成されている。本実施形態では、試験空間用ガスセンサ6aは、試験空間Sの最深部5dに配置されている。また、試験空間用ガスセンサ6aは、試験空間Sの最深部5dと隣接する位置に配置することができる。具体例としては、試験空間用ガスセンサ6aは、試験空間Sの傾斜底面f5cに配置することもできる。また、試験空間用ガスセンサ6bは、試験空間Sの前記底面(試験空間Sの傾斜底面f5c)に隣接する位置に配置されている。本実施形態では、試験空間用ガスセンサ6bは、試験空間Sの下半分のうちの、容器本体5aの容器本体5aの側壁内面(試験空間Sの側面f5s)に配置されている。ただし、試験空間用ガスセンサ6は、試験容器5の内面の任意の位置に取り付けることができる。また、試験空間用ガスセンサ6は、試験容器5の内面の任意の位置に吊り下げることもできる。
【0076】
気密性判断部としては、処理装置8を用いることができる。処理装置8の具体例としては、例えば、パーソナルコンピュータが挙げられる。処理装置8は、試験空間用ガスセンサ6からの入力に基いて、樹脂配管10の気密性を判断することができる。本実施形態では、処理装置8は、試験空間用ガスセンサ6からの入力により、試験空間ガス濃度C1を検知し、当該試験空間ガス濃度C1が上昇しているかどうかを判断することができる。また、本実施形態では、処理装置8は、気密性判断部として用いることもできる。処理装置8は、試験空間用ガスセンサ6からの入力と、外部用ガスセンサ7からの入力とに基いて、樹脂配管10の気密性を再度判断することができる。本実施形態では、処理装置8は、外部用ガスセンサ7からの入力により、外部ガス濃度C2を検知し、当該外部ガス濃度C2が上昇しているかどうかも判断することができる。さらに、本実施形態では、試験空間ガス濃度C1と外部ガス濃度C2とを比較して、試験空間ガス濃度C1が外部ガス濃度C2を超えているかどうかも判断することができる。即ち、本実施形態では、処理装置8は、気密性判断部及び気密性再判断部に相当する。さらに、本実施形態では、気密性検査装置1Aは、処理装置8に対するデータ入力を可能とする入力部8aと、処理装置8からの出力を表示または出力可能な出力部8bとを有している。入力部8aとしては、例えば、キーボード、マウスなどが挙げられる。出力部8bとしては、例えば、ディスプレイ(モニタ)、スピーカ、プリンタが挙げられる。
【0077】
気密性検査装置1Aは、例えば、以下のように使用することができる。
【0078】
作業者は、樹脂配管10の長手方向一方側端部を密封栓4aで密閉する。また、作業者は、樹脂配管10の長手方向他方側端部に、樹脂配管内ガス除去部2及び試験ガス充填部3を接続する。本実施形態では、作業者は、樹脂配管10の継手12の分岐端部に、樹脂配管内ガス除去部2及び試験ガス充填部3の合流配管(2b、3b)を接続する。また、本実施形態では、作業者は、継手12の長手方向他方側端に圧力計9及びリーク弁13を接続する。本実施形態において、開閉弁4b及び4c並びにリーク弁13はいずれも、初期状態において、閉じられている。つまり、本実施形態において、樹脂配管内ガス除去部2及び試験ガス充填部3はいずれも、樹脂配管10に対して連通していない。
【0079】
次いで、作業者は、開閉弁4bを開いたのち、樹脂配管内ガス除去部2を操作して樹脂配管10の内部ガスを取り除く。本実施形態では、吸引要素2aを動作させることによって、樹脂配管10の内部ガスを吸引する。これによって、樹脂配管10の内部は、真空に近い状態に減圧させることができる。このとき、作業者は、圧力計9を用いて樹脂配管10の内部の圧力が所望の圧力(より真空に近い状態が好ましい。)まで低下したことを確認したのち、開閉弁4bを閉じる。これによって、樹脂配管10の内部は、所望の減圧状態に保たれる。
【0080】
次いで、使用者は、開閉弁4cを開いたのち、試験ガス充填部3の試験ガス供給源3aを操作して樹脂配管10の内部に試験ガスgを供給する。これによって、樹脂配管10の内部には、試験ガス供給源3aから圧送された試験ガスgが、樹脂配管10の内部の負圧によって、速やかに充填される。
【0081】
次いで、作業者は、圧力計9を用いて樹脂配管10の内部の圧力が所望の圧力(例えば、樹脂配管10であれば、0.3~2.5MPa程度)まで達したことを確認する。これによって、樹脂配管10は、当該樹脂配管10の内部に試験ガスgが充填された状態で密閉される。なお、作業者は、樹脂配管内ガス除去部2及び試験ガス充填部3を取り外した後、樹脂配管10の長手方向他方側端部を密封栓(4a)で密閉することもできる。密封栓(4a)は、例えば、試験ガス充填部3を取り外された継手12の分岐端部に取り付けられる。
【0082】
次いで、作業者は、樹脂配管10を試験容器5の試験空間Sに配置する。樹脂配管10は、容器本体5aに形成された開口A5から挿入することができる。本実施形態では、樹脂配管10は、樹脂配管内ガス除去部2及び試験ガス充填部3に接続したまま、試験空間Sに配置される。なお、樹脂配管10の長手方向両端部を密封栓(4a)で密閉したときは、樹脂配管10は、樹脂配管内ガス除去部2及び試験ガス充填部3を取り外した状態で、試験空間Sに配置される。
【0083】
本実施形態では、作業者は、樹脂配管10を試験空間Sに配置した後、蓋5bを閉じる。
【0084】
蓋5bを閉じた後、処理装置8では、試験空間用ガスセンサ6の入力と、外部用ガスセンサ7の入力とに基いて、樹脂配管10の気密性が良好であるかどうかを判断する。本実施形態では、試験空間用ガスセンサ6によって測定された試験空間Sの試験空間ガス濃度C1が上昇した場合、処理装置8は、樹脂配管10の気密性は良好ではないと判断する。本実施形態では、使用者は、この判断結果を、出力部8bを通して確認することができる。
【0085】
ただし、本実施形態では、処理装置8は、試験空間用ガスセンサ6によって測定された試験空間Sの試験空間ガス濃度C1と、外部用ガスセンサ7によって測定された外部ガス濃度C2とを比較することによって、樹脂配管10の気密性を再度判断する。本実施形態では、試験空間ガス濃度C1が外部ガス濃度C2よりも上昇した場合、処理装置8は、最終的に、樹脂配管10の気密性は良好ではないと判断する。本実施形態では、作業者は、この判断結果を、処理装置8の最終判断として、出力部8bを通して確認することができる。
【0086】
気密性検査装置1Aは、樹脂配管内ガス除去部2と、試験ガス充填部3と、樹脂配管密閉部4と、試験容器5と、試験空間用ガスセンサ6と、試験空間ガス濃度C1に基いて樹脂配管10の気密性を判断する気密性判断部(8)と、を含んでいる。気密性検査装置1Aは、上記気密性検査方法の使用に適している。気密性検査装置1Aでは、
図1のフローチャートに示す工程のうち、所定の工程(ステップS6~S11)を処理装置8(気密性判断部)で行うことができる。これによって、使用者は、樹脂配管10の内部に試験ガスgを密閉充填して気密性の試験のための試験片とし、当該試験片を試験空間Sに配置した後に、試験空間Sに含まれる試験空間ガス濃度C1の上昇を追跡するだけで、樹脂配管10の気密性を検査することができる。したがって、気密性検査装置1Aによれば、樹脂配管10の気密性を簡易に検査することができる。
【0087】
加えて、気密性検査装置1Aによれば、従来技術のように、検査対象となる樹脂配管10を試験容器5に取り付けて固定する必要が無い。このため、樹脂配管10は、
図2に示すように、試験空間Sの内部に丸めた状態で配置することができる。したがって、気密性検査装置1Aによれば、検査できる樹脂配管10に対して、例えば、樹脂配管10の長さに対して、より自由度を持たせることができる。
【0088】
特に、気密性検査装置1Aは、樹脂配管10に試験ガスgを充填する前に、樹脂配管内ガス除去部2によって、樹脂配管(10)の内部ガスを除去している。これによって、樹脂配管10の内部は、樹脂配管10の周囲に比べて、減圧された状態となっている。この場合、試験ガスgは、樹脂配管10の内部の負圧によって、積極的に吸引される。その結果、試験ガスgが樹脂配管10に充填される時間は、樹脂配管10の内部ガスを除去しない場合に比べて、大幅に短縮される。したがって、気密性検査装置1Aによれば、樹脂配管10の気密性を迅速に検査することができる。
【0089】
特に、気密性検査装置1Aは、出力部8bを有している。これにより、気密性検査装置1Aは、樹脂配管10の気密性が良好ではないことを、作業者に対してさらに認識させることができる。気密性検査装置1Aは、樹脂配管10の気密性が良好ではない場合、例えば、出力部8bのディスプレイ(モニタ)上に警告表示を表示させることにより、または、出力部8bのスピーカを通して警告音を発することにより、作業者に対して認識させることができる。
【0090】
また、気密性検査装置1Aは、出力部8bを有していることにより、樹脂配管10の気密性が良好であることを、作業者に対してさらに認識させることができる。樹脂配管10の気密性が良好である場合、例えば、出力部8bのディスプレイ(モニタ)上に警告表示と異なる表示をさせることにより、または、出力部8bのスピーカを通して警告音と異なる音を発することにより、作業者に対して認識させることができる。
【0091】
また、気密性検査装置1Aは、入力部8aを有している。これにより、気密性検査装置1Aは、樹脂配管10の材質、構造、寸法などの、当該樹脂配管10の基本情報、試験ガスgの種類、濃度などの、当該試験ガスgの基本情報などに応じて、検査に要する設定を適宜変更させることができる。
【0092】
また、気密性検査装置1Aは、試験空間用ガスセンサ6からの試験空間ガス濃度C1と、外部用ガスセンサ7からの外部ガス濃度C2とに基いて樹脂配管10の気密性をさらに判断する気密性再判断部8と、を更に含んでいる。この場合、試験空間ガス濃度C1と外部ガス濃度C2を比較することによって、試験空間Sと当該試験空間Sよりも外側の外界との関係を考慮することができる。これによって、樹脂配管10の気密性をより高い精度で検査することができる。具体的には、試験容器5の蓋5bを閉じることによって試験空間Sを外界に対して遮断することなく、当該試験空間Sを外界に通じさせている場合でも、樹脂配管10の気密性をより高い精度で検査することができる。
【0093】
また、気密性検査装置1Aでは、複数の試験空間用ガスセンサ6(本実施形態では、6a、6b)が試験空間Sの位置に配置されている。この場合、試験空間ガス濃度C1のサンプルとしてより多くのサンプルが得られる。したがって、この場合、樹脂配管10の気密性をより高い精度で検査することができる。
【0094】
また、気密性検査装置1Aでは、試験ガスgが空気よりも重いガスであり、試験空間用ガスセンサ6が試験空間Sの下半分の位置に配置されている。この場合、仮に樹脂配管10に充填された試験ガスgが試験空間Sに漏れた場合、当該試験ガスgは、試験空間Sの下側に沈降する傾向となる。したがって、この場合、試験空間ガス濃度C1のサンプルとして試験空間Sの下半分に配置された試験空間用ガスセンサ6b、より好ましくは、試験空間用ガスセンサ6aのガス濃度を利用すれば、樹脂配管10の気密性をより迅速にかつより高い精度で検査することができる。
【0095】
また、気密性検査装置1Aにおいて、試験空間Sは、下側に向かうにしたがって先細るような傾斜底面f5cで区画される。具体的には、試験容器5は、上下方向に対して直交する面による試験空間Sの断面面積が当該試験空間Sの最深部5dで最も小さくなるように構成されたものであり、少なくとも、試験空間用ガスセンサ6aは、試験空間Sの最深部5d又は当該最深部5dと隣接する傾斜底面f5c、つまり、試験空間Sの底面に配置されている。この場合、沈降する試験ガスgを試験空間Sの最深部5d近くに集約し、当該試験ガスgの濃度を、試験空間ガス濃度C1のサンプルとして利用することができる。したがって、本実施形態によれば、樹脂配管10の気密性をより一層迅速にかつより一層高い精度で検査することができる。特に好ましくは、試験空間用ガスセンサ6は、試験空間用ガスセンサ6aのように、試験空間Sの最深部5dに配置する。
【0096】
また、気密性検査装置1Aにおいて、試験容器5は、試験空間Sを閉じることが可能な蓋5bを有している。この場合、蓋5bを閉じることによって、試験空間Sの外からの、当該試験空間Sへの空気の流入を抑制することができる。また、この場合、空気中に含まれている試験ガスgと同様のガスが試験空間Sに流入することに伴う、検査に対する外乱を抑制することができる。したがって、この場合、樹脂配管10の気密性をより高い精度で検査することができる。
【0097】
また、気密性検査装置1Aでは、試験ガスgは二酸化炭素である。二酸化炭素は、上述のとおり、取り扱いが容易で拡散し難い。したがって、この場合、樹脂配管10の気密性をより容易に検査することができる。
【0098】
また、気密性検査装置1Aでは、処理装置8を用いることによって、
図1のフローチャート中の、気密性判断工程(ステップS8)は、樹脂配管配置工程(ステップS4)または試験空間閉じ工程(ステップS5)の終了後、例えば、所定時間tが経過するまで行わないようにすることができる。即ち、気密性検査装置1Aでは、上述のとおり、樹脂配管10を試験空間Sに配置した後、または、樹脂配管10を試験空間Sに配置して蓋5bを閉じた後、所定時間tの間、樹脂配管10を試験空間Sに放置し、当該試験空間Sに含まれる試験ガスgが上昇するかどうかの判断を待つことができる。この場合、所定時間tは、上述のとおり、例えば、樹脂配管10の気密性に問題がある場合を予め考慮しておくことにより、漏れた試験ガスgの測定が可能となると想定される時間に設定することができる。
【0099】
図3は、本発明の第2実施形態に係る、樹脂配管の気密性検査方法を概略的に示すフローチャートである。また、
図4は、
図3のフローチャートに従って、上記気密性検査方法を実行可能な、本発明の第2実施形態に係る、樹脂配管の気密性検査装置1Bを概略的に示す。
【0100】
本実施形態の説明において、前述した事項と実質的に同一の部分については、同一の符号を用いることによって、その説明を省略する。
【0101】
(気密性検査方法)
図3に示すように、本実施形態に係る、樹脂配管の気密性検査方法において、ステップS1~S5及びステップS7~S12は、第1実施形態に係る、樹脂配管の気密性検査方法の、ステップS1~S5及びステップS6~S11の工程に相当する。
【0102】
ただし、本実施形態に係る、樹脂配管の気密性検査方法は、新たな工程として、試験空間(S)の試験ガス(g)に流動を生じさせる試験空間内ガス流動発生工程(ステップS6)を、さらに含んでいる。
【0103】
試験ガス(g)として、例えば、流動性の低いガスを用いた場合、試験ガスの検知に時間を要する状況となることが考えられる。こうした状況では、試験ガス(g)の流動性に任せるよりも、積極的に、試験ガス(g)に流動を生じさせる方が、ガス濃度を早く測定する場合がある。例えば、二酸化炭素ガス等の比重の大きいガスは、流動性が低いことから、樹脂配管(10)から漏れ出しても、その漏れさえも検知し難い場合がある。
【0104】
そこで、本実施形態では、試験ガス(g)のガス濃度を測定するのに際し、試験空間(S)の試験ガス(g)に流動を生じさせる。試験ガス(g)の流動は、例えば、試験空間内ガス流動発生部(14)において、強制的に生じさせる。試験空間内ガス流動発生部(14)としては、例えば、送風機が挙げられる。これによって、試験ガス(g)が流動性の低いガスであっても、より早い段階でガス濃度を測定することができる。したがって、この場合、樹脂配管(10)の気密性をより迅速に検査することができる。
【0105】
また、本実施形態に係る、樹脂配管の気密性検査方法は、試験空間ガス濃度測定工程(ステップS7)において、試験空間(S)に含まれる試験ガス(g)の濃度(C1)を、樹脂配管(10)に沿った複数個所で測定する。この場合、樹脂配管(10)の気密性をより迅速にかつより高い精度で検査することができる。
【0106】
具体例としては、樹脂配管(10)を試験空間(S)の内部に丸めた状態で配置する場合、複数の試験空間用ガスセンサ(6)を、丸められた樹脂配管10の延在方向に沿って周方向に配置することによって、樹脂配管(10)に沿った複数個所で、試験空間(S)に含まれる試験ガス(g)の濃度(C1)を測定する。或いは、樹脂配管(10)を試験空間(S)の内部に直線的に配置する場合、樹脂配管(10)の延在方向に沿って直線的に配置することによって、樹脂配管(10)に沿った複数個所で、試験空間(S)に含まれる試験ガス(g)の濃度(C1)を測定する。この場合、樹脂配管(10)の気密性をより迅速にかつより高い精度で検査することができる。より具体的な例としては、試験空間用ガスセンサ(6)は、樹脂配管(10)の延在方向一方側端部及び延在方向他方側端部の位置と、樹脂配管(10)の延在方向の中間位置の、少なくとも3か所に配置することができる。
【0107】
さらに、本実施形態に係る、樹脂配管の気密性検査方法は、上記試験空間ガス濃度測定工程(ステップS7)において、試験空間(S)が複数の測定空間(S1)に区画されており、当該複数の測定空間(S1)のそれぞれで、試験空間(S)に含まれる試験ガス(g)の濃度(C1)を測定する。この場合、樹脂配管(10)の気密性をより迅速にかつより高い精度で検査することができる。
【0108】
複数の測定空間(S1)は、予め区画されていてもよいが、気密性判断工程(ステップS7)時又は当該気密性判断工程(ステップS7)の前のいずれかの工程(ステップS1~S6)で区画されてもよい。具体例としては、試験容器(5)の底面(試験空間Sの底面)に仕切部(15)を設ける。この場合、仕切部(15)は、試験容器(5)の底面に対して別体に設ける。ただし、仕切部(15)は、試験容器(5)の底面に対して一体に設けることができる。
【0109】
仕切部(15)は、試験空間(S)の底面が円形である場合、底面の中心から放射状に延ばした複数の隆起部(15a)によって構成することができる。これによって、複数の隆起部(15a)の間にはそれぞれ、測定空間(S1)が区画される。この場合、複数の測定空間(S1)にはそれぞれ、少なくとも1つの試験空間用ガスセンサ(6)を配置することが好ましい。この場合、樹脂配管(10)の気密性をより迅速にかつより高い精度で検査することができる。
【0110】
(気密性検査装置)
次に、
図4の気密性検査装置1Bについて説明をする。
【0111】
気密性検査装置1Bの基本構成は、気密性検査装置1Aと同様である。ただし、
図4では、気密性検査装置1Aと共通部分については、一部省略されている。
図4中、例えば、試験容器5の蓋5b、処理装置8等の共通部分については、一部省略されている。また、本実施形態において、試験容器5は、透明な容器である。
【0112】
本実施形態において、容器本体5aの側壁内面f5sは、円形の周面によって構成されている。また、本実施形態において、試験容器(5)の底面(試験空間Sの底面)は、平坦な円形の最深部5dによって構成されている。
【0113】
本実施形態に係る気密性検査装置1Bは、試験空間Sの試験ガスgに流動を生じさせる試験空間内ガス流動発生部14を、さらに含んでいる。この場合、樹脂配管10の気密性をより迅速に検査することができる。
【0114】
本実施形態において、試験空間内ガス流動発生部14は、送風機である。本実施形態において、試験空間内ガス流動発生部14は、容器本体5aの側壁内面f5sに取り付けられている。これによって、試験空間内ガス流動発生部14からの送風は、容器本体5aの側壁内面f5sに沿って周方向に流れることになる。したがって、試験空間Sの試験ガスgもまた、容器本体5aの側壁内面f5sに沿って周方向に流動させることができる。
【0115】
本実施形態にように、試験空間内ガス流動発生部14を備えれば、試験ガスgが流動性の低いガスであっても、より早い段階でガス濃度を測定することができる。したがって、この場合、樹脂配管10の気密性をより迅速に検査することができる。なお、試験空間内ガス流動発生部14は、少なくとも1つ以上とすることができる。
【0116】
また、本実施形態において、試験空間用ガスセンサ6は、樹脂配管10に沿って配置された複数のガスセンサである。この場合、樹脂配管10の気密性をより迅速にかつより高い精度で検査することができる。
【0117】
本実施形態において、試験空間Sは、円形の底面(5d)を有し、樹脂配管10は、丸めた状態で配置されている。複数の試験空間用ガスセンサ6は、丸められた樹脂配管10の延在方向に沿って周方向に配置されている。これによって、樹脂配管10に沿った複数個所で、試験空間Sに含まれる試験ガスgの濃度C1を測定する。この場合、樹脂配管10の気密性をより迅速にかつより高い精度で検査することができる。
【0118】
また、本実施形態において、試験容器5は、試験空間Sを複数の測定空間S1に区画する仕切部15を有している。
【0119】
図5には、
図4の試験容器5が概略的かつ斜視的に示されている。
【0120】
本実施形態において、試験空間Sの底面(5d)は、円形である。本実施形態において、仕切部15は、試験空間Sの底面の中心から放射状に延ばした複数の隆起部15aによって構成されている。これによって、複数の隆起部15aの間にはそれぞれ、測定空間S1が区画される。この場合、測定空間S1にはそれぞれ、少なくとも1つの試験空間用ガスセンサ6を配置する。この場合、樹脂配管10の気密性をより迅速にかつより高い精度で検査することができる。
【0121】
なお、本実施形態において、仕切部15は、4つの隆起部15aを備えている。試験空間Sは、扇型の4つの測定空間S1に区画されている。ただし、隆起部15a及び測定空間S1は、2つ以上とすることができる。
【0122】
また、
図4中、符号16は、開閉弁4b及び開閉弁4c並びに試験空間内ガス流動発生部14を制御する制御盤である。符号17は、作業者が制御盤16を操作するための操作部である。
【0123】
上述のとおり、本発明によれば、樹脂配管の気密性を簡易に検査することができ、加えて、検査できる樹脂配管に対してより自由度を持たせることができる、樹脂配管の気密性検査方法および気密性検査装置を提供することができる。
【0124】
上述したところは、本発明の例示的な実施形態を例示したにすぎず、特許請求の範囲に従えば、様々な変更が可能となる。例えば、樹脂配管10は、複数の配管本体11を、少なくとも1つ以上の継手12によって結合させたものを含む。また、樹脂配管10の長手方向両端部は、配管本体11の長手方向端部で構成させることができる。また、樹脂配管10の長手方向両端部は、継手12で構成させることもできる。また、気密性検査の試験片は、配管本体11のみのものとすることができる。さらに、上述した各実施形態に採用された様々なステップ又は構成は、適宜、相互に置き換えることができ、又は、組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0125】
1A:樹脂配管の気密性試験装置(第1実施形態), 1B:樹脂配管の気密性試験装置(第1実施形態), 2:樹脂配管内ガス除去部, 2a:吸引要素, 2b:接続用配管, 3:試験ガス充填部, 3a:試験ガス供給源, 3b:接続用配管, 3c;減圧弁, 4:樹脂配管密閉部, 4a:密封栓, 4b:開閉弁, 4c:開閉弁, 5;試験容器, 5a;容器本体, 5b;蓋, f4b;試験空間の底面, 6,6a,6b;試験空間用ガスセンサ, 7:外部用ガスセンサ, 8;処理装置, 8a;入力部, 8b;出力部, 9;圧力計, 10;樹脂配管, 11;配管本体, 12;継手, 13;リーク弁, 14:試験空間内ガス流動発生部, 15:仕切部, 15a:隆起部, 16:制御盤,17:操作部, A5;容器本体の開口, S;試験空間, S1:測定空間