(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094108
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 41/365 20180101AFI20240702BHJP
F21S 41/43 20180101ALI20240702BHJP
F21W 102/155 20180101ALN20240702BHJP
【FI】
F21S41/365
F21S41/43
F21W102:155
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210877
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099999
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 隆
(72)【発明者】
【氏名】藤田 翔士
(57)【要約】
【課題】ロービーム用配光パターンを形成するための複数の灯具ユニットを備えた車両用灯具において、対向車ドライバに対するグレアを効果的に抑制した上で自車ドライバの前方視認性向上を図る。
【解決手段】第1および第2灯具ユニット30A、30Bの各々において、光源34A、34からの出射光を第1付加リフレクタ42A、42Bおよび第2付加リフレクタ44A、44Bで順次反射させることにより、ロービーム用配光パターンとして、そのカットオフラインの上方空間にOHS照射用配光パターンを付加的に形成する構成とする。その際、第1灯具ユニット30Aとして、第2付加リフレクタ44Aの反射面44Aaにおける投影レンズ32Aの後側焦点Fよりも自車線側の位置に光拡散領域としての突起部44Abが形成された構成とする。これによりカットオフラインとOHS照射用配光パターンとの間の空間が必要以上に明るくならないようにする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロービーム用配光パターンを形成するための複数の灯具ユニットを備えた車両用灯具において、
上記複数の灯具ユニットの各々は、投影レンズと、上記投影レンズの後側焦点よりも灯具後方側に配置された光源と、上記光源からの出射光を上記投影レンズへ向けて反射させるリフレクタと、上記リフレクタと上記投影レンズとの間に配置された状態で上記ロービーム用配光パターンのカットオフラインを形成するために上記リフレクタからの反射光の一部を遮光するシェードとを備えており、
上記複数の灯具ユニットの各々は、上記リフレクタの前端部に、上記光源からの出射光を下方へ向けて反射させる第1付加リフレクタが配置されるとともに、上記後側焦点よりも灯具前方側でかつ下方側の位置に、上記第1付加リフレクタで反射した上記光源からの出射光を上記投影レンズへ向けて反射させる第2付加リフレクタが配置された構成となっており、
上記複数の灯具ユニットのうち一部の灯具ユニットは、上記第2付加リフレクタの反射面における上記後側焦点よりも自車線側の位置に光拡散領域が形成された構成となっている、ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
上記光拡散領域は、突起部または凹陥部で構成されている、ことを特徴とする請求項1記載の車両用灯具。
【請求項3】
上記リフレクタは、上記光源を上方側から覆うように配置されており、
上記シェードは、上記リフレクタからの反射光の一部を上記投影レンズへ向けて上向きに反射させる上向き反射面を備えている、ことを特徴とする請求項1または2記載の車両用灯具。
【請求項4】
上記第1付加リフレクタは、上記リフレクタと一体的に形成されており、
上記第2付加リフレクタは、上記シェードと一体的に形成されている、ことを特徴とする請求項1または2記載の車両用灯具。
【請求項5】
上記複数の灯具ユニットは、上記リフレクタが一体的に形成されるとともに上記シェードが一体的に形成された構成となっている、ことを特徴とする請求項4記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ロービーム用配光パターンを形成するための複数の灯具ユニットを備えた車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ロービーム用配光パターンを形成するように構成された車両用灯具の構成として、複数の灯具ユニットを備えたものが知られている。
【0003】
そして、これら複数の灯具ユニットの各々の構成として、投影レンズと、その後側焦点よりも灯具後方側に配置された光源と、この光源からの出射光を投影レンズへ向けて反射させるリフレクタと、これらリフレクタと投影レンズとの間に配置された状態でロービーム用配光パターンのカットオフラインを形成するためにリフレクタからの反射光の一部を遮光するシェードとを備えたものが知られている。
【0004】
「特許文献1」には、ロービーム用配光パターンするように構成された灯具ユニットの構成として、リフレクタの灯具前方側に、光源からの出射光を下方へ向けて反射させる第1付加リフレクタが配置されるとともに、投影レンズの後側焦点よりも灯具前方側でかつ下方側の位置に、第1付加リフレクタで反射した光源からの出射光を投影レンズへ向けて反射させる第2付加リフレクタが配置されたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記「特許文献1」に記載された灯具ユニットにおいては、光源からの出射光を第1および第2付加リフレクタで順次反射させることにより、ロービーム用配光パターンに対して、そのカットオフラインの上方空間にOHS照射用配光パターン(すなわち車両前方路面の上方に設置された頭上標識を照射するための配光パターン)を形成することが可能となる。
【0007】
しかしながら、複数の灯具ユニットを備えた車両用灯具において、これら複数の灯具ユニットの各々にこのような構成を採用した場合には、カットオフラインとOHS照射用配光パターンとの間の空間も必要以上に明るくなってしまい、対向車ドライバにグレアを与えてしまう原因となるおそれがある。
【0008】
これに対し、複数の灯具ユニットの各々の構成として、第2付加リフレクタの反射面における投影レンズの光軸よりも自車線側の位置に突起部等が形成されたものとすれば、ロービーム用配光パターンにおける対向車線側カットオフラインの上方近傍空間の明るさを局所的に抑えることが可能となる。
【0009】
そして、このような構成を採用することにより、対向車ドライバにグレアを与えてしまわないようすることが可能となるが、その一方で、カットオフラインとOHS照射用配光パターンとの間の空間が暗くなり過ぎてしまい、自車ドライバの前方視認性が低下してしまうおそれがある。
【0010】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ロービーム用配光パターンを形成するための複数の灯具ユニットを備えた車両用灯具において、対向車ドライバに対するグレアを効果的に抑制した上で自車ドライバの前方視認性向上を図ることができる車両用灯具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明は、複数の灯具ユニットの各々における第2付加リフレクタの構成に工夫を施すことにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0012】
すなわち、本願発明に係る車両用灯具は、
ロービーム用配光パターンを形成するための複数の灯具ユニットを備えた車両用灯具において、
上記複数の灯具ユニットの各々は、投影レンズと、上記投影レンズの後側焦点よりも灯具後方側に配置された光源と、上記光源からの出射光を上記投影レンズへ向けて反射させるリフレクタと、上記リフレクタと上記投影レンズとの間に配置された状態で上記ロービーム用配光パターンのカットオフラインを形成するために上記リフレクタからの反射光の一部を遮光するシェードとを備えており、
上記複数の灯具ユニットの各々は、上記リフレクタの前端部に、上記光源からの出射光を下方へ向けて反射させる第1付加リフレクタが配置されるとともに、上記後側焦点よりも灯具前方側でかつ下方側の位置に、上記第1付加リフレクタで反射した上記光源からの出射光を上記投影レンズへ向けて反射させる第2付加リフレクタが配置された構成となっており、
上記複数の灯具ユニットのうち一部の灯具ユニットは、上記第2付加リフレクタの反射面における上記後側焦点よりも自車線側の位置に光拡散領域が形成された構成となっている、ことを特徴とするものである。
【0013】
上記「複数の灯具ユニット」のうち、第2付加リフレクタの反射面に光拡散領域が形成された構成となっている灯具ユニットの具体的な数は特に限定されるものではない。
【0014】
上記「光拡散領域」とは、第2付加リフレクタの反射面における一般領域(すなわち光拡散領域以外の領域)よりも第1付加リフレクタからの反射光を拡散させる表面形状を有する領域を意味するものであって、その具体的な表面形状は特に限定されるものではなく、例えば、突起部または凹陥部として構成されたもの、フロスト加工やシボ加工等が施されたもの、部分的にアルミ蒸着等の表面処理が施されていない領域として構成されたもの等が採用可能である。
【発明の効果】
【0015】
本願発明に係る車両用灯具は、ロービーム用配光パターンを形成するための複数の灯具ユニットの各々の構成として、投影レンズと、その後側焦点よりも灯具後方側に配置された光源と、この光源からの出射光を投影レンズへ向けて反射させるリフレクタと、これらリフレクタと投影レンズとの間に配置された状態でロービーム用配光パターンのカットオフラインを形成するためにリフレクタからの反射光の一部を遮光するシェードとを備えているが、リフレクタの前端部には、光源からの出射光を下方へ向けて反射させる第1付加リフレクタが配置されており、また、投影レンズの後側焦点よりも灯具前方側でかつ下方側の位置には、第1付加リフレクタで反射した光源からの出射光を投影レンズへ向けて反射させる第2付加リフレクタが配置されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0016】
すなわち、光源からの出射光を第1および第2付加リフレクタで順次反射させることにより、ロービーム用配光パターンとして、そのカットオフラインの上方空間にOHS照射用配光パターンを付加的に形成することが可能となる。
【0017】
その上で、複数の灯具ユニットのうち一部の灯具ユニットは、第2付加リフレクタの反射面における投影レンズの後側焦点よりも自車線側の位置に光拡散領域が形成された構成となっているので、カットオフラインとOHS照射用配光パターンとの間の空間が必要以上に明るくならないようにすることができ、これにより対向車ドライバにグレアを与えてしまうのを効果的に抑制することができる。
【0018】
その際、第2付加リフレクタの反射面に光拡散領域が形成されているのは、複数の灯具ユニットのうち一部の灯具ユニットであるので、カットオフラインとOHS照射用配光パターンとの間の空間が暗くなり過ぎないようすることができ、これにより自車ドライバの前方視認性が低下してしまわないようにすることができる。
【0019】
このように本願発明によれば、ロービーム用配光パターンを形成するための複数の灯具ユニットを備えた車両用灯具において、対向車ドライバに対するグレアを効果的に抑制した上で自車ドライバの前方視認性向上を図ることができる。
【0020】
上記構成において、さらに、光拡散領域が突起部または凹陥部で構成されたものとすれば、カットオフラインとOHS照射用配光パターンとの間の空間が必要以上に明るくならないようにするための反射制御を精度良く行うことができる。
【0021】
上記構成において、さらに、複数の灯具ユニットの各々の構成として、リフレクタが光源を上方側から覆うように配置された構成とした上で、シェードがリフレクタからの反射光の一部を投影レンズへ向けて上向きに反射させる上向き反射面を備えた構成とすれば、光源からの出射光を効率良く灯具前方へ照射することができ、これによりロービーム用配光パターンの明るさを増大させることができる。
【0022】
上記構成において、さらに、第1付加リフレクタがリフレクタと一体的に形成されるとともに第2付加リフレクタがシェードと一体的に形成された構成とすれば、車両用灯具の部品点数削減を図ることができ、かつ、第1付加リフレクタとリフレクタとの位置関係精度および第2付加リフレクタとシェードとの位置関係精度を高めることができる。
【0023】
その際、複数の灯具ユニットとして、リフレクタが一体的に形成されるとともにシェードが一体的に形成された構成とすれば、車両用灯具のさらなる部品点数削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本願発明の一実施形態に係る車両用灯具を示す正面図
【
図2】上記車両用灯具の灯具ユニットアッシーを示す平面図
【
図7】上記車両用灯具からの照射光によって形成されるロービーム用配光パターンを示す図
【
図8】上記ロービーム用配光パターンを構成する第1および第2配光パターンを示す図
【
図9】上記実施形態の第1変形例を示す、
図6と同様の図
【
図10】上記実施形態の第2変形例を示す、
図6と同様の図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0026】
図1は、本願発明の一実施形態に係る車両用灯具10を示す正面図である。また、
図2は、車両用灯具10の灯具ユニットアッシー20を示す平面図である。
【0027】
図1、2において、Xで示す方向が「灯具前方」であり、Yで示す方向が「灯具前方」と直交する「左方向」(灯具正面視では「右方向」)であり、Zで示す方向が「上方向」である。
図1、2以外の図においても同様である。
【0028】
図1、2に示すように、本実施形態に係る車両用灯具10は、車両の前端部に配置されるヘッドランプであって、ランプボディ12とその前端開口部に取り付けられた素通し状の透光カバー14とで形成される灯室内に、灯具ユニットアッシー20が収容された構成となっている。
【0029】
灯具ユニットアッシー20は、ロービーム用配光パターンを形成するための第1および第2灯具ユニット30A、30Bが一体的に形成された構成となっている。
【0030】
第1および第2灯具ユニット30A、30Bは、いずれもプロジェクタ型の灯具ユニットとして構成されており、左右方向(すなわち車幅方向)に並んだ状態で配置されている。具体的には、第1灯具ユニット30Aが右側に位置しており、第2灯具ユニット30Bが左側に位置している。
【0031】
第1灯具ユニット30Aは、灯具前後方向に延びる光軸Axを有する投影レンズ32Aと、この投影レンズ32Aの後側焦点(正確には鉛直断面内における後側焦点)Fよりも灯具後方側に配置された光源34Aと、この光源34Aを上方側から覆うように配置された状態で、光源34Aからの出射光を投影レンズ32Aへ向けて反射させるリフレクタ36Aと、このリフレクタ36Aと投影レンズ32Aとの間に配置された状態で、リフレクタ36Aからの反射光の一部を遮光するシェード38Aとを備えている。
【0032】
第2灯具ユニット30Bも、第1灯具ユニット30Aと同様、投影レンズ32Bと光源34Bとリフレクタ36Bとシェード38Bとを備えた構成となっている。
【0033】
次に、第1および第2灯具ユニット30A、30Bの各々の具体的な構成について説明する。
【0034】
まず、第1灯具ユニット30Aの具体的な構成について説明する。
【0035】
図3は、
図2のIII-III線断面図であり、
図4は、
図2のIV-IV線断面図である。また、
図5は、灯具ユニットアッシー20を示す斜視図である。
【0036】
図3~5にも示すように、投影レンズ32Aは、前面32Aaが凸曲面で後面32Abが平面の平凸非球面レンズであって、その後側焦点Fを含む焦点面である後側焦点面上に形成される光源像を、反転像として灯具前方の仮想鉛直スクリーン上に投影するようになっている。この投影レンズ32Aは、灯具正面視において横長矩形状の外形形状を有している。
【0037】
光源34Aは、発光素子(具体的には白色発光ダイオード)であって、横長矩形状の発光面34Aaを有している。そして、この光源34Aは、その発光面34Aaを光軸Ax上において上向きにした状態で基板40に支持されている。
【0038】
リフレクタ36Aは、光源34Aからの出射光を左右方向に関して収束する光として投影レンズ32Aに入射させるように構成されている。
【0039】
具体的には、リフレクタ36Aの反射面36Aaは、光源34Aの発光中心を第1焦点とする略楕円面状の曲面で構成されており、その離心率が鉛直断面から水平断面へ向けて徐々に大きくなるように設定されている。そしてこれにより、リフレクタ36Aは、光源34Aからの出射光を鉛直断面内においては後側焦点Fの灯具前方側に位置する点に収束させるとともに水平断面内においてはその収束位置をさらに灯具前方側へ変位させるようになっている。
【0040】
シェード38Aには、リフレクタ36Aからの反射光の一部を投影レンズ32Aへ向けて上向きに反射させる上向き反射面38Aaが形成されている。この上向き反射面38Aaは、光軸Axよりも左側(灯具正面視では右側)に位置する左側領域が光軸Axを含む水平面で構成されており、光軸Axよりも右側に位置する右側領域が、短い斜面を介して左側領域よりも一段低い水平面で構成されている。また、上向き反射面38Aaは、その前端縁38Aa1が投影レンズ32Aの後側焦点Fから左右両側へ向けて灯具前方側へ湾曲して延びるように形成されており、その後端縁も左右両側へ向けて灯具前方側へ湾曲して延びるように形成されている。
【0041】
リフレクタ36Aの前端部には、第1付加リフレクタ42Aが配置されている。この第1付加リフレクタ42Aは、リフレクタ36Aの反射面36Aaの前端縁から灯具前方へ向けてやや下向きに傾斜して延びるように形成された反射面42Aaを備えている。そして、この第1付加リフレクタ42Aは、その反射面42Aaにおいて、光源34Aからの出射光を、シェード38Aの上向き反射面38Aaの前端縁38Aa1よりも灯具前方側の空間へ向けて下向きに反射させるように構成されている。この第1付加リフレクタ42Aは、リフレクタ36Aと一体的に形成されている。
【0042】
なお、第1付加リフレクタ42Aは、その反射面42Aaの前端縁がシェード38Aの上向き反射面38Aaの後端縁よりも灯具後方側に位置するように形成されており、これにより平面視においてシェード38Aとリフレクタ36Aとが重複しないように構成されている。
【0043】
シェード38Aにおける上向き反射面38Aaよりも灯具前方側でかつ下方側の位置には、第2付加リフレクタ44Aが配置されている。この第2付加リフレクタ44Aは、シェード38Aの上向き反射面38Aaの前端縁38Aa1の下方近傍位置から灯具前方へ向けてやや下向きに傾斜して延びるように形成された反射面44Aaを備えている。そして、この第2付加リフレクタ44Aは、その反射面44Aaにおいて、第1付加リフレクタ42Aで反射した光源34Aからの出射光を投影レンズ32Aへ向けて反射させるように構成されている。この第2付加リフレクタ44Aは、シェード38Aと一体的に形成されている。
【0044】
【0045】
図6にも示すように、第2付加リフレクタ44Aの反射面44Aaには、光軸Axよりも左側の位置(すなわち投影レンズ32Aの後側焦点Fよりも自車線側の位置)に光拡散領域としての突起部44Abが形成されている。この突起部44Abは、反射面44Aaの上端縁近傍に位置しており、横長の略楕円面状の表面形状を有している。そして、この突起部44Abは、第1付加リフレクタ42Aで反射した光源34Aからの出射光の一部を拡散反射させるように構成されている。
【0046】
次に、第2灯具ユニット30Bの具体的な構成について説明する。
【0047】
上述したとおり、第2灯具ユニット30Bにおいても、投影レンズ32B、光源34B、リフレクタ36Bおよびシェード38Bの構成は第1灯具ユニット30Aの場合と同様であり、また、第1および第2付加リフレクタ42B、44Bの基本的な構成についても第1灯具ユニット30Aの場合と同様であるが、第2付加リフレクタ44Bの構成が第1灯具ユニット30Aの場合と一部異なっている。
【0048】
すなわち、第2灯具ユニット30Bにおいても、リフレクタ36Bの前端部には第1付加リフレクタ42Bが配置されており、また、シェード38Bにおける上向き反射面38Baよりも灯具前方側でかつ下方側の位置には第2付加リフレクタ44Bが配置されている。そして、光源34Bからの出射光をこれら第1および第2付加リフレクタ42B、44Bの反射面42Ba、44Baで順次反射させて投影レンズ32Bへ入射させるように構成されている。
【0049】
ただし、第2灯具ユニット30Bにおける第2付加リフレクタ44Bの反射面44Baには、第1灯具ユニット30Aにおける第2付加リフレクタ44Aの反射面44Aaに形成されている突起部44Abのような突起部は形成されていない。
【0050】
灯具ユニットアッシー20は、第1および第2灯具ユニット30A、30Bの光源34A、34Bが共通の基板40を介して金属製のヒートシンク50に支持されるとともに、このヒートシンク50が樹脂製のホルダー60に支持された構成となっている。
【0051】
ホルダー60は、第1および第2灯具ユニット30A、30Bにおけるリフレクタ36A、36Bの外周縁部を囲むようにして水平面に沿って延びる水平フランジ部60aを備えている。そして、2つのリフレクタ36A、36Bはホルダー60と一体的に形成されている。
【0052】
ヒートシンク50は、水平面に沿って左右方向に延びる本体部52と、この本体部52の下面から下方へ延びるように形成された複数の放熱フィン54とを備えており、複数の放熱フィン54は左右方向に間隔をおいて配置されている。そして、ヒートシンク50は、その本体部52をホルダー60の水平フランジ部60aに下方側から当接させた状態でホルダー60に支持されている。
【0053】
第1および第2灯具ユニット30A、30Bのシェード38A、38Bも、ホルダー60と一体的に形成されている。
【0054】
第1および第2灯具ユニット30A、30Bの投影レンズ32A、32Bは、投影レンズアッシー22として一体的に形成された状態でホルダー60に支持されている。
【0055】
すなわち、ホルダー60の前端部には、灯具前後方向と直交する鉛直面に沿って延びるフレーム部60bが形成されている。このフレーム部60bは、灯具正面視において横長U字形状に形成されており、L字形の断面形状を有している。そして、投影レンズアッシー22は、2つの投影レンズ32A、32Bの後面の周縁部をホルダー60のフレーム部60bに灯具前方側から当接させた状態でホルダー60に支持されている。
【0056】
このように灯具ユニットアッシー20は、第1および第2灯具ユニット30A、30Bのリフレクタ36A、36B、シェード38A、38B、第1および第2付加リフレクタ42B、44Bとホルダー60とが一体的に形成されており、これにより車両用灯具10は第1および第2灯具ユニット30A、30Bの光軸調整が一体的に行われる構成となっている。
【0057】
なお、灯具ユニットアッシー20において、リフレクタ36A、36B、シェード38A、38B、第1および第2付加リフレクタ42B、44Bならびにホルダー60には平面視において重複する部分が存在しないので、これらを単一の射出成形品として成形する際、これに用いられる金型の構造は簡易なものとなる。
【0058】
灯具ユニットアッシー20は、車両用灯具10に組み込まれた状態では、第1および第2灯具ユニット30A、30Bの光軸Axが水平面に対して灯具前方へ向けて0.5~0.6°程度下向きの方向に延びた状態で配置されるようになっている。
【0059】
図7は、車両用灯具10からの照射光によって形成されるロービーム用配光パターンPLを透視的に示す図である。
【0060】
図7に示すように、ロービーム用配光パターンPLは、左配光のロービーム用配光パターンであって、その上端縁に左右段違いのカットオフラインCL1、CL2を有している。このカットオフラインCL1、CL2は、灯具正面方向の消点であるH-Vを鉛直方向に通るV-V線を境にして左右段違いで水平方向に延びており、V-V線よりも右側の部分が対向車線側カットオフラインCL1として形成されるとともに、V-V線よりも左側の部分が、対向車線側カットオフラインCL1から傾斜部を介して段上がりになった自車線側カットオフラインCL2として形成されている。
【0061】
ロービーム用配光パターンPLは、
図8(a)に示す第1配光パターンPLAと
図8(b)に示す第2配光パターンPLBとの合成配光パターンとして形成されている。その際、第1配光パターンPLAは第1灯具ユニット30Aからの照射光によって形成される配光パターンであり、第2配光パターンPLBは第2灯具ユニット30Bからの照射光によって形成される配光パターンである。
【0062】
ロービーム用配光パターンPLにおいて、対向車線側カットオフラインCL1とV-V線との交点であるエルボ点Eは、H-Vの0.5~0.6°程度下方に位置している。これは、第1および第2灯具ユニット30A、30Bの光軸Axが水平面に対して灯具前方へ向けて0.5~0.6°程度下向きの方向に延びていることによるものである。
【0063】
ロービーム用配光パターンPLにおけるカットオフラインCL1、CL2の上方空間にはOHS照射用配光パターンPCが付加的に形成されている。このOHS照射用配光パターンPCは、車両前方路面の上方に設置された頭上標識OHSを照射するための配光パターンであって、カットオフラインCL1、CL2から上方に離れた位置においてV-V線を中心にして左右方向に拡がる横長の配光パターンとして形成されている。
【0064】
図8(a)に示す第1配光パターンPLAは、リフレクタ36Aで反射した光源34Aからの出射光によって投影レンズ32Aの後側焦点面上に形成された光源34Aの光源像を、投影レンズ32Aにより上記仮想鉛直スクリーン上に反転投影像として投影することにより形成され、そのカットオフラインCL1、CL2は、シェード38Aにおける上向き反射面38Aaの前端縁38A1の反転投影像として形成されるようになっている。
【0065】
第1配光パターンPLAには、OHS照射用配光パターンPCAが付加的に形成されている。このOHS照射用配光パターンPCAは、第1付加リフレクタ42Aで下向きに反射した光源34Aからの出射光が、第2付加リフレクタ44Aで灯具前方へ向けて反射した後、投影レンズ32Aを介して灯具前方へ照射されることにより形成されるが、その際、第2付加リフレクタ44Aからの反射光によって、OHS照射用配光パターンPCAとカットオフラインCL1、CL2との間の空間にも、OHS照射用配光パターンPCAよりも弱い明るさで拡散配光パターンSaが形成される。
【0066】
ただし、この拡散配光パターンSaにおいては、対向車線側カットオフラインCL1の上方近傍領域が局所的に暗部Dとして形成されている。この暗部Dは、第2付加リフレクタ44Aの反射面44Aaの自車線側の領域に形成された突起部44Abにおいて、第1付加リフレクタ42Aからの反射光の一部が拡散反射することによって形成されるものである。
【0067】
その際、第2付加リフレクタ44Aの反射面44Aaにおける突起部44Abの形成位置は、
図7に示すように対向車2が自車の前方50m付近まで接近したときに暗部Dが対向車2の位置と略一致するような位置に設定されている。
【0068】
一方、
図8(b)に示す第2配光パターンPLBは、リフレクタ36Bで反射した光源34Bからの出射光によって投影レンズ32Bの後側焦点面上に形成された光源34Bの光源像を、投影レンズ32Bにより上記仮想鉛直スクリーン上に反転投影像として投影することにより形成され、そのカットオフラインCL1、CL2は、シェード38Bにおける上向き反射面38Baの前端縁38Ba1の反転投影像として形成されるようになっている。
【0069】
第2配光パターンPLBにも、OHS照射用配光パターンPCBが付加的に形成され、OHS照射用配光パターンPCBとカットオフラインCL1、CL2との間の空間にはOHS照射用配光パターンPCAよりも弱い明るさで拡散配光パターンSbが形成されるが、この拡散配光パターンSbには
図8(a)に示す拡散配光パターンSaのような暗部Dは形成されていない。これは、第2付加リフレクタ44Bの反射面44Baの自車線側の領域には、第2付加リフレクタ44Aの場合のような突起部44Abが形成されていないことによるものである。
【0070】
したがって、
図7に示すように、
図8(a)に示すOHS照射用配光パターンPCAと
図8(b)に示す第2配光パターンPLBとの合成配光パターンとして形成されるOHS照射用配光パターンPCにおいては、これに付随して形成される拡散配光パターンSa、Sbのうち拡散配光パターンSaの暗部Dのみが存在するものとなっている。そしてこれにより、対向車2のドライバにグレアを与えてしまうことなく、車両前方走行路における対向車線側の遠方視認性が確保されるようになっている。
【0071】
次に本実施形態の作用効果について説明する。
【0072】
本実施形態に係る車両用灯具10は、第1および第2灯具ユニット30A、30Bを備えており、その各々が、リフレクタ36A、36Bと投影レンズ32A、32Bとの間に配置されたシェード38A、38Bによりリフレクタ36A、36Bで反射した光源34A、34Bからの出射光の一部を遮光してロービーム用配光パターンPLのカットオフラインCL1、CL2を形成するように構成されているので、第1および第2灯具ユニット30A、30Bからの照射光によってロービーム用配光パターンPLを所望の配光分布で形成することが容易に可能となる。
【0073】
その上で、第1および第2灯具ユニット30A、30Bの各々において、光源34A、34からの出射光を第1付加リフレクタ42A、42Bおよび第2付加リフレクタ44A、44Bで順次反射させることにより、ロービーム用配光パターンPLとして、そのカットオフラインCL1、CL2の上方空間にOHS照射用配光パターンPCを付加的に形成することができる。
【0074】
その際、第1灯具ユニット30Aは、第2付加リフレクタ44Aの反射面44Aaにおける投影レンズ32Aの後側焦点Fよりも自車線側の位置に光拡散領域としての突起部44Abが形成された構成となっているので、カットオフラインCL1、CL2とOHS照射用配光パターンPCとの間の空間が、拡散配光パターンSa、Sbによって必要以上に明るくならないようにすることができ、これにより対向車ドライバにグレアを与えてしまうのを効果的に抑制することができる。
【0075】
また、このような突起部44Abが形成されているのは、第1灯具ユニット30Aのみであるので、カットオフラインCL1、CL2とOHS照射用配光パターンPCとの間の空間が暗くなり過ぎないようすることができ、これにより自車ドライバの前方視認性が低下してしまわないようにすることができる。
【0076】
このように本実施形態によれば、ロービーム用配光パターンPLを形成するための第1および第2灯具ユニット30A、30Bを備えた車両用灯具10において、対向車ドライバに対するグレアを効果的に抑制した上で自車ドライバの前方視認性向上を図ることができる。
【0077】
特に本実施形態においては、突起部44Abによって光拡散領域が構成されているので、カットオフラインCL1、CL2とOHS照射用配光パターンPCとの間の空間が必要以上に明るくならないようにするための反射制御を精度良く行うことができる。
【0078】
また本実施形態においては、第1および第2灯具ユニット30A、30Bの各々の構成として、リフレクタ36A、36Bが光源34A、34Bを上方側から覆うように配置されており、かつ、シェード38A、38Bがリフレクタ36A、36Bからの反射光の一部を投影レンズ32A、32Bへ向けて上向きに反射させる上向き反射面38Aa、38Baを備えているので、光源34A、34Bからの出射光を効率良く灯具前方へ照射することができ、これによりロービーム用配光パターンPLの明るさを増大させることができる。
【0079】
さらに本実施形態においては、第1および第2灯具ユニット30A、30Bの各々において、第1付加リフレクタ42A、42Bがリフレクタ36A、36Bと一体的に形成されるとともに第2付加リフレクタ44A、44Bがシェード38A、38Bと一体的に形成されているので、車両用灯具10の部品点数削減を図ることができ、かつ、第1付加リフレクタ42A、42Bとリフレクタ36A、36Bとの位置関係精度および第2付加リフレクタ44A、44Bとシェード38A、38Bとの位置関係精度を高めることができる。
【0080】
しかも、第1および第2灯具ユニット30A、30Bは、リフレクタ36A、36Bおよびシェード38A、38Bがそれぞれ一体的に形成されているので、車両用灯具10のさらなる部品点数削減を図ることができる。
【0081】
上記実施形態においては、車両用灯具10として2つの第1および第2灯具ユニット30A、30Bを備えているものとして説明したが、これらに加えて第1灯具ユニット30Aと同様の構成を有する灯具ユニットが追加配置された構成や第2灯具ユニット30Bと同様の構成を有する灯具ユニット追加配置された構成とすることも可能である。
【0082】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0083】
まず、上記実施形態の第1変形例について説明する。
【0084】
図9は、本変形例に係る車両用灯具の要部を示す、
図6と同様の図である。
【0085】
図9に示すように、本変形例の基本的な構成は上記実施形態の場合と同様であるが、第2付加リフレクタ144Aの構成が上記実施形態の場合と一部異なっている。
【0086】
すなわち、本変形例の第2付加リフレクタ144Aも、上記実施形態の第2付加リフレクタ44Aの反射面44Aaと同様の反射面144Aaを備えているが、光軸Axよりも自車線側の位置には光拡散領域としての凹陥部144Abが形成されている。この凹陥部144Abは、反射面144Aaの上端縁近傍に位置しており、横長の略楕円面状の表面形状を有している。そして、この凹陥部144Abにより、第1付加リフレクタ42Aで反射した光源34Aからの出射光の一部を拡散反射させるようになっている。
【0087】
本変形例の構成を採用した場合においても、第2付加リフレクタ144Aの反射面144Aaに形成された凹陥部144Abにおいてリフレクタ42Aからの反射光の一部を拡散反射させることにより、対向車ドライバに対するグレアを効果的に抑制した上で自車ドライバの前方視認性向上を図ることができる。
【0088】
次に、上記実施形態の第2変形例について説明する。
【0089】
図10は、本変形例に係る車両用灯具の要部を示す、
図6と同様の図である。
【0090】
図10に示すように、本変形例の基本的な構成は上記実施形態の場合と同様であるが、第2付加リフレクタ244Aの構成が上記実施形態の場合と一部異なっている。
【0091】
すなわち、本変形例の第2付加リフレクタ244Aも、上記実施形態の第2付加リフレクタ44Aの反射面44Aaと同様の反射面244Aaを備えているが、光軸Axよりも自車線側の位置には光拡散領域としてのシボ加工面244Abが形成されている。このシボ加工面244Abは、反射面244Aaの上端縁近傍の横長矩形状領域にシボ加工を施すことによって構成されている。そして、このシボ加工面244Abにより、第1付加リフレクタ42Aで反射した光源34Aからの出射光の一部を拡散反射させるようになっている。
【0092】
本変形例の構成を採用した場合においても、第2付加リフレクタ244Aの反射面244Aaに形成されたシボ加工面244Abにおいてリフレクタ42Aからの反射光の一部を拡散反射させることにより、対向車ドライバに対するグレアを効果的に抑制した上で自車ドライバの前方視認性向上を図ることができる。
【0093】
なお、上記実施形態およびその変形例において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。
【0094】
また、本願発明は、上記実施形態およびその変形例に記載された構成に限定されるものではなく、これ以外の種々の変更を加えた構成が採用可能である。
【符号の説明】
【0095】
2 対向車
10 車両用灯具
12 ランプボディ
14 透光カバー
20 灯具ユニットアッシー
22 投影レンズアッシー
30A 第1灯具ユニット
30B 第2灯具ユニット
32A、32B 投影レンズ
32Aa 前面
32Ab 後面
34A、34B 光源
34Aa 発光面
36A、36B リフレクタ
36Aa 反射面
38A、38B シェード
38Aa、38Ba 上向き反射面
38Aa1、38Ba1 前端縁
40 基板
42A、42B 第1付加リフレクタ
42Aa、42Ba、44Aa、44Ba、144Aa、244Aa 反射面
44A、44B、144A、244A 第2付加リフレクタ
44Ab 突起部(光拡散領域)
50 ヒートシンク
52 本体部
54 放熱フィン
60 ホルダー
60a 水平フランジ部
60b フレーム部
144Ab 凹陥部(光拡散領域)
244Ab シボ加工面(光拡散領域)
Ax 光軸
CL1 対向車線側カットオフライン
CL2 自車線側カットオフライン
D 暗部
E エルボ点
F 後側焦点
OHS 頭上標識
PC、PCA、PCB OHS照射用配光パターン
PL ロービーム用配光パターン
PLA 第1配光パターン
PLB 第2配光パターン
Sa、Sb 拡散配光パターン