(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094121
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】電気回路体および電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/40 20060101AFI20240702BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
H01L23/40 D
H01L25/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210892
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 亮
(72)【発明者】
【氏名】露野 円丈
(72)【発明者】
【氏名】井出 英一
(72)【発明者】
【氏名】志村 隆弘
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136CB06
5F136DA07
5F136DA27
5F136EA38
(57)【要約】
【課題】半導体装置と冷却部材との固定および端子の接続がそれぞれ必要になり、生産性が低下する課題があった。
【解決手段】半導体素子を封止材により封止してなり、前記半導体素子からの端子が導出された半導体装置と、前記端子が接続される配線を備えた基板と、前記半導体装置と対向して配置され、前記半導体素子による発熱を冷却する冷却部材と、前記冷却部材を前記半導体装置に固定する固定部材と、前記冷却部材が前記半導体装置に密着する方向に前記固定部材を加圧する加圧部材と、を備え、前記固定部材は、前記加圧部材より伝達された加圧力により前記端子と前記配線との接続を支持する支持部を含む電気回路体。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子を封止材により封止してなり、前記半導体素子からの端子が導出された半導体装置と、
前記端子が接続される配線を備えた基板と、
前記半導体装置と対向して配置され、前記半導体素子による発熱を冷却する冷却部材と、
前記冷却部材を前記半導体装置に固定する固定部材と、
前記冷却部材が前記半導体装置に密着する方向に前記固定部材を加圧する加圧部材と、を備え、
前記固定部材は、前記加圧部材より伝達された加圧力により前記端子と前記配線との接続を支持する支持部を含む電気回路体。
【請求項2】
請求項1に記載の電気回路体において、
前記支持部は、前記端子を前記基板の前記配線へ押圧する電気回路体。
【請求項3】
請求項1に記載の電気回路体において、
前記支持部は、前記端子と前記配線とを接続する接続ピンを支持する電気回路体。
【請求項4】
請求項2に記載の電気回路体において、
前記端子は、弾性力を有する屈曲形状であり、前記支持部は、前記屈曲形状の前記端子を前記配線へ押圧する電気回路体。
【請求項5】
請求項2に記載の電気回路体において、
前記支持部は、弾性部材を含み、前記弾性部材により前記端子を前記基板の前記配線へ押圧する電気回路体。
【請求項6】
請求項2に記載の電気回路体において、
前記支持部は、弾性部材を含み、前記弾性部材により前記基板を前記端子へ押圧する電気回路体。
【請求項7】
請求項2に記載の電気回路体において、
前記基板は、前記端子を挟持する挟持部を備える電気回路体。
【請求項8】
請求項2に記載の電気回路体において、
前記基板は、前記端子を受ける凹部を備える電気回路体。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の電気回路体において、
前記冷却部材と前記固定部材とは、接着または係合により一体的に構成される電気回路体。
【請求項10】
請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の電気回路体において、
前記半導体装置と前記冷却部材との間に配置される熱伝導部材を備える電気回路体。
【請求項11】
請求項10に記載の電気回路体において、
前記熱伝導部材の熱伝導率は、5~8W/(m・K)である電気回路体。
【請求項12】
請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の電気回路体において、
前記半導体装置の前記端子には、Auめっき、Agめっき、Snめっき、Niめっきのいずれかが施され、
前記基板上には、シリコン系コーティング剤、フッ素系コーティング剤のいずれかが塗布された電気回路体。
【請求項13】
請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の電気回路体において、
前記加圧部材の取り外しにより、前記冷却部材と一体的に構成された前記固定部材の前記半導体装置への押圧、および前記端子と前記配線との接続が解除される電気回路体。
【請求項14】
請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の電気回路体において、
前記半導体装置は、前記半導体素子の両面に導体板および熱伝導部材が形成され、
前記冷却部材は、前記導体板および前記熱伝導部材を介して前記半導体装置の両面に配置される電気回路体。
【請求項15】
請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の電気回路体を備え、直流電力を交流電力に変換する電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気回路体および電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子のスイッチング動作による電力変換装置は、変換効率が高いため、民生用、車載用、鉄道用、変電設備等に幅広く利用されている。半導体素子はスイッチング動作により発熱する。このため、半導体素子を内蔵した半導体装置には、半導体素子からの発熱を冷却する冷却部材が、半導体装置と対向して密着して配置される。また、半導体装置は、半導体素子より導出された端子を基板の配線に接続している。
【0003】
特許文献1には、パワー半導体に放熱部材を実装してなる電気回路モジュールであって、パワー半導体を収納する固定治具をネジにより放熱部材に固定し、固定治具の端子台に配線をネジにより接続する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術は、半導体装置と冷却部材との固定および端子の接続がそれぞれ必要になり、生産性が低下する課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による電気回路体は、半導体素子を封止材により封止してなり、前記半導体素子からの端子が導出された半導体装置と、前記端子が接続される配線を備えた基板と、前記半導体装置と対向して配置され、前記半導体素子による発熱を冷却する冷却部材と、前記冷却部材を前記半導体装置に固定する固定部材と、前記冷却部材が前記半導体装置に密着する方向に前記固定部材を加圧する加圧部材と、を備え、前記固定部材は、前記加圧部材より伝達された加圧力により前記端子と前記配線との接続を支持する支持部を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、生産性に優れた電気回路体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、固定部材を含む実施形態における電気回路体の平面図である。
【
図2】
図2は、固定部材を取り除いた実施形態における電気回路体の平面図である。
【
図3】
図3は、電気回路体のX-X線における断面図である。
【
図4】
図4は、電気回路体のY-Y線における断面斜視図である。
【
図5】
図5は、電気回路体のX-X線における断面斜視図である。
【
図6】
図6は、半導体装置の入れ替えを説明する断面図である。
【
図9】
図9(a)~
図9(d)は、半導体装置の製造工程を説明する断面図である。
【
図11】
図11(a)、
図11(b)は、実施形態における固定部材の一体化の工程を説明する断面図である。
【
図12】
図12(a)、
図12(b)は、変形例1における固定部材の一体化の工程を説明する断面図である。
【
図13】
図13(a)、
図13(b)は、変形例2における固定部材の一体化の工程を説明する断面図である。
【
図14】
図14(a)~
図14(e)は、電気回路体の変形例3~変形例7を示す断面図である。
【
図15】
図15は、電気回路体の変形例8を示す断面図である。
【
図16】
図16は、比較例における電気回路体の平面図である。
【
図17】
図17は、半導体装置を用いた電力変換装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施する事が可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。
【0010】
図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0011】
同一あるいは同様な機能を有する構成要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。ただし、これらの複数の構成要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
【0012】
図1、
図2は、実施形態における電気回路体400の平面図である。
図1は、固定部材344を含む電気回路体400の平面図であり、
図2は、固定部材344を取り除いた電気回路体400の平面図である。
【0013】
電気回路体400は、半導体装置300、冷却部材340、固定部材344、基板350、加圧部材341等からなる。
図1、
図2に示す例では、電気回路体400は、半導体装置300を3個並列に設けてなる。
【0014】
半導体装置300は、後述する半導体素子155、157を封止材360により封止して、これを内蔵している。半導体装置300の両面は半導体素子155、157のスイッチング動作による熱を放熱する。さらに、半導体装置300は、半導体素子155、157と接続されている端子が半導体装置300の側面の封止材360より導出される。これらの端子は、直流回路のコンデンサモジュール500(
図17参照)に連結する正極側端子325Pおよび負極側端子325M、交流回路のモータジェネレータ192、194(
図17参照)に連結する交流側端子325A等の大電流が流れるパワー端子である。
【0015】
また、半導体装置300の側面の封止材360より導出される端子は、下アームゲート端子325L、コレクタセンス端子325C、エミッタセンス端子325E、上アームゲート端子325Uなどの端子である。半導体装置300より導出されるこれらの端子は、基板350の配線パターンなどの配線に接続される。半導体装置300を3個並列に設けた電気回路体400は、半導体素子155、157のスイッチング動作により直流電流と交流電流を変換する電力変換装置200として機能する。なお、電気回路体400が有する半導体装置300の個数は3個に限らず、電気回路体400の種々の形態に合わせて任意に設定される。
【0016】
冷却部材340は、半導体装置300と対向して配置され、半導体素子155、157のスイッチング動作による発熱を冷却する。具体的には、冷却部材340は、内部に冷媒が流通する流路が形成され、流路を流通する冷媒により半導体素子155、157からの発熱を冷却する。冷媒には、水や水にエチレングリコールを混入した不凍液等を用いる。冷却部材340は、熱伝導率が高く軽量なアルミ系が望ましい。押し出し成型や、鍛造、ろう付け等で作製する。
【0017】
固定部材344は、冷却部材340に接着、溶着、勘合などにより一体的に構成される。そして、固定部材344は、加圧部材341により冷却部材340を半導体装置300に固定する。加圧部材341は、冷却部材340が半導体装置300に密着する方向に固定部材344を加圧する加圧力を継続して加えることのできる部材であればよい。例えば、本実施形態のようにネジであってもよく、固定部材344を半導体装置300の両面から挟み込むコの字状の板バネなどを用いることができる。
【0018】
固定部材344は、加圧部材341より伝達された加圧力により、半導体装置300の端子と基板350の配線との接続も行う。固定部材344、基板350、加圧部材341の構成については後述する。
【0019】
固定部材344は、絶縁性の材料であれば幅広く用いることが可能である。熱硬化性樹脂や、熱可塑性樹脂、シリコン樹脂などの樹脂部材や、セラミックなどの無機部材を用いることができる。樹脂部材を用いると、複雑な構造の形成が容易となる。熱可塑性樹脂を用いることで、射出成型により冷却部材340と一体成型することもでき、生産性を高めることができる。固定部材344に樹脂部材を用いる場合、ガラス繊維やガラス粒子、セラミック粒子などの無機充填剤を添加することで機械的物性を向上できる。また、セラミック板やセラミック製の構造体を、固定部材344の一部に用いることで、機械的物性を向上したり、絶縁性を向上したりできる。また、金属部材であっても、その表面や、電気的絶縁性が必要な部位に絶縁性の被覆を設けることで、固定部材344として用いることができる。
【0020】
図3は、
図1および
図2に示す電気回路体400のX-X線における断面図である。
図4は、
図1および
図2に示す電気回路体400のY-Y線における断面斜視図である。
図5は、
図1および
図2に示す電気回路体400のX-X線における断面斜視図である。
【0021】
図3に示すように、電力変換装置の上アーム回路を形成する第1半導体素子として、能動素子155、ダイオード156を備える(後述の
図7、
図8参照)。能動素子としては、Si、SiC、GaN、GaO、C等を用いることができる。能動素子155のボディダイオードを用いる場合は、別付けのダイオードを省略してもよい。第1半導体素子155のコレクタ側は、第2導体板431に接合されている。この接合には、はんだを用いてもよいし、焼結金属を用いてもよい。第1半導体素子155のエミッタ側には第1導体板430が接合されている。
【0022】
図4に示すように、下アーム回路を形成する第2半導体素子として、能動素子157、ダイオード158を備える(後述の
図7、
図8参照)。
図4に示すように、第2半導体素子157のコレクタ側は、第4導体板433に接合されている。第2半導体素子157のエミッタ側には第3導体板432が接合されている。
冷却部材340は、半導体装置300の両面に配置されているが、内部の冷媒は流路連結部346を通り、両面に配置された冷却部材340の一方から他方へ流通する。
【0023】
導体板430、431、432、433は、電気伝導性と熱伝導率が高い材料であれば特に限定されないが、銅系又はアルミ系材料等の金属系材料や、金属系材料と高熱伝導率のダイヤモンド、カーボンやセラミック等の複合材料等を用いることが望ましい。これらは、単独で用いてもよいが、はんだや、焼結金属との接合性を高めるためNiやAg等のめっきを施してもよい。
【0024】
図3、
図4、
図5に示すように、導体板430、431、432、433は、電流を通電する役割の他に、半導体素子155、156、157、158が発する熱を冷却部材340に伝熱する伝熱部材としての役割をはたしている。半導体素子155、156、157、158と接合されている面と反対側の面が導体板430、431、432、433の放熱面となる。導体板430、431、432、433と冷却部材340は電位が異なるため、放熱面との間に絶縁シート440を配置する。
【0025】
絶縁シート440は、樹脂絶縁層443、表面導体層444を積層して構成される。樹脂絶縁層443は、一方面において導体板430、431、432、433を覆って導体板430、431、432、433の放熱面に接着される。表面導体層444は、樹脂絶縁層443の他方面に接着されるとともに半導体装置300の表面に露出する。
【0026】
絶縁シート440の樹脂絶縁層443は、導体板430、431、432、433と接着性を有するものであれば特に限定されないが、粉末状の無機充填剤を分散したエポキシ樹脂系樹脂絶縁層が望ましい。これは、接着性と放熱性のバランスが良いためである。絶縁シート440は、後述の熱伝導部材453と接する側に金属箔などの表面導体層444を設ける。
【0027】
絶縁シート440は、トランスファーモールド工程で封止材360と同時に硬化される。トランスファーモールド成型工程において、絶縁シート440を金型に搭載する際、金型への接着を防ぐため、絶縁シート440と金型との接触面には、離型シート又は、表面導体層444を設ける。離型シートは、熱伝導率が悪いためトランスファーモールド後に剥離する工程が必要となるが、金属箔などの表面導体層444を用いた場合は、銅系や、アルミ系の熱伝導率の高い金属を選択することで、トランスファーモールド後に剥離することなく使用することができる。
【0028】
半導体素子155、156、157、158、導体板430、431、432、433、絶縁シート440は、トランスファーモールド成型により封止材360で封止され、半導体装置300を構成する。
【0029】
熱伝導部材453は、半導体装置300と冷却部材340との間に、接触熱抵抗を低減するために配置される。熱伝導部材453は、グリースや、ゲルグリース、フェーズチェンジシートなど常温又は高温で流動性のあるものを用いることができるが、作業性と長期信頼性を確保のため、未硬化では流動性を有し、硬化後に流動性が無くなる硬化型の熱伝導材料が望ましい。硬化型の熱伝導部材453は、塗布時は、粘度が低く作業性に優れ、硬化することで、機械物性を向上することができる利点がある。硬化は熱硬化、湿気硬化、紫外線硬化などを利用することができるが、深部まで硬化するには熱硬化が望ましい。
【0030】
熱伝導部材453は、金属、セラミックス、炭素系材料等の高熱伝導材料を樹脂と混ぜ合わせた材料である。樹脂は、-40℃付近から200℃付近まで弾性率の変化が小さいシリコン樹脂が最も望ましい。また、熱伝導部材453は、絶縁性材料が好まれる。これは、端子近傍に熱伝導部材453の材料が付着することで絶縁性が低下することを防止するためである。熱伝導部材453の熱伝導率は、5~8W/(m・K)である。
【0031】
基板350は、低コストのプリント基板や、絶縁性や耐熱性にすぐれるセラミック基板、厚さが薄く柔軟性にすぐれるフレキシブル基板などである。また、パターンを形成して打ち抜いたリードフレームなどの金属板や、それに類似する金属板単体でも、必要な電気的接続をとることができるため、基板350として用いてもよい。
【0032】
基板350の導体層は、配線として1層以上あれば問題ないが、2層以上とすることで、配線レイアウトの自由度を高めることができる。基板350の表面にレジストなどの絶縁性皮膜を形成することで、隣接する端子や配線との絶縁性を向上できる。レジストは、フォトレジストなどを用いることで、電気的接続が必要な部分のレジストを除去することが容易となる。基板350上には、シリコン系コーティング剤、フッ素系コーティング剤のいずれかを塗布する。
【0033】
半導体素子155、156、157、158より導出されている端子325は、基板350の配線に接続される。具体的には、
図3、
図5に示すように、第1半導体素子155より、上アームゲート端子325Uが導出され、基板350の配線に接続される。さらに、第1半導体素子155、第2半導体素子156より、第2導体板431と一体に形成された正極側端子325Pが導出され、基板350の配線に接続される。その他、半導体素子155、156、157、158より導出されている端子325は、
図3、
図5に示すように、X-X線における断面でV字状に形成されている。V字状に形成された端子325のV字頂点部分は基板350の配線に当接している。V字状に形成された端子325の端部は、固定部材344の支持部345に当接している。加圧部材341による加圧力は、固定部材344に伝達され、これにより固定部材344の支持部345は、端子325を基板350の配線へ押圧し、端子325と基板350の配線との接続を強固にする。
【0034】
端子325は、断面がV字状の例で説明したが、その他の屈曲形状でもよい。また、端子325は、弾性力を有する屈曲形状であり、固定部材344の支持部345は、屈曲形状の端子325を配線へ容易に押圧できる。このように、半導体装置300の端子325は、V字状などの屈曲形状が施されているので、端子325と配線との接続位置のばらつきを吸収する、所謂、公差吸収機構を形成しており、生産性に優れる。端子325には、Auめっき、Agめっき、Snめっき、Niめっきのいずれかを施す。
【0035】
本実施形態によれば、加圧部材341により、冷却部材340の固定および配線の接続を行うので、冷却部材340の固定と配線の接続とをそれぞれ行う場合と比較して、生産性に優れた電気回路体400を提供できる。また、冷却部材340の固定と配線の接続とをそれぞれ個別に行う必要がないので、電気回路体400の構造を簡略化でき、小型化できる。また、配線の接続は、加圧部材341の加圧力により接続をするため、はんだや溶接などによる接続と比較して、電気回路体400の製造時の二酸化炭素の排出を軽減できる。そして、加圧部材341を取り外すことで、半導体装置300等を交換するなどの電気回路体400の修理・修復などが容易になるので、製品の環境負荷を軽減できる。
【0036】
図6は、半導体装置300等の入れ替えを説明する断面図である。
図3と同様に、
図1および
図2に示す電気回路体400のX-X線における断面図で示す。
図6に示すように、加圧部材341を取り外すことにより、冷却部材340が一体的に構成されている固定部材344を半導体装置300から分離することが出来る。この時、半導体装置300の端子325と基板350の配線との接続も同時に解除される。すなわち、加圧部材341の取り外しにより、冷却部材340と一体的に構成された固定部材344の半導体装置300への押圧、および端子325と配線との接続が解除される。これにより、例えば、古い半導体装置300を新しい半導体装置300へ、または、古い冷却部材340を新しい冷却部材340へ交換できる。
【0037】
図7は、半導体装置300の半透過平面図である。
図8は、半導体装置300の回路図である。
【0038】
図7、
図8に示すように、正極側端子325Pは、上アーム回路のコレクタ側から出力しており、バッテリ又はコンデンサの正極側に接続される。上アームゲート端子325Uは、上アーム回路の能動素子155のゲートから出力している。負極側端子325Mは、下アーム回路のエミッタ側から出力しており、バッテリ若しくはコンデンサの負極側、又はGNDに接続される。下アームゲート端子325Lは、下アーム回路の能動素子157のゲートから出力している。交流側端子325Aは、下アーム回路のコレクタ側から出力しており、モータに接続される。中性点接地をする場合は、下アーム回路は、GNDでなくコンデンサの負極側に接続する。
【0039】
上アームのエミッタセンス端子325Eは、上アーム回路の能動素子155のエミッタから、下アームのエミッタセンス端子325Eは、下アーム回路の能動素子157のエミッタから出力される。上アームのコレクタセンス端子325Cは、上アーム回路の能動素子155のコレクタから、下アームのコレクタセンス端子325Cは、下アーム回路の能動素子157のコレクタから出力される。
【0040】
また、半導体素子(上アーム回路)の能動素子155およびダイオード156の上下に導体板(上アーム回路エミッタ側)430、導体板(上アーム回路コレクタ側)431が配置される。半導体素子(下アーム回路)の能動素子157およびダイオード158の上下に導体板(下アーム回路エミッタ側)432、導体板(下アーム回路コレクタ側)433が配置される。
【0041】
本実施形態の半導体装置300は、上アーム回路及び下アーム回路の2つのアーム回路を、1つのモジュールに一体化した構造である2in1構造である。この他に、複数の上アーム回路及び下アーム回路を、1つのモジュールに一体化した構造を用いてもよい。この場合は、半導体装置300からの出力端子の数を低減し小型化することができる。
【0042】
図9(a)、
図9(b)、
図9(c)、
図9(d)は、半導体装置300の製造工程を説明する断面図である。
図3と同様に、1モジュール分のX-X線の断面図で示す。
【0043】
図9(a)は、仮着け工程である。第2導体板431に半導体素子155のコレクタ側と半導体素子156のカソード側を接続し、半導体素子155のゲート電極、エミッタセンス電極、コレクタ電極をワイヤボンディングで上アームのゲート端子325U、エミッタセンス端子325E、コレクタセンス端子325Cにそれぞれ接続する。さらに、半導体素子155のエミッタ側と半導体素子156のアノード側を第1導体板430に接続して、上アーム側の回路体310を作製する。同様に、第4導体板433に半導体素子157のコレクタ側と半導体素子158のカソード側を接続し、半導体素子157のゲート電極、エミッタセンス電極、コレクタ電極をワイヤボンディングで下アームのゲート端子325L、エミッタセンス端子325E、コレクタセンス端子325Cにそれぞれ接続する。
【0044】
さらに、半導体素子157のエミッタ側と半導体素子158のアノード側を第3導体板432に接続して、下アーム側の回路体310を作製する。ただし
図9(a)では、上アーム側の回路体310のみを図示し、下アーム側の回路体310については図示していない。その後、導体板430~433に絶縁シート440を仮着けする。仮着けとは、この後のトランスファーモールド工程で絶縁シート440が硬化し接着する余地を残した条件で、絶縁シート440の密着力を使用して一時的に貼り付けることである。
【0045】
図9(b)~
図9(d)は、トランスファーモールド工程である。トランスファーモールド装置601は、スプリング602を金型603に備えている。このスプリング602により、回路体310の高さがばらついても、半導体素子155~158に過度の圧力を加えることなく、スプリング602の力により所定の荷重を加えることができる。また、トランスファーモールド装置601は、図示していない真空脱気機構を備える。真空脱気することで、樹脂等よりなる封止材360等がボイドを巻き込んでもボイドを小さく圧縮し、絶縁性を向上できる。また、図示していない離型フィルムで回路体310を覆うことで、スプリング駆動部等に樹脂バリが侵入するのを保護できる。
【0046】
図9(b)に示すように、予め175℃の恒温状態に加熱した金型603内に、絶縁シート440を仮着した回路体310をセットする。次に、
図9(c)に示すように、上下の金型603をクランプする。このとき、スプリング602により、絶縁シート440と導体板430~433は加圧され密着する。
【0047】
この後、
図9(d)に示すように、封止材360を金型603内に注入する。その後、トランスファーモールド装置601から樹脂封止した半導体装置300を取り出し、175℃にて2時間以上の後硬化を行う。
【0048】
図10(a)、
図10(b)は、電気回路体400の製造工程を説明する断面図である。
まず、
図9(d)に示した工程に続けて、上アームゲート端子325U、正極側端子325Pなどの半導体素子155、156、157、158より導出されている端子325をV字状などの屈曲形状に成形する。この成形は、金型等を用いて行うことができる。
【0049】
図10(a)は、塗布工程である。冷却部材340は、固定部材344と一体的に構成されているが、この冷却部材340に熱伝導部材453を塗布する。
【0050】
図10(b)は、密着・硬化工程である。熱伝導部材453が塗布された冷却部材340を加圧部材341で半導体装置300に密着する。この際に、V字状に形成された端子325の端部は、固定部材344の支持部345により押圧され、端子325と基板350の配線とが接続される。すなわち、加圧部材341により、冷却部材340の固定と端子325の接続が行われる。そして、熱伝導部材453を硬化することで電気回路体400を作製する。
【0051】
図11(a)、
図11(b)は、固定部材344と冷却部材340との一体化の工程を説明する断面図である。
図11(a)に示すように、固定部材344の内側には、冷却部材340が嵌合する凹部が形成されている。冷却部材340を接着する場合は、その凹部に接着剤を塗布する。
【0052】
次に、
図11(b)に示すように、固定部材344の凹部に冷却部材340を嵌合して、接着し、固定部材344と冷却部材340を一体的に構成する。固定部材344は、冷却部材340と別体に作製し、その後、冷却部材340を接着により固定した。別体で作製することで、構造を簡略化し低コスト化できる。
【0053】
図12(a)、
図12(b)は、変形例1における固定部材344と冷却部材340との一体化の工程を説明する断面図である。
図12(a)に示すように、固定部材344の中央部は、空洞347が形成されている。空洞347の周囲の内側には、冷却部材340が嵌合する凹部が形成されている。冷却部材340を接着する場合は、その凹部に接着剤を塗布する。
【0054】
次に、
図12(b)に示すように、固定部材344の凹部に冷却部材340を嵌合して、接着し、固定部材344と冷却部材340を一体的に構成する。この変形例1では、固定部材344の材料を低減できる。
【0055】
図13(a)、
図13(b)は、変形例2における固定部材344と冷却部材340との一体化の工程を説明する断面図である。
図13(a)に示すように、固定部材344の中央部は、空洞347が形成されている。空洞347の周囲の内側には、冷却部材340が嵌合する凹部が形成され、さらに、空洞347の周囲の内側には、周囲所定箇所に係合突起349が形成されている。冷却部材340には、係合突起349の位置に対応して、係合穴342が形成されている。
【0056】
次に、
図13(b)に示すように、固定部材344の係合突起349を冷却部材340の係合穴342に係合することにより、固定部材344と冷却部材340を一体的に構成する。なお、固定部材344に係合穴を、冷却部材340に係合突起を形成し、これを係合することにより、固定部材344と冷却部材340を一体的に構成してもよい。この変形例2では、接着剤を用いることなく固定部材344と冷却部材340を一体的に構成でき、係合を解除することにより、固定部材344もしくは冷却部材340の交換が可能になる。
【0057】
図14(a)、
図14(b)、
図14(c)、
図14(d)、
図14(e)は、それぞれ電気回路体400の変形例3、変形例4、変形例5、変形例6、変形例7を示す断面図である。
図3と同様に、1モジュール分のX-X線の断面図で示す。
図3と同一箇所には同一の符号を付して説明を簡略に行う。
【0058】
図14(a)に示す変形例3は、端子325と基板350の配線とを接続する接続ピン348を備え、固定部材344の支持部345は、接続ピン348を支持する。具体的には、接続ピン348の両端は、半導体装置300の両面に配置された固定部材344の支持部345で保持され、その間の接続ピン348に端子325と基板350の配線が電気的に接続される。接続ピン348は、例えば、プレスフィットなどの弾性コンタクトであり、端子325および基板350に形成されたスルーホールに圧入する。接続ピン348は、スルーホールの径より大きく、端子325や基板350の厚さより長い拡大加工部が形成され、部品寸法がばらついても、その公差を吸収できる。また、接続ピン348の挿入方向に合わせて、挿入方向に近い側のスルーホールの径および拡大加工部の径を大きくすることにより、接続ピン348をスムーズに挿入することができる。
【0059】
図14(b)に示す変形例4は、端子325をコの字状に屈曲し、固定部材344の支持部345は、端子325を基板350の配線へ押圧する。コの字状に屈曲された端子325の先端部分が基板350の配線へ電気的に接続される。端子325は、弾性力を有する屈曲形状であり、固定部材344の支持部345は、屈曲形状の端子325を配線へ容易に押圧できる。
【0060】
図14(c)に示す変形例5では、固定部材344の支持部345は、弾性部材を含み、弾性部材により基板350を端子325へ押圧する。具体的には、コの字状に屈曲された端子325の先端部分が基板350の配線へ電気的に接続され、この基板350の反対側は、固定部材344の支持部345に保持されたバネなどの弾性部材343で押圧される。端子325を挟んだ基板350の反対側は封止材360で端子325が保持されている。これにより、基板350が端子325側へ撓み、端子325と基板350の配線との接続が強固になり、また、部品寸法がばらついても、弾性部材343により、その公差を吸収できる。
【0061】
図14(d)に示す変形例6では、固定部材344の支持部345は、弾性部材343を含み、弾性部材343により端子325を基板350の配線へ押圧する。具体的には、端子325の先端部分が基板350の配線へ電気的に接続され、端子325の先端部分は、固定部材344の支持部345に保持されたバネなどの弾性部材343で基板350側へ押圧される。これにより、端子325が基板350側へ押圧され、端子325と基板350の配線との接続が強固になり、また、部品寸法がばらついても、弾性部材343により、その公差を吸収できる。
【0062】
図14(e)に示す変形例7では、基板350は、端子325を挟持する平行板よりなる挟持部351を備える。具体的には、端子325の先端部分が基板350に設けられた挟持部351の平行板の間に挿入される。平行板は導電性であってもよく、平行板の間に挟持された端子325は配線へ電気的に接続される。挿入される端子の位置が平行板と平行な方向にばらついても、その公差を吸収できる。
【0063】
図15は、電気回路体400の変形例8を示す断面図である。
図3と同様に、1モジュール分のX-X線の断面図で示す。
図3と同一箇所には同一の符号を付して説明を簡略に行う。
【0064】
図15に示すように、基板350には、端子325を受ける凹部352を形成している。具体的には、端子325と基板350の配線とが接触する部分に、配線が施された凹部352を形成し、この凹部352に端子325の接触部分を位置させる。これにより、固定部材344の支持部345により押圧された端子325と配線との接触位置のずれを防止でき、また、部品寸法がばらついても、その公差を吸収できる。
【0065】
図16は、比較例における電気回路体400の平面図である。この比較例は、本実施形態を適用しない例であり、本実施形態と比較するための図である。
図1と同様に電気回路体400の平面図であり、
図1と同一箇所には同一の符号を付して説明を簡略に行う。
【0066】
比較例では、
図16に示すように、冷却部材340が一体的に構成された固定部材344を固定するネジ部355と、半導体装置300の端子を電気的に接続するネジ部356がある。このため、冷却部材340の固定および配線の接続をそれぞれ行う必要があるので、電気回路体400の生産性が低下する。加えて、冷却部材340の固定および配線の接続を行うそれぞれの構成が必要になり、電気回路体400の構造が大型化する。また、配線の接続をはんだや溶接などにより接続した場合には、製造時の二酸化炭素の排出が増加し、古い半導体装置300を新しい半導体装置300に入れ替えることが出来ず、電気回路体400の修理・修復が困難になり、製品の環境負荷が大きくなる。
【0067】
図17は、半導体装置300を用いた電力変換装置200の回路図である。
電力変換装置200は、インバータ回路部140、142と、補機用のインバータ回路部43と、コンデンサモジュール500とを備えている。インバータ回路部140及び142は、半導体装置300を複数個備えており、それらを接続することにより三相ブリッジ回路を構成している。電流容量が大きい場合には、更に半導体装置300を並列接続し、これら並列接続を三相インバータ回路の各相に対応して行うことにより、電流容量の増大に対応できる。また、半導体装置300に内蔵している半導体素子である能動素子155、157やダイオード156、158を並列接続することでも電流容量の増大に対応できる。
【0068】
インバータ回路部140とインバータ回路部142とは、基本的な回路構成は同じであり、制御方法や動作も基本的には同じである。インバータ回路部140等の回路的な動作の概要は周知であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0069】
上アーム回路は、スイッチング用の半導体素子として上アーム用の能動素子155と上アーム用のダイオード156とを備えており、下アーム回路は、スイッチング用の半導体素子として下アーム用の能動素子157と下アーム用のダイオード158とを備えている。能動素子155、157は、ドライバ回路174を構成する2つのドライバ回路の一方あるいは他方から出力された駆動信号を受けてスイッチング動作し、バッテリ136から供給された直流電力を三相交流電力に変換する。
【0070】
上アーム用の能動素子155および下アーム用の能動素子157は、コレクタ電極、エミッタ電極、ゲート電極を備えている。上アーム用のダイオード156および下アーム用のダイオード158は、カソード電極およびアノード電極の2つの電極を備えている。
図8に示すように、ダイオード156、158のカソード電極が能動素子155、157のコレクタ電極に、アノード電極が能動素子155、157のエミッタ電極にそれぞれ電気的に接続されている。これにより、上アーム用の能動素子155および下アーム用の能動素子157のエミッタ電極からコレクタ電極に向かう電流の流れが順方向となっている。能動素子155、157は、例えばIGBTである。
【0071】
なお、能動素子としてはMOSFET(金属酸化物半導体型電界効果トランジスタ)を用いても良く、この場合は、上アーム用のダイオード156、下アーム用のダイオード158は不要となる。
【0072】
各上・下アーム直列回路の正極側端子325Pと負極側端子325Mはコンデンサモジュール500のコンデンサ接続用の直流端子にそれぞれ接続されている。上アーム回路と下アーム回路の接続部にはそれぞれ交流電力が発生し、各上・下アーム直列回路の上アーム回路と下アーム回路の接続部は各半導体装置300の交流側端子325Aに接続されている。各相の各半導体装置300の交流側端子320Bはそれぞれ電力変換装置200の交流出力端子に接続され、発生した交流電力はモータジェネレータ192または194の固定子巻線に供給される。
【0073】
制御回路172は、車両側の制御装置やセンサ(例えば、電流センサ180)などからの入力情報に基づいて、上アーム用の能動素子155、下アーム用の能動素子157のスイッチングタイミングを制御するためのタイミング信号を生成する。ドライバ回路174は、制御回路172から出力されたタイミング信号に基づいて、上アーム用の能動素子155、下アーム用の能動素子157をスイッチング動作させるための駆動信号を生成する。なお、181、188はコネクタである。
【0074】
上・下アーム直列回路は、不図示の温度センサを含み、上・下アーム直列回路の温度情報がマイコンに入力される。また、マイコンには上・下アーム直列回路の直流正極側の電圧情報が入力される。マイコンは、それらの情報に基づいて過温度検知および過電圧検知を行い、過温度或いは過電圧が検知された場合には全ての上アーム用の能動素子155、下アーム用の能動素子157のスイッチング動作を停止させ、上・下アーム直列回路を過温度或いは過電圧から保護する。
【0075】
図18は、
図17に示す電力変換装置200の外観斜視図であり、
図19は、
図18に示す電力変換装置200のXV-XV線の断面斜視図である。
【0076】
電力変換装置200は、下部ケース11および上部ケース10により構成され、ほぼ直方体形状に形成された筐体12を備えている。筐体12の内部には、電気回路体400、コンデンサモジュール500等が収容されている。電気回路体400は冷却部材340へ流れる冷却流路を有しており、筐体12の一側面からは、冷却流路に連通する冷媒流入管13および冷媒流出管14が突出している。下部ケース11は、上部側が開口され、上部ケース10は、下部ケース11の開口を塞いで下部ケース11に取り付けられている。上部ケース10と下部ケース11とは、アルミニウム合金等により形成され、外部に対して密封して固定される。上部ケース10と下部ケース11とを一体化して構成してもよい。筐体12を、単純な直方体形状としたことで、車両等への取り付けが容易となり、また、生産もし易い。
【0077】
筐体12の長手方向の一側面に、コネクタ17が取り付けられており、このコネクタ17には、交流ターミナル18が接続されている。また、冷媒流入管13および冷媒流出管14が導出された面には、コネクタ21が設けられている。
【0078】
図19に図示されるように、筐体12内には、電気回路体400が収容されている。電気回路体400には、制御回路172およびドライバ回路174が配置され、電気回路体400の直流端子側には、コンデンサモジュール500が収容されている。コンデンサモジュールを電気回路体400と同一高さに配置することで、電力変換装置200を薄型化でき、車両への設置自由度が向上する。電気回路体400の交流側端子325Aは、電流センサ180を貫通してコネクタ188に接続されている。また、半導体装置300の直流端子である、正極側端子325Pおよび負極側端子325Mは、それぞれ、コンデンサモジュール500の正・負極端子362A、362Bに接合される。
【0079】
以上説明した実施形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)電気回路体400は、半導体素子155、156、157、158を封止材360により封止してなり、半導体素子155、156、157、158からの端子325が導出された半導体装置300と、端子325が接続される配線を備えた基板350と、半導体装置300と対向して配置され、半導体素子155、156、157、158による発熱を冷却する冷却部材340と、冷却部材340を半導体装置300に固定する固定部材344と、冷却部材340が半導体装置300に密着する方向に固定部材344を加圧する加圧部材341と、を備え、固定部材344は、加圧部材341より伝達された加圧力により端子325と配線との接続を支持する支持部345を含む。これにより、装置の生産性に優れた電気回路体を提供できる。
【0080】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の特徴を損なわない限り、本発明の技術思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。また、上述の実施形態と複数の変形例を組み合わせた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0081】
10・・・上部ケース、11・・・下部ケース、13・・・冷媒流入管、14・・・冷媒流出管、17、21、181、182、188・・・コネクタ、18・・・交流ターミナル、43、140、142・・・インバータ回路、155、156、157、158・・・半導体素子、172・・・制御回路、174・・・ドライバ回路、180・・・電流センサ、192、194・・・モータジェネレータ、200・・・電力変換装置、300・・・半導体装置、310・・・回路体、325P・・・正極側端子、325M・・・負極側端子、325A・・・交流側端子、325C・・・コレクタセンス端子、325L・・・下アームゲート端子、325E・・・エミッタセンス端子、325U・・・上アームゲート端子、340・・・冷却部材、341・・・加圧部材、342・・・係合穴、343・・・弾性部材、344・・・固定部材、345・・・支持部、347・・・空洞、348・・・接続ピン、349・・・係合突起、350・・・基板、351・・・挟持部、352・・・凹部、355、356・・・ネジ部、360・・・封止材、400・・・電気回路体、430、431、432、433・・・導体板、440・・・絶縁シート、443・・・樹脂絶縁層、444・・・表面導体層、453・・・熱伝導部材、500・・・コンデンサモジュール、601・・・トランスファーモールド装置、602・・・スプリング。