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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094126
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
   B60K 17/08 20060101AFI20240702BHJP
   B60K 17/06 20060101ALI20240702BHJP
   B60K 17/10 20060101ALI20240702BHJP
   B60K 17/12 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B60K17/08 C
B60K17/06 G
B60K17/10 C
B60K17/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210897
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 大輔
(72)【発明者】
【氏名】今和泉 誠
(72)【発明者】
【氏名】森岡 保光
【テーマコード(参考)】
3D039
3D042
【Fターム(参考)】
3D039AA04
3D039AA15
3D039AB12
3D039AC64
3D039AD43
3D039AD44
3D042AA06
3D042AB07
3D042AB12
3D042BA02
3D042BE02
(57)【要約】
【課題】ギヤケースとミッションケースとの間での潤滑油の往来を許容する連通経路が備えられた作業車において、作業車の全体の低重心化を図る。
【解決手段】内部に潤滑油が貯留されるギヤケース20と、ギヤケース20に対して後側に設けられ、内部に潤滑油が貯留されるミッションケース12とが備えられる。ギヤケース20とミッションケース12との間での潤滑油の往来を許容する連通経路40が備えられる。ミッションケース12の内部と連通すると共に連通経路40が接続される後ポート61が、ギヤケース20の内部と連通すると共に連通経路40が接続される前ポート60よりも低い位置に設けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動部と、
走行装置と、
前記原動部の動力が伝達されるギヤ伝動機構が内装され、内部に潤滑油が貯留されるギヤケースと、
前記ギヤ伝動機構からの動力が伝達される被伝動部と、
前記ギヤケースに対して後側に設けられ、前記原動部の動力を前記走行装置に伝達する伝動機構が内装され、内部に潤滑油が貯留されるミッションケースと、
前記ギヤケースと前記ミッションケースとの間での潤滑油の往来を許容する連通経路とが備えられ、
前記ミッションケースの内部と連通すると共に前記連通経路が接続される後ポートが、前記ギヤケースの内部と連通すると共に前記連通経路が接続される前ポートよりも低い位置に設けられている作業車。
【請求項2】
前記原動部は、モータであり、
前記モータに電力を供給するバッテリが設けられ、
前記ギヤケースが、前記モータに対して後側に設けられている請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記被伝動部は、油圧ポンプであり、
前記ギヤケース及び前記ミッションケースの潤滑油を、作動油として前記油圧ポンプに供給する供給経路が設けられている請求項1に記載の作業車。
【請求項4】
前記原動部の動力を受け取り変速して前記伝動機構に伝達する無段変速装置と、前記無段変速装置を収容する無段変速ケースとが、前記ミッションケースの前部に設けられ、
前記後ポートが、前記無段変速ケースに設けられ、
前記後ポートと前記ミッションケースの内部とを連通させる内部経路が、前記無段変速ケースに設けられている請求項1に記載の作業車。
【請求項5】
前記連通経路が、屈曲形成された金属管である請求項1~4のうちのいずれか一項に記載の作業車。
【請求項6】
前記連通経路を前部が後部よりも高い位置となる姿勢に維持する姿勢維持部が備えられ、
前記姿勢維持部が、前記連通経路と前記後ポートとの接続部分に設けられている請求項5に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車の全体構成に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車の一例である電動作業車では、特許文献1に開示されているように、モータ(原動部に相当)及びギヤケースが設けられ、ミッションケースがギヤケースに対して後側に設けられたものがある。
【0003】
特許文献1では、モータの動力が、ギヤケースに内装されたギヤ伝動機構を介して、PTO変速装置(被伝動部に相当)に伝達されて、PTO変速装置からPTO軸に伝達される。モータの動力が、ミッションケースに内装された伝動機構に伝達されて、伝動機構から前輪及び後輪(走行装置に相当)に伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-141955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、ギヤケースの内部に潤滑油が貯留され、ミッションケースの内部に潤滑油が貯留されており、ギヤケース及びミッションケースがオイルバス化されている。
この場合、ギヤケースとミッションケースとに亘って連通経路が接続されて、ギヤケースとミッションケースとの間で、連通経路を介して潤滑油の往来が行われるように構成することがある。これにより、潤滑油の放熱が促進される。
【0006】
本発明は、ギヤケースとミッションケースとの間での潤滑油の往来を許容する連通経路が備えられた作業車において、作業車の全体の低重心化を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の作業車は、原動部と、走行装置と、前記原動部の動力が伝達されるギヤ伝動機構が内装され、内部に潤滑油が貯留されるギヤケースと、前記ギヤ伝動機構からの動力が伝達される被伝動部と、前記ギヤケースに対して後側に設けられ、前記原動部の動力を前記走行装置に伝達する伝動機構が内装され、内部に潤滑油が貯留されるミッションケースと、前記ギヤケースと前記ミッションケースとの間での潤滑油の往来を許容する連通経路とが備えられ、前記ミッションケースの内部と連通すると共に前記連通経路が接続される後ポートが、前記ギヤケースの内部と連通すると共に前記連通経路が接続される前ポートよりも低い位置に設けられている。
【0008】
本発明によると、作業車において、ギヤケースが設けられ、ミッションケースがギヤケースに対して後側に設けられて、連通経路がギヤケースとミッションケースとに亘って設けられた場合、ミッションケースの内部と連通すると共に連通経路が接続される後ポートと、ギヤケースの内部と連通すると共に連通経路が接続される前ポートとにおいて、後ポートが前ポートよりも低い位置に設けられているので、作業車におけるミッションケースの位置を低い位置に設定し易くなる。
【0009】
作業車におけるミッションケースの位置が低い位置に設定し易くなることにより、作業車におけるミッションケースの低い位置により、作業車の全体の低重心化を図ることができ、作業車の走行の安定性を向上させることができる。
【0010】
本発明において、前記原動部は、モータであり、前記モータに電力を供給するバッテリが設けられ、前記ギヤケースが、前記モータに対して後側に設けられていると好適である。
【0011】
本発明によると、ギヤケースがモータに対して後側に設けられているので、連通経路が前ポートと後ポートとに亘って設けられる場合、モータが連通経路の配置に影響を与えることが少なくなる。
これにより、モータの影響を受けること少なく、連通経路を前ポートと後ポートとに亘って設けることができるようになって、連通経路の組立性を向上させることができ、生産性を向上させることができる。
【0012】
本発明において、前記被伝動部は、油圧ポンプであり、前記ギヤケース及び前記ミッションケースの潤滑油を、作動油として前記油圧ポンプに供給する供給経路が設けられていると好適である。
【0013】
本発明によると、被伝動部が油圧ポンプである場合、ギヤケース及びミッションケースの潤滑油が、供給油路を介して作動油として油圧ポンプに供給される。
この場合、ギヤケース及びミッションケースは、両方の容積を合計した大きな容積を持つ作動油タンクとなるので、油圧ポンプから油圧装置等に作動油を供給する構成において作動油の不足は生じ難い。
【0014】
本発明において、前記原動部の動力を受け取り変速して前記伝動機構に伝達する無段変速装置と、前記無段変速装置を収容する無段変速ケースとが、前記ミッションケースの前部に設けられ、前記後ポートが、前記無段変速ケースに設けられ、前記後ポートと前記ミッションケースの内部とを連通させる内部経路が、前記無段変速ケースに設けられていると好適である。
【0015】
本発明によると、無段変速ケースがミッションケースの前部に設けられ、無段変速装置が無段変速ケースに収容されている。原動部の動力が、無段変速装置に伝達され変速されてミッションケースの伝動機構に伝達され、伝動機構から走行装置に伝達される。
【0016】
ベルト式の無段変速装置では、オイルバス化はされておらず、静油圧式の無段変速装置では、無段変速装置の潤滑油とミッションケースの潤滑油とが混合しないように構成する必要があるので、無段変速ケースとミッションケースとは隔壁等により仕切られる。
【0017】
本発明によると、連通経路が接続される後ポートが、無段変速ケースに設けられ、後ポートとミッションケースの内部とを連通させる内部経路が、無段変速ケースに設けられている。これにより、潤滑油は、連通経路及び内部経路を通ってギヤケースとミッションケースとの間で往来するのであり、ギヤケース及びミッションケースの潤滑油が無段変速ケースに入ることはない。
本発明によると、内部経路を無段変速ケースに設けることにより、連通経路において、無段変速ケースを迂回するように配置し、ミッションケースの後ポートに接続するような構成を採用する必要がないので、構造の簡素化の面で有利である。
【0018】
本発明において、前記連通経路が、屈曲形成された金属管であると好適である。
【0019】
本発明によると、連通経路が屈曲形成された金属管であるので、後ポートを前ポートよりも低い位置に設けて、機体におけるミッションケースの位置を低い位置に設定する構成に対して、連通経路を無理なく前ポート及び後ポートに接続することができる。
【0020】
本発明において、前記連通経路を前部が後部よりも高い位置となる姿勢に維持する姿勢維持部が備えられ、前記姿勢維持部が、前記連通経路と前記後ポートとの接続部分に設けられていると好適である。
【0021】
連通経路を後ポートに接続した状態で、連通経路の前部を前ポートに接続しながら、ギヤケースとミッションケースとの位置関係を固定する場合、連通経路は前部が後部よりも高い位置となる姿勢となっているので、連通経路が自重により連通経路の長手方向に沿った軸芯周りに後ポートに対して回転して、連通経路の前部が後部よりも低くなる姿勢になることがある。
このような状態になると、ギヤケースとミッションケースとの位置関係の固定作業を中断して、連通経路を前部が後部よりも高い位置となる姿勢に戻す必要がある。
【0022】
本発明によると、連通経路を前部が後部よりも高い位置となる姿勢に維持する姿勢維持部が、連通経路と後ポートとの接続部分に設けられている。
これにより、連通経路を後ポートに接続した状態で、連通経路の前部を前ポートに接続しながら、ギヤケースとミッションケースとの位置関係を固定する場合、連通経路は前部が後部よりも低い位置となる姿勢になることがないので、ギヤケースとミッションケースとの位置関係の固定作業を、中断すること少なく行うことができ、生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】トラクタの左側面図である。
図2】モータから前輪及び後輪への伝動系、油圧ポンプによる油圧系を示す概略図である。
図3】モータ、ギヤケース、主フレーム及び連結フレーム、無段変速ケースの付近の左側面図である。
図4】モータ、ギヤケース、主フレーム及び連結フレーム、無段変速ケースの付近の縦断左側面図である。
図5】モータ、ギヤケース、主フレーム及び連結フレーム、無段変速ケースの付近の横断平面図である。
図6】主フレーム及び連結フレーム、無段変速ケースの付近の縦断正面図である。
図7】ギヤケース、主フレーム及び連結フレームの付近の縦断背面図である。
図8】ギヤケース及び油圧ポンプの平面図である。
図9】ギヤケースの背面図である。
図10】ギヤケース横断平面図である。
図11】連通経路、前ポート及び後ポートの左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1図11に、電動作業車の一例であるトラクタが示されており、図1図11において、Fは前方向を示し、Bは後方向を示し、Uは上方向を示し、Dは下方向を示し、Rは右方向を示し、Lは左方向を示している。
【0025】
(トラクタの全体構成)
図1及び図2に示すように、右及び左の前輪1(走行装置に相当)、右及び左の後輪2(走行装置に相当)により、機体3が支持されている。機体3の前部にボンネット4が設けられ、機体3の後部に運転部5が設けられている。運転部5に、前輪1を操向操作する操縦ハンドル6、運転座席7、フロア部8及びロプスフレーム9が設けられている。
【0026】
機体3の前部に、バッテリ13、インバータ14及びモータ15(原動部に相当)が設けられている。バッテリ13の電力がインバータ14に供給され、インバータ14において、バッテリ13の直流電力が交流電力に変換されてモータ15に供給され、モータ15が駆動される。
【0027】
(機体の全体構成)
図1,3,4に示すように、機体3は、右及び左の主フレーム10,16,17、連結フレーム18,19、ギヤケース20、無段変速ケース11及びミッションケース12等が設けられて構成されている。前車軸ケース21が主フレーム10の前部に支持されており、前輪1が前車軸ケース21に支持されている。後輪2がミッションケース12に支持されている。
【0028】
右及び左の主フレーム10の後部に右及び左の主フレーム16が連結され、右及び左の主フレーム16の後部に右及び左の主フレーム17が連結されている。ミッションケース12の前部に無段変速ケース11が連結されており、右及び左の主フレーム17が、無段変速ケース11及びミッションケース12に連結されている。
【0029】
ギヤケース20が、右及び左の主フレーム10,16,17に亘って、左右方向に沿って連結されており、モータ15が、ギヤケース20に連結されている。バッテリ13及びインバータ14が、主フレーム10に支持されており、バッテリ13がボンネット4により覆われている。
【0030】
図5,6,7に示すように、連結フレーム18は、上面部18a、右及び左の横面部18bを備えて、チャンネル状(トンネル状)に形成されている。連結フレーム18の右及び左の横面部18bの前部が、ギヤケース20に連結され、連結フレーム18の右及び左の横面部18bの後部が、無段変速ケース11に連結されている。
【0031】
連結フレーム19は、平板状であり、連結フレーム18の下部に配置されている。連結フレーム19の前部がギヤケース20に連結され、連結フレーム19の後部が無段変速ケース11に連結されている。連結フレーム19の右部が、右の主フレーム16,17及び連結フレーム18の右の横面部18bに共締め連結され、連結フレーム19の左部が、左の主フレーム16,17及び連結フレーム18の左の横面部18bに共締め連結されている。
【0032】
(ギヤケースの構成)
図7,8,9に示すように、ギヤケース20は、第1部分20aと第2部分20bとを有して、第1部分20aと第2部分20bとが連結されて構成されており、右及び左の連結部20c,20dが第2部分20bに形成されている。
【0033】
図4図7に示すように、連結フレーム19の前部が、ギヤケース20の連結部20cに連結されている。連結フレーム18の右及び左の横面部18bの上部が、ギヤケース20の右及び左の連結部20dの上部に連結されている。連結フレーム18の右及び左の横面部18bの下部と、ギヤケース20の右及び左の連結部20dの下部と、右及び左の主フレーム16,17とが、共締め連結されている。
【0034】
これによって、ギヤケース20が、左右方向に沿って配置され、右及び左の主フレーム10,16,17に亘って連結されており、ギヤケース20の第1部分20aが前側に位置し、ギヤケース20の第2部分20bが後側に位置している。
【0035】
図4,5,7に示すように、モータ15がギヤケース20の第1部分20aに連結されている。図7及び図10に示すように、モータ15の出力軸15aがギヤケース20に挿入され、ギヤケース20の内部において、伝動ギヤ32(ギヤ伝動機構に相当)がモータ15の出力軸15aに連結されている。ギヤケース20の内部に、伝動ギヤ33,34,35,36(ギヤ伝動機構に相当)が設けられており、伝動ギヤ32~36が咬合している。
【0036】
図8及び図10に示すように、油圧ポンプ37,38(被伝動部に相当)が、ギヤケース20の第1部分20aに連結されており、油圧ポンプ37,38(被伝動部に相当)の入力軸が伝動ギヤ36に接続されている。潤滑油がギヤケース20の内部に貯留されており、ギヤケース20がオイルバス化されている。
【0037】
(後輪及び油圧ポンプへの伝動系の構成)
図2に示すように、静油圧式の無段変速装置24が、無段変速ケース11の内部に収容されており、モータ15の出力軸15aと無段変速装置24の入力軸24aとに亘って、伝動軸25が接続されている。
【0038】
モータ15の動力が、モータ15の出力軸15aから伝動ギヤ32~36に伝達され、伝動ギヤ32~36から油圧ポンプ37,38に伝達されて、油圧ポンプ37,38が駆動される。
【0039】
モータ15の動力が、モータ15の出力軸15aから伝動軸25を介して、無段変速装置24に伝達される。無段変速装置24は前進側及び後進側に無段階に変速可能であり、フロア部8に設けられた変速ペダル26(図1参照)により操作される。
【0040】
副変速装置27(伝動機構に相当)、後輪デフ装置28(伝動機構に相当)、前輪変速装置29(伝動機構に相当)、右及び左のブレーキ30が、ミッションケース12の内部に収容されている。無段変速装置24の動力が、副変速装置27に伝達され、副変速装置27から後輪デフ装置28を介して後輪2に伝達される。潤滑油がミッションケース12の内部に貯留されており、ミッションケース12がオイルバス化されている。
【0041】
以上の構成により、モータ15(原動部)の動力が伝達される伝動ギヤ32~36(ギヤ伝動機構)が内装され、内部に潤滑油が貯留されるギヤケース20が備えられている。伝動ギヤ32~36(ギヤ伝動機構)からの動力が伝達される油圧ポンプ37,38(被駆動部)が備えられている。
【0042】
モータ15(原動部)及び油圧ポンプ37,38(被駆動部)が、ギヤケース20に対して前側に設けられており、ギヤケース20がモータ15(原動部)に対して後側に設けられている。
【0043】
モータ15(原動部)の動力を受け取り変速して副変速装置27(伝動機構)、後輪デフ装置28(伝動機構)及び前輪変速装置29(伝動機構)に伝達する無段変速装置24と、無段変速装置24を収容する無段変速ケース11とが、ミッションケース12の前部に設けられている。
【0044】
この場合、無段変速ケース11の内部とミッションケース12の内部とが、隔壁により仕切られており、無段変速ケース11の潤滑油とミッションケース12の潤滑油とが混ざり合うことはない。
【0045】
(前輪への伝動系の構成)
図2に示すように、副変速装置27と後輪デフ装置28との間から分岐した動力が、前輪変速装置29に伝達される。前輪変速装置29の出力軸29aが、無段変速ケース11を貫通して無段変速ケース11の前部に出ており、前輪変速装置29の動力が、前輪変速装置29の出力軸29aから伝動軸22を介して、前車軸ケース21に収容された前輪デフ装置23に伝達され、前輪デフ装置23から前輪1に伝達される。
【0046】
図4図7に示すように、伝動軸22,25は、連結フレーム18,19により囲まれたトンネル状の空間に、前後方向に沿って配置されている。伝動軸22は、ギヤケース20と連結フレーム19の前部との間の隙間を通り斜め前下方に延出されて、前車軸ケース21(前輪デフ装置23)に接続される。
【0047】
図2に示すように、前輪1が直進位置から右及び左の設定角度の範囲内に操作されていると、前輪変速装置29により前輪1及び後輪2が同じ速度で駆動される。前輪1が右及び左の設定角度を越えて右又は左に操向操作されると、前輪変速装置29により、前輪1が後輪2よりも高速で駆動される。
【0048】
後輪デフ装置28から右の後輪2への伝動系に、右のブレーキ30が設けられ、後輪デフ装置28から左の後輪2への伝動系に、左のブレーキ30が設けられている。右のブレーキ30を操作可能な右のブレーキペダル31、及び、左のブレーキ30を操作可能な左のブレーキペダル31が、フロア部8の左前部に設けられている(図1参照)。
右旋回時(左旋回時)に旋回中心側である右(左)のブレーキペダル31を踏み操作して、右(左)のブレーキ30を制動操作することにより、小回り旋回が可能になる。
【0049】
以上の構成によって、モータ15により前輪1及び後輪2が駆動される。
ギヤケース20に対して後側に設けられ、モータ15(原動部)の動力を前輪1(走行装置)及び後輪2(走行装置)に伝達する副変速装置27(伝動機構)、後輪デフ装置28(伝動機構)及び前輪変速装置29(伝動機構)が内装され、内部に潤滑油が貯留されるミッションケース12が備えられている。
【0050】
(油圧ポンプへの作動油の供給に関する構成)
図2に示すように、内部経路39が、無段変速ケース11の内部に前後方向に沿って設けられており、内部経路39はミッションケース12の内部に連通している。連通経路40が、ギヤケース20と内部経路39とに亘って接続されており、連通経路40はギヤケース20の内部に連通している。
【0051】
ギヤケース20の内部とミッションケース12の内部との間において、潤滑油が連通経路40及び内部経路39を通って往来することができるのであり、ギヤケース20及びミッションケース12の潤滑油と無段変速ケース11の潤滑油とが混ざり合うことはない。
【0052】
以上の構成により、ギヤケース20とミッションケース12との間での潤滑油の往来を許容する連通経路40が備えられている。連通経路40及び内部経路39により、ギヤケース20及びミッションケース12が、一つの作動油タンクとなっている。
【0053】
ミッションケース12にフィルタ41が設けられ、油圧ポンプ37,38とフィルタ41とに亘って供給経路42が接続されている。ギヤケース20及びミッションケース12の潤滑油が、フィルタ41を通り供給経路42を通って、作動油として、油圧ポンプ37,38に供給される。
以上の構成により、ギヤケース20及びミッションケース12の潤滑油を、作動油として油圧ポンプ37,38に供給する供給経路42が備えられている。
【0054】
(油圧ポンプの作動油が供給される供給先に関する構成-1)
図2に示すように、パワーステアリング装置43が、操縦ハンドル6の下部に設けられており、操縦ハンドル6によりパワーステアリング装置43が操作される。油圧ポンプ38とパワーステアリング装置43とに亘って油路44が接続され、パワーステアリング装置43とミッションケース12とに亘って油路45が接続されている。
【0055】
前輪1を操向操作する複動型のステアリングシリンダ46が、前車軸ケース21に設けられており、パワーステアリング装置43とステアリングシリンダ46とに亘って、油路47が接続されている。
【0056】
油圧ポンプ38の作動油が油路44を介してパワーステアリング装置43に供給されており、操縦ハンドル6が操作されることにより、パワーステアリング装置43から油路47を介してステアリングシリンダ46に作動油が供給されて、ステアリングシリンダ46により前輪1の操向操作が行われる。
【0057】
ステアリングシリンダ46から排出された作動油が、油路47、パワーステアリング装置43及び油路45を介して、ミッションケース12に戻される。パワーステアリング装置43及びステアリングシリンダ46により、全油圧式のパワーステアリングが構成されている。
【0058】
(油圧ポンプの作動油が供給される供給先に関する構成-2)
図2に示すように、外部油圧ユニット48が、ミッションケース12外部に取り付けられ、2組の油圧ポート49がフロア部8の下部に取り付けられている。油圧ポンプ37と外部油圧ユニット48とに亘って油路50が接続され、外部油圧ユニット48と油圧ポート49とに亘って油路51が接続されている。
【0059】
フロントローダ(図示せず)等の油圧装置を機体3に取り付けた場合、フロントローダ等の油圧装置と油圧ポート49とに亘って、油路(図示せず)を接続する。
油圧ポンプ37の作動油が、油路50を介して外部油圧ユニット48に供給され、外部油圧ユニット48から油路51及び油圧ポート49を介して、油圧装置に供給されて油圧装置が作動する。
【0060】
外部油圧ユニット48の操作レバー48aが操作されることにより、外部油圧ユニット48から油圧装置に供給される作動油が操作されて、油圧装置が操作される。油圧装置から排出された作動油が、油圧ポート49及び油路51を介して外部油圧ユニット48に戻り、外部油圧ユニット48からミッションケース12に戻される。
【0061】
(油圧ポンプの作動油が供給される供給先に関する構成-3)
図1に示すように、トップリンク52、右及び左のロアリンク53が、ミッションケース12の後部に支持されており、ロータリ耕耘装置等の作業装置(図示せず)をトップリンク及びロアリンク53に接続することができる。
【0062】
右及び左のリフトアーム54がミッションケース12の後部に設けられ、リフトアーム54とロアリンク53とに亘って連係ロッド55が接続されている。リフトアーム54が上下に揺動操作されることにより、トップリンク52及びロアリンク53を介して作業装置が昇降操作される。
【0063】
図2に示すように、リフトアーム54を揺動操作するリフトシリンダ56及び制御弁57が、ミッションケース12に設けられている。外部油圧ユニット48において、油路50が、油圧ポート49への系と制御弁57への系とに分岐している。制御弁57への系と制御弁57とに亘って油路58が接続され、制御弁57とリフトシリンダ56とに亘って油路59が接続されている。
【0064】
油圧ポンプ37の作動油が、油路50,58を介して制御弁57に供給され、制御弁57から油路59を介してリフトシリンダ56に供給され、リフトシリンダ56によりリフトアーム54が上下に揺動操作される。リフトシリンダ56から排出された作動油は、油路59を介して制御弁57に戻り、制御弁57からミッションケース12に戻される。
【0065】
(前ポート及び後ポート、連通経路に関する構成)
図3,4,5,7,9に示すように、前ポート60が、ギヤケース20の第2部分20bに後方に向けて設けられている。前ポート60は、ギヤケース20の第2部分20bにおいて、モータ15の出力軸15a及び伝動ギヤ32よりも下側の位置に設けられ、モータ15の出力軸15a及び伝動ギヤ32に対して伝動ギヤ33~36の反対側に位置に設けられている。
【0066】
図3図6に示すように、後ポート61が、無段変速ケース11の前部に前方に向けて設けられており、後ポート61と内部経路39(図2参照)とが連通している。
後ポート61は、無段変速ケース11の前部において、無段変速装置24の入力軸24a及び前輪変速装置29の出力軸29aよりも下側の位置に設けられており、無段変速装置24の入力軸24aに対して前輪変速装置29の出力軸29aの反対側の位置に設けられている。
【0067】
図3図6に示すように、前ポート60及び後ポート61は、連結フレーム18,19により囲まれたトンネル状の空間に設けられている。ギヤケース20、無段変速ケース11及びミッションケース12が主フレーム10,16,17に連結された状態において、後ポート61が前ポート60よりも低い位置に設けられている。
【0068】
図11に示すように、連通経路40は、クランク状に屈曲形成された金属管で構成されている。連通経路40の前部40aに、フランジ部62が連結されている。連通経路40の後部40bに、フランジ部63(姿勢維持部に相当)が連結されており、フランジ部63の外周部の1箇所に、フランジ部63の半径方向の外方に突出する凸部63aが設けられている。後ポート61における前端部の外周部の1箇所に、切り欠き状の凹部61a(姿勢維持部に相当)が設けられている。
【0069】
(連通経路の前ポート及び後ポートへの接続)
図3図7に示すように、ギヤケース20と無段変速ケース11及びミッションケース12とを、主フレーム10,16,17及び連結フレーム18,19に連結する際、連通経路40も一緒に前ポート60及び後ポート61に接続する。
【0070】
この場合、ギヤケース20と無段変速ケース11及びミッションケース12とを、主フレーム10,16,17及び連結フレーム18,19に連結する前に、図5,6,11に示すように、連通経路40の後部40bを後ポート61に挿入し、フランジ部63の凸部63aを後ポート61の凹部61aに入れて、連通経路40の前部40aが連通経路40の後部40bよりも高い位置となる姿勢に、連通経路40を後ポート61に仮保持しておく。
【0071】
前述の状態において、ギヤケース20と無段変速ケース11及びミッションケース12とを互いに接近させて、連通経路40の前部40aを前ポート60に挿入する。
この場合、フランジ部63の凸部63aが後ポート61の凹部61aに入れられているので、連通経路40が、連通経路40の前部40aの重量により、後ポート61を前後方向に通る軸芯周りに回転して、連通経路40の前部40aが連通経路40の後部40bよりも低い位置となる姿勢になることはない。
【0072】
前述のようにして連通経路40の前部40aを前ポート60に挿入した後、ギヤケース20と無段変速ケース11及びミッションケース12とを、主フレーム10,16,17及び連結フレーム18,19に連結すればよい。図4,7,11に示すように、ボルト64によりフランジ部62を前ポート60の上部に連結することによって、連通経路40が前ポート60と後ポート61とに亘って接続される。
【0073】
以上の構成により、連通経路40を前部40aが後部40bよりも高い位置となる姿勢に維持するフランジ部63(姿勢維持部)及び凹部61a(姿勢維持部)が備えられている。フランジ部63(姿勢維持部)及び凹部61a(姿勢維持部)が、連通経路40と後ポート61との接続部分に設けられている.
【0074】
(発明の実施の第1別形態)
無段変速ケース11及び無段変速装置24を廃止してもよい。
この構成によると、後ポート61がミッションケース12の前部に設けられ、内部経路39が不要になる。
【0075】
(発明の実施の第2別形態)
後ポート61の凹部61aを廃止して、連通経路40の後部40bを後ポート61に挿入し、ボルト(図示せず)(姿勢維持部に相当)により、フランジ部63を後ポート61に連結するように構成してもよい。この構成によると、フランジ部62を前ポート60に連結するボルト64が不要になる。
【0076】
(発明の実施の第3別形態)
連通経路40を、ゴムホース等の可撓性を有する管部材で構成してもよい。
この構成によると、ギヤケース20と無段変速ケース11及びミッションケース12とを、主フレーム10,16,17及び連結フレーム18,19に連結した後、連通経路40を前ポート60と後ポート61とに亘って接続することができるので、フランジ部63及び後ポート61の凹部61a等の姿勢維持部は不要になる。
【0077】
(発明の実施の第4別形態)
油圧ポンプ37,38に代えて、草刈装置等の作業装置(図示せず)を被伝動部として設けて、ギヤケース20の伝動ギヤ36から出力される動力を、作業装置に伝達するように構成してもよい。
【0078】
(発明の実施の第5別形態)
後輪2に代えて、クローラ走行装置(図示せず)を走行装置として装備してもよい。
前輪1及び後輪2に代えて、クローラ走行装置(図示せず)を走行装置として装備してもよい。
モータ15に代えて、エンジン(図示せず)を原動部として設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、トラクタばかりではなく、電動カートや運搬車等の他の作業車、ホイルローダ等の建設用の作業車にも適用できる。
【符号の説明】
【0080】
1 前輪(走行装置)
2 後輪(走行装置)
11 無段変速ケース
12 ミッションケース
13 バッテリ
15 モータ(原動部)
20 ギヤケース
24 無段変速装置
27 副変速装置(伝動機構)
28 後輪デフ装置(伝動機構)
29 前輪変速装置(伝動機構)
32 伝動ギヤ(ギヤ伝動機構)
33 伝動ギヤ(ギヤ伝動機構)
34 伝動ギヤ(ギヤ伝動機構)
35 伝動ギヤ(ギヤ伝動機構)
36 伝動ギヤ(ギヤ伝動機構)
37 油圧ポンプ(被伝動部)
38 油圧ポンプ(被伝動部)
39 内部経路
40 連通経路
42 供給経路
60 前ポート
61 後ポート
61a 凹部(姿勢維持部)
63 フランジ部(姿勢維持部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11