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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094132
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】歩行型管理機
(51)【国際特許分類】
   A01B 33/08 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
A01B33/08 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210903
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】田中 仁司
(72)【発明者】
【氏名】増田 繁
【テーマコード(参考)】
2B033
【Fターム(参考)】
2B033AA06
2B033AB01
2B033AB11
2B033AC04
2B033EC05
2B033EC10
(57)【要約】
【課題】走行車輪の後隣りに位置する耕耘ロータリを備える歩行型管理機において、機体のダッシュ防止を可能にする。
【解決手段】走行車輪1よりも前側において、抵抗部材30が機体に支持されている。抵抗部材30は、耕耘ロータリ15の対地高さが予め設定された設定高さ位置SHになると、接地して耕耘ロータリ15のそれ以上の上昇を阻止する。抵抗部材30は、耕耘ロータリ15の対地高さが設定高さ位置SHより低いとき接地しない。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車輪によって支持される機体と、
前記機体から後方に延びる操縦ハンドルと、
前記走行車輪の後隣りに位置する耕耘ロータリと、
前記走行車輪よりも前側において前記機体に支持される抵抗部材と、が備えられ、
前記抵抗部材は、前記耕耘ロータリの対地高さが予め設定された設定高さ位置になると、接地して前記耕耘ロータリのそれ以上の上昇を阻止し、前記耕耘ロータリの対地高さが前記設定高さ位置より低いとき接地しない歩行型管理機。
【請求項2】
前記抵抗部材は、前記耕耘ロータリの対地高さが前記設定高さ位置となったときに接地可能な作用姿勢と、前記耕耘ロータリの対地高さが前記設定高さ位置になっても接地しない非作用姿勢とに切り換わる請求項1に記載の歩行型管理機。
【請求項3】
前記抵抗部材は、前記作用姿勢と前記非作用姿勢とに上下揺動によって切り換わる請求項2に記載の歩行型管理機。
【請求項4】
前記耕耘ロータリに動力伝達するクラッチ入りと前記耕耘ロータリに対する動力伝達を絶つクラッチ切りとに切換え可能な作業クラッチと、
前記作業クラッチと前記抵抗部材との連係機構と、が備えられ、
前記連係機構は、前記作業クラッチが前記クラッチ入りに切り換えられると前記抵抗部材を前記作用姿勢に変更し、前記作業クラッチが前記クラッチ切りに切り換えられると前記抵抗部材を前記非作用姿勢に変更する請求項2または3に記載の歩行型管理機。
【請求項5】
左右の前記走行車輪が備えられ、
前記左右の走行車輪の差動を許容しながら前記左右の走行車輪に動力伝達する差動許容伝動と、前記左右の走行車輪の差動を阻止しながら前記左右の走行車輪に動力伝達する差動ロック伝動とに切換え可能な差動機構と、
前記差動機構と前記抵抗部材との連係機構と、が備えられ、
前記連係機構は、前記差動機構が前記差動ロック伝動に切換えられると前記抵抗部材を前記作用姿勢に変更し、前記差動機構が前記差動許容伝動に切換えられると前記抵抗部材を前記非作用姿勢に変更する請求項2または3に記載の歩行型管理機。
【請求項6】
前記耕耘ロータリの対地高さを検出する高さ検出センサと、前記抵抗部材を前記作用姿勢と前記非作用姿勢とに切換え操作するアクチュエータと、前記高さ検出センサによる検出情報を基に前記アクチュエータを制御して前記抵抗部材を前記作用姿勢と前記非作用姿勢とに姿勢変更する制御装置と、が備えられ、
前記制御装置は、前記耕耘ロータリの対地高さが前記設定高さ位置になると、前記抵抗部材を前記作用姿勢に変更する請求項2に記載の歩行型管理機。
【請求項7】
前記制御装置は、前記耕耘ロータリの対地高さが前記設定高さ位置よりも低い第2設定高さ位置以下になると、前記抵抗部材を前記非作用姿勢に変更する請求項6に記載の歩行型管理機。
【請求項8】
前記耕耘ロータリの対地高さを検出する高さ検出センサと、前記抵抗部材を前記作用姿勢と前記非作用姿勢とに切換え操作するアクチュエータと、前記高さ検出センサによる検出情報を基に前記アクチュエータを制御して前記抵抗部材を前記作用姿勢と前記非作用姿勢とに変更する制御装置と、が備えられ、
前記制御装置は、前記耕耘ロータリの対地高さが前記設定高さ位置よりも低い第3設定高さ位置よりも高くなると、前記抵抗部材を前記作用姿勢に変更する請求項2に記載の歩行型管理機。
【請求項9】
前記制御装置は、前記耕耘ロータリの対地高さが前記第3設定高さ位置よりも低い第4設定高さ位置以下になると、前記抵抗部材を前記非作用姿勢に変更する請求項8に記載の歩行型管理機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行型管理機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されるように、走行車輪(走行輪)によって支持される機体(機体フレーム)と、機体から後方に延びる操縦ハンドルと、走行車輪の後隣りに位置する耕耘ロータリ(駆動軸、耕耘爪)と、が備えられた歩行型管理機がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-4820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の歩行型管理機では、圃場に土が硬い部分があると、耕耘ロータリが土中に入り込み難くて耕耘反力によって地面側に位置し、耕耘ロータリが走行車輪よりも速い回転速度で駆動されるので走行すること、いわゆる機体がダッシュすることがある。機体ダッシュを防止できることが要望されている。
【0005】
本発明は、機体のダッシュを防止することができる歩行型管理機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による歩行型管理機は、
走行車輪によって支持される機体と、前記機体から後方に延びる操縦ハンドルと、前記走行車輪の後隣りに位置する耕耘ロータリと、前記走行車輪よりも前側において前記機体に支持される抵抗部材と、が備えられ、前記抵抗部材は、前記耕耘ロータリの対地高さが予め設定された設定高さ位置になると、接地して前記耕耘ロータリのそれ以上の上昇を阻止し、前記耕耘ロータリの対地高さが前記設定高さ位置より低いとき接地しない。
【0007】
本構成によると、機体ダッシュが発生すると考えられる耕耘ロータリの対地高さよりも少し低い対地高さを設定高さ位置として設定すれば、耕耘ロータリが耕耘反力によって地面側に上昇して耕耘ロータリの対地高さが設定高さ位置になると、抵抗部材が接地して耕耘ロータリのそれ以上の上昇が抵抗部材によって阻止されるので、耕耘ロータリが耕耘反力で地面側に上昇しても機体ダッシュが発生するまで上昇せず、機体のダッシュを防止することができる。
【0008】
耕耘ロータリを土中に入り込ませる場合、耕耘ロータリの対地高さが設定高さ位置よりも低くなって抵抗部材が接地しないので、抵抗部材を備えるにもかかわらず、耕耘ロータリを土中に入り込ませることができて耕耘作業を行うことができる。
【0009】
本発明においては、
前記抵抗部材は、前記耕耘ロータリの対地高さが前記設定高さ位置となったときに接地可能な作用姿勢と、前記耕耘ロータリの対地高さが前記設定高さ位置になっても接地しない非作用姿勢とに切り換わると好適である。
【0010】
本構成によると、抵抗部材が非作用姿勢に切り換わると、耕耘ロータリを地面に触れないように上昇させてロータリの対地高さが設定高さ位置よりも高くなっても抵抗部材が接地しないので、機体を旋回走行あるいは移動走行させる際、耕耘ロータリを地面に触れないように持ち上げることができる。
【0011】
本発明においては、
前記抵抗部材は、前記作用姿勢と前記非作用姿勢とに上下揺動によって切り換わると好適である。
【0012】
本構成によると、抵抗部材の作用姿勢と非作用姿勢との切り換わりを抵抗部材の上下伸縮あるいは上下移動によって可能にする場合に比べ、抵抗部材の構造、抵抗部材の支持構造を簡素に済ませることができるので、機体のダッシュを安価に防止することができる。
【0013】
本発明においては、
前記耕耘ロータリに動力伝達するクラッチ入りと前記耕耘ロータリに対する動力伝達を絶つクラッチ切りとに切換え可能な作業クラッチと、前記作業クラッチと前記抵抗部材との連係機構と、が備えられ、前記連係機構は、前記作業クラッチが前記クラッチ入りに切り換えられると前記抵抗部材を前記作用姿勢に変更し、前記作業クラッチが前記クラッチ切りに切り換えられると前記抵抗部材を前記非作用姿勢に変更すると好適である。
【0014】
本構成によると、作業クラッチをクラッチ入りに切り換えると、連係機構が抵抗部材を作用姿勢に変更し、耕耘ロータリの対地高さが設定高さ位置になると抵抗部材が接地するので、抵抗部材を作用姿勢に変更するための特別な操作をせずに楽に機体のダッシュを防止しながら作業を行うことができる。作業クラッチをクラッチ切りに切り換えると、連係機構が抵抗部材を非作用姿勢に変更し、耕耘ロータリの対地高さが設定高さ位置以上になっても抵抗部材が接地しないので、抵抗部材を非作用姿勢に変更するための特別な操作を行わずに楽に耕耘ロータを土に触れないように持ち上げながら走行することができる。
【0015】
本発明においては、
左右の前記走行車輪が備えられ、前記左右の走行車輪の差動を許容しながら前記左右の走行車輪に動力伝達する差動許容伝動と、前記左右の走行車輪の差動を阻止しながら前記左右の走行車輪に動力伝達する差動ロック伝動とに切換え可能な差動機構と、前記差動機構と前記抵抗部材との連係機構と、が備えられ、前記連係機構は、前記差動機構が前記差動ロック伝動に切換えられると前記抵抗部材を前記作用姿勢に変更し、前記差動機構が前記差動許容伝動に切換えられると前記抵抗部材を前記非作用姿勢に変更すると好適である。
【0016】
本構成によると、差動機構を差動ロック伝動に切り換えると、連係機構が抵抗部材を作用姿勢に変更し、耕耘ロータリの対地高さが設定高さ位置になると抵抗部材が接地するので、抵抗部材を作用姿勢に変更するための特別な操作をせずに楽に機体のダッシュを防止しながら機体を直進走行させることができる。差動機構を差動許容伝動に切り換えると、連係機構が抵抗部材を非作用姿勢に変更し、耕耘ロータリの対地高さが設定高さ位置以上になっても抵抗部材が接地しないので、抵抗部材を非作用姿勢に変更するための特別な操作を行わずに楽に機体が旋回し易い状態で走行することができる。
【0017】
本発明においては、
記耕耘ロータリの対地高さを検出する高さ検出センサと、前記抵抗部材を前記作用姿勢と前記非作用姿勢とに切換え操作するアクチュエータと、前記高さ検出センサによる検出情報を基に前記アクチュエータを制御して前記抵抗部材を前記作用姿勢と前記非作用姿勢とに姿勢変更する制御装置と、が備えられ、前記制御装置は、前記耕耘ロータリの対地高さが前記設定高さ位置になると、前記抵抗部材を前記作用姿勢に変更すると好適である。
【0018】
本構成によると、耕耘ロータリが上昇して設定高さ位置になると、自動的に抵抗部材が作用姿勢になる。したがって、抵抗部材による耕耘ロータリの対地高さ規制の確実性が向上する。
【0019】
本発明においては、前記制御装置は、前記耕耘ロータリの対地高さが前記設定高さ位置よりも低い第2設定高さ位置以下になると、前記抵抗部材を前記非作用姿勢に変更すると好適である。
【0020】
耕耘ロータリの対地高さが設定高さ位置を下回るとすぐに非作用姿勢に変更されるものであると、設定高さ位置周辺で耕耘ロータリが上下を繰り返すと抵抗部材によるインチングが生じてしまう。本構成によると、設定高さ位置と第2設定高さ位置との間に不感帯が形成され、上記インチングを回避できる。
【0021】
本発明においては、前記耕耘ロータリの対地高さを検出する高さ検出センサと、前記抵抗部材を前記作用姿勢と前記非作用姿勢とに切換え操作するアクチュエータと、前記高さ検出センサによる検出情報を基に前記アクチュエータを制御して前記抵抗部材を前記作用姿勢と前記非作用姿勢とに変更する制御装置と、が備えられ、前記制御装置は、前記耕耘ロータリの対地高さが前記設定高さ位置よりも低い第3設定高さ位置よりも高くなると、前記抵抗部材を前記作用姿勢に変更すると好適である。
【0022】
本構成によると、耕耘ロータリが上昇して設定高さ位置になる前に、自動的に抵抗部材が作用姿勢になる。したがって、早目に抵抗部材の準備が整い、対地高さ規制の確実性が向上する。
【0023】
本発明においては、前記制御装置は、前記耕耘ロータリの対地高さが前記第3設定高さ位置よりも低い第4設定高さ位置以下になると、前記抵抗部材を前記非作用姿勢に変更すると好適である。
【0024】
耕耘ロータリの対地高さが第3設定高さ位置を下回るとすぐに非作用姿勢に変更されるものであると、第3設定高さ位置周辺で耕耘ロータリが上下を繰り返すと抵抗部材によるインチングが生じてしまう。本構成によると、第3設定高さ位置と第4設定高さ位置との間に不感帯が形成され、上記インチングを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】歩行型管理機の側面図である。
図2】抵抗部材が接地しない状態の歩行型管理機の側面図である。
図3】抵抗部材が接地した状態の歩行型管理機の側面図である。
図4】抵抗部材の非作用姿勢である歩行型管理機の側面図である。
図5】動力伝達装置のブロック図である。
図6】抵抗部材の姿勢変更装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一例である実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明では、歩行型管理機の機体に関し、図1に示される矢印Fの方向を「機体前側」、矢印Bの方向を「機体後側」、矢印Uの方向を「機体上側」、矢印Dの方向を「機体下側」、図1の紙面表側の方向を「機体右側」、紙面裏側の方向を「機体左側」とする。
【0027】
〔歩行型管理機の全体の構成〕
図1に示されるように、歩行型管理機は、左右一対の走行車輪1によって支持される機体2を備えている。機体2の前部にエンジン3を有する原動部4が備えられている。機体2の後部に耕耘装置5が設けられている。機体2の後部に備えられたハンドル支持部6aから操縦ハンドル6が後向きに延ばされている。機体2は、ミッションケース7、ミッションケース7の前部から前向きに延ばされてエンジン3を支持するエンジンフレーム8などによって構成されている。ミッションケース7の上部から変速レバー9が後向きに延ばされている。変速レバー9は、操縦ハンドル6の上方に位置している。操縦ハンドル6の後部に、主クラッチレバー10、および、デフロックレバー11が設けられている。
【0028】
〔耕耘装置〕
図1に示されるように、耕耘装置5は、左右一対の走行車輪1の後隣りに設けられている。耕耘装置5には、耕耘ロータリ15、耕耘ロータリ15用のカバー16、抵抗棒17が備えられている。
【0029】
耕耘ロータリ15は、ミッションケース7の後下部を左右に貫通する状態でミッションケース7に回転駆動可能に支持される駆動軸15a、ミッションケース7の左横外側および右横外側で駆動軸15aに支持される複数本の耕耘爪15bを備えている。耕耘爪15bは、ダウンカット用の取付姿勢と、アッパカット用の取付姿勢とに姿勢変更して駆動軸15aに取付け可能である。駆動軸15aは、図1,5に示される正回転方向aと、図5に示される逆回転方向bとに切り換えて駆動可能である。
【0030】
〔動力伝達装置〕
図5は、エンジン3から耕耘装置5および走行車輪1に動力伝達する動力伝達装置20を示すブロック図である。動力伝達装置20においては、エンジン3の出力が主クラッチ21に入力され、主クラッチ21の出力がミッションケース7に入力されてミッションケース7から耕耘ロータリ15と走行車輪1とに分配して伝達される。図3に示されるように、ミッションケース7には、ロータリ変速部22、作業クラッチ23、走行変速部24、走行クラッチ25および車輪差動機構26が備えられている。
【0031】
主クラッチ21は、クラッチ入りに切換えられると、エンジン3からの動力をミッションケース7に入力して走行車輪1および耕耘ロータリ15の駆動を可能にし、クラッチ切りに切換えられると、エンジン3からミッションケース7への入力を絶って走行車輪1および耕耘ロータリ15を停止させる。主クラッチ21のクラッチ入りとクラッチ切りとの切換え操作は、主クラッチ21に操作ケーブル(図示せず)などによって連係された主クラッチレバー10(図1参照)によって行われる。
【0032】
ロータリ変速部22では、正転伝動と逆転伝動とに切換え可能に構成され、正転伝動に切り換えられると、主クラッチ21からの動力が正転動力に変換して出力され、逆転伝動に切り換えられると、主クラッチ21からの動力が逆転動力に変換して出力される。正転動力は、耕耘ロータリ15の駆動軸15aを正回転方向(図1参照)に駆動する動力である。逆転動力は、耕耘ロータリ15の駆動軸15aを逆回転方向(図1参照)に駆動する動力である。ロータリ変速部22の正転伝動と逆転伝動との切り換えの操作は、変速レバー9(図1参照)によって行われる。
【0033】
作業クラッチ23は、クラッチ入りに切り換えられると、ロータリ変速部22からの正転動力あるいは逆転動力を駆動軸15aに伝達して耕耘ロータリ15を正回転方向(図1参照)あるいは逆回転方向(図1参照)に駆動し、クラッチ切りに切り換えられると、ロータリ変速部22から駆動軸15aに対する動力伝達を絶って耕耘ロータリ15を停止させる。作業クラッチ23のクラッチ入りとクラッチ切りとの切換え操作は、作業クラッチ23に操作ケーブル(図示せず)などによって連係されたデフロックレバー11(図1参照)によって行われる。
【0034】
走行変速部24では、主クラッチ21からの動力が入力され、入力された動力を複数段階の前進動力と、1段階の後進動力とに変換して出力する。走行変速部24の変速操作は、変速レバー9(図1参照)によって行われる。
【0035】
走行クラッチ25は、クラッチ入りに切り換えられると、走行変速部24からの前進動力あるいは後進動力を車輪差動機構26に伝達して走行車輪1の前進駆動、後進駆動を可能にし、クラッチ切りに切り換えられると、走行変速部24からの動力の車輪差動機構26への伝達を絶って走行車輪1を停止させる。
【0036】
車輪差動機構26は、差動許容伝動と差動ロック伝動とに切換え可能に構成されている。車輪差動機構26においては、差動許容伝動に切り換え操作されると、走行クラッチ25からの動力が左右一対の走行車輪1に伝達され、この動力伝達は、左右一対の走行車輪1の差動を許容しながら行われる。車輪差動機構26においては、差動ロック伝動に切り換えられると、走行クラッチ25からの動力が左右一対の走行車輪1に伝達され、この動力伝達は、左右一対の走行車輪1の差動を阻止しながら行われる。車輪差動機構26の差動許容伝動と差動ロック伝動との切換えの操作は、車輪差動機構26に操作ケーブル(図示せず)などによって連係されたデフロックレバー11(図1参照)によって行われる。
【0037】
〔機体のダッシュ防止〕
図1に示されるように、走行車輪1よりも前側において、抵抗部材30が機体2に支持されている。抵抗部材30の機体2への支持は、エンジンフレーム8の前部に支持部31を備え、抵抗部材30の一端部に位置する支軸32を支持部31に連結することによって行われる。抵抗部材30は、図2,3,4に示されるように、支軸32が有する機体左右方向に沿う軸芯Pを揺動支点にして下降揺動した作用姿勢S(図2,3参照)と、上昇揺動した非作用姿勢K(図4参照)とに亘って変更可能な状態でエンジンフレーム8に支持されている。図6に示されるように、抵抗部材30は、抵抗部材30の上部に連結されたスプリング33によって下降付勢され、支持部31に備えられたストッパー部31aに抵抗部材30の基部が当たって支持されることによって作用姿勢Sに保持される。
【0038】
圃場に土が硬い部分があると、耕耘ロータリ15が土中に入り込み難くて耕耘反力によって地面側に上昇し、この場合の耕耘ロータリ15の対地高さによっては、耕耘ロータリ15の回転速度が走行車輪1の回転速度よりも速いので耕耘ロータリ15が走行すること、いわゆる機体2がダッシュすることがある。機体ダッシュが発生すると考えられる耕耘ロータリ15の対地高さよりも少し低い対地高さが設定高さ位置[SH]として予め設定されている。設定高さ位置[SH」としては、図3に示されるように、駆動軸15aの軸芯Yの対地高さ位置を設定している。軸芯Pの対地高さ位置に限らず、耕耘爪15bの先端の回転軌跡の上端あるいは下端など耕耘ロータリ15のどのような部位の対地高さでも設定高さ位置[SH]として設定することが可能である。
【0039】
図3に示されるように、抵抗部材30が作用姿勢Sに切り換えられていると、耕耘ロータリ15の対地高さ(軸芯Yの対地高さ)が設定高さ位置[SH〕になると、機体2が車軸芯Zを揺動支点にして前下がり姿勢になるので抵抗部材30が接地する。抵抗部材30が接地すると、耕耘ロータリ15のそれ以上の上昇が抵抗部材30の突っ張り支持によって阻止される。
【0040】
図2に示されるように、抵抗部材30が作用姿勢Sに切り換えられていても、耕耘ロータリ15の対地高さ(軸芯Yの対地高さ)が設定高さ位置[SH〕よりも低いとき、耕耘ロータリ15の対地高さ(軸芯Yの対地高さ)が設定高さ位置[SH〕にあるときよりも前上がり姿勢に機体2がなるので抵抗部材30が接地しない。
【0041】
図4に示されるように、抵抗部材30は、非作用姿勢Kに切換えられると、作用姿勢Sに対して上方に引退する。これにより、抵抗部材30は、非作用姿勢Kに切換えられていると、耕耘ロータリ15の対地高さ(軸芯Yの対地高さ)が設定高さ位置[SH〕になって機体2が前下がり姿勢になっても接地しない。
【0042】
図2に示されるように、作業を行う場合、抵抗部材30が作用姿勢Sに切り換えられていると、耕耘ロータリ15が土中に入り込む対地高さになっても抵抗部材30が接地せず、耕耘ロータリ15を土中に入り込ませて耕耘を行える。図3に示されるように、土が硬くて耕耘ロータリ15が耕耘反力によって地面側に上昇しても、耕耘ロータリ15の対地高さが設定高さ位置[SH]になれば、抵抗部材30が接地して耕耘ロータリ15が設定高さ位置[SH]以上に上昇せず、機体2のダッシュが防止される。
【0043】
図4に示されるように、機体2を旋回走行あるいは移動走行などさせる場合、抵抗部材30が非作用姿勢Kに切り換えられていると、耕耘ロータリ15が土に触れないように持ち上げられて耕耘ロータリ15の対地高さが設定高さ位置[SH]以上になっても抵抗部材30が接地せず、耕耘ロータリ15を地面に触れないように持ち上げることができる。
【0044】
〔抵抗部材の姿勢変更装置〕
図6に示されるように、抵抗部材30は、連係機構34によって作業クラッチ23および車輪差動機構26に連係されている。連係機構34は、抵抗部材30とデフロックレバー11とを操作ケーブル35によって連結することにより、抵抗部材30を作業クラッチ23および車輪差動機構26に連係させる。
【0045】
デフロックレバー11が切り位置[切]に切換え操作されて作業クラッチ23がクラッチ切りに切換えられ、かつ、車輪差動機構26が差動許容伝動に切り換えられると、操作ケーブル35のインナーケーブル35aが引っ張り操作されて抵抗部材30が操作ケーブル35によってスプリング33に抗して非作用姿勢Kに変更される。これにより、連係機構34は、作業クラッチ23がクラッチ切りに切換えられ、かつ、車輪差動機構26が差動許容伝動に切り換えられると、抵抗部材30を非作用姿勢Kに変更する。
【0046】
デフロックレバー11が入り位置[入]に切換え操作されて作業クラッチ23がクラッチ入りに切り換えられ、かつ、車輪差動機構26が差動ロック伝動に切り換えられると、操作ケーブル35のインナーケーブル35aが緩め操作されて抵抗部材30がスプリング33によって作用姿勢Sに変更される。これにより、連係機構34は、作業クラッチ23がクラッチ入りに切り換えられ、かつ、車輪差動機構26が差動ロック伝動に切り換えられると、抵抗部材30を作用姿勢Sに変更する。
【0047】
作業を行う場合、作業クラッチ23をクラッチ入りに切り換え操作して耕耘ロータリ15を駆動し、車輪差動機構26を差動ロック伝動に切り換え操作して機体2を直進走行し易くする。この場合、作業クラッチ23をクラッチ入りに切換え、車輪差動機構26を差動ロック伝動に切り換えたことによって抵抗部材30が連係機構34によって作用姿勢Sに姿勢変更され、抵抗部材30を作用姿勢Sに変更する特別な操作を行わなくても機体2のダッシュを抵抗部材30によって防止することができる。
【0048】
機体を旋回走行あるいは移動走行などさせる場合、作業クラッチ23をクラッチ切りに切り換え操作して耕耘ロータリ15を停止させ、車輪差動機構26を差動許容伝動に切り換え操作して左右の走行車輪1の差動を可能にする。この場合、作業クラッチ23をクラッチ切りに切り換え、車輪差動機構26を差動許容伝動に切り換えたことによって抵抗部材30が連係機構34によって非作用姿勢Kに変更され、抵抗部材30を非作用姿勢Kに変更する特別な操作を行わずに耕耘ロータリ15を土に触れない持ち上げることができる。
【0049】
〔別実施形態〕
(1)〔第1別実施形態の抵抗部材の姿勢変更装置〕
第1別実施形態の抵抗部材の姿勢変更装置には、耕耘ロータリ15の対地高さを検出する高さ検出センサと、抵抗部材30を切換え操作するアクチュエータと、高さ検出センサによる検出情報を基にアクチュエータを制御する制御装置と、が備えられている。
【0050】
高さ検出センサは、機体2に設けられ、機体2の車軸芯Zを揺動支点にした前後傾斜角を耕耘ロータリ15の対地高さとして検出する。
【0051】
アクチュエータは、電動シリンダによって構成されて抵抗部材30に連結され、伸縮作動によって抵抗部材30を作用姿勢Sと非作用姿勢Kとに切換え操作する。アクチュエータとしては、電動シリンダに限らず、電動モータなどの採用が可能である。
【0052】
制御装置は、設定高さ位置[SH]を第1設定高さ位置として設定する第1設定部を備え、高さ検出センサによる検出対地高さと第1設定高さ位置とが同じであると判断すると、抵抗部材30を作用姿勢に切り換えるようにアクチュエータを作動させる。制御装置は、耕耘ロータリ15の対地高さが設定高さ位置[SH]になると、抵抗部材30を作用姿勢に変更する。
【0053】
制御装置は、設定高さ位置[SH]よりも低い第2設定高さ位置を設定する第2設定部を備え、高さ検出センサによる検出対地高さが第2設定高さ位置以下であると判断すると、抵抗部材30を非作用姿勢に切り換えるようにアクチュエータを作動させる。制御装置は、耕耘ロータリ15の対地高さが設定高さ位置[SH]よりも低い第2設定高さ位置以下になると、抵抗部材30を非作用姿勢に変更する。設定高さ位置[SH]と第2設定高さ位置との間に不感帯が形成される。
【0054】
第1別実施形態の抵抗部材の姿勢変更装置では、制御装置は、第2設定部を備えず、耕耘ロータリ15の対地高さが設定高さ位置[SH]よりも低くいと抵抗部材30を非作用姿勢に変更するものであってもよい。
【0055】
(2)〔第2別実施形態の抵抗部材の姿勢変更装置〕
第2別実施形態の抵抗部材の姿勢変更装置には、耕耘ロータリ15の対地高さを検出する高さ検出センサと、抵抗部材30を切換え操作するアクチュエータと、高さ検出センサによる検出情報を基にアクチュエータを制御する制御装置と、が備えられている。
【0056】
高さ検出センサは、機体2に設けられ、機体2の車軸芯Zを揺動支点にした前後傾斜角を耕耘ロータリ15の対地高さとして検出する。
【0057】
アクチュエータは、電動シリンダによって構成されて抵抗部材30に連結され、伸縮作動によって抵抗部材30を作用姿勢Sと非作用姿勢Kとに切換え操作する。アクチュエータとしては、電動シリンダに限らず、電動モータなどの採用が可能である。
【0058】
制御装置は、設定高さ位置[SH]よりも低い第3設定高さ位置を設定する第3設定部を備え、高さ検出センサによる検出対地高さが第3設定高さ位置よりも高いと判断すると、抵抗部材30を作用姿勢に切り換えるようにアクチュエータを作動させる。制御装置は、耕耘ロータリ15の対地高さが設定高さ位置[SH]よりも低い第3設定高さよりも高くなると、抵抗部材30を作用姿勢に変更する。耕耘ロータリ15が上昇して設定高さ位置[SH]になる前に、自動的に抵抗部材30が作用姿勢になり、早目に抵抗部材30の準備が整う。
【0059】
制御装置は、第3設定高さ位置よりも低い第4設定高さ位置を設定する第4設定部を備え、高さ検出センサによる検出対地高さが第4設定高さ位置以下であると判断すると、抵抗部材30を非作用姿勢に切り換えるようにアクチュエータを作動させる。制御装置は、耕耘ロータリ15の対地高さが第3設定高さ位置よりも低い第4設定高さ位置以下になると、抵抗部材30を非作用姿勢に変更する。第3設定高さ位置と第4設定高さ位置との間に不感帯が形成される。
【0060】
第2別実施形態の抵抗部材の姿勢変更装置では、制御装置は、第4設定部を備えず、耕耘ロータリ15の対地高さが第3設定高さ位置以下になると、抵抗部材30を非作用姿勢に変更するものであってもよい。
【0061】
(3)上記した実施形態では、抵抗部材30が作用姿勢と非作用姿勢とに切り換わる例を示した、抵抗部材30は、作用姿勢だけに固定されたものであってもよい。
【0062】
(4)上記した実施形態では、左右一対の走行車輪1を備えた例を示したが、走行車輪1が一つである一輪型であってもよい。
【0063】
(5)上記した実施形態では、抵抗部材30が機体2の左右方向に沿う軸芯Pを揺動支点にして作用姿勢Sと非作用姿勢Kとに切り換わる例を示したが、これに限らず、抵抗部材としては、機体2の前後方向に沿う軸芯を揺動支点にして作用姿勢Sと非作用姿勢Kとに切り換わるもの、あるいは、抵抗部材の伸縮によって作用姿勢と非作用姿勢とに切り換わるもの、あるいは、抵抗部材が上下スライド可能に支持され、上下スライドによって作用姿勢と非作用姿勢とに切り換わるものであってもよい。
【0064】
(6)上記した実施形態では、抵抗部材30が作業クラッチ23および車輪差動機構26の両方に連係された例を示したが、抵抗部材30が作業クラッチ23および車輪差動機構26のいずれか一方のみに連係されるものであってもよい。
【0065】
(7)上記した実施形態では、抵抗部材30を作業クラッチ23および車輪差動機構26に連係させた連係機構34を備えた例を示したが、連係機構34を備えず、抵抗部材30の作用姿勢Sと非作用姿勢Kとの切り換えを人為操作によって行うものであってもよい。
【0066】
(8)上記した実施形態では、連係機構34を操作ケーブル35によって構成された例を示したが、連係機構34としては、抵抗部材30を作用姿勢Sと非作用姿勢Kとに切り換えるアクチュエータと、アクチュエータを操作するスイッチがデフロックレバー11によって操作されるものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、走行車輪、走行車輪の後隣り位置する耕耘ロータリを備える歩行型管理機に適用できる。
【符号の説明】
【0068】
1 走行車輪
2 機体
6 操縦ハンドル
15 耕耘ロータリ
23 作業クラッチ
26 車輪差動機構(差動機構)
30 抵抗部材
34 連係機構
K 非作用姿勢
S 作用姿勢
SH 設定高さ位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6